呪われた学園と七人の魔女と私の愛した山田くん(西内まりや)
「あまちゃん」が終わったと言うのに、お前はまだやってたのかよっ・・・というこのドラマである。
まあ、果敢なチャレンジということでは・・・それなりに評価できるドラマだった。
小学生の性的欲望を満足させるためのストーリー。
なめられて当然のゆとり世代向けキャラクター設定。
あまりにも奥行きのない魔法によるファンタジー。
後半のこれ以上ないグダグダ感。
だが、キスが挨拶の範疇なのか、性的行為なのかで様々な圧力がかかりそうな描写に関して言えば実に素晴らしいと考える。
美山加恋(16)、松井愛莉(16)のギリギリハイティーン問題もギリギリセーフティーな感じがして微笑ましい。
なんだろう、この境界線は法的結婚可能年齢ということか。
つまり、山本裕典がたとえば・・・吉田里琴(13)や桑島真里乃(15)とキスしたらアウトなのか。
さらにいえばアングルでごまかしたキスした風ならOKなのかである。
逆にシリアスな恋愛ものや、未成年への性的虐待を扱った風俗ものの描写だったらどうかという問題もある。
公序良俗の保守と表現の自由の対立的問題だ。
あるいはアグネス・チャンがどこまで許容するかという問題でもある。
そういう意味でこのドラマは高く評価されるべきだろう・・・内容はともかくとしても。
で、『山田くんと7人の魔女・最終回(全8話)』(フジテレビ201309282310~)原作・古河美希、脚本・小川真、演出・星護を見た。架空の高校・朱咲高校には超常現象研究部があり、そこには「魔女伝説」について書かれた上下巻の研究ノートがある。魔法に関して言えば「ハリー・ポッター」シリーズのヒットによって誰もがなんとなくイメージを共有している前提である。もちろん、西洋には魔法研究の伝統があるし、東洋にも邪法は星の数ほどある。日本は陰陽道という妖しげな学術を公的機関で認知していたほどである。ここ、半世紀で言えば、コミックの「悪魔くん」や「エコエコアザラク」などや、それを原作としたアニメやドラマなどで・・・それなりの情報は堆積していると考えられる。・・・ま、悪魔が真剣に語ることではないけどな・・・。そういう、様々な要素にのっかってのドタバタであり、ものたりないけれどそれなりに楽しいドラマなあのだあ。
基本的に魔法とは・・・科学の一種である。
さらに言えば、科学とは魔法の一種なのである。
西洋においてはキリスト教による支配が続く間に、神の対抗勢力としての悪魔の幻想が発展し・・・原始的な呪術の名残や、失われた神々への帰依が「悪魔」と「悪魔の方法」を産出したという流れがある。
ナザレのイエスに対する古き堕天使サタンのささやかな抵抗の物語がつまり、狭義の「魔法」なのである。
当然、それは「自然」という「神の摂理」に反するものである。
水が低きから高きに流れ、火が冷たく燃え、死者は墓場を去り、明日は昨日となる。
そのような魔法に対する人間の欲望は果てしない。
そして・・・女の子とキスがしたい男の子の欲望も底知れないのである。
これはそういう話である。もしも、黒川秋が朱咲高校の生徒だったら・・・転校して正解だったというしかない。やたらと老けた男子生徒多過ぎだしな。
なにしろ、がばいはこっちに混ざっているのでそうなる可能性だったってあったんだもん。
すべての魔女が出そろい・・・さらには・・・何者かが「魔女伝説・下巻」ノートを届けてくれたので・・・超常現象研究部は「望みをなんでも叶える儀式」の決行が可能になった。
ノートには決行の場所、決行の日時、準備するもの、儀式の手順などが記されているのだった。
「凄いマニュアルだな」
「でも・・・一体誰がこんな研究を」
「そういうことには触れないジャンルの作品なんだと思うよ」
「なるほど」
すっかり、仲良くなった山田くん(山本裕典)と虎之介(井出卓也)だった。
さて・・・山田くんは・・・生徒会書記の猪瀬(永江祐貴)が白石うらら(西内まりや)を秘書にしてしまう未来を改変するという目標があったのだが・・・七人目の魔女である西園寺リカ(川村ゆきえ)を発見したことで自動的に目標が達成されてしまう。
「七人目の魔女を発見した者が次期生徒会長」という山崎生徒会長(徳山秀典)の約束が果たされたからである。
次期生徒会長は指令を達成した虎之介に決定したのである。
残るは・・・好きな人とキスしたいので変な能力はいらないという乙女たちの「願い事」を叶えることであった。
それには「儀式」を行えばいいのである。
儀式は・・・九月の満月の夜に開かずの間(社会科準備室)でしかるべき魔法陣を整えて七人の魔女が円陣を組み、しかるべき呪文を唱えるというものである。
問題は魔女たちが全員、能力を失うことに同意するかだった。
第一の魔女・・・うららは入れ替わりの能力を失うことで山田くんとの絆を失うことが本当はこわかったが・・・山田くんを本当の恋人にするためにあえて同意するのだった。もちろん、その真意を山田くんは知らないのである。
第二の魔女・・・小田切寧々(大野いと)は虜の能力を失うことで支配力を失うことをおそれたが、奴隷の五十嵐(間宮祥太朗)が「私だけの女王様になってください」と懇願するので決心する。
