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2013年10月14日 (月)

安堂ロイドスペシウム光線(木村拓哉)VSエメリウム光線(柴咲コウ)~A.I. knows LOVE?~

さて・・・まずは・・・御愛読の皆様に・・・「八重の桜」は・・・火曜日の記事に都落ちしました。

スケジュール的に厳しいが・・・とにかく・・・「八重の桜」は脳内キープが可能だが・・・「安堂ロイド」は勢いで書いてしまいたいドラマなのである。

そうでないと・・・半端なく長くなりそうな気がいたしますので~。

たとえば・・・「守護神」としての「ヒーロー」の暗喩として使われているウルトラマンとウルトラセブンの必殺技のポーズがある。

主人公の一人・沫嶋黎士(木村拓哉)とヒロインの安堂麻陽(柴咲コウ)が戯れにみせる一瞬のポージングの応酬。

黎士は腕を交差するウルトラマンのスペシウム光線、麻陽は額に両手をあてるウルトラセブンのエメリウム光線である。

どちらもフィクションの話であるが・・・スペシウムという造語はスペース(宇宙)とイウム(物質)の合体である。

つまり・・・宇宙物質光線が・・・敵(主に怪獣)を砕くのである。

宇宙物質光線ってなんだよ・・・と思うところが・・・人間の知そのものを示していると思う。

物語は純然たるファンタジーであり、サイエンスフィクションの基本的な道具立て「タイムトラベル」と「アンドロイド」のダブル使いなのである。

自分の「知識」を基盤に・・・それぞれの「違和感」が生じまくるに違いない物語なのである。

たとえば・・・物理的なダメージに対し、情報処理的修復に何の意味があるのか・・・と考える人がいるかもしれない。

そういう人は基本的に情報もまた物質であることが理解できていないのである。

また・・・「宇宙」と言う言葉が「宇」という空間と「宙」という時間で示されることを知らないものは「宇宙」が「時空間」であるという実感がない。

つまり、「宇宙物質光線」とは「天地四方古往今来の物質の光線」なので・・・とにかくものすごい威力なのである。

ある意味、「現在過去未来この世のありとあらゆるものをぶちこんだビーム」なのだ。

もう・・・想像もつかない領域である。

そうしたスペシウム光線に対して、エメリウム光線は謎の光線である。しかも、設定上では・・・その威力は加減が出来ることになっている。厳しくも優しくもできる光線なのだ。そして額にあるビームランプはなんとなくエメラルドのように宝石を思わせる色合いなのである。

黎士がスペシウム光線のポーズをとると麻陽がエメリウム光線で応じる。

キッドの場合はこれだけで・・・もう・・・「安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~」は素晴らしい作品だと断言できるのです。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第1回』(TBSテレビ20131013PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・波多野貴文を見た。擬似人間型機械小説の傑作に「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(Do Androids Dream of Electric Sheep?)/フィリップ・K・ディック」(1968年)があり、「人工知能は愛を知るか?」はそのヴァリエーションと考えることができる。タイムトラベルについては小説「タイム・マシン/H・G・ウェルズ」(1895年)など百年以上の歴史によって多くの名作が生まれている。「安堂ロイド」は小説「タイムパトロール/ポール・アンダーソン」(1960年)的な歴史改変テーマが生んだ映画「ターミネーター」(1984年)の影響が強いと思われるが・・・実は「人工知能による愛の認知」の問題はすでに時空間的な要素を含んでいるとも言える。なぜなら・・・愛とは時の流れであり・・・空間的存在だからである。その点については語るべき時に語ることになるだろう。

大手IT企業「エニグマエンジンソフト社」に勤める優秀なビジネスウーマン安堂麻陽・広報室長(柴咲コウ)の趣味は「将棋」だった。

ある日、ネット上でハンドルネーム「バレエメカニック」の挑戦を受けた麻陽は「バレエメカニック」の強さに興味を魅かれる。

システムエンジニアの星(桐谷健太)は情報解析のプロであり、ハッキングによって「バレエメカニック」の正体が東京帝國大学次元物理学部物理学科(フィクション)の宇宙理論学教授・沫嶋黎士(木村拓哉)であることを麻陽に教える。

