あまちゃん、九段目の土曜日(橋本愛)
最初のフィナーレとも言うべき、九週目の「あまちゃん」・・・。
どん底に落ちたヒロインが立ち直って一週間後のイベントに参加できるかどうかを連日お届けである。
(月)・・・うひ。
(火)・・・腹へった~。
(水)・・・ふっかーつ。
(木)・・・Λ
(金)・・・ΛΛ
(土)・・・楽しかった~。次、いくべ。
加速した第八週から一気に減速。この緩急が実にトレビアンである。
(金)は五月の最終日であり、(土)は六月の初めの一日。
序盤終了の余韻を残しつつ、新たなる展開へのスタートを切る。
オーソドックスでありながら、フレッシュな構成が・・・脚本家の腕の冴えを見せつけるのである。
今週は「おらの大失恋」というタイトルの通りにヒロインの初恋の顛末が描かれるのだが、同時にヒロインのパートナーたちが混乱した事態の収拾に精魂を傾けるストーリーにもなっている。
娘(能年玲奈)に対する母(小泉今日子)、孫娘に対する祖母(宮本信子)も奮闘するが・・・やはりメインはヒロインの親友であり、ライバルでもある彼女(橋本愛)なのである。
その美しすぎて呪われたようなポーカーフェイスの真骨頂が展開していくのだ。
で、『連続テレビ小説・あまちゃん・第9週』(NHK総合20130527AM8~)脚本・宮藤官九郎、演出・西村武五郎を見た。2008年夏、母の故郷・岩手県北三陸市(フィクション)にやってきたアキ(能年玲奈)は心の不安定な母親・春子(小泉今日子)と海女である祖母の夏(宮本信子)の葛藤に翻弄されながら、海女になり、南部ダイバーになり、北三陸のアイドルにまで上り詰める。時は流れて気がつけば2009年の早春。しかし、高校の先輩である種市浩一(福士蒼汰)に告白して失恋し、自転車で海中に特攻をかけたのだった。
月曜日 Get Up (I Feel Like Being Like A) Sex Machine (伊勢志摩)
北三陸鉄道を追い抜くスピードで疾走し、袖が浜の海に自転車ごと身を投げたアキ。
その光景のスピルバーグ監督の名作映画のパロディー演出に「E.T.かっ」とたとえツッコミを入れる漁協の職員・花巻珠子(伊勢志摩)だった。
小林一茶が「やれうつな蝿が手をすり足をする」と詠んだ時に「DV男の愛人か」とツッコミを入れるようなものである。・・・たとえが分かりにくいわっ。第一、蠅を擬人化している時点でたとえツッコミ成立してるだろうがっ。
海から引き上げられたアキをおもてなしする海女クラブ一同。
孫がかわいくて仕方ない夏ばっぱは大慌てで駆けつけるのだった。
自分の発言を解説する珠子に・・・理解力のないアホの子であるアキはさらに哀しみを募らせ大号泣した後で発熱するのだった。
「アキが失恋して自殺未遂・・・風引いて寝込んで学校休む」の知らせは海女クラブ→漁協→北三陸鉄道のルートで伝播し、大吉(杉本哲太)の関係者一斉メール送信によって完全に人々の知るところとなるのである。
喫茶リアスでは春子が看病のために早退する。
すっかり謎多き男・ミズタク(松田龍平)に心奪われたらしい熊谷美寿々(美保純)は囁く。
「失恋なんてロマンチックよねえ・・・だって失恋しないと新しい恋が始められないでしょう」
「とにかく・・・ここだけの話にしてよ」と春子。
「アキちゃん・・・失恋したんですって」と喜々として飛び込んでくるストーブ(小池徹平)だった。
北三陸駅の恋多き構内ではアキと連絡がつかず、潮騒のメモリーズのデビュー一週間前なので気が気ではないユイ(橋本愛)が大吉に事情を問う。
「風引いて寝込んでるって話だ」
「だから・・・返信来ないのか」
「ユイちゃんも気をつけてくれよ。ま、ユイちゃんは海には飛びこまないと思うけんど」
「ええっ・・・なんで」
「失恋したってことだ・・・」
何かひどい目にあったような気がするアキはいてもたってもいられないのだった。
幼子のように裸足で表に出ようとするアキに夏ばっぱは綿入れを着せかける。
しかし、それを振り払って立ちあがるアキのリフレイン。
「ジェイムズ・ジョセフ・ブラウン・ジュニア(1933-2006)かよっ」とたとえツッコミをいれる珠子だった。ジェームズ・ブラウンと言えば「セックス・マシーン」(1970年)である。
ゲロッパ
ゲロッパ
勃起だよ
おっ立ってるよ
セックスする機械みたいな気分だよ
俺は感じるぜ
お前も感じるだろうが
この世に生まれて来たってことをさ
俺のやり方でやりまくれ
ケツをゆさぶりまくれ
ゲロッパ
ゲロッパ
こんな歌ですが1992年にCMでお茶の間にファンク旋風を巻き起こしたのである。
ファンクの帝王から犯罪者へ・・・そして復活。乱高下する彼の人生とアキの心の見事な対比である。
海女クラブではアキの失恋話が盛り上がる。
なにしろ、海女クラブにとってアキは宝物なのである。
かつ枝(木野花)が「それにしても種市くんは最近では珍しい好男子と思っていたのにな」と言えば、弥生(渡辺えり)が「種市の野郎、しめないとなんないべ」と凄むのだった。
そして、出会いと別れの駅構内では種市を待ち伏せたユイが絞めにかかるのである。
「ちょっと、ちょっとなにしてくれてんのよ・・・アキちゃんがどうして海に落ちたと思っているの」
「・・・若さ」
「キーッ」である。
喫茶「リアス」では大吉たちが固唾を飲んで成り行きを見守る。もちろん、吉田(荒川良々)もなんとなく通りすがるのを忘れない。
「アキちゃんに・・・なんて言ったの」
「ユイと付き合っているから付き合えないって」
「ちょっと待って・・・誰が付き合ってるって・・・」
「俺とお前・・・」
