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2013年7月28日 (日)

あまちゃん、十七ターン目の土曜日(小泉今日子)

隅田川花火大会が雷雨で中止である。

あまちゃんの世界の人々は2010年を生きているので知らないのだった。

それでも時々、加速して「この時間」に追いついて来ようとしている「あまちゃんの時間」・・・。

さらに「あまちゃんの中の春子の時間」があり、それも時々、加速するのである。

2008年の夏からはじまったあまちゃんの時間は2010年の夏に向かって行く。

1984年の夏からはじまった春子の時間は1989年、あるいはアキ誕生の日まで追いすがる。

この時間の流れの奔流が「あまちゃん」らしさを形成していることは言うまでもない。

そしてそれは現代に合流する前に2011年3月11日という「その時」を過ごすことになる。

それがどのように描かれるかは別として・・・このドラマに登場している多くの人物にある共通点を意識せざるをえないのである。

それは「目先の利益に目がくらんで大切なものをすぐに見失うドス黒さ」ともいうべきものだ。

そういう「賢さ」によって・・・「アホの子」が翻弄される局面が今である。

しかし、一方で「アホの子」はそういう「小賢しさ」をものともしないでやりたいことをやるのだった。

その行く手を阻む「こざかしい大人のシンボル」が「芸能プロデューサー」であるというのも凄い話なのである。

いよいよ・・・終盤にむけた加速に入った感じのする今週。

濃厚な登場人物たちの持つそれぞれの物語のフリとオチも回収につぐ回収中である。

今週は月曜日にフリ「春子と夏の平成元年の電話の内容とは?」があり、土曜日にオチ「夏の春子に対する叱咤激励だった」があるという加速ぶりである。つまり、もうフリをどんどん回収しないと間に合わない残り時間に入っているのである。まだ二ヶ月も先のゴールなのに・・・ああ、この素晴らしいレースが終りに近づいていると予感し涙目になる今日この頃なあのだあ。

で、『連続テレビ小説・あまちゃん・第17週』(NHK総合20130722AM8~)脚本・宮藤官九郎、演出・梶原登城を見た。1984年、母の夏(宮本信子)を岩手県北三陸市(フィクション)に残してアイドルになるために上京した天野春子(有村架純→小泉今日子)は元ダンサーで芸能プロダクション社員の荒巻太一(古田新太)と出会い、アイドル女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の声の影武者として起用され、1989年まで飼い殺しにされてしまう。夢破れ帰郷しようとした春子はタクシー・ドライバーの黒川正宗(森岡龍→尾美としのり)と出会い、結婚し、アキ(能年玲奈)が生まれる。アキは2008年、夏に憧れて海女になり、種市先輩(福士蒼汰)に憧れて南部ダイバーとなり、親友のユイ(橋本愛)とアイドルを目指す。様々な事情で単身上京したアキは鈴鹿の付け人となり、アイドルの奈落で修行を続けるが・・・太巻と仇名される芸能プロデューサーとなった荒巻と母親・春子の因縁がその前途に暗雲を生じさせるのだった。

月曜日 純喫茶・アイドル・ラブ・ストーリー(有村架純)

「春子からアキへの手紙・二通目」に記された上京後の春子の物語のクライマックスである。

主な舞台となるのは甲斐さん(松尾スズキ)がマスターの純喫茶「アイドル」・・・。ここでは平成元年仕様のキャスティングで隠されているが・・・実は、松尾スズキと小泉今日子と尾美としのりといえば・・・。ドラマ「マンハッタンラブストーリー」(2003年TBSテレビ)の主要登場人物である。平均視聴率*7.2%だったあの日から十年・・・。声優・土井垣、タクシー運転手の赤羽ちゃん、タクシー運転手のイボリーは純喫茶「マンハッタン」でこのドラマを見ているに違いない。