彼らは素晴らしいインターネットの世界の情報倉庫である「クラウド」の管理者であり、ユーザーには「預かった情報は暗号化されて漏洩の恐れはない」と説明するが・・・そんなことはありえないと知っているのだった。

もちろん、ユーザーだってそんなことは信じていないのである。

沫嶋黎士の研究室を訪ねる麻陽。

「あなたが・・・バレエメカニック?」

「そういうあなたは・・・サニー千葉(千葉真一=麻陽のハンドルネーム)さんですね」

二人は一目で恋に落ちるのだった。

「何をしていたの・・・」

「星を見てました」

「昼間から・・・?」

「星の運行はほぼ定刻通りですから」

「でも・・・本当は消滅しているかもしれなくてよ」

「そうですね・・・こっちが突然消えてしまうこともありえます」

「ふふふ・・・スリルがあるわね」

「こちらが突然消えてしまったら・・・宇宙のどこかで誰かが驚くかもしれない」

「スリルは好きよ」

「僕はスリルの好きな女性が好きです」

「まあ・・・口説いてるわけ?」

「いえ・・・正直な話です」

「私は・・・正直な人が好きよ」

基本的に宇宙の運命は決定しているために・・・愛し合うために生まれて来た二人はたちまち愛し合うのだった。

ついには東京タワーの下で一目も憚らず熱いキスを交わす仲となったのである。

そして・・・二人は婚約した。

黎士は「時空構造に関するワームホール理論研究」の第一人者だった。

ワームホールとは、時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道の事である。要するに宇宙の構造を説明しようとした一つのモデルケースということだ。ジョン・アーチボルト・ホイーラーが1957年に命名した。

