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2013年8月10日 (土)

夏の夜の悪寒~悪霊病連(夏帆)

恐怖の形態とは気配と出現である。

優れた恐怖は存在を隠すことによって形成され、存在を示すことによって完成される。

存在を示すことによって恐怖が生まれないことを劣とし、存在を隠すことによって恐怖が生まれることを優とする。

存在を示すことによって恐怖が生まれるためには充分な恐怖の形成が必要である。

存在を示すことによって恐怖が生まれないのは恐怖の形成が不足しているためである。

存在を示すことによって恐怖が生まれない以上、存在を隠し続けることが恐怖には不可欠である。

存在を隠す暗闇、物陰、扉の向こう側、窓の外、遮断された空間、いわくありげな物品、場合によっては白昼が恐怖の源泉となる。

充分に恐怖の形成が行われた時、存在を示すことは突然、嵐のように行われる必要がある。

充分に恐怖が形成されているにも関わらず、まるで恐怖など存在しなかったように存在する恐怖こそが・・・真の恐怖と言える。

そのためには綿密な計算と計画が必要となるが、計算と計画があったことは絶対に秘匿されなければならない。

思いもよらず、人は恐怖するからである。

で、『病棟~第4号室』(TBSテレビ201308090058~)脚本・酒巻浩史(他)、演出・竹園元を見た。このドラマに弱点があるとすれば・・・それは主人公を演じる夏帆以外が無名すぎるということであろう。もう少し・・・なんとかならなかったのか。このために恐ろしい展開が進行しつつある。つまり、恐怖を与えるものが恐怖を与えられるものになるのではないかという事態である。最も恐ろしいのが人間である以上、もっとも恐ろしいのは自分自身であるという哲学的考察も可能であるが、エンターティメントとしては失敗する可能性が高い。

ドラキュラ自身を襲うドラキュラなどという超現実的展開は難解すぎるのである。

「リング」で考えてみよう。貞子の呪いが貞子にかけられたとすると・・・一体、観客は何を怖がればいいのだ。

貞子が全人類を呪う存在であればこそ・・・登場人物は絶対に逃れられない恐怖を味わうのである。

さらに言えば「リング」が続編が作られる度に怖くなくなっていくのは・・・貞子が呪っているのは貞子にすぎないという・・・事実が解明されてしまうからである。

このままでは・・・この作品はホラーではなく・・・ヒロイック・ファンタジーになってしまうのではないかと危惧するのだな。

今の処・・・妖怪「黒い歯」は看護師の尾神琉奈(夏帆)である可能性が高い。

百歩譲って・・・琉奈は黒い歯と対峙する存在である。

そのために・・・観客は・・・名も知らぬ人々が恐怖を感じる過程を漠然と見せられることになる。

さらには・・・看護婦・鈴木彩香(川上ジュリア)とか、主任看護師の木藤純子(森脇英理子)とか、患者のテヒ(Lizzy)とか、主人公の親友の坂井愛美(高田里穂)とかが「怪奇」について考察したり、捜査したりする退屈なシーンに付き合わなければならないのである。

