サウジアラビアの国から(岡田将生)横分けなわけで(堺雅人)奥蟹頭の忘れもの(新垣結衣)立ってなさい(広末涼子)
ついに・・・「ラクダに鞭」と言い出した和解の王子様。
そもそも・・・「サウジアラビア王国」は絶対君主制国家で、世界一の原油埋蔵量を誇る国で、コーランに基づき9歳未満の女児との結婚・セックスが認められている国である。
その常識であるかのような言説が民主主義、資源些少、女子の結婚年齢16歳の日本に通用するはずはないのである。
彼は・・・砂漠の国に特有の強い指導者・・・愚民を率いる救世主を目指しているのは最初から明らかだったのだ。
ああ・・・ずっと思っていたことを言えてスッとしたぞ~。
そして・・・前シリーズの「第7話」の蟹頭(かにこべ)村よりさらに僻地の奥蟹頭を舞台に繰り広げられる・・・世界遺産じゃなくて世界財産と核燃料廃棄物じゃなくて燃料廃棄物を巡る文部科学省と経済産業省の代理戦争的暗闘なのである。
すべてを笑い飛ばしつつ・・・ゴーイングマイウエイを通ってゴーイングマイホームする我らの悪漢ヒーロー・古美門研介に・・・万歳三唱なのである。
で、『リーガルハイ(第二期)・第8回』(フジテレビ20131127PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。古美門研介(堺雅人)の依頼人となる赤松麻里奈を演じる遠野なぎこは連続テレビ小説「すずらん」(1999年)のヒロイン・常盤萌役で最高視聴率30%越えを達成している。子役から出発し、青木秋美→遠野凪子→遠野なぎこと1/4世紀の芸能活動を展開している超絶美少女も34歳になったのだなあ。いつまでも美しくありますように。
「真知子のお父さんの故郷の山一つ越えた村での案件があるのですが・・・御一緒しませんか」と黛真知子(新垣結衣)との仲睦まじさをアピールする「NEXUS Law Firm」の羽生晴樹(岡田将生)だった。
「真知子・・・」と唖然とする・・・古美門。
真知子の態度は新婚妻のようなかいがいしささえ、感じさせるのだった。
なんだ・・・一週間の間に真知子は乙女を卒業したのか。
「貧乏・田舎・自然」が嫌いなので当然、拒絶する古美門。
しかし、例によって事務員の服部(里見浩太朗)が休暇をとって同行するというので・・・強制連行されるのだった。
かくて・・・奥蟹頭にある「おざおざの森」を世界財産に推奨する地元住民と反対派の訴訟に巻き込まれた古美門と黛の愛の遍歴が重ねられるのだった。
田舎のバスはおんぼろ車
デコボコ道を ガタゴト走る
吐きそうになるが飲みこむ古美門だった。
この村の方言はきつくて古美門にはまったく理解できないわけで・・・推奨派のリーダー・「おざおざの森ふるさと館」館長・赤松鈴子(角替和枝)は歓迎しつつも自給自足の建前から古美門と黛に水汲みを命じるわけで・・・そんなことをしたら古美門は川に落ちて水浸しになるわけで・・・純だか五郎さんだかわからなくなるわけで・・・。
「どぐざれもん」(意味不明)になるわけなのである。
もう、じぇじぇじぇでじゃじゃじゃでじょじょじょでじゅじゅじゅなのである。
そして住民は全員、赤松姓なのだった。
一方・・・反対派の牙城・スナック「六本木ナイト」には鈴子と因縁浅からぬ赤松麻里奈(遠野なぎこ)が都会的な暮らしを目指して反自然派のピンクの女王として君臨しているのだった。
そして・・・燃料廃棄物処理場建設による村の活性化を訴えるのだった。その裏には開発デペロッパーが暗躍しており・・・当然、古美門は・・・麻里奈の依頼を受けて・・・「NEXUS Law Firm」と敵対するのだった。