宇宙理論学者の一人として重力の墓場ブラックホールから新たなる地平であるホワイトホールへとワームホールが通じていることを理論化することが黎士の目標だった。

正しい理論を得れば時空間を超越するわけである。

空間を短絡したワープや、時間を連結したタイムトラベルが理論上は可能となる。

そして・・・黎士は正しい理論に到達し・・・宇宙の重大な秘密を知ってしまったらしい。

2013年10月7日正午。

学生相手の講義中の黎士は・・・。

「ここで問題となるのが・・・光子です。コウシといっても中国の儒家・孔子様ではありませんよ・・・あ・・・これはジョークです」

ジョークのつまらなさでは定評のある黎士だったが・・・兄と同じ研究室に籍を置く准教授・沫嶋七瀬(大島優子)はそれも笑いの一種であろうとフォローするのだった。

兄と妹は研究室で「黄粉あんパン」と「ミルク」の完全栄養食で粗末なランチを摂取する。

「宇宙空間に鏡を置けば人間は過去の自分を見ることが出来るわけよね」

「そうだね」

「50光年先に鏡があるとすれば、見上げると往復100年前の光を見ることになるわけよね」

「そうだね」

「光速の半分の速度の宇宙船があれば、100年で鏡を設置できるわけよね」

「そうだね」

「つまり、10年前に出発した宇宙船の鏡で2年半前はもう見えるわけよね」

「そうだね・・・十年で宇宙船は地球から五光年・・・それが地球で見えるのは五年後だ」

「今、鏡は置かれているのかしら」

「さあ・・・」

「人は鏡を見て・・・それが過去の自分であるとは思わないのよね」

「そうだね」

「そして・・・兄さんの理論によれば未来の自分を見る鏡の設置が可能となるわけよね」

「そうだね」

「それによって・・・運命は変わるのかしら」

「さあ・・・」

「とにかく・・・この殺人予定表は未来からの干渉なのね」

「そうだ・・・理論的には2113年から干渉されていることになる・・・100年後の未来だ」

「スケジュールは順調に消化されているのね、9月24日に最初の犠牲者がでて・・・」

「先ほど、御法川博士が殺害された」

「次は兄さんか・・・予定時刻は・・・本日15時5分、場所は房総沖・・・グランシア航空の飛行機が墜落すると・・・」

「22世紀の誰かさんは・・・そう計画しているらしい」

「のんびり・・・ランチ食べている場合なのかしら」

「それなりに準備はしている」

「兄さんが殺されると・・・次は婚約者の麻陽さんかあ・・・」

「これから・・・警告するつもりだ」

「これは・・・やはり・・・あの理論と関係しているのかしら」

「しているだろう・・・リストにあるのは・・・研究者ばかりだ」

「じゃ・・・私も・・・」

「理論に対する理解次第では・・・」

「うわあ・・・やばいじゃん」

「まだ・・・大丈夫だろう」

「あ・・・バカにしたわね」

「そんなことはない・・・じゃ・・・元気で」

「く、空港に行く気なの」

「そうさ・・・準備はできていると言っただろう」

2013年10月7日午後2時。

麻陽は職場で黎士からの電話を受ける。

「仕事中にすまない・・・」

「どうしたの」

「どうやら・・・僕は殺されるらしい・・・そして君も命を狙われているらしい」

「本当にジョークのつまらない人ね・・・そこが笑えるわけだけど」

「信じてくれ・・・」

「・・・」

「もしも・・・たとえ僕が殺されたとしても・・・君は守ってみせる」

「何言ってるの」

「愛してる」

電話は切断された。

「悪戯電話ですか」と怪訝な顔をする麻陽の部下である小松左京子(山口紗弥加)・・・。

「いいえ・・・彼だった・・・私にはわかるの」

「そうなんですか・・・」

「ええ・・・私には異常な直観力があるって・・・彼が言ってた」

「それ・・・なんか・・・笑えますね」

麻陽の携帯に着信がある。

「ああ・・・ボクだよ」と黎士そっくりの声が聴こえる。

「あなた・・・誰・・・黎士じゃないわね・・・私にはわかる」

携帯をかけていたのは・・・キャビンアテンダンドの制服を着た女だった。

女は2113年の警察組織から歴史改変修復のために遡上した殺人刑事ラプラスPA7(福田彩乃)である。

超時空通信によって未来に接続されたアンドロイドであるが・・・ある程度の自由裁量機能を搭載している。

それらは電子頭脳内での情報処理に基づく判断だが、記述するために可視化しよう。

(プラン修正提案・・・標的アサヒアンドウへの欺瞞工作は失敗・・・理由は解析不能・・・例外事項に分類・・・標的アサヒアンドウの規格外の洞察力によるものと推定・・・プランは空間的変更により修正可能・・・本部への承認要請・・・変更に基づく標的レイジマツシマの暗殺プラン修正・・・殺害時空間の変更提案・・・承認)

