うわあ・・・である。
残り二週になっちゃったよお~なのである。
ある意味、二週間後の土曜日の夜が心配である。日曜日はまだしも・・・月曜日ときたら・・・。
みんな・・・「あまちゃん」なしでやっていけるのか。
他人はいいとして自分はどうなんだ・・・と問うのさえ恐ろしいのだな。
さて・・・スペシャル番組「秋の夜長の“あまちゃん”ライブ~大友良英と仲間たち大音楽会~」(NHK総合20130913~)がオンエアされて・・・そういう心を慰めるのだが・・・幕間のトークショーで披露された撮影裏話で・・・能年玲奈のエピソードを古田新太が披露して・・・ええっとのけぞった人も多かったはずである。
あまちゃん屈指の名場面の一つ、「アキと太巻、奈落で出会う」のシーンで・・・。太巻に・・・「暦の上ではディセンバー」の振り付けについて意見を求められたアキが・・・。結構、コミカルでアバンギャルドな振り付けを披露するのだが・・・。
これが・・・能年玲奈のアドリブだったという衝撃の展開である。
うわあ・・・天才すぎると多くの人が驚愕しただろう。
アホ(バカ)な子ほどかわいい・・・という古典的な「萌え」の要素に現代風な「アホかわいい」という「萌え」を上書きしたような能年玲奈だが・・・その「アホかわいさ」に神秘的な影が寄り添ったのだな。
どうか・・・生き馬の目を抜く業界の風から「栄光の加護」というバリアが与えられるようにと祈ります。
朝ドラマを一歩出たら、そこは新世界だからな。
さて・・・残り六回はほぼ、序破急のリフレインになって・・・今週は最後の序破急の序であった。
同時に「その後編」の起承転結による「承」の章。
そして、六回目の起承転結の「結」の章である。
本当に・・・複雑な構成をよどみなく積み上げていくよなあ・・・。
六回目の起承転結のサブタイトルは次の通り。
第21週「おらたちの大逆転」
第22週「おらとママの潮騒のメモリー」
第23週「おら、みんなに会いでぇ!」
第24週「おら、やっぱりこの海が好きだ!」
ああ・・・時の潮騒が聴こえる・・・。
で、『連続テレビ小説・あまちゃん・第24週』(NHK総合20130909AM8~)脚本・宮藤官九郎、演出・桑野智宏を見た。2011年3月11日の午後・・・日本は東日本大震災後の世界へと変転した。自粛ムードの嵐の中、芸能事務所・スリーJプロダクションのタレント・天野アキ(能年玲奈)が鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)とダブル主演した映画「潮騒のメモリー~母娘の島」は公開一週間で打ち切られ、主題歌「潮騒のメモリー」のお披露目ライブも中止となる。被災地のユイ(橋本愛)から「「帰ってきて・・・」と支援要請を受けたアキは・・・東京での芸能活動を休止し、春子(小泉今日子)を東京に残して、六月の下旬、夏(宮本信子)の待つ北三陸市に到着する。しかし、再会したユイの心は震災の衝撃の中に封じられていた。アキは笑顔を失ったユイに茫然とするのだった。ついに、アキの十代最後の夏が始ろうとしていた。愛するユイのために何ができるのか・・・アキは自分の進むべき道を模索し始めるのだった。
月曜日 津波の果て、瓦礫の山の上に今も立っている少女(橋本愛)
2011年7月。袖が浜海岸の海開きの日がやってきた。
「帰って来た海女のアキちゃん効果」により、袖が浜には観光客が押し寄せる。
しかし・・・そこに海女のユイちゃんの姿はない。
観光客の熱い視線を浴びつつ、大好きな海に元気よく飛び込むアキ。
だが・・・海中でアキは困惑するのだった。その表情の見事なこと・・・海の中とは思えないのである。
「ウニがいねえっ」
アキは水面に顔を出して、先輩海女の美寿々(美保純)に救いを求める。
「そんなことはないべ・・・よく見てみろ~」と呑気に応じる美寿々。
アキは再び、海に潜り・・・不安を募らすのだった。
そこは・・・アキの知っている袖が浜の海中ではなかった。
海底の景色は一変し・・・アキにはどこにウニがいるのか・・・まったく見当もつかない。
震災によってウニの数は激減し・・・海女四年目で・・・しかも二年近いブランクのあるアキにとって・・・ウニ採り放題というわけにはいかなくなっていたのである。
瓦礫の降り積もる海底で・・・アキは途方に暮れるのだった。
その・・・困り果てた顔がまた・・・アホかわいいのだった。
「おらが・・・とりたいウニは・・・いません・・・だから・・・とれません」
観光協会ではジオラマだけがとりあえず復興していた。
ジオラマを囲んでの首脳会議が震災後、漸く開催されたのである。
大人たちの背後にちょこんとすわるアキ。
その横にユイがやってくる・・・。
「何・・・あのパスワードみたいなの・・・」
「ここは・・・大人たちのスーパーマリオに支配された世界なのでがす」
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「転んでもただでは起ぎねえ北三陸を今度こそ何とかすっぺ目にもの見せてやっぺゴーストバスタ~ズ!」と大吉(杉本哲太)・・・。
「なげえよ・・・」と眼鏡会計婆・かつ枝(木野花)・・・。
「ごめん・・・」と大吉がホワイトボードを消そうとすると・・・。
「あ~、まだ書き写してねえべ・・・パスワートが違いますって言われたらどうすんだっ」と弥生(渡辺えり)・・・。
「何もかもが懐かしい・・・」と繰り返しのギャグさえも涙を誘うここは被災地である。
「ここで・・・哀しいお知らせです・・・」と吉田(荒川良々)は新聞を掲げる。
北鉄・・・復興費用・・・80億円の見出し
「80億円とか・・・」と組合長(でんでん)・・・。
「国は・・・復興予算を出す気あるのか・・・」と夏ばっぱ・・・。
「それにしたって・・・被災したのは北鉄ばかりでねえからな」と商工会長のあつし(菅原大吉)・・・。
北鉄をないがしろにする発言に憤った吉田はジオラマのブティック今野に鼻くそをこすりつけるのだった。
「そこは・・・駐車場だけどな・・・」と険悪なムードを宥めすかす観光協会長の保(吹越満)・・・。
ああ、北三陸オールスターズの復活である。
「耐えるんだ・・・吉田くん・・・赤字の北鉄さ、復興させるよりも・・・別のことに金さ使う方が意義がある・・・優先順位は人それぞれの市民感覚だ。いろいろあって当然だ・・・しかし・・・ユイちゃん・・・」
「・・・」
急に話を振られてもピンと来ない表情のユイ。
「あの日・・・おらたちの乗った北鉄が・・・車庫に戻って来た時・・・」
鈴木のばっぱ(大方斐紗子)は北鉄の車両を拝むのだった。
「この北鉄様が・・・おらの命さ助けてくれた」
「そんな・・・鈴木のばっぱに・・・もう、北鉄は廃線になっちまうかもしれねえなんて言えないべ」
黙りこむ一同。
「おらは・・・あの時、誓ったんだ・・・何がなんでも北鉄さ、もう一度走らせて、第三セクターの維持を見せるべ。なんてったって北鉄は北三陸市のシンボルだべ」
「んだんだんだ」と飛び上がる弥生。
その姿に背後に控えるストーブ(小池徹平)の目が光る。
「被災者が望むものは与えられるべし」
「んだんだんだ」
「北鉄の全線開通を目指して復興計画を進めるべし」
「んだんだんだ」
チャリンチャリンチャリーン
マリオの世界が会議場を席巻しようとした時・・・夏ぱっぱが口を挟む。
「んだけども・・・銭のことはどうすんだ・・・先立つものがなければ始らねえど」
夏ばっぱはマリオ以前の人間なのである。
アキは「海女カフェ復活」を言い出す空気ではないことを感じ取っていた。
もうすぐ、二十歳なのである。
芸能界の荒波にもまれたのである。
アホの子もそれなりに成長しているのだった。
その時、観光協会の海女カフェ担当者であるストーブは・・・。
∩
∪ジェニ~!!
i!|i!
