愚かな母と賢い息子と幼年期の終りとスターマン(広末涼子)
西暦1世紀以来、西洋の文学は「聖書」とともに発展してきた。それまでのユダヤの文学が「聖書」と共にあったようにである。
そもそも、ナザレのイエスは「旧約聖書」が生んだアンチ・ヒーローであり、「新約聖書」のヒーローとなっていくのである。
それから少なくとも二千年という歳月の間に、英知が「聖書」に解釈を加えてきたわけである。
しかし、一言で言えばそれは「人間ではない絶対者への帰依」を肯定する書だと断言できる。
それについての是非を考察しても意味はない。
要するに「このみ」の問題だからである。
世の中には「支配されたい」できれば「人間以上の何者かに」と希求する人が多いということなのだ。
それを「馬鹿馬鹿しい」と感じる人は基本的には「神も仏もない」という虚無に身を投じることになっている。
おそらく・・・さらに多くの人間はその中間領域でどっちつかずの日々を過ごしているわけである。
で・・・宇宙開発時代に入ると当然のことながら・・・「神は宇宙人だった」という発想が生まれる。
「幼年期の終り/アーサー・C・クラーク」(1953年)はそういう幻想の代表作の一つと言っていいだろう。
すでに広島と長崎に原爆が投下され、東西冷戦が始り、熱核戦争によって地球が滅亡する予感に囚われていた時代である。
その絶望的状況からの脱出はオーバーロード(主上)星人の来訪によって果たされる。超軍事力を有するオーバーロード星人によって地球は征服され、統一されてしまうのである。
まあ、手っ取り早い平和的解決である。
これによって・・・地球は未曽有の幸福な時代を迎えるわけである。
もちろん。どんな時代にも現状に満足しない「服従せざるもの」はいて・・・不屈の闘志でオーバーロード星人に戦いを挑むわけである。
ナザレのイエスがそうであったように・・・「自分は神に選ばれた特別な存在」という妄想は人間にはつきものである。
やがて・・・一部人類はオーバーロード星人の正体を知る。彼らはオーバーマインド(神上)星人の下僕だったのである。
そして・・・一部人類はオーバーマインド星人的能力を発現しはじめるのだった。
まあ・・・基本的には他力本願のいきつくところ自力本願という堂々巡りをするわけです。
映画「2001年宇宙の旅」(1968年)の原作者でもあるアーサー・C・クラークである。
「2001年宇宙の旅」では神(モノリス=巨石型電子頭脳)によって知恵をつけられた猿が人類となり、人類滅亡の直前、神(モノリス2、モノリス3)によって導かれた人類は新人類(スター・チャイルド)に進化する。
まあ・・・好戦的な人類に絶望するとクリスチャンは基本的にこういう風に神に帰依するという典型的な妄想なのである。
で、『スターマン・この星の恋・第9回』(フジテレビ20130903PM10~)脚本・岡田惠和、演出・白石達也を見た。何故か、憑依型宇宙人が遭難しやすい太陽系第三惑星地球の日本列島本州河口湖上空である。少なくとも1973年に重田A1(國村隼)が、1998年に祥子A2(有村架純)が、そしてタツヤ/星男A3(福士蒼汰)が死体に憑依した宇宙生命体によって蘇生しているらしい。実際には融合宇宙人化したわけである。佐和子は偶然、融合途中の星男を拾い、内縁の夫として確保したのだった。
佐和子の祖母・美代(吉行和子)の主治医・溝上先生(モト冬樹)はその恐ろしい事実の一端を垣間見るが、無知蒙昧な女たちの無言の圧力で言論を封じられるのだった。
急速に地球人化する星男は「男」として仕事をしたいと願うようになる。
そもそも、憑依以前のこの宇宙人に男女性別があるかも疑問だが、有機生命体を乗り物として使用する以上、母星においても乗り物の繁殖のための擬似性交は行われている可能性がある。
可能性としては地球は彼らの乗り物牧場の可能性さえあるわけである。
そういう意味では「火葬」は彼らにとって好ましくない地球人の風習ということになるだろう。
しかし、彼らの技術力を持ってすれば灰からの再生も可能なのかもしれない。
スナック「スター」の常連客である幸平(KENCHI)たちに林業に誘われた星男はそこを職場に定める。
自分の内縁の夫が「職」を得たことで朝からウキウキして内縁の愛妻弁当を作るのだった。
そんな母の浮かれ加減に危機感を感じる聡明な長男・大(大西流星)、小学五年生としては的確な洞察力で・・・大の名前入りタオルと星男の名前入りタオルを間違えるような杜撰さでは・・・この先、異星人の地球における保護者としてやっていけないのではないかと母親のルーズさを危惧するのだった。
