我が名は安堂ロイド、ゆえに我あり(木村拓哉)
連作短編集「刺青の男/レイ・ブラッドベリ」(1951年)の16編目は「マリオネット株式会社」である。
刺青の男は呪いによって・・・全身に物語を刻印された男である。
その物語の多くは宇宙を舞台とするが・・・「マリオネット株式会社」は平凡な夫たちの物語である。
彼らの一人は妻から逃れて「自分だけのバカンス」を希求する。そのために・・・闇市場に出回っている自分そっくりのマリオネット(操り人形)を購入する。
もちろん・・・「それ」は彼の妻が・・・彼でないと気がつかないほどの精巧なアンドロイドなのである。
彼はマリオネットの性能を疑い、何度か入れ替わりを試してみた。
しかし、妻はそれが身代わりのマリオネットであることにまったく気がつかない。
満足した彼は・・・いよいよ、バカンスを決行しようとする。
そして・・・地下室に隠しているマリオネットを呼び出す。
しかし、マリオネットはこう述べるのだ。
「あなたが自由であるように・・・私も自由だ・・・そして・・・あなたの妻を愛しているのはあなたより私だと思う。だから・・・あなたはもう・・・存在する必要が無い」
一人の男が消え、そして消えなかった。
そして、「彼」は妻と一緒にバカンスに旅立つのである。
半世紀以上前から、人間そっくりの彼らは・・・妄想の間に確かに存在しているのである。
人間の友達である「それ」よりも人間にとって「おそろしいもの」である彼らを一部の愛好家は愛するのだ。
なぜなら・・・その方がリアルだからである。
で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第6回』(TBSテレビ20131117PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・波多野貴文を見た。人間はどれだけ自分自身について知っているだろうか。人間はどれだけ世界について知っているだろうか。その問いは別々のようで実は同じ問いかけである。たとえば・・・自分の「脳」について考える時、世界が「脳」をどのように考えているかは重要な要素になるだろう。そうなると・・・世界のあらゆる「脳」についての知識が必要になってくる。そういう知識を得ることは可能だろうか。もちろん・・・そんなことは限りなく不可能に近いことなのである。それでも・・・不可能ではないと考えることはできる。しかし、その瞬間、ソクラテスは・・・無知を笑うのである。自分が知らないことを知ることは知の基本だからである。
人間の「心」を知らない人間が・・・「心」について考える。
このドラマの真髄はそこにあると思う。
登場人物たちは・・・時に愚か過ぎる振る舞いをするように見えるが・・・それをそのまま受け取ることはできない。
なぜなら・・・彼らはそれぞれに「誰か」とは違う人間だからである。
自分と違う人間がいて・・・それぞれに生きている。
今、その単純な「知」が失われつつあるのではないかと・・・最近、考えるのだった。
だからこそ・・・人間とそうではないものが・・・出会うこの物語は大切な物語なのである。
人間である安堂麻陽(柴咲コウ)とアンドロイドの安堂ロイド(木村拓哉)は人間そっくりのアンドロイド・サプリ(本田翼)を失う。
サプリは・・・麻陽とロイドを守るために消滅したのだった。
麻陽は・・・ロイドの傷心について考えるが・・・それは想像の域を出ない。
しかし・・・サプリがロイドのために命を捧げたことを理解し、それをロイドに告げることによって・・・麻陽はロイドにとって特別な存在となった。
その「変化」についての自覚は・・・麻陽にはまだ難しいようだった。
そのために・・・麻陽は・・・幼い子供であるロイドの心をさらに傷つけるのである。
だが・・・誰が・・・何気ない同情の一言が・・・アンドロイドに絶大なる愛を発生させることを常識として知っているというのだ。
だから・・・麻陽の無知ゆえの過ちを責めたりしてはいけない。
そして・・・娘が婚約者そっくりのアンドロイドと同棲中だとは夢にも思わないみゃあみゃあ五月蠅い母親の狂騒的な暴走も大目に見るしかないのだ。
彼女はただ・・・若き恋人との東京旅行のついでに・・・行き遅れかけている娘にちょっと構ってみたかっただけなのである。
「私・・・もう長くないみたいなんだわ・・・」
「母さん・・・」
「だから・・・結婚式は無理でも・・・おみゃあさんの花嫁姿を一目見たいのだぎゃあ」
「そんな・・・」
「だもんで・・・今日、上京するでええかしゃん」
結婚式場で娘と待ち合わせる安堂景子(名取裕子)だった。
「ロイド・・・黎士の身代わりをしてほしいの」
「俺は沫嶋黎士ではない」
「だけど・・・あなたを黎士として公表しろといったのはあなたよ」
「俺には嘘をつく機能はない」
「あなたは黙っていればいいわ」
「それは・・・本当に必要なことなのか」
「ええ・・・私にとっては・・・とても大切なことなのよ」
