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2013年10月15日 (火)

1400万円を支出し、39万円で払い下げたのでごぜえやす(綾瀬はるか)

明治14年の国家予算は歳入がおよそ7149万円、歳出がおよそ7146万円であった。

そういう時代に諸事情があるとはいえ・・・北海道開拓使長官の黒田清隆が船舶、倉庫、農園、炭鉱、ビール・砂糖工場などで、およそ1400万円の費用を投じたものを39万円(無利息30年賦)で関西貿易商会(黒田と同郷の薩摩出身者五代友厚らが経営)に払下げるという指令は充分に物議を醸すものだっただろう。

非常にドス黒い匂いがするわけである。

しかし、北海道を開拓する・・・という目的から言えば先行投資として成立するという見識もある。

経済は生き物なのである。

だが・・・政治と経済はいつの時代も密接に結びついている。

汚職まがいのことをするのが薩摩閥であり、それを長州閥が是認する。

一方で、板垣退助(土佐)や大隈重信(肥前)がこれを糾弾するという図式である。

明治政府は薩長土肥から薩長へと推移していくのだった。

追い落とされた土肥は・・・歯ぎしりするわけである。

何が善で何が悪だか・・・いつの世にもわかったものではないのだった。

とにかく・・・開拓使官有物払下げ事件は波紋を投げかけ、結果として明治十四年の政変を引き起こし、大隈重信は野に下る。

そして・・・大通公園に黒田清隆の銅像が建つのだ。

で、『八重の桜・第41回』(NHK総合20131013PM8~)作・山本むつみ、演出・中野亮平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は「板垣死すとも自由は死せず」(吾死スルトモ自由ハ死セン)でおなじみ戊辰戦争の英雄・土佐藩出身・板垣信方の血を引く猛将・板垣退助の自由民権運動家ヴァージョン描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。このドラマでは基本的に板垣退助「かっけええええええっ」で、伊藤博文「腹黒そおおおおおおっ」でございますな。まあ・・・加藤雅也VS加藤虎ノ介の使い方としては王道なのかもしれませんねえ。

Yaeden041 明治13年(1880年)5月京都府知事・槇村正直は京都府会の同意を得ず地租追徴を決定する。山本覚馬が議長を務める府会はこれに反発、槇村は追徴を撤回し府会に追徴議案を提出し、議案は可決する。参議兼大蔵卿・大隈重信は大規模な外債募集による紙幣整理を断行する案を閣議に提出、発言権を強めた明治天皇はこれを否定し財政緊縮を命じる勅諭を出す。外債の募集は国の独立を脅かすことになるという危惧によるものとされる。この頃より、憲法制定のためのモデルをイギリス式にするかプロイセン式にするかで対立が生じる。7月、京都府画学校(後の京都市立芸術大学)開校。9月、東京法学社(後の法政大学)開校、専修学校(後の専修大学)開校。10月、小笠原諸島が東京府に編入。11月、君が代曲譜制定。12月、教育令改正公布。明治14年(1881年)1月、北垣国道が京都府知事となり槇村正直は元老院議官となる。明治法律学校(後の明治大学)創立。7月、開拓使官有物払下げ事件が明るみに出る。大隈は政府内で払下げに反対。14日、ビリー・ザ・キッドがギャレット保安官に射殺される。10月12日、参議を免官となった大隈は10月15日付で辞表を提出した。26日、アリゾナ州OK牧場で銃撃戦。ワイアット・アープが勝利する。この年、山本みねが横井時雄と結婚し愛媛県今治教会に移住。

「私もヴァンパイア退治に参加したいのです」とジョーが真摯な表情で言う。

「おやめ下さい・・・危険でございますから・・・」と八重は困った顔をする。

「しかし、札幌バンドの学生たちは参加しているそうではないですか・・・メゾシスト派にばかり手柄をたてられては・・・本国の会衆派がいろいろ騒ぎます」

「蝦夷地は幕末以来、吸血鬼の巣窟になっているので札幌の方々はそれなりに訓練を受けておりやす。そうでなければ吸血鬼の餌食になるか・・・自らが吸血鬼になっておるのです」

