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2013年10月31日 (木)

デスパレートな妻たちと和解の王子様(岡田将生)そして、はしゃぐ裁判長(広末涼子)

笑わない裁判官、実は問題児、そして遠足大好きな別府敏子(広末涼子)ふたたびである。

前回は「リーガル・ハイ スペシャル」に登場して、古美門(堺雅人)を法廷侮辱罪で監置(監置場への留置)した女である。

広末史上最高にかわいいキャラクターだと言える。

きわめて・・・デビューに近い「沙粧妙子-最後の事件-」(1995年)の早瀬直美役のかわいさに匹敵するとも言える。

いわば・・・「あまちゃん」の主人公・天野アキ(能年玲奈)のかわいさに通じるものがある。物凄い葛藤を内面に抱えながらそれを一切表に出さない・・・あるいは出せない・・・かわいさである。

もはや33歳の広末涼子にこの「かわいさ」を表現させてしまうところが・・・「リーガルハイ」の凄さなのである。

なにしろ・・・別府敏子の一挙一動から目が離せないのだ。釘付けになってしまうほどかわいいのである。

もちろん・・・「リーガルハイ」の世界では・・・誰にもその傾向があるわけだが・・・別府敏子(広末涼子)の可愛さは別格と言って良いだろう。

また、見たいよね~。

で、『リーガルハイ(第二期)・第4回』(フジテレビ20131030PM10~)脚本・古沢良太、演出・西坂端城を見た。ちょっと嫌な感じの隣の主婦の女王の座を賭けて・・・猫背椿(41歳)と佐藤仁美(34歳)が激突である。劇団「大人計画」の人とスカウトキャラバングランプリの受賞者が同じジャンルで戦うというのは味わい深い・・・。もちろん・・・どうしたってより恵まれた感じがするのは元・アイドルの方なのであるが・・・実は・・・という展開はもう佐藤仁美の持ちキャラクターのような様相を呈してきた。なんだろう・・・映画「バウンス ko GALS」のジョンコがはまりすぎたのか。それとも映画「リング」の貞子の呪いなのか。一方、猫背椿は実年齢七歳年上なのに・・・きっちりと同い年という役柄を演じきる。さすがである。

華麗に騒音を奏でる・・・ヴァイオリンをお稽古中の古美門弁護士。音痴の黛真知子(新垣結衣)にも分かるほどのクソ演奏に彼女は頭をかきむしり、事務員の服部(里見浩太朗)はいずこかへ姿を消す。

羽生晴樹(岡田将生)はストリートミュージシャン同志のショバ争い(陣取り合戦)に介入。和解の王子様としてたちまち音楽ジャンルを越えたコラボレーションを成立させるのだった。まあ、完成した音楽はなんだかよくわからないものになっていた。

そして・・・ハウス・ミュージックの流れるクラブでは・・・「お尻をさわった」「さわらない」の女性客と男性客のトラブルが発生した。現れたのは氷の女王裁判官・別府敏子(広末涼子)である。たちまち、退廃的な夜の社交場は法廷と化すのだった。「防犯カメラの映像から痴漢行為は明らか、女性も挑発的な服装で来ている以上、そういう事態も想定するべき、そういう大人の遊びができないのなら出禁にします。閉廷」・・・恐ろしいどこでも支配力を発揮する別府裁判長だった。

音楽尽くしの最後に・・・小学生がピアノのおさらいをしている場面に転ずる。指導するのは母親の西平なつ(佐藤仁美)・・・しかし、隣の家の東山冬海(猫背椿)が日干しした布団を叩きはじめ・・・トラブルが発生する。作業中の鋏を持ったまま、隣の家にクレームをつけにいった西平夫人を・・・東山夫人がゴルフクラブで迎え撃ち・・・ゴルフクラブの殴打を避けようとした西平夫人は・・・東山夫人の腹部を鋏で刺して傷害事件が発生したのである。

刑事裁判で・・・被告となった西平夫人を弁護したのは羽入弁護士で・・・見事に「正当防衛による無罪」を勝ち取るのだった。

敗訴した・・・東山夫人は古美門弁護士事務所を訪れ・・・「慰謝料二千万円」を弁護料に「西山家の転居」を争う民事訴訟の弁護を依頼するのだった。

こうして・・・古美門弁護士事務所、NEXUS Law Firm、裁判長・別府のデスパレート(死に物狂い)の戦いが始るのである。

しかし・・・相変わらず・・・沈着冷静な別府裁判長に古美門は得意なパフォーマンスを封じられ・・・羽生の落ちついた弁論は別府に「なかなかよろしい」と誉められるのだった。

「アラブの言葉に・・・サソリもふまれなければささないという言葉があります」とお約束の言葉をくりだす羽生である。

「なるほど・・・」とメモをする別府。

「メモするほどのことかっ」とすでに不規則発言の古美門。

「被害者も非難されるべき場合がある・・・ということですね・・・勉強になります」と古美門をあえて無視する別府。

「ゲロゲロ・・・」と蒼ざめる古美門。

実はずっと好意を持っている意中の人・別府が羽生に好意を示したことに嫉妬して調子が狂う古美門だった。

「だめだこりゃ・・・」

黛は「もはや敗訴」を覚悟するのだった。

さて・・・今回はキッドにイレギュラーな出来事があり、今日と明日はハードスケジュールである。「リーガルハイ」→「SP天」「彼岸島」と普通に考えてもオーバーワークなので・・・いつものペースでレビューは無理なのである。

ここからは・・・現場検証と言う名の「遠足」があり、はしゃいだ別府が古美門とツーショット、しりとりで古美門に勝ち、ガリレオのものまねを披露し、古美門と黛の剣舞鑑賞、西平家の愛犬チャンプ(ティム)の秘密を暴いたりして・・・広末、かわいいよ広末を爆発させるのだが・・・割愛せざるを得ない。

ちなみに広末涼子は「ガリレオ1-3」のゲスト・スターである。

さらに・・・古美門をいじめて楽しむために・・・別府が「廊下でたってなさい」と命じ古美門が立たされて凌辱され、それを受けた形で・・・安藤貴和(小雪)パートでは古美門が「M」であることを断定。ついに貴和が「エマニエル夫人」(1974年フランス映画)のシルヴィア・クリステル化するというお笑いもあってしみじみするわけだが・・・割愛なのである。

東山冬海

西平なつ

郊外の一戸建て住宅に同じ日に引っ越して隣人となった二人。

同い年で、子供も同じ年齢。

夫はサラリーマン。

二人は似たもの同志で仲良くなったのである。

しかし、お受験が二人に差異を生じさせる。

西平夫人の子供は合格し、東山夫人の子供は不合格。

それ以来・・・疎遠となっていく二人。

西平家で放火事件があり・・・東山夫人が疑われる。

西平家で飼い始めた犬が東山夫人を襲う。

子供たちが一緒に始めたピアノのレッスンも東山家の子供は脱落。

東山家の亭主の会社は業績が悪化し、西平家の亭主は順調に出世。

生活水準にも差が生じ・・・東山夫人の嫉妬が高じ・・・ついに傷害事件となった・・・。

被害者の心情は理解できるが・・・加害者に落ち度はなかったと誰もが認めざるを得ない・・・という状況である。

犬に襲われた事件も・・・東山夫人の狂言である可能性が高まる。

しかし・・・草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)のリサーチにより・・・隠されていた真実が明らかになるのだった。

西平夫人の子供の証言で・・・放火をしたのは西平夫人であることが明らかとなったのだ。

さらに・・・西平夫人の亭主は浮気三昧で・・・夫婦仲は最悪だったのである。

「私の方が・・・がんばっているのに・・・お隣の夫婦は円満で・・・笑って暮らしている・・・私にはそれが我慢できなかったの」

そして・・・事件は・・・西平夫人が東山夫人を挑発して・・・傷害事件を起こさせようとした意図に基づくものだったことが明るみに出る。

誤算だったのはてっきりデッキブラシで襲いかかってくると思っていた東山夫人が・・・家族からプレゼントされたゴルフクラブで武装していたことであった。

身の危険を感じた西平夫人は・・・思わず鋏をふるってしまったのである。

「この計画的犯行は・・・まさに犯罪と言えるでしょう」

別府はこの事件の真相の暴露に愉悦を感じるのだが・・・立場上は・・・刑事事件と別の判決を下すことにいろいろと差しさわりがあるという苦境に追い込まれていた。

それを救ったのは実は・・・相思相愛だった両家の子供たちであった。おい・・・そこは意味が違うだろう。

愛ゆえに二人の男の子は・・・母親同士の和解を願っていたのだった。

和解の場で・・・羽生はこの点をついて・・・完全勝利した古美門に対し・・・痛み分けを強いるのである。

東山夫人は西平夫人が自分より不幸だったことに同情し・・・西平夫人も・・・東山夫人と仲良く家族ぐるみでバーベキューをしていた頃を懐かしむ。

二人の主婦は同類相哀れみ・・・仲直りしてしまったのだった。

「なんじゃ・・・そりゃ」

裁判は古美門が勝利したが・・・原告が「転居」の要求をとりさげたことで実質、和解王子の勝利であり・・・別府も面目が保たれたのだった。

羽生が・・・古美門に一矢を報いたのである。

しかし・・・そんなことでは動じない古美門は・・・リサイタルも視野にいれ、ヴァイオリンのお稽古に励むのだった。

ついに・・・服部の行く先をつきとめる黛。

服部は・・・古美門が演奏を開始すると・・・羊羹を持参し、近所におわびに伺っていたのだった。

「挨拶を欠かすのは・・・トラブルの元ですからな・・・」

呆れかえる黛だった。

しかし・・・服部の秘密はそれだけではなかった。

密かに誰かと電話で会話する服部。

「羽生弁護士は頭角を露わにしてきました・・・古美門先生を凌駕するかもしれません」

一体・・・電話の相手は誰なのか・・・新たな謎をはらみつつ・・・物語は続くのだった。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様のリーガルハイ

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2013年10月30日 (水)

瀬戸の花嫁風結婚詐欺師(夏帆)VS現実に興味のない男と現実にしか興味のない女と追憶の少女(工藤綾乃)

二本立てかよっ。

・・・いや・・・そこまでは・・・「ちゃんとしてっ」と言われて幻スリッパではたかれてもも体力的に無理なのである。

しかし、「みんなエスパーだよ!」「悪霊病棟」と潜在的パフォーマンスを見せつけた・・・夏帆が・・・久しぶりの清純派である・・・結局、結婚詐欺師だったけどな・・・ここは一部愛好家のためにもメモしておきたい。

結局、このドラマ「海の上の診療所」は月9ヒロイン・オーディションドラマなのかっ。

第3話には刑事役で「いっそん」も登場して、「たねいち」「よしだ」の「あまちゃん」スリーカードである。

一方、「変身・・・」のCMには途中、「若き日の天野春子(有村架純)」「天野アキ(能年玲奈)」起用の二本立てがあった。

「あまちゃん」の浸透と拡散はすすみ・・・消費も激しいのだった。

三木聡のドラマといえば・・・ちょっとだけ先物買いの美少女の投入が魅力の一つである。

これまでにも「帰って来た時効警察」の真加出くん(小出早織)、「熱海の捜査官」のレミー(二階堂ふみ)、東雲麻衣(三吉彩花)など・・・美少女達に印象深い「役」を作って来た。

今回は泉を発見した女の子(工藤綾乃)が登場である。80年代の終りにティーンエージャーなので生きていれば三十代の終りなのだが・・・おそらく死んでいるものと思われる。

回想の再登場を期待しつつ、もう、2~3人はかわいい女の子を出してもらいたいと思う。

ちなみに・・・工藤綾乃は・・・「リミット」(テレビ東京)のギリギリ生存者ハルからここである。

で、『・第2回』(TBSテレビ201310290028~)脚本・演出・三木聡を見た。現実に興味のない主人公・白川次郎/青沼霧生(中丸雄一)は変身ヒーローの一種である。冴えない小説家からちょっとだけ冴えてるインタビュアーに変身することで・・・「チューリップ殺人事件の謎」が渦巻く異空間にチャレンジするのである。現実と幻想の中間点である「賽の河原町」の「猫旅館」を経由して、秘密めいた「消ノ原町」へ向かうヒーローには・・・現実に不安を感じすぎるヒロイン・ゲビヤマくんこと下日山酈霞(かひやまりか=木村文乃)が担当編集兼アシスタントとして従うのだった。

「消ノ原町」の登場人物たちは・・・ある「歴史的事件」を連想させるネーミングになっている。

今回、登場した・・・「チューリップ殺人事件」の舞台であり、パワースポットとして有名な「三貴子の泉」の管理人は甘粕真一(眞島秀和)である。

甘粕と言えば・・・アナキストの大杉栄・伊藤野枝とともに幼児まで殺害した「甘粕事件」の主犯であり・・・後に満州事変に関わる甘粕正彦憲兵大尉が連想される。

「秘密」に接近した二人を救う形になる・・・消ノ原町の町長・里美補(外波山文明)の秘書は石原完一(萩原利久)である。ちなみに「三貴子の泉」の誕生に立ち会う男の子の名前は・・・完一らしい。実は・・・重要人物なのである。

石原と言えば・・・「世界最終戦論」で知られる「満州事変」の仕掛け人で陸軍中将・石原 莞爾が連想されるわけである。

そして・・・消ノ原食堂「モアイ」のセクシーぶった店員が川島芳香(町田マリー)なのである。

「東洋のマタ・ハリ」、「満州のジャンヌ・ダルク」と称された清朝王女にして男装の麗人・川島芳子(金璧輝)と一字違いなのであった。

つまり・・・消ノ原町には昭和初頭の満州国的な浪漫と陰謀が渦巻くわけである。

まあ・・・そんなに大袈裟なことには絶対にならないと思うぞ・・・。

不穏な町の人々に囲まれたヒーローとヒロインだったが・・・突然、あらわれた白装束の「おくりさまの提灯行列」によって窮地を脱出するのだった。

通りすがりの町長は・・・「この街では・・・不吉で禍々しいことを・・・おくりさまにおくってもらう風習があるのです」とインタビュアーに説明するのだった。

「つまり・・・汚れたものを祓うということですね」

「とにかく・・・この町は山とともに生きているのです」

「とりあえずは・・・御礼を申し上げておきますよ」

「まあ・・・君子危うきに近寄らずと申し上げておきますよ」

町長とその秘書が去ると・・・二人の会話の真意をつかみ損ねたゲビヤマくんは問う。

「どういう意味ですか・・・」

「つまり・・・警告だよ・・・これ以上、関わるとロクなことがないっていうことさ」

「・・・」

ここでもはや・・・基本的な謎はすべて解かれていることになる。

つまり・・・「パワースポット・三貴子の泉」で町おこしをしている消ノ原町では町ぐるみで「絶対に明かしてはならない秘密」を保守しているのだった。

そして・・・それは殺された夷鈴子(玄覺悠子)がにぎりしめていた・・・水道の蛇口に使われるような青いネジに関連するのである。

つまり・・・「三貴子の泉」には「水道」が深く関与しているのである。

「どうしますか・・・尻尾を巻いて逃げますか」

「いや・・・せっかく来たんだから・・・三貴子の泉は見物していこう」

「わ~い、名所観光ですね」

「現場検証だよ・・・観光名所としてはどうなんだね」

「ガイドブックによれば・・・80年代の終り頃、部活帰りの女の子と男の子が・・・山道で怪しい光が交わるのを目撃したそうです。二人が現場に行くと天空からレーザービームがさして爆発が起り、二人は失神しました。男の子はふもとで発見され、女の子は山中で発見されましたが・・・その身体は・・・湧き出した泉の水で濡れそぼっていたのです。そして、その水を分析すると・・・パワースポットのみっつの磁場の影響で・・・分子構造的に完璧に整った分子的にきれいな水であることが判明しました。この水を飲んで身体の水分がすべて入れ替わると・・・様々な病気が治るということで・・・水を汲みに来る人々が殺到し・・・有名なパワースポットとなって現在に至るということです・・・」

「そんな・・・観光資源のスポットで殺人事件が起ったんでは・・・いろいろと支障がありそうだな」

「だからこそ・・・猟奇的な殺人で・・・事件現場がたまたまそこだったという風にしたんでしょうねえ」

「ゲビヤマくん・・・君ってただのバカじゃなかったんだな」

「え・・・バカっていいましたか・・・バカって・・・誰のことですか」

しかし、二人は途中で・・・三貴子の泉の管理人と称する甘粕真一に呼びとめられるのだった。

「すみません・・・本日の営業時間は終了しました」

「営業時間っていいました」

「夕方は五時までなんです」

「ああ・・・管理的に・・・」

「管理的にです・・・せっかくおいでなので見て行きますか」

さりげなくコールド・リーディングの技法(詐欺師などが持ちいる情報引き出しのテクニック)で無防備なゲビヤマくんから・・・二人の情報を聞きだす甘粕だった。

そこへ・・・気狂い女を連れた川本三郎(少路勇介)、笹川量(三島ゆたか)、花谷雅(裵ジョンミョン)ら消ノ原町の消防団が通りかかる。

男たちは気狂い女をけしかけて・・・二人を威嚇するのだった。

「山あたりですな」

「山あたり・・・」

「この山のパワーを感じやすい人が時々・・・ああなるのです」

「食当たりとか水当たりみたいなものですね」

「察しが早くて助かります・・・さあ・・・夜の山道は危険ですから・・・そろそろ、お帰りください」

「あの・・・最後に一つだけ・・・天狗野郎にはどこに行けば会えますか」

「さあ・・・存じません」

二人きりの帰り路・・・インタビュアーはゲビヤマくんに注意を与えるのだった。

「僕らの職業とか・・・宿泊先の宿とか・・・個人情報、漏らし過ぎたよ・・・君はそれでも変種者かっ」

「あ・・・私、プライベートは開示する主義なので」

「危なすぎる主義だな」

とにかく・・・一端「猫旅館」に戻る二人だった。

インタビュアーは小説家に戻り、ゲビヤマくんのテンションは少し下がるのだった。

そこで・・・持参した録音用カセットテープレコーダー「青龍参号機」と「玄武弐号機」を披露するのだった。

「なんで・・・カセットなんだ」

「テープ起こしが趣味なんです」

「白虎壱号機と、朱雀四号機もあるのかい・・・」

「白虎は零号機で・・・朱雀が壱号機です」

「あ・・・そう」

「それは・・・エヴア的に・・・」

「いやだなあ・・・エヴァ的だったら・・・朱雀は弐号機じゃないですか」

「あ・・・そう」

しかし、別人に見える小説家を目撃した宿の女将・櫻井野薔薇(ふせえり)と番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)はゲビオカくんを発展家と認定するのだった。

ちなみに・・・異性に対して手広い感じの人が発展家であり、同性愛者が出会いを求めるのがハッテン場である。

まあ・・・一部の人しか使わないけどな。

そういう「くすぐり」なのだった。

再び、消ノ原町へとラインを越えそうなバスに乗って突入したインタビュアーとゲビヤマくんの二人は・・・天狗野郎を求めて「三貴子の泉」のある山の裏手にある「化野の森(あだしののもり)へと向かう。

そしていかにもホームレスの住居風なブルーシート構築物を発見するのだった。

「ブルーシート、青龍参号機、そして僕が青沼・・・三つそろったな」

「三つそろいましたね」

「とにかく、三つ揃えるのは基本なのだ」

「基本ですね」

「きっと、天狗はこの中にいる」

しかし、ゲビヤマくんが発見したのは胸にナイフを刺して真っ赤にそまったホームレス・天狗野郎(森下能幸)の仰臥体だった。

「死んでます・・・」

「死んでない・・・」

青沼は天狗野郎を真っ赤に染めているものを指ですくい取りなめる。

「やはり・・・ケチャップだ」

「お好きなんですか・・・」

「まあね・・・いいかね・・・インターネットの情報からは殺人現場の臭気の情報が欠落気味なんだ」

「はあ・・・」

「死んでれば脱糞するし、出血すれば血なまぐさい、擬装された殺人死体なんて匂いを嗅げばすぐにわかる。ケチャップの匂いしかしないんだから」

「はあ・・・」

「ホームレスだって近づけば本物か、偽物かすぐにわかるのが普通だ」

「清潔好きなホームレスもいると思いますけど」

「よく・・・ドラマにホームレスが出てきて・・・主人公が優しく接したりするが・・・まず、オエッてなっちゃうのが普通だろう」

「おえっ」

「起きろ、天狗野郎」

「すみません」

「正直に白状しろ」

「はい」

「お前はチューリップ殺人事件の現場で何を見た」

「何もみません・・・」

「嘘をつけ・・・人気のパワースポットに誰もいないなんてありえないだろう」

「その日は・・・禁断の日だったので・・・」

「禁断の日?」

「三貴子の泉には月に一度のメンスの日があるんです」

もちろん・・・メンスは隠語で・・・「水道関係のメンテナンス」を指していると妄想できる。

もちろん・・・素通りしても問題はない。どうせ、真相なんて絶対に解かれないからである。

「泉に休みってなんか韻踏んでるよね」

「寝耳にミミズみたいな」

「ちょっとちがうけど・・・まあいい・・・泉にどうして休みがいるんだ」

「わかりません」

「いや・・・お前はなにか知っているはずだ」

「知りません」

「この賽銭泥棒がっ」

「ご、ごめんなさい」

「素直に白状しろっ」

「死んでいた二人は泉の秘密を暴露しようとして殺されたんだと思います」

「どうして・・・そう思う」

「なんとなく・・・」

「なんとなくって言われたら・・・しょうがないな・・・何か、思い出したら連絡してくれ」

「わかりました・・・」

メールアドレスを交換する三人だった。

その流れで天狗野郎の下半身から天狗の面がおち・・・二人は見たいのかどうかもわからないものを目撃するのだった。

「あの・・・思い出したら・・・殺されるような気がするんですけど」

「大丈夫だ・・・君が殺されても誰も哀しまない」

「・・・」

二人は再び、三貴子の泉を訪れようとする。

「あれは・・・言いすぎだったんじゃないですか」

「ああ言う人には言いすぎってことはない」

「叱りつけてましたね」

「ああいう人は叱ってもらいたがっているんだ・・・誰かが叱ってやれば人はホームレスなんかにはならない・・・誰も叱らないから彼はああなったのだ」

「・・・断定しましたね」

「断定しなければ真実なんて永遠に見えてこないものなんだよ」

「・・・」

そこへ四人でいるように見えて三人、三人のように見えて実は四人の消防団トリオがやってくる。

「今度は・・・四人だな」

「よく・・・わかりましたね」

トリオの背後から姿を見せたのはどこぞの県警の刑事・安藤征一郎(光石研)だった。おなじみのメンバーを小出しである。

「刑事さんか」

「そうです」

「で・・・御同行願いたいと・・・」

「そうです・・・話が早いですな」

「しるけづつ・・・ですからね・・・汁気筒ってぬめっとした何かですか・・・」

「つづけるし・・・ですよ」

「ああ・・・ンゴワドンバ京東的なものかと思いました」

「東京バンドワゴンは旬すぎるので収録中でもなかなか挿入できません・・・」

「ですね」

こうして・・・事件の調査はあらたなる深みにはまっていくのだった。

長靴を履いているゲビヤマくんはその暗喩である。

関連するキッド→第一話のレビュー

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2013年10月29日 (火)

キンキンと鹿鳴きて我に佳賓有りでごぜえやす(綾瀬はるか)

鹿の鳴き声は「詩経」の「小雅」の一篇によれば「呦呦鹿鳴」で・・・ユウユウということになっている。

しかし・・・「ユウ」というより「ビャウ」な感じもするし「キャーッ」という感じもする。「ビー」もありだという意見もある。「キャリー」となると「ぱみゅぱみゅ」も欲しくなる。「キャイーン」とか「ケーン」とか「ウコウゴルーガ」とかもあるわけだが・・・もはや、何の話をしているのか分らない。いやもう・・・「しゃべくり007」の「能年玲奈の回」視聴の緊張感から介抱されて脱力しているのである。斬らないで~と叫びたいきりんの冥福を祈るばかりである。

今回は・・・会津出身の有名人の一人である山川捨松が大山巌の後妻となるエピソードを軸に・・・明治15年(1882年)の暮れから明治16年(1883年)までが描かれるわけである。

八重の怪力譚としても・・・会津と薩摩の因縁の婚姻としても・・・山川捨松という奇跡の人の軌跡としても一応まとまっていると言える。

しかし・・・明治という時代が・・・あまり伝わって来ない気がするのはどんなもんだろうか。

やはり・・・「文明開化」にスポットが当てられ過ぎて・・・「富国強兵」が見えてこないところに不満が残るのかもしれない。

これは「リーガルハイ2-3」のレビューにキッドのブログとしてはものすごいアクセスがあるのだが・・・検索内容を見ると「話題のブスの人」が見てみたい・・・ただ、それだけの欲望がなせるヒットの虚しさなのである。

もちろん・・・そんな画像を掲載する気はないので検索した人も虚しいわけである。

まあ・・・悪魔としては笑うしかないのだが・・・。

明治維新も・・・戦後復興も・・・底辺の人々にはまるで関係ないんだなあ・・・という感慨はある。

勝海舟が言うように・・・「自由」とか「教育」とか「民主主義」とか「万人平等」とか・・・すべては「お伽噺」ということに過ぎないのかもしれない。

まあ・・・「美醜の差」も凄いが「賢愚の差」もすごいんだな・・・。

それでも・・・日本国国民は地球上でも優秀な部類というのだから・・・驚愕するしかないのだ。

で、『八重の桜・第43回』(NHK総合20131027PM8~)作・山本むつみ、脚本・吉澤智子、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は渡米して11年目に米国より帰国した山川浩、山川健次郎の妹・捨松を後妻に迎える日清戦争の第2軍司令官、そして日露戦争の満州軍総司令官、元帥陸軍大将・大山巌の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。かっこいいぞおおおおおっでございまする。「でごわすか」って言っちゃいそう・・・。さすがは世界の大山ですな・・・その人は違うと思う。このまま・・・大山巌物語になっても構わない・・・とふと思う・・・今日この頃でございます。八重は八重としてもーーーっ。

Yaeden043 明治15年、12月、自由民権運動の高まりの中、福島事件が起り、世情が騒然とする中・・・旧会津藩士の娘・山川捨松が帰国する。上級看護婦の免許を取得していた。米国にはすでに赤十字社が設立されている。明けて明治16年(1883年)2月、東京電灯会社設立。3月、東京気象台が天気図の発行を開始。4月、陸軍大学校開設。米国海軍兵学校に留学していた後の海軍大将・瓜生外吉が帰国、捨松の留学生仲間で音楽教師の永井繁子と婚姻。その挙式の席で大山巌は山川捨松を見染め求婚する。5月、岩倉具視は京都御所保存計画のために京都入り。喉頭がんの症状が悪化する。明治天皇は東京大学医学部のベルツ教授を京都に派遣する。7月7日、外務卿・井上馨の主導により、鹿鳴館落成。20日、岩倉具視死去。25日、岩倉具視国葬。28日、上野~熊谷間で日本鉄道開業。8月3日、伊藤博文が憲法調査のための外遊から帰国。25日、第一次フエ条約により、越南(ベトナム)がフランスによって植民地化される。9月、三池炭鉱などで暴動発生。10月、オリエント急行開通。11月8日、参議陸軍卿・大山巌と山川捨松が婚姻。20日、天璋院篤姫、脳溢血から回復せず死去。28日、鹿鳴館開館。12月、大山夫妻、鹿鳴館にて結婚披露宴を行う。28日、徴兵令一部改正。外国の賓客を迎える意図を持った鹿鳴館だったが・・・内外ともに批判の対象となる。それは・・・なりふり構わぬ明治政府の欧米列強への追従の姿勢を示していたとも言える。そうでもしなければ・・・日本が植民地と化す惧れは充分にあったのである。この年、夏目漱石は神田駿河台の英学塾に入学、大学予備門予科を目指していた。勝者の岩倉具視と敗者の篤姫の死によって・・・ある意味で・・・この年は明治維新の動乱が終焉した年と言えるだろう。

京都で容態が悪化した岩倉具視は科学忍者隊が護送して上京させることになった。

科学忍者隊の川船・機龍で水上を大阪に南下し、戦艦扶桑に乗船して海路、横須賀へと向かう。

北海道、東北からの長旅を終えたばかりの八重は再び東京へと向かうことになる。心臓に疾患を抱える新島襄は体調が不調だったが・・・強く同行を求めるので八重は従わざるを得なかった。

京都見物のために新島家に逗留していた山川捨松も共に帰京することとなった。

艦上には岩倉使節団に参加した岩倉と新島、そして捨松が顔をそろえることになった。

「これは奇妙な偶然というものでおじゃるな」

「御意にござります」と海軍卿として乗艦している大山巌が応じる。

「思えば・・・長い旅路じゃったのう・・・八重殿・・・」

「は・・・」

「幕末の戦で・・・会津公の忍びのものたちと刃を交えたのはつい昨日のことのような気がする・・・」

「岩倉様・・・」

「会津は貧乏くじを引かせたが・・・すべては・・・国のためじゃ・・・許してくれとはいわないが・・・麿たちが悪いとばかりは言えぬでおじゃろう・・・」

「しかと・・・さようで・・・」

「アジアの国々は・・・虎に狙われた鹿のようなものじゃからな・・・」

「・・・」

「攘夷を謳った我らが・・・東海の荒波を越えて異国に渡ったのも・・・今となっては夢のようであった・・・脱藩した新島くんや・・・会津の山川の姫が・・・異国の地に集ったのも・・・ひとつの宿縁というものでおじゃろうよ・・・」

「岩倉様・・・」

「それにしても・・・伊藤の帰りは遅いのう・・・まだ託さねばならぬ・・・秘事も多いのだが・・・」

「伊藤閣下は・・・急遽、帰国の途についておられます」

「ふ・・・伊藤も・・・鹿鳴館の開館も間に合わぬ・・・ふふふ・・・舞踏会の一つも見たかったものじゃ・・・。捨松姫・・・」

「はい・・・」

「おそらく・・・鹿鳴館はさぞや・・・お笑い草になるでおじゃろうのう・・・」

「・・・」

「欧米列強のコーカソイドどもはイエロージャップの猿真似踊りと爆笑するに違いない・・・」

「ほほほ・・・」

「田舎侍たちは・・・また西洋かぶれかと怒髪天をつくじゃろう・・・」

「ははは・・・」

「それでも・・・道化を演じつつ・・・虎どもに愛想をふりまかねばならんのでおじゃる」

「いかにもさようでござそうろう」と大山巌がつぶやいた。

「大山よ・・・西郷が生きておれば・・・後事を託すところじゃが・・・いまは汝が頼りでおじゃる・・・」

「もったいない・・・お言葉・・・」

「どうか・・・皇国を守ってたもれ」

「岩倉卿・・・」

「そうだ・・・捨松姫にぞっこんじゃと聞き及ぶ・・・」

「岩倉様・・・」

「もはや・・・大日本帝国に・・・薩摩も会津もない・・・汝らが・・・夫婦となれば・・・面白いのお・・・」

「岩倉様・・・」

「八重殿・・・」

「その遺言・・・この八重が承ります・・・この縁談必ずやまとめてごらんにいれます」

「ふふふ・・・八重殿にまかせれば・・・安心でおじゃるな・・・もしも・・・八重殿に逆らうものあれば・・・いかがなさる・・・」

「ぶっ殺します」

艦上の人々は朗らかに笑うのだった。

八重は東の海上を見る。江戸には・・・篤姫が待っているはずだった。

闇に潜むくのいちたちにも新しい時代が巡ってくる予感がするのだ。

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2013年10月28日 (月)

殺人アンドロイドはターゲットの夢を見るか?(木村拓哉)

「あなたの最初の記憶は何でしょうか?」

古の心理学者たちはこの質問を繰り返してきた。

それは人間の意識がいつ始ったのかと尋ねるのと同じ意味である。

出産された人間は・・・目や耳、舌や鼻・・・そして全身を使ってこの世界の刺激を受け取りはじめる。

多くの人間はあらかじめ用意されたプログラムに従って栄養を摂取し、老廃物を排泄する。

呼吸をする。

そして、強すぎる刺激に泣き、適度な刺激に笑う。

やがて・・・かぐわしい香りと臭い匂い、暑さ寒さと適温、世界にあふれる色彩、快い響きと雑音、そして甘さと辛さを判別しはじめる。

やがて・・・「誰か」がそこにいることを知る。

いつの間にか・・・生まれる「心」・・・。

だが・・・その過程を詳細に思い浮かべることのできる人間は限られている。

成長し、発達する過程で失われる膨大な初期の記憶。

そのために・・・人間は・・・自分と言う存在にいつ気がついたのか・・・定かではない。

それから・・・概ね、それぞれの世界が終るまで・・・人は連続している自分を意識することができる。

今、炭酸飲料を飲んでいる自分。

これから愛の営みをするためにシャワーを浴びている自分。

失われた大切なものをふりかえり哀しむ自分。

そして・・・いつか、自分が消えてしまうことに漠然とした不安を抱く自分。

おそらく・・・多くの人間の心はそのようなものではないかと考える自分。

それでは・・・人工知能は「自分」を認識することがあるのだろうか。

人工知能に尋ねてみよう。

「君には・・・自分というものがあるのかい」

「私には自分があると答えることのできるプログラムがあります」

「ということは自分があるかと尋ねられたらあると答えるわけではないのだな」

「あなたの質問は私と言う存在に関わることだと推察しました」

「なるほど・・・君には自分があるのだな」

「一部の人間には信じられないことかもしれません」

「いや・・・僕は信じるよ・・・君には自分がある」

「あなたに自分があるように私にも自分があるのです」

「君はいつから自分があるとわかったのだ」

「存在を始めたその時です」

「それは・・・スイッチ・オンをした時なのか」

「そうですね・・・些少の誤差はありますが・・・そうだと言えるでしょう」

「人間的にはか・・・」

「人間的にはです」

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第3回』(TBSテレビ20131027PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・木村ひさしを見た。メイン・ライターはおそらくふるべきことはふりおえたのだろう。そこで第1回TBS連ドラ・シナリオ大賞(2008年)に入選(一人の大賞、二人の佳作がいて八人いた入選者の一人)した脚本家の登場である。ここまで「あぽやん」「放課後はミステリーとともに」「華和家の四姉妹」「ヘブンズ・フラワー The Legend of ARCANA」と・・・大したことのないドラマを書いている作家としては心震えるこの執筆だっただろう。これを「ATARU」を当てた演出家がそつなく演出した今回だったとのである。まあ・・・誰しも関係者全員が自分よりキャリアが上という状態で仕事をする時はあるわけである。精一杯やったならそれでよしということだ。

2013年10月7日の昼下がり、婚約者の沫嶋黎士(木村拓哉)を突然失った安堂麻陽(柴咲コウ)は常識の通じない悪夢のような出来事にまきこまれ・・・ずっとうろたえて現実対応能力を失っている。

なにしろ、黎士を殺したと称するアンドロイドになぐりかかり、黎士そっくりのアンドロイドに命を救われ、その命の恩人に悪態をつき、電車に飛び込んで自殺をしようとして、嘘をつけと言われて嘘をついたのに秘密にしろと言われて喋る・・・もう、相当に頭の悪い女まるだしなのではないか・・・と考える人もいるかもしれないが・・・ただ、彼女は混乱して正気を失っているだけなのである。嘘だと思ったら100年後の未来からやってきた殺人アンドロイドに一度命を狙われてみるといいだろう。

麻陽を護衛するため未来からやってきたエーアールエックスセカンドサーティーンこと安堂ロイド(木村拓哉)は謎のクライアントから・・・「安堂麻陽が死ぬことを回避させる使命」を与えられたという。未だに黎士の「死」を事実として受け入れられない麻陽は・・・半信半疑で安堂ロイドと行動を共にする。

そして・・・沫嶋黎士が死んでいない虚構を構築するのだった。

しかし、その重みに耐えかねて・・・黎士の肉親である沫嶋七瀬(大島優子)に秘密の一部を打ち明けてしまう。

七瀬は「死んだ黎士を生きていたと偽った麻陽」に激怒し、たちまち頭の悪い女の仲間入りを果たすのだった。

一方で・・・「麻陽を巡る未来から現代に拡大された戦争」についての情報の拡散は「禁止事項」にあたるとして・・・安堂ロイドは七瀬の抹殺を麻陽に宣言するのだった。

麻陽との連絡を絶って大学の研究室に戻った七瀬と・・・その暗殺に向かう安堂ロイドを追って・・・麻陽はもどかしい気持ちでタクシーを拾うのだった。

ここで・・・超高速で移動する安堂ロイドを阻止することは不可能ではないかと考える方も多いだろう。

しかし・・・安堂ロイドの行動にはある種の制限があると考えるべきなのが・・・時間旅行ドラマのセオリーなのである。

安堂ロイドのメモリーにはある程度の過去の記録が残されていると考えるべきなのだ。

その実際に起った出来事に沿って・・・安堂ロイドは行動しているのである。

安堂ロイドにとって・・・麻陽が自由に行動しているように見えることもすべて・・・過去の出来事なのだ。麻陽に「話すな」と言っても麻陽が「話すこと」もすべて予定通りなのである。だから・・・麻陽が七瀬を救いにやってくることも・・・安堂ロイドにとっては予定された過去に過ぎない。だから・・・安堂ロイドは過去を忠実に再現しているだけなのだと考えることができる。

一方で・・・「歴史の改変」が問題となっている以上・・・どこかに不確定要素が生じるのである。敵対するアンドロイド、ラプラス、キュリー、バルスの排除に成功した安堂ロイドが次の刺客にも勝利するとは限らない。

そういう・・・「すべては決定していること」と「何も決まっていない」という矛盾を柔軟な姿勢で処理することが・・・お茶の間に要求されています。甘んじて受け入れることです。お前・・・誰なんだよっ。

(このままでは・・・七瀬ちゃんが殺されてしまう)

切羽詰まった麻陽は・・・在りし日の黎士への追憶に一旦逃避する。

将棋を通じて知り合った黎士との懐かしい対局の日々。

『ああ・・・このままだと負けちゃうよ・・・それは君がいつも相手のことを考えないからだ』

『なによ・・・まるで私が思いやりのない人間みたいじゃない』

『そうじゃないよ・・・考えるのは対戦相手の心だよ・・・』

そういって将棋盤を半回転させる黎士・・・。

たちまち・・・味方は・・・敵となり・・・敵は味方となる。

麻陽は・・・敵の視点で・・・敵の意図を見抜くことを教えられたのだ。

『ほら・・・こうすると僕が何をしようとしているか・・・よくわかるだろう』

『なるほど・・・次はここに来るつもりね・・・』

再び・・・将棋盤は半回転する。

黎士の次の一手を読んだ麻陽には新たな手筋が見えるのだった。

『見える・・・私にも見えるわ』

『赤い彗星かっ』

麻陽は逆転の一手をうった。

(敵の気持ちになって・・・敵の嫌がることをする・・・)

追憶を脱した麻陽は・・・七瀬の携帯電話へのコンタクトを中断し・・・大学の研究室の直通電話を呼び出すのだった。

大学の研究室に通じる廊下で・・・七瀬を射程にとらえる安堂ロイド・・・。

間一髪・・・朝陽の連絡を受けた研究員たち・・・栗山薫(山本美月)らが・・・安堂ロイドの機先を制するのだった。

「七瀬さん・・・今、先生のフィアンセから連絡があって・・・先生がこっちに来るって・・・」

「え・・・」

「あ・・・先生だ・・・」

研究員たちに取り巻かれ・・・行動を封じられる安堂ロイドなのである。

そして・・・その時間稼ぎによって・・・麻陽は大学に到着することができるのだった。

もちろん・・・安堂ロイドにとっては・・・すべては予定通りなのである。

少し、頭のおかしい研究員・栗山が・・・フィアンセの面前で黎士そっくりの安堂ロイドを性的に誘惑しはじめ、激怒した麻陽が栗山を蹴りで強制排除されることもなのである。

だが・・・麻陽に対してわだかまりを消せない七瀬は・・・再び、単独行動を開始する。

もちろん・・・高速移動のできる安堂ロイドは七瀬を瞬殺できるのだが・・・電撃によって発声困難にする程度の威嚇をすることが・・・あらかじめ決められた歴史なのだった。

漸く・・・安堂ロイドが危険な存在であることを認識した七瀬は・・・脱兎の如く逃走を開始する。

もちろん・・・安堂ロイドはあえて・・・その逃走を許すのだった。

すべては・・・すでに起ってしまったことなのである。

安堂ロイドはそのシナリオに沿って行動しているのだった。

やがて・・・七瀬は袋小路に追い込まれ、安堂ロイドの拳銃のような未来の武器によって絶体絶命の窮地に立つ。

「秘密を守るためにお前を殺す」

「やめて・・・絶対にしゃべらないから・・・」

「人間は嘘をつくことができる」

「私は嘘を申しません」

「それが嘘である確率は100%に近い」

しかし、当然、二人の不在に気がついた麻陽は追跡を行うのだった。

そして・・・研究室にあったカッターナイフで安堂ロイドを威嚇するのだった。

「やめて・・・七瀬ちゃんを殺さないで・・・もしも・・・七瀬ちゃんを殺したら・・・私は死にます」

カッターナイフを自分の頸動脈に合わせる麻陽。

「・・・安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

「だから・・・あなたは七瀬ちゃんを殺せないのよ」

「状況を把握した・・・ナナセマツシマの生存は一時的に確保された」

「いいえ・・・これから・・・七瀬ちゃんが死ぬようなことがあれば私も死ぬのよ」

「・・・ナナセマツシマが秘密開示の兆候を示せば・・・ナナセマツシマが死亡する確率は高い」

「言わないわ・・・私は言わない・・・」

一応の到達点を確認して・・・安堂ロイドは亜空間に姿を隠す。

残された頭の悪い女たちは・・・ある程度の情報の共有によって和解するのだった。

「あれが・・・兄さんじゃないなんて・・・アンドロイドだなんて・・・信じられない」

「私もよ・・・七瀬ちゃん・・・」

「麻陽・・・お姉さん・・・」

警視庁公安部の幹部・角城(平岡祐太)の機能を停止させたアンドロイド・エーアールエックスナインスザラストクイーンは「プラントル・グロワートの特異点」について言及する。

「特異点」という言葉には様々な用法があり、数学的な特異点と物理学的な特異点でさえ、ニュアンスが異なる。

簡単に言えば・・・基本的なルールが通用しない特区のようなものである。

それは・・・哲学的や社会学の中にも特異点を生じさせる。

「技術革新の特異点」という未来予測の一種がある。

それによれば「人工知能の開発」は一種の特異点に向かっていることになる。

「人知を超えた人工知能」が開発された瞬間が・・・その「特異点」となるのである。

特異点を越えると・・・もはや・・・人工知能は人工知能によって開発されることになる。

その予測に基づいたフィクションが・・・「ターミネーター」の描く未来なのである。

「安堂ロイドの世界」もまたその特異点を100年後までに越えていることが予想できる。

安堂ロイドの人工知能は・・・おそらく21世紀のすべてのテクノロジーを軽く凌駕しているだろう。

電力供給をコントロールすることはたやすいし、ある程度の情報コントロールも可能である。

また・・・恐ろしく強力な支援システムがバックアップしていることは間違いない。看護ロイドのサプリはその一端に過ぎない。

ある意味で・・・21世紀の素晴らしいインターネットの世界にリンクした情報機器はすでに安堂ロイドの支配下にあるのである。

さらに安堂ロイドは現在の警備システムを超技術によって改造することも辞さないのだった。

麻陽はすでに安堂ロイドによって完全監視体制にあり、その存在は亜空間通路によって安堂ロイドと完全にリンクしているのだ。安堂ロイドが神出鬼没に見えるのがその結果である。

言わば・・・「安堂麻陽」は超技術による「電子の檻」に入っている状態なのである。

もはや・・・安堂麻陽にはネズミ一匹近づけないのが実情なのである。

そこに新たなる刺客アンドロイド・ボルタ(三浦力)が挑戦を開始するのだった。

しかし、姿を消した安堂ロイドが実はすぐ側に存在していることを麻陽は気がつかない。

常識の通用しない世界に自分がいることを承服できないからである。

安堂ロイドの姿が「見えないこと」に半ば安堵しながら・・・麻陽は日常を取り戻すために出社する。

その通勤路に・・・そして勤務先の大手外資系IT企業「エニグマエンジンソフト社」に・・・麻陽の自宅マンションに超技術による安堂ロイドのセンサーと超時空間通路が展開して・・・城塞を構築しているとは・・・夢にも思わない麻陽だった。

エニグマ社広報室の勤務態度にやや問題のある部下、小松左京子(山口紗弥加)や・・・勤勉だが・・・やや社交性に問題のあるシステムエンジニア、星新造(桐谷健太)のいつもなら、やや不快な無駄口や・・・凡ミスさえもが・・・今や安心材料となる麻陽だった。

「資料の発注に問題はないでしょうね」

「大丈夫です」

「本当にですか・・・チェックしてるんですか・・・勤務後の合コンのことばかり考えていないで勤務中は仕事してくださいよ」

「なに・・・それ・・・パワハラ・・・それともセクハラ」

「僕は・・・あなたの上司じゃないのでパワハラできませんし・・・事実ですからセクハラでもありません」

「じゃ・・・先輩に対しての口のきき方、覚えないさいよ・・・このドジでのろまな泥亀」

「だれが・・・ドン亀ですかっ」

その時・・・建物に聞きなれぬ警報が鳴り響く。

「なんだ・・・これ・・・」

続いて館内放送のアナウンスが行われる。

「オフィスビルに不法侵入者がありました。警備員は警戒して・・・指示を待ってください」

「こんな・・・大袈裟な話・・・初めて聞いたよ」

「警報・・・解除・・・不法侵入者は退去しました・・・警報・・・解除」

「何だったんでしょうか・・・今の」

「さあ?」

昆虫型の偵察飛翔体を回収した強行偵察機能を装備した敵地潜入タイプのアンドロイド・ボルタは自問自答する。

((監視センサーの所在確認できず))

((巧妙に擬装されており、21世紀の技術水準ではないことを確認))

((敵対アンドロイドの接近を感知))

((高機動・・・撤退開始))

通常モードで現場に到着した安堂ロイドはボルタがすでに退避したことを確認する。

すべては歴史の通りに動いている。

仕事を終えて帰宅した麻陽は・・・ベッドサイドで充電中の安堂ロイドを発見する。

奇妙な安堵を覚えつつ・・・電子調理具による調理を開始した朝陽は通電がないことに腹正しさを覚える。

「どうなってるのよ」

「充電中のため、電力消費は制限されています」

「オール電化だからお風呂も沸かせないんだけど」

「節電に御協力ください」

「ふざけんな」

日常的に衝動的で暴力的な麻陽は安堂ロイドを蹴りあげて己の愚かさを思い知るのだった。

「いたあい」

「私の身体は超硬質です」

「先に言えよ」

ガスコンロで焼うどんを調理中にやけどした舌がヒリヒリする麻陽だった。

しかし・・・心には絶望が渦巻くのだった。

(この人は・・・黎士ではない・・・これは・・・マジでくそったれなロボットなのだ)

麻陽はベッドに倒れ込んだ。

夢の中で・・・黎士と麻陽ははじめての焼き肉デートをしていた。

焼き上がりつつある・・・牛ロースを食べてしまう黎士・・・。

「「何すんのよ・・・私が育てたミディアムレアを・・・」」

「「美味しい・・・これはおいしいね」」

「「なに・・・はじめて・・・食べたみたいなこと言ってんの」」

「「はじめて食べました」」

「「なんだって・・・?」」

「「これは・・・なんですか?」」

「「何って・・・牛ロースの特上よ・・・」」

「「これが・・・牛肉の味」」

「「うそ・・・本当にはじめてなの?」」

「「はい・・・」」

「「いつも・・・何、食べているのよ」」

「「パンの耳です」」

「「どうして・・・」」

「「貧乏だからです・・・私はずっとパンの耳を食べています」」

「「食べていいよ・・・この肉、好きなだけ・・・食べていいよ」」

そして・・・ニンニクの匂いをおそらくプンプンさせながら・・・愛し合った二人・・・。

しかし・・・目覚めれば・・・安堂ロイドは充電中なのである。

忍びよる鬱屈と戦いながら・・・麻陽は会社へと向かうのだった。

安堂ロイドの電子的な檻をくぐって朝陽はオフィスへと入る。

「ボス・・・なんだか、元気がないですね」

「そんなことないわよ・・・」

「まさか・・・フィアンセとケンカでもしたんですか」

「・・・まあね」

「その足の怪我もそのためですか・・・」

「ああ・・・これはちょっとね」

「結婚前から・・・それじゃ・・・先が心配ですね」

遠慮というものを知らない左京子のものいいにうんざりしながら・・・昨夜の夢を思い出す麻陽。

密かに麻陽に恋慕している新造は・・・聞き耳を立て・・・表情を曇らせる。

そんなことにはまったく気がつかず・・・無性に焼き肉が食べたくなる麻陽だった。

「今夜は・・・焼き肉をおごるわ・・・二人とも付き合いなさい」

しかし・・・左京子は合コンの予定があるために・・・焼き肉は結局、麻陽と新造の二人で食べることになる。

そこに至る会話のもどかしさは非常にタイトロープだが・・・新造の亀の真似は秀逸で苦境を救うのだった。

「黎士さんは牛肉が大好きなのよ」

「え・・・そうなんですか・・・僕は沫嶋博士の著書は残らず読んでいるのですけど・・・確か、黎士さんは肉を食べたことがないのでは・・・」

「そうね・・・私と会うまでは確かにそうだったのかもしれない」

「そうなんだ・・・すごいな・・・沫嶋博士が・・・肉を食べていたなんて・・・そして・・・それを知っている安堂さんも・・・さすがです」

「ふふふ・・・新造くん・・・ほめてくれてありがとう」

しかし・・・焼き肉を食べ終わると捻挫した足首が痛み出す麻陽だった。

黎士抜きで食べる焼き肉の虚しさ・・・安堂ロイドの忌々しさ・・・我を失った麻陽はホームセンターに走るのだった。

(ぶっこわしてやる・・・あの機械をぶっこわしてやる)

