ごわすごわすごわす(大後寿々花)だしだしだしでごぜえやす(綾瀬はるか)
やや唐突に架空の登場人物ゲスト・小松リツ(大後寿々花)登場である。
薩摩藩の小松と言えば、小松帯刀の一族を連想するわけであり、当然、平重盛の末裔ということになる。
映画「おっぱいバレー」での綾瀬はるかの少女時代を演じたセクシーボイス・ニコは意外にも大河初登場なのである。
去年あたり、姫の一人を演じていてもよかったよな。
すでに三十路を越えた八重であるので永遠の中学生の演じるリツは母子のように見える。
西南戦争終結直後のエピソード挿入としてはほぼ意味不明だが・・・とにかく「罪を憎んで人を憎まず」という不文律が主題なのかもしれない。
孔子も「裁かれるのは悪であり、罪人に罪はない」と宣っており、イエスもヨハネの福音書で「罪なきものがいれば罪人を石で打て」と人が人を裁くことを否定している。
つまり、洋の東西を問わない、犯罪者擁護のきれいごとである。
心なき人は常に「ごめんですんだら警察はいらねえ」を座右の銘にしていることは言うまでもない。
しかし・・・綾瀬はるかと大後寿々花の豪華共演に罪はないのである。
で、『八重の桜・第39回』(NHK総合20130929PM8~)作・山本むつみ、脚本・三浦有為子、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は待望の「あまちゃん」の主役最終選考で能年玲奈に敗れた三根梓(21)の演じる山本覚馬の次女(長女は早世)で後の横井小楠の長男・伊勢時雄の妻となる山本みねの華麗なる描き下ろしでお得でございます。山本一族も残るは山本久栄を残すのみですな。コンプリートしていただきたいところですが・・・あくまでマイペースでお願いします。まあ、久栄が徳富蘆花と恋に落ちる年頃待ちですかな・・・後、数年かかりますねえ。しかし・・・そんなことを描いていて・・・大河ドラマとして・・・成立するのか疑問ですけれど~。もう完全にタイガー、タイガー、じれっタイガーになってます。もはや朝ドラマじゃないでしょうかね・・・これ。
明治十年(1878年)九月、西南戦争は終結し、明治維新における長い国内統一戦争はついに終結する。これより大日本帝国は富国強兵の道を邁進し、日清戦争(1894~5)、日露戦争(1904~5)に備えることになる。どちらの戦争も朝鮮半島の権益を巡る戦争であり、征韓論の決着は明治四十三年(1910年)の日韓併合まで先送りされることになるのだった。しかし、長州閥と薩摩閥の暗闘は続き、明治十一年(1878年)に大久保利通が暗殺されることになる。明治八年に京都府知事となっている槇村正直は明治十年、山本覚馬の顧問の任を解く。明治十一年府県会規則が発布され京都府会が成立すると、明治十二年の初の府議会議員選挙に山本覚馬は立候補し、槇村と覚馬は知事と議員として対立することになる。明治十年には後にみねと婚姻する伊勢時雄が同志社英学校に入学。時雄は明治二年に暗殺された横井時存(小楠)の長男であり、北条平氏として時の諱を継いでいる。熊本バンドの一員であり、十津川郷士小楠暗殺の理由とされる「日本キリスト教化計画」の噂がまんざらでもなかったことが窺われる。熊本県は西南戦争の戦場と化し、その後、中央政府指導の県政が始っている。旧熊本士族の同志社入学は一種の疎開や亡命の意味があったと思われる。徳富蘇峰・徳富蘆花の兄弟は共に同志社で学ぶが・・・やがてその理想主義は理想主義ゆえに分裂することになる。徳富蘇峰は日清戦争後の三国干渉により・・・「力なき正義を虚しいもの」と考え、ナショナリズムの道へ突き進むのである。ロシアの文豪貴族トルストイによる原始キリスト教信者となった徳富蘆花にはそれが堕落と感じられたのだった。しかし、それはまだ先の話である。とにかく・・・大日本帝国には十数年に及ぶ平和が訪れたのだった。