┌┬─┐
├┴┬┤
└─┴┘
(_Y )_
( σ∀σ)∩
σ || || ノ
│゚ ゚̄/つ
し'~´ んだんだんだ~♪
こんな絵を描いてアキの好感度を知らぬ間に下げていたのだった。
ス、ストーブよ・・・フラグたてそこなったよ・・・今、今の瞬間ね。
しかし・・・とアキは思う。
アキには直感で分っていたのだ・・・。
北鉄のユイちゃんは・・・海女カフェの潮騒のメモリーズの看板のように・・・今も土砂と瓦礫に埋もれているのだと。
ユイを救い出すには「海女カフェの復活」は必須イベントなのである。
だが・・・アキのそんな焦燥感をよそに・・・冷静沈着の仮面をかぶったユイは席を立つのだった。
「ごめんね・・・アキちゃん・・・そろそろ・・・スナックを開ける時間だから・・・」
「そうか・・・」
去って行くユイの後ろ姿を見つめるアキ。
滅多に見れない観光協会の廊下で父親の足立先生(平泉成)とすれ違うユイ。
「今、何の話だ・・・」
「遅刻してきた人には教えてあげない」
父親の顔を見て、一瞬、息を吹き返す在りし日のユイだった。
首脳会議の話題は「海開きについて」に移っていた。
「夏さん、アキちゃん効果で集客はどうだった?」と保。
「客はまずまず集まったが・・・肝心のウニがいねえ」
袖が浜のウニは津波によって80%が死滅していた。
ここでは初めて弥生が「原発事故による放射能汚染」について言葉を選んで言及する。
「苦労して生き残ったウニをとってもよ・・・やれ、カルシウムだ、やれ、ストロングだのって・・・うるさくてかなわねえ」
「なんだか・・・丈夫で長持ちしそうな感じになっちゃってますけどね」
「風評被害が風評被害を呼ぶんだ・・・韓国だのフランスだのは底意地の悪いことばかりしか言わねえしな」
「そんな奴ら、こっそり汚染水でも飲ませてやればええっ」
「そうだ・・・安全基準さ満たしてもダメなら・・・死なばもろともだ」
「北鉄もダメ・・・ウニもダメか・・・」
問題が山積みされ・・・何から手をつけていいか・・・分らない状態である。
アキは現状打開のための突破口を模索し・・・アホの子頭脳を高速回転させるのだった。
その視線の先に・・・ミサンガである。
「ミ、ミサンガ・・・ミサンガはどうなってます」
「ミサンガも生産中止してんの・・・材料費がバカになんねえから」と旧姓栗原ちゃん(安藤玉恵)・・・。
「それに・・・ミサンガってチャラチャラしてるでしょう・・・四月にEXILEが東日本大震災のために親を失った震災遺児らのためのミサンガを製作してあしなが育英会に寄付するって先をこされちまったし・・・まあ、EXILEにヒロシはいないけどね」と吉田。
「いいと思うんだけどな・・・復興祈願の海女のミサンガ・・・」
救いを求めるように勉さん(塩見三省)を見るアキ。
「そうだ・・・琥珀はとにかく順調だし・・・」
しかし・・・この会議において勉さんの影響力はゼロに等しいのだった。
「先生は・・・どうお考えですか」と夏は足立先生に水を向けるのだった。
「いやあ・・・政治家は口先だけだからねえ」
「そんな・・・他人事みたいな・・・」
「他人事さ・・・もう、議員じゃないからね」
足立先生の議員バッジは・・・「木更津キャッツアイ」で美礼先生(薬師丸ひろ子)がぶっさんの臨終に立ち会った時に付着していた呪いのシジミと化していたのだった。
「どうして・・・こんな非常時に・・・辞職なんて」と不審に思う大吉。
「次の市長選に立候補することにしましたから」
「じぇじぇじぇ」を通り越して唖然とする一同だった。
なにしろ・・・足立先生は死に損ないなのである。
かくて・・・復興会議は・・・スナック梨明日に席を移し・・・「足立先生の立候補を応援する会」と化したのであった。
「私が市長になった暁には・・・北鉄の全線開通を目指して復興計画を推進いたします」
足立先生は公約を謳い・・・出戻り妻のよしえ(八木亜希子)とストーブ、ユイと共にお騒がせ家族足立家の再出発を宣言するのだった。
保は・・・アキとユイに呼びかける。
「どうせなら・・・潮騒のメモリーズも復活したらどうだろう・・・」
アキは喜ぶが・・・ユイは表情を変えない。
そして・・・ユイはアキを店外に連れ出すのだった。
「私は・・・もう・・・表舞台には・・・」
「ユイちゃん・・・」
「ごめんね・・・こんな時だし・・・北三陸や・・・東北のために・・・今できることをやるのは立派なことだと思う。でも・・・ミス北鉄とか・・・海女のユイちゃんとか・・・潮騒のメモリーズとか・・・人前で・・・歌ったり、踊ったり、潜ったり・・・それは私には無理なんだ」
アキには分っていた。
ユイちゃんが・・・こういうことを言い出す時は・・・こわがっている時だと。
ユイちゃんは・・・こわくてこわくてたまらないのだと。
しかし・・・それを宥めすかす術をアキは見いだせないのだった。
そこによしえが・・・食材の在り処を聞きにやってくる。
「待って・・・私がやるから・・・アキちゃん、ごめんね・・・今の私は場末のスナックのママがお似合いなの・・・海女カフェが復活したら・・・手伝いには行くからね・・・」
店に戻って行くユイを見送るアキ。
ユイちゃんは・・・平静を装っているように見える。
しかし・・・アキの目にはユイの心が死にかけているように映るのである。
ユイは夢も現実も失った生ける屍・・・スナック・ママ・ゾンビというモンスターと化しているのだった。
「待ってろ・・・ユイちゃん、もうすぐ助けてやるからな」・・・ダーク・ファンタジー・ゲームの主人公としてアキは心に誓うのだった。
火曜日 海死ねウニ死ねの呪文の側に復興祈願のミサンガの素があるそうです(宮本信子)
アキは北三陸のパパである大吉におねだりして・・・ユイが遭難した畑野トンネルに連れて行ってもらうのだった。
ユイの心を暗闇に封印した秘密の鍵を捜すためである。
大吉やユイの命を守った暗いトンネルを抜けると震災後にユイが見た景色がアキの目に映る。
それは・・・震災四ヶ月を経ても無惨な姿を曝すユイの生まれ育った故郷の変わり果てた姿だった。
北三陸市(フィクション)の行政区分設定は明らかではないが・・・一応、ユイの家は畑野村にあるらしい。畑野トンネルの向こう側が畑野村であり、そこが壊滅しているわけである。ユイは生まれ育った村を通過して東京へ向かう途中で命拾いをしたのだった。
何度も東京行きを運命によって阻止されたユイなのである。
歪んで途切れた線路は心に突き刺さっただろう。
打ち上げられたままの漁船。裏返しになった車。震災後四カ月を経ても散乱するありとあらゆる残骸。あるものは住む家を・・・あるものは家族を・・・そしてあるものは命を失った・・・地獄の光景。
アキは言葉を失った。
ユイを直撃した衝撃の大きさを想像することができなかった。
アキにはユイのようにその光景を直視し続けることは困難だった。
目をそらせずにユイは地獄に囚われてしまったのである。
アキは視線をそらし・・・海を見た。
海は穏やかだった。
しかし・・・アキにはそれが禍々しいものに思えて来たのだった。
ユイの心を覆う闇の深さに・・・アキは怯む。
重い心でアキは袖が浜に戻って来た。
袖が浜の漁港にも漁船は一隻もない。
浜辺の漁師たちの家もない。
海女カフェもない。
アキはすがる思いで灯台下の春子の落書きを見るのだった。
故郷を呪う春子の落書き。しかし・・・それさえもアキにとっては慰めとなる。
