男の話を聞かない女とボディ・スナッチャー/スターマン(福士蒼汰)
宇宙人は異世界からの使者である。
そういう意味では閉鎖社会に漂着した異邦人的な側面を持つ。
田舎にやってきた都会者もそうだし、都会にやってきた田舎者もそうである。
寒い国からやってきたスパイや、列島に生息する半島人や大陸人もそうだ。
つまり、宇宙人とは外国人の一種なのである。
当然、「侵略者」という「顔」は宇宙人のモチーフとしては普遍的なものと言える。
ジャック・フィニイ(1911-1995)の代表作「盗まれた街」は人間そっくりの宇宙人がいつの間にか人間にとってかわっていくという話で「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」として映画化され、このアイディアは数多くのヴァリエーションを生んでいる。
チャイナ・タウンやコリアン・タウンを楽しむ人もいれば、それを憎悪する人もいる。
それをどちらかが正しいとは言えない。いわば「弱肉強食」と「平和共存」の交錯する世界だからである。
「自由にさせれば生活圏は浸食される」し「迫害すれば地下組織化して暗躍される」・・・異邦人は厄介な存在である。
しかし、他者と関わるというのは基本的にそういうことだ。
このドラマのヒロインのように「自分に都合がよければ些少の事には目をつぶる」というのはある意味、重要な教えを含んでいると言える。
で、『スターマン・この星の恋・第7回』(フジテレビ20130820PM1015~)脚本・岡田惠和、演出・堤幸彦を見た。この物語に登場する女性たちは地球の男を忌み嫌っている。これはピンク・レディーの「UFO」(1977年)に影響されているのだろう。彼女たちは「地球の男に飽きたところ」なのである。このドラマの視聴率が低迷しているのはきっと「そんなことはない」からなのだろう。そうすることでしか、嫌われた地球の男の傷ついた心は癒されないのである。
その代表例がスーパーマーケットやまと勤務の安藤くん(山田裕貴)で・・・確かにうざい感じであるが・・・上司の前川(石井正則)ほどのうざさではないし・・・あんまりといえばあんまりな仕打ちである。
安藤くんにまったく好意を寄せない交際相手の臼井祥子(有村架純)はとにもかくにも地球から脱出したいと希求している女の子である。
現代の若手女優の中で最も「かわいい女」にこんな「嫌な女」を演じさせるのもどうかと思うが、それでもかわいいのだからしょうがないな。
さて・・・星男(福士蒼汰)が憑依タイプの宇宙生命体であり、アクシデントの遭難者であり、生前のタツヤの死体を廃物利用していることが判明した今回である。
その本体はアメーバ系でもプラズマ系でもなくなんとなく霊体に近いものであることが推測される。
ある意味で異次元生命体と言えるだろう。
少なくとも、この次元で活動する時に有機生命体を必要とするということは・・・地元(出身星域)でもなんらかの有機生命体を家畜として利用している可能性はある。
そういう意味では「彼ら」にとって「地球人」は「家畜」以外の何物でもないはずだが、独自にある程度の「知性」を有する場合、それを準人類とみなす「博愛の精神」を有する可能性はある。
また、悪魔が人間に憑依した時にも見られる現象だが、フレームが「人体」であるために人間らしい感情を持ってしまうことも考えられる。キッドも時々、人間になったような気がすることがあるからである。
「転校生」のような男女の意識混濁の場合、女性化した男性は・・・陰茎を喪失することによって挿入したいという気持ちを喪失する可能性があるということである。
もちろん・・・身体の一部を欠損した障害者のようにもはや存在しない四肢があるように感じる違和感も生じるだろう。
とにかく・・・宇宙人Bは「星男」になることで・・・もはや完全なる宇宙人Bではなくなってしまったのだった。
もう一人の宇宙人Aに至っては40年間という人間のライフサイクルではかなり長時間を過ごしたために一種の人間化がかなり進行している。
彼らの乗り物あるいは本体に似た隕石が火球として出現した時に・・・AとBには差異が生じるがそれは個性というよりは人間化してからの経験時間差と考えられる。
そういう意味では・・・死産する運命の嬰児に憑依した宇宙人が「祥子」の可能性は大いにある。
最初から「宇宙人」だった「地球人」が物凄い帰巣本能に支配されていてもおかしくないのである。
だが・・・地球人として過ごした時間は宇宙人Aよりは短いが、星男よりは遥かに長いのである。
その地球人に対する違和感は悲しいほどに深いものである。
悪魔も時々、人間であることが哀しくなるのでその気持ちは分かる。ただし、本来、悪魔には哀しい気持ちなどないのだが。