「今はまだ時期じゃない」と春子を宥める若き日の太巻。

「じゃ、何時なのよ・・・あなたを信じて22歳になっちゃった・・・馬鹿にしないでよ・・・」

春子は捨て台詞を残して太巻と決裂する。

故郷に向かうために世田谷から上野までタクシーに乗る春子・・・かなりの出費である。

偶然にも運転手は鈴鹿ひろ美の影武者誕生の経緯を知る正宗だった。

一目で春子に気が付く正宗。しかし・・・春子はまったく気がつかない。

上野駅で春子を降ろした正宗は駅の東側から北側に抜けるルートで上野の山に昇る。

博物館側の路上で・・・何故か、再びタクシーを止める春子だった。

→→→→→(時間を早送り)→→→→→

「じぇじぇ・・・」春子からの手紙で両親の運命の出会いを知ったアキは情報を補完するために正宗のマンションを訪問していた。

一人暮らしのかっての実家でアキはパパ正宗のすきやきを味わうのだった。

父親のウザさまでが懐かしいアキだったがイラッとはくるのだった。

「早く・・・続きを話してけろ・・・パパとママがくっつかないとおらが生まれてこれねえべ」

娘に妻との性的なあれこれに関する直接的言及をされ一瞬、たじろぐ正宗だったがすぐに顔を綻ばせるのだった。

「くっつくさ・・・くっついたからアキが生まれたんだよ」

←←←←←(時間を巻き戻し)←←←←←

再び、世田谷まで春子を乗せることになった正宗は運命的な出会いを感じ、東京湾に沈められる覚悟を決めるが・・・会話のきっかけがつかめない。

そこへ奇跡的に流れるラジオ・ネーム「転校生はつらいよ」さんのリクエスト曲・・・「潮騒のメモリー」だった。

来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー

「♪北へ帰るの・・・ふふふんふーん」と口ずさむ正宗。

「いい曲ですよね・・・」

しかし・・・春子にとってもはや思い出すのが苦痛でしかない曲であった。

「停めて・・・おろして・・・私・・・やっぱり、上野に戻る・・・」

「この曲・・・あなたが歌っているんですよね」

「え」

「私・・・あの時のあほんだらです」

春子はおぼろげな記憶を蘇らせる。

そして・・・二人は世田谷と上野の中間点と言えないこともない原宿の純喫茶「アイドル」ではじめてのデートをするのだった。

見知らぬ男の登場に戸惑うマスターの甲斐さんであった。

「・・・そういうわけで帰ろうと思っているんです」

「ずっと・・・一人でかかえていたんですね」

「・・・」

「あきらめることないじゃないですか・・・僕はあなたのファン1号として・・・ずっとむあなたを応援してきました。あなたの声が聞きたくて・・・鈴鹿ひろ美のレコード、全部買っちゃいました。みんな、あなたの歌声に癒されたんです。僕だっていやな客に後部座席を蹴られたり、料金踏み倒されそうになったりしても・・・あなたが頑張っていると思うと頑張れたんです・・・タクシー運転手はみんな、あなたのファンなんだ・・・」

「・・・鈴鹿ひろ美のでしょ・・・」

「でも・・・声はあなたの声じゃないですか。歌はあなたの歌でしょう。あなたの歌は凄いんだ・・・それなのにあきらめて帰るなんて・・・もったいない・・・っていうか、そんなの嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だっ」

興奮する正宗に恐怖するマスターだった。

そんな正宗の情熱に心が動く若き日の春子だった。

(この人だけが・・・本当の私を知っている)のである。

→→→→→(時間を早送り)→→→→→

「そして・・・パパとママは付き合いだしたのさ・・・それからママはアイドルにはなれなかったけれどパパと結婚して・・・アキが生まれたんだよ」

アキは生まれて初めて父親を「かっけえ」と思ったのだった。

ま、正宗・・・。

「でも・・・」とアキは疑問を感じる。「ママはどうして上野から世田谷に戻ろうとしたんだべ」

「さあ・・・それはママに聞いてみないとな」

アキは早速、スナック「梨明日」に電話をする。電話を受けたのはすっかりスナックに馴染んだユイだった。

「アキちゃんから・・・電話・・・手紙読んだって」

「あら・・・なによ・・・パパのところにいるの」

カウンターで春子にプロポーズ中の大吉(杉本哲太)は蒼ざめるりだった。

「そう・・・手紙読んだの・・・」

「ママのこと・・・かっけえって思った・・・」

「・・・ちょっともう一回いいなさいよ」

「おら・・・こっちにきて・・・ユイちゃんが来るまでとか・・・鈴鹿ひろ美みたいな女優になりてえとか思って頑張って来たけど・・・新しい目標ができた・・・」

「なによ・・・」

「ママみてえに・・・みんなをはげます歌さ歌いてえ・・・」

「駄目よ・・・影武者になんかなっちゃ・・・」

しかし・・・春子は娘の言葉が嬉しくて馬鹿みてえな感じになるのだった。

潮騒のメモリー 私はギター

Aマイナーのアルベジオ 優しく

ハードに始った月曜日は時の流れの果て・・・優しさに溶けていくのである。

火曜日 まめぶ汁に入れる唐辛子がとまらないように(薬師丸ひろ子)

嵐の前の静けさに満ちた火曜日。

2010年の冬は穏やかに過ぎていく。

寝袋で眠るアキは「まごころ第2女子寮」の床を元気に雑巾賭けするのだった。

BGMの「潮騒のメモリー/鈴鹿ひろ美」を耳にとめる元・アメ横女学園芸能コースのセンター・マメりんこと有馬めぐ(足立梨花)は「ベッド使用許可」をアキに告げる。そして自分は「カレシの家でお泊まり宣言」をするのだった。

「あの・・・一応、女子寮には門限が・・・それに恋愛御法度でがす」

苦言を呈するアキを「ばれなきゃいいんでしょ」と歯牙にもかけないマメりんだった。

一度は「アメ女」の頂点に立った女と最下位(繰り上げ残留)の女は袂を分かつ定めである。

その頃、北三陸市の天野家では・・・大吉が二度目の朝食をとっていた。一度目は実母を気遣って実家で食べているらしい。

プロポーズの答えはまだだったが・・・バツイチ同士の再婚の日は近いと信じる大吉である。

今年の健康診断の結果良好だった天野忠兵衛(蟹江敬三)は「今年は漁には行かない宣言」の三日後、南半球に向けて出漁するのだった。

春子は平成元年に上野駅から夏に電話をかけたことを思い出すが・・・会話の内容は思い出せないでいた。

どうやらその電話によって春子は上野から世田谷に戻ることになったらしい。

夏は例によって「そんな昔のことは忘れた」と断言。

ちなみに当時、大吉は安部ちゃん(片桐はいり)と婚約中で三食まめぶ汁生活だったらしい。

アキは鈴鹿ひろ美の付き人稼業中である。

鈴鹿は「岩手こっちゃこいテレビ」の情報番組を東京のスタジオで収録中。司会者は中田有紀である。「欧愛留夜叉」(サラリーマンNEO)からミサキ(原史奈)に続いて矢部総長の出陣なのだ。