第三の魔女・・・大塚芽子(美山加恋)はテレパシーの能力がなくても他人に意志を伝えることが大切だと悟り、同意する。
第四の魔女・・・滝川ノア(松井愛莉)は人のトラウマを見ても嫌な気分になるだけなので同意する。
第五の魔女・・・猿島マリア(小島藤子)は恋人の未来なんか見たくないというこの願いの発案者なので最初からクリア。
第六の魔女・・・飛鳥美琴(小林涼子)は恋人から透明人間になってしまうのは嫌なので同意。
第七の魔女・・・西園寺リカは恋人とキスする度に忘れられても困るので同意なのである。
これで・・・なんの問題もないはずだったが・・・生徒会長で魔女殺しの能力を持つ山崎は・・・魔女の能力を使って世界征服をしようとたくらんでいたのである。・・・おいっ。
山崎は会長引退後も学園での権力維持を狙っていたのである。・・・狙ってたのか。
そんな会長は色仕掛けで秘書の飛鳥を支配しようとする。
しかし・・・飛鳥を支配しようとすればするほど・・・飛鳥の乙女心は高まるのであった。
儀式の夜・・・飛鳥の参加を許可するには「願い事」を「魔女の能力の永遠の定着」の変更にしろと・・・要求する会長。
だが・・・飛鳥は会長を裏切り儀式に参加するのだった。
「全校生徒とキスして透明人間になって弱みを握れ」という会長の命令に耐えがたかったのだった。
「そんな能力がなくても・・・会長の願いは叶えてあげたい」という複雑な飛鳥だった。
時は満ちた。魔法陣を囲み、呪文を唱える魔女たち。
それを見守る山田くんと虎之介とただの女子・伊藤雅(トリンドル玲奈)・・・。
「Jyoma Jyoma rachinparachinpa iteshirua!(パンチラ魔女・・・Hあるし)」
超常現象的な雷鳴が響き、地獄の冷えた風が周囲を包む。
「寒い・・・今夜はさすがにパンツが欲しいわね・・・」と思わず呟くパンツの痕を嫌うグラビアアイドル的にノーパンのリカ。
すると・・・天空からダサい感じのパンツが降ってくるのだった。
「あ・・・願い事・・・叶っちゃった」
「えええええええ」
これで・・・来年まで儀式はできないのである。
「じゃ・・・来年まではこのままってこと」
「続編ができるわけだな・・・」
「いや・・・ネタ的にきついよ・・・いつまでもキスの安売りできないし、事務所的にも」
「じゃ・・・どうするんだ」
「ノートを読みこむと・・・一つだけ手がある」
「なにっ」
「まず・・・山田くんが・・・会長とキスして・・・魔女殺しをコピーする。後付けだけど・・・山田くんがコピーできるのは魔女オフだけで・・・魔女オンはなしらしい。しかし、会長は山田くんの魔女殺しで魔女オフを失い、同時に魔女オンも無効になる。うららの入れ替わりに準じる規制だね。それから・・・山田くんが七人の魔女とキスすれば・・・全員の能力は消滅する・・・能力が消えるので山田くんはコピーが出来ず、ずっと魔女殺しのままだ。しかし、山田くんが魔女殺しでも・・・魔女がいなくなればそれはもう能力じゃなくなる」
「すげえ・・・虎之介」
「ただし・・・後付けだけど・・・記憶操作の能力だけは・・・魔女殺しにも有効らしい。リカとキスした時点で・・・山田くんは記憶を失うことになる」
「そんなのいや・・・山田くんが私たちのこと忘れるなんて・・・」とうらら。
「いや・・・それしかないなら・・・そうしよう・・・俺、みんなのこと・・・きっと思い出すから・・・だって・・・こんなにいい仲間を忘れるなんて・・・考えられないから・・・」
しかし・・・姉のレオナ(中別府葵)のことを思うと虎之介は・・・暗澹たる思いがする。
だが・・・山田くんの決意は固く・・・七人の魔女を並べて最後のキスをするのだった。
ま・・・完全にある種の凌辱感がありますな。万歳しつつ問題作の烙印を押しておきます。
そして・・・山田くんは・・・すべてを忘れてしまう。
誰もが・・・山田くんに語りかけるが・・・山田くんは無反応なのである。
友達ができて明るくなった性格も・・・消えてしまったのだった。
「このままじゃいや・・・私、山田くんが好きなのに」とうらら。
「えっ・・・そうなの」と虎之介。
「山田くんもうららのこと好きだったよね」と伊藤。
「え・・・」
「そうだ・・・確証はないけど・・・不文律ってあるからな・・・」
「なにそれ?」
「知らないか・・・昔から・・・王子様のキスで・・・王女様は目覚めるんだぜ」
「ああ・・・王女様のキスで魔法が解けたりもするわね」
「・・・」
うららは山田くんを待ち伏せる。
二人が出会った階段の下。
しかし、どうしても勇気がでないのだった。
その時、足がもつれて階段を落ちそうになったうららを助ける山田くん。
あの日のように触れ合う唇と唇。
「大丈夫・・・」
「うららこそ・・・大丈夫かよ」
「山田くん・・・私がわかるの・・・」
「何言ってんだ・・・忘れるわけないだろう」
山田くんの胸に飛び込むうららだった。
山田くんは幸せになりましたとさ。
もちろん・・・学園から呪いが消えたわけではない。きっとまた・・・来年も七人の魔女は生まれるのである。
できれば・・・来年はもっと能力を悪用してほしいと呪いをかけた下級悪魔は願っているに違いない。
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