そういうことをやってもいい年頃のエーデルワイスの花言葉は純潔(新垣結衣)
「エーデルワイス」と言えば映画「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年)の一曲である。
時は第二次世界大戦の前夜、ドイツによるオーストリア併合を哀しむ一人の男が祖国オーストリアの象徴として高貴な白い花「エーデルワイス」の可憐さを歌いあげるわけです。
父から子供たちに向けて歌うことで・・・親子の絆を感じさせる名曲でもございます。
ドラマは・・・娘に愛してもらいたい・・・娘にかまってもらいたい・・・父親の話なので泣かせます。
一方で・・・飛行機内の情交といえば・・・映画「エマニエル夫人」(1974年)・・・天才女優・シルビア・クリステルの輝かしい美しさが炸裂するこの作品。ドラマでは欲望の象徴みたいになってきましな。
昨年10月に満60歳でこの世を去ったシルビア・クリステルに哀悼の意を捧げているのか・・・。
シルビア・クリステルは14歳で両親が離婚・・・年上の男性に魅かれてしまう傾向があり・・・父親のような年齢の男性と暮らしていたとされます。
まあ・・・今回は・・・いろいろな意味で「父と娘の隠微な愛の話」なのでしょうな。
で、『リーガルハイ(第二期)・第5回』(フジテレビ20131106PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。知的財産権にまつわる話である。もちろん・・・言外に・・・「脚本」がなかったら「ドラマ」なんかできないだろっていう脚本家の言い分があるわけで・・・古美門弁護士(堺雅人)が活躍しなくても「最初に考えた人が偉い」に決まっているのである。だが・・・そんなことだけを言うと干される恐れがあるので最後は「まあ、いろいろなスタッフがいてこその作品ですけどね」と穏やかに着地しているのである。まあ・・・基本的に・・・脚本家なんて稼業は・・・明日をも知れぬ身の上ですからな。
今を遡る16年前、1990年代の半ばごろ・・・零細文具メーカーの『あじさい文具』は、倒産の危機にひんしていた。「社員」は家族を掲げる宮内社長(冨家規政)は会社の危機を社員たちに訴える。社長を支える社員の一人、水野さん(越村公一)はとりあえず「社歌」を歌い出すのだった。
鉛筆一本あったなら
白い紙にありったけの想いを書ける
ああ あじさい文具
わたしたちの あじさい文具
女事務員の笠井さん(梅沢昌代)も思わず唱和し、社員一同が一丸となるのだった。
そんな中・・・デザイナーの田向学(野村将希)はぼんやり悪戯描きをしていた。
それは・・・「親父の顔をした犬の絵」だった。
不気味な一体感を醸しだしていた社員一同は気色ばむのだが・・・宮内社長はその絵に妙に魅かれるものを感じる。
「田向くん・・・そりゃ、なんだ?」
「いぬ・・・みたいな・・・おやじ・・・ですかね」
やがて・・・なんとなく・・・売りだされた「おやじいぬ消しゴム」は大ヒット商品となるのだった。
幼い黛真知子(畠山紬・・・「11人もいる!」の真田三子)はガニ股を踏ん張って、父親の素夫(國村隼)に「おやじいぬ消しゴム」をねだるのだった。
「もっと・・・かわいいのがあるじゃないか」
「私・・・これがいい」
やがて・・・子供たちの心をとらえた「おやじいぬ」はキャラクターとして独り歩きを始め、空前の大ブームを巻き起こす・・・まあ、ドラマですから。
そして・・・今や、「あじさい文具」は社名も「AJISAIカンパニー」に変更され、巨大なビルにオフィスを構える大企業と化したのである。
宮内社長は未だに家族的経営を掲げ、社内行事の運動会にも熱心だが・・・巨大化した社員一人一人に気配りするのは無理なのだった。水野さんや、久野さんはそれなりに出世したようだが・・・「おやじいぬ」の生みの親である田向は「クリエイティブ部」を追い出され、営業部で損失を出し、今は総務部で・・・運動会の玉入れの玉を作っている窓際社員となっていた。
