君をさらっていくよ(岡田将生)お前は永遠に俺のものだ(堺雅人)絶対、夢だもの(新垣結衣)
案の定、夢だったわけだが・・・。
女としての黛はつまり・・・古美門に抱かれたいと心の底では思っているわけである。
しかし、前回は・・・羽生に抱かれてもいいと覚悟を決めていたのだった。
つまり・・・黛はとにかく・・・性的未経験からの卒業を目指しているのだな・・・あるいは性的欲求不満からの脱出というか。
一方・・・古美門も羽生も「弁護士」としての黛にはそれぞれに一目おいているのだが・・・性的にはまったく眼中になかったりして・・・。
まあ・・・そうでないとコメディーとしては成立しないもんな。
しかし、ラブコメとなると・・・古美門の方が脈があるのかもしれない。
まあ、古美門は・・・バツイチという負い目があるので・・・黛が押し倒すしか道はないんだな。
そして・・・実力的には黛にはそれができる怪力が備わっているわけである。
「やめないか・・・ポンコツ」
「先生、おとなしくしてください」
「ヒーッ」
うんうん・・・ラブコメとしての潜在力もなかなかのもんだな。
で、『リーガルハイ(第二期)・第6回』(フジテレビ20131113PM10~)脚本・古沢良太、演出・城宝秀則を見た。結婚制度にまつわる話である。局所的には嫁・姑問題と言える。非の打ちどころのない嫁・愛子(鈴木保奈美)に弱点を見出した姑の嶋澄江(高林由紀子)が姑根性という極悪な気持ちを制御できなくなり、破滅に向かって突き進む話なのである。自分しか見えなくなるというのは恐ろしいことだが・・・ありふれた話と言える。一夫一婦制度では魔法少女が魔女になるように嫁は姑になる運命だからである。
一夫一婦制度の戦略はキリスト教世界ではアダムとイブの模倣である。それは主に「平等」に重きを置いた戦略と言えるだろう。誰もが子供を作れるチャンスを持つことができれば暴動は起きにくいのである。実力によって一夫多妻が認められるイスラム圏では自暴自棄になった貧しい男たちがテロリストになるのである。儒教圏での一夫一婦制はあくまで女性に貞操を求めるもので、夫と死別した時の未亡人が夫に殉じることは認められず、新しい夫に嫁ぐことが強制されるのが普通である。一方、現代では一夫一婦制度もパートナー・チェンジという形で実力主義とのバランスをとっている。いわゆる、金の切れ目が縁の切れ目ということだ。このように簡単な考察によって正しい結婚制度などというものが微妙なものであることは明白となる。
黛弁護士(新垣結衣)は自分が考える正しい法制度の在り方と・・・弁護人の利益を守る職業的節度の間で常に悩み続ける。
第一シリーズで「力なき正義は無意味」と悟った黛は・・・古美門(堺雅人)の下で・・・修行することで「自分の正義」を実現することを選んだ。
第二シリーズでは・・・「裁判によって得られる利益」ではなく、「法廷闘争を避けてお互いの最小損失を目指す和解の王子」として羽生(岡田将生)が登場し、古美門に戦いを挑む。その青臭い平和主義は黛の心情にフィットするが・・・昔の自分を見るように王子が敗北を喫するのを黛は傍観する。
しかし・・・黛の内部の矛盾はついに限界に達したらしい。
古美門事務所で・・・悪魔の下僕として働く黛。
そこに王子様の羽生が・・・呪縛からの解放をしにやってくる。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(2003年)のウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)となったウインウイン羽生。
しかし、海賊弁護士・キャプテン・ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)が立ちふさがる。
けんかをやめて
二人をとめて
私のために 争わないで
と歌い出すエリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)気分の黛。
・・・まあ、夢なわけだが。
剣戟の響き渡る古美門弁護士事務所。
服部(里見浩太朗)は「これは男同士の決闘です」と静観。
ついに、勝利をおさめる羽生。
「命はとりません」
「だから・・・君は勝てないのだ」と拳銃を取り出す古美門。
胸を弾丸に貫かれ、倒れる羽生。
「飛び道具って・・・卑怯でしょう・・・ガクッ」
「羽生君死なないで・・・」
「お前は俺のものだ・・・」とジャックはエリザベスを抱きしめ、その唇を奪・・・。