「違うでしょ・・・付き合ってないでしょ・・・付き合うのは東京行ってからって言ったでしょ・・・あれは予告っていうか・・・予報でしょ・・・一週間後にはつきあうことになるでしょうっていう」
「そんなこと言ったって・・・」
ユイは自分の誤算に目がくらむ思いだった。
アキが失恋して・・・ショックを受けるのはお座敷列車のイベントが終わってからでなければならない・・・。
しかし・・・口が軽い男のことを失念していたのは・・・大失敗だったのだった。
とにかく・・・なんとかしなければ・・・と唇をかみしめるユイだった。
盗み聞きしていた人々はすべての事情を把握したのである。
アキは天野家の囲炉裏端に固まっていた。
帰宅した春子は猫なで声で話しかける。
「ストーブさんのことを笑えないぞ・・・囲炉裏の前から動かないのは・・・い・・・い・・・いろりちゃんだぞお」
「うひ」
思わず母にあやされかかるアキ。
「ほら・・・笑った」とすかさず云わずには居られない春子だった。
あわててふさぎこむアキである。
「お母さん、なんか作るね・・・」
内向的な子供を育てた春子である。その扱いは一応心得ているのである。
「何があっても・・・お腹が減るんだよね・・・そんで焼きそば食べると歯に青のりがつくんだよね~」
母の言葉に焼きそばを食べたり、食べるのをやめたりするアキである。
「でも・・・早く治さないとお座敷列車で歌えないよ・・・」
「おら・・・やりたくねえ・・・歌ったり踊ったりする気分じゃねえもの!」
「そう・・・それならそれで別にいいけど・・・お母さん、反対だしさ・・・でも・・・みんな、楽しみにしてるんだろうねえ」
春子も矛盾した心情を吐露する。我が子がちやほやされるのは憎らしいのだが・・・我が子の可愛いところも見てみたいのである。
痛いところをつかれて・・・アキは重い口を開くのだった。
「おら・・・先輩に告白しただ・・・正式につきあってけろって・・・そしたら・・・先輩には好きな人がいて・・・」
「ユイちゃん・・・」
「もう、付き合ってるって・・・バリバリ付き合ってるって言われた・・・」
天野家の玄関にはユイが仁王立ちしていた。
火曜日 私たちの職場恋愛をたまたまにしないでください(安藤玉恵)
敵だ・・・敵がやってきた。
ドテラ(褞袍)モードのアキは制服姿のユイを突破してウニ丼製造工場に祖父・忠兵衛が船出した時の祖母・夏の真似をして立てこもるのだった。
大好きだった先輩を親友のアキちゃんに盗られちゃったからである。
「あのね・・・アキちゃん・・・私たち・・・つきあってないの・・・あれは先輩の勘違いなの・・・ごめんなさい」
「あやまることないじゃん・・・ユイちゃんは何も悪い事してないんだから・・・たまたま、種市くんにとって、アキよりユイちゃんの方が魅力的だっただけなんだから・・・この年で初めての失恋なんて・・・それこそ、どうかしてるんだし・・・」
アキの傷心に塩を摺りこむ容赦ない悪魔のような母だった。
春子はユイにも焼きそばを振る舞うのだった。
「私・・・彼氏とか必要ない子なんですよね・・・だから、ウキウキしているアキちゃんが腹立たしかったっていうか・・・嫉妬してました。それに・・・なんで私じゃなくてアキちゃんなんだろうと思ってたし・・・先輩はちょっと格好良かったし・・・東京に行くって言うし・・・」
「ああ・・・東京に彼氏が欲しかったんだ」
東京を崇拝するユイの心情を察する春子だった。
「でもね・・・大丈夫だよ・・・さっき、ユイちゃんを突き飛ばしていったでしょ・・・あんなに悔しい気持ちを見せたアキは初めてなの・・・アキも強くなったなと思うんだ」
娘の闘争心に喜ぶ親バカな元ヤンキーの春子だった。
その頃、アキは食べかけた焼きそばを食べ残したことで頭が一杯だった。
「ハラ減った~、はらへったあ~」
寝ながら駄々をこねるアキ。
「アキちゃん・・・帰るね・・・早く元気になって」
意地でも答えない、絶対顔も合わせないアキだった。
て、敵のくせに・・・。う、裏切りもののくせに。心で唸る手負いの獣である。
二日後、漸く登校を再開したアキだったが、電車の中で「おはよう」と挨拶するユイを完全無視するアキだった。
意地でも答えない、絶対顔も合わせない、ましてや同席なんてしないアキなのである。
関係修復に絶望するユイだった。このままでは・・・デビューの舞台が台無しなのである。
喫茶リアスでは大吉が血相を変えていた。
「そ・・・それはどういうことですか・・・」
「だから・・・お座敷列車にはアキは乗らねえと・・・」と夏ばっぱ。
「じぇじぇーーーーっ」
観光協会では「太陽にほえろ!」サントラよりサスペンスM1が薄いB.G.M.で流れていた。
ブラインドを押し下げて外の様子を伺う吉田。
薄暗い室内には大吉、ストーブ、保(吹越満)、栗原しおり(安藤玉恵)ら腹黒い大人たちが種市を拉致し、軟禁しているのだった。
「君がノーと言えば・・・ローカル鉄道の未来が閉ざされるんだ」と大吉は鉄道模型を凶器として種市を恫喝する。
「自分の気持ちに嘘はつけません」
哄笑するどす黒い大人たち。
「君の気持なんてどうでもいいんだよ」と吉田。
「アキちゃんはめんごいべ」とストーブ。
「この男は今でもアキちゃんが好きなんだよ。好きなんだけどどうにもならなくてたまたま職場恋愛で栗原ちゃんとつきあってる。その彼が君とアキちゃんの恋を応援するって言ってるんだ・・・察しろ」と保。
「たまたまじゃないから」としおり。
「すごい・・・赤字が出ちゃうんだ・・・赤字覚悟で準備したイベントなのに・・・中止になったらもう・・・とんでもない赤字なんだよ・・・つぶれるよ・・・北鉄・・・君のせいでつぶれちゃうよ」と大吉。