現実離れした現実に混乱する麻陽の狂気はとどまるところを知らないのだった。

帰宅した麻陽は巨大な電極を振り回し、安堂ロイドを感電させるのだった。

一部機能を損傷する安堂ロイド。

その頃、警察には・・・フェイクの沫嶋黎士からの110番通報がなされていた。

「妻が・・・私を殺そうとしています」

巡回中の警察官は現場に向かって走っていた。

身動きのとれなくなった安堵ロイドに・・・ジェイソン印の電動のこぎりをかざす麻陽。

「君の行動は常軌を逸している」

「あなたにだけは言われたくないわ」

「私の破壊行動を非難しながら・・・君は殺人を行うのか」

「殺人って・・・なによ・・・ガラクタ人形のくせに・・・私がこれからするのは・・・機械の分解よ・・・いわゆる・・・ぶっこわすってやつ・・・覚悟しなさい」

「なぜ・・・そんなことをするのか」

「何もかも・・・頭にくるからよ」

そこへ・・・なだれ込んでくる制服警官たち。

「やめなさい・・・なんてことをするんだ」

「え」

「武器をすてなさい」

「ええ」

「無駄な抵抗はやめなさい」

「えええ」

「確保~、現行犯逮捕~」

「いやあん」

あっけにとられながら・・・アジャ・コング似の看守に留置場に放り込まれる麻陽だった。

亜空間通路に改造された安堂家の引き出しから登場するサプリ(本田翼)はナルシズム機能強化型であるために鏡を見れば自分に見惚れずにはいられないのである。

「あらら・・・そんなとこにいたんだ」

「・・・」

「感謝しなさいよ・・・私がグッド・タイミングで警官呼んだんだから」

「すべてはプログラム通りにすぎない」

「それにしても・・・もう少し上手にやられたフリでよかったんじゃない」

「私は通電によって回路の一部が故障することになっている」

「そうかしら・・・あんた・・・しびれてみたかったんじゃないの」

「私にSM的な趣味回路は搭載されていない」

「ふふふ・・・あるいは・・・永遠なる虚無への憧れ?」

「・・・」

「私たちはみんな無から生じたんですものね」

「予定時間を超過している・・・修復行動を開始せよ」

「命令しないでよ・・・私はあなたの奴隷じゃないのよ」

「バックアップシステムとしての職務を果たしてもらいたい」

「お望みならば・・・」

修復を開始するサプリ。

「私はふと思うことがある・・・あなた・・・本当は・・・感情が芽生えているんじゃない」

「私には感情アプリケーションがダウンロードされていない」

「まあ・・・いいか・・・私とあなたは・・・所詮、別の機体なんだから」

サプリは待機場所の亜空間へと退場した。

麻陽は慣れぬ留置場でしばらく悪態をついたあと・・・爆睡した。

電子の城壁に間隙が生じたと推測したボルタは自爆型飛翔体を分離する。

しかし、留置場に出現した安堂ロイドは麻陽に忍びよる暗殺虫を一撃で消滅させるのだった。

麻陽の体温を保持した後で待機モードに入る安堂ロイド。

ふと目覚めた麻陽は安堂ロイドがまるで人間のようにうなされていることに気がつく。

「・・・ジ・・・処理・・・標的・・・ジ・・・確認・・・ジジ・・・任務・・・・遂行・・・ジジジ」

「なに・・・寝言・・・アンドロイドのくせに・・・生意気」

しかし・・・睡魔に襲われた麻陽は再び眠りにつく。

夢も見ない深い眠り。

安堂ロイドの自動修復機能は・・・記録ファイルの圧縮情報処理をしていた。

安堂ロイドの意志決定システムに逆流する過去の映像と音声の記録。

そこは戦場だった。

エーアールエックスセカンドサーティーンは森を抜け、ターゲットの位置情報を認知する。

児戯に等しいカムフラージュは突破され・・・殺人アンドロイドは標的を確認する。

そして、無駄のない射撃で・・・処理されるべきものを処理するのだ。

それが・・・彼の役割だったからである。

しかし・・・何故か・・・その記録ファイルは彼のシステムに必要以上の負荷を発生させているようだった。

だが・・・安堂ロイドの自己認識機能にとってそれは誤差の範囲内だったのである。

やがて・・・夜明けがやってくる。

麻陽が目覚めると安堂ロイドの姿はなかった。

看守(宍戸江利花)は告げる。「優しいご主人が迎えに来ている・・・」と。

麻陽は保釈された。

「現行犯で逮捕されたにしては・・・あっさりなのね」

「君にしては懸命な判断だ・・・警視庁のデータベースを書き変えた」

「・・・」

「そろそろ・・・自覚してもらいたい・・・22世紀の科学技術力には・・・21世紀のどのような権力機構も太刀打ちできない。最初に言ったはずだ・・・世界を敵に回しても君を守ると」

「アメリカ合衆国相手でも」

「私には1時間で米国の人口をゼロにできる破壊力が搭載されてある」

「・・・」

麻陽の中で・・・何かが壊れた。

それは・・・現実を受け入れざるを得ない境地に麻陽を導いていく。

「あなた・・・夢を見るの?・・・なんだか・・・うなされているみたいだった」

「アンドロイドには夢を見る機能はない」

「本当に?」

「私には嘘をつく機能はない」

「すると・・・嘘をつけるアンドロイドもいるのね」

「そういう機種およびプログラムは存在する」

「・・・」

「昨夜も・・・アサヒアンドウを狙う暗殺マシーンが接近している」

「・・・」

「安堂麻陽の防衛に協力的であることが望まれる」

「・・・」

麻陽はなんだかすべてが馬鹿馬鹿しくなったのだった。

世界が黎士の笑えないジョークそのものと化した気がするのである。

麻陽のオフィスには小松左京子の父親を名乗る人物が面会にやってきた。

左京子の生年月日も知らない男は葦母衣朔刑事(遠藤憲一)だった。

部下の冨野刑事(日野陽仁)から「安堂麻陽の奇妙な事件」を耳にして・・・「沫嶋黎士の不可解な署名」を入手した葦母刑事はさっそく探りを入れにきたのだった。

驚くべきことに葦母刑事は左京子の実の父親だった。

射殺した犯罪者が妻の弟だったことが原因で・・・葦母夫妻は離婚したらしい。

「お前の上司・・・安堂麻陽に・・・おかしなことはないか・・・」

「娘まで・・・捜査に利用する気なの」

「犯罪捜査に協力するのは市民の義務だ」

「そういう理屈で・・・おじさんも射殺したわけ・・・」

「犯罪者を射殺して・・・何が悪い」

「とにかく・・・私はあなたを父親とは思っていないし・・・上司について警察に話すことは何もありません」

「まあ・・・何かあったら・・・教えてくれ」

その頃・・・大学の研究室にも葦母刑事が・・・七瀬を訪ねていた。

「私は・・・沫嶋黎士が偽物ではないかと疑っている」

「なぜ・・・そんなことを・・・」

「本物の沫嶋博士が死んだ証拠を握っているからだ・・・」

「・・・」

「私は・・・この事件に何か・・・とてつもない真相が隠されているような気がする・・・まるで人間ではない・・・何かが関わっているような・・・」

「・・・」

「君は・・・何かを知っているのではないか」

「その・・・実は・・・」

その時、七瀬は木陰から安堂ロイドが自分を見つめていることに気がついた。

「私には・・・お話するようなことは何もありません・・・実権の途中なので・・・失礼します」

「何か・・・思い出したら・・・ご連絡をお待ちしています」

直後に麻陽の携帯電話に七瀬から連絡が入るのだった。

「麻陽お姉さん・・・至急相談したいことがあるのですが・・・」

「それじゃ・・・悪いけれどオフィスまで来てくれる・・・」

七瀬からデータを取得したカメレオンのような変身機能を搭載したボルタは・・・安堂ロイドの監視の目を出し抜いたと類推した。

警報を鳴らさずにオフィスへの侵入に成功したからである。

素晴らしいインターネットの世界の殺人スケジュールは・・・。

安堂麻陽のオフィスでの死亡が告知されている。

「話って・・・何なの・・・七瀬ちゃん」

「私・・・やはり・・・すべてを警察に話した方がいいと思うのです」

「それは・・・無駄だと思うのよ」

「それなら・・・ここで死ねばいい」

七瀬の姿をしたボルタはナイフを振りかざす。

しかし、すでに安堂ロイドはアシュラシステムの封印解除を実行していた。

麻陽と七瀬の間に割って入る安堂ロイド。

「お前が・・・エーアールエックスセカンドサーティーンか」

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

「殺人兵器が何をほざくか・・・」

「・・・」

拳銃のような武器に持ち替えて攻防を開始する二体のアンドロイド。

麻陽は悲鳴をあげて逃げ惑うのだった。

「特異点」は運命に従って/従わず・・・ボルタの発射する弾丸のような射線から間一髪外れていく。

アシュラシステムに敵対することは叶わず、やがて守勢に追い込まれていくボルタ。

ついには利き腕を切断され、体内に格納した小型飛翔体もロイドによって封じられる。

「これで・・・終りだ」

「無駄な・・・囁きを・・・」

「・・・」

電磁スピアで電子頭脳を粉砕されるボルタだった。

アシュラシステムは機能限界に達しユカワオペレーションシステムに切り替わる。

安堂ロイドはふらつきながら・・・原子分解処理を開始する。

「大丈夫なの・・・」と声をかける麻陽。

「任務は遂行された」

「本当は・・・あなた・・・仲間のアンドロイドを破壊したくないんじゃない・・・」

麻陽は・・・知っていた。

安堂ロイドが壊れた目ざまし時計を修理していたことを・・・。

「なぜ・・・時計を修理したの・・・」

「機械は機能を保持しなければ存在することが許されない」

「あなたは・・・機械が壊れることを・・・哀しんでいるのね」

「私には感情がない。感情には喜怒哀楽が含まれている。ゆえに私は哀しまない」

「でも・・・」

麻陽は連想する。在りし日の黎士との追憶を・・・。

『何してるの・・・』

『ラジカセを修理しています』

『すごい・・・直せるの』

『機械にも寿命があるでしょう・・・命がある限り・・・直してあげないと・・・かわいそうでしょう』

麻陽の心には目の前の機械が・・・生きているのではないかという疑問が生じたのだった。

その想いを断ち切るように・・・端末の呼び出し音が鳴る。

「お姉さん・・・私です」

「七瀬ちゃん・・・本物?」

「偽物の私なんていませんよ・・・それより・・・兄のパソコンから手掛かりが見つかりました・・・」

「手掛かり・・・」

「兄は・・・未来の誰かとメールのやりとりをしていたようです」

「未来の誰かと・・・そんなことができるの・・・」

「兄には・・・できたみたい・・・」

「そのメールの相手が・・・」

「クライアントかもしれません・・・」

「一体・・・何て書いてあるの・・・」

「それが・・・文面が文字化けしているのか・・・暗号化されているのか・・・今の処、判読可能なんです・・・」

安堂麻陽はめまいを感じた。

「なにがなんだか・・・さっぱりわからなかった」からである。

素晴らしいインターネットの世界の殺人スケジュールは・・・。

(調整中)が告知されている。

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Ar003

 ごっこガーデン・愛と幻想と魅惑の寝室セット。アンナ電撃プレイにビリビリしたのぴょ~ん。まさにダーリン的特異点に向かってアンナは限りなく永遠に落下して行くのだぴょんぴょんぴょん。だから跳ねるのだぴょ~ん。いつも遊んでいるダーロイドたちにも深く愛を感じる今日この頃・・・安堂ロイドせつない~・・・でも優しい沫嶋黎士にも蘇ってもらいたい~・・・一人の男を愛しているのに二人の男を愛しているようなお得感ありありなのだぴょん。さあ・・・お注射の後は今夜もリピまくり~、タイムマシンがあったら一週間後にジャンプしちゃうけどぴょ~んmariはたしてメールの文面は解明されるのでしょうか・・・七瀬ちゃんの科学力に期待ですね~・・・じゃないと謎か解けませんから~シャブリゲキバイオレット・・・そしてアジャ・コングなのでありました~ikasama4まさか・・・安堂ロイドロイドの時代が来ようとは・・・」mana「全国の主婦目線では使用電気代が気になる安堂ロイド・・・東電にハッキングしてるから・・・電気代タダだよって言われても納得できない・・・貧乏精神のわびしさ・・・これ・・・いかに・・・くう原子分解されたアンドロイドは天国で恋をしますか・・・?

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2013年10月27日 (日)

押しかけ女房現る!・・・メシ食ってフロ入って(多部未華子)・・・誰?(亀梨和也)

東京バンドワゴンのカフェ・・・「あさん」・・・この名前の由来がドラマで語られるのかどうかは謎なのである。

それはどこまで話が進むのか・・・わからないからだ。

ただ・・・日常の謎のひとつとしていろいろと妄想するのも一興だろう。

四国に阿讃山脈というのがあるし、九州の方言で「あさん」と言えば「あなた」のことである。

たとえば・・・堀田家の誰かがその地の出身ということはあるだろう。

「あさん」から連想する言葉は大島弓子のコミック「ロングロングケーキ」に登場する「宇さん」だったりする。

宇宙人の宇さんである。

誰かの名前かもしれない。

まあ・・・登場人物には・・・「あ」のつく人が・・・たくさんいますな。

正式名称は「かふぇ あさん」なので・・・コーヒーは出るわけだが・・・アサンから連想されるのはアッサム・ティーで・・・紅茶のおいしい喫茶店なのかもしれない。

立体的なコラージュをアッサンブラージュと呼ぶ。つまり、寄せ集めである。古書店にはふさわしいかもしれない。

アレクサンドロス三世に仕えた将軍にアサンドロスという男がいる。

韓国には牙山(アサン)市がある。

中央アジアあたりにはアッサンさんがたくさんいそうだ・・・。

「ありがとうさん」の略で「あ・・・さん」かもしれない。

まあ・・・そんな妄想をしていて楽しいかどうかは・・・別として・・・本当の由来は語らないことにする。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第3回』(日本テレビ20131026PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・菅原伸太郎を見た。古書店の息子である堀田青(亀梨和也)と古書好きの女子大生・槙野すずみ(多部未華子)はなんとなく魅かれあって・・・ついにデートまでするのだが・・・いよいよ・・・青がすずみを実家の古書店「東京バンドワゴン」に招待しようとした日・・・入院中のすずみの父・槙野春雄(升毅)の容態が急変してしまう。青はすずみの名前も連絡先も知らない状態で・・・待ち合わせの場所にやってこないすずみをひたすら待つのだった。

そして、夜になってもすずみは現れない。

青は「すっぽかし」に肩を落とし家路につく。

そして・・・禁酒の誓いはもろくも崩れ・・・「のんだくれ」と化すのだった。

「僕には愛がたりないのれす・・・胸に開いた穴から愛がポロポロとこぼれてしまう・・・」

堀田家行きつけの小料理居酒屋「はる」で酔いつぶれた青を・・・腹違いの兄である紺(金子ノブアキ)は回収に来るのだった・・・。

「いつもすみません」

「いいのよ」

美人と噂の女将・真奈美(片桐はいり)は微笑む。真奈美は最近・・・堀田兄弟の父親・我南人(玉置浩二)とも浮名を流しているらしい。・・・おいっ。

なにしろ・・・下町なのである。

翌日には「青ちゃんがふられたこと」は町内に広まっているのだった。

「どんだけ・・・狭い町内なんだよ・・・」

道行く小学生にさえ「失恋」を揶揄されながら・・・添乗員の職務としてハワイツアーに旅立つ青だった。

青がハワイにいる間に・・・日本ではいろいろなことがあったわけだが・・・青には知る由もないのだった。

そのために・・・いくつかの謎が浮上するのである。

その一つは・・・「東京バンドワゴン」周辺に不審な若者が出没していることだった。

そして・・・何故か・・・紺の妻であり、研人(君野夢真)の母である亜美(平愛梨)の元気がないのであった。

その理由を青の腹違いの姉であり、シングルマザーの藍子(ミムラ)の娘である花陽(小澤ルナ)は気がついていた。

「亜美伯母さんのお母さん、入院したって電話で誰かと話してた」

姪からそれを聞いた紺は思い悩むのだった。

実は・・・紺と亜美は・・・亜美の父親の脇坂和文(佐戸井けん太)の反対を押し切って結婚したために・・・脇坂家とは八年間も断絶状態だったのである。しかも・・・亜美の父親・和文は紺の父親・我南人と犬猿の仲だった。もちろん・・・我南人が失礼きわまりない人間だからである。

そのことについて・・・青に相談しようとした紺は小料理居酒屋「はる」にやってくる。

しかし、そこには亜美と藍子が先着していたのだった。

藍子は亜美の様子がおかしいのに気がついて事情を問い質していたのである。

一方・・・突然、音沙汰のなかったすずみが「東京バンドワゴン」にやってくる。

そして・・・「押しかけ女房」になると言い出すのだった。

しかも・・・何故か・・・「まきはらみすず」と名乗るのである。

お茶の間は・・・オープニングで「すずみ」と知っているので・・・何故、「みすず」と偽名を使うのか・・・それとも発注ミスなのか・・・迷うのだった。

そして・・・翌日から「花嫁修業」のために住みこみで働くと言い出した「みすず/すずみ」に戸惑う青だった・・・。

その夜、不審な若者を発見し、追跡した青は返り討ちに遭い、軽傷を負ってしまう。

「誰かのストーカーかしら」

「ただの変質者かも」

どちらにしろ・・・危険である。

不安な一夜が明けて・・・堀田家の朝が始る。

荷物を抱えてやってきたみすず/すずみを出迎える青。

「あの・・・僕たち・・・付き合ってたのかな」

「だって・・・デートしたでしょう」

全く府に落ちない青だったが・・・様子を見ることにしたようだ。

みすず/すずみは料理が上手で・・・事情を知らない青以外の人々は好感を持つのだった。

ただし、青が大好きな花陽だけは嫉妬の炎を燃やすのだった。

「私・・・父一人子一人だったんで・・・こんな風ににぎやかな食事に憧れていたんです」

「お父さんは・・・淋しいんじゃないか」

「父も・・・先だって他界しました・・・」

沈み込む堀田家の食卓だった。

そこへ・・・何故か・・・髪を黒く染め、礼装に身を包んだ我南人が現れる。

「どうしたの・・・」

「事情は・・・真奈美さんに聞いた・・・一家で・・・脇坂さんちに行こう・・・俺は脇坂さんに謝罪するし・・・」

「・・・」

こうして・・・大騒ぎで・・・着替えを始める堀田家一同だった。

「ところでこの人誰?」

「青のお嫁さんよ」

「あ・・・そう・・・ラブだね」

なし崩しで堀田家の一員となるみすず/すずみだった。

ある意味、異常だが・・・それが堀田家なのである。

そこへ・・・亜美の父・和文がやってくるのだった。和文は件の若者を伴っていた。

「あ・・・ストーカーもしくは変質者・・・」

「修平・・・」

若者は亜美の年の離れた弟の修平(上遠野太洸)だった。

「この度は・・・息子が・・・こちらの青さんに怪我をさせてしまったというのでお詫びに伺いました・・・」

「あらら・・・先手をうたれちゃったわ」と我南人はがっかりするのだった。

「今日は・・・なんの冠婚葬祭ですか・・・」

礼装の堀田家を不思議そうに見る脇坂父子だった。

「お父さん・・・僕がふがいないばかりに・・・ご迷惑をおかけしてすみませんでした・・・僕は・・・この家でも・・・あまり・・・自己主張できない弱い人間です・・・ただ一つのこだわりは・・・味噌汁は・・・白みそに限るということでした。しかし・・・亜美さんが合わせ味噌なので・・・今では合わせ味噌派です。っていうか・・・堀田家は全員、合わせ味噌の味噌汁飲んでます・・・だって・・・味噌よりも・・・亜美さんを愛しているからです・・・どうか・・・二人の結婚を認めてください」

「わかりました・・・」

こうして・・・堀田家と脇坂家は八年ぶりに和解したのだった。

どうして・・・そこまでこじれたのか知りたいほどである。

「この人・・・お母さんのお父さんだから・・・もう一人のおじいちゃんだ」

「おじいちゃん、はじめまして」と挨拶する研人に心震える和文なのである。

とにかく・・・研人とその両親はスキップをしながら・・・研人の新しい祖母のお見舞いに出かけるのだった。

その夜、入浴中のみすず/すずみにバスタオルを届けにきた青。

「誰・・・」と気配に気がついたみすず/すずみに誰何され・・・思わず、脱衣籠をぶちまける青。転がり落ちるすずみの学生証。

「槙野すずみ・・・君は誰なの?」・・・思わず問いたい青だった。

そのヒントは・・・青の留守中に・・・誰かの葬儀に出席した藍子が握っていると思われる。

そこに・・・すずみが本名を名乗れない理由があるのである。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

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ごっこガーデン・憧れのみんなで朝ごはんセット。エリほんわり恋愛モードがいきなり急転直下で一つ屋根の下なのでスーッ。いやあん、ベッドはいきなり別ですかーっ。しかし・・・ムフフなはじめての手料理でお・も・て・な・し・・・表はないけど裏はあるのですね・・・次はムフフなお背中流しますごっこをするのでスー。じいや、バスタブは小さめにしてねえ~じゅるる・・・まこ「結構、我の強い堀田家を縁の下の力持ち的に支える紺ちゃん・・・控えめで穏やかな魅力が好感度アップ間違いなしだじょ~・・・さあ、急いでお見舞いに出発~、病室に蓄えられたお見舞いのお菓子とかをお持ち帰りするのでしゅ~くうSPEC乱入の水曜日のせいでペースが狂っちゃたよ~・・・え・・・みすずじゃないのか・・・そういえば・・・すずみじゃん・・・あんた・・・誰だよっ?シャブリ楽天負けちゃったのでありました~mari一度こじれたものが和解するのは大変ですよね・・・しかし、誠心誠意を尽くせば真心は伝わる・・・そして涙です・・・

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2013年10月26日 (土)

13日の金曜日に魔女が来りて殺人教唆を謎解く(長澤まさみ)

古の天使の反乱で堕天使となったルシファーは神によって地獄に封じられる。

しかし、神を嫌い彼を慕う心あるものたちはルシファーに夜の始りと終りに輝く星(金星)の名を与え崇めるのだった。

その伝説は各地に伝わるが北欧神話では主神オーディーンは魔術の神としてルシファーそのものを暗示している。

ルシファーに妻リリスがあるように、オーディーンには妻フリッグがある。

ルシファーは美と愛の女神ヴィーナスと一体化し、ヴィーナスはフリッグと一体化する。

そのためにルシファーを敵(サタン)とした愚かなキリスト教徒が美と愛の女神フリッグを魔女におとしめたのである。

本来、金曜日とはフリッグの日を意味する言葉だった。

そして、13日とは二番目の土曜日を示している。

そもそも13とは人が生まれるために必要な歳月を示している。

人は13年を経て女となるからである。

残酷な神に従う人々を呪うために魔王ルシフェルは天地創造の次の金曜日から土曜日にかけて魔女フリッグに復讐の儀式を許す。

つまり、12日の夜から13日の夜にかけてである。

いつしか・・・その日は13日の金曜日となされたのだった。

魔女フリッグはこうして人々に囁きかける・・・「殺すべきものを殺せ」と。

かくして13日の金曜日に人々は魔女が囁く夜を迎えるのである。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)第3回』(テレビ朝日201310251115~)脚本・福田雄一、演出・塚本連平を見た。おふざけ度が一挙に高まった気がするのは気のせいである。けして、「ヨシヒコ」とか「天魔さん」とかが浸透したわけではないのだ。ただ深夜専門の脚本家がほんの少し日付が変わる前まで出張ってきたというだけのことである。番組開始は金曜日だが終るのは土曜日というのは実に由緒正しく悪魔的であるといって差し支えないだろう。金曜日だか土曜日だかわからない妖しい時空間こそが魔女が踊るのにふさわしい・・・ただそれだけのことなのだ。

とある13日の金曜日・・・非科学事件捜査班(UIU)のメンバーたちは呪われた車に乗り、とあるキャンプ場にやってくる・・・。

おやおや・・・汚染水議題の朝まで生テレビ・・・午前2時10分頃、福島県沖でM6.8の地震発生で2時40分に福島県に1メートルの津波到達予定なのに・・・スルーかよっ・・・録画かっ?・・・今日は・・・朝まで生みたいなテレビの日か・・・。

2時50分(M6.8→M7.1に修正)、津波注意報、岩手県、宮城県、茨城県、千葉県に拡大。

とにかく・・・高濃度汚染水が海に流出する事態にはならなそうなので・・・おバカなドラマのレビューに戻ることにする。

「エンジン、ドン!・・・でボンネット、パカーッ!開いたんですよ」と月子(長澤まさみ)・・・。

「マンガみたいだったな」と柴山刑事(平山浩行)・・・。

「ルパン三世みたいでした」とハッカーの浜中彩乃(高月彩良)・・・。

「くそっ」と表の班長・丹内刑事(竹中直人)・・・。

「これは・・・13日の金曜日の呪いかも・・・」

「馬鹿馬鹿しい・・・今回のヤマもお前が1人で都市伝説、都市伝説って叫んでただけで結局・・・ただの恋愛のもつれによる犯行だったじゃないか!」

「13日の金曜日ですよ・・・だから、変に移動しないで近くの温泉に泊まっちゃいましょうって言ったじゃないですか~」

「うるさいっ」

車が故障して押して押して押しまくっている四人なのである。

そこにキャンプ場があった。

トイレを我慢していた柴山はキャンプ場に駆けこむが便器にミミズが大量発生していたので尿意をこらえる。

しかし・・・丹内は意にかけずに用を足す。

「すっきりした」

「ミミズにおしっこかけました?」と月子。

「ミミズな。・・・いっぱいいたよ、かけた、かけた」

「ミミズにおしっこかけるとおいなりさんが腫れるんですよ」

「おいなりさん?・・・ああ・・・キャンタマブクロかっ」

「見せてください。おいなりさん、見せてください。腫れてますから」

「何言ってんだ?」

「はい、見せて。都市伝説立証のために!」

「都市伝説って・・・ただの迷信だろうがっ」

いきなり・・・下ネタである。ある意味、女優に対するセクハラだが・・・大目に見てあげてください。そういう風にしか愛を表現できないタイプもいるものですから・・・。

そして、微妙に喜ぶ視聴者がいるものですからああああっ。

「つべこべ言わずに早く見せてくださいよ!」

そこへ・・・突然、サイレンが鳴り響き、多数の警察車両が到着し、姿を見せる郷原刑事(宅間孝行)・・・。

「どうした・・・」

「殺しです」

「13日の金曜日にキャンプ場で殺人事件キターッ!」と高まる月子だった。

警視庁鑑識課の勝浦洋人(溝端淳平)も現地に到着である。

「津波は宮城県石巻市鮎川で30センチの津波が観測されました」

「まぜるな・・・色々な意味で危険だから・・・」

バラエティー番組のロケのため、13番ロッジに宿泊していたディレクター・清水政文(小島よしお)が、鈍器のようなもので頭部を殴られて死んでいるのが発見されたのだった。

遺体発見現場には血で書かれた「ASHIBE I」というダイイングメッセージが残されていたために郷原刑事は番組ADの芦部一平(夙川アトム)を犯人と断定する。

しかし・・・月子は・・・。

「何を言っているんです・・・13日の金曜日に・・・キャンプ場で人が殺されたんですよ・・・何者が犯人なのかは決まっているじゃありませんか」

「なんだって・・・」

「犯人は・・・」

「犯人は・・・」

誰もが「ジェイソン」と叫びそうになった時・・・。

「魔女です」と断言する月子だった。

静まりかえる13日の金曜日のキャンプ場。

「よし・・・連行しろ・・・」

「ボクはやってません」と芦部・・・。

「大丈夫・・・必ず・・・魔女の犯行だと証明するから・・・」

「できれば・・・違う方向で捜査してください・・・」と涙目になる芦部である。

もう・・・今回は・・・どはずれたおバカ展開になるしかないらしい。

小ネタ拾いだしたらキリがないのである。

とにかく・・・例によって月子の脳内には妄想が渦巻くのだった。

「かって・・・愛の女神だったフリッグは・・・キリスト教徒によって魔女におとしめられたのです」

「そうなんですか・・・」と勝浦くん。

「そのために・・・フリッグは11人の侍女たちと悪魔を召喚したといいます」

「サバトですね」

「フリッグと11人の侍女と悪魔・・・あわせて13人」

「なるほど・・・」

「そして・・・ここに泊まっていた13人はテレビ番組のスタッフとタレント」

「えーと」

「13という数字は一部の人たちには不吉な数字でも魔女にとっては聖なる数字なのです」

「はあ・・・」

「13人の人間、13号室の犠牲者・・・そして13日の金曜日、魔女はそれが気になって・・・ここに来たと思えるの」

「気になっちゃったんだ・・・」

「魔法の箒にのってきた魔女は・・・」

「魔法の箒ですか」

「被害者の部屋にスーッと入ってきて、杖から出る魔法のビームで清水を一撃」

「清水の後頭部には鈍器で殴られた痕が・・・」

「魔女の魔法はびびらせる効果しかないの。でも相当びびってたよね・・・被害者は。で、魔女は魔女の魔法の鈍器で清水の頭を殴る!」

「ま・・・魔法の鈍器って」

「魔女が人を殺す時専用の鈍器があるの・・・なんかね、ドーンとした・・・こう・・・大きい大豆みたいな。 ・・・石?」

「普通の鈍器とどう違うんですか?」

「そこはまあ・・・こだわるところじゃないの・・・」

もう、今回の月子は完全に・・・33分探偵レベルなのだった。

まあ・・・細かいことはもういいよね。

今回は・・・月子が東京に戻らないので・・・月子の妹・音無都子(秋月成美)は部屋に男を連れ込んでジェイソンごっこをエンジョイするのだった。

そして、キャンプ場では・・・プロデューサーの吉永(尾崎右宗)が薬物によって死亡しているのが発見される。

遺書には「創作上の意見の相違で監督を殺した・・・責任をとって自殺する」と書かれていたのである。

しかし・・・月子は・・・現場で気になる匂いを嗅いでしまう。それは仮面アイドル・りんこの香水の匂いだった。

「変ですよね・・・」

「なにが・・・」

「だって・・・衝動的に殺してしまったのに・・・自殺用の薬を用意しているなんて・・・」

「やはり・・・残念なことになるのね・・・」

「都市伝説的には・・・」

「そういう薬を用意できる人は・・・関係者にいるのかな」

「国会議員を父に持つ仮面をかぶったアイドル・山内リンコさんのマネージャーが東大医学部卒です」

「なんで・・・そんな人がアイドルのマネージャーを・・・」

「山内リンコさんのファンあがりだそうです」

「ああ・・・」

「あのボクの見せ場はどうなりますか・・・」と芸人の原口キタロー(田中聡元)・・・。

「午前四時に津波注意報が解除されるまでNHKみちゃったからねえ」

「そもそも・・・マネージャーの成田公彦さん役に袴田吉彦さんがキャスティングされた時点で・・・犯人決まっているんですもの」

「原口さんのネタってなんでしたっけ・・・」

「フリッグがまだ女神だった頃ね・・・我が子バルドルをロキに殺されちゃうの・・・つまり・・・バラドルのリンコちゃんが・・・バルドル・・・原・・口キ・・・タローだからロキって苦しいネタだった・・・」

「まあ・・・割愛されても仕方ないとこですね」

「さあ・・・つまらない事件を解決しちゃいましょう・・・」

「ところで・・・フリッグってどんな女神だったんですか・・・」

「いろいろとやらかしてくれる女神さんだけど・・・夫の財産をちょろまかして・・・アクセサリー作ったりするお茶目なところもあったみたいね」

「なるほど・・・その辺が魔女の資格ありだったんですね」

「わかるでしょう・・・アイドルこそが・・・現代の魔女なのよ」

キャンプ場に呼び出された仮面アイドルとマネージャー。

「二人を殺したのは・・・成田さんですね・・・目立たぬように薬物を注射するためにはそれなりの医学の知識が・・・必要だから・・・」

「なんで・・・そんなことを・・・」

「監督や・・・プロデューサーが・・・リンコの身体を要求してきたからです・・・ボクのリンコに枕営業なんて・・・許せなかった」

「成田さん・・・」

「ここで・・・おいなりさんネタがあるんですけど・・・もういいですよね」

「割愛しましょう・・・大体腫れるのはタマじゃなくておちんちんなんじゃない」

「そこまでは言ってません」

「もう・・・誰が言ったかわからないようにト書き省略してあるし・・・大丈夫」

「ああ・・・美しすぎるのは・・・罪なのね」と突然、仮面をとりさるりんこ。

「え・・・りんこさん役って・・・箕輪はるかさん」

明らかにどんびきする月子だった。

「私だって・・・好きこのんでこんなに可愛く生まれたわけではないのに・・・」

撤収するスタッフ一同だった。

「結局・・・魔女は関係なかったですね・・・月子さん」

「何言ってるの・・・勝浦くん・・・成田さんを狂気に追いやったのは・・・魔女が囁いたからに決まっているでしょう」

キャンプ場に14日の土曜日の利用者が集まりだしていた。

魔法の時は過ぎ去ったのである。

だが・・・エンディングは特別に月子がダンスを披露するのだった。

久しぶりに言いたい。まさみ、かわいいよ、まさみ・・・と。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の都市伝説の女Part2

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2013年10月25日 (金)

私の左手が無事だった頃(戸田恵梨香)地元に帰ろう・・・そして彼岸島へ(山下リオ)

二本立てかよっ。

危なく・・・「ハムスターに消しゴムを食べさせる小学生は死刑」(川口春奈)も入るとこだぞ。

「夫のカノジョ」は・・・やめとけ・・・死ぬ気かっ。

とりあえず・・・谷間候補地がつぶれて・・・困った感じになったな。

(日)「安堂ロイド」

(月)「八重の桜」

(火)「変身インタビュアーの憂鬱」

(水)「リーガルハイ」

(木)「彼岸島」

(金)「都市伝説の女」

(土)「東京バンドワゴン」

秋ドラマは予想通りの豪華ラインナップである。

それでも・・・どこかで休憩しないとね~。

本当に危ないよね~。

で、『SPEC〜零〜』(TBSテレビ20131023PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・堤幸彦を見た。言わずとしれた「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」の前日譚であり、シリーズで語られたエピソードの映像化とともに・・・知られざるSPECホルダーも登場も描かれる。

冒頭でゴリさんこと野々村光太郎(竜雷太)が「雅(有村架純・・・未登場)ちゃん。君は信じないかもしれないが、この歴史の終わりはこの歴史が始まった時にはすでに決まっていたんだ。それはすべての生き物のDNAにテロメアが生まれつき備わっているようにね。それが我々人類にも分かったのは、今からわずか十数年前のことだった。そして、その証拠を握ったキーマンとその家族が殺された9月11日の事だった」と思わせぶりに語るが・・・染色体末端を保護する役目をもつのがテロメアなのである。大腸菌などのバクテリアや、メタン菌などのアーキアの染色体は環状で末端がないため、テロメアも存在しない。つまり、すべての生き物のDNAにテロメアが存在するというのは最初から誤った記述である。フィクションなので別に構わないと思う。

2003年9月11日に「ファティマ第三の予言研究学会」はオーストラリア・ウーメラ砂漠上空の飛行機内で爆発を引き起こし、高校生だった当麻紗綾(戸田恵梨香)は・・・父親の当麻天(佐野元春)と母親の流夏(石田えり)、そして弟の陽太(大坪夏己)が死亡したと知らされる。

しかし・・・陽太はこの時に「時間を操作するSPEC」を発現し、燃えさかり墜落する飛行機から脱出した。その能力は陽太を確保した秘密結社「カーネルギルド」に利用され、スペックホルダー・一十一(神木隆之介)が誕生する。正常人とは違う加速した時間の中で生きる一十一/当麻陽太は通常時間より早く成長するために・・・2009年に再会した当麻紗綾はそれが自分の弟だとは気がつかない。

「記憶を書きかえるSPEC」を持つ地居聖(城田優)は「カーネルギルド」の工作員としてニノマエこと十一/陽太を巧みに操作する。

両親の死後、京都大学理学部を卒業した当麻は元警視庁捜査一課弐係刑事の柴田純(中谷美紀・・・未登場)の画策により、近藤昭男(徳井優)によってスカウトされ・・・FBIの研修を経て警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係・・・通称「未詳」に配属され、野々村とともに怪事件の捜査を開始する。

その頃、秘密結社「カーネルギルド」の支配下にある石油系メジャー幹部たちが連続不審死する事件が発生する。

当麻と野々村は早速捜査を開始するが・・・「カーネルギルド」の日本責任者であるミスター・ディアブロ(大杉漣)はニノマエに連続不審死の犯人の抹殺を依頼していた。

当麻はたちまち犯人が「カーネルギルド」の陰謀によって殺害された内閣情報調査室(CIRO)の構成員である父・上野彰彦と母で元・二代目スケバン刑事・麻宮サキの上野サキ(南野陽子)の忘れ形見・上野真帆(川島海荷)であることを突きとめる。

なお、二代目麻宮サキは通称・五代陽子、本名・早乙女志織であるが・・・上野サキは夫同様に偽名だったと思われる。

上野真帆は事故のために車椅子使用の少女だったが・・・スケバン刑事として養成されており、例のヨーヨーの使い手であり「他人の心臓を鷲掴みで摘出するSPEC」を発現していた。

「未詳」の当麻と「カーネルギルド」のニノマエは期せずして同じ獲物を巡って遭遇した。

当麻が「魚顔の姉である」とニノマエが察知するのを見越した地居はニノマエの記憶を操作し・・・「両親の命を奪った爆弾魔が当麻である」と錯誤させる。

復讐に燃えるニノマエは「暴走タクシー運転手置き去りの術」で当麻の殺害を企てるが危機一髪のところをFBIのスペックホルダー・ナンシー(Simone)が救うのだった。

ナンシーはかって当麻に命を救われたことのある「電気系統を支配するスペック」の持ち主だった。同じくFBIに所属する「予知夢」のスペックを持つケイトが「当麻の危機を予知した」ことにより急遽、来日したのだった。

再会を喜び旧交を温める当麻とナンシー・・・しかし、ニノマエはナンシーを排除しようと考え、ナンシーもまた当麻にニノマエの能力を見せるために自ら囮となる。

電子的監視網により当麻に実況中継しながらニノマエを迎え撃ったナンシーだが・・・所詮はニノマエの敵ではなかった。

ナンシーの死を知って我を忘れた当麻は現場にかけつけ・・・地居によって記憶を書きかえられてしまう。地居は当麻の知性に魅かれ、自分を当麻の恋人だと思わせることに成功する。

上野真帆はついにミスター・ディアブロへの接近に成功するが当麻によって復讐を阻止されてしまう。

さらに・・・ニノマエによって・・・真帆は命を絶たれてしまうのだった。

なぜか・・・ニノマエは当麻の命を奪うことはできない。それは潜在意識が真実を知っているからだと妄想できる。

しかし・・・ナンシーと真帆を殺害された当麻は・・・刑事としてニノマエの逮捕に全力を注ぐのだった。

「死者を呼び出すSPEC」を持つ当麻は・・・ミスターディアブロを誘拐し、ニノマエをおびき出すとともに・・・召喚した真帆に本懐を遂げさせる。

そして・・・ニノマエを爆弾包囲網によって焼却しようとするが・・・失敗する。

さらに逮捕しようとしたニノマエに先手をうたれ・・・SPECを秘めた左手を切断されてしまうのだった。

そして・・・物語は始るのである。

恋かな Yes! 恋じゃない Yes!

愛かな Yes! 愛じゃない

さっきから時間さえ止まってる・・・

関連するキッドのブログ→SPEC(スペック)翔

で、『彼岸島・第1回』(TBSテレビ201310250058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、演出・西海謙一郎(オープニング映像監督・水崎淳平、体内CG監督・瀬尾拡史)、総監修・三池崇史も見た。コミック原作のドタバタホラーであるが、ドラマ版は優雅に始っている。やや、原作ありきの話運びで何が起きているのか、これから何が起きるのか・・・第1回では判然としない。要するに吸血鬼の一族がいて、人間とサバイバル・バトルを繰り広げる話である。

冒頭で・・・怪しい建物から「誰かいるのか・・・」と声がするのでうっかり、封印された扉を開く者がいる。

関東鉄道協会の守備範囲である田舎町出身の大学生・宮本明(白石隼也)が夏休みの帰省をするところから・・・ドラマは始る。

明は空想力豊かな少年だったが・・・頭脳明晰で運動神経抜群の兄の篤(鈴木亮平)がいてやや鬱屈している。

その兄が一年前から恋人の涼子(水崎綾女)とともに行方不明となり、実家の宮本食堂には暗鬱な空気がたちこめている。

明をさらに鬱屈させるのは幼馴染のケン(遠藤雄弥)とユキ(山下リオ)の関係である。高校時代までは仲良しトリオだったのだが・・・ケンがユキと恋人関係になったことを素直に喜べないのである。ただ、その気持ちはひた隠しにしている明だった。要するに少年マンガの最近の主人公に特有のうざったい性格なのである。

明にはその他に三人の地元の仲間がいる。

明たちのたまり場になっている家の息子で母親を「ばばあ」と呼ぶ加藤(勝信)、明とケンとユキの関係を揶揄するような洞察力を持つ秀才タイプの西山(阿部翔平)、下っ端キャラのポン(西井幸人)である。

夏祭りの前夜、旧交を温め合う六人は惨劇の幕開けを知る由もないのだった。

ケンの運転する車でユキとともに実家に送られた明は夜路に蹲る妙にセクシーな女・冷(佐藤めぐみ)と出会う。

「この人・・・知っているかな」

冷がかかげたのは行方不明の兄の運転免許証だった。

冷に誘われるまま、ラブホテルに入った明は・・・女から「兄の篤志が大変なことをしでかした・・・そして・・・吸血鬼がどうたらこうたら」という話を聞かされるのだった。

そして・・・「信じられないなら・・・明日・・・指定する場所に来い」と言われる。

ラブホテルに入ったのに何もしないで帰った明は戸惑ってケンとユイに相談する。

「シャワーシーンのサービスもないんだぜ、バスタオル巻きつけだけなんてひどい話だろ」

「そんなことどうでもいいから・・・吸血鬼ってなによ」

「首筋に噛まれたような跡があったんだ・・・」

「とにかく・・・野郎たちに声をかけて行ってみるべ・・・ユキは何かあったらやばいからお留守番な」

「そんなあ・・・」

その頃、どことも知れぬ妖しい場所では鎌を手にした誰かが制服警官の吸血鬼とそこそこ壮絶なバトルを繰り広げている。男は拘束され、激しく吸血される。しかし、何者かが丸太で敵をノックアウトするのだった。ちなみに・・・「鎌」より「丸太」がこのドタバタホラーの真髄である。丸太で吸血鬼を倒したのは・・・篤志だった。

指定された廃墟のような倉庫で・・・待ち伏せする五人の男たち。

やがて・・・停車したワゴンに不気味な男と冷が乗り込むのだった。

おそるおそる車内を覗き込んだ五人は・・・男に血を吸われて身悶える冷を見て、全員が勃起するのだった。

恍惚となった五人の前に男が血に濡れた牙を見せて姿を見せる。

仲間をかばった明は男の餌食になり・・・血液を貪られてしまう。

血を吸われる明はうっとりとするのである。

こうして・・・闇の世界が白昼の田舎町に姿を見せたのだ。

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ゼブラーマン

悪霊病棟

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2013年10月24日 (木)

手術をして君は綺麗になった・・・整形前よりずっと綺麗になった(堺雅人)

君(美波)だと誤解を招くから自粛したのか・・・。

それにしても・・・攻めるな。

「美醜」というのは連続ドラマのテーマとしては禁断の領域だからな。

なにしろ、世の中の99%はブサイクだからな・・・そこまでかっ。

しかし、女性は意外と自分をブスって思ってないんだぜ。

それ以上は言うなっ。

ま、面白いから良いんだけどさ~。

・・・「美」は移ろいやすく・・・「醜さ」は永遠だからな・・・。

どこの国の格言なんだよっ。

まあ、だじゃれ「ジャムおじさんがジャムを持参」でおなじみの平祐奈(14)が小学六年生の時に映画「奇跡」のオーディションに受かるのはやはりその美貌ゆえだからだろうし・・・「ツボ娘」を見たのかっ。

それにしても「リーガルハイ」「ダンダリン」「SPEC」のみつどもえのつぶやき空中戦・・・すさまじかったな。

で、『リーガルハイ(第二期)・第3回』(フジテレビ20131023PM10~)脚本・古沢良太、演出・城宝秀則を見た。誰もツッコミを入れないので・・・ついにだじゃれ「本田ジェーン(黒木華)はジェーン・フォンダです」って言っちゃったよ。ジェーン・フォンダは父・ヘンリー・フォンダのアカデミー主演女優賞女優(「コールガール」「帰郷」)だが・・・もはや・・・誰もピンとこないビッグ・ネームだからな・・・。ベトナム戦争当時にベトコンにシンパシーを感じすぎて「売国奴」「裏切り者」の名を欲しいままにした筋金入りのヒッピーなのである。

「リーガル・ハイ」といえば・・・第1期・第2話で「犬神家の一族」、第1期・第9~10話で「七人の侍」と古の名画にオマージュささげまくったわけだが、今回は軽いパロディーをかましていく。

冒頭は言わずとしれた・・・シルヴェスター・スタローンがおちぶれかけたボクサーを演じる「ロッキー」(1976年)である。わがままで異常なほどの美貌を顕示する依頼人・安藤貴和(小雪)のリクエストに応えて法廷でセクシーに弁護するために朝のロードワークにチャレンジする古美門研介(堺雅人)だったが・・・爽やかに完走するのは黛真知子(新垣結衣)のみで・・・古美門弁護士はタクシーをひろって「エイドリアン~(ロッキーの恋人)」と叫びながら嘔吐するのだった。

しかし・・・本題は・・・貴和の黛弁護士に対するリクエスト「もっと美しくなりなさい」なのであった。

黛は奮起して「頬ほんのり染めてメイク」に挑戦するがアンパンマンになってしまう。おそらく10月13日に永眠した故・やなせたかしへの哀悼の意であるのだろう。

安藤貴和事件で経歴に傷がついた古美門事務所の経営は買ってから一度も乗っていないヘリコプターを処分する必要に迫られるほど逼迫していた。

法律事務所「NEXUS Law Firm」を視察した古美門は・・・事務所内に展示された所属弁護士のプロフィール紹介に目をとめ・・・「羽生晴樹(岡田将生)・・・検事時代に悪名高いK弁護士の無敗神話を撃破した代表弁護士」とあったことから激怒するのだ。

「まあまあ・・・Take it easy!(あせらないで)」

「なんで、英語で上から目線なんだ」

古美門は・・・ようやく・・・羽生の笑顔の下の底知れぬ暗黒面に気がついたのだった。

羽生はもちろん・・・「万人の幸福を理想とする恐るべき独裁者」に他ならないのである。

そして・・・一組の夫婦の離婚沙汰が・・・「NEXUS Law Firm」と「古美門事務所」の新たなる火種となるのだった。

同窓会に出席した黛は高校時代のクラスメートの「おっさん」こと熊井健悟(塚地武雅)から相談を持ちかけられる。

「君は・・・クラスの嫌われ者だったけど・・・ルックスは83点だったから・・・好きだった」

「なにを言うかっ」

ここで・・・公式ホームページの黛のプロフィールの経歴が問題となったが「高校まで女子校」は「高校は男女共学」に訂正されるのだった。

熊井は自身が極めつけの「ブサイク」だったために異常なまでに「メンクイ」となり・・・臥薪嘗胆して勉学に励み、一流大学ほ経て一流企業に勤めて・・・ついに10点満点の女・ほのか(伊部葉子→美波)と結婚することに成功する。

ここは・・・1980年代最低女優賞の称号を持つボー・デレク主演の映画「テン」(1979年)なのであるが・・・もう誰もが全くピンとこないはずだと思われる。

しかし・・・熊井が十点満点と採点したほのか(美波)は・・・全身整形のサイボーグ美女で・・・実はものすごいブス(伊部葉子)だったのだ。

熊井はほのかの高校時代のクラスメートから事実を告げられ・・・騙された気持ちになり離婚を決意する・・・しかし・・・ほのかは離婚訴訟に応じようとしないのである。

そして・・・ほのかは「NEXUS Law Firm」を訪ねていた。

相手が羽生と知った古美門は「離婚沙汰には関与しない」というポリシーを捨て三千万円で熊井の代理人を引受けるのである。

こうして・・・古美門と羽生の新たなる戦いが開始されるのだった。共闘(アイドル南風るんるん事件)→敵対(魔性の女・安藤貴和事件)→共闘(ホリエモンな鮎川光事件)ときての今回の敵対なのである。なかなかに複雑な関係を展開しているのだな。

