« あまちゃん、七巡目の土曜日(有村架純) | トップページ | くつろぎの貴公子ガリレオ~ほろ苦いコーヒー仄暗いホログラフィー(夏川結衣) »

2013年5月20日 (月)

父兄の教え給いし鉄砲に会津心の魂やこめなむでごぜえやす(綾瀬はるか)

ま、ご愛敬だな。

中野竹子の辞世とされる「もののふのたけき心にくらぶれば数にも入らぬ我が身ながらも」に対応して、川崎八重が「父兄の教え給いし筒弓に会津心の弾やこめなん」と詠んだという趣向である。

八重の和歌は「明日よりはいづこの誰か眺むらんなれし大城に残す月影」が有名だが・・・虚実の境界線を漂うわけである。

そもそも、世界はフィクションで満ちている。

諏訪信仰は全国に二万五千の社を持つと言われる人気の「神」である。

で、その神は建御名方神(たけみなかたのかみ)である。

しかし、この神は建御雷神との戦争に敗れた神である。敗走を重ねて諏訪湖に追い詰められ、全面降伏して命乞いをした。そして、諏訪の地より出ないことを条件に命を永らえたという神なのである。

おい・・・と思う。そういう神に戦勝祈願して大丈夫か・・・という話である。

しかし、そういう神だからこそ拝む価値があるのだ。

ものすごい人気なのである。

なにしろ・・・戦に負けても命が助かった方がいい・・・そういう考え方があるからである。

もう、その潔くない姿勢は天晴という他はない。

だから、日本人の本質は国破れて山河あり、一億玉砕はスローガンなのである。

戦後の繁栄を見よ・・・ということなのだな。

とにかく・・・会津藩の妻たちは・・・そういう神に神頼みをした・・・という話だ。

会津の諏方神社は「諏訪大社」の「訪」を「方」に変えている。これは本家に憚ったためであるとされる。どこまでも・・・長いものに巻かれる神なのである。

で、『八重の桜・第20回』(NHK総合20130519PM8~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに来た本当は江戸藩邸と大阪藩邸住まいで・・・会津に戻ったのは鳥羽伏見の敗戦後である・・・中野竹子描き下ろしイラスト大公開である。まあ・・・江戸への帰路、船上で落命したはずの林権助が伏見の陣中で散ったりして定説をいろいろと覆す気満々のこのドラマである。ヒロインの隠された歴史を発掘しすぎて・・・いろいろと妄想が膨らみ過ぎている気配がございますな。主戦場の鳥羽街道を描かず、伏見の攻防のみでしたが・・・幕末ものとしては戦がそこそこ描かれるのがこのドラマの醍醐味ですねえ。まあ、会津戦争についてはプレマップしすぎですけれど~。往年の角川映画みたいだったらどうしよう・・・。

Yaeden020 慶応三年十二月十三日、徳川慶喜は二条城を出て大坂城に退去した。新政府では越前藩・松平春嶽と薩摩藩・大久保利通の間で徳川家に対する処遇の駆け引きが行われていた。大藩として徳川家を新政府に参与させるか・・・領地返上させ政治生命を断つかである。二十四日、結局、「領地返上」は「領地取り調べ」という曖昧な形で決着する。二十五日、江戸薩摩藩邸を庄内藩士が焼き打ちする事件が発生する。二十八日に急報が両勢力に届く。この日、岩倉具視は参与から議定に昇進する。江戸で旧幕府と新政府の衝突が発生したことにより、恭順の姿勢に綻びが入った慶喜は懊悩の末に開戦を決断する。慶応四年一月(1868年)に大坂の幕府軍は戦闘準備を開始した。二日に京都を目指して徳川軍は淀城から北上。この知らせを受けて三日、新政府は会議で越前藩や尾張藩の反対を退け「徳川征討」を決定する。夕刻に伏見に幕府軍が進出。別働隊は鳥羽街道を進行する。下鳥羽で街道を封鎖した薩摩軍と徳川軍先鋒が衝突し、鳥羽伏見の戦いと呼ばれる戊辰戦争の最初の戦闘が発生する。徳川軍は一万五千の兵力を集中することができず、五千に満たない薩摩軍の火力に総崩れとなって惨敗する。日和見を決め込んでいた各藩は急速に新政府に従うことになった。五日、淀城に退却しようとした徳川軍を淀藩が拒絶、敗走は決定的なものとなる。六日、徹底抗戦を叫ぶ将兵を残し、慶喜は大坂城を脱出する。