早い話が世界天然財産・・・文部科学省・・・文化庁と最終処分場・・・経済産業省・・・資源エネルギー庁の仁義なき代理戦争なのである。どちらもバックにはシュッとしたお役人がついているのだった。
「そんな何万年も毒性の消えない最新型燃料最終処理施設なんて・・・早い話、永久ゴミ捨て場じゃないですか・・・そんなもののために自然を破壊するなんて馬鹿げてる」
「人間が生きていればゴミは出る・・・それが自然の摂理だろう・・・そのゴミをどうするかは人間の知恵の見せ所だ・・・人の嫌がるものを受け入れてその替わりに文化的で快適な生活の恩恵を手にいれる。まさにギブ・アンド・テイク、ラブ・アンド・ピースじゃないのかね」
「結局、お金じゃないですか!」
「無論、その通りだ。その何が悪い?」
清く貧しく美しくありたい黛弁護士は・・・またしても敢然と師弟対決に挑むのである。
「でもね・・・真知子・・・僕は古美門先生に変わってもらいたいんだ」
「先生を変えるなんて無理よ」
「いいや・・・変わらない人間なんていない・・・争うことの虚しさを古美門先生だってきっとわかってくれるはずだ」
「ハルキ・・・彼は・・・争うことが楽しいタイプなのよ・・・」
しかし・・・己の信念を貫くあまり・・・この地の裁判官として左遷されてきた別府敏子(広末涼子)が調停員とともに簡易裁判所に登場し・・・事態はみつどもえの様相を呈するのだった。
「飛ばされたんだ・・・ははははは」と笑ったために壁際に立たされる古美門。
そして「心の中で笑ったこと」を別府判事に看破され、黛も羽生も本田ジェーン(黒木華)も
磯貝邦光(古舘寛治)も立たされてしまうのだった。
語学の天才・別府は赴任したてにも関わらず難解な奥蟹頭訛りを完全に使いこなす。
「ほじゃにしてするべんちょもにざに」
「すどろまくどれくのこのぎんたざに」
「もどのくまとしらいみまのとそざに」
「・・・というわけで弁護人の皆さんよろしいですか」
「なにが・・・ですか」
「問題点を明らかにするために現地調査をすることになりました」
「うわあ・・・」
遠足大好きな別府判事なのである。
ここで「北の国から」ごっこはほぼ終了し、「ゴーイングマイホーム」ごっこに転じる一同だった。なんだ・・・やはり高視聴率番組からの圧力で低視聴率番組いじりに変更したのか。まあ、どちらにしろ自虐的なんだけどな。
森の名はおざおざ。
土地の言葉で・・・神の息吹・・・を意味するらしいというわけで。
小さな森に絶滅危惧種がひしめきあっているわけで。
自然淘汰にさらされにくい優しい環境があるわけで。
冬はあたたかく夏は涼しい森に守られているわけで。
だから、人と森も調和して恵みをありがたくいただくわけで。
当然、質素になるわけで・・・死刑囚の貴和さん・・・ここは拘置所以上に何にもありません。
獰猛な吸血害虫や肉食爬虫類がうようよしています。
早く・・・快適さと清潔さに満ちた輝く東京に帰りたい・・・。
そんな古美門とは別にウキウキとはしゃぐ・・・別府判事。
ついには・・・おざおざの森に棲むという「どんぐりとっちゃ」との遭遇を期待するのだった。
「どんく゜りとっちゃ」は服部によく似た風貌を持つコビト族らしい。
「るーるるる」と呼びかける別府。
しかし・・・「どんぐりとっちゃ」は姿を見せない。
別府はガッカリするのだった。かわいいよ、別府判事かわいいよなのである。
しかし、自称クーナ研究家でUMA研究会々員でもある古舘弁護士は・・・おいっ・・・さらに森深くへと単独で分け入るのだった。
このまま、古舘は帰らぬ人となるが・・・最終回までお茶の間の誰も気がつかないのだった。・・・おいっ。
しかし・・・優しい黛だけは古舘の不在に・・・幽かな違和感を抱くのだった。
「なんだろう・・・なんだか・・・空気が少し新鮮に感じられる・・・」
かわいいよ、ガッキーかわいいよなのだった。
