ムラサキ(木南晴夏)VS偽ムラサキ(有村架純)スターマン争奪戦~追跡篇
さて・・・夏ドラマがスタートしたわけだが・・・意外にも好調なスタートである。
「ぴんとこな」とか「京都地検の女」などこれからのものもあるがほぼ・・・出そろったところでは・・・。
おバカドラマとしてではなく・・・リアルなドラマとしておバカなお茶の間の掴みに成功した「半沢直樹」は19.4%↗21.8%とぶっちぎりの展開である。・・・ヤレヤレだな。
そういう意味では「DOCTORS2~最強の名医~」19.6%、「ショムニ2013」18.3%と三大おバカドラマが絶好調で・・・今年の夏の暑さを物語るのだった。
で・・・「SUMMER NUDE」17.4%↘12.8%、「Woman」13.9%↘11.3%とあきらかにおバカ層をつかみ損なったドラマは残念な感じなのであるが・・・めげずに我が道を貫いてもらいたい。評価は後からついてくるのである。
「斉藤さん2」15.5%も健闘したよね。
そんな夏ドラマ戦線にあって・・・ほぼ予想通りだったのが・・・「スターマン」10.5%のスタートなのである。
リアルでもなく・・・バカドラマでもない・・・微妙な感じが・・・お茶の間を困惑させていることが充分に窺がわれるのだな。
まあ・・・「天魔さん」*2.3%とか、「仮面ティーチャー」*2.9%とかと・・・ある意味、ジャンルが一緒なのでそういう意味では物凄い高視聴率だと思うしかないんです。
で、『スターマン・この星の恋・第2回』(フジテレビ20130716PM10~)脚本・岡田惠和、演出。堤幸彦を見た。河口湖畔で自殺した一人の男(福士蒼汰)に特殊な流星が落下し、宇宙生命体が寄生する。ここまででハル・クレメント(1922-2003)の小説「20億の針」(1950年)を連想し、その派生作品である「ウルトラマン」を想起する人は結構、いい年齢だと考える。宇宙生命体もしくは宇宙人を題材とした作品はあまたあるわけであるが・・・宇宙生命体と地球人の合体による「宇宙人」というアイディアは実に秀逸だと言う他はない。もちろん、西洋には神の子の処女懐胎という伝統があり、異世界と現世の融合には馴染みがあるわけである。とにかく・・・そうして生まれた宇宙人は地球人としての記憶を失ってしまう。それを通りすがりのシングル・マザー・宇野佐和子(広末涼子)が拾って、自分のものにしてしまうところから物語は始るのだった。ここは桃の中や竹の中から出て来たものは自分のものという昔からの伝統なのだった。
星男と名付けられ、宇野家の暮らしに馴染み始めた内縁の「夫」に佐和子はうっとりなのであった。
しかし、佐和子と佐和子の祖母・柏原美代(吉行和子)にでっちあげられた過去・・・ふらりとやってきて・・・長男・小学五年生の大(大西流星)、次男・小学三年生の秀(黒田博之)、保育園に通う三男の俊(五十嵐陽向)という三人の子持ちである佐和子と結婚し、主夫として生活していた・・・を信じた星男には様々な疑問が浮かぶのだった。
ここで・・・記憶障害についてのある程度の知識が要されることは言うまでもない。
人間の心の形成はまだ様々な謎を含んでいる上に個人差があるという厄介なものである。
たとえば記憶力の差異がある。記憶力に優れた人間とそうでない人間は同じ人間とは思えない場合がある。
あるいは意志の強弱の問題がある。意志の強い人間とそうでない人間も同じ人間とは思えない場合がある。
そして意識の差異がある。そもそも・・・人間は同じ意識を持っているのかどうかも・・・根本的には不明なのだ。
しかし・・・人間は他人もある程度は自分と同じような心を持っているはずだと考えて行動するしかない。
そして・・・考えられないような行動に出た人間に驚愕したり、考えられない行動に出た人間に共感する自分を見出して恐怖したりするのである。
基本的に意識は・・・記憶の保存と再生の処理の流れに浮かんだ泡のようなものだと考えることができる。
その泡は電子の流れによる波で構成されている。
人間の記憶の一部は有機的なメディアに保存されるわけだが・・・一度、電気的な流れが遮断すると喪失したり、取り出し不能になってしまう。
人間的機能が喪失されたか否かの判断は非常に困難だが、臓器の再利用という経済的要求から「脳死」なる判定基準が考案されたことは周知の事実である。
生命活動の維持が自力では困難であり、脳内活動が電位の変化として観測できないから・・・「意識」がないかどうかは本当は分らないが・・・本人がそうだと言えない以上、他人にとっては知ったことではないということなんだな。
ともかく・・・一度死んだ星男(仮名)の脳内から「宇宙生命体」はある程度の情報を引き出すことに成功したが・・・生体機能の維持や常識的な知識は可能でも、星男の過去・・・個人的生活史までは再現できなかったと思われる。
また・・・宇宙生命体に人間と同じような意識があるのかどうかも定かではない。
