下世話な話で恐縮でごぜえやす(綾瀬はるか)
なにやってんだ・・・今年の大河・・・。
それにしても・・・徳富蘆花・・・よく、射殺されなかったな・・・。
今回のストーリーの骨格は徳富蘆花の小説「黒い目と茶色の目」(1914年)によるものである。
小説の本題は・・・蘆花自身を虚構化した主人公と小田久榮をモデルにしたと言われる女学生の若気の至りの話であり、その前段として女学生の母親の不倫騒動がまことしやかに語られるという展開なのである。
つまり・・・全くの虚構なのである。
それをまるで史実のように語られても・・・困っちゃうのだった。
もちろん・・・歴史は虚構であるから・・・なにしてもいいとは思うのだが・・・ほぼ同時期に・・・兄・蘇峰の主宰する新聞社で・・・元・会津藩士の娘と元・薩摩藩士の家庭にまつわるスキャンダラスな話を超脚色して面白おかしく描いて下世話な庶民に大喝采をあびた文士のやったことなのである。
しかも・・・実際の出来事から30年近く経っていて・・・関係者の了解を得たことでもない。
なんでもありの時代だったんだなあ。
それにのっかって・・・また物凄い脚色なのである。
確かに・・・主人公の兄の家庭でいろいろゴタゴタあったのかもしれないが・・・それがどうしたっていう話なんだなあ。
小説発表時、未亡人となっていた新島八重は日本赤十字社の社員として従軍看護婦となり、勲七等宝冠章が授与された名士である。齢69歳になっている。茶道教室の先生として・・・さすがに銃殺は思いとどまったか・・・。龍馬暗殺犯佐々木の兄の娘の娘・初子を養女に迎えすでに嫁に出し義理の孫の中から新島家り跡取りを物色中だったので自制したのかもしれない。
しかし・・・「平清盛」の世界の不義密通にはうっとりできるのに・・・「明治」の不倫にはまったく下世話なものしか感じないのだな。
あれ・・・偏ってんのはキッドの方なんですかね。
まあ・・・なんだかよくわからない役所を・・・それらしく演じる谷村美月は女優としては素晴らしいと思いますけれど~。
で、『八重の桜・第45回』(NHK総合20131110PM8~)作・山本むつみ、演出・末永創を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は幕末から明治にかけての京都の侠客・大垣屋清八こと初代・大澤清八親分の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。作劇的には東宝映画の初代会長の曾祖父であるこの親分を絡ませることで・・・小田家の存在を曖昧にして・・・小田時榮がまるで天涯孤独のような感じに仕立てているわけでございます。元々、時榮は覚馬の京都時代の知人である郷士小田勝太郎の妹だそうですのに・・・。まあ・・・とにかく・・・明治の有名人の関係者だけれど名もなき人は・・・消息不明になると・・・何を言われるかわかったもんじゃないわけでございますねえ。
明治18年(1885年)1月、日本人によるハワイ王国への移民始る。2月、ベルギーがコンゴを植民地化。3月、英国がボツワナを植民地化。4月、日本と清国の間で朝鮮半島への出兵に関する天津条約が締結される。出兵についてお互いに事前に通告する協定だったが、後に清国は両国が清国の天子に通告する約束だったと意味不明なことを言い出し日清戦争の要因の一つとなる。5月、日本銀行券(拾円券)発行開始。6月、第3代京都府知事の北垣国道の計画による琵琶湖疏水起工。自由の女神像がニューヨークに到着。7月、日本鉄道が大宮駅~宇都宮駅まで延伸し、宇都宮駅で日本初の駅弁発売。8月、ドイツ人のダイムラーによってオートバイの特許が取得される。9月、日本郵船が創立される。10月、東京瓦斯創立。11月、国内の自由民権運動に閉塞した旧自由党過激派で秩父困民党の指導者・大井憲太郎らによって朝鮮半島でのゲリラ活動が企画され、資金調達のための強盗や爆弾製造が計画されたものの事前発覚、婦人解放運動家・景山英子など139人が逮捕される。12月、太政官が廃止され、内閣制度創設。伊藤博文が初代内閣総理大臣となる。外務大臣に伊藤薫(長州)、内務大臣に山縣有朋(長州)、大蔵大臣に松方正義(薩摩)、陸軍大臣に大山巌(薩摩)、海軍大臣に西郷従道(薩摩)、文部大臣に森有礼(薩摩)、司法大臣に山田顕義(長州)、農商務大臣に谷千城(土佐)、逓信大臣に榎本武揚(幕臣)という布陣だった。新島襄が海外渡航より帰国。山本覚馬が京都商工会議所会長に就任。妻・時榮と洗礼を受ける。伊勢みねが長男・平馬を出産する。山本久榮は15歳になっていた。