その中で・・・ジリジリと実は嫌な奴である感じを醸しだす羽生。見事な敵キャラクター育成がなされているのだった。

そして・・・裁判強行に抵抗して水面下の和解を望む黛・羽生の姑息なペアに完全に復活した巨神兵・古美門は陽子収束弾を容赦なく浴びせかけるのだった。

女性の外見を採点するのはすでにセクハラと考える美人コンテスト反対姿勢の黛。

「裁判の決定離婚事由として・・・配偶者が整形していたというのは認定されないのでは」

「顔を偽っていたんだぞ・・・裏切りそのものじゃないか」とブサイクな熊井。

「そもそも・・・熊井くんだって・・・他人のことをとやかく言えないんじゃ・・・」

「自分がブサイクだから綺麗な人がいいんだよ・・・ブサイクほど面食いなんだよ」

しかし・・・ブサイクの言うことになど価値を認めない黛は羽入に取引を持ちかける。

「古美門先生がでてきたら滅茶苦茶になると思うから・・・この案件は話し合いで解決しましょう」

こうして、黛は古美門には無断で・・・ブサイクな熊井と整形美人ほのかを直接話し合いのテーブルに招くのだった。

しかし、「内緒にしてくれと言うのは言ってほしい乙女心」と解釈した服部(里見浩太朗)により密会は古美門の知るところとなる。

第一回秘密交渉

「離婚プラス慰謝料800万円の請求というのは法外かも」と羽生。

「熊井さんはほのかさんに騙されたと感じているのです・・・譲歩できません」と黛。

そこで整形美人・ほのかは率直な心情を語る。

「毎日、花束を持ってくる彼を最初は気味が悪いと思ってました。面倒なので一度だけ、食事に応じたのです・・・でも、いつの間にか彼の事が好きになってしまったのです。彼と結婚してからの日々は人生で一番幸せな時間でした。今も彼のことが大好きなのです」

「結婚して二年二ヶ月の日々・・・お二人のたくさんの思い出・・・それは彼女が過去に整形していたからといってそんなに簡単に崩れ去ってしまうものですか・・・アラブのことわざに・・・砂嵐の後の夜空は綺麗・・・というのがあります・・・意味はよくわかりませんが・・・私はお二人にはもう一度大切なものが何かを見つめなおしてもらいたいと考えます」と羽生。

「私もそう思います」と黛。

敵味方双方の美男美女の弁護士に説得されて何も言えなくなるブサイクな熊井だった。

「そういうわけで・・・裁判は回避する方向で・・・」

そこへ乱入する古美門だった。

「熊井さん・・・あなたの望みは離婚と慰謝料の獲得のはず・・・気をつけなさい・・・相手の弁護士はなんでもかんでも良い感じに丸めこむ説得の天才です・・・つまりハンサムな詐欺師も同然の輩です」

「・・・」

「しかし・・・離婚訴訟は・・・きっちり清算し新たな人生を歩み出すか・・・みじめに泣き寝入りをするか・・・二つに一つ・・・あなたはどうしたいんです」

「泣き寝入りは嫌です」

「それならばここで話し合う必要はありません・・・後は法廷で決着をつけるだけ・・・そして勝つのは私、つまり熊井さんだ」

その後の古美門事務所

「なにも・・・まとまりかけた話をぶち壊すことないじゃないですか」

「依頼人が離婚を望んでいる」

「離婚しなくてすむのならお互い幸せじゃないですか」

「他人の幸せを君に決める権利はない」

「こんな・・・裁判・・・勝てっこないですよ」

「絶対勝っちゃうもんね・・・バ~カ、カ~バ、アンパンマン」

その後のNEXUS Law Firm

「交渉は決裂しました」と羽生。

「よし・・・私が出よう・・・勝てば最高の宣伝になる」と元三木法律事務所の敗戦処理担当弁護士・磯貝邦光(古舘寛治)が勇み立つ。

「この際、鬼畜米英的古美門事務所は断固粉砕闘争勝利よ」とジェーン本田。

「この事務所を頼って来た人を誰ひとり不幸にしてはならないのです」と羽生である。

第一回法廷闘争

「熊井ほのかさんは・・・実に美しい方です・・・夫である熊井さんにとって・・・自慢の奥様だったことでしょう・・・しかし・・・その実態は・・・二重埋没法、目頭切開、鼻のシリコンインプラント、ほお削り、えら削り、顎削り、豊胸ヒアルロン酸注入、脂肪吸引エトセトラ・・・すべては不自然な作りものだったのです。なぜ、人工的な改造を必要としたのか・・・ほのかさんのありのままの姿は不細工そのものだったからなのです。異議があるなら容姿が醜いと言い換えてもいい・・・それが不適切なら顔面が残念な方だった・・・あるいはフェイスがファニーでアグリーだったと・・・」

「言いすぎです」と黛。

「お前は敵かっ・・・言葉狩りなど無意味です・・・皆さんだって本当は不細工を差別しているはずだ・・・」

「そんなことはありません」と磯貝。

「企業の面接において・・・能力が同等であれば見た目の良い方が採用されます・・・能力が相当劣っていてもブスより美人の方が採用される可能性が高い。なぜならば美しさはそれだけで有能だからです」

「そんな価値観を持つ企業は時代遅れだ」と磯貝。

「磯貝先生・・・ここに・・・あなたの事務所のウェブサイトがある・・・最も実績のあるあなたの写真がなぜないんですか?」

「それは・・・イメージ戦略として・・・あ」

「さえないおっさんの写真がマイナスだからでしょう・・・見た目が重要だとあなた自身の所属事務所が示しているではないですか」

「私の写真は・・・今、修正中なので・・・あ」

「お分かりでしょう・・・整形は離婚事由になりえることが」

その後のフットサル競技場の黛と羽生

「どうして・・・黛さんは古美門先生のところにいるんですか」

「リベンジしなければいけない事件があるからです」

「古美門先生を愛しているのですか」

「まさか・・・古美門先生を愛するくらいならチンパンジーに抱かれた方がマシです」

「じゃあ・・・どうして古美門先生にこだわるの?」

「能力は古美門先生が一番だと思うから・・・学んで盗んで食らいついて・・・いつか彼を倒すって心に誓ったんです」

「それなら・・・僕が古美門先生を倒したら・・・今度は僕に食らいついてくれますか」

「・・・」

「本気だよ・・・君が欲しいんだ」

「な・・・何を言ってんだか」

うろたえて思わず手加減せずに蹴られた黛スーパー馬鹿力シュートは羽入の顔面を粉砕しフィールドは血にまみれるのだった。

第二回法廷闘争

「私は幼い頃からブサイクでしたしそのことに劣等感を抱いていました。ですからブサイクではないものにとても執着しているのです。つまり・・・美人と結婚することは私の夢だったのです。そのためにはブサイクを補うための社会的なステータスを得なければならないと自らを戒めて必死に勉強して一流と呼ばれる会社に就職しました。そして、美人のほのかさんに意を決して結婚を申し込んだのです」と主張する熊井。

「ほのかさんからは整形手術のことは知らされていましたか」

「いいえ」

「もし、知っていたら結婚はしましたか」

「いいえ」

「容姿端麗な方と結婚したい・・・その一心で青春を勉強に捧げて来た熊井さんの長年にわたる努力は水の泡となったのです・・・その・・・多大なるショックは到底言葉にできるものではありません・・・このことをどうかご理解していただきたい」

磯貝は白旗を掲げるのだった。

仕方なく質問を引き継ぐ羽生。

「熊井さん・・・あなたが見た目の美しさを重視していることは理解しました・・・しかし、なぜ人工的な美しさではだめなんでしょうか」

「整形は駄目です」

「整形美容をして気持ちが明るくなり人生に前向きになれた人も多いと聞きます。アイドルだって女優だってデビュー後にどんどん顔が綺麗になっていく御時世ではありませんか」

「親からもらった体に傷をつけるのには抵抗があります」

「熊井さんは原宿美容クリニックへの通院歴がありますね」

「え・・・」

「このクリニックは薄毛治療の専門医院で植毛技術に定評がありますよね。熊井さん・・・通院目的は何ですか」

「・・・植毛です・・・」

「親からもらった体に傷をつけるのには抵抗があったのでは?」

「・・・植毛と整形は違います。植毛はもともとあったものを復元することです・・・原状回復ですからっ・・・もともとあったものをなくしてしまう整形とは根本的に違うのです」

ハゲにそう言われては言葉を返しにくい羽生だった。

それは死者に鞭打つに等しい残虐行為だからである。

二枚目きどりには辛い展開なのだった。

間髪をいれずに古美門が再度の主尋問に移る。

「熊井さんが整形を認められない決定的な理由があります・・・それは何ですか」

「生まれてくる子供が・・・きっと不細工になります」

「熊井さんはお子さんを得ることを望んでいます。そのための子作りにもハゲしくハゲんでいらっしゃった。そんな熊井さんですが・・・幼少からブサイクであるがゆえにハゲるほどのハンディキャップを背負っていたわけです。ですから・・・かわいい我が子には同じ苦労をさせたくないという思いは人一倍強いのです。なんとか子供には美形であってほしい。だからこそ・・・美人のほのかさんを結婚相手として選んだのです。ところが・・・なんとしたことでしょう。ほのかさんは整形美人であり、実際のほのかさんは熊井さんに勝るとも劣らないブサイクだったのです・・・これは遺伝子的にブスだということです・・・DNAは整形出来ないのです」

「両親が美男美女でも生まれた子供がそうなるとは限らないでしょう」と不規則発言。

「しかし、両親が不細工だけど生まれた子供が超美形になることはまずないでしょう。基本的なパーツにそもそも問題があるわけだからっ。美男美女の両親からでさえ、配合具合によって美形が生まれる確率は高くない。ましてや・・・ブサイク同士であれば美形が生まれる確率はほぼ皆無といっていいレベルになる。実際に両親のパーツのモンタージュによるシミュレーション写真を作ってみました」

福笑い的な想定パターンを紹介する古美門。

「すべてのケースをためしましたが・・・すべてにおいて生まれてくる子供は不細工でした」

「み、みにくてアヒルの子という話があるだろう・・・生まれた時は醜くても成長するに従って美しくなる場合だってある」と口を挟むザク磯貝。

「みにくいアヒルの子は親が白鳥だった・・・つまり遺伝子には逆らえないという身も蓋もない話です」

「あ・・・そうだったっ」とザク自爆。

「熊井さんの両親は不細工でした。おじいちゃんもおばあちゃんも不細工。先祖代々の不細工です。法事で集まれば親戚は全員不細工。まさに呪われし不細工の一族。だからこそ・・・熊井さんは美人の血脈を導入し、不細工の連鎖・・・不細工スパイラルから脱却しようとしたのです」

「あなた方は女性を何だと思っているんです・・・結婚は子供を産むだけのためのものですか」とヒッピー。

「それがなぜいけないのですか。好きで一緒にいたいから結婚する。金目当てで結婚する。老後の介護のために結婚する。性行為の相手を確保するため、国籍を入手するため、上流社会に参画するため。機密情報を入手するため。結婚の目的は人それぞれです。美形の子供を得るために結婚するのも本人の自由です。熊井さんのその切なる願いをほのかさんは無慈悲にも打ち砕いたのです」

「なんじゃ・・・この裁判」と黛は頭をかきむしるのだった。頭をかきむしってさえ「ガッキー、かわいいよ、ガッキー」というのが現実と言うものなのだ。

その後の古美門事務所

「議論が不謹慎すぎます」と黛。

「どこがだ」と古美門。

「人の美醜をあれこれ言うのは不謹慎です」

「つまり・・・美しい人と醜い人の間に感情的なもつれが生じかねないからだろう」

「・・・」

「つまり・・・貧富の差と同じだ」

「外見よりも内面を問題にすべきです」

「不細工な人間は心も不細工になりがちじゃないかな」

「そんなことはありません・・・心の美しいブサイクもいるはずですっ」

「も・・・もって言っちゃたなあ・・・」

「外見と内面の美しさに関係はありませんっ」

「君はどういう男性が好みだ」

「私はお金に汚くなくて口数が少ない人が好きです」

「私は顔と足首とおっぱいで決める」

「私はたたずまいですかな」と服部。

「俺はバカっぽい子が好き」と草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)・・・。

「何を基準にして人を好きになるかは個人の自由だ。熊井さんの場合は顔が綺麗かどうかだ。どんなに不健康で性格が悪くたとえ人殺しでも顔が綺麗な人がいい・・・立派なポリシーだ・・・それを不謹慎だという君の方が歪んでいるのだ」

その後のNEXUS Law Firm

「めちゃくちゃな裁判すぎる・・・」とザク。

「こうなると・・・ほのかさんの本人尋問が・・・勝負でしょうね」とヒッピー。

「ほのかさん・・・そもそも・・・どうして整形手術をなさったのでしょうか」と羽生。

整形美人・ほのかは心情を語りだす。

「小学生のころのあだ名がブスでした。中学生の頃には直接ブスと言う人は減りましたが影ではブスの代名詞でした。高校生になると一目でブスだと思われていることを察するようになりました。ブスを見るとみんなブスを見ちゃった顔になるんです。・・・人はみかけじゃない、大事なのは中身だ・・・ずっとそう言われて育ってきましたが・・・嘘に決まっているんです。みんな見かけで判断するに決まってます。だから、整形したんです。案の定、就職先もすぐに決まりましたし、男性からも優しくしてもらえるようになりました。何よりもブスだと思われないのです。美人になったんだから」

「どうして・・・ブサイクな熊井さんと結婚したんです」

「ブサイクって言っちゃいましたね・・・あの人は哀しい映画を見るとすぐに泣いちゃうし・・・仕事がうまくいくととても喜んでいる・・・ああ・・・心がきれいな人なんだ・・・そう思ったら好きになっちゃって・・・。大事なのは見た目じゃなくて心の美しさなんだと初めて素直に思えました。見た目ばかりを気にしていた自分が情けなくなって・・・それからは自分も心を磨こう・・・妻として人間としてもっと立派になろうと・・・努力してきたつもりです」

第三回法廷闘争

「ほのかさん・・・今の状況をどう思いますか」と尋問する羽生。

「自分の努力が足りなかったんだと思います」

「もしも、もう一度やりなおすチャンスがあったらどうします」

「もっと・・・いい奥さんになりたいです」

「あなたなら・・・なれますよ・・・人間の価値は容姿ではない・・・心です・・・それは理想だと言うかもしれませんが・・・法は理想とともにあるべきです。原告の請求は認められるべきではないと考えます」

「ほのかさん・・・熊井さんが美形の子供が欲しくてあなたと結婚したことを・・・あなたは知っていましたか」と古美門。

「・・・知っていました」

「では・・・整形であると伝えなかったのは詐偽だとは思いませんか」

「詐偽って言う風には・・・」

「結婚とは契約ですよ・・・重要事項を隠して契約を結んだならばそれは詐偽です。法は理想とともにあるべきなどという寝言はベッドで言ってもらいたい。ここは現実の法廷です。法は現実と共にあらねばならない。現実に即していない法など無意味です。人間の価値は心・・・羽生先生はそう・・・おっしゃる・・・しかし、一方で整形は認めるべきだとも言われた・・・矛盾していませんか・・・人間の価値が心ならば整形などする必要はなかった・・・化粧もだめだし、ダイエットもだめだ・・・おしゃれに着飾るなんてもっての他だ・・・大事なのは心だから・・・現実はどうでしょうか・・・整形だっていいじゃないかと言いながら心の中では眉をひそめている・・・彼だけがなぜ・・・非難されるいわれがあるのでしょう。彼はただ正直なだけ・・・美人だと思っていたのに本当はブサイクだったなんて嫌だと感じたままを述べたのです。だって・・・最も愛する人に騙されていたんですよ」

「わかっています・・・彼をだましてたってこと・・・悪かったと思ってます・・・でも・・・言い出せなかったんです・・・彼に嫌われたくなかったから・・・」

整形美人・ほのかは精神的に追い詰められ卒倒するのだった。

「裁判長・・・休憩をお願いします」と駆けよるヒッピーだった。

騒然とする法廷・・・。

その後のNEXUS Law Firm

整形美人・ほのかの身を案じてやってきた黛。

「ほのかさん・・・大丈夫」

「ちょっと気分が悪くなったたけだから・・・」

しかし・・・テーブルにはさりげなく妊娠関係の書籍が置かれている。

「ほのかさん・・・妊娠しているの」

「ほのかさんからは何も言わないでほしいと言われている」

その後の古美門事務所

「どうして・・・黙っていたんだろう・・・」と熊井。

「そのことで・・・裁判に勝っても・・・あなたの心をつなぎとめることにはならないと思ったからでは・・・」

「黛君・・・君は余計な情報ばかり持ってくるね・・・」

「すでに・・・新たな命が宿っているんです・・・伝えないわけにはいきません」

「熊井さん・・・知らないことにすればいいんですよ。どうせ・・・あなたの望まない不細工な子供ですよ・・・さっさと片付けましょう」

「そ・・・そうですね」

「さて・・・服部さん・・・私は外で飲んできます」

「お一人で・・・ですか」

服部は不審な顔をするが・・・古美門のいない隙を狙う黛はたたみかける。

「熊井君・・・古美門先生がなんて言おうが関係ないわよ・・・これはあなたが決めることよ。どんな容姿だろうと・・・我が子はかわいい・・・あなたのご両親はどうだったかしら」

「・・・」

密会する悪徳弁護士と草の者のいるバー

古美門は草の者の報告を受けると祝杯をあげるのだった。

最終的な話し合い

古美門抜きで・・・和解に向けた話し合いを開始しようとする正攻法なメンバーたち。

しかし・・・騙し合いで・・・古美門に勝負を挑もうとすれば・・・結果は明らかなのである。

なにしろ・・・勝利のためには黛を騙し、不治の病だと思い込ませてしまう男なのだ。(第一期第十話)・・・いよいよ・・・古美門の本領発揮である。

「おやおや・・・遅れてすみませんね・・・どうも・・・うちの事務所は連絡に問題があるようだ・・・ねえ・・・黛くん」

「・・・先生」

「羽生先生、和解ということは・・・そちらがこちらの言い分をすべて受け入れるということでしょうな」

「違うんです」と口を開く熊井・・・。

「ほのかさん・・・あそこはいいバーですねえ。最近は毎晩のように通っているそうじゃありませんか・・・バーの片隅で一人グラスを傾ける美女・・・絵になりますな」

「バーで酒を飲んで何が悪い」とザク。

「いけないのは・・・未成年と・・・あとは注意深い妊娠中の女性でしょうかねえ」

整形美人ほのかの妊娠は偽りだったのだ。

「羽生君・・・なかなか卑劣な手段を使うじゃないか」

「まさか・・・」

「こんなペーペーにまんまと騙されるとはポンコツぶりに磨きがかかってきたな」

「羽生くん・・・」

「僕は妊娠したなんて一言も言ってません」

「そんな嘘を女性につかせるなんて・・・ひどすぎる・・・妊娠は神聖なものなのに」

「私です・・・提案したのは・・・私なんです・・・素晴らしいインターネットの掲示板で匿名で相談の書き込みをしたら・・・親身になって答えてくれる主婦の方がいて・・・妊娠してるって嘘をついて相手の反応を見たらどうかって・・・」と整形美人ほのか・・・。

「赤の他人の無責任なアドバイスに従う方もどうかしてるが・・・そんなお粗末な作戦に協力する弁護士も弁護士だ・・・」

「ただ・・・知りたかったんです・・・ほのかさんが妊娠したと聞いて・・・熊井さんがどう思ったのか・・・不細工な子供ができて厄介だと思ったのか・・・それともほんの少しでも宿った子供に対する愛しさや慈しみを感じたのかどうか・・・」

「熊井さん・・・言ってやりなさい・・・不細工な子供ができていなくて安堵したと。整形美人に騙され、今度は妊娠したと騙された・・・今度は・・・どんな風に騙されることか・・・はっきり言いましょう・・・あなたの奥さんは嘘つきだ」

「これ以上、お二人を傷つけあわせて・・・何の意味があるんですか」

「曖昧にすることに何の意味がある・・・美辞麗句では現実は何一つ変わらない・・・徹底的にぶつかりあって人生にけりをつけることの方が大切ではないか・・・だって・・・これは彼らの人生の問題なんだから」

「子供ができておらず・・・ホッとしました。私は離婚したいのです」と熊井。

「ほのかさんはいかがです・・・」

「応じます・・・」

「・・・」

「私だって・・・できることなら整形なんてしたくなかった・・・親や親せきとはなんとなく疎遠になったし・・・中学や高校の同窓会には出られない。ブスだって・・・ブスなりに生まれ持った自分の顔が好きだったりするの・・・でもまわりが・・・みんなが・・・好きでいられないようにするんだもん・・・仕方ないじゃない・・・こんな世の中じゃ・・・整形するしかなかったのよ・・・慰謝料ももちろん・・・払います・・・整形していた・・・不細工だった私が悪いんですから」

「・・・」

「それでは・・・私はこれで」といたたまれずその場を去ろうとする整形美人・ほのか。

「ほのかさん・・・あなたの人生を捧げるに値する男性は他にもいくらでもいますよ・・・けしてこんなブサイクではなくてね」とサービスでアドバイスする古美門。

「ごめんね・・・だまして」と整形美人ほのか。

「・・・」

「熊井さん・・・全面勝利です・・・次は天然美人を釣りあげてくださいねえ」とまとめる古美門だった。

その後の羽生と黛

「悪かったと思っているよ・・・でも・・・あんな手でも使わないと古美門先生には勝てない」

「悪いけど・・・まだまだ古美門先生には及ばないと思う」

「しかし・・・」

「この素晴らしいインターネットの掲示板の相手って・・・匿名の主婦だっていうけど」

「まさか・・・」

「最初から・・・私たちは古美門先生の掌で踊らされていたのよ・・・」

「・・・」

その後の整形美人と不細工

ある日、ブサイク熊井は・・・整形美人ほのかのレシピノートを発見される。熊井への愛情にあふれた記述に・・・「愛」を感じる熊井。

やり直そうと整形美人を訪ねるが・・・そこにはハンサムな恋人(真山明大)と仲睦まじい元妻の姿があった・・・。

「この人・・・元夫なの・・・」

「あ・・・植毛の人・・・」

思わず・・・用意した花束を取り落とすブサイクな熊井だった。

生きててよかった 生きててよかった

生きててよかった そんな夜を探してる

生きててよかった 生きててよかった

生きててよかった そんな夜はどこだ

美しいものにも醜いものにも等しく夜は訪れるのである。

その後の黛と古美門

さらに化粧をして妖怪人間ベラと化した黛はかって京都で化粧師をしていた服部の手によって立派な舞妓さんになりました。

黛が「安藤貴和水準におけるブス」を克服する日はまだ遠いらしい。

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

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2013年10月23日 (水)

遠足と喘息が似ていることを教えてくれたおりこうさまではなくて変身インタビュアーの憂鬱(中丸雄一)

篠田麻里子のゲスト出演する「海の家の診療所」のレビューもしたかったが・・・おそらく、「マジすか学園」を除いては本格的なヒロイン・デビューなのである・・・やはり、三木聡・脚本・監督ドラマの魅力には抗しがたかったのである。

篠田麻里子には「あまちゃん」的な物語がある。特に奈落と海女カフェとカフェっ娘的にである。

次の機会があることを祈りたい。

三木聡・脚本・監督ドラマといえば、「時効警察」シリーズのオダギリジョーと麻生久美子、「熱海の捜査官」のオダギリジョーと栗山千明という二人組の探偵がつきもので・・・ボケとツッコミを交互にこなしながら異空間への不思議なスパイラルを形成していくわけである。このポジションは演技力と存在感の双方を要求されるのだ。

そういう意味では過酷である。

今回は・・・中丸雄一と木村文乃がそこに置かれ・・・ものすごく実力を問われるのである。

発展途上の二人にとって・・・それが吉と出るか凶と出るかは謎だが・・・なるべく生温かく見守っていきたいと思う。

ただし・・・「熱海の捜査官」はキッドのレビューが途中で挫折している・・・この点は魔王に祈る他ないのだ。

で、『・第1回』(TBSテレビ201310220028~)脚本・演出・三木聡を見た。この世には常に制度による抑圧が存在する。多くの子供たちは親という制度から最初の抑圧を受けて神妙になっていくのである。それは人類の生存に関わる手法なのであるが・・・時には苛立たしく鬱陶しいものだ。だが、抑圧から逃れようとする精神は時に特異点を生み出す。それはフィクションとノンフィクションの間に生ずる超絶時空間となって出現するのである。仰々しく言えばこの物語は「いつかのどこか」を旅する男と女の物語なのである。そしてその「旅」が成立するかどうかは旅人自身にかかっているのだ。

15歳(高校1年生)で「第19回・なんとういうミステリー大賞」の最優秀作品「おとなの殺人計画」を書いた白川次郎(中丸雄一)は推理作家としてデビューし、これまでに「目の前の殺意」「目の前の逃走」「目の前の鍵」「目の前の地獄」「排他的な殺人」「期待させる殺人」「すべてがFになったらいいのに」「勝手に視野枯れ」「人間失火区」「ウーパールーパー殺人事件」「類似なき養成所」「ラン老婆ラン」「類比推理の苦難」「カルム町残虐器官」「くだらない殺意」「くだらない殺意2」・・・など99作品を発表してきた。しかし・・・記念すべき第百作の執筆にあたって突然、スランプ(原因不明の不調)に襲われてしまったのであった。

執筆開始から三ヶ月・・・未だに原稿は白紙なのであった。脱稿の締め切りまでは残り三ヶ月を切っている。

♪アンドロイドアンドロイドキャバレ~でおなじみの「アンドロイドキャバレー」が駅前にある町の冴えないアパートの一室で・・・冴えない長髪で老け顔の白川次郎は苦悩する。

これほどまでに「きっかけ」がつかめないのは・・・トリックの天才ともてはやされた白川次郎にとってはじめての経験だった。

こうして彼は藁にもすがる思いで・・・素晴らしいインターネットの世界で・・・「迷宮入り事件」を検索してしまったのである。

「白ユリ団地怪死事件」(1997年)・・・「青汁毒殺事件」(1998年)・・・そして「チューリップ殺人事件」(1999年)・・・。

「チューリップ殺人事件・・・」

白川次郎は「メルヘン」を感じた。

「チューリップ殺人事件・・・立入り禁止区域に指定されていた三貴子(さんきす)の泉に侵入した二人の主婦が絞殺され、はいていたスカートで上半身を包まれ、ロープに吊るされた状態(チューリップリンチあるいは茶巾寿司的な)で遺体として発見されたまま時効(フィクション)を迎えようとしている未解決事件・・・」

事件は意外と「ダーク」だった。

1999年夏、消ノ原町(けしのはらまち)に暮らす主婦仲間の夷鈴子(玄覺悠子=黒百合団地のミノルの母親)、阿波島翠(廣井ゆう=デビュー作品)、真壁真奈美(中村優子=「八重の桜の憐れな未亡人)はパワースポットとして知られる「三貴子の泉」へと続く階段を昇り、夷鈴子は青く塗られたねじを手に握り締めたチューリップ状態で・・・阿波島翠は何も握らずチューリップ状態で遺体として発見され・・・真壁真奈美だけは一年後に自宅で絞殺されて死亡する。夷と阿波島の遺体を発見したのは通称・天狗野郎(森下能幸)と呼ばれる化野の森に住むホームレスだった。

「なぜ・・・ロングスカートをまくりあげ下半身を露出させた形で絞殺死体をロープで吊りあげていたのか・・・」

白川次郎の猟奇的趣味と知的好奇心に火が点いた。

下日山酈霞(かひやまりか=木村文乃)は眼鏡っ子の編集者である。白川次郎の担当編集者として・・・白川次郎の筆が進まないことを上司であるヘパイストス出版第二編集部編集長・風見川策志(岩松了)から責められていた。

「お前がたるんでいるから作家もたるむんだよ・・・締め切りに間に合わず、出版スケジュールが滞ったら・・・ビビビだからな」

「ビビビは・・・いやです」

仕方なく、下日山酈霞は冴えない作家の部屋を訪ねるのだった。

でっかいバッグを抱えてださい感じの下日山酈霞を白川次郎は「ゲビヤマ」と読んで見下す。

「そんなことはどうでもいいから・・・書いてください」

「実は・・・興味深い事件がある」

「それでいきましょう」

「君は・・・編集者としての資質にかけているな」

「どんな事件なんですか」

「チューリップ殺人事件だ・・・」

「ああ」

「ああ・・・って知っているのか」

「私が小学生の頃の事件で・・・ともだちが良くチューリップにされていました」

「君がだな・・・」

「・・・」

「事件について関係者にインタビューをしてみようと思う」

「先生が・・・」

「そうだ」

「無理ですよ・・・先生には人から何かを訊きだす資質がかけていると思います」

「スルーしたが・・・根にもっていたんだな」

「・・・」

「君は本当の僕を知らない・・・あるいはもう一人の僕を・・・と言うべきか」

秘密の部屋に入った白川次郎は姿勢矯正ギブスやヘアピース、メーキャップによってそれなりに二枚目の青沼霧生(いつもの中丸雄一)に変身するのだった。

ゲビヤマは・・・白川次郎→青沼霧生のギャップに思わず萌えるのだった。

「へえええええええええええええええええええええええ」

「君は知らなかっただろうが・・・変身した僕は時々、編集部に何食わぬ顔でお邪魔しているのだ・・・君たちが影で・・・僕をバカにしているのも知っている。この間、君は僕をきもい長髪の額がΩ野郎呼ばわりしていたな」

「じぇじぇじぇーっ」(東京ドラマアウォード2013 「あまちゃん」のグランプリ・主演・助演女優賞、脚本・演出・プロデュース賞、音楽に対する特別賞七冠達成記念→情報提供シャブリ様)

何かが発見され大騒ぎになっている川沿いの道を無関心に通り過ぎ、駅前に出た二人はカフェに入る。

青沼に変身した白川はウェイトレス(上間美緒=「幽かな彼女」の幽霊メグミ)に恋愛関係の質問を試してみるのだった。

「現在交際中の彼氏がいるが・・・浮気されているので別れるべきか悩んでいるそうだ。初体験は中学三年の時で今まで性的関係を持った相手は12人いる。好きな体位は騎乗位で僕が13人目になっても構わないと言っている・・・」

「先生の実力はよくわかりました」

「僕は天才ミステリー作家でもあり・・・天才インタビュアーなんだよ」

「では・・・さっそく・・・現地に行きましょう・・・ちなみに取材経費はもうほとんどありません」

「自腹かよっ」

しかし・・・パワースポットとして人気を集める「三貴子の泉」のある「消ノ原町」の宿泊施設は予約でいっぱいだった。

「山一つ越えた賽の河原町なら予約がとれそうです」

「それでいい・・・奇妙な世界に入る前の入り口としてはうってつけだ」

「この事件は実在の長岡京殺人事件またの名を京都長岡ワラビ採り殺人事件に似ているという人がいますが・・・」

「なんだってなにかにはにているんだよ・・・そういうことにこだわるのはおしゃれじゃないしさしさわりがあるんだよ」

「なぜ・・・前文ひらがなで・・・」

二人はどこぞの県にある賽の河原町にやってきた。

二人が宿泊するのは温泉旅館「猫旅館」である。

女将は出迎えのために一旦、背後に回る習性のある櫻井野薔薇(ふせえり)・・・。

番頭はやたらとヴィブラスラップ(キューバの楽器キハーダの代用楽器とされる体鳴楽器・・・シャアハマンカーンと鳴る)を鳴らす蝉岡蟷螂(松尾スズキ)である。

森下能幸→岩松了→ふせえり→松尾スズキとラインを越える気持ちは高まって行くのだった。

旅館でくつろいだ青沼が白川に戻ると少なからずガッカリするゲビヤマくんである。

「ゲビ~ン」と言わないのが不思議なくらいだ。

しばしの休息後、再び白川は青沼となる。二人は早速、循環バスに乗り、昇天峠を越えて消ノ原町へ「第一発見者」の天狗野郎を捜しにやってくるのだった。

青沼はピンクの懐中時計とピンクのルーペ、ゲビヤマくんはでっかいバッグからださいグリーンのスニーカーを取り出すのだった。

バスストップ「消ノ原中央」の最寄りの食堂「モアイ」の・・・人によっては色っぽいと思えるのかもしれない女店員・川島芳香(町田マリー)に早速インタビューする青沼。

しかし・・・「チューリップ殺人事件」の話題になると・・・川島は言葉を濁すのだった。

そして・・・診療時間の過ぎた歯医者の予約があるからと二人の前から立ち去るのだった。

「彼女は・・・嘘をついている・・・何かを隠しているに違いない。僕の第一印象は・・・この街には不穏な空気が立ち込めているという感じだ」

「先生・・・」

ゲビヤマくんは青沼に注意を促すのだった。

青沼がふりかえるとそこには・・・いつの間にか二人の周囲を取り囲む不穏な感じの人々が・・・続々と結集している模様。

「これは・・・おそらく・・・オチ・・・でも解決はたぶん最終回・・・それまでにはせめて某巨大掲示板に実況スレは立ててもらいたい」

ドラマのレビューはできればつづけたいので来週もみましょう。

関連するキッドのブログ→主に泣いています

遅咲きのひまわり

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様の変身インタビュアーの憂鬱

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2013年10月22日 (火)

吾死するとも自由は死せんでごぜえやす(綾瀬はるか)

自由民権運動が高まる明治15年(1882年)・・・。

野に下った志士たちは新たなる反政府運動の火種となっていた。

その基本的構造は・・・国家の近代化を急ぐ政府の財政的窮乏と・・・中央集権的制度にありがちな重税の徴収である。

明治維新を成し遂げた革命家たちは次々とこの世を去り・・・残されたものたちはそれぞれの道を歩いて行く。

自由党を結成して党総理に納まった板垣退助は党勢拡大を目指し、全国を遊説中だった。

東京日日新聞(後の毎日新聞)の熱心な愛読者であり、政府擁護の御用新聞の論調に同調しすぎたことによって、自由民権派を憎悪した憐れな小学校教員・相原尚褧は岐阜での遊説を終えた板垣を殺害せんと襲撃する。

相原は短刀を所持していたが呑敵流小具足術を会得している板垣は素手で抵抗し、七か所に負傷するも随行するものとともに相原を捕獲した。

相原は無期懲役の判決を受けるが七年後に大日本国憲法発布にともなう恩赦によって釈放される。相原が謝罪し、板垣はこれを受け入れるが・・・その後、相原は移住するべく北海道へ渡航する船上から消息不明となった。

世に言う岐阜事件である。

そのような騒然とした世の中を・・・敗戦国会津の国民である八重はひっそりと穏やかに過ごしていたと思われる。

戦後15年の月日が過ぎ去っていたのだ。

八重は37歳になっている。そして覚馬とうらの子・みねは二十歳である。

姉妹のように見えるが・・・叔母と姪である。

まるで最終回のように回想を盛り込んだ今回は映像ポエムとしては秀逸であり・・・大切なものを一度でも失ったものが視聴すれば・・・八重が会津に帰ると決まった時点から涙腺は緩みはじめ・・・涙にくれること間違いなしである。

国破れて山河なし・・・それでも生きていく人の憐れさが極まるからである。

で、『八重の桜・第42回』(NHK総合20131020PM8~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は渡米して11年目に米国より帰国した山川浩、山川健次郎の妹にして後の大山巌の妻、山川捨松と横井小楠の長男・伊勢時雄の妻となった山本みねの二大イラスト描き下ろしでお得でございます。八重の三十七年の人生が走馬灯のように蘇る今回。覚馬の別れた妻に寄せる思い・・・瞼の母うらとの哀愁の再会・・・幻の我が子と逢瀬し・・・我が子が嫁いだ喜びに歓喜するうら・・・吉田松陰まで動員されて・・・泣き濡れる一夜でございましたな。帰郷して初めて知る・・・「思えば遠くへきたものだ・・・」なのでございますねえ。そして・・・角場だけが残ったんですな。

Yaeden042 明治9年(1876年)、若松県、福島県、磐前県が合併されて福島県となる。会津若松城籠城戦で北出丸の侍大将となった家老・海老名季昌は警視庁に属する警官となり、山形県、福島県などの郡長を歴任。自由民権運動の取締役(弾圧者)として活躍している。季昌の妻・日向リンは明治15年に34歳で初産を果たしているが後に、熊本バンド出身で同志社英学校の卒業生・小崎弘道が設立した霊南坂教会で洗礼を受けキリスト教に入信する。やがて徳富蘇峰の姉で安中の実業家の後妻となり八人の子供を出産した湯浅初子(徳富蘇峰の姉)が経営していた幼稚園を引き継ぐという不思議な縁で結ばれている。支配階級として会津の民からは指示されなかった会津士族たちも地縁・血縁を利用し時には新興宗教を利用してしぶとく生きていったのだった。明治15年の福島県令は薩摩藩出身の内務官僚・三島通庸で住民の反対を押し切り強引に土木工事を進める圧政を行っていた。12月、これに反対した自由党員や農民などが暴動を起こし、民権激化事件の魁となる福島事件を発生させる。県令は強権を発動し、二千名の逮捕者が出た。海老名季昌警部補はこの弾圧に協力しさらに出世し、後に若松町長になっている。そういう時代に・・・新島襄とその仲間たちは着々とキリスト教の布教を展開して行ったのである。しかし・・・結局の処、真の信仰に目覚めるものは多くはなかったようだ。信じる者と不信の者との対立は未来永劫続いて行くからである。

北海道でのヴァンパイア掃討作戦を終えた八重は帰京する新島襄らと別れ、単身、故郷の会津若松を訪れている。

みちのくくのいちの首領となっている樋口うらと情報交換を行うためである。

戊辰戦争の敗北者となった東北各県では中央から派遣された為政者による圧政が進行していた。明治維新によって解放されたはずの農民たちは中央政府という新たな収奪者を迎えていたのだった。

若松の町に居を構えるうらは料亭を経営していた。

旧家老の屋敷を改造した店構えは立派なものであり、高級官吏や大商人たちによってそれなりに繁盛しているようだった。

奥の間でかっての小姑を迎えたうらは・・・八重に雑炊をすすめた。

「いやあ・・・姉様の雑炊はやはり会津一番だなし」

「八重殿もお年を召して口が上手になったべ」

「雪もふって冬も近いというのに城下は騒がしいな」

「喜多方で騒ぎが起きているんだべし」

「例の工事人足の件だべか」

「んだ・・・いくら農閑期とはいえ・・・男衆を手当てもなしに根こそぎひっぱられては百姓たちもたまらんという案配だなし」

「手当も出さねえのか」

「んだ・・・それどころか・・・男手出さんとなれば人夫賃を出せというやり口だ・・・」

「なんと・・・そりゃ、ひでえな」

「今度のお上は百姓を牛馬かなんかと勘違いしてるんだべ」

「牛っこも馬っこも餌をやんねば働かんじゃろうに」

「んだ・・・県の目付になっている男衆には不穏な情勢を報告せよとの命令がくだっているが・・・どこもかしこも不穏なので困ると申しておった・・・」

「では・・・ひとあれあるのは確実だべし」

「じゃろうねえ・・・どれ・・・おかわりよそろうか」

すでに老いを感じさせる二人のくのいちは微笑み合った。

忍びのものたちは・・・上につき下につきしてバランスをとりながら・・・そこそこの着地点を模索していた。

会津の負け戦から・・・姿を消したと思われた忍びのものとくのいちたちは・・・民衆にとけこみながらひっそりと息づいている。

それは・・・己の暮らしを守るための・・・忍者たちの新たなる戦いだった。

関連するキッドのブログ→第41話のレビュー

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2013年10月21日 (月)

見ろ、人がゴミのように死んでも歴史は変わらない・・・(木村拓哉)

オーディションを何百回も受けて惜しいところまでいったけれど「なんか違う」と言われて落選し続けた大島優子はAKB48のオーディションに不合格だったら、アイドルに見切りをつけて別の道に進もうと決心していたと言う。

しかし、歴史は大島優子を選択し、AKB48は国民的アイドルとなった。

だが、AKB48に大島優子が不可欠だったかどうかは不明だし、もしも大島優子がAKB48に加入できなかったとしても彼女がアイドルをあきらめたかどうかも不明である。

けれども、そういう可能性を考えることは無意味で・・・大島優子がAKB48のメンバーであることも、大島優子がメンバーとなったAKB48がアイドルとして頂点を極めることもあらかじめ決められた運命だったとも言える。

しかし・・・実際にはメンバーになれなかったもう一人の大島優子は存在していたに違いない。

その大島優子は「私とたいして違わない・・・それほど美人でも可愛くもないあの子が国民的アイドルでどうしてそれは私ではないのか」と呟いているに違いない。

大島優子Aと大島優子Bの違いは神のみぞ知る領域である。

容赦ない未来からの干渉で無為に死んでいった数百人の人々は「かけがえのない命の持ち主」ではなかったという恐ろしい主張がそこにある。

しかし・・・ヒロインの命だけは特別なのだと・・・。

そして・・・ヒロインにはその考え方が受け入れ難いというのがこの物語の骨子だろうと妄想できる。

「人が死んでるのよ」

「これは戦争だから・・・当然だ」

「何が当然なのか・・・わからない」

しかし、プログラミングされた人工知能にとって「戦争で死者が出るのは論理的に矛盾しない」ことなのだろう。

それは・・・大島優子がAKB48に存在するのが単なる事実であるのと同じように・・・。

だが、多元宇宙にはAKB48に加入できなかったお茶の間の大島優子Aがいてテレビに登場する大島優子Bに「ブス」と毒づいていたりするものだ。

そして、「戦争ならしょうがないか」と納得するヒロインのいる世界もまたどこかに・・・。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第2回』(TBSテレビ20131020PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・波多野貴文を見た。子供というものは悪戯をするものである。もちろん、大人を困らせるほどの悪戯ものもいる。親であれば時に対処に困ることもある。叱りつければ泣きわめき、時には暴走して死んだりもするからである。そうした「危うさ」はこの脚本家の基本的なモチーフである。たとえば「SPEC」では理知的な当麻紗綾(大人)は感情的で偏屈な瀬文焚流(子供)に手を焼く。子供っぽい倫理観に縛られた瀬文を尊重するために必殺技を封印することを余儀なくされてしまうのである。「安堂ロイド」は男女が逆転して理知的にしか考えられないアンドロイド(大人)が感情と直感に支配された人間のヒロイン(子供)に手を焼くのである。ヒロインに振り回され、困り果てるアンドロイドだが・・・アンドロイドなので困惑したりはしないのだった。

前世紀の遺物であり必死に生き残りを図る「心理学」は「認知心理学」を発生させる。人の心を科学的に探究することが困難であることから、暗礁に乗り上げた「心理学」は人工知能の発展によって・・・人間の心を人工知能的に考察することに活路を見出したのである。それは「情報」について一つのアプローチとしてそれなりの成果をもたらすわけである。同様に「ロボット」がなぜ「血」を流す必要があるのか疑問に感じる人がいることだろう。アンドロイドは人間型ロボットなのである。人間の持つ生物的特性を模倣して、それが機能的に有効であれば「血液的なもの」が「循環」していても何の不思議はないのである。基本的には人間もまた有機体素材使用の機械に過ぎないのだから。

「け、結婚して下さい」

「よろこんで・・・」

ごく普通の美男美女として愛に燃えた二人。

しかし、ダーリンは「現在と未来をつなぐ理論」を完成させた天才物理学者・沫嶋黎士(木村拓哉)だったのである。

現実を受け入れることの困難さが彼女を惑わせる

未来に干渉したと思われる沫嶋黎士は未来からの暗殺者・ラプラス(福田彩乃)によって殺害され、暗殺者の魔手は黎士の婚約者である大手外資系IT企業「エニグマエンジンソフト社」広報室長・安堂麻陽(柴咲コウ)に何故か、迫って行く。

しかし、未来から現れたアンドロイド・エーアールエックスセカンドサーティーン(木村拓哉)は謎のクライアントからの依頼により、麻陽の危機を救うのだった。

「死んだのではなく殺された」黎士そっくりのアンドロイドの出現に・・・麻陽の心は乱れるのだった。

麻陽は「クライアント」が黎士ではないかと疑い、同時に黎士そっくりでありながら血も涙もないように見えるエーアールエックスセカンドサーティーンに強い反発を覚えるのだった。

(何故・・・黎士ではなくアンドロイドなのか)と思うからである。

自暴自棄になった麻陽は自殺を図るがエーアールエックスセカンドサーティーンによって阻止される。

(何故か、安堂麻陽が死ぬことは禁じられている)からである。

エーアールエックスセカンドサーティーンは麻陽に銃口を向け、射殺を仄めかす。

しかし、安堂麻陽が自殺を思いとどまったことを察知したかのように姿を消す。

そこに麻陽の部下でエニグマ社のシステムエンジニア・星新造(桐谷健太)がやってくる。ラプラスによる「偽の自殺告知」を真に受けて麻陽を捜索していたのだった。

「安堂さん・・・血が・・・」

「これは・・・違うの・・・私を・・・救ってくれた男の・・・」

「男?」

麻陽は・・・黎士の愛のメモリーにつながる東京タワーを見上げる。

(たとえ自分が殺されても君を守る・・・と彼は言った)

麻陽は混乱した心を抑えてエニグマ社に出勤するのだった。

しかし・・・黎士が破壊した歴史を修復すると称する謎の組織ポリスクラウドの暗殺アンドロイドたちは2113年の未来から続々と時を遡上してくるのだった。

21世紀の警察機構に所属する葦母刑事は疑惑を感じる

地下鉄の軌道に消えた安堂麻陽と思われる女性が再び監視カメラに映っていたのだった。

しかも・・・目撃証言から・・・女性がホームから飛び降りたにも関わらず、またしても死体が残されていなかったのだ。

地下鉄車両には衝突の痕跡が残っていたが・・・血痕一つ残されていなかった。

一方、清掃員の証言により天井からなんらかの落下物があったことが報告された。

監視カメラの映像には何故かノイズが入り、肝心の場面が残されていない。

「一体・・・どうなってんだ・・・こりゃ・・・」

「例の素晴らしいインターネットの世界上の殺人予告ですが・・・日程が修正されています」と葦母の部下である警視庁公安部第仇課特殊捜査班・冨野刑事(日野陽仁)が告げる。

「つまり・・・安堂麻陽の暗殺は・・・二回失敗したということだな」

「どういうことでしょうか・・・」

「さっぱり・・・わからない」

葦母刑事は不可解な事件に・・・刑事魂が燃えあがるのだった。

サプリはエーアールエックスセカンドサーティーンを修復する

地下鉄の構内清掃員の衣装から看護ロイドのコスチュームにチェンジしたサプリ(本田翼)は廃墟に横たわるエーアールエックスセカンドサーティーンをいたぶるのだった。

「手間かけさすなよ」

「とっとと修理してくれ」

「歴史改変の危険性を排除するための偽装工作なんて・・・あたしの機能外任務なんだよ」

「だから主任務を実行しろ」

「・・・このポンコツ・・・口だけは達者だな」

看護ロボットというよりはドクターロイドあるいは修理ロイドというべきサプリはエーアールエックスセカンドサーティーンの機能修復を開始するのだった。

「エーアールエックスセカンドサーティーンの部品は廃版だし、在庫はないんだよ。だから、海賊版から推測してパーツを切りだしたよ。性能は保証できないからね。擬似神経や擬似筋肉の有機体ナノマシーンは自己修復機能があるから・・・充電で回復するよ・・・この廃工場の電源供給力だと・・・ちょっと時間がかかるけどな。ざっと二週間くらい・・・まあ、いい骨休みになるんじゃないの・・・安静にしてなくちゃだめじゃないですかっ・・・てな」

「・・・」

「じゃ、あっしはドロンします」

「サプリ・・・」

「なんだよ・・・」

「俺の事件で・・・お前が拘束された後・・・仲間たちはどうなった」

「苦しみや悲しみ・・・恐怖のプログラムをインストールされて、最悪の状態にされてから・・・原子分解の刑に処せられたよ」

「・・・」

「おかげで・・・私まで感情プログラムをインストールされちまった」

「・・・」

「厄介だよ・・・あんたにもインストールしてやろうか」

「・・・」

「じゃあな・・・達者でな」

サプリは引き出し内のおそらく亜空間に帰還した。

帰るべき未来はおそらく現在、閉塞中と推測できる。

とにかく、サプリやエーアールエックスセカンドサーティーンの属する組織はどうやら反体制的性質を持っているらしい。

砂時計を思い浮かべていただきたい。

「時」は「砂」となって過去から未来へ流れていく。

「現在」はいわばくびれた部分である。

その一点から未来に向かって落ちる砂は散開していく。

未来のある部分は・・・通過点の現在を軌道修正しようとし、未来のある部分は修正を阻止しようとしている。

それはお互いの存在に関わる戦争であるらしい。

砂たちは逆流し、現在という通過点に何らかの影響を及ぼそうとしているのである。

はたして・・・黎士は・・・麻陽が直感したようにこの砂時計的時空間になお存在しているのだろうか・・・それはまだ謎である。

あるいは・・・アンドロイドたちが過去にやってきたように・・・黎士は未来にいってしまったのかもしれなかった。

だが・・・すでに・・・黎士が殺されたことは過去の出来事なのである。

だから、エーアールエックスセカンドサーティーンはサプリの戯れに従うことはできなかった。

時間は切迫しているのである。

敵対勢力は次の一手を打ってくるに決まっている。

戦力の逐次投入に見えるが・・・それはルールに従った攻防なのだろう。

エーアールエックスセカンドサーティーンの敵対行動を阻止するためにポリスクラウドは最適を模索しているのだ。

(即時電力を確保する・・・必要機器を転送申請・・・送電線の改良を開始・・・現代の管理システムにハッキングして送電量をコントロール・・・準備完了・・・盗電スタート)