2013年10月7日午後2時20分。

黎士は空港に姿を見せた。

女は黎士に接触する。

「コンタクトしてきたのか」

「何か・・・ご不明の点がございますか」

「僕を殺しにきたのだろう」

「さすがですね・・・沫嶋教授」

「ああ・・・やはり」

「なぜ・・・そんなにうれしそうなのです」

「それは・・・研究者として・・・理論が実証されるというのは・・・とてもうれしいからね」

「喜んでいただいて幸いです」

「でも・・・僕は殺せないと思う」

「何故です」

「パスポートをシュレッダーにかけたから・・・インド行きの飛行機に乗れない」

「残念ながらパスポートは完全にコピーされています」

「ああ・・・そう来たか」

「それでは殺します」

「ここで・・・衆人環視の中で・・・」

「ウイジングアウト(空間離脱)します」

「ふうん」

ラプラスは亜空間発生装置を搭載していた。

周囲の空間は一部閉鎖され、亜空間化する。

その時点で・・・黎士とラプラスは存在が消失したのである。

「なるほどな」

「殺します」

「予定より早いな」

「遅いより早い方が選択肢を増加するのです」

「君は親切だね」

「人間に対して敬意を持って接するようにプログラムされています」

「でも・・・殺すんだ」

「殺します」

「じゃあ・・・君を倒すしかないな」

「それは不可能です」

「いや・・・この世に不可能なことはない」

「なぜです」

「勝つまで・・・何度でもチャレンジするからさ」

「殺します」

沫嶋黎士は射殺された。黎士の死体は飛行機に乗せられ、飛行機は墜落した。

2013年10月7日午後3時5分のことだった。

後に奇跡的に沫嶋黎士の遺体の一部が回収され・・・本人と断定される。

そのために・・・ラプラスは頭部を損傷しなかったのである。

2013年10月7日午後4時。

グランシア航空旅客機墜落のニュースは大々的に報じられた。乗客名簿から沫嶋黎士の死も伝えられる。

麻陽は不安を胸に沫嶋黎士研究室に向かっていた。

そこに七瀬から電話が入る。

「麻陽さん・・・兄さんが・・・」

「ニュースは見たけれど・・・私には黎士が死んだとは思えない・・・直感が違うと叫んでいるから・・・」

「麻陽・・・お義姉さん・・・兄は殺されたのかもしれません」

「え・・・」

「殺人スケジュール表があるんです・・・続々と殺されてます・・・兄さんは・・・今日・・・そして明日、朝の八時半に・・・代々木で・・・お義姉さんが・・・」

「なんですって・・・そんな・・・」

「馬鹿みたいですよね・・・まるで・・・兄の冗談みたい・・・」

時はあたかも無情であるように過ぎていく。

ラプラスは次の指令実行に備えていた。

どうやら2113年の警察機構はアナザーワールドであるようだ。

アナザーワールドとは別世界である。

そして、この世界にあっては2013年は時空間の特異点になっているらしい。

あるべき世界とアナザーワールドの分岐点と言っていいだろう。

アナザーワールドにとって・・・2013年の分岐は存亡の危機に関わっていると考えている勢力があり、すでに改変されかかっているアナザーワールドにとってのあるべき世界を修正することがラプラスの使命なのである。