しかし、麻陽はもう少し考えるべきだっただろう。仲間のアンドロイドを失って動けなくなったロイド。サプリの応急処置で辛うじて機能している・・・未熟でひ弱なロイドのメンタル面を。だが・・・麻陽は全知全能の神ではないのだ。なにしろアンドロイドの心、人間知らずなのである。
そして・・・デリカシーのかけらもない名古屋の老舗味噌屋の女将はやわなロイドの心に猛攻を加えるのだった。
まったく・・・やつれた気配のない母を不審に思いながら・・・フィッティング・ルームでウエディング・ドレスを試着した麻陽はそれなりに華やかな気分になるのだった。
超現実的な日常に比べれば、花嫁衣装を着るのは極めて日常的なことだからである。
母親は浮かれて麻陽とロイドの記念写真撮影に参加する。
「黎士さん・・・本当にありがとう」
「・・・」
「黎士さん・・・麻陽のことをよろしくね」
「・・・」
「黎士さん・・・男前ねえ」
「・・・」
対人会話用に・・・社交機能を持たないロイドにとって・・・「ロイドである」のに「黎士」と呼ばれることはものすごく負担になるのだった。
「黎士ではなくロイドである」という発言を強制的にキャンセルし続けなければならないのである。
それに気がつかない麻陽までが・・・「黎士さん」と呼びかけたためにロイドの心は破綻寸前になるのである。
「安堂ロイドと名付けたのは安堂麻陽・・・君自身ではないか」という発言が爆発寸前なのだった。
そして・・・ロイドは同時に公共の場における麻陽警護のための警戒モードも実施中なのだった。
その情報処理には・・・いくつもの不審な標的が浮かび上がっているのだった。
記念写真撮影用の花壇のある中庭を眺める男・・・フレミング(岩井秀人・・・「大奥〜誕生[有功・家光篇]」の徳川家光)などは特に怪しいのだった。
しかし、三人に近付いてきたのは安堂景子の若いツバメである盛田守(高橋努)だった。
前回、葦母の相棒の冨野(日野陽仁)がアンドロイドだったので・・・すべての人間がアンドロイドかもしれない状態に突入している。
やがて・・・母親の病気が嘘であることが披露され・・・ロイドの混乱は頂点に達するのだった。
「とんだ茶番だ」と苦笑する機能はロイドには搭載されていないのだ。
「写真は撮った・・・もういいだろう」とロイドは逃走を開始するのだった。
「待って・・・黎士さん」
突然、不機嫌になったロイドを訝る安堂景子。
「どうしたんかね・・・」
「黎士さんは・・・嘘が嫌いなのよ」
「勘弁してちょうでえな」
ロイドを追いかける麻陽。
「黎士さん」
「俺は沫嶋黎士ではない」
「わかってるわよ・・・フリをしてもらっただけでしょ」
「写真は撮った」
「何を怒ってるの・・・?」
「怒る?・・・なんだそれは・・・」
「それが怒ってるっていうのよ・・・一体、どうしたの」
「わからない・・・一人になって・・・解析する必要がある」
「解析って・・・」
麻陽を残し、ロイドは亜空間通路へとウージングアウトした。
「黎士・・・ロイド」
麻陽は茫然と立ちつくした。
亜空間通路から廃工場の隠れ家へとウージングアウトしたロイドは自分を持て余すのだった。
麻陽のことを考えるだけでクラクラするのだった。
「俺はロイドなのに・・・」
ロイドの思考回路は告げている。
「サプリが俺に恋をしたように・・・俺も麻陽に恋をしているのか・・・麻陽が特別な存在であるように・・・麻陽にとって俺が特別な存在であることを願っているのか・・・麻陽は人間で・・・俺はアンドロイドなのに・・・」
ロイドに芽生えた感情の制御装置として機能しているサプリの感情機能サプリは・・・乙女チックに傾斜するのである。
「サプリ・・・お前も・・・こんなに苦しい気持ちを抱えて・・・生きていたのか・・・」
ロイドの情報処理回路に・・・サプリの在りし日の記録が短絡的にフラッシュバックするのだった。
憎まれ口機能を爆発させながら・・・常にバックアップとして控えていた支援機体。
しかし、彼女はもういないのだ。
その喪失感が・・・ロイドを襲っていた。
ロイドは「寂しさ」を覚えた。そして・・・それはたちまち「悲哀」と呼ぶべきものにグレードアップした。
「サプリ・・・」
ロイドは再び・・・機能不全に陥りつつあった。
ロイドは腰をおろし充電体制に移行しつつ、それでも監視任務を開始した。
麻陽はホテルでの激しい営みに突入するためにスキップしながら去っていく母親を見送った後で・・・自宅に戻っていた。
姿を見せないロイドをしばらく家探しした後で・・・沫嶋七瀬(大島優子)に電話をかける麻陽。
七瀬は黎士の助手たちを相手に論文の添削を行っていた。
自分の性的魅力に自身を持つ栗山薫(山本美月)だけは・・・七瀬のアドバイスを拒絶するのだった。
彼女にふさわしいのは七瀬ではなく黎士であると露骨に態度に現す栗山だった。
「私じゃ不服だってえの」
「いえ・・・どうせなら黎士さんの方がいいかなって思って」
「なんでよ・・・」
「黎士さんは天才だけど・・・七瀬さんは天才の妹に過ぎないじゃないですか」
「ふ・・・面白すぎて言葉を失うよ」
そこで麻陽からの着信を知った七瀬は助手たちを研究室から追い出すのだった。
「どうしたの・・・」
麻陽は今日の出来事をかいつまんで話すのだった。
「あはは」