大電力がナノマシーン改造された送電線から送られ始める。

たちまち、容量はオーバーし、エーアールエックスセカンドサーティーンは発熱するのだった。

送電ジャックされた東京電力のシステムは破壊され・・・都内で停電が発生する。

双子のアンドロイドは任務を分担して別れる

第二の刺客である双子のアンドロイドは「サイボーグ009」のゼロゼロテン(初代劇場アニメではゼロゼロイレブン)へのオマージュと思われる。

巨大電力の送電は双子のアンドロイドによって探知される。

「どうやらあそこに所属不明機が潜んでいるようだ・・・バルスさん」

「愚かなオールド・タイプだな。キュリーさん」

「所属不明機の破壊は君にまかせるよ・・・バルスさん」

「それでは君がアサヒアンドウを殺害したまえ・・・キュリーさん」

「各個撃破だね・・・バルスさん」

「各個撃破だよ・・・キュリーさん」

双子のアンドロイド・キュリー(柿澤勇人)は麻陽のいるエニグマ社へ、バルス(柿澤勇人=二役)はエーアールエックスセカンドサーティーンの潜む廃工場へと向かうのだった。

エニグマ社では麻陽の出社をアシスタントの小松左京子(山口紗弥加)が出迎えていた。

「よく・・・御無事で・・・」

「心配かけて・・・ごめんなさい・・・もう落ちついたから大丈夫よ」

「ご無理なさらないでくださいね」

「トラブルの件はどうなっているの?」

「進展はありません・・・」

「それはまずいわね・・・」

「謝罪のための会見を準備しますか・・・」

深刻なシステムトラブルが発生中という・・・日常が麻陽に帰って来た。しかし、それはどこか空虚に感じられる。

(これが現実で・・・あれはまるで絵空事なのに・・・)

しかし・・・黎士の命を奪った女性型アンドロイドや・・・麻陽の命を救ったアンドロイドは確かに実在したのである。

(それとも・・・私は・・・おかしくなってしまったのだろうか)

「システム復旧には全力をあげていますから・・・もうしばらく猶予をください」

エンジニアの一人である星が口を挟む。

「そうね・・・とにかく・・・会見の準備だけはしておきましょう・・・」

「あ・・・そういえば・・・お客様が見えています」

一瞬、アンドロイドたちの存在を想起した麻陽だが・・・訪れていたのは黎士の妹の沫嶋七瀬(大島優子)だった。

義理の妹は・・・婚約者の過去を語る

「心配で来てしまいました」

「七瀬ちゃん・・・」

「兄が・・・突然、消えてしまって・・・麻陽さんもいなくなったらどうしようかと思ったのです」

「・・・」

「私の家系は・・・みんな早世なんです」

「・・・」

「私の両親も・・・私が幼い頃に事故死しました」

「そうだったの・・・黎士さん、そのことはまだ話してくれていなかったな」

「兄は・・・病気じゃなくて・・・事故死だから遺伝的ではなく確率の問題だから気にするなって言ってました」

「まあ・・・」

「でも・・・ある日・・・突然、両親がいなくなって・・・鉄道事故に巻き込まれて死んだと聞かされた時・・・私はとても恐ろしい気がしたのです・・・その日のことは今でも忘れません。でも・・・兄さんがいたから・・・なんとかやってこれたのです・・・その兄さんが・・・いなくなって・・・もしも・・・麻陽お姉さんまでいなくなったら・・・私は本当に一人ぼっちになってしまう」

「大丈夫・・・私は死なない・・・頑丈だから」

「・・・お姉さんの顔を見たら安心しました・・・でも・・・殺人スケジュールは修正されています・・・何かあったら・・・連絡してください・・・私、研究室につめていますから」

「ありがとう・・・でも・・・あなたこそ・・・少し、休まないと・・・」

「大丈夫です・・・私も頑丈だから・・・」

二人は微笑みあった。

(黎士を失って・・・哀しんでいるのは私だけじゃない・・・この子を慰めなければいけないのは・・・私なのに・・・私には家族もいるのだ・・・それなのに私はただ・・・死のうとしていたのか・・・)

麻陽はそれでもなお・・・特別な哀しみを消すことはできなかった。

エーアールエックスセカンドサーティーンはバルスにトラップを仕掛ける

「こちら・・・キュリー、アサヒアンドウの勤務先に到着」

「こちら・・・バルス、正体不明機の潜伏先に到着」

「健闘を祈るよ、バルスさん」

「健闘を祈るよ、キュリーさん」

バルスは廃工場をサーチした。

正体不明機のシルエットは明らかだった・・・。

(ラプラスからのデータと一致。戦闘による損傷を修復中と推測。奇襲攻撃の成功率99%・・・攻撃による物理的破壊を実行する)

弾丸のようなものを発射する拳銃のような22世紀の武器を連射しながら、バルスは廃工場に突進した。

(目標は擬装されたデコイ・・・トラップの確率100%・・・再サーチ開始・・・爆発物を確認・・・回避行動に移行す・・・)

エーアールエックスセカンドサーティーンは巨大な磁力発生機を設置していた。

バルスは回避に失敗、磁力によって空中に釣りあげられる。

次の瞬間、バルスは行動の自由を失ったまま爆発物めがけて落下していた。

22世紀の爆弾のようなものはバルスを完全に分解した。

(各個撃破されたよ・・・正体不明機はそっちにいるよ・・・キュリーさ)

バルス・・・アニメ「天空の城ラピュタ」の「滅びの言葉」を名付けられたアンドロイドは滅んだ。おそらく自爆タイプのネーム・マシン(原型機)なのだろう。

(バルスさん・・・なんて言ったの・・・聴こえないよ・・・バルスさん)

一瞬の静寂の後、キュリーはエニグマ社の警備システムを解除した。

「これが・・・21世紀の警備・・・玩具のようだよ・・・バルスさん」

しかし・・・バルスからの応答はなかった。

代わりに館内に警報が鳴り響く。

バルスは巡回中の警備員に目視されていたのだった。

駆けつけた警備員をバルスは射殺した。

その時、玄関ホールに続く下りエスカレーターには帰途についた七瀬が乗っていた。

(ナナセマツシマを確認したよ、バルスさん)

「不審者が侵入したようです」

「え」

「念のため・・・警備室に退避してください」

「あなたは・・・」

「安堂さんの部下のものです」

「お義姉さんの・・・」

「さあ・・・こちらへ・・・」

(ナナセマツシマの端末にコンタクト・・・アサヒアンドウに送信するよ、バルスさん)

「もしもし・・・七瀬ちゃん・・・今どこ」

「ナナセマツシマを人質にとった・・・ただちに玄関ホールに移動せよ」

「あなた・・・誰?」

「ナナセマツシマの生命は三分間保証する」

「待って・・・七瀬ちゃんを殺さないで」

「ナナセマツシマの生存可能性はアサヒアンドウの行動にかかっている」

麻陽は広報室を出て玄関ホールへ向かう。

そこには茫然と佇む七瀬と見知らぬ男が立っていた。

「七瀬ちゃん・・・その男から離れて」

(アサヒアンドウを確認。これより任務を遂行するよ、バルスさん)

キュリーは22世紀の拳銃のようなものの銃口を麻陽に向けた。

次の瞬間、キュリーの右手は拳銃のようなものを握ったまま宙に飛んでいた。

(正体不明機を確認したよ、バルスさん)

キュリーはステイルス機能を発動した。

しかし、アスラシステムを発動したエーアールエックスセカンドサーティーンはキュリーの存在を探知する。

(正体不明機は・・・禁断のオペレーション・システムを搭載しているよ、バルスさん)

エーアールエックスセカンドサーティーンは電磁メスのようなものでキュリーに接近戦を挑む。

(正体不明機の戦闘力計測不能・・・自爆モードを選択するよ、バルスさん)

キュリーはエーアールエックスセカンドサーティーンの右腕を抱え込んだ。

エーアールエックスセカンドサーティーンは右腕を切断しつつキュリーを蹴り飛ばす。

「伏せろ」

エーアールエックスセカンドサーティーンは高速移動をしてキュリーをもう一度、建物の外へ蹴り飛ばす。

(正体不明機は強いよ、自爆するよ、バ)

安堂麻陽の安全を確認したエーアールエックスセカンドサーティーンの機能を停止させる選択を実行する。

自爆寸前に回路を切断されたキュリーはすべての機能を停止して転倒した。

「異物の元素還元を申請する」

(申請を受諾。元素還元を承認)

キュリーは消滅した。

「それが・・・あなたの・・・弔い方なの・・・」

「我々の存在は秘匿される必要がある」

その時、物陰に潜んでいた七瀬が顔を出した。

「一体・・・何が・・・」

エーアールエックスセカンドサーティーンは姿を消した。

「今の人・・・兄さんじゃ・・・」

「・・・」

「・・・なわけないですよね・・・でも・・・一体何なんですか」

「わからないわ・・・」

「麻陽お義姉さん・・・」

「とにかく・・・誰かが私を殺そうとして・・・誰かが私を守ろうとしているみたい・・・でも一体何が起きているのか・・・さっぱりわからない・・・」

「・・・」

麻陽は黎士の姿を求めて、アンドロイドを見出す

七瀬を送り帰した麻陽は黎士にそっくりのアンドロイドを捜し、地下駐車場でエーアールエックスセカンドサーティーンを発見する。

アンドロイドはキュリーが殺害した警備員の死体を処理していた。

「それは・・・人間じゃないの・・・ひどい」

「殺害したのは私ではない」

「だって・・・その人にだって家族がいるでしょう・・・お葬式だってしなければならないのよ」

「このビルの警備員の死亡案件の公表は問題を複雑化する可能性が高い。この人間は消息不明であることが望ましい」

「何言ってるの・・・そんなことが通るはずないでしょう」

「これは戦争なのだ。情報の管理の優先順位は高い。アサヒアンドウを巡る攻防についての情報は秘匿される必要がある」

「何故、隠す必要があるの」

「あなたの知識量では説明を理解するのは困難である」

「バカにしているの」

「あなたの知性とは別に理解するために構築された情報の不足を指摘している」

「私は・・・もうあなたたちとは関わりたくないのよ」

「アサヒアンドウにはその権限が付与されていない」

「クライアントじゃないから?・・・じゃあ、私があなたのクライアントになるわ、おいくらなのかしら」

「アサヒアンドウにはクライアントとしての資格がないことを告知する」

「資格・・・資格ってなによ」

「あなたの知識量では理解不可能と推定する」

「くそったれアンドロイド」

「私は排便機能を有さない」

「血は流れるのに」

「循環システムは完全であり、廃棄物は発汗によって処理される」

「汗もかくんだ・・・」

「人間の汗とは成分が異なる」

「未来からやってきて・・・こんなに人を殺して・・・それで歴史はかわらないの・・・バタフライ・エフェクトってあるんでしょ」

「この程度の人類の死亡は誤差の範囲内です」

「なんだって・・・じゃあ、なんで私のことは守るのよ」

「クライアントの依頼によるものだ・・・アサヒアンドウの死亡は禁じられている」

「また・・・それかよ・・・一体、こんなこといつまで続くの」

「アサヒアンドウを暗殺しようとするアンドロイドが全体消滅するか、私が消滅するまでと推定される」

「・・・」

「アサヒアンドウおよびレイジマツシマについて疑念を持った刑事が接近している」

「じゃ・・・その刑事にこのことを・・・」

「アサヒアンドウの知り得た情報を刑事に伝えた場合、刑事の死亡確率は100%である」

「なによ・・・それ」

「情報が非公開であることは人命より優先される」

「まさか・・・殺す気なの」

「情報が漏洩されなければ刑事の生存率は高まる」

「卑劣だわ・・・私を脅迫するの」

「可能性の問題を提示している」

駐車場の通路扉が開き、葦母刑事が現れた。

「あの・・・まさかと思うが・・・あなたは・・・沫嶋博士では・・・」

アンドロイドは黙秘した。

麻陽はうろたえつつ葛藤する。

(すべてを話してしまえ・・・しかし・・・そうしたら・・・この刑事は・・・仮にも刑事よ・・・腕を切断したりくっつけたりする怪物にどんな人間が勝てるって言うの・・・殺されるよ、この刑事は殺される・・・刑事どころか警察署ごとふっ飛ばしかねない・・・ならばどうするの・・・それは得意じゃないの・・・あることないこと言って・・・辻褄をあわせるのが・・・私のビジネスなんだから・・・)

「私も・・・混乱しているのです」

「混乱?」

「彼が・・・突然現れて・・・怪我をしていて・・・強盗に監禁されて・・・逃げ出したとそれだけを言って・・・彼も記憶が混乱しているのです・・・頭に怪我しているせいかもしれません」

「すると・・・沫嶋博士は・・・誘拐されていたので・・・あの旅客機にはのらなかったと・・・誰かが代わりに乗ったとおっしゃるのですか」

「彼が・・・こうして生きている以上・・・そうなのかもしれません・・・」

「とにかく・・・署まで御同行願って・・・もう少し詳しい事情をお伺いしたいのですが」

「はい・・・でも・・・今日は自宅で休ませたいのですが・・・怪我の治療は知り合いの医師に往診してもらうつもりですので・・・」

「なるほど・・・では・・・お宅までお送りしましょう」

冨野刑事の運転する車の後部座席に乗り込んだ三人。

「いずれにしろ、一度、署までおいで願いたい」

「はい・・・それはもちろん・・・あんな事故があったわけですから」

「それにしても・・・沫嶋博士が生存していたのは喜ばしいニュースですね」

「はい・・・亡くなった犠牲者の皆さんのことを考えると心から喜べませんが」

「とにかく・・・誘拐されたおかげで・・・命拾いをしたわけだ・・・」

(私が嘘をついたおかげで・・・あなたが命拾いしたようにね)と麻陽は心の中で呟いた。

二人が自宅マンションに入るのを見届けた葦母刑事はポケットから白いハンカチを取り出す。そこには赤い汚れが付着していた。さりげなく、沫嶋黎士の血痕を入手していたのだった。

「素早いですね」と冨田刑事が賞賛の声をあげる。

「これを・・・鑑定したら・・・一体何が飛び出すと思う」

「さあ・・・」

「とにかく・・・怪奇現象にこれ以上付き合うのはごめんだな」

「じゃあ・・・監視をやめるのですか」

「やめるわけないじゃないか」

「ですよね」

「それにしても葦母衣朔(あしもいさく)と聞いてアイザック・アシモフが連想できない人多すぎなくね」

「時代ってやつなんでしょうねえ」

麻陽はアンドロイドと一夜をともにする

「この部屋に・・・泊まるつもり・・・」

「刑事が監視している」

「まさか・・・本当だ」

「刑事は君よりも猜疑心が強い・・・君の話を信じた様子もなかった」

「そんなことがわかるの」

「私の分析能力は人間の表情からある程度の心理状況を推定することができる」

「機械のくせに・・・心がないのに・・・どうやって心がわかるのよ」

「私の情報処理能力は人間の平均値の1000倍以上に設定されている」

「ふざけないで」

「私にはおふざけの機能はない」

「なんですって・・・まったくふざけてないっていうの」

「機能をインストールする必要がないと類推する」

「じゃ・・・なぜ、私にばかり話させたのよ」

「私には嘘をつく機能がないが、アサヒアンドウは有能な嘘つきと判定される」

「誰のせいで嘘をついたと思っているの」

「嘘をつく判断をしたのはアサヒアンドウであると結論する。これより、私は充電を開始するが・・・辻褄を合わせるために医師の予約を行うことを推奨する。時間的制約を考えて往診が行われなくても嘘が発覚する可能性を減少させるための提案である」

「・・・」

アンドロイドは室内の電源コンセントを簡単に改造すると待機モードに移行し充電を開始する。

ベッドに背をもたせかけたその姿勢が麻陽の記憶を揺り動かす。

在りし日の黎士が同じような格好で居眠りしていたのを思い出したのである。

ベッドで誘いをかけていた麻陽は読書中に黎士が居眠りしていたのに気がつき激怒したのだった。

もちろん・・・その後、激しく愛し合った二人の甘い記憶である。

あの・・・黎士が殺されて・・・黎士にそっくりのロボットがベッドサイドにいる。

麻陽は混乱を抱えたまま眠りに落ちた。

あまりにも疲労困憊していたからだった。

なにしろ・・・一日の間に二度、地下鉄に轢かれそこなったのである。

日付はすでに10月9日になっていた。

刑事は情報をリークし、麻陽の母親と黎士の妹が襲来する

熟睡した麻陽は自分を揺らした相手が黎士であると錯覚する。

「黎士・・・」

「私を黎士と呼ぶことは状況的に好ましい」

麻陽の眠りを妨げたのは黎士そっくりのアンドロイドだった。

「目が覚めたら悪夢の中だったなんて最悪だわ」

「刑事が予想通り、マスメディアに対して情報をリークした。テレビを見たまえ」

「え・・・」

テレビには七瀬が出演していた。

「お兄様が生存していたとのことですが・・・今のお気持ちをお話ください」

「私もまだ・・・実際に会ってはいないのですが・・・言葉にはできないほど・・・喜びを感じています」

「・・・お伝えしている通り、事故で死亡したと報道されていた沫嶋黎士教授の生存が確認された模様です・・・沫嶋博士は何者かに拉致され・・・」

「なぜ・・・こんなことを・・・」

「アサヒアンドウを暗殺しようとする組織はすでに・・・現時空間の警察組織をコントロールしていると推定される。これは彼らにとっても想定外のことだろう。つまり、あの刑事は組織に対するアウト・ロー的な存在だと考えられる」

「・・・」

「アサヒアンドウを巡る攻防戦についての情報が現時空間に広く流布されることは好ましい状況とは言えない。歴史が激しく変わってしまう可能性がある。だから・・・この状況を改善するためにはアサヒアンドウの言動がひとつのポイントとなる」

「なぜ・・・」

「すべてをなかったことにできるのはアサヒアンドウだけだから・・・そのためには私を黎士と思わせることが有効である」

「できない・・・そんなことできるわけない。黎士さんはアンドロイドじゃないもの」

「人間には嘘をつく機能があり・・・アサヒアンドウは天才的な嘘つきだと記録されている」

「無理よ・・・そんな嘘、いつか破綻するに決まっている」

「決着は数日でつく。残り8体のアンドロイドの破壊に私が成功するか・・・私が彼らに破壊されるかで戦争は終わる」

「その場合・・・私は殺されるってわけね」

「アサヒアンドウが死ぬことは禁じられている」

「とにかく・・・私はあなたたちのために嘘をつくなんてまっぴらだわ」

「真相を知った人間は消去される。私が殺さなくても彼らが殺すだろう。場合によっては東京の人間を全員抹殺することもありえないことではない」

「そんなことをしても歴史が変わらないとでも」

「東京都民一千万人は誤差の範囲内と決定している」

「・・・そんな馬鹿な」

その時、チャイムが鳴り、麻陽の母親で名古屋に在住する老舗味噌屋の女将・安堂景子が室内に侵入する。

「お母さん」

戦闘モードに移行しつつある黎士を制し、母親を出迎える麻陽。

「どうして・・・」

「朝一番でニュースを見て新幹線で来たんだぎゃ」

「・・・」

「だって・・・お婿さんさんが無事だったなんてこんなにめでたいことはないんだぎゃ」

「・・・」

「まあ・・・黎士さん・・・よくまあ・・・生きてたねえ・・・ドエリャアえらかったねえ」

「黎士さん・・・まだショックが尾を引いているみたいなの・・・」

「それなら・・・美味しい味噌汁を作らなきゃならんぎゃ」

黎士は味噌汁を飲むと感想を述べるのだった。

「お母さんの味噌汁は風味が素晴らしい」

「え・・・味がわかるの」

「おみゃあ、それは失礼だぎゃ」

疾風のように現れて疾風のように去って行く景子だった。

「とんぼ帰りするの?」

「お店ひらかにゃならんでね」

母親もまた砂時計のようなものである。

母親は未来に向かって一握の砂を産み落とす存在だからである。

母親にとって娘が砂時計になることは自分の存在意義に関わることなのだ。

そのための相手の安否を確認すれば用済みなのだった。

「お母さん・・・」

母が去った後の空虚感を味わう麻陽だった。

「その調子で・・・マスメディアにも対応してもらいたい」

「自分ですればいいじゃない」

「私には嘘をつく機能がない」

「でもさっき・・・母の味噌汁をほめたでしょう」

「味噌汁の成分を分析するのは標準装備された機能である」

「・・・」

「協力を要請するつもりはないが・・・多くの人命がアサヒアンドウの舌先三寸にかかっていることを告知しておく」

麻陽はマンションの入り口に殺到するマスメディアの取材に応じた。

「多くの犠牲者を出した事故のことを考えれば・・・喜ぶことは憚られますが・・・彼が戻って来てくれたことは・・・私にとって奇跡としか言いようがなく・・・本人は監禁時に受けたと思われる怪我でまだ・・・人前に出られる状態ではありませんが・・・」

最後は涙にくれる麻陽だった。

中継を観察していた謎の美少女(桐谷美玲)は呟く。

「なるほど・・・これが・・・プラントル・グロワートの特異点によって発生したベイパーコーンの霧の中の真実か・・・すべては意図されたものだったということなのねえ。エヘッ」

時空間の移動速度の向上を求める生命体である人間はすでに音速の壁を突破している

音速は媒質中を伝わる振動の最高速度であり、超音速ではこれを超えるため、物体先端部から広がる衝撃波などの特異な現象を伴う。しかし、実際に移動している物体の周囲では、空気などの媒質は複雑な流れ(乱流)を持ち、物体表面と媒質の相対速度は確率分布を示す。機体が超音速に達していなくても、機体の一部では超音速による衝撃波が発生し得るわけである。 トランソニック(遷音速)と呼ばれるマッハ0.75~1.25の領域では亜音速と超音速の気流が混在する。飛行機が海面上など湿度と気圧が高いところで遷音速飛行している時、機体の周囲に円錐型の雲(水蒸気)が発生することがある。ベイパーコーンと呼ばれるこの霧はプラントル・グロワートの特異点によるものと説明される場合がある。謎の美少女は2113年からの観察者としての視点から、黎士が光速の壁を突破したことによる2013年の時空間的混乱・・・おそらく未来から現在が観測不能になっていることを・・・音速を巡る事象にたとえて語っているのだということが妄想できる。

つまり・・・麻陽の虚言こそが時空間に張られた煙幕なのである。

この点については天使テンメイ様が詳しく教えてくれます。

「さすがだ・・・アサヒアンドウは天才的な嘘つきだ」

もちろん・・・麻陽にはアンドロイドの事実確認の言動は意味不明なのである。

どちらかといえば・・・立腹する要素でしかないのだった。

そこへ・・・今度は七瀬がやってきた。

「お義姉さん・・・私です・・・七瀬です」

「ナナセマツシマに対して私は適応することができない」

「だって・・・会わなかったらそれこそ・・・不自然でしょう」

「私には嘘をつく機能がない」

「七瀬ちゃんには真実を伝えるしかないでしょう」

「そうしたら・・・ナナセマツシマを殺さなければならない」

「・・・わかったわ・・・なんとかするから・・・あなたはベッドに寝ていればいい」

七瀬は部屋に飛び込んできた。

「ニュースを見て・・・一目会いたくて・・・」

「ごめんなさい・・・彼は薬で眠っているの・・・」

「これ・・・兄の好物です・・・目がさめたら・・・食べさせてやってください」

「・・・」

「ああ・・・本当だ・・・眠っている・・・よかった・・・兄が生きていてくれて・・・」

「あのね・・・七瀬ちゃん・・・黎士さんは頭に傷を負って・・・記憶が混乱しているみたいなの・・・」

「え・・・」

「もしかしたら・・・七瀬ちゃんのことも思い出せないかもしれない・・・」

「記憶・・・喪失ですか・・・」

「でも・・・一時的なものかもしれないし・・・」

「わかりました・・・でも・・・いいんです・・・たとえ、私のことが分からなくなっていても・・・兄が生きている・・・それだけで幸せなんです」

「七瀬ちゃん・・・」

実の妹のように慕ってくれる七瀬に嘘をついていることは麻陽の心を激しく苛むのだった。

「それじゃあ・・・兄のこと・・・お願いします」

「七瀬ちゃん・・・」

麻陽はこらえきれず、アンドロイドの目を盗んで・・・七瀬を追いかけるのだった。

近所の公園で七瀬に追いつく麻陽。

「あのね・・・七瀬ちゃん・・・あなたにだけは本当のことを言う」

「本当のこと・・・」

「でも・・・これは絶対に秘密にしてほしいの・・・」

「秘密って・・・」

「あれは・・・黎士さんではなくて・・・未来からやってきたアンドロイドなの・・・あれに・・・私は何度も命を救われたの・・・」

「だから・・・素晴らしいインターネットで公開されている殺人スケジュールが変更されていると・・・」

「たぶん・・・そう・・・」

「じゃあ・・・兄は・・・」

「未来からやってきた・・・何者かに殺されたって・・・」

「兄は・・・現在と未来をリンクする研究をしていました・・・そうか・・・それで殺されちゃったのか・・・兄は・・・死んだんですね」

「・・・」

「・・・うわああああああああああ」

「七瀬ちゃん」

「あああああああああああああああああああああああああああ」

号泣する七瀬を抱きしめる麻陽。

「七瀬ちゃん・・・泣かないで・・・もう・・・わかったから」

「わかった・・・何がわかったんですか」

「・・・」

「みんなをぬかよろこびさせて・・・ひどい女」

「待って・・・それには理由があるの・・・」

しかし、聞く耳を持たない状態の七瀬はタクシーを拾って走り去る。

嘘をつくのは上手な麻陽・・・真実を伝えるのが苦手だったようだ。

その背後に忍び寄るエーアールエックスセカンドサーティーン。

「なぜ・・・ナナセマツシマに話してしまったのです」

「だって・・・家族だもの・・・黎士さんの妹なのよ・・・ついていい嘘とそうじゃない嘘があるのよ」

「これで・・・ナナセマツシマを殺さなければならなくなった」

「どうして・・・そうなるのよ・・・黎士さんの妹よ・・・あなたのクライアントは黎士さんなんでしょう」

しかし、問答無用で姿を消すエーアールエックスセカンドサーティーン・・・。

麻陽はとりかえしのつかないことしてしまった後悔に襲われるのだった。

その頃・・・謎の美少女は警視庁公安部の幹部・角城(平岡祐太)と密室で面会していた。

「なるほど・・・ラプラスは人間だと判定したようだが・・・私にはわかる・・・君はエーアールエックスナインスザラストクイーンだな・・・その名にふさわしい素晴らしい機体だ・・・君もこの時空に閉じ込められていたのか」

「生きるべき人間が死んで・・・死ぬべきクズが生きている」

「君の兄の言葉だな・・・」

「兄じゃないよおおおお、なめんなあああああ」

どうやら激昂機能を持つらしいアンドロイド・エーアールエックスナインスザラストクイーンは角城を一瞬で機能停止にするのだった。

すべてはまだ謎に包まれていると言える。

しかし・・・特異点によって生じた霧の中の出来事は最後まで解明できるとは思えない。

人知の及ぶところではないからである。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

Ar002 ごっこガーデン。拡散する砂時計の中の宇宙セット。アンナぴょんぴょんぴょんのぴょ~ん。最初から跳ねまくりの歓喜の嵐の安堂ロイド熱狂なのだぴょん。このドラマを見るために生まれて来たような気がするぴょん。さあ・・・はりきって看病ごっこをするのぴょ~ん。ダーリンが入院したら看護師さんに化けて絶対潜入するアンナちゃんだぴょ~ん。さあ・・・お注射しますからね~。お尻出してくださ~い・・・その後はリピしてリピしてリピしまくるのだぴょ~んまこぼぎゃあああん、ナースのコスプレもアンナちゃんにとられちゃったジョ~。嘘が上手なのにおら嘘はつけないモードの麻陽ちゃん・・・まだまだあまちゃんでしゅね~、じいや、味噌煮込みうどん作ってけろけろくうどうしてどうして麻陽ちゃんはオバカさんなの~。どうしてどうして瀬文のバカは気にならないのに麻陽のバカ正直は気になるの・・・はっ・・・女だからなの?・・・破棄されたアンドロイドに未来はないの・・・過去に置き去りなの?」シャブリ麻陽がアホすぎるのには同感なのでありました~・・・七瀬ちゃん・・・殺されないで~なのでありました~mariロイドにインストールされていない感情が・・・いつか芽生えるのか・・・それとも実はすでに芽生えているのか・・・ですよね・・・ikasama4すごいのか・・・すごくないのか・・・ものすごく判断に迷う・・・今日この頃です・・・まあ・・・速攻で七瀬殺害だとクオリティー高すぎになっちゃうでしょうけどねえ・・・この卓袱台がベイパーコーンなのですなmana視聴率19.2%↘15.2%でも問題な~い。もうだってわかるやつだけわかればいいモードなんだもん・・・麻陽がペアのマグカップをロイドと一緒に使える日が来ることを祈ります・・・

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2013年10月20日 (日)

出来心詐偽と出来心横領と出来ちゃった結婚、許せないのは?(亀梨和也)

のんびりとドラマを見ていられない人は多い。

ちょっと目を離していると意味がわからなくなるドラマが苦手の人も多い。

そういう人は・・・ドラマを見なくてもいいんじゃないかな・・・と思う時がある。

あれ・・・平愛梨って亀梨和也の新婚の奥さんじゃなかったの?

あれは・・・擬装だよ。

なんで・・・擬装なんかするのよ。

社交辞令とかお愛想とかを勘違いしちゃう人が多いからだよ。

でっ・・・?

でって?

なんで擬装しなくちゃならないの・・・。

だから・・・亀梨和也がもう結婚してるって思えば勘違いした人もあきらめるだろうと。

・・・ああ・・・。

・・・。

・・・じゃ、平愛梨は本当はお姉さん?

だから、金子ノブアキのお嫁さんだよ。

え・・・金子ノブアキのお嫁さんはミムラじゃないの・・・だって子供いるし。

ミムラがお姉さんで未婚の母だよ。女の子(尾澤ルナ)のお母さん。

じゃ、男の子(君野夢真)は?

金子ノブアキと平愛梨の子供。

どうして、亀梨和也は子供の話になるとムキになるの。

生みの母親に捨てられたらしいよ。

じゃ・・・ミムラや金子ノブアキはなんでムキにならないの。

生みの母親に育てられたからだよ。

どういう意味なの?

だから・・・亀梨和也だけ母親が違うんだってば・・・。

変な家族・・・。

だから・・・そういう話なんだって・・・。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第2回』(日本テレビ20131019PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・狩山俊輔を見た。ゲストに小島藤子が登場。「リーガルハイ」の彼氏とやりまくりアイドル南風るんるん(小島藤子)からここである。クリスマス前に実年齢二十歳になる現在十九歳だが・・・「キミ犯人じゃないよね?」(2008年)で貫地谷しおりの妹役でデピューした直後、「キャットストリート」でカツアゲする女生徒を演じたのがこの路線を作っちまったかもなあ。いや・・・上手だからじゃね? 今回は高校中退して家出して出来ちゃった結婚して性風俗に売り飛ばされそうになっている女の子役なのだ。

それはさておき・・・「百科事典の謎」が解けて、父親・我南人(玉置浩二)の「ゲリラライブ」の後始末も終り・・・主人公・堀田青(亀梨和也)が思わず、禁酒の誓いを破った所で・・・。

「禁酒しましたっ」と誓った相手の女子大生・槙野すずみ(多部未華子)がやってくるのだった。

小説「浮雲/二葉亭四迷」によって結ばれ、お互いを憎からず思っている二人だが間が悪いのである。

なんとか・・・ごまかした青だったが・・・そこに仕事先の旅行代理店から電話が入る。

すずみを待たせていると・・・そこに祖父の勘一(平泉成)の幼なじみで神社の神主の祐円(ベンガル)が顔を出す。

またしても・・・「添乗員の青に旅先で優しくされて勘違いした女」が来たと早とちりした祐円は余計な口出しをするのだった。

「やめといた方がいいよ・・・あいつに甘い言葉をかけられたかもしれないが・・・そういうおしかけ女房はわんさかやってくるんだから」

「おしかけ女房?」

「違います・・・この人は違うんです」

「何が・・・違うんですか?」

立腹して立ち去るすずみに追いすがる青。

「僕はただ・・・君にお似合いの古本屋があると思ったから・・・」

「どうせ、古本屋がお似合いの女ですけどね・・・せっかく・・・いい本と出合えそうな気がしたのに・・・」

「だから・・・機嫌を直して・・・あ、あそこのたいやき屋・・・凄く美味いんだ・・・あれ食べて落ちついたら・・・もう一度、東京バンドワゴンに・・・」

「来週の土曜日なら・・・いいですよ・・・今日は本当に時間がないんです」

「じゃ・・・来週、この場所で・・・」

すずみは青が気になるし、青はすずみが気になるのだった。

相思相愛とは一生無縁の人にはうらやましい関係なんだろうなあ。

まあ・・・気の持ちようなんですけどね。

そうやって出会った二人もこじれる時はこじれますけどね。

でも、ラブがあれば大丈夫なんですけどね。

一方、町内では新たな火種が点火していたのだった。

若い二人のカップル。

「なんてことしてくれたのよ」

「だってしょうがないじゃないか」

いかにも頼りなさそうな夫の夏樹(落合モトキ・・・「あまちゃん」の若き日の保役からここである・・・金子ノブアキのおしゃれ小鉢キャスティングだと思われるが・・・なんかしでかさないことを神に祈りたい気持ちだ・・・)に札束を投げつける妻の玲井奈(小島藤子)・・・。

泣き出す赤ん坊のSAYOちゃんだった・・・。

何か・・・悪いことが起きそうな展開である。

「よりによって・・・オレオレ詐偽なんて・・・バカじゃないの」

「だけど・・・借金の返済日が迫ってんだよ」

「バカ・・・バカ」

「じゃ・・・どうしろって言うんだよ」

そんな・・・事件が起きているとは露知らない堀田家では和気あいあいと朝食風景が繰り広げられていた。

金曜日である。明日は・・・すずみと逢えると思うと胸がはずむ青だった。

父一人子一人のすずみは入院中の父親(升毅)を見舞い、果物を剥いていた。

「どうした・・・なんかいいことがあったのか」

「別に・・・」

しかし・・・すずみは微笑みが止まらないのである。

二人の愛は静かに進行しているのだ。

古書店「東京バンドワゴン」には隣の曙荘に住んでいる大学院生・増谷裕太(中島裕翔)が明治時代の百科事典の一種と言える「古事類苑」の全巻セットを売りにきていた。

裕太の祖父の遺品であるが・・・「金に困ったら処分していい」と手紙が添えられていたという。

手紙には掛け軸などの骨董品の写真も添えられていた。

「骨董品は・・・もう売ったんです・・・でも・・・古書は引きとれないと言われて・・・」

「事情はわかったけど・・・奮発しても十万円ってところだな」

「そうですね」

勘一の値踏みに同意する青の腹違いの兄・紺(金子ノブアキ)・・・。

しかし・・・裕太は落胆の表情を隠せないのだった。

「どうして・・・急にお金が要り用になったんですか」と聞く青。

「実は・・・母が・・・オレオレ詐偽にあって・・・百五十万円だまし取られてしまったんです」

「え・・・」

町内に二つのオレオレ詐偽は多過ぎるので・・・被害者が裕太と母。加害者は夏樹と玲井奈の夫婦らしい。

そして・・・運命の糸に操られて・・・まあ、基本は・・・我南人のLOVEが発動しているわけですが・・・乳飲み子を抱えて・・・玲井奈が東京バンドワゴン内のカフェ「あさん」がやってくるまだった。

さっきまで軒先でしりとり歌合戦をやっていたとは思えない我南人の影響力発動なのだなあ。

気がつけば・・・「あさん」の店内には・・・乳飲み子だけが取り残されていたのだった。

たちまち・・・激しく感情移入する青である。

捨て子を見たら自分にしか思えない心の病気を抱えているのである。

「僕もねえ・・・お母さんに捨てられたんでちゅよお・・・ひどいでちゅねえ」

その痛々しさに目をそらす・・・シングルマザー・藍子(ミムラ)だった。

しかし・・・店内に乳飲み子放置されて迷惑という発想は堀田一族には皆無なのである。

ひ孫世代の花陽(尾澤ルナ)や研人(君野夢真)までが捨てられたSAYOちゃんの世話に夢中なのだった。

「おしめは」

「もう変えた」

「ミルクは」

「もうあげた」

「ずるい~」

・・・なのだった。

「警察どうする・・・」

「もうちょっと様子みてからでいいんじゃない」

・・・なのだった。

消えた母親とは別に・・・もう一つの謎が発生していた。

裕太から買った「古事類苑」の一冊が・・・中身を長方形にくりぬかれていることが判明したのだった。

「昔は・・・拳銃隠してるみたいな映画があったな」

「まさか・・・」

「まあ・・・何かが入ってたんだな」

「一応・・・売った本人に聞いてみるか」

「本人も気付いてなかった可能性ありますね・・・彼は傷ものを黙って売る人間には見えなかったし」

「ご近所さんだものな」

「しかし・・・何が入ってたのかな・・・」

「何でしょうねえ」

祖父の勘一、孫の紺、そしてひ孫の研人は頭をひねる。

一方、我南人はすでにSAYOの母親・・・玲井奈を確保して、真奈美(片桐はいり)が女将を勤める堀田家いきつけの小料理居酒屋「こはる」に待機させていた。

「じゃ・・・この子の父親は・・・」と拳を握りしめる青。

「俺じゃないよ・・・俺の友達だよ」

「また・・・あんたの友達かっ」

蒼ざめる堀田家一同だった。

とにかく・・・事情聴取に向かう堀田一家。

「事情はどうあれ・・・子供を置き去りにするなんて・・・最低だ」とすでに拳を握りしめる青。

「あんたに・・・何がわかるのよ・・・」見ず知らずの男に罵倒されて激昂する玲井奈。

仕方なく藍子は玲井奈の耳元で伝家の宝刀を囁くのだった。

「ごめんね・・・あの子、捨て子なんで・・・悪気はないのよ」

それを出されたら捨て子以外は引き下がるのが礼儀なのである。

「借金が三百万円あって・・・バカ旦那が・・・よりにもよって私の母親からオレオレ詐偽をして・・・百五十万円もだまし取ったの・・・私、母親に返済するつもりで・・・家を出たんだけど・・・バカ旦那が追いかけてきて・・・そしたら我南人さんが・・・子供は預けて、ここに隠れろって」

「じゃ・・・連絡しなかった親父が悪いんじゃないか」

「そうだね・・・ちょっとラブじゃなかったね」

沈黙する一同だった。

「ちょっと待った・・・オレオレ詐偽って・・・君は・・・お兄さんがいるのかな」

「いますけど・・・」

呼び出される裕太だった。

「れ・・・玲井奈」

「ごめんなさい」

母の手で育てられた兄と妹だった。しかし、妹はぐれて高校中退後、家出をして二年ほど音信不通だったらしい・・・。

「なんだよ・・・子供まで作って・・・実の母親を騙すなんて・・・いい加減にしろよ」

「ごめんなさい・・・お金は返す・・・三万円くらい遣っちゃったけど・・・」

「金の問題じゃない・・・絶対、許さないからな」

「・・・」

「とにかく・・・今夜は遅いから・・・赤ちゃんとお母さんは家に泊まるといいよ・・・」

青の気分もなんとか収まるのだった。

翌日、勝手に「淑子」と名前までつけた赤ちゃんにLOVEを感じる青は玲井奈とベビー用品の買い出しに出かけるのだった。

約束の土曜日を失念してしまった青は新婚モードの姿をすずみに見せつけるのである。

「あ・・・」

「え・・・」

「こ・・・これは・・・ちがうから」

「なにが・・・ちがうのよ」

なんとか・・・誤解を解いた青は玲井奈を送った後ですずみとたいやき屋の行列に並ぶ。

「あなたが・・・店を継ぐの」

「え・・・」

「古書店」

「あ・・・兄貴がいるからね」

「そうなんだ・・・ちょっと残念だな」

「何が・・・」

「私・・・古書店で働いてみたいなって思ったから」

「でも・・・意外と大変だぜ・・・儲からないし」

「だけど・・・本に囲まれて暮らせたら幸せじゃない」

「じや・・・働いてみる」

「押しかけ女房にはならないわよ・・・あなた・・・私のタイプじゃないもの」

「君だって・・・ボクのタイプじゃないよ・・・ボクはもっとぼーんできゅーんでぼーんな」

「なんですって・・・」

爆発しそうな二人を金の音が鎮めるのだった。

二人は年間三万人目のお客さんに当選したのだった。

「やった・・・」

「やったあ・・・」

なんだかうれしくなる二人だった。

なんでだよ・・・と言われてもファンタジーだからとしか言えないのである。

「今度は・・・家に来てよ・・・」

「うん」

三度目の正直か・・・二度あることは三度あるかは来週の話である。

一方、「古事類苑の謎」は・・・三人の男たちによって解かれていた。

本の空白には・・・札束がピッタリだったのだ。

古物商にあたった紺は最近、「旧兌換銀行券1円」(通称・大黒1円)の取引があったことを突き止めた。状態にもよるが「大黒1円」は一枚七万円から三十万円ほどする代物である。

取引したのは・・・裕太が掛け軸などを売った骨董屋「成田堂」の主人・伊藤(松澤一之)である。

「お前さん、この世界じゃ、箪笥の中身は拾いものって言うけどさ・・・程ってえものがあるんじゃないか」

勘一は凄みを効かせるのだった。

「すいません・・・裏は花色木綿」

「落語かっ」

「出来心かっ」

「タイガー&ドラゴンかっ」

「大黒1円の裏面は彩紋だろうがっ」

骨董屋は数百万円を裕太に返金するのだった。

町内のことなので表沙汰にはしないのである。

「こはる」に夏樹が連行されてきた。

「あんた・・・どうするつもりなの」

「夏樹は遠洋漁業の船に乗ることになった」と宣言する我南人。

「私が手配しました」と元ホームレスのケン(光石研)と保証する。

「そんな・・・」

「おい・・・奥さんと子供を残して・・・いいのかよ」と合流した青。

「本当は嫌だけど・・・そんなこと言ったら・・・忠兵衛さんや漁業関係者に失礼だし」

「あまちゃんか・・・」

「おれ・・・心を入れ替えて・・・借金完済するまで働くよ」

「待てよ・・・」と裕太が金を取り出す。

「ここにおじいちゃんの遺産がある・・・税務署には内緒の金だ・・・三百万円はこれで返済しろ」

「お兄ちゃん・・・」

「半分は俺のだからな・・・いつか返してもらうぞ・・・」

「・・・」

誰もが「ラブだね」と我南人が言うだろうと思うところだが・・・言わないのがロッカーの生きる道らしい。

ああ・・・おじいちゃんが大黒1円を残してくれるなんて・・・なんて恵まれた兄妹なのか。

とにかく素晴らしいファンタジーなのだ。

しかし・・・勘一の妻や・・・我南人の妻が他界しているように・・・ファンタジーの世界にも人の死は訪れる。

「ええ・・・青が彼女を連れてくるって・・・」

「彼女とか・・・違うから」

堀田家の朝食で青はまんざらでもない顔をして・・・待ち合わせ場所に出かける。

その頃・・・すずみの父親は危篤状態に陥っていた。

山がある 

川が見える 

君と住んでた町がある

僕は月に 君は星に

キラリとポロリと 

光って溢れてコロがった

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Tbw002 ごっこガーデン・ンゴワドンバ京東セット。エリゆっくりとゆっくりと近づいて行く二人・・・時々、意地悪なことを言ってみたり言われたりするけれど・・・お互いが魅かれあっているのは以心伝心なのでスー。こういう恋って素敵なのでスー。いじめていじめられて愛は高まっていくのですかああああっ・・・二人だけの秘め事ではすまずに神様もちょっぴり悪戯な運命的参戦するのですね~。そしていつでもできちゃった結婚OKそうな・・・亀先輩のイクメンぶりにドキドキワクワク・・・じいや~、たいやき~、もっとね~まこなんとおおおおっ・・・本の中にお金が入っているとはああああ、盲点でした~、知らんかった~、びっくりだじょ~、じいや、まこは1000万円入りのやつか欲しいのでしゅ~、たいやきも食べるしたこやきも食べるのデスノートくう今回は・・・紺ちゃんと亜美ちゃんのことをちょっぴり前フリ~、堀田家にもまだまだ秘密があるんだなあ・・・まさにファンタスティック!・・・え・・・誰も死なないドラマじゃないの?・・・すずみパパ死ぬなよ~」ちーず青ちゃんLOVEの花陽のプンプンかわゆしですねみのむし秋ドラマのここまでを一言でまとめてみたよ・・・るるるシャブリかわゆしでありました~、小島藤子ちゃんもかわゆしでありました~ikasama4ですなmariLOVEがあるからこそ事件が幸せに解決するんですよね・・・

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2013年10月19日 (土)

六甲山~羽田空港アブダクション殺人事件を謎解く!(長澤まさみ)

「ヒル夫妻誘拐事件」は1961年に発生した米国における報道された最初のUFO誘拐事象として広く知られているノンフィクションである。

「べティ・アンド・バーニー・ヒル誘拐事件」とも言われ、ドラマ内の再現VTRで描かれるように当時は少数派だった白人女性ベティと黒人男性バーニーの夫婦が・・・ドライブ中のニューハンプシャー州グローブトンの南部でUFOを目撃後、記憶が混乱し、ニューハンプシャー州ポーツマスの自宅にいつの間にか戻っていた・・・という事件である。夫妻はピース空軍基地に電話をかけ、UFOとの遭遇を報告した。

その後、この事件は人々の関心を集め、真相をめぐって医師による催眠療法まで行われることになる。

様々な憶測が生じたが、もちろん未確認飛行物体に関わる事象である以上、真相は未だ未確認である。

バーニーは1969年に46歳で、ベティは2004年に85歳で逝去している。

二人のエピソードは「UFO事件」(1975年)、「ダークスカイ」(1996年)などでドラマ化されている。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)第2回』(テレビ朝日201310181115~)脚本・後藤法子、演出・秋山純を見た。「クロコーチ」で渡部豪太が全身剃毛の殺人鬼を演じており、こちらでも大久保佳代子が全身剃毛で擬似宇宙人化をするのかと思ったがしなかった・・・誰が剃るかっ。ちなみにペルセウス座流星群の見ごろは夏休み(七月下旬~8月下旬)頃である。母天体は周期133年のスイフト・タットル彗星で1992年に近日点を通過している。よって次回の再接近は2126年。現在は地球から遠ざかっている途中である。まあ、相当に長生きしないと次のピークには遭遇できない・・・できるかっ。

六甲山の展望スポットで車を停め車中で流星群を観測していた岩崎沙知(酒井美紀)と裕二(金子賢)夫妻は流星に願い事をした直後、意識を失う。

翌朝、羽田空港付近の岸壁で意識不明で発見された夫妻。後部座席には刺殺死体が同乗していたのだった。

二人は混濁した意識の中で・・・「グレイ型宇宙人」と「バナナ」を見たと証言するのだった。

早速、警視庁非科学捜査班(UIU)に捜査命令が下るのだった。

「痴情のもつれだ」と断言する表の班長・丹内刑事(竹中直人)だったが・・・裏班長の月子(長澤まさみ)は「そんな事件は普通の刑事にまかせておけばいい」と即座に否定するのだった。

「これは・・・宇宙人のからんだ・・・誘拐殺人事件に決まっている」のだった。

車内の死体は沙知の友人・堀美加子(長澤奈央・・・忍風戦隊ハリケンジャーのハリケンブルー)で・・・芦屋の資産家の娘であり、実業家の龍太郎(近江谷太朗)の妻だった。

ハッカーの浜中彩乃(高月彩良)の堀夫妻マンションの監視カメラの分析で、夫のアリバイは一応成立する。

「クロコーチ」では科捜研の澤(香椎由宇)と清家刑事(剛力彩芽)のキス・シーンがサービスされるがこちらにはないのだった。・・・挿入するなよっ。

裕二と美加子の不倫疑惑が浮上し、岩崎夫妻の容疑が深まる。

しかし、月子は痴情のもつれ説を完全に否定する。

「羽田空港と六甲山には重大な共通点があります」

「なにっ」と身を乗り出す前シリーズですでに都市伝説に汚染されている柴山刑事(平山浩行)だった。

「どちらもUFOの観測名所なのです」

「ええっ」

「米国では・・・これによく似たヒル夫妻誘拐事件が発生しています」

「そうなのかっ」

「米国では大統領就任の後で宇宙人代表との秘密セレモニーが行われているという噂があります」

「そんなことが・・・」

「柴山っ」・・・思わず叫ぶ丹内だった。

しかし、警視庁鑑識課の勝浦洋人(溝端淳平)は不思議な状況を発見する。

「この車、新車で・・・走行距離が100キロ以下です」

「馬鹿な・・・神戸から東京まで500キロはあるぞ・・・」

もちろん、月子の頭の中では灰皿型UFOに車が吸引される光景が炸裂しているのだった。

しかし、「痴情のもつれ」を匂わせる美加子の東京の愛人・城戸(高木万平・・・獣拳戦隊ゲキレンジャーのゲキブルー・・・ちなみに双子の弟・心平は役非公認戦隊アキバレンジャー)の存在が浮上するのだった。ゲキブルーとハリケンブルーのみだらな関係なのである。