「ずぶんは・・・天野を傷つけちまった・・・天野は不器用でバカだけど・・・人の本心を見抜く動物的な勘があります・・・ずぶんにはもう無理なんです」
「・・・中止か」と一同が肩を落とした瞬間。
ユイと父親の功(平泉成)がやってくる。
「私、一人でもやりぬきますから・・・中止にしないでください」
父親「娘のミス北鉄としての自覚を欠いた行動については正座して詫びたい。ただし、土下座をするほどではないと思う。しかし・・・そのために北鉄が廃止に追い込まれるようなことになったら議員を辞職する覚悟だ」
つまり、覚悟はあるが辞職はしないのである。
こうして・・・ユイに対する歌唱指導係・弥生の猛特訓が再開された。
「だめだ・・・そんなことではお客の心はつかめねえ」
「あの・・・うちの子は誉められてのびる子なんです」とユイの母・よしえ(八木亜希子)が嘆願する。
「大丈夫・・・たたかれてものびるから・・・」と必死だが無表情なユイだった。
「もっと、感情を表現して・・・」
私のお墓の前で
私のお墓の前で
泣かないでください・・・
抜け目なく観察していたミズタク(松田龍平)はこっそり様子を伺うアキに気がついて喫茶「リアス」から出てくるのだった。
「やあ・・・入らないのかい・・・面白いよ」
「・・・」
「君の動画見たよ・・・ウニを取ってる奴・・・浅瀬でやっているのかと思ったら結構、沖に出てるんで驚いた」
「あれは・・・本気獲りの日だから・・・」とあの日の興奮を思い出すアキ。
「そうなんだ」
「夏になったらまた潜るんで蛇口さんも見に来てけろ」
「惜しい・・・蛇口から出る方だよ・・・水口です」
「ふひぇひぇ・・・」と一瞬、笑顔を取り戻すアキ。
「東京から来たんだって・・・東京のどこ・・・」
「・・・世田谷」
「世田谷のどこ・・・」
「東京の話はいいです・・・東京へ行くなんてバカのすることだ・・・そんな奴は浅草寺の鳩に襲われて食われちまえばいい」
「それって・・・誰のこと」
アキの脳裏に浮かぶ種市先輩の面影。
そこへ・・・本人登場である。
「あ・・・俺、煙草買いにきたんだっけ」と如才ないミズタクだった。
「アキ・・・」
「・・・はい」
ユイには口を開かなかったのに種市には応じるアキだった。
女の敵は女なのである。
「・・・東京の住所さ・・・」
ああ、敵だ。種市先輩も敵なのだ。
「ごめんしてけろ・・・」とつらい現実から逃げ出すアキだった。
アキのアホの子手袋に一部愛好家釘付けの名場面である。
春子が思うほどにはアキは強くなってませんから~とツッコミを入れる夏だった。
ユイの熱唱する「潮騒のメモリー」が虚しく響く駅の構舎だった。
来てよ その火を 飛び越えて
砂に書いた アイ ミス ユー
水曜日 地獄さ落ちろと思っただ(能年玲奈)
アキの心のケアについて話し合う夏と春子の母娘。
「男と女のことだからなあ・・・」と見守る姿勢の夏。
「本当は地味で暗くて向上心も協調性も存在感も華もない子なんです」とポジティブな母親の裏の顔をのぞかせる春子だった。
「よくもまあ・・・娘の欠点をそんなにスラスラと・・・」と呆れる夏だった。
お座敷列車イベントの二日前・・・再び引き籠るアキなのである。
そんなアキの秘密の部屋に食事を届ける春子。
「ごはん・・・ここにおくわよ」
「いらね」
しかし・・・小動物の目付で様子を伺うアキ。
忍び足でドアを開け、置かれた食事に目を輝かせる。
それをニヤニヤ見ている春子。
「いらねったらいらね」と反抗するアキだった。
えげつないよ、春子えげつないよ。
かわいいよ、アキかわいいよの応酬である。
しかし・・・大人たちの世界ではパニックが巻き起こっていた。
「キャ、キャンセルが止まりません」と大吉に悲しいお知らせを届けるストーブ。
「キャンセル待ちのお客さんにまわせばいいべ」
「キャンセル待ちのお客さんよりキャンセルのお客さんが多いし、キャンセル待ちをキャンセルするお客様もおキャンセルなんです」
「やはり・・・アキちゃんじゃないと・・・」
その一言を無表情に聞くユイ。
ストープとユイは春子に訴えるのだった。
「でも・・・あたしの云うことなんか・・・あの子きかないもん」
「お母さんは・・・アキちゃんの歌を聞きたくないんですか・・・」
「いやいや歌われてもねえ・・・あんたたちが心から仲直りして・・・楽しく歌ってくれるんだったら聴きたいけどなあ・・・」
「・・・」
春子はユイを挑発するのだった。
アキはのんびと自宅ライフを満喫しながら干し芋を食べようとしているのだった。
そこを急襲するユイ。
「ごめん・・・最後にするから・・・云いたいことを云おう」
「おら・・・云いたいことなんかねえ・・・干し芋食うんだ」
天野家を逃げる小動物のアキ。獲物を追う狩人のユイだった。
「私、アキちゃんがちやほやされて・・・アキちゃんにむかついてた」
「・・・」
「彼氏ができたと聞いて頭にきてた」
「・・・ユイちゃんは種市先輩のこと・・・好きじゃないの」
「わからない・・・」
「そんな・・・私は本当に種市先輩のこと、好きだったのに・・・」
「だから・・・最初は断ったんだ・・・でも東京の彼氏と遠距離恋愛してみたかったし・・・」
「じぇじぇ・・・」
買い物帰りの夏は家に入りかねて外から様子を伺っている。
そこへ呼び戻された春子が到着。
「どうしたのよ・・・」
「ユイちゃんが来てる・・・」
「・・・」
「入んなよ・・・二人ともナーバスになってるから・・・」
修羅場が苦手な夏は春子を残して逃亡するのだった。
ついに本音中の本音を語るユイ。
「本当は・・・アキちゃんと同等か上にいないと我慢できない性格なの・・・ごめんね」
