明治五年、八重二十七歳、時栄十九歳、みね十歳、捨松十二歳でごぜえやす(綾瀬はるか)
大河ドラマで役の年齢と役者の年齢について記述するのはある意味、無粋である。
しかし・・・山川捨松十二歳を・・・水原希子二十二歳がそれなりに演じていたことは記しておく。
それにしても・・・小学生を単身渡米させるとは・・・奴隷売買じゃないのか。
岩倉使節団には捨松の兄・山川健次郎が留学生として随行している。
また・・・後に捨松の夫となる大山弥助はスイスのジュネーヴに留学している。
新島襄を登場させるついでに捨松も描くという展開だが・・・いささか乱暴な話だと思う。
ここからは・・・ある意味、どんな大河になるのか・・・まったく未知数と言える。
少し・・・不安を感じさせるよねえ。
岩倉使節団の大久保に留守を守る西郷は手紙を書いている。
「米国は使節団を歓待していると聞きますが、英国との関係はどうなるでしょうか。米英の仲は険悪とも聞いているので日英の仲に影響が出ぬかと心配しております。ドイツは勝ち戦(1870年~71年の普仏戦争)で勢いに乗っているようです。もちろん・・・これは横浜あたりのドイツ人がそうだということで本国ではどうなのかは窺い知る由もないのですが・・・ドイツ人が調子に乗っているというのは間違いないと思います。ロシアはどうでしょうか。ドイツとロシアの間には不穏なものがあると思われます。とにかくこちらは何事もなく平穏です。手持無沙汰なくらいです・・・」
西郷が日本で暇を持て余している感じは大久保に伝わったと考える。
で、『八重の桜・第32回』(NHK総合20130811PM7~)作・山本むつみ、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はイラスト公開はお盆休みでございます。ここまで公開に次ぐ公開お疲れ様でございました。後半戦に向けて期待も高まりますが・・・あくまでマイペースでお願いします。画伯のやる気が失われるような駄作大河にならないことを祈るばかりです。殺人マシーンと化したヒロインがどんな戦後の人生を送るのか・・・楽しみでもございますねえ。まあ、大日本帝国は今後も戦争に次ぐ戦争を展開するわけですが・・・。
明治四年四月(1871年5月)、普仏戦争はフランフルト講和条約の締結で終戦となる。フランスは敗北し、ドイツが世界最強の陸軍によって欧州に台頭することになる。十一月、岩倉使節団と称される岩倉具視ら107名が欧米派遣の途に就く。横浜港より太平洋を横断、サンフランシスコに上陸後、アメリカ大陸を横断、ワシントンD.C.に到着。明治五年夏まで米国に滞在する。その陣容は特命全権大使・岩倉以下、木戸孝允(長州)、大久保利通(薩摩)、伊藤博文(長州)、田中光顕(土佐)、山田顕義(長州)、村田新八(薩摩)など多様な顔ぶれであった。この中に留学生・山川捨松や通訳随員の新島襄が含まれていたのである。その後、使節団は大西洋を横断し、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアなどを歴訪し、地中海からスエズ運河を通過、アジアの列強植民地を訪問しつつ、明治六年(1873年)九月に横浜港に寄港する。その間、留守政府では朝鮮出兵を巡る「征韓論」が政治的課題となって政争の様相を呈するのだった。そうした中央から離れ、京都の山本覚馬は明治五年、内国勧業博覧会を開催したりするのだった。この頃、兄の指示によって八重は京都女紅場(後の府立第一高女)の権舎長に就任する。八重の戦後が本格的に幕をあけたのである。
夏の暗き森。京都西北の鞍馬山中を覚馬を背負った八重が走る。
十年ぶりに再会した兄の変わり果てた姿・・・そして背中に乗る身の軽さが・・・八重の心を突く。
(あんつぁま・・・おいたわしい・・・)
「八重・・・あの岩が目印だ・・・裏手の獣道さ・・・分け入れ」
「あい・・・」
「あいではない・・・はいだ」
「はい・・・」
日本語には「イエス」と「ノー」がないと覚馬は言う。英語の基礎を教えながら・・・八重に覚馬は「はい」と「いいえ」をまず覚えさせた。
