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2013年8月22日 (木)

獣の母と置き手紙と浴衣と下駄とリンゴアメと水風船とベッドのスプリングと日傘と牛丼とコスモスとWoman(柊瑠美)

来たな・・・怒涛の映像ポエム攻撃が・・・。

もう、目に映るものすべてが意味深に見えてくるのである。

たとえば・・・今回・・・心を許せるらしい親戚もしくは知人女性・マキちゃんと栞が「初めての牛丼」を食べる。

栞(二階堂ふみ)というこのドラマで一番、世間の波風を受ける役柄と同席するのはマキ(柊瑠美)である。

「野ブタ。をプロデュース」のサイコな陰謀少女・蒼井かすみなあのだあ。

二階堂ふみと柊瑠美のツーショットはもはやそれだけで何かが濃いよね。

その二階堂ふみ演じる栞が・・・姉と母親の心情を思いやって・・・お茶の間は素直にはそう見ないのだが・・・家出を決意した夜・・・。

水風船を釣り上げた栞は陸に耳打ちをする。「あのね・・・」

水風船はゴムを指に留めてガチャガチャと鳴らして遊ぶ玩具である。子供の中ではその感触が一番好きだという子もいるだろう。

そして・・・おそらく・・・栞の言葉は・・・「しーちゃんのベッドでぴょんぴょんしていいよ」だったのである。

栞が家出した後で早速、ぴょんぴょんする陸。子供の中ではその感触が一番好きだという子もいるだろう。

子供をぬいぐるみのようにしか愛せない母親・紗千の大きなぬいぐるみである栞はガシャガシャとかぴょんぴょんを封じられた「いい子」だったのだ。

柊瑠美の登場で・・・またもやタイトルを逃した望海(鈴木梨央)だが・・・ここまで「ダリア」と関係していて今回は「コスモス」を口にする。

植杉家の茶の間で陸と並んでお絵かきをしているが・・・電話が鳴るとその手が止まる。

不測の事態に備えて待機モードに入っているのだ。

紗千が出て、「我孫子さんからの電話」だと健太郎に伝える。

その間、紗千はじっと電話を見つめる。

キッドの頭の中では「コスモス、ダリア」「コスモス、ダリア」「コスモス、ダリア」という古いギャグがリフレインする。

何事もないと確認してお絵かきを再開する望海・・・細かい、芸が細かいぞ~。

そして・・・ひたすらお絵かきを続ける陸のあどけなさが・・・効いてくるのである。

すげえな・・・おい・・・すげえよ・・・。

ちなみにコスモスは「宇宙」と言う名の花。花言葉は「乙女の真心」である。そして秋の桜なのである。

コスモスの風となりたるところかな(稲畑汀子・・・高濱虚子の孫娘)

みんな、風になりたいよね。なれるものならね。

踏切の前で佇む人は警報機の音にそそられたりするよねえ。

「完、完、完、完、完・・・」って鳴っているもんねえ。

で、『Woman・第8回』(日本テレビ20130814PM10~)脚本・坂元裕二、演出・水田伸生を見た。シングル・マザー青柳小春(満島ひかり)は亡き夫・青柳信(小栗旬)の遺書ならぬ遺書を手に入れる。信の小春に注がれる怒涛の真心。しかし、その夜、手紙を読んだ栞から「罪の告白」を受けて逆上する小春。愛するものを奪われた憤怒は殺意となって発露する。それを押しとどめる望海の存在。許されざるものとなった栞の心は途方に暮れる。植杉家を襲う異父姉妹の修羅場。そうとは知らず・・・紗千は家族のために・・・ケーキを買っていたのだった。

