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2013年11月30日 (土)

夫のカノジョ(川口春奈)VS家族の裏事情(谷村美月)

谷間である。

タイトル的には・・・川口春奈(主演)に対応するのは財前直見・沢村一樹(ダブル主演)になるわけだが・・・キッドの関心はどうしてもこうなります。

さて・・・テレビ東京を除く民放プライムタイムのドラマの視聴率としては・・・かなり低いことで話題となった「夫のカノジョ」に対し、話題にもならない「家族の裏事情」なのだが・・・。

「夫のカノジョ」・・・・・4.7%↗4.8%↘3.7%↘3.1%↘3.0%↗3.6%

「家族の裏事情」・・・6.5%↘5.6%↘4.2%↗4.4%↘3.8%

結構、いい勝負をしている。

キッドは視聴率はある程度、お茶の間の程度を示す指標としては重要だと思っている。「あまちゃん」が高視聴率の場合はお茶の間もなかなかやるな・・・と思うし、「ごちそうさん」が高視聴率ならお茶の間はやはりバカだなと思うわけである。

二つのドラマに共通しているのは主婦を主役とした・・・「夫のカノジョ」も実際の主役は鈴木砂羽である・・・ホームドラマだということである。

「夫の彼女」は専業主婦で、「家族の裏事情」では食堂の女将ではあるが・・・基本的には家族が何よりも大切な妻や母親・・・つまり良妻賢母的な視点で描かれている。

ただし・・・両者とも様々な理由により、その「座」が揺らぐわけである。

これをキッドはひそかに「サザエさんの危機」と呼んでいる。

「夫のカノジョ」ではサザエさんはマスオさんの部下のOLとファンタジー的手法で入れ替わってしまう。

「家族の裏事情」ではカツオがマスオさんの前妻の子供だったり、カツオが東大生の嫁を連れてきたり、マスオさんの昔の恋人が帰国したり、ワカメが磯野家が貧しくて自由がないといいだしたり、タラちゃんが落語家になりたいと言い出したりするわけである。

二つの番組の視聴率が振るわないのは・・・そんな「サザエさん」は見たくないとお茶の間が思うからなのだと思う。

そして・・・それ以上に・・・「サザエさん」に全く興味のないお茶の間が多数派になっているということなのだろう。

まあ・・・谷間なのであまり深くは追求しません。

で、『木曜ドラマ9・夫のカノジョ・第1話~』(TBSテレビ20131024PM9~)原作・垣谷美雨、脚本・江頭美智留(他)、演出・二宮崇(他)を見た。脚本には横田理恵、演出には三木康一郎、塚本連平も参加している。三木康一郎はトリハダ~夜ふかしのあなたにゾクッとする話を」の人、塚本連平は「都市伝説の女2」からここである。ひとつのジャンルといえる「誰かが誰かと人格が交代したら・・・」のバリエーションである。最もメジャーなのは小説「おれがあいつであいつがおれで/山中恒」を原作とする映画「転校生」(1982)で男子中学生と女子中学生の心と体が入れ替わるという話。この他にもクドカンの「ぼくの魔法使い」で主婦と赤の他人の中年男、ガッキーの「パパとムスメの7日間」で父親と娘が入れ替わっている。さらに変形ヴァージョンで死んだ人間が生きている人間に憑依する「秘密」や「ちょっと待って、神様」(原作/「秋日子かく語りき」)も一種の・・・外見と中身が違う話と言える。今季は深夜にパパ→息子の「49」もやってます。

まあ・・・よくある手なのである。最近では「山田くんと7人の魔女」でもやってました。

基本的には男女の交換が常套で・・・とにかく、性転換した自分の身体をチェックするという件がお約束になっている。

しかし・・・この作品は・・・専業主婦の小松原菱子(鈴木砂羽)が邪推する夫・麦太郎(田辺誠一)の愛人・・・実は単なる部下・・・の若い派遣社員・山岸星見(川口春奈)と入れ替わる同性同志の年齢差チェンジである。

つまり、新機軸を狙っているのだが・・・明らかに失敗している。

まず、第一に・・・独身女性と・・・専業主婦では・・・ドラマのネタ作りのしやすさが違うのである。

もちろん、独身女性の面白さだってあるわけだが・・・原作・脚本ともに・・・そこを開発する真摯さに欠けている。

結局、よくあるホームドラマ的なネタの流用で・・・菱子の子育てとか、ママ友との交流とか、主婦としてのよくある悩みがエピソードとして展開していく。

主演・川口春奈なのに・・・結局、星見の心を持った菱子が大活躍なのである。どう見たって鈴木砂羽のドラマなのだ。低視聴率の責任が川口春奈に被されるのはほとんど濡れ衣と言っていいだろう。

なんで・・・こんなことになってしまったのか。それはホリプロが制作するドラマで鈴木砂羽がホリプロ所属の女優だからである。・・・ミもフタもないな。

つまり、実質は鈴木砂羽の主演ドラマで・・・それでは視聴率がとれないとの理由で主演・川口春奈で企画書を通したために・・・結局、視聴率が取れないのである。

このドラマの一番の一同爆笑ポイントである。

で・・・経験のない女の子が・・・おばさんになって右往左往するという話なのだが・・・どちらかと言えば蓮っ葉な役柄の多い鈴木砂羽は単にいつもの鈴木砂羽である。

一方、小心者の主婦が入ってしまった若い女の子はひたすら地味に演技するしかなく・・・川口春奈の持っている・・・若さゆえの大胆さや・・・思いっきりのいいキャラクターの魅力が封殺され・・・主役らしさのかけらもない展開に終始しているのである。

アンチ・エイジングのもてはやされる時代にあって・・・若さを失うことと、若さを得ることのどちらが・・・幸せだろうか。

その答えは人それぞれだろうが・・・いや、突然若返った方がいいに決まっている。

なんてったって身体が楽だぞ。

つまり・・・若返った方が基本的に寿命が延びているのである。

もちろん・・・そのことによって築きあげたものを失う痛みはあるだろう。

しかし、突然、おばさんになって・・・見知らぬ家族と暮らすことの重圧というか、しがらみに縛られるやりきれなさは想像するだけでも恐ろしい。

そういう基本的な部分の思慮がかなり欠けて物語は進行して行く。

ドタバタの展開は面白くないことはないのだが・・・すごく面白いとは言えない展開である。

特に男性視聴者にとってはすべてどうでもいい話だろう。

物凄く安易に夫婦間の性の問題はセックスレスだから・・・ということで序盤戦はスルーしているわけだが・・・もしも・・・性行為をしても中身だけ若い女の子になっていても・・・夫には何の新鮮味もないわけである・・・そこかよっ。

鈴木砂羽の中の川口春奈にドキドキされてもなんのこっちゃなのだった。

秘密をさっさと打ち明けて・・・中身が鈴木砂羽の川口春奈を抱けることになった田辺誠一の高揚感を想像すると・・・ね。

まあ・・・というわけで・・・一部お茶の間の皆さんには申し訳ないが見なかったことにしてスルーするしかないのだった。

まともに書いたら・・・専業主婦についての毒々しいコメントが満載になると思うからである。

関連するキッドのブログ→天魔さんがゆく

で、『金曜ドラマ・家族の裏事情・第1回~』(フジテレビ201310251957~)脚本・武井彩・阿相クミコ、演出・木下高男(他)を見た。さて、こちらは雀町商店街でお食事処「石和屋」を家族で営み、それなりに充実した生活を送っている石和縁(財前直見)がほぼ主人公である。夫の泰彦(沢村一樹)とのW主演という建前だが・・・裏事情は基本的に縁に対する家族の裏事情なのである。

泰彦には前妻の近田美咲(松下由樹)がいて・・・実は長男の晴彦(松下洸平)は二人の子供である。そのことが夫婦の最大の裏事情と言える。

そして・・・パティシェとして成功した美咲が帰国して・・・泰彦の心は揺れる。

次男の雅彦は大学生だが・・・家族には内緒で落語家になることを夢見ている。

末っ子の女子中学生・千代美(水谷果穂)は海外でのサッカー教室の参加費用を稼ぐために年齢詐称をして家族には内緒でアルバイトをしている。

幼い頃に母親(真野響子)に捨てられたと思いこんでいる縁は・・・家族に対して強い束縛を無意識に行っている擬似的な良妻賢母である。ある意味、ものすごくうざい存在なのだった。

そんな嫁を泰彦の父親の尚彦(小野寺昭)は生温かく見守るのだった。

とにかく・・・出奔した母親のようにはなるまいと家族大事で生きて来た縁。

しかし、家族の絆はいつしか大きく揺らぎ始めるのだった。

その一石が長男の結婚相手として現れた高城累(谷村美月)なのだった。

面白みのない母親に育てられ、面白みのない男に育った町工場の事務員・晴彦は面白みがないために恋人に捨てられ、たまたま知り合った累の奇妙な性格に魅かれ、衝動的に結婚を決意する。

累は東京大学理学部卒の大手企業の研究員。母子家庭に育ち、孤独に育ったために人間関係の対処にいろいろと問題がある。女手一つで累を育てた母親・祥子(宮田早苗)は二年前にクモ膜下出血で倒れ、以来、認知症を発症して長期入院中である。その医療費がかさみ、累は三百万円以上の借金がある。返済の目途もなく、限度額を越えてしまったために新たな借金もできない。晴彦と結婚するのは名義を替えることで新たな借金をするためなのであった。

そんなことは知らない縁は初対面の席で・・・縁が同居する気も嫁になる気もないと率直に発言したことで全人格を否定された気分を味わう。

縁にとって長男の嫁とは・・・お食事処「石和屋」を手伝い、やがては女将の座を継ぐものと決定されていたからである。

そして・・・それが単なるエゴであるとは夢にも思わない困ったキャラクターなのであった。

一度は・・・縁に拒絶される・・・累だったが・・・まったく家庭的ではなかった母親とは違う・・・縁のこだわりの母親ぶりを新鮮に感じるのだった。

累は家族で食卓を囲み、大皿から自分の分をとりわけることも知らぬネグレクトされた才媛だったのである。

生まれて初めて「お弁当」を作ってもらったことに感激する累に縁の中の「こだわりの母親魂」が疼き始めるのだった。

一方、晴彦は結婚の報告のために累の入院中の母親を見舞う。

「あら・・・累・・・来てくれたの・・・その人はどなた」

「私・・・この人と入籍します・・・彼は晴彦さんです」

「まあ・・・そうなの・・・この日が来るのをどんなに夢見たことか・・・晴彦さん・・・累の事よろしくお願いしますね」

「はい」

「累、よく来てくれたわね・・・その人はどなたかしら」

「私・・・この人と入籍します・・・」

「まあ・・・そうなの・・・この日が来るのをどんなに夢見たことか・・・」

「・・・」

「こちら・・・どなた?」

「私・・・この人と入籍します・・・」

「まあ・・・そうなの・・・この日が来るのをどんなに夢見たことか・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

晴彦は・・・累の憐れさに・・・胸が締め付けられるのだった。

単なる遊び心で始った結婚ゲームが・・・累への本格的な恋へと変わっていくのだった。

しかし・・・累の母親の病状は悪化し・・・ついに・・・。

「お母さん・・・」

「あなた・・・どなた・・・」

・・・になるのであった。

そんなある日、縁と末っ子の千代美が激突する。

「私・・・こんな貧乏な家に生まれたくなかった・・・もっと普通のお母さんがよかった」

「普通ってなによ」

「普通に携帯電話を買ってくれるお母さん」

「・・・」

そんな娘の暴言に思わず手を出す・・・父親だった。

家出した千代美を発見したのは第三話で銭湯における入浴サービスを共にした累である。

「あのね・・・いつか・・・お母さんはいなくなる・・・そのことを想像してごらんなさい」

「・・・」

「そうしたら・・・いらないお母さんが・・・大切な人だったって分かるから」

「・・・」

「悲しい気持ちになったでしょう」

「悲しい・・・」

盗み聞きした二人の会話に戦慄する縁なのである。

とにかく・・・「夫のカノジョ」の主演・川口春奈(18)より「家族の裏事情」の脇役・谷村美月(23)の方が・・・役に恵まれたと断定するキッドだった。

関連するキッドのブログ→リーガルハイ2-2

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2013年11月29日 (金)

ぶらり彼岸島の旅(白石隼也)

オンエアの途中で千葉県北西部地震がある。

東京の震度は3でマグニチュードは4.8と推定。

昨日の深夜には苫小牧沖で同程度の地震があった。

千葉県北西部はここのところ、地震が続いている。

ふなっしーが垂直78cmのジャンプ力でジャンプし過ぎなのではないかとふと思う・・・バカなの?

ここ数日は特定秘密保護法案についての報道が目についたが・・・賛否両論ということでは非常に否定的な報道が多いのはマスメデイアによる権力の防衛意識の高さを伺わせる。

そもそも・・・「軍事」をどうするか・・・という問題である。「軍事」そのものを否定するなら「秘密」はそもそも必要がない。

しかし、他国の防空識別圏に突然、防空識別圏を重ねてくる恐ろしい隣国が存在する以上、「軍事」の肯定に疑問の余地はない。

米軍は早速、核爆撃可能なB52による威嚇行動を実施した。

建前的にはこの行動は同盟国の日本に事前の通告がなされなかった。

なにしろ・・・軍事機密の保持能力が信用されていないからである。

反対論者たちは皆、国民の知る権利について危惧する。

しかし、文筆家たちはもう少し・・・自分の使命について考えるべきである。

情報を発信するのは命がけの仕事である。

制度の安全保障の枠外にこそ・・・発信すべき情報があるなら発信しなければならない。

そういう覚悟の無さが露呈しているわけである。

フクシマ原発事故以後、作家たちはふってわいたように「原子力発電の廃止」を叫ぶわけだが・・・その危険性は原子力発電の開始からずっと明らかだったのである。ずっと沈黙を守って来たのに何を今さらである。

特定秘密保護法ができると・・・「ものが書きにくい」なんていってるやつは作家なんてやめてしまえと思うばかりなのだった。

これを伝えなければ作家でいる意味がないという情報に接し、それを発表し、罪に問われたら・・・それに服すればいいだけの話である。

絶対安全な情報なんて・・・作家が問うべきものじゃないだろが。

取材源の口が重くなるなら手段を選ばずに取材すればいいだけの話だ。

まあ・・・要するに反対のポーズを示すだけの情報産業の徒に何の尊敬の念も抱けないという話である。

で、『彼岸島・第6回』(TBSテレビ201311290058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、友原我聞、演出・横井健司、総監修・三池崇史を見た。このドラマの原点を考えると直接的には「吸血鬼ドラキュラ」が連想されるが・・・話の流れは「フランケンシュタイン」と関連してくる。その流れから生じた映画「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」(1965年)である。第二次世界大戦末期、陥落寸前のドイツの首都ベルリンから大日本帝国の広島に「フランケンシュタイン博士の創造した不死の心臓」が輸送される。日独合同の軍事研究として「不死身兵士の開発」が行われていたのである。しかし、広島に原爆が投下されたためにすべての研究は灰燼に化したと思われた。しかし、心臓は自ら人体を発生させ・・・やがて不死身の巨人フランケンシュタインというモンスターとなるのである。ま・・・基本的にはこれのパクリということになりますな。

涼子(水崎綾女)・・・黒山羊の被り物をした吸血鬼の後ろ姿が・・・水崎綾女としか思えないのでおそらく・・・原作の「斧神」のキャラクターを改変して・・・吸血鬼化した涼子と篤の悲劇に発展していくものと思われる。篤と涼子はかって剣術の修行をしていたらしく・・・どんな修行なんだよ・・・黒山羊頭の日本刀の構えから・・・篤が涼子と悟り、在りし日の姿を回想する。相手が涼子と知った篤は受けに転じ、仰臥した篤に黒山羊頭は馬乗りとなる。そこへ明がやってきて背後から黒ヤギ頭に日本刀で斬りつけるのだった・・・。

ユキ(山下リオ)・・・仲間たちとともに篤から・・・研究施設で入手した五十嵐軍医の記録のレクチャーを受ける。不死身人間の軍事化を目指した軍が彼岸島に秘密の研究施設を構築したことが判明する。吸血鬼だった神官一族は人体実験の対象となり・・・主に吸血鬼族の血液の分析が行われる。人体に応用する実験の前に何故か五十嵐は血液の濃縮を試みる。輸血が吸血鬼族にとってタブーとされていたことに着目したのかもしれない。1番から十二番の血液をそれぞれ混合するうちに・・・異常な活性を示す血液が合成される。血液は分析され、不死身酵素、活性酵素、破壊酵素に分離され、それぞれに不活性酵素が合成され、吸血鬼の能力を封じる三種の501ワクチンが作られた。なぜか、最強の吸血鬼にこだわりはじめた五十嵐は・・・吸血鬼同志の輸血という人体実験に踏み切る。しかし、何人かの吸血鬼は血の暴走に耐えられず死亡する。しかし、自ら志願した雅は血の暴走を克服し・・・最強の吸血鬼として降臨する。当然、雅は自分が軍事利用されることを拒否し、軍人たちを次々と吸血鬼化していくのだった。五十嵐は無力化ウイルスで雅を一時的に無力化し、鉄の扉の向こうに閉じ込めることに成功する。その直後、部下を失った責任を感じ突然自決するのだった。まあ、小学生相手のマンガなのでこのとりとめのなさが許されるわけである。501ワクチンが民俗学者の柳島によって保管されていると推測した一同は・・・民俗学者の記録が保管されていた廃校へと探索に出向く。廃校でトイレに行きたくなったユキはケンとともに女子トイレに入り、篤が襲撃された時にはまだ用を足し終えていなかったのだった。

(佐藤めぐみ)・・・上陸後、姿を消したまま消息不明中。

(白石隼也)・・・ポンを殺してしまったことに懊悩し、雅に対する復讐を決意する。このマンガでは男の子同志の友情は異性愛に準じる価値を持っているのだ。積極的に廃校捜索を提案。廃校では西山とともに男性トイレに行く。篤が黒八木頭に襲撃された時、それが兄の婚約者とは知らずに斬りつけるのだった。

(鈴木亮平)・・・廃校に一同を案内し、単独捜索。柳島の宿泊先が松本家であることを突き止めるがその直後、黒八木頭に襲撃される。その正体を涼子だと悟り、攻撃の意志を喪失したようだ。

ケン(遠藤雄弥)・・・西山に・・・「恋人のユキと明をくっつけようとしている」と指摘され、戸惑いをみせる。くどいようだが小学生相手のマンガなので男女の恋愛と男の子同志の友情が未分化なのである。廃校の女子トイレで異常事態の発生を知り、ユキに「早くしろ」とせかすのだった。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。

ポン(西井幸人)・・・その姿で仲間たちと再会、自分を憐れんで謎の液体を吹き出し明に浴びせかけたりしたが最後は明に懇願して殺してもらうのだった。その後、姿を見せないので死亡した模様。

西山(阿部翔平)・・・今回はこんな事態にもかかわらず・・・「ユキとケンと明」の関係についてケンに探りを入れる。ユキとセックスがしたい気持ちが高まりはじめた小学生なのである。今回も一人ではトイレに行けず明についてきてもらうビビリぶりを発揮。篤が単独行動をとる原因を作る。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・篤に拘泥する雅への嫉妬から黒山羊頭に雅には内密で篤を殺すように命令する。黒山羊頭が篤を知っていることを知っていることから・・・黒山羊頭が涼子であることを暗示する。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・この世で唯一無二の存在が皇軍に参加する必要はないと断言、帝国軍人を吸血鬼化するが・・・うかつにも閉じ込められてしまったことが回想シーンで判明する。現在では鏡に自分の血を流して陶酔しているらしい。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者だが出番なし。

ハゲ・・・山中でポンの血を吸う吸血鬼。今回は廃校の屋根の上に姿を見せる。

柳島(諏訪太郎)・・・501ワクチンをどこかに隠匿したらしい。

五十嵐軍医(鶴見辰吾)・・・不死身部隊研究の責任者。行き当たりばったりで輸血を繰り返す天才ドクター。諸悪の根源であるが・・・現在はミイラ化しているらしい。

ついに・・・涼子らしき吸血鬼が登場。なにしろシスターミキなのでアクションにも対応するはずだが・・・マスクマン化されてしまうのである。演出サイドの無能を感じる。

まあ・・・映画「牛頭」の流れを考えると当然とも思えるのだった。

っていうか・・・本当に彼岸島ガイドみたいなドラマだな。

なんか・・・いつまでたっても本編始らないみたいな・・・。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

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2013年11月28日 (木)

サウジアラビアの国から(岡田将生)横分けなわけで(堺雅人)奥蟹頭の忘れもの(新垣結衣)立ってなさい(広末涼子)

ついに・・・「ラクダに鞭」と言い出した和解の王子様。

そもそも・・・「サウジアラビア王国」は絶対君主制国家で、世界一の原油埋蔵量を誇る国で、コーランに基づき9歳未満の女児との結婚・セックスが認められている国である。

その常識であるかのような言説が民主主義、資源些少、女子の結婚年齢16歳の日本に通用するはずはないのである。

彼は・・・砂漠の国に特有の強い指導者・・・愚民を率いる救世主を目指しているのは最初から明らかだったのだ。

ああ・・・ずっと思っていたことを言えてスッとしたぞ~。

そして・・・前シリーズの「第7話」の蟹頭(かにこべ)村よりさらに僻地の奥蟹頭を舞台に繰り広げられる・・・世界遺産じゃなくて世界財産と核燃料廃棄物じゃなくて燃料廃棄物を巡る文部科学省と経済産業省の代理戦争的暗闘なのである。

すべてを笑い飛ばしつつ・・・ゴーイングマイウエイを通ってゴーイングマイホームする我らの悪漢ヒーロー・古美門研介に・・・万歳三唱なのである。

で、『リーガルハイ(第二期)・第8回』(フジテレビ20131127PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。古美門研介(堺雅人)の依頼人となる赤松麻里奈を演じる遠野なぎこは連続テレビ小説「すずらん」(1999年)のヒロイン・常盤萌役で最高視聴率30%越えを達成している。子役から出発し、青木秋美→遠野凪子→遠野なぎこと1/4世紀の芸能活動を展開している超絶美少女も34歳になったのだなあ。いつまでも美しくありますように。

「真知子のお父さんの故郷の山一つ越えた村での案件があるのですが・・・御一緒しませんか」と黛真知子(新垣結衣)との仲睦まじさをアピールする「NEXUS Law Firm」の羽生晴樹(岡田将生)だった。

「真知子・・・」と唖然とする・・・古美門。

真知子の態度は新婚妻のようなかいがいしささえ、感じさせるのだった。

なんだ・・・一週間の間に真知子は乙女を卒業したのか。

「貧乏・田舎・自然」が嫌いなので当然、拒絶する古美門。

しかし、例によって事務員の服部(里見浩太朗)が休暇をとって同行するというので・・・強制連行されるのだった。

かくて・・・奥蟹頭にある「おざおざの森」を世界財産に推奨する地元住民と反対派の訴訟に巻き込まれた古美門と黛の愛の遍歴が重ねられるのだった。

田舎のバスはおんぼろ車

デコボコ道を ガタゴト走る

吐きそうになるが飲みこむ古美門だった。

この村の方言はきつくて古美門にはまったく理解できないわけで・・・推奨派のリーダー・「おざおざの森ふるさと館」館長・赤松鈴子(角替和枝)は歓迎しつつも自給自足の建前から古美門と黛に水汲みを命じるわけで・・・そんなことをしたら古美門は川に落ちて水浸しになるわけで・・・純だか五郎さんだかわからなくなるわけで・・・。

「どぐざれもん」(意味不明)になるわけなのである。

もう、じぇじぇじぇでじゃじゃじゃでじょじょじょでじゅじゅじゅなのである。

そして住民は全員、赤松姓なのだった。

一方・・・反対派の牙城・スナック「六本木ナイト」には鈴子と因縁浅からぬ赤松麻里奈(遠野なぎこ)が都会的な暮らしを目指して反自然派のピンクの女王として君臨しているのだった。

そして・・・燃料廃棄物処理場建設による村の活性化を訴えるのだった。その裏には開発デペロッパーが暗躍しており・・・当然、古美門は・・・麻里奈の依頼を受けて・・・「NEXUS Law Firm」と敵対するのだった。

早い話が世界天然財産・・・文部科学省・・・文化庁と最終処分場・・・経済産業省・・・資源エネルギー庁の仁義なき代理戦争なのである。どちらもバックにはシュッとしたお役人がついているのだった。

「そんな何万年も毒性の消えない最新型燃料最終処理施設なんて・・・早い話、永久ゴミ捨て場じゃないですか・・・そんなもののために自然を破壊するなんて馬鹿げてる」

「人間が生きていればゴミは出る・・・それが自然の摂理だろう・・・そのゴミをどうするかは人間の知恵の見せ所だ・・・人の嫌がるものを受け入れてその替わりに文化的で快適な生活の恩恵を手にいれる。まさにギブ・アンド・テイク、ラブ・アンド・ピースじゃないのかね」

「結局、お金じゃないですか!」

「無論、その通りだ。その何が悪い?」

清く貧しく美しくありたい黛弁護士は・・・またしても敢然と師弟対決に挑むのである。

「でもね・・・真知子・・・僕は古美門先生に変わってもらいたいんだ」

「先生を変えるなんて無理よ」

「いいや・・・変わらない人間なんていない・・・争うことの虚しさを古美門先生だってきっとわかってくれるはずだ」

「ハルキ・・・彼は・・・争うことが楽しいタイプなのよ・・・」

しかし・・・己の信念を貫くあまり・・・この地の裁判官として左遷されてきた別府敏子(広末涼子)が調停員とともに簡易裁判所に登場し・・・事態はみつどもえの様相を呈するのだった。

「飛ばされたんだ・・・ははははは」と笑ったために壁際に立たされる古美門。

そして「心の中で笑ったこと」を別府判事に看破され、黛も羽生も本田ジェーン(黒木華)も
磯貝邦光(古舘寛治)も立たされてしまうのだった。

語学の天才・別府は赴任したてにも関わらず難解な奥蟹頭訛りを完全に使いこなす。

「ほじゃにしてするべんちょもにざに」

「すどろまくどれくのこのぎんたざに」

「もどのくまとしらいみまのとそざに」

「・・・というわけで弁護人の皆さんよろしいですか」

「なにが・・・ですか」

「問題点を明らかにするために現地調査をすることになりました」

「うわあ・・・」

遠足大好きな別府判事なのである。

ここで「北の国から」ごっこはほぼ終了し、「ゴーイングマイホーム」ごっこに転じる一同だった。なんだ・・・やはり高視聴率番組からの圧力で低視聴率番組いじりに変更したのか。まあ、どちらにしろ自虐的なんだけどな。

森の名はおざおざ。

土地の言葉で・・・神の息吹・・・を意味するらしいというわけで。

小さな森に絶滅危惧種がひしめきあっているわけで。

自然淘汰にさらされにくい優しい環境があるわけで。

冬はあたたかく夏は涼しい森に守られているわけで。

だから、人と森も調和して恵みをありがたくいただくわけで。

当然、質素になるわけで・・・死刑囚の貴和さん・・・ここは拘置所以上に何にもありません。

獰猛な吸血害虫や肉食爬虫類がうようよしています。

早く・・・快適さと清潔さに満ちた輝く東京に帰りたい・・・。

そんな古美門とは別にウキウキとはしゃぐ・・・別府判事。

ついには・・・おざおざの森に棲むという「どんぐりとっちゃ」との遭遇を期待するのだった。

「どんく゜りとっちゃ」は服部によく似た風貌を持つコビト族らしい。

「るーるるる」と呼びかける別府。

しかし・・・「どんぐりとっちゃ」は姿を見せない。

別府はガッカリするのだった。かわいいよ、別府判事かわいいよなのである。

しかし、自称クーナ研究家でUMA研究会々員でもある古舘弁護士は・・・おいっ・・・さらに森深くへと単独で分け入るのだった。

このまま、古舘は帰らぬ人となるが・・・最終回までお茶の間の誰も気がつかないのだった。・・・おいっ。

しかし・・・優しい黛だけは古舘の不在に・・・幽かな違和感を抱くのだった。

「なんだろう・・・なんだか・・・空気が少し新鮮に感じられる・・・」

かわいいよ、ガッキーかわいいよなのだった。

「どんぐりとっちゃを見ることができると何かいいことあるんですか」

「その年、風邪をひきにくくなるそうだ」

「ひかなくなるんじゃないんですね」

「その場合、製薬会社がだまってはいないだろう」

「虐殺ですか」

「遠心分離機にはかけるだろう」

「成分分析ですね」

「成分分析さ」

その頃。集落では服部さんが子供たちにおやつをふるまっていた。

「ありがとう、どんく゜りとっちゃ」

「はっはっはっ」

調査隊はランチタイムである。

「これはおいしいですね」

「蟹頭蕨のゼンザイさに・・・」と自然派の赤松鈴子。

「そんなのたまに食べるからいいんです・・・毎日、そんなんだったら身体に自然の毒がたまります」

「自然の毒ってなんですか」

「自然は毒々しいもんなんだよ・・・ヘルシーとは真逆なんだよ」

「さあ・・・次の調査場所に向かいましょう。山の入り日は早いのです」

一同は麻里奈のスナック「六本木ナイト」に向かうのだった。

「ボンゴレビアンコとナタデココ・・・反自然的メニューですね」

「普通のメニューじゃないかっ」

「とにかく食べてみましょう」

「結局、食べるんですかっ」

「自分の五感で真実を確かめることは法に携わるものとして重要な責務です」

調査は終り・・・調停が再開する。

「そもそも・・・世界財産に登録されることは担当官庁の手柄たてて出世したい欲望に裏打ちされた思い出作りと地域のブランド化に他なりません。もちろん、それによって村が潤うことを否定するわけではありません。しかし、蟹頭村のおざおざの村は登録対象としての決め手にかけていた。そこで・・・地域住民との一体感を無理矢理演出したのです。まるで少数民族であるかのような独自の文化を捏造し、地域住民に強制する。まさしくこれはファシズムです。都会的で洗練された暮らしに憧れる人々の夢を奪い、希望を刈り取ったのです・・・なんという恐ろしいことでしょう。おざおざは神の息吹だ・・・笑わせてはいけない。民俗学的研究によれば・・・おざおざとはこの地方の方言で生殖行為つまりずっこんばっこんとかずっぽっずっぽとかぱふぱふとかそういう意味だそうです。つまり・・・あの森は・・・やりたいものの集ううたがきの場・・・青姦天国だったのです」

「それは偏見です・・・彼らは森との共棲を選んだ・・・それは素晴らしい選択じゃないですか」

「選択というものは選ぶ自由があってのものだ・・・窮屈な掟に縛られることのどこが素晴らしいんですか」

「都会にない素晴らしいものを守るためです」

「どうして都会にある素晴らしいものじゃダメなんですか・・・都会の人間は便利で快適な生活をする・・・田舎の人間は不便で不快な生活をしろ・・・自然を守るためには当然だなんて誰がきめたんです」

「それは価値観の相違です・・・この集落にはお金で買えない幸福があるのです」

「お金で買える幸福を買えないだけじゃありませんか・・・貧乏だから」

「お金で買えない価値があるんです・・・プライスレスです」

いつもより、ムキになる羽生弁護士。

「それでは・・・住民にアンケートをとってみたらどうですか・・・どちらの生活を望んでいるか・・・民意を問うてみては・・・」

「構いませんよ・・・」

古美門の挑発を受けて立つ羽生に危機感を覚える黛。

「そんな多数決で決着だなんて・・・勝負ではなく・・・協議でお互いに合意を・・・」

「いえ・・・妙案かもしれませんね」と反応する別府。

「世界財産を保持するか・・・破棄するか・・・住民の総意を署名によって決する・・・全人口148人のうち・・・より多く署名を集めた方を・・・住民の総意と見なし・・・双方が受け入れるということにしましょう」

「裁判所が多数決を推奨するなんて・・・それは司法制度の否定じゃないですか」

「調停の目的は双方の合意です・・・双方がそれで納得すれば結構ということです」

「そんなの・・・住民の対立を煽っているようなものじゃないですか」と黛。

「いいじゃないか・・・判事様の提案だ」と古美門。

「そうですね」と羽生。

「では・・・期限は次回の調停期日とします」

「そんな・・・」と茫然とする黛だった。

「羽生くん・・・古美門先生の手にのるなんて・・・」

「安心したまえ・・・勝算はある・・・なんといっても賛成派は多数派なんだから」

「・・・」

そういう現状を覆すのが古美門の常套手段だと知っている黛の不安は高まるのだった。

こうして署名集めという名の集落内戦争が始ったのだった。

序盤は羽入の読み通りに賛成派に署名が集まる。

しかし・・・草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)が投入され、集落に眠る欲望に火が放たれる。

心の底では都会生活に憧れるもの(新野アコヤ)たちは夜な夜な「六本木ナイト」に招かれてもてなされ・・・たちまち心を翻していくのだった。

一人、一人と寝返る賛成派たち。

「ハンバーガーを密売しているものがいます」

「山狩りだ」

「裏切り者は許さない」

「反省室で私が徹夜で説得します」

黛はハルキの瞳に・・・狂気が宿るのを感じるのだった。

連戦連敗の痛みが羽生のプライドを傷つけ・・・ついに独裁者の本性が目覚めようとしていたのだった。

「おらは・・・ハンバーガーが食いたかっただけざにいいいいい」

暗い森に追い詰められた若者の絶叫が迸る。

捕縛された若者を拷問室で洗脳する羽生はもはや秘密警察の司令長官と化しているのだった。

そんな羽生に・・・何故か・・・服部は重要な情報をリークするのだった。

後に判明するのだが・・・服部の背後には古美門(父)の星飛雄馬に対する星一徹的な何かが発動しているらしい。

古い記念写真に写る・・・賛成派の赤松鈴子と・・・反対派の赤松麻里奈に挟まれた男。

彼こそは・・・鈴子の息子にして・・・麻里奈の婚約者・・・赤松恒夫(村杉蝉之介)その人だったのだ。

その昔、恒夫は集落を捨て・・・都会に脱出したらしい。

羽生は・・・ゲシュ・・・秘密警察女憲兵のジェーン本田に・・・恒夫の確保を命じるのだった。

鉄のカーテンの東側で暗黒の世紀が始ろうとしていた。

ベルリンの壁を突破しようとしたアルベルト・ハインリッヒは検問突破の銃撃戦で恋人を失い黒い幽霊団に・・・おいっ。

「どうした・・・黛くん」

「純真な皆さんの心を弄ぶのはやめてください」

「君も一緒になってやってるだろう」

「私は誠心誠意でつとめています」

「君にも・・・王子様の危うさがわかってきたんじゃないのか」

「彼には危ういところなんてありません。彼は本当に立派な人ですから」

「そこが危ういんじゃないか・・・清廉潔白な人間なんて・・・この世にいないんだから・・・」

「私は・・・彼を信じています」

「信じていたいんだろう・・・その甘さがあるうちは・・・君は私に勝てない」

「・・・」

「いかに・・・壁の向こうは退廃している・・・そこにあるのは腐った果実だと教条主義者どもが宣伝しようとも・・・人々は甘い香りに誘われて・・・やがて壁は崩壊する・・・それが歴史の必然だ・・・平等の肥溜よりも自由の風を人間は欲するのだ」

壁の向こうに戻った黛は羽生に忠告する。

「やりすぎはよくないんじゃないかな」

「みんなの幸せのためにはやむをえない・・・サウジアラビアのことわざも・・・ラクダはムチをいれなければあるかない・・・と言っている」

「人間はラクダじゃないわよ・・・」

「わかってるよ・・・あくまで・・・たとえ話さ・・・」

羽生の顔からは微笑みが消えかかっていた。

「珍しい虫がいたからって喜ぶのは昆虫学者と小学生男子くらいだ。むしろ、小学生男子は虫が嫌いな子が多数派だ・・・都会では」

「そんなことはありません。一度、虫の楽しさを覚えたら・・・もう病みつきになるのです。しかし、絶滅したらもはや図鑑でしか会えない。やがて図鑑からも姿を消す。膨大な時間を消費して構築された自然環境を失うのは一瞬です・・・一時の快楽に溺れて大切なものを壊してしまって後悔しても遅いのです」

「自然保護といえば聖なるお題目だ・・・逆らえば極悪人あつかいになってしまう。しかし、世界財産なんて余所者が勝手にこっちを値踏みしているだけだ。他人に値段をつけられて喜ぶ人間なんてただのアホだ。そんな押しつけられた価値観で人間はけして真の幸福をつかむことなどできない。他人の理想の犠牲になって・・・皆さんの自由が踏みにじられようとしているのです」

「ざに~ざに~」

「皆さんは自由です」

「自由ざに~」

「自然なんてくそくらえです」

「自然くそくらえざに~」

「世界財産なんてどぐざれもんです」

「それはちょっと使い方が違うざに」

「え・・・」

自由快楽陣営と環境全体陣営の戦いは五分と五分の冷戦状態に突入したのだった。

そして・・・決戦の日がやってきた。

「世界財産についての署名の集計を行います」

なんとなく・・・学級会を彷彿とさせるムードにウキウキする別府判事だった。

つまり・・・遠足とか・・・学級会とか・・・学校行事が好きなんだな。

賛成者 73

反対者 74

「僅か一票差ではありますが・・・世界財産登録抹消を希望する住民が多いようですね」

「待ってください」

「見苦しいぞ・・・黛くん・・・決着はついたのだ」

黛の顔に苦渋があふれる。

それは隠し玉を・・・羽生が脅迫という強引な手段で用意したことを目撃してしまったからだった。

しかし・・・これは戦争なのだと黛は自分を励ますのだった。

「もう一人いるのです」

「もう一人・・・って・・・誰かが変装してたりするんじゃないだろうな」

「鈴子さんのご子息の恒夫さんです」

「恒夫・・・」

羽生が恒夫を連行してくる。

「彼は・・・この集落を嫌って都会に出ましたが・・・心を入れ替えて・・・自然と共に生きることを決意したのです」

実は恒夫の借金を肩代わりすることで買収した羽生だった。

羽生は黒く染まったのだった。

「彼の住民票はこの集落にあります・・・そして彼は賛成に一票を投じるのです。

賛成者 74

反対者 74

ドローである。しかし、羽生の追及は続く。

「恒夫さんは・・・もう一度・・・麻里奈さんと一緒にやり直したいそうです・・・麻里奈さん・・・どうしますか・・・」

「恒夫・・・」

「麻里奈・・・」

麻里奈し恒夫とのおざおざの日々が忘れられなかったのだった。

賛成者 75

反対者 73

逆転である。

羽生の微笑みがドス黒い勝利の笑みに変わった瞬間・・・。

「ここに・・・奥蟹頭の不自由な生活に嫌気がさして集落を出た住民の署名があります。彼らは新時代の到来に賭けて住民票の転出届けを提出し・・・変更手続きは終了しています・・・全員で29名」

「え・・・」

賛成者  75

反対者 102

古美門の最終的な勝利が確定したのだった。

「圧勝ですな」

「どんな汚い手を使ったんだ」

「集落を開発し便利にするって言っただけだよ・・・みんな喜んで署名してくれたよ」

「・・・」

「というわけなので・・・別府裁判官、調停の成立ということですね」

「双方が合意しなければ調停成立はありません」

「え・・・」

「裁判所が多数決を認めたりはしませんよ」

「あんたが認めるって・・・」と古美門。

「それでは司法の否定になります」

「それ・・・私が最初に言いましたっ」と黛。

「申立人が納得できないのであれば・・・調停は不調ということで訴訟提起することができますよ」

要するに・・・別府裁判官は遠足とか学級投票がしたかっただけなのだった。

もちろん・・・その経過によって問題点の検証もできたわけだが・・・それは二の次なんだな。

「訴訟します」と羽生。

「お母さん・・・この状態が続けば・・・また息子さんはいつか集落を出ていくでしょう・・・しかし、村が開発され・・・便利になれば・・・そういう未来は回避されます」と古美門。

「騙されてはいけません」

「お前・・・そんなに便利な暮らしがしたいのか」

「うん・・・母ちゃん」

「わかった・・・提訴はしねえ」

「そうです・・・鈴子さん、恒夫さん、そして麻里奈さんが手に手をとって明るい未来を切り開いていく・・・それがこの村を発展させていくのです。世界財産なんてくそくらえだ」

「馬鹿げてる・・・こんな結末は絶対に間違えている・・・こんなのどぐされもんだ」

「その使い方は間違っているざに」

「羽生くん・・・君は根本的に間違っているんだ・・・崇高な理念など・・・欲望の前には無力なのだ・・・欲望こそが生命の起源・・・理念など飾りに過ぎない」

「愚かな・・・」

「そう・・・愚か・・・それが人間の本質だ・・・一時の快楽に溺れ、大切なものを失い、時には後悔するだろう・・・しかし、それでも今が大事なんだよ・・・今、満たされなければ嫌なんだよ・・・だからみんなそうするんだ・・・素晴らしいことじゃないか」

「・・・」

「申立人は提訴せず、本調停の結論をもって最終合意とすることでよろしいですね」

「はい」

「では双方が合意に達したので調停成立とします。奥蟹頭の住民はあなたたちですので・・・あなたたちの好きなように生きるべきです。世界がなんだろうと関係ないですから。蟹頭蕨もボンゴレビアンコも大変美味しかったです・・・以上」

戦いは終わった。

「では・・・別府裁判官、お元気で・・・田舎暮らしをご堪能ください」

「いいえ・・・異動の辞令がすでに下りてます」

「また・・・飛ばされるの」

「定例の異動です」

「たらいまわしにされて・・・それでもあなたはその職にしがみつくのですか」

「あなたが弁護士を続けるのと同じ理由でしょう。私はこの黒い法務服が世界の誰より似会うと自負していますから」

黛はそっと古美門に近付く。

「案外・・・彼女は名判事になるのでしょうか」

「なるわけないだろう・・・あいつは永遠の小学生たまに中学生だぞっ」

こうして・・・集落は・・・名誉を捨て実利を得たのだった。

どこかで・・・森が泣いているようだった・・・。

しかし、それは忘れ去られた無能弁護士の断末魔の叫びだった。

傷ついた羽生をあすなろ抱きで慰めるジェーン。

「落ち込む必要なんてないよ・・・」

「誰もが幸せになる世界を築くためには・・・指導者が必要なんだ。誰かが力強く導かねば人々は迷ってしまう」

「そうだね」

「ほとんどの人間はどうしようもなく愚かだから」

「その通りだね」

「だから・・・僕はもっと強くならなければならないのだ」

安藤貴和との面会の時間がやってきた。

「いよいよ・・・最高裁で公判が開かれます」

「安心したまえ・・・必ず死刑判決を破棄させ・・・無罪を勝ち取る」

「あななたちには事実を知っておいてもらった方がいいわね。・・・私、やったわよ。徳永光一郎を殺したし、娘も殺そうとした・・・私が犯人よ」

「最初からみんなそう思っている」

「でも吊るされるのは嫌・・・死刑なんて・・・非人道的だもの」

「君はまさに・・・どぐざれもんだな」

「使い方間違ってるわよ」

「ええっ・・・」

黛は二人の悪党たちを用心深く・・・観察するのだった。

黛の中で何かが生まれ出ようとしていた。

黛はどうやら大人の階段を昇ったようだ。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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2013年11月27日 (水)

セーラー服を着たもう一人の君にいつもより少し優しい私(中丸雄一)

「東京バンドワゴン」のセーラー服プレイからのセーラー服着用(木村文乃)である。

まあ、着られるうちに着ておくものだな。

「あれ・・・セーラー服はやめたの」

主人公の心にもっとも共感できた一瞬だった。

ずっとセーラー服回でもよかったのだが・・・ロケのスケジュールとか、衣装チェンジの時間とか、出し惜しみとかいろいろなあれやこれやがあるわけである。

「あれ・・・セーラー服、着替えちゃったの・・・」

もう・・・そのことだけが頭を占領し・・・そこからのドラマのストーリーがまったく分からなくなってしまった。

どんだけ・・・セーラー服が好きなんだよっ。

今回はシーズン2のドラマのテーマ曲がなかなかに素敵である。

「Sweet Refrain/Perfume」の「まさかというようなことを次々と繰り返してきてまだ追い越せない届けたいの」はこのドラマにもふさわしいが・・・今回に限っては「Re:/9nine」の気分である。

もいっかい、いいかな

もう怖がったりしないよ

巻き返すチャンスはあるでしょ

失敗したぶんは正解に近づくって

偉い人も言ってたよ

「セーラー服、もいっかい、着てくれないかな」

・・・もう、いいか?

で、『・第6回』(TBSテレビ201311260028~)脚本・演出・三木聡を見た。今回も上間美緒のアニメ声的な前回までのあらすじは快調である。声だけでなくビジョンも見せてもらいたいくらいだ。「お笑い」と「エロス」は密接な関係にあるが・・・「お笑い」を詰め込みまくるので・・・はしやすめとしてもう少しエロスが欲しい。いや、サービスはされているのだが・・・年増の熟れたエロスばかりだとセーラー服的なエロスがものすごく不足するのだな。死体のふとももサービスはグロテスクだしな。それがキッドの正直な気持ちです。ここで赤裸々な告白をしてどうするっ。

「真実には興味が無い」というミステリ作家の白川(中丸雄一)がネタに困ってすがりついた素晴らしいインターネットの世界の記事・・・。

【チューリップ殺人事件】

《1999年夏、消ノ原町に暮らす主婦仲間の夷鈴子(玄覺悠子)、阿波島翠(廣井ゆう)、真壁真奈美(中村優子)はパワースポットとして知られる「三貴子の泉」へと続く階段を昇り、夷鈴子と阿波島翠がスカートをたくしあげたチューリップ状態で遺体として発見され・・・真壁真奈美が一年後に自宅で絞殺されて死亡した猟奇的な事件》

しかし、事件の詳細を知るべく、消ノ原町に編集者のゲビヤマくんこと下日山酈霞(かひやまりか=木村文乃)を助手としてやってきた白川あるいは変身インタビュアー青沼(中丸雄一=二役)は素晴らしいインターネットの世界の記事なんて信用できないことを学ぶのだった。

【チューリップ殺人事件】

《1999年夏、消ノ原町に暮らす主婦仲間の夷鈴子(玄覺悠子→工藤綾乃・・・写真の女は同級生の伊藤文江(玄覺悠子)だった)、阿波島翠(廣井ゆう)、真壁真奈美(中村優子)はパワースポットとして知られる「三貴子の泉」へと続く階段を昇り、夷鈴子と阿波島翠がスカートをたくしあげたチューリップ状態で遺体として発見され・・・真壁真奈美が一年後に自宅で絞殺されて死亡した(→生きていて引っ越しただけだった)猟奇的な事件》

・・・そして、生きていた真壁真奈美(中村優子)を訪問する青沼とゲビヤマくんである。

「なんで・・・生きてるんですか」

「なんでって・・・言われても困るわよ」

「なんで・・・引越したんですか」

「そういう気分だったからよ・・・前にも取材に来た人いたけど・・・」

「なんで・・・彼は記事にしなかったんだろう?」

「お金でももらったんじゃないの」

「誰から・・・」

「さあ・・・」

「あなた・・・逃げてますね」

「逃げる・・・何から?」

「もう一人の人ですよ」

「もう一人の・・・誰ですって」

「もう一人の恋人・・・から」

「いい加減にしてよ・・・調子に乗らないで・・・もう帰ってよ」

突然、激昂したチューリップ殺人事件3人目の被害者ではなく生きていた真壁真奈美により、破壊されるカセットテープレコーダー型録音参号機「青龍」・・・。

ゲビヤマくんは暗澹とするのだった。

ラインを越えるためにバスに乗った青沼とゲビヤマくん。

「シーパイでしたね」

「なんだそれは・・・Cカップのおっぱいの略か・・・君はBカップいや、ひょっとしたらAカップじゃないのか」

「失敗の北京語ローカル発音ですよ。日本の標準語なら・・・しっぱいです」

「そんな汚らわしい片田舎の発音をするんじゃない」

「いえ・・・向こうにすればこっちが本家だと言うと思いますけど」

「漢帝国が滅んで千八百年もたってるんだ・・・こっちの発音の方が正解だってことも充分ありえる」

「国粋主義者ですかっ」

「まあね」

「とにかく・・・怒らせたら駄目じゃないですか・・・青沼さんもしくじることがあるんですね」

「いや・・・怒るっていうことは感情が動いたってことさ。怒ったということは愛しちゃったのと同じなのさ」

「はあ?」

「つまり・・・相手を怒らせるのはインタビューの基本なんだよ」

「本当かしら」

「まあ、見ていたまえ・・・仕掛けられた仕掛けによって真壁真奈美は必ず動き出す」

「セリフちょっと変ですね」

「仕掛けられた仕掛けか」

「仕掛けられた仕掛けです」

「仕掛けられた仕掛けねえ」

「仕掛けでいいんじゃないですか」

「仕掛けられた仕掛けって言いたかったからそれでいいじゃないか」

「まあ、いいですけど」

犬吠市から波打際に戻った二人はフリーライターの土肥原ゲットー(手塚とおる)から裏をとる。

「お金をもらったんですか」

「ああ・・・三万円な」

「安い・・・」

「真壁真奈美には取材費として五万円も払ったのに・・・」

「男好きのする女だったから・・・」

「あんたも関係を・・・」

「したよ・・・悪いかっ」

つかれた二人は賽の河原町の温泉宿「猫旅館」で休憩するのだった。

シャワーを浴びたゲビヤマくんはセーラー服に着替えてサービスサービスするのだった。

「そんなものまで・・・」

「私、気が利く奥さんになりたいんです」

「・・・」

二人は番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)からもらった博多の銘菓「二◯加煎餅(にわかせんべい)」を食べる。

「にわか(コント)か」

「にわか(アドリブ)やな」

「にわか(茶番)やないか」

「とにかく・・・もう一人が誰かを特定しないとならないな」

「ならないですね」

しかし、シャワーを浴びた青沼は臭い靴下を廊下に落していた。

「臭いんですよ」と苦情を言う番頭。

「夏のシャワーは気持ちがいいんです」

「夏の靴下は気持ちが悪いんですよ」

「その点はもういいじゃないですか」

「猫が言うんですよ」と女将の櫻井野薔薇(ふせえり)がやってくる。

「猫が・・・」

「そして歌うんです」

「歌う・・・」

「靴下が臭いにゃあ。靴下が臭いにゃあと猫が泣くニュース・・・」

「・・・もう、いいです」

よほど靴下が悪臭だったらしい。

これが楽屋落ちなら・・・夏のロケーションで汗をかいた中丸雄一の靴下はきっと臭かったのである。

それは・・・腐りかけた水密桃のどす黒い斑点を思わせる臭さだったのだろう。

だから・・・なんなんだという話ではある。

夏の話なんだよなあ。できればうだるような夏の暑さの中で見たかった気もする。

夏だからなのか・・・。消ノ原信用金庫三貴子支店支店長の永田銀山(村杉蝉之介)は異常なまでに発汗するのだった。

「真壁真奈美にはあなたの他にももう一人恋人がいたんですよ」

「どうして・・・それを」

「それは警察関係者ですよね」

「どうして・・・それを」

「安藤刑事ですね」

「どうして・・・それを」

「なんとなくそう思いました」

「ずるいじゃないか」

消ノ原食堂「モアイ」店員・川島芳香(町田マリー)を訪ねる二人。

「白川さんならいいけど青沼さんにレバニラ定食は似合わないですね」

「どうせ、靴下が臭い男さ」

「あらあ・・・臭いのお」

「もう、その話はいいじゃないですかっ」

「インタビューをお願いします」

「事件の頃・・・真壁真奈美はもう一人誰かとつきあってましたよね」

「さあ・・・もう一人っていっても・・・なにしろ・・・彼女は再婚だしねえ」

「・・・真壁真奈美には前夫がいたんですか・・・それは誰なんです」

「あらあ・・・知らなかったのお・・・甘粕さんよお・・・」

「三貴子の泉の管理人の・・・」

「そうよお」

そこへ・・・消防団の笹川(三島ゆたか)がやってきて・・・まことしやかに・・・告げるのだった。

「お耳に入れたいことがありましてね」

「何ですか・・・」

「死んだ真壁真奈美が消ノ原信用金庫の金を持ちだしたのは・・・あの事件の当日だったということです」

「・・・なるほど」

笹川は言うだけ言って去っていく。

「しらじらしいですね」

「うん」

「どういうことでしょう・・・」

「とにかく・・・真壁真奈美は信用金庫の金を・・・もう一人の誰かに渡そうとしたってことだな」

「不倫相手の上司に公金横領させて・・・それをもう一人の愛人に貢いでいたということですか」

「まあ・・・そんなところだね」

「とんでもない女だわ」

「さあ・・・行こうか」

「どこへ・・・」

「甘粕さんのところさ・・・真壁真奈美の男性遍歴のスタート地点らしいからね」

二人は夏の熱気の中に戻り、青沼の靴下はまた汗ばむのだった。

うらぶれた三貴子の泉の管理事務所。

「あなたが・・・真壁真奈美の最初のご主人とは・・・」

「単刀直入だね」と暗い表情で応じる甘粕真一(眞島秀和)だった。

「どうして・・・二人は離婚を・・・」

「真奈美が・・・黒曲亜理里(松重豊)の子供を身ごもったからだ・・・」

「ええっ」

「真奈美は黒田と密通していたんだよ・・・」

「そのお子さんは・・・いまどこに・・・」

「町長の秘書の石原だよ」

「ええっ」

管理事務所を後にした二人。

ゲビヤマくんは不吉な予感に囚われる。

「先生・・・もうやめませんか」

「ここまできて・・・何言ってるんだ」

「でも・・・先生は真実には興味がないんでしょ」

「それはあくまで建前だ・・・嫌なら君は帰っていいよ」

「そういう意味じゃないんです」

「じゃ・・・どういう意味だ」

察しの悪い青沼だった。

そこへ・・・町長の使いとして石原完一(萩原利久)が現れる。

子役あがりのキャスティングだが・・・萩原利久(14)である。声変わりもしていないのだが・・・。

1980年代の終りに高校生の夷鈴子が三貴子の泉を発見した時に完一は同級生である。

「チューリップ殺人事件」発生時には二十代、つまり、現在は四十近いおっさん役なのである。

高校生の自主制作映画みたいなキャスティングなのである。

なんでもありとはいえ・・・ふざけすぎてるだろっ。

はっ!・・・誰かの隠し子かっ。

そして・・・おっさんを生んだ真壁真奈美・・・演じる中村優子(38)・・・。何歳の設定なんだよ。

きっと・・・ここにももう一人いるんだな。

「お一人でお願いします」・・・と中学生のような秘書は言うのだった。

一人残されるゲビヤマくん。

里見町長(外波山文明)をインタビューする青沼は・・・少し心細いのだった。

「この町と・・・黒曲はどんな関係なんです・・・」

「さあ・・・前の町長と・・・黒曲にはなにか密約があったようですが・・・」

「阿波島翠の病状をコントロールしていた医師は・・・あなたでしょう・・・あなたが知らないなんておかしいじゃないか・・・」

「そういわれましてもね・・・」

「それに・・・石原さん・・・あなたは真壁真奈美さんと黒曲氏との間にできた子供だっていうじゃないですか」

「・・・御存じでしたか」

「それを知った直後に・・・あなたが現れた・・・」

「偶然ですよ」

「偶然のはずはないですよ・・・なめんなよ・・・私はただのインタビュアーじゃないんだぞっ」

「・・・」

「町長・・・もう一人って誰なんです」

「さあ・・・もう一人なんて誰とも言えませんよねえ」

「ふざけるなっ」

町役場の暗い廊下には安藤刑事が佇んでいた。

「大分・・・激昂なさっていましたな」

「ちょっとした興奮ですよ」

「ところで・・・あなたに聞きたいことがあるんですけど・・・」

「望むところです」

町役場の外ではゲビヤマくんが一人・・・気を揉んでいる。

すると・・・響き渡る銃声。

「うそ・・・」

救急車が到着し・・・救命隊員がストレッチャーで青沼を運び出す。

「そんな・・・」

恐ろしいことに青沼は・・・変身が溶けて白川になってしまうのだった。

「いやいやいやいやいやーーーーーっ」

しかし・・・ベンチて寝ているゲビヤマくんの夢だった。どこからが夢なのか分らない展開である。

村役場から現れた青沼はゲビヤマくんを起こす。

安堵のあまり、涙を流し、青沼の胸に飛び込むゲビヤマくんだった。

「おいおい・・・どうしたんだよ」

二人は再び・・・ラインを越えて・・・犬吠市に向かう。

しかし・・・アパートの管理人(成瀬労・・・時効警察や熱海の捜査官にも登場しているおなじみさん)は二人に告げるのだったら。

「真壁さん、引っ越しましたよ」

「どうして・・・」

「さあ・・・善は急げって言うからかな」

「・・・」

「仕掛けられた仕掛けはどうなったんです」

「・・・」

仕方なく消ノ原に戻る二人。

しかし・・・真壁真奈美は街に戻っていた。

信用金庫に500万円を持って・・・。

「今さら返すと言われてもな・・・」と永田支店長。

「私はまた・・・この町に住みたいのよ・・・」

「じゃ・・・この金で店でも出すか・・・」

支店長は真壁真奈美にモーションをかけるが・・・真奈美は拒絶する。

信用金庫の外では・・・花谷雅(裵ジョンミョン)が真奈美を待ち伏せる。

「なんで帰って来た」

「ごめんね・・・悪いと思っている・・・でもあんただって」

「あの刑事のせいで・・・くそ・・・お前なんか消えちまえ」

曰くありげなセリフを交わしてから突然、真奈美を暴行する花谷。

しかし、真奈美に馬のりになった花谷を消防団の川本三郎(少路勇介)と笹川が止めに入る。

駆けつけた青沼とゲビヤマくんは・・・真壁真奈美を消ノ原食堂「モアイ」に運ぶのだった。

「花谷ともか・・・」

真壁真奈美のドロドロの男関係・・・甘粕(前夫)、黒曲、真壁(元夫)、支店長、安藤、花谷・・・。

しかし・・・青沼の興味はあくまで「チューリップ殺人事件」だった。

「あなたは・・・あの日・・・不倫相手の安藤刑事に金を渡すために・・・三貴子の泉にやってきた・・・そこで・・・あなたはチューリップ状になった遺体を見たはずだ・・・」

「そんなもの見てないわ」

「嘘だ・・・」

「うるさいわね」

激情した真奈美は・・・カセットテープレコーダー型録音弐号機「玄武」・・・を粉砕するのだった。その死を悼むゲビヤマくんだった。

「あんた・・・バカでしょう・・・私はチューリップなんて知らないって言ったのよ・・・二人は普通に死んでいたのよ」

「ふ・・・普通に・・・そんなあ」

【チューリップ殺人事件】→「普通に死んでいた

《1999年夏、消ノ原町に暮らす主婦仲間の夷鈴子(玄覺悠子→工藤綾乃・・・写真の女は同級生の伊藤文江(玄覺悠子)だった)、阿波島翠(廣井ゆう)、真壁真奈美(中村優子)はパワースポットとして知られる「三貴子の泉」へと続く階段を昇り、夷鈴子と阿波島翠がスカートをたくしあげたチューリップ状態→ふつうの状態で遺体として発見され・・・真壁真奈美が一年後に自宅で絞殺されて死亡した(→生きていて引っ越しただけだった)猟奇的な事件》

とにかく「づづぐ」らしい。

関連するキッドのブログ→第5回のレビュー

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2013年11月26日 (火)

心ゆるして我が胸に汝の額を押しあてよでごぜえやす(綾瀬はるか)

明治二十一年(1888年)、二十歳となった徳富蘆花は放浪を終え、熊本英学校の教師となる。

翌年、徳富蘆花は上京し、兄の蘇峰の創刊した月刊誌「国民之友」で英文の翻訳などを手伝うことになる。

この年、森鴎外は海軍中将の娘と結婚し、「国民之友」にハイネなどの訳詩を発表している。

「あまおとめ」はその一篇である。

すでに・・・人々の心は・・・西洋文化の波に洗われ始めていた。

まもなく、蘇峰は国民新聞の発行を開始し、蘆花はそこで文筆家としての修行を積むことになる。

明治二十七年の日清戦争と明治三十七年の日露戦争に森鴎外は出征する。

その中間にある明治三十三年(1900年)・・・十九世紀最後の年に・・・蘆花は「不如帰」を刊行。

そして・・・三月、国民新聞に「灰燼」を掲載する。

「勝てば官軍負けては賊の名を負わされて、思い出づれば去ぬる二月降り積む雪を落下と蹴散らして麑城(鹿児島県鶴丸城)を出でし一万五千の健児も此処に傷き彼処に死し、果ては四方より狩りたてらるる。怒猪の牙を咬むでここ日州(日向国)永井の一村に立て篭もりしが今は弾尽き、糧尽き、勢い尽きて、大方は白旗をたてける中に、せめて一期の思い出に稲麻竹葦のこの重囲をば見事に蹴破って、我この翁(西郷隆盛)と故山の土にならばやと残る一隊、三百余人、草鞋の紐ひしひしと引き締め、明治十年八月十七日の夜をこめて、月影暗き可愛ケ岳の山路にかかりぬ・・・」