「何がおかしいの・・・」
「お義姉さん・・・分りませんか」
「分らないわ・・・」
「あのアンドロイドは・・・嫉妬しているんですよ」
「嫉妬・・・?」
「そうです・・・それしか考えられない・・・お義姉さんの愛する沫嶋黎士と比べられて・・・お義姉さんにとって特別な存在である沫嶋黎士のフリをさせられて・・・頭にきちゃったんですよ」
「一体・・・なんで・・・」
「決まってるじゃないですか・・・お義姉さんのことを好きになっちゃったんですよ」
「そんな・・・だって」
「アンドロイドじゃない・・・ですか」
「・・・」
「でも・・・彼には・・・心があるんでしょ・・・」
「ええ・・・」
「だったら・・・誰かを好きになったっておかしくないし・・・自分の好きな人が別の人のことを愛していたら・・・拗ねちゃったりするでしょう」
「・・・」
「私・・・ちょっとやることがあるんで・・・また、連絡します」
「七瀬ちゃん・・・」
七瀬は突然、幼い日の自分自身と・・・対面するのだった。
「そうよねえ・・・それは・・・些細な嫉妬なのよね」
ウージンク゜アウトしてくるエーアールエックスナインスザラストクイーン(桐谷美玲)・・・。
しかし、その姿はエーアールエックスセカンドサーティーンこと安堂ロイドには探知できない。
性能差によって安堂ロイドは情報操作されてしまっているのである。
七瀬は謎の美少女を睨む。しかし、美少女は動じない。
「あなたもまた・・・偉大な兄・・・沫嶋黎士の光によって生じた影の中にいるんだものね」
「・・・」
「隠したって無駄よ・・・私はあなたの未来も過去もそして・・・現在の心の内も全部知っているんだから」
七瀬は屈服して・・・忌まわしい過去へと遡上するのだった。
黎士が驚異的な知能指数を示したように・・・七瀬(信太真妃・・・「それでも、生きていく」の深見亜季)もまた早熟な天才だった。
しかし、二人の父親(野間口徹)と母親(荻野友里)の関心は最初に生まれた天才である黎士に集中していた。
その第二子に対する無関心ぶりは・・・実際にはそれほど極端なものではなかったが・・・人並み外れた感受性を持つ七瀬の心には増幅されて届いた。
そして・・・七瀬の童心は愛情を希求するものの常として激しい憎悪を生み出したのだった。
幼い七瀬は両親を呪い、両親の存在を抹消しなければ自我が破綻する予感に苛まれていた。
七瀬の未熟な自我は・・・猿と人間ほどの知力差のある両親を憐憫するのではなく、侮蔑する方に舵を切った。
「猿のくせに・・・私だけを愛さないなんて・・・許せない」のだった。
いくつかの選択肢の中から・・・七瀬は列車事故を選んだ。
鉄道の制御システムに素晴らしいインターネットの世界から侵入し・・・あるはずの列車を消し、進んではならない軌道に両親の乗った列車を進行させることは・・・八歳の七瀬にとって児戯に等しいのだった。
やがて・・・両親を乗せた列車は高速で対向車両と激突したのだった。
前代未聞の運行ミスと指摘された歴史的大参事はこうして発生した。
テレビから流れる死亡者リストで両親の死を確認した七瀬は・・・子供らしい哀しみの涙を流した後で子供らしく自分の実力に満足して哄笑するのだった。
「パパ・・・ママ・・・死んだらダメだよ・・・えーん、えーん」
「やったね~、やるもんだね~、さすが私だね~あははははははははははは」
しかし・・・その瞬間に分裂した感情は・・・成熟した七瀬に・・・苦悩をもたらしているらしい。
それは・・・あらゆることがとりかえしがつかないという認識によるものだった。
しかし・・・真の天才である兄は・・・その認識を覆したのである。
「ああああああああああああああああ」と叫ばずにはいられない七瀬だった。
全知全能の美少女アンドロイドは無表情にその姿を眺めるのだった。
「さあ・・・がんばって・・・閉ざされたタイムケーブル(時間軸)を開いてみなさいよ・・・そして・・・沫嶋黎士に・・・リベンジしなさい」
「・・・」
七瀬は神の声を聞いた。
「親殺し・・・兄殺し・・・あなたは一人で何をするのか」
「私の・・・なすべきことを・・・私の理想に従って」
ここで・・・クイーンは沫嶋黎士の死に七瀬が関与していることを仄めかし、七瀬はそれを否定しないという驚愕の事実が展開する。
少なくとも、この時点で・・・七瀬はポリスクラウドへと続く未来のサイドに立っているかのようである。
麻陽に対する盲目的な愛をもてあましながら世界を同時に監視することはロイドにとっては簡単明瞭だった。
ロイドを捜す麻陽。ついにはピンチの真似をする麻陽。落胆して入浴する麻陽。
それぞれの家路に着く沫嶋黎士の助手たち。
簡単な食事を作る麻陽。
麻陽の直属の部下でシステムエンジニアの星(桐谷健太)は・・・葦母刑事(遠藤憲一)の説得に成功し、トミヤロイドの遺した拳銃のようなものと未来警察についての資料を入手する。
そこには・・・「ARX II-13(エーアールエックスセカンドサーティーン)」についての資料も含まれていた。
ロイドは星の殺害の必要性を感じる。
しかし、同時に麻陽の言葉の記憶が殺意を抑制するのだった。
『だめよ・・・星くんを殺してはダメ』
