それでは張りきってどうぞっ(有村架純)ぶっちゃけえっ(戸田恵梨香)そろそろ彼岸島へ(佐藤めぐみ)
人類百万年の歴史の中で・・・絶対的な支配者が地球を支配した時代があったかどうかは不明である。
人間の中には「支配されること」への激しい希求を持つものがいる。
それは哺乳類として親個体に育児される子個体の精神が持つ、「幼年時代への回帰願望」が根底にあると思われる。
そういう人間は基本的に・・・「世界を影で支配する絶対的な支配者の幻影」を求めるのである。
同時に、そうした「支配からの卒業」願望も強いことが多い。
その幻想の追及者の一人が「スペック・シリーズ」の脚本家であることは疑いようもないことだ。
「支配されたい気持ち」と「支配から逃れたい気持ち」の激しいせめぎ合い・・・その情熱がほとばしるのである。
もちろん・・・そこに生じるのは混沌であるが・・・そのドロドロした幻想の面白さに強烈に魅惑されるものは多いだろう。
それは・・・おそらく・・・人類の基本精神だからだ。
で、『劇場版 SPEC〜天〜(2012年公開)』(TBSテレビ20131030PM9~)脚本・西荻弓絵、演出・堤幸彦を見た。時系列的には『SPEC(スペック)翔(承)~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』からの続きである。吉川刑事(北村一輝)が冷凍によってミイラと化し、現場に到着した当麻(戸田恵梨香)と瀬文(加瀬亮)は立ち去る三人のスペッカーの後ろ姿を為す術もなく見送る。やがて・・・三人は・・・「人類の支配者たちに叛旗を翻すスペッカー組織」として姿を見せる。
そのリーダーは死んだはずの・・・一十一(にのまえじゅういち)だった。
彼は肉体の細胞を変化させるスペッカーで全身武器の男・伊藤淳史(伊藤淳史)・・・。
氷のスペッカー・マダム陽、炎のスペッカー・マダム陰(浅野ゆう子・二役)などを従えて、御前会議による「スペッカー殲滅計画」である「シンプル・プラン」を阻止するのだった。
スペッカーと旧人類の激しい全面戦争が開始されるのだった。
しかし・・・旧人類である瀬文に恋をしたスペッカー当麻は・・・あくまで・・・「法を守る刑事」としてスペッカーに敵対する道を選ぶ。
もちろん・・・瀬文の不死身性はどう考えてもスペックであり・・・物凄い矛盾をはらんでいることは間違いない。
単に恋に溺れているだけの当麻だが・・・「真実を追求することが刑事魂だ」などといろいろと理屈をつけて・・・権力の犬と化すのだった。
サイコメトラー美鈴(福田沙紀)は悩みつつ・・・旧人類の理不尽さへの怒りから・・・スペッカー・サイドに転向する。
しかし、リーダー・一十一のあまりに幼児的な残虐性に辟易するのだった。
御前会議に「宣戦布告」したスペッカー軍団は次々に御前会議殲滅を行うが、ダミーにつぐダミーで・・・御前会議はその真実の姿を見せない。
当然のことながら・・・「御前会議」とは強力なスペッカーの隠れ蓑なのである。
つまり・・・御前会議もスペッカーなら・・・一十一もスペッカー・・・当麻と瀬文もスペッカーなので・・・スペッカーのみつどもえなのである。
それに巻き込まれた市柳賢蔵(でんでん)の津田助広(椎名桔平)を始めとする旧人類の権力の犬たちは・・・憐れな末路を遂げるのだった。
まあ・・・殺されるというのは基本的に・・・何かの巻き添えになるということですからな。
さて・・・この物語ではスペッカーたちの最終決戦を「ファティマ第三の予言」と関連付けている。
ファティマ第三の予言とはポルトガルの田舎町ファティマでの20世紀初頭の「聖母出現」の町おこしにキリスト教の一派であるカトリック教会が便乗した布教活動における「ファティマの三つの予言の三番目」ということだ。
第一の予言。・・・死後の世界は必ずある。天国の門が閉ざされていれば多くの人間は地獄に堕ち、永遠に苦しむことになる。
第二の予言。・・・第一次世界大戦が終ると第二次世界大戦が始る。
第三の予言。・・・第二次世界大戦が終ると悪魔の帝国、ソ連がサタンとなり、異教徒同士が衝突し、有色人種が最大の危機をもたらす。
・・・おいっ。・・・あくまで妄想です。
まあ・・・基本的には・・・白色カトリック教徒の戯言である。
しかし・・・来るべき世界大戦は・・・新人類対人類、民主主義対絶対主義、人口知能対人間のいずれかになる可能性は高い。
ちまちました妄想から大滅亡のハルマゲドンに向かってお約束のコースを展開するシリーズなのである。
スペックを封じられた当麻は・・・洞察力に基づく科学兵器で・・・対応するのだった。