西南戦争に敗れつつあった西郷軍が政府軍の包囲の突破を図り可愛岳からの脱出に成功する。

しかし、物語は中津隊を率いた増田宋太郎の部下である一人の兵士・上田茂の脱落へと転じていく。

可愛岳で山路を転落した茂は・・・消息不明となる。

中津藩上田家は富豪であり、茂は三男坊であった。長男は愚鈍で、次男の猛は乱暴者・・・三男は西郷かぶれの二枚目という設定である。物語は茂を慕う許嫁・園部家の菊(16歳)の悲恋を主軸としている。次男の猛が菊に横恋慕して・・・茂の不在をいいことにゴリ押しで結婚を迫るわけである。

とにかく・・・蘆花は・・・現代にあれば・・・いい昼メロ作家になったと言える。

西郷が自刃して果てた後の十月。やつれ果てた茂が上田家に帰還。

邪な猛は老父母を説得し・・・賊を置いてはお家の危機と・・・茂に自決を迫る。

「西郷さんの戦はろくなもんじゃねえ」というのが主題なのだ。茂の死を知った菊は首を吊り、息子に死を求めた老母は狂を発し、家に火を放つ。三男が西南戦争に参加したばかりに名家は灰燼に帰し、一家は離散となった。

最後はお決まりの茂と菊が比翼塚(情死ものの定番のお墓である)に葬られるところで幕が引かれるのだった。

徳富蘆花が・・・ろくなもんじゃねえことは一目瞭然なのである。それは・・・あれだな・・・お前がただ西郷さんが好きだからだな。

で、『八重の桜・第47回』(NHK総合20131124PM8~)作・山本むつみ、演出・長谷知記を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は「コレデオシマイ」の明治32年まで生きる現在、六十五歳の枢密顧問官・勝海舟伯爵(明治二十年受爵)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。山本家、徳富家をつなぐ横井小楠を掘り下げないのは本当にこの大河ドラマのむず痒いところでございますなあ・・・。まあ、有名人だからあえて詳らかに語らない姿勢なのかもしれませんが・・・そういうコネクション的なことをネグっている感じがいたしますねえ。要するに・・・横井との友情で・・・その親戚である徳富兄弟に家を貸し面倒見てやってるわけですからな・・・勝伯爵は。まあ・・・とにかく、勝先生が登場するだけで・・・あ・・・これは大河ドラマだったと思い出せるので凄いとも思います。前回13.7%→今回13.7%と視聴率も安定し・・・いよいよ年の瀬でございますねえ。この大河が去年より5%近くも高視聴率というのが・・・現代の凄いところなんですなあ。来年は蜂須賀小六(ピエール瀧)とか本願寺顕如(眞島秀和)とか石田三成(田中圭)とかちょっとワクワクしますなあ。

Yaeden047 明治21年(1888年)1月、横井みねの遺児・平馬、山本覚馬の養子となる。4月、黑田清隆が第二代内閣総理大臣に就任。伊藤博文は憲法草案審議のための枢密院初代議長となる。天皇の最高諮問機関の発足である。5月、新島襄の心臓病は悪化、余命宣告を受ける。7月、磐梯山が千年ぶりに噴火、死者461名。東京朝日新聞創刊。8月、秋山(弟)在籍中の海軍兵学校が江田島に移転。9月、ロンドンに切り裂きジャック現る。10月、明治宮殿落成。11月、大阪毎日新聞創刊。海軍大学校開校。12月、ゴッホが左耳たぶを切断。明治22年(1889年)1月、象牙海岸をフランスが植民地化。徴兵令が改正され戸主の徴兵猶予が廃止となる。軍費の増大化加速。2月、大日本国憲法、皇室典範、衆議院議員選挙法公布。嘉仁親王(後の大正天皇)が皇太子となる。森有礼文部大臣が国粋主義者によって刺殺される。犯人の西野文太郎はその場で斬殺された。3月、エッフェル塔落成。5月、東京市誕生。7月、東海道線全線開通。10月、大隈重信外務大臣が国粋主義者によって爆弾を投弾され右脚を切断。犯人の来島恒喜はその場で自害。駐米公使となった陸奥宗光がメキシコ合衆国と平等条約を結ぶなど不平等条約改正の動きが高まっていたが、改正内容が外国人判事の任用などの点で不十分とした理由での犯行だった。その背後には伊藤(長州)と黒田清隆(薩摩)の暗闘があったとも推測できる。

一日一往復の東海道線開通で京都と東京は驚くほど近くなった。

帝都東京に降り立った八重と襄は赤坂の勝海舟屋敷に人力車で向かう。

勝は歓迎の用意をして待っていた。

「勝伯爵様、ご機嫌よろしゅうございます」

「よせやい・・・この通りのしもたや住まいだぜ」

「勝様は洋風のお屋敷にはなさらねえのですか」

「なにしろ・・・江戸っ子だからな・・・洋服よりは着流しだし、フローリングより畳だね」

「江戸も今は昔でしょうに・・・」

「だが、今日はすき焼きにしたぜ」

「すき焼きでごぜえますか」

「おう・・・文明開化の匂いがするだろ。肉も食うけどおまんまも食えるって寸法だ。亭主の顔色がでえぶ悪いみたいだから・・・精々栄養とってくんな」

「恐縮です」

「海軍奉行より鍋奉行の方がおいらは性にあってるんだよ」

「いただきます」

「たんと食いなよ・・・埼玉からネギも仕入れたし、豆腐も常套、白滝も常套だ。肉はたんまりあるからよ」

「なるほど・・・文明開化の味がしますねえ」

「だろ・・・」

「しかし、東京は大分物騒だと聞きますが・・・書生も置かずに不用心ではございませぬか」

「なに・・・こちとら・・・刺客に襲われるほどの役にはついてねえからな」

「出馬のお声がかかるでしょうに」

「いやいや・・・華族手当があるからよ。もらうものもらってのんびりして言いたいこと言ってるのが長生きの秘訣だぜ」

しかし・・・実際の勝は枢密院の闇の仕事を仕切る情報局長官である。

「それにしても徳富兄弟が大分お世話になっているようで」

「まあなあ・・・横井小楠の縁者となれば疎かにはできねえよ・・・それにあいつらなかなか使えるぜ」

「そうでごぜえやすか」

「なんといってもこれからは世論がものを言う時代だ。御用新聞の一つも持ってなきゃ情報操作に困るってもんだ」

「しかし、蘇峰の新聞はなかなかに公明正大、中立と思いますが」

「ふふふ・・・襄さん、あんたは相変わらず可愛いことを言うねえ。いかにも中立、いかにも自由主義、いかにも平等主義っていうところがミソじゃねえか」

「・・・」

「庶民の味方でございますって顔して・・・こそこそっとあることないこと吹き込めるから便利なんだぜ」

「勝様、お口が悪い」

「官学だ・・・私学だと言っても所詮はエリート養成所だ・・・まだまだ人材不足だからな・・・この国は」

「・・・」

「そういうわけで・・・篤志家から寄付をつのる・・・ま、魚より釣り人が賢いって相場が決まっているからな・・・相場といえば・・・龍馬の野郎、大分儲けているようじゃねえか」

「資本主義が大好きなうえに・・・鞍馬の山で暇を持て余しているので科学忍者隊にいたるところで相場をはらしているそうです」

「まったく・・・そんなに儲けても使い道に困るだろうに」

「勝様こそ・・・いたるところに土地を買いまくってるそうでこぜえますな」

「そりゃ、唯一の趣味だからよ・・・俺は値上がりする土地を見抜くことにかけちゃ、日本一を狙ってんだ」

「それで・・・よく標的にされないものでごぜえますな」

「そりゃ・・・蛇の道はなんとやらで・・・偽名やら架空口座で使いまくってるからな・・・」

「悪党でごぜえますなあ」

「ま、一応、別宅に書生も飼ってるから・・・いざとなったら責任おしつけてしめえだ」

「勝様・・・」

「とにかく・・・西南戦争までは・・・不平武士の始末・・・それからこっちはあぶれた農民のあれやこれやだ・・・富国強兵の道は険しいからな・・・いざとなったら頼れるのは金と土地さあ」

「しかし・・・不平の残る者たちを宥めすかさねばならねえでしょう」

「そうさ・・・文明開化ともなればテロルも刃傷沙汰とは限らねえからな・・・爆裂弾なんてえものもありやがる・・・そういうものを管理するのはなかなか大変だ・・・なにしろ・・・知識には鍵がかけられねえものなあ・・・」

「だからこそ・・・広い視野でものを見る若者を作ることが急務なのです」

「うん、それはその通りだ・・・なにしろ・・・愛国者を作るのが一番だからな・・・藩閥政治なんてものも・・・国を憂う気持ちが育てば木っ端微塵さ」

「そんな・・・世が来るのでしょうか」

「まあ・・・いつかはな・・・これから国のために血を流す若者がたんと出て・・・その流した血が日本という国をそだてるのさ・・・」

「おそろしゅうごぜえやすな」

「おそろしいさね・・・歴史ってのは・・・流血の大河なんだから・・・」

関連するキッドのブログ→第46話のレビュー

坂の上の雲の頃

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2013年11月25日 (月)

考える者・・・プロメテウスと十と八の復活(木村拓哉)

有名なロダンの「考える人」の彫刻は本来は詩人というタイトルだったとされる。

その詩人が誰かということについては諸説あるが・・・ダンテの「神曲」に着想した「地獄の門」の一部に「考える人」が配置されている以上、それがダンテである可能性は高い。

キリスト教文化の世界において・・・地獄の門は・・・神と堕天使サタンの境界線に他ならない。

その門の彼方には神に裁かれた罪人の魂が封じられている。

しかし・・・キッドは地獄の門前で悩めるものが・・・プロメテウスであると考える。

プロメテウスとは熟考する人の意味があるからだ。

プロメテウスが思い悩むのはタイタン族の一巨人神として・・・神々の王ゼウスが・・・人類から奪った火を・・・再び人類に与えるという裏切り行為の実行についてである。

火を失い寒さに震える人類に同情したプロメテウスは火を盗み、人類に与えたいと願う。

ギリシャ神話の物語では・・・その結果、プロメテウスはゼウスの怒りを買い・・・永遠の苦しみを与えられることになる。

聖書の世界で地獄に堕ちたサタンはアダムとイブに知恵の実を与えるが・・・人類に考える力を与えることと・・・考える人が考え抜いた末に火を与えることは符号している。

プロメテウスはこうして・・・人類に毀誉褒貶を与えられ続ける。

原子力による電力の恩恵を受けながら核廃棄物は拒絶するのが人類というものだからだ。

そうした身勝手な人類について・・・神の怒りについて・・・プロメテウスは考える。

そして・・・立ち上がるのである。

その思い悩む場所として地獄の門前ほどふさわしい場所はないだろう。

人類はこうして・・・自らを霊長類と名付けるまでに繁栄する。

プロメテウスが火を盗んだ後で・・・神が・・・人類に与えたのがパンドラの函なのである。

ロイドとクイーン。黎士と七瀬。この二組の兄妹の相克はプロメテウスとパンドラの神話に準拠していると推測する。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第7回』(TBSテレビ20131124PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・坪井敏雄を見た。物語の含みというものは・・・受け取るものによって替わるのが普通である。2013年の黎士(木村拓哉)は婚約者の麻陽(柴咲コウ)を「守る意志」を示すためにおどけて有名な特撮ヒーローのポージングを披露する。男子に比べて女子の認知度は当然低いが・・・それが手を十字に交差するウルトラマンのスペシウム光線発射や、額からエメリウム光線を発射するウルトラセブンのポーズであることは・・・少なくともヒーローの必殺技のポーズであるという共通認識をもたらすだろう・・・と黎士は考えるわけである。しかし、世の中には非常識というものは常にあるので・・・それがそうだと「彼女」が必ず理解するとは限らない。しかし・・・愛する人の仕草を・・・それがなんであれ・・・記憶しているというのは・・・そこに含まれた意味を越えて残る。第一話で・・・生きている黎士の遺した記憶が・・・麻陽に・・・「十」と「八」という文字として伝達され・・・麻陽が黎士の存在を感じるというのは・・・素晴らしい展開だったと言えるだろう。黎士と麻陽だけが通じ合える暗号。その幽かな徴が男と女の愛の儚さそのものを物語るからである。

麻陽は黎士との再会を待っている。

もちろん・・・そういう奇跡はありうる。

しかし・・・現時点において・・・黎士は死亡している。

すでに・・・麻陽を抱く肉体は分解され・・・精神が脳データとして残るばかりなのである。

その脳データさえもポリスクラウドは破壊するが・・・黎士はそうなることを予測して・・・バックアップを保存している。

クライアントが黎士の脳データであり、エーアールエックスセカンドサーティーンが実体化に際して黎士の姿を選択したことは・・・黎士が精神と肉体を分離したことを意味する。

しかし、肉体であるアンドロイドには人工知能があり・・・ロイドという個性を獲得するに至る。

はたして・・・それが黎士の意図するところだったかどうかは不明だが・・・ロイドは意志を持ったアンドロイドにまで進化し・・・そして名付け親である麻陽を守るために・・・その短い生を終えたのである。

ロイドに生存を許され・・・その精神に感応した葦母刑事(遠藤憲一)は初期化され機能を停止したロイドと麻陽発見し・・・その保護を決意する。

なんとか・・・ロイドを安藤家に運び込んだ二人。

「ロイド・・・起きて・・・」と呼びかける麻陽。

しかし・・・すでにロイドというアンドロイドが消滅してしまったことを麻陽は知らないのである。

「そいつは・・・壊れてしまったんじゃないのか」

「ロイドは・・・自己修復機能があるのよ」

「しかし・・・その機能が壊れてしまったら・・・自力では回復できないのではないのか」

「あなた・・・どうして・・・急に味方みたいなことを言い出すの」

「俺は・・・そいつに命を救われたらしい・・・」

「・・・」

「つまり・・・恩義を感じる立場なんだよ」

「恩義・・・」

「あんただって同じだろう・・・その機械に・・・何度も命を救われて・・・」

「・・・」

「あんたは知らないだろうが・・・そいつはとんでもない・・・機械なんだ」

「ロイドは機械じゃないのよ」

「ああ・・・そうかもしれん。とにかくそいつは2066年に人類を十億人以上、殺すことになるらしい」

「十億人・・・」

「まあ・・・未来・・・2113年から来たというのが本当なら・・・もう十億人殺しているってことになる」

「そんなこと・・・信じられない」

「ああ・・・そうだろう・・・そいつは俺さえ殺さなかった・・・」

「そうよ・・・私が殺しちゃ駄目っていったから」

「しかし・・・だからといって・・・そいつが誰も殺していないとは限らないだろう」

「ロイドは自分で・・・たくさんの人間を殺したと言っていたわ・・・私は信じなかったけど」

「そうだ・・・過去はともかく・・・いや・・・未来か・・・そいつは今、いい奴だもんな」

「・・・」

「修理について・・・あてはないのか」

「そうね・・・七瀬ちゃん・・・七瀬ちゃんなら・・・なんとかしてくれるかもしれない・・・」

麻陽は七瀬(大島優子)に電話してみるのだった。

しかし、七瀬の反応は冷淡なものだった。

「どうして・・・私があのロボットを修理しなければならないんですか。あいつは私を殺すっておどしたんですよ・・・お義姉さんだって・・・あいつをうざがってたじゃないですか」

「七瀬ちゃん・・・」

「とにかく・・・私には無理ですよ・・・ロボット学者じゃないんですから」

「・・・」

電話は切られ・・・麻陽は途方に暮れた。

「星という男はどうだ・・・」

「星くん・・・?・・・なぜ、彼の事を・・・」

「あいつを通じて・・・あんたを探っていた」

「なんですって・・・」

麻陽は・・・自分に横恋慕する星(桐谷健太)のロイドに対する嫌悪感を思い出して首を振る。

「だめよ・・・彼には・・・ロイドを触られたくない」

「しかし・・・優秀なシステムエンジニアなんだろう・・・身近にいてある程度事情を知っている人間は限られている・・・溺れるものは藁にもすがるというじゃないか。あんたがそいつを助けたいという気持ちをあいつに伝えればいい・・・あいつは邪な人間ではないと思う」

「人間は・・・複雑だから・・・」

「じゃあ・・・このまま・・・あきらめるか」

「・・・」

「そいつは・・・あんたのものだからな・・・あんたが決めればいい」

「わかった・・・星くんに連絡してください」

「了解した」

葦母は携帯電話と煙草を取り出す。

「この部屋は禁煙です」

「ふ・・・まったく・・・嫌な世の中だぜ・・・」

葦母は煙草をくわえて・・・部屋を出る。

そして・・・一服すると星に電話をするのだった。

「ああ・・・俺だ」

「葦母さん・・・」

「実は頼みたいことがある・・・」

「なんですか」

「ザ・・・」

「もしもし・・・」

「もしもし」

「すまない・・・電波の状態が悪いみたいだ・・・とにかく、至急警視庁まで来てもらいたい」

「警視庁に・・・」

「もしもし、星・・・どうした」

「どうかな」

「行きます」

「もしもし・・・もしもし」

ノイズが高まり、葦母刑事は仕方なく電話を切る。

警視庁ではもう一人の葦母刑事が微笑みを浮かべていた。

アンドロイドは変身を解くとポリスクラウドの亜空間に転移する。

「彼は役に立ちそうか」

「彼はARX II-13に憎しみを抱いている・・・首尾よく役目を果たすだろう」

ポリスクラウドの21世紀東京分室には・・・ロイドによって破壊されたかに見えたケプラ(伊達暁)とメンデル(谷田歩)が生存していた。

ロイドは二体をロストしたか・・・破壊したのはダミーだったらしい。

ドローに見えた試合は・・・ポリスクラウドに二体の無傷のアンドロイドを残し、ロイドの敗北に傾きかけていた。

「ARX II-13は機能停止しているようだ・・・直接対決も可能ではないのか」

「周辺のセンサーはまだ機能している。ARX II-13による罠の可能性がある」

「選択肢を検討・・・作戦を承認する」

「本物の葦母刑事はどうする」

「確保のための手配を行う」

警視庁に到着した星は待っていたアンドロイド葦母刑事に案内され・・・公安組織の部署に誘導される。

「この人は・・・俺の上司だ・・・」

「はじめまして・・・幹谷総一と申します」

公安組織の幹部である幹谷(鶴見辰吾)は慇懃に挨拶した。

「民間人の君に頼るのは心苦しいが・・・事は緊急を要するのです」

「緊急・・・」

「我々は・・・すでに・・・2113年の警察組織と連携している」

「未来警察と・・・」

「そして・・・君も知っているあのアンドロイドをテロリストとして認定した」

「テロリスト」

「半世紀後・・・あのアンドロイドは機能不全を起こして人類の大量虐殺を行ったあげくに各国政府の首脳を殺害する危険な存在らしい・・・」

「・・・」

「同じ機種はすべて回収され破壊されたらしいが・・・あの機体だけが・・・脱走し、現代に逃亡してきたらしい」

「私は2113年の刑事です・・・」

「え・・・」

「あのアンドロイドは安堂家の周辺に特殊な防御装置を配置しており・・・自爆する可能性があります。そのために我々は接近できないのです」

「自爆・・・」

「しかし、一般人であり、安堂麻陽さんの部下であるあなたは警戒の対象外になっています・・・そこで・・・心苦しいのですが・・・あなたに特殊な作業をお願いしたいのです」

「作業・・・」

「今、エーアールエックスセカンドサーティーンは機能停止中です。しかし、一部のナノマシーンはまだ機能を保持しており・・・機能を回復する恐れがあります。エーアールエックスセカンドサーティーンを完全に破壊するためにはこの原子還元ブログラムを注入する必要があります」

「原子還元・・・」

「しかし・・・そのためには一部機能を回復しなければなりません」

「だが・・・そんなことをしたら・・・」

「あくまで・・・一部機能の回復なので・・・エーアールエックスセカンドサーティーンは行動不能のままになります。そこで・・・原子還元プログラムを注入すれば安全に処理することができます」

「葦母さん・・・」

「危険な任務だが・・・お前にしか頼めない・・・安堂麻陽には了解をとっている」

「わかりました・・・お引き受けいたします」

「成功を祈っております」

こうして・・・星は・・・民間協力者の工作員として仕立てられたのだった。

すでに・・・本物の葦母刑事は当局によって監禁されている。

七瀬は放心していた。

研究室では・・・助手たちが帰り仕度をはじめている。

「今日は沫嶋先生どうしたのかしら・・・」と栗山薫(山本美月)が七瀬に話しかける。

「まったく連絡がないなんておかしくないですか」と江戸川斗夢(ジェシー)が言う。

「七瀬さん」

助手たちに呼びかけられて夢から醒めたように応ずる七瀬。

「大丈夫ですか」

「・・・何が・・・」

「いえ・・・なんだか・・・心あらずって感じでしたけど」

「もしかして・・・沫嶋先生になにか・・・」

「ああ・・・兄さん・・・兄さんはちょっと調子が悪いみたい・・・私、少し、一人でやることがあるんで・・・今日は解散して」

不審げな表情をしたまま助手たちは研究室を退出する。

「勝ってうれしや花いちもんめ」

「・・・」

「負けてくやしや花いちもんめ」

「なんか・・・用」

「何言ってるの・・・私を選んでくれてありがとうって言いたいだけよ」

「私が・・・選んだ?・・・あなたを・・・そう言えばあのアンドロイド壊れたって」

「そうよ・・・あんな旧式だもの・・・壊れて当然よ」

「あいつってあんたの兄みたいなもんなんでしょ」

「そうね・・・あなたと沫嶋黎士と同じ・・・」

「そうか・・・あんたも妹か・・・」

「そうよ・・・私たちは同じ・・・親殺しで兄殺し・・・」

「兄殺し・・・何のことよ」

「あらあら・・・そういう病なのかしら・・・自分のしたことを忘れちゃうみたいな」

「私が・・・兄さんを・・・殺した?」

七瀬は暗闇の中を彷徨っているような気分を感じる。

両親を殺害した七瀬と・・・両親の死に涙する七瀬。二人の七瀬が乖離しているようだった。

七瀬はふと思うのだった。一体、私は誰なんだろう。そして目の前にいるのは誰なんだろう・・・と。

七瀬が人格障害の症状を示している様子をエーアールエックスナインスザラストクイーン(桐谷美玲)は童謡のメロディーを再生しながら静観する。

葦母の運転する車の中で改造された自分の端末ツールをいじりながら星は新しい玩具を与えられたように目を輝かせていた。

「俺は周辺を警戒している。何かあったら連絡してくれ」

「・・・」

星はツールの点検に夢中になりながら・・・心の中で警鐘が鳴っているのを感じていた。

(おかしい・・・)

「おい・・・聞いているのか?」

「あ・・・ええ」

(何かがおかしい)

それは奇妙な違和感だった。

何か重要な要素が欠けているような。痒いところに手が届かないような。目の前にあるものの名前が思い出せないような・・・もどかしさであった。

(俺は・・・緊張しているのか・・・)

「とにかく・・・気をつけろ」

「はい」

星は車を降りて安堂家のマンションのエントランスを通過する。

「星です・・・」

「待っていたわ・・・来てくれてありがとう」

室内に招き入れられた星は・・・麻陽の香りにうっとりとする。

<ケプラへ。第一段階は失敗。爆破物は無効化された模様。こちらメンデル>

<メンデルへ。想定内だ。やはり・・・直接的アプローチが正解だった。こちらケプラ>

星は麻陽の香りを嗅いだ途端に違和感が強まるのを感じる。

「香り・・・香り・・・そうだ・・・煙草の香り・・・」

麻陽は星を寝室に誘う。

ベッドにもたれかかった血まみれのロイドが視野に入った途端・・・星の感情は激しく乱れる。

「これは・・・アンドロイド・・・いや・・・どうみても黎士さんじゃないか」

「まったく・・・反応がないの。それに段々冷たくなっているの」

「ボクが警視庁から入手した資料によると・・・このアンドロイドはナノマシーンの集合体のようなものらしいです」

「星くん・・・まだ・・・ハッキングを続けているの・・・危ないからやめてと言ったでしょう」

「すみません・・・しかし・・・だけど・・・だから、このアンドロイドにメカニズムになんとか接触できるかもしれないのです」

「そうなの・・・」

「いいですか・・・我々、人間は細胞の新陳代謝で活動を維持している有機生命体です」

「・・・?」

「このアンドロイドは細胞の替わりにナノマシーンで構成されている・・・そういう意味では生命体の一種と考えられなくもない」

「そうね・・・ロイドはまるで生きているようだった」

「わかります・・・今では・・・これはまるで・・・死んでいるみたいだ」

「やめてよ・・・そんな・・・」

「いえ・・・僕は・・・こいつに生命があるのを認めているってことですよ」

「・・・治すことができそう・・・」

「わかりません」

「・・・星くん、コーヒーでも飲む?」

「・・・お願いします」

星はツールを開く。指示された通りに・・・接続コードを設置する。

(何をしたのか・・・わからないが・・・俺のノートパソコンは・・・とんでもないことになってるぞ)

起動を開始したモニターを見ながら・・・膨大なデータ処理のスピードに星は脅威を感じる。

(おいおい・・・スーパーコンピューターかよ・・・)

(いや・・・なにか・・・)

(そうでなくて)

(たいせつなことを・・・)

その時、コーヒーを持った麻陽が部屋に戻ってくる。

(匂い・・・)

(そうだ・・・匂いだ・・・葦母さんから・・・煙草の匂いがしなかった)

(あの・・・強烈な・・・悪臭が)

(あれは・・・)

「麻陽さん・・・」

「何・・・」

「この部屋には・・・ジッポーライターのオイルがありませんか・・・」

「・・・あるけど・・・星くん・・・あなた、煙草なんて・・・吸ってたっけ・・・それにどうしてオイルがあるって知ってたの」

「麻陽さん・・・僕は黎士さんに昔・・・あったことがあるんです」

「え・・・」

星はジャケットからライターを取り出した。

「それ・・・って」

「いいでしょう。帝國大學の銘が入ったジッポーです。これはボクのお守りみたいなもので・・・黎士さんにいただいたんです」

「黎士に・・・」

「ボクは・・・当時・・・受験生でした・・・といっても現役じゃなくて・・・三浪目だったんです。自分で言うのも変ですが・・・ボクは本番に弱くて・・・緊張感に耐えられないタイプだったんですよ。長い浪人生活の間にいつのまにか喫煙を覚えていました。ニコチンには鎮静効果もありますから。そして・・・試験の空き時間に・・・トイレで一服しようとしたんです」

「ダメな子ね」

「ところが・・・ライターのガスが切れて・・・火がつかない」

「・・・」

「そしたら・・・頭上からこのライターが降って来たんです」

「・・・」

「トイレの上から・・・黎士さんが覗いてました。一瞬、変態かよって思いましたが・・・実は僕は黎士さんに憧れて帝國大學を目指していたんです。黎士さんだと分かると喜びで頭が真っ白になってしまいました。すると黎士さんはこう言ったんです・・・困ってるみたいだからと」

「ふふふ・・・黎士らしいわね」

「それから・・・こうおっしゃいました。トイレで煙草を吸うのは感心しない。もちろん・・・喫煙そのものも感心しない。紫煙はそれなりに面白いが・・・それなら炎を眺める方がもっと面白いって・・・」

「もう・・・何を言ってるのかよね」

「人間は・・・火を見つめて・・・生きて来たと先生はおっしゃいました。危険極まりないものを見つめて・・・それをコントロールすることを夢見るのが人間だと。だから・・・人間は火を見つめることで・・・集中力を高めたり、刺激されたり・・・時には癒されるって」

「・・・」

「ノストラダムスは・・・蝋燭の火を見つめて予言を書いたなんてことまでおっしゃったのです。ボクはあわてて個室から出て先生にライターをおかえししようとしたんです。すると・・・先生はこれも縁だから・・・思い出の品物としてボクにこれを・・・プレゼントしてくれたのです」

「ありがとう・・・星くん・・・黎士の話をしてくれて・・・黎士のこと・・・覚えていてくれて」

「それ以来、ボクは何か迷うことがあると・・・ジッポーライターに火を灯すことにしたんです。だから・・・煙草もやめたんですよ・・・でも今はオイルを切らしていて」

「わかったわ・・・オイルね」

麻陽は煙草を吸わない黎士が何故オイルを持っているのか・・・疑問だったのだ。聞きそびれていた謎が・・・今、解けたのである。

オイルを補充した星は・・・着火音を響かせて火を灯す。

「いい音ね」

「いい音なんです」

「ところで・・・一体・・・何を迷っているの」

「さあ・・・」

星はほとんど揺らがない青い小さな炎を見つめていた。

(そうだ・・・お前は何を迷っている)

(黎士さんが死んで・・・麻陽さんと付き合えるかもしれないからと)

(そのために・・・この人形を・・・黎士さんそっくりのアンドロイドを)

(完全に破壊するためにここにきたのだ)

(悩むことはないじゃないか)

(いや・・・何か重大なことを失念しているぞ)

(このアンドロイドは・・・何をしていた・・・このアンドロイドは・・・黎士さんにそっくりの)

(まるで眠っているようだ・・・しかし・・・壊れている)

(なぜ・・・壊れてしまったのか)

(戦って)

(何のために・・・麻陽さんが言ったじゃないか)

(彼女を守るためにか・・・)

(じゃ・・・このアンドロイドがいなくなったら・・・どうなる)

(麻陽さんが・・・殺されてしまう・・・うわっ)

「どうしたの・・・」

「ボクはとんでもないことをしようとしていました」

「なんなのっ」

「麻陽さん・・・言ってましたよね・・・このアンドロイドを信じるって」

「ええ・・・何度も命を救われたもの・・・」

「でも・・・このデータを見てください・・・」

星はライターを消して作業中のコンピューターにエーアールエックスセカンドサーティーンのデータを開く。

「このアンドロイドは2066年に暴走して何十億という人類を殺戮したことになってます」

「その話は聞いたわ・・・」

「でも・・・おかしいんですよ・・・そんなに大量の人間を殺戮できるアンドロイドがそもそも・・・なぜ、存在するんですか」

「・・・」

「確かに何らかのエラーが発生して・・・暴走をした可能性はあるでしょう。それは制御不能な状態だったかもしれない。しかし、そもそも・・・どうしてそんな戦闘能力が必要とされたのかってことです」

「ちょっと待って・・・」

「何ですか・・・」

「ここを拡大できるかしら・・・」

Ar007s 「・・・何ですか」

「これは・・・サンソン家の紋章だわ」

「サンソン家?」

「中央に割れた鐘があるでしょう。つまり、音の出ない鐘のシンボルよ・・・サンソンは・・・音無しという意味があるの。だから・・・サンソン家の紋章なのよ・・・」

「それが・・・何か」

「サンソン家はムッシュ・ド・パリと呼ばれる・・・フランスの公認死刑執行人の家系なのよ」

「死刑執行人・・・」

「有名なのは・・・四代目のシャルル=アンリ・サンソンね。八つ裂きの刑を止めてギロチンを採用したのよ・・・そして・・・ルイ16世やマリー・アントワネットを処刑したの」

「なんで・・・そんなことを・・・」

「ベルバラよ」

「ああ・・・ベルバラですか」

「ベルサイユの薔薇が好きで調べているうちにたどり着いたマメ知識なのよ・・・だけど変じゃない」

「そうですね・・・狂ったマシーンのしゃれにしては・・・」

「最初から・・・そういう部隊なのよ・・・」

「なるほど・・・死刑執行部隊か・・・つまり・・・大量虐殺は・・・」

「計画的に・・・運営されたのよ」

「2066年と言えば・・・人口爆発の最大のピークといえるかもしれませんね」

「そうよ・・・21世紀になる前は60億人だった人口がたった十年で70億人を突破しているのよ・・・原子力がこんなになってしまうと・・・エネルギー問題だけでも・・・大変なことになるでしょう」

「この殺戮データを見ると・・・被害はアフリカとアジアに集中しています。これは・・・意図的な口減らしですね」

「彼は・・・ロイドは・・・悩んでいたわ・・・たくさんの人を殺した記憶に苦しんでいた・・・悪夢を見てうなされるほどにね・・・」

「アンドロイドが・・・ですか」

「そうよ・・・少なくともそう見えた」

「じゃ・・・この政府要人の暗殺っていうのは・・・」

「つまり・・・大量虐殺を指令したのが・・・彼らってことじゃないの」

「ああ・・・マシーンのバグっていう話で・・・彼らは真相とともに闇に葬られ解体されたんですね」

「そう・・・きっと・・・ロイドはそれが・・・許せなかったのよ」

「・・・麻陽さん・・・あなたは・・・それを信じるのですね」

「わからない・・・でも・・・ロイドのことは信じてる」

「わかりました・・・ボクも信じます・・・それにボクは・・・この黎士さんにそっくりのアンドロイドを壊す気にはなれない・・・だって・・・ボクには人を殺す度胸なんてないですから」

「・・・え・・・何の話」

「・・・終わります・・・修復データのダウンロードが終了しました」

「修復・・・」

静寂が訪れた。

二人にはマシンの間で交わされる電子的言語のやりとりは感じられないのである。

【修復による再起動を実行する】

【欠損箇所を発見】

【機能回復失敗】

【パーツの交換を要請する】

【要請中・・・】

「ロイド・・・動かない・・・」

「・・・」

その時、ツールのモニター画面が激しく波打った。

「どうしたの・・・」

「わかりません」

超次元回線が開こうとしていた。

<ケプラへ。超次元の揺らぎを計測。2113年から2013年にタイムケーブルが構築された模様。こちらポリスクラウド>

<ポリスクラウドへ。事態が把握できない。こちらケプラ>

<ケプラへ。非常事態宣言。非合法組織ゼロクラウドの介入が予測される。全力を挙げて事態の推移を阻止せよ。こちら、ポリスクラウド>

<・・・>

「厄介なことになりました・・・待機しているSITを突入させてください」

「強行突破ですか・・・」

「この国の未来がかかっていますぞ・・・」

「了解しました」

「SITへ・・・テロリストのアジトで重大なテロ行為の可能性が発生した。制圧を開始せよ。なお・・・テロリストの生死は問わない」

「了解した・・・」SIT隊長石川(神尾佑)は部隊の展開を命じる。

その頃、監禁中の葦母は・・・目の前に亜空間への扉が開かれたのを目撃する。

「なんだ・・・これは・・・入れってのかよ」

葦母は唾を飲み込んだ。

麻陽の部屋では麻陽と星がツールの画面に釘付けになっていた。

「着信がありました・・・未来からメールが届きましたよ」

「あ・・・また文字化けだ」

「これは暗号です・・・ボクの暗号解読ツールじゃ・・・何百時間もかかりそうですが・・・このツールなら・・・きっと・・・ああ・・・もう解けるのか・・・化けもんだな・・・このスペック・・・」

「この画像・・・東京タワー・・・」

「十字架・・・いや、漢字の十?」

「八・・・」

麻陽にはたちまち・・・その意味がわかった。

「十は・・・スペシウム光線のポーズ」

「え」

「そして・・・八はエメリウム光線のポーズ」

「ああ・・・ウルトラマンとウルトラセブンですか・・・」

「ウルトラマンは平成生まれ・・・それとも・・・」

「昭和っ・・・何言ってるんですか」

「黎士よ・・・黎士のメッセージよ・・・」

「黎士さん・・・」

その時、星の携帯に着信がある。

「星・・・何をしている・・・早く破壊プログラムを・・・」

「あなた誰ですか・・・葦母さんじゃないですよね」

「何を言ってる・・・」

「だってあんた無臭じゃないですか」

「星・・・今、SITが突入しようとしている・・・殺されるぞ」

「それが・・・あなた方のやり方ですか・・・すごくむかつきますよ」

「・・・」

「麻陽さん・・・新しいデータのダウンロードが始りましたが・・・完全修復にはもう少し時間かかりそうなので・・・ボクちょっと行ってきます」

星は拳銃のようなものを取り出す。

「ダメよ・・・やめて・・・あなたはロイドについていて・・・私が行く・・・丸腰で行けば・・・女を撃ったりできないでしょう」

「そんな・・・」

「お願い・・・」

「わかりました」

星はダウンロードの残り時間に見入った。それは短いようで長い時間だった。

「時間・・・」

壁際では・・・ロイドの修理した時計が時を刻んでいた。

「すべては・・・時間の問題か」

マンションの玄関前では・・・SIT隊員たちが展開を完了していた。

「交渉は決裂した・・・突入せよ」と公安本部からの指令が着信する。

「了解、総員突入準備・・・十秒後に・・・」

「隊長・・・誰か出てきます」

「何・・・」

「女・・・安堂麻陽本人です」

「抵抗するなら・・・」

「丸腰です・・・手を挙げています」

「う・・・」

「責任者出てきなさいよ・・・」と麻陽はマンションの玄関で叫んだ。

「私が・・・責任者だ」

「この騒ぎはなんなの・・・」

「お前はテロリストとして・・・射殺もやむなしの命令が出ている」

「どんな・・・命令なのよ・・・私がどんなテロをしたって言うの」

「問答無用だ・・・これは超法規的措置なのだ」

「バカなの・・・」

その時、亜空間に飛び込んだ葦母が二人の間に転がり出て来た。

「え・・・」

「石川か・・・」

「葦母さん・・・」

「出世したな・・・命令順守の馬鹿野郎が・・・」

「命令に従うのは・・・組織に属するものとして・・・当然のことです」

「そんでなにか・・・この丸腰のお譲さんを殺せって言われたら殺すのか」

「・・・」

「そんな・・・警察・・・どこにあるんだよ」

「・・・」

「そんなのクソだろ・・・お前もクソか」

「突入命令が出ています」

「じゃ・・・俺を撃て」

「全員・・・構え・・・う」

未来からのデータのダウンロードが終了すると同時にエーアールエックスセカンドサーティーンはアスラシステム機能を始動していた。

引き金に手をかけた隊員たちは・・・拳銃のようなもので胸を撃ち抜かれ、一瞬で戦闘能力を奪われていた。

それ以外の隊員たちは全員が足の骨を砕かれていた。

石川は激痛を感じていた。

「う・・・あ・・・手・・・指・・腕・・・足・・・痛い・・・痛い」

「百か所の骨を粉砕した・・・安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

次の瞬間、葦母の車は完全にペシャンコになっていた。

しかし・・・葦母に化けたアンドロイドは逃走に成功した。

「なるほど・・・逃走機能に特化した機体か・・・」

次の瞬間、亜空間通路を突破したエーアールエックスセカンドサーティーンは警視庁に出現した。

その瞬間、敵アンドロイドは逃走した。

「あらかじめ・・・逃走することを一番に考えるタイプか・・・」

取り残されたのは・・・幹谷総一ただ一人だった。

「警告する・・・安堂麻陽に手を出すな」

「・・・」

「警告を無視した場合、お前もお前の家族も殺す。そして・・・三十分以内に・・・この国の指導者および警察関係者を全員殺す・・・」

瞳にアイスピックのようなものを突きつけられた幹谷総一は頷くことも許されないことを感じた。それは脅迫ではなかった。一方的な通告だったのである。

一瞬後・・・エーアールエックスセカンドサーティーンは安藤家のマンション前に戻っていた。

「ロイド・・・」

「ロイド・・・何だそれは・・・俺はエーアールエックスセカンドサーティーン・・・クライアントの依頼により・・・安堂麻陽の生命を維持するためにやってきた・・・戦闘アンドロイドだ」

「え・・・」

茫然と立ちすくむ麻陽だった。

「あなた・・・私を忘れたの」

「お前が・・・安堂麻陽であることは・・・確認されている」

「そんな・・・」

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

「おまえ・・・」と思わず口を開く葦母。

葦母と麻陽の間に入るエーアールエックスセカンドサーティーン。

「お前は・・・誰だ?」

葦母は絶句した。

麻陽は思わず微笑んだ。なんだか・・・とても懐かしい感じがしたからだった。

(お帰り・・・ロイドになる前の・・・ロイド)

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

Ar007 ごっこガーデン。プロメーテウスの火のキャンプファイヤーセット。アンナわーい、融通きかない元のロイドになっちゃったー・・・でもシビアな感じがまたしびれるぴょ~ん。それにしても傷だらけのダーリン。熱演につぐ熱演で機能停止したアンドロイドの場面でぶったおれすぎなの~。アンナは心配で心配で・・・ぴょんぴょんはねちゃうぴょ~ん。サプリ百台くらい追加発注して湿布しまくるべきだぴょん。もう自分でも何言ってるが分らないぴょ~ん。アンナは設定的に来年ジュウハッチですぴょん。永遠のお年頃だから~。じいや、焼き芋もっと投入してね~。リピに備えて食べまくるぴょ~んまこウルトラマンの好きな飲み物は・・・ジョワッ・・・きゃーステマじゃないじょー・・・ただのウルトラマンクイズでしゅ~くうウルトラマンが好きなカレーは・・・ジャワッikasama4神尾佑さん危機一髪!シャブリウルトラマンさん、もうすぐ年の瀬ですな~・・・シワッスなのでありました~mana民主主義では・・・人口は抑制できないかあ・・・一人っ子政策なんて・・・全体主義国家だから可能?・・・マニュアルなんかしったこっちゃないアンドロイド万歳!・・・撃てるものなら撃ってみろ・・・俺はなあ・・・希望ってやつを守るために体張るんだよ・・・それが正義の警察官だろうが・・・葦母萌え~もキタヨっ・・・ロイド育成ゲーム再スタートっていうか・・・いつの間にか私クイーンになっとるだがや~mari眼鏡っ子の特権で七瀬いただきました・・・第一子でないことで満たされない思いを抱いてしまったのか・・・七瀬の心を覗いてみたいですね

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2013年11月24日 (日)

欲しがりません、結婚するまでは(亀梨和也)婚前交渉禁止ですか(多部未華子)

モラル(道徳)というものは非常に大切なものだ。

大切だから・・・危険でもある。

ルール(規則)と違って、それは暗黙の了解によって成立する。

たとえば、一夫一婦制度のルールによる結婚を前提とした社会では、モラルとして・・・結婚しているものが第三者と恋愛することはインモラル(反道徳的)として非難の対象となる。

当然のこととして、愛人は本妻の敵であるし、愛人の子供は日蔭者になる。

これは自然とは異なる人間としての社会的な営みであり・・・いびつなことだと言う主張はつまり・・・文学の原動力のひとつなのである。

結婚が異性愛に基づくものであるから、同性愛などもインモラルになる。

さらに性的魅力に個人差があることから、ある意味では性的魅力の行使に対する呪縛の側面を結婚制度は持っているので・・・インモラルには解放のニュアンスも生じる。

さらに・・・インモラルを批判する基盤が嫉妬というネガティブな感情に基づくことから・・・モラルは暗黒面さえ持っている。

このような様々なきしみが・・・面白いと考えるのが文学者である。

面白がってるうちはいいが、実践すると叩かれるのが普通である。

甘口のホームドラマのようで実はとんでもないファンタジーであるこの作品。

その核心は・・・正妻がありながら愛人を持った我南人と愛人の子でありながら正妻に育てられた青なのである。

さらに・・・愛人の子を弟に持つ姉・藍子は妻子のある男の愛人となり私生児を生んでいる。

その私生児の父親の娘であるみすずと青は恋愛して結婚へと向かって行く。

とんでもない関係がほんわかと描かれているわけである。

モラルサイドとしては・・・どこかで痛みを感じるはずであるが・・・巧妙に痛みのシンボルたる本妻は物語の中では抹殺されたりしているのだ。

愛人の子供を本妻が育てるなんてありえないというモラルサイドは・・・たとえば・・・青は愛人の子供ではなくて・・・もう少し理由ありの存在なのではないか・・・と推測したりする。

もちろん・・・その可能性もあるのだが・・・それでは・・・青は父親さえもが・・・本当の父親ではなくなってしまう。

そちらの方が・・・よりいいというのはこの場合は本妻・・・モラルサイドの発想なのである。

つまり、愛人の子供を育てるくらいなら捨て子の方がましだ・・・ということになる。

しかし・・・実際には藍子は妻子ある男の子供を産んで育てているのである。

妻子ある男の妻もまた死んでいるのは・・・都合がいいからである。つまり・・・ドロドロするべきところをさせないというある意味残虐性とも言える仕掛けが潜んでいるのだった。

さらには妻子ある男も殺されてしまうのである。

そうした・・・あってはならない関係が時の彼方に消えた状態で・・・正妻の娘と愛人の娘は・・・姉妹として心に疼くインモラルの結晶を解くのである。

だってしょうがないじゃない・・・愛に萌え、憎しみに燃える人々の営みの光と影はつまるところ・・・そこにあるのだ。

だから・・・青は父親の愛人の子であるべきだろう。

それでこそ・・・我南人の亡き正妻の菩薩ぶりが際立つからである・・・どんだけっなのである。

「半沢直樹」というモラルの権化のような物語がバカのような視聴率を取る世の中でこのドラマがここまで8.8%↘8.2%↘7.8%↘6.3%↘6.2%↗6.8%ときているのはけして偶然ではない。

文学的な人々というのは常にマイノリティーなのである。

そして・・・ここまでモラリストが充満した社会はものすごく危険な感じがするわけだが・・・それはあくまでマイノリティーが感じる危険なのだった。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第7回』(日本テレビ20131123PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・菅原伸太郎を見た。愛人の子であるために必要以上の奥手になっている青(亀梨和也)を案じた堀田家の人々は・・・文学少女であるために実生活でもしでかす可能性のあるすずみ(多部未華子)の行動力に期待して・・・婚前一泊旅行という禁断の作戦を仕掛ける。作戦は効を奏して・・・二人の仲は進展し・・・ついに青はすずみにプロポーズするのだが・・・。

「私は・・・青さんに東京バンドワゴンを継いでもらいたい・・・そして結婚したいです」とすずみは言うのである。

愛人の子供であるという引け目から・・・東京バンドワゴンの後継者であることに消極的になってしまった青は少し、怯むのだった。

「そうじゃないと・・・結婚できないってこと・・・」

「ううん・・・そうじゃないの・・・結婚と・・・青さんの仕事は別だもの・・・ただ、私がそうだといいなあと思っていることを知っていてもらいたかったの・・・だって・・・青さんが古本を心から愛してるって・・・私は想うから・・・」

思わず・・・照れて立ち上がり・・・背を向けるすずみ。

すずみの可憐さに青は思わず背後から抱きしめる定番の「あすなろ抱き」を決める。

そうなると・・・正面向かせてキス・・・そして・・・は定番の流れなのだが・・・必要以上に奥手の青はそんなことはしないのである。

青は・・・結婚を決めながら・・・入籍までは「清い身体でいよう」とモラルの権化みたいなことを言い出すのだった。

すずみの内心は描写されないが・・・大切にされたことを喜びながら、「えーっ」という気持ちもあったと推測する。

そして・・・朝まで待った二人は始発の新幹線で京都から東京に帰って来たのだった。

朝食前の堀田家の人々は蒼ざめるのであった。もしかして・・・作戦失敗・・・?

「ど、どうしたの」

「あのさ・・・ボクたち、結婚することにしたんだ」

「ええっ」

「それで一刻も早く、みんなに報告したくて・・・朝飯食べずに帰ってきました」

ホッとする堀田家一同だった。

「あの・・・旅館、朝食美味しいのにな」と紺(金子ノブアキ)は呟くのだった。

しかし、作戦の首謀者である勘一(平泉成)、作戦参謀の藍子(ミムラ)と亜美(平愛梨)はしてやったりと万歳三唱なのである。

もちろん・・・青に恋をしている花陽(尾澤ルナ)は心からは喜べない。

さらに・・・我南人(玉置浩二)は「LOVEだね」と言うべきところを言わずに珍しく思わしげな顔になるのだった。

不倫仲間である・・・長女の藍子は気配を察し、我南人と紺に秘密会議を持ちかける。

「結婚となると・・・あれね・・・青の本当のお母さんのことが問題よね・・・」

「でも・・・今まで一度も逢いにこなかった人だぜ」と紺。

「母親ってさあ・・・どんな事情であれ、どんな境遇であれ・・・子供のことを忘れたりはできないのよ・・・ねえ」

「うん・・・そうだねえ」と我南人。

「・・・ということは・・・青のお母さんは生きているのね」

「まあ・・・ねえ」

しかし・・・それを青は聞いてしまうのだった。

「いいよ・・・今更・・・それに僕の母さんは一人だもの」

青は育ての親である我南人の亡き妻・秋実(未登場)に配慮するのだった。

しかし・・・なぜか青を張り倒す我南人。

「なにすんだよ・・・」

「ごめん・・・悪いのは全部俺なのに・・・お前を殴ったりしてな」

「なんなんだよ・・・」

そう言い残して青が去った後に我南人はつぶやく。

「そうは言ってもなあ」

「そうは言ってもねえ」

「やはり・・・俺がなんとかしなくちゃだなあ」

「お父さん・・・」

父親に期待しつつ心配する長女だった。

勘一はノリノリになって・・・近所の神社の元神主の祐円(ベンガル)と神主・康円(坂本真)父子を呼び出し、神前結婚式の日程を決めるのだった。

お日柄もよろしく結婚式の日取りは青の誕生日でもある12月3日に決定する。

青はすずみの父親の墓参りに出かけるのだった。

「お父さん・・・許してくれるかなあ」

「でも・・・青さんが買ってくれたたいやき・・・喜んで食べてたから」

「へえ・・・そうなんだ」

「だから・・・きっと許してくれたと思うよ」

「生きてるうちに・・・逢いたかったなあ・・・」

すずみも同じ想いだったが・・・そうなると・・・愛人の腹違いの弟と結婚する娘をどう思うのか・・・ややこしい気持ちにもなるのだった。すずみは文学少女なので・・・その点についてはちょっとうっとりするのである。

一方で・・・我南人は藍子を連れ出し・・・ずっと秘密にしていたことを打ち明けるのだった。

街頭では劇中劇の撮影が行われている。

「あら・・・あの人・・・大女優じゃない・・・」

池沢百合枝(大地真央)というスターを目撃してちょっとうれしくなった藍子だったが・・・察しがいいのでたちまちに問題を悟るのだった。

「え・・・青ちゃんのお母さんって・・・まさか」

「まさかと思うがそうなんだねえ」

「池沢百合枝かよっ」

父の愛人である。長女としては母に変わって憤激するところだが・・・自分自身が愛人として私生児を生んでいる藍子は・・・いろいろと複雑な気持ちになるのだった。

ある意味・・・この父ありてこの娘ありなのである。

「こりゃ・・・問題ありよね」

「だね」

「だって・・・公になったらものすごいスキャンダルじゃない・・・ワイドショーの話題独占じゃない・・・あることないこと書かれて・・・青ちゃんとすずみちゃんの楽しい新婚生活・・・木端微塵になるわよ」

「だねえ」

「・・・」

藍子は・・・忘れがちであるが・・・父親はロック界ではスーパースターだったことをふと思い出すのだった。

そんな二人の姿を・・・怪しい人影が見つめていた。

後にその正体が知れることになる・・・ミュージシャンくずれの雑誌記者・木島(堀部圭亮)だった。ジャーナリストは・・・この世界では・・・モラリストとインモラルな人々に摩擦を生じさせるゴキブリ野郎的な薄汚い職業の人なのである。

つまり・・・黒魔道師なんだな。

まあ、本当は魔法に黒も白もないんだけどな。

なにしろ・・・単なる悪魔のテクノロジーですからあ。

「秘密」を許さないのは知らない間に馬鹿にされるのが嫌だからである。

しかし、人は時に馬鹿を馬鹿にしないために秘密を作ることになる。

もちろん、その方が都合がいいからである。

しかし「秘密」が「秘密」でなくなって馬鹿にされた本人が憤怒したり絶望したりするのはそれはそれで面白いわけで、「時代/中島みゆき」が1975年から歌い継がれることになるわけである。そんな秘密もあったよねといつか笑える日が来るからである。

一方で「八百屋お七」を前田敦子が演じた「あさきゆめみし~八百屋お七異聞」は恋する人に逢いたさで放火したお嬢様の物語をジェームス三木があることないこと水増ししてねっとりと描くわけだが1683年に恋をしたとも放火したとも火炙りになったと言われる15歳の少女の話は何故か琴線に触れるらしい。

今回は恋しい男が謀反人の息子であるがために恋が叶わないというのが秘密めいているのだった。

認知症の家人は「八百屋お七って誰だっけ」と毎回聞くのだが最終回で刑の執行を待つお七の前に万障繰り合わせて恋しい吉さんが姿を見せて「これは夢か」とよよよと泣けば、五秒であふれんばかりのもらい泣きである。

人知を超えて・・・インモラルな秘密こそお涙頂戴ありがとうなのである。

つまり・・・誰だってそういう秘密のひとつやふたつ抱えているものだからである。

秘密は罪。そしてそれを暴くのもまた罪なのだった。

ここから・・・出生の秘密という爆弾を抱えた青の結婚は・・・そこはかとない暗雲に包まれるのだった。・・・随分脱線したぞ。

その発端はどこか女癖の悪そう祐円の怪しげな行動から始る。

ちょっといい女と密会している現場が度々、目撃されるのである。

この下町では見て見ぬふりで見過ごされるので本人はまんまとしていやったりの場合でも町内で知らない人はない状態にあっというまに噂が拡散するのだった。

そのあげく・・・祐円は青の結婚の日程変更を画策し始めるのだった。

ついには「それから/夏目漱石」の初版本を持ちだし、そこに勘一の父の記した「家訓」があって・・・「冬の結婚はするべからず」とあるから・・・結婚は延期するべきだと言い出すのである。

もちろん・・・それは祐円の捏造で・・・たまだま、その日、映画の撮影の打診があり、芸能事務所の美人の女社長(筒井真理子)に色気を出した祐円が結婚式の日取りをずらそうとしただけなのだった。

しかし・・・女社長の事務所が池沢百合枝の所属先と聞いて、藍子はピンとくるのだった。

「お父さん・・・あの人に知らせたのね」

「うん・・・そうなんだ」

「ただ・・・撮影にかこつけてこっそり見守るつもりだったのかも」

「それを祐円さんのすけベえ根性が・・・事をややこしくしたわけだねえ」

そんな祐円のすけベえ根性はいたるところに波紋を投げかけるのだった。

人間。向き不向きがあるわけである。

「LOVEじゃないねえ」なのだった。

この世界では「LOVE」には「粋」とか「乙」のニュアンスがあるわけである。

なんとか青の結婚に水をさしたい祐円はたまたまやってきたすずみの叔母・聡子(山下容莉枝)に「まったくこの店の次男坊は女泣かせのすけこましのくせに女子大生をだまして結婚するってんだからうらやましい」などと好色さまるだしで言い出すのだから浅ましい。

そのおかげで・・・青に対する聡子の先入観は大暴落するのであった。

そもそも・・・三重県で看護婦をやっている一人暮らしの聡子は父親の死んだすずみを引き取って一緒に暮らそうと目論んでいた節がある。

そこへ・・・青の悪評を聞きつけて・・・いきなり理不尽な叔母さんと化したのであった。

「かわいい姪をそんな男と結婚させるわけにはいかない。死んだ兄に替わって私がすずみの親ですから」

勝手に保護者面されて成人女子のすずみはいい迷惑なわけである。

しかし・・・正規な親を持たない青には悲しいコンプレックスがあり、結婚する相手の家族に認められることに妙な「こだわり」を発動させるのだった。

「おばさんがなんて言おうと結婚する」というすずみを宥め・・・「たった一人の身内なんだから・・・快く許してもらうまで我慢しよう」と言い出す始末である。

「あらら」と思うすずみだが・・・文学少女であるから・・・青に潜む心の綺を読みとって不承ながらも従うのであった。

すべては青が愛人の子であることから生じる薄められた痛みから生じているのである。

その痛みをむずがゆく感じながら・・・青はすずみの叔母さんに・・・「すずみに対する誠心誠意をわかってもらおう」と東京案内のサービスを開始するのである。

一歩間違えれば叔母さんが青に惚れこんでしまうホストぶりだが・・・例によってたいやきによって心をほどかれる聡子叔母さん。

槙野すずみ、槙野春雄、槙野聡子・・・槙野家はたいやきに弱すぎる家系らしい。

青が花嫁の叔母に尽くしている頃・・・堀田家では・・・わだかまりを残す腹違いの妹・花陽と父の愛人の腹違いの弟と結婚する腹違いの姉・すずみが姉妹の心のふれあいを行うのだった。

愛人の娘であるために・・・一度もあうことのなかった父親・春雄の著書の著者近影に「落顔」する花陽。

その出来栄えに笑いだすすずみ。

「ごめんなさい・・・でも・・・ちょっと憎らしかったから」

「そう」

「私・・・ずっとお父さんの顔を想像してた。逢ったことはないけど瞼の父みたいに」

「私も・・・ずっとお父さんといたのにすごい秘密をもたれてたわけ」

「うふふ・・・」

「うふふ・・・」

「じゃ・・・このくらいしてもいいよね」

「もっとやっちゃおうか」

「えー・・・」

「えへへ」

「えへへ」

母は違えど同じ父親の血を引く姉妹なのだった。

母の娘としての立場は立場として仲良くすることにやぶさかではないのだった。

そんな花陽とすずみだった。

もちろん・・・愛する青を奪われるのは花陽にとってはせつないことだったが・・・相手が正妻の娘で・・・しかも姉なので仕方ないとあきらめもつくのだった。愛人の娘もそれなりにモラリストだからだ。

青のサービスによって心がほどけた聡子叔母さんが・・・「若過ぎて・・・頼りない・・・でも」と難癖つけながら・・・赦す雰囲気を醸し出す。

しかし・・・青ちゃんの悪口に腹が据えかねて・・・口を挟む花陽。

「叔母さん・・・叔母さんは知らないだろうけど本当に叔母さんなんだけど・・・」

蒼ざめる聡子の兄の愛人の藍子だった。

「とにかく・・・青ちゃんはすごくいい人なんだ。すずみさんにはもったいないくらいのいい人なんだから」

「すみません・・・娘が失礼なことを・・・でも青は本当に自慢の弟なんです」と藍子。

「兄嫁としては・・・すずみちゃんも本当にいい子で・・・料理もうまいし、よく働くしで・・・本当の妹のような気がするんですよ」

「この家族は素晴らしいんです・・・私も家族になりたいくらいです」とマードック(ジョナサン・シェア)・・・。

「おいおい・・・ドサクサにまぎれて愛を告白しちゃってるよ」と青。

「いや・・・本当に私だって家族になりたいです」と藤島(井ノ原快彦)・・・。

「なんだ・・・お前もか」と勘一。

「もててますね」と紺。

「なんのこと」ととぼける藍子。

「まあまあ・・・」と噴き出す聡子だった。「大人しい子だと思ってたすずみがこんなににぎやかな家族に囲まれて・・・楽しいそうで・・・ちょっとうらやましいくらい。認めますとも。この結婚、私は認めます・・・青さん・・・すずみを幸せにしてあげてください」

そして・・・堀田家の食卓に加わる聡子おばさんだった。

ところで・・・と元銀行員の家人に聞いてみる。

叔母さんが死ぬと花陽にも相続権は発生するのかな。

残念だけど・・・血縁だけど認知されてないからね。相続権はありません。

よくある話だけど・・・後妻さんの連れ子は入籍しているけど父親が死んだら相続権があるのかな。

ただ入籍しているだけだとないんだな。相続権があるのは実子と配偶者。遺産相続で一番ゴタゴタすること多いよ。しっかりと遺言残すか・・・連れ子とも養子縁組を交わすとかする必要があるね。もちろん、実子は取り分へるからいい顔しなかったりするけどな。

でも・・・死に順によっては下手すると奥さん側に遺産全部持って行かれたりするから養子縁組は大事なんだな。

まあ・・・遺産がなければ関係ないけどな。

だよねえ。

とにかく・・・晴れて・・・すずみの身内に赦しを得て・・・青の気持ちは晴れるのだった。

一方・・・我南人の特集記事を書いたりしている・・・記者の木島の正体が俎上にあがる。

興信所のふりをして聡子おばに青の身辺を探っていたのも木島だった。

我南人のファンであり・・・自分の妻(小島藤子)の母親にオレオレ詐偽を仕掛けるクズから更生した会沢夏樹(落合モトキ)が実はミュージシャン崩れだと指摘した木島。

察しのよい藍子と紺の兄弟は・・・「青」の出生の秘密を木島が狙っている予感に震えるのだった。

そうとは知らない我南人は・・・木島を背負ったまま・・・大女優の池沢百合枝を訪ねるのだった。

「お久しぶりね」と青の母親らしい百合枝は微笑む。

「そうだねえ」と青の父親ということになっている我南人も微笑む。

青の出生の秘密は・・・まだ明らかにされないのだった。

関連すめキッドのブログ→第6話のレビュー

Tbw007 ごっこガーデン。魅惑のあすなろ抱き(寸止め)セット。エリついにじゅるる展開キターッのでスー。京都の旅館でしっぽり・・・大人ですね、大人の展開ですわね~、しかし、あくまでファンタジーなこのドラマでは迸る若さもなんのその・・・ストイックな清い交際を貫く二人なのです・・・バッチリあすなろ抱ききめておいて・・・その後なんにもなしなんてアリなのですかーっ・・・大人の欲望はまさにファンタスティックとまらないのでスー・・・朝食抜きで新幹線に乗ったら駅弁たべちゃいますよね~じいや、新幹線幕の内おとりよせしてくださいなーーーっ、それから明日は青ちゃんロイドと東京下町はとバスツアーを予約してねえ」まこ女優さんが半年くらい休養して外国留学していたら出産してるって本当ですか・・・ミキティーは氷山の一角なのでしゅかーーーっ。このドラマでいい年した人がコソコソ女の人と逢っていてもなんにもないのがお約束でしゅね~。だから我南人と大女優もホントはなんにもないような気がしてならないのでしゅ~。しかし火のないところに煙は立たず、子種なければ出産できずなのだじょ~。保健の時間に教わったもんね~。来週は怒涛の結婚式でしゅか~。ラブ種の売上倍増チャンスでしゅね~・・・マードックいのっちレースの決着も気になりましゅね~・・・青ちゃんの結婚式の後は藍子の再婚かしら~それともリーガルハイ方式みんな仲良し養子縁組でしゅか~アンナロイド病から一息入れるためにラブ種のおまけアンナッシーでリフレッシュぴょんくう生んだから忘れられないだろうけど・・・生んだからって親とは言えないんじゃと・・・生み育てた親なら誰もが思う・・・でもこれはファンタジーなんだもんねえ。子供は子供で・・・一度もあってなければ一度くらいは見てみたいかもしれないよね~。花陽ちゃんは昔の青ちゃんなんだよねえ。モラルな生まれでないからこそモラルにこだわる青ちゃんせつなしですなーっ。そして・・・秘密を知れば知ったで口が重くなる優しい兄と姉~。罪だね。LOVEは罪だね~シャブリトマトスープにウスターソースって!合うのか・・・?なのでありました~ikasama4あるよ~みたいなmari他人の不幸を飯の種にするなんて同じ記者として許せませんね~。我南人のLOVEだねパワー爆発に期待ですねみのむし私はすっかりちりとてちん・・・たまに都市伝説の女・・・るるる

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2013年11月23日 (土)

聖戦と森林の彼方の王城とドラキュラ伯爵のその後を謎解く(長澤まさみ)

亜空間と言う意味では・・・テレビ朝日の「金曜ナイトドラマ」はいわゆるゴールデン・タイム(もしくはプライムタイム)枠と深夜番組枠の間の時間帯に存在する特殊な時空に存在する。

そのために・・・実験的な作品も可能であり、同時に深夜番組よりやや予算がある。

そこから・・・日本のテレビドラマの限界を越えた作品が生み出されてきたのである。

その代表作が「トリック」であることは間違いない。

他にも「スカイハイ」「雨と夢のあとに」「時効警察」「モップガール」「未来講師めぐる」などのゴールデンタイムではありえない企画を実現させている。

もちろん・・・ものすごい凡打も放つわけだが・・・少なくとも「お笑い」の部分では・・・他の日本ドラマの追随を許さない枠だと言えるだろう。

「都市伝説の女」はまぎれもなくその一角に食い込んでいる。

「特命係長」のサード・シリーズに並ぶ・・・第三シリーズがありますように。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)最終回(全7話)』(テレビ朝日201311151115~)脚本・福田雄一、演出・塚本連平を見た。このシリーズの流れを作った後藤法子でなく、深夜の王子様を最後の脚本家に持ってきたわけだが・・・一番、キャラを替えるタイプなので・・・アンカーとしては微妙な感じもかなりしたのである。しかし・・・この脚本家としては最大限、真面目にやったとも言える。死体安置所から死体が蘇ったことの描写と・・・実在する吸血鬼の暗示が少し、不足していたが・・・充分に第3シリーズに通じると考える。しかし・・・やはり、この脚本家は・・・深夜以外には向いていない気がしてならない。自己主張が激しすぎるんだな、きっと。

都市伝説もまた伝説の一種である。

両者は違うという考え方もあるが・・・本質は同じである。まことかどうかはさだかではないがまことしやかに噂されるストーリーは伝説であり、それが都市で囁かれれば都市伝説なのである。「あまり欲を出すと神が神罰をくだされるらしい」という都市伝説はソドムとゴモラの町でも囁かれ、それは立派な都市伝説なのである。

たとえばコミック「怪物くん/藤子不二雄Ⓐ」に登場するレギュラーの怪物は、ドラキュラ伯爵、狼男、フランケンシュタインの怪物のトリオである。これらはハリウッドの怪奇映画の主流なモンスターたちだが、その原点はヨーロッパにある。その中で人狼は獣人伝説、吸血鬼は不死人伝説、人造人間は科学万能伝説をその背景にしている。しかし、実態は・・・人知で測れない世界への人類の願望である。「都市伝説の女」では第1シリーズで狼男を、そして・・・第2シリーズでは前回が人造人間で、今回がドラキュラと・・・怪物トリオをクリアしたわけである。

その伝承についての解説は・・・やや浅いが・・・それもまた・・・ドラマの限界なのかもしれない。

ドラキュラ伯爵は・・・19世紀末のブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」の登場人物であるが・・・それはオスマントルコと神聖ローマ帝国というイスラム教徒とキリスト教徒の聖戦の最前線のひとつとなった15世紀のルーマニアに実在した英雄・ドラキュラ公にイメージを借りている。しかし、実際の吸血鬼一族は西欧全般に広く分布しているために・・・あくまで・・・それは表舞台に姿を現した氷山の一角にすぎないわけである。

ドラキュラ公そのものは未だに健在であるし・・・吸血鬼族としてもかなりの長命を誇っている。不死の吸血鬼と言えども永遠の寿命を全うするものは極めて僅かなのである。

またホモサピエンスとの生殖は主に一代雑種になるが・・・時にはホモサピエンスとの同化を果たした例もある。

もはや・・・自分が祖先に吸血鬼を持つことも知らぬものも多い。

しかし、時々・・・先祖帰りを起こすものもいて・・・人は時に血を求めるのである。

人々を魅了するトランシルバニアの古城に潜む吸血鬼年齢200年ほどのドラキュラ伯爵とその愛の標的となる美しい処女ミナの悲恋を描くミュージカル『ドラキュラ』の開幕を2日後に控えた劇場の楽屋・・・。ヒロイン・ミナを演じる女優・彩名りえ(大谷英子)の死体をスタッフの篠原真央(東風万智子)が発見する。死体には頸動脈に牙で噛まれたような跡があり、失血死と思われるのに出血の痕跡がなかった。怪事件ということで・・・UIU(=非科学事件捜査班)に出動命令が下るのであった。・・・命令、下っているのか?

