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2013年9月19日 (木)

天国の毒と地獄の薬(小泉孝太郎)

黒澤明監督の「天国と地獄」(1963年)では丘の上の豪邸と港町のスラムがタイトルが示す対比のシンボルとなっている。

ドラマ「名もなき毒」は「天国と地獄」とは直接的には無関係だが、今多コンツェルングループの会長の娘である菜穂子(国仲涼子)と庶民の杉村三郎(小泉孝太郎)の結婚がそのニュアンスを醸しだすのである。

登場人物たちは大なり小なり、その結婚に対して・・・キリスト教における「七つの大罪」のうち・・・最後の罪とされる「嫉妬」を感じるわけである。

杉村三郎の母親はこの結婚に反対し・・・「息子は死んだ」と宣言する。

結婚の条件として今多コンツェルングループ広報室勤務を命じられた杉村三郎は全社員からある程度の距離を置かれる。

そして・・・物語の中で最高のモンスターである原田いずみは「杉村の家庭が存在することが許されないことだ」として三郎と菜穂子の愛娘・桃子(矢崎由紗)に包丁を突き付けて人質にとるのである。

「殺人」についての定義を常に模索する原作者は・・・ついに「殺人は人間の誰もが持つ最高の権力」だという結論に達する。

しかし、復讐による殺人は「殺されたから殺すのでは意味がない」と含みを残すのである。

当然、その先には「殺される前に殺せ」が存在するわけだが・・・その点については寸止めで言及を避けるのだった。

まあ・・・三郎は七つの大罪の中核である「憤怒」に囚われて、いずみをゴキブリのように叩き殺しかけるのであるけれど。

で、『月曜ミステリーシアター・名もなき毒・第5~最終回(全11話)』(TBSテレビ201300805PM8~)原作・宮部みゆき、脚本・神山由美子、演出・金子文紀(他)を見た。『誰か Somebody』編が終結し・・・姉と妹の不毛な関係に終止符が打たれる。バカが付くほどお人よしの杉村三郎は二度と他人のトラブルに関わるのはやめようと心に誓うのであるが・・・それでは作品が成立しないので・・・三郎は否応なく事件に巻き込まれ・・・結局、苦い気持ちを味わうことになるのだった。所謂一つのバカは死ななきゃ治らない展開である。

平均視聴率は*9.3%で「半沢直樹」に三倍以上負けているわけだが・・・キッドは内容的にはこっちの方が二倍半くらい楽しめた。だからといって「半沢直樹」に熱中している人を馬鹿にするつもりはありません。人間なんて人それぞれですからなあ。

事件はいくつかの起っているのだが・・・大きく分けて連続無差別毒殺事件と今多コンツェルングループ広報室社内報「あおぞら」の編集アシスタント・原田いずみ(江口のりこ)の果てしなき憤怒の暴走である。

連続無差別毒殺事件は首都圏のコンビニのジュースに青酸カリが混入され、四人の死亡者を出す。第一と第三の犯行は未成年者が自殺用の毒を効用を検証するために行った犯罪で第二の犯行は便乗した保険金殺人事件であった。第四の事件は遺産相続が絡んでいると地元警察が独自の捜査を展開中だった。

殺されたのはモロボシダン似の老人・古屋明俊(森次晃嗣)で、犬を連れての散歩中にコンビニでウーロン茶を買って歩きながら飲み、中毒死するのだった。

明俊には愛人の奈良和子(烏丸せつこ)がいて、全財産を和子に残そうとしたために一人娘のシングルマザー・暁子(真矢みき)と口論になっていたのである。

コンビニ「ララ・パセリ」の店長・萩原弘(斎藤歩)が暁子の元・交際相手だったことで嫌疑は深まる。

一方、今多コンツェルングループ広報室ではアシスタントの椎名遥(岡本玲)が留学のために退職し、激しい競争率を勝ち抜いて原田いずみが採用されてしまう。高校中退の学歴を大卒と詐称し、前の勤務先でトラブルメーカーとなり、年齢さえ30歳なのに26歳と偽っている女を採用する広報室一同・・・どんだけ見る目ないんだよ・・・。

まして・・・会長の孫の婿がいる部署である。セキュリティー上ありえないわけだが・・・そんなことを言っては規格外のモンスターいずみに失礼なのである。遅刻早退は当たり前で一週間の無断欠勤の上、注意した編集長(室井滋)には文房具を投げつけて負傷させ、先輩の手島(ムロツヨシ)のセクシャル・ハラスメントの冤罪を申し立てる。事態の処理を申しつけられた三郎は・・・いずみの前の勤務先を訪ねることになる。

