よろず占い処陰陽屋へようこそと彼(錦戸亮)は優しく言いました(鈴木梨央)
ここまで・・・秋ドラマは「ダンダリン」→「ハクバノ王子サマ」→「ノーコン・キッド」→「49」→「刑事のまなざし」とやってきてもっとも脚本に破綻がないのが・・・「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」である。
ここまでの作品は谷間候補だったわけだが・・・それにふさわしい内容だったと言える。
しかし・・・「よろず占い処」に関して言えば・・・場合によってはレギュラー化もありえる内容なのである。
だが・・・ここからが・・・秋ドラマの強力ラインナップの登場なのだった。
だから・・・おそらく・・・これが最後のレビューになるかもしれない。
それなのに・・・倉科カナをタイトルに入れられなくて断腸の想いだ・・・。
言いたいのはこの一点のみである。
で、『よろず占い処 陰陽屋へようこそ・第1回』(フジテレビ20131008PM10~)原作・天野頌子、脚本・黒岩勉、演出・土方政人を見た。東京北区にある王子神社は王子の地名の起りである。王子は熊野権現の神仏習合神であり、その本性はアマテラスである。特にワカノミコ(若王子)としての神格を示している。巫女としての天照大神の神格化と言ってもいいだろう。その使い神として「王子稲荷」がある。王子稲荷は東国三十三国の稲荷総司であり、言わば稲荷神の東の頭領という格式がある。つまり、若きアマテラスがキツネ神を使役するというファンタジー丸出しの展開を中世から伝承しているのだ。都市化された現代では知る由もないが・・・王子の名物は狐火という怪異現象だったのである。
その地へふらりと現れた陰陽師・安倍祥明(錦戸亮)は元・六本木のナンバーワンホスト・ショウだったのだ。
しかし、ホストが陰陽師になったと言うよりは、陰陽師がホストもやっていたというのが本筋らしい。
駒形千鶴(ふせえり)の営むテルマエロマエな銭湯でヌードをサービスした祥明は、王子神社の巫女・鮎川珠希(柏木由紀)の前に平安風陰陽師装束で現れる。
祥明は王子のとある商店街にある内藤源次郎(杉良太郎)が営む居酒屋「狐火」の地階の空き店舗で怪しい占いの店「陰陽屋」を開業したのである。
内藤源次郎の孫は高校教師の只野路子(倉科カナ)で留年が心配される生徒・沢崎瞬太(知念侑李)と瞬太の母親・みどり(南野陽子)と三者面談の際中であった。
瞬太は授業中、ほとんど居眠りをしているらしい。
なぜなら・・・狐の化身である瞬太には・・・義務教育はまだしも・・・高校の授業は難しすぎるのである。
しかし・・・人間である・・・路子やみどりには理解不能なのであった。
その帰り道・・・運命に導かれてみどりと瞬太は「陰陽屋」に入店してしまう。
夫の勤務する会社が倒産し無職となった上に夫の母親の介護に追われるみどりは生活に疲れていたのだった。
洞察力によって大体の事情を察した祥明は「すべて・・・お姑さんに悪い霊が憑いていることが原因」と喝破する。
「急急如律令」と格式より上の律令を持ち出して悪霊を即刻退散せしめる祥明。
そして、「ただし・・・この悪霊は嫁苛めが趣味なので戻ってくる恐れがある・・・介護は夫にまかせて・・・元の職業の看護師として復職するように」と奨めるのである。
料金一万円を請求され、母親を侮辱されたような気になった瞬太は・・・獣なので祥明を殴ってしまうのだった。
息子が暴力をふるったために警察沙汰になるのを恐れるみどり。
しかし・・・瞬太の本性を「キツネ」と見抜いた祥明は東京都の最低賃金869円を下回る時給700円で瞬太を雇用することを持ちかけ母子の承諾を得るのだった。
祥明は「呪」(言葉)によって巧みに母子を誘導し、キツネを使役する権利を得る陰陽師の常套手段を使ったのである。
その夜、居酒屋「狐火」を訪れた祥明がかって・・・売れっ子ホストだったことを見抜く・・・昔、ホスト狂いをしていたらしい巫女の珠希。
元ホストの占い師・・・そのいかがわしさに地元の人々はさっそく所払を画策するのだった。