「兄夫婦が洗礼したんで・・・これで新島家も山本家も全員がクリスチャン一家になったのでこぜえやすな」
「そうですね・・・」
新島家では襄の両親も明治十年に洗礼を受けている。
八重の兄・覚馬の娘、みねがクリスチャンの伊勢時雄と結婚しており、伊勢時雄の父・横井小楠の妻は徳富蘇峰・蘆花兄弟の母と姉妹であり、このために新島家は徳富家とも親戚関係になっている。伊勢時雄の名は横井家が北条平家の流れであることを示している。時雄の妹のみや子は前橋教会、本郷教会、神戸教会などを創立した海老名弾正に嫁いでいる。蘇峰の姉の初子は新島襄が洗礼した群馬県県会議員の湯浅治郎の後妻となっている。
会津藩所縁の京都の侠客・大澤清八の養子である大澤善助も新島襄の洗礼を受けクリスチャンとなっている。善助は一時、二代目清八を名乗っており、まさに二代目はクリスチャンなのだった。高級ブランドの輸入でおなじみ大沢商会はこの大澤組から発展している。
奈良県吉野の林業家・土倉庄三郎は日本全国の造林を行うと同時に自由民権運動などに資金援助を行い、同志社英学校にも関わった。そして、二代目の土倉龍次郎はクリスチャンとなり、後に日本におけるカーネーション栽培の先駆者となり、さらにはカルピスの創立にかかわっている。
伝道と教育という襄の二つの手が・・・新島コネクションを形成して行くことに・・・八重は不思議な思いを抱いていた。
それは・・・山本家に伝わる忍びの組織作りに似たものだったからである。
「しかし、キリスト教もなかなか油断ならねえものだな」
「ふふふ・・・八重さんの忍びの道に通じるものがあるでしょう」
すでに・・・襄も妻の裏稼業については充分に把握していた。
「しかし・・・なかなかに・・・仏の教えを駆逐することはできねえのではないのでねえか」
「そうでしょうねえ・・・仏の教えや・・・神頼みは・・・もはや・・・この国の心そのものでしょうから・・・」
「では・・・キリスト教は流行らないんでねえか」
「いえいえ・・・キリスト教は流行りますよ・・・少なくとも、クリスマスと結婚式は絶対、流行ると思うな。お正月前にちょっと華やかな気分になったり、花嫁はウエディングドレスをきっと着たがるようになるでしょう」
「まあ・・・それは信心とは別にだな」
「それに仏教には殺生戒がある・・・キリスト教にも汝殺すなかれという教えがありますが・・・殉教という抜け道がありますからね。命より信仰というのは・・・なかなかにうまみがあります」
「しかし、日本にも一向一揆があったのでごぜえやすが・・・」
「そうそう・・・教団に支配されて極楽往生を約束させる・・・キリスト教はそれをもう少し緩やかに成し遂げるのです」
「なるほど・・・」
「なにしろ・・・罪人にも天国の扉は開かれるのです」
「ふふふ・・・ヤクザやら、盗人やら、人殺しやら・・・みんなまとめて悔い改めさせるのだな」
「その通り・・・とにかく・・・そうして・・・人々に・・・神の国の栄光を広めていけば・・・おのずとこの国は・・・特別な国になっていきます」
「東京の・・・福沢先生は・・・朝鮮が白色人種に対応しないことに・・・癇癪をおこして・・・脱亜論なるものを書かれたといいます」
「まあ、後世、いろいろと言われちゃうでしょうねえ」
「この国のように血を流さねば・・・そうはならないのでごぜえます」
「そうです・・・その苦痛こそが・・・真の信仰の扉を開くことになるでしょう」
「ジョー、私には漸く、あなたの恐ろしさがわかってきました・・・」
「ふふふ・・・信仰のために国さえも捨てた私です・・・そして、世界一の鉄砲使いを妻にした私ですよ・・・今更、そんなことおっしゃらないでください」
「ふふふ・・・いかにも・・・」
「さあ・・・それでは・・・大阪の探索計画を立てましょう・・・」
「物騒な計画を・・・火を吹く前に抑えねばなんねえからな・・・」
「そうです・・・貧しきものたちが・・・幸いなのは・・・無用な騒乱を招かないでこそ・・・ですからねえ・・・アーメン」
「アーメン」
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