そこで・・・いずみの悪行三昧を聞かされた三郎は・・・事態収拾に功のあった元警察官の探偵・北見一郎(大杉漣)を紹介されるのだった。

そして・・・そこで・・・近所に住む古屋暁子の娘・美知香(杉咲花)に出会ってしまうのだった。

母親との確執により・・・摂食障害に悩む美知香の憐れさに・・・三郎のお人よしモードが発動するのである。

「放ってはおけない・・・」のだった。

だから・・・それが・・・まずいんだろうがっ。

「げんだいずみの前の職場だった編集プロダクション・ハードアクトの社長の沼田さん(新井康弘)からこちらを紹介されてきました」

「私のようなものにあなたのような方が無暗に名刺を渡すものでありません」

「しかし・・・あなたは沼田さんに信用されているようでした」

「彼や私が嘘をついているのかもしれませんよ・・・」

「今のお譲さんは・・・」

「近所の人なのですが・・・未成年なので依頼主にはなれないのです・・・ご用件は?」

「げんだいずみをどう思われますか・・・」

「普通でしょう」

「普通・・・しかし」

「あなたは普通の人とはどういう人だとおもわれますか」

「他人には迷惑をかけないで・・・独り立ちしている人間と言いますか・・・」

「あなたも私もそうでしょう。そしてそういう人間は立派な人間と言えます」

「はあ・・・」

「あなたは可愛い子供がいたら頭をなでたくなりますか」

「ええ・・・」

「ゴキブリは叩き殺せますか・・・」

「・・・なんとか」

「そういう人間は立派な人間です」

「しかし・・・ゴキブリの頭をなでる人間も、可愛い子供を叩き殺す人間も今は普通の人間と言えます。つまり・・・普通の人間の許容範囲が拡大したのです」

「・・・」

「げんだいずみにはかかわらないことです。ちなみに・・・彼女の両親は彼女から逃げ出しました・・・それほど恐ろしい普通の人間なのです」

「・・・」

「しかし・・・もうおそいかもしれない・・・あなたは目をつけられているかもしれない」

「私は・・・特に・・・彼女には・・・あなたの立場そのものが・・・すでに彼女の怒りの対象なのですよ・・・お分かりになりますでしょう」

「・・・」

帰り道、貧血で倒れた美知香を救助してしまう三郎だった。

そのために・・・古屋明俊殺害事件にも巻き込まれてしまう三郎だった。

母親の暁子が祖父を殺したのではないかと疑って精神失調が悪化した美知香を放ってはおけないからである。

三郎の愛妻・菜穂子は優しすぎる夫を危惧するのだが・・・それを美点と感じているので大目に見るのだった。

やがて・・・美知香は広報室にまで顔を出すようになる。

喫茶「睡蓮」のマスター水田(本田博太郎)もいたいけない美知香を気に入るのだった。

「夜行観覧車」で唐揚げ地獄を味わったので美知香は家庭内暴力控えめなのだった。

広報室には詐偽で留学できなかった椎名が出戻り、さらに有名なジャーナリスト・秋山省吾の従妹の五味淵まゆみ(中西美帆)がコネ入社し・・・にぎわうのだった。

人々の「幸福」が絶対に許せないげんだいずみは逆上するのだった。

そして・・・広報室のミネラルウオーターに睡眠薬を投入する。

「わらしなんらかあらまがいらい・・・」と出されたコーヒーを飲んでしびれる美知香。

外出中の手島以外、広報室は全滅するのであった。

「うわ・・・なにこれ・・・どんなモンスターがきたのかな・・・ヨシヒコ、ムラサキ・・・助けて」

幸い・・・命に別条がなかった一同。

病院に駆けつけた妻に「大げさだなあ」と呑気な夫。

「あなた・・・これは刑事事件なんですよ・・・」

「え・・・」

この期に及んで・・・自分に優しさが足りなかったから・・・こんなことになったのではと反省する三郎だった。

やがて・・・美知香は三郎の家にも遊びに来るようになった。

二号の娘でシングルマザーに育てられた菜穂子は美知香に親近感を抱いていたのだ。

似たもの夫婦である。

新居のお庭のプールで・・・水遊びに興ずる桃子。

もちろん・・・そんな「幸福」を放置しておけるげんだではないのである。