宣伝している映画「猫に育てられた犬」の公開日が1/25なのでそれ以前の日付と思われる。

コメント中に主演映画のタイトルが思い出せなくなった鈴鹿は「天野さん」にぼやきまくるのだった。

「なによ、あの司会者、残り時間五分もあるのに最後に一言って・・・あんなにつまんない映画について五分もコメントできるわけないじゃない。私だったら五分で映画館出るわよ。猫の気持ちなんかわからないわよ。猫アレルギーだもの。実話に基づいた映画ならなんだっていいってもんじゃないでしょ・・・現実なんて退屈なんだもの」

「無頼鮨」でもこらえきれずぼやきが止まらない鈴鹿。実話を元にした迷い犬の映画「わさお」(2011年)に主演している薬師丸ひろ子だった。ちなみに公開日は三月五日だった。公開一週間で東北には牛や豚までが迷い出すのである。

ちなみに「1リットルの涙」(2005年)では肝っ玉でも病弱でもない普通の母親を演じた薬師丸ひろ子だった。ただし、娘役は完全に病弱の沢尻エリカである。

「この年になると・・・母親役ばかりなのよね・・・天野さん、あなたの母親ってどんな方?」

「・・・」思わず答えにつまるアキ。

「あら・・・ごめんなさい・・・聞いちゃいけなかったかしら」・・・と見当違いに察する鈴鹿。

「歌がうまいママでがす・・・今はスナックでママやってます」

「海女じゃないんだ」

「海女は・・・祖母が・・・母は海女になりたくなくて・・・か・・・」

「か?」

影武者という言葉を飲みこんで「歌手を目指していたこともあります」

「まあ・・・」と事情を飲みこんで「じゃあ・・・お母様はあなたに夢をたくしたのね・・・」

鈴鹿は底の知れない人物だが・・・ドラマの流れとして・・・自分に影武者がいたとはまったく気が付いていないということである。それどころか・・・自分が超絶的な音痴であることにも気が付いていないと思われる。

アキは鈴鹿の言葉を半信半疑で受け止めながら・・・確かに・・・母親の夢が自分に託されていることを感じ取った。

(それじゃ・・・なんで・・・あんなに最初は反対したのか・・・)

春子の平手打ちを思い出して「痛み」を感じるアキ。

寮に帰ろうとするアキを呼びとめる種市。種市はつきあっているはずのユイのことをアキから聞き出したいのだった。

いろいろな意味で舌打ちするアキ。

しかし、親友と先輩の「仲」の事なのでないがしろにはできない。

「ユイちゃんはスナックで働いてる」

「スナック?」

寝耳に水の種市だった。

ツーショットのスナップ画像を見せるアキ。

「だせっ」とユイの姿に驚きを隠せない種市。

「だせえくらい我慢しろ・・・これでもたちなおったんだ」

「そうか・・・そうだな」と交際相手のその後を補完する種市だった。

その頃、スナック「梨明日」ではユイが明るい微笑みを浮かべ、春子、弥生(渡辺えり)、美寿々(美保純)とともにガールズ・バーを越えたスナック四天王の一角を担っていた。

夜のアメ横を自転車で抜けるアキ。

その両肩には「アイドルになりたくてアイドルになれなかった春子とユイの夢」が重くのしかかっていた。

寮に戻ると「反省会」が待っている。

受験生であり、「アメ女」のレギュラーでもある中学生の小野寺薫子(優希美青)は特別に睡眠中。マメりんは外泊中である。

GMTのリーダー格である入間しおり(松岡茉優)の熱血は高まっているが。アキは安部ちゃんにまめぶ汁をリクエストするのだった。

部屋の壁には去って行った宮下アユミ(山下リオ)の名前入り幟(のぼり)が立てかけてある。おそろくリーダーり熱い心がそれを片付けさせないのだ。

一体・・・奈落落ちした高幡アリサ(吉田里琴)はどうなってしまったのだ。

「大体・・・アメ女と・・・GMTのかけもちの二人はそれについてどう思っているわけ」

「ようわからんばい、佐賀と福岡の区別もようわからんばい」と真奈ちゃんこと遠藤真奈(大野いと)が応じる。

「それはわかってるだろう・・・佐賀のがばいキャラでいくんだろうがっ」

「がばいの意味もようわからんばい。すごいのか、やばいのか」

「あんたね・・・」

「ストップ・・・」と安部ちゃんの唐辛子増量中を制止するアキ。

発言を止められてちょっとムカつくリーダー。

気配を察したキャンちゃんこと喜屋武エレン(蔵下穂波)は自分の分のまめぶ汁が赤くなっていくことを止められないのだった。

その時・・・奈落の屑かごから・・・「社長の書いた歌詞の断片のメモのごみ」を発見したマネージャー水口(松田龍平)は・・・「GMTのデビュー曲ができる」と朗報を持ち込む。

深夜アニメを連想させるかわいいパジャマ姿で小野寺ちゃんも起き出してくるのだった。

それはバンクーバー五輪で浅田真央が銀メダルに沈み、日本中が涙する二月直前の出来事である。

世界は大不況の波に沈んでいる。

穏やかで退屈な夜はいつだってとまらない悲しみの前触れなのである。

水曜日 ちゃん・・・ちゃんちゃらおかしい早春物語なのでした(能年玲奈)