それほどの荒廃が袖が浜を包んでいる。
ユイのみならず・・・組合長も眼鏡会計婆も・・・そういえば・・・美寿々さんの彼氏はどうなったんだ・・・波にのまれたのか・・・大吉さんも・・・北鉄があんなことになって・・・それでも笑っているのだ。
何かしなくては・・・何かしなくては・・・何かしなくては・・・切迫した思いがアキを急かす。
そして・・・何かに躓かせるのだった。
「いでっ」
アホ可愛さ爆発の転倒あって・・・アキは打ち捨てられた底引き網を発見する。
アキの様子を見に来た夏ばっぱ。
「どうした・・・」
「これなんだべ」
「そりゃ・・・捨てられた底引き網だ・・・」
「これ・・・これ・・・」
叫んだアキはバラックの仮設漁協事務所に向かうのだった。
アキを迎える花巻(伊勢志摩)・・・。
「これ・・・これで・・・ミサンガ・・・復興祈願のミサンガ」
「そりゃ・・・駄目だ」
「なんでだ・・・きれいだし・・・捨ててあるならミサンガの材料費がタダになるべ」
「捨てるに捨てられず置いてあるんだ・・・」とかつ枝。
「底引き網は・・・漁師の魂が宿っている・・・神聖なもんなんだ」と組合長。
「海の底にも一杯・・・散乱してっぞ・・・」といっそん(皆川猿時)・・・。
「でも・・・ミサンガ・・・海女の復興祈願のミサンガ」
「やるべ」と息を切らしてかけつけた夏ばっぱ。
「・・・」
「網でこしらえたミサンガみて・・・一日も早く・・・漁に出ようと誓えばいい・・・それに・・・ミサンガ売って、新しい網が買える」
「銭とるのか」
「当たり前だ」
「ちょっと生臭いけどね」とおどける美寿々だった。
アキが思いついて夏がまとめる・・・天野家の祖母と孫の鉄壁の連携が復活したのだった。
アキはついに・・・海女カフェ復活の道標となる「復興祈願海女のミサンガパート2」を入手したのだった。
喫茶リアスで試作品のお披露目が行われる。
勉さんの琥珀で装飾され、弥生が仕上げたミサンガを薄倖のストーブが試着する。
その一瞬、ユイに浮かぶ幽かな微笑み。
それはたちまち・・・消えてしまうが・・・アキは見逃さなかった。
「海女のミサンガ」はユイの心を揺らしたのである。
たちまち・・・量産体制に入る「新ミサンガ」・・・。材料費タダなので太めだった。
アキは・・・ミサンガを東京の種市に贈った。
「ありがとうな・・・このミサンガは弥生さんたちが作ったのか」
「先輩の分だけは・・・おらが作っただ」
「そうか・・・」
電話の向こうで明らかに顔が輝く種市だった。
「先輩は・・・いつ来るんだ」
「お盆になったら・・・いくつもりだ・・・」
「そうか・・・待ち遠しいな・・・」
ユイの心に巣食う暗闇との戦いは長期戦になりそうだった。
種市に逢いたい気持ちを我慢しているアキなのである。
「電話代も電気代ももったいねえぞ」と一応アキを叱る夏ばっぱ。
「・・・」
「そろそろ・・・夕飯にすっか」
干したわかめをとりこむ夏。
「夏ばっぱ・・・引退しねえのか」
「だって・・・もう67歳だべ・・・四捨五入したら百歳だべ」
「んなら、お前はゼロ歳かっ」
それでも・・・アキは・・・夏に問いただす。
「ばっぱは・・・怖くねえの」
「何がだ」
「津波・・・見たんでしょ」
「見たさ・・・高台でな」
「海に入るのがこわくならなかったの・・・」
「恐ろしい目にあったのは・・・初めてではねえからな・・・五十年前にもチリ地震の津波があった」
1960年チリ地震で発生した津波は三陸海岸に襲来した。岩手県、宮城県などを中心に死者行方不明者142名を出し、四万六千戸の建物に被害を与え、罹災者は14万人を越えたのである。
「生きている間にまた怖い目に逢うとはおもわなかったが・・・だからといって・・・海さ捨てられるか・・・」
「・・・」
「組合長とかつ枝さんの息子は19歳で波にのまれてなくなった・・・その遺品もなにもかも流された二人だ・・・それでも海から離れない二人に出でけって言えるか」
「・・・」
「忠兵衛さんが帰ってきて・・・この家なかったら・・・どうする・・・どこで待つ・・・高原のログハウスか・・・世田谷のマンションか・・・」
「似合わねえな・・・」
「だべ・・・忠兵衛さんと引きあわせてくれて・・・家族におまんま食べさせてくれたのも海だ・・・一度や二度、機嫌損ねたって・・・捨てられるもんじゃねえ」
「・・・」
「海と心中する覚悟はとっくにできてるんだ」
「そうか・・・」
アキは夏ばっぱの心を感じた。
夏ばっぱはアキを励ましているのだった。
あきらめるな・・・自分のやりたいことをやれ・・・と。
そこへやってくる・・・ミサンガを大量に抱えた組合長夫婦といっそん。
「噂をすれば影だな・・・北三陸で一番のベストカップルが来たぞ・・・」
「誰がベストカップルだって」
「組合長と眼鏡会計婆だ・・・」
「こらあ・・・アキ~」
「アキ、ほらミサンガ、種市に送ってやれ」
たちまち・・・活気に包まれる天野家だった。
アキの大好きな北三陸が蘇りはじめる。
アキはなんだかとってもうれしくなった。
水曜日 できることなら生まれ変れるならあなたになりたいハロー・グッバイ(薬師丸ひろ子)
七月下旬。輸送ルートは確保され、北三陸から東京へ宅配便が届くのだった。
アキから贈られた「復興祈願ミサンガ」の伝道師となった種市は・・・梅さん(ピエール瀧)、鈴鹿、水口(松田龍平)などから義援金を募るのだった。
「五百円です・・・」
一万個さばけば500万円、十万個さばけば5000万円である。
「地元に帰ろう」を買った人が全員、義援金をくれたら、海女カフェすぐに建つぞ。
無頼鮨でドラマ「おなご先生奮闘記」のセリフ合わせをする鈴鹿と水口。
しかし・・・途中から・・・「私、結婚したいと思います」と結婚報告記者会見のセッティングを要求する鈴鹿だった。お相手は太巻(古田新太)である。
「じぇじぇじぇじぇじぇ」と水口からの電話で驚くアキ。
純喫茶アイドルではマスターの甲斐さん(松尾スズキ)がショックで卒倒し、水口がカウンターに入っていた。
とにかく・・・水口もアキとリンクしていたいらしい。
みんなが端末でつながっている魔法の時代なのである。
太巻と鈴鹿。正宗(尾美としのり)と春子がテーブルについている。もちろん、春子は不機嫌なのだった。
「ずっと・・・一緒に暮らしてたわけ?」
「内縁ですけどね・・・」
「いつから?」
「いつからにする~」
「正直に言ってください」
「でも・・・女優としてのイメージがあるから~」
「それは・・・こっちで考えますから」
「平成元年よね~覚えやすいのよね~」
「正確に言うと・・・春ちゃんが愛想尽かしていなくなった直後だ・・・」と太巻。
「じゃあ・・・僕と春ちゃんが一緒になった時と同じだ」と正宗。
春子の気分は不機嫌モードから逆上モードに移行するのだった。
つまり・・・春子のアイドルの道を絶っておいて鈴鹿とイチャイチャしてたのかよ・・・なのである。
もちろん・・・春子にとっては「アイドル」が最優先だったのだ・・・しかし、幽かに「男と女」的な要素もふくんでいると思われる。
少なくとも・・・鈴鹿は・・・そこを幽かに疑っている。
決着のついた問題でも・・・春子の中に棲む若き日の春子(有村架純)が消滅したわけではない。
「鈴鹿さんの影武者になったからアイドルになれなかった」・・・この怨みは永遠に晴れないのだ。
しかし・・・それは同時に・・・正宗と出会い・・・結婚し・・・アキを出産した・・・春子の女としてのそれなりの人生の幸福にも結びついていた。
