家族ゲーム~死んでお詫び申し上げる作戦~(櫻井翔)
正体不明の登場人物のことをあれこれ考えるゲームである。
推理するというのは古典的なゲームなのだ。
もちろん、ゲームで推理力が要求されるという考え方もある。
たとえば、サッカーで言うと、一点リードしているチームがもう一点獲りに行くか(攻撃的)、一点リードを引いて守るか(守備的)・・・どちらにするかということをお互いの監督は読み合うわけである。
負けているチームの監督の立場で言えば、相手が守備的ならば、攻撃的に出ることが有利になる。同点を目指すことに集中できるわけである。しかし、相手が攻撃的だと、攻撃的に出ればもう一点失ってリードを広げられるリスクが高まる。
サッカーの場合はさらに得点差とか得失点差とか勝ち点の問題が生じる。それによって相手の監督がもう一点、獲りに来るか、その場合、最悪、引き分けでいいと考えるか、あるいは何が何でも勝ち点3を欲しがるかなどという推測が可能になる。
こうした相手との駆け引きの中で、監督は手持ちのカードから交代選手を選択するゲームを行う。
世界にはゲームが満ちており、人生はゲームという考え方もあるし、人生ゲームもある。
家族ゲームの楽しさは・・・一体、誰が何のためにどのようなゲームをしているのか・・・まったく不明なことだろう。
その中で・・・物語の主人公は宣言するのだ。
「これは家族ゲーム。・・・家族ゲームなんだよ」と・・・。
途方にくれる登場人物や一部お茶の間・・・。いいですねえ。
で、『家族ゲーム・第4回』(フジテレビ20130508PM10~)原作・本間洋平、脚本・武藤将吾、演出・佐藤祐市を見た。たとえば世界をゲームとしてとらえることができるかどうかは個人的な資質や教養にも影響される。「人生はゲームじゃない」というのはけだし名言だし、時にはゲームでも有効な戦略である。もちろん、人生がゲームでないわけはなく、本質的には間違いである。しかし、他のゲームと人生ゲームを差別化するゲームでは一種の必勝法的な効果がある。だが、たとえば受験戦争というゲームはそれだけでは勝てない。過去のゲーム結果や、選択の範囲などをゲーム的に検討する必要があるからだ。恋愛ゲームや結婚ゲームが成立する以上、家族ゲームも存在する。しかし、多くの人間が家族の一員として個性を獲得するために・・・それがゲームだとは認識しにくいだけである。
生存ゲームや、生活ゲームの中で夫婦ゲームがあり、子育てゲームがある。そして子供は人生ゲームのプレイヤーとしてある程度、ハンデをもらいながら、成長ゲームを展開していくのだ。
朝、何時に起きるかのゲームがあり、朝食は何を食べるかのゲームがある。米国は日本とのゲームで中国の軍事活動にイエローカードを出す。中国は北朝鮮に資産凍結というイエローカードを出す。米国は日本に共同会見をしないというカードを切り、韓国には共同会見をするというカードを切る。韓国は日本が国際社会に復帰しないようにあらゆる手段を尽くすし、日本は国際社会の顔色をうかがいつつ、なんとか孤立しないように努力する。円安で自動車産業は黒字となり、燃料代は高騰して国内の自動車利用者は赤字を覚悟する。時々、規制値を超える放射線量が計測されるが、できれば福島県産の食材の方が中国産より安全だと主張したいゲームがあり、そういうことは日常生活とは無関係だと無視するゲームがある。
「人生はゲームではない」と断言しても、「人生の必勝法がある」と言われると心が動く人がいれば、それはもはやゲームなのだ。
悪魔のような家庭教師・吉本荒野(櫻井翔)は虚飾に満ち、崩壊寸前のごく普通の家庭・沼田家にもぐりこみ、さまざまな暗躍を開始するのだった。
一体、彼は何がしたいのか・・・お茶の間は戸惑いつつ、いろいろ想像して楽しむゲームなのである。
クラスメートの虐待によって瀕死だった次男の沼田茂之(浦上晟周)を自爆攻撃を前提とした脅迫によって救出し、さらに「だれも参加しないお誕生日会作戦」によって犬化した茂之に対して飼い主としてのポジションを獲得した吉本は・・・夫・沼田一茂(板尾創路)の浮気相手・浅海舞香(忽那汐里)との会話を家族全員に聞かせて亀裂を深める。しかし、妻・佳代子(鈴木保奈美)は夫に絶望しながらも・・・仮面夫婦を演じ続けるのだった。
一茂は「盗聴」の仕掛け人を吉本ではないかと疑うが「盗聴テープを拾った」だとか「長男のパソコンで再生したために操作ミスで音声記録されてしまった」とか「死んで許しを乞う」などと支離滅裂なことを言って誤魔化す。
「まあ・・・元はといえば俺が悪いんだから」
「ですよね」
・・・なのである。
一方で・・・佳代子に対しては「奥さんを裏切るなんて許せなかったから・・・やりました」と犯行を一部自供する。しかし、近所の主婦に対して「一茂の浮気画像」が配信されたことについては舞香の嫌がらせではないかと誘導するのだった。