GMTのデビュー曲・・・それは「地元に帰ろう」(仮題)だった。

しかし、それは太巻が磨き上げた宝石であるアイドル・マメりんの奈落からの再生を主題とした楽曲であった。GMTはその添え物であり、マメりんのバックダンサー的ポジションだったのである。

デスメタルでサビ、テクノの「マメりん with GMT」的発想に意気消沈するGMTのメンバーたち。

しかし、水口は「GMTが注目されるチャンスじゃないか・・・」と励ますのだった。

その頃、すでにマメりんは先行して、太巻との単独レッスンに入っていた。

だまされた・・・とアキは唇をかみしめる。男遊びと見せかけてすでに奈落からの脱出の足がかりをつかんでいるマメりんに対抗心が芽生えるアキである。

寝袋からベッドに昇格したぐらいでは喜べないのである。ちゃん・・・ちゃんちゃらおかしいのである。

フリ先行で楽曲作りに専念する太巻。

その姿勢は真摯で・・・少なくともクリエーターとしての太巻は「ドス黒さ」を見せない。

ここはおそらく物語展開の基調になってくるだろう。この世界には善人もいないが悪人もいないと思われるからだ。

そして、おそらくマメりんも仕事一筋ではないわけである。

インスパイヤを目指して作っては壊す太巻のチャレンジは続く。

アキも懸命にその作業に参加する。

いつしか月日は流れ、高校三年生だった・・・アキ、しおり、キャンちゃん、真奈ちゃんは朝日奈学園を卒業するのだった。おそらく、小野寺ちゃんは朝日奈学園に入学したのである。

そして・・・早春。岩手物産展のスタッフとして足立ストーブヒロシ(小池徹平)が上京してくるのだった。

アキのファン第一号であるストーブは・・・アキに寄せる思いは変わっていない。

リーダーや真奈ちゃんはストーブの外見に一瞬ときめくが・・・たちまちなんとなくガッカリするのだった。

ヒロシは種市が転職してアキの間近にいることを知り、嫉妬の炎を燃やす。

逢いたくて 逢いたくて 逢いたくて

逢えない時は

せめて風に姿を変えて

あなたのもとへ

・・・的なヒロシなのだった。

「あらあら・・・三角関係じゃないのお・・・」と無頼鮨でおばちゃん的乙女心を燃やす鈴鹿だった。

大将の梅頭(ピエール瀧)は虚空を睨んでいるようで実はテレビのナイター中継に夢中なのである。

変わって種市が小林薫的愛想笑いを披露するのだった。

「いえ・・・種市先輩にはふられてますし・・・ストーブさんとはアイドルとストーカーの関係でがす・・・それに恋愛は御法度ですから」

「ふふふ・・・そんなのばれなきゃいいのよ・・・アイドルなんて・・・みんなやってるんだから・・・ちゃんりん・・・ちゃんちゃらおかしいのよ」

「そうなんですか・・・」

「ふふふ・・・太巻がなんで・・・恋愛御法度なんて言うのかって言うとね・・・私のせいなんだな・・・これが・・・」

鈴鹿ひろ美の付き人としてあわててシャットアウトを行うアキ。

「大丈夫よ・・・割と有名な話だから」

「そうなんですか」

「太巻はチーフマネージャーに出世したばかりでね・・・私の方から交際を申し込んだの・・・会社も公認だったのよ・・・悪い虫がつくよりいいってね・・・」

鈴鹿ひろ美と太巻が男と女の交際をしていたことはアキにとってかなりの衝撃を与えた。

「私の独立話が起きて・・・私は女優業に専念したかったし・・・彼は音楽畑出身で・・・アイドルの卵も手掛けていたんだけどね・・・」

「それは・・・いつ頃のことですか」

「平成元年の事かしらね」

一つの物語を別の語り手に語らせる手法である。

「彼は悩んでたみたい・・・その子が潮騒のメモリーを歌いたいなんて言い出して・・・ちゃんりんしゃんちゃらおかしいでしょ・・・私が許すわけないじゃないの・・・私のデビュー曲ですもの・・・だから・・・太巻が代わりに断ったんだけどね」

自分に影武者がいるとは夢にも思わない。その子が自分の影武者とはまったく知らない。ましてや、その子がアキの母親の春子だとはまったく想定外の鈴鹿なのだった。

もちろん・・・アキはそれを半信半疑で聞く。

尊敬する女優・鈴鹿ひろ美、その影武者だった母親・春子、鈴鹿ひろ美の恋人で・・・春子を結果的に飼い殺しにした太巻。

その青春の光と影がアキの心をかき乱すのだった。

「結局・・・その子はデビューできなかったみたい・・・結局、運なのよ・・・運があるか、ないか・・・それだけ」

「運・・・ですか」

大好きな鈴鹿ひろ美から切り捨てられるように大好きな母親の残酷な運命を語られて・・・この世の闇を感じるアキ。

「あら・・・ごめんなさいね・・・聞きたくない話を無理に聞かせちゃって・・・」

「いいえ・・・聞けてよかったと思います」

寮に戻ると安部ちゃんの岩手物産展用のウニ丼試食会が行われている。

安部ちゃんは出来に不満だったが、キャンちゃんや水口はお愛想を言うのだった。

アキは食べた。ふっくら感のない夏ぱっぱレシピのウニ丼を・・・。

それはアキのハートに悲しみの火をつけるのだった。

I Can't Stop The Loneliness

どうしてなの

悲しみがとまらない

運命の歯車は時を越えてアキに哀しいリズムを伝える。

木曜日 帰ってこいよ、帰らないぞ、そして帰還する傷跡(小池徹平)