「ははは・・・」と乾いた笑いをもらすアキ。
「ユイちゃんが・・・そんなこと考えてたなんて・・・思ってもみなかった・・・」
「・・・」
「おら・・・長い夢から覚めたみたいだ・・・」
「夢・・・」
「こっちゃさ・・・来てからアキアキって可愛がられて・・・おら調子にのってただ・・・先輩がユイちゃんと付き合ってるって聞いた時も、ユイちゃんが憎くて悔しくて・・・地獄に落ちろって思っただ・・・でも考えてみれば・・・おらとユイちゃんは比べるまでもねえ・・・おらなんか・・・地味で暗くて向上心もねえ・・・あと・・・なんだっけ・・・ママが云ってたんだけど・・・」
アキの心の傷に今、気がついた春子は辛抱たまらず現場に乱入するのだった。
「そんなこと忘れなさい。アキは地味じゃないし、暗くないし、向上心も、協調性もあるんだから・・・あんたは変わったんだから・・・」
「あ・・・協調性だ・・・」
「いいのよ、悔しかったら呪えばいいの・・・地獄に落としてやればいいの・・・とられたら・・・とりかえしなさい・・・それでもあんたたちは変わらない・・・二人ともいい子だし、バカだし、子供なんだから・・・」
もう勢いでごまかす気持ち満々の春子だった。
子供たちは大きな子供に叫ばれて大人になるしかないのだった。
「私・・・なんか作る・・・二人とも食べなさい」
アキとユイの切れた絆は再び繫がった。
「ねえ・・・どうする・・・潮騒のメモリーズ」と本題に入るユイ。
「・・・」しかし、即答はできないアキだった。
「じゃ・・・とにかく・・・学校には来なさいよ・・・明日は卒業式なんだから」
種市先輩との別離の日である。アキは漸く頷くのだった。
その頃・・・ストーブはアキのファン一号として・・・アキを愛した男として・・・ただの男として・・・種市を呼びとめていた。
イベントの看板を描く人手が足りなかったのである。
観光協会プラスワンはお座敷列車イベントの看板作製のため・・・徹夜で作業を続けるのだった。
そして・・・翌朝・・・アキは・・・出来上がった看板を見上げて決意する。
「ユイちゃん・・・おら・・・やるだ・・・」
「え・・・」
「お座敷列車さ乗って、潮騒のメモリー歌って踊るだ」
「じぇじぇーっ!」
無表情のまま、方言に戻るほど驚くユイ。完璧なキャラクター造形である。
「やらないわけにはいかないべ」
ストーブの真心が今、アキに届いたのだった。
教室では三年生が磯野先生(皆川猿時)に別れを告げる。
「お前たち・・・卒業しても遊びに来いよ・・・って毎年云ってるけど誰も遊びに来ねーっ」
「御指導、ありがとうございました」と卒業生を代表してお礼の挨拶をする種市先輩を見つめるアキ。
「天野・・・」
「先輩・・・」
何故か、ペンキで汚れている種市の差し出した手を見て・・・可笑しくなるアキだった。
二人は仲直りの握手を交わすのだった。
一件落着・・・と安堵したユイ。デビューの舞台は整ったのだ。
そんなユイの元に届く不審な声。
それは何者かと電話で話すミズタクだった。
「ええ・・・一応、席は用意しておいたので太巻さんにはそう伝えてください・・・僕もムービーを回しますけどね・・・二人ともキャラはいいんです・・・問題があるとすれば歌唱力ですかね・・・可能性・・・五分五分ですね・・・母親のガードが固くて・・・訛ってる方です・・・」
ミズタクの正体にピンと来たユイだった。
木曜日 ハッとしてGood来たならトシちゃんです(福田萌)
いよいよ、北三陸鉄道開業25周年記念イベント・・・潮騒のメモリーズのお座敷列車出発進行の当日がやってきた。
しかし・・・朝。午前六時に父親に駅に送り届けられたユイはそのまま消息不明になってしまったのである。刻々と迫る出発時間なのだった。
午前八時・・・続々とつめかける乗客。
岩手こっちゃこいテレビの情報番組「5時だべ わんこチャンネル」の司会者・福田萌(福田萌)はホームで出発の時を待つ、お座敷列車の完全密着取材を敢行中である。
改装費一千万円で売上百万円では赤字じゃないかというお茶の間の皆様もいるだろうが、一度改装すればお座敷列車は団体貸し切り列車として運行が見込まれているのである。本日満員御礼が出れば宣伝効果は抜群で充分に成算があるのだった。
福田萌はスタンバイしているアキの元へ。
「体調不良のために・・・参加が心配された海女のアキちゃんでしたが・・・無事体調も回復して本番に間に合いました」
「海女のアキです・・・御心配かけてごめんしてけろ」
「アキちゃんは今日限りで引退するそうですね」
「はい・・・普通の女の子に戻ります・・・でも、夏になったら海女をやるので会いに来てけろ」
「キャンディーズからの蝉宣言のアキちゃんでした・・・分る人には判るたとえツッコミでした~」
しかし・・・肝心のユイが来ないのだった。
娘が行方不明だというのに立場上謝罪するしかない足立夫妻である。
ストーブも岩手こっちゃこいテレビのディレクター・池田(野間口徹)に頭を下げるのだった。
「すみません・・・もうすぐ到着すると思うので」
「気にしないでください・・・まだ出発まで二時間ありますから」
鷹揚なところを見せる池田だった。
夏たち海女クラブが総出で作ったウニ丼も到着。
最前列に陣取ったヒビキ(村杉蝉之介)たち熱狂的なファンへのインタビューも収録される。
「最初からのファンだそうですね」
「ユイちゃん押しです」
しかし、ユイはまだ姿を見せない。
午前八時。
「どうなってんの」と突然、キレ出す池田だった。
そこへ・・・キャンセルされ忘れたらしいピンチヒッターのものまね芸人・原俊作(原俊作)が到着する。
「あんた・・・誰・・・」
「田原俊彦です」