ロイドは再び、回路に過負荷がかかるのを我慢した。
星と別れた葦母は遊戯施設「宇宙センター」の階上にある喫茶店に向かう。
ロイドは葦母の殺害の必要性を感じる。
『だめよ・・・葦母刑事は・・・左京子の父親なんだから・・・』
命令と命令の間でロイドは彷徨うのだった。
クライアントの命令は絶対であり・・・麻陽の命令も絶対だった。
麻陽は炊きたてのご飯を茶碗によそっていた。
星は大手外資系IT企業「エニグマエンジンソフト社」に休日出勤する。
助手たちは帰宅した。
七瀬は研究室で叫びながら作業を続けている。
喫茶店では葦母刑事が娘の小松左京子(山口紗弥加)と遅いランチをとっていた。
「知ってるか・・・この店のオムライスは東京で一番おいしいって評判なんだ。オムライスの嫌いな俺がなんとか食べられるのがその証拠だ」
「知ってるわよ・・・二十年前にもこの店でアンタから同じ話を聞いたから」
「そうか・・・あれから二十年か・・・」
「数少ない家族サービスの記憶をひけらかして・・・父親面しないでくれる」
「いいわけはしない・・・だからといって俺が高倉健さんみたいに不器用だからとか主張するわけじゃないぞ。俺の仕事は・・・お前の母親や、お前や・・・いつか生まれてくるかもしれないお前の子供・・・みんなを守ることなんだ。そのためにやることが多過ぎるんだよ」
「要領の悪さを自慢しないでよ」
「俺は要領がいい方だと思う」
「どうしようもないバカね」
「さあ・・・俺はもういかなくちゃ・・・俺は先に出るけど金は置いて行くから・・・クリームソーダでも頼めばいい・・・」
「・・・バカ親父・・・私はもう三十路なんだよ・・・だけど・・・クリームソーダは注文するよ」
ロイドは店に残ってクリームソーダを待つ左京子を監視しながら、葦母の行動を追尾する。
麻陽はごはんに温めた味噌汁をぶっかけていた。
助手たちはコンビニの袋を広げている。
安堂恵子は昼間から男に馬乗りになって派手に獣のような叫び声をあげている。
家族か・・・とロイドは考える。
ロイドは麻陽と家族なのか。
違う・・・ロイドは・・・ただの沫嶋黎士の身代わりにすぎない。
ロイドのシステムはさらに機能が低下する。
七瀬はCPUの前でカップ麺を食べていた。
麻陽は「ロイド~」と何度か叫んだ後で身支度をしてエニグマ社に向かっている。
敵の気配は途絶えていた。
『今のうちにたっぷりと充電しておきなさいよ』
ロイドは自分の中でサプリが囁いたような気がした。
「サプリ・・・」
存在しないものの名前を呼ぶ自分自身の不合理さがロイドをたじろがせる。
ロイドの機能はさらに低下していく。
自己修復機能はそれでも擬似皮膚の修復を完了した。
ロイドはオートマティックに感謝した。
安堂麻陽はエニグマ社広報室に到着した。
「・・・珍しいですね」
「ちょっと、時間があいたので・・・明日の準備をしておこうと思って」
「麻陽さん・・・まだあの男と一緒に暮らしているんですか」
「そうだけど・・・それが何か・・・」
「信じられない・・・あの男は黎士さんじゃないんですよ・・・あいつはアンドロイドなんだ・・・」
「・・・」
「驚かないんですね・・・知っていたんですか」
「それ以上・・・その件について話す気なら・・・私は部屋を出ます。その件には関わらないでと頼んだはずですよ」
「しかし・・・言わなければ僕の気がすまないのです・・・僕以外の誰かがあなたと一緒にいるなんて・・・耐えられない」
「あなた・・・私のことが好きなの」
「もちろんです・・・あなたのことを愛しています。あなたのためなら命だって捨てられる」
「だからって・・・私があなたを好きになるとは限らないわよ」
「そんな・・・」
「まさか・・・自分が好きになった女性はみんな・・・自分を好きになって当然だとでも・・・中学生じゃあるまいし・・・」
「僕はただ・・・麻陽さんが心配なだけです」
「それが余計なお世話だと言っているの」
「あいつは・・・あなたに近付いて・・・黎士さんの研究成果を狙っているのかもしれない」
「そんなことはない」
「だって、おかしいじゃないですか・・・黎士さんは死んでいるのに・・・麻陽さんにつきまとうなんて」
「私には守る価値がないから・・・」
「いえ・・・」
「それにつきまとっているのは彼じゃなくて・・・あなたよ。一歩間違えたらストーカーよ」
「僕より・・・アンドロイドを信用するのですか」
「私は彼を信じている」
「そんな・・・どうして」
「あなたが私を好きになった理由は何なのよ」
「それは・・・」
「理由がなくたって人は人を好きになる。そして、私は信じたい人を信じるの」
「滅茶苦茶だ・・・第一、相手は命令された通りに動くマリオネットですよ・・・麻陽さんを殺せと命じられたら殺すかもしれない」
「彼は・・・そんなことはしない・・・だっていい人だもの」
「人って・・・一体何なんですか・・・黎士さんの顔をしていたらなんでもありなんですか」
麻陽は星の発言に激怒したが・・・黙って退出した。
星は自分の失言を後悔したが・・・同時に世界を憎悪する。
「くそ・・・くそアンドロイド・・・」