映画「リング」ならば・・・松島菜々子や真田広之や中谷美紀の役所である。

冷たいことを言うようだが・・・ね、かなり無理があるでしょう。

しかし・・・まあ・・・名もなき人々が与えられた仕事でベストを尽くせば・・・それなりに恐怖は生まれるかもしれない。

とにかく・・・猫背看護師・琉奈は・・・怪奇コミック的な不気味さは醸しだしていると考える。今の処・・・それしか見どころがないわけだが。ある意味、不憫だ。

イメージとしては・・・隈川病院はもっと巨大な病院でないと・・・恐怖は生じないだろう。

この病院の100人くらいのナースが全員、呪い殺されるかもしれない・・・ぐらいでないと最初の戦慄がないのである。

ま・・・好みの問題で・・・こういう場末のちまちました所で生じる恐怖が好きな人はそれでいいのかもしれないのだ。

琉奈は・・・危篤に陥った元カメラマンの石川勲(高橋長英)の幽霊を見る。

女体に対する興味を死ぬまで失わない、ある意味、薄気味悪い男を高橋長英は見事に演じていた。この薄気味悪さを看護師たちが感じないのが残念なのである。

患者に真摯に接する普通のナースである鈴木は茫然と霊安室(死体置き場)へ搬送される石川の遺体を見送る。

その横で・・・自分の見てしまったものを確認せずにはいられない琉奈は言ってはいけない言葉を口にする。

「あの・・・みつこさん・・・って誰ですか」

「石川さんの亡くなった・・・奥様の名前だと思うけど・・・どうして・・・」

「いえ・・・石川さんが・・・亡くなる直前に呟いていたので・・・」

「え・・・私には聴こえなかったけど・・・」

「あ・・・そうですか・・・すみません・・・変なこと言って・・・」

「変なことって・・・」

「あなたたち・・・業務にもどりなさい・・・」

主任看護師の木藤はお決まりのセリフを口にするのだった。

精神失調の気配がある琉奈はすでに角度45度のお辞儀ラインを越えて猫背病を発症している。

そんな琉奈を木藤や・・・鈴木は不気味に感じ始める。

投薬の仕分け中の琉奈はチェック・ミスをする。

「あなた・・・前の病院でも・・・そんなだったの・・・鈴木さんでもしないようなミスをして・・・」

琉奈のミスを指摘する木藤の口調は叱責の度合いを増していく。

そして琉奈の猫背は角度六十度を超えるのだった。

やがて・・・琉奈の担当する女性患者からナースコールがあり・・・琉奈を他の看護婦と交代するように求められる木藤。

「彼女なりに・・・真摯に看護に当たっているのですが」

「いやなのよ・・・あの子、なんだか・・・暗くて・・・気分が悪くなるの」

部屋の外でそれを聞いた琉奈はついに角度九十度の猫背になるのだった。

もはや・・・病院のせむし女(「ノートルダムのせむし男/ヴィクトル・ユーゴー」より)である。

最近はなぜか・・・せむし男が出てきて世間知らずのお嬢様に「醜いせむしのくせに」などと罵倒されたりするテレビドラマはみかけないのだった。・・・できるかっ。

それに反逆する姿勢の夏帆は素晴らしい演技プラン披露しているわけである。

・・・そこには気がつかないフリをしておけばいいものを。

いや・・・たぶん・・・世界でキッドしか言わないだろうからな・・・ここは言っとく。

ナイトシフトの研修医・・・隈川朝陽(大和田健介)は病院の廊下で不気味な音を聞いた。

「お・・・おお・・・おおん」

悪寒に襲われながら・・・正体を確かめずにはいられない防御的な心理で音源を捜す・・・朝陽・・・。

(まさか・・・地下の霊安室か・・・)