「なじょして・・・鉄砲がつかぬ・・・」と山本覚馬はつぶやいた。

京の学問所には鳥羽・伏見の砲声が轟いていた。

「海路は・・・薩摩長州が押さえている模様でございます」と答えたのはくのいちの小田時榮だった。丹波の忍びの一族小田家のものだが・・・もはや、岩倉具視の息のかかった忍びと言えるだろう。

すでに・・・無明の闇の中にいる覚馬にはそこから逃れる術はなかった。

「それでは・・・会津はどうなる・・・」

覚馬は歯ぎしりをした。

「岩倉様は申しました・・・もはや・・・幕府もなく、会津藩もない・・・これから始る新しき国の礎に覚馬様もお力添えをくださるように・・・とのことです」

「俺に・・・裏切れというのか・・・幕府を・・・殿を・・・会津の家を・・・」

「しかし・・・天子様を裏切ってはおりませぬ・・・」

「う・・・」

「たとえ・・・ご若年とはいえ・・・帝は帝でございますぞ・・・先の帝には覚馬様のお殿様も忠勤を尽くしたではございませんか・・・」

「しかし・・・」

「勝てば官軍でございます・・・そして・・・今の幕府は負けるべくして負けるのでございます」

「そなた・・・おそろしいことを言うな」

「スメラミコトのくのいちでございますれば・・・」

覚馬は自決について考える。しかし・・・闇の中から・・・声がするのであった。

「やまと・・・だましい・・・は永遠に不滅です」・・・吉田松陰が・・・。

「この国を・・・西洋列強の食い物にしてはならん」・・・佐久間象山が・・・。

「世界を相手にせねばならんのです・・・」・・・坂本龍馬が・・・。

科学忍者隊の死者の声が覚馬をこの世にとどめた。

もっとも・・・坂本龍馬は闇の血を受け、京都北方の山中に埋められたまま・・・生と死の間を未だ彷徨っている。

薩摩軍の猛火を浴び、徳川軍は敗走を始めている。

会津諏方神社は八坂刀売神という妃神も祭っている。

八坂刀売神は渡りの神であり、社はその氏子である会津のくのいちたちの集会場でもある。家老の家柄である諏訪頼信からの早飛脚が集会中のくのいちにもたらされたのは一月も半ばのことであった。

会津くの一の長である照姫は悲報を読み上げた・・・。

「鳥羽伏見の戦で・・・幕府方は・・・負けたそうでございます」

一同の息が乱れる。

照姫は死者の名を読みあげる。

百名を越える死者の中に・・・縁者の名を聞いたものは呻き、喘ぐ。

八重はただ・・・唇をかみしめた。

「来るなら来い・・・」

その思いがあふれ出る。

くのいちたちはしのびのいくさの評議を始めた・・・。

すでに・・・会津は雪景色となっている。

関連するキッドのブログ→第19話のレビュー

篤姫伝→鳥羽伏見の戦い

|

« あまちゃん、七巡目の土曜日(有村架純) | トップページ | くつろぎの貴公子ガリレオ~ほろ苦いコーヒー仄暗いホログラフィー(夏川結衣) »

コメント

今回は林権助の死。
本来ならば三郎→林の順番なんでしょうけど
八重が主人公って事で悲劇性は後に来るほどよいって
感じでこういうまとめ方になったのでしょうかな

ともあれ、ここからは悲劇のオンパレード

八重の大事な家族や
せっかく出来た友達や
薙刀の師匠や

大切な人がどんどんなくなっていく
そういう見せ場をつくるため

物語は着々と作られるようですな

こちらもイラストは急ピッチで

今から
大蔵さんのお母さん
大蔵さんの奥さん
頼母さんの奥さん

描き上げるもんがたくさんで大変です; ̄∇ ̄ゞ

投稿: ikasama4 | 2013年5月21日 (火) 22時15分

✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥

早すぎた林権助の死・・・。
遺言とかいろいろ言う暇もなく戦死でございましたな。
船上シーンが難しかったのかもしれません。

弁慶の立ち往生・・・がやりたかっただけかもしれませんが。

妄想の斜め上をいかれてちょっと
あたふたしましたぞ~。

そして・・・三郎・・・死なんのかとも思いました。

一方でついに会津の女たち全員集合。
NHK総合がまるで画伯にプレッシャーをかけてきたみたいで
ドキドキしましたぞ。

しかし、あくまでマイペースでお願い申しあげまする。

八重の苦手なお針やお歌による・・・
責め・・・しかし、それなりに苦手分野も克服していた八重なのですな。

さらに・・・七連発なので的も七つ・・・。
ここがちょっとうけました。

新撰組オタや龍馬オタの呪詛や悲鳴を
黙殺しつつ・・・戊辰戦争開幕ですな~。

天晴だと存じます。

投稿: キッド | 2013年5月22日 (水) 00時11分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 父兄の教え給いし鉄砲に会津心の魂やこめなむでごぜえやす(綾瀬はるか):