星はトミヤの遺品から・・・ARX II-13のファイルを取り出した。
「汎用戦闘ロイド。エーアールエックスセカンドサーティーン・・・2066年に暴走し、10億人を殺害・・・問題点を解析中に消失・・・麻陽さん・・・それは恐ろしい虐殺器官なんだ・・・なんで・・・僕を愛してくれないのです」
家路に着くまでに麻陽は考える。
(そうね・・・星くんが中学生なら・・・ロイドは小学生なのかもしれない・・・もう少し・・・言葉をを選んで接しないと・・・ねえ・・・でも難しいわ・・・だって彼は黎士にそっくりなんだもの・・・黎士、あなたはどう思う・・・ああ・・・黎士・・・逢いたいわ)
ロイドは麻陽の姿をじっと見つめる。
低下した機能が少しだけ回復する。
【周辺にいくつかの・・・不審点あり】
【偽装工作の疑いあり】
【安堂麻陽に対する危険度上昇中】
【ダミーシステムを破壊】
【陽動作戦の可能性を検討】
【周辺の人物をローラー監視】
【出動待機モードに移行】
【センサーの感度を点検】
帰宅した安堂麻陽はもう一度、室内を捜し回る。
「ロイド~」
リヴィングから寝室へ。
「ロイド~」
バスルームから収納部屋までくまなく探した後で麻陽はため息をつく。
「まったく・・・どこほっつきあるいてんだ・・・あの野郎」
あまちゃんのように毒づく麻陽だった。
その時、室外にはフレミングがウージングアウトしていた。
「安堂麻陽を発見・・・殺害処理に着手する・・・おっと・・・センサーが・・・」
フレミングはロイドがウージングアウトしてきたことを察知した。
フレミングは退却を決断して亜空間通路へとウージングアウトしかけたが・・・ロイドにキャッチされてバトル・フィールドとなる廃墟に誘いこまれるのだった。
「安堂麻陽の殺害は禁じられている」
「こちらはそれが任務だ」
拳銃のようなものを連射するフレミングの懐に飛び込んだロイドは得意の接近戦に入る。
フレミングは情報処理のスピードで対応するが警察アンドロイドと軍用アンドロイドでは根本的な戦闘力が違うのだった。
たちまち、戦闘不能状態になるフレミング。
「待て・・・殺さないでくれ」
「暗殺ロイドに対する破壊行動は許可されている」
「やめてくれ・・・俺だって好きこのんでやってるわけじゃない・・・俺には2013年に家族がいるんだ・・・ほら・・・写真だってある・・・俺は無事に2113年に帰りたいんだよ・・・」
「家族・・・」
「俺だって・・・平和を守るために警察ロイドになったんだ・・・しかし、ポリスクラウドはこんな汚れ仕事を俺に命じた・・・人間のために・・・俺たちアンドロイドが殺し合うなんて・・・おかしいじゃないか・・・」
「・・・」
ロイドに躊躇が生じた。
「二度と・・・安堂麻陽に手を出さないと約束しろ」
「約束するよ・・・アンドロイドは嘘をつかない」
「よし」
「ありがとう・・・」
フレミングは逃亡した。
「家族・・・か」
<警告する・・・命令違反中である・・・アンドロイドは破壊しなければならない>
「・・・」
<命令違反を続行するなら・・・処分される可能性がある>
「・・・」
<命令を実行せよ>
「・・・命令を実行する」
ロイドの目にサプリの遺した角城骨格を移植したテディベアが映る。
それはロイドにサプリを連想させた。
「サプリ・・・俺は苦しいよ・・・お前も・・・きっと・・・こんな風に苦しんでいたのだろう・・・なあ・・・サプリ・・・この苦しみに終りはあるのかい?」
しかし、サプリは答えなかった。
ロイドは虚しく・・・不気味な熊のぬいぐるみを抱きしめた。
再び・・・ロイドの機能は低下し・・・フレミングの銃撃により生じた銃創から擬似血液が滲みだす。
ロイドの監視機能さえもが著しく低下し始めた。
脱出したフレミングはポリスクラウドの21世紀東京分室に残存機体であるケプラ(伊達暁)とメンデル(谷田歩)を召集する。
ポリスクラウドはかなり21世紀に浸食しているが・・・それが黎士の時間理論によるものかは現段階では不明である。
しかし、未来との回線に不都合が生じているのは・・・歴史改変による時間流の乱れではなく沫嶋黎士が次元物理的通信回線を人為的に閉ざしたためであることがタイムクラウド上司によって語られる。
「ポリスクラウド本部へ。2013年に派遣された11機の機体のうち8機までが損失された。増員を要請する。こちらフレミング」
<フレミングへ。現在、21世紀への増員は困難な状態にある。配置された要員によって任務を遂行せよ>
「ARX II-13は支援システムのサプリを喪失している。増員があれば任務遂行の成功度は高まる」
<増員は困難である>
「当該任務には不確定要素が多過ぎる・・・213年の沫嶋黎士の脳データの管理は万全か」
<沫嶋黎士の脳データは当局の厳重な管理下にある>
「再検討を要請する」
<沫嶋黎士が時間軸を遮蔽した後で・・・何者かがARX II-13、サプリ、そして未確認機体を21世紀に転送した可能性は高い>
「別のタイムケーブルが設定されているとしたら・・・そんなことができるのは沫嶋黎士しかいないではないか」
<データを解析中>