覚醒する黛は性夢を見たことにたまらない恥じらいを感じるのだった。
しかも・・・そこは古美門事務所だった。
「どうした・・・」と尋ねる現実の古美門。
「きゃあ・・・」と思わず悲鳴の黛。
「なにやら・・・最近、様子がおかしいですな」と服部。
「いや・・・いつものことだろう」
しかし・・・黛の中では、女心と・・・弁護士魂の双方が激しく動揺していたのだった。
黛は・・・依頼人との面接と言う名の「恋愛相談室」に駆け込み、拘置中の安藤貴和(小雪)にお伺いを立てるのだった。
「そろそろ・・・裁判の方針を・・・」
「あなたの方こそ・・・そろそろ・・・決断する時じゃないの・・・」
「何をですか」
「それとも二人の男の間で揺れることをもう少し・・・楽しむ?」
「そんな・・・私は決めたんです・・・先生の下で修行することを・・・」
「単に居心地がいいだけじゃないの」
「・・・」・・・図星だったらしい。
そんな・・・黛の元に・・・迷える姑の嶋・澄江が尋ねてくるのだった。
澄江の息子・悟(林泰文)は前妻(玄覺悠子)と協議離婚した後で、男手ひとつで澄江の孫にあたる宗太(須田瑛斗)を育てていた。そこへ後妻として愛子がやってきたのだが・・・藍子には他に二人の夫がいることが判明したのだった。
一人の女が三人の男を独占している・・・といううらやましさに目が眩む黛だったが・・・澄江が年金暮らし、愛子の年収が一千万円と聞くと・・・「危険」を察知して・・・「NEXUS Law Firm」を紹介する。
しかし・・・内縁関係の解消を求められた愛子は結局、古美門事務所を訪れるのだった。
そして・・・一妻多夫を認めない澄子と愛子と愛する家族たちとの嫁姑戦争が勃発するのだった。
愛子の内縁関係の歴史は以下のようである。
バツイチで宇田川火星(マーズ=青木柚)を育てていたとび職の宇田川と内縁関係になり、宇田川希星(キララ=内藤穂之香)、宇田川姫冠(ティアラ=滝沢美結)を出産。
芸術家のフレンチ滝口と内縁関係になり、滝口マリア(佐藤風和)を出産。
そして・・・嶋とも内縁関係になり、それぞれ週二回ずつを割り当て、日曜日をフリーとして三家庭を築いているのである。
そして・・・パーフェクトな女である愛子を慕う夫たちは自分の立場を納得し、まったく不満はない上に三家族で一緒にレジャーに行ったりもして和気藹々なのである。
しかし・・・そんな関係はおぞましいと姑は息子と愛子の内縁関係の解消を求めたのだった。
羽生は・・・「少なくとも澄子さん」が不幸だからというのだが・・・古美門に喧嘩を売る気満々なのであった。
しかし・・・本人たちに何の問題もなく、法的に不備はない。
そこで・・・羽生は・・・内縁の夫婦の幸福を壊す暴挙に出る。
ついに・・・羽生の笑顔に綻びが出たのだった。
嶋の前妻を引きずり出し、宗太の親権争いを開始したのである。
家庭より仕事を選んだ前妻だったが・・・羽生の説得により・・・放棄した親権を主張し始めたのである。
「孫にはおぞましい環境で育ってほしくない」と澄江は主張。
「しかし、宗太くんは・・・愛子さんの元で幸福に暮らしている」と論破する古美門。
「けれど・・・愛子さんは入籍して・・・宗太くんの正式な母親になる気はないのですよね。それで宗太くんの幸せを本当に願っていると言えるでしょうか。法的には赤の他人であることに固執しているわけですよ」
一妻多夫の内縁関係を維持したい愛子は返答に屈するのだった。
依頼人と老婆の間で揺れる黛だった。
黛の価値基準は常に立場の弱いものの味方になりたいという心情によって揺れる。
お年寄りは文句なくその対象である。
しかし、依頼人は・・・年金生活の姑ではなくて・・・年収一千万円の嫁なのである。
さらに・・・羽生は家族の切り崩し工作を開始する。
とび職の宇田川には同僚のひろみ(川面千晶)を紹介し、芸術家の滝口には初恋の女教師・吉川先生(勝平とも子)を紹介するのだった。
「1/3ではなくて一人の妻を独占」につられてよろめく夫たち。
そして・・・残った嶋を親権問題で責め立てるのである。
「単にバラバラにするだけでなく・・・再構成をしているわけですから」と黛は羽入を弁護するような発言を古美門に漏らす。
「一人のかわいそうな老婆の個人的信条を守るために・・・幸せだった三つの家庭を破壊するのが・・・お前の正義なのか・・・そして、お前の依頼人から家族を奪うのがお前の仕事か・・・」と問う古美門だった。
黛は自分の中に生じた矛盾に煩悶し・・・ついに一つの手段に到達するのだった。