春子の中で「アキの母親になれたこと」と「アイドルになれなかったこと」は終ることのない最終戦争を継続中なのだった。
春子のはるはハルマゲドンのはるなのだった。
その延長線上に「鈴鹿ひろ美はアイドルになって大女優になったけど・・・結婚も出産もしてないもんねえ」という春子なりの優越感堅持があったことは言うまでもない。
ここである・・・「鈴鹿ひろ美が結婚したら・・・」・・・「アイドル」もして「結婚」もするなんてずるいよっと春子は叫ぶのだ。
「ああ・・・私って・・・そういうことで・・・ギリギリ堪えてたのか・・・と思うと情けない」という気持ちになるのであった。
大体・・・「アキ」に失礼な話なのである。
だから・・・結局、「おめでとう」と言うしかない気分の春子だった。
しかし・・・春子の気分を敏感に察知する・・・鈴鹿。
「私が歌が下手だったから・・・いけなかったのよね」
春子の中で肯定したい気持ちと否定しなければならない計算が渦巻くのだった。
「いえ・・・それは違います・・・だって・・・おかげでアキの母親になれたんですから・・・音痴様様です」
つまり・・・春子としては春子にあって鈴鹿にないもの・・・「アキ」で妥協したのである。
だが・・・鈴鹿が反応したのは・・・。
「音痴様様・・・ってあんまりだわ」
つまり・・・音痴の人は自分がどれほど音痴なのか分らない・・・だって音痴なんだものなのである。鈴鹿の鬱屈は太巻を強烈に締めあげるのだった。
ぎゅうううううううううううううう・・・なのである。
ともかく・・・暴発の後の謝罪モードに移行する春子。
「ごめんなさい・・・」
「もう・・・しょうがないわねえ」
「えへへ」
「うふふ」
なんだかんだ・・・鈴鹿はアキに甘いように・・・春子にも甘いのだった。
優等生とヤンキーとアホの子の永遠の女友達相性問題なのである。
しかし・・・正宗は単純に・・・鈴鹿ひろ美を影から支えた太巻に自分の苦労を重ねて感極まるのである。
そして・・・「嵐の素顔/工藤静香 」を曝した春子と鈴鹿という二人の女は「Diamonds/プリンセス・プリンセス 」な関係を維持するために「Runner/爆風スランプ」で走りだしたのだった。
2002年八月、アントニオ猪木が格闘技イベント「Dynamite!」で上空3000メートルから国立霞ヶ丘陸上競技場へとスカイダイビングに挑戦したために・・・結婚発表を取りやめた太巻だったが・・・なんか嫌な感じがするものの「震災婚」ブームに乗ってついに挙式・入籍を果たしたのだった。
鈴鹿ひろ美と荒巻太一というビッグカップルの誕生だった。
春子が仕掛け人としてそれなりに売り上げたことは否めないのだった。
そして・・・正宗と春子にも新たな転機が訪れたのだった。
鈴鹿ひろ美が結婚しているのに春子が離婚しているのでは・・・春子の優越感の・・・計算が合わないのである。
東京で新たな決着がつけられた2013年、八月・・・。
北三陸で・・・海辺で笑顔をふりまいていたアキは安部ちゃん(片桐はいり)のまめぶトラックを発見するのだった。
「じぇじぇじぇ・・・」
あわてて・・・自転車をかっとばし漁協バラックに向かうアキ。
「あんべちゃん・・・あんべちゃんのトラック・・・あんべちゃん」
アホかわいくうろたえるアキ。
そこではすであんべちゃんが帰郷の挨拶を済ませていた。
「なして・・・あんべちゃん・・・なして」
「目標1000000食を達成したので・・・まめぶ大使卒業でがんす」
「かっけえよ・・・あんべちゃん・・・かっけえよ」
微笑むあんべちゃんだった。一杯300円としても3年間で300,000,000円。
実はあんべちゃんは年商一億円の女だったのだ。
「おらは・・・あんべちゃんが・・・おらの落ち武者だったことを誇りに思うぞ」
「アキちゃん・・・落ち武者でなくて・・・影武者よ」
意味不明なアキを組合長が庇う。
「まあ・・・影武者でも落ち武者でもいいんでねえか」
「よくありません・・・いくらなんでももう二十歳なんだから・・・落ち武者と影武者の区別ぐらいつかないと・・・恥ずかしいでしょ」
案じられてアホ可愛くめげるアキなのである。
思えばあんべちゃんは東京に先発し、鈴鹿とともに春子不在の時のアキの母親代わりを務めたのである。
アホの子なので春子がいなくても母親代わりがいっぱいなのである。
お乳欲しがるこの子が不憫だからである。
「海女カフェ・・・流されちゃったんだね・・・アキちゃんの作った海女カフェみたかったな」
壁に貼られた思い出の写真をしみじみと眺める安部ちゃん。
育て上げたアキが作りあげた「海女カフェ」をついに見ることができなかった安部ちゃんだった。
入れ替わりに出戻った花巻は見たのだった。
「遠い昔みてえだ」と呟く弥生。
アキの決意は新たになるのだった。
「心配ねえ・・・おらが海女カフェ復活させるぞ・・・あんべちゃんと花巻さんのためにまめぶバーを作って・・・こきつかってやる」
アホの子の景気のいい宣言に・・・和みまくる一同だった。
挫けそうな時も最後にアホの子は勝つのである。
勢いに乗ったアキは磯に出て叫ぶのだった。
「海女カフェ復活させるぞ~。客を一杯呼ぶぞ~。ウニに帰ってきてもらうぞ~。おら、やるぞ~」
通りがかりのおばちゃんも思わず「がんばれっ」と言いたくなるアキなのです。
その頃・・・お盆前なのに・・・北三陸駅に帰って来た種市。
さの横を気付かずに通り過ぎて「どっこいしょっ」と荷物を下ろすユイ。
「ユイ・・・」
「・・・おかえり・・・」
元カレと元カノの運命の再会だった。
できることなら 生まれ変れるなら
私 こんなきれいな ガラスになりたい
あなたは ふっと立ち止まり
私の心をのぞいてほしい
木曜日 あの頃は愛だとは知らないでサヨナラも言わないで別れた二人(福士蒼汰)
人生はゲームである。「アイドル(夢)ゲーム」と「恋愛(現実)ゲーム」が重層構造となったこのゲーム。「リバース」のスイッチ一つで立場は変わるのである。
アキはアイドルのユイを追いかける。種市はアイドルのアキを追いかける。ユイはアイドルの種市を追いかける。
リバース・・・。
アキは恋人の種市を追いかける。種市は恋人のユイを追いかける。ユイは恋人のアキを追いかける。
ぐるぐる回ってぐるぐる回ってもうすぐ最終回なあのだあ。
北鉄よりも速く自転車をかっとばすアキ・・・。
ユイちゃんから・・・種市先輩が来てる・・・と知らされたに違いない。
「先輩、先輩、先輩」
アホ可愛いあわてふためきモードで喫茶リアスに自転車で突撃するのだった。
「なすて・・・お盆に帰るって言ってたべしたん」
「震災以後・・・ずっと気になってて・・・」
「何が・・・ですかあ?」と吉田。
「北三陸のことが・・・」
「いやいや・・・お構いねぐ」と北三陸を代表する吉田くん。
「本当は・・・アキちゃんが気になってでしょ?」とユイちゃん。
「いやいや・・・お構いねぐ」と種市に代わって照れるアキ。
「もちろん・・・天野も・・・ユイも・・・」
春子曰く「なにしてくれてんの油断ならない奴だね」と評される種市が今、頭をもたげ始めているのだった。
元カノの名前呼び捨てで・・・今カノ名字である。
その真意をじっと観察するユイは明らかに春子モードなのである。
「だけど・・・海とか・・・天野がつくった海女カフェが流されちまったとか・・・そっちも気になって」