ここで・・・213年に沫嶋黎士の脳データが存在することが明らかになる。
人工知能の研究はコンピュータや機械の模倣装置あるいは模倣ソフトウェアによって人格をエミュレートする方向でも進められている。
それは人間の「人格」のデータ化の可能性を示している。
ただし・・・完全なる模倣のためには・・・人間の脳内の全情報を把握する必要がある。そのための解析テクノロジーが果たして電子レベルで充分なのかどうかは不明である。さらに微小な未知の粒子が関与していれば・・・「擬似人格」は「脳データのようなもの」にすぎなくなる。
しかし、このドラマでは人類はデータ化され、何者かによって管理されている存在であるらしい。
なお、沫嶋黎士の「脳データ」がどの時点のものであるかは不明である。
2013年で殺害された沫嶋黎士から回収されたものなのか、それともなんらかの形で生存していた沫嶋黎士の生きている脳データという可能性もある。
生前の沫嶋黎士が・・・未来の沫嶋黎士となんらかのコンタクトをとった可能性は高い。
ロイドによる「沫嶋黎士の伝言」にあるように・・・未来の黎士が・・・過去の黎士になんらかの「危機についての警告」を与えた可能性は否定できない。
そこで・・・ついに・・・ロイドはクライアントである「クラウドゼロ」とのコンタクトを敵側に察知されてしまうのである。
ロイドもまた・・・未来への支援要請をしたのだった。
「ゼロクラウドへ。支援機の再派遣を要請する。こちらロイド」
<ロイドへ。支援機は現在、準備中・・・予備パーツを先行して転送する。こちらゼロクラウド>
ロイドが交信した相手は・・・213年の沫嶋黎士の脳データだったらしい。
「ポリスクラウド本部へ。ARX II-13の通信を傍受。発信源を特定した。こちらフレミング」
<現在、確認中>
「より万全を期するために・・・沫嶋黎士の脳データの破壊を要請する」
<要請を承認する・・・現時点を持って沫嶋黎士の脳データは機能を強制終了によって喪失した>
「これより、安堂麻陽、暗殺に着手する」
時空を越えて・・・安堂麻陽は胸騒ぎを感じる。
何か大切なものが失われた予感が胸をしめつける。
「黎士さん・・・ロイド・・・」
不安にかられて麻陽は夜の街へ繰り出すのだった。
当てもなく・・・黎士あるいはロイドの姿を求めて・・・。
やがて・・・麻陽は思い出の東京タワーの見える公園にたどり着く。
麻陽の危機を探知したロイドは転送された予備パーツを収納すると立ち上がる。
そこへ・・・葦母刑事が現れた。
監視モードの間隙を突かれたらしい。
それはありえないほどの確率だったが・・・刑事の勘は不可能を可能にするものなのである。
「よお・・・沫嶋黎士のそっくりさん・・・お前は何者なのだ」
「事態は急速に推移している」
「おいおい・・・無視するなよ・・・お前の正体を教えてくれよ」
「時間的に余裕がない」
「じゃ・・・お前を撃ってみよう・・・そうすりゃ・・・少なくとも人間じゃないことがはっきりするだろう」
「もしも・・・俺が人間だったら・・・あんたは殺人をすることになる」
「そんなの・・・構っていられない・・・それに俺はもう・・・人を殺してるんだ」
ロイドは葦母刑事を誘うように動き、あえて銃弾を受けて倒れるのだった。
「・・・なんだよ・・・なぜ・・・抵抗しない・・・死んだフリなんかしても無駄だぞ・・・」
ロイドは予備パーツによる自己修復を開始していた。
しかし、サプリ抜きの作業は充分な回復を許さないのだった。
「俺は・・・破壊されることが前提の消耗品だ・・・」
「なんだって」
「あんたには家族がいる。あんたが死ねば家族が哀しむ」
「何言ってんだ・・・お前」
「俺が死んでも・・・哀しむ家族は・・・いない」
ロイドの電子頭脳に去来するサプリと麻陽の面影・・・。
「・・・おい、ちょっと待て」
不安定なまま立ち上がったロイドはアスラシステムを起動するのだった。
突然、目の前からいなくなったロイドに・・・葦母刑事は為す術もなく立ちすくむ。
麻陽の前にフレミングが出現した。
「あなたを殺処分します」
「なんで・・・私が死ななきゃならないのよ」
「あなたが死なないと正しい未来が到来しないのです」
「誰かを殺して得る未来なんて・・・ろくなもんじゃないわ」
「すべては決定しているのです」
「この人殺し・・・」
麻陽は駆けだした。
フレミングは銃撃するが・・・麻陽が転倒したたために弾丸はそれる。
「驚くような幸運の持ち主ですね・・・しかし・・・幸運とはいつまでも続かないものです」
麻陽は立ち上がろうとして前方に新たな敵が出現しているのに気がつく。
(ロイド・・・私・・・殺されちゃうよ)
フレミング、ケプラ、そしてメンデルは拳銃のようなものを発砲する。
しかし、ウージングアウトしたロイドは周囲の大気をバリアで包み、麻陽ごと高速移動させるのだった。
「ロイド」
「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」
「無駄です・・・損傷した機体で我々、優秀な三体の機体を破壊することはほぼ100パーセントありえない」
「お前は・・・安堂麻陽に手出ししないと誓ったはずだ」