東京よりの使者が新築されたばかりの新島邸にやってきた。新島邸は最初の同志社英学校の地に建てられている。旧新撰組の土木工兵と会津小鉄の指揮する戦闘工兵隊が地下に要塞を構築していた。実質的な科学忍者隊の京都支部である。
東京では天璋院篤姫が健在であり、明治十年九月二日、静寛院宮(和宮)が病死したためにくのいち総本家・一条姫の後継に復帰している。すでに東京・京都間には電信が引かれていたが、暗号解読を恐れて篤姫は科学忍者隊くのいちの仲野を派遣したのである。
「箱根では野生の人狼が大量発生したそうでがんすね」
地下の応接室で英国茶をカップに注ぎながら八重が問う。
「不埒な英国の不良狼が百姓娘に種付けしまくったのです」
「宮様は・・・そんでお亡くなりになったのでごぜえやすか」
「宮様は・・・人狼たちを憐れに想い、共に殉じた由にございます・・・」
「なんとまあ・・・お優しいことでごぜえますなあ」
「この度は・・・篤姫様より、くのいちを一人預かって参りました」
「あの・・・女子か・・・」
「元は大阪の生まれで、小松帯刀様とくのいちお琴との間に生まれた娘でございます」
「なるほど・・・お琴様の亡き後、篤姫様がご養母となられた鈴姫様でごぜえやすな」
「篤姫様より・・・一応の仕込みは終わった故に鉄砲を仕込んでもらいたいということでございます」
「しかし・・・薩摩の姫を会津の私が仕込むとは時代が代わったのでがすなあ」
「手加減無用とのことでございました」
「承知しやした」
「それから・・・これは坂本、いえ・・・明智様にお届けくださいませ」
「龍馬様に・・・なんでごぜえやすか」
「西郷様の心臓でございます」
「なんと・・・」
「鼓動が今なお・・・止まらないのでございます」
「・・・やはり、火炎魔神はただのお人ではござらぬのでがすなあ」
「研究材料にせよとのことでございます」
「さすが篤姫様は・・・しのびのなかのしのびだし・・・」
西郷の心臓は鞍馬山に届けられ、人造人間の研究が開始された。
小松の鈴姫は同志社女学校の生徒となり、地下訓練場で八重に鉄砲忍びの手ほどきを受けた。
「篤姫様が申されるには吸血鬼にも銀弾丸は有効やとか・・・」
「効くことは効くのですが・・・聖水弾丸には及びませぬ。ただ・・・聖水弾丸は調合が難しゅうございます。リボルバーが何故、六連発か、ご存知でございやしょうか」
「はて・・・」
「十字射ちで聖なる銃痕を刻むためでがんす。横二発、縦四発で身体に十字架を刻めばヴァンパイヤは消滅すんのだし」
「速射、全弾命中が肝心なのですね」
「左様でごぜえやす」
八重は見本を示した。
標的には一瞬で十字架が刻まれる。
「お見事でございます・・・さすがは・・・会津の八重様・・・」
「さあ、撃って撃って撃つばかりが修練でがす」
「はい」
鈴姫はリボルバーを取ると訓練を開始する。
速射力は八重に及ばないが、全弾命中だった。
「お見事・・・」
「一刻も早く・・・腕を磨かねばなりませぬ・・・」
「なぜでございますか・・・」
「北海道に吸血鬼が増加しつつあるのです」
「北海道に・・・」
「旧幕府の方が持ち込まれたものと思われます」
「・・・」
「西南戦争の後は・・・北海道で吸血鬼戦争が開始されるのです」
「それで・・・陸軍に特殊部隊が設けられたのだなし・・・」
「さすがは・・・八重様、お耳が早い。新撰組の狼男や、薩摩のくぐり衆の生き残りなども参集されているそうです。もしもの場合は京都の科学忍者隊への出動要請があるかもしれません」
「それほどにか・・・」
「千をはるかにこえる吸血鬼が発生しているとか」
「恐ろしいことでがんす」
鎖国が解かれて十余年・・・。
神州には異国の魔族が大量に流入しているのである。
文明開化の御代に新たなる闇の戦いが開始されていたのだった。
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