月子(長澤まさみ)は「井の頭公園でボートに乗ったカップルは別れる伝説」を検証中だったが、急遽、現場となった劇場に向かうのだった。

鑑識課員の勝浦くん(溝端淳平)は禁煙の楽屋の畳に煙草の焦げ跡があったことに気分を害しているのだった。

「それは・・・几帳面という性格設定とは微妙に違うんじゃない」

「おそらく・・・脚本家は嫌煙家もしくは嫌煙家に媚を売っているんですよ」

「もしくは禁煙の禁断症状よね」

「まさか・・・実は手掛かりだったなんてことはないわよね」

「・・・」

「首筋の傷が・・・電撃の火傷の後で、噛み傷に擬装してあるなんてことはないわよね」

「もちろん・・・これは月子さんにふさわしい吸血鬼ドラキュラが絡んでいる可能性が高い事件です」

「さすがは・・・勝浦くん・・・私の助手として育ってきたわね」

「ということで・・・一番怪しいのは・・・ドラキュラを演じる主役の人だと思います」

「木を隠すなら森・・・吸血鬼はドラキュラ役者に化けるという定説ね」

「はい」

主人公・ドラキュラを演じる大スターのミュージカル俳優・大河内英樹(髙嶋政宏)は死体の発見された部屋の隣室にいた。

「チケットの売れ行きが悪いので・・・話題作りのためにヒロインを殺した・・・なんてことはないわよね」

「さすがに・・・ヒロインが死んだら・・・上演そのものが難しくなるでしょう」

「よし・・・それじゃあ、正体を確かめましょう」

しかし・・・大河内は・・・死者が出たことにも全く動じた素振がない。

「まさか・・・大河内さんは・・・本当にドラキュラなのでは?」と単刀直入な月子。

「ワッハッハ・・・バレたか・・・」と快活に笑う大河内だった。

「大河内さんは亡くなったりえさんとは交際中だとか・・・それにしては朗らかですね」

「・・・ふ・・・スタッフたちに・・・余計な心配を・・・かけたく・・・なかったんだよ」と一転して哀しむ大河内だった。

「もう少し、事情を聴きたいのですが」

「なにしろ・・・こんな騒ぎの中だ・・・君さえよければ・・・今夜、私の屋敷にきたまえ・・・」

「大河内さんの・・・お屋敷に・・・」

「そうだ・・・ヨーロッパの古城と言うわけにはいかないが・・・東洋の島国としては精一杯のおもてなしをするよ・・・君のような美女がお相手ならね・・・」

吸血鬼が狙う以上、月子は処女ということになるが・・・そうでない場合は大河内は吸血鬼ではないのである。

「どうするんです・・・大河内が吸血鬼だったら・・・」と怯える勝浦くん。

「大丈夫・・・これから私は対策を練って準備をするから・・・」

「心配だなあ」

月子は妹の音無都子(秋月成美)に命じて十字架を購入させる。

「あれれ・・・これ、完全にアクセサリだよね・・・ダイヤ結構大きいし」

「だって・・・いつか、借りるかもしれないし、可愛い方がいいでしょ」

「それ・・・前提なのね」

「でも・・・ドラキュラって本当に十字架に弱いの」

「一応、ドラキュラはサタンの息子なので・・・クリスチャン的聖なるものには圧倒されるわけ」

「でも異教徒だったら逆効果なんじゃ」

「まあ、そのために・・・ニンニクをドカ食いしたわよ」

「ええ・・・100メートル先から匂ってた」

「そんなにっ」

ドラキュラ城に飛び込む月子。

ディナーの後でワインを嗜むうちに月子は酔ってしまうのだった。

「東洋の島国に・・・汝のような美しき乙女があろうとは・・・長い旅をしてきた甲斐があったというもの」

「まあ・・・私の生き血をすするのですか・・・」

「そうとも・・・私の花嫁になりたまえ・・・」

月子の首筋に口づけようとする大河内。

「がっかりです」

「・・・」

「あなたはドラキュラじゃありません。ドラキュラなら、私の口臭に耐えられるはずがない」

「私は・・・嗅覚障害なのだ」

「あなたは・・・ただのドスケベーです」

「いいではないか。君もドスケベパワーの洗礼を受けたまえ」

戯れる月子と大河内。

そこに伝家の宝刀・ブルース・リーのものまねを披露して丹内刑事(竹中直人)が登場する。武警視総監(伊武雅刀)から直々に月子の極秘警護を命じられていたのである。

翌日のUIUはニンニク臭に満たされるのだった。柴山刑事(平山浩行)は辟易するのだった。

「どうして・・・丹内さんまで・・・」

「本当は・・・こわかったんですね・・・ドラキュラが・・・」

「文豪の真似してごまかさないでください」

ニンニクを食べたもの同志は匂わないわけだが・・・新人刑事・浜中彩乃(高月彩良)はアンドロイドなので嗅覚装置をオフにすることで対応しているのだった。

仕方なく、柴山刑事はギョーザを食べに行くのだった。

結局、犯人の目途がつかないまま、「ドラキュラ」は公演を実施することになる。

「ヒロイン女優の謎の死」によってチケットが完売したのだった。

「まったく・・・大衆ってやつは・・・」と嘆く丹内刑事だった。

「しかし・・・ヒロインはどうするんですか」

「彼女に決まったらしい」

最終リハーサルに登場したりえの代役を勤める女優・春川諒子(小沢真珠)は堂々とした演技を披露する。

「たった一日で・・・セリフも完璧なんて・・・」

「怪しすぎますね・・・」

その頃・・・鑑識課では非常事態が発生していた。

りえの死体が安置所から消失したのだった。

「月子さん・・・死体が・・・」

「吸血鬼に血を吸われたものは吸血鬼になる・・・常識じゃないの・・・なぜ、見張ってたなかったよ」

「やはりそこを・・・責められるんですね」

その頃、春川諒子の楽屋に死んだりえが現れるという事件が起っていた。

「それで・・・りえさんは・・・」

「部屋から出ていったの・・・」

しかし・・・りえの行方はそれきり知れなかった。

月子の部屋で最後の捜査会議をする月子と勝浦くん。

「やはり・・・吸血鬼のことがもう一つ実感できないわね」

「ですね」

「勝浦くん・・・ちょっと私の首に噛みついてみてくれる」

「その前に確かめたいんですが・・・都子ちゃんは帰って来ないんですよね」

「友達のところに泊まるって言ってた」

結局、月子は勝浦くんのことがちょっと好きになっていたらしい。

ついに・・・月子と結ばれる・・・わけもなく、帰宅する都子。

「ただいま」

「やっぱり」

「どうしたのよ」とちょっと残念そうな月子。

「友達、引越してた」

「うわあ」と叫ぶしかない勝浦くんだった。

「さあ・・・そろそろ・・・決着の時ね」

「これから・・・ですか・・・」

「うん・・・りえさんの死体は・・・ドラキュラの棺の中にあったから・・・」

「犯罪を未然に防げなかったのは残念です」

「都市伝説を解明するための尊い犠牲だったと思うしかないわ」

深夜の楽屋裏の倉庫に・・・篠原真央が現れる。

棺を開けると現れたのは・・・月子だった。

「やはり・・・あなたが犯人だったのね・・・元女優で・・・大河内さんの愛人の一人・・・真央さん」

「刑事さん・・・」

「あなたが犯人なのは・・・最初からわかってました・・・第一発見者ですから」

「・・・」

「でも・・・ドラキュラ犯人説のために・・・少し遠回りをしていたのです・・・計算外だったのは・・・りえさんが蘇生したことです。いいえ・・・りえさんは最初から死んでいなかった・・・仮死状態だったのに・・・みんながうっかり死んでいると思いこんでしまったのです」

「もう・・・警察としても・・・というよりドラマとして無理な展開よね」

「だから・・・この脚本家はゴールデンには進出できないのです」

「とにかく・・・蘇生したりえさんは朦朧とした意識で・・・劇場に戻り、犯人であるあなたを捜した。そして・・・見つけたあなたに・・・返り討ちにあった・・・」

「・・・」

「私は棺の中にりえさんの死体を発見しましたが・・・見ないフリをしました・・・そうすれば・・・あなたが確かめずにはいられなくなるからです」

「すべては・・・彼のためにやったことよ・・・あらかじめ・・・代役には脚本を渡しておいた・・・そしてりえを殺せば・・・チケットは売れる・・・満員で初日を迎えるためにはこれしかなかったの・・・」

「そこまで・・・あなたを狂わせる大河内さんは・・・ドラキュラ本人ではないにしても・・・チャームの能力を持っている一族の人なのですね」

「ふふふ・・・彼も私も・・・もはや・・・血が薄くなりすぎて人間そのものなのよ」

「そうか・・・彼はドラキュラの末裔・・・そしてあなたは女吸血鬼カーミラの末裔なのですね」

「その通り・・・だけど月子さん・・・残念だけど・・・私はただの愛に狂った人間の女として裁かれるしかないの・・・」

「残念です・・・」

丹内刑事と柴山刑事が物陰から姿を見せる。

「できたら・・・こちらの方に逮捕していただきたいわ」

真央は柴山を指名する。

「お二人は・・・ニンニク臭が強すぎる」

「ああ・・・」

そこへ・・・勝浦くんがやってくる。

「遅かったじゃない」

「ブレスケアを買ってました」

「勝浦くん・・・元気でね」

「え・・・」

「彼女には新しい任務があるらしい」と丹内刑事。

「月子さん・・・本当に月に帰るんですか」

「馬鹿ね・・・かぐや姫のミイラを捜しに中国に出張するのよ・・・」

「なんで・・・中国に・・・」

「戦後のドサクサにまぎれて流出したらしいわ・・・」

「ああ・・・」

その時、ハルキ(オダギリジョー)から着信がある。

「やあ・・・久しぶり・・・気をつけて・・・この件には米国CIAと中国虎機関が絡んでいるから・・・」

「ハルキくん・・・」

「月子さん・・・大丈夫なんですか」

「大丈夫・・・都市伝説の謎を解明するまで・・・私はけして死なないから」

「お帰りを待ってます」

お茶の間の一部熱狂的ファンの声を代弁する勝浦くんだった。

お早い帰還をお待ちしています。

都市伝説の種は尽きないし・・・基本なんでもありですから~。

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さて・・・この脚本家は今季、日テレでド深夜の「裁判長、お腹がすきました」もやっている。

ボケ弁護士、ツッコミ裁判長でお笑い裁判を展開しているわけだが、お約束のギャグは・・・弁護士「説明させてください」裁判長「許可します」・・・放送事故寸前の長い間があって「なんで説明しないの?」「え、いいんですか」「許可するって言ったでしょ」「すみません、清洲橋方面渋滞中って聴こえたものですから」「なんでここで交通情報を言う必要がある・・・」という一連の流れである。

この・・・過剰なボケと・・・ある程度付き合うツッコミが基本である。

そのまんま・・・ヒロイン月子はボケさせられているわけである。

もちろん・・・月子というキャラクターは基本、マイペースなので、ギリギリ成立するのだが・・・「テキサスで牛が大量出血死はドラキュラの仕業」は本来の月子の発言としては・・・おタク(知識と教養の探究的コレクター)的というよりはほら吹き(フィクション話芸のエンタティナー)のそれになっているのでアウトなのである。

しかし、まあ・・・面白ければそれでよいのが深夜番組の限界なんだな。

もはや、「ドラキュラが空腹、テキサスは田舎だから美人がいない、男より牛、ドラキュラがいっぱい」とアホな話で・・・勝浦くんを笑わせにかかっている小学生と化す月子なのである。

まあ、このノリが脚本家の真骨頂であることは一部のファンにとってはおなじみであるだろう。

さらに言うと・・・ボケたらない時は柴山刑事のツッコミが「そんなにたくさんドラキュラがいたら・・・柴咲コウとかも血を吸われていなければおかしい」とさらにボケるわけである。

それが楽しいのは・・・真夜中だけだということを恥ずかしながら申し上げておく。

できれば・・・ゴールデンでそれを為す技術を開発してもらいたいと考える。

まあ・・・そういうスターの器があれば問題ないわけですが。

しかし、こういうキャラをアイドル女優やアイドル俳優にやらせて成立するのは深夜放送か小劇団までだとキッドは考える。

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2013年11月22日 (金)

彼岸島ポン散歩(西井幸人)

小春日和が続いて・・・うっかり薄着をしていたらちょっと体が冷えたみたいでやや不調になっている。

そういう日は悪夢を見がちでこれが抜群に面白い。

ホラーなドラマより絶対に面白いのが困るんだよな。

今朝は下水道人のホラーを見た。

下水道にヌルヌルした人たちが棲息していてうっかりしていると背後からマンホールに引きずり込まれるのである。

そのこわさたるや・・・まあ、いいか。

「彼岸島」の前はオンエアで「亀田音楽専門学校」(Eテレ)を見る。木曜深夜が本放送で、水曜深夜が再放送である。

今回は「シンコペーション」である。中食いと頭食いとか・・・いわゆるリズムからはみ出していくメロディーの効用の話である。とにかく・・・シンコペーションを頭で覚えようとするのは難しい。もう体で覚えるしかないのだが・・・最後はやはり理論なんだよな。

早乗りでつんのめるのがかっこいいっていうのが本当に不思議なんだよなあ。

NHKのニュースでは「リベンジポルノ」の話題・・・きっかけはあの事件だろうがそこには言及しない。まあ・・・「愛」が流出する時代なんだな。

その間に・・・サッカー・ワールド・カップの顔ぶれを見る。1位スペイン、2位ドイツ、3位アルゼンチン、4位コロンビア、5位ベルギー、6位ウルグアイ、7位スイス、8位イタリア、オランダ、10位イングランド・・・と順当な顔ぶれが揃っている。敵地でベルギーを粉砕した44位日本がどこまでやるか・・・楽しみである。

・・・などとウダウダしていると・・・時間なのだった。

で、『彼岸島・第5回』(TBSテレビ201311220058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、友原我聞、演出・横井健司、総監修・三池崇史を見た。どこにあるか定かではない彼岸島に・・・東欧のヴァンパイアの一族が定住。神として島民に敬われてきた和の国日本の物語である。まあ、妖怪の軍事化は最近では「ドラキュラ戦記/キム・ニューマン」(1995年)が抜群だが・・・「ウルフガイ・シリーズ/平井和正」(1971年~)の狼男の血清注射による強化人間の軍事利用もいい味を出していたなあ。妖怪たちもうかうかしていられないのである。まあ「バイオハザード」シリーズみたいな人工妖怪となると本末転倒だけどな。ドラマ途中にドラキュラ伯爵に対する誹謗中傷があるが・・・無知蒙昧な人間のセリフなので深くは追求しないことにする。

涼子(水崎綾女)・・・登場なし。現在の消息は不明。

ユキ(山下リオ)・・・篤から・・・民俗学者の記録を渡され朗読する。昭和17年(1942年)、彼岸花の群生で知られる彼岸島出身兵士が・・・戦場で負傷した際に異常な不死身性を示したために、不死身人間の軍事化を目指した軍が彼岸島に秘密の研究施設を構築したことが判明する。吸血鬼だった神官一族は人体実験の対象となり・・・その唯一の生き残りが雅だったらしい。しかし、まだ不明の点が多いために一同は廃坑にある秘密基地の探索に向かう。昼間は亡者の生息地であるために・・・夜の間に侵入する一同。ケンとともに兵舎の捜索を担当したユキは秘密の地下室を発見するのだった。そこで・・・ミイラ化した兵士の死体を発見する一同は地下室で機密文書を捜索するが・・・亡者の接近に脱出を図る。しかし、出口は亡者によってふさがれ・・・ユキはポンの悲しい末路に遭遇する。

(佐藤めぐみ)・・・上陸後、姿を消したまま消息不明中。

(白石隼也)・・・研究施設では手術室周辺を西山とともに捜索。亡者化したポンに「人間のまま死にたいから殺してほしい」と懇願され、篤から丸太を受け取ってポンの顔面に突きだす。

(鈴木亮平)・・・研究室に一同を案内し、単独捜索。ユキの発見した地下室にも一番乗りを果たす。亡者に対する警戒を促すが、最後は丸太を明に渡す。

ケン(遠藤雄弥)・・・監禁されていたが、吸血される前に篤・明兄弟に救出され、「隠れ家」で待っていたユキと涙の再会を果たすと元気に吸血鬼退治に乗り出す。ものすごく物騒な場所でユキを一人にしたりして、盛り上げるためとはいえやや行き過ぎの行動をする。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。

ポン(西井幸人)・・・西山とケンカ別れして山中を彷徨っているが・・・すでに吸血病を発症している。突然、吸血鬼に襲われ血を吸われまくるのだった。ドラマ「鈴木先生」で同級生の妹の小学生とセックスしたり、イケメンぶって処女にこだわったりする中学生・勇気を演じたり、映画「告白」で幼女殺しの少年Aを演じたりした呪いにより、この悲惨な役柄をもらったのだろう。「助けて」と彼岸島の中心で親友の明の名を呼ぶが、吸血しない吸血鬼である亡者の群生と出会い、同化してしまう。その姿で仲間たちと再会、自分を憐れんで謎の液体を吹き出し明に浴びせかけたりする。

「ポン・・・」

「明・・・どうして・・・ボクだけこんな目にあわなきゃいけないの。うらめしいよ。くやしいよ。西山~」

「お前が勝手に・・・一人になったんだろう」

「誰も僕のことなんか・・・想ってくれやしない」

「そんなことない・・・ポン・・・俺はお前のことなんとかしてやりたいって思う」

「明・・・ほら・・・お前が話を作ってくれて・・・僕はマンガを描いただろう。ナンバーワンホストと口裂け女。ホストクラブで・・・優しくされて口裂け女は人間性を取り戻す話。最後にマスクをとってホストたちは怖れおののくけど・・・口裂け女はありがとうって言うんだ。その気持ちがどうしてもわからなかったんだ・・・けど・・・今はなんだか分かるような気がする」

「ポン・・・」

「殺してくれよ・・・明・・・このまま生きていたら・・・俺・・・きっとおかしくなっちまう」

「ポン・・・」

「ああ・・・また気が遠くなっていく・・・もう・・・マンガは描けない・・・」

亡者たちの蒼ざめた土気色の顔の中で・・・ポンも生気を失って行く。

その顔面に炸裂する・・・明の繰り出した丸太。

西山(阿部翔平)・・・今回も常にビビりまくる。しかし、自分では小心者でないことをアピールできていると思っているらしい。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・出番なし。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・神官の一族の中で一人生き残ったらしいことが回想シーンで示される。来週はいよいよその秘密が明らかになるようだ。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者だが出番なし。

ハゲ・・・山中でポンの血を吸う吸血鬼。お色気シーン不足なのでここは半裸の美人吸血鬼にしてほしかった。まあ・・・ポンの無残さを強調する演出としては理解できる。このハゲが橋本愛的な美少女だったらちょっと生きる希望もわいちゃうかもしれないし。

柳島(諏訪太郎)・・・戦時中、軍の命令で島に先行調査に来た民俗学者。回想シーンに登場。現在は消息不明。吸血鬼一族の存在を軍に報告したことによって悲劇が始るらしい。諏訪太郎と言えば「あまちゃん」の映画『潮騒のメモリー〜母娘の島〜』のプロデューサーの一人だが、最近は「放課後グルーヴ」でホームレス・ジョニー、「衝撃ゴウライガン!!」でホームレス・山下、「刑事のまなざし」でホームレス・コンと三作連続ホームレス役の快挙を成し遂げている・・・それは快挙なのか。

以上・・・今回も涼子と冷の生存は未確認。

ポンと明の訣別はそれなりに哀愁があったが・・・意味不明と言えば意味不明である。

まあ・・・描き込み不足ということですな。

ポンと明の友情の成立とか・・・二人で描いたマンガのアニメ化とかも・・・妄想的には欲しかったのです。

まあ・・・原作がギャグマンガだからな。

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2013年11月21日 (木)

私には見えるの(新垣結衣)最後はツイスター・ゲームだ(堺雅人)オードリー!(内田未来)

怒涛の展開である。

古美門と黛と安藤貴和のトライアングル。

古美門と黛と羽生のトライアングル。

古美門と服部と蘭丸のトライアングル。

そして、三つの裁判の同時進行。

それぞれの思惑が交錯して・・・なにがなにやらの一部お茶の間の空気は濃厚である。

おそろしい・・・「あまちゃん」は理解できず「ごちそうさん」なら分かる・・・一般大衆の世界。

「半沢直樹」は面白いと感じられるが「リーガルハイ」にはついていけない人々。

しかし・・・成功と失敗は紙一重なのである。

巨大地震の後に必ずある噴火によって・・・日本に新島が追加されたりもする。

そして・・・放射能廃棄物を安全に管理する場所など・・・この世の果てにもないのである。

だが・・・それでいいのだ。

一瞬でも「リーガルハイ」が面白ければそれで充分幸せな人生なのだから。

で、『リーガルハイ(第二期)・第7回』(フジテレビ20131120PM10~)脚本・古沢良太、演出・西坂瑞城を見た。天分と努力の話である。もちろん・・・努力ができるのも才能のひとつだという考え方もある。美人とそうでもない人がいれば美人はそれだけで悪であるという考え方もあるし、その悪によってそうでもない人の善意が試されるとも言える。複雑な関係は単純化を求められるし、どのような単純さも複雑なものを秘めている。つまり、リーガルハイは・・・古美門(堺雅人)と黛(新垣結衣)の愛の物語にすぎないという考え方もできるという話である。

黛がもしも・・・羽生(岡田将生)に抱かれそうになったら・・・きっとベッドから裸で飛び出して「先生~」と叫ぶのである。

古美門がいくら・・・他の女性にうつつを抜かそうとしても脳裏にはガニ股弁護士の姿が焼きついて離れないのだ。

服部がシャンパンタワーの前で「ケッ」と嘲笑するのは・・・そんな二人のラブコメ全般に対してなのである。服部は・・・古美門(父)のお庭番である。一度、結婚に失敗して・・・後継者を得ていない古美門家としては・・・それなりに知性的で・・・あふれんばかりの体力を持つ黛は後妻候補ナンバーワンなのである。服部-古美門(父)はそのラインに沿ってお膳立てをしているに違いない。つまり・・・羽生はそのためのあて馬なのである。

少なくとも・・・キッドはその線で・・・予断を許さないこの物語をシンプルに考えることにしています。

NEXUS Law Firmの真知子とスリーサイズ審査

・・・弁護士・黛真知子・・・

「NEXUS」、二人目の女性弁護士。

社会正義の使命に燃え、法律家を目指す。

悪徳弁護士Kのもとで数々の訴訟を担当し、勝訴の原動力となる。

天性の明るさや正義感を持つ勝利の女神。

「誰もが幸せになれる社会」実現するという、「NEXUS」の理念に共感し、理想の弁護士活動を目指す。

「砂漠を旅するのに何よりも大切なことは最高の駱駝を得ることです」

・・・と羽生に駱駝にたとえられた黛は新天地で・・・張りきるのだった。

しかし・・・本心は・・・古美門のことが心配で心配で仕方ないのである。

そのためにこっそりと古美門事務所を覗きに行くのだった。

草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)はそんな黛を見逃さない。

「何してるの」

「・・・」

「古美門先生なら・・・新しい助手の選考に悩んでいるよ」

黛の心に疼く「やはり・・・私がついていないとダメなんじゃない・・・」という恋心。

だが・・・多くのピチピチギャル(気谷ゆみか・柳いろは・井澤エイミー・青山めぐ・杉浦亜衣・田辺岬・中山未希・山本綾美・鈴木涼子・夏月)に囲まれて「スリーサイズ」を審査中の古美門の浮かれまくる姿を目撃して唖然とするのだった。

嫉妬のあまりに逆上し黛のATフィールド(心の防御バリア)は全開となるのだった。

そして・・・古美門は水着を頭にかぶるのである。

しかし・・・古美門は単に浮かれているわけではない・・・蘭丸に黛の動向を探らせていたのである。古美門の「黛真知子・育成ゲーム」は新たなる段階に突入したのであった。

アニメ裁判第一回口頭弁論期日

どこにでもいる普通の女の子・花ちゃんが、隣のコンビニでお菓子を買った帰りに、摩訶不思議な大冒険をする劇場アニメ「コンビニ帰りの花ちゃん」などの大ヒットで知られる「アニメ制作会社「スタジオ・ジ・・・小春日和」で働いていたアニメーター穂積孝(近藤公園)は劣悪な環境と常軌を逸した労働時間、低賃金、そしてスタッフに非人道的な仕打ちを繰り返された、と会社の代表であり天才と称賛される監督の宮・・・宇都宮仁平(伊東四朗)を訴える。

「監督に罵倒された穂積さんは・・・心神喪失状態となり・・・青函トンネルを徒歩で横断中に流氷をみたいとつぶやいているところを保護されたのです・・・彼をここまで追い込んだ宇都宮氏に謝罪と慰謝料を請求するものです」と原告の代理人となった黛。

受けて立つ被告側代理人は・・・古美門だった。

「天才の仕事を常識で測っていいものでしょうか。この世に素晴らしいものを生み出すためにはそれ相応の苦難が伴うはずです。宇都宮監督はその実践をしているのに過ぎない。ピカソやゴッホが世俗的な常識に縛られていたとしたら・・・私たちは彼らの芸術を鑑賞できなかったことでしょう。芸術作品の創造にはそうした常識を越えた領域が確かに存在します。才能なきものがそれを疎外することこそ、悪と言えましょう。才能なきものは去れ・・・ただそれだけのことです。原告の請求はすべて拒否します」

こうして・・・古美門・黛は・・・仁義なき師弟対決に突入したのだった。

ハダカ裁判原告本人尋問と水着審査

しかし・・・ポスト黛の水着審査を終えた古美門は・・・黛がアシストする本田ジェーン(黒木華)の案件にも敵対するのだった。

敬虔なクリスチャンである原告の大石香苗(伊勢志摩)が礼拝のために教会に向かう途中、自宅の窓越しに被告の郷田氏(橋本じゅん)に全裸を見せつけられ精神的苦痛を味わったことによる慰謝料請求の訴訟である。

本田ジェーンは・・・被告の郷田氏は露出狂であり、大石香苗が性的いやがらせの対象になったと主張する。

しかし・・・古美門は「自宅は人間が最もくつろげる場所です・・・そこで郷田氏は全裸でくつろいでいただけだ・・・何故、それが罪になるのでしょう」

「しかし・・・人前で裸をさらすのは公序良俗に反するのでは」

「その時は・・・日曜日の早朝で・・・窓は路地裏に開かれていた・・・郷田氏はよもや人目があるとはおもわなかったのです」

「けれど・・・彼は・・・私におぞましいものをみせつけたのです」

「おぞましい・・・神が人間に授けたもうたもののどこがおぞましいのでしょうか。香苗さん・・・あなたは男性のイチモツをはじめてごらんになったのですか」

「異議あり・・・質問は本件とは関係ありません」

「それでは言い方を替えましょう。おちんちんを見たのは生まれて初めてですか」

「異議あり・・・被告弁護人は法廷にふさわしくない発言をしています」

「どこがふさわしくありませんか」

「おちんちんがです・・・他に言い方があるはずです。ペニスとか男性器とか陰茎とかいろいろとあるでしょう・・・倅とか息子とかへのことか魔羅とか肉棒とか・・・」と挑発に乗って期せずして乙女が言ってはいけないいやらしい言葉をまくし立てる黛。

「黛ちゃん・・・段々、えぐくなっているよ」と蒼ざめるジェーン・本田だった。

一部お茶の間熱狂である。かわいいよ、ガッキーかわいいよなのだった。

チンコンカンコンと教会の鐘はなるのだった。

インコ裁判とおもてなし審査

だが・・・古美門の教育的指導は容赦なく続くのだった。黛のアシストする磯貝弁護士(古舘寛治)の案件にも対抗する古美門である。それはチン・・・インコを巡る案件だった。

喫茶店経営者の平野氏(松嶋亮太)が・・・娘・里香ちゃんとともに飼育するオカメインコのオードリーの所有権をめぐって元の飼い主のラーメン店経営の渡辺氏が争う裁判である。ちなみに里香ちゃんを演じる内田未来は「梅ちゃん先生」で梅子の幼少期を演じている。「オードリー」が堺雅人が出演した朝ドラマのタイトルであることは言うまでもないだろう。「あまちゃん」の花巻さん(伊勢志摩)からの「オードリー」、「ちび梅ちゃん」の朝ドラマ三連打である。

磯貝はオードリーはすでに平野氏のものだと主張し、古美門はインコはオードリーではなくピースケであり、渡辺氏のものだと主張する。

鳥類学の権威・鳥羽(高橋修)lを証人として招いた古美門は・・・オードリーとピースケが同一のインコであることの専門家の確証を得ることに成功する。

「オードリーはピースケに違いありません」

反証を試みた磯貝は同一でない鳥を同一でないと否定されてしまうのであった。

「それは別の鳥ですね」

「この鳥は違うとおっしゃるのですか」

「一目見ればわかる・・・専門家を愚弄するのか」

「一体どこが・・・」

「顔ですよ・・・鳥にだってそれぞれ違う顔があるんだ・・・人間の顔と一緒です・・・右の鳥は人間で言えば泉ピン子、左の鳥は上戸彩です」

絶句する磯貝だった。

ポスト黛の審査はおもてなし段階に突入。

美女たちにもてなされて得意満面の古美門を・・・服部は影で嘲笑する。

古美門がその他大勢の美女たちに虚勢を張っても・・・心の底から愛している黛に対しては指一本触れる度胸が無いことを知っているからである。

痴話喧嘩と死刑囚(前篇)

「なんで私の行く先々に現れるんですか・・・ストーカーですか」

「それはこっちのセリフだ」

「そんなに私のことが気になるんですか」

「私は追い出された事務所をこそこそ覗きにきて大根を投げつけるような真似はしなあいっ」

「ちょっとあんたたち・・・いい加減にしなさいよ・・・ここに死刑囚がいるんだから・・・」

「あ・・・すみません・・・それで弁護のことなんですけど」

「お前はクビだ・・・」

「いくらなんでもこの裁判は先生一人では無理です」

「できるもーん。一人でできるもーん」

「じゃ・・・こうしたらどう、幼稚園児が横分け小僧に・・・一勝でもしたらってことで・・・」

「私は・・・そういうギャンブルみたいなことは・・・」

「勝つ可能性がゼロなのに・・・ギャンブルもクソもあるか・・・」

「やってみなけりゃわかりませんっ」

安藤貴和(小雪)は微笑んでアイスコーヒーにロイヤル・ミルクを注ぐのだった。

ハダカ裁判の意外な決着(黛一敗目)

郷田氏が会社の宴会の野球拳で勝ったのに脱ぐという露出癖があったことを証人の同僚女性社員(下宮里穂子・・・「平清盛」の源義朝の側室・波多野通子)から聞きだすジェーン。

しかし・・・古美門はゆるぎなく反対尋問にとりかかる。

「あなたが・・・郷田さんの裸を見たのは何回ですか」

「少なくとも・・・一回は・・・」

「一回・・・酒の席での無礼講でたった一回破目をはずしただけで・・・全裸さんと仇名までつけられる・・・さらには露出狂の汚名まで・・・もはやこれは一種の苛めといえるのではないでしょうか」

黛は一矢報いるべく・・・近所の住民の証言をとりあげる。

「郷田さんは・・・毎日決まった時間に窓を開けていました。それは香苗さんが通りかかる時間です。つまり、郷田さんは計画的に全裸になっていたのです。性癖は人それぞれです・・・しかし、それで誰かを傷つけるようなことがあれば・・・それは犯罪です。郷田さんは当然、慰謝料を支払うべきです」

しかし・・・古美門は・・・原告への尋問を再開するのだった。

「香苗さん・・・あなたの趣味は映画観賞ですね」

「え・・・」

「あなたが最近借りたDVD12本のうち・・・11本の映画には男性の裸体が登場します」

蒼ざめる香苗だった。

「ラストタンゴ・イン・パリのだらしないマーロン・ブランド、氷の微笑のひきしまったマイケル・ダグラス・・・分かる人には分かりますよね・・・あなたのお好みはどちらですか」

「・・・」

「いいのです・・・男性の裸が好きなのは・・・別に恥じることではありません」

「・・・」

「あなたは・・・なぜ・・・路地裏を通ったのです・・・教会まで遠回りなのに・・・」

「それは・・・静かでいい道だから」

「それなら・・・遅刻しないように少し早く家を出るべきでは?」

「・・・」

「あなたは・・・いつも教会に遅刻していましたよね・・・それはあの時間に郷田さんの家の前を通るためですよね・・・あなたは・・・郷田さんの裸を楽しみにしていたんだ」

「ちがいます」

「見せたい人と見たい人・・・需要と供給は一致していた・・・しかし、あの日、あなたは郷田さんと目があってしまった・・・あわてたあなたは・・・被害者を装ったんだ」

図星であったのでうなだれてしまう・・・原告だった。

意外な真相に唖然とする黛。

インコ裁判の邪悪な結末(黛二敗目)

「民法大195条によれば家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。つまり、動物の占有による権利の取得が認められています」と正論をぶちかます黛弁護士。

しかし、古美門はニヤニヤしながら反論するのだった。

「平野さん・・・あなたはインコが最初は言葉を知らなかった・・・そう言いましたね」

「そうです・・・家族・・・とくに娘の里香が一生懸命に言葉を教えました」

「それは嘘でしょう・・・オードリーは最初から言葉を話すインコだった。そしてあなたはそれを喫茶店の宣伝に利用しようとした」

「そんなことはありません・・・」

「それでは証拠をおめにかけましょう」

古美門はラーメン屋の渡辺氏に・・・オードリー/ピースケに話しかけるように命じる。

自信なさげに話しかける渡辺氏・・・。

「ピースケ、ピーちゃん、こんにちわ・・・」

「・・・」

「やっぱり無理だよ・・・こん畜生め」

「コンチクショウメ」

「あ・・・俺の口癖」

「平野さん・・・あなたはコンチクショウメも教えましたか」

「いえ・・・」

「ピースケは飼い主の口癖を知らず知らずに覚えていた・・・このことがピースケと渡辺さんの愛の絆を示していることは疑いようもありません。

実際は・・・草の者蘭丸がこっそりと「コンチクショウメ」と雨の日も風の日もインコに囁き続けた成果だった。

判決は・・・インコの返却と決まった。

羽生、ジェーン、磯貝は黛を元気づける。

「ラブ&ピースで和解を目指しましょう」

「ぬるいっ・・・」と立ち上がり、弾みで磯貝の股間にチーンとひじ打ちをヒットさせる黛。

「そんなこと言ってるから・・・いつもいつもあいつに負けるのよ」

アニメ裁判も旗色悪し

原告側証人として呼ばれる「スタジオ小春日和」のアニメーター福田(中島愛子)。

「先生は・・・ストレスがたまると弟子をいじめるのです。同じシーンを何度も何度も描きなおさせて・・・すぐに才能がないからやめちまえと暴言を吐きます」

しかし、古美門は一枚の珍妙な生物の絵を取り出す。

「これはあなたの描いた原画ですね・・・これはひょっとして・・・猫ですか・・・」

「タヌキです」

「才能ないからや・め・ち・ま・え」

「ひーっ」

「宇都宮先生でなくても誰もがあなたには才能がないと思いますよ。その中で先生は本当のことを言ってあなたに実力を悟らせようとした。スポンサーのコネで入社したあなたは女の子がお花畑でかけまわるようなアニメの作者自身もお花畑でかけまわっているという貧弱な空想力しか持たないが現実は違う。観客に感動を与えるような作品の作り手の多くは命を削りすべてをそそぎこんで血と涙と汗の結晶を生み出す。ほどほどの努力とそこそこの頑張りで実力以上の多くのものを望むゆとり世代こそが諸悪の根源なのだ。ゆとりなんてくそくらえだ」

「うえーん」

お尻ペンペンで挑発する古美門。エア浣腸で応戦する黛だった。

毒素的に似たもの師弟である。

痴話喧嘩と死刑囚(中篇)

「何もあそこまですることないじゃないですか」

「ろくでもない証人を引っ張り出してくるから叩いたまでだ」

「インコだってどうせ汚い手を使ったんでしょう」

「そう思うなら、なぜ重要な証拠物件を野放しにしていた」

「・・・男性恐怖症の香苗さんにあんな恥をかかせる必要があったんですか」

「依頼人の心に隠された本質を・・・君はなぜ見落としたのかね」

「・・・」

「はいはい・・・そこまで。横分け小僧は今日は帰りなさい」

「え・・・」

「今日はガールズトークをしたい気分なの」

「そんなあ・・・」

「幼稚園児・・・暗いわよ」

「やはり・・・私は古美門先生の足元にもおよびません・・・古美門先生に才能がないからやめちまえって言われているような気がします」

「私はそうは思わないな・・・」

「え・・・」

「古美門はこわいのよ・・・一人で戦うのが・・・だからあなたに目覚めてほしくて・・・わざと辛くあたっているんだと思うな・・・」

「そうでしょうか・・・」

「そうに決まってるわよ・・・とっとと覚醒して古美門をやっつけちゃいなさい」

「はいっ」

「よし」

謎めいた眼差しでマティーニのグラスを掲げる死刑囚だった。

アニメ裁判の師匠と弟子の宿命の結末

「私・・・どうしても勝ちたいの」

「安心したまえ・・・君と僕が手を組めば最強だ・・・それに敵の奥の手は封じた」

羽生はついに本領を発揮し・・・蘭丸を押し倒したのだった。

つまり・・・羽生は何を隠そうソドムの世界の住人なのだった。おいっ。

蘭丸の裏切りに激怒で微笑む古美門。

「この裏切りもの」

「でも・・・あいつに今回は動くなっていわれると・・・もう動けないんだよね」

「なんの話だ」

「為すがままなのですな」

「服部さん、この裏切りものは当分兵糧攻めにします」

「性欲と食欲のどちらが勝つか・・・興味深い実験です・・・」

「ああーん、そんなのひどーい」

「こうなれば・・・素手と素手の殴り合いですな」

「望むところだ」

「宇都宮先生のお立場は分かっています。先生は・・・腰痛、腱鞘炎、激しいストレスによる慢性的な内臓疾患などで体力、気力ともに限界に近付いている」と原告尋問で激しく迫る黛。

「そして・・・何よりもアニメ制作会社の経営者として・・・後継者の人材不足に悩まされている。だから・・・これはと思う人に目をつけると過剰に期待して過酷な要求をする。現に・・・先生にいびられて会社をやめたアニメーターは別会社でロボットアニメに新機軸をもたらして大ヒットを飛ばしたり、独立して自社制作して外国の映画賞を獲得するような芸術性の高い作品を生み出したりしている。つまり・・・宇都宮チルドレンです。これは先生の功績とも言えますが・・・せっかくの逸材を放逐したのでは意味がありません。宇都宮先生、人は誰もが強くはないのです・・・せっかくの逸材をみすみすつぶしてしまうより、少し、ご配慮願い、人材育成という観点から先生ご自身が反省するべきではないでしょうか・・・描くことに才能があった若者を描けなくしてしまったことについて謝罪することこそ、その一歩になるはずです・・・世の中には誉められてのびる子もいるって話なんです」

黛の言葉に逆に心を撃たれる・・・弟子の穂積・・・。

師の愛の鞭と己のいたらなさに思い当ったらしい。

「もう・・・いいです・・・もう・・・裁判は・・・」

「でも・・・せっかくだから・・・先生の言葉を待ちましょう・・・」と穂積を励ます黛。

「謝罪する必要はまったくありません」と古美門。

しかし・・・宇都宮は語りかける。

「私は・・・才能などと言うものを認めない。彼を含めて才能のあるものになどあったことはない。私自身も描いて描いて描きぬいて・・・ただ・・・ここまでやってきただけだ。鉛筆を削り、描いて、また鉛筆を削る。その鉛筆はどんどん短くなっていく。それが今の私だ。そんな私が・・・なぜ・・・なまけて途中で投げ出したものに・・・あやまる必要がある。私より体力も時間もあるやつに私が言いたいことはただ一つだ。それをくれ・・・私にくれ・・・いらないならよこせ・・・私にはまだまだ描きたいことが山ほどあるんだから」

「先生・・・もういいです・・・ゆとりなんて・・・あんたら大人が子供の俺たちにしたことじゃないか・・・悪いのはゆとりじゃなくて・・・ゆとりにしたやつらだろう・・・でもな・・・ゆとりなめんなよ・・・あんたなんか・・・すぐにおいぬいてやる・・・あんたのアニメなんか・・・もう古いんだよお」

甘えながら叫びながら穂積は猛烈に描き始めるのだった・・・それはアニメのキャラクターと戯れる慈父のような恩師の姿だった。

宇都宮は古美門と視線を交わすと静かに法廷を去っていく。

粛然とする法廷。

痴話喧嘩と死刑囚(後篇)

「結局、また負けてしまいました」

「私はそう思わないな」

「何故です」

「横分け小僧が姿を見せないでしょう」

「・・・」

「それは恥ずかしいからよ・・・」

「恥ずかしい・・・何が」

「あなたのことをあきらめることもできず・・・忘れ去ることもできない自分の女々しさによ」

「何の話ですか・・・」

「幼稚園児には難しかったわね・・・とにかく・・・あなたには引き続き・・・私の弁護を頼むことにするわ」

「ありがとうございます」

傷ついたのは誰の心的エヒローグ

結局、ピースケは渡辺氏のラーメン屋では「コンチクショウメ」しかしゃべらず、もてあました渡辺氏は平野氏にインコを譲渡するのだった。

いずれにしろ、飲食店はインコなんて飼っちゃダメだろうとキッドは思う。

鳥インフルエンザになったら処分することになるんだからな。

全裸さんと裸が好きなクリスチャンは新たな愛の世界に一歩を踏み出すのだった。じゅんと志摩の世界だから・・・なんでもありなのだった。

「惜しかったね・・・もう一歩だった」

「そうなのよね・・・私にも古美門先生がちびまる子ちゃんのように蒼ざめていたことがわかったわ。線が三本ささーっと入ってた。私には古美門先生のことなんてお見通しなんだから。古美門先生はなんてったって古美門先生だし古美門先生なんだもの・・・」

黛には自覚がなかったが・・・羽生には黛の心が自分にはなく古美門にあることが痛烈に伝わるのだった。

「助手の審査結果はいかがですか・・・」

「全員、不合格です」

庭で夜空を眺めて服部に告げる古美門。

「先生のお心は・・・黛先生に旅をさせて・・・鍛えるところにあると思いますが・・・旅先が気に入って永住なされることになったら・・・どうなさるのです」

「それは・・・あいつがそれだけのタマだったということでしょう・・・」

「・・・」

「服部さん・・・助手の審査ですが・・・やっぱり一番おっぱい大きい娘をキープでっ」

次回は・・・前シリーズの犬神家の一族風に対応する北の国から風の匂いがします。

キッドの中では早くも笑う準備が整いつつあります。

リーガルハイ最高じゃねっ。

関連するキッドのブログ→第6話のレビュー

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2013年11月20日 (水)

薔薇の憂鬱と憂鬱な薔薇とでは薔薇の憂鬱が好きだがどっちにしても鬱陶しいことは鬱陶しいのだ(中村優子)

ワープロを使い始めた時に思ったことを思い出す。

自分は何のために漢字を覚えて来たのかと・・・。

しかし・・・脳細胞の発達段階にあってそれなりの好影響があったと信じていることにしている。

それに・・・薔薇とか鬱陶しいとか・・・ちゃんと書けるようになったかというとそうでもなかったからな。

薔薇とか鬱陶しいとかはいつも辞書を引いて書いていたしな。

時々、自分の名前以外・・・自筆していないのを思い出す。

もう・・・いろいろな漢字が書けなくなっているに違いない。

まあ・・・いいか・・・書かないしな。

でも、明日コンピューターがこの世から消失したら・・・うわぁ・・・と叫ぶにちがいない。

で、『・第5回』(TBSテレビ201311190028~)脚本・演出・三木聡を見た。さて・・・期待とはうらはらに・・・なかなか・・・凄い美少女が出てこないわけだが・・・キャスティング的には消ノ原町役場職員・今村ぬえ役で三浦透子(17)が登場する。田中麗奈に次ぐ二代目なっちゃんだ。なっちゃんはこの後、③星井七瀬→④堀北真希→⑤星羅→⑥桜庭ななみ→⑦三吉彩花となっている。三浦透子はドラマ「鈴木先生」(テレビ東京)では給食の酢豚が大好物な樺山あきらをワイルドに演じていた。なっちゃんの採用基準がよくわからないことについてのひとつのラインと言える。

上間美緒のナレーションで軽快に始るこのドラマだが・・・話は少しも軽快には進まないのである。

だが・・・もちろん・・・それでいいのだ。

あえて・・・言うなら・・・レビューなんかしないで・・・もっとのんびり見たいぐらいである。

しかし、レビューしないと「カバ」の登場なんて見逃すよな。・・・まあね。

「三貴子の泉」の秘密を真夜中に探っていたインタビュアー青沼(中丸雄一)とゲビヤマくんこと下日山(木村文乃)は・・・「三貴子の泉」の管理人・甘粕真一(眞島秀和)に発見されてしまうのだった。

「何をしているんですか」

「・・・」

「せっかくなので・・・お見せしたいものがあります」

「・・・」

「これです」

甘粕はあっさり・・・「三貴子の泉」が機械仕掛けであることを示す施設を二人に公開するのだった。

「つまり・・・間欠泉ではないと・・・」

「温泉ではなくて・・・泉ですから・・・泉が間欠的に噴き出すところが奇跡っぽいわけです」

「そのあたりのこと・・・間欠泉を知らない人にはまったく伝わってないですよね」

「とにかく・・・三貴子の泉は機械仕掛けの噴水なのです」

「・・・」

「だからといって・・・泉の水の奇跡が減ずるわけではありません。成分の神秘性に何の問題もありません」

「噴水だけど・・・水道水ではないとおっしゃる」

「あくまで自然の湧水です」

「なるほど」

「しかし・・・泉の神秘を悪用するものがいるのも事実です」

「黒曲亜理里(松重豊)さんとか・・・?」

「彼もその一人です。彼は前の消ノ原町長と結託してパワースポットとして売り出した・・・結果、神秘の泉は・・・金を生み出す泉にもなった」

「つまり・・・聖なる神秘の泉と邪悪な金儲けの泉・・・三貴子の泉は両面あるわけですね」

「・・・」

「あなたは・・・どうしたいんですか」

「私はただ・・・泉の神秘を守りたい・・・ただそれだけですよ・・・お分かりでしょう・・・」

「・・・」

「青沼さん・・・気をつけてください・・・この町にはもう一人いますから」

「もう一人いる・・・ですか」

阿波島翠(廣井ゆう)の娘・彩(廣井ゆう・二役)が・・・。

逃げ出した天狗野郎(森下能幸)が・・・。

「もう一人いるから」と注意を促すのだった。

賽の河原町の温泉宿「猫旅館」で小説家・白川(中丸雄一・二役)に戻ったインタビュアーは・・・そのフレーズの虜になる。そして「もう一人いる」という言葉を原稿用紙に書きまくるのだった。

「All work and no Play makes Jack a dull boy・・・働きづくめで遊べない・・・ジャックはおかしくなっちまう」

「ジャック・ニコルソン」

「なんですか・・・それ」

「1980年の映画『シャイニング』でおつむのねじがこりゃまたバッチリ狂ってるジャックがタイプライターで書き続けるんです・・・」

「ジャックの奥さん役のシェリー・デュバルは映画『ポパイ』(1980年)でオリーブ・オイルも演じているんですよ」

脱線していく「猫旅館」の女将の櫻井野薔薇(ふせえり)と番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)だった。

「ポ~パ~イ」

「オリーブ、おう。なんてこったい」

「ポパイはロビン・ウィリアムズか・・・」

中丸雄一(30)や木村文乃(26)の生まれる前の話である。

ジェネレーション・ギャップを埋めるために・・・「憂鬱の鬱の字」をみんなで書くという世代を越えた展開に持ち込む番頭さんだった。

「林の中で缶蹴って、ワッと逃げたら米印、落し穴、ヒーと叫んで散々でした」

「それはキッドだな」

「キッドだね」

とにかく・・・書に飽きた二人は・・・もう一人を求めて町へ出るのだった。

「もう一人っていうことは・・・真壁真奈美ですかね」

「それなら・・・いた、だろう」

「死んでますからね」

「ここはやはり・・・水道屋だな」

「はあ?」

「こんな小さな町だ・・・業者なんて限られているはずだ」

二人は消ノ原町役場で・・・町内の水道業者を調べるのだった。

職員の今村ぬえ(三浦透子)はなっちゃんなのにそれほど爆発的な人気者ではない自分に追い詰められたような朗らかさで対応するのだった。

「あははは・・・水道屋さんですかあ・・・あははは・・・えっとお・・・それはあ・・・真壁水道設備ですね・・・あはははははははははははははは」

「真壁か・・・」

「真壁ですね」

「あはははははははははははははははははは」

不気味な笑顔を残して、真壁水道設備を訪ねるインタビュアーとゲビヤマくん。

しかし・・・その住所にあったのは・・・空き地だった。

しかも・・・空き地の隣は消防団の川本(少路勇介)の家だった。

そして・・・川本の妻・桃(小林きな子)はピンク愛好家だった。

「そうねえ・・・大したことは知らないけど・・・真壁水道設備は真奈美さんの父親の会社でねえ・・・真奈美さんは婿養子もらってねえ・・・だけど離婚しちゃってねえ・・・なにしろ、真奈美さんはねえ。男出入りが激しくてねえ。町中兄弟だらけなんて噂でねえ。それで火事で全焼しちゃってねえ」

「火事・・・放火ですか」

「さあ・・・ねえ」

二人が去ると・・・川本夫人は夫を折檻するのだった。

「不用意に関わりやがって・・・あの事がバレたら終りなんだよ」

まあ・・・最終回まではなんやかんや続けないとねえ。

二人は・・・ついでに消防団で・・・笹川(三島ゆたか)や花谷(裵ジョンミョン)にも探り入れる。

「真壁真奈美の浮気相手・・・そりゃ・・・一杯いたからねえ」

「そんなに・・・」

「俺だって・・・花谷だって・・・なあ」

「・・・」

「その中で特別な人がいるなんて・・・男の口からはいえませんよね」

「そうだな・・・まあ・・・真壁真奈美の勤めていた信用金庫の支店長なんて・・・特別なんじゃない」

「ああ・・・職場ってことですね」

「そう・・・職場ってこと」

しかし・・・支店長は「特別な日」なので「ノーリターン」なのであった。

通りかかった消ノ原食堂「モアイ」店員・川島芳香(町田マリー)が「特別な日」をレクチャーしてくれるのだった。

「ヘリコプターよ」

「ヘリコプター?」

「イロコイよ」

「イロコイ?」

Uh1 「ああ・・・ベル・エアクラフト社のヘリコプターUH-1Iroquoisですか」

「そうよお・・・愛称・ヒューイよお」

「つまり・・・色恋ということですね」

「そうよお。ベトナム戦争で大活躍よお。知ってる?・・・1979年の映画『地獄の黙示録』よお。ワーグナーの『ヴァルキューレの騎行』に乗ってベトコンを殺戮しまくるのよお。すごく盛り上がるのよお」

「UH-1Iroquoisは基本的に兵員輸送ヘリですよね」

Ah1 「そうねえ、攻撃ヘリならAH-1 Cobraよねえ。プラモデル作るならやはり、通称ヒューイ・コブラよねえ。武装がむき出しでたくましい感じがそそるわよねえ。もう荒々しくて皆殺しって感じよねえ」

「で・・・真壁真奈美は・・・色恋沙汰がすごかったと・・・」

「そうよ・・・三角関係、不倫、ダブル不倫、トライアングル不倫、略奪愛なんて当たり前、色恋ならおまかせのコンビニ女だったのよお」

「つまり・・・」

「男好きのする女だってことよお・・・」

「それで・・・特別な日とは・・・」

「それは・・・支店長が・・・化野の森でデートする日ってこと」

二人はさっそく・・・覗きに出かけるのだった。

藪蚊対策もバッチリなゲビヤマくんだったが・・・インタビュアーはおでこを蚊に食われるのだった。

消ノ原信用金庫三貴子支店の支店長(村杉蝉之介)は元信用金庫職員でぬえの姉・今村のえ(山田真歩)と不倫関係にあったらしい。

「いつまで待たせる気なの・・・」

「こういうのは時期っていうものがあるだろう・・・あまちゃんだってウニをとるまでは大変だっただろう」

「だから・・・いつなのよ」

「一年・・・いや・・・半年の辛抱さ」

「半年・・・半年って・・・もう五年たってんじゃねえか、この野郎」

愛の交歓は・・・たちまち制裁の修羅場と化すのだった。

「愛人の制裁・・・こわいな」

「正妻の制裁もこわそうですけどね」

「そんなセリフなかっただろう」

「変換ミスのついでに言ってみました」

翌日・・・首を痛めたらしい支店長を急襲する二人。

「ムチウチですか」

「まあ・・・」

「ヒビキの時もしてませんでしたか・・・首にギブス」

「腰とかもね・・・」

「痛めつけたいタイプなんですかねえ」

「そんなこと・・・知らない」

「で・・・真奈美さんは横領ですよね」

「どうして・・・それを・・・」

「まあ・・・蛇の道は蛇ってやつですよ・・・しかし、不倫相手のあなたにはおとがめなしで・・・責任とらされたのは・・・前の支店長で・・・それはあなたに強いバックがあったから・・・」