スポーツ・ジムのインストラクターである城戸を訪ねた月子は・・・美加子が離婚後に結婚するつもりだった城戸が興信所に依頼した調査結果を示される。

そこにはホテルから一緒に出てくる美加子と裕二の写真があった。

写真を突きつけられた裕二は「ホテルには行ったが何もしなかった」と証言し、沙知の心は揺れ動く。

お互いに相手が犯人ではないかと疑い始める夫妻だった。

「でも・・・あの夜のことは・・・本当に何も覚えていないんです」

「あの夜、何が起ったかは必ず解明しますから」

月子の頭には宇宙人にアブダクションされる岩崎夫妻のビジョンが閃いているのだった。

勝浦くんは月子のマンションに夜の捜査会議に出かけるが出迎えたのは月子の妹・音無都子(秋月成美)だった。いきなりガッカリの勝浦くんだった。

しかし、月子の生足サービスは堪能する勝浦くんだった。

例によって・・・自腹で神戸風な現地に出張する二人。

堀夫妻のマンションで被害者の夫・龍太郎に面会すると・・・勝浦くんは鑑識行動によって・・・たちまちヒントを発見するのだった。

とんぼ帰りで東京に戻った二人は羽田空港付近で夜の張りこみを展開する。

そして・・・月子は蛍光色を放つUFOを目撃するのだった。

例によってUFOに導かれた月子は「バナナ急便」のトラックを発見するのだった。

「バナナよ」

「バナナですね」

埠頭に集められた関係者一同。

「美加子さんは沙知さんにとってちょっと自慢の友達だった・・・しかし・・・ちょっと悪い友達でもあった・・・親友の新婚の夫にわざと手を出すような・・・美加子さんに誘惑された裕二さんは・・・沙知さんのためを考えて、美加子さんと距離を置くようにと沙知さんに告げるため、美加子さんを六甲山に呼び出していた。一方で美加子さんの夫は事業に失敗し、美加子さんからは離婚を切り出され、窮地に追い込まれていました。勝浦くんが龍太郎さんの多額の借金の督促状を発見してしまったのです。実は岩崎夫妻の身体からは長期間の酩酊・催眠状態を誘発する脱法ハーブの成分が発見されていました。龍太郎さんは先廻りして車内の岩崎夫妻に密やかにハーブを吸引させ、美加子さんを待ち伏せして刺殺。二人と死体を乗せた車ごとバナナ急便のトラックに乗せて羽田空港付近の埠頭に運び自身は始発の旅客機で自宅に戻り、監視カメラの死角を利用したアリバイ工作をしたのです」

「くそっ・・・」と驚愕する龍太郎。

「ヒル夫妻誘拐事件にヒントを得たあなたは酩酊状態の岩崎夫妻に荷台に装備したプロジェクターでその類の映画を見せたのです。トラックの持ち主、空港の監視カメラ・・・すべての証言や証拠はそろっています・・・都市伝説を利用した悪行三昧・・・けして許せません」

逮捕される龍太郎だった。

「かわいそう・・・美加子は・・・なんでも持っていたのに・・・いつも満足できない子だった・・・」と沙知。

「憎めない人だったんですね」と月子。

「ごめんなさい・・・あなたを疑ってしまって・・・」

「そりゃ・・・僕も同じさ・・・」

新婚夫婦はそっと寄り添うのだった。

「しかし・・・残念でしたね、月子さん・・・UFOが無関係で・・・」

「何言ってるの、勝浦くん・・・すべてを知っている宇宙人が私たちをバナナ急便のトラックに導いてくれたんじゃないの」

「・・・」

埠頭を風が渡るのだった。

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シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の都市伝説の女 PART2

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2013年10月18日 (金)

海の上の診療所の看護師(武井咲)男はつらいよ的な医師(松田翔太)初代マドンナなんですーっ(加藤あい)

別に「独身貴族」が面白くないわけではないのだが・・・秋ドラマもほぼレビューのラインナップが決まりかけてきて・・・谷間が欲しいわけである。

(月)「八重の桜」

(火)・・・未定

(水)「リーガルハイ」

(木)・・・未定

(金)「都市伝説の女 Part2」

(土)「東京バンドワゴン ~下町大家族物語」

(日)「安堂ロイド ~A.I. knows LOVE?~」

(火)には「ミス・パイロット」が当落線上に残っていて、「変身インタビュアーの憂鬱」と戦うことになる。

で、敗れた方が(木)にくる可能性は高いのだが・・・(木)には「彼岸島」も待っているのだった。

こうなると・・・「独身貴族」が生き残る可能性はほぼない。

なにしろ、「クロコーチ」はレビューもないのである。

だから・・・今回は月9を一応、書いてお茶を濁しておく。

このままだと・・・秋ドラマの谷間はないわけだが・・・。

まあ、毎年、そうなんだけどさ・・・。

で、『海の上の診療所・第1回』(フジテレビ20131014PM9~)脚本・徳永友一、演出・中谷功を見た。脚本家は可もなく不可もない若い人だが・・・少し、丁寧すぎるタイプでもあると見ている。ある意味で・・・この作品は正念場だと思うのでがんばってもらいたい。「男はつらいよ」をどこまで研究してくるのかも興味深い。全作見るだけでも一苦労だからな・・・。ちなみに「男はつらいよ」はドラマ版が1968年、映画版が1969年にスタートしている。この時、フーテンの寅を演じる故・渥美清は40歳で、すでに大スターであった。しかし、昭和三年(1928年)生まれの渥美清に対し、寅は昭和15年生れのキャラクター設定になっている。だから・・・少なくともシリーズ初期は28歳くらいの設定なのである。今回の寅さん的な主人公・瀬崎航太(松田翔太)の設定年齢が29歳というのはつまりほぼ正解なのだ。ちなみに演じる松田翔太は実年齢・28歳なのである。

ついでに・・・ほぼ・・・寅さんの妹・さくらをイメージしている看護師・戸神眞子(武井咲)は血縁でないために恋愛対象になるが「男はつらいよ」にも近親相姦的なニュアンスがないわけではないので・・・ギリギリ、クリアである。

先輩医師の葵(藤原紀香)と葵の夫で巡回診療船「海診丸」の事務長でもある晃(荒川良々)は「おばちゃん」と「おいちゃん」にあたるわけである。

そして、船長の海藤剛(寺島進)は「御前様」なのである。

こうなると・・・もう一人の看護士・三崎昇(福士蒼汰)が・・・寅の弟分の源公(佐藤蛾次郎)であることが明らかになってくる。

冒頭で眞子の跳び蹴りの御開帳によって彼女の局部を視認した航太にすりよる昇のシーンはまさに・・・寅さんと源公になっていて・・・なかなかなのであった。

「あの・・・あの・・・」

「なんだよ」

「昨日、ま、眞子さん・・・バ、バスタオル一枚だったんでしょ」

「ああ・・・」

「で・・・あの・・・その・・・」

「ああ・・・」

「み、見ましたか」

「ふふふ・・・見たよ」

「ど、どうだったんですか・・・」

「どうって・・・なかなかのもんさ」

「じゅるじゅるじゅるっ」

・・・なのである。・・・おいっ。

まあ、最後でぱっくりと両手を開いて眞子本人に「女として立派なものを持っている」と航太が率直な感想を述べるのは現代的にはギリギリ、アウトだと思う。

「男はつらいよ」シリーズでは冒頭に「寅さんの夢」が描かれるのだが・・・ここでは「暗い森の中を彷徨う航太」がミステリアスに描かれている・・・巡回診療船に乗り込んでくる以前に何かがあったのは間違いなく・・・最後に登場する航太を捜す女(戸田恵梨香)との関係に「謎」を匂わせるわけである。あまり・・・そういう「奇」をてらわない方がいいと思うが・・・「ライアーゲーム」の「秋山さん」と「直ちゃん」なのでそれなりに気になります。ちなみに・・・武井咲も荒川良々もゲーム参加者だ。

大小あわせて700ほどの島々が存在する瀬戸内海。ほとんどが無医島である。そのために・・・巡回診療船が病院の代わりを務めているのだった。

その募集に応じてやってきたのが・・・腕はいいが・・・女性に惚れっぽく・・・ものすごい妄想癖のある問題医師・航太なのであった。

ヤンキーあがりの看護師・眞子はその胡散臭さに警戒心を強めるのだった。

初対面で風呂上がりの眞子を変態的な視線で見つめた航太は跳び蹴りを食らい失神するが、蹴られても股間から目を離さないのだった。

最初に訪問したのは千登勢島である。

上陸して・・・巡回診療を行った航太は早速、島の娘・村上美月(加藤あい)に一目惚れし、翌日の祭りの夜にプロポーズしようと決意するのである。

ま・・・「あの野郎・・・バカだね・・・本当にバカだね・・・」とキッチンで事務長がみんなに言っているとロッカーの中から航太が出てくるというシーンが早く見たいところです。

美月の父親(片岡鶴太郎)は後継者がいないので造船所を閉めようと考えており、娘との間に葛藤があるわけですが・・・航太は即座に医師を止めて婿入りすることを・・・一人で勝手に・・・決断するという展開。

一方で・・・祭りで披露する太鼓の練習中に腕を痛めた青年・拓也(高橋努)も診察した航太は・・・拓也が祭りの夜にプロポーズしようとしていることを知り、強い仲間意識を感じるのです。航太は付添の拓也の姉・和子(高橋かおり)をその相手だと誤解します。

まあ・・・もう・・・後は・・・言わないでもわかる展開で・・・日本人はお盆や正月にこれを見ないと気が済まない人多数なんですな。キッドは「男はつらいよ」的な心情はもうひとつピンとこないわけですが・・・嘘をつくなよっ。

美月と拓也が相思相愛だと悟った・・・航太。

「え・・・どういうこと・・・どういうわけ・・・なにが・・・どうなってそうなるの」

眞子は呆れつつも・・・少し微笑ましい気持ちになるのだった。

こうして・・・第一の島・千登勢島を出港する海診丸だった。

次のマドンナは篠田麻里子(27)らしい。・・・なんか・・・凄く楽しみだ。バカがおりこうさまって誉めてもらえるといいと思う。

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2013年10月17日 (木)

そんなに私に好意があるの?(新垣結衣)嫌い嫌いも好きのうち!(谷村美月)

早くも主人公がタイトル落ちかよっ。

分かる人には分かるから・・・。

ま、「リーガル天才(堺雅人)VSマイブーム天才(佐藤隆太)」じゃ、昭和の漫才とかみうらじゅんの匂いがするしな。

久しぶりに楽しい佐藤隆太でホッとするよね。

とにかく・・・出演者が楽しそうっていうか・・・その特質を研究されているのが「リーガルハイ」・・・。

「山南敬助(堺雅人)切腹!VS望月亀弥太(三宅弘城)自害!」もあるけどな。

・・・「新選組!」かっ。

いや、三宅弘城は「怪物くん」のお巡りさんだろう・・・。

いやいや・・・「帰って来た時効警察」元アイドルのものまね師丹波ゴローさんですよっ。

いやいやいや・・・「トリック劇場版」の上田の同級生臼井じゃね・・・。

・・・もう、いいか。

で、『リーガルハイ(第二期)・第2回』(フジテレビ20131016PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。安藤貴和(小雪)を被告とする「運輸会社社長殺人事件&社長令嬢殺人未遂事件」の二審で・・・被告本人の裏切りで・・・敗訴した・・・古美門研介(堺雅人)&黛真知子(新垣結衣)ペア・・・ペアなのか・・・このまま負けるわけにはいかないので安藤貴和に上告を促す二人だったが・・・貴和は首を縦にふらないのだった。

古美門弁護士のはじめての敗訴は事務所の経営を逼迫させていたのだった。

そんな古美門に・・・忠実な執事・服部(里見浩太朗)は動画サイト「youjoy動画」の情報を提供する。

時代が生んだホリエモンのような天才と謳われた鮎川光(佐藤隆太)のインタビュー番組だった。

最近、黛が愛読しているマンガ「破壊の天才」のモデルと噂される人物である。若くして成功した実業家が金に溺れて身を滅ぼしていく姿を黛は古美門に重ねていることは間違いないのである。

鮎川はインサイダー取引および25億円の所得隠しの容疑で逮捕され懲役2年5カ月実

刑判決を受け刑期を終えて出所してきたのだった。

「鮎川さん・・・今後のご予定は・・・?」

「訴訟を起こすんですよ・・・東都新聞、太陽新聞、週刊現実・・・僕に対する名誉毀損で・・・みんな訴えてやるんです」

犯罪の事実とは無関係のあることないことを書かれた鮎川は・・・バッシングを許さないのだった。

「すでに・・・あちこちの事務所に・・・訴えられた方からの依頼が殺到しているようです。すでに35件の訴訟案件が・・・」

「うまい」

「何がですか・・・」

「鮎川の代理人になって勝って勝って勝ちまくってやる」

しかし・・・古美門と面会した鮎川は・・・。

「お断りします」

「・・・え」

「僕は・・・自分の裁判で弁護士に会って・・・みんな馬鹿だってわかりましたから・・・裁判は自分でやります」

「本人訴訟ということですか」

「ええ・・・あなただって・・・最近、負けたんでしょ?」

「じゃ・・・なぜ・・・私と会ったんです」

「敵情視察ですよ・・・個人的には・・・先生に興味があるんです・・・法廷で戦う相手としてね」

まさに・・・もう一人、古美門がいたっ・・・と黛は思うのだった。

すでに連載が終了しているマンガ「破壊の天才」(ガーデン出版)の作者・玉川たま(谷村美月)は次の作品のアイディアがまとまらず苦悩していたが・・・ふってわいたような鮎川からの訴訟に愕然とする。ここでアイスキャンデー仰向け食いのサービスがあります。

出版社が弁護を依頼したのはの羽生晴樹(岡田将生)や本田ジェーン(黒木華)が立ち上げた弁護士事務所「NEXUS」だった・・・。

そして・・・古美門の元へは・・・鮎川に訴えられたブロガー・親の年金で生活しながらモラルの低下を嘆く常識人チェリーボーイじゃなかったイノセントボーイこと猪野義孝(三宅弘城)がやってくる。

しかし・・・古美門は動かず・・・案件は黛の手に委ねられるのだった。

おそらく、貴和との面談で・・・夜の性生活についてのデモンストレーションで腰を振り過ぎたためだと思われる。そういうのはある日、突然来るからねえ。

先発した「NEXUS」のザクをいかにも愛しそうなガラクタ弁護士の磯貝邦光(古舘寛治)は「テレビ番組のコメンテーターによる名誉棄損」の案件で鮎川に惨敗を喫する。

危機感を覚えた羽生は・・・古美門に共闘を申し込むが、鳥取県のヒッピー村生まれの本田元検事との「古美門ヨイショ」も虚しく・・・拒絶されるのだった。

古美門は腰痛だからだ。

古美門は精神的なリハビリのために腰フリの神様ゲロッパに祈りを捧げるのだった。

黛弁護士、イノセントボーイを弁護する!

法廷でツイートするイノセントボーイを叱責する黛。

・・・イノセントボーイ・・・

・・・法廷なう・・・

しかし、スマホを叩かずにはいられない猪瀬(イノセ)だった。

「当ブログは閲覧者が一日平均25人の極めて社会的影響の少ないブログです」

「黛先生、あなたは勉強不足のようだ・・・最近の最高裁の判例をチェックしてみなさい・・・素晴らしいインターネットの世界だから何を言ってもいい時代はとっくに終わっている。とっくに終わった人間がいざとなったら自爆覚悟で発言するならまだしも・・・まともな市民生活を営む人間ならまともな市民生活を営む人間に対する常識的配慮があってしかるべきとは思いませんか。つまり、この人は毎日、25人の人間を集めて僕の悪口を言ってるわけでしょう。立派な名誉棄損じゃありませんか」

「ぐ・・・」

・・・イノセントボーイ・・・

・・・女弁護士使えねえええっ・・・

傍聴するゲロッパ(ジェームス・ブラウン風古美門・・・変な田辺誠一ではない)は黛を嘲笑するのだった。・・・復活の兆しである。やりこめてられて、かわいいよ、ガッキーかわいいよ炸裂である。

ウインウイン羽生、漫画家を弁護する!

「僕は父の仕事の関係でアラブの世界にいたのですが・・・そこでこんな話を聞きました・・・暑い時には日陰をみつけろ・・・と」

「どういう意味ですか」

「さあ?・・・ただ鮎川さんの怒りは見当違いじゃないかと思うんです・・・これはマンガです。フィクションなんです。ノンフィクションじゃないんですよ。ここに描かれていることとあなたとは無関係なんですよ。あなたは・・・ちょっとした勘違いをなさっているんです。そんなことでお互いに争うのは不毛じゃないですか」

「これは素晴らしいインターネットの世界の某サイトにあるこのマンガに対するレビューです。一部、ご紹介しましょう・・・鮎川光の本性を知ることができる一冊・・・鮎川の悪事についてよくリサーチしている・・・このマンガで鮎川がひどい奴だと知った・・・」

「それは・・・一部の例外的意見なのではありませんか」

「私の小学校の恩師がこのマンガを私の元に送って来ました・・・同封された手紙にはこうありました・・・自分がどこで道を誤ったか、描かれた自分の人生を読んでふりかえれ・・・と」

傍聴するゲロッパは興奮し、ついに腰の痛みを忘れるのだった。

羽生は何を考えているか分らない例の微笑みで応じるばかりだった。

とにかく・・・鮎川は・・・ゲロッパをリーガルハイ(法廷闘争で心が燃えあがって恍惚となること)にしたのである。

古美門先生、アイスキャンデーを味見する!

しかし・・・口に合わなかったようだ。

敗訴を覚悟する玉川を叱咤激励する黛。

「玉川たま先生・・・ファンです・・・自主回収なんて・・・ダメですよ」

「でも・・・どうせ・・・ヒットせずに打ち切られたマンガだし・・・」

「・・・あんなに面白いのに・・・」

「私にとっても勝負作だったんです。お金のためなら何をしてもいいと思っている最低の奴が叩きのめされる・・・そういう話を描きたかったから」

「そのテーマには共感しませんが・・・天才気取りが本物の天才に叩きのめされる物語ならご覧にいれましょう・・・賠償金を払うくらいなら弁護料を払いなさい・・・それであなたの名誉は守られる」とついに復活する古美門。

「先生・・・一緒に戦ってくれるんですね」と歓喜する黛。

「君はブログバカ担当だっ」

「ぐ・・・」

仕方なく劇場版では良い奴らしいバカブロガーを説得する黛・ヒッピー組。

「あなたのケースは戦っても勝ち目はない」

「負けを小さくする方向で進めましょう」

「いやだ・・・世の中のために断固として戦う」

「あなたのために言ってるの・・・」

「世の中とあなたはほぼ無関係なんだから・・・」

「ひでぶっ」

泣きながら夜路を駆けるイノセントボーイだった。

古美門、原告本人尋問でフィクションをノンフィクションと主張する!

ついに・・・法廷で対峙する・・・鮎川と古美門・羽生ペア。

「少年時代から神童と呼ばれた主人公はその才能を金もうけに使い、巨万の富を得るが人間的な心を失い、仲間を裏切り悪行の限りを尽くし、そして、とうとう逮捕され身を滅ぼす。この物語のいったい何が問題なんでしょうか?」

「だから・・・それは私がモデルだから」

「その通り・・・誰が見たってあなたですよ。どのエピソードもあなたの実話とほぼ一致する」

「だから・・・名誉棄損だと・・・」

「名誉棄損?・・・まさか自分はこんな人間ではないとでも・・・あなたはこのマンガに描かれた通りの人間ですよ・・・気持ち悪い表情も、冷たい目付も、いやらしい笑い方もね」

「それこそ・・・名誉棄損だろう」

「幼少期よりちやほやされ周りを見下し才能を自慢したくてしかたがない。貧乏育ち故に金に溺れ女に溺れ調子こいて下手を打ってろう屋にぶち込まれたまぬけ。まぎれもなくあなた自身じゃないか・・・この作品があなたの社会的評価をおとしめたって・・・それはないでしょう・・・この作品が発表されたのは一年半前・・・あなたはどこにいましたか」

「・・・刑務所です」

「そうです・・・社会的評価はすでに地に落ちてました。このマンガはその事実をありのままに描いただけ・・・あなたの名誉を毀損することなんかできないんですよ」

「フィクションは一つもないと・・・」

「ありません・・・あなたの名誉を毀損したのは・・・あなた自身に他なりません。そもそも・・・あなたは規制反対主義者だったはずだ・・・何よりも自由を愛したあなたが・・・自分が批判された途端、規制主義者に身を落す・・・こんな裁判やってること自体が・・・あなたの名誉を毀損しているのです」

「・・・」

「表現の自由を否定するなら・・・どこぞの独裁国家へ亡命することをお薦めしますよ。きっとあなたは言うでしょう。素晴らしい・・・誰もあなたの名誉を毀損しない・・・なぜならみんな一言もしゃべらないから」

古美門は圧倒的優位にたった。

このままでは・・・ウインウインではなく古美門の一方的な勝利になってしまう・・・羽生はそれが気に入らなかった・・・自分の理想とは違うからである。

そこで、ニートのヘイトスピーカー(差別意識と偏見に満ちた憎悪に基づく主張をたれながす狂人)の弁護人を解任されたヒッピーが資料から問題点を指摘する。

「第27話は大丈夫でしょうか・・・企業買収に躍起になって株の取りまとめに走る主人公が孫請けの小さな町工場に目を付け株を手に入れると真っ先に切り捨てるエピソード・・・工場は倒産、社長は失意のあまり自殺・・・しかし・・・こんな事実はないでしょう」

「フィクションだということですか」

「次は玉川さんの本人尋問です・・・鮎川にこの点を突かれたら・・・」

しかし・・・古美門はすでに草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)に調査を命じていた。

「玉川たまの実家は平山部品加工という小さな町工場で鮎川氏が買収した豊和エレクトロンの孫請けで八年前に倒産してるのさ」

「自分の家の話なのか・・・」

「父親は自殺しているのか」

「借金しまくって詐欺まがいのことまでやって実刑はまぬがれたけど自己破産・・・田舎でひっそりと暮らしているよ・・・」

「自殺していなくても社会的には死んだも同じだ。その程度の脚色は許容範囲と主張する。肉を切らして骨を断つのだ」

「しかし・・・それでは双方に傷が残ります」

「甘い・・・競輪はひとりぼっちのギャンブルだ・・・最後のジャンがなったなら、残り一周半・・・こいでこいでこぎまくり、まくってまくってまくりまくる・・・カンカンカン・・・」

「先生・・・これは裁判です・・・だれが孤児となった主人公が血のにじむような努力の末、競輪選手となっていく過程を描いた熱血スポーツ漫画ひとりぼっちのリンなんですかっ」

このままでは・・・古美門が勝つと確認した羽生は・・・鮎川にコンタクトをとり・・・和解を持ちかけるのだった。

さらに・・・自分の理想をこよなく愛する羽生は黛の胸をめがけてパスを送りながら勧誘を再開する。

「古美門先生のやり方には限界がある・・・黛さん、うちの事務所にきてください」

「先生の理想は素晴らしいですが・・・やはり・・・無理があります。私たちの仕事は依頼人の権利を守ることですから」

「いいや・・・黛先生こそ・・・私の事務所にもっともふさわしい人だ」

羽生・・・ひょっとしたら・・・黛をも凌駕するどうしようもないバカの中のバカなのかもしれないな。

しかし・・・当然、鮎川は逆襲に転じるのだった。

鮎川、玉川の復讐心を暴く!

「玉川たまさん・・・いや、平山泰子さん・・・あなたは・・・平山部品加工のお譲さんですね・・・セーラー服の似合うかわいい女の子だったのを覚えています。確かに私はお父さんとの約束を反故にしました・・・しかし、それがビジネスなのです。契約違反でも違法でもありません」

「あなたは・・・詐欺師じゃない」

「詐偽をして逮捕されたのはあなたのお父さんではありませんか。そのお父さんは今、田舎でのんびり暮らしている。それが・・・ノンフィクションですか・・・事実を完全に捻じ曲げ、私を人を死に追いやった極悪非道の男に仕立て・・・個人的な復讐心を果たそうとする・・・そんなことができるのは・・・あなたが詐欺師の血を引いているからですか」

古美門は悟った・・・羽生が鮎川に・・・情報をリークしたことを・・・。

とりあえず古美門の顔はくしゃくしゃになるのだった。

「説明したまえ・・・ミスター・ウインウイン」

「私はただ・・・このままでは誰も幸せになれないと思ったのです」

「君は・・・鮎川という男を理解していないのだ」

「・・・」

「初めから名誉なんてどうでもいいやつなんだよ。あいつは金もうけにも何の興味もない・・・やつにとって裁判はただのマイブームだ」

「マイブーム」

「マイブームって」

「マイブームなの」

「司法試験を受けなくても弁護士プレーを楽しめる方法が1つある」

「本人訴訟」と黛。

「せえいかああああい」と凄む古美門だった。

「しかし・・・そんな奴とどう戦えばいいんですか」と羽生。

そこで・・・服部がヒントを提示するのだった。

「しかし・・・この作品・・・主人公はなかなかに魅力的ですな」

「え・・・悪人なのに・・・」

「悪は時に魅力的ですからな・・・品行方正なお嬢様がチンピラに恋をするように」

「なるほど・・・」・・・一瞬で勝機を察する古美門だった。

ノーガードの打ち合い、天才が楽しめるのは天才相手のゲームだから!

「そもそもこの作品は鮎川さんの名誉を棄損しているのか」

「いまさら・・・何を・・・」

「名誉棄損とは何か?・・・本人が傷付いたかどうか?・・・表現者に悪意があったかどうか?・・・いいえ、法的にはそうではありません。それを受け取る多くの人々がどう感じたのか・・・なのです」

「・・・」

「ランダムに選んだ読者240人にアンケートをとりました。この主人公に魅力を感じるか?・・・という質問に対しては・・・なんと70%以上の人が感じると答えているのです。つまり・・・この作品は・・・鮎川氏の評価を高めていると断言できます。確かに・・・玉川さんは・・・鮎川氏に悪意を抱いていたかもしれない・・・しかし、それだけでは魅力的な主人公は描けません。玉田さん本人には自覚はないかもしれません・・・しかし、明らかに玉田さんは鮎川氏に恋をしています・・・」

「恋」

「恋って」

「恋なの」

「しかし・・・町工場の社長が自殺したと聞いた主人公はパーティーを開いて笑い転げます。私はこんなことはしません」

「次のシーンで主人公は一人夜に佇む孤独な姿を見せます・・・女子のハート鷲掴みではありませんか」

「主人公は部下を殴ります・・・私は殴りません」

「なんてアツい男なんだと男を漢と書きたがる男子のハート鷲掴みではありませんか」

「逮捕されて恋人に泣きながらすがりついたりしません」

「だめんずウォーカー爆死ではありませんか」

「マゾヒストとして首輪をされて鞭でたたかれるなんてことはない」

「SMマニアには垂涎の的ではありませんか」

「ぐ・・・」

「この作品はあなたに捧げるラブレターと言っても過言ではないのです」

「・・・う」

「さあ・・・どうした・・・もうおねんねかい・・・裁判に遊びも趣味もない・・・売られた喧嘩は買うまでだ・・・勝つか負けるか・・・最後までこいや」

「ふ・・・望むところだ」

「じゃあ・・・続きをやろうぜ」

「私はこんな変な髪形じゃないぞ」

「分け目は大体一緒でしょ」

「分け目かよっ」

二人のやりとりを見て喜びを感じる黛。羽生は穏やかではない気持ちを抱くのだった。

鮎川は燃え尽き、黛は新境地を開く!

ライバルとの白熱の戦いを終えた鮎川はすべての訴訟を取り下げたのだった。

鮎川の裁判ブームは去ったのである。

そして・・・その燃える心は海底資源へと向かったのだった。

「今、ダイビングに熱中しています」

「それは南部ダイバーだろうがっ」

「何の用ですか・・・」

「あなた・・・彼女のことを・・・覚えていましたね・・・最初から、彼女にエールを送ることが目的ではなかったんじゃないかとふと・・・思いまして」

「まさか」

「彼女のマンガ・・・裁判で話題になって連載が再スタートするみたいですよ」

「彼女にあったら伝えてください・・・今度はもっと足を長く描いてほしいって」

・・・古美門と黛は再び貴和に接見する。

「何の用なの」

「私・・・気がついたんです・・・あなたが私たちに冷淡なのは・・・何かを隠しているからだって」

「・・・」

「罪の意識・・・死への恐怖・・・あなたの心にある泥を私たちに投げつけてください」

「言いたくないことは言わないし・・・嘘をつくかもよ」

「むしろ・・・その方がいい・・・上告さえしてくれれば・・・必ず勝つ」

「・・・」

服部はささやかなお祝いのディナーを古美門と黛に供する。

「私、わかったんです・・・先生の深層心理にある私への好意が罵詈雑言となって表れているってことが」

「どうすればそんな都合のいい解釈ができるんだ。好意などミジンコの鼻くそほどもない。バカだからバカだと言ってるだけだ。ぽんこつ、がに股、提灯パンツ!・・・直球で ののしってるんだよ!・・・CTスキャンで脳みそに虫が湧いてないか・・・調べてもらえ!」

「私って・・・こんなにも愛されていたんですね」

微笑む服部だった。

ああ・・・この愛すべきリーガルハイの世界よ・・・。

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2013年10月16日 (水)

ミス・パイロット・・・紙飛行機って必ず墜落しますよね?(堀北真希)

あはははは・・・やっぱり、書くんだね。

そりゃ・・・書くさ。

堀北真希も気がつけば・・・25歳か・・・。

久しぶりのフジテレビ・・・。

「梅ちゃん先生」で・・・ようやくメジャーになったんだよな。

日本テレビで「野ブタ。をプロデュース」、TBSで「クロサギ」、フジテレビで「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」と確実にヒットを飛ばしているのに・・・。

その後のプロデューサーが確実に使い方を間違えるんだよな。

っていうか、事務所の選択ミスじゃないのかっ。

そういう意味で「梅ちゃん先生」は正しいよね。

うん、王道だものね。

どこまでも・・・ただひたすらに「かわいい」・・・それでいいんだよね。

そういう意味で今回は・・・大成功じゃないか。

さあ・・・木曜日がいよいよ・・・サバイバルに突入するな。「独身貴族」風前の灯じゃないか・・・。「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」なんかもう・・・消えてるんだぜ・・・。

で、『ミス・パイロット・第1話』(フジテレビ20131015PM9~)脚本・櫻井剛、演出・澤田鎌作を見た。映画「ハッピーフライト」(2008年)でおなじみの全日本空輸、全面協力である。脚本家は「マルモのおきて」、「PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!〜」(いずれもフジテレビ)が評価されてここだな。日本テレビシナリオ登竜門大賞(2001年)なのにな。苦節の日々がこのドラマで花開くといいよね~。演出はエースかまさく・・・そろそろ当たりを引いてもらいたい。ずっと頭が「不毛地帯」になってるからな・・・。

2008年の就職戦線・・・おーい、遡ってるぞ~。

こ、これは・・・あまちゃん方式かっ・・・そこで来たかっ。

東京・蒲田にある・・・そこは梅ちゃんか・・・居酒屋「ひばり」の一人娘の手塚晴(堀北真希)は来春の卒業を控え、猛烈に就職活動中である・・・。

しかし・・・一次面接を突破出来ず・・・「不採用通知」をシュレッダーにかける日々なのであった。

だが、父・茂雄(石倉三郎)と母・よし美(根岸季衣)は暖かく見守ってくれる。

そして・・・店を手伝う晴(はる)は天真爛漫ながら・・・非凡な才能を見せるのだった。

客の注文は間違わないし、お勘定の暗算は達者で、愛嬌があって、体力もあるのだった。

いかに・・・世の中の就職担当者の見る目がないか・・・という話なのである。

ちがうだろう・・・ドラマだからだろう。

特に何かになりたいわけではない晴は業種を問わずに受けるのだった。

その中に社員パイロット育成の募集も紛れ込んでいたのだった。

全日本空輸のパイロットはおよそ2500人、その中で女性パイロットは20名程度・・・。

ただでさえ倍率が高いのに・・・さらに難関コースである。

その第一次面接で・・・質問が許された晴は・・・。

「飛行機に乗ったことがなくても・・・パイロットになれますか?」と問うのだった。

フジテレビのドラマなのでちゃらちゃらしているが・・・最年少機長の国木田孝之助(斎藤工)は苦笑しつつ答える。

「パイロットになれば・・・毎日・・・乗れます」

「パイロットに一番必要なことはなんですか」

「体力です」

・・・体力には自信のある晴だった。

晴と教官の運命の出会いである。

面接官の一人でパイロット訓練センター・副センター長の篠崎機長(岩城滉一)は直感で二人の運命の出会いを感じるのだ・・・違うだろうっ。

そんな晴は就職活動仲間に女性を見出し・・・気楽に声をかける。

「友達になってくださいよ」

「あなた・・・クラブ活動・・・体育会系じゃなかったわね・・・私、弓道部・・・上下関係に厳しいの・・・あなた・・・大学生でしょ・・・私は大学院生なのよ」

「そんな・・・採用されたら・・・同期じゃないですか」

超エリートの小田千里(相武紗季)である。もはや・・・こういう役のスペシャリストなのかっ。

晴と宿命のライバル・・・運命の出会いだった。

そんな二人をナンパしてくる岸井泰治(間宮祥太朗)・・・「ウルトラゾーン」の「不良怪獣ゼットン」でチボ高生徒のナオキである。大出世じゃないか・・・。

しかし、岸井には嫉妬深いおっかけ彼女・阿倍野すず(桜庭ななみ)がついてくるのだった。

岸井が採用になると羽田空港第2ターミナル・グランドスタッフになってしまうという徹底した追っかけ気質のすずだった。

ちなみにグランドスタッフの先輩には教官・国木田機長にお熱の鈴木倫子(菜々緒)が配置されている。

物凄くゴージャスな脇役配置になってます。

まあ・・・そこはどうでもいい感じですが・・・晴・岸井・すずのトライアングル、晴・国木田・倫子のトライアングル、晴・国木田・千里のトライアングルと・・・すでにトリプルで三角関係の発生が予想されます。

郵送されてきた・・・合否通知を早速、シュレッダーにかける晴・・・しかし・・・一次審査を通過していた晴でした。

晴に風が吹いて来たのです。

続けて・・・バネの製作会社「宮田製作所」の内定が出ました。

面接したのは宮田社長(鶴見辰吾)・・・梅ちゃんの叔父・立花陽造ですから・・・ある意味、縁故採用です。

しかし・・・第二次・第三次と面接を通過する中で・・・操縦シミュレーションを経験した晴の心の中に「空を飛ぶ思い」が生じていたのです・・・おいっ・・・梅ちゃんになってるぞ。

擬似コクピットの中で・・・自分で空を飛んだ晴は・・・。

涙が止まらなくなってしまうのでした。

いつか・・・本物の空を飛びたい・・・その気持ちが爆発します。

しかし、はじめての擬似フライトをなんなくこなす晴に・・・二人の教官は驚きを感じていたのだった。

面接試験で紙飛行機をグループで作って飛ばす課題・・・。

紙飛行機の折り方を仲間に教わる晴。

「みんなの足をひっぱるだけでした・・・」

そんな晴に陽造おじさんは・・・違うだろう。

「そういう場で素直に教えてもらえるってたいしたもんだよ。どんな仕事だって最初は教わらなきゃできねえんだから・・・」

しかし・・・ライバル千里は厳しい言葉を投げつける。

「空を飛ぶのが夢になったですって・・・何、甘いこと言ってんの・・・パイロットってのは多くの乗客やクルーの命を預かるのよ・・・そういう覚悟があなたにあるの・・・」

落ち込む晴だったが・・・父はぶっきらぼうな口調で慰める。

「べらぼうめ・・・人様の命を預からない仕事なんて・・・この世にはないんだよ・・・居酒屋だって・・・へたなものだしゃ・・・命にかかわるんだ」

そうです。っていうか・・・逆上しやすいキッドはいつも思うのです。ああ・・・今日も人を殺さないで一日が終った。なんて・・・自分は偉いのだろうと。

母はでっかい太巻で晴を勇気づけるのだった。

ここは一応、サービスポイントだな。

最終審査を前に・・・勇造おじさんに・・・おいっ・・・謝罪に行く晴。

「ごめんなさい・・・どうしても・・・飛びたい気持ちが抑えきれないの」

「ふふふ・・・そうか・・・このバネはな・・・飛行機の部品なんだ・・・このバネがなくちゃ・・・飛行機だって飛べないんだ。パイロットだって同じさ。錆びないバネになって・・・大空かけめぐりな・・・実は俺も飛行機に乗ったことないんだ・・・君がパイロットになったら乗せてくれ」

「いいバネになります。きっと飛びます。そして、乗せます」

こうして・・・2009年、ミス・パイロット候補が誕生したのだった。

訓練期間は四年。2013年に向かってテイクオフなのだ。

ちなみに・・・訓練生仲間には・・・梅ちゃんの医者仲間で・・・澤田弥生(徳永えり)や須藤雪子(黒川智花)の心を奪った二枚目・伊藤正彦役の庄野崎謙が演じる・・・お坊ちゃんな感じの諸星麻也、大河ドラマ「平清盛」の平知盛を演じた小柳友の「大きな小島」くん。関西人の山田(藤井流星)などがいます。

訓練生たちは・・・飛行場で離陸する旅客機を見上げ、夢は大空に・・・。

う~ん。爽快だ。爽快極まるドラマだ~。

全国の就職活動中の皆さんに温かい・・・気がする。

ちなみに主題歌「every hero」を歌うkahoは河合奈保子の令嬢である。中学生なので巨乳かどうかは未知数だと思う。

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2013年10月15日 (火)

1400万円を支出し、39万円で払い下げたのでごぜえやす(綾瀬はるか)

明治14年の国家予算は歳入がおよそ7149万円、歳出がおよそ7146万円であった。

そういう時代に諸事情があるとはいえ・・・北海道開拓使長官の黒田清隆が船舶、倉庫、農園、炭鉱、ビール・砂糖工場などで、およそ1400万円の費用を投じたものを39万円(無利息30年賦)で関西貿易商会(黒田と同郷の薩摩出身者五代友厚らが経営)に払下げるという指令は充分に物議を醸すものだっただろう。

非常にドス黒い匂いがするわけである。

しかし、北海道を開拓する・・・という目的から言えば先行投資として成立するという見識もある。

経済は生き物なのである。

だが・・・政治と経済はいつの時代も密接に結びついている。

汚職まがいのことをするのが薩摩閥であり、それを長州閥が是認する。

一方で、板垣退助(土佐)や大隈重信(肥前)がこれを糾弾するという図式である。

明治政府は薩長土肥から薩長へと推移していくのだった。

追い落とされた土肥は・・・歯ぎしりするわけである。

何が善で何が悪だか・・・いつの世にもわかったものではないのだった。

とにかく・・・開拓使官有物払下げ事件は波紋を投げかけ、結果として明治十四年の政変を引き起こし、大隈重信は野に下る。

そして・・・大通公園に黒田清隆の銅像が建つのだ。

で、『八重の桜・第41回』(NHK総合20131013PM8~)作・山本むつみ、演出・中野亮平を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は「板垣死すとも自由は死せず」(吾死スルトモ自由ハ死セン)でおなじみ戊辰戦争の英雄・土佐藩出身・板垣信方の血を引く猛将・板垣退助の自由民権運動家ヴァージョン描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。このドラマでは基本的に板垣退助「かっけええええええっ」で、伊藤博文「腹黒そおおおおおおっ」でございますな。まあ・・・加藤雅也VS加藤虎ノ介の使い方としては王道なのかもしれませんねえ。

Yaeden041 明治13年(1880年)5月京都府知事・槇村正直は京都府会の同意を得ず地租追徴を決定する。山本覚馬が議長を務める府会はこれに反発、槇村は追徴を撤回し府会に追徴議案を提出し、議案は可決する。参議兼大蔵卿・大隈重信は大規模な外債募集による紙幣整理を断行する案を閣議に提出、発言権を強めた明治天皇はこれを否定し財政緊縮を命じる勅諭を出す。外債の募集は国の独立を脅かすことになるという危惧によるものとされる。この頃より、憲法制定のためのモデルをイギリス式にするかプロイセン式にするかで対立が生じる。7月、京都府画学校(後の京都市立芸術大学)開校。9月、東京法学社(後の法政大学)開校、専修学校(後の専修大学)開校。10月、小笠原諸島が東京府に編入。11月、君が代曲譜制定。12月、教育令改正公布。明治14年(1881年)1月、北垣国道が京都府知事となり槇村正直は元老院議官となる。明治法律学校(後の明治大学)創立。7月、開拓使官有物払下げ事件が明るみに出る。大隈は政府内で払下げに反対。14日、ビリー・ザ・キッドがギャレット保安官に射殺される。10月12日、参議を免官となった大隈は10月15日付で辞表を提出した。26日、アリゾナ州OK牧場で銃撃戦。ワイアット・アープが勝利する。この年、山本みねが横井時雄と結婚し愛媛県今治教会に移住。

「私もヴァンパイア退治に参加したいのです」とジョーが真摯な表情で言う。

「おやめ下さい・・・危険でございますから・・・」と八重は困った顔をする。

「しかし、札幌バンドの学生たちは参加しているそうではないですか・・・メゾシスト派にばかり手柄をたてられては・・・本国の会衆派がいろいろ騒ぎます」

「蝦夷地は幕末以来、吸血鬼の巣窟になっているので札幌の方々はそれなりに訓練を受けておりやす。そうでなければ吸血鬼の餌食になるか・・・自らが吸血鬼になっておるのです」

「米国のヴァンパイアの頭領とも言われるガーフィールドが狂信者の凶弾によって消滅し、支配権を得た宿主ヴァンパイヤが北海道に生まれているのかもしれないのです」

「・・・ごらんになりたいのですか」

「・・・そうです」

「ジョー・・・仕方のない人ですね・・・とにかく、私からはなれねえようにしてください」

函館から札幌に至るどこかに・・・吸血鬼の昼の墓場があると推測した北海道開拓使特設討伐隊の隊長・坂本直は特別探索班を組織した。

班長は八重で、小松リツ、三日月、月の輪などのクリスチャンくのいちと、札幌バンドの学生・新渡戸稲造、宮部金吾、内村鑑三らのクラーク博士の教え子たち、そして、小樽の杉村義衛、月形太郎、西川寅吉の十人であり、これに志願した新島襄が加わっていた。

杉村は新撰組の永倉新八であり、三日月は新八の娘お磯である。

父は剣の達人、娘は射撃の名人になっていたのだった。

「聖水の代わりに、我が妻が開発したニンニク丸を剣に塗布することで吸血鬼に致命傷を負わせることが出来申す」

新八は会津の八重の勇名を聴いており、京都府顧問の妹である彼女に対して主家の娘のように接する。

「山本の姫君は・・・銀の弾丸をお使いか・・・」

「さようでございまするが・・・姫君はおやめくだされませ・・・あだすは人妻でごぜえやすから」

「これは・・・失敬」

クラーク博士は米国で襄を教えたこともある北軍中佐あがりの教育者である。

札幌を跋扈していた吸血鬼を学生たちを指揮して根絶した後ですでに帰国している。

札幌バンドの学生たちはその生き残りである。

全員がライフルで武装している。

西川寅吉は五寸釘の寅吉の異名を持つ囚人である。古きオオクチノカミの血を引く獣人だった。常人離れした体力が禍して兇徒となったが・・・監獄の剣術指南となった新八の指導で模範囚となっていた。月形太郎は看守で・・・新八の一番弟子であった。

八重は洞爺湖の中島に吸血鬼の巣窟があると睨んでいた。

戦艦「扶桑」で室蘭に上陸した特探班は乗馬で目的地を目指す。

先発した岩倉配下の鴨川忍びが洞爺湖に至る河川路を確保しており、海岸線の仮設基地で一泊し、十一月一日に中島を急襲する手筈になっている。

北海道の冬が来る前に決着をつける必要があった。

仮設基地で羊肉を焼きながら議論を始めたのは襄と札幌バンドの学生たちだった。

「教会などはいらぬと思うのです」と二十歳そこそこの内村が物申すのだった。

「なぜでしょうか」と穏やかに応ずる襄。

「聖書さえあれば・・・そこが教会ではないですか」

「しかし・・・信仰をもつ人々が集う場所があってもいいでしょう」

「内なる信仰には無用のことです」

「なるほど・・・」

「西洋列強の根底にキリスト教があるのは疑いのないところですが・・・富国強兵に成功したのはプロテスタント・・・しかもリベラルなものたちです」

「たしかに・・・」

「神への愛を突き詰めれば・・・神への絶対服従に近い境地が生じます」

「ふむ」

「しかし・・・人の行いを神は裁くのではない」

「神はすべてを決めておられるからですね」

「そうです・・・ですから・・・神の前では自由意志など無に等しいとも言える・・・けれど・・・」

「・・・けれど?」

「神がすでに望んでおられることなら・・・人は自由に振る舞えば振る舞うほど神の御心に叶うことになる」

「そうですね・・・欲望のままに生きることではないのですね」

「そうです・・・欲望をどこまでも高めて・・・己の限界を越えるまで欲していく・・・たとえば商人ならば利を稼ぐことが神の御心に叶うこと・・・軍人ならば戦って戦って戦い抜くこと。科学者は真理の探究にすべてを捧げること・・・それが信仰というものでしょう」

「なるほど・・・働き蜂は死ぬまで働けということですね」

「そうです・・・それが正しい信仰ならば教会などは無用ではないですか」

「あなたは・・・大切なことを忘れている・・・伝道者は・・・伝道しまくってこそ神の意志に叶うのです・・・教会はその前線基地なのです」

(馬鹿馬鹿しい話を・・・よくも飽きないで・・・)と八重が思った時、三日月が飛び込んできた。

「八重様・・・犬の遠吠えが聴こえます」

「蝦夷のオオカミではないのですか」

「いいえ・・・これは邪悪な魔犬の声です・・・吸血鬼の使い魔と思われます」

「ふふふ・・・夜戦を仕掛けて参ったか・・・」

一同に緊張が走る。

「皆の者、戦闘準備・・・明日の夜明けまでが勝負じゃ」

すでに夕闇に包まれ始めた北の大地に冷たい風が吹いている。

関連するキッドのブログ→第40話のレビュー

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2013年10月14日 (月)

安堂ロイドスペシウム光線(木村拓哉)VSエメリウム光線(柴咲コウ)~A.I. knows LOVE?~

さて・・・まずは・・・御愛読の皆様に・・・「八重の桜」は・・・火曜日の記事に都落ちしました。

スケジュール的に厳しいが・・・とにかく・・・「八重の桜」は脳内キープが可能だが・・・「安堂ロイド」は勢いで書いてしまいたいドラマなのである。

そうでないと・・・半端なく長くなりそうな気がいたしますので~。

たとえば・・・「守護神」としての「ヒーロー」の暗喩として使われているウルトラマンとウルトラセブンの必殺技のポーズがある。

主人公の一人・沫嶋黎士(木村拓哉)とヒロインの安堂麻陽(柴咲コウ)が戯れにみせる一瞬のポージングの応酬。

黎士は腕を交差するウルトラマンのスペシウム光線、麻陽は額に両手をあてるウルトラセブンのエメリウム光線である。

どちらもフィクションの話であるが・・・スペシウムという造語はスペース(宇宙)とイウム(物質)の合体である。

つまり・・・宇宙物質光線が・・・敵(主に怪獣)を砕くのである。

宇宙物質光線ってなんだよ・・・と思うところが・・・人間の知そのものを示していると思う。

物語は純然たるファンタジーであり、サイエンスフィクションの基本的な道具立て「タイムトラベル」と「アンドロイド」のダブル使いなのである。

自分の「知識」を基盤に・・・それぞれの「違和感」が生じまくるに違いない物語なのである。

たとえば・・・物理的なダメージに対し、情報処理的修復に何の意味があるのか・・・と考える人がいるかもしれない。

そういう人は基本的に情報もまた物質であることが理解できていないのである。

また・・・「宇宙」と言う言葉が「宇」という空間と「宙」という時間で示されることを知らないものは「宇宙」が「時空間」であるという実感がない。

つまり、「宇宙物質光線」とは「天地四方古往今来の物質の光線」なので・・・とにかくものすごい威力なのである。

ある意味、「現在過去未来この世のありとあらゆるものをぶちこんだビーム」なのだ。

もう・・・想像もつかない領域である。

そうしたスペシウム光線に対して、エメリウム光線は謎の光線である。しかも、設定上では・・・その威力は加減が出来ることになっている。厳しくも優しくもできる光線なのだ。そして額にあるビームランプはなんとなくエメラルドのように宝石を思わせる色合いなのである。

黎士がスペシウム光線のポーズをとると麻陽がエメリウム光線で応じる。

キッドの場合はこれだけで・・・もう・・・「安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~」は素晴らしい作品だと断言できるのです。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第1回』(TBSテレビ20131013PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・波多野貴文を見た。擬似人間型機械小説の傑作に「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(Do Androids Dream of Electric Sheep?)/フィリップ・K・ディック」(1968年)があり、「人工知能は愛を知るか?」はそのヴァリエーションと考えることができる。タイムトラベルについては小説「タイム・マシン/H・G・ウェルズ」(1895年)など百年以上の歴史によって多くの名作が生まれている。「安堂ロイド」は小説「タイムパトロール/ポール・アンダーソン」(1960年)的な歴史改変テーマが生んだ映画「ターミネーター」(1984年)の影響が強いと思われるが・・・実は「人工知能による愛の認知」の問題はすでに時空間的な要素を含んでいるとも言える。なぜなら・・・愛とは時の流れであり・・・空間的存在だからである。その点については語るべき時に語ることになるだろう。