無意識なのか・・・さりげなくなのか・・・人から自然や人工物に話題を切りかえる種市。
残り時間も少ないのに・・・ここで恋愛モードにチェンジなのかよとお茶の間は色めき立つのだった。
そもそも・・・種市はいつの間にかユイと交際していたり、いつの間にかユイと別れたり、いつの間にかアキを好きになっていたり、いつの間にかキスしたりと・・・なかなかに油断できない男なのだった。
「お二人はつきあっているんですか・・・」と切りこむ吉田。
「・・・」
「つきあってるならつきあってるで・・・ペアルック着るとかイチャイチャするとか態度で示してもらいたいもんだな」とアキの自転車に乗る保。
「フリーのイケメンにウロチョロされると・・・青年部に戦慄が走るんですよ・・・ねえ、足立君・・・おだやかでないよねえ」
「そうすね・・・」保と復興祈願シャツでペアルックを決めて自転車に二人乗りするストーブだった。心中、穏やかでないのである。
青年部一同を警戒させる青春スイッチオン種市なのだった。地元の女子全員とお付き合いする男の可能性大らしい。なにしろ・・・ここはパートナーチェンジ上等の北三陸市なのである。
そこで・・・元カレと親友のピンチに助け舟を出すユイ。
少なくとも「恋愛」に関してはアキの一歩も二歩も先を行くユイちゃんなのです。
「あれ・・・お兄ちゃんって・・・昔はイケメン枠じゃなかったの」
「うっせえな」
「イケメン枠から降りたってことでいいの・・・イケメン脱落なの?」
「うっせえ・・・元ヤンのくせにっ」
「お兄さん・・・それは言い過ぎです」とストーブの弟気取りの種市。
「元イケメンに言われたくないわー」と呼吸を合わせるユイ。
がばいよ・・・アキ、がばいよと言ってくれる真奈ちゃん(大野いと)はいないのだった。
「ユイも・・・お兄さんに失礼たべ」と明らかに恋人気取りでユイをたしなめる種市。
「お前のお兄さんじゃねえよ」とストーブ。
突然、アキは立ち上がり、カウンターからボックスへ移動。
さすがに・・・恋愛に疎いアキでも・・・ユイと種市の妖しいムードに気付いたか・・・と思わせておいて・・・。
「なんだかこわくなってきた・・・おらの大好きな北三陸に、安部ちゃんがいて、種市先輩がいて・・・ユイちゃんとストーブさんが兄妹喧嘩してで~。もう、これ以上の幸せなんかねえんじゃねえかって・・・うばあっ・・・・」
泣きだすアキだった。
そこかよっ・・・とのけぞるお茶の間の一部愛好家の皆さんである。
アキと種市をやっかんでいたストーブもファン第一号モードに戻るのだった。
「そんなことで・・・泣かねえでよ・・・もっと楽しいことこれからたくさんあるべ・・・今より悪くなるなんてこどねえから・・・」
「そうだ・・・なんてったて今が最悪だもんな・・・」
アキの幸せの絶頂とは別にブルーになる被災者一同だった。
「そうさ・・・ため息はピラフの匂いだ・・・」
とにかく・・・ポエムで事態を収拾する吉田くんだった。
アホの子をからかったら・・・それはもはやいじめだからな。
映画「禁じられた遊び」の名匠ルネ・クレマン監督の「狼は天使の匂い」(1972年)を思い出すのだった。
「それじゃ・・・俺は・・・これで」
「どこに・・・」
「高校に行って磯野先生に挨拶してくる」
「磯野先生なら・・・もうすぐ観光協会にくるぞ・・・」
観光協会でいっそんは漁協に対して海底調査による三陸海岸の現状を報告するのだった。
「水質に関しては・・・放射能の汚染濃度は今の処、基準値以下で問題ありませんが・・・津波によって海底に沈下した瓦礫の問題が深刻です。積み上がった瓦礫が不安定で危険ですし・・・何よりも親ウニの餌となるワカメやコンブの上に堆積しているために・・・ウニの生育に不適正な環境になっています」
「つまり、ウニを繁殖させようとしても餌不足でウニが育たねえ・・・親ウニが増えねえから稚ウニも増えねえってことか」
「まあ・・・そうです」
「そんなことはわかってる・・・おらたち・・・何十年、ウニでおまんま食ってると思ってんだ」
「はい・・・」
「よその海から・・・親ウニもらって放流することはできねえですか」
立ち聞きしていた種市はたまらず会話に割り込むのだった。
「それはもちろん・・・やるつもりだが・・・」と組合長。
「種市・・・だから・・・ウニの餌がなければダメなんだって・・・ん・・・種市、この野郎、いつ帰って来た」
「今です」
「だから・・・そんなことは百も承知だ」とかつ枝。
「問題はウニの餌を確保するための・・・瓦礫の撤去だ・・・そうすればコンブやワカメはほっといても増える」と夏。
「んだんだんだ」
「ウニは銭だ」
「同情はいらねえ、ウニよこせだ」
海女一同も夏に従うのだった。
「磯野先生に教えていただきてえのは・・・いつまでに瓦礫の撤去が終るかということです」
「それは・・・なんとか・・・年内には・・・」
震災は根こそぎ破壊である。問題は山積みで・・・何から手をつけていいかの優先順位を考えている間に時が過ぎていくのだった。
こういう場合は・・・捨てるべきものは捨てる・・・非情な決断のリーダーシップが求められるのだ。
「遅すぎる・・・海女クラブは・・・お盆休みまでは・・・待つ。それまでになんとかしてけろっ」
実行者が・・・半年と言っているのに・・・二週間の期限を切る夏ばっぱだった。
そして、言うだけ言って去るのだった。
「相変わらず夏さんはかっけえな」と種市。
「おらの夏ばっぱだもの」と誇らしいアキである。
「種市・・・お前も手伝え・・・高校のOB連中に集合かけろ」
「え・・・やるのか・・・」
「あそこまで言われてやらなかったら・・・男なんかやってられねえぞ」
「いっそんもかっけえ」とアキ。
「はい・・・初めてかっけえいただきました・・・おらだって、やる時はやるど」
観光の目玉である海女漁の復活が最優先案件になったのである。
そして・・・やればできるのが・・・この世界なのだった。
「よし・・・そうとなったら・・・親ウニの獲得交渉だ」と組合長。
種市たち南部ダイバーたちは地元にいるものも、そうでないものも袖が浜に終結。
人海戦術による突貫海底工事に突入したのだった。
「男たちは全国から集まって来た。誰もが何かをしたいと思っていた。ただ何をしていいのか分らなかっただけだ。やるべきことが分かれば・・・金も資材も集まってくる。それがこの国のカタチなのである。種市は潜水した。そして・・・最初の瓦礫を撤去した。男たちの潜水服は海の底で輝き出す・・・」
どこからか聴こえるあのナレーションとともに・・・袖が浜海女漁復興プロジェクトは着々と進行するのだった。
白い鴎か 波しぶき
若い血潮が 躍るのさ
カップかぶれば 魚の仲間
俺は海の底 南部のダイバー
一方で日銭を稼ぐために海女たちはウニ丼量産体制に入るのだった。
名物「夏ばっぱのうに丼」復活である。ブランドは継続しなければ認知されないのだった。
うには銭銭~♪
うには銭~♪
いつでも夢を・・・
そして最終兵器「海女のアキちゃん」投入なのである。
もはや、うに丼が飛ぶように売れる「全国区のアキちゃん」なのだ。
もちろん、ヒビキ(村杉蝉之介)も駆けつけるのだった。
復興祈願列車で復興祈願うに丼。
この情報を素晴らしいインターネットの世界で発信。
たちまち・・・アキは復興祈願アイドルとして認知されるのだった。
もちろん、売名行為とののしられてナンボの世界なのである。