そのために2013年の時間進行と2113年の時間進行はリンクしていると考える必要があるだろう。

攻防は一瞬を巡って行われている。

だから・・・2013年が2014年になる時、2113年は2114年になるのである。

麻陽は藁にもすがる気持ちでタブレットで黎士のタブレットにアクセスする。

このタブレットでどれほど・・・黎士と対戦してきたことか。

「将棋はアナザーワールドなんだ」

「そうかもしれないわね・・・この世界とは別のルールで存在しているから」

「彼らは同時に動けない奇妙な生物だ」

「それに不老不死だし・・・平気で裏切るけど」

「しかし、王と玉だけは死ぬ運命だ」

「王と玉が死ねば世界は終わるものね・・・勝っても負けても世界は滅びるのよね」

「いや・・・振り出しに戻るんだ・・・そういう意味では閉ざされたアナザーワールドでは王も玉も不老不死ではないが常に再生する」

「けれど・・・歴史は残るでしょう」

「その通り、人工知能は過去の歴史を検証し、彼らの神として最善の運命を導きだす」

「つまり、過去に従った未来を作るのね」

「だが・・・君は神としては風変わりだ・・・過去の経験に基づいた予測ではなく未来を局部限定的に予知しているように運命を切り開いていく」

「だって・・・その方がスリルがあるでしょう」

「僕はスリルの好きな女性が好きなのです」

「どうして?」

「心から守ってあげなくちゃと思えるから・・・」

「ふふふ・・・対人恐怖症で変人のあなたに私が守れるかしら・・・」

「君を守るためなら僕はきっとどんな恐怖も克服できる・・・」

「死んでしまったら・・・どうやって・・・私を守るのよ」

麻陽の中で黎士の死を論理的に受けとめようとする意志と黎士が生きているという直感が激しくせめぎ合っていた。

研究所には麻陽のオフィスにあるのと同じセットが置かれている。

ツーショトの写真とブロックで作られた東京タワー。

それは二人の暗号である。

「東京タワーの下で確認された愛」「東京タワーの下で共有した温もり」「はじめての濃厚な口づけ」・・・。

「思い出のセット」で記憶を共有することで・・・麻陽と黎士は時空を越えて愛の情報処理を行うのである。

記憶の中の黎士に麻陽は語りかける。

「過去は思い出す度に現在になるのよね」

「人間は過去を見ることができると思いがちだよね」

「ちがうの?」

「人間は過去を変えることはできない」

「起きたことを知っているからね」

「人間は未来を変えられると思いがちだよね」

「起きることを知らないから?」

「そうだ・・・知ってしまえば未来もまた確定してしまうことになる・・・」

「だったら・・・知らない過去なら変えられることになるわね」

「少なくとも・・・あったことをなかったことにはできるだろう」

「あなたは正直だから・・・過去を変えられないわね」

「そう・・・だから・・・せめて未来は変えたいと思うよ」

「未来は変えるんじゃなくて作るものでしょう」

「僕にとっては・・・それは・・・ちょっと違うんだ・・・未来は決定しているから」

「すべて・・・なにもかも・・・」

「すべて・・・なにもかも・・・」

「麻陽お義姉さん・・・」

もうすぐ義理の妹になる七瀬に呼ばれて麻陽は我に帰る。

「大丈夫ですか・・・」

「大丈夫・・・妹のあなたに・・・こんなことを言ったら変に思われるかもしれないけれど」

「何でしょう」

「やはり・・・私・・・彼が死んだとは・・・とても思えない・・・むしろ生きている確信があるの」

「お義姉さん・・・こんなことを言ったら正気を疑われるかもしれませんがとにかく・・・気をつけてください・・・スケジュールが迫っています・・・みんな殺されているみたいですから」

愛する婚約者と愛する兄を失いかけている二人の女はまだ涙を流さない。

彼女たちは現実を認識することに用心深いタイプなのであろう。

彼女たちは黎士が死んだところを見たわけではないのである。

しかし、世界の情報を精査する男たちにとって黎士の「死」はすでに確定していた。

警視庁の闇に属する公安部第仇課特殊捜査班の冨野好雪刑事(日野陽仁)はその件の報告を行っていた。

「また・・・殺されました」

「そうか」

全室禁煙の警視庁にあって傍若無人に紫煙を吐き出しながら葦母衣朔刑事(遠藤憲一)は表情を変えなかった。

「これで・・・例のリストは最後の一人になったわけだ」

「どうしましょう・・・警護対象に指定しますか」

「いや・・・未来からのスケジュールによって殺人が行われているなんて・・・原則的に報告できない・・・報告できない以上、警護を指令できない」

「手口はバラバラですが予定に従った正確無比の犯行・・・まるで・・・ロボットが殺しているみたいですな」

「いや・・・ロボットには人殺しはできない」

「アシモフの基本三原則があるからですか」

「そうだ・・・」

「しかし・・・何者かがリモートコントロールしているかもしれないでしょう」

「そんなもの・・・ロボットではなくて・・・単なる人型兵器だろう」

「いえ・・・人間そっくりのアンドロイドなら・・・殺人も模倣するかもしれません」

「そうなら・・・それは史上最大のロボットだ」

「いえ・・・オメガ因子ですよ」

悪の心を持ったロボットか。

葦母刑事は新しい上司を連想する。

「いや・・・あいつは・・・悪の心を持っているわけではないな・・・どちらかと言えば心が無い感じだ」

全館に備え付けられた盗聴装置の情報を精査して二人の会話を聴きながら警視庁公安部の角城元統括官(平岡祐太)は無表情だった。

ただ・・・闇の中でその目は赤く光るのだった。

「誰のことです」

「いや・・・誰でもないさ」

葦母刑事は単独行動を選択する。

最後のターゲットである「安堂麻陽」を追尾することにしたのだった。

2013年10月8日未明。

主を失った机の引き出しがそろそろと開きだしていた。

その引き出しには黎士が理論化に成功したと思われるワームホールが発生していた。

ワームホールによって2113年と2013年は接合されたのである。

そのテクノロジーは2113年には実用化しているのだろう。

それを不思議に思うなら1913年を振り返ってみればいい。

原子力発電所は世界のどこにもない。携帯電話は一台もない。空には人工衛星が見当たらない。多くの人々は「幽霊と対話するため」の「心霊研究」に熱中していたのである。

100年というのは恐ろしい歳月なのである。なにしろ・・・今、生きている人間のほとんどが死んでいる世界なのである。

2113年からダウンロードされたデータは空間にアクセスし、2013年の時空間に存在する物質に関与して新しい構成を形成して言った。

時空間に存在する原子核と電子は分離され再配置され・・・数秒で新たなる元素によって構成される擬似有機体を出現させる。

「ARX II-13」は起動した。

それは・・・外見が黎士にそっくりなアンドロイドだった。

(初期設定を終了・・・必要情報のダウンロードを開始・・・2013年時空間情報とリンク開始・・・検索範囲を設定・・・機能動作確認終了・・・任務開始を申請・・・許可を認知・・・これより識別された個体・アサヒ・アンドウの保護を開始する・・・最優先事項・・・アサヒ・アンドウの生命活動の維持・・・)