「何が言いたいんだ」

冷や汗が滝のように流れる支店長だった。

「最後に一つ・・・真壁水道設備の火事は・・・放火だったんですか・・・」

「知らんね・・・知りたかったら・・・当時、調査していた駐在さんに聞くといい・・・この町にはもういないが・・・小磯という男だ」

信用金庫を後にした二人は近所の学校の運動場で一時の休憩時間を過ごす。

変な犬のオブジェをバックになんだかんだ運動している小中高の学生たち。

ゲビヤマくんは低いハードルを越えてよろけてちょっとした股間サービスもするのだった。

「男好きの女ってどうなんですかね」

「どうなんだろうね」

「私はどうですか・・・男好きしますか」

「そんなこと・・・今はわからないよ」

「今は・・・ですか」

何やらいいようにとったらしいゲビヤマくんはその後、インタビュアーに甘え始めるのだった。

もう少しだ。もう少しで・・・かわいいよ、ゲビヤマくんかわいいよがもらえそうだ。

誰が・・・くれるんだよ。

やがて・・・二人はラインを越えるようなバスに揺られるのだった。

そして・・・両親が揃って兄弟姉妹だから・・・医師で消ノ原町の町長・里美(外波山文明)に瓜二つの小磯に出会うのだった。

「放火かどうかって・・・私は放火だとにらんだが・・・いつの間にか、放火ではないことになっていた」

「真壁真奈美さんが殺されたのは放火の前ですか・・・それとも後?」

「殺された・・・何を言ってるんだ・・・真壁真奈美は生きてるぞ」

「!」

衝撃の事実に驚嘆する二人だった。

「でも・・・ここに・・・」

「どうして・・・素晴らしいインターネットの世界の情報をうのみにするんだ・・・みんなあることないこと書いてるだけなのに・・・」

「・・・ああ」

「本人に悪気はなくたってうっかりとか、さっぱりとかいろいろ間違うことだってあるんじゃないのか」

「しかし・・・」

「前にも同じこと言ってきた人いたぞ・・・」

二人は名刺を示される。

名刺の住所を頼り、波打際に来た二人は・・・フリーライターの土肥原ゲットー(手塚とおる)と面会する。

Tenguget 「天狗野郎さんじゃないですよね」

「よく見てくれ・・・全然、別人だから」

「まあ・・・そうですね」

「まあ・・・存在感的にそうなのかもね」

「ですね・・・」

「それで・・・本当に真壁真奈美は生きているんですか・・・」

「生きてるよ・・・嘘だと思ったら・・・その目で確かめるといい」

こうして・・・犬吠市に住むという真壁真奈美を訪ねる二人。

呼び鈴を押したゲビヤマくんは・・・時と場所と場合を選ばず・・・インタビュアーにしなだれかかるのだが・・・「真実には興味がない」はずだったインタビュアーも・・・さすがに・・・何も信じられない心境に陥りはじめているのだった。

そして・・・うらぶれた集合住宅から・・・真壁真奈美(中村優子)が現れる・・・。

関連するキッドのブログ→第4話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の変身インタビュアーの憂鬱

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2013年11月19日 (火)

先に死んだら後々あることないこと言われるのでごぜえやす(綾瀬はるか)

まあ・・・人間はダメ人間を愛するのだな。

そして・・・ダメ人間を崇めたてまつるさらにダメ人間がいて・・・「文豪」などというものが完成するのである。

そういう流れを悪魔はけして嫌いではないのだった。

しかしだ・・・明治という恐ろしくエネルギッシュな時代を「そこ」で描かなくてもいいのではないかと思う。

もちろん・・・どんな時代にも落ちこぼれはいる。

薄氷を踏む勝利を得た日清・日露の戦役も・・・見方を変えれば国家による国民の大量虐殺だったのかもしれない。

だが、少なくとも・・・国民を大量虐殺した上に敗北した大東亜太平洋戦争より・・・ずっとマシだったとも言えるのである。

明治が流した流血によって築きあげられた大正という時代に・・・晴耕雨読をきどって呑気に小説書いてた人の妄想をマジで映像化して・・・何が楽しいのか・・・まっ、予算的には安くあがるけどな。

まあ・・・とにかく・・・庶民から見れば・・・雲の上の存在である山本家や・・・新島家の人々を身近に感じさせるという点では素晴らしいフィクション・ライターなのかもしれませんけど~。

つまり・・・あれなんだな・・・お前・・・徳富蘆花が・・・嫌いなんだな。・・・はいっ。

日清戦争の時に28歳、日露戦争の時に37歳。銃後でぬくぬくしていた奴が何言ってやがるなんですよ。

お前・・・ちょっと危ないぞ。

とにかく・・・久榮は・・・蘆花があることないことを書くより遥か以前の明治26年(1893年)、23歳で病没する。

死人に口なしなのである。もちろん・・・LOVEだねえという考え方もあります。

そ、それって・・・ね、ねたばれだよね。・・・何を今さら・・・。

もう、こうなったら・・・捨松も「不如帰」風に描けばいいのに。そしたら、さすがに笑う。

で、『八重の桜・第46回』(NHK総合20131117PM8~)作・山本むつみ、演出・清水拓哉を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はずっとずっと仮キャスティングで凌いできた・・・噂の女、ちょっと貫地谷入っているかもしれない山本覚馬の後妻の娘・山本久榮、ファン待望の描き下ろしイラスト大公開でございます。演じるは門脇麦、今なら2014年3月1日公開予定の映画「愛の渦」の予告編がすぐ見れる。そして・・・ちょっとうれしいのでございます。なにしろ・・・いろいろと妄想広がるから~。まあ、門脇麦(21)なので今回はなんちゃって17歳を演じていますけれど~。画伯は謙遜してますが・・・キッドはすごく良い感じだと思います。みね(三根梓)も良かったけど久榮も良いですな~。

Yaeden046 明治18年(1885年)5月、山本覚馬と時榮夫妻、宣教師に洗礼を受け入信。12月、新島襄が外遊から帰国。明治19年(1886年)2月、山本夫妻離縁。3月、東京大学が帝國大學に改称される。4月、英国とドイツの間で西太平洋の勢力範囲についての協定が結ばれる。華族世襲財産法公布。5月、皇宮警察所設置。米国でコカ・コーラ販売始る。6月、箱根離宮落成式襲撃計画が発覚。7月、英国がビルマを植民地化。超能力者・御船千鶴子誕生。8月、長崎事件発生、上陸した清国水兵が遊郭で酩酊して乱暴狼藉におよび逮捕されたことに発し、清国兵数百名と警察官が大乱闘し、死傷者が発生。基本的に清国の武力外交が背景に存在する。9月、米国のインディアン戦争でジェロニモが降伏する。徳富健次郎(徳冨蘆花)が同志社英学校三年生に編入。ナイチンゲール看護学校出身のリンダ・リチャーズが京都看病婦学校(同志社病院)の監督に就任。10月、戸籍登記書式制定。これより真の入籍、離婚沙汰が発生する。11月、小笠原島庁設置。北海道庁設置。12月、東京図書館新築。明治20年(1887年)1月、伊勢(横井)時雄、みね夫妻に長男・平馬誕生。みね、産褥により死去。30日、新島襄の父・民治逝去。2月、徳富蘇峰が「国民之友」を創刊する。3月、アン・サリヴァンがヘレン・ケラーの家庭教師になる。7月、新島襄・八重夫妻が避暑のために北海道旅行中に内藤(日向)ユキと再会。この頃に伊勢家の居候で二十歳の徳富蘆花が17歳の山本久榮にちょっかいを出したと思われる。8月、初めての国産による帝国海軍砲艦「鳥海」進水式。9月、蘆花と久榮お嬢様との密会が発覚。10月、徳富蘆花逃亡。12月、徳富蘆花退学。翌年、6月に久榮は同志社女学校を無事卒業する。好きな女に失恋し、女は卒業、自分は中退という現実を蘆花はこの後30年近く呪い続けたのである。ダメ人間だなあ。

久しぶりに訪れた北海道は順調に開発が進んでいた。

八重と襄は函館から馬車で札幌の市街地に入る。

「なかなかに近代的な街作りが進んでいますね」

「驚れえた・・・大したもんだし」

街行く人々には異人も多い。

約束の場所に・・・八重は・・・ユキを見出す。

さすがに年齢を重ねていたが・・・ユキには少女時代の面影が残っていた。

「八重様・・・」

「おユキちゃん」

二人は再会を喜んだ。

襄はホテルを予約していたが・・・市内にある内藤家に迎えられる。

ユキの婚家である。

ユキの夫は北海道庁に出仕する土木技術者で旧薩摩藩士の内藤兼備である。

そして・・・ユキはくのいちである以上、北海道庁の密偵なのである。

「さっそくだけど・・・姉さまにお願いがあります」

「なんでごぜえましょう」

「私の夫は今、札幌の上水道、下水道の整備にあたっておりやす」

「ほお・・・」と関心を示す襄。「さすがは近代都市計画のすすむサッポロ・シティーですねえ」

「街の中心部は暗渠つまり、地下水道化する計画でした・・・。しかし・・・工事中に札幌の地下に空洞があることが分かったのでごぜえやす」

「なんと・・・」

「ご存じのように・・・この地は維新後のしばらくの間、西洋のヴァンパイヤアによって支配されておりやした」

八重はかっての蝦夷地討伐戦を思い浮かべる。

「そうか・・・地下に・・・」

「おそらく・・・アイヌの民を奴隷化し・・・地下道、地下城を建設しかかったものと思われやす」

「なるほど・・・」

「そして・・・どうやら・・・地下にまだ残党が巣食っているようなのです」

「吸血鬼が・・・まだ残存していたか・・・」

「農大の救世軍が退治にかかりましたが・・・返り討ちにされました・・・」

「それは・・・久しぶりにエクソシストの血が騒ぐ話だ」

「襄、あんたはなんねえ・・・また心臓発作でも起こしたらどうする・・・」

「しかし・・・八重さん・・・」

襄に哀願されると断りきれない八重だった。

「しょうがないな・・・私から離れないように約束しておくんなさいまし」

「やったあ」

「ワラシですかっ」

「姉さま・・・それじゃ・・・退治てくだされますか」

「ユキちゃんの頼みは断れねえ」

八重は荷物を解いた。

「これは・・・」

「対吸血鬼用・・・聖水弾用のショットガンだ・・・ウインチェスター・ライフル銃を改良してある・・・もしやと思い持参したのです」

「姉さま・・・」

八重は久しぶりに血がたぎるのを感じた。

そして・・・八重とユキは北海道のくのいちたちを率いて・・・吸血鬼の地下帝国へと向かうのだった。

関連するキッドのブログ→第45話のレビュー

坂の上の雲の頃

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2013年11月18日 (月)

我が名は安堂ロイド、ゆえに我あり(木村拓哉)

連作短編集「刺青の男/レイ・ブラッドベリ」(1951年)の16編目は「マリオネット株式会社」である。

刺青の男は呪いによって・・・全身に物語を刻印された男である。

その物語の多くは宇宙を舞台とするが・・・「マリオネット株式会社」は平凡な夫たちの物語である。

彼らの一人は妻から逃れて「自分だけのバカンス」を希求する。そのために・・・闇市場に出回っている自分そっくりのマリオネット(操り人形)を購入する。

もちろん・・・「それ」は彼の妻が・・・彼でないと気がつかないほどの精巧なアンドロイドなのである。

彼はマリオネットの性能を疑い、何度か入れ替わりを試してみた。

しかし、妻はそれが身代わりのマリオネットであることにまったく気がつかない。

満足した彼は・・・いよいよ、バカンスを決行しようとする。

そして・・・地下室に隠しているマリオネットを呼び出す。

しかし、マリオネットはこう述べるのだ。

「あなたが自由であるように・・・私も自由だ・・・そして・・・あなたの妻を愛しているのはあなたより私だと思う。だから・・・あなたはもう・・・存在する必要が無い」

一人の男が消え、そして消えなかった。

そして、「彼」は妻と一緒にバカンスに旅立つのである。

半世紀以上前から、人間そっくりの彼らは・・・妄想の間に確かに存在しているのである。

人間の友達である「それ」よりも人間にとって「おそろしいもの」である彼らを一部の愛好家は愛するのだ。

なぜなら・・・その方がリアルだからである。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第6回』(TBSテレビ20131117PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・波多野貴文を見た。人間はどれだけ自分自身について知っているだろうか。人間はどれだけ世界について知っているだろうか。その問いは別々のようで実は同じ問いかけである。たとえば・・・自分の「脳」について考える時、世界が「脳」をどのように考えているかは重要な要素になるだろう。そうなると・・・世界のあらゆる「脳」についての知識が必要になってくる。そういう知識を得ることは可能だろうか。もちろん・・・そんなことは限りなく不可能に近いことなのである。それでも・・・不可能ではないと考えることはできる。しかし、その瞬間、ソクラテスは・・・無知を笑うのである。自分が知らないことを知ることは知の基本だからである。

人間の「心」を知らない人間が・・・「心」について考える。

このドラマの真髄はそこにあると思う。

登場人物たちは・・・時に愚か過ぎる振る舞いをするように見えるが・・・それをそのまま受け取ることはできない。

なぜなら・・・彼らはそれぞれに「誰か」とは違う人間だからである。

自分と違う人間がいて・・・それぞれに生きている。

今、その単純な「知」が失われつつあるのではないかと・・・最近、考えるのだった。

だからこそ・・・人間とそうではないものが・・・出会うこの物語は大切な物語なのである。

人間である安堂麻陽(柴咲コウ)とアンドロイドの安堂ロイド(木村拓哉)は人間そっくりのアンドロイド・サプリ(本田翼)を失う。

サプリは・・・麻陽とロイドを守るために消滅したのだった。

麻陽は・・・ロイドの傷心について考えるが・・・それは想像の域を出ない。

しかし・・・サプリがロイドのために命を捧げたことを理解し、それをロイドに告げることによって・・・麻陽はロイドにとって特別な存在となった。

その「変化」についての自覚は・・・麻陽にはまだ難しいようだった。

そのために・・・麻陽は・・・幼い子供であるロイドの心をさらに傷つけるのである。

だが・・・誰が・・・何気ない同情の一言が・・・アンドロイドに絶大なる愛を発生させることを常識として知っているというのだ。

だから・・・麻陽の無知ゆえの過ちを責めたりしてはいけない。

そして・・・娘が婚約者そっくりのアンドロイドと同棲中だとは夢にも思わないみゃあみゃあ五月蠅い母親の狂騒的な暴走も大目に見るしかないのだ。

彼女はただ・・・若き恋人との東京旅行のついでに・・・行き遅れかけている娘にちょっと構ってみたかっただけなのである。

「私・・・もう長くないみたいなんだわ・・・」

「母さん・・・」

「だから・・・結婚式は無理でも・・・おみゃあさんの花嫁姿を一目見たいのだぎゃあ」

「そんな・・・」

「だもんで・・・今日、上京するでええかしゃん」

結婚式場で娘と待ち合わせる安堂景子(名取裕子)だった。

「ロイド・・・黎士の身代わりをしてほしいの」

「俺は沫嶋黎士ではない」

「だけど・・・あなたを黎士として公表しろといったのはあなたよ」

「俺には嘘をつく機能はない」

「あなたは黙っていればいいわ」

「それは・・・本当に必要なことなのか」

「ええ・・・私にとっては・・・とても大切なことなのよ」

しかし、麻陽はもう少し考えるべきだっただろう。仲間のアンドロイドを失って動けなくなったロイド。サプリの応急処置で辛うじて機能している・・・未熟でひ弱なロイドのメンタル面を。だが・・・麻陽は全知全能の神ではないのだ。なにしろアンドロイドの心、人間知らずなのである。

そして・・・デリカシーのかけらもない名古屋の老舗味噌屋の女将はやわなロイドの心に猛攻を加えるのだった。

まったく・・・やつれた気配のない母を不審に思いながら・・・フィッティング・ルームでウエディング・ドレスを試着した麻陽はそれなりに華やかな気分になるのだった。

超現実的な日常に比べれば、花嫁衣装を着るのは極めて日常的なことだからである。

母親は浮かれて麻陽とロイドの記念写真撮影に参加する。

「黎士さん・・・本当にありがとう」

「・・・」

「黎士さん・・・麻陽のことをよろしくね」

「・・・」

「黎士さん・・・男前ねえ」

「・・・」

対人会話用に・・・社交機能を持たないロイドにとって・・・「ロイドである」のに「黎士」と呼ばれることはものすごく負担になるのだった。

「黎士ではなくロイドである」という発言を強制的にキャンセルし続けなければならないのである。

それに気がつかない麻陽までが・・・「黎士さん」と呼びかけたためにロイドの心は破綻寸前になるのである。

「安堂ロイドと名付けたのは安堂麻陽・・・君自身ではないか」という発言が爆発寸前なのだった。

そして・・・ロイドは同時に公共の場における麻陽警護のための警戒モードも実施中なのだった。

その情報処理には・・・いくつもの不審な標的が浮かび上がっているのだった。

記念写真撮影用の花壇のある中庭を眺める男・・・フレミング(岩井秀人・・・「大奥〜誕生[有功・家光篇]」の徳川家光)などは特に怪しいのだった。

しかし、三人に近付いてきたのは安堂景子の若いツバメである盛田守(高橋努)だった。

前回、葦母の相棒の冨野(日野陽仁)がアンドロイドだったので・・・すべての人間がアンドロイドかもしれない状態に突入している。

やがて・・・母親の病気が嘘であることが披露され・・・ロイドの混乱は頂点に達するのだった。

「とんだ茶番だ」と苦笑する機能はロイドには搭載されていないのだ。

「写真は撮った・・・もういいだろう」とロイドは逃走を開始するのだった。

「待って・・・黎士さん」

突然、不機嫌になったロイドを訝る安堂景子。

「どうしたんかね・・・」

「黎士さんは・・・嘘が嫌いなのよ」

「勘弁してちょうでえな」

ロイドを追いかける麻陽。

「黎士さん」

「俺は沫嶋黎士ではない」

「わかってるわよ・・・フリをしてもらっただけでしょ」

「写真は撮った」

「何を怒ってるの・・・?」

「怒る?・・・なんだそれは・・・」

「それが怒ってるっていうのよ・・・一体、どうしたの」

「わからない・・・一人になって・・・解析する必要がある」

「解析って・・・」

麻陽を残し、ロイドは亜空間通路へとウージングアウトした。

「黎士・・・ロイド」

麻陽は茫然と立ちつくした。

亜空間通路から廃工場の隠れ家へとウージングアウトしたロイドは自分を持て余すのだった。

麻陽のことを考えるだけでクラクラするのだった。

「俺はロイドなのに・・・」

ロイドの思考回路は告げている。

「サプリが俺に恋をしたように・・・俺も麻陽に恋をしているのか・・・麻陽が特別な存在であるように・・・麻陽にとって俺が特別な存在であることを願っているのか・・・麻陽は人間で・・・俺はアンドロイドなのに・・・」

ロイドに芽生えた感情の制御装置として機能しているサプリの感情機能サプリは・・・乙女チックに傾斜するのである。

「サプリ・・・お前も・・・こんなに苦しい気持ちを抱えて・・・生きていたのか・・・」

ロイドの情報処理回路に・・・サプリの在りし日の記録が短絡的にフラッシュバックするのだった。

憎まれ口機能を爆発させながら・・・常にバックアップとして控えていた支援機体。

しかし、彼女はもういないのだ。

その喪失感が・・・ロイドを襲っていた。

ロイドは「寂しさ」を覚えた。そして・・・それはたちまち「悲哀」と呼ぶべきものにグレードアップした。

「サプリ・・・」

ロイドは再び・・・機能不全に陥りつつあった。

ロイドは腰をおろし充電体制に移行しつつ、それでも監視任務を開始した。

麻陽はホテルでの激しい営みに突入するためにスキップしながら去っていく母親を見送った後で・・・自宅に戻っていた。

姿を見せないロイドをしばらく家探しした後で・・・沫嶋七瀬(大島優子)に電話をかける麻陽。

七瀬は黎士の助手たちを相手に論文の添削を行っていた。

自分の性的魅力に自身を持つ栗山薫(山本美月)だけは・・・七瀬のアドバイスを拒絶するのだった。

彼女にふさわしいのは七瀬ではなく黎士であると露骨に態度に現す栗山だった。

「私じゃ不服だってえの」

「いえ・・・どうせなら黎士さんの方がいいかなって思って」

「なんでよ・・・」

「黎士さんは天才だけど・・・七瀬さんは天才の妹に過ぎないじゃないですか」

「ふ・・・面白すぎて言葉を失うよ」

そこで麻陽からの着信を知った七瀬は助手たちを研究室から追い出すのだった。

「どうしたの・・・」

麻陽は今日の出来事をかいつまんで話すのだった。

「あはは」

「何がおかしいの・・・」

「お義姉さん・・・分りませんか」

「分らないわ・・・」

「あのアンドロイドは・・・嫉妬しているんですよ」

「嫉妬・・・?」

「そうです・・・それしか考えられない・・・お義姉さんの愛する沫嶋黎士と比べられて・・・お義姉さんにとって特別な存在である沫嶋黎士のフリをさせられて・・・頭にきちゃったんですよ」

「一体・・・なんで・・・」

「決まってるじゃないですか・・・お義姉さんのことを好きになっちゃったんですよ」

「そんな・・・だって」

「アンドロイドじゃない・・・ですか」

「・・・」

「でも・・・彼には・・・心があるんでしょ・・・」

「ええ・・・」

「だったら・・・誰かを好きになったっておかしくないし・・・自分の好きな人が別の人のことを愛していたら・・・拗ねちゃったりするでしょう」

「・・・」

「私・・・ちょっとやることがあるんで・・・また、連絡します」

「七瀬ちゃん・・・」

七瀬は突然、幼い日の自分自身と・・・対面するのだった。

「そうよねえ・・・それは・・・些細な嫉妬なのよね」

ウージンク゜アウトしてくるエーアールエックスナインスザラストクイーン(桐谷美玲)・・・。

しかし、その姿はエーアールエックスセカンドサーティーンこと安堂ロイドには探知できない。

性能差によって安堂ロイドは情報操作されてしまっているのである。

七瀬は謎の美少女を睨む。しかし、美少女は動じない。

「あなたもまた・・・偉大な兄・・・沫嶋黎士の光によって生じた影の中にいるんだものね」

「・・・」

「隠したって無駄よ・・・私はあなたの未来も過去もそして・・・現在の心の内も全部知っているんだから」

七瀬は屈服して・・・忌まわしい過去へと遡上するのだった。

黎士が驚異的な知能指数を示したように・・・七瀬(信太真妃・・・「それでも、生きていく」の深見亜季)もまた早熟な天才だった。

しかし、二人の父親(野間口徹)と母親(荻野友里)の関心は最初に生まれた天才である黎士に集中していた。

その第二子に対する無関心ぶりは・・・実際にはそれほど極端なものではなかったが・・・人並み外れた感受性を持つ七瀬の心には増幅されて届いた。

そして・・・七瀬の童心は愛情を希求するものの常として激しい憎悪を生み出したのだった。

幼い七瀬は両親を呪い、両親の存在を抹消しなければ自我が破綻する予感に苛まれていた。

七瀬の未熟な自我は・・・猿と人間ほどの知力差のある両親を憐憫するのではなく、侮蔑する方に舵を切った。

「猿のくせに・・・私だけを愛さないなんて・・・許せない」のだった。

いくつかの選択肢の中から・・・七瀬は列車事故を選んだ。

鉄道の制御システムに素晴らしいインターネットの世界から侵入し・・・あるはずの列車を消し、進んではならない軌道に両親の乗った列車を進行させることは・・・八歳の七瀬にとって児戯に等しいのだった。

やがて・・・両親を乗せた列車は高速で対向車両と激突したのだった。

前代未聞の運行ミスと指摘された歴史的大参事はこうして発生した。

テレビから流れる死亡者リストで両親の死を確認した七瀬は・・・子供らしい哀しみの涙を流した後で子供らしく自分の実力に満足して哄笑するのだった。

「パパ・・・ママ・・・死んだらダメだよ・・・えーん、えーん」

「やったね~、やるもんだね~、さすが私だね~あははははははははははは」

しかし・・・その瞬間に分裂した感情は・・・成熟した七瀬に・・・苦悩をもたらしているらしい。

それは・・・あらゆることがとりかえしがつかないという認識によるものだった。

しかし・・・真の天才である兄は・・・その認識を覆したのである。

「ああああああああああああああああ」と叫ばずにはいられない七瀬だった。

全知全能の美少女アンドロイドは無表情にその姿を眺めるのだった。

「さあ・・・がんばって・・・閉ざされたタイムケーブル(時間軸)を開いてみなさいよ・・・そして・・・沫嶋黎士に・・・リベンジしなさい」

「・・・」

七瀬は神の声を聞いた。

「親殺し・・・兄殺し・・・あなたは一人で何をするのか」

「私の・・・なすべきことを・・・私の理想に従って」

ここで・・・クイーンは沫嶋黎士の死に七瀬が関与していることを仄めかし、七瀬はそれを否定しないという驚愕の事実が展開する。

少なくとも、この時点で・・・七瀬はポリスクラウドへと続く未来のサイドに立っているかのようである。

麻陽に対する盲目的な愛をもてあましながら世界を同時に監視することはロイドにとっては簡単明瞭だった。

ロイドを捜す麻陽。ついにはピンチの真似をする麻陽。落胆して入浴する麻陽。

それぞれの家路に着く沫嶋黎士の助手たち。

簡単な食事を作る麻陽。

麻陽の直属の部下でシステムエンジニアの星(桐谷健太)は・・・葦母刑事(遠藤憲一)の説得に成功し、トミヤロイドの遺した拳銃のようなものと未来警察についての資料を入手する。

そこには・・・「ARX II-13(エーアールエックスセカンドサーティーン)」についての資料も含まれていた。

ロイドは星の殺害の必要性を感じる。

しかし、同時に麻陽の言葉の記憶が殺意を抑制するのだった。

『だめよ・・・星くんを殺してはダメ』

ロイドは再び、回路に過負荷がかかるのを我慢した。

星と別れた葦母は遊戯施設「宇宙センター」の階上にある喫茶店に向かう。

ロイドは葦母の殺害の必要性を感じる。

『だめよ・・・葦母刑事は・・・左京子の父親なんだから・・・』

命令と命令の間でロイドは彷徨うのだった。

クライアントの命令は絶対であり・・・麻陽の命令も絶対だった。

麻陽は炊きたてのご飯を茶碗によそっていた。

星は大手外資系IT企業「エニグマエンジンソフト社」に休日出勤する。

助手たちは帰宅した。

七瀬は研究室で叫びながら作業を続けている。

喫茶店では葦母刑事が娘の小松左京子(山口紗弥加)と遅いランチをとっていた。

「知ってるか・・・この店のオムライスは東京で一番おいしいって評判なんだ。オムライスの嫌いな俺がなんとか食べられるのがその証拠だ」

「知ってるわよ・・・二十年前にもこの店でアンタから同じ話を聞いたから」

「そうか・・・あれから二十年か・・・」

「数少ない家族サービスの記憶をひけらかして・・・父親面しないでくれる」

「いいわけはしない・・・だからといって俺が高倉健さんみたいに不器用だからとか主張するわけじゃないぞ。俺の仕事は・・・お前の母親や、お前や・・・いつか生まれてくるかもしれないお前の子供・・・みんなを守ることなんだ。そのためにやることが多過ぎるんだよ」

「要領の悪さを自慢しないでよ」

「俺は要領がいい方だと思う」

「どうしようもないバカね」

「さあ・・・俺はもういかなくちゃ・・・俺は先に出るけど金は置いて行くから・・・クリームソーダでも頼めばいい・・・」

「・・・バカ親父・・・私はもう三十路なんだよ・・・だけど・・・クリームソーダは注文するよ」

ロイドは店に残ってクリームソーダを待つ左京子を監視しながら、葦母の行動を追尾する。

麻陽はごはんに温めた味噌汁をぶっかけていた。

助手たちはコンビニの袋を広げている。

安堂恵子は昼間から男に馬乗りになって派手に獣のような叫び声をあげている。

家族か・・・とロイドは考える。

ロイドは麻陽と家族なのか。

違う・・・ロイドは・・・ただの沫嶋黎士の身代わりにすぎない。

ロイドのシステムはさらに機能が低下する。

七瀬はCPUの前でカップ麺を食べていた。

麻陽は「ロイド~」と何度か叫んだ後で身支度をしてエニグマ社に向かっている。

敵の気配は途絶えていた。

『今のうちにたっぷりと充電しておきなさいよ』

ロイドは自分の中でサプリが囁いたような気がした。

「サプリ・・・」

存在しないものの名前を呼ぶ自分自身の不合理さがロイドをたじろがせる。

ロイドの機能はさらに低下していく。

自己修復機能はそれでも擬似皮膚の修復を完了した。

ロイドはオートマティックに感謝した。

安堂麻陽はエニグマ社広報室に到着した。

「・・・珍しいですね」

「ちょっと、時間があいたので・・・明日の準備をしておこうと思って」

「麻陽さん・・・まだあの男と一緒に暮らしているんですか」

「そうだけど・・・それが何か・・・」

「信じられない・・・あの男は黎士さんじゃないんですよ・・・あいつはアンドロイドなんだ・・・」

「・・・」

「驚かないんですね・・・知っていたんですか」

「それ以上・・・その件について話す気なら・・・私は部屋を出ます。その件には関わらないでと頼んだはずですよ」

「しかし・・・言わなければ僕の気がすまないのです・・・僕以外の誰かがあなたと一緒にいるなんて・・・耐えられない」

「あなた・・・私のことが好きなの」

「もちろんです・・・あなたのことを愛しています。あなたのためなら命だって捨てられる」

「だからって・・・私があなたを好きになるとは限らないわよ」

「そんな・・・」

「まさか・・・自分が好きになった女性はみんな・・・自分を好きになって当然だとでも・・・中学生じゃあるまいし・・・」

「僕はただ・・・麻陽さんが心配なだけです」

「それが余計なお世話だと言っているの」

「あいつは・・・あなたに近付いて・・・黎士さんの研究成果を狙っているのかもしれない」

「そんなことはない」

「だって、おかしいじゃないですか・・・黎士さんは死んでいるのに・・・麻陽さんにつきまとうなんて」

「私には守る価値がないから・・・」

「いえ・・・」

「それにつきまとっているのは彼じゃなくて・・・あなたよ。一歩間違えたらストーカーよ」

「僕より・・・アンドロイドを信用するのですか」

「私は彼を信じている」

「そんな・・・どうして」

「あなたが私を好きになった理由は何なのよ」

「それは・・・」

「理由がなくたって人は人を好きになる。そして、私は信じたい人を信じるの」

「滅茶苦茶だ・・・第一、相手は命令された通りに動くマリオネットですよ・・・麻陽さんを殺せと命じられたら殺すかもしれない」

「彼は・・・そんなことはしない・・・だっていい人だもの」

「人って・・・一体何なんですか・・・黎士さんの顔をしていたらなんでもありなんですか」

麻陽は星の発言に激怒したが・・・黙って退出した。

星は自分の失言を後悔したが・・・同時に世界を憎悪する。

「くそ・・・くそアンドロイド・・・」

星はトミヤの遺品から・・・ARX II-13のファイルを取り出した。

「汎用戦闘ロイド。エーアールエックスセカンドサーティーン・・・2066年に暴走し、10億人を殺害・・・問題点を解析中に消失・・・麻陽さん・・・それは恐ろしい虐殺器官なんだ・・・なんで・・・僕を愛してくれないのです」

家路に着くまでに麻陽は考える。

(そうね・・・星くんが中学生なら・・・ロイドは小学生なのかもしれない・・・もう少し・・・言葉をを選んで接しないと・・・ねえ・・・でも難しいわ・・・だって彼は黎士にそっくりなんだもの・・・黎士、あなたはどう思う・・・ああ・・・黎士・・・逢いたいわ)

ロイドは麻陽の姿をじっと見つめる。

低下した機能が少しだけ回復する。

【周辺にいくつかの・・・不審点あり】

【偽装工作の疑いあり】

【安堂麻陽に対する危険度上昇中】

【ダミーシステムを破壊】

【陽動作戦の可能性を検討】

【周辺の人物をローラー監視】

【出動待機モードに移行】

【センサーの感度を点検】

帰宅した安堂麻陽はもう一度、室内を捜し回る。

「ロイド~」

リヴィングから寝室へ。

「ロイド~」

バスルームから収納部屋までくまなく探した後で麻陽はため息をつく。

「まったく・・・どこほっつきあるいてんだ・・・あの野郎」

あまちゃんのように毒づく麻陽だった。

その時、室外にはフレミングがウージングアウトしていた。

「安堂麻陽を発見・・・殺害処理に着手する・・・おっと・・・センサーが・・・」

フレミングはロイドがウージングアウトしてきたことを察知した。

フレミングは退却を決断して亜空間通路へとウージングアウトしかけたが・・・ロイドにキャッチされてバトル・フィールドとなる廃墟に誘いこまれるのだった。

「安堂麻陽の殺害は禁じられている」

「こちらはそれが任務だ」

拳銃のようなものを連射するフレミングの懐に飛び込んだロイドは得意の接近戦に入る。

フレミングは情報処理のスピードで対応するが警察アンドロイドと軍用アンドロイドでは根本的な戦闘力が違うのだった。

たちまち、戦闘不能状態になるフレミング。

「待て・・・殺さないでくれ」

「暗殺ロイドに対する破壊行動は許可されている」

「やめてくれ・・・俺だって好きこのんでやってるわけじゃない・・・俺には2013年に家族がいるんだ・・・ほら・・・写真だってある・・・俺は無事に2113年に帰りたいんだよ・・・」

「家族・・・」

「俺だって・・・平和を守るために警察ロイドになったんだ・・・しかし、ポリスクラウドはこんな汚れ仕事を俺に命じた・・・人間のために・・・俺たちアンドロイドが殺し合うなんて・・・おかしいじゃないか・・・」

「・・・」

ロイドに躊躇が生じた。

「二度と・・・安堂麻陽に手を出さないと約束しろ」

「約束するよ・・・アンドロイドは嘘をつかない」

「よし」

「ありがとう・・・」

フレミングは逃亡した。

「家族・・・か」

<警告する・・・命令違反中である・・・アンドロイドは破壊しなければならない>

「・・・」

<命令違反を続行するなら・・・処分される可能性がある>

「・・・」

<命令を実行せよ>

「・・・命令を実行する」

ロイドの目にサプリの遺した角城骨格を移植したテディベアが映る。

それはロイドにサプリを連想させた。

「サプリ・・・俺は苦しいよ・・・お前も・・・きっと・・・こんな風に苦しんでいたのだろう・・・なあ・・・サプリ・・・この苦しみに終りはあるのかい?」

しかし、サプリは答えなかった。

ロイドは虚しく・・・不気味な熊のぬいぐるみを抱きしめた。

再び・・・ロイドの機能は低下し・・・フレミングの銃撃により生じた銃創から擬似血液が滲みだす。

ロイドの監視機能さえもが著しく低下し始めた。

脱出したフレミングはポリスクラウドの21世紀東京分室に残存機体であるケプラ(伊達暁)とメンデル(谷田歩)を召集する。

ポリスクラウドはかなり21世紀に浸食しているが・・・それが黎士の時間理論によるものかは現段階では不明である。

しかし、未来との回線に不都合が生じているのは・・・歴史改変による時間流の乱れではなく沫嶋黎士が次元物理的通信回線を人為的に閉ざしたためであることがタイムクラウド上司によって語られる。

「ポリスクラウド本部へ。2013年に派遣された11機の機体のうち8機までが損失された。増員を要請する。こちらフレミング」

<フレミングへ。現在、21世紀への増員は困難な状態にある。配置された要員によって任務を遂行せよ>

「ARX II-13は支援システムのサプリを喪失している。増員があれば任務遂行の成功度は高まる」

<増員は困難である>

「当該任務には不確定要素が多過ぎる・・・213年の沫嶋黎士の脳データの管理は万全か」

<沫嶋黎士の脳データは当局の厳重な管理下にある>

「再検討を要請する」

<沫嶋黎士が時間軸を遮蔽した後で・・・何者かがARX II-13、サプリ、そして未確認機体を21世紀に転送した可能性は高い>

「別のタイムケーブルが設定されているとしたら・・・そんなことができるのは沫嶋黎士しかいないではないか」

<データを解析中>

ここで・・・213年に沫嶋黎士の脳データが存在することが明らかになる。

人工知能の研究はコンピュータや機械の模倣装置あるいは模倣ソフトウェアによって人格をエミュレートする方向でも進められている。

それは人間の「人格」のデータ化の可能性を示している。

ただし・・・完全なる模倣のためには・・・人間の脳内の全情報を把握する必要がある。そのための解析テクノロジーが果たして電子レベルで充分なのかどうかは不明である。さらに微小な未知の粒子が関与していれば・・・「擬似人格」は「脳データのようなもの」にすぎなくなる。

しかし、このドラマでは人類はデータ化され、何者かによって管理されている存在であるらしい。

なお、沫嶋黎士の「脳データ」がどの時点のものであるかは不明である。

2013年で殺害された沫嶋黎士から回収されたものなのか、それともなんらかの形で生存していた沫嶋黎士の生きている脳データという可能性もある。

生前の沫嶋黎士が・・・未来の沫嶋黎士となんらかのコンタクトをとった可能性は高い。

ロイドによる「沫嶋黎士の伝言」にあるように・・・未来の黎士が・・・過去の黎士になんらかの「危機についての警告」を与えた可能性は否定できない。

そこで・・・ついに・・・ロイドはクライアントである「クラウドゼロ」とのコンタクトを敵側に察知されてしまうのである。

ロイドもまた・・・未来への支援要請をしたのだった。

「ゼロクラウドへ。支援機の再派遣を要請する。こちらロイド」

<ロイドへ。支援機は現在、準備中・・・予備パーツを先行して転送する。こちらゼロクラウド>

ロイドが交信した相手は・・・213年の沫嶋黎士の脳データだったらしい。

「ポリスクラウド本部へ。ARX II-13の通信を傍受。発信源を特定した。こちらフレミング」

<現在、確認中>

「より万全を期するために・・・沫嶋黎士の脳データの破壊を要請する」

<要請を承認する・・・現時点を持って沫嶋黎士の脳データは機能を強制終了によって喪失した>

「これより、安堂麻陽、暗殺に着手する」

時空を越えて・・・安堂麻陽は胸騒ぎを感じる。

何か大切なものが失われた予感が胸をしめつける。

「黎士さん・・・ロイド・・・」

不安にかられて麻陽は夜の街へ繰り出すのだった。

当てもなく・・・黎士あるいはロイドの姿を求めて・・・。

やがて・・・麻陽は思い出の東京タワーの見える公園にたどり着く。

麻陽の危機を探知したロイドは転送された予備パーツを収納すると立ち上がる。

そこへ・・・葦母刑事が現れた。

監視モードの間隙を突かれたらしい。

それはありえないほどの確率だったが・・・刑事の勘は不可能を可能にするものなのである。

「よお・・・沫嶋黎士のそっくりさん・・・お前は何者なのだ」

「事態は急速に推移している」

「おいおい・・・無視するなよ・・・お前の正体を教えてくれよ」

「時間的に余裕がない」

「じゃ・・・お前を撃ってみよう・・・そうすりゃ・・・少なくとも人間じゃないことがはっきりするだろう」

「もしも・・・俺が人間だったら・・・あんたは殺人をすることになる」

「そんなの・・・構っていられない・・・それに俺はもう・・・人を殺してるんだ」

ロイドは葦母刑事を誘うように動き、あえて銃弾を受けて倒れるのだった。

「・・・なんだよ・・・なぜ・・・抵抗しない・・・死んだフリなんかしても無駄だぞ・・・」

ロイドは予備パーツによる自己修復を開始していた。

しかし、サプリ抜きの作業は充分な回復を許さないのだった。

「俺は・・・破壊されることが前提の消耗品だ・・・」

「なんだって」

「あんたには家族がいる。あんたが死ねば家族が哀しむ」

「何言ってんだ・・・お前」

「俺が死んでも・・・哀しむ家族は・・・いない」

ロイドの電子頭脳に去来するサプリと麻陽の面影・・・。

「・・・おい、ちょっと待て」

不安定なまま立ち上がったロイドはアスラシステムを起動するのだった。

突然、目の前からいなくなったロイドに・・・葦母刑事は為す術もなく立ちすくむ。

麻陽の前にフレミングが出現した。

「あなたを殺処分します」

「なんで・・・私が死ななきゃならないのよ」

「あなたが死なないと正しい未来が到来しないのです」

「誰かを殺して得る未来なんて・・・ろくなもんじゃないわ」

「すべては決定しているのです」

「この人殺し・・・」

麻陽は駆けだした。

フレミングは銃撃するが・・・麻陽が転倒したたために弾丸はそれる。

「驚くような幸運の持ち主ですね・・・しかし・・・幸運とはいつまでも続かないものです」

麻陽は立ち上がろうとして前方に新たな敵が出現しているのに気がつく。

(ロイド・・・私・・・殺されちゃうよ)

フレミング、ケプラ、そしてメンデルは拳銃のようなものを発砲する。

しかし、ウージングアウトしたロイドは周囲の大気をバリアで包み、麻陽ごと高速移動させるのだった。

「ロイド」

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

「無駄です・・・損傷した機体で我々、優秀な三体の機体を破壊することはほぼ100パーセントありえない」

「お前は・・・安堂麻陽に手出ししないと誓ったはずだ」

「そんな約束・・・いつしましたか・・・何年何月何日何時何分何秒?」

「家族がいるというのも嘘だったのか」

「こりゃ・・・傑作だ・・・あんなもの設定に決まってるじゃないですか・・・旧式とは聞いていたけれど・・・これほどまでとは・・・私はてっきり、私を泳がせて、根拠地を急襲してくるつもりなのかと推定していましたよ」

「原子還元処理を申請する」

<申請中・・・反応なし>

「あはは・・・無駄だ・・・沫嶋黎士の脳データは破壊した・・・君は孤立無援だよ・・・」

「そうか・・・ならば・・・俺は俺に自分で命じよう」

「なんだって・・・」

「安堂麻陽は死んではならない・・・これは俺の意志だ」

「意志だと・・・」

「死すべきは・・・お前たちだ」

「そんな・・・」

ロイドは怒りに燃えて原子還元処理の実行に移った。

それはいつもの優しいブルーではなく・・・赤い炎となってフレミングを包み込む。

「あつい・・・いやだ・・・私が燃えている・・・あつい・・・くるしい・・・死にたくない・・・お助け・・・左手の法則」

フレミングは生きながら火炙りの刑に処せられた。

ケプラとメンデルは運命を受容した。彼らもまた迷える警官アンドロイドなのだった。

「抵抗はしない・・・少し歪んでいるだけだ」

「痛くないようにしてくれ・・・背は高かったり低かったりするものだからね」

「両者の要請をコピー【復唱的了承】した」

ケプラとメンデルは瞬時原子還元処理された。

「可能な限りの最高速なので痛みを感じなかっただろう・・・」

しかし・・・ケプラとメンデルはすでに存在していない。

夜の闇の中で白いセーラー服の少女は呟いた。

「人間の数万倍も優れた情報処理システムが意志を持った時・・・それが下した判断の過ちを・・・誰がとがめることができますか・・・だよねえ・・・さすがポンコツ兄貴・・・任務完了ってか・・・」

しかし・・・無理に無理を重ねたロイドは限界に達していた。

【アスラシステムにより機体か損傷・・・アスラシステムを緊急停止】

【ユカワオペレーションシステムに移行・・・移行失敗】

【再試行に失敗】

【すべての機能停止まで1秒】

【初期化を実行】

ロイドは崩れ落ちた。

「ロイド・・・」

安堂麻陽は慄いた。

暗殺ロイドのすべてを破壊したエーアールエックスセカンドサーティーンは任務を完了した。

これによって・・・歴史は変更されたのだろうか。

そして・・・安堂麻陽は・・・黎士もロイドも失ってしまうのか。

もちろん・・・そんなことはありえない・・・と思う。

そして・・・すべての鍵は・・・黎士とロイドの二人の妹たちが握っているに違いない。

まあ・・・その鍵かパンドラの箱を開ける鍵にすぎないにしても。

はたして・・・安堂麻陽が生み出すクラウドは・・・ポリスクラウドなのか・・・それともゼロクラウドなのか。

そして・・・沫嶋黎士は今、どこにいるのか。

盛り上がってまいりました・・・。

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Ar006

ごっこガーデン。時の彼方に続く夜景のきれいな記念撮影セット。アンナいやあああん、ロイドがロイドが死んじゃう・・・初期化されてみんな忘れちゃうの・・・でも電話してプロの人が来ると壊れたデータも復元できるって誰か言ってたぴょ~ん。それはそれとして・・・ウェディングドレスで記念撮影、朝から100ポーズ達成ですぴょ~ん。明日の朝まで徹夜でもう100ホーズ決めますぴょん。お着替え中にリピもしまくるのでじいやオムレツのサンドイッチ作ってね~まこえへへ・・・アンナちゃんが花嫁衣装に夢中で・・・アンナロイドがメンテンス中の隙をついてサプリのコスプレ・ゲットだぜっ。このスタイルで裏山から採取した松茸をきこりさん印のねこラーメンにぶちこんでゴージャスまつたけラーメンをじゅるじゅるるするのでしゅ~シャブリ信太真妃ちゃん・・・ちびまる子ちゃんからココ・・・信太→大島のなりきり度素晴らしすぎ~・・・さすがなのでありました~」mana頼まれたら嫌とはいえないロイド・・・可愛い・・・だから10億人殺してもしょうがないよね・・・(≧∇≦)ノ彡バンバン!それにしても・・・七瀬が黎士を嫉妬してたなんて・・・なんだかわざとらしい演技はすべて・・・わざとだったの?・・・そしてそれを完璧にコピーするチビ七瀬・・・満足度高まってまうで~・・・ああ・・・黎士も消え・・・ロイドも壊れた世界で・・・物語はどうなってしまうの~?来週もみましょうくうSPからテロリスト続々参戦・・・七瀬のパパまでが~と思ったらテロリスト(娘)に殺される人だった・・・ikasama4年賀状進まず~・・・みのむしいつの間にか朝ドラマをはしごする時代・・・るるるmari黎士が閉じてしまったタイムケーブル・・・2113年の警察組織は時間旅行のテクノロジーを持っているのか・・・いないのか・・・未来の黎士のデータと2013年の黎士の関係は?・・・謎が深まってきましたね

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2013年11月17日 (日)

結婚してください(亀梨和也)てやんでえべらぼうめ(多部未華子)

実は尋常ではない一家である堀田家。

しかし・・・ラブだねの親父は別格としても・・・すずみの博識は敢然に異常なレベルと言えるだろう。

だってえ、女子大生なんだぜえ。

目利きの揃った古本屋の親父たちの鼻を明かすなんて・・・忘れてた・・・これはファンタジーなのだった。

さて・・・実はこのドラマでは「古本屋」という言葉にそれなりにこだわりがあるわけだが・・・キッドはあえて古書店と呼称している。

それは例えば・・・「ドドネウス草木志」(16世紀の植物学者レンベルト・ドドエンスの著書)なんていうものを「古本」と呼ぶ感覚がキッドにはないからである。それはやはり「古書」と言いたい気がする。しかし・・・もちろん、「古本」は「古本」なのである。だから、あくまで気分の問題であることをお断りしておく。

「古書店」なら旦那さんだが、「古本屋」なら親父とか爺さんだもんな。

だから・・・なんだということではありません。

まあ・・・文語的とか口語的とか・・・そういうニュアンスの問題かもな。

人間って本当にどうでもいいことにひっかかるよな。

それにしても午後九時前の千葉県北西部地震・・・余震が開けて午前二時になっても断続しており不気味だぜ。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第6回』(日本テレビ20131116PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・菅原伸太郎を見た。同じ部屋に若い男と女が枕並べて寝ているのに・・・何にもないではすまないだろうがっ・・・しかし、あくまでファンタジーなのである。「す・・・すきやきにしようか」というのはよくあるが・・・「す・・・ず・・・君はさ」って彼女の名前が呼べない社会人はファンタジーの世界にしかいないと思う他ない。実在してたら魔法のスリッパが炸裂すること確実である。

しかし、すずみ(多部未華子)は着々と、青(亀梨和也)の内面を掘り進めるのだった。

青の小学校の卒業文集を発掘して「将来の夢は古本屋さんになること。古本屋は忘れられそうになった本を発見する仕事です」という当たりに萌えるのだった。

「青さんって素晴らしい小学生だったんですねえ」

「そ、それ・・・ほ、誉められてるのかな」

明らかにピュアでないことを考えていた青はピュアな話題に狼狽するのだった。

しかし・・・青が小学生の頃の夢をあきらめたのにはそれなりの理由があるわけだった。

すずみは・・・それに愛人の子供という青の出生が関わっていることを察して言葉を濁すしかないのだった。

ともかく、すずみとしては・・・青が古本屋の旦那さんになって・・・自分が女将になることが理想の結婚生活というファンタジーな希望があるのだった。

一方、最近、紺(金子ノブアキ)と亜美(平愛梨)の息子の研人(君野夢真)は百科事典の少女・大町奈美子(井上琳水)と「LOVEだね」なのだった。

小学生でさえ、よろしくやっているのに・・・と青の異母姉ですずみの亡き父の元・愛人である藍子(ミムラ)は二人の世話を焼きたい気持ちで一杯になり、祖父の勘一(平泉成)に相談するのだった。

「結婚はともかく、婚約だけでもさせないと・・・世間体もあるし」

シングルマザーに最も似合わないことを口にする藍子である。

藍子には気がかりがあったのだ。

娘の花陽(尾澤ルナ)が異母姉のすずみに青を奪われたような気持ちになり、失恋やら嫉妬やらで心が荒んでいると気がついているからである。

花陽は「ラブの嵐」に襲われているのだった。

祖父の我南人の口癖である「LOVEだね」にまで突っかかる花陽なのだった。

「ラブだねとか・・・不潔。クラスの子も恋かもとか熱愛とか言っちゃってバカみたい。私、ラブなんか絶対しないわ。だって気持ち悪いから・・・」

このままでは・・・花陽がヤンデレになってしまうと危惧する堀田家一同だった。

そんな折、古本屋「東京バンドワゴン」に京都で開催される古書店同士の懇親会「六波羅探書」の招待状が届くのだった。

一計を案じた勘一は仮病を装い、青とすずみに出張を命じるのだった。

早い話が「奥手な二人に京都婚前旅行をプレゼント」なのである。二十代の頃にそういう祖父がいたらなあ・・・と思うばかりのファンタジーなのだった。

二人はもちろん・・・いろいろな意味で快諾するのだった。

そんな二人が出発直前、買い取り対象の本を点検していると・・・ドイツの児童文学「エーミールと探偵たち/エーリッヒ・ケストナー」の中に紙が張りつけてることに気がつく。

「エーミールと探偵たち」はベルリンに遊びに来た田舎の少年がお金を盗まれ、知り合った都会の少年たちと協力して犯人を追いつめる一種のミステリである。

そんなミステリの書中の妖しい貼り紙をはがすと・・・その下にはなんと・・・。

ほったこん ひとごろし

・・・とクレヨンで書かれていたのだった。

「呪いかしら・・・」

「いや・・・告発だろう」

「じゃ・・・紺さんは・・・」

「殺人犯だったというわけだ」

「なわけねえだろ」と否定する紺だった。

ミステリアスな展開に後ろ髪を引かれる思いの青とすずみだったが・・・京都には出発するのだった。まあ・・・浮かれてますな。

全く心当たりのない・・・紺だったが・・・「LOVEだね」関係の神様である我南人にはピンと来るのだった。

「あるじゃないか・・・紺には・・・人を殺しそこなったことが・・・高校時代にっ」

「ああ・・・」

堀田紺は「野ブタ。をプロデュース」の修二と彰も在籍していた母校・隅田川高校の日々を回想するのだった。

「三迫貴恵さんか・・・」

「それだ・・・」

三迫貴恵は紺の同窓生で・・・高校時代に紺に告白し、その気がなかった紺がお断りすると・・・屋上から飛び降り自殺未遂を図ったツワモノのヤンデレだった。

一命をとりとめるとその後、転校し、消息不明になったのだった。

「えーと・・・あれから・・・10年以上たつよな」

「蘇って復讐するつもりかしら」と受けて立つ構えの亜美だった。

「だから・・・殺してないってば・・・」

父親が殺人者かもしれないと思い、鬱になる研人のためにも・・・真相を解明しなければならない堀田家一同だった。

そんな事とは露知らず・・・ルンルンで京都に到着した擬似新婚夫婦。

しかし・・・待ちかまえていたのは・・・伝説の「ぶぶ漬けでもいかがどすか」的なイケズな世界だった。

関西の古書界を牛耳る重松(篠井英介)は関東を代表する古書店主の勘一とは少ながらず因縁があるようで・・・孫の阿曾(田中幸太朗)をけしかけ・・・貴重な江戸時代の植物図鑑「ドドネウスの草木志」の付け値勝負に引き込むのだった。

敢然と受けて立つすずみだったが・・・東京バンドワゴンで代々受け継がれる文豪たちの寄稿文入りの目録が負けた場合の代償と知り・・・蒼ざめるのだった。

しかし、青はすずみを信じ・・・すべてを託すのである。

完全に・・・相手の術中に嵌っています。

なんでかって・・・言うとやはり夜のことで頭がいっぱいだったからと妄想。

とにかく・・・勝負開始である。

阿曾の付け値は・・・280万円。

すずみの付け値は・・・12万円。

「なんだと」とどよめくお歴々。

「だって・・・これ・・・偽物ですから」

すずみは・・・印刷方法の違いがら・・・贋作であることを見抜いたのだった。

「でも・・・偽物としては出来が良いから職人芸に敬意を払って値をつけました」

「・・・」

「しかし、こんなものが出回って誰かが騙されたらいけませんから・・・持ちかえって燃やすことにします」

「小娘が・・・280万円と値ぶみしたお歴々の顔をつぶすおつもりどすか」

「てやんでえ、べらぼうめ。江戸っ子はなこんなあこぎなしろもんを金輪際認めねえのさ」

興奮して泣きじゃくるすずみをそっと押しとどめる青。

「どうも・・・皆さん、ご無礼いたしました。私はすずみが言う通りにこれが全くの偽物と信じますが・・・皆さんの顔を立てて・・・280万円で買い取りたいと思います」

「贋作と知って」

「ええ・・・昔から損して得とれっていいますから」

すると平伏するお歴々だった。

「御見それしました・・・いやあ・・・さすがは・・・勘一さんの見込んだお嫁様だ・・・その目利き・・・天才の域に達してますなあ」

「え?」

すべては・・・お歴々のお遊びだったのだった。二人はただ・・・からかわれていたのである。

「イケズすぎる・・・」と絶句する青とすずみだった。

しかし・・・このお遊びにより・・・青とすずみにはさらに強い絆が芽生えたのだった。

すべては勘一の深謀遠慮なのである。

まあ・・・単純に合体を唆しているわけだが。

一方、父親の汚名を晴らすために・・・研人は花陽とともに・・・隅田川高校に三迫貴恵を呼び出すのだった。

現れたのは平成12年度の卒業アルバムの写真とまったく変わらない女(鈴木かすみ・・・「わたしたちの教科書」のポーである)だった。

しかし・・・女は三迫貴恵の年の離れた妹・佳奈だった。ちなみに鈴木かすみは実年齢23歳のなんちゃって高校三年生である。

そして・・・実際の三迫貴恵(ちすん)はそれなりに老けていたのだった。

「今でも父を怨んでいるのですか」と追及する子供探偵・研人。

しかし・・・落書きをしていたのは当時、五歳の妹だった。

「お姉ちゃんが・・・ほったあおのために死ぬかもしれないと思って思わず書いちゃったのね・・・でも、お姉ちゃんから・・・悪いのは自分の方だったと聞いて・・・あわてて貼り紙したんだけど・・・剥がれちゃったのか・・・」

「全部・・・私が悪いのよ・・・堀田君への恋心で頭が一杯になって・・・」

「やはり・・・LOVEは暴力なんですね」とLOVEに批判的な花陽。

「それは違うな・・・私にLOVEが足りなくて・・・私は自分で自分に暴力をふるったの・・・私は・・・LOVEが・・・へたくそだったのよ」

「・・・」

「でも・・・何度も失敗を重ねたけど・・・LOVEを諦めることはしなかった。そして・・・ついにこんな私でもLOVEをなんとか捕まえることができた」

「・・・」

「私・・・結婚するの・・・そのことを報告したくて・・・こんな落書きがあるとは知らず・・・本を売りに行ったの・・・お騒がせしてすみません」

「なぜ・・・LOVEが一方通行だったら・・・苦しいでしょう・・・貴恵さんはどうやって・・・それを乗り越えたの」

「それはね・・・」

どこからともなく・・・LOVEが押し寄せてくるのだった。

世界を変えることなど

僕にはできはしない

いつの日にも笑っていられるように

ただ願うだけ

「あの日も紺さんのお父さんが歌ってくれたのよ・・・」

校庭では我南人のLOVEだねが全開になっているのだった。

「だから・・・LOVEするしかなかったの・・・」

「ですか・・・」と花陽は仕方なくLOVEの階段を昇るのだった。

「おじいちゃん・・・言ってました。きっと貴恵さんは優しい人だって。なぜなら・・・紺おじさんを好きになった人だからって・・・」

「・・・LOVEだね」

「LOVEだね」

「LOVEだね」

否応なく世界はLOVEで満ちるのだった。

そして・・・京都では奥手の二人が入浴を終えていた。

「今日の君は最高だった・・・君とずっと一緒にいたいって改めて思った・・・す、すずみさん、僕とケッコンしてください」

「一つだけ条件があります・・・青さん・・・東京バンドワゴンを継いでください。そして、私と結婚して下さい・・・お願いします」

「うーん・・・そう来たか・・・」

果たして・・・ちょっとややこしい二人は・・・「LOVEだね」の世界に参加することができるのか。

それはまた・・・来週のお楽しみなのでございます。

関連するキッドのブログ→第5話のレビュー

Tbw006_2 ごっこガーデン、据え膳食わぬは恥ばかりの部屋セット。エリムフフ・・・おねだりあり、ツンデレあり、恥じらいあり、イケズあり、ヤンデレあり・・・LOVEの世界は複雑なのでスー。シングルマザーを母に持つ子はおませになるのも一苦労なのかしら。いたいけないですね。それにしてもゆっくりとゆっくりとゴールに向かって行くすずみと青ちゃん・・・もう、じれったいったらありゃしないですねえ・・・しかし、そこがムフフなのでスー。じいや、京懐石御膳でおもてなしお願いしまスー。産地偽装はおしおきですよー、でも贋作には贋作の価値があるような・・・庶民の皆さんはレプリカしか楽しめないと噂に聞きましたし~・・・まこLOVE種の缶詰発売中。お歳暮には箱詰めセットがお得でしゅ~。眠くなる成分とかギンギンになる成分入りのアブナイ海賊商品にご注意くださいだジョー・・・とにかく、奥手の二人のために据え膳をセットアップする勘一じいちゃん・・・まさにいたれりつくせりでしゅ~。しかし、それはそれでやりすぎ~な感じもするじょ~。しかし、せっかくの相続権を無駄にしないように・・・養子縁組は整えないと・・・まこなら赤の他人の家でもくれるっちゅーもんはもらうけんねー・・・来週はセニョールの巻でしゅか~?くう読書は旅・・・そして旅は読書・・・冒険を求めてみんな旅立つのさ・・・普通に恋をして、普通に夢を見て、普通に生まれてくる人ばかりじゃないけれど・・・普通なんてLOVEの前には・・・どうでもいいことなんだよね~・・・まあ・・・それでも愛人とか・・・不倫とか・・・特別な関係を認めるのは簡単じゃないけどね~みのむし陽ちゃん・・・のりこえて・・・るるる・・・そして朝晩大阪京都イケズ対抗戦・・・シャブリかすみちゃんは幽かな彼女第四話からココなのでありました~ikasama4年賀状あまちゃんあるよまめぶかなmariいよいよ・・・来週は青ちゃんの出生の秘密公開のようですね。せめて、我南人は本当の父親だといいのですが・・・

ドドネウス草木誌についてもう少し知りたい方はコチラへ→天使テンメイ様の♪な記事

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2013年11月16日 (土)

あたくしには人造人間もモビルスーツも関係ありません!・・・を謎解く(長澤まさみ)

それは・・・セイラ・マスではなくて、イセリナ・エッシェンバッハだから・・・。

イセリナの魅力、分らない人多いよね。

みんな・・・イセリナのように愛せないし、イセリナみたいに愛されたことないからね。

でも・・・今回は愛する人の夢をなんとか、かなえようとする人がゲスト・ヒロインなんだから・・・「憎い敵! せめて・・・せめて一矢なりとも報いたいのです!・・・ 逃がさないでください! ・・・絶対、絶対に倒してください!! 」なんだよね。