「どんぐりとっちゃを見ることができると何かいいことあるんですか」
「その年、風邪をひきにくくなるそうだ」
「ひかなくなるんじゃないんですね」
「その場合、製薬会社がだまってはいないだろう」
「虐殺ですか」
「遠心分離機にはかけるだろう」
「成分分析ですね」
「成分分析さ」
その頃。集落では服部さんが子供たちにおやつをふるまっていた。
「ありがとう、どんく゜りとっちゃ」
「はっはっはっ」
調査隊はランチタイムである。
「これはおいしいですね」
「蟹頭蕨のゼンザイさに・・・」と自然派の赤松鈴子。
「そんなのたまに食べるからいいんです・・・毎日、そんなんだったら身体に自然の毒がたまります」
「自然の毒ってなんですか」
「自然は毒々しいもんなんだよ・・・ヘルシーとは真逆なんだよ」
「さあ・・・次の調査場所に向かいましょう。山の入り日は早いのです」
一同は麻里奈のスナック「六本木ナイト」に向かうのだった。
「ボンゴレビアンコとナタデココ・・・反自然的メニューですね」
「普通のメニューじゃないかっ」
「とにかく食べてみましょう」
「結局、食べるんですかっ」
「自分の五感で真実を確かめることは法に携わるものとして重要な責務です」
調査は終り・・・調停が再開する。
「そもそも・・・世界財産に登録されることは担当官庁の手柄たてて出世したい欲望に裏打ちされた思い出作りと地域のブランド化に他なりません。もちろん、それによって村が潤うことを否定するわけではありません。しかし、蟹頭村のおざおざの村は登録対象としての決め手にかけていた。そこで・・・地域住民との一体感を無理矢理演出したのです。まるで少数民族であるかのような独自の文化を捏造し、地域住民に強制する。まさしくこれはファシズムです。都会的で洗練された暮らしに憧れる人々の夢を奪い、希望を刈り取ったのです・・・なんという恐ろしいことでしょう。おざおざは神の息吹だ・・・笑わせてはいけない。民俗学的研究によれば・・・おざおざとはこの地方の方言で生殖行為つまりずっこんばっこんとかずっぽっずっぽとかぱふぱふとかそういう意味だそうです。つまり・・・あの森は・・・やりたいものの集ううたがきの場・・・青姦天国だったのです」
「それは偏見です・・・彼らは森との共棲を選んだ・・・それは素晴らしい選択じゃないですか」
「選択というものは選ぶ自由があってのものだ・・・窮屈な掟に縛られることのどこが素晴らしいんですか」
「都会にない素晴らしいものを守るためです」
「どうして都会にある素晴らしいものじゃダメなんですか・・・都会の人間は便利で快適な生活をする・・・田舎の人間は不便で不快な生活をしろ・・・自然を守るためには当然だなんて誰がきめたんです」
「それは価値観の相違です・・・この集落にはお金で買えない幸福があるのです」
「お金で買える幸福を買えないだけじゃありませんか・・・貧乏だから」
「お金で買えない価値があるんです・・・プライスレスです」
いつもより、ムキになる羽生弁護士。
「それでは・・・住民にアンケートをとってみたらどうですか・・・どちらの生活を望んでいるか・・・民意を問うてみては・・・」
「構いませんよ・・・」
古美門の挑発を受けて立つ羽生に危機感を覚える黛。
「そんな多数決で決着だなんて・・・勝負ではなく・・・協議でお互いに合意を・・・」
「いえ・・・妙案かもしれませんね」と反応する別府。
「世界財産を保持するか・・・破棄するか・・・住民の総意を署名によって決する・・・全人口148人のうち・・・より多く署名を集めた方を・・・住民の総意と見なし・・・双方が受け入れるということにしましょう」
「裁判所が多数決を推奨するなんて・・・それは司法制度の否定じゃないですか」
