ますらおの涙を袖にしぼりつつ迷う心はただ君がためでごぜえやす(綾瀬はるか)
江藤新平は天保五年(1834年)の生まれで明治七年には40歳だった。
征韓論に敗れ、西郷隆盛らと下野した後に佐賀の士族を率いて佐賀の乱を起こす。
一方、陸軍少佐となった元斗南藩大参事・山川大蔵(浩)は弘化二年(1845年)の生まれで29歳である。
政府軍の熊本鎮台に所属していた山川少佐は佐賀の乱の鎮圧に参加し、名誉の負傷を負って陸軍中佐に昇進する。
賊軍として征伐されたものが政府軍として反乱軍を討ったのである。
明治維新の革命戦争は明治七年になってもまだ継続されていたと見ることもできる。
戦いに敗れた江藤新平は逃亡し、高知県で捕縛。斬首され首を晒されることになる。
「国の富強の元は国民の安堵にあり」と主張した江藤だったが・・・結局は反乱の首謀者の汚名を着ることになり・・・無念の気持ちを辞世にこめたと思われる。
結局、明治維新も血ぬられた歴史に過ぎないのである。
武士の時代の終焉を飲みこめないものたちの反乱は続く。
で、『八重の桜・第34回』(NHK総合20130825PM7~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は王政復古を成し遂げた明治維新の立役者・桂小五郎こと木戸孝允の明治ヴァージョン描き下ろしイラスト大公開でございます。多重人格一同、襄じゃなかったジョーと申しました。まあ、明治七年をすっとばす凄い勢いで明治十年に向かっていますからねえ。あわてますよね。とにかく・・・八重たちの動向が分らないところはすっとばす姿勢らしいですな。なにはともあれ、マイペースでお願い申しあげます。
明治七年(1874年)一月、赤坂喰違坂にて岩倉具視暗殺未遂事件発生。襲撃者は高知県士族。岩倉は負傷するが皇居の濠へ飛び込んで難を逃れる。流石である。岩倉は一ヶ月の療養生活に入る。二月、江藤新平らの佐賀の乱が勃発。徴兵令による国民軍が初めての反乱鎮圧行動を行う。内務卿大久保利通が実質的な指揮を執った。四月、江藤新平は処刑された。五月、西郷隆盛下野の後、新政府軍に残った弟の西郷従道が台湾出兵を強行する。「征韓論」に反対しておいて「台湾出兵」とはこれいかにと木戸孝允は出兵に反対して参議を辞して下野する。台湾は清国領土でありながら未開地であり、日本軍はいわば原住民と戦闘したのである。戦闘には勝利したが兵士のほとんどがマラリヤに罹患し、病死561名という惨憺たる結果を残す。清国との間には琉球(沖縄諸島)の帰属問題が横たわり、それは日清戦争の終結まで続いていく。米国新教の宣教団体であるアメリカン・ボードから宣教師として派遣された新島襄が横浜に到着した十一月、日本軍は未だ台湾を占拠中であり、十二月になって漸く撤兵が開始される。新島はアメリカンボードより、日本における神学校建設のための資金5000ドルを委託されており、ただちに候補地の選定に入った。新島は故郷・群馬県安中市などで布教活動を行いつつ、京都での開校を選択した。明治八年八月、大久保の懇願により木戸は参議に復職する。九月、朝鮮の江華島で朝鮮軍砲台と日本軍艦が武力衝突。この結果、朝鮮でも開国の機運が徐々に高まり始めるのだった。十一月、新島は同志社英学校を開校する。
科学忍者隊の新造潜水艦・伊号零は玄界灘を水上航行していた。
深夜なので・・・吸血鬼・坂本龍馬が甲板上に姿を見せる。
「ふう・・・やはり・・・海はええのう・・・どうじゃ、八重殿」
艦橋は狭く、さすがに八重も外の気に触れて爽快な気分を感じる。
「なにやら・・・おそろしゅうございます・・・まっ暗闇ではございませんか・・・」
「ふふふ・・・夜だから海面を見ればそうなる。天をあおぐのぜよ」
見上げれば満天の星が輝いていた。
「まあ・・・」
「まさに星ふる夜じゃき・・・」
「八重様・・・」
ハッチの下で姪の山本みね(三根梓)が注意を促す。
「なんじゃ・・・」
「三日月様が声を聞いたそうでございます」
「声を・・・」
三日月は新撰組隊士が京都の芸妓に産ませた娘だった。
年はまた若いが・・・遠耳の術の使い手だった。
生まれついての能力で普通人の何倍もの聴力を持っている。
おそらく、父方か母方のどちらかにあやかしの血が流れていたのだろう。
八重が訓練し、今ではくのいち部隊の耳となっているのだった。
「何者かが歌っておりまする」
「歌を・・・」
八重が耳を澄ます。
最初に龍馬が不快感を示した。吸血鬼の聴力も人並み外れているのである。
「こりゃ・・・いかん・・・讃美歌じゃがな・・・」
「讃美歌・・・」
「耶蘇教の聖なる歌じゃき」
「どうされたのです・・・」
「闇の血が騒ぐのじゃ・・・うう、おぞましいのお」
指示された方向を見た八重は闇の中に浮かぶ白い帆を発見する。
「♪Jesus loves me! This I know(知ってるよ神の愛を)~
For the Bible tells me so(聖書に書かれているからね)~
Little ones to Him belong(幼きものよ否めないね)~
They are weak, but He is strong~(人はかよわく神は強いね)」
誰かが讃美歌「主われを愛す」を口ずさんでいるのだった。
上陸用ボートに移った三人のくのいちは漂流中の小型ヨットに接近した。
「うわあ・・・こりゃ・・・海のゴーストかな」
叫んだのは小型ヨットに乗っている男だった。
「私たちは人間です・・・あなたはそこで何を・・・」
「長崎でヨット遊びとしゃれこんで気がついたら潮に流されて漂流してしまったのです」
「・・・ああ」
「ああって・・・」
「ヨットを操れるのですか」
「いや・・・まったく・・・」
「たわけものですか・・・」
「私は米国の宣教師です・・・」
「宣教師・・・」
「日本にありがたいイエスの教えを伝えにやってきました・・・」
「あなたは救いをもとめますか」
「もちろん」
「・・・やはり・・・たわけものですね・・・救助しますが・・・本船は・・・讃美歌禁止です」
「おや・・・なぜ・・・」
「もちろん・・・私たちは悪魔に使えるものたちだからです」
「ええっ」
米国CIA局員・新島襄とくのいち八重の運命の出会いだった。
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