「今日はうに丼完売です・・・ありがとうございました・・・来週はレールウォークってイベントさやります。北鉄の復興祈願を願っておらと線路を歩きませんか~」
たちまち・・・釣られる観光客なのだった。
子供番組、受験のアイドル、大女優とダブル主演、トップアイドルと共演・・・アキのファン層はかなり広めなのである。ここに被災地復興の大義名分がつけば鬼に金棒なのである。
ヒビキが年季の入ったファンとして・・・嫉妬を感じるほど・・・新参者のアキちゃんファンは拡大していくのだった。
「出発進行~」なのである。
アキがヘルメット被って号令する・・・それだけでアホ可愛さの絨毯爆撃である。
錆びたレールの横にしゃがみこみアキは心をこめて枕木に「復興」を「祈願」するのだった。
「まめぶ~」の合図で記念撮影すればみんなの心は一つに溶けるのだ。
アキの活躍によって・・・北鉄の一週間の乗客数は千人を突破したのであった。
半分が観光客だとして・・・一人二万円を地元に落してくれたらそれだけで週に一千万円、月に四千万円、年間五億円の観光収入になるわけである。
当然、大吉たちの目の色が変わりはじめるのだった。
「これで・・・ミス北鉄が復活すれば・・・」と吉田は単純計算で十億円のとらぬ狸の皮算用を始めるのだった。
しかし・・・ユイは「私には・・・無理だよ」と頑なな姿勢を崩さない。
吉田は溺れるものは藁にもすがる気持ちでヒビキに期待して見る。
「ヒビキ先生からも・・・一言・・・たまわりたく・・・」
「場末のスナックで働く一人の少女・・・実は彼女は現役アイドルの誰にも負けぬ資質の持ち主だった・・・しかし、夢を果たせぬまま・・・今日も皿を洗い・・・ビールの栓を抜く。すべての事情を知りつつ、あえて声をかけず・・・遠くから見つめる・・・という今の状況・・・個人的にはそそるものがありますね・・・痺れるといっても過言ではない」
「なんじゃ・・・そりゃあ・・・」
おタク心とビジネスとはある意味、一方通行な関係なのである。
「私・・・今の自分に・・・不満はないんだ・・・。アキちゃんのおかげで田舎の良さにも気がついたし・・・チヤホヤされなくなったけど・・・陰口たたく人もいなくなって・・・みんな優しく見守ってくれる・・・私は・・・現状に・・・満足していると言ってもいいくらいだよ」
ポニーテール・ユイちゃんがかわいい方のかわいさを爆発させつつ・・・思わせぶりな態度を見せるのだった。
アキは迷う。
本当にユイちゃんは今のままで幸せなんだろうか。
いや・・・そんなことはねえ。
だって・・・おらのユイちゃんはもっともっと輝いて・・・。
ピカピカに光って・・・。
おらの一番星でなくっちゃいけねえんだ。
君とよくこの店に 来たものさ
訳もなくお茶を飲み 話したよ
あの時の歌は聴こえない
人の姿も変わったよ
時は流れた
金曜日 いつだって I Love You More than You 少しだけアマゾン(小泉今日子)
なんとか・・・ユイの心に凍結されたアイドル魂を解放させようとするアキ。
一方でユイは・・・初心なネンネのアキに大人の恋愛を焚きつけるのだった。
「アイドル」と「恋愛」の激しい小競り合いが続いていくのだった。
アイドル少女と恋愛少女の間で・・・ユイを待ちわびつつ、ユイに唆されるアキ。
一方でユイは・・・アイドルの夢とスナックのリアルの中で魔女としての素質を開花させようとしているようだ。
A面はまちぶせでB面は少しだけ片思いなのである。三木聖子かよっ。
八月の第二週・・・。謎に包まれたユイの誕生日だが・・・11月生まれのアキよりも先に二十歳に到達するわけである。
ユイが「私も一杯いただこうかしら」と言える日は近いのだ。
夏の「袖が浜海女漁最優先」の指令により、動かなかった復興計画が動き出し、結局、北鉄にも復興の兆しが生じる。
上機嫌の大吉は・・・「すべて・・・アキちゃんを快く送り出してくれた春ちゃんのおかげだべ・・・御礼を言いたいから・・・アキちゃん電話してけろ・・・」
「今か・・・寝てるかもしんねえぞ」
「今だべ・・・ユイちゃんも御礼を言うといい・・・なにしろ・・・悪の道から助けてくれたのは春ちゃんだからな・・・」
「そうなんだ・・・」と種市。
「そうさ・・・春ちゃんはなんだかんだいっても・・・北三陸の守護神なんだ・・・」
「はあ・・・」とストーブ。
「ユイちゃん・・・ウーロンハイ、おかわり・・・焼酎抜きで・・・」
しかし・・・すました顔でウーロンハイに焼酎を限度を超えて増量するユイだった。
その手際を歴史の目撃者・勉さんは見逃さなかった。
「ママ・・・寝てた・・・あのね・・・大吉さんが・・・」
「寝てたわよ・・・何時だと思ってんの・・・大体、あんたね・・・どんだけ楽しいか知らないけど・・・電話くらいしなさいよっ」
アキが大好きな春子は淋しくて不機嫌だった。もちろん淋しくなくても不機嫌なのである。
「あのね・・・大吉さんが御礼言いたいって言うからね」
しかし、ユイに一服盛られた大吉はすでに泥酔しているのだった。
「あ・・・ごめん・・・大吉さん寝ちまった」
「なんだってええええええ」
「ごめん・・・ママ・・・また電話すっから・・・うん・・・必ずすっから・・・おやすみ」
振り返るとカウンターからはユイも消えているのだった。
帰り支度も終えて、出口にワープしているユイ。魔女だな。明らかに魔女化しているのだな。
アイドルじゃなくて・・・魔法少女を目指すのかっ。
「お兄ちゃん、帰るわよ」
「でも・・・大吉さんが・・・」
「タクシー代、もったいないでしょ」
「でも・・・」
「チッ・・・気をきかせなよ」
漸く、ユイの意図に気がつくストーブはものすごく複雑な気持ちで妹に従うのだった。
スナック梨明日に残ったのは・・・酔い潰れて寝ちゃった人と・・・琥珀の人。
そして・・・恋人同士のアキと種市なのだった。
まあ・・・一回キスしただけの仲ですけどねえ。
のんびりとかまえて あなたは知らないの
恋する気持には 羽根がはえてる
二人は・・・店を出て喫茶側から駅舎へ。
そこでは・・・潜水士になるための勉強をアキが種市に教わった場所である。
「ここで・・・勉強を見てもらったべ」
「そうか・・・天野も一応、潜水士なんだな」
「んだ・・・先輩はどうだった・・・久しぶりに潜ってみて」
「うん・・・やっぱり海はいい・・・上手く言えないけど・・・潜ってると自分も動物なんだなって・・・思うって言うか・・・基本っていうか・・・宇宙っていうか・・・」
種市・・・口下手なのだな。
「やはり・・・北三陸の海が俺は好きだ・・・地元の人も思ったよりも元気だったし・・・それも天野のおかげかもしれねえな」
「そんなこと・・・言われたらおら、こっ恥ずかしいぞ」
「だけど・・・こっちでも天野のまわりにはいつも人が集まってる。東京でだってそうだった。なんつうか・・・お前と一緒にいると心がポカポカしてくるんだ・・・」
「・・・」
「そこへいくとユイは違う・・・」
ほかの娘のはなしを 平気でするあなた
わたしのやきもちを 楽しんでるの
プーメランみたいに 遠くへ飛ばしても
わたしがかえるって 思ってるのね
・・・という気持ちになるべきところを・・・素直に聞くアキちゃんなのです。
「ユイの笑顔が見たくなる・・・でも・・・アキといると・・・こっちが先に笑っちまう・・・だから・・・二人が組んだら最強なんだべ・・・上手く言えないけどな・・・」