大手IT企業「エニグマエンジンソフト社」に勤める優秀なビジネスウーマン安堂麻陽・広報室長(柴咲コウ)の趣味は「将棋」だった。

ある日、ネット上でハンドルネーム「バレエメカニック」の挑戦を受けた麻陽は「バレエメカニック」の強さに興味を魅かれる。

システムエンジニアの星(桐谷健太)は情報解析のプロであり、ハッキングによって「バレエメカニック」の正体が東京帝國大学次元物理学部物理学科(フィクション)の宇宙理論学教授・沫嶋黎士(木村拓哉)であることを麻陽に教える。

彼らは素晴らしいインターネットの世界の情報倉庫である「クラウド」の管理者であり、ユーザーには「預かった情報は暗号化されて漏洩の恐れはない」と説明するが・・・そんなことはありえないと知っているのだった。

もちろん、ユーザーだってそんなことは信じていないのである。

沫嶋黎士の研究室を訪ねる麻陽。

「あなたが・・・バレエメカニック?」

「そういうあなたは・・・サニー千葉(千葉真一=麻陽のハンドルネーム)さんですね」

二人は一目で恋に落ちるのだった。

「何をしていたの・・・」

「星を見てました」

「昼間から・・・?」

「星の運行はほぼ定刻通りですから」

「でも・・・本当は消滅しているかもしれなくてよ」

「そうですね・・・こっちが突然消えてしまうこともありえます」

「ふふふ・・・スリルがあるわね」

「こちらが突然消えてしまったら・・・宇宙のどこかで誰かが驚くかもしれない」

「スリルは好きよ」

「僕はスリルの好きな女性が好きです」

「まあ・・・口説いてるわけ?」

「いえ・・・正直な話です」

「私は・・・正直な人が好きよ」

基本的に宇宙の運命は決定しているために・・・愛し合うために生まれて来た二人はたちまち愛し合うのだった。

ついには東京タワーの下で一目も憚らず熱いキスを交わす仲となったのである。

そして・・・二人は婚約した。

黎士は「時空構造に関するワームホール理論研究」の第一人者だった。

ワームホールとは、時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道の事である。要するに宇宙の構造を説明しようとした一つのモデルケースということだ。ジョン・アーチボルト・ホイーラーが1957年に命名した。

宇宙理論学者の一人として重力の墓場ブラックホールから新たなる地平であるホワイトホールへとワームホールが通じていることを理論化することが黎士の目標だった。

正しい理論を得れば時空間を超越するわけである。

空間を短絡したワープや、時間を連結したタイムトラベルが理論上は可能となる。

そして・・・黎士は正しい理論に到達し・・・宇宙の重大な秘密を知ってしまったらしい。

2013年10月7日正午。

学生相手の講義中の黎士は・・・。

「ここで問題となるのが・・・光子です。コウシといっても中国の儒家・孔子様ではありませんよ・・・あ・・・これはジョークです」

ジョークのつまらなさでは定評のある黎士だったが・・・兄と同じ研究室に籍を置く准教授・沫嶋七瀬(大島優子)はそれも笑いの一種であろうとフォローするのだった。

兄と妹は研究室で「黄粉あんパン」と「ミルク」の完全栄養食で粗末なランチを摂取する。

「宇宙空間に鏡を置けば人間は過去の自分を見ることが出来るわけよね」

「そうだね」

「50光年先に鏡があるとすれば、見上げると往復100年前の光を見ることになるわけよね」

「そうだね」

「光速の半分の速度の宇宙船があれば、100年で鏡を設置できるわけよね」

「そうだね」

「つまり、10年前に出発した宇宙船の鏡で2年半前はもう見えるわけよね」

「そうだね・・・十年で宇宙船は地球から五光年・・・それが地球で見えるのは五年後だ」

「今、鏡は置かれているのかしら」

「さあ・・・」

「人は鏡を見て・・・それが過去の自分であるとは思わないのよね」

「そうだね」

「そして・・・兄さんの理論によれば未来の自分を見る鏡の設置が可能となるわけよね」

「そうだね」

「それによって・・・運命は変わるのかしら」

「さあ・・・」

「とにかく・・・この殺人予定表は未来からの干渉なのね」

「そうだ・・・理論的には2113年から干渉されていることになる・・・100年後の未来だ」

「スケジュールは順調に消化されているのね、9月24日に最初の犠牲者がでて・・・」

「先ほど、御法川博士が殺害された」

「次は兄さんか・・・予定時刻は・・・本日15時5分、場所は房総沖・・・グランシア航空の飛行機が墜落すると・・・」

「22世紀の誰かさんは・・・そう計画しているらしい」

「のんびり・・・ランチ食べている場合なのかしら」

「それなりに準備はしている」

「兄さんが殺されると・・・次は婚約者の麻陽さんかあ・・・」

「これから・・・警告するつもりだ」

「これは・・・やはり・・・あの理論と関係しているのかしら」

「しているだろう・・・リストにあるのは・・・研究者ばかりだ」

「じゃ・・・私も・・・」

「理論に対する理解次第では・・・」

「うわあ・・・やばいじゃん」

「まだ・・・大丈夫だろう」

「あ・・・バカにしたわね」

「そんなことはない・・・じゃ・・・元気で」

「く、空港に行く気なの」

「そうさ・・・準備はできていると言っただろう」

2013年10月7日午後2時。

麻陽は職場で黎士からの電話を受ける。

「仕事中にすまない・・・」

「どうしたの」

「どうやら・・・僕は殺されるらしい・・・そして君も命を狙われているらしい」

「本当にジョークのつまらない人ね・・・そこが笑えるわけだけど」

「信じてくれ・・・」

「・・・」

「もしも・・・たとえ僕が殺されたとしても・・・君は守ってみせる」

「何言ってるの」

「愛してる」

電話は切断された。

「悪戯電話ですか」と怪訝な顔をする麻陽の部下である小松左京子(山口紗弥加)・・・。

「いいえ・・・彼だった・・・私にはわかるの」

「そうなんですか・・・」

「ええ・・・私には異常な直観力があるって・・・彼が言ってた」

「それ・・・なんか・・・笑えますね」

麻陽の携帯に着信がある。

「ああ・・・ボクだよ」と黎士そっくりの声が聴こえる。

「あなた・・・誰・・・黎士じゃないわね・・・私にはわかる」

携帯をかけていたのは・・・キャビンアテンダンドの制服を着た女だった。

女は2113年の警察組織から歴史改変修復のために遡上した殺人刑事ラプラスPA7(福田彩乃)である。

超時空通信によって未来に接続されたアンドロイドであるが・・・ある程度の自由裁量機能を搭載している。

それらは電子頭脳内での情報処理に基づく判断だが、記述するために可視化しよう。

(プラン修正提案・・・標的アサヒアンドウへの欺瞞工作は失敗・・・理由は解析不能・・・例外事項に分類・・・標的アサヒアンドウの規格外の洞察力によるものと推定・・・プランは空間的変更により修正可能・・・本部への承認要請・・・変更に基づく標的レイジマツシマの暗殺プラン修正・・・殺害時空間の変更提案・・・承認)

2013年10月7日午後2時20分。

黎士は空港に姿を見せた。

女は黎士に接触する。

「コンタクトしてきたのか」

「何か・・・ご不明の点がございますか」

「僕を殺しにきたのだろう」

「さすがですね・・・沫嶋教授」

「ああ・・・やはり」

「なぜ・・・そんなにうれしそうなのです」

「それは・・・研究者として・・・理論が実証されるというのは・・・とてもうれしいからね」

「喜んでいただいて幸いです」

「でも・・・僕は殺せないと思う」

「何故です」

「パスポートをシュレッダーにかけたから・・・インド行きの飛行機に乗れない」

「残念ながらパスポートは完全にコピーされています」

「ああ・・・そう来たか」

「それでは殺します」

「ここで・・・衆人環視の中で・・・」

「ウイジングアウト(空間離脱)します」

「ふうん」

ラプラスは亜空間発生装置を搭載していた。

周囲の空間は一部閉鎖され、亜空間化する。

その時点で・・・黎士とラプラスは存在が消失したのである。

「なるほどな」

「殺します」

「予定より早いな」

「遅いより早い方が選択肢を増加するのです」

「君は親切だね」

「人間に対して敬意を持って接するようにプログラムされています」

「でも・・・殺すんだ」

「殺します」

「じゃあ・・・君を倒すしかないな」

「それは不可能です」

「いや・・・この世に不可能なことはない」

「なぜです」

「勝つまで・・・何度でもチャレンジするからさ」

「殺します」

沫嶋黎士は射殺された。黎士の死体は飛行機に乗せられ、飛行機は墜落した。

2013年10月7日午後3時5分のことだった。

後に奇跡的に沫嶋黎士の遺体の一部が回収され・・・本人と断定される。

そのために・・・ラプラスは頭部を損傷しなかったのである。

2013年10月7日午後4時。

グランシア航空旅客機墜落のニュースは大々的に報じられた。乗客名簿から沫嶋黎士の死も伝えられる。

麻陽は不安を胸に沫嶋黎士研究室に向かっていた。

そこに七瀬から電話が入る。

「麻陽さん・・・兄さんが・・・」

「ニュースは見たけれど・・・私には黎士が死んだとは思えない・・・直感が違うと叫んでいるから・・・」

「麻陽・・・お義姉さん・・・兄は殺されたのかもしれません」

「え・・・」

「殺人スケジュール表があるんです・・・続々と殺されてます・・・兄さんは・・・今日・・・そして明日、朝の八時半に・・・代々木で・・・お義姉さんが・・・」

「なんですって・・・そんな・・・」

「馬鹿みたいですよね・・・まるで・・・兄の冗談みたい・・・」

時はあたかも無情であるように過ぎていく。

ラプラスは次の指令実行に備えていた。

どうやら2113年の警察機構はアナザーワールドであるようだ。

アナザーワールドとは別世界である。

そして、この世界にあっては2013年は時空間の特異点になっているらしい。

あるべき世界とアナザーワールドの分岐点と言っていいだろう。

アナザーワールドにとって・・・2013年の分岐は存亡の危機に関わっていると考えている勢力があり、すでに改変されかかっているアナザーワールドにとってのあるべき世界を修正することがラプラスの使命なのである。

そのために2013年の時間進行と2113年の時間進行はリンクしていると考える必要があるだろう。

攻防は一瞬を巡って行われている。

だから・・・2013年が2014年になる時、2113年は2114年になるのである。

麻陽は藁にもすがる気持ちでタブレットで黎士のタブレットにアクセスする。

このタブレットでどれほど・・・黎士と対戦してきたことか。

「将棋はアナザーワールドなんだ」

「そうかもしれないわね・・・この世界とは別のルールで存在しているから」

「彼らは同時に動けない奇妙な生物だ」

「それに不老不死だし・・・平気で裏切るけど」

「しかし、王と玉だけは死ぬ運命だ」

「王と玉が死ねば世界は終わるものね・・・勝っても負けても世界は滅びるのよね」

「いや・・・振り出しに戻るんだ・・・そういう意味では閉ざされたアナザーワールドでは王も玉も不老不死ではないが常に再生する」

「けれど・・・歴史は残るでしょう」

「その通り、人工知能は過去の歴史を検証し、彼らの神として最善の運命を導きだす」

「つまり、過去に従った未来を作るのね」

「だが・・・君は神としては風変わりだ・・・過去の経験に基づいた予測ではなく未来を局部限定的に予知しているように運命を切り開いていく」

「だって・・・その方がスリルがあるでしょう」

「僕はスリルの好きな女性が好きなのです」

「どうして?」

「心から守ってあげなくちゃと思えるから・・・」

「ふふふ・・・対人恐怖症で変人のあなたに私が守れるかしら・・・」

「君を守るためなら僕はきっとどんな恐怖も克服できる・・・」

「死んでしまったら・・・どうやって・・・私を守るのよ」

麻陽の中で黎士の死を論理的に受けとめようとする意志と黎士が生きているという直感が激しくせめぎ合っていた。

研究所には麻陽のオフィスにあるのと同じセットが置かれている。

ツーショトの写真とブロックで作られた東京タワー。

それは二人の暗号である。

「東京タワーの下で確認された愛」「東京タワーの下で共有した温もり」「はじめての濃厚な口づけ」・・・。

「思い出のセット」で記憶を共有することで・・・麻陽と黎士は時空を越えて愛の情報処理を行うのである。

記憶の中の黎士に麻陽は語りかける。

「過去は思い出す度に現在になるのよね」

「人間は過去を見ることができると思いがちだよね」

「ちがうの?」

「人間は過去を変えることはできない」

「起きたことを知っているからね」

「人間は未来を変えられると思いがちだよね」

「起きることを知らないから?」

「そうだ・・・知ってしまえば未来もまた確定してしまうことになる・・・」

「だったら・・・知らない過去なら変えられることになるわね」

「少なくとも・・・あったことをなかったことにはできるだろう」

「あなたは正直だから・・・過去を変えられないわね」

「そう・・・だから・・・せめて未来は変えたいと思うよ」

「未来は変えるんじゃなくて作るものでしょう」

「僕にとっては・・・それは・・・ちょっと違うんだ・・・未来は決定しているから」

「すべて・・・なにもかも・・・」

「すべて・・・なにもかも・・・」

「麻陽お義姉さん・・・」

もうすぐ義理の妹になる七瀬に呼ばれて麻陽は我に帰る。

「大丈夫ですか・・・」

「大丈夫・・・妹のあなたに・・・こんなことを言ったら変に思われるかもしれないけれど」

「何でしょう」

「やはり・・・私・・・彼が死んだとは・・・とても思えない・・・むしろ生きている確信があるの」

「お義姉さん・・・こんなことを言ったら正気を疑われるかもしれませんがとにかく・・・気をつけてください・・・スケジュールが迫っています・・・みんな殺されているみたいですから」

愛する婚約者と愛する兄を失いかけている二人の女はまだ涙を流さない。

彼女たちは現実を認識することに用心深いタイプなのであろう。

彼女たちは黎士が死んだところを見たわけではないのである。

しかし、世界の情報を精査する男たちにとって黎士の「死」はすでに確定していた。

警視庁の闇に属する公安部第仇課特殊捜査班の冨野好雪刑事(日野陽仁)はその件の報告を行っていた。

「また・・・殺されました」

「そうか」

全室禁煙の警視庁にあって傍若無人に紫煙を吐き出しながら葦母衣朔刑事(遠藤憲一)は表情を変えなかった。

「これで・・・例のリストは最後の一人になったわけだ」

「どうしましょう・・・警護対象に指定しますか」

「いや・・・未来からのスケジュールによって殺人が行われているなんて・・・原則的に報告できない・・・報告できない以上、警護を指令できない」

「手口はバラバラですが予定に従った正確無比の犯行・・・まるで・・・ロボットが殺しているみたいですな」

「いや・・・ロボットには人殺しはできない」

「アシモフの基本三原則があるからですか」

「そうだ・・・」

「しかし・・・何者かがリモートコントロールしているかもしれないでしょう」

「そんなもの・・・ロボットではなくて・・・単なる人型兵器だろう」

「いえ・・・人間そっくりのアンドロイドなら・・・殺人も模倣するかもしれません」

「そうなら・・・それは史上最大のロボットだ」

「いえ・・・オメガ因子ですよ」

悪の心を持ったロボットか。

葦母刑事は新しい上司を連想する。

「いや・・・あいつは・・・悪の心を持っているわけではないな・・・どちらかと言えば心が無い感じだ」

全館に備え付けられた盗聴装置の情報を精査して二人の会話を聴きながら警視庁公安部の角城元統括官(平岡祐太)は無表情だった。

ただ・・・闇の中でその目は赤く光るのだった。

「誰のことです」

「いや・・・誰でもないさ」

葦母刑事は単独行動を選択する。

最後のターゲットである「安堂麻陽」を追尾することにしたのだった。

2013年10月8日未明。

主を失った机の引き出しがそろそろと開きだしていた。

その引き出しには黎士が理論化に成功したと思われるワームホールが発生していた。

ワームホールによって2113年と2013年は接合されたのである。

そのテクノロジーは2113年には実用化しているのだろう。

それを不思議に思うなら1913年を振り返ってみればいい。

原子力発電所は世界のどこにもない。携帯電話は一台もない。空には人工衛星が見当たらない。多くの人々は「幽霊と対話するため」の「心霊研究」に熱中していたのである。

100年というのは恐ろしい歳月なのである。なにしろ・・・今、生きている人間のほとんどが死んでいる世界なのである。

2113年からダウンロードされたデータは空間にアクセスし、2013年の時空間に存在する物質に関与して新しい構成を形成して言った。

時空間に存在する原子核と電子は分離され再配置され・・・数秒で新たなる元素によって構成される擬似有機体を出現させる。

「ARX II-13」は起動した。

それは・・・外見が黎士にそっくりなアンドロイドだった。

(初期設定を終了・・・必要情報のダウンロードを開始・・・2013年時空間情報とリンク開始・・・検索範囲を設定・・・機能動作確認終了・・・任務開始を申請・・・許可を認知・・・これより識別された個体・アサヒ・アンドウの保護を開始する・・・最優先事項・・・アサヒ・アンドウの生命活動の維持・・・)

刑事とアンドロイドは麻陽の家に到着した。

刑事は感知しなかったがアンドロイドは刑事を感知した。

警戒モードに移行しつつアンドロイドは待機する。

麻陽は現実から逃避するために日常的なルーティーンに従い出勤を選択し、最寄り駅へと向かう。

その時、沫嶋七瀬は浅い眠りから醒める。

研究室でうたた寝をしていたらしい。

携帯電話が着信している。

「お義姉さん・・・」

「七瀬ちゃん・・・私・・・もう死にたい・・・後の事をお願いします」

「お義姉さん」

麻陽そっくりの声で送信を終えたポリスクラウドのアンドロイド・ラプラスはウイジング・アウトした。

黎士そっくりのアンドロイドは亜空間の発生を探知する。

(敵対する機体の接近を探知・・・秘匿モードに移行する)

二体のアンドロイドが急速接近することを知らない二人の人間は駅のホームに降りていた。

「・・・番線を急行列車・黎明が通過します・・・黄色い線の内側で・・・」

ホームに佇む麻陽。その背後で何者かを待捕まえる葦母刑事。

10月8日午前8時30分。

亜空間に隠れてラプラスは接近する。

そして、麻陽をホームに突き落とす。

葦母は驚愕する。

「停車だ・・・列車を停めろ・・・」

しかし・・・急行列車は走り抜けていく。

ホームを覗きこむ葦母・・・しかし、不審物は何も見つけられなかった。

「なんだ・・・これは・・・どんな怪奇現象なんだ・・・」

超高速移動した黎士そっくりのアンドロイドは立体駐車場の最上階に転移していた。

気がついた麻陽は目を疑う。

「麻陽・・・違う・・・あなたは誰?」

「私は・・・エーアールエックスセカンドサーティーン・・・22世紀から安藤麻陽を保護するために転送された高機能型戦闘用アンドロイドです」

「さっぱり・・・わからない」

「クライアントからあなたを保護することを依頼されています」

「クライアントって・・・黎士はどうなったの・・・」

「黎士は・・・」

「死んだの・・・」

「いえ・・・殺されました」

「嘘・・・」

「あなたの説得のために・・・ラプラスから取得した情報を開示します」

「ラプラス・・・」

「あなたを殺害するためにあなたをホームに突き落としたポリスクラウド・・・警察機構所属のアンドロイド7号機です」

黎士そっくりのアンドロイドは麻陽に眼鏡型ディスプレーを渡す。

それは・・・黎士の遺品と呼べるものだった。

麻陽は見た。

「麻陽は・・・俺が守る・・・勝つまでやるから」

・・・といいながら無惨に射殺された黎士の断末魔を・・・。

「いや・・・信じない」

その時、ラプラスが現れた。

「アサヒアンドウを確認。射殺します」

「あ、あんたが・・・黎士を・・・ぶっ殺す」

ラプラスが一瞬、機能停止するほどの非常識な麻陽の態度だった。

ラプラスに殴りかかる麻陽の前方に割り込む黎士タイプ。

しかし、ラプラスの機能は黎士タイプの性能を上回っていた。

たちまち、強制排除されスロープを転げ落ちる黎士タイプ。

だが、次の瞬間、麻陽はラプラスに果敢に挑みかかっていた。

瞬時に対応したラプラスは高層ビルの屋上から麻陽を地上へと投げ捨てた。

黎士タイプは超高速移動で麻陽をキャッチする。

「学習してほしい」

「何を」

「人間にアンドロイドは倒せない」

「やってみなきゃわからないでしょう」

「・・・」

路上に殺到するラプラス。

「公務執行にご協力ください。あなたの行為は公務執行妨害に該当します」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられています」

「警告を終了し、所属不明アンドロイドを処理します」

圧倒的な実力差で黎士タイプを粉砕し、アッパーカットで吹っ飛ばすラプラス。

黎士タイプは致命的なダメージを受け、落下して民家の屋根を突き破り、ベッドに横たわる。

「障害の排除に成功・・・任務を継続する」

夢のような出来事に一瞬、茫然とする麻陽。その静寂を破る声がする。

「おばさん・・・エーアールエックスセカンドサーティーンの息の音を停めた方がいいわよ」

「人間を確認・・・生体IDを検索中・・・該当なし」

「せっかくのアドバイスなんだから・・・人間様に従いなさいよ」

「亜空間突破力を保持する人間を敵対者と認定・・・排除を申請する」

(ポリスクラウドより指令。未確認アンドロイドの転送を確認・・・優先指令・・・二体のアンドロイドの完全消去)

「了解」

ラプラスは黎士の元へと移動を開始する。

驚異的な復讐心でラプラスを追跡する麻陽だった。

「あっはっは・・・あれがプラントル・グロワートの特異点(圧縮により圧力と温度が上昇し特定の値で無限大に発散してしまう圧力係数の理論式が持つ特異点)かあ・・・うけるわあ」

お茶の間的にはほぼ意味不明の白いセーラー服を身にまとう謎の美少女(桐谷美玲)だった。

多くの男性視聴者は可愛いから許容するのだった。

基本的に・・・朝陽が現代と未来に影響を及ぼす特殊な存在であると理解するべきだろう。

黎士タイプのアンドロイドの眠る寝室の鏡台が時空間接合し、引き出しから黎士タイプをバックアップする任務を帯びていると推定されるナースロイド・サプリ(本田翼)が実体化する。

引き出しの中が亜空間化されているらしい。

「サプリでーす。21世紀なんてはじめて~。高まる~」

(修復任務は緊急を要する・・・ただちに修復を開始せよ)

「ちぇっ・・・てめえではめやがれってんだ・・・やることはやるもの」

黎士タイプの修復にかかるサプリ。

「おやおや・・・完全にぶっこわれてますよ・・・これ・・・再構築を要請」

(承認・・・ダウンロードを開始する)

「早く・・・早く・・・ポリ公来ちゃうぞ」

(時間をロスしたのはナースロイド自身である)

「にゃ~ん。とりあえず退避」

ナースロイドは逃げた。

ラプラスが現地に到着する。

その後頭部に煉瓦を投げつける麻陽だった。

「目標を変更、アサヒアンドウを殺します」

「・・・」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられている」

復旧した黎士タイプ・ヴァージョン2.0・・・。

「違法ダウンロードを検知しています・・・違法プログラムをただちにアンインストールしてください」

「勝つまでやるっていっただろう」

「射殺モード実行」

「アスラシステム発動・・・」

「そのシステムは禁止されています」

しかし、アスラシステムを発動した黎士タイプは無敵状態になるのだった。

あらゆる性能がラプラスを凌駕し、瞬殺されるラプラス・・・。

「協力を要請します。22世紀の治安を守るための警察活動にご協力ください」

「要請を却下する」

「歴史改変は修正されなければなりません・・・アサヒアンドウの殺害にご協力をお願いします」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられている」

「治安を維持するために・・・私の記憶領域のアクセスを禁じます・・・強制消去・・・システム・ダウン」

ラプラスは自壊した。

「異物の元素還元を申請する」

おそらく黎士タイプは支援システムを別地点に設置していると推測される。

それが21世紀から22世紀の時空間に存在するアナザーワールド反社会的組織とリンクしているのである。

(申請を受諾。元素還元を承認)

黎士タイプは自分が転送された逆パターンでラプラスを元素に還元し、完全に解体する。

「一体・・・これはなんなのよ・・・説明しなさいよ」逆切れする麻陽だった。

「私はアサヒアンドウの生存確保を依頼されています」

「なんで・・・黎士の姿なの」

「クライアントの希望です」

「クライアントって誰よ」

「情報の開示は禁止されています」

「うわあ・・・出たよ・・・守秘義務かよっ」

「私はアサヒアンドウの敵を排除します。世界が全員敵になれば世界を破壊します」

「馬鹿か・・・馬鹿なのか・・・」

安藤麻陽は泣き出した。理解できないのが口惜しかったのだ。

「私は標準的な人間の二倍以上の人工知能を搭載しています」

「もう・・・死にたい」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられている。そのために私にはすべての力の使用が認可されている。実力行使は目的達成のための最善の手段です」

「本人が死にたいって言ってんのよ」

「安楽死を希望するのですか」

「苦しいから・・・死にたいのよ」

「許可を申請するのでしばらくお待ちください」

「ええっ」

「例外規定を確認。アサヒアンドウの希望が承認されました。これより、アンドウアサヒを射殺します」

「ええーーーーっ」

謎の美少女は微笑む。

「沫嶋黎士死して・・・なお烈日の気迫あり・・・か・・・あはは・・・うけまくりーーーっ」

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Ar001 ごっこガーデン。幻影の東京セット。アンナもうなにがなんだかわかんないよ大爆発~。ヒロインの気持ちにこれほど共感するドラマはダーリンドラマ史上はじめてぴょ~ん。クライアントって誰ですかーーーっ。アスラシステムって何ですか~、ユカワ・オペレーション・システムは廉価版ありですか~。あまりの大混乱に「あまちゃん」だったら灯台岬で自転車ダイブするところですか~~~。ラスボスどんだけ強いのか・・・ドキドキが止まらないぴょ~ん。安堂ロイドっていつ呼べばいいのかな~・・・とにかく黎士のブログにアンナぴょん行ってきま~す・・・ロイド病発症中・・・じいや、きなこあげぱんもっと~シャブリたてよこたかさ・・・時間・・・5次元ってあと・・・何ですか・・・ドラえもんとハクション大魔王のこっそり合体をするサプリ・・・ドラミアクビちゃん?・・・二夜連続のなつかしアニメネタなのでありました~くうとにかく・・・キャストのメモで勘弁してくださいーーーっ・・・口パクでものまねならなんでもアリですなーーーっ・・・新境地かっまことりあえず・・・サプリコスプレゲットだじょ~。じいや、引き出し改造してえエリ忙しいのでまだ東京バンドワゴン見たとこでス~mana木村くんツアー中でしたあ

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2013年10月13日 (日)

東京バンドワゴンで(亀梨和也)あったんだよ(多部未華子)

ファンタジーなのである。

「大家族」のファンタジーなのだ。

ヴァラエティー・ショーのりの擬似ドキユメンタリーの「大家族」ではない。

あれは・・・単なる異常な子沢山で・・・誰もが憧れる「大家族」ではないのだ。

そもそも・・・「大家族」であるためには・・・経済的な基盤が必要なのである。

大家族の家長は少なくとも不動産を持っていて・・・大家族を養うに足る部屋数を確保してなければならない。

そして・・・けして大家族を飢えさせない収入を確保している必要がある。

できれば四世代が必要で・・・子供はひ孫世代というのが理想である。

基本的には分家しない。

孫の嫁がキャビンアテンダンドを辞めて家庭に入る気になるほどの魅力的な家風。

シングルマザーが安心して子供を育てられる環境。

愛人の子供も一員にする度量。

ああ・・・ファンタジーだよね。これがファンタジーじゃなかったらなんなんだ。

核家族なんて夢の大家族に比べたらクソなんだよな。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第1回』(日本テレビ20131012PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、狩山俊輔を見た。原作は連作短編推理小説だがジャンルとしては「日常の謎」ものと言えるだろう。どちらかといえばホームドラマの中にミステリが紛れ込んでいるという程度のものである。さらにひとつの家族の歴史的な要素があり、ある意味、こじんまりとした大家族がささやかな幸せをありえないほどに享受するファンタジーとも言える。こういう嘘臭い設定はどこかで必ず破綻するものだがのほほんとしすぎてリアルのつけいる隙を与えないのである。登場人物たちはどこか浮世離れしているが・・・今回のドラマ化は結構、理想のキャスティングで押し切っていると考えられる。

たとえば・・・ドラマ版の主人公・堀田青(亀梨和也)の父親の堀田我南人(玉置浩二)はロックバンド「LOVE TIMER」のボーカルで「伝説のロッカー」と呼ばれるロックンローラーというふざけた設定の上に・・・正妻と愛人がいて・・・青は正妻に育てられた愛人の子供なのである。しかし、キャストによりかかれば・・・登場しない正妻(故人)と愛人(消息不明)の顔が自動的に浮かんでくるのである・・・それはもちろん、薬師丸ひろ子と石原真理である。まあ、反則と言える。

歩いても 歩いても 

夜通しじーっと待ってても

流れてく 流れてく 指折り数えてく

堀田青は旅行添乗員だが・・・父親の愛人だった母親に捨てられ、父親の正妻の元で異母兄姉とともに育てられたという過去を持っている。

それなりに愛情を持って育てられたために普段は表には出さないが・・・酒に酔うと鬱屈が表面化する。

口癖は「僕には愛が足りない・・・胸に穴があいて・・・幸せがポロポロこぼれていく・・・僕に愛をください」なのである。

その夜も見ず知らずの女子大生・槙野すずみ(多部未華子)に泥酔してからみ・・・婦人警官に確保されるという醜態をさらしたのだった。

実は・・・この出会いがすでにかなりファンタジーなのである。

「酔って愛とか簡単に口にするなんて最低」とすずみは叫ぶのだった。

しかし・・・正気に戻った青は・・・すずみの落しもの長編小説「浮雲/二葉亭四迷」を入手するのだった。

青が暮らすのは東京の下町にある老舗古本屋・東京バンドワゴンである。

明治18年創業でかっては文士たちのたまり場になったこともある由緒正しい古書店である。

気難しい三代目店主の勘一(平泉成)は青の祖父で・・・気に入らない客には本を売らないという商売人としては不適切な性分の老人だった。

勘一の妻・サチ(加賀まりこ)は二年前に死去している。しかし、ファンタジーなので一部ゴースト化しています。

二人の一人息子が青の父親・還暦のロックンローラー我南人。

我南人の妻・秋実は五年前に死去している。しかも、何故か、遺影も飾られていないのだった。

我南人と秋実の間には、フリーライターの堀田紺(金子ノブアキ)とシングルマザーの堀田 藍子(ミムラ)の一男一女がある。

長男の紺は亜美(平愛梨)と結婚し、現在、小学4年生の研人(君野夢真)という息子がいる。

長女の藍子には小学6年生の花陽(尾澤ルナ)という娘がいるが・・・父親の名前は娘にも教えないという秘密を持っている。まあ・・・不倫の果てのシングルマザーなのである。

これに・・・猫の玉三郎とベンジャミンを加えたのが堀田家の大家族なのである。

つまり、青は・・・祖父と父、腹違いの兄と姉、兄嫁、甥と姪の八人家族の一員なのだった。

ちなみに古書店「東京バンドワゴン」は「カフェあさん」を経営しており、藍子と亜美が切り盛りしているのだった。

まあ・・・この家族構成を把握するまでが一苦労なのだが・・・慣れてしまえばどうっていうことはありません。

そして、青の酔った時の口癖は父親・我南人のいつものセリフなのだった。

我南人は根っからの自由人で・・・ぶらり旅に出れば一ヶ月音信不通なのである。

青には「おいたち」の事情から我南人には複雑な感情を持っていて・・・逢えばすぐに取っ組み合いの喧嘩になるのだが・・・もちろん、愛情の裏返しであることは言うまでもない。

姉や兄にも・・・青には複雑な感情があるわけだが・・・実の兄弟のように育ったらしい。

末っ子の青は・・・兄や姉に可愛がられているのだった。

青は「浮雲/二葉亭四迷」が大学の図書館の所蔵物だったのを手掛かりに槙野すずみを捜しあてる。

文学部の学生だったすずみは「浮雲/二葉亭四迷」を卒論の資料に使っていたのだった。

「あの・・・この間は醜態をさらしてすみませんでした」

「はい・・・」

まったく青に興味を示さないすずみに何故か食い下がる青なのである。

「あの・・・そういう古い本が似合ってますね」

「それ・・・誉めてるの」

「いや・・・なんか・・・珍しいなと思って・・・ボクもその本、小学生の時に読んだから・・・」

「小学生の時に・・・」

そこで・・・青は「浮雲/二葉亭四迷」の冒頭の一節を諳んじる。

明治時代の神田見附界隈の賑わいの描写で「髭尽くし」が展開するのである。

「口髭、頬髯(ほおひげ)、顋(あご)の鬚(ひげ)、暴(やけ)に興起(おや)した拿破崙髭(ナポレオンひげ)に、狆(チン)の口めいた比斯馬克髭(ビスマルクひげ)、そのほか矮鶏髭(ちゃぼひげ)、貉髭(むじなひげ)、ありやなしやの幻の髭・・・」

途中から興にのって唱和するすずみだった。

同じ教養で共感する二人なのである。

「おかしい・・・古い本がすごく似合わない人なのに・・・」

「あの・・・実家、古本屋なんで・・・もしよかったら・・・お寄りください。きっと・・・興味深いものがあると思いますよ」

「・・・」

青は持ち歩いている店の名刺を渡すのだった。

「それから・・・僕・・・禁酒しましたから」

なかなかにロマンチックな二人だった。世を騒がす陰惨な事件がなければもっと楽しめたのに残念なことだ。

さて・・・古書店「東京バンドワゴン」では小さな事件が起っていた。

書棚に見知らぬ百科事典が二冊置かれているのである。

朝にはないのだが、昼にはあり、夕方には消えているのである。

勘一が発見したこの珍現象を巡って・・・子供探偵の二人が調査を開始する。

やがて・・・小学生の大町奈美子(井上琳水)が登校中にランドセルから二冊の百科事典を取り出し・・・下校時に・・・回収しているのだと判明する。

一家団欒の席で・・・堀田家の人々はその謎を論議するのだった。

「一体・・・何のために・・・」

「何か・・・得することがあるんだろうな」

「得する・・・」

「たとえば・・・」

「重さとか・・・」

「それは得なのか」と口をとがらせる姉と兄嫁だった。

やがて・・・大町奈美子が両親と暮らすマンションの入り口が加圧式の自動ドアだったことが判明するのだった。

「でも・・・強く踏めば・・・開くだろう」

疑問を解くために奈美子に寄り道させておやつを振る舞う堀田一家である。

すると・・・捜査線上に浮上したのがマンションの管理人のケン(光石研)だった。

「一度開かない時に抱っこして開けてもらったの・・・でも・・・変だと思う人もいるかもしれないから」

「・・・」

ケンが変態だったら困ると誰もが思うのだった。

ケンは我南人の昔馴染みなのである。

真奈美(片桐はいり)が女将を勤める堀田家いきつけの小料理居酒屋「こはる」にケンを呼び出す堀田家男組。勘一の幼なじみで神社の神主の祐円(ベンガル)も顔を出すのだった。

足立先生、安部ちゃん、おめでた弁護士監督と揃って「あまちゃん」濃度が一段と高まった一瞬である。

そこで・・・ケンは秘密を打ち明けるのだった。

大町奈美子の母親(西山繭子)はケンの実の娘で・・・奈美子は孫だったのだ。

「昔、事業に失敗して・・・妻子を捨てました・・・自殺に失敗して・・・それ以来・・・ホームレスとして生きて来たのです・・・数年前に風の便りで妻が死に・・・娘が結婚していることを知りました・・・自分にはそんな資格がないとはわかっていましたが・・・一目会いたくて・・・すると・・・マンションの管理人の募集が行われていたのです。ただ・・・私は・・・近くでそっと見守っていようとしたのです。ただ・・・孫のあまりの可愛さに・・・間違ったことをしました」

やるせない気持ちに沈黙する一同。ただ・・・青だけは・・・。

「そんなの勝手な話だよ・・・捨てられたものの気持ちを考えてみろよ・・・あんたに・・・美奈子ちゃんを抱く権利なんてないんだよ」

「おい・・・お前に・・・親の気持ちの何が分かる・・・」

「あんたに親の気持ちを語られたくないね」

「でもな・・・ケンは俺のダチなんだ」

問答無用で鉄拳制裁する我南人である。

たちまち、始る取っ組み合い・・・しかし、紺が青を制するのだった。

「やめなさい・・・他人のお店に迷惑かけるな」

「悪かったねえ」と退場する我南人だった。

「・・・」と青も店を出る。

紺はケンに詫びるのだった。

「すみませんねえ・・・ひどいことを言って・・・実は・・・あいつは母親に捨てられたんです・・・だから・・・どうか勘弁してやってください」

「そいつは・・・」とうなだれるケンだった。

翌日・・・静かな下町の日常を破壊する大音量。

我南人がロックバンド「LOVE TIMER」(安全地帯)を引き連れて件のマンションの屋上を占拠、「サーチライト」を歌いだしたのである。

伝説のロッカーのゲリラ・ライブに集まる群衆。興味のない人には近所迷惑な話だった。

警察官に逮捕されて連行される我南人は見物人の中のケンの娘・・・奈美子の母親に語りかける。

「このマンションの管理人は・・・昔、ひどい間違いを犯した人間だ。でも・・・後悔しているだけじゃ誰もハッピーにはなれないでしょう。ラブがなくちゃね。だから・・・俺は歌いました。愛を届けたくて」

すべてを悟ったケンの娘はケンに歩み寄る・・・。

「・・・お父さん」

涙が止まらないケンだった。

強引に町を愛で包んだ我南人の勝利なのである。

それはいつでも あったんだよ

失くせないのが あったんだよ

時々隠れていたんだよ でも あったんだよ

一件落着の安堵感・・・。青は思わず禁酒の誓いを破り・・・ビールを一口。

そこへ・・・やってきたのは・・・女子大生・すずみだった。

「あ・・・」

二人の運命の愛は始ったばかりなのである。

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怪物

Tbw001 ごっこガーデン。黄昏の屋根の上セット。エリむふふ・・・下町名物瓦屋根の上で・・・もしもし亀先輩と文学を語るちょっとおバカなデート・・・基本、屋上はロマンチックなのでスー。じいや、チーズケーキとコーヒーを出前して~。ちょっぴり、ブランデーたらしてね~。さて・・・来週は・・・えええええ・・・二人はそんな関係なんでしゅかあああ・・・運命すぎる~・・・とにかくこれぞハートウォーミングなのでス~まこおっと・・・クリスマスには早すぎる・・・カフェセットでまこかまケーキをメニューに入れて年末商戦に備えるのだジョ~くうどんなにひどい人生を歩んでいても人を感動させるアーティストって・・・なんだかなんだよね~みのむし浮雲・・・読んだことある人・・・いますか・・・るるるちーずさて・・・Womanの後はどうしようかな・・・ikasama4う・・・こんなところで・・・歌姫ロイドとかイノセントロイドが再利用されているとは・・・シャブリ交番の婦警さんは池谷のぶえさん、花陽ちゃんのクラスメイトはよしこちゃん(岩田月花)、スミレちゃん(仲愛理)なのでありました~。サリーちゃん?」

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2013年10月12日 (土)

都市伝説の女ふたたびUIU(非科学事件捜査班)富士山関連を謎解く! (長澤まさみ)

本当の足長キター!・・・である。

さて、金曜日は下町の中華料理屋の油染みが似合う「週刊漫画ゴラク」連載のドス黒いマンガ原作の「クロコーチ」もあるわけだが・・・ま、マンガを読めばいいと思うので・・・谷間があれば言及したい。

初回の見どころは神奈川県会議員 郷田(石丸謙二郎 )の愛人・金本真美(佳苗るか)の胸乳丸出しの暴行死体。主人公・神奈川県警捜査二課刑事・黒河内圭太(長瀬智也)の刑事二名の射殺。清家真代警部補(剛力彩芽)の失禁、四つん這い踏み台プレー。謎の中国人・恬恬(河北麻友子)のパンツが見えたこと・・・などある意味、盛りだくさんである。

まあ・・・悪名高い神奈川県警だが・・・フィクションにも程があると思うよね。

佳苗るかは千葉県出身の女優だが・・・三鷹女子高生殺害事件にからんで・・・千葉ロッテマリーンズの神戸拓光選手(28)が三鷹女子高生殺害事件の被害者を誹謗する内容(「 何の事件か伏せるにせよTVで報じられないあんな画像が流出してたら『可哀想』とは1ミリも思わん。『可愛いふりしてやる事やってんじゃん』て事。今回のそれは【なるべくしてなった】‥自業自得だヽ(・∀・)ノ」)をツイートした問題で千葉ロッテ球団が口頭で厳重注意したとか、千葉市の熊谷俊人市長が「大変遺憾」とツイッターで苦言を呈したとか・・・言われるわけだが・・・どのような事情があろうとも「殺人事件」の「被害者」に対し「自業自得」とはけして言ってはいけないということである。プロ野球はエンターティメントである以上、「殺人」を肯定した選手を在籍させることは「軽率でした」ですむ問題ではないと考える。即刻解雇、永久追放処分が望ましい。とついでにいっておきたい。どんなついでなんだよ。

常識が問われる問題なのである。

もちろん、言論は自由だし・・・何を言ってもいいわけだが・・・「殺されて当然の人間もいる」とプロ野球選手が言っちゃダメだろう。

刑事を殺す刑事や、それを黙認する刑事のフィクションがあってもよい社会を守るためには現実でそんなこと言う人には社会的制裁を受けさせるべきだと思う。

だって・・・その人を千葉県民が応援したら・・・千葉県民は「殺人犯人を肯定する人を激励すること」になっちゃうんだから。

良識が問われる問題なのである。

まあ・・・ある意味、本人が「殺されても仕方ないこと」を言ってるわけですな・・・。そして・・・本人がそのことに気がついていない・・・どうしようもない馬鹿だと言うことなんですけどね。

まあ・・・そんなことは悪魔の知ったことではないのですけれどもーーーっ。

口がすべるのとツイッターに書きこむのは別だってことですよお。

本当に「バカ発見器」なんだなあ。

誰もが・・・お前だけには言われたくないと思うけどな・・・。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)第1回』(テレビ朝日201310111115~)脚本・後藤法子、演出・塚本連平を見た。複数・脚本家制で今季は「裁判長っ!おなか空きました」でしょうもないことをやっている福田雄一の回もあるらしい。楽しみである。第二シリーズはメンバーが些少入れ替わっている。最大のショックは・・・「あまちゃん」の栗原しおり役である安藤玉恵の演じる警視庁捜査一課第七係丹内班・岩田洋子刑事の不在である。楽しみだったのになんだよ・・・。警視庁鑑識課の勝浦洋人(溝端淳平)の上司に高田潤子(大久保佳代子)という「マンションの女」が配置されているが・・・それくらいじゃ・・・あまロスは埋められないんだよ・・・おいっ。まあ、別に大久保佳代子に罪はないが・・・ちょっと安易に使いすぎ・・・基本的に男性視聴者はまったくうれしくないことを忘れないでおくべきだな。・・・そうとは限らないだろう・・・常識の話なんだってばっ。

その他にハッカー担当で新人刑事・浜中彩乃(高月彩良)が登場するが実年齢16歳だからな・・・キャスティングそのものが一種のギャグだよな。こういうことやりすぎると格調が崩れるからな・・・このドラマに格調なんてあるのかよ。

あると思えばある。っていうか・・・かなりあると思う。

月子(長澤まさみ)の美しさに反感を抱く警視庁交通課の婦人警官が細江真由(小林優美)、板倉由希美(篠原真衣)から田村由貴(小泉麻耶)、牧原里奈(風間亜季)にチェンジしていてもお茶の間はまったく気がつかないみたいにな。第三シリーズがあれば、このギャグはまたやってもらいたい。・・・ギャグなのか・・・ギャグだと思う。

とにかく・・・「SUMMER NUDE」で陥った長澤まさみ不足がようやく解消されるのだった。

筋金入りの都市伝説オタク・音無月子はFBIに出向し、ニューヨークの都市伝説「下水道ワニ」を捕獲しようとして凶悪なテロリストを一網打尽にしてしまい大手柄をあげ・・・パワーアップして帰国する。

そして・・・かねてから親しい武重治(伊武雅刀)はついに警視庁警視総監に出世しているのだった。

そのために・・・警視庁捜査一課第七係丹内班は解散に追い込まれ・・・月子のために警視庁最上階に作られた非科学事件捜査班(略称:UIU)に丹内(竹中直人)と柴山(平山浩行)の両刑事は無理矢理配置されてしまうのだった。要するに「あまちゃん」の収録と重なって岩田洋子刑事(安藤玉恵)のスケジュールとれなかったのか。後半、ゲストでもいいから登場しますように。

今回、月子は一時帰国の身であり、「世界遺産に登録された富士山に関する都市伝説を語り合うシンポジウム」に参加するのが目的だった。

月子の帰国を知った月子のストーカーである勝浦くんはさっそく駆けつける。

しかし、シンポジウム当日の朝・・・UMA(未確認生物)研究家の中野修二(瀬川亮)が死体で発見される。

中野はネス湖の「幻の恐竜ネッシー」とならんで世界的に名高い本栖湖の「幻の恐竜モッシー」の貴重な目撃者でもあった。

その遺体を「嫌な事件の匂う重たい風」に呼ばれて本栖湖の湖畔で発見した月子は「この事件には富士山の都市伝説が絡んでる!」と例によって断定するのだった。

こうして・・・月子と勝浦くんの「二人の事件」は新たな展開を迎えたのである。

ちなみに・・・元カレの加賀春樹(オダギリジョー)は消息不明になってしまったらしい。

とにかく、真面目に殺人事件を捜査する山梨県警と非科学事件捜査班の緩衝材として使われる丹内刑事だった。

被害者宅を調査した月子は「UMA研究ノート」の一冊が消えていることに注目する。

「被害者の手に残された豊国文字と関係あるのかもしれない」

「豊国文字は古代日本で使用されたとされる日本固有の文字の一種ですけど・・・学会では存在自体が疑問視されているのでは・・・」

「学界なんて・・・正史を重んじるだけの無能者の集まりなのよ」

「そこまで言わなくとも・・・」

「言葉がある以上、文字はあるものなの・・・ただ・・・失われてしまっただけと考える方が合理的でしょう」

「なるほど・・・」

「そして・・・当然、その文字を使っていた人々が失われたように見えて・・・実はこの世のどこかに潜んでいる可能性もあるわけよ・・・」

「たしかに・・・」

「そういう・・・漂泊の民の一部として・・・富士山麓の樹海の民が存在するのよ」

「存在・・・するんですか」

「それを捜査するのが・・・私たちの仕事じゃないの」

「ああ・・・」

例によって月子のマンションに呼ばれていいムードになり、口づけ寸前の勝浦くんなのだが、いつものようにナイス・タイミングで帰宅する月子の妹・音無都子(秋月成美)だった。映画「Another アナザー」や「悪の教典」を経由してここである。

ああ・・・何もかもがなつかしい。

被害者の手に残された豊国文字は「ちかよるな」の五文字であることが判明する。

しかし・・・勝浦くんは・・・殺害現場が別の場所であったことを鑑識員として指摘するのである。

「殺害現場は・・・富士山麓の青木ヶ原樹海である可能性が高いです」

「やはり・・・行くしかないわね」

こうして・・・二人は迷ったら二度と出られないと噂される樹海への冒険に乗り出すのだった。

一方・・・丹内刑事は・・・被害者の婚約者・大西恭子(須藤理彩)と被害者の幼馴染・安田隆(窪塚俊介)と被害者の三角関係に着目していた・・・。

しかし・・・月子は被害者は「富士山に関する都市伝説を語り合うシンポジウムで何か重大な新事実を発表しようとして殺された」と直感で分かっているのである。

「新事実ってなんですか?」勝浦くんって何故か「あまちゃん」の香りがする。

「モッシーの実在についてのなんらかの証拠かもしれない」

「何故、殺されたんです」

「たとえば・・・モッシーの捕獲に成功したとすると・・・ネッシーを応援する熱狂的な人に・・・」

「そんなあ・・・」

「ネット上にいかがわしい写真が流出したとしてもこれだけ加工処理が発達した時代に・・・それを鵜呑みにするバカもいるぐらいだから・・・モッシーへの嫉妬でボートで待ち伏せする人がいるかもしれないわ」

「いやいやいや・・・」

「あるいは・・・富士の樹海の民の秘密に迫りすぎて・・・」

「樹海の民って何なんですか」

「太古の時代の富士山崇拝者とも、日本のジプシーと言われるワタリ一族とも、平家の落ち武者とも、自殺志願者のなれの果てとも、無差別殺害教団オウム真理教の残党とも言われる謎の集団よ」