「どうすんだよ・・・一時間切っちゃったよ」
「アキちゃん・・・昨日、ユイちゃんに変わったところはなかった・・・」
「さあ・・・あ・・・」
突然、叫ぶアキ。そして何やらポーズを決める。
「潮騒のメモリーズのポーズを決めましたっ」
さらにキレる池田だった。
「ちょっと表に出ようかっ」
「なんだよっ」と眠れるヤンキー魂に着火しかかるアキだった。
「パソコンで・・・太巻き寿司のこと調べてました・・・」としおり。
「寿司を食べに行ったのか・・・」と保。
「いや・・・それはちょっと・・・」とストーブ。
そこへ大吉がやってくる。
「もう準備整っちゃった・・・どうしよう・・・中止にしようか」
「駅長・・・」
「そんな・・・」
「お客さんが一杯きてくれて・・・やってもやらなくてもいいような気になってきた・・・もう祭りだべ」
「黒字ハイだ・・・」
「しかし・・・中止となれば・・・払い戻しが・・・」
ついに・・・出発時間の九時を回る。
「中止か・・・」
「いや・・・おら一人でも頑張る・・・ユイちゃんはきっと来る・・・だっておらたち約束したんだ」
そこでユイからの着信が・・・。
「ユイちゃん」
「アキちゃん・・・」電話の向こうのユイは消え入りそうな様子である。
「どうしたの?」
「驚かないで聞いてね・・・昨日電話で話をしているのを聞いたの・・・芸能事務所のスカウトが来ているの」
「誰なの・・・」
「勉さん・・・」
「じぇじぇっ」
思わず琥珀掘りの勉(塩見三省)を見るアキ。見られて驚く勉だった。
「・・・の弟子のミズタク・・・いるでしょ」
「・・・うん」
「私たちキャラはいいけど歌唱力に問題があるって東京のプロデューサーみたいな人に報告してた・・・私・・・こわい」
すべてが理解できなくても事情を動物的な勘で察したアキ。どうやらユイはビビっているらしいと気がついたのだ。
場所を変えて一人になり・・・ユイを説得するアキだった。
「こっちにくれば・・・みんな集まって楽しいよ」
「お腹が痛い・・・とても楽しめない」
「ユイちゃん・・・前におらのこと怒ったべ。思い出作りだけじゃないって・・・でも・・・おらは思い出作りたい・・・ユイちゃんと楽しい思い出作りたい・・・それじゃ・・・ダメか」
「わかった・・・行く」
無表情のまま・・・苦悩からの解放を演じるユイ・・・見事である。
「どこにいるの・・・どのくらいかかる」
しかし、ユイは目の前のトイレから颯爽と登場し、付き人にコートを投げ渡すのだった。
ゲロッパ
ゲロッパ
二人は手をつなぎホームへと走り出す。
「今、二人がそろってやってきました・・・」と実況する萌。
ユイとアキを歓声で迎える乗客たち。
「ミス北鉄のユイちゃんです」とアキがユイを紹介。
「海女のアキちゃんです」とユイが返す。
「二人揃って潮騒の・・・メモリーズで~す」
~~λλ~~と波うたせた指でМを作る二人だった。
出発するお座敷列車を笑顔で見送る春子。
ホームにはトシちゃんが残されていた。
見送りの客たちに「トシちゃですよ・・・」とフォローする春子だった。
一応・・・トシちゃんとキョンキョンの夢のツーショット成立なのである。
金曜日 行け!走れ!南部ダイバーからの潮騒のメモリー・・・かたく腕を組んで(大方斐紗子)
大盛況のお座敷列車はアニソンヲタも鉄ヲタも殺すキラーアイテム「THE GALAXY EXPRESS 999」のメロディーにのって往路を疾走する。客層はファミリーあり、高齢者あり、おタクありでアキとユイの幅広い年齢層からの支持を物語る。
思わず荷物棚に頭をぶつけて苦笑する時もポーカーフェイスのユイだった。
車窓には第一話でアキを魅了したリアス式海岸の風景が広がる。
「リアスの海が見えてきました」
「絶景ポイントなので記念撮影をどうぞ」
コンビネーションも抜群の潮騒のメモリーズだった。
まさに第一部のフィナーレの趣きである。
夏と海女クラブの面々はウニ丼300個の量産を終えて息も絶え絶えだった。
春子は定員オーバーの喫茶リアスで切れかかっていた。
ミサンガまでも売り切れて海女クラブに手間賃倍の追加発注が出た。
勉は「じぇっ」と叫び、美寿々はオーバーワークでナチュラル・ハイになりニヤニヤしていた。
そして・・・お座敷列車は折り返し点の「畑野駅」(フィクション)に到着する。モデルとなっている北リアス線には田野畑駅があります。
ここで・・・潮騒のメモリーズの二人は衣装チェンジをするのだった。
ユイは可愛い帽子を被り、アキはバカリボンを頭に装着する。
「どうかな・・・わからなくなっちゃった」
「ユイちゃんは似合ってる・・・問題はおらだ・・・これ・・・アイドルか」
「・・・」
アイドル・・・女芸人の中間域を彷徨うアキだった。
「そろそろ・・・出発するよ」
呼びに来たマネージャーのストーブに衣装チェックを求めるアキ。
「どうだべ」
「・・・」
「き、兄妹そろってなんだべ~」
ノリノリのコント終了後、復路はじゃんけん大会やゲーム大会、そしてカラオケ大会で盛り上がるお座敷列車。
そして・・・ついに「潮騒のメモリー」(一部披露)である。
北へ帰るの 誰にも会わずに
低気圧に乗って 北へ向かうわ
彼に伝えて 今でも好きだと
ジョニーに伝えて 千円返して
振付も可愛いし、歌割も楽しいのだが・・・完全版はいつ見せてくれるんだよっ。
こうして・・・北三陸駅・畑野駅間を三往復・・・お座敷列車は大盛況のまま・・・幕を閉じた。
「わははははははははははは」と笑いの止まらぬ大吉だった。
関係者一同は死屍累々を駅舎にさらすのだった。
そこへ到着する海女クラブ一同。酒とつまみの一斗缶をかかえて・・・「打ち上げの宴会列車」を臨時で運行しろと大吉に詰め寄るのだった。