「風林火山の教えがありながら・・・まんず、会津はスピードが足りねえがった」
「スピード・・・」
「速さだ・・・風の如く速く・・・意志さ伝達せねばなんねえ」
「・・・」
「止まれ」
「はい」
「その木に鎖がある。それさ・・・引け」
八重が鎖を手繰るとどこかでカラクリの音がする。
次の瞬間、草木が跳ね上がり地下通路の入り口が出現する。
「梯子さ・・・降りろ・・・」
八重は片手で覚馬を支えながら地下へと降りて行く。
足元に人の気配があった。
頭上で扉が閉じる。
しかし・・・周囲は穴の中とは思えない明るさで満たされていた。
「八重よ・・・これが文明というものだ」
「・・・」
穴の中には一人の洋服を着た男が立っていた。
髪は伸び放題で後ろで束ねている。
足元は革製のブーツだった。
夏の暑さが嘘のようなひんやりとした地下室の中で男は微笑んだ。
「ようこそ・・・科学忍者隊第三研究室へ・・・」
「この人が・・・土佐の坂本龍馬様だ」
「・・・」
「ふふふ・・・それは昔のこと・・・今はドラグーン・アケチを名乗っ取る・・・なにしろ・・・わしは大英帝国の間諜じゃきに」
「イエイエ・・・ソレハ・・・違イマス」
アケチこと龍馬の背後から英国人・アーネスト・サトウが現れた。
「アナタハ・・・アクマデ・・・ニホンノサムライ・・・」
アーネスト・サトウは別の名をジェームズ・ボンド。コード・ネームは007である。
殺人許可証を持つ男だった。
「龍馬・・・アケチ様は・・・西洋の妖怪の呪いによって・・・不死身の身体となったのだ・・・」
「不死身・・・」
「いや・・・不死といっても日の光を浴びたら蒸発してしまうがの」
「蒸発・・・」
「塵となって消え果てるんじゃ」
「まさか・・・」
「それに・・・この地下室からは出られん・・・出ればたちまち・・・宿主であるドラキュラ伯爵の支配下に入ってしまう」
八重には理解不能のことだったが・・・フランスの闇を支配するドラキュラ伯爵の配下・・・ロシェの血を受けた龍馬は・・・その支配力には抗することができない身体なのである。
しかし、英国では吸血鬼学が発達し、霊的結界を構築することに成功していた。
英国は狼男たちの帝国だからである。
ロンドンの狼男の一人、サトウは科学忍者隊と提携を結び・・・この地下に対吸血鬼結界を構築したのだった。
「まさに・・・籠の鳥じゃ・・・」とアケチは苦笑した。
「対吸血鬼結界潜水艦ノーチラスの完成までの辛抱です」と覚馬は宥める。
「待ち遠しいのう・・・」とアケチは遠くを見る。
「八重よ・・・」
「はい」
「お前はここでアケチ様の手足となって・・・科学忍術を極めるのだ・・・」
「科学忍術を・・・」
「そうだ・・・イングリッシュを学び・・・世界の法を学び・・・世界の神秘を知り・・・そして・・・京都に新しき魔都を建設する・・・」
「魔都・・・」
「そうだ・・・その名はアイヅランドじゃ」
「アイヅランド・・・会津の国ですか・・・」
「そうじゃ・・・まずは・・・俺が開発した・・・新火薬の調合を完成させることから始める」
「オー・・・山本ノ火薬・・・ワンダフル」とサトウが眼を輝かせた。
八重は・・・異人や・・・土佐の妖人と語りあう覚馬を自分の兄とは別の人間のように感じ始めていた。
「八重よ・・・」
「はい」
「戦は終わることがない・・・」
「・・・」
「ひと時の平和を守るためには・・・軍備を極めねばならん・・・わかるな」
「はい・・・」
軍備を疎かにした会津がどうなったか・・・八重ほど身に沁みて知るものはいなかったといえるだろう。
八重は周囲を見渡した。
妖しい光の中でなにやら見慣れぬカラクリが所狭しと置かれている。
「これが・・・ラボというものですか」
「そうだ・・・新しい国の礎だ・・・」
覚馬は光を失った眼で遠い未来を見ているかのようだった。
そして・・・この時、科学くのいち八重が誕生したのだった。
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