刑事とアンドロイドは麻陽の家に到着した。

刑事は感知しなかったがアンドロイドは刑事を感知した。

警戒モードに移行しつつアンドロイドは待機する。

麻陽は現実から逃避するために日常的なルーティーンに従い出勤を選択し、最寄り駅へと向かう。

その時、沫嶋七瀬は浅い眠りから醒める。

研究室でうたた寝をしていたらしい。

携帯電話が着信している。

「お義姉さん・・・」

「七瀬ちゃん・・・私・・・もう死にたい・・・後の事をお願いします」

「お義姉さん」

麻陽そっくりの声で送信を終えたポリスクラウドのアンドロイド・ラプラスはウイジング・アウトした。

黎士そっくりのアンドロイドは亜空間の発生を探知する。

(敵対する機体の接近を探知・・・秘匿モードに移行する)

二体のアンドロイドが急速接近することを知らない二人の人間は駅のホームに降りていた。

「・・・番線を急行列車・黎明が通過します・・・黄色い線の内側で・・・」

ホームに佇む麻陽。その背後で何者かを待捕まえる葦母刑事。

10月8日午前8時30分。

亜空間に隠れてラプラスは接近する。

そして、麻陽をホームに突き落とす。

葦母は驚愕する。

「停車だ・・・列車を停めろ・・・」

しかし・・・急行列車は走り抜けていく。

ホームを覗きこむ葦母・・・しかし、不審物は何も見つけられなかった。

「なんだ・・・これは・・・どんな怪奇現象なんだ・・・」

超高速移動した黎士そっくりのアンドロイドは立体駐車場の最上階に転移していた。

気がついた麻陽は目を疑う。

「麻陽・・・違う・・・あなたは誰?」

「私は・・・エーアールエックスセカンドサーティーン・・・22世紀から安藤麻陽を保護するために転送された高機能型戦闘用アンドロイドです」

「さっぱり・・・わからない」

「クライアントからあなたを保護することを依頼されています」

「クライアントって・・・黎士はどうなったの・・・」

「黎士は・・・」

「死んだの・・・」

「いえ・・・殺されました」

「嘘・・・」

「あなたの説得のために・・・ラプラスから取得した情報を開示します」

「ラプラス・・・」

「あなたを殺害するためにあなたをホームに突き落としたポリスクラウド・・・警察機構所属のアンドロイド7号機です」

黎士そっくりのアンドロイドは麻陽に眼鏡型ディスプレーを渡す。

それは・・・黎士の遺品と呼べるものだった。

麻陽は見た。

「麻陽は・・・俺が守る・・・勝つまでやるから」

・・・といいながら無惨に射殺された黎士の断末魔を・・・。

「いや・・・信じない」

その時、ラプラスが現れた。

「アサヒアンドウを確認。射殺します」

「あ、あんたが・・・黎士を・・・ぶっ殺す」

ラプラスが一瞬、機能停止するほどの非常識な麻陽の態度だった。

ラプラスに殴りかかる麻陽の前方に割り込む黎士タイプ。

しかし、ラプラスの機能は黎士タイプの性能を上回っていた。

たちまち、強制排除されスロープを転げ落ちる黎士タイプ。

だが、次の瞬間、麻陽はラプラスに果敢に挑みかかっていた。

瞬時に対応したラプラスは高層ビルの屋上から麻陽を地上へと投げ捨てた。

黎士タイプは超高速移動で麻陽をキャッチする。

「学習してほしい」

「何を」

「人間にアンドロイドは倒せない」

「やってみなきゃわからないでしょう」

「・・・」

路上に殺到するラプラス。

「公務執行にご協力ください。あなたの行為は公務執行妨害に該当します」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられています」