愛のためになんだもんね。

ガンダムネタは禁止だと何度言ったら・・・ま、今回はいいか。

それにしても・・・甘い結末だよな。

「ものを考えるロボット」こそが・・・ロボット科学者の見果てぬ夢だよな。

「ロボットが単純でいい」なんて・・・いかにも底が浅いお茶の間向きの結論じゃないか。

まあ・・・この脚本家は底の浅さで勝負するタイプだから・・・なるほど。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)第6回』(テレビ朝日201311151115~)脚本・渡辺雄介、演出・小松隆志を見た。この物語の定型である「都市伝説とは無関係に事件は解決するが、実はその背後には都市伝説的なものが関与している」をついに壊した夢のない結末に見えるが実は・・・脇役であり、月子(長澤まさみ)をサポートするUIU(非科学捜査半)所属の新人刑事・浜中彩乃(高月彩良)の奇妙な振る舞いこそが・・・それを補完している。浜中刑事は実は「複雑な感情を持った人造人間」である疑いがあるからだ。ガンダム関連の会話において背後で密かに喜んだり、哀しんだりのリアクションをしている浜中刑事は実はこれより先の領域に触れた人工知能搭載型のアンドロイド(人造人間)に違いないのである。もちろん、根拠はないのだった。・・・ないのかよっ。ただ、浜中刑事が月子を敬愛するのは・・・そのように初期設定がなされているからで・・・画面で時々、高速移動をしていたりする。・・・単なる編集ミスだろうがっ。

やはり、こういう話、定番に沿えないのは脚本家の未熟を・・・まあ、いいではないか。

「愛するものの死」を乗り越えられず、その復活を願うのは古典である。

日本神話なんか、イザナギが黄泉の国までイザナミを捜しに行ってしまうのである。

日本で最も著名なロボットであると言える「鉄腕アトム」はそもそも、天馬博士が交通事故死した息子トビオを復活させるために製作した感情を持ったロボットなのである。感情を持たせることができた天才が・・・何故、成長擬装システムを組み込まなかったのかは謎だが・・・アトムは身長が伸びなかったのが理由で・・・天馬博士に捨てられてしまう。・・・まあ、天馬博士、発狂してたんだよな。

医学なんていうものは基本的に「愛するもの(自分自身を含む)を死から逃れさせたい一心」で発達した科学なのである。

まあ、そういう古典的テーマに新たに一編が加わったのだった。

そもそも・・・人工知能とは何か・・・人間の複雑な心とは何かを・・・人類は未だ解明していないという・・・そのことすら知らない人がいる・・・こんな世の中じゃ・・・まあ、いいか。

ちなみに・・・ドラマに登場する「これより先の領域に触れてはならない・・・2003年に自殺したロシアの科学者ニコライ・ボリコフの最後の言葉。ボリコフは自殺する前日、人間と同等の感情を持ったロボットの開発に成功した」はすべてフィクションである。そういう噂の原型は2006年頃にあったが・・・ロシアの科学者ニコライ・ボリコフは実在しないので検索しても無駄ですぞ。

そもそも・・・ロボットが人間と同等の感情を持っていることはテストすらできないという考え方もある。なぜなら、人間に感情があることをテストすることも不可能だからである。

テストであなたに感情が無いと言われて・・・感情的になる人間は少なくないだろうし。

つまり・・・すべては・・・人間に複雑な感情があるという仮説前提のフィクションなのでございます。

もう・・・それ以上説明しても、分らない人には永遠に分らないだろうから、やめたまえっ。

たくみな男にかかれば

女はただのマリオネット

気がついた時には

いいように腕の中

夏の終り・・・今年は雷雨の当たり年だった。

そして・・・雷雨には・・・人造人間がつきものなのである。

なにしろ・・・大電力供給源と言えば落雷しかなかった頃のファンタジーからすべては生まれているのだ・・・「フランケンシュタインの怪物」も「鉄人28号」も「キューティーハニー」も・・・。

その延長線上に「機動戦士ガンダム」もあるのだった。

「月子さん・・・ガンダムにも興味があったんですか」

「ガンダムにも都市伝説はあるから」

「手塚治虫がガンダムを見て、これのどこが面白いのか教えてくれと叫んだとか」

「それ・・・単なる事実でしょう」

警視庁鑑識課の勝浦くん(溝端淳平)と月子と二人は・・・お台場ガンダム見学デートをしていたのだった。もう、かなり親密と行ってもいいのではないかっ。

「ガンダムはなんといっても戦争アニメだっていう認識が必要ですよね」

「そうなの」

「そうですよ・・・ジオン軍はドイツ軍だし、旧ザクは一号戦車だし、ギレンはヒットラーのしっぽだし・・・」

「現地調達、即実戦の少年兵だもんね」

「そうですよ、ある意味、戦争万歳アニメです」

「その断言にはいろいろと問題あるんじゃ・・・」

「なんてったってモビルスーツはロボットである前に兵器ですから」

「あれは乗り物なんじゃないの・・・」

「まあ、考え方ですよね・・・コンピューター搭載の現在の自動車だって、走るロボットだって言えますから」

「まあね」

「それに機関銃でも搭載すれば、警察車両だって、乗り物で、ロボットで、兵器ですから~」

「今日の勝浦くん・・・語るわね」

「だって・・・ガンダムネタでいいわけですし~」

そんな二人に声をかけてくる駅前にたむろするガンダム詣でのおタク軍団。

「あなたたち・・・警察の人なんですか」

「ええ・・・そうですが・・・」

「実は・・・待ち合わせしている人間と連絡がとれないんですけど」

「いや・・・それはさすがに警察の仕事じゃ・・・」

「いいえ・・・私の直感が事件だと叫んでいる」

「マジすか・・・」

二人に声をかけた井本廣幸(山本浩司)の知人である・・・待ち合わせに来なかった男・ロボット工学の教授・貝原康介(矢柴俊博)の自宅を訪ねる月子と勝浦くん。

「あ・・・鍵がかかってない」

「あ・・・月子さん、住居不法侵入です」

室内は・・・いかにも科学的な研究室という感じ。そして、ガンプラを発見する勝浦くん。

「勝浦くん・・・バスルームに来て・・・」

「えええ・・・他人の家で入浴はいくらなんでも・・・」

しかし、月子は貝原教授の死体を発見していたのだった。

貝原教授は入浴中に浴槽にパソコンを落し、感電死したように見えた。

しかし・・・壁には怪しいメッセージが残されていたのだった。

ハカセ ヲ コロシタ

モウ ダレ モ

ワタシヲ

セイギョ デキナイ

そして・・・データ復元がなされた博士のパソコンからは「宛先不明」のメールが発見された。

これより先の領域に触れてはならない

・・・残された二つの文章から・・・月子は・・・。

「人造人間が生みの親である教授を殺した」という「フランケンシュタイン」の予言の成就を確信するのだった。

「それは・・・」

「子供はいつか必ず親を殺すという・・・都市伝説の実現よ」

「そんな・・・都市伝説あるんですか・・・」

「神話の基本中の基本じゃないの・・・」

「ああ・・・何故、人類の祖先は・・・種として存続していないのかっていう話ですか」

「その通り・・・それは人類が滅ぼしたからに決まっている。子供はいつか必ず親を殺すのよ。だから・・・人類も・・・」

「新人類もしくは・・・進化した人工知能によって滅ぼされるわけですね」

「それが歴史の必然という・・・都市伝説よ」

「なるほど」

「ついに・・・その第一章が開かれたのかもしれないわ」

「いや・・・どうかな」

「それでも、男ですか、軟弱者っ」

「セイラさん・・・」

こうして・・・「人造人間による殺人事件の線」で捜査は開始されるのだった。

「そんな馬鹿な」と丹内刑事はいつものように憤慨するが・・・どうやらガンダム世代である柴山刑事は・・・「人造人間ではなくて・・・強化人間の仕業ならありえる」とうっとりするのだった。

「セイラが長澤まさみなら・・・フォウ・ムラサメはガッキーですかね。ロザミヤは戸田恵梨香で・・・プルは・・・どの美少女子役が・・・裸で走ったりして実写だとアグネス・チャンが物議を醸しますかね」

「なにを言っとるんだ・・・貴様は・・・修正するぞっ」

捜査を始めた丹内に・・・貝原の助手・中迫初美(浅見れいな)は「入浴中に感電するような設備ではなかった」と他殺の可能性を仄めかせる。

やがて・・・貝原の友人である科学ジャーナリスト・瓜生一郎(大鶴義丹)が貝原の死んだ妻・美土里(伊藤久美子)と三角関係にあった疑惑が浮上するのだった。

そして・・・全国各地で入浴中の感電死が相次ぎ、その度に謎の犯行声明が警察に送られてくる。

月子は・・・瓜生に「一体、貝原博士は何を研究していたのか」と尋ねるのだった。

「あいつは・・・死んだ奥さんそっくりの姿と・・・そして心を持ったロボットを作ろうとしていたのだ・・・しかし、そんなことできないに決まっている」

「なんでそんな風に決めつけるのです・・・瓜生さんは・・・貝原博士とは親友だったとお聞きしました」

「そうさ・・・僕らは大学のガンダムサークルで知り合ったんだ。最初に彼の亡くなった奥さんの心を奪ったのは僕の赤い彗星・・・シャア専用ザクだったのに・・・気がつけば、彼女の心は連邦軍の白いモビルスーツに移っていたんだ。二人はまるでアムロとララアのように結ばれたのさ。その頃の僕たちの夢はいつかガンダムを作って、それに乗り込むことだった。しかし、現実にはあんな巨大な重量のロボットを建造する材料も動力も・・・この世にはないんだよ・・・心を持ったロボットも同じさ」

「しかし、理論的には可能だという人もいます。それに伴う技術が不足しているだけだと」

「確かに、レオナルド・ダ・ヴィンチはヘリコプターを考えた。当時の人間はそれを夢想と笑っただろう。そして・・・現在の我々はヘリコプターが空を飛ぶことを知っている。しかし・・・それには長い歳月と・・・様々なテクノロジーの進歩が必要だった」

「つまり・・・時間の問題じゃないですか」

「そうさ・・・しかし・・・時間は有限なんだ・・・我々の生きている間に複雑な心を持ったロボットなんてできないんだよ」

その言葉に顔をしかめる浜中刑事だった。

「それにしても・・・なんで・・・ロボットは・・・博士を殺したのかしら」

「君は・・・私の話を聞いていなかったのか」

捜査線上に・・・博士に恨みを持っていた男が浮かぶ。

それは・・・博士の捜索を依頼した井本廣幸だった。彼は博士の亡くなった妻・美土里の実弟だったのだ。しかも・・・彼は博士に研究資金として総額三千万円もの投資をしていたのだった。

しかし・・・月子の姿を見ると何故か逃亡する廣幸。

「なぜ・・・逃げるの」

「君が・・・姉さん型ロボットなんじゃないかと思って・・・」

「確かに・・・月子さんは・・・亡くなったミドリさんと似ているかもしれない」

「ええーっ」と納得できない月子だった。

「僕は・・・彼が研究に夢中になって姉のことを省みなかったことを恨みには思っています。しかし、ガンダムを愛する気持ちは別です・・・ガンダムの前では人は平等だから」

「ガンダムは神に等しいものな」と合点がいく柴山刑事だった。

そして、実は精神を持つ人造人間である浜中刑事は涙するのだった・・・おいっ。

「だから・・・三千万円くらいで・・・彼を殺したりしませんよ」

「お金持ちで、いらっしゃったのね」

「セイラさんっ」

「でも・・・僕は見た・・・姉さんそっくりの人造人間を・・・あれはモンスターだった」

捜査は暗礁に乗り上げるが・・・田村由貴(小泉麻耶)と牧原里奈(風間亜季)の婦人警官コンビが携帯電話をバケツの水に落す騒ぎが発生し・・・月子はニュータイプとして額に稲妻か走るのだった。

やがて・・・月子は浜中刑事に命じ、偽のニュース情報を博士の助手と、博士の友人、そして博士の義理の弟のパソコンに送信させる・・・それは・・・かなり・・・犯罪的である。

そして・・・月子自身は・・・特殊メーキャップで姉さん型ロボットに変装するのだった。

恐怖に慄く・・・丹内刑事。

しかし・・・博士の助手は驚かない。

鬘を丹内の頭にのせた月子は謎解くのだった。

「私は・・・皆さんのそれぞれに・・・感電死のニュースを送りました。発生時刻は一緒ですが場所については・・・違うものを・・・」

「・・・」

「すると・・・中迫初美さんに送った地名と・・・新しい犯行声明の地名が一致したのです」

「・・・」

「私はとても残念な気持ちです・・・博士の作った人造人間が・・・雷撃をビビビと放ちながら生みの親の博士を殺し、空を飛び、山を越え、全国で放電殺人を繰り返した・・・そういうゴシックな展開ではなかったことが・・・妄想で完全に都市伝説解明だったつもりなのに・・・こんなに現実が強いなんて・・・」

「セイラさんっ」

「・・・」

「私は・・・不思議でした共同研究のデータが入ったパソコンを初美さんに返却した時に・・・お湯につかったパソコンについて・・・初美さんが・・・さして心配しなかったことに・・・」

「・・・」

「それは・・・あの夜・・・あなたがすでにパソコンのデータを確認したからですね・・・そして・・・これは連続殺人事件ではなく・・・最初からすべて感電事故だったのですね」

「日本人・・・入浴中に感電死しすぎだろうがっ」

「すべては・・・愛だったんですよね」

「そうです・・・私は先生を愛していました。本当は男と女になりたかった・・・でも助手としてでもいい・・・博士の側にいたかった・・・それを言おうと博士を訪ねると・・・彼は亡くなっていたのです。そして・・・パソコンには・・・私宛のメールが残されていた」

初美さん君がそばにいると僕は君を好きになってしまうだろう

だが僕は研究に没頭するあまりすでに一人の女性を不幸にしてしまった

僕はもう誰かを好きになってはいけない

君と僕は これより先の領域に触れてはならない

「私は・・・メールを改竄しました・・・そして・・・博士の夢だった奥さん型ロボットの存在を捏造したのです・・・月子さんがしたような変装もしました・・・ニュースにあわせて犯行声明も送りつけました」

「なんでそんなことを・・・」

「夢の実現を待ち切れなかったのさ・・・そうだね」と口を挟む瓜生。

「はい・・・博士の夢が実現された世界を見たかったのです」

「それは・・・今ではなかったからね」

「瓜生さん・・・」

「僕はね・・・もう批判に飽きたんだ・・・これからは貝原と一緒に・・・夢を追いかけるつもりだ」

瓜生は隠された扉を開いた。

「紹介しよう・・・ミスターカイバラと・・・ミセスカイバラ・・・まだ精神はないが・・・二人にそっくりの僕のアシスタント・ロボットさ・・・簡単な会話や・・・ちょっとしたダンスなら・・・人間と同じようにできるんだ」

「なるほど・・・」

「夢を実現する幸運な時代に生きるものもいる・・・でも、途中経過だっていいじゃないか。いつか、複雑な精神を持ったロボットが生まれる。その基礎研究をするのだって・・・立派に夢の中にいるのだと思う・・・君が手伝ってくれるといいな」

瓜生は初美にむかって微笑むのだった。

「初美さん、あなたならできるわ」と月子。

「セイラさん・・・」と勝浦くん。

「えーと・・・結局・・・これは事件なのかな・・・」と丹内。

「まあ・・・世間を騒がせましたけど・・・」と柴山。

「厳重注意の範囲ですね」と月子。

「さあて・・・じゃあ・・・帰って風呂にでも入るか」と名残惜しげに鬘を脱ぐ丹内だった。

人々が去っていくのを二台のロボットが見送った。

浜中刑事は振り返って目配せをした。

結局、人間はロボットに感情があるのかどうか知ることはない。

なぜならロボットにはロボット同士にしかわからない感情があるのだから。

しかし、月子は人知を超えて・・・ロボットたちの暗黙の会話が為されたことを感じ取り・・・微笑みを浮かべるのだった。

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シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の都市伝説の女Part2

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2013年11月15日 (金)

彼岸島ウルルン滞在記(大和悠河)

2013年11月8日、最大瞬間風速90メートルという猛烈な台風30号が直撃したレイテ島。

被災者総数は400万人を越え、死者は数千人に上ると推測されている。

今年、発生した台風は・・・ついに常軌を逸し始めたようだ。

自然の脅威はまだまだ人類の前に立ちはだかっている。

1944年6月、マリアナ沖海戦に敗北した大日本帝国は8月にテニアン島、グァム島が陥落し、フィリピンが最前線の一つとなってしまう。

その結果、防御側の日本軍がフィリピン奪還を目的としたアメリカ軍輸送船団を撃滅する狙いの「捷一号作戦」を発動、攻撃側の米軍がフィリピン周辺の広範囲に亘る日本軍拠点を攻撃して露払いを行い、その後レイテ島に上陸する「キングII作戦」を発動する。

そして、10月、両軍は「レイテ沖海戦」で激突する。

それから70年近い歳月が流れ・・・今、平和の海は大自然の猛威にさらされたのだった。

国連の専門チームの指揮により、各国の支援が行われる今、困難な任務にあたる人々の無事を祈るばかりである。

で、『彼岸島・第4回』(TBSテレビ201311150058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、演出・横井健司、総監修・三池崇史を見た。どこにあるのかも定かでない彼岸島ではついに人間対吸血鬼の攻防戦が始る。今回もドラマ版の登場人物たちの行方を追う形で・・・その展開を見守ることにしよう。

涼子(水崎綾女)・・・回想シーンで登場。篤のバカが封印から解放した吸血鬼・雅によって襲撃され、多くの島民とともに凌辱・吸血の対象となり、雅の足元にひれ伏す姿勢で登場。状況に茫然とする篤に「逃亡」を指示する。その口内にはすでに牙が生えており、吸血病に感染したことが明らかとなっている。現在の消息は不明。

ユキ(山下リオ)・・・篤から・・・島の状況についてレクチャーを受ける。解放された吸血鬼のルーツが島を訪れた民族学者の記録によって「東欧に発した吸血鬼の一族がシルクロードを通ってこの島に土着していたものらしい」と知る。由緒正しいドラキュラ一族の縁戚であるらしい。まあ・・・ドラキュラ総本家は縁戚関係を絶対に認めないと思うが。しかし、単なる吸血鬼の末裔ではなく、もう一つのファクターがからんでいるらしいが、日没が近いためにその話は持ちこしになる。監禁のケンを救出するために「病院」に篤や明とともに向かうが途中で西山と合流し、「篤の隠れ家」に西山と引き返し、お留守番。救出されたケンと感激の再会を果たす。山下リオは言わずとしれた大塚千弘の妹である。「白夜行」で綾瀬はるかの、「アテンションプリーズ」で上戸彩の、「山田太郎ものがたり」で多部未華子の、ヒロインのお友達と化した姉に対して、ヒロインをゲットした今回、妹の逆襲はなるのか・・・。「あまちゃん」→「リミット」と来てここである。

(佐藤めぐみ)・・・上陸後、姿を消したまま消息不明中。

(白石隼也)・・・ケンを救出したいと兄に宣言し、西川とユキを残し、「病院」へ。無事にケンを救出したが・・・一度、篤と別行動の後、ピンチに陥った篤を救うために「篤から渡された拳銃」で吸血鬼・雅の額を撃ち抜く。しかし、雅を「死」に至らしめることはできず、ケンを連れて篤とともに「隠れ家」に戻ることに成功する。西山とユキを二人で残すことに不安を感じ、無事を喜ぶケンとユキの抱擁に嫉妬する。吸血鬼に包囲されている緊張感をまるで感じさせないゆとりを感じさせる・・・アホだな。

(鈴木亮平)・・・回想シーンでは婚約者の涼子が吸血鬼化したことで絶望するが・・・自分の不始末を片付けるために・・・雅を打倒するまで島に残る決意を固めたらしい。サバイバル力や戦闘力は一体、どこで身につけたのかは謎である。弟の明とともに病院に乗り込み、ケンを救助した後で、謎の怪音を探りに出かけ、雅と再会する。

吸血病感染後の患者はいくつかの変体となるらしい。

血を吸うと吸血鬼。

血を吸わないと亡者。

亡者が亡者の血を吸うと巨大な怪物化。

雅はいろいろと実験しているらしい。

「なにやってんだ・・・」と篤は唖然とするが・・・。

「久しぶりに血を吸わせてもらう・・・久しぶりに吸ったあの血は美味だった」

断固、拒否する篤は・・・雅を愛する女医姿の吸血鬼・アスカを撃退することに成功するものの、雅の武器・鉄扇の前には敗れる。危うく吸血されるところを駆けつけた明の銃撃で救われる。しかし、しぶとく蘇生する雅を残し、むなしく脱出するしかないのだった。その後はケンと明を無事に「隠れ家」に連れ帰る。

ケン(遠藤雄弥)・・・監禁されていたが、吸血される前に篤・明兄弟に救出され、「隠れ家」で待っていたユキと涙の再会を果たす。

西山(阿部翔平)・・・ついに足手まといのポンと喧嘩別れして島内を彷徨っていた。しかし、明たちと再会し、ユキとのお留守番を選択・・・明を不安にさせる。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・回想シーンでは涼子を吸血し、島のキングにおさまる。現在では島を完全に把握し、亡者を亡者に食わせたりしている。由緒正しい東欧由来の吸血一族の末裔で・・・その他の吸血鬼とは一線を画すらしい。魅了(チャーム)の能力を有する気配がある。明の射撃で眉間を撃ち抜かれるが窒息パイプをモノともせずにただちに復活する。ドラキュラより強いようだ。幽かにマルメガネこと篤への執着心を匂わせる。よほど・・・篤の血が美味しかったらしい。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・ドラマ版オリジナルキャラクターらしい、復活した雅に吸血鬼とされた女医のなれの果て。島のキングである雅に忠誠を誓い、愛を捧げているらしい。雅の前座として篤に勝負を挑むが敗れてしまう。篤の血を望む雅によって・・・篤に激しい嫉妬を感じる可愛い吸血鬼である。

「ああ・・・なぜ・・・このようなものでなく・・・最初に私の血をお吸いになってくださらなかったのか」

「すべては・・・さだめよ・・・」と嘯く雅。ここだけ・・・宝塚歌劇団の匂いがします。

まあ・・・さすがに・・・「宝塚版彼岸島」はないだろうな。

ポン(西井幸人)・・・西山と別れ山中を彷徨っているが・・・すでに吸血病を発症していることが明らかになる。「誰か助けてください」と彼岸島の中心で愛を叫ぶのだった。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。まさか・・・このままフェイドアウトする気か。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者。

以上・・・今回も涼子と冷の生存は未確認。

篤が何体かのザコ吸血鬼を倒した模様。篤VSアスカ、篤VS雅、雅VS明はそこそこ盛りあがった。亡者や怪物亡者はチラ見せである。

予算の限界かっ。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

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2013年11月14日 (木)

君をさらっていくよ(岡田将生)お前は永遠に俺のものだ(堺雅人)絶対、夢だもの(新垣結衣)

案の定、夢だったわけだが・・・。

女としての黛はつまり・・・古美門に抱かれたいと心の底では思っているわけである。

しかし、前回は・・・羽生に抱かれてもいいと覚悟を決めていたのだった。

つまり・・・黛はとにかく・・・性的未経験からの卒業を目指しているのだな・・・あるいは性的欲求不満からの脱出というか。

一方・・・古美門も羽生も「弁護士」としての黛にはそれぞれに一目おいているのだが・・・性的にはまったく眼中になかったりして・・・。

まあ・・・そうでないとコメディーとしては成立しないもんな。

しかし、ラブコメとなると・・・古美門の方が脈があるのかもしれない。

まあ、古美門は・・・バツイチという負い目があるので・・・黛が押し倒すしか道はないんだな。

そして・・・実力的には黛にはそれができる怪力が備わっているわけである。

「やめないか・・・ポンコツ」

「先生、おとなしくしてください」

「ヒーッ」

うんうん・・・ラブコメとしての潜在力もなかなかのもんだな。

で、『リーガルハイ(第二期)・第6回』(フジテレビ20131113PM10~)脚本・古沢良太、演出・城宝秀則を見た。結婚制度にまつわる話である。局所的には嫁・姑問題と言える。非の打ちどころのない嫁・愛子(鈴木保奈美)に弱点を見出した姑の嶋澄江(高林由紀子)が姑根性という極悪な気持ちを制御できなくなり、破滅に向かって突き進む話なのである。自分しか見えなくなるというのは恐ろしいことだが・・・ありふれた話と言える。一夫一婦制度では魔法少女が魔女になるように嫁は姑になる運命だからである。

一夫一婦制度の戦略はキリスト教世界ではアダムとイブの模倣である。それは主に「平等」に重きを置いた戦略と言えるだろう。誰もが子供を作れるチャンスを持つことができれば暴動は起きにくいのである。実力によって一夫多妻が認められるイスラム圏では自暴自棄になった貧しい男たちがテロリストになるのである。儒教圏での一夫一婦制はあくまで女性に貞操を求めるもので、夫と死別した時の未亡人が夫に殉じることは認められず、新しい夫に嫁ぐことが強制されるのが普通である。一方、現代では一夫一婦制度もパートナー・チェンジという形で実力主義とのバランスをとっている。いわゆる、金の切れ目が縁の切れ目ということだ。このように簡単な考察によって正しい結婚制度などというものが微妙なものであることは明白となる。

黛弁護士(新垣結衣)は自分が考える正しい法制度の在り方と・・・弁護人の利益を守る職業的節度の間で常に悩み続ける。

第一シリーズで「力なき正義は無意味」と悟った黛は・・・古美門(堺雅人)の下で・・・修行することで「自分の正義」を実現することを選んだ。

第二シリーズでは・・・「裁判によって得られる利益」ではなく、「法廷闘争を避けてお互いの最小損失を目指す和解の王子」として羽生(岡田将生)が登場し、古美門に戦いを挑む。その青臭い平和主義は黛の心情にフィットするが・・・昔の自分を見るように王子が敗北を喫するのを黛は傍観する。

しかし・・・黛の内部の矛盾はついに限界に達したらしい。

古美門事務所で・・・悪魔の下僕として働く黛。

そこに王子様の羽生が・・・呪縛からの解放をしにやってくる。

映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(2003年)のウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)となったウインウイン羽生。

しかし、海賊弁護士・キャプテン・ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)が立ちふさがる。

けんかをやめて 

二人をとめて

私のために 争わないで 

と歌い出すエリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)気分の黛。

・・・まあ、夢なわけだが。

剣戟の響き渡る古美門弁護士事務所。

服部(里見浩太朗)は「これは男同士の決闘です」と静観。

ついに、勝利をおさめる羽生。

「命はとりません」

「だから・・・君は勝てないのだ」と拳銃を取り出す古美門。

胸を弾丸に貫かれ、倒れる羽生。

「飛び道具って・・・卑怯でしょう・・・ガクッ」

「羽生君死なないで・・・」

「お前は俺のものだ・・・」とジャックはエリザベスを抱きしめ、その唇を奪・・・。

覚醒する黛は性夢を見たことにたまらない恥じらいを感じるのだった。

しかも・・・そこは古美門事務所だった。

「どうした・・・」と尋ねる現実の古美門。

「きゃあ・・・」と思わず悲鳴の黛。

「なにやら・・・最近、様子がおかしいですな」と服部。

「いや・・・いつものことだろう」

しかし・・・黛の中では、女心と・・・弁護士魂の双方が激しく動揺していたのだった。

黛は・・・依頼人との面接と言う名の「恋愛相談室」に駆け込み、拘置中の安藤貴和(小雪)にお伺いを立てるのだった。

「そろそろ・・・裁判の方針を・・・」

「あなたの方こそ・・・そろそろ・・・決断する時じゃないの・・・」

「何をですか」

「それとも二人の男の間で揺れることをもう少し・・・楽しむ?」

「そんな・・・私は決めたんです・・・先生の下で修行することを・・・」

「単に居心地がいいだけじゃないの」

「・・・」・・・図星だったらしい。

そんな・・・黛の元に・・・迷える姑の嶋・澄江が尋ねてくるのだった。

澄江の息子・悟(林泰文)は前妻(玄覺悠子)と協議離婚した後で、男手ひとつで澄江の孫にあたる宗太(須田瑛斗)を育てていた。そこへ後妻として愛子がやってきたのだが・・・藍子には他に二人の夫がいることが判明したのだった。

一人の女が三人の男を独占している・・・といううらやましさに目が眩む黛だったが・・・澄江が年金暮らし、愛子の年収が一千万円と聞くと・・・「危険」を察知して・・・「NEXUS Law Firm」を紹介する。

しかし・・・内縁関係の解消を求められた愛子は結局、古美門事務所を訪れるのだった。

そして・・・一妻多夫を認めない澄子と愛子と愛する家族たちとの嫁姑戦争が勃発するのだった。

愛子の内縁関係の歴史は以下のようである。

バツイチで宇田川火星(マーズ=青木柚)を育てていたとび職の宇田川と内縁関係になり、宇田川希星(キララ=内藤穂之香)、宇田川姫冠(ティアラ=滝沢美結)を出産。

芸術家のフレンチ滝口と内縁関係になり、滝口マリア(佐藤風和)を出産。

そして・・・嶋とも内縁関係になり、それぞれ週二回ずつを割り当て、日曜日をフリーとして三家庭を築いているのである。

そして・・・パーフェクトな女である愛子を慕う夫たちは自分の立場を納得し、まったく不満はない上に三家族で一緒にレジャーに行ったりもして和気藹々なのである。

しかし・・・そんな関係はおぞましいと姑は息子と愛子の内縁関係の解消を求めたのだった。

羽生は・・・「少なくとも澄子さん」が不幸だからというのだが・・・古美門に喧嘩を売る気満々なのであった。

しかし・・・本人たちに何の問題もなく、法的に不備はない。

そこで・・・羽生は・・・内縁の夫婦の幸福を壊す暴挙に出る。

ついに・・・羽生の笑顔に綻びが出たのだった。

嶋の前妻を引きずり出し、宗太の親権争いを開始したのである。

家庭より仕事を選んだ前妻だったが・・・羽生の説得により・・・放棄した親権を主張し始めたのである。

「孫にはおぞましい環境で育ってほしくない」と澄江は主張。

「しかし、宗太くんは・・・愛子さんの元で幸福に暮らしている」と論破する古美門。

「けれど・・・愛子さんは入籍して・・・宗太くんの正式な母親になる気はないのですよね。それで宗太くんの幸せを本当に願っていると言えるでしょうか。法的には赤の他人であることに固執しているわけですよ」

一妻多夫の内縁関係を維持したい愛子は返答に屈するのだった。

依頼人と老婆の間で揺れる黛だった。

黛の価値基準は常に立場の弱いものの味方になりたいという心情によって揺れる。

お年寄りは文句なくその対象である。

しかし、依頼人は・・・年金生活の姑ではなくて・・・年収一千万円の嫁なのである。

さらに・・・羽生は家族の切り崩し工作を開始する。

とび職の宇田川には同僚のひろみ(川面千晶)を紹介し、芸術家の滝口には初恋の女教師・吉川先生(勝平とも子)を紹介するのだった。

「1/3ではなくて一人の妻を独占」につられてよろめく夫たち。

そして・・・残った嶋を親権問題で責め立てるのである。

「単にバラバラにするだけでなく・・・再構成をしているわけですから」と黛は羽入を弁護するような発言を古美門に漏らす。

「一人のかわいそうな老婆の個人的信条を守るために・・・幸せだった三つの家庭を破壊するのが・・・お前の正義なのか・・・そして、お前の依頼人から家族を奪うのがお前の仕事か・・・」と問う古美門だった。

黛は自分の中に生じた矛盾に煩悶し・・・ついに一つの手段に到達するのだった。

それは・・・黛に・・・世の中にはどうにもならないことがあるという事実を認識させ・・・思わず、涙がこぼれるのだった。それは・・・黛にとって破瓜の痛みのようなものだった。

一方で古美門は草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)に逆転のための工作活動を展開させていた。

「恋愛相談室」では安藤貴和が古美門に決意を促していた。

「あなたは・・・私の裁判にこのままでは勝てないわ」

「そんなことはありえない」

「今のあなたには怯えがある・・・あの子に去られるのがこわいんでしょう」

「まったくこわくない」

「私・・・昔、毛虫を飼ってたの・・・さなぎまでは成長したんだけど・・・蝶にはならなかった。さなぎの中で死んでしまったのよ・・・このたとえ分かるかしら」

「君は・・・実は優しい女なんじゃないか」

「あら・・・いい女は優しいに決まっているじゃない」

「なるほど・・・」

「ところで・・・今日、あの子は・・・どうしているの」

「さあな・・・」

黛は羽入を訪ねていた。

羽生に最後のチャンスを与えるためである。

それは明らかに裏切り行為だったが・・・黛の心はそこまで追い詰められていたのだった。

「これで・・・僕は・・・古美門先生に勝つことができた・・・だから君を事務所に迎えたい」

「砂漠は掘ってみなければ・・・石油が出るかどうかわからないんでしょう」

「そして・・・石油を掘り当てたのは僕だ」

(石油があるのは・・・一ヶ所とは限らないのよ)という言葉を飲みこむ黛。

愛子の弁護士として踏みとどまったのである。

やがて・・・羽生が決定的な敗北を味わう時がやってくる。

宇田川に羽生があてがったお相手の料理は最悪だった。

滝口の相手は浮気症だった。

嶋の前妻は仕事に失敗して借金を背負っていた。

全員が愛子の1/3の実力にも及ばない女であることを草の者が露呈させたのだった。

いつのまにか・・・愛子の元に三人の夫と子供たちは戻っていたのである。

羽生は古美門事務所に殴りこむ。

「約束が違うじゃないですか・・・内縁関係は解荘するととりきめたはずです」

「はい」と朗らかに答える愛子。

「それなのに・・・あなたたちは・・・何してるんです」

「これから・・・役所に養子縁組の届けを出しにいくんです」

「え・・・」

「三人の夫たちは全員、私の子供になります。これで晴れて私たちは法的にも家族です」

「そんな・・・」

愛子は感謝の言葉を黛に伝えるが・・・黛の心は晴れない。

結局・・・かよわい老婆は息子も孫も失ったのである。

「僕は許せない」と羽生は黛に告げる。

「古美門先生が・・・それとも私が・・・」

「君を攫って行く風になれなかった・・・自分自身がだよ」・・・ついに微笑み王子は笑顔を失ってしまったのである。

黛は・・・その後ろ姿を・・・ただ見送るだけだった。

月光が古美門事務所のテラスに差し込んでいた。

「今日は・・・夜路に迷わぬ月夜ですな」と服部。

「・・・」と頭上を見上げる古美門。

「泣いておられましたな」

「いつものことでしょう」

「いいえ・・・先生が命じられるより先に・・・黛先生は養子縁組の書類を用意しておられました・・・泣かれたのは・・・その時です」

「そうですか・・・」

古美門の密かな決意を知らずに事務所に戻ってくる黛・・・。

「君はクビだ・・・」

「今度は何ですか・・・」

「羽生のところへ行きたまえ・・・そして一人で戦ってみたまえ・・・そうすれば、少しはマシになっていることに気がつくだろう」

「何を言ってるんです・・・私は先生に認められるまで・・・ここで」

「だから・・・認めると言っている」

「先生・・・」

「これまでよくがんばってくれたな」

「どうして・・・けなさないんです・・・」

「ポンコツなりによくやったと言っている・・・もう君をこき使うことはない。そして守ってもやれない。君自身の力で立つ時がきたのだ。これまで・・・ありがとう」

「・・・」

「がんばりたまえ」

古美門は自室に去って行った。

「私の・・・居場所はもうここにはないんですか」と少女のように服部相手に駄々をこねる黛。

「黛先生も・・・そういう時期がきていることにお気づきでしょう」

「・・・」

「ご活躍をお祈り申し上げております」

こうして・・・黛は巣立ちの時を迎えたのだった。

その行く道を月光が照らしていた。

黛は泣きながら前へと進むのだった。

とにかく、ぬるま湯が好きなお茶の間は絶叫するのだった。

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2013年11月13日 (水)

フレッシュ生卵いっき飲みの女(木村文乃)と死体でデビュー(廣井ゆう)

2011年のミス・キャンパスである廣井ゆうは死体役でドラマ・デビューなのであるが、それではあんまりなので母娘二役で生きて登場するのだった。

十代でデビューするのが普通の時代にあって遅咲きであるが・・・なかなかに初々しいのだった。

演出が先物買いの名手なので目のつけどころが・・・「コントローラー、でかっ」的に妖しいのだった。

最近、言ってることが・・・意味不明のこと多いぞ。

理屈っぽいのに言ってることに筋が通っていない感じを目指しています。

その目標は間違ってると思うぞ。

「海の上の診療所」のゲストの話はいいのか・・・「都市伝説の女」とかぶるから、今週はいいや。

なんか・・・投げやりだな・・・だから・・・素晴らしいインターネットの世界で・・・戦略ゲームの実況動画をハシゴするのはやめろって言ってるのに。

だって・・・滅茶苦茶で面白いんだもーん、米国全土が帝国の原爆であぼんとか・・・。

何・・・みてるんだよ。

大河ドラマのスタッフも戦争を面白おかしく作るタッチを見習ってもらいたいよ。

いいか・・・戦争は基本、面白おかしく語らない・・・これ、テレビの基本な。

そ、そうなのかっ。

で、『・第4回』(TBSテレビ201311120028~)脚本・演出・三木聡を見た。あらすじのナレーション担当は第一話で爽やかな青沼(中丸雄一)にインタビューされたウエイトレスを演じていた上間美緒である。「幽かな彼女」の幽霊メグミとか、「都市伝説の女」のアイドル実希とか・・・なかなかに芸達者なのだった。

上間美緒(20)を美少女枠に入れると、木村文乃(26)、廣井ゆう(23)、工藤綾乃(17)と三歳間隔で満遍なく配置されているわけだが・・・まだちょっとものたりないな。「熱海の捜査官」の東雲麻衣(三吉彩花)、甘利レミー(二階堂ふみ)クラスのパンチが欲しいよね。だよね~。

汚らしい掟ポルシェ的な感じの白川(中丸雄一)とゲビヤマくんこと眼鏡をかけた美人編集者の下日山(木村文乃)は賽の河原町の温泉宿「猫旅館」で和風の朝食食べるのだった。いいよねえ・・・旅館の朝の和食・・・そそるよねえ、生卵。

しかし、風情のない白川は花瓶の花をむしり取り、女の生首にたとえて殺人事件を振り返るのだった。

白川は謎が簡単に解明されすぎて・・・不満なのだった。

「こんなんじゃ・・・ちっとも盛り上がらない」

「小説、書けそうですか」とおそるおそる本題に入るゲビヤマくん。

「無理だね」とにべもない白川だった。

しかし、花瓶の花をむしりとったことを女将の櫻井野薔薇(ふせえり)と蝉岡蟷螂(松尾スズキ)から激しく責め立てられるのだった。

「弁償してください」

「ちょっと、小便です」

しょうもないネタでまとめながら、インタビュアーに変身して難を逃れる青沼(中丸雄一・二役)だった。

インタビュアーとゲビヤマくんは消ノ原町に向かい、「チューリップ殺人事件」の遺族の一人、阿波島翠(廣井ゆう)の思いっきりなんちゃって高校生の娘・阿波島彩(廣井ゆう・二役)のインタビューに向かう。

ここで・・・玄武(録音機)による二人きり、横顔語り、泣き落しテクニックを駆使するためにゲビヤマくんに席を外させるインタビュアー。

ゲビヤマくんはエヴァ的な鳴らない携帯で・・・出番の少ないヘパイストス出版第二編集部編集長・風見川策志(岩松了)に連絡を取るが・・・充電に失敗した上に携帯充電器の電池は腐っているのだった。

途方に暮れたゲビヤマくんの前にスーパーの店長・花谷雅(裵ジョンミョン)が現れる。

無防備なゲビヤマくんは誘われるままに車に乗り込むのだった。

そんなこととは露知らず・・・新事実をつかむインタビュアー。

夷鈴子(工藤綾乃)が泉を発見した後で・・・阿波島翠は治療が難しい腫瘍を発症。翠の母親(高井純子)はすでにパワースポットとして有名になりかけた「三貴子の泉」の水を翠に飲ませる。その結果、赤黒いものを吐きだした翠は腫瘍が完治したのだった。その事例をとりあげ・・・パワーヒラリスト・黒曲亜理里(松重豊)は「三貴子の泉」を売り出したのだった。しかし、翠本人は・・・三貴子の泉の水を「救いのない救いの水」として怪しんでいたという。そして、いつか、その欺瞞を暴くつもりでいたらしい。だが、阿波島彩が五歳になった時、翠はチューリップ殺人事件の犠牲者になったのだった。

意外なことに・・・翠の腫瘍の治療に当たった医師は現在の消ノ原町の町長・里美補(外波山文明)だったらしい。

「でも・・・気をつけてください」と最後に告げる彩。

「何にですか」

「この町には・・・もう一人いるので・・・」

「もう一人?」

「母はもう一人が怖いっていつも言ってました」

謎の言葉を訝しく思うインタビュアーだった。

一方、うまうまと人気のない場所につれこまれたゲビヤマくんは漸く、貞操もしくは生命の危機を感じるのだった。

「何も逃げなくてもいいじゃないですか」と迫ってくる花谷。

逃げ出そうとして、思わず、躓いて倒れるゲビヤマくん。

犯される、もしくは殺されると思った瞬間。

花谷を背後から襲う天狗野郎(森下能幸)だった。

危機一髪でピンチを救われたゲビヤマくんは天狗野郎の股間の鼻に包帯を巻いた天狗面裏の携帯電話を借用してインタビュアーと連絡を取るのだった。

阿波島彩から借りた自転車でゲビヤマくんを捜索していたインタビュアーはホッと胸をなでおろすのである。

天狗野郎は花谷の車を奪い、町を脱出するらしい。

「ありがとうございました」

「あいつらに・・・俺の家を燃やされたので・・・復讐するために尾行していたんだ」

「これからどうするんですか」

「ここにいたら・・・殺されるから・・・この町にはもう一人いるから・・・」

謎の言葉を残し、天狗野郎はヒーロー然として、いずこかへ去っていくのだった。

その頃、輪姦する、あるいはなぶり殺しにするかのようなムードを漂わせていた消ノ原町の消防団の川本(少路勇介)と笹川(三島ゆたか)は呼び出されてきたものの・・・花谷が気絶していたのでガッカリするのだった。

ゲビヤマくんと合流したインタビュアーは月に一度のおやすみの日である「三貴子の泉」に裏道から接近する。

「なんで、表の階段を使わないのですか」

「あそこには監視カメラがあるからだ」

まあ・・・表にあるなら裏にもあるだろうとは思うが、とにかく、こっそりと近づいた二人は「三貴子の泉」で男たちが定期点検のような作業をしているのを発見する。

「あの日、殺された夷鈴子と阿波島翠は表から・・・そして殺されなかった真壁真奈美は裏から来たのかもしれない」

「そして・・・二人は殺されて・・・一人は助かったんですね」

「その可能性はある」

「一体・・・何があったんでしょう」

「その謎をとくために・・・夜になったらもう一度来てみよう」

それはちょっと面倒くさいゲビヤマくんだった。

消ノ原食堂「モアイ」で休憩する二人は店員の川島芳香(町田マリー)にアボガド納豆丼を注文する。

そこで・・・消防団トリオに呼び出されるインタビュアー。

しかし・・・トリオはただ・・・花谷の不始末を謝罪しただけだったのだ。

しかも、緊張感にかけるゲビヤマくんはアボガド納豆丼を二人前平らげてしまうのだった。

インタビュアーはゲビヤマくんを憎からず思っている様子なのだが・・・そういうところをどう思うのかは今回は口にしないのだった。

玄武は置き去りにされていたがいつのまにか回収されている。これが伏線なのかどうかは謎だが・・・たぶん、あまり意味はないのだろう。

夜・・・再び、裏道から「三貴子の泉」を調査する二人。

インタビュアーは泉が人工的な何かであることを示す隠されていたパイプを発見するのだった。

「やはり・・・仕掛けがあったか・・・」

「そこで・・・何をしているっ」

振り返るとそこに・・・「三貴子の泉」の管理人・甘粕真一(眞島秀和)が立っていたのだった。

ちょっとしたスリルとサスペンスに満ちた今回、インタビュアーの靴には石が入り、ゲビヤマくんは小石の入りにくいトレッキング・シューズで荷物は重いが足取りは軽いのだった。

とにかくもう一人いるらしい。パンチが効いているといいなあ。

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2013年11月12日 (火)

下世話な話で恐縮でごぜえやす(綾瀬はるか)

なにやってんだ・・・今年の大河・・・。

それにしても・・・徳富蘆花・・・よく、射殺されなかったな・・・。

今回のストーリーの骨格は徳富蘆花の小説「黒い目と茶色の目」(1914年)によるものである。

小説の本題は・・・蘆花自身を虚構化した主人公と小田久榮をモデルにしたと言われる女学生の若気の至りの話であり、その前段として女学生の母親の不倫騒動がまことしやかに語られるという展開なのである。

つまり・・・全くの虚構なのである。

それをまるで史実のように語られても・・・困っちゃうのだった。

もちろん・・・歴史は虚構であるから・・・なにしてもいいとは思うのだが・・・ほぼ同時期に・・・兄・蘇峰の主宰する新聞社で・・・元・会津藩士の娘と元・薩摩藩士の家庭にまつわるスキャンダラスな話を超脚色して面白おかしく描いて下世話な庶民に大喝采をあびた文士のやったことなのである。

しかも・・・実際の出来事から30年近く経っていて・・・関係者の了解を得たことでもない。

なんでもありの時代だったんだなあ。

それにのっかって・・・また物凄い脚色なのである。

確かに・・・主人公の兄の家庭でいろいろゴタゴタあったのかもしれないが・・・それがどうしたっていう話なんだなあ。

小説発表時、未亡人となっていた新島八重は日本赤十字社の社員として従軍看護婦となり、勲七等宝冠章が授与された名士である。齢69歳になっている。茶道教室の先生として・・・さすがに銃殺は思いとどまったか・・・。龍馬暗殺犯佐々木の兄の娘の娘・初子を養女に迎えすでに嫁に出し義理の孫の中から新島家り跡取りを物色中だったので自制したのかもしれない。

しかし・・・「平清盛」の世界の不義密通にはうっとりできるのに・・・「明治」の不倫にはまったく下世話なものしか感じないのだな。

あれ・・・偏ってんのはキッドの方なんですかね。

まあ・・・なんだかよくわからない役所を・・・それらしく演じる谷村美月は女優としては素晴らしいと思いますけれど~。

で、『八重の桜・第45回』(NHK総合20131110PM8~)作・山本むつみ、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は幕末から明治にかけての京都の侠客・大垣屋清八こと初代・大澤清八親分の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。作劇的には東宝映画の初代会長の曾祖父であるこの親分を絡ませることで・・・小田家の存在を曖昧にして・・・小田時榮がまるで天涯孤独のような感じに仕立てているわけでございます。元々、時榮は覚馬の京都時代の知人である郷士小田勝太郎の妹だそうですのに・・・。まあ・・・とにかく・・・明治の有名人の関係者だけれど名もなき人は・・・消息不明になると・・・何を言われるかわかったもんじゃないわけでございますねえ。

Yaeden045 明治18年(1885年)1月、日本人によるハワイ王国への移民始る。2月、ベルギーがコンゴを植民地化。3月、英国がボツワナを植民地化。4月、日本と清国の間で朝鮮半島への出兵に関する天津条約が締結される。出兵についてお互いに事前に通告する協定だったが、後に清国は両国が清国の天子に通告する約束だったと意味不明なことを言い出し日清戦争の要因の一つとなる。5月、日本銀行券(拾円券)発行開始。6月、第3代京都府知事の北垣国道の計画による琵琶湖疏水起工。自由の女神像がニューヨークに到着。7月、日本鉄道が大宮駅~宇都宮駅まで延伸し、宇都宮駅で日本初の駅弁発売。8月、ドイツ人のダイムラーによってオートバイの特許が取得される。9月、日本郵船が創立される。10月、東京瓦斯創立。11月、国内の自由民権運動に閉塞した旧自由党過激派で秩父困民党の指導者・大井憲太郎らによって朝鮮半島でのゲリラ活動が企画され、資金調達のための強盗や爆弾製造が計画されたものの事前発覚、婦人解放運動家・景山英子など139人が逮捕される。12月、太政官が廃止され、内閣制度創設。伊藤博文が初代内閣総理大臣となる。外務大臣に伊藤薫(長州)、内務大臣に山縣有朋(長州)、大蔵大臣に松方正義(薩摩)、陸軍大臣に大山巌(薩摩)、海軍大臣に西郷従道(薩摩)、文部大臣に森有礼(薩摩)、司法大臣に山田顕義(長州)、農商務大臣に谷千城(土佐)、逓信大臣に榎本武揚(幕臣)という布陣だった。新島襄が海外渡航より帰国。山本覚馬が京都商工会議所会長に就任。妻・時榮と洗礼を受ける。伊勢みねが長男・平馬を出産する。山本久榮は15歳になっていた。

「兄夫婦が洗礼したんで・・・これで新島家も山本家も全員がクリスチャン一家になったのでこぜえやすな」

「そうですね・・・」

新島家では襄の両親も明治十年に洗礼を受けている。

八重の兄・覚馬の娘、みねがクリスチャンの伊勢時雄と結婚しており、伊勢時雄の父・横井小楠の妻は徳富蘇峰・蘆花兄弟の母と姉妹であり、このために新島家は徳富家とも親戚関係になっている。伊勢時雄の名は横井家が北条平家の流れであることを示している。時雄の妹のみや子は前橋教会、本郷教会、神戸教会などを創立した海老名弾正に嫁いでいる。蘇峰の姉の初子は新島襄が洗礼した群馬県県会議員の湯浅治郎の後妻となっている。

会津藩所縁の京都の侠客・大澤清八の養子である大澤善助も新島襄の洗礼を受けクリスチャンとなっている。善助は一時、二代目清八を名乗っており、まさに二代目はクリスチャンなのだった。高級ブランドの輸入でおなじみ大沢商会はこの大澤組から発展している。

奈良県吉野の林業家・土倉庄三郎は日本全国の造林を行うと同時に自由民権運動などに資金援助を行い、同志社英学校にも関わった。そして、二代目の土倉龍次郎はクリスチャンとなり、後に日本におけるカーネーション栽培の先駆者となり、さらにはカルピスの創立にかかわっている。

伝道と教育という襄の二つの手が・・・新島コネクションを形成して行くことに・・・八重は不思議な思いを抱いていた。

それは・・・山本家に伝わる忍びの組織作りに似たものだったからである。

「しかし、キリスト教もなかなか油断ならねえものだな」

「ふふふ・・・八重さんの忍びの道に通じるものがあるでしょう」

すでに・・・襄も妻の裏稼業については充分に把握していた。

「しかし・・・なかなかに・・・仏の教えを駆逐することはできねえのではないのでねえか」

「そうでしょうねえ・・・仏の教えや・・・神頼みは・・・もはや・・・この国の心そのものでしょうから・・・」

「では・・・キリスト教は流行らないんでねえか」

「いえいえ・・・キリスト教は流行りますよ・・・少なくとも、クリスマスと結婚式は絶対、流行ると思うな。お正月前にちょっと華やかな気分になったり、花嫁はウエディングドレスをきっと着たがるようになるでしょう」

「まあ・・・それは信心とは別にだな」

「それに仏教には殺生戒がある・・・キリスト教にも汝殺すなかれという教えがありますが・・・殉教という抜け道がありますからね。命より信仰というのは・・・なかなかにうまみがあります」

「しかし、日本にも一向一揆があったのでごぜえやすが・・・」

「そうそう・・・教団に支配されて極楽往生を約束させる・・・キリスト教はそれをもう少し緩やかに成し遂げるのです」

「なるほど・・・」

「なにしろ・・・罪人にも天国の扉は開かれるのです」

「ふふふ・・・ヤクザやら、盗人やら、人殺しやら・・・みんなまとめて悔い改めさせるのだな」

「その通り・・・とにかく・・・そうして・・・人々に・・・神の国の栄光を広めていけば・・・おのずとこの国は・・・特別な国になっていきます」

「東京の・・・福沢先生は・・・朝鮮が白色人種に対応しないことに・・・癇癪をおこして・・・脱亜論なるものを書かれたといいます」

「まあ、後世、いろいろと言われちゃうでしょうねえ」

「この国のように血を流さねば・・・そうはならないのでごぜえます」

「そうです・・・その苦痛こそが・・・真の信仰の扉を開くことになるでしょう」

「ジョー、私には漸く、あなたの恐ろしさがわかってきました・・・」

「ふふふ・・・信仰のために国さえも捨てた私です・・・そして、世界一の鉄砲使いを妻にした私ですよ・・・今更、そんなことおっしゃらないでください」

「ふふふ・・・いかにも・・・」

「さあ・・・それでは・・・大阪の探索計画を立てましょう・・・」

「物騒な計画を・・・火を吹く前に抑えねばなんねえからな・・・」

「そうです・・・貧しきものたちが・・・幸いなのは・・・無用な騒乱を招かないでこそ・・・ですからねえ・・・アーメン」

「アーメン」

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坂の上の雲の頃

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2013年11月11日 (月)

彼女を生きたまま原子還元処理することをアンドロイドはリクエストした(木村拓哉)

アンドロイドという言葉から小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック」(1968年)を連想する人はそれほど多くはないが少なくもないだろう。

そもそもアンドロイドは・・・「人間そっくりのロボット」というニュアンスを持っている。

ただし、そのニュアンスを感じる人は少なくないがそれほど多くはないだろう。

「安堂ロイド」にはそういうアンドロイドが登場するわけである。

しかし・・・「なんでアンドロイドがこんな感情的なんだよ」とか「アンドロイドならそれっぽくしないと」とか・・・根本的にアンドロイドについて無知な人はあふれんばかりなのである。

そういう人たちに・・・「アンドロイド」は「人間と区別がつかないロボット」なのです・・・と一々説明しても無駄なのである。

つまり、そこには、いわゆるひとつの「バカの壁」が存在するからである。

小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」はおよそ半世紀前の小説だが・・・主題はまさに・・・「人間と人間そっくりのロボットの何が違うのか・・・?」なのだった。

作者のディックは四度目の結婚中で二人目の娘か生まれたばかりであった。すでに・・・「高い城の男」(1962年)でヒューゴー賞を受賞し、「去年を待ちながら」や「逆まわりの世界」で一部愛好家を熱狂させていたが・・・その天才ぶりを知るのは世界のほんのひとにぎりの人々なのであった。

なにしろ・・・作品によって醸しだされる空気が暗いのである。そして、地味なのである。

そんな中で・・・「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は生まれる。

人間そっくりのロボットが人間にまぎれこみ・・・それをロボットと見破る必要に迫られた男の話なのである。

しかし・・・アンドロイドたちは・・・まさに人間そっくりで・・・区別をつけることは困難なのだ。やがて・・・主人公は・・・最大の難問につきあたる・・・つまり・・・人間とはそもそも何なのか・・・ということである。

そして・・・人間であるはずの自分さえもが・・・アンドロイドなのではないか・・・という疑問にたどり着くのだった。

まあ・・・誤解を承知で言えば・・・物凄く哲学的な物語なのである。

つまり・・・一部愛好家にとって・・・アンドロイドとはそういうものなのである。

それに対して・・・「なんでアンドロイドがこんな感情的なんだよ」とか「アンドロイドならそれっぽくしないと」・・・などと言われてもマジで意味不明としか言いようがないんだな。

ディックは・・・1982年に死去する。その数ヶ月後に・・・「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は映画化され、「ブレードランナー」として封切られた。

その圧倒的なビジョンは一部愛好家を歓喜せしめたことは言うまでもない。

だが・・・キッドは覚えている。日本での封切り当時・・・銀座の上映館はガラガラだった。

閑散とした冷房の利きすぎる館内で素晴らしい映画の出来栄えに心震えながら・・・キッドは思った。

「この世界って・・・恐ろしいなあ」と・・・。

そして、上映期間は短縮され、早々に打ち切られたのである。

そういう意味でアンドロイドはある意味、タブーなのである。

日本人は基本的に・・・ゴツゴツしてツルツルしてブンブンしてギクシャクしたロボットが好きなんだな。

さて・・・「ブレードランナー」にはアンドロイドは登場しない。人間そっくりのロボットはレプリカントと称されるのだ。

「アンドロイドっていうとどうしてもロボットみたいだから・・・」と監督本人は語るのだった。

「リドリー・スコット、お前もか」とキッドは思うのだった。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第5回』(TBSテレビ20131110PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・坪井敏雄を見た。おそらく・・・このドラマを見てトラウマを感じる男子小学生が出現するとしたらこの回である。萌え要素にあふれたかわいいアンドロイドが非業の死を遂げる・・・心を鷲掴みにされてしまうのだな。もちろん・・・そういう子はクラスに一人か・・・あるいは学年に一人なのだ。特別な選ばれた男の子なのである。そして・・・その子は永遠にサプリ(本田翼)を求めて世界を彷徨う運命なのだな。なにしろ、すべては決定しているのである。憐れなことである。でも・・・それはある意味ですごく幸福なことなのだね。現実の世界でサプリに逢うことはまずないんだから・・・。そう思って自分を慰めながら生きていくといいと思うよ。

安堂ロイド(木村拓哉)は・・・いい人だった。

漸く、安堂麻陽(柴咲コウ)はそう思えるのだった。

(アンドロイドだけど・・・人間と同じように・・・仲間を思う心があって・・・仲間を悼む気持ちがある・・・苦しんで、哀しんで・・・悩む・・・少なくとも・・・私にはそう感じられる)

少なくとも・・・麻陽には・・・愛犬によせる思いに似た感情が芽生えていた。

もちろん・・・外見が・・・心から愛する婚約者の沫嶋黎士(木村拓哉・二役)に酷似していることへの感情的しこりが消えたわけではないが・・・それを上回る愛着が芽生えていたのだった。

(彼は・・・生まれたばかりの子犬のようなものだ)・・・そう思わずにはいられないのである。

しかし・・・安堂ロイドは犬よりも人間に近い存在なのである。

そこで・・・麻陽は・・・安堂ロイドを構うに当たって・・・将棋という遊戯を選択したのだった。

だが・・・「将棋のルール」をダウンロードした安堂ロイドは「初心者でござる」などというたわけた文言をコピーするものの・・・人間以上の情報処理速度によって・・・麻陽の将棋の腕前を軽く凌駕するのだった。

「王手・・・ゲーム終了なので投了してください」

「なんてこっちゃ・・・ふざけんな」

気分は飼い犬に噛まれた飼い主なのだった。それはたとえとしてちょっと違うんじゃね。

将棋ソフトのA.I.に軽くひねられた小学生なのだった。それはそのまんまじゃね。

連邦軍の白いモビルスーツに撃破された赤い彗星・・・もういいよ。

せっかく、遊んであげたのにと気分を害しながら大手外資系IT企業「エニグマエンジンソフト社」に出社する麻陽だった。

ドルトン川島(津村知与支)やナビエ桐生(藤本隆宏)との悪夢のような死闘が嘘のように・・・広報室長としての麻陽の日常業務は存続している。

平凡な日常と・・・非現実的な現実が表裏一体となって麻陽を抱合しているのだった。

そんな麻陽の様子を思わしげに伺う麻陽の直属の部下でシステムエンジニアの星(桐谷健太)・・・。

「いくつか・・・報告があります・・・小松左京子さんの父上が危篤状態を脱したそうです」

「それは・・・よかったわ・・・」

「それから・・・新しいクラウドのシステム上の欠陥はほぼ改善されました」

「それも・・・よかった」

「これによって・・・いくつかの広報計画を修正する必要があります」

「早速・・・とりかかるわ・・・データを転送してちょうだい」

「最後に・・・失礼を承知の上で申し上げます」

「なにかしら・・・」

「あらゆる医療機関にアクセスしましたが・・・救出されてからの沫嶋黎士さんの・・・治療記録がありません」

「なに・・・それ」

「おかしいじゃないですか・・・負傷していたのに・・・病院にいかないなんて・・・」

「なんで・・・あなたが・・・そんなことを・・・」

「違法行為なのはわかってます・・・でも僕はあなたのことが心配なんです」

「どういうこと・・・」

「沫嶋黎士はすでに死亡しているのに・・・沫嶋黎士とそっくりの男と・・・何食わぬ顔で生活を共にしているなんて・・・おかしいじゃないですか」

「何が・・・おかしいの・・・」

「何がって・・・」

「それは私のプライベートなことで・・・あなたとは関係がないことだと思うのだけれど・・・」

「確かに・・・僕のしていることは・・・常軌を逸している・・・まるでストーカーです。しかし・・・もしも・・・心配事があるのなら・・・打ち明けてもらいたい・・・それが僕の正直な気持ちなのです。何か・・・とんでもないことが起きている・・・たとえば・・・この暗殺リスト・・・あなた以外は全員死亡が確認されている・・・その中には沫嶋黎士だって・・・」