だれが頼んだわけじゃない

誰が望んだことじゃない

ただこうなっただけさ

夜の街で・・・家路を急ぐ紗千を待ち伏せる二度目の夫・健太郎(小林薫)・・・。家族が増えたので夫婦水入らずの時を過ごしたかったのである。

二人は夜のカフェ&バーに入り、若者にまぎれてトロピカル・ドリンクを注文する。

「よかった・・・と思ってる」

「何がよ・・・」

「しーちゃんも・・・最初は不安かもしれないけど・・・いつか落ち着くと思うんだ」

「あなたは・・・栞のことを知らないのよ・・・」

「・・・」

「それにもう・・・過ぎたことなの」

「・・・君がしーちゃんを生んだ夜のことを思い出す」

「あなたはナイターに夢中だったでしょ・・・」

「しーちゃんを抱いた君は・・・とても懐かしそうな目をしてた」

「・・・」

「あれは・・・小春ちゃんを生んだ時のことを思い出したんだろ・・・」

「・・・」

「しーちゃんも・・・小春ちゃんも・・・二人とも君の娘なんだよ」

「そうね」

紗千は抱えている秘密をなんとか抱えきれそうな気になった。

しかし、暗闇の中で栞は踏切の向こう側に佇んでいたのだった。

路面電車が通り過ぎるのももどかしく栞に駆け寄る両親。

「迎えにきてくれたのか」

「私、お姉ちゃんを怒らせちゃった・・・」

「なんだ・・・そんなことか・・・謝れば許してくれるよ」

「謝ったのよ・・・だから」

その一言ですべてを悟った紗千。

なぜ・・・黙っていてくれなかったのか・・・泣き笑いの表情で栞の手をとり・・・苦悶する紗千だった。

「お母さん・・・どうしたの」

「なんでもないのよ」

「お母さん・・・大丈夫」

「なんでもないの」

望海を抱きしめるしかない小春だった。

健太郎は風呂に入った。

紗千はケーキを用意した。

子供たちを寝かしつけ・・・小春は階下に降りた。

「甘いもの・・・だけど・・・食べる・・・ケーキを買って来たの」

「ご存じだったんですか」

「違うのよ・・・そうじゃないの・・・言葉が・・・足りなかっただけなの」

「はっきり聴きました・・・自分のせいで・・・そうなったって」

「言ったでしょ・・・私が梨を・・・梨なんかもたせたからって」

「私・・・誰がとか・・・誰かのせいでとか・・・思っていませんでしたから」

「私が悪いのよ」

「知ってたんですか」

「ごめんなさい」

「そんなの・・・」

「ごめんなさい・・・」

「いなくなっちゃったんですよ」

「ごめんなさい」

「いないんですよ」

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい」

「無理です・・・」

「ごめんなさい」

すがりつく紗千を小春は振り払った。

二人のやり取りをじっと聴く栞。小さな家の狭い階段そして細い廊下。

底知れぬ闇がわだかまる。

小春は植杉家から出ていく決意を固めた。

しかし・・・朝食の席で子供たちは健太郎から祭りに誘われていた。

「お母さん・・・お神輿・・・担げるんだって・・・」

「お神輿・・・お神輿」

二人の子供の目は輝いている。

「でていく」とは言い出せなくなる小春。

「お母さん・・・東京音頭・・・知ってる」

「え」

「やっとおなあそれよいよい」

「やっとおなあそれよいよい」

踊り出す二人の子供たち。

「ねえ・・・お父さん・・・東京音頭好きだったかな」

「は」

「お父さん、どんな音楽が好きだった」

「家に来た時、なんか言ってたよな・・・」