「うめえ」ウニ丼に逃避するアキだから「おかわり」をするのだった。

GMTのデビュー曲は岩手物産展には間に合わなかった。

しかし、GMTのメンバーは海女の衣装を着て物産展のお手伝いをするのだった。

「まめぶ汁、夏ばっぱのウニ丼、一人じゃドキドキできません」

夢で叫んだように

くちびるは動くけれど

言葉は風になる

物産展の合間にアキはストーブと春子の青春の地を探訪する。

影武者だった春子が確かに存在したことを確かめたいアキなのだ。

原宿の純喫茶「アイドル」は実在した。

くすんだ店と同じようにくすんだ甲斐さん。

「あの・・・おら・・・天野春子の娘なんですけど・・・」

「ああ・・・あった」とテレビのリモコンを発見するのだった。20年の歳月はいろいろなものをくすませるのである。

「アナログ放送はまもなく終了します」と呪いの言葉を吐くアナログ・テレビ。

「わかってますよ・・・御苦労さま」とテレビに話しかける甲斐さんだった。

あんなに激しい潮騒が

あなたのうしろで黙りこむ

「アキちゃんは東京に来ても変わらないね」と語りだすストーブ。

「そうだべか・・・」

「うん・・・なんだか・・・アキちゃんがいるだけで・・・世界が変わっていく気がするよ」

「まさか・・・」

「だって・・・女子寮なんて・・・昔の漁協みたいだし・・・」

「そっか・・・そうだな・・・みんなわいわいやって・・・あんべちゃんがいて・・・楽しいもんな」

「だべ・・・場所じゃなくて・・・人なんだよ」

「うめえこというな」

「春子さんの受け売りなんだけどな」

「ママの・・・」

「田舎でダメなやつは都会へ行ってもダメで・・・田舎でそれなりに楽しくやれるヤツは東京行ったって楽しくできる・・・って。アキちゃんは・・・いるだけで少し、まわりを温い気分にさせるんだ・・・」

「そんな・・・人をストーブみたいに・・・」と会心のポエムに微笑むアキ。

「いや・・・ホントさ・・・」

「そうだな・・・どこにいたって自分は自分だものな・・・たとえ奈落だって・・・アメ女だって」

「アメ女」と突然、反応するマスター。「君、アメ女のメンバーなの」

「アメ女じゃなくて・・・GMTだけど」

「GMT!・・・今、あついよね・・・マメりんもいるし・・・小野寺ちゃんもいるし・・・小野寺ちゃんのブログもあついよね・・・なまってるし」

「じぇじぇ・・・くわしいんだな」

「そりゃくわしいさ・・・アイドル暦40年だ・・・え・・・じぇじぇ・・・なんだか・・・聞いたことあるな」

「そりゃ、きっと、おらのママだ・・・おら・・・天野春子の娘なんですけど・・・」

「ま・・・いいか・・・知ってる?・・・太巻ってこの店によく着てたんだぜ」

「知ってるってば・・・おら、天野春子の娘なんだから」

「ええーっ・・・君、春ちゃんの娘なの・・・早く言ってよ」

「・・・三回、言いました」

「そうか・・・春ちゃん・・・娘さんに自分の夢を託したんだね」

甲斐さんのくすんだ言葉がアキの心に波紋を投げかける・・・。

波の頁をめくる

時の見えない指さき

岩手物産展は終り、田舎に帰るストーブを駅まで送るアキ。

二人は握手で別れる。

「大吉さんが春子さんを待っていたように・・・俺もアキちゃんを待っているから。頑張って・・・しんどくなったら帰ってくればいいよ」

アキは微笑みを返す。

「おら・・・よしえさんに東京で会っただ・・・黙っていてごめん・・・でもユイちゃんを傷つけたくなかったから・・・だども・・・もう黙っているのも限界だ・・・よしえさん・・・男と一緒に歩いてた・・・たぶん、帰らねえぞ・・・」

「話してくれて・・・ありがとう・・・でも・・・聞かなかったことにするよ」

重荷を背負って帰るストーブだった。

地元に帰ろう 

地元で会おう

地元 地元 地元に帰ろう

好きです 先輩

覚えてますか 朝礼で倒れた私・・・

ついに・・・ミディアム・テンポのバラードとして完成した「地元に帰ろう」・・・。

デモテープを聴くGMTメンバーは嬉しくて嬉しくてクスクス笑わずにはいられない。

しかし・・・血相を変えて・・・水口を呼びに来るチーフマネージャーの河島(マギー)・・・。

太巻は水口に「マメりんのお泊まり愛」が暴露記事として抜かれたことを告げる。

「レコーディングは中止だ」

「そんな・・・中止しなくても・・・」

「三回目だぞ・・・さすがに俺もお手上げだ」

「マメりんを脱退させればすむ話じゃないですか」

「マメりんは卒業させる・・・GMTだけでは売れない」

「売る努力もしないで・・・」

「なんだって・・・おい・・・勘違いするなよ・・・マメりんのソロデビューありきだ・・・そのためにフリを考えて・・・作詞して・・・作曲して・・・それを全部捨てるんだ・・・俺が悔しくないとでも・・・」