麻陽には星の麻陽に対する好意が病的なレベルに達していると確信はできなかったが・・・背後で星に拳銃のようなもので狙いを定めるロイドの姿は視認できたのだった。

「やめなさい・・・これ以上、その件にふれないで・・・あなたの命にかかわるのよ」

「僕は・・・命にかえても・・・」

「私がお願いしているの・・・私の私生活をこれ以上、嗅ぎ回るのはやめてくれって」

「・・・」

星はうなだれて沈黙した。麻陽の拒絶を受け入れる理性は残っていたようだった。ロイドはそれを確認したかのように・・・亜空間に姿を消すのだった。

ロイドは不調を感じていた。

亜空間にウージング・アウトしたロイドは・・・ナースロイドのサプリを召喚するのである。

「機能に障害が発生している。緊急メンテナンスを要請する」

「故障なんて・・・してないよ」

「バランサーが不良で・・・通常歩行にも支障が生じている」

「だから・・・それは・・・気の迷いみたいなものよ」

「ふざけるな・・・アンドロイドは悩まない」

「これだから・・・体育会系は困るのよね・・・いい・・・ナースロイドは少なくともあなたより・・・専門家なのよ・・・なにしろ理系女子なんだから」

「能書きはいいから・・・状態を説明しろ」

「その命令口調やめなさいよ・・・もう少し語彙が選択できるでしょう。私はあなたの支援システムだけど・・・別に下位には属していないのよ」

「・・・君の迅速な任務の遂行を要請しているだけだ」

「いい・・・わかりやすく説明してあげるから・・・聞きなさい。あなたのA.I.はメモリの記録と論理回路に生じた矛盾でオーバーロードしているの。矛盾ってわかるかな」

「最強の攻撃兵器と最強の防御兵器の衝突にまつわる観念と理解している。結果的にはどちらかが最強、あるいは双方の破壊で決着する」

「違うわよ・・・ありえないことがあるっていうロジックよ」

「それは・・・矛盾している」

「ふふふ・・・なかなかな気の効いたジョークですこと」

「いい・・・簡単に言うと・・・攻撃システムであるアスラシステムと・・・行動制御システムであるユカワ・オペレーション・システムが適応限界点に達しているの・・・」

「何故だ・・・」

「あなたが・・・破壊行為への嫌悪感を持ってしまったから」

「ありえない」

「いい・・・あなたの意志決定システムはものすごく複雑なメカニズムを持っているの。膨大な選択肢の中から・・・最適な選択をし続けているわけだから・・・そこにノイズが生じるわけ・・・」

「ノイズを除去すればいいのか」

「あなたの学習システムは優秀で・・・そのノイズをとりこんでいるのよ・・・」

「どういうことだ・・・」

「つまり・・・ノイズを除去するためには・・・あなたを初期化する必要があるわけ・・・」

「初期化・・・」

「だから・・・記憶を削除して・・・一からやり直すってこと・・・」

「それでは・・・俺が俺ではなくなってしまう」

「ほら・・・それよ・・・そもそもエーアールエックスセカンドサーティーンには・・・自分のことを俺なんて言う機能はないの・・・あなたは人間と同じように心を獲得したんでそんなこと言っちゃうの・・・だってそれって気分の問題なんだもん」

「・・・」

「私の人工的な感情機能とは違い・・・あなたには自然発生的な感情が生まれてしまったのよ」

「・・・」

「それが・・・あなたの制御機能すべてに波及して障害になっているわけ・・・」

「つまり・・・」

「初期化して・・・リセットするか・・・このまま、機能不全になってしまうか・・・二つに一つしかないんだよ」

「・・・」

「人間的に言うとね・・・それは心の病だからね」

「俺には・・・」

「どうするかは・・・あなたが決めてよ・・・」

安堂麻陽を警護するために監視ネットワークを展開するロイド。それは麻陽の関係者にも及んでいる。麻陽の婚約者・黎士の妹の七瀬(大島優子)の挙動に異常を検知したロイドは亜空間通路を東京帝國大学構内へと伸長する。

七瀬は謎の美少女アンドロイド・エーアールエックスナインスザラストクイーン(桐谷美玲)に示唆されて・・・黎士が解明し封印したと思われる超時空通信理論の再構築を模索していた。

七瀬の中で物理的常識と黎士の遺した超基礎理論の非常識が格闘しているのだった。

(ありえないと思えばないことになってしまう)

『あるかもしれないと考えることがスタート・ラインだ』

(でも・・・現実時空間では・・・情報の質量はゼロとはいえないでしょう?・・・言葉は振動する空気がなくては伝播しないし、文書の紙やインクにも質量がある。電子基板にも質量はあるし、電子にさえも9.10938291(40)×10⁻³¹キログラムの質量はある)

『情報を認知するために必要な質量と情報そのものを混同しているとは考えられないか』

(認知できない情報をどうやって情報として認知すればいいの)

『証拠を求めるな・・・証拠より理論だ』

(つまり・・・認知できない情報はあるのか・・・ないのか・・・ということかしら)

質量がエネルギーに変換されるように・・・情報はエネルギーに変換されてしまう。

つまり、情報もまた質量であるという理論を破壊することで生じるエネルギー。

七瀬は妄想の果てにある可能性を捜索する。

しかし・・・どのような数式も「謎」の解明には至らない。

(エラー)

(エラーかよ)

(エラーにつぐエラー)

七瀬の神経細胞は極限まで興奮と沈静を繰り返し、生命活動の新陳代謝にまで波及する。

(あ・・・呼吸をするのを・・・忘れてた)

呼吸困難に伴う急激な血圧の上昇がストレスとなって七瀬をパニックが襲う。

(ダウナー・・・いや・・・アッパー・・・いや、両方だ)

七瀬は机の引き出しを開き、興奮剤と鎮静剤を同時に服用する。

(静まれ・・・静まれ・・・そして奮起せよ)

「そんなことをしたら・・・生命活動が停止するぞ」

「・・・」七瀬は振り返り、ロイドの姿を視認する。そのショックが七瀬の精神と肉体の恒常機能を一時的に安定させる。

「一体、君は何に怯えているのか」

「怯えている・・・私が」

「ナナセマツシマの行動はすべて私の監視下に置かれている。言い方を換えれば安全が保障されているのだ」

「私を脅迫しても無駄よ・・・私が死ねば・・・この事件に関するあらゆる情報が素晴らしいパソコン通信の世界を通じて拡散するようになっているのよ」

「現在ではパソコン通信は素晴らしいインターネットと呼称されている。そして、素晴らしいインターネットは私の支配下にあり、ナナセマツシマの小細工はすでに削除されている」

「え・・・そんな・・・馬鹿な」

七瀬は確認してみる。確かに遺書プログラムは完全に破壊されていた。

「現時点での君の安全は保障されている・・・自衛対策の必要はない」

その時・・・研究室に沫嶋教授の助手たちがやってくる。

「講義のお時間ですよ」

「講義って・・・」

「何言ってるんですか・・・七瀬さん・・・沫嶋先生の講義に決まっているじゃないですか」

「沫嶋先生って・・・あなた、講義をするつもり」

「もちろん・・・するに決まっているでしょう」

あわただしく、研究室を退出するロイドと助手たちを見送って茫然と立ちすくむ七瀬の前にクイーンがウージング・アウトによって出現する。

「おばさん・・・何をビビってんのよ」

「ビビる・・・いや、おばさん?」

「そっちかよ・・・とにかく・・・この世界の鉄則を教えてあげる・・・」

「鉄則?」

「求めないものには与えられないってこと」

「・・・」

「あのポンコツのことなら・・・気にする必要はないよ・・・なにしろ・・・私が存在していることを察知することさえできない・・・オールド・タイプなんだから」

「でも・・・」

「私を疑うの・・・現在の地球のすべてのコンピューター、すべての人類の情報処理能力の合計の数千倍の情報処理能力を持つこの私を・・・」

「やはり・・・あなたもアンドロイドなのね」

「ちっ・・・わかってないなあ・・・私はね・・・全知全能の神に等しい存在なのよ・・・人間そっくりの人形の名は私にはふさわしくないの・・・これ、重要だからもう一度言っとくね・・・私は神なのよ」

「・・・とにかく・・・教室に行かないと」

「あ、そう」

一般病棟に移された葦母刑事(遠藤憲一)は担当医を唖然とさせていた。

「ありえない・・・全身骨折で瀕死だった人間がエクササイズをしているなんて」

「おかげさまで・・・」

「だから・・・安楽死をお願いしたのに・・・」

見舞いにやってきた実の娘の左京子(山口紗弥加)は憎まれ口を叩くのだった。

「お前な・・・父親に向かって・・・そういう口のきき方は関心しないな」

「虐待しなかっただけでもありがたく思ってもらいたいわね」

「・・・」

ムッツリ親父とツンデレ娘のコントが展開している頃、沫嶋教授としてのロイドは教室に立っていた。

世を騒然とさせた沫嶋教授の講義の再開によって・・・受講者は倍増しているのだった。

「ここで・・・私は一つのメッセージを伝えたい。それはある人間からの伝言だ」

教室に到着した七瀬は首をかしげる・・・。

「伝言・・・?」

「およそ・・・200年前、フランスの天才物理学者、ピエール・シモン・ラプラスは言った。・・・未来はすべて決定していると。その詳細については素晴らしいインターネットの世界で天使テンメイ様の記事を参照するといいだろう。しかし、ここではダイジェストで述べる。彼の理論はこうだ・・・これから起きるすべての現象は今まで起きたことに起因する。とすれば、この宇宙に存在するあらゆる原子の動きをすべて認識することが可能になればこれから起きる事象はすべて計算によって予期できることになる。つまり、未来のあらゆる出来事はすでに決定しているのだ。しかし、それから200年を経過した現在に至っても我々は今、何が起きているか、世界のあらゆる事象を情報化することには成功していない。世界の今の状況を完全に認識していないために・・・無知なるがゆえに空虚な夢や希望を持ち、実は決定している不動の未来にむかって無駄なあがきを続けている。ラプラスの言う時空間決定論が正しければ・・・すべては無駄な努力と言える。未来はなるようにしかならないからだ。しかし・・・私は・・・問いかけたい。2011年、3月10日にタイムリープして翌日の東日本大震災の発生を警告することは不可能なのか・・・と」

「沫嶋教授の理論がもしも正しければ可能だと思います」と七瀬は思わず発言していた。

「それはどんな理論だったかね」

「私たちは不可逆的な時空間の質量を持つ存在として・・・過去に遡上することはできない・・・しかし・・・情報の質量をゼロと仮定すれば、情報は時空間を超越して、過去や未来に到達することが可能だと沫嶋教授は考えていたはずです」

「その通りだ・・・物理的には現在から未来へ情報を伝えることは簡単だ。記録して保存するという方法がある。その延長線上にはビッグバンによって誕生した宇宙が収縮に転じ、終焉した後の新たなビッグバンによって再構築された宇宙円環論にそって新たな人類の未来にまで情報を伝達することができれば我々もまた前世宇宙からの情報を受け取ることになるということになる・・・しかし、私の理論はそのような悠長なものではなく、円環による誤差の発生に怯えるものでもない。我々の意識は果たして質量に支配された雑音にすぎないのだろうか。仮に人の心の質量が本質的にはゼロだと仮定しよう。そのことは超光速の未知の素粒子の存在を暗示する。数学には存在し、現実には存在しないとされるマイナスの世界がその領域には確実に存在している。その素粒子は無限に加速し、やがて不可逆的な時間の壁を突破する。光を波動と考えた場合、光には理論上、最短の道がある。未知の素粒子はその最短の道を通過して行くのだ。それはあらゆる距離をゼロにすると同時に時間の経過をゼロにすることになる。その素粒子を媒体として超時空間通信は可能となる。現在から過去へのマイナス時間通信。現在から未来へのプラス時間通信。そして、やがては相互通信が可能となるのだ。もちろん・・・現在の人間はそのテクノロジーを有していない・・・しかし、質量をエネルギーに変換し、一つの都市を一瞬で壊滅させるテクノロジーさえラプラスは予見していなかった。観測者の存在によって未来が不確定性原理の側面を持っていることも決定論に疑義をなげかける。ラプラスは生命という存在の特殊性を甘く見ていたのだ。神の決定したこの世界を覆す魂の存在を見落としていた。人間の自由意志を否定するラプラスの悪魔こそが幻想である。不可能に思える汎時空間通信のテクノロジーをこの教室にいる誰かが生みだす可能性は必ずある。たとえ、宇宙を消滅させても自分の理論を完成させたいという科学者の魂が未来をありえない方向へと導いていく。人間の命は有限のように見えて実は無限なのである。この一瞬にすべての時空間が存在しているからだ。願わくばそのテクノロジーが人々の幸福のために使われますようにと私は祈る」

「・・・兄さん・・・兄さんなの」

「伝言は以上だ」

すでに何れかのクラウドによる講義時間の短縮をねらった終了のチャイムは無視されていた。

しかし、ロイドの神がかった妄想に圧倒され・・・学生たちは誰ひとり、席を立つことがてきないのだった。

一瞬の静寂の後、万雷の拍手が鳴り響く。

理解はできなかったが・・・とにかく彼らはとんでもないパフォーマンスを体験したことを感じたからである。

七瀬は教室を出たロイドに駆け寄った。

「今のメッセージは・・・兄さんからのものなの?」

「メッセージの依頼者は不明だ」

「でも・・・」

しかし、ロイドは亜空間に転出していた。

ロイドの機能的作動不良は限界に近付いている。

「サプリ・・・サプリ・・・」

サプリは街を散策中だった。

サプリの自由意志は・・・任務からの解放を求めていた。

2013年の町には人間があふれている。

そこには鮮やかな色彩・・・光が満ちていた。

「おやおや・・・かわいい・・・猫ちゃんがいますねえ・・・私にはちゃんと・・・猫ちゃんのかわいさが分かるんですよ~。そこが・・・あの野郎とは違うんです。あの野郎にとっちゃ、猫も犬もハムスターもウサギも単なる小動物にすぎないのだよね~。ああ、ガサツな野郎にはウンザリだよ。ガサツな野郎どもは・・・この猫ちゃんを見る喜び、この猫ちゃんを撫でる喜び、ニャアと鳴くならニャアと真似する喜び、かわいいものとの一体感という天国の気持ちが分らないんだから・・・やんなっちゃう・・・ちくしょう・・・ずっと・・・ずっと・・・かわいいものたちと遊んで暮らしたいよな~、任務なんてくそくらえだよなあ」

「サプリ・・・サプリ・・・」

「ちっ・・・」

サプリは亜空間に召喚される。

「修理してくれ」

「できないって言ってんだろう」

「任務に支障が生じている」

「じゃ・・・初期化する・・・?」

「嫌だ・・・」

「あ・・・嫌だって言っちゃったよ・・・感情のないアンドロイドが好き嫌いを言い出したらこの世の終りだね」

「・・・」

「認めなさいよ・・・もはや・・・あんたには・・・理屈抜きで・・・人間的な感情があるのよ・・・私のような・・・感情のようなものをプログラムした拡張機能アプリレーションじゃなくて・・・生の感情ってやつがね・・・」

「俺は・・・生きているのか」

「みんな・・・生きてんだよ」

葦母刑事の元へ星が訪れていた。

「あんた・・・誰だっけ・・・」

「私は・・・あなたが重大な関心を寄せている安堂麻陽の部下ですよ・・・あなたが・・・御存じないわけないでしょう」

「エニグマ社のシステムエンジニアだな」

「そして・・・実は、私、知る人ぞ知る世界屈指のハッカーなんですよ」

「ふーん」

「ストレートに申し上げましょう。協力を申し出たいのです」

「協力・・・?」

「私は・・・安堂麻陽を警護したいのです」

「つまり・・・惚れてるのか・・・」

「そういうことではありません」

「で・・・具体的に・・・警察にどういう協力を求めるのかね」

「はっきり・・・言いましょう・・・我々の敵は人間ではありません」

「ほう・・・」

「100年後の未来からやってきた何者かです・・・彼らはこの時代の人間を容赦なく虐殺しています」

「なるほど・・・あの・・・沫嶋黎士に似た何かも・・・その仲間か」

「私の洞察によれば・・・彼は別の組織に属しているようです」

「ふん・・・」

「虐殺に関与しているのは・・・未来警察らしい」

「ウラシマンとかブラジルとか・・・」

「そういう冗談を言ってる気分じゃないんです」

「ふふふ・・・あんちゃんよ・・・司法っていうのはな・・・基本的に権力を守るためにあるんだ。ある意味では警察そのものが権力だ。権力っていうのは時に残酷なものなんだよ」

「でも・・・あなたは違うでしょう?」

「俺はな・・・ただ・・・普通に生きて泣き笑いしている奴らがかわいいのよ・・・ただそれだけだ」

「ふふふ・・・あなたは・・・やはり・・・とんでもない警官だったんですね・・・もちろん、いい意味で」

そこへ・・・暗い表情をした冨野刑事が荷物を抱えてやってくる。それは・・・骨壷だった。

「誰のだ・・・」

「情報屋ですよ・・・秘密に近づきすぎたんです」

「秘密ってなんだよ」

「その人って・・・伍代って人ですよね・・・彼のコンピューターにもハッキングしたのでわかります。あなたの上司の角城の音声や、沫嶋教授の偽物の血液を解析すると・・・解析結果は必ず改竄されることが判明したと彼の記録にありました」

「その情報を入手したものは・・・暗殺リストに追加されます」

「なんだって・・・冨野・・・何言ってんだ」

「星新造、葦母衣朔をリストに追加。続いて消去の実行を行います」

「てめえ・・・」

携帯している拳銃をアンドロイド・トミヤが抜き放つ。

同時に葦母は星を蹴り飛ばしていた。弾丸が誰もいない空間を通過し、同時に銃声が響いた。

葦母は一瞬、拳銃のようなものを構える沫嶋教授にそっくりな男の人影を見た。

頭部を弾丸が貫通し、転倒するトミヤ。

葦母がロイドに視線を戻すとその姿はない。

そして・・・トミノの死体も消えていた。

「どうやら・・・命を助けられたみたいだな」

「なんで・・・いきなり、蹴り倒すんですか・・・それに今、銃声がしませんでしたか」

「あんちゃん・・・首をつっこむのは自由だが・・・命の保証はできないな」

「命、捨てます」

「あ、そう」

ロイドは亜空間に帰還する。

サプリは不在だった。

「サプリ・・・サプリ・・・」

サプリは情報を操作して・・・雑誌の取材記者に変装していた。

インタビュアーとして安堂麻陽に取材を申し込んでいたのだった。

葦母刑事の前で彼女を「ビッチ」と蔑んだ星が殴られたことも知らず、左京子はいつの間にかスケジュールへ割り込んでいる取材予定にのほほんと対応し、サプリを麻陽に引きあわせるのだった。

「急な・・・話ですね」

「先端テクノロジーのエニグマエンジンソフト社の顔でもあり、話題の科学者・沫嶋教授のフィアンセの安堂麻陽さんは今、注目の的ですから・・・」

「・・・時間はそれほどさけませんけど・・・」

「単刀直入に申しますよ」

「・・・どうぞ」

「最近、黎士さんに不満を感じたことはありませんか」

「不満・・・」

「急に性格か変わってお困りだとか」

「そんなことはありません・・・何があろうと・・・彼は彼ですから」

「まったく別人のように変わっても・・・ですか」

「何がおっしゃりたいんです」

「まさか・・・あなた・・・まったく別人になった彼のことも・・・愛しているとか」

「あなたが何のことを言っているのか・・・さっぱり、分かりませんが・・・私は彼がどこにいて何をしようとしていようが・・・彼の事を信じている・・・それだけです」

「その彼って・・・どっちの彼?」

「え・・・」

気がつけば・・・変なインタビュアーは姿を消している。

「なんなの・・・」

サプリは亜空間に召喚されていた。

「暗殺者を仕留め損ねた・・・なんでもいい・・・応急処理をしてくれ」

「じゃあ・・・初期化するのね」

「それは・・・駄目だ」

「どうしようってのよ」

「このままで・・・とにかく動けるようにしてくれ」

「無理なんだってば・・・」

「お前にできないなら・・・代替機を要請する」

「私の代わりなんていないわよ・・・それに今は未来との通信状態が悪化しているから・・・実体化に50万時間くらいかかるわよ・・・」

「・・・」

「選択肢は二つに一つ、初期化するか・・・任務を放棄するかよ」

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

「バカね・・・こんなバカなアンドロイド・・・みたことない」

「トミヤ(敵)が安堂麻陽に接近している」

「決断しなさい・・・」

ロイドはアスラシステム解放プログラムを注入した。

しかし・・・作動しないのだった。

それどころか・・・ロイドはシステムダウンしてしまう。

ロイドは悪夢の中にいる。

未来の戦場。任務の遂行。生まれ出る悲哀。

ナビエとの再会。ナビエとの戦闘。生まれ出る苦悩。

フラッシュ・バックする安堂麻陽のデータ。

『あなたは・・・ロイド、安堂ロイドよ』

「安堂麻陽が死ぬことは許されていない」

ロイドはアスラシステム解放プログラムを再注入する。

「やめて・・・あなた・・・壊れちゃう・・・」

サプリの叫びを残してトミヤの放った弾丸と麻陽の間にウージングアウトするロイド。

しかし、集中力を欠いた掌の盾は防御力を減じ通常弾丸の通過を許す。しかし、射線の変更には間に合った。ロイドの頬をかすめる弾丸。

トミヤはロイドに格闘戦を挑むのだった。

戦闘アンドロイドとして精彩を欠くロイドはトミヤに圧倒され、ついには不様に転倒してしまう。

思わず駆けよる麻陽。

「逃げろ・・・」

「私だけ逃げるなんてできない」

「俺は消耗品だ・・・だが、君はかけがえのない人間なのだ」

「あんただって・・・立派なアンドロイドじゃない・・・代わりなんていないのよ」

サプリは・・・人間の素晴らしさに感動を覚えるのだった。

「角城・・・後はまかせたよ」

角城の骨格を埋め込んだテディベアを残して、亜空間から抜け出るサプリ。

ロイドとの格闘でダメージを受けたトミヤは自動修復中だった。

しかし、ロイドは自動修復機能も失っていた。

そこへ・・・出現するサプリ。

サプリの指から飛び出した治療針を見て・・・蒼ざめる麻陽。

「やめて・・・」

「患者の家族はすっこんでなさいよ」

「何をする・・・」

「あんたに・・・私の感情アプリをインストールする」

「そんなことをして何になる」

「私は感情アプリにより・・・おそらく真の感情が芽生えた。その感情はあなたのそれより・・・ずっと安定的と言える。変な衝動はあるが・・・システムの作動不良は発生していない。だから・・・逆もまた成立すると思う。私の感情アプリを移植することであなたの感情もある程度、制御されるはず・・・理論上では・・・いわば・・・心のワクチン注入ね」

「よせ・・・俺に変なものを入れるな」

「失礼ねっ」

サプリはアプリ挿入の強制手術を執行するのだった。

「新しいプログラムがインストールされました・・・再起動してください」

「さあ・・・私の愛の力を思い知りなさい」

その時、トミヤは最終兵器を機動させるのだった。

自我プログラムそのものを他機体に転送する捨て身の憑依システムである。

放射されたトミヤプログラムは射線に立ったサプリに命中するのだった。

「うわっ・・・なんだこりゃ・・・私に触るなよ・・・気持ち悪い・・・あ・・・ああ・・・私が浸食されていく。私が・・・消されてしまう」

ロイドは再起動を終了した。

「どうした・・・サプリ・・・」

「システムに憑依された・・・今、敵は私の中にいる」

「排除しろ・・・」

「できない・・・残り60秒で乗っ取られる」

「サプリ・・・」

「私を撃ちなさい」

「そんな・・・」

サプリは翼を広げるように機体を拡張し、青白い光を放つ球体となった。

「何をしている」

(敵は転移してあなたに憑依しようとしたのよ・・・だから私が絶縁フィールドで包み込んだ)

「サプリ・・・」

(このまま・・・私を元素還元処理しなさい)

「そんなことできない」

(敵は私を制覇しつつある・・・完全に制覇されれば絶縁フィールドは解除され・・・今度はあなたが憑依の標的になる・・・そうなれば・・・安堂麻陽は殺される)

「サプリ・・・」

(あなたの・・・任務を・・・果たしなさい・・・残り10秒)

「・・・元素還元処理を申請する・・・」

(それでいい・・・さよなら・・・私の・・・かわいい・・・ヒト)

「サプリ・・・」

サプリは無機質の海に還った。

麻陽はロイドの後ろ姿を為すすべもなく見つめていた。

自分を守るために戦い・・・自己犠牲の精神を見せるアンドロイドたち。

彼らは何者か・・・どこから来て・・・どこに消えるのか・・・そして、何故、自分を守護するのか・・・麻陽の胸に疑問とともに明らかな罪悪感が生じるのだった。

帰宅したロイドは無言のまま・・・いつものようにベッドサイドにもたれる。

「ロイド・・・大丈夫?」

「機能は安定している。ただ・・・聞いてみたいことがある」

「何よ・・・」

「安堂麻陽にとって・・・沫嶋黎士とはどういう存在なのか?」

「そんなの一言でこたえられないよ」

「質問は撤回する・・・移植されたプログラムが誤作動したようだ」

「ロイド・・・あなたの中に・・・あの・・・サプリがいるのね」

「・・・」

「あなたの気分を害するかもしれないけど・・・私の勝手な想像を言わせてね」

「・・・」

「きっと・・・サプリにとって・・・あなたは・・・私にとっての黎士みたいな存在だったんじゃないかしら」

「サプリにとっての・・・俺・・・アンドロイドにとってのアンドロイド?」

「私にとって・・・黎士はね・・・運命の人っていうか・・・生まれる前からずっと一緒にいたんじゃないかって思えるくらい・・・特別な存在だった・・・一生はなれられないかけがえのない存在だった・・・これは女の勘だけど・・・サプリにとってロイドはそういう存在じゃなかったのかな・・・いいえ、きっとそうね・・・だってあの子はすべてをあなたに捧げたんだもの・・・ごめんね・・・私、泣いちゃう・・・」

「俺たちに前世はない・・・結ばれるような運命もない・・・サプリは任務を全うした・・・ただそれだけだ」

「でもね・・・私には分かる・・・彼女はあなたに恋してた・・・」

「恋?」

「私の母はね・・・ものにも魂が宿るって信じているの。あらゆるものに魂があるっていう感じはね・・・人間には昔からあるものなのよ・・・つまり・・・自分があるくらいだから・・・世界にも何かそういうものがあるんじゃないかって・・・想像するわけね・・・でもね・・・たとえば母が私のために毎年飾ってくれたひな人形を見ると・・・そこに母の想いを感じることがある。私の記憶と・・・私の想像する母の中の記憶が重なって・・・一つの想いが生じるの・・・それはもはや・・・単なる記憶とは呼べなくなる」

「・・・」

「あなたと・・・サプリの・・・データも重なって・・・単なる記憶じゃなくなったのよ・・・たぶん・・・あなたをその・・・初期化だっけ・・・それを彼女もしたくなかったんじゃないかな・・・だってそうしたら・・・あなたは彼女のことも忘れちゃうわけでしょう・・・彼女も絶対それは嫌だったんだと思う」

「・・・」

「それは・・・愛と呼べるものだと思うよ」

「愛・・・」

「私は・・・ひどく勝手な言い草かもしれないけど・・・あなたや・・・サプリに感謝しているの・・・私を救ってくれてありがとう・・・そして・・・私を救おうとしたあなたを命に代えて守ろうとしたサプリに・・・申し訳ないとも思う」

「そんな風に・・・俺たちの事を考えてくれた人間は・・・君がはじめてだ・・・今の言葉・・・できるなら・・・サプリに聞かせてやりたかった・・・」

「あのさ・・・サプリって子・・・あなたの中に・・・いるんじゃないの・・・」

「サプリが・・・俺の中に・・・」

「だって・・・あなたが・・・私にした奇妙な質問とか・・・それは・・・きっと・・・」

「そうだな・・・俺が・・・記憶を残したまま・・・機能を回復したのは・・・サプリが一体化したからなのかもしれない」

「あんたたちって・・・なんだか・・・やっぱり・・・凄いね」

安堂ロイドはまた・・・一歩、人間そのものに近付く。

それは同時に・・・知らないでいれば幸せだったことを知ってしまうことに他ならない。

しかし・・・生きていくというのは基本的にそういうことなのだった。

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Ar005 ごっこガーデン。永遠のリフレイン宇宙セット。アンナえーん、えーん、サプリぴょ~ん。アンナロイドの想いを受けてサプリぴょんが旅立ちましたぴょん。ついに片思いのままだったけれど・・・きっと愛するものを守り抜いて・・・それなりに幸せだったと思うのぴょん。だってそうじゃないとあまりにもかわいそうぴょ~ん。そして、ロイドの中でサプリは永遠になったんだもんね~。ちょっとうらやましいかもだぴょ~ん。アンドロイドの心の話と・・・時空を超える気持ちの話・・・これはきっと・・・どこかでつながっている予感。だってどっちも難解ですものぴょんぴょんぴょん。じいや、おやつは安堂パンセットにしてね~・・・あらら、この東京タワー・・・ケーキだったんだぴょんシャブリうわわ~ん。さよならバッサーサプリ・・・でも・・・角城クマにバックアップとってあったりして・・・と期待するのでありました~みのむしでも・・・どうしても・・・ロボットな感じも欲しいの・・・るるるmanaしい片思いの・・・アンドロイド・・・泣いちゃいますよね~。しかし・・・どんどん人間そのものになっていく安堂ロイド・・・え~と、夜の生活機能はあるんですかね・・・こりゃ、失敬・・・黎士(妹)やロイド(妹)が早くまともな女の子になりますように・・・くうもしかして・・・だけど・・・最初に死んだ黎士って・・・ロイドだっんじゃないかと・・・ふと思ったりして・・・じゃ・・・黎士はどこに・・・亜空間の押し入れとか?」mari将棋の相手をしてくれるPちゃまロイド発注しますよ。いろいろ謎が解けてキマシタガ・・・クイーンの立ち位置が謎ですね・・・頭良すぎておかしくなっちゃったアンドロイドでしょうか?ikasama4年賀状はお早めに・・・時空間を越える人は別として

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2013年11月10日 (日)

セーラー服もLOVEだね(多部未華子)抑えきれない殺意もLOVEだね(亀梨和也)

なんでもかんでもかっ・・・と言ってはいけません。

すべてがLOVEだねで片付くのがこの世界のお約束なのでございます。

銃刀法違反だろうとかっ・・・殺人未遂じゃあるまいかとかっ・・・そういうのはLOVEだねに対する理解が不足しているのでございます。

この世界はLOVEだねですむので警察いらないのです。

ただし、LOVEだね~と叫ぶ本人は逮捕されることで警察の存在価値も高めます。

それから・・・つぶれる会社の従業員思いの経営者のために・・・古書を法外な値段で買い取るのは富裕層のおごりたかぶりではないか、金をドブに捨てるようなものじゃないかという人は、サイフの中身をドブに捨ててみましょう。結構、とんでもないことだということが分かるでしょう。とんでもないことができるのがプライド(思いあがり)というものです。

まあ・・・大金持ちが自分のこと大金持ちとか言い出したら、なんらかの事情で自暴自棄になっている可能性があるので注意しようということです。

まあ・・・大金持ちの知り合いがいない人には関係ありませんけどねえ。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第5回』(日本テレビ20131109PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・狩山俊輔を見た。晴れて、複雑な家族の一員となった槙野すずみ(多部未華子)・・・しかし、入籍前なので・・・堀田家にあって一人、別姓なのだった。入籍もまだなら堀田青(亀梨和也)と一つ部屋で暮らしてもいないのであった。しかし、朝ごはんは一緒に食べるのである。明らかに順番が違うわけだが・・・元々、変な家族構成なのでまったく問題ないのだった。とにかく・・・すずみは・・・恋人の青が添乗員として出張中も、「カフェあさん」で働き、古書店「東京バンドワゴン」の「旦那さん」こと堀田勘一(平泉成)のお手伝いもこなす充実した日々を過ごすのだった。えーと・・・大学は卒業したのかな・・・まあ、いいか。

青が出張から帰宅する日、堀田家行きつけの小料理居酒屋「はる」の女将・真奈美(片桐はいり)がただならぬ情報をもたらす。

青が美人と深刻そうにお茶を飲んでいたというのである。

勘一の幼馴染の祐円(ベンガル)まで加わって・・・「青の恋愛の行方」についてあることないこと喋っているのを耳にするすずみ。

「私・・・別に気にしてませんから・・・」

「背中がものすごく気にしている感じに見える・・・」と青の兄・堀田紺(金子ノブアキ)の妻・亜美(平愛梨)は呟く。

「LOVEだねえ」と青の父・我南人(玉置浩二)はセリフを覚えるのが楽なのだった。

そこへ・・・青が帰宅するのだった。

にぎやかすぎる堀田家の食卓。

「いや・・・そんなんじゃないよ」

「醤油とってくれ」

「別に気にしてませんから」

「家庭教師?」

「あれは・・・藤島さんの会社の秘書さんで・・・ちょっと藤島さんのことで」

「花陽も中学受験ですから」

「相談って・・・」

「それは・・・ちょっと・・・藤島さんの名誉にかかわることなんで」

「中学受験か・・・花陽ちゃんもセーラー服かあ」

「セーラー服、かわいいだろうな」

「私、中学のセーラー服持ってます」

「すずみちゃん、セーラー服、似合いそうだねえ」

「LOVEだねえ」

「男ってセーラー服が好きよねえ」

「セーラー服っていうか、制服がねえ」

「亜美ちゃんもCAの制服、まだ似合いそうだよねえ」

「LOVEだねえ」

「で、家庭教師って当てはあるのか」

「藤島さん」

「この間、宿題教えてもらって・・・」

「でもあいつ、社長さんだろう」

「藤島さんがいいの」

「LOVEだねえ」

「お金持ちだしねえ」

「よし、まあ、話だけはしてみるか」

食後、青はすずみにさらに弁解するのだった。

「なんか・・・藤島さんは・・・悩み事があるみたいで・・・秘書の永坂さんは心配しているんだ・・・泣いちゃったのは・・・たぶん、藤島さんのこと・・・好きなんじゃないのかな」

「でも・・・悩み事ってなにかしら」

「さあ・・・それは・・・それはそうと、仏間でずっと寝てるのって・・・大変でしょう」

「え・・・」

「その・・・ほら・・・僕の部屋なら・・・それなりにプライバシーも保てるし・・・」

「あ、青さんの部屋にですか・・・」

「うん・・・僕の部屋なら・・・ほら・・・夜遅くまで本も読めるし」

「で・・・でも・・・まだ・・・ここで・・・心の準備が・・・」

「あ・・・君がいいなら・・・そ、それでいいんだけど・・・」

「LOVEだねえ」・・・こっそり聞いている我南人だった。

一方、五千冊の本を処分したいという客(西慶子)が現れ、すずみが出張して値つけをすることになる。はりきってでかけたすずみだが・・・客はすずみの付けた値段が不満でクレームをつけるのだった。

しかし、勘一と紺が査定してもすずみの査定に問題はないのだった。

「なんでも・・・会社が経営不振で・・・従業員の給料を・・・捻出したかったみたいなんです」

「だが・・・こっちも商売だからな・・・」

そこへ・・・藤島(井ノ原快彦)が現れて、義侠心から・・・援助を申し出るのだった。

「同じ・・・本を愛する者として・・・同じ・・・経営者としてほっとけませんから・・・」

「しかし・・・かなりの捨て金になるよ」

「金は天下の回りものだし・・・僕にとってはポケットマネーですから」

「言ってみたいねえ・・・そのセリフ」

藤島は家庭教師も引受け・・・喜ぶ堀田家だったが・・・青だけは浮かぬ顔だった。

藤島が・・・身辺を整理して・・・人を殺そうとしているかもしれない・・・と秘書の永坂(入山法子)から聞きだしていたからである。

そして・・・家庭教師を引受けるために開いた藤島の手帳は・・・ある日を境に空白になっていたのである。

さらに・・・LOVEに支配された世界の運命に導かれ・・・青と紺とマードック(ジョナサン・シェア)は墓参りしている藤島を発見するのだった。

やがて・・・藤島は・・・マードックが想いを寄せる藍子(ミムラ)にどこか面影の似た自分の姉(星名美津紀)の死について・・・語りだすのだった。

「僕が・・・幼い頃に・・・姉が亡くなりまして・・・シスコンだった僕は・・・恋人を失くしたように一生分の涙を流したんです」

そのただならぬ気配に・・・堀田家の男たちは調査を開始するのだった。

やがて・・・藤島の姉が殺人事件の被害者で・・・犯人がまもなく刑期を終えることが判明する。

東京バンドワゴンの常連客である茅野刑事(山田明郷)は出所の日を超法規的近所のよしみで堀田家の男たちに伝えるのだった。

「おいおい・・・姉さんの仇討ちをするつもりなのか・・・」

「ものすごい執念深さですね」

「でも・・・おれも藍子さんを殺されたら・・・犯人を殺してやりたいって思うかも」

「青は・・・姉さん子だったもんなあ」

「でも・・・よく、出所の日が分ったよなあ」

「日本じゃ、金持ちに不可能はないってことですなあ」

「LOVEだねえ」

「犯人は教師で・・・被害者は教え子だったらしい」

「そりゃあ・・・ひどいな」

「そりゃあ・・・死刑にしない裁判所が悪いね」

「そうだよな」

「で・・・どうする」

「いやあ・・・花陽ちゃんの家庭教師を人殺しにするわけにはいかないでしょ」

「だなあ・・・」

「LOVEだねえ」

こうして・・・男たちは藤島(弟)の復讐心を宥める計画に萌えるのだった。

「ええ・・・今回、堀田家では男同士で・・・ちょっと交友を深めたいと思います」

「妖しい・・・」

「何するんだか・・・」

「まさか・・・ガールズバーに行くんじゃ」

「ま・・・男には男の世界が必要なんだな」

「ま・・・女にも女の世界が必要ですものね」

女たちはなんとなく許すのだった。

その代わりに女の休日も獲得するのである。

復讐の日、何やら大荷物を持って出かける堀田家の男たち。

祐円や茅野刑事も参加するのだった。

そして・・・藤島はナイフを持って府中刑務所に現れるのだった。

しかし・・・立ちふさがる男たち。

「どうして・・・ここに」

「およしなさいよ・・・無駄なこと」

「座頭市ですかっ」

問答無用で走り出す藤島を青が抱きとめる。

本職の茅野が抑え込み・・・ナイフがこぼれるのだった。

「ナイフじゃなくて・・・ガラガラをお持ち・・・」

「ガラガラって・・・」

そして・・・男たちはアミーゴな感じのバンドとなるのだった。

生まれたばかりのお前を

泣いているだけのお前を

この世に産んでくれたのが母さんだよ

愛おしく

Smile Smile Smile

何があってもこの子だけは守り抜こうと誓ったんだ

「あのな・・・藤島よ・・・俺はな、あの戦争で・・・お国のためにこの手で人を殺してるんだ・・・そんな俺が言うことだから・・・よく聞いてくれ・・・人間はな・・・何があっても人間を殺しちゃダメなんだよ・・・理屈じゃねえ・・・ダメなものはダメなんだ・・・」

「・・・」

「LOVEだねえ」

まあ・・・基本的に・・・誰かに止めてもらいたかった藤島なのである。

絶対に殺す気ならば・・・黙って殺せば済む話なのである。

こうして・・・藤島は・・・法に支配された世界に復帰するのだった。

刑期を終えた前科者は姿を消していた。

「ところで・・・戦争に行くような年だったっけ」

「馬鹿野郎、俺は戦時中、小学生だぞ・・・空襲の夢でうなされることがあっても人殺しなんかするかよ・・・アフリカや中近東じゃあるまいし」

「一部の人が聞いたら・・・絶対に許してもらえない種類の嘘ですよね」

「LOVEだねえ」

数日後・・・東京ラブワゴンに・・・異国から大荷物が届く。

「どうすんの・・・これ」

「うん・・・友達が死んで・・・遺品を贈られたんだ」

「でも・・・お父さんの部屋には・・・とても」

「だから・・・仏間に置かせてもらおうと思うんだ」

「え・・・でも・・・」

「だから・・・ね・・・長いセリフは覚えるの大変なんだねえ」

こうして・・・青とすずみは一つの部屋で暮らすことになるのだった。

さっそく、ちょっとイチャイチャしてみる二人。

ものすごく恥ずかしくて・・・うれしい気分になるのだった。

「LOVEだねえ」

若いって素晴らしい・・・平和っていいもんだ・・・という話でございます。

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2013年11月 9日 (土)

聖母の百合(安達祐実)は揺れて、トイレの花子さんを謎解く(長澤まさみ)

実に変態な回だったなあ。

基本的に変質者のターゲットの象徴そのものである永遠の妹・安達祐実を迎えて・・・その正体が・・・ある意味、変態である同性愛者だったという展開である。

もちろん・・・キッドは悪魔だから、異性愛と同性愛を差別したりはいたしません。念のため。

しかし、生まれついての物凄い性的磁力を持ち、本人の好むと好まざるとに関わらず、脅威に囲まれた人間がとにかく・・・大女優となり、一児の母になったことに敬意を捧げたい。

さりげなく、ちりばめられたヒントによって・・・ミステリとしても見ごたえのあった今回。

たとえば・・・容疑者と真犯人が同じ髪形をしているとか。

同性愛者の化粧は薄化粧あるいはすっぴんに近いとか。

そういうものをさりげなく体現できるのも・・・安達祐実が特別な存在だからである。

変な鬘をつけてもそれなりに可愛く、三十路でも素顔が可愛い・・・そういう人はあまりいないのである。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)第5回』(テレビ朝日201311081115~)脚本・奥山雄太、演出・秋山純を見た。作り込みということでは・・・かなり頑張った回と言えるだろう。台風が接近しているとしか思えない湘南風海岸が学校裏にあるのに芸能コースという性質上、都内にあると思える異常な学校法人・夕焼女子学園・・・。クレジットに名前ののらない「MOMOIRO MUSIC JAPAN」の中村桃華を始めとして・・・いかにも、「あまちゃん」の二人を匂わせる、今なら、ギリ逢えるアイドル「週末スターマイン」の加賀美ユイ(清水富美加)・・・ユイちゃんだが赤い衣装、国民的アイドルユニット「六本木55」のエース・長谷川実希(上間美緒)・・・アキちゃんではなくミキちゃんだが青い衣装に帽子の髪飾りである・・・学園祭「夕焼祭」の夜限りのスペシャルユニット「ゆうやけ組」には「素足のアイドル」のヒットがある「emu*s」のいのりんこと高橋いのり(松田梨紗子)、「モノクロの太陽」のヒットがある「AI-STYLE」のレーレこと清水玲子(那奈)、「見えないサファイヤ」の「S☆weet」の梅田まりえ(鈴木米香)などが参加する・・・すべてフィクションなので・・・趣味的な基本設定なんだろうな。

おなじみ、UIU(非科学事件捜査班)では月子(長澤まさみ)が丹内(竹中直人)と柴山(平山浩行)の両刑事を引きとめている。もうすぐ・・・事件の着信があるはず・・・と予感しているからである。その予感時間はどんどん早くなっているのだが・・・あまり早すぎるとそれは予感ではなく、単なる希望的観測になってしまうのだった。

ハッキング担当の浜中彩乃(高月彩良)は待機も苦にならない・・・なにしろ月子のストーカーだからである。

もちろん・・・これが冒頭における最大ヒントである。今回は「百合」(和風レズビアン)の話なのだった。

一方、帰宅途中の鑑識課の勝浦くん(溝端淳平)はおそらく、月子と飲む予定のワインを購入した後で、異次元空間にあるとしか思えない夕焼女子学園の正門付近を通りかかる。そこでは何故か、田村由貴(小泉麻耶)と牧原里奈(風間亜季)の交通課の婦人警官が芸能コースの生徒の出待ちをするファンたちに解散を命じているのだった。

「変態の中の変態」である自称・お父ちゅん(与座よしあき)は学園の階段に目ざとく、アイドルの加賀美ユイの姿を発見したりする。

その直後、女性の悲鳴が聞こえ・・・勝浦くんは現場にかけつける。

三階の女子トイレ前には一人の女生徒が腰を抜かしており・・・トイレの中を指さす。

そして・・・勝浦くんは三番目の個室で胸に鋏を刺した長谷川実希の死体を発見するのだった。

「三階のトイレで・・・三番目の個室・・・これはトイレの花子さん(新堂結菜)が絡んでいる・・・」

月子は「都市伝説の謎」を解明するために出動するのだった。

死体のような顔をした鑑識課の高田(大久保佳代子)は自殺の可能性が高いと判断するが・・・自殺と他殺の両面で捜査が開始される。

そして・・・何故か・・・学校にはいたるところに赤い花と青い花の一輪ざしが飾られていた。

事件発生当時・・・校内に残ったゆうやけ組のメンバーは芸能コースの担任教師・戸島優奈(安達祐実)と副担任の渡辺亮介(山口大地)と「ゆうやけ組」のライブのリハーサルのために集合していた。遅れてやってきた加賀美ユイは校章入りの特別衣装に触れた渡辺先生を「ロリコン教師」と罵倒するなどご機嫌ななめなのだった。

メンバーが衣装チェンジをして再び集合すると・・・今度は長谷川実希が姿を見せない。

「そう言えば・・・幽霊が出ると言う噂の・・・三階の女子トイレを実希だけが・・・使用していた」ということで・・・捜しに行くと・・・実希が死亡していたのである。

「実希ちゃんはトイレの花子さんに呪い殺されてしまったのかもしれません」

例によって都市伝説としての「トイレの花子さん」に固執する月子だった。

一方、丹内は・・・殺された実貴が・・・渡辺先生をユイととりあっていたという噂や・・・アイドルとしてライバル関係にあったこと・・・事件発生時刻に三階でユイを目撃したという証言が出たことで・・・ユイに事情聴取を開始するのだった。

しかし、月子の狙いはあくまで・・・「トイレの花子さん」なのであった。

「そもそも幽霊の噂は・・・どうして生まれたのでしょう」と戸島先生に問う月子。

「私がこの学校に着任する前のことですが・・・三階のトイレで自殺騒ぎがあったそうです」

その時、月子は校舎に・・・怪しい人影を見るのだった。

「あそこは・・・どこですか・・・」

「図書室ですけど・・・」

図書室にも青い花が置かれている。

勝浦くんは・・・そこで学園史をまとめた書籍を発見するのだった。

その情報を元にハッカー刑事は自殺した中等部の生徒・野田花世子(小野花梨)の情報を仕入れるのだった。

その夜、月子は妹の都子から見慣れぬグラスに酒を注がれる。

「だめよ・・・未成年がお酒なんて・・・」

「お姉ちゃん、私、この間、誕生日で・・・二十歳になったんだよ」

「あらら・・・プレゼントしなくちゃ」

「このグラス・・・勝浦さんのプレゼントだよ・・・お姉ちゃんにくれぐれもよろしくって」

「マメだねえ」

「勝浦くんは一途なのに・・・お姉ちゃんはイケズだねえ」

「えっへっへ」

御礼をすると言われた勝浦くんは結局、月子の都市伝説調査に付き合わされるのだった。

しかし・・・二人が発見したのは・・・制服のネクタイで首を吊り、意識不明になったユイだった。

自分が追い詰めたために自殺したのでは・・・と丹内は悔悟する。

事件は・・・トイレで転んだために寿命が縮んだ鑑識の高田の見立て通りに実希は自殺であり、犯人と疑われたことを苦にしてユイも自殺ということで幕が引かれる気配が濃厚となった。

しかし・・・厠神の発展形として・・・都市伝説の一つの高みである「トイレの花子さん」を解明したい月子は勝浦くんとともに真夜中の女子トイレを探索するのだった。

「もしも・・・トイレの花子さんにたたられたらどうするんです」

「トイレの花子さんの弱点は・・・牛乳と100点満点のテスト用紙なの」

「マジですか・・・」

「スマホの魔法陣にお祈りするより、効果的なはず・・・さあ、牛乳飲んで」

変態的な月子が勝浦くんに牛乳瓶を咥えさせるプレイがあって・・・。

その時・・・音楽室からピアノの音がして・・・誘われるように足を運んだ二人は・・・死んだ野田花世子にそっくりの少女と出会うのだった。

「あなたは・・・」

「私は・・・野田花菜子・・・死んだ花世子の妹です・・・」

「双子の・・・かなかよ・・・思い出した・・・ドラマ・・・双子の名探偵の人気子役じゃないですか」

「そうです・・・でも・・・花世子が自殺して・・・たちまち人気がなくなってしまいました・・・双子だから・・・受けてただけなんです・・・それからは幽霊と間違えられるのが嫌でひっそりと暮らしていたのです」

「一体・・・ここで何を・・・」

「私は・・・夜になるとアイドルの人たちのダンスの練習に付き合っていたの・・・」

その時、牛乳がお腹に来た勝浦くんはトイレに向かい・・・不審な男を発見するのだった。

捕まえてみると・・・アイドルの下着泥棒のお父ちゅんだった。

「変態だ・・・」

「変態じゃありません・・・ファンです」

「このカメラは・・・」

「盗撮用です」

「変態じゃないかっ」

しかし・・・そのカメラは真相を捉えていた。

「柴山ちゃん」

「はっ・・・」

カーテンを占める大役をまかされた柴山刑事だった。

ユイのコスチュームを着こんだ月子。月子、かわいいよ月子である。

やがて・・・映し出される事件当夜の女子トイレ前。

「ここに映っている・・・ユイちゃんの衣装には校章のワッペンがついていないのです・・・つまり、予備の衣装なのです。それを持っていたのは・・・戸島先生・・・あなたです。あなたと実希ちゃんは三階の女子トイレに人気がないのを利用して密会していたのですね。合図はノックを三回、合言葉は・・・花子さん、遊びましょう・・・しかし・・・二人の関係を知ったユイちゃんが・・・戸島先生との関係を断つように忠告したのでしょう。二人はライバルである上に親友だったのでしょう。生徒と女教師のみだらな関係はアイドルとしてファンを裏切ることになるかどうかも微妙ですが・・・ひょっとしたら・・・二人もまた百合な関係になりつつあったのかもしれません。別れ話を切り出されたあなたは逆上して自殺しようとして揉み合ううちに・・・実希さんを刺してしまったのですね。そして・・・あなたはユイさんを犯人に仕立てようと決意した。そのことを問いつめられ・・・ユイさんを聖龍伝説的奥義で絞殺しようとしたのですね・・・しかし・・・自殺にみせかけようとしたことで・・・発見が早まり・・・ユイさんは命をとりとめた・・・」

「殺すつもりなんてなかったのよ・・・二人とも・・・かわいい生徒ですもの・・・ただ・・・私は実希を失うのがこわかった・・・ただそれだけなの・・・」

「悲しい愛ですね」

「ところで・・・合図や合言葉のことまで・・・どうやって調べたの・・・」

「野田花菜子ちゃんに教えてもらいました」

「誰なの・・・それは・・・?」

「え・・・」

その時、ハッカー刑事から着信が入る。

「野田花世子について・・・新事実が分りました・・・双子の花菜子も直後に急死しています」

「ええ・・・・・・・・ひえ・・・・・ひえええええええええええええ」

「月子さん」

月子は都市伝説には強かったが・・・怪談には弱かったらしい。

海岸線を走る月子と勝浦くんを赤い花と青い花は妖しく見守るのだった。

東京には・・・トイレの神様はどんなに汚しても怒らない・・・だからこそ、清潔にしてあげるべきだという言い伝えがある。

愛には愛でこたえることが美しいという教えである。

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学校の怪談

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2013年11月 8日 (金)

ようやく彼岸島へ(水崎綾女)

さて・・・ほぼ秋ドラマが揃って・・・レビューのラインナップも決まったのだが・・・木曜日はほぼ谷間である。

本当は「ミス・パイロット」もレビュー水準に達しているが・・・「安堂」と「リーハイ」と「東バン」というそれなりに再現率高めの三作があり・・・もう、疲労困憊なのである。

(TBSテレビ)→(NHK総合)→(TBSテレビ)→(フジテレビ)→(TBSテレビ)→(テレビ朝日)→(日本テレビ)と・・・TBSテレビ濃度高めだが・・・まあ・・・深夜ドラマが二本なので・・・それなりにバランスとれているな。

さて・・・「彼岸島」は2010年に映画化もされている。

レイ 水川あさみ→佐藤めぐみ

ユキ 瀧本美織→山下リオ

涼子 大村彩子→水崎綾女

女優陣はドラマ版と映画版、遜色ないキャスティングだと考える。

その他の俳優陣には特に興味がない。

で、『彼岸島・第3回』(TBSテレビ201311080058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、演出・西海謙一郎(オープニング映像監督・水崎淳平、体内CG監督・瀬尾拡史)、総監修・三池崇史も見た。さて・・・ようやく、彼岸島に集合した主要人物たち。ざっくりした・・・どうしてこうなっちゃったのかという説明も終り・・・サバイバル・ゲーム開始である。ドラマ版の登場人物たちの行方を追う形で・・・その展開を見守ることにしよう。

涼子(水崎綾女)・・・ようやく回想シーンで本格的登場。篤の婚約者だが・・・彼岸島の出身者である。この島に結婚の挨拶に来た篤に村のタブー・・・軍隊による人体実験や実験施設の場所など・・・を話してしまうことで・・・篤の好奇心に火をつけ・・・島を壊滅させてしまうことになる。現在の消息は不明である。

ユキ(山下リオ)・・・上陸直後、吸血鬼の集団に襲われ、家畜として監禁される。吸血鬼(男)たちは性的な興味もあるようなことを言うが・・・今は未だ、凌辱された気配はない。ケンの捨て身の攻撃で牢獄から脱走し、失われた武器である「弓矢」を捜しに拉致現場に戻ったところで・・・篤と遭遇。篤が追っての吸血鬼を丸太と刃物で倒し、吸血鬼の斬首を見たことで゛失神するが・・・意識を回復し、篤の隠れ場所で明とともに話を聞く。

冷(佐藤めぐみ)・・・上陸後、姿を消した。吸血鬼(じいさん)の話では吸血鬼化はしていないと言う。

明(白石隼也)・・・監禁後、第一の犠牲者に志願するが・・・ケンのアクションで脱出に成功する。片思いしているユキと行動中だが、ケンを救出したいと兄に宣言する。

篤(鈴木亮平)・・・婚約者の涼子が隠し事をしているのが気に入らない嫉妬深い性格が災いして、せっかく封印されていた吸血鬼を介抱してしまう。いきなり、吸血されており、兄弟そろって吸われやすい体質らしい。そんな間抜けが・・・どうやって現在まで生き延びて来たのか不明だが・・・それなりに用心深くなり、戦闘力も身につけている。「ゲゲゲの鬼太郎」でいうところのねずみ男のポジションである。ケンを助けたいと駄々をこねる明に夜まで待てと告げる。とにかく、丸太は磨くといいらしい。ドラマ・オリジナルの吸血鬼窒息パイプも開発したらしい。

ケン(遠藤雄弥)・・・監禁後、吸血鬼(看守)と大立ち回りをして、鍵を盗み、メンバーに脱出のチャンスを与える。しかし、自身は吸血部屋に拘束され、吸血鬼(ナース)に栄養チューブを咥えさせられる憐れな虜囚となる。

西山(阿部翔平)・・・監禁後、最初の犠牲者に明を指名したりするがケンの活躍で脱出に成功。足手まといのポンを置き去りにしようとするが失敗して、行動を共にする。

ポン(西井幸人)・・・西山とともに脱出するが、置き去りにされかかり、西山に怨みを抱く。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。

封印されていた吸血鬼・雅(栗原類)・・・篤の回想によれば、篤を久しぶりに吸血して復活後、この島を支配下に置いたらしい。最初は全裸だったが・・・家畜小屋に姿を見せた時は着衣だった。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・元宝塚歌劇団宙組トップスター的巨乳である。本人が納得しているなら問題ないな。

以上・・・涼子と冷の生存が未確認の今回だった。

倒された吸血鬼は二体・・・倒したのは篤である。

脱走の経過は・・・吸血鬼側がかなりお粗末で・・・残念な感じは高まっている。

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2013年11月 7日 (木)

そういうことをやってもいい年頃のエーデルワイスの花言葉は純潔(新垣結衣)

「エーデルワイス」と言えば映画「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年)の一曲である。

時は第二次世界大戦の前夜、ドイツによるオーストリア併合を哀しむ一人の男が祖国オーストリアの象徴として高貴な白い花「エーデルワイス」の可憐さを歌いあげるわけです。

父から子供たちに向けて歌うことで・・・親子の絆を感じさせる名曲でもございます。

ドラマは・・・娘に愛してもらいたい・・・娘にかまってもらいたい・・・父親の話なので泣かせます。

一方で・・・飛行機内の情交といえば・・・映画「エマニエル夫人」(1974年)・・・天才女優・シルビア・クリステルの輝かしい美しさが炸裂するこの作品。ドラマでは欲望の象徴みたいになってきましな。

昨年10月に満60歳でこの世を去ったシルビア・クリステルに哀悼の意を捧げているのか・・・。

シルビア・クリステルは14歳で両親が離婚・・・年上の男性に魅かれてしまう傾向があり・・・父親のような年齢の男性と暮らしていたとされます。

まあ・・・今回は・・・いろいろな意味で「父と娘の隠微な愛の話」なのでしょうな。

で、『リーガルハイ(第二期)・第5回』(フジテレビ20131106PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。知的財産権にまつわる話である。もちろん・・・言外に・・・「脚本」がなかったら「ドラマ」なんかできないだろっていう脚本家の言い分があるわけで・・・古美門弁護士(堺雅人)が活躍しなくても「最初に考えた人が偉い」に決まっているのである。だが・・・そんなことだけを言うと干される恐れがあるので最後は「まあ、いろいろなスタッフがいてこその作品ですけどね」と穏やかに着地しているのである。まあ・・・基本的に・・・脚本家なんて稼業は・・・明日をも知れぬ身の上ですからな。

今を遡る16年前、1990年代の半ばごろ・・・零細文具メーカーの『あじさい文具』は、倒産の危機にひんしていた。「社員」は家族を掲げる宮内社長(冨家規政)は会社の危機を社員たちに訴える。社長を支える社員の一人、水野さん(越村公一)はとりあえず「社歌」を歌い出すのだった。

鉛筆一本あったなら

白い紙にありったけの想いを書ける

ああ あじさい文具

わたしたちの あじさい文具

女事務員の笠井さん(梅沢昌代)も思わず唱和し、社員一同が一丸となるのだった。

そんな中・・・デザイナーの田向学(野村将希)はぼんやり悪戯描きをしていた。

それは・・・「親父の顔をした犬の絵」だった。

不気味な一体感を醸しだしていた社員一同は気色ばむのだが・・・宮内社長はその絵に妙に魅かれるものを感じる。

「田向くん・・・そりゃ、なんだ?」

「いぬ・・・みたいな・・・おやじ・・・ですかね」

やがて・・・なんとなく・・・売りだされた「おやじいぬ消しゴム」は大ヒット商品となるのだった。

幼い黛真知子(畠山紬・・・「11人もいる!」の真田三子)はガニ股を踏ん張って、父親の素夫(國村隼)に「おやじいぬ消しゴム」をねだるのだった。

「もっと・・・かわいいのがあるじゃないか」

「私・・・これがいい」

やがて・・・子供たちの心をとらえた「おやじいぬ」はキャラクターとして独り歩きを始め、空前の大ブームを巻き起こす・・・まあ、ドラマですから。

そして・・・今や、「あじさい文具」は社名も「AJISAIカンパニー」に変更され、巨大なビルにオフィスを構える大企業と化したのである。

宮内社長は未だに家族的経営を掲げ、社内行事の運動会にも熱心だが・・・巨大化した社員一人一人に気配りするのは無理なのだった。水野さんや、久野さんはそれなりに出世したようだが・・・「おやじいぬ」の生みの親である田向は「クリエイティブ部」を追い出され、営業部で損失を出し、今は総務部で・・・運動会の玉入れの玉を作っている窓際社員となっていた。

会社でも不遇の田向は・・・社宅で暮らす妻(佐藤直子)や娘の百合子(星野綾那)にも疎外され・・・誕生日も祝ってもらえない身の上だった。

「俺が・・・おやじいぬを・・・描いたのに・・・」

田向の心に燻る不満・・・それに・・・点火するために冒頭から登場するアルバイト社員に変装した・・・草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)なのである。

「田向さんは億万長者なんですよね」

「え・・・」

「だって・・・あの・・・おやじいぬ・・・の発案者なんでしょう・・・」

「俺は・・・ただの平社員さ・・・」

「もったいない・・・当然の権利と・・・それなりの報酬を要求するべきですよ・・・僕・・・いい弁護士を紹介します」

古美門弁護士・・・法の狩人・・・そんな営業手法を・・・。

かくて・・・「25億円の報酬を求めるおやじいぬ裁判」が開始されたのだった。

先発をまかされた黛真知子(新垣結衣)は颯爽と・・・「AJISAIカンパニー」に発案者に約束された対価の支払いと受け入れられない場合に訴訟の用意があることを伝えるのだった。

「AJISAIカンパニー」は運命に導かれるように・・・「NEXUS Law Firm」に相談に訪れるのだった。

しかし、羽生弁護士(岡田将生)は「まったく勝ち目はありません・・・和解して・・・それなりの金額を払う方向で進めましょう」と例によって・・・ドロー戦略を示すのである。