お茶の間の一部は・・・舞香は吉本の共犯者、あるいは駒であると推測するのだが、決定的な証拠は示されない。
吉本の画策に気が付き、一番、お茶の間の立場に近いのが長男の沼田慎一(神木隆之介)である。彼は素晴らしいインターネット上に「吉本荒野の被害者の会」というサイトを発見し、管理人のマキにメールを送付する。
「私も被害者です。吉本荒野の情報が知りたい」
「あなたが信頼できる人間かどうか。いくつか、質問させてください。まず、あなたのプロフィールをお知らせください」
「沼田慎一・・・高校生です・・・中学生の弟が吉本荒野の虜になってしまいました」
「あなたには信頼できる人がいますか?」
「両親も信頼できるし、学校にも信頼できる先生や、仲間がいます」
「それは嘘ですね。信頼できる人がいるのなら、このサイトに相談する必要はない。嘘をつく人は信用できません」
「失礼しました。本当は私は誰も信じることができない人間です。むしろ、周囲の人間を見下しています・・・しかし、吉本には弱みを握られているのです」
「正直に話してくれたので、同志として認めます」
こうして慎一は吉本の過去について知る糸口をつかんだ・・・と思いこんだ。
吉本の存在に危険を感じ、ストレスをため込んだ慎一は万引きを繰り返したり、セックスフレンドの最上飛鳥(北原里英)と愛のない行為をしたり、教師の自転車のタイヤをナイフで切り裂いたりして、集中力を欠き、学校の成績も下降線を描く。
かたや、一応の安全を確保した次男の茂之は吉本の指導に盲目的に従い、成績も向上し始める。
そんなある日、クラスの違う女子・真野さくら(有川結女)から手紙を手渡される。
初めてもらった女子からの手紙に有頂天になる茂之。
「クラスが違ってしまいましたが・・・元気ですか・・・新しいクラスになじめるように頑張ってください」
ラブレターとは言えないまでも好意的な文面にその気になる茂之を、吉本は適当に煽って行く。
吉本の恋の手ほどきに従い、デートのためにインラインスケートの練習を始める茂之。
ついに、真野さくらをデートに誘い、OKの返事を受け取るのだった。
真野さくらは・・・かって、茂之を裏切った園田満(松島海斗)の幼馴染でもあった。明らかに不穏な空気が漂い、「自殺のゲーム」において、「茂之のブラフ(はったり)」を読んだ山尾泰司(西本銀二郎 )はいじめを再開する。
しかし、茂之は「真野さくらとのデートの約束」だけは身体を張って守るのだった。
一方で、家庭崩壊を回避するために浮気相手の舞香との別れを選択する一茂。
「好きなのに・・・」と舞香は去り際に一茂に路上キスをするのだった。
そんなモヤモヤした気持ちを抱く一茂と佳代子に・・・茂之の恋について話す吉本。
「二人のデートをこっそりのぞいてみませんか」
「そんなこと・・・茂之が嫌がるだろう」という一茂への反発から「行ってみる」と承諾する佳代子だった。
これまでの悪意に満ちた展開から・・・恐ろしい結末を予感させる茂之とさくらのはじめてのデート。
しかし、転んだ茂之をさくらが優しく助け起こしたりしてほのぼのした初恋ムードで進行して行く。
慎一も合流して・・・デートを見守る三人。
しかし・・・スケート場を後にした中学生カップルは・・・コーヒーの美味しいラウンジに向かう。
そこは・・・若き日の一茂が佳代子にプロポーズした場所だった。
父親譲りの癖でストローでジュースを泡立てる茂之。
「つきあってください」
「いいよ・・・」
・・・とどう考えても怪しい展開なのだった。
しかし、佳代子の日記を読んでこの場所を選んだという吉本に・・・何故か、感謝する佳代子。眠っていた甘い記憶を呼び覚まされたのだった。
そして・・・雨も降っていないのに傘を持って一茂の会社で夫を待ち伏せする佳代子。
その姿に不気味なものを感じず、やはり甘酸っぱいものを感じる一茂なのである。
二人は手をつないで家路をたどるのだった。
そんな結末に疑問を感じる慎一だった。
「結局、あんたは両親を仲違させて、それから関係を修復して・・・母に恩を売るつもりなのか」
「・・・50点だな」
「・・・」
「これは・・・家族ゲームなんだよ」
その頃、近所の主婦たちには一茂と舞香のキス画像が配信されていた。
それを見せられてショックを受ける佳代子。
「一体何をした・・・」
「夫に無関心な妻じゃ・・・インパクトが小さいからね・・・愛しているからこそ・・・憎しみが生まれるのさ・・・」
「そんなことして・・・何の意味が・・・」
「だから・・・ゲームなんだよ・・・家族の危機を・・・家族が乗り越えられるかどうかのさ」
「意味ないじゃないか・・・そんなことをしなくたって家族は家族じゃないか」