それは・・・どう見ても・・・両手に花気分じゃないのか・・・種市とお茶の間かツッコミを入れると・・・。
「ビールに枝豆みてえか」
・・・とボケるアキ。どっちがビールでどっちが枝豆かはさておき・・・。
「太陽と月じゃないの・・・」と助言する勉さんだった。
「じぇ・・・」
「ああ・・・そうかもな・・・太陽と月・・・月を照らすために太陽があって・・・太陽に照らされるために月がある。アキが太陽で・・・ユイが月か・・・」
妙に納得する種市だった。
そして・・・結局、二人は何もしないで帰宅したらしい。
「なんだってえええええ」と朝から切れるユイだった。
ウニ丼制作後のひとときである。
喫茶リアス用のうに丼を仕入れに来たユイなのである。
「せっかく・・・二人きりにしてあげたのに・・・何なのよっ」
「でも・・・良い話もしたぞ・・・太陽と月とか」
「それ・・・勉さんの話っ」
「・・・」
「ごめんね・・・アキちゃん・・・おせっかいかもしれないけどね・・・もっと自分勝手でいいんじゃないかな」
「おら・・・割と勝手な方だけんど・・・」
「こんな田舎で・・・遠慮してたら・・・あっと言う間に・・・ああなっちゃうよ」
うに丼小屋から仕事を終えて出てくる弥生たち・・・ああな海女さんたち。
「ああ・・・なりたいの」
無遠慮に指さしておいて・・・。
「失礼しました~」と挨拶するユイだった。
「・・・」
初心なねんねのアキに苛立つ経験豊富なユイなのだった。
「種市先輩いつまでいるの・・・」
「お盆が終わる頃までって・・・」
背後で海女さんたちは「お盆明けのうに漁解禁が待ち遠しい話」をしているのだった。
「・・・ざっくりしてんなあ・・・・っ」
「・・・」
「私の事・・・甘く見ないでよ・・・アイドルは・・・あきらめたけど・・・女としてはむしろこれからだと思ってるから・・・アキちゃんの彼氏だと思うから今スイッチ切ってるだけだからね・・・すぐ入るからね・・・ユイのやる気スイッチは・・・」
再び、海女軍団を振りむき、挨拶をするユイ。
「失礼、しましたあ」
宣戦布告のような恫喝のような最後通牒のような略奪宣言のようなユイの励ましの言葉に震えが止まらないアキちゃんなのでした。
自分がかわいい事を知っていて実際かわいい女子に標準装備されているという「怖え~スイッチ」の存在を知ったアキは慄く。
そして・・・ユイとは別の意味でアキの心に深い傷跡を残すあの日の出来事が蘇るのだった。
ユイは種市の元カレだったのだ。
親友のユイのためにアキは大失恋したのだ。
「俺はユイが好きだ。ユイと付き合ってる。ユイとバリバリ恋愛中だ」
アキは錯乱するのだった。
「そんなのいやだあああああああああああああああああ」
走り出したら止まらないアキなのだった。
突堤で作業中の種市といっそんが目に入らず、いつものコースを失踪するアキ。
「あまの・・・おい・・・あまの」
逃げるアキを追うのは・・・種市ではなくて・・・何故かいっそんなのはこの世界のルールなのである。
「いやああああああああああああああ」
「あまの・・・どうした・・・あまの・・・・」
「やあだあああああああああああああ」
アキの踏み切り、跳躍、着水である。
「あまぞおおおおおおん」
何故か、天野がアマゾンと聴こえることをナレーターの春子が指摘しつつ、いっそんが仮面ライターアマゾンのポージングで踏み切り、跳躍、着水である。
茫然とするしかないもう一人の仮面ライダーだった。
プレハプ漁協で着替える二人だった。南部ダイバーシャツである。
「何があったか・・・知らねえけど・・・安心しろ・・・俺はずっとここにいるから・・・」
「種市・・・東京の仕事はいいのか」
「海の現状を知ったら・・・とても東京には戻れません。天野に潜れる海を渡してやりてえと思います」
「しぇ、しぇんぱい・・・」
「たねいち・・・」
しかし・・・そこで蘇る「戦慄のスイッチ」の恐怖。
「だめだ・・・先輩、とっとと帰ってけろ・・・近距離はだめだ・・・遠距離でないと・・・なるべく遠くへ逃げねえとスイッチが入ってしまう・・・とりかえしのつかないことになっちまう」
「あ、天野・・・どうした・・・しっかりしろ・・・」
「お取り込み中のところすみませ~」
「じぇ・・・」
ストーブに案内され・・・突然、姿を見せる「岩手こっちゃこいテレビ」のディレクター池田一平(野間口徹)だった。
「あ・・・あんたは岩手なんちゃらテレビの・・・」
「はい・・・覚えていてくれてありがとうございます。残念でしたねえ・・・潮騒のメロディー・・・いい曲だったのに・・・」
鈴鹿ひろ美・橋幸夫レベルのプライド合戦である。
池田はアキが北三陸に戻ってきたのを知って・・・さっそく「復興番組」の企画を立ち上げたのだった。
「アキちゃんを通じて東北の復興を全国に訴えたいんだ・・・」
「おらだけか・・・」
「できたら・・・ユイちゃんも・・・アキちゃんの口から口説いてくれないかな」
「お構いねぐ・・・あんまり・・・地元のためとか・・・東北のためって言われると違うっていうか・・・おらは自分勝手にただ海さ・・・潜りてえ・・・それだけでがんす。潜りてえから・・・海さ・・・おらの好きだった海さ・・・取り戻してえ・・・おらの好きな人たちが集まる海女カフェを復活させてえ・・・おらの好きな・・・(潮騒のメモリーズが歌って踊った)・・・かわいい電車を走らせてやりてえ・・・ただ・・・それだけなんです」
「だから・・・その想いを全国に伝えようよ・・・」
「違うんです・・・おら一人がやる分には構いません・・・でも、おら一人が頑張っているみたいなのは・・・違うんです。それじゃ・・・まるでユイちゃんが頑張ってねえみたいだ・・・そんな風に見えたら嫌なんです・・・おらだって・・・本当はユイちゃんと二人でやりてえ・・・でもな・・・ユイちゃんは戦ってるんだ・・・おらなんか・・・想像もつかねえ・・・ハードで恐ろしい目にあって・・・それを乗り越えようとしているんです・・・だから・・・説得だとか・・・そういうのは違うんです・・・無理強いなんかできねえんでがす」
池田は唖然とした。
しかし・・・種市にも・・・いっそんにも・・・ストープにもアキの想いは伝わったのだ。
そして・・・アホの子が一生懸命、いろいろと考えていることを知って・・・涙がこぼれそうになるのだった。
キッドは・・・このシーンはこのドラマの泣けるシーンベスト10にランクインすると思う。
アキのユイに対する「愛」が炸裂しているものなあああああっ。
だが・・・その頃、ユイは必死にアキを呼びだしていたのだった。
種市の携帯に着信がある。
「なんだ・・・ユイか・・・天野・・・ここにいるけど・・・替わろうか」
「もしもし・・・ユイちゃん」
「アキちゃん、どうしたのよ・・・何度も電話したのに出ないから心配しちゃったじゃない」
「ごめん・・・海に落ちちゃって・・・」
「駅に変な人が来てるのよ・・・吉田さんが・・・アキちゃんの知り合いじゃないかって」
「吉田です・・・なんか刑務所帰りの小林薫っつうか・・・小林稔侍っつうか・・・小林感半端ねえ・・・さすらいのブラック・ビート・ライダーっつうか・・・グルーヴ感漂いすぎっつうか・・・力医師っつうか、暗い明るいっつうか、ミサイルっつうか、とにかく・・・さっきからウニ丼食べまくってます」
「だから・・・アキちゃん・・・早く来てよ」
ユイにそう言われたら・・・とにかく行かねばならないアキなのです。