会社でも不遇の田向は・・・社宅で暮らす妻(佐藤直子)や娘の百合子(星野綾那)にも疎外され・・・誕生日も祝ってもらえない身の上だった。
「俺が・・・おやじいぬを・・・描いたのに・・・」
田向の心に燻る不満・・・それに・・・点火するために冒頭から登場するアルバイト社員に変装した・・・草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)なのである。
「田向さんは億万長者なんですよね」
「え・・・」
「だって・・・あの・・・おやじいぬ・・・の発案者なんでしょう・・・」
「俺は・・・ただの平社員さ・・・」
「もったいない・・・当然の権利と・・・それなりの報酬を要求するべきですよ・・・僕・・・いい弁護士を紹介します」
古美門弁護士・・・法の狩人・・・そんな営業手法を・・・。
かくて・・・「25億円の報酬を求めるおやじいぬ裁判」が開始されたのだった。
先発をまかされた黛真知子(新垣結衣)は颯爽と・・・「AJISAIカンパニー」に発案者に約束された対価の支払いと受け入れられない場合に訴訟の用意があることを伝えるのだった。
「AJISAIカンパニー」は運命に導かれるように・・・「NEXUS Law Firm」に相談に訪れるのだった。
しかし、羽生弁護士(岡田将生)は「まったく勝ち目はありません・・・和解して・・・それなりの金額を払う方向で進めましょう」と例によって・・・ドロー戦略を示すのである。
なんていうか・・・羽生は勝訴と敗訴のある裁判に携わる弁護士として根本的に・・・ダメなんじゃないか。
だが、本当の悪魔というのはどす黒さを笑顔の下に完全に隠すものなのである。
そして・・・「勝たないが負けない」というのは・・・ゲームの世界ではひとつの「勝利の方程式」なのであった。
一方で・・・古美門はすでに勝利を確認し、プライベートジェットの購入を予約していた。
それをもはや・・・拘置所の女王と化している安藤貴和(小雪)に報告するのだった。
もはや・・・貴和は古美門にとって獄中の妻のような存在だ・・・。
「今日は・・・幼稚園児はどうしたの・・・」
「おつかいにいかせている・・・」
「あの子・・・大事にしないとだめよ・・・」
「それなりにこきつかっている」
「いざとなったら男なんてダメなものよ・・・最後に勝つのは女なのよ」
「いや・・・他の男のことは知らないが・・・私は最後に勝つ男だ」
「どうだか・・・」
「それよりどうだ・・・プライベートジェットで例のアレをためすというのは・・・」
「高所恐怖症のくせに・・・」
「絶対に治すからっ」
古美門・・・何しに面会に来ているんだ・・・。
父と娘のコント①
古美門法律事務所に黛素夫がやってきた。
「長年勤めた会社を定年退職したが、現役のころは職場環境の改善に取り組み、人権を無視した職場を看過できないのです」
「どこぞのブラック企業を訴えたいということですか」
まさか、黛真知子の父親とは思わぬ古美門だった。
そこへ変身インタビュアーも好きな提灯ブルマーならぬ提灯パンツこと黛弁護士が戻ってくるのだった。・・・意味不明な記述は控えろよっ。
「お帰り」と黛の父。
「ただいま、お父さん・・・あれ・・・お父さん?」
「お父さん?」
「娘は毎日帰りが遅いし、最近は意味不明な言動が多くなった・・・あの横分け野郎、絶対に許さねえとか・・・ぶっ殺してやるとか・・・そして夜な夜な、横分けの男のイラストを描いたサンドバッグを叩き続けている・・・これは劣悪な職場環境によって精神的に追い詰められているのではないかと・・・親として危惧しているのです」
「娘さんの帰宅が遅いのは容量が悪いポンコツだからです」
「ポンコツですと・・・」
「ポンコツをポンコツと言って何が悪い・・・第一、娘の職場にクレームをつけに乗り込んでくるなんて・・・娘もポンコツなら・・・父親もポンコツだ」
父親の悪口を言われて衝動的に殺人パンチを繰り出す黛弁護士。
しかし、間一髪、スーパー事務員・服部(里見浩太朗)が殺人事件の発生を防ぐのだった。
「・・・こんな事務所やめなさい」
「私は・・・大丈夫って言ったでしょう・・・これは私の問題なのよ・・・お父さん」
