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2013年9月 7日 (土)

夏の夜の絶望~悪霊病棟(夏帆)

恐怖は絶体絶命の境地である。しかし、そこに至る道には直線ルートのみではなくて紆余曲折がある。

恐怖を感じさせながら完全なる恐怖へ導く場合もあり、いきなり恐怖の真っただ中に送りこむ場合もある。

「死」を知らぬものに「死の恐怖」はない。そのために「死」を教えなければならない。「死」を教えるために「生」を学ばなければならない。

「恐怖」への道は時に一寸先にあり、時に永遠の彼方にある。

「恐怖の世界」を作るものはこのために「世界に一体感をもたらす」必要が生じる。

「恐怖」の根源である「死の意味」を共有し、「恐怖」を示す時には「生の意味」を統一するのである。

そして、「恐怖」を与える場合は、風のように迅速に、林のように音をひそめ、火のように容赦なく、山のようにさえぎり、陰のように身を隠し、雷のように一撃で行動するのである。

前述の如く恐怖を知らぬものに恐怖を与えるにはあらかじめ恐怖について指導しなければならない。

さらに恐怖することに恐怖するものには恐怖などないようにおびき寄せる。

各所に配置した恐怖は臨機応変に集合し、また分散できるようにする。

徹底的に恐怖させるためには恐怖が続くように見せかけて油断させ、安堵をついてより大きな恐怖を示す。このように次なる恐怖は段階的により大きな恐怖へと進むように配慮する。

完全な恐怖の確信が生じれば猶予なく恐怖に駆り立てる。

恐怖に情け容赦は無用だが、情け容赦のないところに恐怖が存在しないことを肝に命ずべし。

で、『病棟~第7号室』(TBSテレビ201309060058~)脚本・酒巻浩史(他)、演出・鶴田法男を見た。夏帆が出ていなければ誰が見るか・・・というような内容になっているドラマだが・・・逆に「たべるダケ」(テレビ東京)は第9話に松尾スズキが登場し、それだけでもうワクワクするわけである。石橋杏奈も「ブスッ」て云われちゃいました。石橋杏奈がブスになっちゃうようだともうどれだけの人がブスになっちゃうか・・・その恐怖ははかりしれないものがある。目指しているところは違うとは言うものの「お笑い」も「恐怖」も基本は同じである。こっちのスタッフは自分のいたらなさを反省するべきだと考える。なにしろ・・・主役だけを考えれば食欲の救世主・シズル(後藤まり子)なんて・・・ただのおばさんなのである。それをここまで圧倒的な物語の主役に仕上げているのだ・・・すごいぞ。

しかし・・・まあ、猫背のナース(夏帆)は次第に存在感を増し、ちょっとした可愛さも感じさせるようになっている。

基本的に「霊能力者」と「魔物」は似て非なるものである。

東洋の場合は「怨霊」は仏法的な霊力によって調伏されるものと相場が決まっている。

この場合は法師にしろ、修験者にしろ・・・修行によって霊力を得るわけだが、そこには「才能」というものも関与する。

つまり、持って生まれた霊力の差異である。

超能力者も精神病患者も基本的には「サイキック」であるように・・・「見えぬものを見る力」の保有者は機知の外の人と紙一重なのである。

つまり、「見えぬもの」と「見えぬものを見る人」はある意味、同じ種類に属する。

ここに「見えぬもの」が「モンスター」なら「見えぬものを見る人」も「モンスター」という発想が生まれる。

そうなると「化け物を退治したら化け物」というお約束が成立する。

業者はそういうことをさけるために「修行」による「得度」という権威付けで防備するのだった。

「キャリー」によって印象付けられた「呪う超能力者」は「リング」で結実する。

しかし・・・それは日本伝統の「神」の姿でもある。菅原道真の呪いがこわくて天満宮は祀られるのである。

そのような・・・系譜を考えれば・・・尾神琉奈(夏帆)は「エコエコアザラク」の黒井ミサ的なキャラクターの一種である。もちろん・・・黒井ミサにも作品によってキャラクターが勧善懲悪的でないものもあるが・・・基本的には悪しきものを悪しき能力によって封ずる・・・毒を持って毒を制するヒーローとして造形されているのだった。

今回・・・突然、性格の変わったヒロイン琉奈はそういう意味では・・・エクソシスト・琉奈の誕生の物語としてとらえなおしてもらいたいスタッフの意図を感じさせるのである。