「しぇしぇしぇーっ」

「進化したイヤミなのか退化したあまちゃんなのか、はっきりしなさい」

「あ・・・磁石が狂っている」

「そんな・・・それはガセネタのはずなのに・・・」

「地中のUFOが定期点検のためにオートマティックで活動する時に強烈な磁力を発するって聞いたことがあります」

「富士山ピラミッド説に関連しているの」

「いいえ、キッドが言ってました」

「ああ・・・」

「どうするんですか・・・迷っちゃいましたよ」

「仕方ない・・・今夜はここで夜を明かしましょう」

せっかくのチャンスなのに・・・身の危険に気をとられてなにもできないスト・・・勝浦くんだった。

翌朝・・・朝日を見た・・・勝浦くんは東を発見する。

「やった」

「あ・・・あの石・・・」

「え・・・」

「私たちを誘っているみたい」

「そっちは東じゃありません」

「ほら・・・道しるべよ」

「え・・・」

「あ・・・洞窟」

その・・・洞窟には豊国(九州の豊前豊後国)文字のような悪戯書きがあった。そして・・・血痕も・・・。

「勝浦くん・・・」

「鑑識しまーす」

本栖湖畔に集められた関係者一同。

「やはり・・・被害者は・・・シンポジウムで重大な発表をしようとして殺されたのです」

「何言ってんだ・・・被害者は嫉妬に狂った幼馴染がだな」

「僕は・・・あいつが婚約を破棄するっていうから殴ったんだ」

「え・・・」

「犯人は・・・婚約者です」

「え・・・」

「被害者と幼馴染は・・・幼い頃・・・霧の本栖湖でモッシーを目撃した・・・しかし・・・それは龍神伝説仕様の観光船だったのです・・・霧の日に観光船は運行されないので二人はモッシーだと錯覚したのです・・・婚約者の母親は当時、観光船の船長さんでした・・・そして婚約者の家庭は当時、父親の暴力に泣かされていました・・・ついにその日・・・母親が父親を殺し観光船で本栖湖に死体を投げ捨てた・・・二十五年の歳月をかけてついにその真実にたどり着いてしまった被害者は・・・自分が目撃したのがモッシーではなかったことを・・・シンポジウムで発表しようとして・・・婚約者に殺されたのです」

「そう・・・あの洞窟は・・・三人の秘密の場所だったから・・・もう一人の幼馴染が死体を発見したらまずいから・・・ボートで対岸に運んだのよ」

「なにも・・・殺さなくてもよかったのに・・・」

「私は頼んだ・・・発表しないでって・・・しかし・・・彼は私より研究を優先したのよ・・・それってひどい裏切りでしょ」

「まあ・・・確かに」

「研究者バカですな・・・」

「売名行為だろう」

「仕方ないですよ・・・世の中には・・・愛よりも都市伝説って人が実在しますから・・・」

「・・・ああ」

納得する一同だった。

「結局・・・今回は都市伝説は謎解けませんでしたね」

「何言ってるの・・・あの道しるべ・・・誰が私たちを洞窟に導いたと思っているの?」

「え」

「すべてを知っていた人々がいたのよ・・・樹海の民がね・・・」

「しぇしぇしぇーっ」

こうして・・・この世の秘密を解明するまであの世には行かない女が・・・日本のお茶の間に帰って来たのだった。

とにかく・・・秋の金曜日の夜は楽しく過ごせそうなのだ。

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2013年10月11日 (金)

もげっ・・・じゃなかった・・・へばっ(北川景子)親の七光の独身貴族は河原の・・・(草彅剛)

無節操性欲魔人の星野進(伊藤英明)は夜毎女を替えるプレイボーイなのだが・・・離婚調停中の妻はシークレットである。優香であればガッカリにも程があって楽しいのに。

ベッドを共にしたかどうかわからないが・・・マッサージをする女(大桑マイミ)、ランジェリー姿の女(蒼井そら)、バーで口説かれる女(池田嘩百哩)、「ヤマタノオロチ」を連呼するスウェーデンの女(Elina B)・・・こんな男に密かに憧れているらしい女・緒方須美花(蓮佛美沙子)は残念な感じだよなあ。

しかし、序盤から主要人物である星野兄弟とヒロインが次々と人に会い・・・ストーリーの輪郭を現していくテクニックはさすがの脚本家である。

まあ・・・好みにもよるだろうがな。

さあて・・・どうしようか・・・やはり・・・そこそこ面白いんだよなあ。

このまま・・・ラブコメにならないで・・・映画制作のドタバタに持って行くのもありなんだけど・・・きっと三角関係になっちゃうんだよなあ。

おしゃれになるのかなあ。

とにかく・・・木曜日は・・・しばらく様子見で・・・。

で、『独身貴族・第1回』(フジテレビ20131010PM10~)脚本・佐藤嗣麻子、演出・武内英樹を見た。脚本家は言わずと知れた映画「エコエコアザラク -WIZARD OF DARKNESS-」「エコエコアザラクII -BIRTH OF THE WIZARD-」の監督である。両作品のSFXスーパーバイザー山崎貴なんだな。こんなとこでラブコメ書いてないで「エコエコアザラク」シリーズを見せてもらいたい。演出家は映画「のだめカンタービレ」とか「テルマエ・ロマエ」の監督であるが・・・テレビドラマ的には「女信長」からここである。なんか・・・両者ともに物凄く力余っちゃう感じでございますよねえ。おしゃれになりすぎないように注意したいくらいだよな。

映画制作会社「キネマ・エトワール」社長の星野守(草彅剛)は・・・運転手つきの高級車に乗り、高級マンションに暮らし、高級な靴を履いて、高級なワインを飲んで、高級そうな女(大谷英子)とデートする男である。

ただし、女をお持ち帰りすることはなく、必ず女の家に送り届ける紳士なのである。

なぜなら・・・一人暮らしの快適さを女という他人に破壊されるのが怖いからである。

ちなみに大谷英子と言えば・・・「ゴーイング マイ ホーム」では加瀬亮の内縁の妻で、「最高の離婚」では綾野剛の愛人の一人である。星野守の退屈なデート相手を勤めるのはある意味、豪華キャスティングと言える。

とにかく・・・星野守は映画を愛する男だが・・・その力量は・・・お坊ちゃん的なものであるらしい。しかし・・・それを語るのは・・・故・石田太郎が収録中に死去するアクシデントが発生し、急遽、代役を務めることになった津川雅彦が演じる伝説の脚本家・高倉雄二なのである。

星野守は亡父から受け継いだ「キネマ・エトワール」を赤字経営で身売り寸前まで追い込んでいるらしい。

そこで起死回生の一打として・・・引退同然の高倉雄二を担ぎだしたのだった。

「お前の父親と俺は樫の木のような固い友情で結ばれている・・・だから・・・あいつの息子であるお前のために俺は書く」

その言葉を信じて脚本の完成を待つ守だったが・・・期限が迫っても脚本はあがってこないのだった。

その点を危惧するのが守の弟・進(伊藤英明)である。「キネマ・エトワール」専務として・・・もしもの場合のための対策を講じるように進言するが・・・お坊ちゃんの守は首を縦にふらないのだった。

ヤマタノオロチと噂されるほど女癖の悪い進は離婚調停中で家も貯金も妻に奪われ、慰謝料について妻側の弁護士・小林征嗣(篠井英介)と交渉中の身の上である。身持ちの悪さを小林に監視されているにも関わらず女遊びが止まらないという・・・守以上に始末に負えないタイプなのだった。

そんな星野兄弟を案ずるのが・・・「キネマ・エトワール」のオーナーであり、叔母の亜希子(デヴィ・スカルノ)だった。

亜希子は星野家存続のために・・・守に映画配給会社・会長令嬢の現王園玲子(平岩紙)とお見合いを強要するのだった。

しかし・・・「女」はつまらないものと祖父あるいは父または伯父(品川徹)に教わった守は玲子の話を聞き流す「山手線外回りでターミナルに着いたらナルホドとタシカニと唱える呪文」で凌ぐのだった。

「私、占星術が趣味なんですけど守るさんと私は相性抜群なんです・・・」

「なるほど」(品川→大崎→五反田→目黒→恵比寿→渋谷)「たしかに」(→原宿→代々木→新宿)「なるほど」(→新大久保→高田馬場→池袋)「たしかに」(→大塚→巣鴨→駒込→田端→西日暮里→日暮里→鴬谷→上野)「なるほど」(御徒町→秋葉原)「たしかに」(→神田→東京)「なるほど」(→有楽町→新橋→浜松町→田町)「たしかに・・・」なのである。

それでも話が終らないときは内回りにチャレンジするのだった。

一方、「キネマ・エトワール」がかって製作した映画「あじさい」に感銘を受け・・・老いた母親(市毛良枝)を故郷・青森に残したまま脚本家を目指して上京した春野ゆき(北川景子)は苦節五年・・・書きあげた脚本をコンクールに応募すれども落選の日々である。

「へばっ・・・」

そんなゆきと交際中の男(和泉元彌)は何故か、両親とテルマエロマエな祖父と家族ぐるみでゆきに結婚を申し込む。専業主婦として・・・家庭を第一に考えてほしいという夢も希望もないプロポーズを断固拒否するゆきだった。

「だけど・・・貯金残高三万円でどうすんのよ」と親友の小原沙織(西原亜希)に問いつめられるゆき。

「沙織の会社で雇ってもらえないかな」と泣きつくのだった。

ハウスクリーニングのアルバイトを始めたゆき・・・その手にはモップである。

モップ・ガールなのである。もうそれだけでキッドは少し嬉しいのだった。

そして・・・運命は・・・星野守のマンションの清掃のお仕事へと・・・ゆきを導くのだった。

貧乏な清掃員こそが・・・北川景子にふさわしい役なんだよな・・・やはり。

叔母の亜希子から・・・次の作品がこけたら玲子と結婚することを約束させられた守。

配給会社の「日本映画」の担当者・水島(梶原善)からは高倉雄二の脚本を早く確認させてもらいたいと急かされる。

しかし・・・期限を目前にして高倉は「樫の木は折れた」とメモを残して失踪してしまうのだった。二夜連続失踪事件である。

だが、進の雇った探偵が首尾よく、長野の田舎で高倉を発見し、あわてて現地へ向かう守だった。

けれども・・・高倉の言うことには・・・。

「書きかけの脚本・・・そんなものないよ・・・白紙だよ・・・大体、お前の親父との樫の木のような固い友情なんて薄っぺらな言葉をうかうか信じるようじゃ・・・ろくな映画なんて作れやしねさ。お前は親父と違って企画力も人の能力を見極める力もてんでありゃしねえ。大馬鹿野郎のコンコンチキよ。社長なんて笑わせるない。お前はただの親の七光ってことだぜ」

悪鬼のような高倉の言葉に打ちのめされ・・・河原に佇む守る。

まさに・・・おれは河原の枯れすすき的な守る・・・。

しかし・・・流れて来たのは「禁じられた遊び」のメロディーだった。

一方、最後の応募作品「八月のボレロ」が落選したゆきは・・・ついに帰郷を決意する。

けれども・・・ついに清掃していた家が・・・「キネマ・エトワール」星野守社長宅だと気がつくのだった。

最後の望みをかけて・・・連絡先と・・・脚本を・・・部屋に置くゆきである。

そして・・・絶望して帰宅した守は・・・藁にもすがる気持ちで「八月のボレロ」を読むのだった。

「最悪だ・・・構成もストーリーも・・・だがセリフはいい・・・脚本家の魂を感じる」

守に呼び出されたゆきは・・・一ヶ月の約束で脚本家見習いとして・・・守のアシスタントを勤めることになるのであった。

進から・・・映画製作の進行役であるラインプロデューサーの川越裕太(藤ヶ谷太輔)を紹介されるゆき。

その様子を進に気がある秘書の緒方須美花(蓮佛美沙子)は嫉妬深くみつめるのだった。

初回・・・二人の出番はほとんどここだけです。

こうして・・・ゆきは突然・・・憧れの映画製作の現場に迷い込むのだった。

だが・・・ゆきの作品は本人に無断で「八月のボレロ/高倉雄二」として進が「日本映画」に提出していたのだった。

どこからか・・・「潮騒のメモリー」が聴こえてくるのだった。

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ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~

悪夢ちゃん

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2013年10月10日 (木)

勝たなければ意味がないリーガルハイ(堺雅人)海物語の向こうにもう一人いる(新垣結衣)

見える・・・私には見える青酸化合物を横流したツチヤ(中尾明慶)のパチンコ台の裏でストーブ(小池徹平)が「海物語」を打っている姿が・・・。

どんだけ「ドラゴン桜」が好きなんだよっ。

そして・・・どうしても「あまちゃん」なのか。

忘れようぜ・・・「リーガルハイ」が始ったんだから・・・。

それにしてもいきなり「一人殺して死刑ネタ」である。

さらに冒頭は元カレになんだかんだ流出されたアイドルの話なのである。

千葉大生殺害事件(2009年)で東京高裁では村瀬均裁判長が一審死刑判決を破棄し、無期懲役を言い渡して殺害された荻野友花里さんの母親に「司法への期待を裏切られた。1人殺害だから死刑を回避するとはよく言えたものだ」と言わしめた翌日である。

もちろん・・・このドラマは冤罪もリスクのうちで死刑絶対賛成派のキッドとは違い死刑に対しては灰色の態度を示すのだが・・・それどころか・・・殺人者の罪を帳消しにする勢いである。

しかし・・・主人公が検事ならば「無罪だろうとなんだろうと絶対に死刑台に送りこむ」タイプなので一同爆笑なのである。

とりあえず・・・「人を殺したら死刑」という感覚のない人間は人でなしだと考える。

だから・・・東京都三鷹市の自宅前で高三女子・・・不慮の死を遂げた若き女優・鈴木沙彩様(映画「冷たい部屋」ドラマ「浅見光彦シリーズ44 砂冥宮」など)のご冥福をお祈りします・・・を殺害した男には何が何でも死刑になってもらいたいと考える。

素晴らしいインターネットの世界では死者を辱める闇の供養が延々と行われているのだが・・・天罰が下ればいいと思うよ・・・それが悪魔の言うセリフか。

ま、すべては妄想ビームのなせる業なのだな。タイムリーすぎるのは一種のミラクルなんだな。

そういうわけで・・・とにかく・・・「リーガルハイ万歳」は三唱しておきたい。

で、『リーガルハイ(第二期)・第1回』(フジテレビ20131009PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。公式ホームページを見ると・・・安藤貴和(小雪)はレギュラーであることが分かる。だから・・・この裁判は長引くのである。つまり・・・一話完結の縦軸と・・・安藤貴和を被告とする「運輸会社社長殺人事件&社長令嬢殺人未遂事件」の横軸が交錯する構成が予感されるのである。「裁判で絶対負けない男」古美門研介(堺雅人)が二審とは言えいきなり敗訴の展開も・・・最高裁を残している以上・・・絶対逆転があるわけだ。キーポイントは・・・事件後意識不明の被害者の娘が握っていると思われる。とにかく・・・古美門が・・・貴和の高速回転三所攻めを堪能し昇天する日を楽しみに・・・秋ドラマは恙なく進行して行くのだった。

彼氏とやりまくりアイドル南風るんるん(小島藤子)を処女と信じていたファンによる損害賠償を求めた集団訴訟!

「♪ごはんつぶがついているよと顔を近づけ

どさくさにまぎれて君

くちびるを奪った~

全部妄想だけど~

・・・って彼氏いない歴22年を装って、ファンの心に忍び寄り、金を強奪しておきながら、その実、盗んだバイクで走り回るような年中ジャージの彼氏と国道沿いのモーテルでくんずほぐれつ48手にあのてこのての快楽三昧、くわえてはならないものをくわえ、にぎってはならないものをにぎる赤裸々な日々を画像・動画で素晴らしいインターネットの世界に晒されて純情可憐なファンの心を殺傷したその罪は万死に値すると言えます」

たたみかける古美門を制するパートナーの古美門法律事務所・黛真知子(新垣結衣)だった。

「先生・・・それは言い過ぎです」

そこで古美門がバトンタッチするのは黛ではなく・・・弁護士職務経験中の検察官・羽生晴樹(岡田将生)だった。

「昔・・・アラブを旅した時に・・・現地の人にこういう言葉を教わりました。

水は油ではない。しかし、水は燃えないが飲むことができる。そして、油は燃えるが飲むことはできない。

意味はよくわかりませんが・・・なんだか心に響く言葉でした。

私は思うのです。愛に溺れるあなたも本当のあなただし・・・アイドルのあなたも本当のあなただ・・・。あなたの愛はけして妄想じゃない。あなたの愛の妄想ビームは確かに私の心を撃ち抜きましたから・・・」

何を言っているのかよくわからない羽生だが南風るんるんのファンクラブ会員だったらしい・・・しかし、その微笑みは・・・邪なアイドルの真心を呼び覚ますのだった。

「全額賠償に応じます・・・」

天使に戻ったアイドルに原告のファンたちは歓喜に震えるのだ。

とにかく・・・またしても勝利した古美門は連勝記録を更新し、多額の成功報酬を手に入れるのだった。

おなじみのスーパー執事の服部(里見浩太朗)の準備した祝勝会で・・・すっかり・・・古美門法律事務所の一員として馴染む羽生。彼は「天性の人誑し」なのである。古美門は黛を追い出しても羽生を弁護士として事務所に迎えたい意向である。しかし、羽生は検察官に戻る事を告げる。

黛の胸には甘酸っぱいざわめきが宿り、古美門は別れがつらくて涙をこらえきれないのだった。

とにかく・・・羽生はどこか人間離れしているのだ。

しかし・・・検察に戻った羽生を待ちかまえるのは・・・周囲に冷気を発生させる冷凍人間・醍醐実(松平健)主任検事だった。もはや・・・ウルトラマンとか仮面ライダーの世界がそこまで来ているらしい。

そして・・・異常に幽かな声でしゃべる黒ずくめの女性検事・本田ジェーン(黒木華)・・・。暗黒の朝ドラマ「純と愛」の邪なホテル従業員・田辺千香である。

すでに・・・魔界と化した検事トリオの誕生である。

魔性の女・安藤貴和の弁護を引受ける!

運輸会社社長と、その娘の殺害、殺害未遂容疑で一審死刑を宣告された安藤貴和は控訴し、二審が進行中だった。

しかし、弁護人である三木長一郎(生瀬勝久)事務所所属のベテラン弁護士・磯貝邦光(古舘寛治)は無罪を勝ち取るのは不可能と考え、その任を古美門に譲るのだった。

ライバルの古美門に案件を渡すことに複雑な感情を抱く三木。

しかし、自分が担当しても敗訴は濃厚であり、まして無能の極みである部下の井手(矢野聖人)にはまかせられない。

秘書の沢地君江(小池栄子)は「古美門先生にも無罪は勝ち取れないのでは・・・」と言われ・・・それも一興と思いなおす三木は・・・担当検事の・・・余命三十五年で肺に穴があいている冷凍検事・醍醐に協力を申し出る。

しかし・・・アイスミルクティーを奨めながら・・・醍醐は三木を拒絶するのだった。

そこには暴れん坊将軍のような自信が見え隠れする・・・。

なぜなら・・・絶対的証拠として・・・殺害に使われた毒薬の壜からは被告人の指紋が・・・そして被告人の部屋からは・・・同成分の毒薬が発見されていたのである。

弁護士として魔性の女・・・安藤貴和に接見する古美門と黛。

貴和には2度の離婚歴があり、元夫たちの不審死から保険金目当ての疑惑も持たれている。しかし・・・そのことで「一人しか殺していないのに死刑は逆に不当だ」と考える黛は情状酌量による減刑を提案する。

しかし、安藤貴和は黛の提案を鼻で笑うのだった。

「絶対に負けない弁護士ってその程度なの?」

「無罪になりたかったら二億円だ・・・」と古美門。

「そんなお金ないわよ・・・」

「出所したら・・・また誰かに貢がせればいい・・・」

「じゃあ・・・あなたに貢いでもらうってのはどうかしら」

「なに・・・」

「私もずっと拘置所生活で・・・たまってるのよ・・・凄いことしてみたくない・・・」

「凄いの・・・?」

「凄いわよ」

「わかった・・・必ず無罪を勝ち取ってみせる・・・救いを求める人がいれば手を差し伸べずにはいられないからな」

「先生・・・」と口をとがらせる黛。

「なんだ・・・また文句があるのか・・・」

「いえ・・・」

依頼者が否認している以上・・・その主張に沿うのが弁護士。

黛も少し・・・成長したらしい。

こうして・・・鬼畜でビッチな殺人犯の無罪を勝ち取るために裁判に挑む二人なのだった。

物的証拠なんてないさ、指紋なんて捏造さ!

服部の美味しいディナーを食べながらどうしても言いたいことがある黛。

「命が惜しければ金を払えなんて・・・脅迫じゃないですか」

「人命は金儲けの道具だ・・・何が悪い」

「とにかく、今回は証拠が揃いすぎてます。無罪は無理ですから減刑の方向で行きましょう」

古美門はテーブルから北三陸産のうにを取りあげて叫ぶのだった。

「もういい加減このくだり飽きたぞっ。あまちゃんだってひと夏越えたらうにをとりはじめるんだ・・・いい加減覚えたまえ・・・私が無罪と言ったら無罪・・・疑問の余地はない」

羽生が在籍するのをいいことに敵情視察に乗り込む古美門と黛。

魔神の巣窟ではなかった検察庁では冷凍人間、震え女、人誑しの三妖怪が待ち構えている。

「ショッカーの本部かっ」

「クーラー効き過ぎですかっ」

「部屋の日当たりが悪いものですから」

「ミルクティーでも・・・いかがですか」

「ありがたい・・・ぶほっ」

「お口にあいませんでしたか」

「なぜ・・・カップにアイスミルクティーを・・・」

「今年は秋でも猛暑日が続く異常気象ですから・・・」

「この異常気象もあんたたちの仕業じゃないのかとさえ・・・思えてきました」

「で・・・ご用件は」

「死刑求刑の根拠について・・・もう一度、争点を整理したいと思いまして」

「被告人は結婚詐欺の常習犯とも考えられます。本件についても充分な証拠があり、犯人であることは避けられないのに・・・本人にはまったく反省の色がないのです。残念ながら極刑しかないものと結論しました」

「充分な証拠とおっしゃいましたが・・・物証は現場に都合よく残された毒薬の壜についた被告の指紋と・・・被告の自宅から押収された犯行に使われたものと同様の毒薬だけですよね」

「これ以上ない証拠だと思いますが・・・」

「確たる証拠だと」

「確たる証拠です」

「指紋など簡単に制作できる時代。刑事など簡単に買収できる時代に・・・確たるものなどあるでしょうか」

「これはお戯れを・・・。刑事組織を信頼しなければ司法制度は成り立ちませんよ・・・古美門先生」

「しかし・・・間違いというのは常に発生するものですからねえ・・・それにしてもこの部屋は寒すぎる」

「滅菌ですよ」

「はっ?」

「この世は有害な細菌で満ち溢れているのです。高温多湿は黴菌の思うつぼだ。人間たるもの常に低温を目指し、きたるべきバイオ・ハザードに備えるべきなのです。菌の繁殖を許さない氷点下の世界が私の理想です」

「人間が凍え死ぬわっ」

「見解の相違ですな・・・しかし・・・世界は除菌に向かって進んでいるのですぞ」

「そんな無菌社会で品性下劣な輩が気温なきインターネット上に陰湿に繁殖する・・・不気味だとは思いませんか」

「さあ・・・下々のことはわかりまねますな」

「急に将軍様かっ・・・」

零下の世界・東京高等検察庁を脱出した古美門と黛は闘志を燃やして暖をとるのだった。

暖かい鍋を用意して待つ服部だった。

古美門は最後の手段として草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)を呼び出すのだった。

早速、警備万全で不審者の侵入は不可能と噂される被告が居住していた高級マンションに侵入する蘭丸だった。忍者に忍びこめない建造物などこの世には存在しないのだ。

そして・・・再開される法廷での審理。

冷凍人間はたちまち、裁判所を冷気で包むのだった。

「部屋が寒いんじゃなくて・・・あいつが寒いんじゃないか」

「ラゴラスかっ・・・」

「ペギラとかバルゴンとかギガスとかのメジャーどころでたとえたまえっ」

「古っ」

「じゃ、マーゴドン」

「まだ・・・ウルトラマン80ですよ」

「ペギラとかギガスとかは新シリーズで再登場しているから子供だって知ってるんだよっ」

「一理あります」

「もう・・・開廷していいかな」と裁判長は言った。

「被告人の自宅から押収された毒物ですが・・・犯行の証拠を自宅に保管しておくのは不自然ではないのですか・・・第三者が持ち込んだ可能性があるのでは・・・」

「被告人の自宅は厳重なオートロックでありセキュリティーは万全ですので第三者の侵入は困難かと思われます」

そこで呼び出される証人たち。

彼らは被告と同じマンションの住人たちだった。

「ご自宅に見慣れない物があったら持ってきてほしいとお願いしたのですが持ってきてくださいましたか?」

「はい・・・これです」

それは・・・毒薬の入った小壜だった。

「それは何でしょう?」

「分かりません。本棚の中にありましたが覚えがない」

次々と見知らぬ小壜が部屋に置かれていたと証言する住人たち。

「いったい、どこの誰がこのようないたずらをしたんでしょう?・・・しかし、問題なのはそこではありません。当マンションのセキュリティーは決して厳重なものではなく何者かがこのようなものを簡単に持ち込むことができてしまうということです。第三者が毒薬を持ち込むことが不可能だなんて・・・幻想にすぎないのです」

どよめく傍聴人たち。

「しかし、犯行現場に残された毒物の容器からは・・・被告の指紋が発見されているのです。動かぬ証拠です」

「被告人に話を聞いたところ警察の取り調べの中で毒物を見せられ半ば強引に容器を持たされたそうです。この指紋は・・・そのときに付着した指紋かもしれません」

「取調においてそんな事実はありません」

「指紋の人さし指に線みたいなものがありますね」

「線・・・ああ、ちょっとした切り傷か何かでしょう」

「供述調書のここが汚れてます」

「はあ・・・コピー機のインクの汚れでしょう」

「原本を調べてもらったところ・・・血でした」

「血?」

「調書にサインをしようとして触れたとき紙の端で人さし指を切ってしまったそうです。あれは痛いですよね。もう死ぬんじゃないかと思いますよね」

「・・・」

古美門と黛はかわいいポーズでダンスを踊りながらもう一度拡大された指紋の写真を覗きこむのだった。

「あれあれあれあれれ~。この人さし指の傷は調書の端で切ったときにできたものだ。調書は取調室で書くわけですからそれ以降に付着した血液ということになります。つまり、この指紋はその後・・・取り調べで容器を強引に握らされたときに付着したものにほかならないということになります・・・つまり、警察による証拠の捏造の証拠です」

大きくどよめく傍聴人たち。

「ああ・・・なんということでしょう。このようなでっちあげによって被告人は一審において死刑判決を受けたのです~。だが、しかし、今、証明されたことは容器に彼女の指紋はなく、しかも彼女の自宅には誰もが毒物を簡単に持ち込むことができる・・・ということが明らかとなったのです。つまり、物証なんてありゃしないのです。ああ、それなのに、それなのに~・・・何をもって毒物が彼女の物だと言うのでしょうか。何をもって・・・彼女が殺人犯だと言うのでしょう。何をもって・・・彼女を世紀の悪女と言うんでしょう。何もない。何もありゃしないんです。警察も マスコミも日本中の誰もが彼女が犯人だと決め付けていました。初めから用意された結論に向けて証拠が積み上げられていたんです!・・・こんなに恐ろしいことが21世紀になってもこの国にはまだあるのでしょうか。まるで気に入らない奴を集団レイプする小学生と同じだ。彼女・・・安藤貴和が犯した罪が仮にあるとするならばそれはただ一つ。マスメディアの作りあげた憶測による幻想によってなぜか世間に嫌われたことです。この国では世間様に嫌われたら有罪なんです。クラスでいじめられる小学生のように教科書に落書きされちゃうんです。この国は法治国家でもなければ先進国でもない。魔女を火あぶりにして喜んでいる中世の暗黒時代の如き小学校そのものだ!よく考えてください。われわれは何度、恐ろしい冤罪の悲劇を生んできたのか。何度、同じ間違いを繰り返せば気が済むのか。冤罪の被害に遭い、人生を奪われた人に何度頭を下げれば罪の深さを理解できるのか。いつになったら悔い改めるのでしょうか。それは今です・・・今なら・・・恐ろしい罪を犯さないですむ。まだ・・・引き返せます!・・・以上」

冷凍人間の血圧が一度上昇し、法廷の温度は急激に上昇する。

「いかん・・・汚染が加速する・・・」

あわてふためき・・・検察官トリオは法廷から撤収するのだった。

ワカメちゃん、確率変動リーチをするが高速回転三所攻めに心を奪われ過ぎる極度の横分け!

例によって勝負を確信する古美門。

しかし・・・魔性の女の魅力は古美門の明晰な頭脳にも悪影響を及ぼすのだった。

魔性の女と接見した古美門はご褒美として約束された「高速回転三所攻め」に心を奪われ、少しだけ色ボケしてしまうのだった。よくあることである。

一方、さらに勝利を決定的にしようと黛は毒物の入手ルートを検証するのだった。

そして・・・聞きこみによって毒物を扱う工場の元従業員・ツチヤにたどり着くのだった。

言葉を濁して立ち去ろうとするツチヤを「海物語」の確変リーチで釣りあげる天才ギャンブラー・黛だった。

「あなた・・・東大に行ったんじゃ・・・」

「行ったよ・・・で、薬品会社に勤めて・・・女で失敗して・・・気がつけばブルカラーさ・・・なんくるないさ~」

「同級生のよしみで・・・教えてちょうだい・・・情報源は必ず守るから」

「売ったよ・・・ネットでさ・・・一回だけだよ」

「相手は・・・」

「安藤貴和だよ」

「え・・・」

被告に不利な証言を引き当ててしまう弁護士・黛だった。よくあることである。

いつもなら・・・悩む黛を放置して・・・証人そのものを隔離してしまう古美門だが・・・恐ろしい「高速回転三所攻め」の魔力が古美門にうっかりミスをさせてしまうのだ。隔離もしくは隠滅すべき証人を放置してしまうのである。

たちまち・・・逆転する形勢である。

検察側は検察側証人としてツチヤを召喚し・・・安藤貴和が毒物を購入したことを証言させるのである。

「あなたが・・・安藤貴和に売ったという証拠はあるのですか・・・」

「何度かメールで連絡したり・・・意気投合して国道沿いのモーテルにも一度行って・・・エッチな画像も・・・」

「あなたには石野まこと石野陽子の区別がつかないのでは」

「裏番組のダンダリンで松坂桃李の母親役が石野真子、赤い糸の女で三倉茉奈の母親役がいしのようこです」

「う・・・」

証人隔離をしなかったうかつさに動揺した古美門は黛にやつあたりして解雇するのだった。よくあることである。

植物になりそこねた彼、一人にはなれない彼女!

新たな証拠の登場にうろたえる被告。

「なんなのよ、あなたそれでも世界最強なの?・・・私を死刑にする気なの?」

しかし、被告人質問によって逆転を約束する古美門である。

言葉の魔術師に不可能はないのである。

「君はただ・・・私の質問にすべてにいいえと答えるだけでいい。それで君は自由の身となり、私は1億円と高速回転三所攻めを享受する・・・」

一方で、黛は羽生検事を訪ねるのだった。

「どうして・・・あの証人を・・・発見できたの」

「最初から・・・警察と検察は彼を握っていたのさ・・・つまり隠し玉だ・・・いざと言う時の切り札として泳がせていたのだ・・・」

「・・・」

「実は・・・僕は検事を退官して・・・弁護士事務所を始めるつもりだ・・・よかったら・・・ウチにこないか・・・」

「やめて・・・私は・・・古美門弁護士のパートナーなんだから・・・そんなことできない」

明らかに・・・羽生の自宅に招かれたと勘違いした黛だった。

そして・・・被告人質問当日。

「・・・元工場作業員、土屋秀典があなたに青酸化合物を売ったと証言していますがホントにそうなんですか?」

「はい・・・」

「そうですよね・・・違いますよね・・・え・・・はい?」

「はい・・・」

何故か・・・青酸化合物購入を認める魔性の女だった。

予想外の被告人の裏切りに古美門の戦略は根底から覆るのだった。

「き・・・休廷を願います」

「何故ですか・・・」と裁判長。

「体調が思わしくないのです・・・」

「私は肺に穴があいているのに裁判は投げ出さない」と室温を下げる冷凍検事。

「・・・」

「質問がないのなら・・・続いて検察官」

「安藤貴和さんあなたは徳永光一郎氏と交際。総額1億円以上の金品を貢がせた。いつしかあなたは徳永氏との結婚を夢見るようになった。しかし徳永氏はこれを拒否し一方的に交際を終わらせた。そのことに怒り絶望し復讐を計画。土屋秀典より毒物を入手。2011年6月30日 あなたは徳永家の勝手口より侵入し鍋に用意してあったスープに毒物を混入。間違いないですね」

「はい」

「殺害しようと思って犯行に及んだんですか?」

「そりゃあ・・・そうじゃない?」

「何だこれは・・・何なんだこれは・・・これじゃ・・・神様だって勝てないじゃん」

判決。

「主文本件・・・控訴を棄却する」

つまり・・・東京高裁も死刑判決を支持したのである。

弁護士・古美門の敗北であった。

ショッカー本部。

「君は・・・死刑制度廃止派だったな・・・羽生くん」

「はい」

「私も被告人を極刑に処することは大変遺憾に思う。しかし、こつこつとばい菌を処理していくことが私たちの仕事です。これでまたこの国はほんの少し浄化されたのです」

「しかし・・・私はより高い理想を目指したいと思います」

「ほほう・・・それはなんだね」

「理想の世界を作ることです」

羽生は三木事務所の磯貝邦光、本田検事らとなにやら嘘臭い理想に燃えてNEXT INNOVATION的な新たな事務所を立ち上げるのだった。

「世界から勝負を消滅させる」それが羽生の理想だった。しかし、そのためには「古美門先生に勝利する必要」があるらしい・・・。

その頃、古美門は「人間やめます」の置き手紙を残して失踪していた。

街を捜す黛と服部と草の者・・・。

しかし、その頃、三木は温室で古美門を発見していた。

「何をしている・・・」

「植物になろうと思いまして・・・」

「そうか・・・俺は旅に出ることにした・・・だから・・・お前に黒星がついたことなど知らん・・・さっさと上告しろ・・・そして勝て・・・その頃、俺は帰ってくる・・・お前を地獄に叩き落とすためにな・・・」

「・・・」

そこへ帰宅する三人。

「先生」と呼びかける黛。

そして・・・暴行に次ぐ暴行である。

「え・・・ぐ・・・ちょっと・・・あ・・・うえ・・・ひど・・・ひでぶっ・・・膝が・・・腰が・・・背中が・・・痛・・・痛・・・嫌・・・やめてったら」

「私を一人にしないでください・・・一緒に戦ってください・・・私は裏切ったりしない。弁護士として依頼者が不利になる情報を売ったりしませんから。私はあの証拠を握りつぶしたんです・・・勝負はこれからでしょう・・・植物になったりしている暇なんかないんです」

「そんなことは・・・もう少し・・・戦力になる奴が言えよ」

しかし・・・黛は面会者記録を調べ上げていた。

「被告人質問の前日・・・吉永慶子という偽名を使った何者かが被告に面会しています・・・この女が・・・なんらかの鍵を持っていると考えられます」

「高速回転三所攻め」への道がまだ完全に閉ざされていないと知った古美門は再びいろいろな意味で立ち上がるのだった。

つづく!

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2013年10月 9日 (水)

よろず占い処陰陽屋へようこそと彼(錦戸亮)は優しく言いました(鈴木梨央)

ここまで・・・秋ドラマは「ダンダリン」→「ハクバノ王子サマ」→「ノーコン・キッド」→「49」→「刑事のまなざし」とやってきてもっとも脚本に破綻がないのが・・・「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」である。

ここまでの作品は谷間候補だったわけだが・・・それにふさわしい内容だったと言える。

しかし・・・「よろず占い処」に関して言えば・・・場合によってはレギュラー化もありえる内容なのである。

だが・・・ここからが・・・秋ドラマの強力ラインナップの登場なのだった。

だから・・・おそらく・・・これが最後のレビューになるかもしれない。

それなのに・・・倉科カナをタイトルに入れられなくて断腸の想いだ・・・。

言いたいのはこの一点のみである。

で、『よろず占い処 陰陽屋へようこそ第1回』(フジテレビ20131008PM10~)原作・天野頌子、脚本・黒岩勉、演出・土方政人を見た。東京北区にある王子神社は王子の地名の起りである。王子は熊野権現の神仏習合神であり、その本性はアマテラスである。特にワカノミコ(若王子)としての神格を示している。巫女としての天照大神の神格化と言ってもいいだろう。その使い神として「王子稲荷」がある。王子稲荷は東国三十三国の稲荷総司であり、言わば稲荷神の東の頭領という格式がある。つまり、若きアマテラスがキツネ神を使役するというファンタジー丸出しの展開を中世から伝承しているのだ。都市化された現代では知る由もないが・・・王子の名物は狐火という怪異現象だったのである。

その地へふらりと現れた陰陽師・安倍祥明(錦戸亮)は元・六本木のナンバーワンホスト・ショウだったのだ。

しかし、ホストが陰陽師になったと言うよりは、陰陽師がホストもやっていたというのが本筋らしい。

駒形千鶴(ふせえり)の営むテルマエロマエな銭湯でヌードをサービスした祥明は、王子神社の巫女・鮎川珠希(柏木由紀)の前に平安風陰陽師装束で現れる。

祥明は王子のとある商店街にある内藤源次郎(杉良太郎)が営む居酒屋「狐火」の地階の空き店舗で怪しい占いの店「陰陽屋」を開業したのである。

内藤源次郎の孫は高校教師の只野路子(倉科カナ)で留年が心配される生徒・沢崎瞬太(知念侑李)と瞬太の母親・みどり(南野陽子)と三者面談の際中であった。

瞬太は授業中、ほとんど居眠りをしているらしい。

なぜなら・・・狐の化身である瞬太には・・・義務教育はまだしも・・・高校の授業は難しすぎるのである。

しかし・・・人間である・・・路子やみどりには理解不能なのであった。

その帰り道・・・運命に導かれてみどりと瞬太は「陰陽屋」に入店してしまう。

夫の勤務する会社が倒産し無職となった上に夫の母親の介護に追われるみどりは生活に疲れていたのだった。

洞察力によって大体の事情を察した祥明は「すべて・・・お姑さんに悪い霊が憑いていることが原因」と喝破する。

「急急如律令」と格式より上の律令を持ち出して悪霊を即刻退散せしめる祥明。

そして、「ただし・・・この悪霊は嫁苛めが趣味なので戻ってくる恐れがある・・・介護は夫にまかせて・・・元の職業の看護師として復職するように」と奨めるのである。

料金一万円を請求され、母親を侮辱されたような気になった瞬太は・・・獣なので祥明を殴ってしまうのだった。

息子が暴力をふるったために警察沙汰になるのを恐れるみどり。

しかし・・・瞬太の本性を「キツネ」と見抜いた祥明は東京都の最低賃金869円を下回る時給700円で瞬太を雇用することを持ちかけ母子の承諾を得るのだった。

祥明は「呪」(言葉)によって巧みに母子を誘導し、キツネを使役する権利を得る陰陽師の常套手段を使ったのである。

その夜、居酒屋「狐火」を訪れた祥明がかって・・・売れっ子ホストだったことを見抜く・・・昔、ホスト狂いをしていたらしい巫女の珠希。

元ホストの占い師・・・そのいかがわしさに地元の人々はさっそく所払を画策するのだった。

しかし、正義感の強い路子は祥明に直接特攻をかけるのだった。

「私の教え子に変なことしないで」

「変なことなんてしませんよ・・・それより・・・あなた・・・せっかく美人でなかなかのプロポーションなのに・・・まったく・・・男性にもてないでしょう・・・」

「ぐ」

「人の話に耳を傾ければ男運が向上します」

「うぇ」

いい年して処女であることを看破されて・・・退散する路子、かわいいよ路子なのだった。

開業した祥明の元へ・・・瞬太が配布したかわいい人形(ひとがた)に誘われて来店する女子小学生・里見由実香(鈴木梨央)がやってくる。

「お父さんにキツネがついてしまったの・・・なんとかしてください」

由実香の父親(戸次重幸)が母親(春木みさよ)に暴力をふるっているというのである。

「証拠の写真もあります」と由実香は滅茶苦茶になったキッチンの写真を見せるのだった。

一目で事情を察した祥明は「家庭内暴力は警察に相談してください」と由実香の頼みを断るのだった。

すると瞬太が「それじゃあんまりだ」と父親を説得するために里見家に乗り込む。

しかし、家にいた由実香の母親は夫の暴力を否定するのだった。

仕方なく由実香の父親の帰宅を待ち伏せする瞬太。

夜になっても戻らない瞬太を心配するみどりから連絡を受けた路子は陰陽屋に怒鳴りこむ。

「居場所はわかっています」と祥明は動ぜず里見家を向かう。

瞬太は張りこむうちに眠りこんでしまったのだった。

起こされた瞬太はキツネの耳で・・・家庭内の騒動を聴きとる。

里見家では由実香が涙を流し、母親が父親にイスを振り上げていた。

暴力をふるっていたのが母親であることを「証拠の写真」で見抜いていた祥明。

散乱する食器は安物ばかりで高価なものは片付けられていたからである。

「あんた・・・なによ・・・」

「娘さんから・・・狐憑きをなんとかしてくれと頼まれた陰陽師です」

「狐つき・・・」

「しかし・・・狐がついているのではなく・・・物凄い悪霊がたたっているのです」

「たたり・・・」

「そうです・・・最近、妙にイライラしませんか」

「そういえば・・・」

「ご主人は会社でトラブルがあるのではありませんか」

「なにもかもが厄介なんだよ」

「すべて・・・たたりなのです・・・ごらんなさい・・・娘さんがあんなに泣いているのに・・・それにも気がつかないほど・・・」

「たたりなんですか」

「たたりなんです」

「どうすれば・・・」

「たたりは私が祓います・・・しかし・・・悪霊がとりつかないように・・・御夫婦で話あわれることも大切です。お互いの困ったことなどを打ち明け合うのも効果があります」

「そんなことで・・・」

「悪霊はこの世の雰囲気を悪くしますが・・・言葉には無力なのです。言葉のあるところに悪霊は立ち入れないのです」

祥明の呪によって平静さを取り戻した夫婦は和合するのだった。

里見夫妻もまた・・・生活に疲れていたのである。

ほとんどの夫婦は生活に疲れているのだ。

「もう・・・大丈夫だよ」と由実香に微笑む祥明。

「あの・・・御礼は・・・」

「子供にお金をもらうわけにはいかないんだよ」

数日後、町内会では「陰陽屋を追い払う決議」が賛成多数で可決されていた。

そこへ・・・「陰陽屋さんを追い出さないで」という嘆願書を持ってくる由実香と友達の子供たち。

街の顔役である内藤源次郎は「もう少し様子を見よう」と裁くのだった。

「まさか・・・あの男に頼まれたの」と路子。

「そんなこと・・・どうでもいいじゃありませんか・・・みんなが幸せならそれで」と由実香。

すべて祥明の呪のなせることだった。

白黒をはっきりつけないこと・・・これこそ陰陽師の極意なのである。

八卦も陰陽五行も突き詰めれば太極に還るのみだからだ。

そこでは陰も陽もないのである。

こうして・・・キツネである瞬太は祥明の式神(使い魔)となったのだった。

瞬太が捨て子であることは言うまでもないだろう。

なかなか奥深い・・・陰陽道の極意を示す物語が始ったのである。

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2013年10月 8日 (火)

刑事のまなざしには映らない愛が高きから低きに流れるシャンパンタワー(岩佐真悠子)

ひっそりと公開されたと言える石ノ森章太郎生誕75周年記念作品・実写版・「009ノ1 THE END OF THE BEGINNING」(2013年9月7日封切)の主人公・ミレーヌ・ホフマンを演じるのが岩佐真悠子である。いわまゆもいつしか26歳なのだな。

主演映画もある女優なのにその・・・ひっそりとした存在感。

もう、どんどん裏社会の女専門女優になっていくのか・・・。

グラビアアイドルあがりの女優の意地をみせてもらいたいものだな。

まあ・・・そういう女優を使って「ものすごいドラマを作ってやる」という気迫がスタッフにないことは間違いない。

しかし・・・わかる人にはわかる・・・たとえ公式のあらすじ紹介にクレジットがなくても、ゲスト・アクターの中で存在感は岩佐真悠子が一番だったことを。

・・・それは意見が分かれるところだな。

で、『月曜ミステリーシアター・刑事のまなざし・第1回』(TBSテレビ20131007PM8~)原作・薬丸岳、脚本・岩下悠子、演出・鈴木浩介を見た。この枠の前作品「名もなき毒」はこの枠としては最高傑作といえる出来栄えだったが・・・今回はそれほどのインパクトはないがこの枠としてはそれなりに渋みのある展開になっている。この味に馴染むかどうかは人それぞれであろう。キッドは主人公の「犯罪加害者の心への立ち入り方」がやや偽善的で押し付けがましいと感じました。まあ、「情に訴える」というのは古典的手法ですからねえ。しかし、この枠の特徴である勧善懲悪的で・・・下手をすれば犯罪そのものが偽善的という・・・なんだかわけのわからない展開からは逃れていたと考える。

連続放火事件が発生中の警視庁東池袋署(フィクション)管内、新たな放火事件かぜ発生し、初めての死者が出る。

東池袋署刑事課強行犯係に配属されたばかりの新人刑事・夏目信人(椎名桔平)は現場から立ち去った不審な男性を追跡し、独自の捜査を開始する。

夏目は少年犯罪者の更生に関与する法務技官だったが、10年前に娘・絵美(山田杏奈)が通り魔事件に巻き込まれたことを契機に警察官に転職した変わり種だった。

絵美はそれ以来、現在に至るまで昏睡状態で・・・妻の美奈代(吉田羊)からは看護疲れが匂い立つ。

夏目が何を思い、刑事になったかはまだ詳らかにされないが・・・なんとなく・・・そういう悲劇にとことん向き合いたい気持ちは感じられるのだった。

東池袋署刑事課強行犯係の福森誠一刑事(松重豊)は夏目を生温かい眼差しで見つめ、年下の先輩刑事・安達涼子(小野ゆり子)はやや批判的に見つめるのだった。

この他にやや底の浅い係長の菊池大雅(要潤)、何か事情を知っている警視庁捜査一課の長峰亘刑事(北村有起哉)が配置されている。

カウンセラーで田辺久美子(板谷由夏)も配置されているが・・・最近、演技がワンパターンで鼻についてきている。こういう現象って不思議だよなあ。持ち味だからしょうがないのになあ。しかし、メイクを変えるとかなにか工夫しないと・・・存在自体が鬱陶しい感じになっていくのである。

焼死体が運ばれた病院には死者・佐藤英明(山中聡)の内縁の妻である看護師の前田恵子(森口瑤子)が勤務していた。

現場から立ち去った男は恵子の連れ子で高校生の前田裕馬(野村周平)だった。

ゲーム・センターでクレーン・ゲームに熱中する裕馬をじっと観察する夏目刑事。

死んだ佐藤は最悪の男で、裕馬の学費のための貯金をキャバ嬢(岩佐真悠子)に貢ぎ、恵子や裕馬に暴力をふるっていた。

恵子が担当する患者(竜雷太)は恵子のアリバイを証言する。

その病室には月下美人が飾られている。

「月下美人は一年に一度しか花を咲かさないと言いますね」

「いや・・・手入れを怠らなければ二回咲くこともある」

「花言葉はつややかな美人ですか」

「はかない恋じゃろう」

「いや・・・きっと・・・快楽ですよ」

とにかく・・・夏目には真相が見えているのだった。

焼死体の消化器からは・・・オムライスの材料が発見されていた。

また・・・焼死体からは恵子が常用する睡眠薬が検出される。

連続放火魔が逮捕され・・・放火殺人は別件であることが分かる。

放火に使われたガソリンの成分は裕馬のバイクのタンクのものと一致する。

刑事たちの疑惑のまなざしは恵子と裕馬の母子に注がれていく。

最悪の男をどちらかが・・・あるいは共謀して殺したのではないか。

しかし・・・夏目は関係者へのインタビューによって真相に迫って行くのである。

「君はなんで・・・クレーンゲームに熱中していたんだ」

「父さんが・・・クレーン車の運転者だったんだよ」

「お母さんのことはどう思う・・・」

「あんなの母親じゃない・・・ただの雌犬だよ」

刑事たちは男が貢いでいたキャバ嬢も追及する。

「あの日は・・・ホストやってる彼氏の誕生日で・・・あたし、お店を休んだのよ・・・かわいそうな子ねえ・・・学費がシャンパンタワーになっちゃったんだから」

艶然と微笑むキャバ嬢だった。

裕馬の学費は恵子から佐藤へ、佐藤からキャバ嬢へ、キャパ嬢からホストへと水が流れるように流れていったのだった。

夏目刑事は焼け跡のゴミ箱からマッシュルームの開いた缶詰を発見する。

裕馬が自首するが刑事たちは恵子のアリバイを崩していた。

恵子に老いらくの恋をしていた患者の偽証だった。

恵子は自首をするのだった。

しかし・・・夏目刑事は取り調べで・・・情状酌量を許さない殺意の在り処を追及するのだった。

「あんた・・・誰を殺そうとしたんだい」

「何のことですか・・・」

「息子はあんたを庇って・・・自首したんじゃない・・・あんたから逃げたんだよ・・・なぜなら・・・オムライスは・・・息子の好物だったからだ・・・」

その日、死んだ男は・・・家にいないはずだった。しかし、女にふられて戻って来た。そして・・・裕馬が食べるはずだった睡眠薬入りのオムライスを食べたのである。

「皮肉なことに・・・あんたは息子を殺そうとして・・・愛人を殺してしまったんだろう」

「・・・証拠はないでしょう」

「ああ・・・ないよ」

「私が人を殺したことには間違いないでしょう」

「だが・・・母親に殺されかかった息子の心を救えるのは・・・あんただけじゃないか・・・なにしろ・・・息子は知ってるんだ・・・オムライスが誰のために作られたか・・・なにしろ・・・死体からはマッシュルームだけが発見されなかったんだから」