「真知子・・・」
とにかく・・・父は娘を溺愛していた・・・そして、明らかに暇だった。
父と娘のコント②
和解交渉のために・・・「NEXUS Law Firm」にやってきた古美門弁護士と黛弁護士とその父親・・・。
「この人・・・誰・・・?」とジェーン本田(黒木華)が問う。
「父です・・・」と黛弁護士。
「話し合いには関係者しか立ち会えませんが・・・」と磯貝弁護士(古舘寛治)。
「僕が・・・お相手しましょう・・・お父さん」といかにも将を射んとすれば馬から射よの頼朝ではなくて羽入だった。
傍聴マニアの清掃員(大槻一人)も何故か同席して・・・黛の父をおもてなしする羽生。
「素晴らしい事務所だ」
「ストレスを感じさせない職場環境は大切です」
「どこかのブラック事務所とは大違いだ」
「しかし・・・うちの事務所は勝率は高くないんです」
「なぜ・・・」
「争いごとには勝者なんていません・・・全員、敗者ですよ・・・私はそういう世界を否定するものです」
「素晴らしい・・・」
黛の父親は・・・怪しい勧誘にひっかかるタイプらしい。
無事に定年を迎えられたのが奇跡のようだ・・・。
「一億円で・・・どうでしょう」という提案に古美門は「ケタが違う」と応じる。
「これまでに・・・会社がおやじいぬによって稼ぎだした売上は少なくとも五千億円・・・八年前に・・・報酬を約束されてから今まで・・・放置されてきたことを考えれば25億円は極めて正当な金額です」
「金にこだわりすぎてます・・・役員として・・・新たなやりがいを・・・」
「そんな・・・甘い言葉にずっとだまされてきた・・・田向さんは・・・天才だ・・・その創作力を認めない企業はあまりにも体質が古過ぎる」
古美門の言葉に顔をほころばせる田向・・・。誉めてもらいたかったんだな。
しかし、黛の父親は我慢できないのだった。
「そんなことはない・・・聞けば・・・いい会社じゃないか・・・こんなに話のわかる経営者だって貴重だ・・・会社は個人プレーではなくて・・・チームプレーだ・・・みんなでがんばって作りあげていくのが日本の会社のいいところだ・・・裁判にしたら・・・ウイナーなんていなくなる・・・みんなルーザー・・・敗残者になってしまうぞ・・・」
「黛くん・・・君の父親に・・・我々の立場を説明してくれたまえ」
「25億円は正当な権利に基づく、正当な要求です」
「それでは・・・諸君、法廷で会いましょう」
交渉は決裂した。
父と娘のコント③
古美門事務所のディナータイム。
「和解金額がもう少し上乗せされたら和解するべきです」
「そんなの・・・ダメだよ」とお腹をすかした忍びがやってくる。
「どういう意味・・・?」
「ボクの努力がムダになっちゃうじゃない」
「まさか・・・弁護料目当てで田向さんをそそのかしたの?」
「その話は本当かっ」
乱入してくる黛(父)だった。
「せっかく、穏やかだった会社に波風たててどうする」
「ぬるま湯で溺れそうになっている男に救いの手を差し伸べただけだ」
「なんという・・・ブラックな弁護士事務所だ」
「これ以上、営業妨害するなら・・・訴えてやる」
黛(娘)とマイ・カーで帰宅する黛(父)・・・。
「あの古美門という男は・・・ダメだ」
「・・・」
「それに比べて・・・羽生君の事務所はいい・・・父さん、真知子には羽入君の事務所で働いてもらいたいな・・・」
「私には・・・古美門事務所で学ぶべきことがあるのです」
「なんだ・・・それは・・・あの男に学ぶことなんてないだろう・・・正義とは程遠い男だ」
「お父さん・・・力なき正義じゃ・・・ダメなのよ」とは言わない黛(娘)だった。それは父親の生き方を全否定することになるからだった。しかし・・・黛(娘)は古美門の生き方を強く否定しながら・・・心の奥底で・・・激しく魅了されているのである。
「・・・」無言は否定と同じ意味なのである。
父と娘のコント④
法廷で証人尋問が行われる。
ドラゴン青年団で町内会長をやっていそうな水野さんの被告側尋問。
「田向さんは・・・おやじいぬ以外にはなんの業績もないそうですね」
「はい・・・社内では一発屋と呼ぶものもいます」