「調停の目的は双方の合意です・・・双方がそれで納得すれば結構ということです」
「そんなの・・・住民の対立を煽っているようなものじゃないですか」と黛。
「いいじゃないか・・・判事様の提案だ」と古美門。
「そうですね」と羽生。
「では・・・期限は次回の調停期日とします」
「そんな・・・」と茫然とする黛だった。
「羽生くん・・・古美門先生の手にのるなんて・・・」
「安心したまえ・・・勝算はある・・・なんといっても賛成派は多数派なんだから」
「・・・」
そういう現状を覆すのが古美門の常套手段だと知っている黛の不安は高まるのだった。
こうして署名集めという名の集落内戦争が始ったのだった。
序盤は羽入の読み通りに賛成派に署名が集まる。
しかし・・・草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)が投入され、集落に眠る欲望に火が放たれる。
心の底では都会生活に憧れるもの(新野アコヤ)たちは夜な夜な「六本木ナイト」に招かれてもてなされ・・・たちまち心を翻していくのだった。
一人、一人と寝返る賛成派たち。
「ハンバーガーを密売しているものがいます」
「山狩りだ」
「裏切り者は許さない」
「反省室で私が徹夜で説得します」
黛はハルキの瞳に・・・狂気が宿るのを感じるのだった。
連戦連敗の痛みが羽生のプライドを傷つけ・・・ついに独裁者の本性が目覚めようとしていたのだった。
「おらは・・・ハンバーガーが食いたかっただけざにいいいいい」
暗い森に追い詰められた若者の絶叫が迸る。
捕縛された若者を拷問室で洗脳する羽生はもはや秘密警察の司令長官と化しているのだった。
そんな羽生に・・・何故か・・・服部は重要な情報をリークするのだった。
後に判明するのだが・・・服部の背後には古美門(父)の星飛雄馬に対する星一徹的な何かが発動しているらしい。
古い記念写真に写る・・・賛成派の赤松鈴子と・・・反対派の赤松麻里奈に挟まれた男。
彼こそは・・・鈴子の息子にして・・・麻里奈の婚約者・・・赤松恒夫(村杉蝉之介)その人だったのだ。
その昔、恒夫は集落を捨て・・・都会に脱出したらしい。
羽生は・・・ゲシュ・・・秘密警察女憲兵のジェーン本田に・・・恒夫の確保を命じるのだった。
鉄のカーテンの東側で暗黒の世紀が始ろうとしていた。
ベルリンの壁を突破しようとしたアルベルト・ハインリッヒは検問突破の銃撃戦で恋人を失い黒い幽霊団に・・・おいっ。
「どうした・・・黛くん」
「純真な皆さんの心を弄ぶのはやめてください」
「君も一緒になってやってるだろう」
「私は誠心誠意でつとめています」
「君にも・・・王子様の危うさがわかってきたんじゃないのか」
「彼には危ういところなんてありません。彼は本当に立派な人ですから」
「そこが危ういんじゃないか・・・清廉潔白な人間なんて・・・この世にいないんだから・・・」
「私は・・・彼を信じています」
「信じていたいんだろう・・・その甘さがあるうちは・・・君は私に勝てない」
「・・・」
「いかに・・・壁の向こうは退廃している・・・そこにあるのは腐った果実だと教条主義者どもが宣伝しようとも・・・人々は甘い香りに誘われて・・・やがて壁は崩壊する・・・それが歴史の必然だ・・・平等の肥溜よりも自由の風を人間は欲するのだ」
壁の向こうに戻った黛は羽生に忠告する。
「やりすぎはよくないんじゃないかな」
「みんなの幸せのためにはやむをえない・・・サウジアラビアのことわざも・・・ラクダはムチをいれなければあるかない・・・と言っている」
「人間はラクダじゃないわよ・・・」
「わかってるよ・・・あくまで・・・たとえ話さ・・・」
羽生の顔からは微笑みが消えかかっていた。