一方、自分が宇宙人だという確証を得た祥子は重田たちの得意技である首の360度回転に挑戦する。
しかし、幼児融合体であったためか、技術的に未熟なためか・・・180度回転したまま首が戻らなくなってしまうのだった。
半信半疑だったお茶の間も祥子が人間ではないことを認めざるを得ない瞬間だった。
首と胴体裏返し人間となって重田に救援を求める祥子。
重田は祥子にアドバイスして現状復帰に成功するが・・・高速非言語通信で交信できないなど・・・祥子の正体には謎か残るのだった。
しかし、他人から見ればイチャイチャしているとしか見えない人体修復現場を重田の古女房(角替和枝)と祥子の自称恋人の安藤くん(山田裕貴)に目撃されてしまい、仄かな修羅場が展開するのだった。
一方、新人の星男にいいところを見せようと安易に安全手順の無視を行った幸平は樹木から落下してしまう。
重田からも佐和子からも能力の封印を命じられた星男だが加速能力と治癒能力を使い、幸平を救助してしまうのだった。
しかし・・・幸平と男たちは・・・星男の異常さを恐れることはなく・・・ヒーローとして讃えるのだった。
だが・・・能力を制御できなかった星男は前途に不安を感じるのである。
その頃・・・大が帰宅していないことが発覚し、家出ではないかと疑われる。
星男は加速能力で捜索するが大は自分で帰宅するのだった。
佐和子の親友である節(小池栄子)は二枚目の大とそうでもない次男の秀(黒田博之)への態度がとてつもなく差別的である・・・秀は自分の将来に楽観的になれない何かを感じる。
女たちは大が新しい父親に嫉妬したのだろうと下世話に考えるが大はそれを否定する。
「あんたたち・・・世間をなめすぎなんだよ・・・星男さんはタツヤの戸籍しかない存在しない人間なんだぜ。このままでは運転免許一つとれないのだ。携帯電話にも加入できないし、健康保険や年金の問題もある。そういうことをどうするのか・・・もっと真剣に考えろよ・・・浮かれ過ぎてんだよ」
大の正論に沈黙を守る女たちだが・・・けして説得されたわけではない。
この手の女を論破できると大が考えるのはまだ幼いからであろう。
とにかく・・・今がよければそれでいいと断じる佐和子だったが・・・どうやら、大と同じように聡明な星男本人が将来に不安を感じ始めるのだった。
その夜。自分の宇宙人としての能力に疑問を持つ祥子、誤解による古女房の嫉妬に悩む重田、そして・・・漠然とした不安に苛まれる星男に呼応するように・・・。
夜空には謎の輝きが出現するのだった。
もうどうでもいいよね的クライマックスがやってくるらしい・・・。
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コメント
ずっと君(たち)のことを思っていた。…漁師だと(笑)。
この町、林業だったんですか(^_^;。林業が地球を守る…遅いよ…そのテーマ?出し。
でも厨房のコントは面白かった。
厨房コントと重田家の日常。これで舞台劇にしてSF臭さもさらに「微香」にした舞台劇にしたら面白いかも面白くないかも。
バッパッパパッパ。会うときにはいつでも他人のふたり(首グキっ)。マトリョーシカ祥子ちゃんには安藤君も、百年の恋も百年の時計もなんとやら。しかし山田裕貴…を今作でずっと塚本高史だと勘違いしていたのは大宇宙の秘密です。
好きな人の田舎…地元に帰ろうかっ。ネギあげます。
投稿: 幻灯機 | 2013年9月 4日 (水) 05時58分
ふふふ、相模川には鮎が河口湖にはブラックバスが
おりますが・・・基本、海はないけど山梨県で
ベロニカの故郷(&ブラジル)ですけどな~。
林業の男たち(ベテラン)が
安全点検を怠るわけないので
そこは天狗倒しなどのアクシデントが
欲しいところでしたな。
伐採が何故、環境保護に通じるのか
レクチャーも欲しかったのでございます。
ちなみに悪魔は植木屋さんの息子です。
最近は職人でも
「安全確認笑顔で帰宅」なんて標語をはってますぞ。
基本的に舞台劇の要素が大きいドラマですよねえ。
堤演出じゃない方がみやすいのが困った感じですな。
母星の乗り物がオランウータン系やゴリラ系だったら
どうすんだ・・・と妄想する今日この頃です。
憑依されてる人々とパートナーが
サル系なのは・・・そのためか・・・。
安藤くんはサルとしては微妙だからなあ。
母星では木更津のアニやバンビはそれほどでもなくてぶっさんやマスターとかはもてるのかも。
GMT5(リーダー)は埼玉県竜巻被害の皆さんを応援しています(妄想・・・念のため)・・・
投稿: キッド | 2013年9月 4日 (水) 15時15分