しかし、正義感の強い路子は祥明に直接特攻をかけるのだった。
「私の教え子に変なことしないで」
「変なことなんてしませんよ・・・それより・・・あなた・・・せっかく美人でなかなかのプロポーションなのに・・・まったく・・・男性にもてないでしょう・・・」
「ぐ」
「人の話に耳を傾ければ男運が向上します」
「うぇ」
いい年して処女であることを看破されて・・・退散する路子、かわいいよ路子なのだった。
開業した祥明の元へ・・・瞬太が配布したかわいい人形(ひとがた)に誘われて来店する女子小学生・里見由実香(鈴木梨央)がやってくる。
「お父さんにキツネがついてしまったの・・・なんとかしてください」
由実香の父親(戸次重幸)が母親(春木みさよ)に暴力をふるっているというのである。
「証拠の写真もあります」と由実香は滅茶苦茶になったキッチンの写真を見せるのだった。
一目で事情を察した祥明は「家庭内暴力は警察に相談してください」と由実香の頼みを断るのだった。
すると瞬太が「それじゃあんまりだ」と父親を説得するために里見家に乗り込む。
しかし、家にいた由実香の母親は夫の暴力を否定するのだった。
仕方なく由実香の父親の帰宅を待ち伏せする瞬太。
夜になっても戻らない瞬太を心配するみどりから連絡を受けた路子は陰陽屋に怒鳴りこむ。
「居場所はわかっています」と祥明は動ぜず里見家を向かう。
瞬太は張りこむうちに眠りこんでしまったのだった。
起こされた瞬太はキツネの耳で・・・家庭内の騒動を聴きとる。
里見家では由実香が涙を流し、母親が父親にイスを振り上げていた。
暴力をふるっていたのが母親であることを「証拠の写真」で見抜いていた祥明。
散乱する食器は安物ばかりで高価なものは片付けられていたからである。
「あんた・・・なによ・・・」
「娘さんから・・・狐憑きをなんとかしてくれと頼まれた陰陽師です」
「狐つき・・・」
「しかし・・・狐がついているのではなく・・・物凄い悪霊がたたっているのです」
「たたり・・・」
「そうです・・・最近、妙にイライラしませんか」
「そういえば・・・」
「ご主人は会社でトラブルがあるのではありませんか」
「なにもかもが厄介なんだよ」
「すべて・・・たたりなのです・・・ごらんなさい・・・娘さんがあんなに泣いているのに・・・それにも気がつかないほど・・・」
「たたりなんですか」
「たたりなんです」
「どうすれば・・・」
「たたりは私が祓います・・・しかし・・・悪霊がとりつかないように・・・御夫婦で話あわれることも大切です。お互いの困ったことなどを打ち明け合うのも効果があります」
「そんなことで・・・」
「悪霊はこの世の雰囲気を悪くしますが・・・言葉には無力なのです。言葉のあるところに悪霊は立ち入れないのです」
祥明の呪によって平静さを取り戻した夫婦は和合するのだった。
里見夫妻もまた・・・生活に疲れていたのである。
ほとんどの夫婦は生活に疲れているのだ。
「もう・・・大丈夫だよ」と由実香に微笑む祥明。
「あの・・・御礼は・・・」
「子供にお金をもらうわけにはいかないんだよ」
数日後、町内会では「陰陽屋を追い払う決議」が賛成多数で可決されていた。
そこへ・・・「陰陽屋さんを追い出さないで」という嘆願書を持ってくる由実香と友達の子供たち。
街の顔役である内藤源次郎は「もう少し様子を見よう」と裁くのだった。
「まさか・・・あの男に頼まれたの」と路子。
「そんなこと・・・どうでもいいじゃありませんか・・・みんなが幸せならそれで」と由実香。
すべて祥明の呪のなせることだった。
白黒をはっきりつけないこと・・・これこそ陰陽師の極意なのである。
八卦も陰陽五行も突き詰めれば太極に還るのみだからだ。
そこでは陰も陽もないのである。
こうして・・・キツネである瞬太は祥明の式神(使い魔)となったのだった。
瞬太が捨て子であることは言うまでもないだろう。
なかなか奥深い・・・陰陽道の極意を示す物語が始ったのである。
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