「ビリーブとか・・・」

仰向く小春と俯く栞・・・。

その頃・・・砂川家では良祐(三浦貴大)が一人息子の舜祐(庵原匠悟)の朝の支度をしていた。

自分の手で着替える舜祐。

「偉いな・・・」

しかし、食卓に用意されているのはインスタント食品だった。

「パパ、今日は早く帰ってきて遊んでやるから・・・」

「やったあ」

お愛想を言う舜祐だった。

別居中の妻、砂川藍子(谷村美月)は何やら目算が立ったらしい。

クリーニング店の職場で小春はシングルマザー仲間の蒲田由季(臼田あさ美)に自分の病気のことを打ち明ける。

母親として子供たちを植杉家に預けるのが一番いいとは分っている。しかし、女として愛しい男を奪った仇と一緒に住むことは我慢ならないのである。

そのために・・・由季に頼る算段を付け始める小春。

しかし・・・夫の信は・・・小春と紗千の仲を結ぼうとしたのではなかったのか・・・と小春には思えない。

ただ・・・憎しみだけが昂進するのだ。

「いいっすよ・・・まかせてください・・・病気のこと・・・もっと早く言ってくれればいいのに・・・」

「子供たちにも内緒なの・・・」

「わかったっす・・・」

これが最善の道なのか・・・小春は唇をかみしめる。

仕事終りで病院に行き輸血処置を受ける小春。

「簡単には言えないけれど・・・本当は・・・仕事を休んで安静にしているべきなんですよ」と藍子は言う。

「ドナー登録をお薦めします・・・それに・・・移植の適性検査を御家族に・・・説明しづらいなら・・・僕が・・・」と名刺を差し出す澤村医師(高橋一生)・・・。

病院の食堂で座り込む小春。

一時的に・・・由季に面倒を見てもらうことは可能かもしれない。

しかし・・・もし・・・自分が死んだら・・・ずっと・・・それは無理だった。

そんなことは分っていた。

ホテルの客室係である紗千は黙々とベッドメイキングをする。

せっかく・・・家族がそろったのに・・・どうして私はこんなことになってしまうのだろう。

どうして・・・栞は口を閉ざしてくれなかったのだろう。

夫を殺されて我慢が出来る女なんていやしない。

それでも最初の夫の娘はこらえてくれないだろうか。

二番目の夫の娘のために我慢してくれないだろうか。

だって二人は姉妹じゃないか。

小春は栞のお姉ちゃんじゃないか。

私だったら・・・私だったら・・・とてもこらえきれないかもしれないが。

ああ・・・なんで・・・なんでこんなことになってしまうのだろう。

仕事を終えた帰り道・・・紗千は孫のために下駄を買う。

これは罪滅ぼしなのか・・・娘への追従なのか・・・孫が可愛いのか・・・紗千にはわからない。

そこで紗千は娘の昔のクラスメート(大平奈津美)に声をかけられる。

「まあ・・・ハルミちゃん」

「ハルナですよ・・・おばさん」

「まあ・・・」

紗千は気になっていることを聞いてみた。

「あの・・・その・・・昔のことだけど・・・栞はその・・・」

「いじめですか」

「・・・」

「いじめられていましたよ」

「・・・」

「私はもちろん・・・いじめませんでしたが・・・助けることもできなかった・・・こわかったから」

「・・・どうして・・・そんなことに・・・あの子が何か」

「何も・・・栞ちゃんはクラスで一番、いい子で・・・優しくて・・・可愛くて・・・だからでしょう。かわいいぬいぐるみのはらわたを割いて取り出したくなる人はどこにでもいるものですから・・・栞ちゃんは本当に可愛いぬいぐるみみたいに・・・毎日、いじめられていましたよ」