しかし・・・それは備品室だった。

「おおん・・・おおん・・・おおおおん」

恐る恐る扉を開いた朝陽は泣き濡れる白衣の天使・琉奈を発見するのだった。

「君は・・・何してんだ・・・」

「先生・・・えっ・・・私・・・駄目なんです・・・ええっ・・・この病院にきてから・・・」

「まだ・・・赴任したばかりじゃないか」

「えっ・・・ええっ・・・えっ・・・見えたんです・・・石川さんが・・・なくなって」

「ああ・・・石川さんは残念だったな・・・でもここは病院だもの・・・」

「え・・・ええ・・・」

「しっかりしたまえ」

朝陽は琉奈にハンカチを差し出した。

琉奈は他人から優しくしてもらったことがないので・・・朝日の好意がうれしかった。

そのために少し、気が紛れたのである。猫背の角度は七十五度まで回復したのだった。

性交渉はおろか・・・父親や患者以外の男性と話した経験もない琉奈はすでに恋心を朝陽に抱いていた。

そのために翌日は眠れなくなり、体調不良のためにシフトチェンジをしたのだった。

「私・・・病院を辞めたい・・・また幽霊が見えるようになっちゃって・・・それから好きな人ができたの・・・」

父親の辰男(嶋田久作)に電話で相談をしようとして・・・会話を妄想している琉奈に・・・親友の坂井愛美(高田里穂)からの着信がある。

「あのさ・・・私の携帯に・・・変なメールが来るの」

「・・・」

「発信者はさえこなんだけど・・・さえこなんて・・・知り合い・・・中学の時に死んじゃったさえこ以外にいないし・・・あんたのとこには来てない?」

「ないよ・・・」

「そう・・・あの・・・なんか・・・変なことはおこってない?」

「へん・・・なって」

禁断の領域に踏み込まれて変調する琉奈。

愛美は察知して会話を打ち切る。

「あ・・・いいの・・・じゃあ・・・またね」

琉奈の猫背はゆらゆらと揺らぐ・・・。

琉奈が不在のナースセンターで鈴木はついに・・・木藤に琉奈についての違和感を訴えるのだった。

「あの人が来てから・・・病院はおかしくなったんです」

「何を言ってるの・・・」

「私・・・血まみれの女の子を見たし・・・石川さんも心霊写真を撮ったし・・・患者さんも・・・階段で血まみれの男の子を見たって・・・」

「馬鹿なことを言わないで・・・」

「でも・・・私・・・もう・・・こわくて・・・」

「ちょっと来なさい・・・」

しかし、階段で・・・木藤もジャージ姿で佇む幽霊を目撃してしまうのだった。

「そんな・・・」

ジャージには「若月高校」というネームが入っていた。

思わず・・・「幽霊・・・若月高校」で検索する木藤。

たちまち「若月高校・・・階段の幽霊・・・転落死した男子生徒がジャージ姿で階段に立っている・・・」という記事がヒットする。

「そんな・・・馬鹿な・・・」

しかし、木藤は思い出していた・・・琉奈の経歴を・・・琉奈は都立若月高校の卒業生だった。

「いやだ・・・」

木藤は背筋がぞくぞくするのを止められない。

ナイトシフトとなり・・・出勤する琉奈。

病院前で・・・朝日と遭遇する。

うろたえて、前髪を上げたり下ろしたりする琉奈だった。

しかし、猫背八十度でなんとか・・・ハンカチを返すことができた。

「あの・・・先生・・・私・・・心療内科に通ってたんです」

「え・・・」

「でも・・・すっかりよくなって・・・だけど・・・この病院の旧病棟の最上階に行ってから・・・変な夢を見るようになって・・・」

「最上階・・・」

父親が何かを隠している最上階・・・。朝日は関心を抱く。

「先生も変な夢を見るっていったでしょう」

「ああ・・・」

「白い着物をきた女の人が口を開くと黒い歯をしているのではありませんか・・・」

「え・・・どうして・・・それを」

「私もみたんです・・・これって運命ですか・・・それに私・・・・石川さんの幽霊を見たんです」

「え・・・」

「ずっとずっと見なかったから・・・病気は治ったと思ったのに・・・」

「なんだって・・・」

「でも・・・病気じゃないのかも・・・幽霊はいるのかもしれない」

「何を言ってるんだ」

その時、救急車が到着する。

搬送されてきたのは愛美だった。

「ビルから転落した模様・・・」

「坂井さん・・・わかりますかあ」

救急隊員たちの言葉が琉奈の耳に飛び込む。

「うそ・・・うそ・・・」

琉奈は見た。

血まみれの愛美が自分を見つめて佇んでいる姿を・・・。

最初の犠牲者は・・・愛美かよ・・・。

鈴木でよかったんじゃないか。主人公と顔立ちが似ていて紛らわしいから。

とにかく・・・今の処・・・まったくホラーじゃないよね。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の悪霊病棟

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