まあ、とにかく、祥子が宇宙人Cであるかどうかは今後の展開次第だろう。
宇宙人Aと連れ添った重田(國村隼)の古女房(角替和枝)はただの隕石落下事件に際し、重田が「宇宙への帰還」を拒んだことにすっかり機嫌をよくするのだった。
一方で・・・若い女である祥子のおしかけ同棲は大目に見るらしい。
この辺の人情の機微が微妙と言えば微妙である。
一方、嫉妬深い女である宇野佐和子(広末涼子)は星男が「宇宙への帰還の可能性」について動揺したことが根本的に許せない。
こういう女の情をかわいいと感じるか鬱陶しいと感じるかは男の性格と女の状態に左右される。
佐和子はギリギリアウトなのではないかとキッドは考える。
そういう態度は全盛期のアイドルにだけ許されると考えるべきだからである。
本当にいい年して嫉妬されると辟易するよね。
まあ、それはそれとして・・・祖母の美代(吉行和子)も、親友の節(小池栄子)もうらやむ拾いものをしたのだから・・・よしとする佐和子だった。
なにしろ・・・本体が大王イカでもイカ大王でも頓着しない恐るべき「女」たちなのである。
宇野家は河原にキャンプに出かけ・・・楽しい時を過ごすのである。
そこで・・・おそらく、佐和子には腫瘍があり、それが星男の治癒力と関係してくる前フリがなされるのだった。
地球人としての経験が浅い星男には故郷が忘れがたいものらしい・・・星を見つめる星男を見つめて佐和子はそれを悟り・・・またもや動揺するのだった。
自分に・・・キャッチ&リリースの精神があるかどうかを問われるからである。
もしも・・・星男たちの目的が地球侵略にあるとすれば・・・その手先になる覚悟も問われるところである。
異邦人のスパイたちにとって・・・それは常套手段だからだ。
ま、この話はそういう風には展開しないと思いますけれど。
なにしろ・・・人々は宇宙人の言葉をうのみにするばかりなので。
吐き気が してくる
あたまを かかえて 地下鉄 乗り込む
正しい生き方 正しい死に方って
いったい誰が知っているの
いったい何が教えてくれるの
関連するキッドのブログ→第6話のレビュー
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コメント
どんなテレビドラマにもいいところは一つか二つくらいはあります。木南様とウチュージンの高速言語(?)。ああ、二つもあった。よかったよかった(棒読み)。
なんでここまで読解力とかドラマ視聴力とかを少なく見積もった脚本が書けるんだろう…。
画面に出たツイート「内容がとっぴすぎる(主婦45)」←えっ!? このドラマが突飛…。東京の女子高生が妖怪ウニ取り婆の投げたウニの毒にあたって訛りに覚醒するほうが突飛だ(~_~;。それはともかくこのドラマを「突飛」だと思うような主婦45歳は「突飛」なんて言葉を生活の中で使うとは思えない(偏見)ので、どうせAD君が考えているのだろうけど、いやAD君の作文投入はある意味とても的を射ている(笑)。
そうそう。吉行和子は好きです。アイーン(ワタシがバカで良かったって自分で言ってるし)。
投稿: 幻灯機 | 2013年8月21日 (水) 20時24分
追伸
重田家のパートになったら100倍面白くなった。もったいないもったいない。行くのかよ、一家で行くのかよ。
投稿: 幻灯機 | 2013年8月21日 (水) 20時30分
まあ・・・広末涼子の場合、
ものすごく可愛かったですからな。
時の流れの残酷さみたいなものを感じます。
とにかく・・・もう可愛い女は無理なんですな。
キッドはこのドラマの吉行和子もあまり評価しません。
飄々と演じているけれど
もっと毒のある役が見たいものですな。
とにかく・・・すべてがウソ臭いんですよ。
「どこからきて何をしようとしているのか」
この肝心なことを聞かないなんてありえない。
今さら、人間ではないことを確認されてもな。
そんなの最初からわかってるし・・・。
読解力とか視聴力ではなく・・・要求されているのは
忍耐力なんですな。
せめて・・・種族的説明はしてほしいなあ。
マジで気特隊に尋問してもらいたいのでございます。
なにしろ・・・前クールで低視聴率だったドラマと
同じアイディアなので「とっぴ」というのは図々しいですな。
「シェアハウスの恋人」・・・なにそれ・・・。
的な態度なら不勉強すぎるしねえ。
まあ、SFかと思って見たらSFじゃなかったって
いつまでも愚痴っていてもしょうがないんですがぁぁぁぁっ。
ふふふ・・・重田さんの異種族愛・・・ほのぼのですな。
移住可能な惑星らしいのも凄いですな。
それで・・・銀河評議会で
地球消毒にゴーがでると
重田一家は天然記念物になるのですなーーー。
投稿: キッド | 2013年8月22日 (木) 00時28分