「・・・すみません」

そこへ・・・事情を聴いたアキたちがやってくる。

「どうして・・・ダメなんですか」

「連帯責任だ・・・GMTだけではビジネスとして成立しない・・・それだけだ」

「やってみなければわかんないべ・・・」

「天野・・・」となだめようとする水口。

「まだ早い・・・時期を見て・・・」と河島。

その言葉がアキの闘志を燃やすのだった。

「そうやって・・・おらがママみたいにあきらめるのを待ってるのか」

「なに・・・」と表情を変える太巻。

「おらが・・・天野春子の・・・娘だから・・・」

「・・・そうだよ」

全国のお茶の間の太巻だって・・・根っからの悪人じゃないはずだと信じていた人々が・・・そりゃないぜと絶叫するのだった。

金曜日 恩を仇で返すという生き方もがばい、毎度おなじみの夢もがばい(大野いと)

太巻はアキと水口を完全防音のクリアな社長室に連れ込むのだった。

残されたGMTとチーフ・マネージャーの河島は美少女アイドル的下世話な憶測をするのだった。

「なにね・・・アキのお母さんがなんばしよっと」

「キャンちゃん、会ったことあるんでしょ」

「でーじ美人な人だったさ」

「太巻さんと昔、つきあっとったのかねえ」

「じゃ・・・アキは太巻さんの隠し子・・・!」

「そりゃがばいね」

室内では太巻がぶっちゃけていた。

「水口も・・・聞いておいて損はない・・・しかし、これから話すことは絶対に口外するな」

「・・・」

「鈴鹿ひろ美のデビュー曲・・・潮騒のメモリー・・・を歌ったのは・・・この子のお母さん・・・天野春子だ」

「ええっ」と驚く水口。

そして・・・太巻は金庫から何かを取り出そうとする。殺気を感じる水口は思わずハンガーで武装するが・・・太巻の取り出したのは古びたカセットテープだった。

太巻は古びたレコーダーの再生ボタンを押す。

流れ出す・・・オリジナルの鈴鹿ひろ美版「潮騒のメモリー」・・・。

その殺人的な音痴っぷりに・・・。

「・・・わざとか」と母親と同じ感想を漏らすアキ。

「ひどいだろ・・・」と応じる太巻。

絶対音感を持つ水口には吐き気がするほどの不快音なのである。

「と・・・とめてください」

「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

とボリュームをアップして水口を責めて遊ぶ太巻。

外野席では・・・。

「なにしてんだ」

「まさか・・・エッチなテープを・・・」

「水口さんが・・・水口さんが悶えちゃう」

「がばいね・・・超がばいね」

「それ、かばいの使い方違うだろう」

・・・漸く、本題に戻る太巻。

「鈴鹿ひろみのデビュー曲が大ヒットしたのは・・・半分は天野春子のおかげだ・・・」

「半分・・・」

「半分は鈴鹿ひろ美の存在だ・・・当然だろう」

「影武者がいるのを鈴鹿ひろ美さん本人も知らない」

アキはお茶の間を代表して半信半疑でそれを聞く。

「知っているのは・・・ごく少数のスタッフだけだ」

「・・・」

「そしてこれは絶対に秘密なのだ」

「・・・」

「鈴鹿ひろ美の伝説を損なわないために」

「・・・」

「まさか・・・娘を送りこんでくるとはな・・・」

「おらとママは関係ない・・・おらはおらの意志でここさ来た」

「ほう・・・ならば・・・ここでなくてもいいよね」

「・・・」

「ここにいるかぎり・・・君は絶対にデビューできない・・・はい上がってもはい上がっても何度でも奈落に突き落とす」

「なんでだよ」

「どうしてもデビューしたければよそでやってくれ」

こうして・・・アキは重大な規約違反を犯したという名目で解雇されることになったのだった。

その理不尽さに・・・納得のいかないGMT・・・。

「どういうことですか・・・」と水口に詰め寄るリーダー。

「アキちゃんがやめるなら私もやめる」とキャンちゃん。

俯く水口だった。

筋だって想定するとこういうことになる。

鈴鹿ひろ美の成功でチーフマネージャーとなり、アイドルのプロデューサーの道を開いた太巻。

その根底を覆す鈴鹿ひろ美のスキャンダル発覚は保身のために絶対阻止。

しかし・・・一般人が何を言おうと抹殺できるが、もっとも恐ろしいのは有名人の口から発言されること。

天野春子がスターになって「実は私が鈴鹿ひろ美の影武者でした」と言えば真実だが・・・素人が言う分には妄想。

だから・・・太巻は天野春子をデビューさせなかった。

同様に・・・「実は私の母は鈴鹿ひろ美の影武者でがす」と言い出す可能性のあるアキも絶対にデビューさせられないのだった。

もちろん・・・やや破綻のある論理だ゛し、太巻の真意がそうなのかどうかは分らない。

しかし・・・少なくとも・・・アキを絶望させるには充分な太巻の言動なのである。

鈴鹿はる美の歌が天野春子の歌だと知り・・・感動して・・・。

「ママのような歌っ子を歌えるようになりてえ・・・」と母に宣言し・・・。

「お母さんはあなたに自分の夢を託したのね」と鈴鹿ひろ美に言われ・・・。

「春ちゃん・・・君にアイドルになってもらいたいんだな・・・」と甲斐さんに告げられ・・・。

その気になっていてアキを悪意をあからさまにしてへし折った太巻・・・。

そして・・・助けてくれなかった水口・・・。

Am017 それでもアキは・・・水口に救いを求める・・・ただし・・・夢の中で・・・。

「水口さん・・・おら・・・やめたくねえ・・・歌って踊って・・・アイドルになりてえ」

「・・・」水口の部屋は閉ざされたまま。

「・・・腹減った」

冷蔵庫はからっぽ・・・。

そして・・・目の前にはヤング春子。

「じぇじぇじぇ・・・水口さん、水口さん」

「私・・・幽霊じゃないよ・・・生きてるし・・・駅前のスナックでママやってるし・・・」

「そうですか・・・」

「かわいそうに・・・私のせいで太巻に意地悪されたんだね・・・太巻って・・・神経が細いんだ・・・太巻じゃなくて・・・細巻だべ・・・なんちゃってえ」

「かわいいな・・・目はパッチリしてるし髪の毛クリンクリンだし・・・おら・・・パパに似たのか」

「ブスだもんね・・・繰り上がり奈落ブスだもんね」

「母子だからってブスはあんまりだ」

「お詫びに唄います」

「なんてマイペースなんだ・・・」

そこへ現れる巫女姿の静御前(鈴鹿ひろ美)・・・。

「あらわれたな・・・妖怪変化・・・私のデビュー曲を返しなさい」

「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

「待て・・・痛い・・・段差が・・・段差がこわい・・・天野さん」

「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」

「やめてけろ・・・やめてけろ」

・・・目覚めれは二段ベッドの下。

徹平から・・・アキがウニ丼を食べて泣いていたという話を聞いた春子が携帯を鳴らす。

「ママ・・・」

「どうしたの・・・アキ・・・」

「おら・・・クビになっちゃった」

あの日電話が

ふいに鳴ったの

あなたに彼女 会わせたことを

わたし今も悔んでいる

I Can't Stop The Loneliness

だれか救けて

悲しみがとまらない

泣いている愛おしい娘を感じて春子は遠い記憶が蘇る。

土曜日 天野春子、出撃!(宮本信子)