「警告を終了し、所属不明アンドロイドを処理します」

圧倒的な実力差で黎士タイプを粉砕し、アッパーカットで吹っ飛ばすラプラス。

黎士タイプは致命的なダメージを受け、落下して民家の屋根を突き破り、ベッドに横たわる。

「障害の排除に成功・・・任務を継続する」

夢のような出来事に一瞬、茫然とする麻陽。その静寂を破る声がする。

「おばさん・・・エーアールエックスセカンドサーティーンの息の音を停めた方がいいわよ」

「人間を確認・・・生体IDを検索中・・・該当なし」

「せっかくのアドバイスなんだから・・・人間様に従いなさいよ」

「亜空間突破力を保持する人間を敵対者と認定・・・排除を申請する」

(ポリスクラウドより指令。未確認アンドロイドの転送を確認・・・優先指令・・・二体のアンドロイドの完全消去)

「了解」

ラプラスは黎士の元へと移動を開始する。

驚異的な復讐心でラプラスを追跡する麻陽だった。

「あっはっは・・・あれがプラントル・グロワートの特異点(圧縮により圧力と温度が上昇し特定の値で無限大に発散してしまう圧力係数の理論式が持つ特異点)かあ・・・うけるわあ」

お茶の間的にはほぼ意味不明の白いセーラー服を身にまとう謎の美少女(桐谷美玲)だった。

多くの男性視聴者は可愛いから許容するのだった。

基本的に・・・朝陽が現代と未来に影響を及ぼす特殊な存在であると理解するべきだろう。

黎士タイプのアンドロイドの眠る寝室の鏡台が時空間接合し、引き出しから黎士タイプをバックアップする任務を帯びていると推定されるナースロイド・サプリ(本田翼)が実体化する。

引き出しの中が亜空間化されているらしい。

「サプリでーす。21世紀なんてはじめて~。高まる~」

(修復任務は緊急を要する・・・ただちに修復を開始せよ)

「ちぇっ・・・てめえではめやがれってんだ・・・やることはやるもの」

黎士タイプの修復にかかるサプリ。

「おやおや・・・完全にぶっこわれてますよ・・・これ・・・再構築を要請」

(承認・・・ダウンロードを開始する)

「早く・・・早く・・・ポリ公来ちゃうぞ」

(時間をロスしたのはナースロイド自身である)

「にゃ~ん。とりあえず退避」

ナースロイドは逃げた。

ラプラスが現地に到着する。

その後頭部に煉瓦を投げつける麻陽だった。

「目標を変更、アサヒアンドウを殺します」

「・・・」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられている」

復旧した黎士タイプ・ヴァージョン2.0・・・。

「違法ダウンロードを検知しています・・・違法プログラムをただちにアンインストールしてください」

「勝つまでやるっていっただろう」

「射殺モード実行」

「アスラシステム発動・・・」

「そのシステムは禁止されています」

しかし、アスラシステムを発動した黎士タイプは無敵状態になるのだった。

あらゆる性能がラプラスを凌駕し、瞬殺されるラプラス・・・。

「協力を要請します。22世紀の治安を守るための警察活動にご協力ください」

「要請を却下する」

「歴史改変は修正されなければなりません・・・アサヒアンドウの殺害にご協力をお願いします」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられている」

「治安を維持するために・・・私の記憶領域のアクセスを禁じます・・・強制消去・・・システム・ダウン」

ラプラスは自壊した。

「異物の元素還元を申請する」

おそらく黎士タイプは支援システムを別地点に設置していると推測される。

それが21世紀から22世紀の時空間に存在するアナザーワールド反社会的組織とリンクしているのである。

(申請を受諾。元素還元を承認)