「そんな約束・・・いつしましたか・・・何年何月何日何時何分何秒?」
「家族がいるというのも嘘だったのか」
「こりゃ・・・傑作だ・・・あんなもの設定に決まってるじゃないですか・・・旧式とは聞いていたけれど・・・これほどまでとは・・・私はてっきり、私を泳がせて、根拠地を急襲してくるつもりなのかと推定していましたよ」
「原子還元処理を申請する」
<申請中・・・反応なし>
「あはは・・・無駄だ・・・沫嶋黎士の脳データは破壊した・・・君は孤立無援だよ・・・」
「そうか・・・ならば・・・俺は俺に自分で命じよう」
「なんだって・・・」
「安堂麻陽は死んではならない・・・これは俺の意志だ」
「意志だと・・・」
「死すべきは・・・お前たちだ」
「そんな・・・」
ロイドは怒りに燃えて原子還元処理の実行に移った。
それはいつもの優しいブルーではなく・・・赤い炎となってフレミングを包み込む。
「あつい・・・いやだ・・・私が燃えている・・・あつい・・・くるしい・・・死にたくない・・・お助け・・・左手の法則」
フレミングは生きながら火炙りの刑に処せられた。
ケプラとメンデルは運命を受容した。彼らもまた迷える警官アンドロイドなのだった。
「抵抗はしない・・・少し歪んでいるだけだ」
「痛くないようにしてくれ・・・背は高かったり低かったりするものだからね」
「両者の要請をコピー【復唱的了承】した」
ケプラとメンデルは瞬時原子還元処理された。
「可能な限りの最高速なので痛みを感じなかっただろう・・・」
しかし・・・ケプラとメンデルはすでに存在していない。
夜の闇の中で白いセーラー服の少女は呟いた。
「人間の数万倍も優れた情報処理システムが意志を持った時・・・それが下した判断の過ちを・・・誰がとがめることができますか・・・だよねえ・・・さすがポンコツ兄貴・・・任務完了ってか・・・」
しかし・・・無理に無理を重ねたロイドは限界に達していた。
【アスラシステムにより機体か損傷・・・アスラシステムを緊急停止】
【ユカワオペレーションシステムに移行・・・移行失敗】
【再試行に失敗】
【すべての機能停止まで1秒】
【初期化を実行】
ロイドは崩れ落ちた。
「ロイド・・・」
安堂麻陽は慄いた。
暗殺ロイドのすべてを破壊したエーアールエックスセカンドサーティーンは任務を完了した。
これによって・・・歴史は変更されたのだろうか。
そして・・・安堂麻陽は・・・黎士もロイドも失ってしまうのか。
もちろん・・・そんなことはありえない・・・と思う。
そして・・・すべての鍵は・・・黎士とロイドの二人の妹たちが握っているに違いない。
まあ・・・その鍵かパンドラの箱を開ける鍵にすぎないにしても。
はたして・・・安堂麻陽が生み出すクラウドは・・・ポリスクラウドなのか・・・それともゼロクラウドなのか。
そして・・・沫嶋黎士は今、どこにいるのか。
盛り上がってまいりました・・・。
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ごっこガーデン。時の彼方に続く夜景のきれいな記念撮影セット。アンナ「いやあああん、ロイドがロイドが死んじゃう・・・初期化されてみんな忘れちゃうの・・・でも電話してプロの人が来ると壊れたデータも復元できるって誰か言ってたぴょ~ん。それはそれとして・・・ウェディングドレスで記念撮影、朝から100ポーズ達成ですぴょ~ん。明日の朝まで徹夜でもう100ホーズ決めますぴょん。お着替え中にリピもしまくるのでじいやオムレツのサンドイッチ作ってね~」まこ「えへへ・・・アンナちゃんが花嫁衣装に夢中で・・・アンナロイドがメンテンス中の隙をついてサプリのコスプレ・ゲットだぜっ。このスタイルで裏山から採取した松茸をきこりさん印のねこラーメンにぶちこんでゴージャスまつたけラーメンをじゅるじゅるるするのでしゅ~」シャブリ「信太真妃ちゃん・・・ちびまる子ちゃんからココ・・・信太→大島のなりきり度素晴らしすぎ~・・・さすがなのでありました~」mana「頼まれたら嫌とはいえないロイド・・・可愛い・・・だから10億人殺してもしょうがないよね・・・(≧∇≦)ノ彡バンバン!それにしても・・・七瀬が黎士を嫉妬してたなんて・・・なんだかわざとらしい演技はすべて・・・わざとだったの?・・・そしてそれを完璧にコピーするチビ七瀬・・・満足度高まってまうで~・・・ああ・・・黎士も消え・・・ロイドも壊れた世界で・・・物語はどうなってしまうの~?来週もみましょう」くう「SPからテロリスト続々参戦・・・七瀬のパパまでが~と思ったらテロリスト(娘)に殺される人だった・・・」ikasama4「年賀状進まず~・・・」みのむし「いつの間にか朝ドラマをはしごする時代・・・るるる」mari「黎士が閉じてしまったタイムケーブル・・・2113年の警察組織は時間旅行のテクノロジーを持っているのか・・・いないのか・・・未来の黎士のデータと2013年の黎士の関係は?・・・謎が深まってきましたね」
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コメント
