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2013年6月24日 (月)

会津の寺から釣鐘を集め巨砲を急造し背炙峠より狙い撃つべしでこぜえやす(綾瀬はるか)

砲術師範、川崎尚之助は会津防衛の策として次のような献策をしたと言われる。

「会津藩内のすべての寺の釣鐘を集めると砲身三間半(およそ6.3メートル)の巨砲二門と大砲弾24発が鋳造できる。射程はおよそ十里(およそ40キロメートル)あるためにこれを背炙峠に設置すれば白河口から二本松まですべての敵の侵入に対応、これを撃破可能である」

ある意味、超兵器的発想である。

しかし、川崎は机上の空論でなく、材料の調査と、綿密な設計に基づいてこの提案をした可能性がある。

自らが「勝算がある」と断言しているのだ。

だが、戦を開始して敗北を味わってから近代化を開始した会津藩首脳部は当然、この提案を却下する。

巨砲によって勝負が決するのであれば武士は無用の長物となるからである。

その結果、会津藩は新政府軍の進軍に対応するために少数の兵力を周囲の拠点にばらまいた。

すでに軍隊の様相を見せ始めた新政府軍は戦力を集中し、防御の弱い拠点を一直線に突破。また必ず、砲兵を二か所に進出させ、拠点突破の際は十字砲火でこれを粉砕するという戦術を行う。

会津軍は二本松から四里の母成峠を一日で突破されると、亀ヶ城(猪苗代城)、十六橋と防御拠点を二日で失う。新政府軍が一直線に鶴ヶ城(会津若松城)に迫って行くのに対し、散開させてしまった兵力を集中することができないために予備兵力を投入することになる。

驚くべきことにその予備兵力まで分散させるのである。

会津藩はまさに・・・近代戦争というものを知らないままにそれに突入したおバカな藩だったと言う他はないのだった。

ああ、超兵器・川崎砲が完成していたら面白かったのになあ。

で、『八重の桜・第25回』(NHK総合20130616PM8~)作・山本むつみ、演出・佐々木善春を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は日光口で奮戦中の山川大蔵の祖父で会津藩元家老の山川兵衛、大蔵の母・山川艶、八重の母親・山本佐久、西郷頼母の妻・千恵、会津出身の新撰組隊士・斉藤一の戊辰戦争版、そして亡き弟の装束を身にまとい男装の鬼神射手と化したヒロイン川崎八重の六大イラスト一挙描き下ろしでお得でございます。これは怒涛の大公開・・・拍手喝采一同興奮ですがあくまでマイ・ペースでお願いします。

Yaeden025 慶応四年(1968年)八月、会津東方の二本松城、会津西方の越後に新政府軍が侵入したために会津は両面作戦を強いられることになる。越後方面に進出していた会津藩兵は政府軍の追撃を受けながら撤退。越後口担当の萱野権兵衛と佐川官兵衛は鶴ヶ城に帰陣する。越後口からの撤退の続く二十日、東方の守備の要、母成峠には旧幕府軍、新撰組残党、二本松の敗兵など千人弱が配置されていた。新政府軍は二本松で戦力の集合を終えるとおよそ三千人の戦力でこれを急襲。圧倒的な銃撃により、会津の砲台を占拠。散在する会津軍を銃火で制圧する。新撰組は相変わらず抜刀攻撃を試みるがほぼ殲滅される。二十一日には母成峠は制圧され、そのまま、猪苗代湖の北の要・亀ヶ城に進出する。戦意を喪失した城代・高橋権太夫は城に放火して撤退。新政府軍は追撃の手を緩めず二十二日には日橋川にかかる十六橋を破壊工作中の会津軍を急襲、これを奪取することに成功する。敵軍を目前にした松平容保は出陣を決意し、二十三日に鶴ヶ城の東北にある滝沢に本陣を構える。南の背炙山から北の飯盛山の間に三つの部隊を展開し、十六橋との中間点となる戸の口原を迎撃ポイントとする布陣を展開するが圧倒的な兵力差によりたちまち壊滅的打撃を受け敗走するのだった。もはや・・・児戯に等しい戦いぶりであった。

「なぜだ・・・なぜなんだ・・・」

松平容保は滝沢本陣で唇をかみしめた。苦戦は予想していたがこれほど脆くも戦線が崩壊することは予想外であった。

蒼白となった藩主の顔を忍び装束のまま片膝ついた川崎八重は盗み見た。

行方不明となった兄、戦死した弟に代わり、八重は忍び頭となっていた。

「母成峠を突破され、たった一日で亀ヶ城、十六橋まで抜かれ、日橋川を渡河されるとは・・・想定外すぎる・・・どういうことなのだ」

「お味方は足並みが乱れ、敵を目にすると浮足立ち、守るすべもなく潰走いたしてごぜえやす・・・とくに猪苗代の民草はすでに敵軍に寝返っておる模様。敵軍のしのびがかなりの数、侵入している気配がごぜえやす。斥候(うかみ)に出したものが半分、戻って参りませぬ・・・」

「さようか・・・」

京の都での費えを捻出するために重税をかけたことで人心は離反していたのである。

何よりも・・・忍びのほとんどを京の都を失ってしまったことが打撃だった。

くのいちは鶴ヶ城にも残っているが・・・前線で八重が指揮する忍びたちは若年の白虎しのびであった。科学忍者隊を主力とする新政府軍にはまったく太刀打ちできないというのが実情である。

