慶応四年九月八日、時代は明治になったのでごぜえやす(綾瀬はるか)
慶応四年三月、明治天皇は五箇条の御誓文を発布。
一 広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ
一 上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸ヲ行フヘシ
一 官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス
一 旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ
一 智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
一口で言えば、「よく話し合い、身分に関係なく心をひとつにして、誰もが努力を惜しまず、古い仕来りに囚われず、世界から学んで、天皇に尽くせ」ということである。
最後が・・・いろいろな問題を含んでいるのだが・・・とにかく、革命なので「将軍」ではなく「天皇」の時代が来たことは主張せずにはいられないわけなのだ。
日清戦争の死者に匹敵する戦死者を出した戊辰戦争がまぎれもなく内戦であったことは疑いようがない。
慶応四年八月、明治天皇は即位の儀式を終了し、名実ともに天皇の地位につく。
慶応四年九月八日、元号を明治と改め、一世一元の実行を開始した。
これにより、遡って慶応四年一月一日より、明治元年とすることを宣言するのだが、各種記録が改められたわけではなく・・・結局、1868年は慶応四年と明治元年が同居するのである。
もちろん、西暦と元号の間に人々を迷いこませる悪魔の所業なのである。
さらに言えば・・・1868年は慶応三年十二月七日から始り、明治元年十一月十八日で終わる。
太陰暦と太陽暦の不一致の問題が生じるからである。つまり、明治元年十一月十九日からは1869年なのである。まぎらわしいのさっ。
グレゴリオ暦(太陽暦)に改歴される明治六年(1873年)までしばらくお待ちください。
で、『八重の桜・第28回』(NHK総合20130714PM8~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は王政復古の立役者、堀河公卿家出身、権大納言岩倉家の養子にして岩倉友山改め、輔相・岩倉具視の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。雌伏の時を終え、陽忍の道を歩く、天皇のしのびの長は度々、行方をくらまして・・・苦難に満ちた大日本帝国建国の舵取りをしていくわけですな。あまちゃんなら「かっけーっ」と叫ぶところでございます。日本人初のガン告知を受けて世を去るまで十六年・・・がんばれ、旧五百円札の人。鉄オタもご照覧あれ。
慶応四年八月、新政府軍は鶴ヶ城西側の藩校日新館天文台と東側の小田山山頂に砲台陣地を構築し、城内に盛んに砲撃を開始する。籠城開始後、入城を拒まれた会津正規軍以外の旧・幕府軍は城外に散開し、ゲリラ戦を余儀なくされる。無計画な会津軍は城内に兵糧の備蓄がなく、城外の倉庫を奇襲によって確保する必要に迫られる。八月二十九日、家老・佐川官兵衛は松平容保より伝来の宝刀・正宗を賜り、長命寺方面への出撃を命じられる。しかし、飲酒爆睡し、出撃時期を逸し、包囲殲滅されるという嘘のような失態を演じる。この頃、西郷頼母は庄内藩への連絡という密命を帯びて戦線を離脱、政敵である梶原平馬は暗殺指令を発するが失敗する。この期に及んで内訌(うちわもめ)なのである。やがて九月五日に藤原(日光)口より薩摩藩主力を率いた桐野利秋が城南に着陣。汚名返上を目指す佐川は明治元年九月八日、材木町周辺の兵糧の奪取に成功し、薩摩藩から「鬼の官兵衛」の異名で恐れられる。しかし、門田村御山付近に潜伏中の日向ユキはこの戦いで兄を失うことになる。九月十日、萱野権兵衛らの高久陣地を無視して越後口より前原一誠の率いる長州軍主力が到着。ついに会津城包囲網が完成する。九月十七日、新政府軍は総攻撃を開始。進撃に先立つ一斉砲撃で山川大蔵の妻、登勢は城内で爆死する。鶴ヶ島攻防戦は最終局面に突入した。
鶴ヶ城から城下町へはいくつかの地下道が掘削されている。
松平容保より、会津忍びの長として秘義伝授を受けた鉄砲くのいちの八重は・・・白虎しのび、娘子くのいちを引き連れて地下道からの出撃を続けていた。
各所に分散した兵糧の搬入が主任務である。
八重はまた武田の軍師・山本勘助の血脈を受け継ぐものである。東海道ですでに政府軍の軍門に下っている清水の次郎長こと山本長五郎もその一門である。仁義の精神により、長五郎は配下の忍びを会津へ助っ人として派遣していた。
その一人、石松は・・・万延元年に死んだと思われている遠州森の石松である・・・八重とともに暗い地下道を進みながらつぶやく。
「八重のあねご・・・」
「なんだい・・・石松さん」
「それにしても・・・会津のお人はうかつだねえ」
「うかつとは・・・聞き捨てならないねえ」
「だってよお・・・これから戦(いくさ)って時にお城に米を運び込んでおかねえとはどんな料簡なんだい」
「薩長のやつらがすばしっこいのさ・・・こっちがうかうかしているうちにあっという間になだれこんできやがった・・・戦の作法もなにもあったもんじゃねえのでがんす」
「まあ・・・なんだな・・・疾きこと風の如しはおいらたちの合言葉なんだが・・・おかぶうばわれちまったってとこか」
「石松さん・・・無駄口はそこまでだ・・・いくよ」
城下の長屋の床下に地下道からの出口の一つがあった。
八重は鉄砲しのび五人を率い、石松は相撲人夫五人を率いている。
「どうやら・・・倉庫には見張りがいるようだなし」
「面倒だな」
「いや・・・ここは音無筒を使うのでがんす」
八重が目配せすると黒装束のくのいちたちは短筒に消音器を装着した。
「そりゃ、なんですかい」
「サイレンンサーというものでがんす」
八重たちは長屋を踊り出ると倉庫に殺到する。
プスッと鈍い音がして・・・見張りの雑兵が声もなく息絶える。
くのいちたちは雑兵たちが倒れこむのを許さず、静かに寝かしつけるのだった。
石松は目を丸くしながら・・・倉庫の扉についた鍵を遠州伝来の盗みの術で手早く解錠する。石松は石川五右衛門の流れを組んでいるのだ。
米俵を担いだ相撲人夫たちは足早に地下道へと戻っていく。
夜風が雑兵たちの骸の上を静かに渡っていく。
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