「珍しい虫がいたからって喜ぶのは昆虫学者と小学生男子くらいだ。むしろ、小学生男子は虫が嫌いな子が多数派だ・・・都会では」
「そんなことはありません。一度、虫の楽しさを覚えたら・・・もう病みつきになるのです。しかし、絶滅したらもはや図鑑でしか会えない。やがて図鑑からも姿を消す。膨大な時間を消費して構築された自然環境を失うのは一瞬です・・・一時の快楽に溺れて大切なものを壊してしまって後悔しても遅いのです」
「自然保護といえば聖なるお題目だ・・・逆らえば極悪人あつかいになってしまう。しかし、世界財産なんて余所者が勝手にこっちを値踏みしているだけだ。他人に値段をつけられて喜ぶ人間なんてただのアホだ。そんな押しつけられた価値観で人間はけして真の幸福をつかむことなどできない。他人の理想の犠牲になって・・・皆さんの自由が踏みにじられようとしているのです」
「ざに~ざに~」
「皆さんは自由です」
「自由ざに~」
「自然なんてくそくらえです」
「自然くそくらえざに~」
「世界財産なんてどぐざれもんです」
「それはちょっと使い方が違うざに」
「え・・・」
自由快楽陣営と環境全体陣営の戦いは五分と五分の冷戦状態に突入したのだった。
そして・・・決戦の日がやってきた。
「世界財産についての署名の集計を行います」
なんとなく・・・学級会を彷彿とさせるムードにウキウキする別府判事だった。
つまり・・・遠足とか・・・学級会とか・・・学校行事が好きなんだな。
賛成者 73
反対者 74
「僅か一票差ではありますが・・・世界財産登録抹消を希望する住民が多いようですね」
「待ってください」
「見苦しいぞ・・・黛くん・・・決着はついたのだ」
黛の顔に苦渋があふれる。
それは隠し玉を・・・羽生が脅迫という強引な手段で用意したことを目撃してしまったからだった。
しかし・・・これは戦争なのだと黛は自分を励ますのだった。
「もう一人いるのです」
「もう一人・・・って・・・誰かが変装してたりするんじゃないだろうな」
「鈴子さんのご子息の恒夫さんです」
「恒夫・・・」
羽生が恒夫を連行してくる。
「彼は・・・この集落を嫌って都会に出ましたが・・・心を入れ替えて・・・自然と共に生きることを決意したのです」
実は恒夫の借金を肩代わりすることで買収した羽生だった。
羽生は黒く染まったのだった。
「彼の住民票はこの集落にあります・・・そして彼は賛成に一票を投じるのです。
賛成者 74
反対者 74
ドローである。しかし、羽生の追及は続く。
「恒夫さんは・・・もう一度・・・麻里奈さんと一緒にやり直したいそうです・・・麻里奈さん・・・どうしますか・・・」
「恒夫・・・」
「麻里奈・・・」
麻里奈し恒夫とのおざおざの日々が忘れられなかったのだった。
賛成者 75
反対者 73
逆転である。
羽生の微笑みがドス黒い勝利の笑みに変わった瞬間・・・。
「ここに・・・奥蟹頭の不自由な生活に嫌気がさして集落を出た住民の署名があります。彼らは新時代の到来に賭けて住民票の転出届けを提出し・・・変更手続きは終了しています・・・全員で29名」
「え・・・」
賛成者 75
反対者 102
古美門の最終的な勝利が確定したのだった。
「圧勝ですな」
「どんな汚い手を使ったんだ」
「集落を開発し便利にするって言っただけだよ・・・みんな喜んで署名してくれたよ」
「・・・」
「というわけなので・・・別府裁判官、調停の成立ということですね」
「双方が合意しなければ調停成立はありません」
「え・・・」
「裁判所が多数決を認めたりはしませんよ」
「あんたが認めるって・・・」と古美門。
「それでは司法の否定になります」
「それ・・・私が最初に言いましたっ」と黛。
「申立人が納得できないのであれば・・・調停は不調ということで訴訟提起することができますよ」