「営業部で会社に多大な損害をかけたこともあったとか・・・それなのにどうして責任をとらされなかったのでしょう」
「会社は家族が・・・社訓だからです」
古美門はむっつり。羽生はスマイル。
原告側尋問。
「最初におやじいぬを描いたのは誰ですか?」
「田向くんです」
「それでは創作したのは田向さんではないのですか?」
「みんなで作りあげたものです」
「無から有を生み出す困難さと他人のふんどしで相撲を取る安易さを一緒にしてもらっては困ります。あなたはたとえば学校の先生をお母さんと呼べますか。あなたの来ている洋服の作り手を自分の生みの親と思いますか」
「・・・」
「田向さんが会社に与えた損失は金額にするとどのくらいになりますか」
「なんやかんや一千万です」
「それでは・・・その損失を差し引いた24億9千万円ならお支払いただけるということですね」
スマイルがややひきつる羽生。
「この金の亡者!」とヤジを飛ばす黛(父)・・・。
黛(娘)は馬鹿な父親がたまらなく恥ずかしいのだった。
書店員ミチルにバスの車中で声をかけそうな笠井さんに対する被告側尋問。
「忘年会で報奨金を社長が約束したといいますが・・・この忘年会は業務の一環ですか」
「あくまで・・・プライベートなもので・・・無礼講です」
「つまり・・・この席での発言はなんら公式的なものではないということですね」
「はい」
「お聞きの通り・・・原告の要求は酒の席の冗談を本気にしたしゃれにならないものなのです・・・旧ザクでガンダムにタックルかませるみたいでちゅね」
アッガイではなく磯貝弁護士の稚拙さにスマイルがかなりひきつる羽生。
原告側尋問。
「笠井さん、あなたは忘年会で・・・社長から営業目標を示されましたね」
「はい」
「それを達成なさったのですか」
「はい」
「お聞きのように・・・忘年会で社長はいくつものオフィシャルな発言をしています。事実上、忘年会は社長が社員に対して直接指示を出す仕事の延長の場なのです。そこで社長が社員に約束したことは当然果たされるべきだと思います。原告の要求はいたって正当なものです」
痙攣し始める羽生のスマイル。
「この守銭奴!」と黛(父)・・・。
父親のアホさが恥ずかしいことこのうえない黛(娘)。
「そこは・・・巨人阪神戦の甲子園の一塁側観客席ではありませんよ・・・御老人」
痛烈に馬鹿をたしなめる古美門だった。
家路に着くマイ・カーの黛父娘。
「どうして・・・あの男の事務所をやめないのだ」
「・・・」
「お父さんは・・・羽生くんの事務所で働いてもらいたい」
「古美門先生は・・・そんなに悪い人じゃないのよ」
「なに・・・まさか・・・お前・・・あの男が好きなのか・・・いつからだ・・・まさか・・・もうやったんじゃないだろうな」
「やったって・・・お父さん・・・何を?」
「いや・・・その・・・なんやかんやだ」
果てしなく恥ずかしい黛(父)だった。できるなら宇宙人のように首を360度回転させたいところだった。
父と娘のコント⑤
深夜、「守銭奴」「金の亡者」「出ていけ」などと書いた紙を田向家こっそり張った微笑み仮面。
翌日、羽生は家族ゲームで植物状態の息子を看病する母親のような田向の妻を急襲するのだった。
「会社に敵対するようなことをすれば・・・風当たりは社宅に住んでいるご家族にも強いようですね」
「私は・・・いまの生活に不満なんか・・・なかったんです」
「しかし・・・ひょっとして・・・安定に慣れ過ぎて・・・御主人をないがしろにしたのではありませんか」
「・・・」
「男なんて・・・ちょっと優しくしてもらえれば・・・それで満足する単純な生き物なのです」
羽生の入れ知恵で・・・ファミリー・レストランで何年か分のささやかな誕生祝いをする田向の妻と娘。
「お父さん・・・私たち、お父さんさえ、無事ならそれでいいの・・・」
「・・・とでも言えと微笑みのペテン師にまるめこまれましたか・・」と乱入する古美門。
「ささやかな幸せよりも天才にふさわしい大いなる幸せを手にいれるべきだ。あなた方の夫にして父親は25億円の男なのです」
「本当に・・・25億円手に入るんですか」