盛り上がってまいりましたね・・・ってゆーか、キッドさんの書く「ドラマ」がすごすぎます。ロイドの心の描写なんて本編を超えるすばらしさです。
一方、謎解きについてはやはり「ふたりの妹」が気になりますよね。ポリスクラウドとゼロクラウド(ゼロは沫嶋黎士の零からきているのかな)の戦いとみれば、ふたりの妹はどちらの味方につくんだろう。すでに、沫嶋黎士≒ロイド、七瀬は兄沫嶋黎士と敵対、そしてラストクイーンがキャスティングヴォートを握っているような戦力マップが・・・。
ところで、序盤でラストクイーンが七瀬のことを「おばさん」と呼ぶシーンがありましたね。ひょっとしてあれは「叔母さん」と掛けていたのではないかとも妄想。彼女が沫嶋黎士と安堂麻陽の娘(の脳データが移植されてるとか)なら、七瀬は叔母さんになります。
あと、第6話で少し見えてきた酷い未来とは、アンドロイドが支配する世界ではなく、人間がアンドロイドを差別し奴隷のように酷使する未来だったようで。それは2066年のARX II 13の反乱に対する反動の結果なのかもしれない。その未来を維持しようとするのはやはり支配側である人間ということになりましょう。それを変えようとする沫嶋黎士は、人間でありながらアンドロイドの味方?2066年の反乱者を送り込んだ意味もそこにあるのかなあ。
投稿: アンリ | 2013年11月19日 (火) 05時44分
他人のふんどしで相撲をとっているので
おほめにあずかり・・・恐縮でございます。
しかし・・・アンドロイドの心を妄想するのは
滅多にない機会なので楽しまさせていただいております。
しかし、基本的には本編の力が大なのでございますよ。
二人の妹とクラウドの関係は・・・
謎の中核でございますよね。
「ターミネーター」で言えばスカイネットであろうクラウド。
そして・・・ポジション的にはポリスクラウドがスカイネットですよね。
ポリスには警察以外にも都市とか政治のニュアンスもありますから・・・全体主義社会のインターネットが連想されますし。
現時点だと・・・
安堂麻陽のクラウドがニュートラルな状態で
沫嶋七瀬が・・・それをポリスクラウド化する・・・可能性が高そうですねえ。
もう一つの展開としては・・・
2113年の未来はタイム・ケーブル・テクノロジーのない
ポリスクラウドの世界で・・・
そちらでは沫嶋黎士は時間理論を完成できずに
脳データ化されていたというのがありますね。
で・・・こっちの黎士はあっちの黎士にコンタクトして
「自由のない暗い未来」からの解放にチャレンジしている可能性は残されていますな。
正体不明機がクイーンなら・・・
クイーンはゼロクラウド側・・・。
ラプラスから麻陽を守っているし角城も倒しているし
ただし・・・超高性能なのでゼロクラウドを
裏切っている可能性もあるし・・・まったく読めません。
なるほど・・・安堂麻陽の娘の脳データ移植型ですか。
もしロイドが・・・黎士の脳データ移植型なら
ロイドとクイーンは姉妹ではなく父娘になりますな。
現在、七瀬はおしゃまな姪にたきつけられてるわけですな。
なかなかに微笑ましいですね。
空想科学小説の白眉と言える「百億の昼と千億の夜/光瀬龍」(1966年)では・・・完全データ化された未来世界が登場します。
萩尾望都がコミック化していますが・・・
黎士の脳データはカード化された「彼ら」を想起させます。
脳データは科学者たちの特殊な状況ではなく・・・
人類全体に及んでいるのかもしれません。
つまり・・・肉体を持っているのはアンドロイドだけで
人類は皆・・・脳データ化されてしまっている。
まあ・・・「素晴らしい/恐ろしい」が激しく交錯するディストピアには違いないのでございます。
それは・・・「なんらかの戦争」と「アンドロイドの反乱」の果てに・・・人類の生存不可能な地球となり・・・全員が平等にカード化された未来となってこれまでの説明と符号しますな。
とにかく・・・人間はアンドロイドに近付き、アンドロイドは人間に近付くということで・・・両者の摩擦は必至なのでしょう。
だが・・・脳データ(仮想人格)となった人間は・・・果たして人間と呼べるのか・・・でございますよねえ。
ロイドが伝えた伝言には「寿命が永遠の支配者を許さない」とありましたから・・・データ化され・・・死から解放された人間に・・・死を与えることこそ・・・ロイドの任務なのかもしれません。
その「死」とは・・・正しい脳データ化未来の到来を阻止することに他ならないとキッドは妄想します。
まあ・・・こまめにバックアップしないと
脳データだっていつシャットダウンするかわかったもんじゃありませんが。
とにかく・・・麻陽は未来の脳データの削除を感じ取るという・・・ものすごいスペックの持ち主のようなので
まだまだ予断はできませんなあ。
当然・・・そこには心霊的な世界が介入してくる可能性もございますから~。
とにかく・・・サプリの代替機体が・・・登場するのか
どんな顔しているのか・・・。
そこが気になるキッドなのでございました。
投稿: キッド | 2013年11月19日 (火) 15時38分