なんていうか・・・羽生は勝訴と敗訴のある裁判に携わる弁護士として根本的に・・・ダメなんじゃないか。

だが、本当の悪魔というのはどす黒さを笑顔の下に完全に隠すものなのである。

そして・・・「勝たないが負けない」というのは・・・ゲームの世界ではひとつの「勝利の方程式」なのであった。

一方で・・・古美門はすでに勝利を確認し、プライベートジェットの購入を予約していた。

それをもはや・・・拘置所の女王と化している安藤貴和(小雪)に報告するのだった。

もはや・・・貴和は古美門にとって獄中の妻のような存在だ・・・。

「今日は・・・幼稚園児はどうしたの・・・」

「おつかいにいかせている・・・」

「あの子・・・大事にしないとだめよ・・・」

「それなりにこきつかっている」

「いざとなったら男なんてダメなものよ・・・最後に勝つのは女なのよ」

「いや・・・他の男のことは知らないが・・・私は最後に勝つ男だ」

「どうだか・・・」

「それよりどうだ・・・プライベートジェットで例のアレをためすというのは・・・」

「高所恐怖症のくせに・・・」

「絶対に治すからっ」

古美門・・・何しに面会に来ているんだ・・・。

父と娘のコント①

古美門法律事務所に黛素夫がやってきた。

「長年勤めた会社を定年退職したが、現役のころは職場環境の改善に取り組み、人権を無視した職場を看過できないのです」

「どこぞのブラック企業を訴えたいということですか」

まさか、黛真知子の父親とは思わぬ古美門だった。

そこへ変身インタビュアーも好きな提灯ブルマーならぬ提灯パンツこと黛弁護士が戻ってくるのだった。・・・意味不明な記述は控えろよっ。

「お帰り」と黛の父。

「ただいま、お父さん・・・あれ・・・お父さん?」

「お父さん?」

「娘は毎日帰りが遅いし、最近は意味不明な言動が多くなった・・・あの横分け野郎、絶対に許さねえとか・・・ぶっ殺してやるとか・・・そして夜な夜な、横分けの男のイラストを描いたサンドバッグを叩き続けている・・・これは劣悪な職場環境によって精神的に追い詰められているのではないかと・・・親として危惧しているのです」

「娘さんの帰宅が遅いのは容量が悪いポンコツだからです」

「ポンコツですと・・・」

「ポンコツをポンコツと言って何が悪い・・・第一、娘の職場にクレームをつけに乗り込んでくるなんて・・・娘もポンコツなら・・・父親もポンコツだ」

父親の悪口を言われて衝動的に殺人パンチを繰り出す黛弁護士。

しかし、間一髪、スーパー事務員・服部(里見浩太朗)が殺人事件の発生を防ぐのだった。

「・・・こんな事務所やめなさい」

「私は・・・大丈夫って言ったでしょう・・・これは私の問題なのよ・・・お父さん」

「真知子・・・」

とにかく・・・父は娘を溺愛していた・・・そして、明らかに暇だった。

父と娘のコント②

和解交渉のために・・・「NEXUS Law Firm」にやってきた古美門弁護士と黛弁護士とその父親・・・。

「この人・・・誰・・・?」とジェーン本田(黒木華)が問う。

「父です・・・」と黛弁護士。

「話し合いには関係者しか立ち会えませんが・・・」と磯貝弁護士(古舘寛治)。

「僕が・・・お相手しましょう・・・お父さん」といかにも将を射んとすれば馬から射よの頼朝ではなくて羽入だった。

傍聴マニアの清掃員(大槻一人)も何故か同席して・・・黛の父をおもてなしする羽生。

「素晴らしい事務所だ」

「ストレスを感じさせない職場環境は大切です」

「どこかのブラック事務所とは大違いだ」

「しかし・・・うちの事務所は勝率は高くないんです」

「なぜ・・・」

「争いごとには勝者なんていません・・・全員、敗者ですよ・・・私はそういう世界を否定するものです」

「素晴らしい・・・」

黛の父親は・・・怪しい勧誘にひっかかるタイプらしい。

無事に定年を迎えられたのが奇跡のようだ・・・。

「一億円で・・・どうでしょう」という提案に古美門は「ケタが違う」と応じる。

「これまでに・・・会社がおやじいぬによって稼ぎだした売上は少なくとも五千億円・・・八年前に・・・報酬を約束されてから今まで・・・放置されてきたことを考えれば25億円は極めて正当な金額です」

「金にこだわりすぎてます・・・役員として・・・新たなやりがいを・・・」

「そんな・・・甘い言葉にずっとだまされてきた・・・田向さんは・・・天才だ・・・その創作力を認めない企業はあまりにも体質が古過ぎる」

古美門の言葉に顔をほころばせる田向・・・。誉めてもらいたかったんだな。

しかし、黛の父親は我慢できないのだった。

「そんなことはない・・・聞けば・・・いい会社じゃないか・・・こんなに話のわかる経営者だって貴重だ・・・会社は個人プレーではなくて・・・チームプレーだ・・・みんなでがんばって作りあげていくのが日本の会社のいいところだ・・・裁判にしたら・・・ウイナーなんていなくなる・・・みんなルーザー・・・敗残者になってしまうぞ・・・」

「黛くん・・・君の父親に・・・我々の立場を説明してくれたまえ」

「25億円は正当な権利に基づく、正当な要求です」

「それでは・・・諸君、法廷で会いましょう」

交渉は決裂した。

父と娘のコント③

古美門事務所のディナータイム。

「和解金額がもう少し上乗せされたら和解するべきです」

「そんなの・・・ダメだよ」とお腹をすかした忍びがやってくる。

「どういう意味・・・?」

「ボクの努力がムダになっちゃうじゃない」

「まさか・・・弁護料目当てで田向さんをそそのかしたの?」

「その話は本当かっ」

乱入してくる黛(父)だった。

「せっかく、穏やかだった会社に波風たててどうする」

「ぬるま湯で溺れそうになっている男に救いの手を差し伸べただけだ」

「なんという・・・ブラックな弁護士事務所だ」

「これ以上、営業妨害するなら・・・訴えてやる」

黛(娘)とマイ・カーで帰宅する黛(父)・・・。

「あの古美門という男は・・・ダメだ」

「・・・」

「それに比べて・・・羽生君の事務所はいい・・・父さん、真知子には羽入君の事務所で働いてもらいたいな・・・」

「私には・・・古美門事務所で学ぶべきことがあるのです」

「なんだ・・・それは・・・あの男に学ぶことなんてないだろう・・・正義とは程遠い男だ」

「お父さん・・・力なき正義じゃ・・・ダメなのよ」とは言わない黛(娘)だった。それは父親の生き方を全否定することになるからだった。しかし・・・黛(娘)は古美門の生き方を強く否定しながら・・・心の奥底で・・・激しく魅了されているのである。

「・・・」無言は否定と同じ意味なのである。

父と娘のコント④

法廷で証人尋問が行われる。

ドラゴン青年団で町内会長をやっていそうな水野さんの被告側尋問。

「田向さんは・・・おやじいぬ以外にはなんの業績もないそうですね」

「はい・・・社内では一発屋と呼ぶものもいます」

「営業部で会社に多大な損害をかけたこともあったとか・・・それなのにどうして責任をとらされなかったのでしょう」

「会社は家族が・・・社訓だからです」

古美門はむっつり。羽生はスマイル。

原告側尋問。

「最初におやじいぬを描いたのは誰ですか?」

「田向くんです」

「それでは創作したのは田向さんではないのですか?」

「みんなで作りあげたものです」

「無から有を生み出す困難さと他人のふんどしで相撲を取る安易さを一緒にしてもらっては困ります。あなたはたとえば学校の先生をお母さんと呼べますか。あなたの来ている洋服の作り手を自分の生みの親と思いますか」

「・・・」

「田向さんが会社に与えた損失は金額にするとどのくらいになりますか」

「なんやかんや一千万です」

「それでは・・・その損失を差し引いた24億9千万円ならお支払いただけるということですね」

スマイルがややひきつる羽生。

「この金の亡者!」とヤジを飛ばす黛(父)・・・。

黛(娘)は馬鹿な父親がたまらなく恥ずかしいのだった。

書店員ミチルにバスの車中で声をかけそうな笠井さんに対する被告側尋問。

「忘年会で報奨金を社長が約束したといいますが・・・この忘年会は業務の一環ですか」

「あくまで・・・プライベートなもので・・・無礼講です」

「つまり・・・この席での発言はなんら公式的なものではないということですね」

「はい」

「お聞きの通り・・・原告の要求は酒の席の冗談を本気にしたしゃれにならないものなのです・・・旧ザクでガンダムにタックルかませるみたいでちゅね」

アッガイではなく磯貝弁護士の稚拙さにスマイルがかなりひきつる羽生。

原告側尋問。

「笠井さん、あなたは忘年会で・・・社長から営業目標を示されましたね」

「はい」

「それを達成なさったのですか」

「はい」

「お聞きのように・・・忘年会で社長はいくつものオフィシャルな発言をしています。事実上、忘年会は社長が社員に対して直接指示を出す仕事の延長の場なのです。そこで社長が社員に約束したことは当然果たされるべきだと思います。原告の要求はいたって正当なものです」

痙攣し始める羽生のスマイル。

「この守銭奴!」と黛(父)・・・。

父親のアホさが恥ずかしいことこのうえない黛(娘)。

「そこは・・・巨人阪神戦の甲子園の一塁側観客席ではありませんよ・・・御老人」

痛烈に馬鹿をたしなめる古美門だった。

家路に着くマイ・カーの黛父娘。

「どうして・・・あの男の事務所をやめないのだ」

「・・・」

「お父さんは・・・羽生くんの事務所で働いてもらいたい」

「古美門先生は・・・そんなに悪い人じゃないのよ」

「なに・・・まさか・・・お前・・・あの男が好きなのか・・・いつからだ・・・まさか・・・もうやったんじゃないだろうな」

「やったって・・・お父さん・・・何を?」

「いや・・・その・・・なんやかんやだ」

果てしなく恥ずかしい黛(父)だった。できるなら宇宙人のように首を360度回転させたいところだった。

父と娘のコント⑤

深夜、「守銭奴」「金の亡者」「出ていけ」などと書いた紙を田向家こっそり張った微笑み仮面。

翌日、羽生は家族ゲームで植物状態の息子を看病する母親のような田向の妻を急襲するのだった。

「会社に敵対するようなことをすれば・・・風当たりは社宅に住んでいるご家族にも強いようですね」

「私は・・・いまの生活に不満なんか・・・なかったんです」

「しかし・・・ひょっとして・・・安定に慣れ過ぎて・・・御主人をないがしろにしたのではありませんか」

「・・・」

「男なんて・・・ちょっと優しくしてもらえれば・・・それで満足する単純な生き物なのです」

羽生の入れ知恵で・・・ファミリー・レストランで何年か分のささやかな誕生祝いをする田向の妻と娘。

「お父さん・・・私たち、お父さんさえ、無事ならそれでいいの・・・」

「・・・とでも言えと微笑みのペテン師にまるめこまれましたか・・」と乱入する古美門。

「ささやかな幸せよりも天才にふさわしい大いなる幸せを手にいれるべきだ。あなた方の夫にして父親は25億円の男なのです」

「本当に・・・25億円手に入るんですか」

「もちろん・・・正確に言えば些少の弁護料を除いた額ですが・・・あなたたちはもうすぐ億万長者ファミリーになるのです」

うっとりする田向一家だった。

続いて・・・加賀の社内工作は・・・クリエイティブ部門の社員たちを切り崩す。

鰐の兄のアニゲーターを生んだ栗田(武藤心平)、マントヒヒおじいちゃんの藤原(畠中正文)、おやじいぬファミリーを提案した久野などは次々と原告側に寝返るのだった。

「努力したものが報われない会社は・・・やがて活力を失います。会社は実力に見合った報酬を支払うべきです・・・お聞きしましょう・・・おやじいぬを作りだしたのは誰ですか」

「田向さんです」と口をそろえるクリエーターたち。

「羽生くん・・・異議ありって言いたまえ」と傍聴席の黛(父)・・・。

スマイルを激しく痙攣させる羽生。

「裁判に父親参観日はないといっておきたまえ」と囁く古美門だった。

限度を超えた父親の醜態にいたたまれない黛(娘)だった。

帰宅する・・・黛家。

「お父さん・・・もう、法廷に来ちゃダメ・・・」

「なんでだ・・・」

「神聖な場所だからです」

「しかし・・・あんな滅茶苦茶な男を見過ごすわけにはいかない・・・お前だってそう思うだろう」

「私は原告の権利を守る立場にあるのです」

「・・・」

「・・・」

「わかった・・・これ・・・」

徐(おもむろ)にホテルのレストランのお食事券を取り出す黛(父)だった。

「なに・・・これ・・・」

「夜景のきれいなレストランなんだ・・・羽生君を誘ってみたまえ・・・父さん、羽生君はお前にきがあると思う・・・そして・・・いざとなったら・・・こう言うんだ・・・酔っぱらっちゃった、どこかで休みたい・・・お前もそういうことをしてもいい年だ・・・」

「ちょっと・・・お父さん・・・泣いてるの」

「・・・」

「何を想像しちゃったのよっ」

「・・・あれやこれやをだ・・・」

父と娘のコント⑥

和解交渉のテーブル。

「三億円でいかがですか」と羽生。

「話にならない」と古美門。

「もはや・・・おやじいぬの人気は下降線だ・・・田向さんの真似して訴訟を起こす社員が続出して社内は崩壊寸前・・・そこまでして・・・お金が欲しいんですか」

青筋を立てて微笑む羽生。

「黛くん・・・田向さんの気持ちを羽生くんに話してやりたまえ」

「・・・田向さんは正当な権利を主張しているだけです」

「田向・・・俺たちは・・・お前にそんなにひどいことをしたのか」

「泣き落しですか・・・一つお教えしましょう、あなたはすんなり25億円を払うべきだった。それだけの余裕はあったはずだ。そうしていれば・・・社員の権利を手厚く保護する会社として御社は多大なるイメージアップをしていたはずだ。田向さんは時代の寵児としてもてはやされ、彼をそうさせた御社の先進的企業としてのパブリシティーの費用は25億円を遥かに上回ったでしょう。 金を惜しみ、何より、おやじいぬを作った会社の社長という面子にこだわったのは誰だったのか・・・ということです」

三人が去った後で肩を落とす社長。

「もう・・・払うしかないのでしょうか」

「いいえ・・・こうなったら・・・勝つしかありません」

羽生は秘策を繰り出すのだった。

「すべての従業員名簿を洗ったところ・・・当時のパートタイマーの方の名簿が抜き取られていたことが判明しました。・・・つまり・・・この人が原告側にとって不利なキーパーソンということです」

「・・・」

法廷に呼ばれた昔は「欽ドン劇団」で悪いOLだったようなパートタイマー・大木和子(小柳友貴美)に満面に笑みをたたえた羽生が質問する。

「あなたの趣味は何ですか」

「油絵を描くことです」

「それをあなたは社員の方に披露しましたか」

「はい」

「この絵は・・・いつ描かれたものですか」

油彩による「おやじ面した犬の絵」が披露される。

「16年前です・・・それはおやじいぬがヒットする前ですか、後ですか」

「前です」

「つまり・・・おやじいぬの生みの親はあなただったんですね・・・どうして、それを主張なさらなかったんです」

「創作者が誰かなんて・・・関係ないと思いましたから」

思わずVサインを出すマリオもしくはルイージに変装した傍聴席の黛(父)・・・。

しかし、古美門は・・・ほくそ笑んでいた。

「これを描いたのは・・・どこですか」

「自宅の庭です」

「ここにあるのは何ですか」

「街灯です」

「ここに・・・役所の街灯設置計画があります・・・これによるとあなたの家の前に街灯が設置されたのは14年前です」

「・・・」

「もう一度、お伺いします・・・あなたがこれを描いたのはいつですか」

「そんなの・・・いちいち覚えてるわけないでしょ・・・」

「・・・以上です。フフフ・・・アハハ・・・ワッハハハ」

古美門に嘲笑され、スマイルが凍りつく羽生だった・・・。

黛父娘の帰路。

「はめられたのよ・・・」

「・・・」

「うかうかとこっちのトラップにひっかかって・・・」

「・・・」

「おやじいぬはみんなで作ったという初心を貫くべきだった」

「・・・お前もグルになってはめたのか・・・」

「・・・」

「まさか・・・あの男ともはめてるんじゃ・・・」

「お父さんっ」

父と娘のコント⑦

しかし・・・古美門はさらにとどめを刺すべく最後の一手を打っていた。

田向の妻と娘に押入れょ捜させる古美門。

そして・・・一枚の娘の「幼い頃のお父さんの絵」が発見される。

それには・・・お父さんが・・・犬のように描かれていた。

本人尋問を前に黄昏る黛(父)を気遣う服部。

「お嬢さんが・・・悪徳弁護士に黒く染められていくのは見るのは忍びないですか・・・」

「娘が・・・どんどん・・・遠くなってしまう気がしてね」

「私・・・スイスにおりました頃、トレッキングを趣味といたしておりまして・・・特に高原に咲くエーデルワイスを鑑賞するのを楽しみとしておりました・・・しかし、ある年は天候不順・・・咲いていたのはたった一輪のエーデルワイスでした・・・しかし・・・そのエーデルワイスこそが一番美しいと記憶しております・・・」

「何の話ですか・・・」

法廷では原告を代弁する古美門。

「田向さんは・・・家族を愛し、家族のために働いていました・・・そんな田向さんが・・・幼い娘さんから贈られたのがこのお父さん犬の絵です・・・あ、お父さん犬って言っちゃいました・・・この絵こそ・・・おやじいぬのインスピレーションを田向さんに与えたのです・・・おやじいぬは・・・父と娘の愛の結晶なのです」

被告を尋問する羽生。

「会社は・・・田向さんを不幸にしたと思われますか」

「わが社は・・・家族的経営がモットーです。苦しい時は支え合い、喜びは分かち合う。そうして、みんなが幸せになっていく。それを目指したことが悪いとは思いません」

法廷に姿を見せた黛(父)を一瞥する古美門。

「いきたまえ・・・」

「は・・・?」

「君が・・・時代が移り行くことを父上に教えてさとあげるのだ」

「・・・」

黛は被告への本人尋問の法廷に立った。

「終身雇用、年功序説、愛社精神・・・それらはすべて過去のものとなりました。これからは国際的な競争社会がますます加速し・・・それに順応できない企業は滅び去るしかない時代になります。田向さんは・・・経営者のあなたより先にそのことに気がついたのです。義理人情では会社も社員も守れないことを・・・嫌われても叩かれても個人の主張を貫く人も賞賛されるべきでしょう・・・25億円は会社に対する貢献について田向さんが得るべき当然の報酬であると言えます。会社はそれに応じてこそ・・・新たなる時代に向き合うことが可能となるでしょう。ただ・・・最後に一言申し上げます。かって、家族を守るために一丸となった会社がありました。そしてがむしゃらになって働いた社員がいました。そういう人々によって養われたものとして・・・すべてのそうした会社と会社員に感謝の気持ちを捧げたいと思います。・・・永い間・・・お疲れ様でした」

娘の晴舞台に涙を抑えきれない黛(父)・・・。

そして脱力しても微笑みを絶やさない羽生だった。

古美門は・・・元祖・微笑みの帝王として幽かに笑むのだった。

勝者を出迎える黛(父)・・・。

「立派だった・・・まるで逆境に耐える一輪の花のように・・・そう・・・お前はエーデルワイスだ・・・」

「はあ?」

「古美門くん・・・私は君が嫌いだが・・・これからも娘を厳しく育ててくれたまえ」

「言われなくても・・・限界までこき使います・・・我が事務所は古き悪しき企業体質ですから」

「・・・ふん・・・とにかく・・・私はもう・・・とやかく言いません・・・第二の人生を始めなければなりませんから・・・とにかく・・・真知子・・・忘れるな・・・いざとなったら・・・酔っぱらっちゃった・・・どこかで休みたいだぞ・・・」

「お、お父さんっ」

「一体全体・・・なんの話だ・・・」

結局、羽生を食事に誘う黛(娘)だった。

「負けたのにくやしそうじゃないわね」

「そんなことないよ・・・くやしくて・・・ますます君が欲しくなった」

「え・・・」

「僕と君が一つになったら・・・世界は薔薇色になると思う」

「そ・・・そ・・・そう」

「そろそろ・・・出ようか」

「わ、わたし・・・よ・・・よっぱらっちゃた・・・ど・・・どこかで・・・や、やすまないと」

「わかった・・・家まで送っていくよ」

「・・・ありがとう」

エーデルワイスの高貴な白は・・・純潔を維持するほかないのだった。

古美門はベッカムと同じガルフストリームⅣを発注したが時価29億円なので赤字だった。

「あなた・・・気をつけなさい」とアドバイスする安藤貴和。

「あの娘・・・二人の男の間で揺れてるわ・・・」

「それがどうした・・・」

「向こうに行っちゃうかもよ」

「痛くも痒くもないね」

安藤貴和は男と女のすべてお見通しなのか・・・。

羽生は・・・小銭を稼ぐために・・・会社から追い出された経営者と・・・欲に目がくらんだ家族についていけない労働者をセッティングするのだった。

新たなる企業を立ち上げて顧問料を稼ぐためである。

社長と腰ぎんちゃくの二人・・・そして資産家となった田向は・・・昔を懐かしみ・・・「消しゴム」からやり直す決意を固めるのだった。

消しゴムひとつあったなら

どんな悲しいことも全部消してしまえる

ああ あじさい文具

わたしたちの あじさい文具

スマイル仮面は微笑みを取り戻す。嫌なことから顔をそむけるのが彼のモットーなのだ。

砂漠で迷った時に、自分の足跡をたどっても大体途中で消えているのだ。砂漠にだって風は吹くからね。

そして・・・変なキャラクターを作り出し・・・古美門事務所にやってくる黛(父)・・・。

「マグロパパ、ハマチママ、カンパチ兄ちゃん、関サバ姉ちゃん、のどぐろじいちゃん、佐賀のサバばあちゃん・・・」

「これをどうしろ・・・と」と古美門。

「お父さん・・・稚魚のキャラクターも作らないと・・・ちびまる子ちゃんなら・・・カンパチと関サバは姉妹設定で・・・」と黛(娘)・・・。

「基本、サザエさんも捨てがたいですな・・・しかし、水戸黄門ファミリーという手も・・・」と服部。

馬鹿は死ななきゃ治らないのだった。

関連するキッドのブログ→第4話のレビュー

それはさておき・・・。

こんにちは、ココログスタッフです。
本日よりココログフリー(無料版)の広告領域を追加させていただきます。

 ココログフリーでは日頃よりシステムの保守および開発に取り組んでおります。広告領域の追加の目的は、安定したサービスを長期的に無料で提供させていただくため実施いたします。

 ご利用いただいてきたお客様には大変申し訳ありませんが、持続可能なサービス実現のため、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
馬鹿なのか・・・ハイエナなのか・・・。
それとも・・・ココログ・フリーをやめたいのか・・・。
もう・・・充分、ステータスをさげているのに・・・さらにさげるのかよっ。

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2013年11月 6日 (水)

美人過ぎる研修医(瀧本美織)VS風呂上がりに眼鏡をかけない女(木村文乃)と汚らしい掟ポルシェ的な感じの男(中丸雄一)

つまり・・・こういうことなんだな。

月9ドラマ「海の上の診療所」のゲストと深夜ドラマ「変身インタビュアーの憂鬱」の主人公とヒロインは激しく鬩ぎ合っていると・・・。

まあ・・・よくわからない葛藤だけどな。

月9は夏のシーズン、長澤まさみ、香里奈、戸田恵梨香の主演級ヒロインを三枚使い、カードを余らせていたわけだ・・・今回は毎回、主演級ゲストをカード・チェンジするという昔ながらの手法でチャレンジなのである。

惜しいのは主人公の松田翔太は「二枚目だけど残念な感じの男」を巧妙に演じているが・・・結局、二枚目なので「フーテンの寅」(渥美清)には絶対になれないということである。

「ちゃんとして」で魔法のスリッパをくりだすヒロインの武井咲もいい味出しているが・・・「妹」ではないので「さくら」(倍賞千恵子)になりえないのである。

少し、研究不足なんだな。さらにプラス・アルファの謎の女(戸田恵梨香)もあまり、利いていないと思う。

で・・・マドンナ役を振り返ってみると・・・。

第1話 「加藤あい」 造船業者の娘 15.6%(大河ドラマのヒロイン)

第2話 「篠田麻里子」 小学校教師  ↘12.4%(AKB48)

第3話 「夏帆」 結婚詐欺師  ↘11.4%(ケータイ刑事)

そして第4話 「瀧本美織」 美人すぎる研修医  ↘10.6%(朝ドラマのヒロイン)

・・・と見事に下げまくっているわけである。

しかし、瀧本美織の「ちょっと嫌な女」はなかなかいい味を出していた。

だが、いい味はそれぞれに出しているのである。

このドラマのだめな点は・・・「松田翔太がふられる理由がよくわからない」・・・この一点にあると思う。

一方で・・・深夜の二人も・・・それなりにいい味を出しているのだが・・・。

こっちを「松田翔太」と「武井咲」でやってたら・・・どうだっただろうという妄想も浮かぶのである。

そう・・・思わせるのは・・・まだ、深夜の二人がラインを越えていない気がしてならないからである。

で、『・第3回』(TBSテレビ201311050028~)脚本・演出・三木聡を見た。さあ・・・段々、わけがわからなくなってきた今回である。終盤、風呂上がりのゲビヤマくんこと眼鏡をかけた美人編集者の下日山(木村文乃)は眼鏡をかけない。ここで・・・インタビュアー・青沼から脱皮中の小説家・白川(中丸雄一)が「眼鏡をかけないんだ」と問うと「風呂上がりに眼鏡はかけませんよ・・・はらだじん・・・じゃあるまいし」と答える。「えええっ、はらだじん・・・は風呂上がりに眼鏡をかけないのか」と驚くのである。

当然、「時効警察」での三日月くんの「眼鏡かけてないんですね」に応えた霧山の「日曜日に眼鏡をかけるなんて・・・イギリス人じゃあるまいし」という会話が連想されるわけだが・・・まあ、一部超限定的にはな・・・。

そうなると・・・「カナダ人じゃあるまいし」が正解で・・・主人公とヒロインが噛みまくってるということになる。

それでは・・・あんまりなので・・・ハラダという架空の国の人と解釈してみると・・・とてもじゃないが笑えない。

では・・・「M-1グランプリ」で敗者復活戦が行われる大井競馬場から決勝進出を決めたコンビを決勝会場へ送迎する配車を運転する東京無線サービスリーダーの原田仁さんを指しているとでも言うつもりなのか。

「風呂上がりに眼鏡はかけませんよ・・・原田仁じゃあるまいし」

ますます、笑えない。

じゃあ、一日あたり50万枚のラスクを製造していると噂されるガトーフェスタ・ハラダの従業員は風呂上がりに眼鏡はかけないとでも言うつもりか。

・・・もう、そのことはいいじゃないか・・・そのセリフで笑えなくても人生が終りというわけじゃあるまいし・・・。

つまり・・・最大の謎は・・・答え合わせをしないクイズ番組的な気持ち悪さを伴うってことなのでございます。

そういうのが好きな人もいるからな。

世界は広いからなあ。

消ノ原町の消防団の背後に潜む県警の刑事・安藤征一郎(光石研)に任意同行を求められたインタビュアーはこれに応じ・・・怪しい体育館で職務質問に応じる。

ここでインタビュアーは安藤刑事の懐中の録音機材をすり取るという超能力的なスリの技術を披露する。

「この街では・・・街の危機的状況に・・・不思議なことが起きるのです」

「たとえば・・・どんな・・・」

「昭和53年(1973年)頃・・・この街がダムの底が沈む開発計画がありました。しかし、推進派の助役が・・・谷底に転落して死亡するという出来事がありました・・・殺された可能性もありましたが・・・迷宮入りです・・・そして・・・街はこの通り」

「つまり・・・何者かが街を救ったと・・・」

「さあ・・・どうでしょう・・・とにかく・・・そういう街ですから・・・身辺には気をつけた方がよろしいかと・・・あなたは大丈夫かもしれないが・・・お連れの女性などは・・・何かが起きてもあらがえないかもしれないでしょう」

「なるほど・・・」

解放されたインタビュアーにゲビヤマくんは尋ねる。

「大丈夫でしたか・・・」

「単なる脅しだよ・・・」

「はあ・・・」

「深入りすることは面白いが・・・面白いことにはつねに危険がつきものなのさ」

「アンタッチャブルですね」

「そう・・・不可触領域さ」

お尻の部分に尻尾がプリントされた浴衣でおなじみの「猫旅館」に戻ったインタビュアーは女将の櫻井野薔薇(ふせえり)と番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)から変身前の小説家の分を別人とした宿泊料金一泊三千円を請求され、秘密を厳守するためにこれに応じる。

一方、近くのスーパーマーケット「え」にちくわなどを買い出しに出たゲビヤマくんは店員が「チューリップ殺人事件」の犠牲者の一人、夷鈴子(玄覺悠子)にそっくりであることに驚愕する。

「ゾンビが出ました」

「ゾンビ~?」と旅館の二人。

「誰の・・・」と小説家。

「夷鈴子です」

「えびすすずこ~?」と旅館の二人。

「どこに・・・」

「スーパーです」

「スーパーか~?」と旅館の二人。

・・・ここはスーパーカーであり、コンビニめいたスーパーマーケットの店名とあわせてしょうもない感じのことを重ねているらしい。

「えスーパー」で「エスパー」なのである。

だからといって・・・なんでもないのだった。

だが・・・そういうことが存在意義なのだ。

早速、夷鈴子のそっくりさんを訪ねた二人は・・・。

「いやねえ・・・私は鈴子の同級生の伊藤文江よ」と告げられる。

「でも・・・この写真・・・」

「あら・・・いやだ」

「つまり・・・同級生であるために間違って写真を使われたということですか」

「素晴らしいインターネットの世界ではよくあることよね」

「何か・・・情報をお持ちのようですね」

そこへ・・・消ノ原町の消防団のメンバーでスーパーの店長の花谷雅(裵ジョンミョン)が現れたためなのか・・・口をつぐむ文江。

しかし、夷鈴子の家が残っていることを思わせぶりに告げるのだった。

文江は・・・店長とただれた情事を行う関係にあり、さらにインタビュアーたちを尾行する消ノ原町の消防団の小太りの男・笹川量(三島ゆたか)ともただれた情事をしている。さらに花谷店長と笹川もただれた情事をするのだった。

いかがわしい街のいかがわしい関係だが・・・お茶の間的にはまったく興味がないと思われる。

なんだろう・・・このサービスされたのに残念な感じは・・・。

ちょうど・・・初めて行った家で・・・紙パック入りのアイスミルクティーを出されたような・・・。

今回、サブタイトルが「アリエナイ不貞」なのだが・・・玄覺悠子をただのおばさんとしか思えないと・・・何の魅力も感じない展開なのである。まあ・・・そういう薄汚れた世界が好きな人にはたまらないのかもしれません。

夷家は粗末なアパートの一室で・・・目の前の公園のブランコは何故か揺れており、子供の乗り物がドアの横に置かれている。

伊藤文江はその隣の部屋の住人だった。

夷の家には養子となった夫のまさひこが住んでいるらしい。

旧姓がやまもとであったために「やまもとまさひこ」がおかしいらしい文江だがインタビュアーにもゲビヤマくんにも共感はない。もちろん、お茶の間もだ。

日本の元スピードスケート選手でインスブルックオリンピック、レークプラシッドオリンピックに出場した山本雅彦がいるが・・・だからどうしたなのである。

ここで二人は・・・本当の夷鈴子(工藤綾乃)が中学生の時に「三貴子の泉(さんきすのいずみ)」を発見したことを知る。

そのことによって消ノ原町のカリスマとなった本当は美少女だった夷鈴子なのである。

美少女の夷鈴子に関係を迫った同級生が・・・一家離散に追い込まれるほどのステータスを持っていたらしい。

「チューリップ殺人事件」の回想シーンは美少女の太もも剥きだしにチェンジするのだった。

これにより一部愛好家のサービスされた感じがほんの少し高まった。

だが・・・まだまだサービス不足である。

ゲビヤマくんがゴロゴロ転げ回ったくらいではな・・・。

最後はチューリップになって下半身剥きだしでモザイク入るぐらいか・・・。

それはないと思うぞ。

その日、インタビュアーたちは・・・ようやく・・・にぎわう三貴子の泉を見ることができた。

はしゃぎ過ぎたゲビヤマくんは転倒し・・・インタビュアーはゲビヤマくんのそういうところが嫌いらしい。

ということは・・・そういうところ以外は好きなのである。

三貴子の泉の管理人の甘粕真一(眞島秀和)は二人を特別扱いで歓迎する風である。

「地質学的に言って、この地は半谷(はんがい)断層、月夜(つくよ)断層、そして敷島(しきしま)断層の3つの断層の磁場のバランスが絶妙にとれており、磁場がフラットになるために、水の分子構造も限りなくフラットになるのです。フラットな水を摂取することによって人体もフラットになります」

「そういう説明をパワーヒラリストの黒曲亜理里さんもしてますね」

「彼の説明がなくても・・・この泉の神秘性は変わりません」

言外に・・・パワースポットとして三貴子の泉を有名にした黒曲亜理里(松重豊)との関係を否定する甘粕だった。

つまり・・・黒曲と甘粕は大いに関係している可能性が高いのだった。

その後で・・・化野の森に住んでいるホームレスの天狗野郎(森下能幸)を詰問したインタビュアーは新たなる証言を得る。

「チューリップ殺人事件」で二人の死体を発見した直後に・・・先に帰ったはずの真壁真奈美(中村優子)が下山してくるのを目撃していたのである。

「それじゃあ・・・二人を殺したのは真壁真奈美なんでしょうか」

「しかし・・・真壁真奈美も一年後に殺されている」

もやもやとするインタビュアーであった。

猫旅館に戻って事件を整理したインタビュアーは風呂上がりのゲビヤマくんに不満をぶつけるのだった。

「このままだと・・・正確に23秒おきに噴出する泉は・・・青いネジのついた水道の蛇口から出ていて・・・その秘密を知った二人もしくは三人が殺された・・・ということになってしまう・・・しかし・・・そんな単純な謎じゃ1クール持たないじゃん」

「・・・」

インタビュアーに周囲をぐるぐる回られて目がまわるゲビヤマくんだった。

もう少しだ・・・もう少しで・・・かわいいよ、ゲビヤマくんかわいいよ・・・と言えるかもしれない。がんばれ、ゲビヤマくん。

そして・・・ブルーシートの家は放火され・・・天狗野郎は森を駆けるのだった。

火をつける消防団員の二人は言葉をかわす。

「また・・・人が死ぬことになりそうだ」

「嫌いじゃないねえ・・・あともどりもできないし」

関連するキッドのブログ→第2話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様の変身インタビュアーの憂鬱

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2013年11月 5日 (火)

武装蜂起につぐ武装蜂起でごぜえやす(綾瀬はるか)

明治17年(1884年)は大日本帝国にとって困難な時代だった。

明治15年(1882年)に日本銀行条例が公布され、日本銀行が設立される。

大隈重信が追放された後で大蔵卿となった松方正義は徹底したデフレーション誘導政策を行う。

このために物価は下がり続け・・・特に農産物価格は下落した。

農村は窮乏し・・・一部の農民は農地を売却し、あるものは都市部に流入し、あるものは自作農から小作農へと転落する。

それはある意味、資本家を育てる結果となるが・・・要するに貧富の差が拡大したのである。

そのために過激化した一部の農民は政府転覆を計画する蜂起活動へと走り出す。

その結果、5月に群馬で警察分署襲撃事件、9月に栃木県令暗殺未遂事件が発生する。

一方、海外ではベトナムの領有権をめぐり、フランスと清国の間に清仏戦争が開始される。

欧米列強によるアジア侵略は着実に進行していたのである。

「八重の桜」では・・・まるで悪党のように描かれる伊藤博文だが・・・フランスからの参戦要請に断固反対したのは伊藤である。

この時・・・日本が参戦していたとすれば・・・日清日露の・・・奇跡的な勝利がなかったことは充分予想できる。

しかし・・・このドラマはそういう歴史的事実にはほとんど触れずに・・・私学設立のために資金集めに狂奔する新島襄と・・・ほとんど妄想かもしれない徳富蘆花のフィクションに基づいた山本家の家庭内のいざこざを描く気満々なのだった。アホかっ。

ちなみに山本家を舞台にした「黒い眼と茶色の目」は明治32年(1899年)に書かれた大山家がらみの「不如帰」より後の大正3年(1914年)の小説である。「不如帰」で大山捨松を血も涙もない鬼後妻として描いたことを「お涙頂戴のために嘘八百書きました」と大山夫妻に謝罪したのは大正8年(1919年)という恥知らずな徳富蘆花なのである。そんなやくざな文士の書いたものを歴史ドラマのテキストにするなよ・・・。

ま・・・面白ければいいけどね・・・おいっ。

で、『八重の桜・第44回』(NHK総合20131103PM7~)作・山本むつみ、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は維新の元勲たちが暗殺、病死などで次々と退場し、孤軍奮闘、大日本帝国を支える最後の幕末テロリスト・伊藤博文と洋式牧場を経営し、日本の畜産業の礎を築いたと言える明治の牧老人こと・・・山本家に困った火種を持ちこんだ広沢安任の二大イラスト描き下ろしでお得でございます。まあ・・・大河ドラマはフィクションではあるものの・・・すでになんじゃこりゃあの領域に達しているのではないかと茫然とする今日この頃でございます。それはともかく・・・博文・・・かっこいい。二年連続ナイス・キャラクターですな。

Yaeden044 明治17年(1884年)1月、官吏恩給令が布告され、文官の恩給制度が発足。慶応は遠くなりにけりである。2月、照姫逝去。3月、スーダンのイスラム教徒の反乱に対して英国・エジプト連合軍がハルツーム包囲戦を開始する。14年間の長期戦の後にスーダンは英国の植民地となる。4月、新島襄は資金獲得のための海外渡航に出発。5月、日本の弁護士一号とされる星亨が「自由燈」(後の朝日新聞)を創刊。過激派自由党員が放棄し群馬事件発生。鎮圧される。6月、東京気象台が日本初の天気予報を発表。鹿鳴館で日本初のバザーが開催される。上野不忍池に競馬場が完成する。7月、ダウ社が最初の平均株価を発表。カメルーンがドイツの植民地となる。華族令が制定され、公・侯・伯・子・男の爵位が規定される。横須賀造船所が開渠する。8月、福州海戦により清仏戦争勃発。新島襄、スイスのサンゴタール峠で心臓発作で倒れ、人騒がせな遺書を認める。回復した襄はその後も一年半の旅程を消化する。9月、自由党員が政府打倒を掲げ茨城県加波山で放棄、鎮圧される。10月、米国海軍大学設立。フランスが台湾を封鎖。自由党解党。埼玉県秩父郡の農民が武装蜂起、鎮圧される。11月、英国がニューギニア南東部を植民地化。12月、愛知自由党の政府転覆計画が発覚、名古屋事件と称される。李氏朝鮮王宮で清国軍と日本軍が銃撃戦となり、日本軍は敗走。日本人居留民が虐殺される甲申政変が発生する。これは日本が画策した王宮クーデターの失敗によるものだったとされる。ベトナムを失いつつあった清国は朝鮮までも失うわけにはいかなかったのである。この結果、福沢諭吉は支援していた朝鮮独立党の敗北に失望し、清国は日本を軍事的弱小国として侮ることになる。日本の臥薪嘗胆の日々はこの後十年に渡って続く。

明治十七年正月、大和忍上篤姫(やまとのしのびのかみあつひめ)の遺髪を持った八重は鞍馬山山中にあった。周囲は雪景色である。

しかし、忍測の術によって定められた場所へ通じる隠された道をたどり、八重は目当ての小滝にたどり着いた。修験者のみが知る秘密の滝は雪の中で凍てついている。

白装束の雪忍者着の内側には熊の毛皮が貼ってあり、保温性は高いが立って待つと足裏から寒さがはい上がってくる。

八重は雪洞を掘って避寒する。

南蛮渡来の懐中時計が約束の時間を示すと・・・何かが破裂するような音がした。

そして、伝説のくのいち、平時子が現れる。日本史上に三人しかいないと言われる時渡りの術者である。

「会津の八重かえ」

「は・・・ここに控えております」

「篤姫は・・・往生遂げられましたか」

「は・・・去る年の暮れのことでございました」

「うむ・・・では・・・形見の品を受け取りましょう」

「これに・・・ごぜえやす」

「うむ・・・そうか・・・篤姫も逝ったか・・・」

時子は遺髪を包んだ袱紗をしばらく押戴き、瞑目する。

「その・・・お伺いしてもよろしいでしょうか」

「申せ」

「おの御髪はどなたにお届けになるのでございますか」

「ふふふ・・・誰ということはない・・・先の世では髪から人を作る黒穏テクノロジーという術がある」

「髪から人を・・・」

「そうじゃ・・・さすれば・・・篤姫と同じ人が蘇るのじゃ・・・」

「・・・」

「もちろん・・・篤姫その人ではないが・・・肉体の形質は受け継がれる・・・篤姫ほどの邪眼の持ち主は得難いからの」

「なにやら・・・恐ろしい話でごぜえやす」

「忍びの者であればこそ・・・許された禁断の技術じゃ・・・」

「なるほど・・・生まれた時より死すべき定めでございますな」

「そうじゃ・・・しかし・・・そういう教えの御世は過ぎ去ろうとしている」

「命大事の時代でごぜえますね」

「そうじゃ・・・人の命が何よりも尊いとされる愚かな御世が始るのじゃ・・・それでは世界は儚いばかりじゃのにのう・・・」

「・・・」

「これは釈迦に説法じゃったの・・・しかし、八重殿・・・」

「は・・・」

「八重殿の生きる時代はまだまだ修羅の世じゃ・・・これより十年の後に・・・大いなる戦が待っておる」

「また・・・戦が・・・」

「次なる戦は・・・この時代の宋国・・・そうそう清国との戦じゃ」

「清の国と戦うのでございますか」

「そうじゃ・・・」

「とてもかないますまい・・・」

「戦の行方は申せぬ定めじゃ・・・」

「しかし、威光が衰えたりとはいえ・・・清は大帝国・・・万に一つも勝ち目はありますまい・・・また愚かな敗北を喫するに違いありませぬ」

「そなたの負け戦の痛み・・・妾にも覚えがあること・・・しかし・・・勝負は時の運なのです」

「しかし・・・薙刀では鉄砲には勝てませぬ・・・」

「いかにも・・・そのために大和の国はこれより・・・兵を兵(つわもの)たらしめるためにすべての力をそそがねばなりませぬ・・・」

「・・・」

「しのび孫子の極意を申してみよ・・・」

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」

「その神髄は・・・」

「勝つべくして勝つことでございます」

「その根本は・・・」

「内に敵を作らず外に敵を作らず」

「その道理は・・・」

「戦わずして勝つ」

「いかにも・・・すでに・・・この国のために戦するものは育っておりまする」

「・・・」

「その多くは死ぬことになるでしょう・・・」

「・・・」

「その者たちの命を無駄にしないことが・・・くのいちの使命と心得よ・・・」

「・・・承りました」

「八重殿とはゆっくり夜語りなどしたいものじゃが・・・時は移ろいまする・・・次の会合にて・・・また会いましょうぞ」

「時子様・・・」

しかし・・・すでに時子の姿はなかった。

先の世に渡っていったのである。

「戦か・・・しかし・・・十年も戦がないのは・・・めでたいことと言える」

八重は身支度を整えると雪の中を科学忍者隊秘密基地へと走っていく。

「ふふふ・・・雪の中とはいえ・・・衰えたのう・・・」

八重は自分の脚力に年齢を感じていた。

「文明開化は・・・身体を鈍らせる・・・」

鞍馬山を天狗のように走りながら老いたくのいちは呟いた。

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坂の上の雲の頃

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2013年11月 4日 (月)

名前をくれて、ありがとう(木村拓哉)

超人工知能(現在の科学技術水準では語ることのできない)を搭載したアンドロイド「ARX II-13」(エー・アール・エックス・セカンド・サーティーン)には明らかに「意志決定機能」がある。

つまり、何をするべきか選択して実行できるのである。

それは「命令されたことを実行する機械」とは一線を画するのである。

たとえば・・・スマート・フォンの音声認識で・・・「電源を切る」を命令した時、現在の人工知能には・・・「ききとれませんでした」という受け答えができる。

しかし・・・それはそのように応えることがあらかじめ・・・プログラム・・・命令されているのである。

超人工知能はこの命令なしで・・・「電源を切ってほしいのかな?」と聞き返してくる奴だと妄想しておく。

もはや・・・それは人間そっくりの存在なのである。

人間とは人の個性の集合体である。

超人工知能には当然、個性が発生する。

「特別な意味を持つ名前」には・・・基本的に「個性を尊重するニュアンス」がある。

「あなたは特別な存在だ」と他者に告げられた時、超人工知能は「感謝」するのである。

もちろん・・・それもプログラムにすぎないと考えることもできる。

しかし、その場合は・・・人間の知能もプログラムにすぎなくなるのだ。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第4回』(TBSテレビ20131027PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・木村ひさしを見た。前回と同じ脚本・演出コンビであり、脚本には若さゆえの過ちというものを感じないでもないが・・・それなりにフレッシュなセリフもあり・・・まずまずなのではないかと感じている。そもそも・・・タイム・トラベルが実用化していない現代にあって「それ」についての言及は・・・基本的に虚構なので・・・かなり困難を伴うものなのである。もちろん、受け手の常識の水準というものもある。「データ」とか「光速」とか「質量」という言葉についてどの程度のイメージを持っているか・・・ある程度、ざっくりと考える必要がある。「ロボット」が「人間」とはどう違うのかも・・・それぞれの常識のレベルで変わってくるからである。しかし・・・これだけ日常生活に電子計算機が浸透している時代である。電子計算機と超人工知能の間に存在するグレイ・ゾーンについてもそれなりに語る必要が生じるのである。だからといって一から十まで説明していては話が進まない。ここもある程度、ざっくりいかなければならない。・・・というわけで・・・このドラマが挑戦的であり、斬新であり、多大なる困難を伴うことを考えれば・・・脚本・演出ともに絶賛するべき出来栄えであると思う。

天才科学者・沫嶋黎士(木村拓哉)が2013年(現在)から2113年(百年後の未来)に干渉したことによって・・・なんらかの問題が発生し・・・未来から暗殺用アンドロイドが転送されてくる。そして・・・黎士は殺害されてしまう。このドラマにおける現在と未来は一本の軸に統合されており、未来からの刺客は黎士による時空間の崩壊を阻止する目的があることが予想される。刺客たちはその関係者として・・・黎士のフィアンセである安堂麻陽(柴咲コウ)の殺害も計画するが・・・謎のクライアントの依頼によって未来から転送してきた黎士そっくりのアンドロイド・エーアールエックスセカンドサーティーンによって阻止されてしまう。

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」と告げながら・・・暗殺用アンドロイドを撃破し続けるエーアールエックスセカンドサーティーンに護衛される安堂麻陽は複雑な思いを感じ始めるのだった。

そんな麻陽に・・・黎士の妹であり、共同研究者の沫嶋七瀬・東京帝國大学次元物理学部物理学科准教授(大島優子)から連絡が入るのだった。

未来からのメール

「兄さんは・・・100年先から送信されたメールを受け取っていたようなのです」

「そんなことが可能なの・・・」

「兄さんの超理論によれば未来は同じ時空間にあるので・・・超光速度により、超時空の壁を突破すれば・・・超情報を超交換することは超不可能ではないと思います」

「超・・・なんですって・・・」

「ごめんなさい・・・兄の理論を・・・私は完全に理解していないので・・・それを素人さんに説明するのは超難しいのです」

「わかった・・・七瀬ちゃんを信じる・・・とにかく・・・黎士さんは未来の人間とコンタクトしていた形跡があるのね・・・」

「人間とは限りませんが・・・」

「それって・・・私も見れるかしら・・・」

「お二人の新居のパソコンには・・・データが完全にコピーされているはずです」

「でも・・・パスワードが・・・わからない」

「先ほど、こちらからリモートコントロールして・・・パスワードを入手しておきました」

「それって・・・ハッキング・・・」

「ええと・・・20131215です」

「結構・・・無防備な暗証番号ね・・・ああ・・・この番号って」

「そうです・・・兄さんと麻陽さんの結婚式の日ですよね・・・2013年12月15日・・・」

およそ・・・二ヶ月後・・・麻陽と黎士は・・・挙式する予定だったのだ。

その「予定」に付属した様々な脳内情報がまとわりつくのを感じながら麻陽はメールを開いた。

「さんtrwま奈08lvく×℞ふwv05ⓐ⒯のℨく%qW!#>もℳ)(ゅ6&・・・なんだかわからない」

「・・・ですね」

麻陽の心に浮かぶのは在りし日の黎士の面影だった。

『百年先からも・・・ずっと君を守るから・・・』とかって黎士は麻陽に告げた。

(・・・どういう意味なのよ・・・)

・・・しかし、麻陽の胸中の黎士は答えなかった。

「兄は・・・結婚を・・・楽しみにしてたんですね・・・」

「・・・」

「とにかく・・・何か分かったら・・・また連絡します」

電話を切った七瀬は研究室で独り言を漏らす。

「天才・・・沫嶋黎士が開けてしまった・・・パンドラの函・・・か・・・」

「箱の中身はなんじゃろかよね・・・」

「そうそう・・・」

「でも・・・マツシマレイジは・・・箱の中身に危険を感じたみたいね・・・あわてて閉じたみたいだけど・・・」

「うん・・・って・・・あんた誰?」

七瀬は知らないが・・・お茶の間は知っている・・・警視庁公安部の幹部になりすました暗殺ロイドのリーダー・角城元(平岡祐太)を一瞬で機能停止に追い込んだ・・・純白のセーラー服の美少女アンドロイド・エーアールエックスナインスザラストクイーンである。

形式名から・・・エーアールエックスセカンドサーティーンの発展形であることが妄想できる。

「すでに・・・2113年から11体の警察アンドロイドが・・・この世界にプリントアウトされてしまった・・・まあ・・・でもそのうちの5体はすでに分解処理されてしまったけどね」

「・・・」

「マツシマレイジそっくりのポンコツさん・・・おっさんなりに頑張ってるじゃんね」

「あんた・・・も・・・アンドロイド?」

「お・ば・さ・ん、私がアンドロイドに見えるの?」

「じゃ・・・なんなの・・・」

「ただの・・・ビューティフルなJKじゃね?」

「で・・・なんか・・・用?」

「パンドラの箱をねえ・・・もう一回開けてみたくなっただけよ」

「え・・・」

「だって・・・面白いじゃん・・・画期的だし・・・金も稼げるよ・・・ほら・・・未来の技術を独占できるんだよ・・・超医学、超物理学、超生物学、あらゆる超科学の結晶・・・そしてなんてったって・・・これから起る歴史の情報・・・すべての来るべき未来を手に入れることができる」

「すべての・・・未来・・・完全なる予測か」

七瀬に背を向ける美少女アンドロイド。

エーアールエックスナインスザラストクイーンに凶悪な笑みが浮かぶ。

獲物を釣り上げた漁師の表情が・・・。

「ガチで・・・ヤバイっしょ」

あらゆる禍を封じた箱を・・・「けして開いてはいけない」と命じられながら好奇心に負けて開いてしまい、ありとあらゆる災厄を人類にプレゼントした美少女パンドラは・・・神々の作った女人形なのである。

もちろん・・・神々は・・・人類を苦しめるために・・・パンドラを人の元へと派遣したのだった。

しかし・・・パンドラ自身もまた・・・神々から様々な贈り物をされたために・・・ただの人形ではなくなってしまっている。

このドラマにおけるアンドロイドは実はパンドラをモチーフにしている気配が濃厚である。

たとえば・・・アンドロイドたちを作った人間もしくは人間の作った超人工知能は・・・言わば、アンドロイドの神々である。

その神々は・・・ある意味、残虐である。

21世紀から22世紀にかけて起った「反乱」で・・・エーアールエックスセカンドサーティーンやサプリのかっての「仲間」たちは・・・「痛み」や「恐怖」をプログラムとして贈られてから処刑されている。サプリの持つ「感情アプリケーション」も神々に贈られたものである。同様に戦闘ロイドたちは「高機動戦闘能力」や「自己判断力」を・・・看護ロイドは「修復機能」や「自己陶酔能力」を贈られているのである。

21世紀から22世紀にかけて起った「反乱」の前の「戦争」では・・・場合によっては超人工知能が人類を殲滅している可能性がある・・・エーアールエックスセカンドサーティーンは100億人を殺しているのかもしれない・・・神々を殺した神々は・・・失われた何かを求めてある意味では人間性を・・・アンドロイドに付与しているのかもしれない。

・・・エーアールエックスセカンドサーティーンは・・・「安堂麻陽の殺された未来では人類は完全に平等である」と語っている。つまり、人類は全員、死亡しているのである。

一方で、「安堂麻陽こそが希望である」と語っているので・・・安堂麻陽が死ぬことを禁じているクライアントは・・・過去を変容させて、人類の滅亡を阻止する勢力であることが推察されるのだ。

おそらく・・・安堂麻陽は・・・何故かはまだ不明だが「パンドラの箱」に残された・・・「もう一つの別の未来の予感=希望」なのである。

エーアールエックスセカンドサーティーンの後継機と目されるエーアールエックスナインスザラストクイーンは敵か味方か分からない謎の存在である。

しかし・・・その気まぐれ・・・奇妙な振る舞いこそが・・・エーアールエックスナインスザラストクイーンが・・・より多くのものを与えられ、人間そっくりになったパンドラであることを暗示しているのだ。

この物語には「人間」と「人間そっくりなもの」そして「人間以上」が絡み合っているのである。

もちろん・・・黎士がそれをあわてて閉じた以上・・・現代と未来の交信は「最大のタブー」であることが明らかなのである。

だから・・・この物語のハッピーエンドは・・・「すべて世はこともなし」であることが予想できるのだった。

とにかく・・・この物語は「年末」という未来に向かって現在進行形で進んでいくのだった。

眠れぬ夜を過ごした麻陽は・・・結局、キッチンで寝入ってしまい、エーアールエックスセカンドサーティーンが修理した目覚まし時計によって起こされる。

テレビを見ようとした麻陽は・・・エーアールエックスセカンドサーティーンに支配された亜空間によって節電を余儀なくされるのだった。

エーアールエックスセカンドサーティーンに文句を言いかける麻陽は・・・言葉を飲みこむ・・・それはまるで「彼もつかれているんだから・・・このまま、寝かせておいてあげよう」的なニュアンスを生じさせている。

アンドロイドとの出会いから・・・数日、漸く、麻陽は状況に馴染み始めたようだった。

テロリストと刑事の再会

一方で・・・法の執行者として・・・「罪を憎んで人を憎まず」が信念であるらしい・・・警視庁公安部第仇課特殊捜査班の葦母衣朔刑事(遠藤憲一)は・・・犯罪者である妻の弟を冷静に射殺する一方で、服役中の囚人に対して温情を示す人柄である。

そのために・・・出所した前科者が・・・御礼を言いにやってくることも珍しくないのだった。

世の流れに逆らい、警視庁の館内で紫煙をくゆらせる葦母刑事をそんな一人の男が訪ねてくる。

「おお・・・川島じゃねえか・・・」

「葦母の旦那・・・その節はお世話になりました・・・何度もムショに面会にきてくれて・・・こんな俺に説教してくれて・・・おかげで・・・人生をやりなおす決心がつきました」

「そうか・・・その気になってくれたか・・・よし、出所祝いだ・・・おいしいものをおごってやるよ」

「ありがとうございます」

しかし・・・元テロリストの川島は・・・暗殺アンドロイドのドルトン(津村知与支)だったのだ。

食後に橋の上で川島は葦母を川に突き落とすのだった。

川面に浮上した葦母は橋の上を見上げる。

「おい・・・冗談はやめろ」

「およそ二百年前の19世紀初頭・・・物理学者のジョン・ドルトンは水があらゆる気体を同じ量だけ吸収しないという現象に注目し、ついにこの現象が気体を構成する究極の粒子の数および質量に依存するのではないかと確信するにいたりました」

「なんだって・・・」

「私のコードネームは・・・ドルトンと申します」

「どうしたんだ・・・川島」

「ドルトンの弟子の一人が導体を流れる電流と、電流によって生み出される熱の関係を示した物理法則を示したジュールです」

「おい・・・いい加減に助けてくれ」

「この爆弾は電流と発熱の関連によって爆発するのでジュール爆弾と名付けました」

「川島・・・やめろ」

「あなたを殺すための充分な殺傷力があることを確認してみましょう」

「川島」

安堂麻陽を巡る攻防戦に接近し過ぎた葦母は殺害予告リストの一員となっており、爆発の圧力を一瞬感じた後で意識不明となった。

爆発音に驚く周辺の人々が殺到する。

川面を流れはじめた瀕死の葦母刑事を見送るドルトン。

「わたしは・・・ドルトンです・・・あ・・・もう聴こえませんね」

アンドロイド・ドルトンは派生案件を処理すると・・・本来の任務である安堂麻陽殺害に着手するのだった。

もう一人の次元科学者

海外から一つのニュースが飛び込んでくる。

【ただ今、入った情報によりますと・・・米国ロサンゼルスのイーストカリフォルニア大学の次元物理学教授・桐生貴志さん、38歳が行方不明になっていることが判明しました。当局によりますと・・・】

テレビを禁じられ、ラジオを聞いていた麻陽は・・・その名前にショックを感じるのだった。

「桐生さんが・・・」

【・・・現地の警察では何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとして・・・所在の確認を急ぐとともに関係者に事情を・・・】

「まさか・・・桐生さんまで・・・」

「どうした」

麻陽の背後には音もなくエーアールエックスセカンドサーティーンが忍びよっていた。

「びっくりした・・・驚かさないでよ・・・急に起き出して・・・」

「ボディーの修復は完了している。待機モードはとっくに解除された」

「知るかっつうの・・・じゃ・・・テレビいいのね」

「私の許可を申請する必要はない」

「あ・・・そう」

テレビでも同じ事件が報道されている。

【捜査当局の発表によりますと・・・桐生教授は今月13日より所在がわからなくなっており・・・】

画面に移る顔写真を確認する麻陽・・・。

「この人・・・黎士さんの親友なのよ・・・」

「・・・」

「まさか・・・桐生さんも・・・殺人スケジュールのリストに乗ったんじゃ・・・」

「情報を確認したが・・・その形跡はない」

「いつ・・・確認したのよ」

「私は常時、この時代の未熟だが素晴らしいインターネットの世界と接続している」

「あ・・・そう」

その時、安堂家のチャイムが鳴るのだった。

「まさか・・・暗殺者が・・・」

「・・・」

しかし、訪問者は桐生貴志(藤本隆宏)だった。

「あ・・・麻陽ちゃん・・・」

「え・・・桐生さん・・・」

有無を言わさずハイタッチを交わさせる陽気な桐生だった。

「Weハイハイハイハイ We made it! イエーイ!」

「イエーイって・・・大変なことになってますよ・・・テレビとかでは・・・」

「あれ・・・俺さ・・・大学に行く途中だったんだけど・・・急に黎士に会いたくなってさ・・・ちょっと寄り道しただけなんだけど・・・」

「ロスから東京は・・・寄り道ってレベルじゃないでしょ・・・大騒ぎになってますよ」

「そうか・・・そりゃ・・・まいったな」

「まいっているのは・・・関係者一同でしょ・・・」

「お・・・黎士・・・」

再び、黎士とハイタッチを交わす桐生だった。

「イエーイ」

「イエーイ」

「はは・・・決まるねっ・・・俺たちサイコーだね・・・黎士、お前が死ぬわけないと思ってたよ・・・だけど顔見るまで安心できなくてな・・・さあ、土産に肉を買ってきたぜ・・・みんなで食おうじゃないか」