「もちろん・・・正確に言えば些少の弁護料を除いた額ですが・・・あなたたちはもうすぐ億万長者ファミリーになるのです」
うっとりする田向一家だった。
続いて・・・加賀の社内工作は・・・クリエイティブ部門の社員たちを切り崩す。
鰐の兄のアニゲーターを生んだ栗田(武藤心平)、マントヒヒおじいちゃんの藤原(畠中正文)、おやじいぬファミリーを提案した久野などは次々と原告側に寝返るのだった。
「努力したものが報われない会社は・・・やがて活力を失います。会社は実力に見合った報酬を支払うべきです・・・お聞きしましょう・・・おやじいぬを作りだしたのは誰ですか」
「田向さんです」と口をそろえるクリエーターたち。
「羽生くん・・・異議ありって言いたまえ」と傍聴席の黛(父)・・・。
スマイルを激しく痙攣させる羽生。
「裁判に父親参観日はないといっておきたまえ」と囁く古美門だった。
限度を超えた父親の醜態にいたたまれない黛(娘)だった。
帰宅する・・・黛家。
「お父さん・・・もう、法廷に来ちゃダメ・・・」
「なんでだ・・・」
「神聖な場所だからです」
「しかし・・・あんな滅茶苦茶な男を見過ごすわけにはいかない・・・お前だってそう思うだろう」
「私は原告の権利を守る立場にあるのです」
「・・・」
「・・・」
「わかった・・・これ・・・」
徐(おもむろ)にホテルのレストランのお食事券を取り出す黛(父)だった。
「なに・・・これ・・・」
「夜景のきれいなレストランなんだ・・・羽生君を誘ってみたまえ・・・父さん、羽生君はお前にきがあると思う・・・そして・・・いざとなったら・・・こう言うんだ・・・酔っぱらっちゃった、どこかで休みたい・・・お前もそういうことをしてもいい年だ・・・」
「ちょっと・・・お父さん・・・泣いてるの」
「・・・」
「何を想像しちゃったのよっ」
「・・・あれやこれやをだ・・・」
父と娘のコント⑥
和解交渉のテーブル。
「三億円でいかがですか」と羽生。
「話にならない」と古美門。
「もはや・・・おやじいぬの人気は下降線だ・・・田向さんの真似して訴訟を起こす社員が続出して社内は崩壊寸前・・・そこまでして・・・お金が欲しいんですか」
青筋を立てて微笑む羽生。
「黛くん・・・田向さんの気持ちを羽生くんに話してやりたまえ」
「・・・田向さんは正当な権利を主張しているだけです」
「田向・・・俺たちは・・・お前にそんなにひどいことをしたのか」
「泣き落しですか・・・一つお教えしましょう、あなたはすんなり25億円を払うべきだった。それだけの余裕はあったはずだ。そうしていれば・・・社員の権利を手厚く保護する会社として御社は多大なるイメージアップをしていたはずだ。田向さんは時代の寵児としてもてはやされ、彼をそうさせた御社の先進的企業としてのパブリシティーの費用は25億円を遥かに上回ったでしょう。 金を惜しみ、何より、おやじいぬを作った会社の社長という面子にこだわったのは誰だったのか・・・ということです」
三人が去った後で肩を落とす社長。
「もう・・・払うしかないのでしょうか」
「いいえ・・・こうなったら・・・勝つしかありません」
羽生は秘策を繰り出すのだった。
「すべての従業員名簿を洗ったところ・・・当時のパートタイマーの方の名簿が抜き取られていたことが判明しました。・・・つまり・・・この人が原告側にとって不利なキーパーソンということです」
「・・・」
法廷に呼ばれた昔は「欽ドン劇団」で悪いOLだったようなパートタイマー・大木和子(小柳友貴美)に満面に笑みをたたえた羽生が質問する。
「あなたの趣味は何ですか」
「油絵を描くことです」
「それをあなたは社員の方に披露しましたか」
「はい」
「この絵は・・・いつ描かれたものですか」
油彩による「おやじ面した犬の絵」が披露される。
「16年前です・・・それはおやじいぬがヒットする前ですか、後ですか」
「前です」
「つまり・・・おやじいぬの生みの親はあなただったんですね・・・どうして、それを主張なさらなかったんです」
「創作者が誰かなんて・・・関係ないと思いましたから」