要するに・・・別府裁判官は遠足とか学級投票がしたかっただけなのだった。
もちろん・・・その経過によって問題点の検証もできたわけだが・・・それは二の次なんだな。
「訴訟します」と羽生。
「お母さん・・・この状態が続けば・・・また息子さんはいつか集落を出ていくでしょう・・・しかし、村が開発され・・・便利になれば・・・そういう未来は回避されます」と古美門。
「騙されてはいけません」
「お前・・・そんなに便利な暮らしがしたいのか」
「うん・・・母ちゃん」
「わかった・・・提訴はしねえ」
「そうです・・・鈴子さん、恒夫さん、そして麻里奈さんが手に手をとって明るい未来を切り開いていく・・・それがこの村を発展させていくのです。世界財産なんてくそくらえだ」
「馬鹿げてる・・・こんな結末は絶対に間違えている・・・こんなのどぐされもんだ」
「その使い方は間違っているざに」
「羽生くん・・・君は根本的に間違っているんだ・・・崇高な理念など・・・欲望の前には無力なのだ・・・欲望こそが生命の起源・・・理念など飾りに過ぎない」
「愚かな・・・」
「そう・・・愚か・・・それが人間の本質だ・・・一時の快楽に溺れ、大切なものを失い、時には後悔するだろう・・・しかし、それでも今が大事なんだよ・・・今、満たされなければ嫌なんだよ・・・だからみんなそうするんだ・・・素晴らしいことじゃないか」
「・・・」
「申立人は提訴せず、本調停の結論をもって最終合意とすることでよろしいですね」
「はい」
「では双方が合意に達したので調停成立とします。奥蟹頭の住民はあなたたちですので・・・あなたたちの好きなように生きるべきです。世界がなんだろうと関係ないですから。蟹頭蕨もボンゴレビアンコも大変美味しかったです・・・以上」
戦いは終わった。
「では・・・別府裁判官、お元気で・・・田舎暮らしをご堪能ください」
「いいえ・・・異動の辞令がすでに下りてます」
「また・・・飛ばされるの」
「定例の異動です」
「たらいまわしにされて・・・それでもあなたはその職にしがみつくのですか」
「あなたが弁護士を続けるのと同じ理由でしょう。私はこの黒い法務服が世界の誰より似会うと自負していますから」
黛はそっと古美門に近付く。
「案外・・・彼女は名判事になるのでしょうか」
「なるわけないだろう・・・あいつは永遠の小学生たまに中学生だぞっ」
こうして・・・集落は・・・名誉を捨て実利を得たのだった。
どこかで・・・森が泣いているようだった・・・。
しかし、それは忘れ去られた無能弁護士の断末魔の叫びだった。
傷ついた羽生をあすなろ抱きで慰めるジェーン。
「落ち込む必要なんてないよ・・・」
「誰もが幸せになる世界を築くためには・・・指導者が必要なんだ。誰かが力強く導かねば人々は迷ってしまう」
「そうだね」
「ほとんどの人間はどうしようもなく愚かだから」
「その通りだね」
「だから・・・僕はもっと強くならなければならないのだ」
安藤貴和との面会の時間がやってきた。
「いよいよ・・・最高裁で公判が開かれます」
「安心したまえ・・・必ず死刑判決を破棄させ・・・無罪を勝ち取る」
「あななたちには事実を知っておいてもらった方がいいわね。・・・私、やったわよ。徳永光一郎を殺したし、娘も殺そうとした・・・私が犯人よ」
「最初からみんなそう思っている」
「でも吊るされるのは嫌・・・死刑なんて・・・非人道的だもの」
「君はまさに・・・どぐざれもんだな」
「使い方間違ってるわよ」
「ええっ・・・」
黛は二人の悪党たちを用心深く・・・観察するのだった。
黛の中で何かが生まれ出ようとしていた。
黛はどうやら大人の階段を昇ったようだ。
関連するキッドのブログ→第7話のレビュー
シナリオに沿ったレビューをお望みの方はこちらへ→くう様のリーガルハイ
