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2013年5月23日 (木)

家族ゲーム~奥様、百万円をどうぞ作戦~(櫻井翔)

前回に続いて買収工作である。

少女を買収した金額は伏せられていたが、専業主婦の買収金額は100万円だった。

売春婦が性欲の処理に有効な職業であることの是非はともかくとして、お金の威力が絶大であることをこのドラマはここまで全く否定していない。

スポンサー様からの広告費で製作されているドラマである以上、それを否定しても虚しいばかりだしな。

つまるところ、世界とはお金のやりとりなのである。

そういうゲームなのである。

たとえば・・・「メルトダウンの悲劇」を目の前で見ている人々が、「危険な原発」の続行を求めるのも「将来失うかもしれない巨大な損失よりも明日手に入る小銭が欲しい」と損得勘定をするからである。もはや、中国発の有害物質入り農作物で一億総猫踊りを踊る日が近くても、1円でも安いキャベツを求める人々の群れは絶えない。農業の抜本的改革を叫びながら、農薬入り作物を作り続ける農民を手厚く保護するのがお金を集めては配る人々の譲れない一線なのである。安全保障よりも金が欲しい人々はあれだけ日本政府に唾を吐きながら、中国の支配は断固拒否すると宣言するのだった。どうかしてるぜ。

自民党本部は「絶対に米国の指示通りにする」と公言しながら沖縄支部の「絶対に米国の指示通りにはしない」という公言に目をつぶり、その件についてはあえて触れないという寝技を繰り出す。

それもすべては金のためである。

そういう「金がすべての世の中が神や悪魔の大好物である」ことは間違いないだろう。

もちろん・・・家族ゲームはニードフルシングスの手の内にあるのだ。

で、『家族ゲーム・第6回』(フジテレビ20130522PM10~)原作・本間洋平、脚本・武藤将吾、演出・佐藤祐市を見た。ゲームの要素に「主導権争い」というものがある。つまり、全体をプレイヤーが自分の欲望に忠実に従わせるために、意志の決定機関をどのように制圧するかというゲームである。代表的なものに選挙や、暗殺がある。政党政治の組織というものは暗殺を防止するシステムとも言える。たとえば総裁を暗殺しても政党は存続するから無駄だと言う意志表示である。そうでない場合は暗殺は有効な手段である。アドルフさえいなければと思うからこそ、総統暗殺計画は立案されるのだ。

沼田家の長男・沼田慎一(神木隆之介)はある時点まで、沼田家の支配に成功していたと言えるだろう。経済力を持つ父親の沼田一茂(板尾創路)は優秀な長男に期待を賭け、忠実に沼田家に必要な金銭を運搬する奴隷として慎一の期待に応えている。専業主婦である母親の佳代子(鈴木保奈美)はつつがなく衣食住を提供し、慎一に快適な生活を与える女中として申し分ない。不出来な次男の沼田茂之(浦上晟周)は慎一自身の優越性を証明し、優越感を満足させる貴重な愛玩物である。まさに慎一にとって沼田家は支配下にある安住の領土だったのである。もちろん、領土外で慎一が「死ね」と言った人間が自殺未遂をしようがしまいが知ったこっちゃないのである。

そこへ・・・闖入者である家庭教師・吉本荒野(櫻井翔)が出現する。

彼は出来が悪く瀕死だった弟を強行的な手段で再生し、本人曰く「今まで味わったことのない幸せを感じる」までに至らせた。弟の不幸=幸せだった慎一にとって弟が幸福になることは自分の幸福感が目減りすることに他ならないのだった。

支配者として推移を見守る慎一は・・・表面的には穏やかだった沼田夫婦に亀裂を入れ、経済的にも生活的にも慎一から安穏な日々を奪い取ろうとする吉本の所業に強烈な不快感を抱くのだった。

慎一にとって吉本は領土に一方的に侵入し、慎一の家族に対する支配権を奪取し、支配者として君臨しようとする侵略者に他ならない。

さらに・・・吉本は慎一を屈服させ、慎一をも支配下におさめる気配満々なのであった。

慎一は総力を結集し、本土防衛戦を実行するしかない苦境に追い込まれていた。

しかし、圧倒的な情報収集能力を持つ吉本のために防戦一方の慎一。

平和ボケした慎一は拠点を失い、自らの「万引き」「器物破損」「傷害」などの犯罪の証拠さえも吉本に握られてしまう。

風前の灯である慎一の前に自称「吉本荒野の犠牲者」を名乗る女・立花真希(忽那汐里)が現れ、共闘を申し出る。

藁にもすがる思いで真希の手をつかんだ慎一は・・・本当の吉本荒野(忍成修吾)の母親(佐藤直子)を訪ね・・・ついに起死回生の情報「田子雄大の過去」を手に入れる。

吉本荒野は本当の吉本荒野の同僚中学教師であった田子雄大だったのだ。

そして・・・本当の吉本荒野が優秀で人気のある教師だったのに対し、田子雄大は無能で孤立した教師であったという・・・過去の職場仲間の証言を入手する。

田子は教え子の家庭問題の処理に失敗し、それを問題化しようとした吉本荒野を殺害しようとして昏睡状態に追いやり、教え子をいじめて自殺に追い込んだという推測を両親に告げたのである。

これで・・・沼田家は俺のものだと確信する慎一。

「こいつは人殺しなんだ・・・そんな奴は家から追い出してくれ」

しかし、吉本はまったく動じない。

「そんな推測で犯罪者扱いされても困る」

そして・・・実は立花真希であった愛人との復縁をちらつかされ、情欲に支配された父親は・・・。

「そうだ・・・推測だけで人を判断してはいけない」

さらに・・・株の損失を吉本からの資金提供で切り抜けた母親は・・・。

「吉本先生がそんな悪人だなんて・・・まったく見当違いよ・・・」

もちろん・・・弟は・・・。

「吉本先生は生命の恩人だ・・・たとえ犯罪者だったとしても僕は吉本先生を必要とする」

まったく・・・慎一にはなびかなかったのである。

「なんだそりゃ・・・俺は・・・本当の息子だぞ・・・家族より他人を信じるのかよ・・・どうかしてるぜ・・・お前ら」

ついに本性を剥きだす慎一。

「家族取られちゃった・・・」と慎一は正体不明の女・立花真希に縋るのだった。

一方、慎一に叛旗を翻された吉本は着々と次の一手を打つのであった。

慎一が証拠隠滅を成し遂げたと思った・・・慎一の犯罪の証拠写真は・・・当然のことながらいくらでもコピーがあったのだった。

その写真の一枚を・・・吉本は・・・慎一のセックスフレンドの最上飛鳥(北原里英)に渡すのだった。

理想の家族を求める吉本の狂気は留まることを知らないのだった。

歌のような歌を歌ってやる

言葉のような言葉で話しかけるのさ

革ジャン、ゴスロリ、鎖帷子

それが自己主張なんだって

さあ支配者をチェンジしようぜ

いつだってやりたいことをやる

それが俺の流儀なのさ

俺は裸だ

すべてをさらけだす

装ったやつらなんか

信じない

隠している部分に何かあることぐらい

お見通しなのさ

さあ・・・白状するなら

今しかないぜ

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

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