絶句するしかない紗千だった。

かわいい栞の苦しみを十六歳の娘の悲しみを全く知らなかった紗千。

その苦しみを知らなかったから歪んだ娘が犯した取り返しのつかない罪。

下駄では償えない。

下駄なんかでは償えない。

紗千は買ったばかりの下駄を捨てた。

何も知らない呑気なナマケモノの健太郎は・・・血のつながらない孫たちと・・・楽しく盆踊りの稽古に励む。

生まれたくて生まれてきたんじゃない

生み落とされたその始末に

涙なんかでごまかされるか

決意を秘めて・・・栞は健太郎に話しかける。

「私・・・家を出たいの・・・」

「どうしたんだい・・・急に・・・小春ちゃんと何があったか知らないけど・・・人と人はさ・・・時間をかけて・・・だんだんと」

「もう・・・起きてしまったことなの」

「なんだよ・・・さっちゃんも同じようなこと言ってさ・・・」

「マキちゃんのところへ行くの」

「マキちゃん・・・東京に出てきてるのか」

「一緒に住んでもいいって」

「一体・・・何があったんだい・・・」

「教えない・・・だって・・・私のこと・・・いい子だと思ってるの・・・もう、お父さんだけだもの」

いい子になりたかった。

いい子では生きていけなかった。

でも・・・いい子でいたことはいい思い出なのだ。

人を殺してしまった子は一生、いい子には戻れないのだから。

罪を償うこともできず、それでも生きていく栞なのだった。

祭りの前夜・・・それぞれの想いを抱えて・・・天麩羅を食べる六人だった。

紗千は小春を愛せなかった分、愛しすぎた栞を抱きしめる。

決意を秘めて栞は告げる。

「私・・・明日は浴衣を着る・・・お母さんも着てね」

「・・・」

小春は子供たちの幼い手を握る。

ふたりの母親の夜は更けていく。

祭りの日・・・子供たちは新品の祭り装束に身を固める。

子供みこしを担ぐ望海。

子供みこしを曳く陸。

先導する健太郎は満面の笑み。

普通の子供たちのように祭りを楽しむ子供たちに小春の心はほころぶ。

団扇を持つ手は踊る。

「わっしょい」

「わっしょい」

紗千と栞の母娘は浴衣を着て神輿を見守るのだった。

タイトロープの上の束の間の幸せ。

それが祭りなのである。

ばからしくてやってられない

りこうになれない口実に

友達になったふりをする

そして・・・祭りの夜。

小春は子供たちに一本の綿あめを買う余裕があった。

自分の子供に何かを与えられる喜び。

栞は釣りあげた水風船を甥に与えた。

自分が殺した男の子供にあげられるものが少なすぎる栞の哀しみ。

りんご飴の屋台はテーラー植杉の担当だった。

栞は健太郎を促して・・・祭りの光の中から去っていく。

最愛の娘が去ったことに気付かずに店番をする紗千。

そこに自分の娘が殺した男の妻と子供たちがやってくる。

それは・・・自分の娘と孫たちなのだ。

「りんご飴ください」と陸が言う。

「はい・・・自分たちでやってみる・・・」と問う紗千。

「わあ・・・いいの」と目を輝かせる望海。

水あめの中を二つの林檎が転がっていく。

はしゃぐ子供たち。その笑顔に・・・誘われて笑顔になっていく小春。

自分を捨てた母の優しい面影。自分の夫を殺した女の母親の優しい態度。どこにでもいる祖母と孫たちの光景。

祭りの魔法の光の中でそれは夢か幻のようだった。

愛されてるとは思わないよ

生きてることに腹たてて

死ぬこともできずに腹たてる

祭りの後の静けさの中・・・。

子供たちは興奮が収まらない・・・。

「幸せがとまらないよ・・・どこまで楽しくなるんだって感じ」

「一生で一番楽しかった・・・」

小春は子供たちの喜びに気持ちが弾んでいく。

小春の中で消えていく選択肢。

子供たちから幸せを奪うことはできないのだった。

許せなくても我慢するしかない。怨んでも笑うしかないのだ。

祭りの後片付けを終えて家に戻った紗千。

台所には健太郎がいる。

「なんですか・・・あなたは・・・片付けに参加しないで・・・栞は帰ってますか」

「しいちゃんはもう・・・いないよ」

「え」

「さっき、見送って来た」

「見送った」

「しいちゃんも・・・もう二十歳だよ」

「二十歳だから・・・何」

「独立したいっていうのを止めることはできないよ・・・さっちゃんはもう充分にしいちゃんを育てたんだ・・・子供がもういいって言ったら・・・旅立ちを見守るのも親の役目だろう」

「・・・」

紗千は栞の部屋を訪ねた。

そこには・・・。

いくばくかの荷物が消え・・・浴衣が畳んであった。

「残ったものはゴミなので・・・捨ててください」

置き手紙が残されていた。

娘がまた・・・去って行った。獣のような母親は我が子の香りを求めて寝床の匂いを嗅ぐ。

悄然とした紗千の元へ・・・小春は微笑んでやってきた。

「今日はありがとうございました・・・下駄だけじゃなくて・・・浴衣まで・・・子供たちを幸せにしていただいて・・・」

「・・・」

「あの・・・私・・・しばらく、仕事を休むかもしれません」

「・・・」

「私、病気になってしまって・・・そのことで・・・一緒に病院に行ってもらいたいんです」

「なんで・・・今、そんなこと言うの」

「あの子・・・栞、出て行っちゃったの・・・踏切で・・・線路を見てた・・・あの子の責任じゃない・・・みんな私が悪いのに・・・だって高校生だったのに・・・あの子が背中を押したわけじゃない・・・私が梨なんか渡したから・・・あの子を追い詰めて・・・あなたが背中をおして・・・あの子は出て行った・・・それなのに・・・なんであなたがいるの・・・私の育てた娘は栞なのに・・・あなたのことは捨てたのに・・・どうしてあなたがいるのよ」