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コメント
奥蟹頭…今度はどの横溝…?ということはなくて、『ゴーイングマイホーム』観ていたのでニヤニヤできててヨカッタわー(n'∀')η゚・
(2012年は『ゴーイングマイホーム』の年、2013年は『woman』の年でございました。ただし朝ドラは除く)
妙に気になる(無害なほうの)古館、いないことで存在感を示す古館! ますますのご活躍を(ニヤニヤ)。
「野菜ジュースと!…。…。おにぎり、いやガンダムサンドイッチ!」
投稿: 幻灯機 | 2013年11月29日 (金) 20時21分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
錦織光成(古舘寛治)・・・自宅がUMA研究会七生支部・杜那町民俗学研究所の自称クーナ研究家。
彼の存在で「北の国から」→「ゴーイングマイホーム」へのスライドが見事に完結しましたねえ。
ギャグとしてはこのまま、最終回まで消息不明の方が一同爆笑なのでございますけどね。
消息不明に気がつかないお茶の間も続出でしょうからねえ。
今回はアイドル研究家・ヒビキ一郎(村杉蝉之介)も登場したのですが
二人の区別がつかないお茶の間も続出しておりますことでしょう。
自称・研究家の二人の共演に
キッドは万歳三唱しておりました。
ジーク・ジオン
ジーク・ジオン
ジーク・しおりん!
投稿: キッド | 2013年11月30日 (土) 02時47分
前シリーズ 蟹頭村の金田一パロディと似た感じのお話なのかと思っていましたが 方言が聞き取りずらくって(^^; 内容も かなり考えさせられるものだったので見終わった後の爽快感はあまりなかったのですが 前シリーズを通じても一番深い話で 古沢さんらしさ全開だなとも感じました
世界財産の名誉のために自由な生活を手放すのにも抵抗があるし 燃料廃棄物処理場も受けいれがたい
いくら考えても答はなかなか見えませんが 独裁者に指図されるのだけは 断固 拒否します 笑
般若顔の羽生君
怖かった(>_<)
事務所のごり押し?だと思ってましたが若手で般若顔があそこまで似合う人はいない気もするので適役なんでしょうか
これから死刑制度 論議 その上 被告は犯人
重い展開が待っているような
その分 コメディー部分も過激になる気もしますが 三木先生にもそろそろ登場して貰ってホッとしたいです
小池栄子のあすなろ抱きみたいっ(^^)
今後の予想が私にはちょっと つかなくって 不安もありますがこのシリーズのほうが連ドラらしいのかもしれませんね
投稿: chiru | 2013年11月30日 (土) 17時05分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃ いませ・・・大ファン
今回は「北の国から」「ゴーイングマイホーム」「八つ墓村」のミックスでしたな。
純と蛍になった古美門と黛はものすごくかわいかったし
クーナ的な服部さんは微笑ましかったし
ハンバーガー山狩りは一同爆笑でございました。
内容的には第一シリーズの公害裁判に近かったでしょうかね。
勝ったのは百姓たちだ・・・的な結論からの
でも最後に笑うのは搾取するもんだぜ~。
基本的に「リーガルハイ」は
ブラック・ジョークですからねえ。
岡田将生はおそらく21世紀前半を代表する
二枚目としての逸材なので
べつにゴリ押し感はないと思いますが・・・。
小雪という岡田将生といい
苦手だと発言する人が多いのは
非常に不思議ですな~。
キッドはどちらかといえば
生瀬勝久とか小池栄子の方が
ちょっと鼻につくことが多いので