「そんなことはないのさ。過去をはっきりと認識してこそ現在が確実なものになるんだ・・・たとえば歴史教育だ・・・最も大切なのは現代に続く歴史認識なのに・・・日本の教育は肝心なことを教えていない。日本人がなぜ、世界に対して奴隷のように卑屈なのか、その要因である敗戦と占領、その要因である開戦と敗因、その要因である世界の状況と帝国の選択・・・英霊たちの宗教的な慰霊にもクレームをつけられる世界のゲームを理解するためには・・・家族ゲームが必要なんだよ」
「か、関係ないだろう」
「関係なくないんだよ・・・無知が無理解を生み、無理解はいわれなき悪意を生むんだ・・・なぜ一国の首相が暗殺されたのか・・・その暗殺者の心情について理解し・・・馬鹿な韓国人や馬鹿な中国人や馬鹿な米国人の言うことにも一理あることを馬鹿な日本人は学ばないと・・・またゲームに負けることになるのさ」
興奮した吉本が過去の記憶に襲われるのをお茶の間は垣間見る。
教師の姿の吉本は・・・とある生徒に何か後ろめたい過去を持っているらしい。
しかし、吉本は即座に立ち直る。唖然とする慎一。
「何を言っているのか・・・わからない」
「わかろうとわかるまいと・・・もうゲームは始っているのさ・・・泣きごとを言っても無駄なんだよ」
吉本は・・・慎一のパソコンを破壊し・・・慎一の携帯を取り上げる。
「余計な詮索はやめろと言ったじゃないか・・・変なサイトにアクセスしちゃ駄目だよ」
しかし・・・慎一はすでに新しい携帯を用意していた。
「あなたに言われた通りにして正解でした・・・吉本はサイトのことを知ってました」
初めて、吉本に一矢報いたと確信する慎一。
同志であるマキと初めての顔合わせの現場に向かう。
「はじめまして・・・」
慎一以外の家族はそれが誰かを知っている。
しかし・・・慎一は知らないのである。
マキは・・・舞香だった。
果たして・・・舞香は・・・敵なのか・・・味方なのか・・・一体、誰の。
ゲームはさらに難解になっていくのだった。
わかんね
おまいらが敵か味方か
わかんね
ウヨかサヨかも
わかんね
○か×かも
わかんね
おまいらはおまいらをアホの子って言う
死ねって言うけど殺すほどでもないって言う
それでもおまいらはロムる
それからおまいらはアクセスする
おまいらとおまいらは
重なって融合して
同じリズムのダンスを踊る
関連するキッドのブログ→第3話のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の家族ゲーム
| 固定リンク
コメント
そうそうそうなのよね。
怪しい展開にみな戦々恐々と見守った
かわいいカップルの初デート。
遠い昔を懐かしんだり近い未来を想像したり
誰もが幸せになれた唯一のシーンでしたねっ!
いまどきのさくらちゃんが
メールじゃなくてお手紙をくれたのも
なんだかほのぼのしました。
吉本は徹底的に沼田家を壊して、
その後に再生する計画なんでしょうか?
でなければ過去の記憶の生徒にしめしがつかないような・・。
そんなこんなで雨ですが、
じいやちゃま、ごきげんいかが。
桜入り水羊羹を作ったのでどうぞ♪
あとで濃いお茶をいれますね~♪
投稿: エリ | 2013年5月11日 (土) 16時09分
ふふふ・・・いたいけな子供たちは
守るべき対象であって
責めるべき対象ではない・・・と
大人たるものは思うわけですが・・・
吉本にはそういう常識は通用しないというか・・・
どこか・・・「自分で強くならなければ生きていけない」的なところがあるようですな。
まあ・・・基本的に
少し狂っているのは間違いないでしょう。
文科省が「炎天下に耐久走はいけない」と指針を打ち出す時代でございます。
まあ、限度をどこに設定するかは難しいのですよね。
特に何があっても
責任逃れをしたいという発想に基づきますと
禁止事項が増えるばかりなのですな。
吉本の自分ルールもおそらく・・・
いつも揺らいでいるのではないでしょうか。
さくらちゃんが・・・善意の人であることを
祈るばかりでございますねえ。
まあ・・・クラスの男子をコントロールしていることを
考えると・・・
吉本にコントロールされている可能性は大ですけれど。
一日警視総監が好評だったので
今度は一日総理大臣のお話がきております。
女子高校生に総理大臣をさせて
大丈夫なのかとも思いますが
エリ様ならきっと素晴らしい首相になられますな。
思い切って一日憲法改正なさいますか。
国会議事堂の帰りに
赤坂「しろたえ」のチーズケーキを
注文してまいりましたので
コーヒーをおいれいたします。
雨の土曜日もなかなかに乙でございますので。
投稿: キッド | 2013年5月11日 (土) 16時58分