狂乱した紗千は浴衣を着たまま風呂場の掃除を始めるのだった。

「どうして・・・どうしてなのよ。死ねばいいの。栞を殺して私も死ねば許してくれるの・・・警察でもなんでも行けばいいの。でも・・・殺したのは栞じゃない。どうすればいいの。どうすれば・・・許してくれるのよ」

「どうしようもありません。なにもありません。私は母親なんです。あの子たちが大きくなるまで生きていたいだけなんです。私たち・・・ここにいるしかないんです・・・お願いします」

どうしようもなく・・・紗千は小春にしがみついた。

「娘に・・・娘に・・・また捨てられちゃった」

小春は紗千の手を振りほどく。

紗千の手についた石鹸を拭う小春。

そして・・・母を残して子供たちの元へ戻っていく小春。

暗くて狭い風呂場で・・・うなだれる紗千。

その心に疑問がわき出す。

「病気って・・・何よ・・・」

小春は寝入った子供たちの匂いを獣の母のように嗅ぐのだった。

五人家族になった植杉家+青柳家。

健太郎は呑気に子供たちと朝食を食べる。

庭にはコスモスが咲いている。

朝食抜きで仕事に出る小春に紗千は声をかける。

「いってらっしゃい」

「いってきます」

洗濯物を干していた紗千は・・・小春の遺した名刺に気がついた。

「病気ってなによ」

紗千は名刺を頼りに病院を訪れる。

そして・・・「再生不良性貧血」が「死に至る病」であることを知るのだった。

子供たちは・・・おばの去った部屋を探索する。

陸は栞から許しを得ていた。

子供たちは・・・見知らぬ機械を発見する。

望海はそれを聞いた。亡き父親の愛した歌を。

いま未来の 扉を開けるとき

悲しみや 苦しみが

いつの日か 喜びに変わるだろう

もしも誰かが 君のそばで

泣き出しそうになった時は

だまって腕をとりながら

いっしょに歩いてくれるよね

病院を出た紗千は・・・日傘をさして茫然と歩きだす。

そして・・・日傘を閉じて走り出す。

死んじゃう。小春が死んじゃう。私の最初の娘が死んじゃう。

紗千は小春の職場にたどり着く。

病をおして働く娘の姿をそっと窺がう。

「小春・・・」言葉にならない声で紗千は愛しい娘の名前を呼んでみた。

藍子は託児所から舜祐を取り出した。

「今夜はカレーにするよ」

「わあい」

「お母さんが作るよ」

「わああい」

「息子さん、先ほどお母さんがお迎えに来ましたよ」

良祐は一人になった部屋に戻る。

食事の用意が出来ない男。

そういう風に育てられた男。

何が悪いのか分らない男。

とりかえしのつかない人生から・・・逃げ出した栞。

その顔は変わらぬ微笑みをたたえている。

栞の新たなる保護者となったらしいおそらく父方の親戚であるマキも微笑む。

「元気そうね」

「ふふ・・・だって・・・ようやく・・・すべてから・・・逃げて来たんだもの・・・ふふ」

栞は謎の微笑みを返す・・・。

「何かあったの・・・」

「何にも・・・」

こうして、二人の娘は役割を交代したのだった。

妹は荒野に佇み、姉は母親の愛の海で溺れるのだ。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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コメント

こんにちは。
おおー…今回はすごく芸が濃くてキッド様のガイドなしにはわかりませんでした。


>しーちゃんのベッドでぴょんぴょんしていい

そうだったのかあ…

>何事もないと確認してお絵かきを再開する望海

ええーもう一回見ないと。気が付きませんでした。

>完、完、完、完、完

なるほど( ´▽`)