思わずVサインを出すマリオもしくはルイージに変装した傍聴席の黛(父)・・・。
しかし、古美門は・・・ほくそ笑んでいた。
「これを描いたのは・・・どこですか」
「自宅の庭です」
「ここにあるのは何ですか」
「街灯です」
「ここに・・・役所の街灯設置計画があります・・・これによるとあなたの家の前に街灯が設置されたのは14年前です」
「・・・」
「もう一度、お伺いします・・・あなたがこれを描いたのはいつですか」
「そんなの・・・いちいち覚えてるわけないでしょ・・・」
「・・・以上です。フフフ・・・アハハ・・・ワッハハハ」
古美門に嘲笑され、スマイルが凍りつく羽生だった・・・。
黛父娘の帰路。
「はめられたのよ・・・」
「・・・」
「うかうかとこっちのトラップにひっかかって・・・」
「・・・」
「おやじいぬはみんなで作ったという初心を貫くべきだった」
「・・・お前もグルになってはめたのか・・・」
「・・・」
「まさか・・・あの男ともはめてるんじゃ・・・」
「お父さんっ」
父と娘のコント⑦
しかし・・・古美門はさらにとどめを刺すべく最後の一手を打っていた。
田向の妻と娘に押入れょ捜させる古美門。
そして・・・一枚の娘の「幼い頃のお父さんの絵」が発見される。
それには・・・お父さんが・・・犬のように描かれていた。
本人尋問を前に黄昏る黛(父)を気遣う服部。
「お嬢さんが・・・悪徳弁護士に黒く染められていくのは見るのは忍びないですか・・・」
「娘が・・・どんどん・・・遠くなってしまう気がしてね」
「私・・・スイスにおりました頃、トレッキングを趣味といたしておりまして・・・特に高原に咲くエーデルワイスを鑑賞するのを楽しみとしておりました・・・しかし、ある年は天候不順・・・咲いていたのはたった一輪のエーデルワイスでした・・・しかし・・・そのエーデルワイスこそが一番美しいと記憶しております・・・」
「何の話ですか・・・」
法廷では原告を代弁する古美門。
「田向さんは・・・家族を愛し、家族のために働いていました・・・そんな田向さんが・・・幼い娘さんから贈られたのがこのお父さん犬の絵です・・・あ、お父さん犬って言っちゃいました・・・この絵こそ・・・おやじいぬのインスピレーションを田向さんに与えたのです・・・おやじいぬは・・・父と娘の愛の結晶なのです」
被告を尋問する羽生。
「会社は・・・田向さんを不幸にしたと思われますか」
「わが社は・・・家族的経営がモットーです。苦しい時は支え合い、喜びは分かち合う。そうして、みんなが幸せになっていく。それを目指したことが悪いとは思いません」
法廷に姿を見せた黛(父)を一瞥する古美門。
「いきたまえ・・・」
「は・・・?」
「君が・・・時代が移り行くことを父上に教えてさとあげるのだ」
「・・・」
黛は被告への本人尋問の法廷に立った。
「終身雇用、年功序説、愛社精神・・・それらはすべて過去のものとなりました。これからは国際的な競争社会がますます加速し・・・それに順応できない企業は滅び去るしかない時代になります。田向さんは・・・経営者のあなたより先にそのことに気がついたのです。義理人情では会社も社員も守れないことを・・・嫌われても叩かれても個人の主張を貫く人も賞賛されるべきでしょう・・・25億円は会社に対する貢献について田向さんが得るべき当然の報酬であると言えます。会社はそれに応じてこそ・・・新たなる時代に向き合うことが可能となるでしょう。ただ・・・最後に一言申し上げます。かって、家族を守るために一丸となった会社がありました。そしてがむしゃらになって働いた社員がいました。そういう人々によって養われたものとして・・・すべてのそうした会社と会社員に感謝の気持ちを捧げたいと思います。・・・永い間・・・お疲れ様でした」
娘の晴舞台に涙を抑えきれない黛(父)・・・。
そして脱力しても微笑みを絶やさない羽生だった。
古美門は・・・元祖・微笑みの帝王として幽かに笑むのだった。
勝者を出迎える黛(父)・・・。
「立派だった・・・まるで逆境に耐える一輪の花のように・・・そう・・・お前はエーデルワイスだ・・・」