黎士タイプは自分が転送された逆パターンでラプラスを元素に還元し、完全に解体する。

「一体・・・これはなんなのよ・・・説明しなさいよ」逆切れする麻陽だった。

「私はアサヒアンドウの生存確保を依頼されています」

「なんで・・・黎士の姿なの」

「クライアントの希望です」

「クライアントって誰よ」

「情報の開示は禁止されています」

「うわあ・・・出たよ・・・守秘義務かよっ」

「私はアサヒアンドウの敵を排除します。世界が全員敵になれば世界を破壊します」

「馬鹿か・・・馬鹿なのか・・・」

安藤麻陽は泣き出した。理解できないのが口惜しかったのだ。

「私は標準的な人間の二倍以上の人工知能を搭載しています」

「もう・・・死にたい」

「アサヒアンドウの死亡は禁じられている。そのために私にはすべての力の使用が認可されている。実力行使は目的達成のための最善の手段です」

「本人が死にたいって言ってんのよ」

「安楽死を希望するのですか」

「苦しいから・・・死にたいのよ」

「許可を申請するのでしばらくお待ちください」

「ええっ」

「例外規定を確認。アサヒアンドウの希望が承認されました。これより、アンドウアサヒを射殺します」

「ええーーーーっ」

謎の美少女は微笑む。

「沫嶋黎士死して・・・なお烈日の気迫あり・・・か・・・あはは・・・うけまくりーーーっ」

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Ar001 ごっこガーデン。幻影の東京セット。アンナもうなにがなんだかわかんないよ大爆発~。ヒロインの気持ちにこれほど共感するドラマはダーリンドラマ史上はじめてぴょ~ん。クライアントって誰ですかーーーっ。アスラシステムって何ですか~、ユカワ・オペレーション・システムは廉価版ありですか~。あまりの大混乱に「あまちゃん」だったら灯台岬で自転車ダイブするところですか~~~。ラスボスどんだけ強いのか・・・ドキドキが止まらないぴょ~ん。安堂ロイドっていつ呼べばいいのかな~・・・とにかく黎士のブログにアンナぴょん行ってきま~す・・・ロイド病発症中・・・じいや、きなこあげぱんもっと~シャブリたてよこたかさ・・・時間・・・5次元ってあと・・・何ですか・・・ドラえもんとハクション大魔王のこっそり合体をするサプリ・・・ドラミアクビちゃん?・・・二夜連続のなつかしアニメネタなのでありました~くうとにかく・・・キャストのメモで勘弁してくださいーーーっ・・・口パクでものまねならなんでもアリですなーーーっ・・・新境地かっまことりあえず・・・サプリコスプレゲットだじょ~。じいや、引き出し改造してえエリ忙しいのでまだ東京バンドワゴン見たとこでス~mana木村くんツアー中でしたあ

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コメント

愛ですね~。深いですね~。
素晴らしい!
人を喜ばせてるキッドさんに惚れ直しちゃう。
悪魔なのにぃヾ(゚∇゚*)オイ
お陰様でストーリーが読めました。
今頃クライアントが見えるほど盲目で…
だって何も見えねぇんだものぉ(ノ∇≦*)

そして最後の最後に来て、
驚きと笑いをありがとう(≧∇≦)ノ彡バンバン!
現実もツアー中でがした(笑)

さて、あちこち読んで来ようっと≡≡≡ヘ(*゚∇゚)ノ

投稿: mana | 2013年10月16日 (水) 15時44分

|||-_||シャンプーブロー~mana様、いらっしゃいませ~トリートメント|||-_||

人間を愛するのは悪魔の基本でございます。
愛してもいない人間をどうして地獄に引きずりこめるでしょうか。
まあ、同族にはまったく愛のない輩もございますけれど。
困ったものでございます。


愛とはメモリーですからねえ。
キスまでダイジェストとは
実に潔い構成でございます。
オーソドックスな流れならば
単なるプログラムである安堂ロイドに・・・
記憶処理のゆらぎ・・・ノイズとしての
「愛」が生じるかどうかの・・・物語。

そして・・・その「愛」に
人間である安堂麻陽が応じることができるかどうか。
これから百年の間に生じる
人工知能差別問題の幕開けでございますからな。

最後の最後までお読み下さり
ありがとうございます。
ごっこガーデンでは
ノーアバター・キャラクターのmana様でございますので
歌姫ロイド(相武紗希)でご出演していただいていることを
ご了承ください。

投稿: キッド | 2013年10月16日 (水) 16時20分

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