だが・・・そういうのは小学生くらいで覚醒してもらいたいよね。

「対魔能力」はあるけれど・・・友達少ない内気な巫女ナース設定でいいじゃないか・・・。

もちろん・・・なんだかわからない世界を描きたいんだ・・・というスタッフの気持ちもわからないでもないが・・・琉奈が突然、「魔物」の正体の分析を始めたり、聖なるお守りで悪霊を退散させちゃうなら・・・もう、最初からその路線でいけばいいじゃんか。

猫背で・・・ちまちま歩いて・・・ナースとしてはドジばかり・・・婦長に叱られて泣いて・・・唯一の友達の愛美に慰めてもらう・・・だけど・・・本当は悪霊退治の実力者でさあ。

天魔くんも鬼太郎なんだし、琉奈も黒井ミサでよかったと思うよ。

さて・・・「恐怖」を高める一つの手法に前フリがある。

これは肝試しの前に「その場の霊的な由来」などの情報を含めた「怖い話」をするわけである。

で・・・その場合には「本当にあった怖い話」が展開する。

これは・・・「霊」という嘘くさいものを・・・「実話」という嘘で実在化させるというトリックである。

体験談の場合・・・語り手はすでに最高の恐怖である「死」からは逃れている。

だから・・・体験談は・・・しかし「次は死ぬかもしれない」という恫喝を含むのが好ましい。

このように「恐怖」をある程度、「学習」してからの方が恐怖が深まる場合があるわけである。

これは基本中の基本だ。

とにかく・・・ショック療法で・・・超絶霊能力者として覚醒した琉奈。

旧病棟最上階に「キヌ」と言う名の悪霊が潜み、琉奈の霊能力を利用して封印から解放されたこと。

「キヌ」は満月の夜に呪力が最高潮に達すること。

琉奈に憑依していた低級霊を利用して、病棟に恐怖を伝播していること。

そして、「キヌ」は現在はナース彩香(川上ジュリア)に憑依していることなどを見抜くのだった。

すでに・・・琉奈の虜となっている朝陽(大和田健介)や部下の愛美(高田里穂)の死の真相を究明する気満々の斑目(鈴木一真)は琉奈の言葉を鵜呑みにしてただちに病院に戻る。

すでに・・・霊感冴えわたる琉奈は・・・キヌ/彩香の位置を探知するほどの能力を発揮する。

その唐突さに吃驚仰天である。

行く手に立ちはだかるのは恐怖でパニックに陥り、琉奈を白眼視する主任ナース・木藤(森脇英理子)である。

「この人殺しのど腐れ魔女めが化けもの呪いで病院崩壊ナース逃散私の立場は木端微塵のアッチョンブリケおたんこナースのナースのお仕事点滴お注射剃毛尿の検査に大便検査吐瀉物出血大サービスあらえっさっさあのさあいやさあ」

その激昂ぶりの狂気に足止めされる朝陽。

一人先行する琉奈。ルナはもちろん月の女神の一人である。

やがて病院の奥まった一室で獣人化したキヌ/彩香と遭遇する。

基本的に「狂犬病患者」である。

「ガウガウ」と呪いの黒い歯剥きだして・・・迫る四つん這いナース。

琉奈は「やめてよして」と最後の切り札の母からもらった聖なるお守りを突きつける。

「ギャオン」と叫ぶ声に遅れてかけつけた朝陽は倒れこむ二人のナースを発見する。

正気に戻った彩香の側には抜けた黒い歯が落ちていたのだった。

「実は・・・私は・・・」と体験談を語りだす彩香、記憶があいまいで順序が逆なのでまったくこわくないのはセオリー無視だからである。

本当にこのスタッフは「恐怖」というものが根本的にわかってないのだなあ・・・監督、ホラー映画何本撮ってるんだっけ・・・。

「でも・・・悪いのは私・・・こわがりだから・・・新人に怖い場所は全部押しつけていた・・・」と突然、怖がりの正体を告白する主任だった・・・なんのこっちゃあ。

「とにかく・・・もう大丈夫」だと気休めを言う朝陽。

不審げな琉奈を残し病室を出ると斑目に「キヌの謎を解かなければ事件は解決しない」ときっぱりである。

謎を解いたって・・・呪いが解かれるとは限らないことは言うまでもないだろう・・・。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の悪霊病棟

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