星男は突然の発作を起こすのであるが・・・これは宇宙生命体が情報を引き出すためにリサーチをかけているショックによるものだと推測できる。
人としての知識・・・たとえば車が何かを知っており、車を運転するのに免許があることを知っている。人としての感情・・・たとえば美味しいものを食べると美味いと感じ、子供を可愛いと思ったり、愛されていると知れば嬉しく感じる。
そういう知識や感情はありながら・・・自分の過去という記憶が脱落している・・・それがいわゆるドラマにありがちな都合のいい記憶喪失というお約束なのである。
佐和子の長男・大は見ず知らずの男を拾ってきた母親の無謀さに批判的である。
「だっておかしいじゃないか」と言わずにはいられない。
「その通り、お前は正しくてお母さんやおばあちゃんは間違ってる」と祖母の美代は応じる。しかし・・・。
「お前も彼女ができたらわかるかもしれないが・・・女にとって正しいかまちがってるかなんて・・・どうでもいいことなんだよ」
大は世界の秘密の一端を知らされ・・・恐怖を感じるのだった。
一方で・・・自分の境遇を理解し始めた星男は・・・「収入もなく・・・主夫として家事も得意ではない自分はダメ人間なのではないか」と疑問を感じ始める。
そして・・・「佐和子は自分といて幸せなのでしょうか」と美代に質問するのだった。
美代は「それは佐和子本人でなければわからない・・・自分で確かめなさい」と星男を佐和子の勤める「スーパーマーケットやまと」に送りだす。
本人は気が付いていないらしいが時速100キロくらいで走る星男はたちまち佐和子の職場に到着する。
ちょうど佐和子は帰宅するところだった。
「美代さんに佐和子とデートしてくるように言われました」
「あら・・・そうなの」
すっかり、星男の魅力の虜になった佐和子は頬を赤らめるのだった。
役柄では佐和子が32才で星男が25才の設定だが、広末涼子はまもなく33才、福士蒼汰は20才そこそこである。ある意味、犯罪ギリギリなのだった。
そんな二人を見つめる人間たちがいた。
一人はどうやら・・・星男の先輩宇宙人であるらしい、惣菜売り場の主・重田信三(國村隼)である。彼は古女房(角替和枝)に40年前に拾われて今では大家族の名目上の長となっている。
そして、もう一人は佐和子の同僚で・・・安藤くん(山田裕貴)と職場恋愛をしている臼井祥子(有村架純)だった。彼女は現実の生活にどうしようもない鬱屈を感じており・・・宇宙から星の王子様が迎えに来てくれるという妄想を抱くようになっていた。
この人物造形には小説「ビームしておくれ、ふるさとへ/ジェイムズ・ティプトリイ・ジュニア」を連想させるものがあります。
とにかく、国道沿いのラブホテルで安藤くんが「マイ・ウエイ」を熱唱しながらシャワーを浴びたのにやらせてあげない悪い子なのです。
「泣くな、はらちゃん」の悪魔さんポジションですが・・・さらに凶悪なキャラクターの匂いがします。
祥子は恐ろしい直感・・・あるいは何か隠されている事情により・・・佐和子の内縁の夫が実は星の王子様ではないかと疑っているのだった。太陽系をデザインしたバッグを持っていて・・・ある意味神秘的な存在なのだが・・・ここが一番、説明不足だぞう・・・。
説明不足と言えば・・・「泣くな、はらちゃん」のアナザー・ワールド的世界観を持つこのドラマ。いろいろな意味で・・・物足りない感じはある。
一番大きいのは佐和子の隠れた魅力に気が付いている男の存在不足であろう。
田中くん(丸山隆平)に対して、佐竹幸平(KENCHI)はあまりにも力量不足なんだな。
EXILEというドラマ世界のデストロイヤーたちはなんとか早く消滅してほしいと心から願うよ。
まあ、バカとハサミは使いようなのかもしれませんがーーーっ。
・・・そのぐらいにしとけよ。
さらに言えば広末涼子の難しさがある。最近では「リーガルハイ」が抜群の上手さを見せていたが・・・ある程度、取り扱い注意なのである。
クドカンでさえ「11人いる」では手こずってた感じがあるからな。
つまり、素材としての魅力が抜群すぎてスタッフの手に余るのですな。
たとえば堤幸彦は映画「恋愛寫眞」(2003年)に絶頂期の広末涼子を撮っているだけに三十代の彼女を捕らえそこなっている気がしてならない。
そういう意味では小池栄子にもまったく同じ傾向がある。
スケジュール的な問題もあるが・・・次回、登場する蒸発した夫(安田顕)もからめて・・・もう少し・・・第一回は過去から語り起こしても良かった気がする。
イメージとしては佐和子とスナックスターのママ・須多節(小池栄子)は体育会系の親友である。女子野球、あるいはソフトボール部ではバッテリーを組んでいたわけである。ここはなんちゃって高校生をやらせるぐらいでも良かった気がする。
ピッチャー佐和子とキャッチャー節の青春物語から始ってもよかったはずである。