「はあ?」
「古美門くん・・・私は君が嫌いだが・・・これからも娘を厳しく育ててくれたまえ」
「言われなくても・・・限界までこき使います・・・我が事務所は古き悪しき企業体質ですから」
「・・・ふん・・・とにかく・・・私はもう・・・とやかく言いません・・・第二の人生を始めなければなりませんから・・・とにかく・・・真知子・・・忘れるな・・・いざとなったら・・・酔っぱらっちゃった・・・どこかで休みたいだぞ・・・」
「お、お父さんっ」
「一体全体・・・なんの話だ・・・」
結局、羽生を食事に誘う黛(娘)だった。
「負けたのにくやしそうじゃないわね」
「そんなことないよ・・・くやしくて・・・ますます君が欲しくなった」
「え・・・」
「僕と君が一つになったら・・・世界は薔薇色になると思う」
「そ・・・そ・・・そう」
「そろそろ・・・出ようか」
「わ、わたし・・・よ・・・よっぱらっちゃた・・・ど・・・どこかで・・・や、やすまないと」
「わかった・・・家まで送っていくよ」
「・・・ありがとう」
エーデルワイスの高貴な白は・・・純潔を維持するほかないのだった。
古美門はベッカムと同じガルフストリームⅣを発注したが時価29億円なので赤字だった。
「あなた・・・気をつけなさい」とアドバイスする安藤貴和。
「あの娘・・・二人の男の間で揺れてるわ・・・」
「それがどうした・・・」
「向こうに行っちゃうかもよ」
「痛くも痒くもないね」
安藤貴和は男と女のすべてお見通しなのか・・・。
羽生は・・・小銭を稼ぐために・・・会社から追い出された経営者と・・・欲に目がくらんだ家族についていけない労働者をセッティングするのだった。
新たなる企業を立ち上げて顧問料を稼ぐためである。
社長と腰ぎんちゃくの二人・・・そして資産家となった田向は・・・昔を懐かしみ・・・「消しゴム」からやり直す決意を固めるのだった。
消しゴムひとつあったなら
どんな悲しいことも全部消してしまえる
ああ あじさい文具
わたしたちの あじさい文具
スマイル仮面は微笑みを取り戻す。嫌なことから顔をそむけるのが彼のモットーなのだ。
砂漠で迷った時に、自分の足跡をたどっても大体途中で消えているのだ。砂漠にだって風は吹くからね。
そして・・・変なキャラクターを作り出し・・・古美門事務所にやってくる黛(父)・・・。
「マグロパパ、ハマチママ、カンパチ兄ちゃん、関サバ姉ちゃん、のどぐろじいちゃん、佐賀のサバばあちゃん・・・」
「これをどうしろ・・・と」と古美門。
「お父さん・・・稚魚のキャラクターも作らないと・・・ちびまる子ちゃんなら・・・カンパチと関サバは姉妹設定で・・・」と黛(娘)・・・。
「基本、サザエさんも捨てがたいですな・・・しかし、水戸黄門ファミリーという手も・・・」と服部。
馬鹿は死ななきゃ治らないのだった。
関連するキッドのブログ→第4話のレビュー
それはさておき・・・。
ご利用いただいてきたお客様には大変申し訳ありませんが、持続可能なサービス実現のため、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
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コメント
キッドさん
こんばんは
リアルタイムは裏の映画を見ていたので「最初に考えた人が偉い」に妙に反応してしまいました(^^)
シーズン1を心から愛する私としてはガッキーの実家、お父さんのイメージがちょっと違う気がしましたが
あじさい文具で働く人たちが中小企業で頑張って働いてきた善良な日本人という雰囲気をすごくよく出していて感情移入できました
今回、あまり古美門が活躍していなかった気がしますが それ以上に登場人物たちが黛と古美門の間に恋愛感情があるかどうかをあからさまに口に出して疑ったりしてるのが わかりやすいけれど シーズン1みたいなさりげない雰囲気のほうが好きで 前シリーズよりも視聴率もよくたくさんの人に注目されているのに自分は乗り切れずにちょっと置き去りにされてしまったような気持ちも味わってます