>これは罪滅ぼしなのか
>紗千は買ったばかりの下駄を捨てた
 
何を買ってどうして捨てたのかよくわかりませんでした。
 
小春が病気を告白したときの反応は、娘が再生不良性貧血だって言ってるのに
これはずいぶんと思いましたが、再生不良性貧血ってガンと違って
名前だけで大変な病気とはわかってなかったのですね。
でも、小春より栞が好きで、それは小春が
自分の娘ではあるけどDV夫の娘でもあるからかと思いました。

 
小春の言い方ってすごい力がこもってるように聞こえるのですが
「思ってもないですがこう言うべきだから
ものすごく精神力で我慢して言ってます」っていうのが
すごい見える言い方だからだって今回思いました。


>そして・・・日傘を閉じて走り出す。
死んじゃう。小春が死んじゃう。私の最初の娘が死んじゃう
 
なるほど…なんか理屈じゃないですね。この走りって、ここで
書ける脚本家さんすごい…

>すべてから・・・逃げて来たんだもの・・・ふふ
 
この逃げてきたって、栞にとっては「母親から」ってことも
入ってるのかなって思うのは考えすぎでしょうか。
 
暑さの峠越えたでしょうか。ではまた拝読させていただきます~

投稿: りんごあめ | 2013年8月22日 (木) 21時25分

◉☮◉Mother~リンゴあめ様、いらっしゃいませ~Mother◉☮◉

ふふふ・・・物語の中核に添えられたリンゴあめに
リンゴあめ様にとっても思い出深い一編になったことでしょうな。

栞があまりに身勝手で・・・不気味な存在だと
感じる健全なお茶の間の皆さんも多いわけですが
「感受性」の強い紗千と健太郎の娘で、
「思い込みの激しい」小春の妹で、
「健気な」望海や陸の叔母である・・・栞。
遺伝的にも普通の女の子であったことは想像できます。

幼い頃から・・・姉の分まで二倍母親に愛され
十代でいじめられ
高校生で下僕として悪戯をして
17歳で殺人者となる。

それ以来・・・電車に乗れなくなった栞。
バスには乗れたかもしれませんが・・・
キッドの妄想の中では
いつも徒歩です。
高校や予備校に徒歩で通う栞。
どうしても遅刻してしまう。
しかし、電車には乗れないのです。
そして、くりかえしくりかえし線路からの使者の夢に苛まれる。
そういう三年間がハイティーンにのしかかってきた。
望海や陸を助けるために
電車に乗った栞はきっと救いを求めていたことでしょう。
もちろん・・・それは与えられるわけもない。

いい子を求められても
もう無理なのです。
なにしろ・・・人殺しなのです。
これ以上、悪い子はいないと言える。
人殺しになったら・・・
もう、どんな悪も責められない。
どんな正義も口にできない。

そうした・・・過去の自分から
区切りをつけて逃れなくては
生きていけないのではないかと思われますな。

そのためには・・・母親のぬいぐるみから一人の人間に
ならなければいけないのですな。

とにかく・・・脚本の再現性を低めるために
小春のセリフの「病名」をレビューから抜きましたが
まあ・・・おそらく・・・
その病の意味するところを
紗千はあの夜には気がつかなかったということで
間違いないでしょう。

「家庭の医学」もポエムとしては重要ですが
紗千の獣母親ダッシュを生かすには
「病名」は抜いておく手もあるかと思いますしね。

「目に入れても痛くないほど可愛い」とか
「食べちゃいたいくらい可愛い」という表現があって
「母猫は子供を守ろうとして食べてしまう」という幻想が成立します。

紗千はそういう母猫のような感じが匂い立っていますな。

そういう・・・理屈抜きの感情のほとばしりこそが
この脚本家の最高の魅力ですよねえ。

小春の必死さは・・・
母親ではなくて父親を選んだ頃から
変わらない思い込みの激しさからきている。
譲れない気持ちが多過ぎて
ああいう・・・言葉にならない言葉が
紡ぎだされるのでしょうな。