げんだは過去に兄の幸せな結婚が許せなくて披露宴て「おにいちゃんにやらしいことをされました」とスピーチし・・・花嫁を自殺に追い込んだこともある怪物なのである。

指名手配中のげんだは「森の熊さん」を歌いながら赤いバラを持って三郎の新居に向かう。

その頃、主人公特権で・・・和子の自殺によって一件落着しかけた古屋明俊殺害事件の意外な犯人にたどり着いた三郎。

犯人は・・・「ララ・パセリ」店員で寝た切りの祖母を介護しつつ、自身もぜんそくで苦しみ、出口のない貧困にあえぐ・・・青年・外立研治(君嶋麻耶)だった。ここが「罪と罰」からの「身代金」からの「天国と地獄」からの・・・「名もなき毒」である。

同行した秋山とともに・・・研治の自白を引き出す三郎だった。

「どうして・・・そんなことを・・・」

「ばあちゃんを殺そうとしたんです・・・でもできなかった・・・すごく腹がたって・・・だれでもいいから・・・毒をのませたくなりました・・・だって・・・僕には・・・なにもいいことがなかったから・・・なにをしたっていいと思ったんだ・・・でも・・・誰かをころしても・・・いいことはなかった」

「誰か・・・君を止めてくれればよかったのにな・・・たとえば君に毒を売った相手とかがさ・・・ま、普通、そういう人間は毒を売らないわけだけど・・・」

その時・・・菜穂子から・・・緊急連絡が・・・。

「うっかり・・・花が・・・げんだで・・・桃子・・・助けて・・・花のお届け・・・ナイフで・・・桃子・・・あなた・・・こわい・・・あなたを呼べって・・・桃子・・・人質」

「落ちついて・・・落ち着いて」

殺人犯と一緒にタクシーで自宅に戻る三郎。

キッチンに桃子をつれてたてこもるゲンダイヅミ・・・。

「桃子を返して下さい」

「あやまりなさいよ」

「何について・・・あやまれば」

「あんたが存在していることをよ・・・幸せで・・・笑って・・・頂点で・・・人を見下して・・・ふざけんなふざけんなふざけんな」

公衆電話の受話器をガンガン連打するように桃子をナイフで連打しそうなゲーンダイヅーミである。

「ごめんなさい」

「全財産よこしなさいよ」

その時・・・研治が割って入る。

「やめてあげたらどうですか」

「あんた・・・だれよ」

「人殺しです」

「なに・・・いってんの」

「ほんとうです・・・これから警察に行く所でした・・・一緒にいきましょう」

「バカなの」

「人をころしても・・・いいことはありませんよ」

「いいことなんて・・・ないわよ・・・そんなのきまってるじゃない・・・いいことがあればこんなに嫌な気分になるわけないでしょう」

「いいことは・・・ありますよ・・・一瞬ですけど」

「うるさい・・・うるさい・・・うるさい」

殺人者がGIの気を引いている間に窓から桃子を救助する三郎。

「くそやろおおおおお」と刃物を振り回すGに・・・突っ込む三郎。

刃物をとりあげるとGの後頭部を壁にガンガンと叩きつける三郎だった。

「死ね・・・死ね・・・死ね」

ガン・・・ガン・・・ガン・・・ガン・・・ガン・・・。

「やめなさい・・・死んじゃうぞ」と秋山が三郎を制止する。

「これが・・・殺意か・・・僕にもあったのか・・・」と驚く三郎だった。

こうしてGは捕獲されたのだった。

会長の孫を守ったことで三郎は会長におほめの言葉をいただくのだ。

「ことがおこるまえになんとかするのが理想だが・・・そんなことができるなら警察はいらないからな・・・ことなきをえたならそれでいい」

事件を聞き・・・かつ枝じゃなかった三郎の母(木野花)が・・・久しぶりに電話してくる。

「しっかりしないと・・・あんた、捨てられるよ」

母の優しさに涙する三郎だった。

殺人犯の祖母は近所の気のいい組合長じゃなかったコンビニのオーナーだった萩原運送社長(でんでん)が面倒を見るのだった。

「ばあちゃんのことは・・・心配すんな・・・」

不気味な社会にも人情はある。そして・・・「あまちゃん」の浸透と拡散も進行しているのだ。

関連するキッドのブログ→名もなき毒・前半

(仮記事です)

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