» 大河ドラマ「八重の桜」第20回 [日々“是”精進! ver.F]
林隊、壊滅… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201305190004/ 鳥羽伏見の戦い―幕府の命運を決した四日間 (中公新書)野口 武彦 中央公論新社 2010-01売り上げランキング : 128272Amazonで詳しく見る by G-Tools ... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 05時33分

» 大河ドラマ「八重の桜」信念の人20ついに開戦!旧幕府軍は最新装備の薩摩に歯が立たず覚馬は薩摩の捕虜となった [オールマイティにコメンテート]
大河ドラマ「八重の桜」第20話は薩摩に京都を終われた旧幕府軍は大坂城に集結した。会津は慶喜に従い大坂に下るが、薩摩は旧幕府軍が仕掛けてくるように江戸で刺客を送り、江戸 ... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 05時38分

» 【八重の桜】第20回感想と視聴率「開戦!鳥羽伏見」 [ショコラの日記帳・別館]
【第20回の視聴率は5/20(月)午後追加予定】 「開戦!鳥羽伏見」 遂に、戊辰 [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 11時00分

» 【八重の桜】第20回 「開戦!鳥羽伏見」感想 [ドラマ@見取り八段・実0段]
王政復古のあと、逃げるように都から大坂へ下ろうとする慶喜(小泉孝太郎)を、 林権助(風間杜夫)や佐川官兵衛(中村獅童)らが必死に引き留める。 だが、神保修理(斎藤工)にいさめられ、仕方なく同行...... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 11時23分

» 『八重の桜』第20回「開戦 鳥羽伏見!」★もののふの 猛き心に くらぶれば by黒木メイサ [世事熟視〜コソダチP]
『八重の桜』第20回「開戦 鳥羽伏見!」 大坂城の慶喜(小泉孝太郎)が各国公使と会談。 公使側は慶喜のことを大君(tycoon)と呼んでおり、外交は徳川が握っていることを誇示することとなりました。 これを受けて大久保(徳重聡)と西郷(吉川晃司)が会談。 大久保「今諸侯会議を開いたら、大名はこぞって慶喜に味方しもんそな。」 裕次郎二世こと徳重聡は、彼のキャリアの中で大久保役が一番良いかも。 西郷「人は変わることを恐れるもんじゃってな。どげな悪か世でん、知らん世界よりは良... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 17時26分

» 八重の桜 第20回 開戦!鳥羽伏見 [レベル999のgoo部屋]
『開戦!鳥羽伏見』 内容 慶応三年。会津は御所を追われ、王政復古の大号令が発せられた。 慶喜(小泉孝太郎)は、京より大坂へ下ろうとする。 官兵衛(中村獅童)らは、それを引き止めようとするのだが、 容保(綾野剛)修理(斎藤工)らに諫められては、引き下がるし...... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 17時46分

» 八重の桜 - 2013年大河ドラマ 綾瀬はるか [新ドラマQ]
2013年大河ドラマ「八重の桜」 日曜 NHK 2013年1月6日 - 12月(予定)(50回) [キャスト] 綾瀬はるか 西島秀俊 長谷川博己 松重豊 風吹ジュン 長谷川京子 工藤阿須加 黒木メイサ 剛...... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 18時08分

» 八重の桜第20回〜鳥羽・伏見の戦い〜 [虎哲徒然日記]
20回を迎えた。 徳川慶喜は大坂に退いたが、外交権は依然として握っていることをアピール。これに対し薩摩は江戸で謀略を仕掛け、徳川方を挑発。江戸で戦端が開かれた。 これ ... [続きを読む]

受信: 2013年5月20日 (月) 18時43分

» 火種の爆発 〜八重の桜・開戦!鳥羽伏見感想〜 [早乙女乱子とSPIRITのありふれた日常]
いよいよ鳥羽・伏見の戦いが勃発する。 王政復古の大号令の後、最初は慶喜は怒って鳥羽伏見の戦いに臨んだものの、錦の御旗の前に朝敵となることを恐れ、江戸へ下ってひたすら恭順の姿勢を貫く・・・というの...... [続きを読む]

受信: 2013年5月21日 (火) 21時08分

« あまちゃん、七巡目の土曜日(有村架純) | トップページ | くつろぎの貴公子ガリレオ~ほろ苦いコーヒー仄暗いホログラフィー(夏川結衣) »