それは・・・黛に・・・世の中にはどうにもならないことがあるという事実を認識させ・・・思わず、涙がこぼれるのだった。それは・・・黛にとって破瓜の痛みのようなものだった。
一方で古美門は草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)に逆転のための工作活動を展開させていた。
「恋愛相談室」では安藤貴和が古美門に決意を促していた。
「あなたは・・・私の裁判にこのままでは勝てないわ」
「そんなことはありえない」
「今のあなたには怯えがある・・・あの子に去られるのがこわいんでしょう」
「まったくこわくない」
「私・・・昔、毛虫を飼ってたの・・・さなぎまでは成長したんだけど・・・蝶にはならなかった。さなぎの中で死んでしまったのよ・・・このたとえ分かるかしら」
「君は・・・実は優しい女なんじゃないか」
「あら・・・いい女は優しいに決まっているじゃない」
「なるほど・・・」
「ところで・・・今日、あの子は・・・どうしているの」
「さあな・・・」
黛は羽入を訪ねていた。
羽生に最後のチャンスを与えるためである。
それは明らかに裏切り行為だったが・・・黛の心はそこまで追い詰められていたのだった。
「これで・・・僕は・・・古美門先生に勝つことができた・・・だから君を事務所に迎えたい」
「砂漠は掘ってみなければ・・・石油が出るかどうかわからないんでしょう」
「そして・・・石油を掘り当てたのは僕だ」
(石油があるのは・・・一ヶ所とは限らないのよ)という言葉を飲みこむ黛。
愛子の弁護士として踏みとどまったのである。
やがて・・・羽生が決定的な敗北を味わう時がやってくる。
宇田川に羽生があてがったお相手の料理は最悪だった。
滝口の相手は浮気症だった。
嶋の前妻は仕事に失敗して借金を背負っていた。
全員が愛子の1/3の実力にも及ばない女であることを草の者が露呈させたのだった。
いつのまにか・・・愛子の元に三人の夫と子供たちは戻っていたのである。
羽生は古美門事務所に殴りこむ。
「約束が違うじゃないですか・・・内縁関係は解荘するととりきめたはずです」
「はい」と朗らかに答える愛子。
「それなのに・・・あなたたちは・・・何してるんです」
「これから・・・役所に養子縁組の届けを出しにいくんです」
「え・・・」
「三人の夫たちは全員、私の子供になります。これで晴れて私たちは法的にも家族です」
「そんな・・・」
愛子は感謝の言葉を黛に伝えるが・・・黛の心は晴れない。
結局・・・かよわい老婆は息子も孫も失ったのである。
「僕は許せない」と羽生は黛に告げる。
「古美門先生が・・・それとも私が・・・」
「君を攫って行く風になれなかった・・・自分自身がだよ」・・・ついに微笑み王子は笑顔を失ってしまったのである。
黛は・・・その後ろ姿を・・・ただ見送るだけだった。
月光が古美門事務所のテラスに差し込んでいた。
「今日は・・・夜路に迷わぬ月夜ですな」と服部。
「・・・」と頭上を見上げる古美門。
「泣いておられましたな」
「いつものことでしょう」
「いいえ・・・先生が命じられるより先に・・・黛先生は養子縁組の書類を用意しておられました・・・泣かれたのは・・・その時です」
「そうですか・・・」
古美門の密かな決意を知らずに事務所に戻ってくる黛・・・。
「君はクビだ・・・」
「今度は何ですか・・・」
「羽生のところへ行きたまえ・・・そして一人で戦ってみたまえ・・・そうすれば、少しはマシになっていることに気がつくだろう」
「何を言ってるんです・・・私は先生に認められるまで・・・ここで」
「だから・・・認めると言っている」
「先生・・・」
「これまでよくがんばってくれたな」
「どうして・・・けなさないんです・・・」
「ポンコツなりによくやったと言っている・・・もう君をこき使うことはない。そして守ってもやれない。君自身の力で立つ時がきたのだ。これまで・・・ありがとう」
「・・・」
「がんばりたまえ」
古美門は自室に去って行った。
「私の・・・居場所はもうここにはないんですか」と少女のように服部相手に駄々をこねる黛。
「黛先生も・・・そういう時期がきていることにお気づきでしょう」
「・・・」
「ご活躍をお祈り申し上げております」
こうして・・・黛は巣立ちの時を迎えたのだった。
その行く道を月光が照らしていた。
黛は泣きながら前へと進むのだった。
とにかく、ぬるま湯が好きなお茶の間は絶叫するのだった。
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