「ひー」と言いたいところを
「ああだこうだ」言うのですな。

「やっと逃げられたんだもの」という本編の
栞のセリフは「紗千の束縛」を強調したものになっていますが
キッドの中では
「いい子だったのに人殺しになっていた20年間の人生」から逃げるしかないよね・・・ということだと妄想しているのです。

それは「忘れられないけど・・・忘れるしかない」ことなので「忘れた」と自嘲するしかないわけで・・・。

北の方からゆっくりと南下してくる秋。
東京はまだまだ最後の暑さが
名残を惜しんでいるようです。

季節の変わり目・・・ご自愛くだされますように。

投稿: キッド | 2013年8月23日 (金) 02時21分

紗千が毛布を嗅いだ時、
小春の元へ走った時、
自分も同じだな、そうするなって感情移入しました。
自分のところでは書けなかったんですが、
リンクしながら想像して泣いたのは、
上の娘ではなく下の娘。
同じ娘なのにどうしてですかね。
DV夫の子でもないのに(笑)

もし居なくなってしまったら…
涙が止まらない(/_;)
置いて行った荷物はゴミじゃない。
ただのメモすら宝物、捨てられない。
子供を亡くした親が部屋をそのままに
片付けられない気持ちも分かります。

2人の娘の間で苦しむ母親を、
田中さんが見事に魅せてくれますね~。
そして二階堂ちゃんが適役だと思わせてくれます。
流石のキャスティン(o^-')bグーググー!(*゚0゚)クォーーー!

投稿: mana | 2013年8月23日 (金) 14時41分

|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||

生まれてこなかった子供にさえ
そういう想いを抱く方はいるそうですから
いわば定番の感情なのでしょうな。

末の娘は可愛いといいますからな。
それだけ親も年老いていますし
下に行くにつれ
過ごす時間が短いのは
決定事項でございます。

それだけで末の娘は不憫なのですな。

兄弟姉妹・・・葛藤がございますよね。

面倒見てもらっている嫁よりも
遠くに住んでいる娘が恋しいのも
人情だったりしますしな。

同じ子供でも相性はあるでしょうしねえ。

馬鹿な子ほど可愛いの法則もありますしねえ。

まあ、賢い方の子供は不条理を感じるポイントだったりしますが・・・馬鹿だからしょうがないと賢く思うしかないのですな。

メインの家族からいじめっ子
助けられなかった仲良し
通りすがりの道を訪ねる人
ちょっと杓子定規な看護師まで・・。
まったくよどみないキャスティングですな。

託児所の保母さんも
いい味出しているようです。
「島田さん、ひっこしましたよ」の
呪いはかかっていましたけれど~。

投稿: キッド | 2013年8月23日 (金) 15時24分

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» 『Woman』 第8話 [美容師は見た…]
あんなに振ったら崩れるってば…と心配したケーキは無事でした。が!喉を通らず、味も分からず。タイミング悪し。「植杉さん、 ご存じだったんですか? 私の夫が事故に遭った理由」  小春…「前にも話したでしょ? 梨を私があげて。その通りなの。 私の責任なの。… あの... [続きを読む]

受信: 2013年8月23日 (金) 14時41分

» Woman 第8話 [ドラマハンティングP2G]
第8話「あの子を殺して私も死ねばいいの?」 2013年8月21日放送 栞(二階堂ふみ)が信(小栗旬)にしたことを知り、激しく動揺する小春(満島ひかり)。彼女は植杉家を出ていく決意をする。 紗千(田中裕子)は、二人の娘の間で苦悩する。 母たちの葛藤を知らない望海(…... [続きを読む]

受信: 2013年8月23日 (金) 16時39分

» Woman(8) [ドラ☆カフェ]
あの子を殺して私も死ねばいいの? 視聴率は 13.0%・・・前回(13.0)と同じ [続きを読む]

受信: 2013年8月24日 (土) 15時56分

» Woman 第8話 [エリのささやき]
やっと逃げ出せたという栞。強がりならいいけど・・やっぱりあなたは・・・(-- [続きを読む]

受信: 2013年8月27日 (火) 20時03分

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