そういう作り込みがほんの少し・・・足りなかったんじゃないのかなあ・・・と感じるのだった。
まあ・・・妄想で補える範囲ですけれどね・・・お茶の間的にはねえ。
結局、ガストに星男を連れて行った佐和子。星男に問われるままに二人のなれそめをでっちあげるのである。
ここも・・・少し・・・話している間に佐和子がそういうことが本当にあった気になってしまう流れが脚本・演出ともにやや甘いのである。
「二人が出会ったのも・・・この店なのよ・・・その日は凄く混んでてさ・・・凄くお腹がすいてたあなたは・・・一人で食べていた私に合席を申し込んできたワケ。ファミレスで合席なんて初めてだったから・・・とまどったけど・・・私・・・あなたを一目みて・・・惚れちゃったのよね。で・・・あなたは・・・お腹がすいているくせに・・・なかなか注文を決められないの。そして・・・私の注文した和風ハンバーグにのっかってきたわけよ・・・だから・・・今、食べている和風ハンバーグ・セットで二人の思い出の料理なのよ。私・・・これを食べる度にあの日のことを思い出してちょっとうっとりしちゃうわけ。で・・・食べながら、私たちはおしゃべりをしたわ。といっても・・・しゃべるのは私ばかり。あなたは東京から来たことしか・・・云わなかった・・・なんだか・・・失職して旅をしているようなことは云ったけどね。私は・・・この街で生まれて・・・この街で育ち・・・この街で結婚して・・・この街で子供を三人産んだなんてことを洗いざらい喋っちゃった・・・なにしろ・・・この街のことしか知らないし・・・そして前の夫に逃げられたことも話したの。そしたら・・・あなたは突然、私のことを好きになったって云いだして・・・私はびっくりしたし・・・とまどったわ・・・だってどう見ても私の方がかなり年上だし・・・でもね・・・なんてったって私は一目見た時からあなたのことが好きになっていたのよ・・・相思相愛なんだから・・・何も問題ないのかなって・・・思っちゃった」
「・・・それで・・・後悔してないの・・・今は・・・どうなのかな」
「後悔なんてするわけないじゃない・・・だって・・・今もあなたといるだけでとっても幸せなんだもん」
「・・・」
それから・・・二人は夜の公園に行く。
でっちあげられたファースト・キスの場所なのである。
そこで・・・二人はどちらからともなく・・・キスをしようとするのであるが・・・嘘に嘘を積み重ねている佐和子は突然、躊躇するのだった。
それは罪悪感によるものなのか・・・乙女の恥じらいなのかは微妙なのだった。
ところが、直後に星の光を受けた星男は激しく痙攣し、昏倒してしまうのだった。
一方、「ガスト」の二人を目撃して激怒していた女が一人いたのだった。
二人の乗った赤い車を見失った女だったが・・・執念深い猟犬のように黒い車で二人を追跡するのだった。
どうやら・・・生前の星男の関係者であるらしい。
昏倒した星男を担いで家に連れ帰った佐和子は医者の溝上先生(モト冬樹)に往診を求める。しかし、星男の身体に異常はなく、彼は何事もなかったように目覚める。
この時、二人を監視していた重田は不覚にも転倒事故を起こしてお持ち帰りのお惣菜を台無しにするのだった。
その日・・・次男の秀(黒田博之)は不思議な光景を目撃する。
庭で瀕死の野鳥を拾いあげた星男は手の中で野鳥を治癒し、蘇生させたのだった。
秀は奇跡の光景を自分の心の中にしまいこむのだった。
翌朝・・・いつものように和やかにはじまった朝食。
しかし・・・謎の女・羽生ミチル(木南晴夏)はついに・・・赤い車の発見に成功していた。
土足で宇野家に踏み込んだミチルは物凄いジャンピング・パンチで星男を殴り飛ばすのである。
星男を狙う二人の女は・・・ムラサキが偽ムラサキを一歩リードしたらしい。
誰が・・・「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」(2012年テレビ東京)の話をしていいと云った。
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コメント
「記憶が無いのはつれぇなあ…ずぶん、ファミレスで延々語っているこの女を好きだったとはどうしても思えねぇーんだ。全然感情移入できねーしな。もっとこう、湯布院出身でちょっとゲスい感じで昔家政婦やってたりして…」
投稿: 幻灯機 | 2013年7月17日 (水) 21時42分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
ヒロインのハルカ(村川絵梨)や
ハルカの妹アスカ(黒川芽以)も
なんとか生き残っているけど
幼なじみの奈々枝(水川あさみ)とかも
しぶとく生き残っていると。
万里子も27歳なんで
そろそろ確固たる地位とやらを構築したいと思っているかもね~。
いつまでかませ犬やらせんだよっですよねえ。
投稿: キッド | 2013年7月18日 (木) 01時02分