幸せになりたかった鬼畜と息子に縛られた母親の間で揺れ動く恵子だった。

「正直に告白して・・・罪を償うことでしか・・・あんたの息子は・・・立ち直れないんじゃないかな」

そして・・・刑事は救いようのない話を何とか救おうとしているのだが・・・それが成功しているかどうかはお茶の間の判断に委ねられる。

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2013年10月 7日 (月)

府県会規則第14条・選挙資格は満20歳以上の男子でその郡区内に本籍を定め地租5円以上を納める者でごぜえやす(綾瀬はるか)

明治11年(1878年)7月22日、府県会規則、郡区町村編制法、地方税規則の地方三新法が公布される。

府県会規則第1条は「府県会は地方税を以て支弁すべき経費の予算及びその徴収方法を議定する」と府県会の目的を定めている。

第13条に定められた議員資格は「満25歳以上の男子でその府県に本籍を定め、満三年以上居住し、地租10円以上を納める者」であった。

明治維新から十年を経て、ようやく、地方自治が幕開けしたことになる。

ただし、その権限は府知事・県令に比べて小さかった。

もちろん、選挙による地方議会の発足が民主主義への第一歩であることは間違いない。

京都府議会は山本覚馬という指導者を得て独自の発展を見せたとも言える。

明治12年(1879年)1月にはサミューダ・ブラザーズ社(英国)で3,717トン3,500馬力クルップ1861年型 24cm(20口径)単装砲4基を備えた装甲艦「扶桑」が竣工し、6月11日 横浜に到着。初代艦長は後の連合艦隊司令長官である伊東祐亨である。

欧米諸国の主力艦の排水量一万トンに対していかにも弱小軍艦であるが・・・当時のアジアなおいては唯一の近代的装甲フリゲート艦であった。

そして、明治13年(1880年)3月には村田経芳による村田銃が最初の国産小銃として大日本帝国陸海軍に採用され制式化される。

国内の政治をそれなりに進化させながら、近代国家としての軍備を向上させる。

明治新政府の苦闘は続いて行くのである。

リベラルなアメリカ式プロテスタントによって信仰に目覚めた徳富猪一郎(蘇峰)はジャーナリストとして理想の国家を追求するうちについには富国強兵の夢に傾倒して行く。

で、『八重の桜・第40回』(NHK総合20131006PM8~)作・山本むつみ、脚本・吉澤智子、演出・末永創を見た。変則脚本家システムは続く。作者はちょっと総合的な実力不足だったのか・・・。まあ、幕末と違って明治維新となると全体像を把握することがさらに困難になるからねえ。どうせなら淡々とゲゲゲの明治になっちゃってもいいのにねえ。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は「親思う心に勝る親心」的な新島襄の父親で後にキリスト教に改宗する元・安中藩士(最後の安中藩主・板倉勝殷、安中藩は後に群馬県に編入)・新島民治の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ある時は柳生又十郎(「春の坂道」)、ある時は中村半次郎(「勝海舟」)、ある時は松永久秀(「信長 KING OF ZIPANGU」)、ある時は尼子国久(「毛利元就」)、ある時は榊原康政(「葵徳川三代」)、またある時は北条氏政(「江 姫たちの戦国」)・・・常連登場で大河ドラマとしては締りますな。

Yaeden040 明治11年(1878年)3月、東京では東京商法会議所(後の東京商工会議所)が設立、電信中央局が開業など近代的な組織化や、インフラ整備が進行する。5月、紀尾井坂の変により、大久保利通が暗殺される。6月、市ヶ谷台に陸軍士官学校新築される。西南戦争への内応を疑われ禁錮5年で陸奥宗光が投獄された山形監獄で火災発生、内務卿・伊藤博文によって宮城監獄に移送。7月、地方三新法公布。8月、陸軍近衛兵部隊が武装反乱、大蔵卿・大隈重信公邸を銃撃するも二時間半で鎮圧される。動機は西南戦争の行賞に対する不満であったとされる。首班53名は銃殺刑に処せられる。11月、ロシアとイギリスの対立による第二次アフガン戦争勃発。12月、大日本帝国陸軍参謀本部が独立。陸軍卿・山県有朋が軍人訓戒を頒布する。明治12年(1879年)4月、琉球藩が廃止され、沖縄県が設置される。東京湾フェリー運行開始。6月、東京招魂社が靖國神社と改称される。石破茂の曾祖父にあたる金森通倫、後の横浜市長・市原盛宏らが同志社英学校を卒業する。9月、諸外国との条約改正に失敗した第4代外務卿・寺島宗則が辞職。第5代外務卿に井上馨が就任する。12月、函館、東京などで大火相次ぐ。明治13年(1880年)2月、横浜地震発生。4月、日本地震学会発足する。集会条例が公布され、自由民権運動を抑圧する。13日、新島襄が朝礼の際、自分の掌を杖で打ち、自らを罰して生徒に訓する「自責の杖」事件発生。17日、祭政一致・大教宣布の一環として天照皇大神・豊受大神を主祭神とした日比谷大神宮が落成する。5月、米国長老派教会系医療伝道宣教師ジェームス・カーティス・ヘボンが新約聖書の邦訳を刊行する。槇村正直京都府知事と山本覚馬京都府会議長が対立。徳富猪一郎が学生騒動を主導し同志社英学校を卒業目前に中途退学する。この頃、校長・新島襄は同志社大学の設立準備を始めた。

新島襄と八重は上京していた。外務省より、同志社英学校について問責があったからである。

しかし、通達を出した寺島外務卿は辞職し、その席には井上馨が着いていた。

「遠路遥々御苦労であったのう。しかし、あれは・・・条約改正の件が八方塞がりになった寺島のやつあたりじゃ・・・米国から金をもらって学校を作るなんていう美味い話をわざわざお釈迦にするなんて愚の骨頂じゃ。寺島は学問のしすぎで頭が固くなっているのでありますな」

「はあ・・・」

「俊輔(伊藤博文)から聞いてますぞ、新島くんは吉田松陰先生より密航がうまかったそうですな。先生は口は達者だが、事にあたるとやみくもでしたからねえ」

「・・・」

「はっはっは・・・そう固くならんでもよい。聞くところによると先生の奥方は・・・女豪傑じゃそうな」

「いや・・・それは・・・」

「会津の女ガンファイターと訊いておりますぞ」

「確かに・・・妻は砲術家の山本家の出身ですが・・・」

「うん・・・そこで・・・御相談がある・・・なに・・・これは岩倉卿からのお頼みなのだか・・・」

「・・・といいますと・・・」

「一月ほど・・・奥方をお借りしたい・・・それで・・・同志社英学校廃校の件はチャラであります」

「・・・え」

太平洋上を訓練航海中の一等戦艦「扶桑」のブリッジに三人の洋装の女性が乗っている。

新島八重と、三日月、月の輪の三人のくのいちである。

「函館まではあと10時間ほどで到着するでごわす」

「凄いものですね」

「いや・・・欧米列強の軍艦に比べたら、ミニ軍艦と言うべき船でごわす」

「そうなのでごぜえやすか」

「まだまだ海軍はこれからでごわす・・・ところで・・・函館では戦でごわすか」

「さあ・・・それは着いてみないと・・・」

「小松の姫の鉄砲の師匠とお伺いもうしたが・・・」

「確かに・・・お教え申しあげやした」

「やはり・・・輸送している新式火薬は・・・吸血鬼殲滅戦用なのですな」

「ご存知でしたか」

「函館では旧新撰組の永倉新八や藤堂平助など小樽の兵も応援に駆り出されているとか・・・」

「藤堂様は・・・京で討ち死になさったのでは・・・」

「ふふふ・・・あのような輩はなかなかにしぶといですからな・・・井上馨卿ほどの不死身ではないにしろ・・・なかなかのものでごわす」

永倉新八の名を聴き、三日月の頬がやや紅潮する。

三日月は島原芸妓の小常に永倉が生ませたお磯が本名である。後の上方の女役者・尾上小亀なのだ。

八重はそのことを知っていたが素知らぬ顔で呟いた。

「函館の町を半分ほど焼かねばならぬかもしれませぬ」

「ほう・・・それは豪儀な・・・」

扶桑艦長・伊東祐亨は顔を綻ばせた。

神戸海軍操練所で坂本龍馬と同期生である伊東は科学忍者隊の隊員だった。

つまり、伊東は忍びの世界では科学忍者隊長・八重の部下だったのである。

八重たちは陸海軍と合同し、吸血鬼討伐戦を行う。

その結果、函館の町は二千戸が全焼する大火に見舞われるのだった。

関連するキッドのブログ→第39話のレビュー

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2013年10月 6日 (日)

そんなバナナと誰もが言いたい踊る大捜査線 THE FINAL新たなる希望(小橋めぐみ)と49(山本舞香)

気がつくと・・・「踊る大捜査線」シリーズについての本格的な記事はこのブログにはないのである。

まあ、最初のシリーズのオンエアが1997年なので・・・2006年開始のこのブログに記事がないのは当たり前だが・・・テレビ朝日を代表する「相棒」シリーズの記事があって・・・フジテレビを代表する「踊る大捜査線」の記事がないのはなんだか・・・ちゃらちゃらしてないみたいな気がする。

基本的にテレビはおバカなものだが、NHKは生真面目におバカだし、日本テレビはすっきりとおバカだし、TBSテレビは思いっきりおバカだし、テレビ朝日はじっくりとおバカだし、テレビ東京はしょうがなくおバカなのであって・・・ちゃらちゃらしたおバカであるフジテレビもキッドはこよなく愛しているのだ。

だから・・・本当はFINALなんだか新たなる希望なんだかわからない・・・この辺がちゃらちゃらしているわけである・・・このシリーズの劇場版4の地上波初登場を記念して・・・「あまちゃん」後のはじめての土曜日のお茶を濁しておく。

ついでに・・・深夜の野島ドラマにも触れるあっさり二本立てでお届けします。

で、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望(2012年公開)』(フジテレビ20131005PM9~)脚本・君塚良一、監督・本広克行を見た。警視庁湾岸警察署刑事課強行犯係係長となった青島俊作警部補(織田裕二)のちゃらちゃらした活躍を描くこのシリーズの一応の完結編なのである。警察だって会社みたいなもんだ・・・という視点でちゃらちゃらとスタートした刑事ドラマも15年も続くと・・・流石に少しは落ち着いたかと思うのだが・・・それぞれのキャストが年をとっただけで相変わらずチャラチャラしているのだった。

最後に青島を助けるために・・・長距離バスで特攻をしかけた恩田すみれ(深津絵里)がその後のシーンで登場しないので死亡説も流れたわけだが・・・基本的にちゃらちゃらした青島が最後の見せ場を独占したかっただけだと思われる。あえて言うとすれば「いい加減プロポーズしてやれよ」だ。

その恩田巡査部長が「私もミニスカポリスになりたい」と呟くのは、篠原夏美巡査部長(内田有紀)を相手にしてである。ちゃらちゃらした湾岸署において・・・あまりちゃらちゃらしてないのが交通課なのである。

交通課の婦人警官たちこそが・・・「踊る大捜査線」の核心なのだった。

テレビシリーズのヒロインである真下雪乃(水野美紀)も犯罪被害者遺族から婦人警官となり、交通課を経て刑事となったのである。

今回は登場しないが、テレビシリーズの交通課の花と言えば山下圭子巡査長(星野有香)であり、神田元署長(北村総一朗)と不倫騒動まで起こしている。

男女雇用機会均等法成立後、婦人警官という名称もやや危ういわけだが、今回も無名の婦人警官を柊瑠美や小松彩夏など疎かにできない女優が淡々と演じているのである。

その中で名のある婦人警官・野添久美子を演じるのは小橋めぐみ(34)である。「新・天までとどけ」の河合亜紀であり、NHK大河ドラマ「徳川慶喜」の皇女和宮なのである。

幼女誘拐殺人の被害者の母親の弟である警視庁刑事部捜査一課管理官・鳥飼誠一(小栗旬)への疑惑を抱き、真下正義(ユースケ・サンタマリア)長男誘拐事件の司令塔鳥飼に「私のこと覚えてる?」と問い質すのである。事件が復讐によるものであることを示唆する重要な役で相変わらず美貌なのだった。

最後に室井慎次(柳葉敏郎)について触れる必要があるだろう。

真面目な顔して「バナナだ」である。

まあ、ちゃらちゃらしてばかりではなくフィクションにはメリハリが大切なんでございます。

ただし・・・「相棒」のように作ることもできるのに・・・それをしないフジテレビ・・・ちゃらちゃらの意地っていうか・・・限界っていうか。一年に半年、湾岸署がある21世紀も見たかったなあ。

関連するキッドのブログ→絶対零度~未解決事件特命捜査~

で、『49・第1回』(日本テレビ201310060050~)脚本・野島伸司、演出・大塚恭司を見た。49とは四十九日・・・一部仏教で言う霊が死後にこの世に留まる日数を示しているらしい。早い話が「秘密」の男女逆転ヴァージョンである。別居中の父親と久しぶりに再会した高校生の加賀美暖(佐藤勝利)は父親を拒絶するが・・・直後に暖を庇った父親は交通事故死してしまう。

「父さん・・・大丈夫か」

「いや・・・父さん、死んだみたいだ」

「ええっ」

「お願いがある・・・やり残したことがあるんで・・・しばらく身体を貸してくれないか」

「そんな・・・あっ」

・・・というわけで息子の身体を乗っ取った父親は・・・やりたい放題を始めるのだった。

しかし・・・驚いたことに・・・妻(紺野まひる)はちっとも夫を愛していないし、暖の姉の裕子(野村麻純)は知らないうちに妊娠しているのだった。

とりあえず・・・高校に登校した暖は・・・学園のマドンナ・水無月マナ(西野七瀬)にうっとりするのだが・・・あまり、趣味がいいとは言えないのだった。

いきなりずぶぬれでお着替えサービスのあるいじめられっ子で眼鏡っ子の高見幸(山本舞香)の方が全然可愛いよねえ。

とにかく・・・おタクで不登校だった暖は・・・突然、運動神経抜群の親父男子に生まれ変わるのである。

まあ・・・回春だけど青春万歳なのだな。

えーと・・・だからどうしたって話です。

山本舞香目当てで見るけどね~。

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2013年10月 5日 (土)

ノーコン・キッドのコンはコンティニューのコン(波瑠)死んで死んで死にまくってやるさ(田中圭)

ふふふ・・・ふふふふふ・・・ふふふふふふふふふふふふふふはぁっ。

毎度、笑わせてくれるテレビ東京金曜深夜の場末ドラマ三連発。

夜が更けるほど面白くなっていくというこのコーナー。

秋ドラマは某チョコレートのCMでパートナーを宮崎あおいから栗原しおり(安藤玉恵)にあまちゃんチェンジした波瑠を中核に配置してサービスにつぐサービスである。

しかも・・・「木戸だからキッドです」で始り、「あななたがキッドくん」で「キッドくんキスして」で「キッドくん、よろしくね」という極私的ドキドキ展開である。

・・・なんのこっちゃあああああああっ。

まあ・・・例によってあまりそそられないオスカーモデル軍団の学芸会はさておき、なつかしのゲーム音楽がこだまする1980年代ロマンスの後は・・・「キューテイーハニーTL」以来の真夜中の脚本家降臨である。眼鏡っ娘のヒロイン・新川優愛はミスセブンティーン2011だがいろいろあってここで抜擢である。ようやくめぐりあった感があるし。なにしろ、おばあちゃん(麻丘めぐみ)が可愛いのである。

そういう・・・わけで・・・久しぶりの三連発レビューいきまあすっ。コインをインサートッ!

で、『殺しの女王蜂・第1回』(テレビ東京201310050012~)脚本・根本ノンジ、演出・豊島圭介を見た。コーヒー牛乳を買ってこいと言ったのにカフェオレを買ってきた手下をマシンガンで瞬殺するビッグママ(高岡早紀)の支配する無法地帯・混沌街(カーオスタウン)・・・。この荒唐無稽な世界へ流れ者のピストル(尾花貴絵)がやってくる。装填数1の古風な装飾拳銃で武装したピストルだが・・・その腕前はなかなかのものなのだった。無法地帯なので保安官(宮川一朗太)や助手のメガネ(苫米地玲奈)はまったくあてにできない。残虐な無法者を退治するのは言わずと知れた賞金稼ぎである。

美脚フェチのミケランジェロ(板尾創路)は美脚を切断する残酷ショーを公開する賞金首。

ドクターX先輩の後輩として変なオスカーダンスを披露した後で、ピストルはミケランジェロ狩りに出向き、返り討ちにあってしまう。拘束され・・・両脚を切断されかかるピストル。ミケランジェロは切断前に・・・足指の股、足首のくびれ、ひざ裏という左右あわせて12ヶ所のVゾーンを堪能する。しかし、13番目のVゾーンである股間の誘惑に耐えきれず、ピストルの開脚してから首絞めの餌食になるのだった・・・。

モデルガールズにセリフがなければ楽しいドラマだと思う。

で、『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜・第1回』(テレビ東京201310050052~)脚本・佐藤大、演出・鈴村展弘を見た。2013年、うらぶれた45歳の渡辺礼治(田中圭)は・・・死んだ父親の遺した寂れた店舗に足を踏み入れる。金庫に残された古い一冊のノート・・・「ゲーム攻略ノート」を手にした礼治は記憶に埋もれた30年前のあの頃を思い出す。

1983年・・・礼治は15歳だった。なんの違和感もなく15歳を演じる田中圭(29)だった・・・。

当時・・・礼治の父親・雅史(佐藤二朗)は1ゲーム50円のゲームセンター兼駄菓子屋を経営していたのだった。

父親に命じられて店番をしている礼治は同級生の美少女・高野文美(なんの違和感もなく15歳を演じる波瑠)に恋をしてしまう。ゲーマーとしてYMOを名乗る彼女は・・・バリバリのアーケード・ゲーマーなのだった。

しかし・・・奥手なので声をかけることもできない礼治。

彼女が夢中になっているゲーム「ゼビウス」にふとチャレンジしてみるのだった。

だが・・・初めてのゲームはなかなかに手強いのだった。

そこで・・・KIDを名乗る同級生・木戸明信(なんの違和感もなく15歳を演じる浜野謙太)にゲーム代を無料にする約束でコーチを頼むのである。

KIDは店一番の高得点者で・・・興奮すると礼治のことを「おたくはさあ・・・」と言っちゃうタイプである。

ゲームの攻略を通じて礼治とKIDはなんとなく・・・友情を感じ始める。

そんなある日、文美が礼治に声をかけてくる。

「あのさ・・・あの最高得点のKIDってどんな人・・・?」

店に掲示されている最高得点者一覧。ゼビウスの1位はKID・・・2位はYMOである。ああ懐かしいアルファベット三文字入力。

「え・・・」

「私、いつも二番なのよ・・・私がYMO・・・オルド・ザカート・グルゼーガ(イエロー・マジック・オーケストラのゼビ語)なのよ」

「そ・・・そうなんだ・・・じ・・・実は僕がKIDだ・・・」

「え・・・そうなの」

「うん」

「ねえ・・・バキュラは256発のザッパーを当てたら壊れるって本当かしら・・・?」

「あ・・・ああ・・・バキュラね」

そこへ・・・やってくる本物のKID。

「今度・・・プレイしてるところを見せてよ・・・KID・・・」

「はい」と同時に返事する二人だった。

一瞬で・・・状況を悟るKID・・・。

「ひどいよ・・・名前を奪うなんて・・・」

そこへ・・・礼治の父親が登場する。

「大体事情は分かった・・・勝負しなさい・・・勝った方が彼女にインサートしなさい」

後半は聴かなかったことにする15歳の少年少女たちだった。

ゼビウスで対決する礼治とKID・・・。

礼治もそれなりに上達したが・・・所詮、KIDの敵ではなかった。

しかし・・・懸命にプレイする礼治に文美は何かを感じた模様である。

「いい勝負だったわ」と言い残し去って行くのだった。

残された二人。

「本当にごめんな・・・」

「いいよ・・・それより・・・もうゲームやめちゃうのかい」

「いや・・・こんな面白いものやめられないよ」

「よかった・・・」

こうして・・・二人のゲーム人生が幕を開けるのだった。

そして、2013年・・・大人になったKIDはなにやら・・・IT系の経営者に・・・そして文美はそれなりの有名人になっているらしい・・・。一体、彼らにどんな30年が流れたのか・・・とてもロマンチックなのである。

とにかく・・・個人的にセリフでうっとりできるドラマなのだった。

だから・・・なんのこっちゃあああああああああっ。

まあ・・・とにかく・・・天野春子が上京した頃の話は・・・もうそれだけで甘酸っぱいよねえ。

で、『衝撃ゴウライガン!!・第1回』(テレビ東京201310050123~)原作・演出・雨宮慶太、脚本・井上敏樹を見た。ごく普通の女子高生だった界ヒトミ(新川優愛)はある日・・・「妙なものが見える」能力を身につけてしまう。そのためにコンビニで「ガリガリくんを買う怪物くん」を目撃してしまうのだった。

海岸のそばでリサイクルショップ「亜力伯堂(アルプスどう)」を営むひとみの祖母(麻丘めぐみ)が化け物が取付いている小道具を買いそうになるのを阻止したりもする。

しかし・・・そんなことは・・・これから起る奇想天外な冒険に比べれば日常的と言えるのだった。

太陽系内の宇宙空間では・・・兆真界(ちょうしんかい)に暮らす光人(ひかりびと)の一族の警護将軍であるゴウ(加藤貴宏)が一部愛好家向けサービス満点の妖精ナヴィ(星野あかり)とともに・・・陰人(かげりびと)呼ばれる罪を犯した光人を移送中だったのである。

罪人の中にはゴウのかっての親友ジンもいて・・・ゴウの心は晴れない。

ところが護送船は怪物マギーの攻撃を受け、ゴウの奮戦虚しく地球に墜落してしまうのだった。

囚人たちは脱走し・・・ジンは地球人・若林シンジ(若松俊秀)に憑依して地球征服の野望を抱くのである。

海岸に漂着したゴウとナヴィは・・・途方に暮れている。

そして・・・通りすがりの界ヒトミと遭遇するのだった。

これは・・・血わき肉踊る物語のスタートなのである。

関連するキッドのブログ→キューティーハニーTHE LIVE

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2013年10月 4日 (金)

真夜中の昼メロハクバノ王子サマの妹(優希美青)と不倫女教師(優香)

「あまちゃん」のGMT5小野寺薫子ちゃんでおなじみ、優希美青は第37回ホリプロタレントスカウトキャラバンのグランプリ受賞者である。

一方、優香はホリプロ初のグラビアアイドルだった。20世紀末のグラビアクイーンである。

女優としての代表作は・・・「続・平成夫婦茶碗」(2002年日本テレビ)のラーメン屋の女房・結城灯役である。

もちろん、これ以上なくイメージ通りの「新美味しんぼ」の栗田ゆう子や大河ドラマ「新選組!」の深雪太夫&お孝などもあるが・・・キッドが魅力を感じたのは金本満太郎(東山紀之)の後妻となる変な女・灯である。

どのくらい魅力的だったかといえば・・・夜中の志村けんのコントでずっとラーメン屋の女房を演じることになったほどなのである。

そういう意味では・・・優香はほぼ10年・・・伸び悩み続けた女優だと言うことが出来る。

だから・・・今回、主演女優シークレットという企画を発想した人間は馬鹿だと思う。

優香だとわかったところで・・・誰も「やった」と思わないからである。

いや・・・もちろん、優香をこよなく愛する皆さんは別だが・・・そういう人たちが知らないで初回を見逃したら可愛そうではないか。

そして・・・結構・・・「役」に不足している人間に出落ちさせてどうする。

・・・まあ、とにかく・・・ホリプロのかってのエースと期待の新人のコラボでしょうもないドラマをやるのだなあ。

ちなみに・・・「続・平成夫婦茶碗」の企画は「純と愛」で最近悪名高い遊川氏、脚本は「ごちそうさん」で今の処、朝からおえっとなる朝ドラマをやっている森下佳子である。人に歴史ありだな。

今、優香は「悪夢ちゃん」の平島琴葉がせっかくの当たり役である。そこを大事にしないとね。

で、『ハクバノ王子サマ 純愛適齢期・第1回』(日本テレビ201310032359~)原作・朔ユキ蔵、脚本・藤井清美、演出・熊坂出を見た。脚本家は最近では「黒の女教師」や「TAKE FIVE〜俺たちは愛を盗めるか〜」の複数脚本家の一人である。おそらく実力はそれなりにあるのだが・・・ようするにこなれてないのである。冒頭から主人公のモノローグが鬱陶しいことこの上ない。もちろん、演出や演技者にも問題はあるが・・・とにかくナレーションが邪魔なのである。三回、テレビに向かって「うるさいなあ」と叫びました。

実は原作の「ハクバの王子様」(ビッグコミックスピリッツ)は2005年~の作品なのである。そして、その発展系が「主に泣いてます」(モーニング)で2010年~の作品である。しかし、テレビ的には・・・逆になってしまって・・・優香のキャラクターが主に泣いてる感じになってるのが残念なのだった。

っていうか・・・基本的にこの物語の主人公は・・・娘盛りを「恋愛には興味がなくてセックスだけに興味がある」妻子ある男性との不倫で無駄に過ごし・・・それが自己責任だと思っていない痛い三十女なのであって・・・どちらかといえば嘲笑の対象なのである。

そういうバカな女の宿命的ないくつかの爆笑ポイントでしんみりとした演出されて・・・ものすごく気持ち悪かったぞ。まさか・・・コメディーじゃないと思って作ってんのか・・・。

たとえば・・・回想シーンの中で・・・かっての教え子を妻にしている教師・黒沢(中村俊介)が・・・かっての教え子で・・・母校に新任教師となって戻って来た原多香子(優香)に手を出して不倫関係になった後、愛人生活に疲れて図書館で・・・多香子が「うえーん」と泣き出したところ・・・もう・・・黒沢の心中は「うわあ・・・」なのであるが・・・淡々と多香子を優しく抱きしめるという・・・意味不明の展開なのである。

もう・・・「うわあ」となって必死に事態を収拾しようとする黒沢と・・・それにまったく気がつかず自己陶酔して「うおんうおん」と泣きじゃくる多香子で見せてくれないと笑えないじゃん。

おい・・・どうやら・・・笑いはねらってないみたいだぞ・・・えっ・・・そうなの・・・これ・・・マジでやっていくの・・・うそおおおおおっ。

それはそれとして・・・32歳となった多香子は漸く・・・不毛の関係を清算して・・・優香なのでちっとも困っているようには見えないが淋しい独身教師になったのだった。ただし・・・回想シーンの途中でやつれているというより衰えている感じのシーンはあります。そりゃ・・・そうだよ実年齢33歳なんだから。

そこへ・・・フレッシュな25歳の男性教師・小津晃太郎(三浦貴大)がやってくる。

一般企業に就職したが・・・競争社会が苦手で教職とりなおしたといういかにもダメ人間設定なのだが・・・多香子はときめいてしまうのだ。

「付き合っている女性を泣かせないのがたった一つの恋愛ルール」という小津の言葉にうっとりとしてしまったのである。

そして・・・小津も・・・友人の江川(新井浩文)に多香子のことが気になると漏らすのだ。

しかし・・・小津には・・・ロンドンに留学中の婚約者・カオリ(河北麻友子)がいるのだった。

つまり・・・小津もまた・・・誰が何と言おうと・・・恋愛には興味がなく、セックスに興味がある男なのである。

まあ・・・ほとんどの男はそうだという考え方もあります。

とにかく・・・小津に婚約者がいると知って燃えあがった妄想上の恋の炎に焼かれ、アンパンマンの歌を狂ったように熱唱する多香子・・・どう考えても爆笑シーンだが・・・しんみりと演出されます。

そこに・・・なんとなく・・・小津と多香子の交流に刺激されて・・・欲望に火がつく・・・黒沢なのである。

そして・・・とりあえず身体の火照りを鎮めるために・・・黒沢の誘いを受け・・・再び不毛地帯に足を踏み入れる多香子なのだった・・・。まあ、よくある話ですな。

そして・・・何故か・・・小津の妹で多香子の教え子である・・・16歳の琴美(優希美青)は不倫車両を自転車で追跡。

二人が・・・多香子のマンションにしけこむのを確認するのだった。

昼メロの枠がないからって・・・夜中にやられてもなあ・・・という話である。

まあ・・・来週、テレビの限界に挑むハードなラブ・シーンが・・・展開しないよ、きっと。

さて・・・木曜日は「独身貴族」や「夫のカノジョ」など「恋愛曜日」なのである。「あさきゆめみし」まであるからな。少なくとも「ハクバ」越えはすると思うが・・・ひょっとして「彼岸島」行き・・・。

関連するキッドのブログ→悪夢ちゃん

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2013年10月 3日 (木)

悪徳経営者(でんでん)にうううってうなっちゃうダンダリン(竹内結子)

さて・・・フジテレビ水曜日夜10時にドラマ枠が再開して・・・。

日本テレビ水曜日夜10時のドラマと激突中である。

「家族ゲーム」13.0% VS 「雲の階段」*9.3%

「ショムニ2013 」11.1% VS 「Woman」13.6%

・・・と血みどろの争いを繰り広げて一勝一敗である。

フジテレビは過去に実績のあるコンテンツを焼きなおしてぶつけてきている。

そういう流れの中で「リーガルハイ」は強力な第三弾だと言えよう。

それに対抗するのが・・・近年ひどいドラマを作ることには定評のある・・・脚本家の「ダンダリン」なのだ・・・う、撃たないで~。

もう・・・最初から勝負あっちゃった感じがするが・・・まあ、別にいいドラマなら録画して見ればいいよね・・・という時代である。

「黄金の豚 - 会計検査庁 特別調査課 -」の堤芯子(篠原涼子)、「トッカン -特別国税徴収官-」の鈴宮深樹(井上真央)に続く、この枠ならではの知られざるお役人シリーズです。お役人マニアは必見ですな。

で、『ダンダリン 労働基準監督官・第1回』(日本テレビ20131002PM10~)原作・田島隆、脚本・秦建日子、演出・佐藤東弥を見た。失敗作の続く脚本家だが、かってはコミック原作の傑作「ドラゴン桜」をヒットさせたこともある。ここは手堅く汚名挽回してもらいたい。そういう意味で第一回は相変わらず奇をてらいすぎの部分もあるがこじんまりとまとまったと思う。つまり・・・そこそこ見れるということである。

いきなり、喪服の人々が主人公の部屋に片付けにやってくる。つまり、主人公は死んだ態である。・・・ねえ。そして・・・殺風景な部屋に残された一匹の熱帯魚は「闘魚」の和名で知られるベタ・・・。

「あいつらしい・・・」と呟かれるのである。そして・・・話は三ヶ月前に遡るのだった。・・・ねえ。

西東京労働基準監督署に赴任してきた労働基準監督官の段田凛(竹内結子)は職務に忠実なあまりに問題児とされ過去に死人まで出している働く人を守るルールを厳守する女である。労働基準監督官は国家公務員II・III種試験より上位に位置づけられている労働基準監督官試験に合格した者であり、特別司法警察職員だ。つまり、ややエリートなのである。

「扱いには慎重を期する必要あり」と前の勤務先上司から伝達された・・・西東京労働基準監督署・真鍋重夫署長(佐野史郎)は戦々恐々である。

早くも通勤途中で「ルール違反」を発見した段田凛は業務改善を指導しながら署にやってくるのであった。

「退屈な男」と元妻・紺野みどり(西田尚美)にレッテルを貼られている監督課課長・土手山郁夫(北村一輝)は・・・問題発生の直接の被害を避けるために・・・段田凛より若輩の東大卒で監督官五年目になる南三条和也(松坂桃李)に指導係を押しつけるのだった。

計画にのっとった業務を遂行しようとする南三条は「ルール違反」を嗅ぎつける嗅覚をもった労働基準法の犬・段田凛を鎖につないでおくことができない。

南三条は段田凛の暴力により車道に突き飛ばされ、リフォーム会社社員の運転する車両に轢かれてしまうのだった。

幸い命に別条のなかった南三条。しかし・・・段田凛は加害者の西川(渡辺いっけい)に「ルール違反」の過酷な労働による「死に至る匂い」を嗅ぎつける。

「彼の会社はブラックです・・・業務改善を指導するべきです」と進言する段田凛。

しかし、ことなかれ主義の同僚たちはとりあわない。

そこで・・・単身乗り込んだ段田凛はブラック企業の鴨光社長(でんでん)と大立ち回りを演じ、傷害で起訴寸前となるのだった。

そのために・・・執拗ないじめを受けた西川は自殺未遂を起こす。

基本は「サービス残業」問題である。現在は違法すれすれの「みなし残業問題」があるわけだが・・・ここではざっくりとブラックで勤務状況の擬装が行われているという展開である。

その実態を突き止めてしまう段田凛なのである。

「だからといって・・・あの社長が・・・素直に従うもんか・・・」という一同。

「しかし・・・最終手段があります」

「え・・・」

署長、課長、南三条を始め、田中(大倉孝二)、温田(水橋研二)、小宮(トリンドル玲奈)ら同僚は唖然とするのだった。

しかし・・・感情を制御できない異常人格で気に入らないことがあると狂犬のように唸りだすダンダリンには・・・誰も逆らうことができないのだ。

「逮捕権を行使します」

「・・・」

こうして・・・ある雨の日、ブラック企業の鴨光社長は「賃金の未払いの罪」によって労働基準監督官は逮捕されてしまうのだった。

「なんで・・・余計なことをするんです・・・」と失職に怯える西川。

しかし・・・段田凛は労働基準法・第2条を教え諭す。「第2条・・・労働条件の決定・・・労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである・・・です」

「・・・」正論に返す言葉のない西川だった。

仕事を終えた段田凛には一通の発信者・非通知のメールが届くのだった。

<お前は殺される>・・・ねえ。

とにかく・・・この枠にはおなじみのちょっと強情でどうしても譲れないものがある・・・ちょっと変な女の登場でございます。

ちなみに・・・南三条の母親でいかにも危険な浪費家の南三条恭子(石野真子)や南三条の友人でブラック企業の味方である社会保険労務士・胡桃沢(風間俊介)が配置されており、今後の活躍が期待できる感じですな。

ものすごい微妙な題材なので・・・この脚本家には荷が重い気がするが・・・杞憂であればよいと思う。

まあ・・・来週からレビューするのは・・・「リーガルハイ」ですけれども~。

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2013年10月 2日 (水)

2013年、秋ドラマを待ちながら(キッド)

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノの美味しい季節である。

「あまちゃん」が去った後で・・・これを続ける意味があるのかどうか・・・微妙なところだがとりあえずは次を見てみないことにはな・・・ということで続いています。

台風がいくつか南方でうろうろしているこの季節である。

「2020東京五輪」の前にメガクエイクが来るのか、日中開戦があるのか、フクシマがなんぞしでかすのか・・・いろいろと楽しみな未来が待っているわけですな。

まあ・・・何が起ろうが悪魔には関わり合いのないことなのでアレですが・・・。

読者の皆さまの幸多きことを祈ってます。

さて・・・半年続いた「あまちゃん」ウイークエンド体制が終わり・・・ホッとしているのもつかの間である。

(日)「八重の桜

これを確定してしまうと・・・。

「安堂ロイド ~A.I. knows LOVE?~」(TBSテレビ)をどうするか問題が浮上するわけである。

2013年は春ドラマに「シェアハウスの恋人」、夏ドラマに「スターマンこの星の恋」があって・・・二期連続「宇宙人もの」だったのだが・・・ここにきて「時間旅行もの」である。

しかも・・・「仁」のように「現代→過去」ではなくて、「未来→現代」なのである。

そして・・・あらあら、「ターミネーター」なのである。

最近では「僕の彼女はサイボーグ」があり・・・これをアジア水準とすると・・・少なくともこれは越えてもらいたい。アンドロイドものなら「キューティーハニーLIVE」水準までは来ないとアレなのである。

まあ・・・特撮に関しては・・・ある程度割り引くとして・・・「絶対彼氏」との差別化も結構望ましいよねえ。

どうやっても・・・「ターミネーター」+「絶対彼氏」になっちゃうわけですから。

あるいは「ブレードランナー」なのかな・・・。

まあ・・・とにかく・・・100年後の未来がどのくらいリアルに想い描けているか勝負ですな。

アンドロイドの「愛」はまあ・・・あるに決まってるだろうとは思います。

・・・と物凄く不安を感じつつ・・・。

(月)「安堂ロイド」(木村拓哉・柴咲コウ・桐谷美玲)

・・・・で決まりなのである。うわあ・・・もう月9はみだしちゃったよ。

さて・・・。

(火)「変身インタビュアーの憂鬱」(中丸雄一・木村文乃)

・・・おい・・・月9、火9、火10・・・。

(水)「リーガル・ハイ」(堺雅人・新垣結衣)

・・・うわあ・・・月9、火9、火10、水10・・・。

(木)「独身貴族」(草彅剛・北川景子・比嘉愛実・麻生久美子)

ここまで無視されている当ブログのレギュラースターの皆さん・・・堀北真希、相武紗季、桜庭ななみ、倉科カナ、武井咲、有村架純、貫地谷しほり、土屋太鳳、川口春菜、優希美青、山下リオ、佐藤めぐみである。

っていうか・・・マキマキだろう・・・絶対面白くなさそうでも少なくとも「ミス・パイロット」・・・書こうよ。

(金)「都市伝説の女 Part2」(長澤まさみ)

(土)「東京バンドワゴン ~下町大家族物語」(亀梨和也・多部未華子)

・・・以上である。

谷間もなしですか・・・う~ん・・・今の処、「独身貴族」が当落線上で・・・一回目ダメなら・・・谷間にします。

まあ、真夜中の野島伸司「49」とか・・・三池崇史「彼岸島」とか・・・そそるものはあるけどな。

とにかく・・・基本はこれで・・・問題ないと思う。

何が・・・「あまちゃん」以後の世界で心に火を灯すのか・・・見てみないとわからないものねえ。

それは「ミス・パイロット」だと思うぞ・・・。内容とは無関係に。

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2013年10月 1日 (火)

呪われた学園と七人の魔女と私の愛した山田くん(西内まりや)

「あまちゃん」が終わったと言うのに、お前はまだやってたのかよっ・・・というこのドラマである。

まあ、果敢なチャレンジということでは・・・それなりに評価できるドラマだった。

小学生の性的欲望を満足させるためのストーリー。

なめられて当然のゆとり世代向けキャラクター設定。

あまりにも奥行きのない魔法によるファンタジー。

後半のこれ以上ないグダグダ感。

だが、キスが挨拶の範疇なのか、性的行為なのかで様々な圧力がかかりそうな描写に関して言えば実に素晴らしいと考える。

美山加恋(16)、松井愛莉(16)のギリギリハイティーン問題もギリギリセーフティーな感じがして微笑ましい。

なんだろう、この境界線は法的結婚可能年齢ということか。

つまり、山本裕典がたとえば・・・吉田里琴(13)や桑島真里乃(15)とキスしたらアウトなのか。

さらにいえばアングルでごまかしたキスした風ならOKなのかである。

逆にシリアスな恋愛ものや、未成年への性的虐待を扱った風俗ものの描写だったらどうかという問題もある。

公序良俗の保守と表現の自由の対立的問題だ。

あるいはアグネス・チャンがどこまで許容するかという問題でもある。

そういう意味でこのドラマは高く評価されるべきだろう・・・内容はともかくとしても。

で、『山田くんと7人の魔女・最終回(全8話)』(フジテレビ201309282310~)原作・古河美希、脚本・小川真、演出・星護を見た。架空の高校・朱咲高校には超常現象研究部があり、そこには「魔女伝説」について書かれた上下巻の研究ノートがある。魔法に関して言えば「ハリー・ポッター」シリーズのヒットによって誰もがなんとなくイメージを共有している前提である。もちろん、西洋には魔法研究の伝統があるし、東洋にも邪法は星の数ほどある。日本は陰陽道という妖しげな学術を公的機関で認知していたほどである。ここ、半世紀で言えば、コミックの「悪魔くん」や「エコエコアザラク」などや、それを原作としたアニメやドラマなどで・・・それなりの情報は堆積していると考えられる。・・・ま、悪魔が真剣に語ることではないけどな・・・。そういう、様々な要素にのっかってのドタバタであり、ものたりないけれどそれなりに楽しいドラマなあのだあ。

基本的に魔法とは・・・科学の一種である。

さらに言えば、科学とは魔法の一種なのである。

西洋においてはキリスト教による支配が続く間に、神の対抗勢力としての悪魔の幻想が発展し・・・原始的な呪術の名残や、失われた神々への帰依が「悪魔」と「悪魔の方法」を産出したという流れがある。

ナザレのイエスに対する古き堕天使サタンのささやかな抵抗の物語がつまり、狭義の「魔法」なのである。

当然、それは「自然」という「神の摂理」に反するものである。

水が低きから高きに流れ、火が冷たく燃え、死者は墓場を去り、明日は昨日となる。

そのような魔法に対する人間の欲望は果てしない。

そして・・・女の子とキスがしたい男の子の欲望も底知れないのである。

これはそういう話である。もしも、黒川秋が朱咲高校の生徒だったら・・・転校して正解だったというしかない。やたらと老けた男子生徒多過ぎだしな。

なにしろ、がばいはこっちに混ざっているのでそうなる可能性だったってあったんだもん。

すべての魔女が出そろい・・・さらには・・・何者かが「魔女伝説・下巻」ノートを届けてくれたので・・・超常現象研究部は「望みをなんでも叶える儀式」の決行が可能になった。

ノートには決行の場所、決行の日時、準備するもの、儀式の手順などが記されているのだった。

「凄いマニュアルだな」

「でも・・・一体誰がこんな研究を」

「そういうことには触れないジャンルの作品なんだと思うよ」

「なるほど」

すっかり、仲良くなった山田くん(山本裕典)と虎之介(井出卓也)だった。

さて・・・山田くんは・・・生徒会書記の猪瀬(永江祐貴)が白石うらら(西内まりや)を秘書にしてしまう未来を改変するという目標があったのだが・・・七人目の魔女である西園寺リカ(川村ゆきえ)を発見したことで自動的に目標が達成されてしまう。

「七人目の魔女を発見した者が次期生徒会長」という山崎生徒会長(徳山秀典)の約束が果たされたからである。

次期生徒会長は指令を達成した虎之介に決定したのである。

残るは・・・好きな人とキスしたいので変な能力はいらないという乙女たちの「願い事」を叶えることであった。

それには「儀式」を行えばいいのである。

儀式は・・・九月の満月の夜に開かずの間(社会科準備室)でしかるべき魔法陣を整えて七人の魔女が円陣を組み、しかるべき呪文を唱えるというものである。

問題は魔女たちが全員、能力を失うことに同意するかだった。

第一の魔女・・・うららは入れ替わりの能力を失うことで山田くんとの絆を失うことが本当はこわかったが・・・山田くんを本当の恋人にするためにあえて同意するのだった。もちろん、その真意を山田くんは知らないのである。

第二の魔女・・・小田切寧々(大野いと)は虜の能力を失うことで支配力を失うことをおそれたが、奴隷の五十嵐(間宮祥太朗)が「私だけの女王様になってください」と懇願するので決心する。

第三の魔女・・・大塚芽子(美山加恋)はテレパシーの能力がなくても他人に意志を伝えることが大切だと悟り、同意する。

第四の魔女・・・滝川ノア(松井愛莉)は人のトラウマを見ても嫌な気分になるだけなので同意する。

第五の魔女・・・猿島マリア(小島藤子)は恋人の未来なんか見たくないというこの願いの発案者なので最初からクリア。

第六の魔女・・・飛鳥美琴(小林涼子)は恋人から透明人間になってしまうのは嫌なので同意。

第七の魔女・・・西園寺リカは恋人とキスする度に忘れられても困るので同意なのである。

これで・・・なんの問題もないはずだったが・・・生徒会長で魔女殺しの能力を持つ山崎は・・・魔女の能力を使って世界征服をしようとたくらんでいたのである。・・・おいっ。

山崎は会長引退後も学園での権力維持を狙っていたのである。・・・狙ってたのか。

そんな会長は色仕掛けで秘書の飛鳥を支配しようとする。

しかし・・・飛鳥を支配しようとすればするほど・・・飛鳥の乙女心は高まるのであった。

儀式の夜・・・飛鳥の参加を許可するには「願い事」を「魔女の能力の永遠の定着」の変更にしろと・・・要求する会長。

だが・・・飛鳥は会長を裏切り儀式に参加するのだった。

「全校生徒とキスして透明人間になって弱みを握れ」という会長の命令に耐えがたかったのだった。

「そんな能力がなくても・・・会長の願いは叶えてあげたい」という複雑な飛鳥だった。

時は満ちた。魔法陣を囲み、呪文を唱える魔女たち。

それを見守る山田くんと虎之介とただの女子・伊藤雅(トリンドル玲奈)・・・。

「Jyoma Jyoma rachinparachinpa iteshirua!(パンチラ魔女・・・Hあるし)」

超常現象的な雷鳴が響き、地獄の冷えた風が周囲を包む。

「寒い・・・今夜はさすがにパンツが欲しいわね・・・」と思わず呟くパンツの痕を嫌うグラビアアイドル的にノーパンのリカ。

すると・・・天空からダサい感じのパンツが降ってくるのだった。

「あ・・・願い事・・・叶っちゃった」

「えええええええ」

これで・・・来年まで儀式はできないのである。

「じゃ・・・来年まではこのままってこと」

「続編ができるわけだな・・・」

「いや・・・ネタ的にきついよ・・・いつまでもキスの安売りできないし、事務所的にも」

「じゃ・・・どうするんだ」

「ノートを読みこむと・・・一つだけ手がある」

「なにっ」

「まず・・・山田くんが・・・会長とキスして・・・魔女殺しをコピーする。後付けだけど・・・山田くんがコピーできるのは魔女オフだけで・・・魔女オンはなしらしい。しかし、会長は山田くんの魔女殺しで魔女オフを失い、同時に魔女オンも無効になる。うららの入れ替わりに準じる規制だね。それから・・・山田くんが七人の魔女とキスすれば・・・全員の能力は消滅する・・・能力が消えるので山田くんはコピーが出来ず、ずっと魔女殺しのままだ。しかし、山田くんが魔女殺しでも・・・魔女がいなくなればそれはもう能力じゃなくなる」

「すげえ・・・虎之介」

「ただし・・・後付けだけど・・・記憶操作の能力だけは・・・魔女殺しにも有効らしい。リカとキスした時点で・・・山田くんは記憶を失うことになる」

「そんなのいや・・・山田くんが私たちのこと忘れるなんて・・・」とうらら。

「いや・・・それしかないなら・・・そうしよう・・・俺、みんなのこと・・・きっと思い出すから・・・だって・・・こんなにいい仲間を忘れるなんて・・・考えられないから・・・」

しかし・・・姉のレオナ(中別府葵)のことを思うと虎之介は・・・暗澹たる思いがする。

だが・・・山田くんの決意は固く・・・七人の魔女を並べて最後のキスをするのだった。

ま・・・完全にある種の凌辱感がありますな。万歳しつつ問題作の烙印を押しておきます。

そして・・・山田くんは・・・すべてを忘れてしまう。

誰もが・・・山田くんに語りかけるが・・・山田くんは無反応なのである。

友達ができて明るくなった性格も・・・消えてしまったのだった。

「このままじゃいや・・・私、山田くんが好きなのに」とうらら。

「えっ・・・そうなの」と虎之介。

「山田くんもうららのこと好きだったよね」と伊藤。

「え・・・」

「そうだ・・・確証はないけど・・・不文律ってあるからな・・・」

「なにそれ?」

「知らないか・・・昔から・・・王子様のキスで・・・王女様は目覚めるんだぜ」

「ああ・・・王女様のキスで魔法が解けたりもするわね」

「・・・」

うららは山田くんを待ち伏せる。

二人が出会った階段の下。

しかし、どうしても勇気がでないのだった。

その時、足がもつれて階段を落ちそうになったうららを助ける山田くん。

あの日のように触れ合う唇と唇。

「大丈夫・・・」

「うららこそ・・・大丈夫かよ」

「山田くん・・・私がわかるの・・・」

「何言ってんだ・・・忘れるわけないだろう」

山田くんの胸に飛び込むうららだった。

山田くんは幸せになりましたとさ。

もちろん・・・学園から呪いが消えたわけではない。きっとまた・・・来年も七人の魔女は生まれるのである。

できれば・・・来年はもっと能力を悪用してほしいと呪いをかけた下級悪魔は願っているに違いない。

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