でも
しっとりした良い話でした
投稿: chiru | 2013年11月 8日 (金) 22時42分
ふふふ・・・人間はそれぞれが
「イメージ」を持ちますからねえ。
「ビジョン」と言ってもよろしいのです。
イメージは膨らむものですし、ビジョンは描くもの。
たとえば・・・黛真知子の実家は
田舎にあったはず・・・というイメージは第1シリーズ「第7話」徳松醤油で育った父方の従姉妹・千春(木南晴夏)が形作っているでしょう。
確かに真知子は田舎出身の少女のイメージなのですが
その・・・暮らしぶりはほぼ謎に包まれているのですな。
食事もほとんど古美門事務所で食べてるし。
まあ、一人暮らしで・・・父は上京してきたのかもしれない。
そういう点は全く、隠されているのに
お茶の間の皆さんは・・・それぞれのビジョンを見ているのですな。
「あじさい文具」が巨大企業に成長することも
まあ・・・一つのビジョンなのでございますよねえ。
少なくとも・・・今回、
黛は・・・明らかに羽生に
「抱かれてもいい」と思ったわけで・・・
そこは少なくとも
黛は・・・古美門を男として意識していないという
前提になりますな。
一方で・・・女王は・・・
古美門と黛の無意識に魅かれあう心の裏を察知している。
そして・・・古美門に・・・優しいアドバイスをしているわけです。
古美門はバツイチですから・・・
牢獄の女王や、法廷の女王には
プレイボーイ気取りができるのですが
処女の黛は・・・実は高嶺の花として
タブー視しているのですな。
しかし・・・ないものねだりで
お互いは魅かれあっている。
実は・・・似たもの同志なのかもしれないのですねえ。
この二人の・・・恋愛的な緊張関係は
第1シリーズから
ゆるぎなく続いていると
キッドは考えるのでございます。
投稿: キッド | 2013年11月 9日 (土) 03時45分
寒くなってまいりました!!
ドラマも中盤に差し掛かり、
今回、非常にドラマからCMに行く時の
切れ方の雑さにビックリしました!!
思わず、テレビに向かって叫びそうでした(笑)
最近は、深夜の海外ドラマに嵌ってきてるので
こういう、小さいけど、大切なところが気になります。
最近のヒットの傾向は、最近ではないけど(笑)
1一人で大きな組織に向かっていくってストーリーが、
好きなんですかね!日本人も日本に限らず全体的に、
映画もそういうストーリー多いような気がします。
投稿: ユキヒョウ | 2013年11月12日 (火) 12時48分
テレビに向かって叫ぶのはある意味、恥ずかしいことですが・・・キッドにとっては日常茶飯事ですぞ~。
家族と見る時はエチケットとして叫ばないようにしています。
白い目で見られますからな。
しかし、ほとんど一人で見ているので
家族はそれほどテレビを観ない・・・。
叫び放題でございます。
CMは民放のお約束だから
ご容赦くださりませ。
編集はどうかな・・・と思うときもありますが
カットアウトしたいときもありますからねえ。
CM抜き編集をしてみるのが一番ですが
なかなか手間がかかりますからな。
キッドは一台、CMを自動編集する
なかなかに乙なデッキを一台持っていますが
後継機は出なかった・・・。
絶対、圧力かかったと思いまする。
個人対組織は人間の基本の一つですからな。
人と人間は違って、
人には生物学的な意味合いや、個人のニュアンスがあり
人間には社会性がございます。人-人、つまり、人ととに間があるのが人間ですからねえ。
つまり、個人VS組織というのは人と人間の葛藤とも言えるのです。
「長いものには巻かれろ」と言う言葉が
古くからあるように言わば人間の永遠のテーマかもしれません。
フイクションが現実逃避である以上、
組織の中で生きるものほど
一人で何かをやり遂げるヒーロー&ヒロインを
欲しがるものなのですねえ。
チームプレイをしているようで
一人一人が孤独な戦いをしているようにも見える
「リーガルハイ」は素晴らしい作品と言えるのですな。
投稿: キッド | 2013年11月12日 (火) 14時05分