ユイは予感を感じていた。

予想以上に酷い奈落での暮らし・・・汗にまみれて少し匂う・・・親友のアキを・・・アバズレのママはけして放ってはおけないだろう。

お礼参りは近いと・・・。

頷く・・・愛犬家の小太りの友人(山田健太)だった。

「お・・・お・・・お・・・」

「おっとせい・・・」

「おら・・・太巻さんに嫌われて・・・クビになった・・・」

「なんでよ」

「わかんね・・・ママの方がわかるんでねえか」

アキは・・・鈴鹿ひろ美の伝説・・・夢を壊したくないという太巻の気持ちをどうにか理解している。

しかし・・・それで・・・自分の夢が壊される理不尽さは納得ができない。

そのことを自分より残酷な仕打ちにあった母親の春子にぶつけることもできない。

アキはもう・・・なにもかもが・・・イヤになっていた。

春子は自分との過去が暗い影を娘に落していることを察知した。

それは・・・ある意味で予想外・・・ある意味で想定内のことだった。

「もう・・・アキ・・・家へ帰りたい・・・帰っていいでしょ」

「・・・・・・だめよ」

蘇る記憶。20年前の電話ボックス。

傷心の若き日の春子が故郷の夏に甘えようとした通話。

交錯する・・・春子と若き日の春子。若き日の夏。そしてアキ。

→→→→→(時間を早送り)→→→→→
←←←←←(時間を巻き戻し)←←←←

・・・の使用も躊躇する時間のシャッフルである。

「なして・・・」

「だから・・・言ったよね・・・あんたには無理だって言ったよね・・・だけど・・・あんたは行くって言ったんでしょ・・・やれるって信じたんでしょ」

「・・・なしてだ」

「五年もがんばったし・・・そろそろ帰ろうと思って・・・平成元年になったしさ・・・」

「なして・・・」

「アイドルになるんでしょ・・・まだ一年もがんばってないじゃない・・・ママのなれなかったアイドルになってくれるんでしょ・・・」

「なしてだ・・・」

「一人で淋しいかと思って・・・そっちで役所にでもつとめてお見合いでもして」

「何がお見合いだ・・・おめは人様の善意を踏みにじって東京に出て行ったんだべ」

「そんなこと・・・わかってるよ」

「わかってねえ・・・お前なんか娘でもねえ・・・アイドルでもねえ・・・一体、お前はどちら様だ」

「今、帰ってきたら・・・腫れもの扱いだよ・・・雑に慰められて・・・噂話されて・・・影口叩かれて・・・あんた・・・それでいいの」

「やんだ」

「たった五年であきらめるくらいなら最初から行くな」

「ママは帰ってくるなんて・・・許さないからね」

「もうたくさん」

「やんだ」

「アキ・・・聞いてるの・・・アキ・・・アキ・・・アキったら・・・」

アキは電話を切っていた。25・・・24・・・23・・・急速に減るテレフォンカードの残り度数。上野-北三陸間の長距離電話を若き日の春子が断ち切ったように・・・。

襖を開けて心配げに顔を出す・・・夏。

「どうした・・・春子」

「なんでもない・・・」

いつものように喫茶リアスで働く春子。しかし・・・心はここにないのであった。

いつの間にか・・・コップではなく琥珀を磨いている春子を一同は囃したてる。

しかし・・・春子の心は・・・アキでいっぱいなのだった。

「四畳半で二段ベッドで三人部屋だって・・・トイレ共同で風呂もないって・・・」

問いただされ答えるストーブ。

「銭湯は高いんで・・・稽古場のシャワーを使うって・・・」

「汗をかいて・・・これから夏になるのに・・・匂って・・・」

「どうした・・・春子」と大吉。

「クビになったのよ・・・あの子・・・泣いてた」

「じぇ・・・」

「それなら・・・帰ってくればいい」

「潮騒のメモリーズ復活だ」

「海女カフェでバイトして・・・シーズンになったら海女やって」

「んだんだんだ・・・土日はウニ丼売って・・・」

「駄目よ・・・そんなのダメ・・・あの子が帰ってくる時は・・・駅前は黒山の人だかり、握手会でサイン責め、凱旋コンサートは・・・市民ホールでドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッと」

「どうしたんですか・・・春子さん」と顔を出すユイ。