好きだったのよあなた 胸の奥でずっと
もうすぐわたしきっと あなたをふりむかせる
あなたをふりむかせる
土曜日 まめぶ大使召喚、ダイバー騎士召喚、スシ大将返却、そして琥珀王子召喚(松田龍平)
アキを守護する第三の天使・無頼鮨の梅さん(ピエール瀧)に怯えるユイ。
かけつけたアキは梅さんの登場に驚くのだった。
「なして・・・梅さん・・・なして・・・」
「すみません・・・」と謝るのは種市だった。
種市は無断で北三陸に戻っていたのだった。
しかし・・・もちろん・・・梅は種の気持ちがわかっていた。
種なしの方が面倒くさくはないが種をなめる楽しみがないのだ。
・・・もういいか。
「なんにも・・・言うな・・・お前の気持ちはわかっている・・・こんな美味しいうに丼があるんじゃあ・・・しょうがねえ・・・お前はここでがんばれ・・・種市をよろしくお願いします」
非力ながら種市を庇おうとしたいっそんに男を感じた大将だった。
「お・・・おう」
そして・・・北三陸市に48分滞在した大将は・・・うに丼七つを食し・・・黒いライダースーツに身を固め十時間かけて東京に帰って行ったのだった。
アキはちょっと面白かったらしい。
アキは「岩手こっちゃこいテレビ」の「震災復興ドキュメンタリー」に出演していた。
「せっかく帰って来たけど・・・海にはウニがいませんでした。でも・・・みんな必死で北三陸の海を取り戻そうとがんばっています。袖が浜の港にはまだ漁船が一隻もありません。でも・・・必ず・・・船は帰ってくる・・・そう信じて待ってます。お盆があけたら・・・ウニ漁が再開されます・・・おらもウニを取って取って取りまくるぞーっ・・・そして・・・流されちまった海女カカフェをいつの日にか復活させるぞーっ・・・復興祈願の海女のミサンガに願いをこめるのでがんす」
その模様を撮影するストーブ。
ストーブの背後まバラックでは海女たちが「海女のミサンガ」を編んでいる。
その中に・・・ユイの姿があった。
「ユイちゃん・・・それじゃ緩すぎるぞ」とかつ枝。
「気持ちが入ってるから・・・これでいいんです」と甘えるユイ。
「ユイちゃん・・・まめぶ汁できたぞ」と言われ微笑むユイ。
安部ちゃんのまめぶ汁は日本一なのだ。
ユイの中でゆっくりとほどけていく絶望。
ストーブは漏れ聞こえる海女たちの歓声を耳にして密かに祈るのだった。
「がんばれ・・・ユイ・・・がんばれ・・・アキちゃん」
その頃、純喫茶アイドルでは正宗が婚姻届の証人を甲斐さんに依頼しているのだった。
「いやあ・・・親父の遺言で・・・保証人だけは・・・」
「保証人じゃなくて・・・証人です」
「でも・・・君の分しか書いてないじゃない」
「春子さんをびっくりさせたくて・・・」
「春ちゃん・・・びっくりするのかな・・・」
その時、台風18号なみの剣幕で来店する春子。
「あれ・・・春子さん・・・一人じゃないの・・・」
「緊急事態なのよ・・・」
「え・・・」
「水口、会社やめるってさ」
「ええー」
辞表を提出する水口。
「これ・・・中身は・・・」
「え・・・辞表って・・・中になんか入れるんですか・・・」
「・・・」
これが・・・ゆとり世代なのか・・・と春子と正宗は実感するのだった。
バカか・・・正真正銘のバカなのか。
アホの子のマネージャーはバカだったのか。
不機嫌が渦を巻く春子だった。
「辞める理由をはっきり言ってみなさいよ」
「・・・仕事が面白くないんです」
「なんだってえ」
「仕事がつまらないんです」
「・・・」
「鈴鹿さんにはなんの問題もないんです。っていうか・・・問題がなさすぎるんです。僕は・・・ずっとアイドル発掘担当だったんです・・・原石を磨いて輝かせる仕事です。鈴鹿さんはもう・・・すっかり輝いていて・・・僕の出る幕なんかないんですよ・・・」
「君が・・・アイドルが好きだって言うのは・・・分るよ。でも・・・仕事なんてそういうものじゃないのかな。好きなことして食べていけるほど世の中は甘くないよ。でもさ・・・遠回りでもさ・・・走り続けているうちになんか思わぬ拾いものしたりとかさ・・・そういうこともあるんじゃないのかな・・・ついたところが目的地っていうか」
正宗の言うこと全否定モードで待機する春子だった。
「なにそれ・・・遠回りとか・・・とにかく続けろとか・・・なんかみつかるとか・・・結局、逃げてるんでしょ・・・やりたいことから目をそむけてるんでしょ・・・万事お任せ風な電波少年かよっ・・・やってるようにみせてやらせてんのかよ」
「・・・」
「水口、あんたの目的地ってどこよ」
「・・・」
「分ってるわよ・・・お座敷列車でしよ・・・」
アイドルにかかわること。アイドルに関する知識。アイドルにかかわるものの心のうち。
それに関しては全知全能の神である・・・春子なのだった。
水口は神妙に・・・永久保存版の「お座敷列車の潮騒のメモリーズの記録」を取り出すのだった。
それを・・・マスターの専用モニターにセットする水口。
マスターの甲斐さんは興奮するのだった。
「なに・・・なにこれ・・・熱いよね・・・ここにいたいよねえ・・・ここにいたかったなあ」
「未熟だけど・・・心から歌って踊ることを楽しんでいるアキちゃんとユイちゃん。そして・・・屈託なく・・・それを心から楽しんでいる田舎の皆さん・・・これが・・・これこそが僕の目指すエンターティメントなんです」
「・・・」
「北鉄が・・・止まったって聞いて・・・もったいないと思ったんです。だって・・・線路がつながればお座敷列車は日本全国どこだって走れるんですよ・・・」
「あんたも・・・北へ帰るのね・・・」
「・・・」
「いいわ・・・おゆきなさい」
「いいの・・・春子さん・・・」
「心ここにあらずの人にいてもらっても仕方ないでしょう・・・去るものは・・・追わず・・・よ」
「・・・」
こうして・・・水口は北三陸市に旅立ったのであった。
その夜の黒川家。
天野の印鑑を捜す・・・春子。
正宗がふと見ると・・・テーブルの上には婚姻届がおかれていた。
「あった・・・あった」
春子は記入を終えて捺印した。
「さあ・・・書いてよ」
正宗は泣き出すのだった。
「もう・・・泣かないでよお」
春子は笑った。
水口は天野家を訪れていた。
「そういうわけで・・・恥ずかしながら戻ってきました」
「来るものは拒まずだ」と夏。
「でも・・・生活はどうすんだ・・・仕事ねえぞ」とアキ。
「それは・・・考えていることあるから・・・」
「そうか」
「そうそう・・・春子さんと正宗さん再婚するみたいだよ」
「そうか・・・」
「そこはじぇじぇじぇ・・・じゃないんだ・・・」
「あの二人は最初から夫婦だもの・・・今更、天野でも黒川でも変わらねえ」
「北三陸は離婚率の高さとワカメの収穫量で有名なんだ」とお国自慢をする夏。
微笑んで頷くしかない水口だった。
そこへ・・・その日編まれたミサンガを届けに来るユイ。
「やあ・・・久しぶり」
「・・・」
ヤンキー時代の終焉間際・・・アキを迎えに来た水口とユイが一瞬の邂逅をしてから・・・一年半以上の年月が流れていた。
北三陸市に新しい風が吹き始めたのだった。
はたして・・・ユイは二十歳までにデビューすることができるのか・・・。
そして・・・眠れる森の美女にキスするのは・・・。
まあ、来週はもう2012年になっちゃってるみたいですけど~。
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