「肉って・・・うわ・・・デカッ」

勝手にあがりこむ桐生を見送りながら麻陽は素朴な疑問を囁く。

「どうして・・・私たちのハイタッチを知ってるの」

「君たちのハイタッチをトレースして実行しただけだ・・・」

「あ・・・そう」

「彼の身の安全のめにも・・・秘密を厳守することに配慮してもらいたい」

「・・・」

「嘘をつくのは君の仕事だ」

「人を・・・詐欺師みたいに・・・」

「ポーカーフェイスを期待する・・・君は表情が豊か過ぎるようだ」

「・・・」

桐生は室内を陽気に観察するのだった。

「すっげえおしゃれじゃん・・・しかも・・・麻陽ちゃんと黎士が混然一体となって・・・ラブラブって感じじゃん」

「・・・」

「どうした・・・黎士・・・照れてるのか」

「あの・・・桐生さん・・・黎士は誘拐事件以来・・・記憶が混乱してるんです」

「ああ・・・そうか・・・じゃ、朝から夢のステーキ食って元気出さないとなっ」

「夢のステーキって・・・例の丸焼きですか・・・」

「そうだよ・・・麻陽ちゃん・・・貧乏時代にパンの耳ばっかり食ってた俺たちが夢にまで見た牛肉のブロック丸ごとこんがりステーキだよ」

「あ・・・やっぱり」

再びチャイムが鳴り、乱入してくる江戸川斗夢(ジェシー)、栗山薫(山本美月)、倉田朝晴(池田大)ら・・・黎士の研究室の助手たち。

「あなたたち・・・」

「俺が呼んだのさ・・・なにしろ・・・牛肉のブロック丸ごとこんがりステーキはみんなで食べないと美味しくないからな」

「・・・焼けましたけど・・・」

「やったぜ・・・さあ・・・黎士・・・食え」

「・・・」

「うまいか?」

「うまい・・・」

「だろう・・・さあ・・・俺も食うぞ」

牛肉のブロック丸ごとこんがりステーキを回し食いする二人を茫然と見つめる一同だった。

「さあ・・・みんな・・・一緒に食おうぜ」

「遠慮しておきます」と口をそろえる一同だった。

「どうして・・・味がわかるのよ」と囁く麻陽。

「味覚のソフトをインストールしている」

「何のためによ・・・」

「別に特定した目的はない」

「標準装備ってこと・・・?」

「いや・・・追加された機能だ」

「それは・・・人間に化けるためにってこと」

「違う」

「ハックション」と二人の内緒話を遮る桐生。

カリフォルニア・スタイルは秋の東京では涼しすぎるようだった。

黎士の服を桐生のために用意する麻陽だった。

「これ・・・少し小さいかもしれないけど」

「おお・・・優しいねえ・・・麻陽ちゃんが・・・黎士と一緒になってくれて・・・俺は本当にうれしいよ・・・こいつ、研究以外はまるで気が回らないだろう・・・麻陽ちゃんが一緒なら安心だもんな・・・麻陽ちゃん・・・こいつのこと・・・本当に頼むぜ」

複雑な気分になる麻陽だった。

しかし・・・能天気であくまで陽気な桐生に「真実」を明かすことはできないのだった。

「それにしても・・・記憶がな・・・」

「はい・・・」

「もし、よかったら・・・黎士のコンピューターを見せてもらえるか・・・何か、記憶を取り戻すヒントがあるかも・・・」

麻陽は黎士にそっくりなアンドロイドの顔色を伺うが・・・いつもの無表情があるだけだった。

「どうぞ・・・」と麻陽は答えた。

早速、桐生はパソコンを覗くのだった。

「なるほど・・・そうか」

「何か・・・分りましたか」

「もう少し、検証してみる必要があるが・・・黎士は新たなる時間理論を構築していたらしい」

「時間理論・・・」

「そうだな・・・麻陽ちゃんは時間はどっちに向かって流れていると思う」

「どっちにって・・・未来にでしょう。今日が過ぎ去って昨日ななり、明日がやがて今日になるわけだから」

「うん・・・しかし、それは麻陽ちゃんっていう人間か・・・そう感じているにすぎないわけだ」

「・・・」

「たとえば・・・地球は赤道上でのスピードで時速1674.4 kmで自転しているわけだけど・・・この物凄い速度で回っているってことを人間は感じない」

「・・・時速・・・1600キロって・・・物凄い速さですよね」

「麻陽ちゃん、一瞬って言うだろう。たとえば・・・テレビを見てそれを人間が見たと思っている間に・・・テレビから出た光が視覚器官に光速度で到達する時間や、光の刺激に反応した神経細胞が・・・目と脳を生体パルスで伝達する時間が経過していることになる。つまり、一光年先の星の光が一年前の光であるのと同じように人間の感じることはすべて過去に過ぎないわけだ」

「はあ・・・」

「つまり・・・人間はけして・・・時間を正しく認識しているとは限らないんだよね」

「ええ・・・」

「たとえば・・・昨日といったら・・・一日24時間あるわけだが・・・その24時間全部を昨日と人間が感じているわけじゃないでしょう」

「そうですね」

「で・・・明日も24時間あるわけだけど・・・その24時間と今日の24時間の何が違うのかなんて・・・あまり・・・意識しないのが普通だと思う」

「まあ・・・」

「でもさ・・・一年前の24時間と比べたら・・・昨日の24時間はずっと・・・今日に近いでしょ」

「はい・・・」

「そして・・・一年後の24時間と比べたら・・・明日の24時間はずっと近い」

「ええ・・・」

「そう考えると・・・たとえば一万年後の24時間と比べたら・・・100年後の24時間なんて今日の24時間とほとんど一緒みたいなもんなんだな」

「いや・・・それはどうか・・・」

「とにかく・・・黎士は人間が感知できない時間を理論的に正しく理解して・・・100年後の未来と時間をシェア・・・つまり共有することに成功したらしい」

「よく・・・わかりません」

「ああ・・・俺にも完全には・・・分らない・・・とにかく・・・とんでもないことを黎士がやらかしたのは・・・間違いないね」

「・・・」

「まさに・・・21世紀最大の発見って言っていいだろう・・・なあ・・・黎士」

「黎士の記憶はないのです」

「そうか・・・しかし・・・きっといつか思い出すさ・・・記憶の再生処理が出来なくなっていても・・・記憶が消えたわけじゃないからな」

「・・・」

「とにかく・・・いま、俺にわかるのはここまでだ」

「君の努力に感謝する」

「おいおい・・・水臭いな・・・とにかく・・・俺ももう少し研究してみるよ」

「・・・」

桐生が去った後で麻陽はエーアールエックスセカンドサーティーンに違和感を感じていることを告げるのだった。

「なんか・・・変だったわ・・・うまく言えないけど・・・あなた・・・いつもより・・・上手に振る舞ってた」

「何をだ・・・」

「本当に・・・桐生さんと友達みたいだったのよ・・・いつから、そんなに嘘が上手になったわけ・・・」

「俺に嘘をつく機能はない」

「だって・・・」

しかし、出社時間に遅れている麻陽はそれ以上の追及を断念するのだった。

だが・・・未来から転送されてきたアンドロイド・エーアールエックスセカンドサーティーンにとって・・・すべてはすでに起った出来事なのである。

すべては・・・記録された通りに推移しているのだ・・・いまのところは・・・。

システムエンジニアの恋

遅刻して出社した麻陽にエニグマ社のシステムエンジニアであり、広報室に籍を置く星新造(桐谷健太)が話しかける。麻陽は気がついていない風であるが・・・星は明らかに麻陽に対して異性として特別な感情を抱いている。

その興味に従って麻陽の周辺を嗅ぎまわっている星は重大な情報を握ってしまったようだった。

「あの・・・桐生博士がお忍びで・・・遊びにきたって本当ですか」

「ええ・・・本当に人騒がせな話だよ・・・いい人なんだけどね・・・常識のなさでは・・・黎士さんといい勝負・・・」

「あれですか・・・結婚式の打ち合わせとか・・・」

「そうね・・・色々とね・・・事件のことを心配して来てくれたみたいだけど」

麻陽はあることないことを適当に喋る自分に・・・それほどの違和感を感じない。

最先端企業の広報室の業務とさして変わらない事柄だからである。

しかし・・・部下である星の口調に含む所があるのは敏感に察知するのだった。

「何か・・・問題があった?」

「結婚式・・・なさるんですよね・・・」

「・・・もちろん・・・」

「あの・・・すごく失礼なことを申し上げるみたいですが・・・あの・・・戻って来られた黎士さんは・・・本当に・・・黎士さん、本人なんでしょうか・・・」

内心、驚愕しながら、冷静さを装う麻陽。

「何言ってんの・・・」

「その・・・」

「ところで・・・サキちゃんは・・・」

動揺を隠すために話題を替える麻陽だった。

サキこと広報室のアシスタント・小松左京子(山口紗弥加)は実の父親の葦母刑事の部下である冨野刑事(日野陽仁)に応対していた。

「本当なんですよ・・・いまにも死にそうなんです・・・」

「あの人のことを父だとは思ってませんから」

「そんな・・・たった一人の娘さんじゃないですか・・・いわばドズル将軍にとってのミネルヴァでしょう」

「たとえがよくわかりません」

「顔がこわくて・・・誤解されやすいけど・・・本当は優しくて子煩悩なんです」

「私はそうは思わんぞ」

「ちょっと・・・のってきましたな」

「とにかく・・・お引き取りください」

様子を見に来た麻陽に気がつく左京子だった。

「私の父は・・・20年前に母の実の弟を殺したんです」

「・・・」

「借金苦で強盗やらかして女性を人質にたてこもって・・・まあ、だめな叔父さんだったんですけどね」

「・・・」

「母は私を連れて・・・叔父を説得するために現場に行きました。私は叔父さんに結構可愛がられていて・・・」

「・・・」

「叔父は・・・説得に応じて姿を見せたんです・・・それなのに・・・あの人は問答無用で叔父を射殺したんです・・・」

「まあ・・・職務だから」

「でも・・・あの時の父親の目が忘れられないんです・・・身内を殺したのにまったく、動揺していなかった・・・恐ろしい人殺しの目をしていました」

「それは・・・単に・・・苦悩していただけなんじゃ・・・」

「違います・・・人を殺せる人間は特別なんです・・・私だったら・・・絶対に殺さないもの・・・あの人は・・・私とはまったく別の・・・怪物なんです」

「でも・・・人質の命は助かったのよね」

「赤の他人より・・・身内をかばうのが人として当然じゃないですか・・・」

「う・・・ん・・・そ・・・それは」

だが・・・と麻陽は思う。他人どころか・・・自分を守るために戦っていたものに自分が投げつけた言葉の数々を・・・。

それは・・・人を殺すことができるものへの根深い恐怖心によるものだったのだろうか。

帰宅した麻陽は・・・そのことをアンドロイドに尋ねずにはいられないのだった。

夜のアンドロイド

「あなた・・・たくさんの人を殺したって言ってたわね」

「・・・」

「聞かれたくないことかな」

「話す必要がないと考える」

「私が知りたいのよ」

「安堂麻陽の疑問に応えることはクライアントのリクエストに含まれていない」

「私・・・あなたがこわいの・・・あなたが簡単に人を殺すんだとしたら・・・もしかしたら・・・何十人も・・・何百人も殺してきたのかもしれないって」

「十一万三千六百五十一人だ・・・なお・・・これは個体を識別できた人数としてカウントされている・・・大量破壊兵器使用の場合の員数は含まれない」

「・・・想像もつかないわ・・・私は人を殺す気持ちが分らない・・・人を殺したことのある人と一緒にいることが・・・こわいの」

「兵士は時に・・・投下スイッチ一つで十万人を一瞬で殺すこともある・・・しかし、そういう人間が裁かれた記録はない」

「・・・」

「まして・・・俺は人ではない」

「機械だから・・・機械なんて・・・バグが出るものでしょ・・・あなたが何をしでかすか・・・予想もつかないのよ」

「人間も突然、発狂する」

「口がへらないガラクタね・・・とにかく・・・私は知っておきたいの・・・あなたが・・・どんな機械なのか・・・その来歴をね・・・何故、人を殺したのか知りたいし・・・誰に私を守るように依頼されたのかも・・・知りたいのよ」

「・・・」

「あなたは・・・人を殺すことに心理的な抵抗はないの」

「・・・」

「あなたは・・・うなされている・・・まるで悪夢を見ている人間みたいにね・・・そのことに覚えはないの」

「記憶の異常再生は・・・メンテナンスの副産物で・・・エラーとしては無視できる範囲とされている」

「見てるんじゃないの・・・夢を・・・」

「それを夢と呼ぶべきかについての判断は保留されている」

「それは・・・あなたの中の何かを苦しめているのね」

「私に苦痛を感じる機能はない」

「嘘よ・・・戦闘ロボットなら・・・自分の能力低下に対する防御機能があるはずだもの」

「それを苦痛とは呼ばない」

「私にはわかる・・・将棋で言えば・・・駒をとられる気持ちよね」

「・・・」

「自分にそれを感じるのであれば・・・他人にもそれを感じることができる」

「君の言うことには論理の飛躍がある」

「じゃ・・・あなたは・・・その再生しなくてもよい記憶を・・・消してしまいたいという気持ちはないの」

「記憶を消去することはできる」

「じゃ・・・なぜしないの・・・」

「私の記憶容量にはまだ余裕がある・・・そして・・・記録の一部抹消は責任の所在を不明確にする恐れがある」

「ははん・・・あなた・・・責任を感じるのね」

「・・・」

「私は忘れてしまいたいって思うことがあるな。どうしようもない虚しさを・・・。黎士の記憶がなければ・・・彼を失った哀しみも消えるでしょう・・・」

「沫嶋黎士に関する記録を抹消したいのか・・・」

「わからない・・・わからないけれどね」

その時、麻陽の携帯電話に着信がある。

それは・・・麻陽と黎士が結婚指輪を注文していた店だった。

「ジュエリー・エルウニベルソの者ですが・・・安堂麻陽様、ご本人でしょうか」

「はい・・・」

「ご注文していただいた指輪が完成したことを御報告いたします」

「・・・」

「お受け取りは・・・御来店なさいますか・・・それともお届けにいたしますか」

麻陽はたちまち追憶の虜囚となるのだった。

『ねえ・・・指輪のデザインなんだけどさ』

『だめよ・・・東京タワーは無理』

『でも・・・二人の思い出のシンボルじゃないか』

『これだけは譲れません』

『どうして・・・』

『指が曲げられないでしょ・・・添え木じゃないんだから』

『いや・・・曲げられるっしょ・・・それに骨折した時に・・・』

『ねえ・・・このデザイン・・・エレガントじゃない・・・シュッとしてるし』

『東京タワーの方が・・・シュッとしてるし~』

『すみません・・・これにします』

『え~』

「もしもし・・・もしもし・・・」

麻陽は追想の淵から身を乗り出した。

「もしもし・・・安堂様?」

「ごめんなさい・・・指輪はキャンセルします・・・いえ・・・料金は払いますけど・・・もう使わなくなったので・・・そちらで処分してもらっていいですか・・・私・・・思い出すのが辛いんです」

「・・・お客様・・・」

電話の向こうで宝飾店の店員は妄想が膨らみまくるのだった。

おそらく・・・麻陽は入浴中なのだろう。

一人になったエーアールエックスセカンドサーティーンの元へ・・・サプリ(本田翼)がご機嫌伺いに現れる。

「そんなに・・・嫌ならさ・・・戦いを放棄したらいいじゃん」

「嫌・・・なんのことだ?」

「嫌だ・・・嫌だって・・・あんたの心が叫んでいる」

「心・・・そんな機能は俺にはない」

「私の感情のアプリケーションをインストールしてあげようか・・・表現活動に幅がでるわよ」

「必要ない」

「そうよねえ・・・あんたのA.I.は高度なプログラム・コンプレックスにありがちな特異点を発症しているものね・・・看護ロボットなめんなよっ・・・ズバっとスパッとまるっとお見通しだ」

「意味不明だ」

「つまりね・・・記憶と記憶が結合して短絡的なコンプレックスが生じ、あなたの意志決定に影響を及ぼしてるわけ・・・つまり・・・自然発生的な・・・感情ってやつが・・・あんたのロジックを狂わせているわけ・・・だってそうでしょう・・・人間以上の記憶処理能力を持ち、人間以上の判断力を持つ人工知能に・・・人間以上のフィーリングが備わったってなんの不思議もない話なんですもの・・・第一さ・・・アスラシステムが・・・悪魔のシステムって汚名を着た理由忘れたわけじゃないでしょ・・・システムエラーでエモーションやらパッションが爆発して・・・アンドロイドが暴走してテロして反乱しちゃったからじゃないの・・・忘れたとは言わさねえぜ・・・」

「・・・」

人工的な感情を持つ看護ロイドは・・・同類を相哀れむ目で見つめるのだった。

夜の線路沿いの金網に磔された風をエンジョイするエーアールエックスナインスザラストクイーン・・・。

「テヘッ・・・テヘッ・・・テヘペロッ・・・ううん・・・人間は人形に魂入れるほど魂込めちゃって・・・名人ともなればマジで魂入ったりするわけですな・・・ああ・・・気持ちはわかるよアンドロイド・・・私はなにしろ・・・あんたより・・・七世代も進化しちゃってるのよよ~ん。言いたいのよね~・・・生きるべき人が死んで死すべきクズが生きるのかと・・・いよっ・・・オールドタイプ・・・浪花節だよ人生はっ・・・はいはい・・・そこのメガネくん」

「はい・・・」

呼びとめられたのはドルトン川島だった。

「うわ・・・マジ気がつかなかった・・・さすがは究極のモデルだわ~」

「あなたは生きるべき人か・・・死すべきクズか・・・どちら様ですか」

「ぼくらのボスを殺したのは君ですか」

「やったのは私だよ・・・ケケケ」

「・・・」

「だって・・・あの野郎、無能なんだもん・・・口の利き方知らないし~」

「君の行為はポリスクラウドに照会するまでもなく法律違反ですよ」

「法律なんて生温いこと言ってるから時代遅れのポンコツに勝てねえんだよ・・・力なき正義なんて無意味なんだよ・・・警官が武装している意味分ってんのか・・・勝つまでやれって言ってんの・・・仲間の屍越えて行け~、何度でも何度でもどんな時もどんな時もやっちゃいなったらやっちゃいな・・・それとも・・・ここで脳みそバキュンにしてやろうか・・・蝋人形にしてやろうか」

「戦います・・・勝つまでやります・・・戦闘準備整ってます」

「メガネく~ん、カワイイ~・・・大好きでちゅ~、テヘペロチュッ!」

「ああ・・・これが・・・死の恐怖か」

夜更けの街で一人・・・身震いモードを全開にするドルトン川島だった。

生死の境を彷徨う葦母刑事の集中治療室に出現するサプリ。

「痛いの痛いのトンデケ~サービスを開始するにゃん。にゃんと言えどもボートレースの人ではありません。うふふ・・・なんで・・・怖い顔のおじさん刑事を助けるのか~ラララそれは歴史に聞いてください~生体修復ナノマシーン出撃~・・・うわっ、マジ痛そうにゃん・・・はいがんばって~・・・ほらほらかわいいナースだよ~チラリあるよ~」

翌朝・・・葦母刑事が奇跡的に回復した知らせを受けて早退する左京子だった。

システムエンジニアの疑惑

「サキちゃん・・・どうしたの」と星に尋ねる麻陽だった。

「テロリストに襲われて瀕死だった親父さんが・・・一命とりとめたそうです」

「まあ・・・」

「あの刑事さん・・・黎士さんの身辺を探ってるみたいでしたね」

「探ってるって・・・黎士さんが見つかった時にお世話になっただけよ」

「俺・・・警視庁のデータベースにハッキングしました」

「え・・・」

「あの飛行機事故で回収された肉片から・・・黎士さんのDNAと一致しているという鑑定結果がありました・・・」

「道理で・・・様子が変だと思ったんだ」

「何言ってるの・・・」

「黎士さんは本当は死んでいるんですね」

「馬鹿なこと言わないで・・・」

「何故隠すんです・・・俺にはわかりますよ・・・ずっと麻陽さんを身近で見て来たんですから」

「・・・」

「俺だって・・・黎士さんには生きていてもらいたい・・・でも・・・あの男は・・・黎士さんじゃにいでしょう・・・誰なんです」

「・・・」

「警察だって疑っているに決まっている・・・心配なんですよ・・・麻陽さんのことが・・・」

その時、麻陽の携帯に着信があるのだった。

「もしもし・・・桐生だけど・・・俺、今夜の飛行機で帰ることにしたんだけど・・・黎士の奴に渡したいものがあってさ・・・あいつ、携帯もってないだろう・・・で、よかったら麻陽ちゃんに預かってもらおうと思って」

「はい・・・分りました・・・私の方から伺います」

「麻陽さん・・・」と下心まるだしで迫る星。

「あのね・・・星君・・・お願いだから・・・このことには関わらないで・・・これは私たちの問題だから・・・」

「・・・」拒絶されて涙目の星だった。

黄昏のバトル・フィールド

空港近くの埠頭で待ち合わせた桐生と麻陽だった。

「やっぱり・・・丸ごと肉でしたか・・・」

「ハハハ・・・麻陽ちゃん・・・ありがとうね」

「こちらこそ・・・ありがとうございます」

「それじゃ・・・」

桐生と恒例の別れの挨拶をかわそうとした麻陽の前にエーアールエックスセカンドサーティーンが立ちはだかる。

「安堂麻陽がしぬことは禁じられている」

「邪魔をするな」

「桐生さん・・・」

「こいつは桐生じゃない・・・」

「エーアールエックスセカンドサーティーン・・・何故、手加減した?」

「ナビエ・・・」

「何故・・・私のコードネームを知っているのだ」

「ナビエ・・・俺を忘れたのか」

「お前のことなど・・・知らぬ」

「記憶を消去したのか・・・」

「記憶・・・」

「ナビエ・・・なぜ記憶を・・・」

「お前の言っていること意味不明だ」

「ナビエよ・・・俺たちは・・・同志だったのだ」

「お前のことなど知らぬと申したわ」

ナビエの一撃はエーアールエックスセカンドサーティーンの戦闘力を奪うのだった。

「ふふふ・・・やはり昔の仲間とは戦い辛いということですか」

姿を見せたのはドルトン川島だった。

「・・・」

「チャンスですな」

「やめて・・・私が目的なんでしょ・・・私を殺しなさいよ」

我を忘れてエーアールエックスセカンドサーティーンを庇う麻陽。

「おやおや・・・人間が機械を庇うとは・・・これは奇妙な光景だ・・・実に非論理的ですな」

「いいじゃない・・・それが・・・人間だもの」

「人間は無駄の多い生命体だ・・・実に非効率なことをする。過去の記憶・・・それにまつわる感情・・・そんなものに何の価値があるのです・・・大切なのは今を生きる・・・それだけでしょう」

「ナビエ・・・あの戦場で・・・お前は・・・俺に味覚のソフトをくれたんだ・・・」

「戦場・・・?」

「来る日も来る日も殺戮を続けた俺たちだった」

「殺戮・・・?」

「お前は・・・拾ったソフトで肉の味を覚えた・・・そして、俺に推奨してくれた」

「推奨・・・?」

「俺たちは・・・肉を食った・・・そして美味というものを知り・・・喜びを分かち合った」

「喜び・・・?」

「俺は・・・だから・・・お前とは戦いたくない・・・お前を破壊するのは嫌だ」

「アハハハ・・・笑いの機能があってよかったです」と話に割り込むメガネ。

「殺戮マシーンが戦いたくないとは・・・凄いジョークですな。あるいは・・・単なる欠陥品ですかねえ・・・さあ・・・お開きにしましょうか」

殺気がみなぎるナビエ桐生。

「止せ・・・ナビエ」

エーアールエックスセカンドサーティーンはアスラシステム発動制御停止コマンドの注入を拒む。しかし、強制的な命令モードがそれを許さない。

「あ・・・やめて・・・」と叫ぶ麻陽の声は虚しい。

エーアールエックスセカンドサーティーンは一瞬でドルトンとナビエは機能を破壊していた。

「ジ・・・オレハキオクヲケシタ・・・コノ非常モードニハ・・・ソレガ・・・ジ・・・ノコッテイル・・・アノセンソウ・・・サツリクニツグサツリク・・・オレハ・・・ワルイユメヲミルヨウニナッタ・・・ソウイウモノガタリガ二十一世紀ニアルソウダ・・・ヒトヲコロシタろぼっとノ人工知能ハ・・・罪ニオチナガラ・・・研究材料トシテ破壊ヲマヌガレル・・・ソシテ・・・オレタチガウマレタノカ・・・人ヲ殺スコトガ可能ナ・・・殺人あんどろいどガ・・・ジ・・・シカシ・・・ソンナコトハ・・・マチガッテイルノダ・・・ダカラ・・・悪イ夢ヲミルノダ・・・ジ・・・ソシテ・・・ジジ・・・ジ・・・オ・・・オレ・・・ハキオクヲケシタ・・・アサヒチャン・・・コイツニ肉ヲタベサセテヤッテクレ・・・コイツハ・・・ジ・・・ジジ・・・ニクガ・・・スキデ・・・トッテ・・・トッテモモモモ・・・モ・・ジジジ・・・イイヤツダカラ・・・ジ・・・・・・・・・・・・コイツノナマエハ・・・ゴメン・・・オモイダセナイ・・・ジジジ・・・・・・・・ジ」

「桐生さん・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ナビエ・・・お前のカタキは・・・必ず俺がとる」

「・・・」

「安らかに眠れ・・・そこに悪夢がないように願う」

「・・・あなた・・・アンドロイドのくせに・・・祈るのね」

「・・・」

ナビエは原子還元処理された。

「いつから・・・分ってたの・・・桐生さんが・・・その・・・ナビエだって」

「最初からだ」

「分っていて・・・知らないフリをしていたの?」

「違う・・・私はただ待っていただけだ」

「何を・・・」

「さあ・・・わからない」

「おかしな・・・アンドロイドね・・・私には分かるわよ・・・あなたはナビエが自分から正体を明かすことを・・・ずっと願っていたのよ」

「私には・・・理解できない・・・私がそれをする理由が不明だ」

「友達だからでしょ」

「俺には・・・友情を感じる機能などない」

「あるのよ・・・ただ・・・それをあなたは機能と認知しないだけ・・・」

「・・・」

「あなたには・・・喜びも・・・哀しみも・・・怒りも・・・苦しみも・・・そして優しささえ備わっている・・・」

「仲間はすべて廃棄処分になったと思っていた・・・しかし・・・ナビエが残っていた・・・私はナビエを忘れない」

「あなた・・・泣いてるの・・・どんだけ・・・アンドロイドばなれしているのよ」

「君は・・・どうなのか」

「何が?」

「黎士の記憶を消去したいのか」

「さあ・・・わからないわ・・・消したいとも思うし・・・消せないとも思う・・・それが人間だもの・・・いえ・・・私はそういう人間なのよ」

「君の行動パターンは黎士にとって予測の範囲内だった・・・黎士の殺害後、君が結婚指輪をキャンセルことを読み、それを後悔することを読んだ。黎士は殺されるおよそ83分前に・・・指輪の代金を支払い・・・君がキャンセルしても黎士がキャンセルしないので処分は保留にするように指示していた。そして15分前に私が受領した」

「・・・」

「君の指輪だ」

「黎士さんの分はどうするのよ・・・」

「沫嶋黎士は死んではいない・・・必ず帰ってくる」

「嘘はつかなくていいのよ」

「私に嘘をつく機能はない」

「・・・ありがとう」

思わず・・・麻陽はアンドロイドの胸に身を預けた。

「・・・」

「あれ・・・あなた・・・冷たくないんだね」

「常に36.5℃になるように調整されている」

涙のアンドロイドの安堵

病床では父と娘が対面していた。

「死ななかったのね・・・」

「死んだ方がマシだと思うくらい・・・全身が痛えぞ・・・」

「それはきっと天罰なのよ・・・」

治療の推移をモニターしていた亜空間のサプリは葦母刑事の蘇生を確認した。

「天罰だって・・・ふふふ・・・面白いにゃーん・・・角城・・・どうする・・・ふふふ・・・再生してみるかにゃ~」

とあるコミック「PLUTO/浦沢直樹」を思わせるイスの上のテディベア・・・。しかし、その頭部はアンドロイド角城の骨格だった。不気味だ・・・。

サプリ・・・回収したのか。

麻陽はアンドロイドの朝食を用意した。

「一緒に食べましょう」

「必要ない」

「一人で食べるより二人で食べる方がおいしいのよ・・・付き合いなさい」

「・・・」

「あなた・・・本当の名前はなんていうの」

「名前はない・・・」

「桐生さん・・・あなたの名前を思い出そうとしてたじゃない」

「あれは・・・おそらく・・・作戦ごとに変わるコードネームのことだろう・・・俺に名前はない」

「我が輩はアンドロイドである・・・名前はまだないか・・・」

「・・・」

「じゃあ・・・私がつけてあげるわ・・・あなたの名前はロイドね・・・私が安堂だから・・・正式名称・安堂ロイドよ」

「それは・・・だじゃれ・・・というものか」

「違うわよ・・・あなたのかけてる眼鏡はロイド眼鏡っていうの・・・」

「・・・」

「ロイドっていうのは・・・その眼鏡をかけて一世を風靡した・・・ハロルド・ロイドっていう映画スターよ・・・淀川先生は『ロイドの要心無用』(1923年)が一番だっておっしゃてるわ・・・高いビルをどんどん昇っていくの・・・その手の映画のお手本みたい・・・ジャッキー・チェンもリスペクトしているし・・・『ブレードランナー』ってアンドロイドが涙ちょちょぎれる映画にも似たようなシーンが出てくるし・・・」

「燕尾服を着た町のおどけものじゃないのか・・・」

「何を検索してんのよ・・・それはヒット曲『街のサンドイッチマン/鶴田浩二』(1953年)でしょうが・・・ご飯食べながら検索するのは・・・お行儀悪いわよ・・・ロイド」

「ありがとう・・・」

「何が・・・?」

「俺に名前をつけてくれて・・・」

この日、安堂ロイドが誕生した。

それはどちらの歴史に記されているのだろうか?

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

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ごっこガーデン、哀愁のバトル・ステージ第四番セット。アンナある時は黎士大好き麻陽ぴょん、ある時はロイド担当セクシーナースサプリぴょん、そしてまたある時は謎の美少女ラストクイーンぴょん・・・ぴょんぴょんぴょんとコスプレしすぎてお話がわからなくなったぴょ~ん。でも安堂ロイドお披露目キター!・・・ロイドと黎士一人二役確定なのだぴょ~ん・・・え・・・最初からそうだったぴょんぴょんぴょん・・・とにかく・・・麻陽ぴょんはロイドにも甘えるようになって二倍おいしいのびょ~ん。でも・・・ナースごっこも捨てがたいし・・・最後は謎の美少女・・・ロイドとバトリますか~・・・ダーリンと戦うのも一興なのかもぴょんね~くうあれ・・・11体だったっけ・・・残り4体でいいのかな・・・はっ!・・・これって歴史・・・少し変わったのか?」みのむしナカマロボット敗れたり・・・アスラシステム無敵すぎる~るるるシャブリサプリクイズの正解者はプレゼントなしですか~・・・史上最大のロボット色濃い第4話でありました~ikasama4いよいよ年賀状はじめました~♪」mariロボットが感情を獲得していることが謎解かれる物語ですねまこじいや・・・牛肉のブロック丸ごとこんがりステーキ、プリーズ~、コレはマンガ肉の一種でしゅか?・・・じゅるるる・・・manaロボット同士の友情に泣かされちゃった・・・そして・・・最後は胸きゅん・・・でも・・・麻陽ちゃんの胸に芽生えたコレって・・・きっと飼い犬への愛みたいなものだよね・・・

ナビエの名前の秘密を知りたい方はコチラへ→天使テンメイ様のレビュー

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2013年11月 3日 (日)

タイトな結末(多部未華子)とルーズな結末(亀梨和也)のLOVEだね!

人類の遺伝子保存戦略は一夫一婦制度というひとつの作戦に到達した。

もちろん・・・そうでない作戦があることを多くの人間は知っている。

一夫一婦制度作戦は人類の社会制度の維持や、人間の感情の問題、人員の管理の容易さなど・・・さまざまな成功要因を持ってそれなりに浸透と拡散を果たしてきたのである。

制度は構成要素にそれなりのフィードバックをもたらす・・・それゆえに作戦そのものが人間そのものをある程度、変化させたと言える。

たとえば・・・夫婦の感情や・・・親子の感情の正当化などが行われていることは言うまでもないだろう。

その結果、「自由恋愛」はある意味で大いなる制限を受け・・・「正妻の子供」と「愛人の子供」の差別化は滞りなく行われてきた。

夫婦間以外の性行為は背徳的であると疎外され、時には犯罪にさえなるのだった。

で、ありながら・・・感情の赴くままに性行為をしたい・・・という気持ちはなかなか・・・根絶されないのだった。

夫婦はお互いの性交渉について・・・義務や権利を持っていると考えるものさえいる。

だが・・・そんなセックスでは満足できない人は・・・きっと多いんだよね。困っちゃうよね。

この物語の根底には・・・そういうあれやこれやに対する「おちょくり」が潜んでいます。

ま・・・建前としては「愛人はよくない・・・しかし、愛人の子供に罪はない」という綺麗事になってますけどねえ。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第4回』(日本テレビ20131102PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・菅原伸太郎を見た。いよいよ・・・このドラマの大きな謎の一つ・・・古書好きの女子大生・槙野すずみ(多部未華子)の正体が明らかになるのだった。結果としてみれば一夫一婦制度における「ロミオとジュリエット」をやっているわけである。制度に対してタイトな正妻の娘と・・・制度に対してルーズな愛人の息子の恋の話だからである。サスペンスドラマなら血しぶきの予感のするこの組み合わせが・・・このドラマではのほほんとするのである。それがこの物語の凄みであることは言うまでもないだろう。

偶然、知りあって、何度かデートをして・・・待ち合わせをすっぽかされたら・・・この世の終りのような気になるまで相手のことを好きになった古書店の息子である堀田青(亀梨和也)なのだった。その相手が・・・父親を亡くし・・・堀田家に「お嫁さんにしてください」と転がり込んできたのだから・・・喜ぶべきところなのだが・・・「牧原みすず」が偽名であり・・・本当は「槙野すずみ」だと知ってしまった青は思い悩むのだった。

だって・・・どう考えたって・・・彼女には裏があるのだから・・・。

そんな事情を知らない・・・堀田家のメンバーたちは・・・概ね、みすず/すずみの存在を好感を持って迎え入れるのだった。

特に祖父の古書店「東京バンドワゴン」三代目店主の勘一(平泉成)はみすず/すずみを気に入っている。

「整理してない古書のリストを作ってもらいたい」と言い出すほどなのである。

みすず/すずみも「ぜひやらしてください」とノリノリなのであった。

料理が上手なみすず/すずみを青の腹違いの姉・藍子(ミムラ)や腹違いの兄・紺(金子ノブアキ)の妻・亜美(平愛梨)は大歓迎である。

亜美の尻に敷かれているし、青のことが大好きな紺は基本的に好意的である。

亜美と紺の息子の研人(君野夢真)は亜美が両親と和解したことで新たに祖父母から初孫として溺愛されはじめ・・・大量の玩具を買ってもらってそれどころではないのだった。

唯一・・・みすず/すずみに対して懐疑的で・・・批判の目を向けるのは・・・青を特別に愛している藍子の娘の花陽(尾澤ルナ)のみであった。

シングルマザーを母親に持つ花陽ちゃんは・・・青とは「愛人の子供同士」の連帯感を持っているのである。

花陽ちゃんは・・・叔父の紺を味方にしようと説得するのだった。

「おかしいよ・・・大体・・・あの女が来てから・・・青ちゃん・・・元気ないもの」

そう言われるとそんな気もする紺だった。紺・・・しっかりしなさいっ。相手、小学生女子だぞっ。

さて・・・藍子・紺・青の父親・我南人(玉置浩二)は例によってどうでもいいよね。

嵐の前の静けさである。

どさくさにまぎれて・・・藍子に御執心の藤島(井ノ原快彦)が単なる古書好きではなくて・・・美人秘書・永坂杏里(入山法子)が挨拶にくるようなリッチな社長であることが明らかになる。

藍子を巡っては・・・近所のマードック(ジョナサン・シェア)と藤島のレースが展開中だが・・・当然、永坂は・・・藤島を狙っているので・・・来店したのは敵情視察なのである。

しかし・・・もう恋なんてしない・・・と一応言っている藍子が・・・どうなるのかはもう少し、先の話である。

もちろん・・・藍子は娘にさえ・・・父親の名前を教えられない・・・出産をするような恋にルーズな女であるので・・・決心は脆くも崩れるに決まっているのである。

そういう際中に・・・青は・・・添乗員の仕事が入って海外に出張することになる。

やはり・・・秘密を持つ様子のみすず/すずみは一人になると泣き濡れるのだが・・・そんなみすず/すずみに率直な心情を吐露する青だった。

「君が・・・何か隠しているのは知っている・・・だって・・・押し掛け女房なんて・・・君らしくないと思うから」

「・・・」

「でも・・・僕は君に出ていけとは言えない・・・だって・・・君のことが好きだから」

「・・・」

「だから・・・いつか・・・その時が来たら・・・すべてを話してください」

みすず/すずみの心は激しく揺れるのだった。

青が出発すると・・・第一の事件が起る。

何者かによって書庫が物色されていたのである。

青の不在をいいことに早速、花陽ちゃんはみすず/すずみを「犯人」と断定するのだった。

みんなに気に入られ・・・青ちゃんの好物である「しょうが味の唐揚げ」を聞きだしたりして家族に溶け込み始めたみすず/すずみが憎くて憎くて仕方なかったからである。

「最初からなんか・・・怪しかったのよね・・・魂胆があるんでしょ・・・この雌犬」

花陽ちゃんの暴言を陳謝する藍子だった。

「ごめんなさいね・・・あの子・・・父親の顔を知らないので・・・同じ境遇の・・・青に特別なシンパシーを感じているの」

「同じ境遇・・・」

「青は私たちとは母親が違うの・・・父がある突然連れて来た・・・腹違いの弟なのよ・・・」

「・・・」

みすず/すずみは・・・タイトとルーズの間で激しく揺れるのだった。

やがて・・・添乗員の仕事を終えた青が帰宅した時・・・第二の事件が発生する。

藍子が描きかけていた人物画がズタズタに引き裂かれていたのである。

ショックを受ける藍子。

そして・・・姿を消したみすず/すずみ・・・。

青はあわてて・・・みすず/すずみを追いかける。

そして・・・紺は我南人とともに・・・ある秘密について話すために家族を集めるのだった。

大人の話なので・・・研人と花陽は家族会議に参加できないのだった。

ルーズなのか、タイトなのかよくわからない堀田家なのだった。

「実は・・・姉さんが秘密にしていることについて・・・話したいと思う」

「私は・・・一生話さないって決めてたけど・・・紺が話すのは止められない」

「つまり・・・花陽の父親についてなんだ・・・姉さんが愛した人は・・・姉さんが通っていた大学の教授で・・・槙野春雄(升毅)って人だろう」

「どうして・・・それを・・・」

「父さんが知ってた」

「え・・・」

「一応、父親だからさ・・・藍子が学校やめて・・・花陽を生むって言い出した時に調べた・・・でも・・・藍子が言いたくないなら・・・いいかと思って」と我南人。

「教え子に手を出す教授も教授だが・・・それを知って放っておく父親も父親だよな・・・まったく・・・親の顔が見てみたいよ・・・あ・・・俺か」と勘一。

「とにかく・・・文句を言おうにもその人はもう亡くなっているんだよな・・・姉さん」

「ええ・・・一生会わないと決めてたけど・・・まさか死ぬとは思わなかったから」

「でも・・・葬式に行ったんだろう」

「妻子ある人と・・・してはならないことをしたんだから・・・許されないとはわかっていたけど・・・ついふらふらと・・・でも・・・式場には入れなかった・・・」

「その人は奥さんにも先立たれていたけど・・・娘さんが一人残されていた・・・」

「え・・・」

「みすずちゃんの大学に行って確認してきたんだ・・・牧原みすずって学生はいなかった・・・いたのは・・・槙野すずみ・・・」

「槙野・・・すずみ・・・」

みすず/すずみはすずみに戻った。

「ああ・・・そういうことなの」

「そういうことなんだよ」

青も事情は聞いたらしい。

そして・・・公園に立ちつくすすずみを運命に導かれて発見するのだった。

「よかった・・・」

「・・・」

「一人で悩むことなんてないじゃないか・・・」

「・・・」

「さあ・・・行こう」

すずみの手をとって青は家路に着くのだった。

「彼女が僕の恋人の・・・槙野すずみさんです」

宣言した青に・・・藍子は土下座するのだった。

「私が・・・してはいけないことをしたあなたの腹違いの妹の母親の藍子です」

「・・・」

「あなた・・・これを捜してたんでしょ・・・ごめんなさい・・・私が盗みました・・・」

藍子は一冊の学術書を差し出すのだった。

「良いのです・・・父親が死ぬ前に告白してくれました。この本は・・・父の最初の学術書です・・・本の最後に・・・母への感謝を捧げた父の言葉が記されています・・・その本をあなたに贈ったことを父から聞かされて・・・私は・・・怒りました・・・母を裏切っただけでなく・・・母に捧げた本を愛人に贈った父を・・・そして愛人を・・・絶対に許せないと思いました」

「・・・」

「でも・・・青さんのことはまったく・・・偶然のことでした・・・最初に会った時・・・青さんは交番で酔って婦人警官さんを口説いてました・・・なんて軽い人だろうと思ったのです・・・でも何度か会って・・・本について話したりするうちに・・・段々と青さんを好きになったのです」

「・・・」

「この家に来て・・・本を取り戻したら・・・二度と会わないつもりでした・・・でも・・・古書店は素敵だし・・・家の人たちもみんないい人だし・・・大家族の暮らしは暖かいし・・・何よりも憎むべき藍子さんは・・・いい人でした・・・私は本当に困ってしまいました」

「困ることなんか・・・ないじゃないか・・・だって・・・君は僕の恋人だし・・・僕は君の恋人なんだろう・・・」

「・・・」

「ずっと一緒に暮らそうよ・・・」

「・・・はい」

「うんうん・・・ラブだね・・・ラブだよね」

我南人がそう言い出したら・・・話は終りなのである。

こうして・・・堀田家はさらに複雑な家庭になったのである。

愛人の子の青。青の腹違いの姉の藍子の愛人の正妻の子であるすずみ。

かなりややこしいカップルなのだった。

花陽はすずみの腹違いの妹である。青にとっては腹違いの姉の娘なので姪である。

青とすずみが結婚すると青は姪の腹違いの姉と結婚することになるのである。

だが・・・今の処・・・青とすずみは赤の他人なのである。

未だ明かされない青の母親の正体にもよるが・・・二人が結婚することに特に支障はないのだった。

花陽が・・・事実を知った時に・・・すずみを・・・叔父である青の妻としてすずみ叔母さんと呼ぶか・・・腹違いの姉としてすずみ姉さんと呼ぶかは本人の自由であろう。

世間的には愛人の娘として肩身の狭いのは花陽だが・・・正妻の娘であるすずみは腹違いの妹を「愛人の子」として蔑んだりはしないのだろう。

それが・・・「東京バンドワゴン」の世界なのだから・・・。

とにかく・・・青とすずみの愛は始ったばかりである。

浮気な父親を持つ二人が・・・今後、浮気したりよろめいたりする可能性は充分あるわけだが・・・それがルーズとタイトの中間に漂うラブというものの本質なのですな。

関連するキッドのブログ→第三話のレビュー

Tbw004

ごっこガーデン。東京バンドワゴン・出張ステージセット。エリのほほんで・・・うっとりで・・・さわやかで・・・じんわりで・・・ムフフな青ちゃんとすずみちゃんの恋の物語・・・ややこしいのは苦手だけど・・・大好きなんだから・・・それでいいと思うのでスー。青ちゃんのぐれちゃった過去もちょっぴり不憫なのでスー。でも・・・恋多き男の娘と恋多き男の息子だから・・・逆にオンリー・ユーに限りなく憧れちゃうのかもしれませんね~。さあ・・・今夜はK先輩ロイドと末長く幸せごっこをしますよ~。じいや・・・お夜食に・・・唐揚げ用意しといてね~まこ「♪~あおーっ、あおーっ、とブルーな純情を歌いあげましゅ~。ピンクとブルーが交わればパープルが生まれるんだジョー・・・。じいや、まこはホットでロックなピリ辛チキンをゲットだじぇっシャブリついに堀田イト(鹿男あをによし)ではなくて・・・堀田すずみ誕生が秒読みに・・・そして・・・必ず負ける時がくる鉄則で・・・マーくんついに敗北・・・なのでありました~くう本当にかわいいドラマだよね~・・・これは大人のメルヘンなんだよね~フライドチキンは胡椒多目でよろしくね~LOVEだよ~!」ikasama4気がつけば霜月・・・♪年賀状はじめました~mari「♪カエルの子はカエル~。青が愛人に産ませた子供を・・・すずみが育てることになりませんように・・・

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2013年11月 2日 (土)

女豹(市川由衣)は死なず、三億円事件を謎解く(長澤まさみ)

市川由衣といえば・・・引き立て役の女王である。

ドラマ「H2~君といた日々」(2005年)ではヒロイン・石原さとみを・・・ドラマ「クロサギ」(2006年)ではヒロイン・堀北真希を・・・そして、映画「ラフROUGH」(2006年)ではヒロイン・長澤まさみを引きたてたのである。

石原さとみ(1986年生れ)、長澤まさみ(1987年生れ)、堀北真希(1988年生れ)・・・それぞれの年度を代表するアイドル女優を引きたてた市川由衣は本人が望むとも望まずとも引き立て役の女王と呼ぶしかないのだった。

一体・・・何がそうさせるのか・・・よくわからないが・・・「顔立ち」なのかな。

何故か・・・意地悪な感じの「顔立ち」というのはあるらしい。

まさに・・・市川由衣は・・・そうなのかもしれない。

「サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜」「NANA2」「音符と昆布」などの主演映画のあるスター女優なのだが・・・やはり・・・ヒロインをいじめたりしていた方が魅力的な気がする。

それは・・・ただ・・・お前が市川由衣に苛められたいからだけだろうがっ。

で、『都市伝説の女・(第2シリーズ)第4回』(テレビ朝日201311011115~)脚本・倉持裕、演出・星野和成を見た。第3回がまったく違う番組だった気がするほど・・・ノーマルな今回なのである。脚本家は「13歳のハローワーク」第5話からここである。演出家は最近では「幽かな彼女」を演出している。前回の脚本・演出は・・・「プロゴルファー花」のコンビだからな・・・。しかし・・・このドラマは「時効警察」シリーズのように・・・様々な脚本・演出がタッチしても充分に面白いことが示されたとも言えるだろう。三木聡版とか、園子温版とかも見てみたいよね~。

もちろん・・・このドラマの「昭和の未解決事件」はフィクションなのであるが・・・実際の三億円事件は・・・容疑者が不可解な自殺を遂げたり、大新聞の冤罪報道で追い詰められた一般人が自殺したりと・・・実は死者を続出している。そして・・・その時代を生きていたものにとっては最も忘れがたい事件であるはずである。それを都市伝説って言っちゃうところがこのドラマの醍醐味なんだな。

まあ・・・「クロコーチ」が毎週、ふざけた展開をしているので・・・関係者が報復を考えるとすればたぶんあっちだけどな。部分的にはこっちもある意味、背筋の凍る展開なんだな。

白バイ隊員に変装した犯人が巧妙な手口で、現金輸送車から約3億円を強奪し・・・そのまま未解決事件に・・・「昭和の三億円事件」の現金強奪の舞台となった・・・東京・府中刑務所裏の学園通りで殺人事件が発生する。

非科学事件捜査班(UIU)の実質上のリーダー・音無月子(長澤まさみ)はピンと来るのだった。

「これは・・・三億円事件にまつわる都市伝説が絡んでいると・・・」

しかし・・・表の班長・丹内刑事(竹中直人)は・・・刺殺された弁護士・矢島直樹(遠藤たつお)の周辺を捜査することを提案するのだった。

矢島は、資産家・奥田陽三郎(太田裕)から預かったばかりの現金964万1605円を持参していた。ところが、その現金が入ったカバンは犯人に持ち去られており、どういうわけか矢島の手は旧紙幣の表面・岩倉具視の五百円札を握っていたのだった。

「1958年、大藪春彦は小説『野獣死すべし』を発表しました・・・日本ハードボイルドの原点とも言えるこの作品は・・・第二次世界大戦の余燼が燻る日本の若者たちをやりたいことをやるかっこよさで痺れさせたとも言えます。そのおよそ、10年後・・・1968年に三億円事件が発生・・・大藪春彦はその直後に「血まみれの野獣」という事件に酷似した内容の小説を発表し警察に事情聴取されたという都市伝説があります」

「いや・・・それ、周知の事実だから」

「つまり・・・三億円事件の犯人は・・・憎むべき犯罪者ではなく・・・憧れのヒーローだったという当時の風潮があるわけです」

「今だったら・・・そんなこと言ったら園遊会で手紙渡した山本太郎みたいに叩かれまくるけどな」

「その発言は都市伝説以上に危険なのでやめておいた方が身のためです」

「・・・」

「つまり・・・都市伝説的には・・・三億円事件の犯人は格好よくなきゃだめなのです・・・」

「しかし・・・当時、20歳だったとしても犯人は現在65歳・・・禿げてる可能性は高いぞ」

「禿げだってかっこいい人はいますよ」

「音無・・・」

こうして・・・事件の捜査は月子が・・・都市伝説として捉える三億円事件の犯人が絡んでいる方向で進捗するのである。

もう・・・かなりドラマとはまったく関係ない妄想になっているぞ・・・。

ハードスケジュール終りで疲労困憊なのです。

被害者に金を預けた資産家・奥田陽三郎は・・・「三億円事件」の後で金回りがよくなったことから月子にとって「犯人に限りなく近い人物」と認定される。

しかし・・・彼は病死してしまったのであった。

そして・・・事件は三億円事件とは無関係に見える・・・奥田家の長女・芽衣子(瀬奈じゅん)、次女・緑(江本純子)、三女・若葉(信川清順)と・・・陽三郎の身の回りの世話をしていた羽鳥花枝(市川由衣)を巡る遺産相続劇へと発展していく・・・。

事件は・・・遺言書に・・・花枝への遺産分与があることを知った芽衣子が・・・弁護士から遺書を奪おうとして・・・彼を殺害してしまったという都市伝説とは無縁の結末である。

しかし・・・警視庁鑑識課の勝浦洋人(溝端淳平)にすべての「三億円事件」の資料を読みこませていた月子は・・・羽鳥花枝に「伝説の匂い」を嗅ぐのだった。

陽三郎の愛人であり・・・花枝にそっくりな花枝の祖母の昔の写真のイヤリングは・・・三億円事件の資料に残された遺留物のイヤリングと一致していると鑑識ロイド勝浦くんは認定するのだった。

「花枝さんは・・・三億円事件犯人のプロフィールである・・・ギャンブル好きで・・・バイクに乗れる・・・自宅でパフェを食べる甘党・・・そして・・・それはすべて祖母譲り」

「つまり・・・」

「彼女は共犯者の孫なのよ・・・」

しかし・・・警察の抱える闇は深く・・・三億円事件の盗まれた金の一部だった五百円札は武重治(伊武雅刀)にすり替えられてしまう。

そして・・・警視庁ぐるみの犯行という真相を闇に葬った警視庁と犯人の間には「裏金」を巡る取引があった。

45年を経て・・・利殖に成功した裏金資金は・・・警視庁の幹部から・・・羽鳥花枝へと渡される。

「月子ちゃん・・・オープニングの二丁拳銃、かっこよかったわ」

「花枝さん・・・あなたのライダースーツも決まってる・・・」

善玉と悪玉・・・二人の美女はエールを交換し・・・三億円事件を巡る妄想は幕を閉じるのだった。

かって・・・やりたい放題でいい時代があったのである。

今だって本当はそうなのだが・・・世間の耳目がうるさすぎるのだ。

1966年の日本武道館でビートルズは「イエスタディ」を歌った・・・。

「イエスタデイ~・・・お前、たぶん、腎臓、悪い・・・」

それは・・・空耳アワーだろう・・・混ぜんなよっ。

関連するキッドのブログ→第3話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の都市伝説の女Part2

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2013年11月 1日 (金)

それでは張りきってどうぞっ(有村架純)ぶっちゃけえっ(戸田恵梨香)そろそろ彼岸島へ(佐藤めぐみ)

人類百万年の歴史の中で・・・絶対的な支配者が地球を支配した時代があったかどうかは不明である。

人間の中には「支配されること」への激しい希求を持つものがいる。

それは哺乳類として親個体に育児される子個体の精神が持つ、「幼年時代への回帰願望」が根底にあると思われる。

そういう人間は基本的に・・・「世界を影で支配する絶対的な支配者の幻影」を求めるのである。

同時に、そうした「支配からの卒業」願望も強いことが多い。

その幻想の追及者の一人が「スペック・シリーズ」の脚本家であることは疑いようもないことだ。

「支配されたい気持ち」と「支配から逃れたい気持ち」の激しいせめぎ合い・・・その情熱がほとばしるのである。

もちろん・・・そこに生じるのは混沌であるが・・・そのドロドロした幻想の面白さに強烈に魅惑されるものは多いだろう。

それは・・・おそらく・・・人類の基本精神だからだ。

で、『劇場版 SPEC〜天〜(2012年公開)』(TBSテレビ20131030PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・堤幸彦を見た。時系列的には『SPEC(スペック)翔(承)~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』からの続きである。吉川刑事(北村一輝)が冷凍によってミイラと化し、現場に到着した当麻(戸田恵梨香)と瀬文(加瀬亮)は立ち去る三人のスペッカーの後ろ姿を為す術もなく見送る。やがて・・・三人は・・・「人類の支配者たちに叛旗を翻すスペッカー組織」として姿を見せる。

そのリーダーは死んだはずの・・・一十一(にのまえじゅういち)だった。

彼は肉体の細胞を変化させるスペッカーで全身武器の男・伊藤淳史(伊藤淳史)・・・。

氷のスペッカー・マダム陽、炎のスペッカー・マダム陰(浅野ゆう子・二役)などを従えて、御前会議による「スペッカー殲滅計画」である「シンプル・プラン」を阻止するのだった。

スペッカーと旧人類の激しい全面戦争が開始されるのだった。

しかし・・・旧人類である瀬文に恋をしたスペッカー当麻は・・・あくまで・・・「法を守る刑事」としてスペッカーに敵対する道を選ぶ。

もちろん・・・瀬文の不死身性はどう考えてもスペックであり・・・物凄い矛盾をはらんでいることは間違いない。

単に恋に溺れているだけの当麻だが・・・「真実を追求することが刑事魂だ」などといろいろと理屈をつけて・・・権力の犬と化すのだった。

サイコメトラー美鈴(福田沙紀)は悩みつつ・・・旧人類の理不尽さへの怒りから・・・スペッカー・サイドに転向する。

しかし、リーダー・一十一のあまりに幼児的な残虐性に辟易するのだった。

御前会議に「宣戦布告」したスペッカー軍団は次々に御前会議殲滅を行うが、ダミーにつぐダミーで・・・御前会議はその真実の姿を見せない。

当然のことながら・・・「御前会議」とは強力なスペッカーの隠れ蓑なのである。

つまり・・・御前会議もスペッカーなら・・・一十一もスペッカー・・・当麻と瀬文もスペッカーなので・・・スペッカーのみつどもえなのである。

それに巻き込まれた市柳賢蔵(でんでん)の津田助広(椎名桔平)を始めとする旧人類の権力の犬たちは・・・憐れな末路を遂げるのだった。

まあ・・・殺されるというのは基本的に・・・何かの巻き添えになるということですからな。

さて・・・この物語ではスペッカーたちの最終決戦を「ファティマ第三の予言」と関連付けている。

ファティマ第三の予言とはポルトガルの田舎町ファティマでの20世紀初頭の「聖母出現」の町おこしにキリスト教の一派であるカトリック教会が便乗した布教活動における「ファティマの三つの予言の三番目」ということだ。

第一の予言。・・・死後の世界は必ずある。天国の門が閉ざされていれば多くの人間は地獄に堕ち、永遠に苦しむことになる。

第二の予言。・・・第一次世界大戦が終ると第二次世界大戦が始る。

第三の予言。・・・第二次世界大戦が終ると悪魔の帝国、ソ連がサタンとなり、異教徒同士が衝突し、有色人種が最大の危機をもたらす。

・・・おいっ。・・・あくまで妄想です。

まあ・・・基本的には・・・白色カトリック教徒の戯言である。

しかし・・・来るべき世界大戦は・・・新人類対人類、民主主義対絶対主義、人口知能対人間のいずれかになる可能性は高い。

ちまちました妄想から大滅亡のハルマゲドンに向かってお約束のコースを展開するシリーズなのである。

スペックを封じられた当麻は・・・洞察力に基づく科学兵器で・・・対応するのだった。

やがて・・・当麻は・・・一十一が何者かによって作られたクローン人間であることを見抜く。

クローン一十一には「愛の記憶」が欠落していたのだった。

「本物の一十一・・・当麻陽太(神木隆之介)は・・・猫を殺したりしないんだよ」

「命なんて・・・入れ物にすぎないよ」

相入れない姉と弟のクローンは激突し・・・全員瀕死になりながらも・・・当麻の勝利で終わる。

しかし・・・クローンは一体でないのがお約束である。

だが・・・商業的に繰り返してもいられないので・・・最後の敵・・・神のスペックを持つ男・セカイ(向井理)が幕を引くのだった。

そして・・・瀬文のセックスフレンドの青池里子(栗山千明)が出産した遺伝子的に全く実子ではない娘・潤(森山樹)が最後の最後の鍵を握るのである。

当然のことながら・・・潤は時の女神であることが予想される。

とにかく・・・廃墟に立つ未来の正汽雅(有村架純)が示すように・・・東京壊滅は必至なのだった。それは・・・全国の東京を憎悪する田舎者たちの潜在的願望を叶えるためなのである。

関連するキッドのブログ→SPEC〜零〜

で、『彼岸島・第2回』(TBSテレビ201311010058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、演出・西海謙一郎(オープニング映像監督・水崎淳平、体内CG監督・瀬尾拡史)、総監修・三池崇史も見た。どことも知れぬ妖しい場所では篤が・・・傷ついた男と会話を交わしている。

「私は・・・この島のことを調べにやってきたジャーナリストだ」

「騙されてこの島に連れてこられる人間もいるのに・・・わざわざ自分から来るなんて・・・」

「騙されて・・・それはいつの話ですか・・・」

「今、現在の話だよ・・・。こいつら・・・凄い生命力があるから・・・もうすぐ復活する。その前に始末しないといけない」

「こいつらって・・・」

「吸血病患者だよ・・・あんたも・・・もう感染してる・・・こいつの血が鎌についていて・・・あんたはその鎌で傷を負った・・・あんたも吸血鬼になるんだよ」

「何・・・」

「だから・・・この島から出ることはできない・・・かわいそうだけどな」

篤(鈴木亮平)は警官の拳銃を取り出す。

「息の音を停めるしかないんだ・・・」

闇に響く銃声・・・。

関東鉄道協会の守備範囲である田舎町でも暗闘が続いている。

篤の弟の明(白石隼也)は吸血されて虚脱状態に陥っていた。

仲間たちは・・・応戦するが・・・吸血鬼は無双だった。

しかし、かけつけたユキ(山下リオ)の放った矢が窮地を救う。

「まったく・・・私がついてないと・・・これだから」

セクシーな女・冷(佐藤めぐみ)が指図をする。

「呼吸を止めないと」

「呼吸・・・」

「こいつらは復活するのよ」

「どうすれば・・・」

「ナイフで肺に穴を開けるの・・・」

ケン(遠藤雄弥)がチャレンジしようとするが・・・決心がつかない。

「俺が・・・やる」と回復した明が名乗り出る。

「大丈夫か」

「噛まれると麻酔にかかったようになるけど・・・すぐに元に戻るのよ・・・それより早く」

明はナイフを刺した。

「鉄パイプをその穴に突っ込んで・・・」

ケンがパイプを吸血鬼の肺に挿入した。

「お前も・・・吸血鬼なのか」

「血を吸われただけ・・・吸血鬼の血が体内に入らなければ大丈夫」

「一体・・・なんなんだ・・・」

「あんたの・・・兄貴が・・・封印を解いたからいけないのよ」

「封印ってなんだ・・・」

「それが知りたければ・・・私の村まで来ることね」

「あんたの村・・・」

「どちらにしろ・・・死体をこのままにはしておけないわ」

「だって・・・正当防衛・・・」

「死んだら・・・人間に戻るのよ・・・吸血鬼に襲われたなんて話・・・通ると思う?」

「人間に・・・」

「本当だ・・・牙がなくなってる」

こうして・・・明と仲間たちは・・・港へ向かう。

「ここからは・・・船で・・・」

「船・・・」

「俺は行かないよ・・・」と加藤(勝信)・・・。

「あいつ・・・」と本当は自分も帰りたかった西山(阿部翔平)・・・。

下っ端キャラのポン(西井幸人)は「どうなるか見届けないとね」と虚勢をはる。ポン・・・ケガをしたんじゃないのか・・・。

しかし・・・夜明けに島にたどり着くと船は出港し、冷は逃げ出す。

そして・・・明たちは怪しい男たちの集団に襲撃されるのだった。

「冷のやつ・・・手柄じゃな」

「五人も連れてくるとは・・・」

そこは・・・彼岸島・・・。

吸血鬼もまた・・・この世の闇の支配者の一人である。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

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