「あ・・・ちょうど良かった・・・これ、レジのキー。これ、金庫の鍵、二日に一度は銀行に入金で印鑑と通帳、夏にかけてビールの仕入れ増やして行って月に一度のガスの点検忘れずに・・・私ちょっと行ってくる・・・」

春子は家に戻ると・・・夏に別れの挨拶をする。

「どうした・・・急に」

「アキの側についててやりたいんです・・・あの子の夢を応援したいんです・・・あの子に私の見れなかった景色を見てもらいたいんです・・・」

「どいつもこいつも勝手なことを・・・」

「一人で大丈夫・・・」

「おらは平気だ・・・淋しいのは出たり入ったりするからだ・・・」

「お母さん・・・あの日、言ってくれたよね・・・夢を簡単にあきらめるなって・・・」

「そんなこと・・・忘れた」

ラテアートでジョージクルーニーに挑戦している花巻(伊勢志摩)は別として・・・一応、引き留めに来る大吉、かつ枝(木野花)、美寿々・・・。

「おら・・・今日は北鉄、運休する・・・」と駄々をこねる大吉。

「夏ばっぱ加勢に来たぞ・・・」と夏を捜す美寿々。

しかし・・・夏はすでに海へ去っていた。

再び・・・東京に雨が降る。

帰郷を決意したアキは鈴鹿の付き人もやめることを宣言する。

「事務所クビになったって・・・私の付き人続けていいのよ・・・」

「・・・」

「重大なペナルティーってなんなのよ」

付添の水口は口を閉ざす。

別れの鮨桶は超豪華推定三万円級だった。

「私も・・・休みとって北三陸に遊びに行こうかな・・・」

「来てください・・・ウニは五百円ですけど鈴鹿さんなら三百円でいいでがす」

鈴鹿があらあら・・・私からお金とるの・・・と思った刹那・・・。

修行中の種市は来客に「じぇじぇっ」と叫ぶ。

紅白の上下で決めた黒いサングラスの女。

「アキ・・・」と娘の名前を呼ぶ。

呼ばれた娘は・・・二度見して・・・。

「じぇじぇじぇじぇじぇ」と叫ぶのだった。

呆気にとられる鈴鹿ひろ美。

艶然と見返す天野春子。

つづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいはやくつづきがみたい逃げちゃだめだつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたいつづきがみたい・・・・。

関連するキッドのブログ→第16週のレビュー

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コメント

17週は理不尽理不尽理不尽~と思いながら見る週だったので、
結構ストレスたまりました( ̄∇ ̄;)
で、18週の予告でスッキリ~…つづきがみたいつづきがみたいの18週待ちなうでございます。

しかし、あまちゃんも完全に終盤に向かっているし、会津戦争は終わったし、
暑い暑いと言いつつ7月が終わって行く…。
時が流れるのが早すぎて目まいがします…。

こんな事では本当にあっという間に9月になってしまう~。
あまちゃんが終わったら廃人になりそうですな。
でも、先がはやくみたいはやくみたい…。

投稿: くう | 2013年7月28日 (日) 17時18分

❀❀❀☥❀❀❀~くう様、いらっしゃいませ~❀❀❀☥❀❀❀

じいめは夏バテ夏ボケ真っ盛りで
「あまちゃん」四コマのアップも
うっかり忘れる始末ですぞ~。

今週は「ハードな感じ」が
寄せては返す波のように
押し寄せてまいりましたなあ。

新曲ができて
ウキウキのGMTの
素晴らしくライブな場面が一転・・・
超がばい修羅場に・・・。
もはや「がばい」の間違った使い方が
浸透する勢いでございました。

特別だった・・・2013年の春~夏ドラマ。
序盤から
すでに終盤の匂いがしてしまうのは
「あまちゃん」と「八重」が
そろって後半に突入したからでございますねえ。

まもなく二の丑になりますれば

第二回ウナギ大会も間近でございます。

どうか、水分補給をぬかりなくなさって
暑い夏を無事にお過ごし下されませ~

投稿: キッド | 2013年7月29日 (月) 02時56分

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