「敵の主力はどのようなものか」

「報告に穴があるので・・・総合的判断はできませぬが、日光口から参った土佐の板垣退助、谷干城らの鉄砲しのびを含む迅衝隊がおよそ五百、薩摩の伊地知正治、川村純義、野津鎮雄なるものからなる銃砲兵隊がおよそ、千。そして、諸藩の合同軍が千五百ほど・・・合わせて三千の兵力と思われます。両翼に砲兵を置き、必ず二手より砲撃するのでこぜえやす。前衛には銃部隊が配置され、抜刀突撃すれば格好の餌食にされるのでごぜえやす」

「勇猛果敢なものから命を落とす・・・か」

「今は渡河を終え、進撃準備に入っておりやすので・・・機先を制する機会でごぜえやすが・・・お味方も展開に手間取っておりやす。また戦闘に突入しても、射程にも発射速度にも差がある上に多勢に無勢でござりますれば・・・万が一にも勝ち目は御座いませぬ」

「ふふふ・・・山本の妹と申したな・・・女子のくせに云うわ・・・」

「・・・」

「余が不明であった・・・と云っても仕方あるまい・・・この上は籠城じゃな・・・城を枕に討ち死にとは・・・まるで戦国武将じゃのう・・・」

「・・・」

「陣を払う・・・白虎忍びは戦線の斥候を続けよ・・・」

「は・・・」

「そなたの夫の川崎とやらが・・・新式砲を開発したそうじゃな・・・」

「は、試作品はすでにお城に搬入されている頃と存じまする」

「その威力・・・楽しみじゃ」

「・・・」

藩主は采配を振るった。

くのいちの八重の姿は消えている。

関連するキッドのブログ→第24話のレビュー

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コメント

遂に会津戦争が始まり
梶原夫妻をいつ出すかタイミングに迷う今日この頃; ̄∇ ̄ゞ

大体会津の方々は描き終えたかなって感じですが
これから新政府ならびに京の方々とかを描かないと
やばいかもって感じになってきてます; ̄∇ ̄ゞ

さてはて物語としては
しょっぱなから悲壮感全快できてますが

幕府に対する私怨を
会津が背負う事となった点は今回触れられてましたが

神保修理の死が
容保の失態を背負ったことで

それがために容保が重く感じた事と
この戦争の悲劇を大きくしたとこでもありますかな


まぁ農民らの暮らしはそんなに描かれてませんが

度重なる重税に加えて
長期戦に持ち込むがために村を焼き払った事で
農民の恨みを買ってしまい

それによって農民が新政府軍に加勢をしたとも
言われていますからねぇ

同じ会津の方々でも
武士と農民とでは思うところは違ったかもしれませんが
それは会津でも武士を中心とした方々とお話ですし

自分の不遇を恨むことなく
自分の信念を貫く事を自負している

と言った印象を強く感じています

投稿: ikasama4 | 2013年6月25日 (火) 00時56分

✥✥✥ピーポ✥✥✥ikasama4様、いらっしゃいませ✥✥✥ピーポ✥✥✥

ヤッタ~。
梶原(夫)だけでなく(妻)までも描き下ろしが・・・。
デラックス楽しみでございます。

会津の人々の充実ぶり・・・。
今回は本当にお疲れ様でございましたね。
とにかく・・・男子陣はザンギリ頭になりますからな
生存者の維新ヴァージョンも大変そうですなあ。
覚馬(後妻)も楽しみです。

新政府や軍人たちが
どの程度・・・描かれるのかも
楽しみですし・・・今度は市民も出てくるでしょうからねえ。

しかし、あくまでマイペースでお願い申しあげます。

響く砲声。そして遠雷。
山本家に迫りくる戦火の表現としては
まずまずでございますよね。
戦闘描写については欲を言えばきりがないですし。

とにかく・・・会津藩が「戦」はなんとかできても
「戦争」はとてもじゃないが無理だった感じは
伝わってきます。

ある意味では新政府軍にとっては
合同演習の色合いがありますからな。
軍事力というものを
磨き上げるための実戦において
会津は適当な標的となってしまったということでしょう。

一方でお家というものが
何よりも優先されてきた時代・・・。
それを守ってきた人たちが
我を失いつつあるということもあると考えます。

そういう意味で神保修理は
お家に殉じたし・・・それが当然のことだった。
しかし・・・お家としては
その死に報いなければならない。
松平容保の苦渋はそこにあるのでしょうな。
いっそ・・・死んでしまいたいと
何度も思ったと考えます。

求心力の芯の心の苦しみですな。

臣のためにお家を守ろうとすればするほど
臣を苦境に追いやっていく。
これは・・・辛いですねえ。

農民たちは
常に「カムイ伝」的要素を持っているわけですが
同様に土着的な
領主と領民の絆も持っている。

仁に篤い殿様には
里のものだって義や忠で応じるのも人間ですからな。

それは日頃の交情とお互いの人柄によって
かわってくるのでしょう。
しかし、全体的には下剋上にむかっていくわけですから
そんなにきれいごとではすまされない面も
あったと思われます。

四民平等になっても会津藩士が去っても
会津の気風が受け継がれているのは
ある意味教育や洗脳や自己同一性の問題となりましょう。

なんといっても歴史に名を刻んだのは
武士たちなんですからねえ。
その中で生き残った人々はやはり教養人で・・・
結局、美化を伝えるのが相場ですし。

戦場のどさくさにまぎれて
いろいろあったことは・・・
風化していくものですしねえ。

結局・・・人々の心にかなった
教えは生き続けるのですな。
いつだって
ならぬことはならぬだろうし
嘘偽りはよからぬこと。
弱いものはいじめないのが当たり前なのでしょう。

まあ・・・なんにしても
おめおめと生き残る人はいるし
生きててよかったってことはございますから・・・。

いよいよ・・・待ちに待った前半のフィナーレ。
日本の夜明け前を正座して待ちたいと考えまする。


投稿: キッド | 2013年6月25日 (火) 02時57分

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