脇役陣の入れ替えは見事な感じがいたします。
最後は・・・検察との対決になるので
三木弁護士が帰還するのは
すべての決着がついた後・・・。
つまり、第3シリーズになると推測しています。
まあ・・・脇役がそれだけ愛されるというのも
「リーガルハイ」の魅力のひとつでございますよね。
とにかく最後は
「殺人犯と自白している人間」を「無罪」にするという
ギリギリアウトな展開。
しかし・・・第1シリーズも「悪」を「無罪」にする展開はさりげなくもりこまれていますからね。
そうであってこその「リーガルハイ」ですので
「実は無実だった」なんていうよくある結末に
ならないことを期待する悪魔でございますよ。
「人殺しを・・・無罪にしてしまうなんて」と
黛くんが涙目になってこそ・・・古美門が黒く輝くのでございますからねえ。
投稿: キッド | 2013年11月30日 (土) 18時55分
私は「ゴーイングマイホーム」を見ていなかったので、そちらはわからなくて残念なのですが、今回は磯貝弁護士にやられました。
濃いキャラばかりのこのドラマで、この人って薄いなあ~とずっと気にかかっていて、そのくせ今回ホントにあの瞬間までいなくなったことに気づかなくて…、素直に驚くことができました。
あそこまで自然に「存在感のない存在」でいられるなんて。そのことで強烈に存在を意識することになるとは。「リーガルハイ」ってやはり凄いと改めて思ってしまいました。
岡田君は私も苦手というか、失礼ながら…頭が切れそうなイメージがないことと(あくまで役柄としてです…)、羽生君はなんだかあの笑顔が馬鹿にされているような感じがして好きになれなかったのですが、今回本性を見せてくれて、なるほどと思いました。本来そういう人だったんですね。醸し出していたんですね~。スッキリしました。
自分のやろうとしていることが善だと信じて疑わない人は怖いですね。
広末さんの登場はこれで最後でしょうか。別府裁判官の大真面目な変人っぷりが可愛くて、おかしくて、大好きなので、第3シリーズでぜひ活躍してほしいです。
投稿: ギボウシ | 2013年12月 2日 (月) 22時47分
オチツキレイセイシズカナヒト~ギボウシ様、いらっしゃいませ~ワクイエミダイスキ!
「ゴーイングマイホーム」は
何も事件が起こらないのに
画面から目が離せないし
いつまでも見ていたくなるような
ゴージャスな名画のような一編でございますよ。
そして・・・森には
赤い帽子の小人の伝承があって・・・
クーナと呼ばれているのですな。
そのクーナを探し求めるクーナ研究家を演じているのが
磯貝弁護士役の古舘寛治なのですな。
このおちょくり加減が
まさに最高レベルでございました。
ガッキーがそらっとぼけて
「何か忘れているような・・・」とつぶやく度に
一同爆笑でございましたよ。
岡田将生は「オトメン」でコミックそのものの
二枚目を演じ・・・
「平清盛」では歴代で最も雅な感じの源頼朝を
演じております。
ドラマよりも映画で真価を発揮するくらい
抜群の二枚目俳優と言えますね。
まあ・・・美男美女をもてあますのが
基本テレビドラマの宿命なのでございます。
広末涼子は・・・若い盛りを過ぎて・・・
いろいろと迷うところも多いお年頃なのですが
「リーガルハイ」のこの役は
パーフェクトですな。
とにかく・・・どこかに異動したわけですから
最終裁判の裁判官として登場してもおかしくないのですが・・・。
さてさて・・・どうなりますでしょうかねえ。
とにかく・・・最後までじっくりと楽しみたいと考えます。とにかくここまでシリーズを通じて一回もハズレがないと言うのは・・・見事の一言ですからねえ。
投稿: キッド | 2013年12月 3日 (火) 00時00分