「おらたちにも飲ませろ・・・」
「アキとユイの歌をきかせろ・・・」
そこへ・・・アキとユイが乗り遅れた鈴木のばっぱ(大方斐紗子)を連れてやってくる。
「孫に切符買ってもらったのに・・・もたもたしていたら乗り遅れた」
鈴木ばっぱは初回にも登場した北三陸市の人である。
演じているのは監督・高畑勲、作画監督・大塚康生、原画・宮崎駿(他)という豪華トリオの劇場アニメ「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968年)の主役・ホルスの声優の人なのだった。ちなみにヒロインのヒルダは市原悦子が演じています。
「大先輩なのでおらたちからも頼むだ・・・」
アキとユイから頼まれたら拒めない大吉はまたしても第三セクターの意地を見せるのだった。
すかさず・・・大吉は春子も乗車させ・・・お座敷列車は宴会場へと早変わり。
本職の運転士の方だけは参加できない不条理がここにあります。
そこへ・・・ユイが呼び寄せた種市先輩が登場。
「呼ばない方がよかった?」
「先輩~、早くのってけろ~」
微笑む種市だった。
トシちゃん相手にすっかり「うける~」などといって「まほろ駅前番外地」(テレビ東京)の登場人物と化していたミズタクも正気に戻って乗り込んでくるのだった。
スカウトマンかもしれないミズタクの登場に緊張するユイ。
「ユイちゃん・・・大丈夫?」とユイを気遣うアキ。
「アキちゃんと歌うのも・・・これが最後だもの」と気丈に振る舞うユイ。
大吉と吉田の「ゴーストバスターズ」熱唱を前座として・・・ついに春子の前で「潮風のメモリー」が披露されるのだった。
とぎれとぎれに流されるのだが気がつけば歌えるようになっている人は多いはずである。
コチラでためしてみてください。
置いていくのね さよならも言わずに
再び会うための 約束もしないで
北へ行くのね ここも北なのに
寒さこらえて 波止場で待つわ
やがて・・・列車は折り返し駅に到着。
「どうだった?」と夏と春子に問うアキ。
「おらにはわかんね・・・春子さ訊け」
「今まで一番良かったよ・・・」
そこへ・・・種市がやってくる。
「ずぶんは・・・ここから宮古に出て仙台から新幹線で上京します」
「先輩・・・」
「天野・・・元気でな」
遠くから見守るユイだった。
♪白い鴎か 波しぶき 若い血潮が 躍るのさ
突如、思い出のこもった「南部ダイバーの歌」を歌い出すアキ。
♪カップかぶれば 魚の仲間 俺は海の底 南部のダイバー
合唱する種市先輩だった。
アキの初恋は終ったのだった。
ストープが「まもなく発車します」と別れを急かすのである。
複雑な表情のユイにミズタクが囁く。
「歌、良かったよ・・・」
たちまち、緊張で蒼ざめるユイだった。
窓から身を乗り出したアキは叫ぶ。
「先輩~、またな~」
来てよ その川 乗り越えて
三途の川の マーメイド
友達少ない マーメイド
マーメイド 好きよ・・・
いま万感の思いを込めて・・・汽笛が鳴る。
いま万感の思いを込めて・・・汽車が行く。
ひとつの旅は終わり、また新しい旅立ちが始まるのだった。
土曜日 去年よりずっときれいになった春(山谷花純)
2009年度の新学期が始った。
お座敷列車のイベントは潮騒のメモリーズの人気を不動のものとした。
岩手県民なら誰でも知っているジモドル(地元アイドル)となったアキとユイ。
しかし、アキは芸能活動を忌み嫌う春子との約束に従い普通の女子高校生に戻ったのである。
訪れるファンのために復帰を願う大吉の下心を鼻で笑う春子だった。
アキの人気は意外なところにも現れていた。
北三陸高校潜水土木科の新入生に女子が八人も出現したのである。
そんなにたくさんの女子生徒と対峙したことのない磯野先生は思わずおねえになってしまうのだった。
新入生たちの中にはアキに握手を求めたり、ミーハー丸出しの女生徒もいた。
桜庭(山谷花純・・・「リセット〜本当のしあわせの見つけ方〜」で坂井真紀の少女時代役)などは「あ、ゴキブリ」と言ってアキに「じぇじえっ」と叫ばせ、「本当に訛ってる」ことを確認したりするので油断ならないのである。
他に坪井(久野みずき・・・「帰ってきた時効警察」で関取とあだ名された三日月しずかの中学生時代役)などは体格もいいのだった。
そんな普通の女子高生になったアキだったが・・・秘密の部屋にはお座敷列車のメガホンやホイッスル、潮騒のメモリーズの写真など潮騒のメモリーズのメモリーが飾られている。
種市先輩とのその後は不明だが・・・親友のユイとは秘密の部屋でお気に入りの飲料パピーを飲みながらおしゃべりする仲である。
ユイは芸能プロデューサーの太巻こと荒巻太一(古田新太)とミズタクとの怪しい関係をアキに話してみる。
「アメ横女学園芸能コースをメジャーデビューさせ、デビュー曲『なみだ目セプテンバー』は60万枚超のスマッシュヒット、 セカンドシングル『空回りオクトーバー』、 カップリングの『肌寒いノーベンバー』はドラマの主題歌に、 『暦の上ではディセンバー』で初のミリオンを達成・・・」と教科書を朗読するように訛りつつ読みあげるアキだった。
「そこまで読めばピンと来るでしょ?」
「わかんね」
「スカウトマンなのよ・・・ミズタクはスカウトしに来たのよ」
「まさか・・・」
「私たちのこと・・・キャラはいいけど・・・歌唱力が問題あるって言ってた」
「めちゃくちゃ怪しいでねえか」と何故か食いつくアキだった。
自分の歌唱力は気になるらしい。
「どうする?」
「どうもこうも関係ねえ・・・おらはアイドルじゃねえし・・・」