やがて・・・当麻は・・・一十一が何者かによって作られたクローン人間であることを見抜く。
クローン一十一には「愛の記憶」が欠落していたのだった。
「本物の一十一・・・当麻陽太(神木隆之介)は・・・猫を殺したりしないんだよ」
「命なんて・・・入れ物にすぎないよ」
相入れない姉と弟のクローンは激突し・・・全員瀕死になりながらも・・・当麻の勝利で終わる。
しかし・・・クローンは一体でないのがお約束である。
だが・・・商業的に繰り返してもいられないので・・・最後の敵・・・神のスペックを持つ男・セカイ(向井理)が幕を引くのだった。
そして・・・瀬文のセックスフレンドの青池里子(栗山千明)が出産した遺伝子的に全く実子ではない娘・潤(森山樹)が最後の最後の鍵を握るのである。
当然のことながら・・・潤は時の女神であることが予想される。
とにかく・・・廃墟に立つ未来の正汽雅(有村架純)が示すように・・・東京壊滅は必至なのだった。それは・・・全国の東京を憎悪する田舎者たちの潜在的願望を叶えるためなのである。
関連するキッドのブログ→SPEC〜零〜
で、『彼岸島・第2回』(TBSテレビ201311010058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、演出・西海謙一郎(オープニング映像監督・水崎淳平、体内CG監督・瀬尾拡史)、総監修・三池崇史も見た。どことも知れぬ妖しい場所では篤が・・・傷ついた男と会話を交わしている。
「私は・・・この島のことを調べにやってきたジャーナリストだ」
「騙されてこの島に連れてこられる人間もいるのに・・・わざわざ自分から来るなんて・・・」
「騙されて・・・それはいつの話ですか・・・」
「今、現在の話だよ・・・。こいつら・・・凄い生命力があるから・・・もうすぐ復活する。その前に始末しないといけない」
「こいつらって・・・」
「吸血病患者だよ・・・あんたも・・・もう感染してる・・・こいつの血が鎌についていて・・・あんたはその鎌で傷を負った・・・あんたも吸血鬼になるんだよ」
「何・・・」
「だから・・・この島から出ることはできない・・・かわいそうだけどな」
篤(鈴木亮平)は警官の拳銃を取り出す。
「息の音を停めるしかないんだ・・・」
闇に響く銃声・・・。
関東鉄道協会の守備範囲である田舎町でも暗闘が続いている。
篤の弟の明(白石隼也)は吸血されて虚脱状態に陥っていた。
仲間たちは・・・応戦するが・・・吸血鬼は無双だった。
しかし、かけつけたユキ(山下リオ)の放った矢が窮地を救う。
「まったく・・・私がついてないと・・・これだから」
セクシーな女・冷(佐藤めぐみ)が指図をする。
「呼吸を止めないと」
「呼吸・・・」
「こいつらは復活するのよ」
「どうすれば・・・」
「ナイフで肺に穴を開けるの・・・」
ケン(遠藤雄弥)がチャレンジしようとするが・・・決心がつかない。
「俺が・・・やる」と回復した明が名乗り出る。
「大丈夫か」
「噛まれると麻酔にかかったようになるけど・・・すぐに元に戻るのよ・・・それより早く」
明はナイフを刺した。
「鉄パイプをその穴に突っ込んで・・・」
ケンがパイプを吸血鬼の肺に挿入した。
「お前も・・・吸血鬼なのか」
「血を吸われただけ・・・吸血鬼の血が体内に入らなければ大丈夫」
「一体・・・なんなんだ・・・」
「あんたの・・・兄貴が・・・封印を解いたからいけないのよ」
「封印ってなんだ・・・」
「それが知りたければ・・・私の村まで来ることね」
「あんたの村・・・」
「どちらにしろ・・・死体をこのままにはしておけないわ」
「だって・・・正当防衛・・・」
「死んだら・・・人間に戻るのよ・・・吸血鬼に襲われたなんて話・・・通ると思う?」
「人間に・・・」
「本当だ・・・牙がなくなってる」
こうして・・・明と仲間たちは・・・港へ向かう。
「ここからは・・・船で・・・」
「船・・・」
「俺は行かないよ・・・」と加藤(勝信)・・・。
「あいつ・・・」と本当は自分も帰りたかった西山(阿部翔平)・・・。
下っ端キャラのポン(西井幸人)は「どうなるか見届けないとね」と虚勢をはる。ポン・・・ケガをしたんじゃないのか・・・。
しかし・・・夜明けに島にたどり着くと船は出港し、冷は逃げ出す。
そして・・・明たちは怪しい男たちの集団に襲撃されるのだった。
「冷のやつ・・・手柄じゃな」
「五人も連れてくるとは・・・」
そこは・・・彼岸島・・・。
吸血鬼もまた・・・この世の闇の支配者の一人である。
関連するキッドのブログ→第1話のレビュー
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