「米国のヴァンパイアの頭領とも言われるガーフィールドが狂信者の凶弾によって消滅し、支配権を得た宿主ヴァンパイヤが北海道に生まれているのかもしれないのです」

「・・・ごらんになりたいのですか」

「・・・そうです」

「ジョー・・・仕方のない人ですね・・・とにかく、私からはなれねえようにしてください」

函館から札幌に至るどこかに・・・吸血鬼の昼の墓場があると推測した北海道開拓使特設討伐隊の隊長・坂本直は特別探索班を組織した。

班長は八重で、小松リツ、三日月、月の輪などのクリスチャンくのいちと、札幌バンドの学生・新渡戸稲造、宮部金吾、内村鑑三らのクラーク博士の教え子たち、そして、小樽の杉村義衛、月形太郎、西川寅吉の十人であり、これに志願した新島襄が加わっていた。

杉村は新撰組の永倉新八であり、三日月は新八の娘お磯である。

父は剣の達人、娘は射撃の名人になっていたのだった。

「聖水の代わりに、我が妻が開発したニンニク丸を剣に塗布することで吸血鬼に致命傷を負わせることが出来申す」

新八は会津の八重の勇名を聴いており、京都府顧問の妹である彼女に対して主家の娘のように接する。

「山本の姫君は・・・銀の弾丸をお使いか・・・」

「さようでございまするが・・・姫君はおやめくだされませ・・・あだすは人妻でごぜえやすから」

「これは・・・失敬」

クラーク博士は米国で襄を教えたこともある北軍中佐あがりの教育者である。

札幌を跋扈していた吸血鬼を学生たちを指揮して根絶した後ですでに帰国している。

札幌バンドの学生たちはその生き残りである。

全員がライフルで武装している。

西川寅吉は五寸釘の寅吉の異名を持つ囚人である。古きオオクチノカミの血を引く獣人だった。常人離れした体力が禍して兇徒となったが・・・監獄の剣術指南となった新八の指導で模範囚となっていた。月形太郎は看守で・・・新八の一番弟子であった。

八重は洞爺湖の中島に吸血鬼の巣窟があると睨んでいた。

戦艦「扶桑」で室蘭に上陸した特探班は乗馬で目的地を目指す。

先発した岩倉配下の鴨川忍びが洞爺湖に至る河川路を確保しており、海岸線の仮設基地で一泊し、十一月一日に中島を急襲する手筈になっている。

北海道の冬が来る前に決着をつける必要があった。

仮設基地で羊肉を焼きながら議論を始めたのは襄と札幌バンドの学生たちだった。

「教会などはいらぬと思うのです」と二十歳そこそこの内村が物申すのだった。

「なぜでしょうか」と穏やかに応ずる襄。

「聖書さえあれば・・・そこが教会ではないですか」

「しかし・・・信仰をもつ人々が集う場所があってもいいでしょう」

「内なる信仰には無用のことです」

「なるほど・・・」

「西洋列強の根底にキリスト教があるのは疑いのないところですが・・・富国強兵に成功したのはプロテスタント・・・しかもリベラルなものたちです」

「たしかに・・・」

「神への愛を突き詰めれば・・・神への絶対服従に近い境地が生じます」

「ふむ」

「しかし・・・人の行いを神は裁くのではない」

「神はすべてを決めておられるからですね」

「そうです・・・ですから・・・神の前では自由意志など無に等しいとも言える・・・けれど・・・」

「・・・けれど?」

「神がすでに望んでおられることなら・・・人は自由に振る舞えば振る舞うほど神の御心に叶うことになる」

「そうですね・・・欲望のままに生きることではないのですね」

「そうです・・・欲望をどこまでも高めて・・・己の限界を越えるまで欲していく・・・たとえば商人ならば利を稼ぐことが神の御心に叶うこと・・・軍人ならば戦って戦って戦い抜くこと。科学者は真理の探究にすべてを捧げること・・・それが信仰というものでしょう」

「なるほど・・・働き蜂は死ぬまで働けということですね」

「そうです・・・それが正しい信仰ならば教会などは無用ではないですか」

「あなたは・・・大切なことを忘れている・・・伝道者は・・・伝道しまくってこそ神の意志に叶うのです・・・教会はその前線基地なのです」

(馬鹿馬鹿しい話を・・・よくも飽きないで・・・)と八重が思った時、三日月が飛び込んできた。

「八重様・・・犬の遠吠えが聴こえます」

「蝦夷のオオカミではないのですか」

「いいえ・・・これは邪悪な魔犬の声です・・・吸血鬼の使い魔と思われます」

「ふふふ・・・夜戦を仕掛けて参ったか・・・」

一同に緊張が走る。

「皆の者、戦闘準備・・・明日の夜明けまでが勝負じゃ」

すでに夕闇に包まれ始めた北の大地に冷たい風が吹いている。

関連するキッドのブログ→第40話のレビュー

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