無表情のまま、複雑な気持ちを示すユイだった。ものすごいアクロバットを展開中だな。この後もユイは無表情で笑い、無表情でキレるのである。
「そうだねえ・・・」とお茶を濁すユイ。
ユイはアキを必要としている自分とそうではない自分とが葛藤しているようだった。
「でも・・・あの日は楽しかった・・・」
歌い出すアキ。たちまち、二人はあの日に帰って行く。
潮騒のメモリーズだったあの日に・・・。
海女クラブでは海女の集いが開かれていた。
何故か・・・美寿々はミズタクを同伴してきて・・・アキの表情には一瞬、警戒心が浮かぶ。
話題はウニ一個500円のうち、漁協が200円、観光協会が200円搾取するので海女の手取りが100円しかないというもの。
シーズンの間にウニを一個しか獲れなかったアキは年収100円の女なのである。
組合長(でんでん)が弥生に首を絞められる騒ぎの中・・・夏ばっぱはアキに意見を求める。
「待ってるお客さんのために・・・なんか休憩所があったらいいと思ったべ」
「海の家みたいなもんか」
「海の家だと夏の間だけになっちまう・・・フルシーズンの海女カフェがいいべ」
「海女カッッフェかっ」
アキの発案に盛り上がった海女たちは観光協会に押し掛けるのだった。
そして保の自慢のジオラマに手作り海女カフェの簡易模型を配置するのだった。
「海女カフェ作ってけろ・・・」
「そんなこと言っても予算が・・・」としり込みする大吉。
「アキとユイの人気で稼いだ金の半分は北鉄のもんだが・・・半分は海女クラブのもんだべ・・・いくら稼いだ」と詰め寄る弥生。
「海女カッフェ、海女カッフェ」のシュプレヒコールの波が通り過ぎていくのだった。
そんな土曜の昼下がり、ミス北鉄のユイは一日駅長の任についている。
しかし、その顔は無表情だが物憂げだった。
「ユイちゃんも相変わらずすごい人気だね」とお愛想を云う春子。
「田舎の女子高生だから・・・珍しいという希少価値がある今だけですよ・・・東京にいったら私は珍しい存在じゃありません」
アキに芸能活動を許さない春子に苛立ちと不信感を抱いているユイなのである。
「どうしたの・・・ユイちゃん」
春子は防衛本能が発動して前もって弁解口調になるのだった。
「別に・・・」
他人なのに似た者同士のユイと春子の間に緊張が走る。
その緊張は・・・末席にいたミズタクに飛び火するのだった。
「っていうか・・・なんなのよ・・・こっそりカメラを回したり・・・様子を伺ったり・・・一体、私をどうする気なの?」
ついにミズタクの正体に噛みついたユイだった。
不意をつかれて・・・とまどうミズタク。
新しいドラマの幕開けなのだった。
関連するキッドのブログ→第8週のレビュー
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コメント
朝ドラ初心者なので起承転結も序破急の構成も本来なら全く知らずどうやら朝ドラは土曜日に週のまとめをするんだなとボーっと感じるのが関の山だったと思いますが
キッドさんのおかげで構成に意識がいくようになり
曜日より月にこだわり5月31日にまるで最終回でもいいくらい綺麗に話をまとめてきたことに なんかすごく感動しちゃいました
金曜日の回はもう繰り返し繰り返し見ちゃってます(^^)
999のメロディーで三陸鉄道を走る列車の姿を見るだけでテンションが上がりまくっちゃいますが
とても15分とは思えない見所満載の回
お座敷列車に乗っている人たちの笑顔を見ては泣け なぜか母親の眼差しのキョンキョンに泣け
種市先輩が片道で降りて車窓から手を振るアキの姿
爽やかで本当に可愛いかったです
最後に
好きよ~♪で終わるのもすごくいいですね
爽やかで幸せな光景
いつまでも心に焼き付けておきたい素晴らしい回でした
投稿: chiru | 2013年6月 2日 (日) 16時36分
お茶の間の皆さまは構成などを気にせず
ひたすらお楽しみになられるのがよろしいわけですが
なんでこんなに面白いのか・・・
と問われればある程度仕組みについて応えるしかないのでございます。
もちろん、脚本家はある程度
構成を意識するわけですが
キッチリと組み立てる人と
ノリで書きすすめる人がいます。
クドカンはある程度、構成して
後はノリで・・・というタイプだと推察してます。
なにしろ・・・これだけ魅力的な
登場人物がすでにひしめいているので
交通整理も大変だと思われますぞ~。
朝ドラマは三本でおよそ45分。
これは民放の一時間ドラマのしゃく(時間)なのですな。
二分割で言えば
週六本は一時間ドラマの前後篇、
あるいは二時間ドラマのしゃくとなります。
(月)~(水)は失恋後に・・・アキが立ち直り
ユイや種市先輩と関係を修復する話。
(木)~(土)はイベント当日の騒動と後日談をベースに
アキと種市のせつない別れ
アキとユイの友情の復活
アキと春子の母娘関係の進化と成長
そして町おこしという地域の活性化そのものの成否。
その中でいつの間にか中心となっているヒロイン。
こういう様々な要素を(金)のクライマックス(最高調)に
つめこんだところがミソなのですな。
そして(土)はエピローグと新たなるイントロダクションをさりげなく織り交ぜる。
まさにテキストにしたいくらいの構成になっています。
最初の二ヶ月が、二番目の四週が、そして今週の出来事が(金)に流れ込んでくるわけですねえ。
だから・・・深いし・・・そして、楽しい。
もう、大吉気分で万歳三唱するしかありません。
本当の歌詞は
好きよ~ 嫌いよ~
なのに
好きよ~で〆る・・・おしゃれですよねえ。
本当の幸せは少しさびしいもの・・・。
そういう「感じ」がございますねえ。
キッドは紅白で
アキとユイの潮騒のメモリーズが一番を歌い終わると
薬師丸・小泉ペアが登場。
二番を歌って最後のサビは・・・四人で
というような豪華な妄想に憑依されておりまする
投稿: キッド | 2013年6月 2日 (日) 17時25分
ふふっ♪先週も1週間、すばらしい週でございました^^
朝ドラヒロインの失恋だけで1週間引っ張るの?と週の初めに
ちょっと思った自分を激しく叱責しつつの1週間。
見事にヒロインは卒業し立ち直っていくのでした。
で、オジーの登場にワクテカ~( 〃▽〃)
本当に本当に楽しみ。
そして、3月いっぱいでアイドル活動差し止めを独断で行った
春子がどう折れるのか…折れるのか?も楽しみ~。
また楽しい1週間が明日から始まると思うと…ぼちぼち終わって行きそうな
今クールの寂しさにも、嫌な予感に震える夏クールも耐えられそうなのでした。
投稿: くう | 2013年6月 2日 (日) 17時52分
一週間があっと言う間なのですなあ。
「あまちゃん」を見ているうちに
一週間過ぎちゃったのくりかえしで・・・
すでに1/3が終了・・・。
あと・・・2/3しかないのかよっ・・・。
もう、すでに寂寥感が・・・。
どんだけ気が早いんだ・・・でございます。
ふふふ・・・実に見事に
ふられた女の子が立ち直るだけで
一週間盛り上げちゃいましたねえ。
クドカン・マジックという他はございません。
やはり・・・安心していい・・・
でも不安・・・
好きだからこその躁鬱感発生ですな。
ちょっとでも過激になれば
心配でドキドキなのですな。
まあ、クトガン史上かってない
視聴率を獲得しているのでもういいんじゃないかという
気分もございます。
ある意味・・・ここからが本当の
クドカン時代なのかもしれませんし。
クドカンの大河ドラマとか・・・
想像するだけで心臓停止の気配ですから~。
もう信長とかだったら
男色しまくりでしょうしな~~~。
さて・・・ついにオジー登場の次週。
あの海女カフェが妄想でないとすると
春から夏へ一気にワープするのですな。
「17才」がキーワードなので
次の誕生日まではいろいろあるのですな~。
キョンキョンも橋本愛も宮本信子も早生まれで
能年玲奈と薬師丸ひろ子は違う・・・
というのも気になります。
アキも違いますしね~。
春子の秘密(後篇)がいつ明らかになるのか
そして・・・アキが暗くなった理由に
母親がどの程度、関与しているのかも気になりますな。
まあ、取り扱い注意の母親に育てられたら
ある程度・・・取り扱い注意になるのは必然ですけれど。
ユイとミズタクが先行して・・・アキが追いかけるのか
それとも・・・アキの中の何かが覚醒してしまうのか。
妄想が膨らみすぎて困窮する日曜日なのでございます。
気がつけば春ドラマも終了なのですが
なかなか・・・終盤気分になりません。
夏ドラマか・・・と思っても気になりません。
御意、御意でございますぞ~。
投稿: キッド | 2013年6月 2日 (日) 18時43分
今週は清々しい一週間でしたね。ユイが本音をぶっちゃけちゃって、怖くなって弱音を吐いて、それを受け止めるひとまわり大きくなったアキがいて…。二人とも、本当にいい子だなあ。
お座敷列車に乗った、夏ばっぱや春子さんや地元の人の幸せそうな顔を見てジーン。アキとユイは本当に可愛いし、みんないい顔してるし、なんか泣きそうでした。
種市先輩との別れのシーンは本当に爽やかで、いいシーンでしたね。アキの初恋の人が素敵な人で良かったなあ、なんて思いました。でも南部ダイバーの歌は、最後まで音程がよくわからずじまいでした。
月曜日から週末に向けて、成長していくユイを見ていて、本当にしみじみして、あったかくて、切なくて、もうかなり満足しちゃって、このあとどうなっていくのか、すごく楽しみであり、ちょっとだけ怖くもあります。良すぎるとこれ以上はない気がして不安を感じるという…。
投稿: ギボウシ | 2013年6月 2日 (日) 21時20分
蠟人形の舘に住む美少女ユイ。
お前も蠟人形にしてやろうか・・・の呪いにかかっている。
しかし・・・その胸の内には「もっともっとちやほやされたい」という果てしなき欲望が潜んでいるようです。
一方・・・いじめられているのにも気づかないような
ドジでのろまなカメだったアキは・・・
海とウニとユイに出会って・・・
秘めていた能力を開花させていく・・・。
二人の友情が永遠に続いてほしいと思わせる
究極のたれ目とつり目のコンビネーションですな。
一方で春子は・・・
夢なんか見たら傷付くばかりだから
可愛い娘が夢を見ないように
必死になるあまり・・・
娘の可能性を封じ込めてしまう・・・
そういう矛盾を抱えているわけです。
それが・・・このドラマを見守る
お茶の間の心情となんとなく似ているところが
また不思議なところなのですよねえ。
ああ・・・このハッピーエンドでいいじゃないか。
と思うけれど
無情にも時は流れて行く。
なんといっても夏は人生の終末が近いですし・・・
無慈悲な2011年もどんどん近付いてくる。
それでも・・・南部ダイバーが歌い継がれるように
人生は続いていくのですな。
ちょっとこわいけれど
アホな子のアホな部分は絶対に見逃せないし
安部ちゃんのまめぶ汁カフェが
どうなったか気がかりなので
今週も朝からテレビの前に
全員集合なのですな~。
「あまちゃん」その全編がメモリーとなる日がくるまで。
そうなったらそうなったで
「続きがみたいよ~」と思うのは間違いないと思います。
投稿: キッド | 2013年6月 3日 (月) 01時39分