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2013年12月31日 (火)

2013年はあまちゃんと共に去りぬ(能年玲奈)

昨夜(12/29)の音楽界から始って・・・雑事をこなしながらの・・・「暦の上ではデイセンバー・・・これで見おさめ!?じぇじぇじぇ!あまちゃん祭り」10時間である。

頭の中が・・・あの懐かしい4~9月でいっぱいになり・・・あぶなく漂流しそうになった。

最終回が土曜日で・・・井ノ原快彦と有働由美子の「あさイチ」コンビが受けのコメントをできなかったということから・・・最後に二人の受けトークのおまけつきである。そういう粋な感じが・・・まさに愛なんだな。

そして・・・変顔の能年玲奈が・・・「潮騒のメモリー」を前フリして・・・全員で・・・熱唱なのだ。

明日(12/31)の紅白歌合戦が物凄く楽しみなわけである。

紅白歌合戦が楽しみなんて・・・何十年ぶりのことだろうかっ。

2013年は・・・SFドラマの金字塔「安堂ロイド」やスーパー・ファンタジーの「泣くな、はらちゃん」、戸田恵梨香の「書店員ミチルの身の上話」、航空自衛隊万歳の「空飛ぶ広報室」、なにはなくても「みんな!エスパーだよ!」、不朽の名作「Woman」など忘れがたい作品も多かったのだが・・・。

あまちゃん」だ・・・21世紀中にこれを越えるドラマはないだろう。

で、『即興が世界をつなぐ・大友良英と〝音遊びの会〟の仲間たち』(NHK Eテレ20131230PM8~)を見た。ハートネットTVの「まだ見ぬ音を求めて」と「同じ地平に立つということ」のまとめ放送である。番組そのものは・・・2014年1月7日(火)1月14日(火)にアンコール再放送される。即興音楽や、現代音楽、前衛音楽などに興味があればそれだけで楽しい番組である。知的障害児を愛する人は必見の番組と言える。

「音遊びの会」は、8年前、神戸大学で音楽療法を研究する大学院生が立ち上げた一種の文化的サークルである。単純に考えれば知的障害者の可能性を探る実験だが・・・ひとつの芸術活動であるとも言える。

まあ・・・なにがなんだかわからないものと考えてもいい。

即興音楽のプロフェッショナルたちと・・・知的障害者のセッションがメインである。

彼らは国内、国外でツアーを行い・・・演奏を重ねていく。

そこでくりひろげられる「なにがなんだかわからない音楽」が素晴らしいのだ。

シンプルに言えばプリミティブということである。

なにしろ・・・知的障害者の奏でるリズムとメロディーはどこまでも自由だ。

しかし・・・その自由さは・・・人としての不自由さの境界線を彷徨うのである。

「学校では・・・国語と音楽と体育は別々の教科です。しかし・・・言葉や演奏そしてダンスは・・・本来・・・共にあったものだと思う・・・その根源的な場所にこそ・・・無限の可能性がある」・・・要約であるが・・・即興音楽家としての大友良英はそのように・・・音遊びの会のパフォーマンスを賞賛するのだった。

キッドは「あまちゃん」の魅力の一つが音楽であることは間違いないと思うが・・・その根底にはこの音楽観が少なからず存在していると考える。

幼稚で・・・素朴で・・・原始的な・・・感覚への回帰・・・。

所詮・・・不自由な人間の知性が・・・方向性を喪失した時・・・生まれた場所へ・・・原点へ・・・遥かなる故郷へ・・・戻って行くのは自然の理なのだ。

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2013年12月30日 (月)

本木雅弘の娘(内田伽羅)VS平愛梨の妹(平祐奈)の奇跡(橋本環奈)

年末ということで・・・オンエア邦画のレビューがしたいのである。

できれば・・・「ゴジラ」とか「ガメラ」がいいわけだが・・・全然やってくれないのだな。

仕方なく・・・「桐島、部活やめるってよ」とかを見たりするわけである。

金曜日、金曜日、金曜日とループしておいて土曜日に来るところの一瞬の間がちょっと笑えるわけである。

悪役を務める「あまちゃん」のGMT5リーダーこと松岡茉優が演じる沙奈に・・・ユイちゃんこと橋本愛が演じるかすみが平手うちをするところが最大の見せ場なわけだが・・・本当にそこかっ。

主人公が神木隆之介ということがなかなかにわかりにくい映画である。

しかし・・・主人公の前田(神木)が・・・ゾンビとしてかすみ(橋本)を食べたいと思っているという描写はなかなか淫靡でよかった。

もちろん・・・好きな男子の宏樹(東出昌大)が沙奈(松岡)と貪るような接吻・・・キスするところを見せつけられた吹奏楽部の亜矢(大後寿々花)のうろたえぶりも流石なのであった。

そして・・・橋本愛よりも美少女という設定の山本美月もそれなりに頑張っていたと思う。

進学とか部活とか恋愛とかの裏側にある青春の一頁なんだな。

で、『奇跡(2011年劇場公開作品)』(TOKYO MX20131229PM7~)脚本・監督・是枝裕和を見た。つまり・・・「桐島、部活やめるってよ」における・・・山本美月と橋本愛が・・・「奇跡」における平祐奈と内田伽羅なのである。美少女度で言えば・・・平と内田は甲乙付け難いわけだが・・・役柄として・・・平の方が人気子役という設定なのである。内田はその他大勢の一人としてCM撮影に参加し・・・忸怩たる思いを味わうという役柄なのである。

だが・・・物語のヒロインは平祐奈(平祐奈)ではなくて・・・有吉恵美(内田伽羅)なのだった。

それどころか・・・二番手ヒロインは絵の上手な早見かんな(橋本環奈)なのである。

つまり・・・平祐奈はカメオ出演なのかよっ。っていうか・・・クラスにこの三人がいる小学校って・・・凄すぎるなっ。

まあ・・・この辺りの・・・キャスティングは・・・きっと監督の趣味のなせる業なのだな。

物語は・・・健次(オダギリジョー)とのぞみ(大塚寧々)の離婚から始る。

長男の航一(前田航基)は母親に・・・次男の龍之介(前田旺志郎)は父親に引き取られ・・・遠距離兄弟になってしまうのだった。

兄は「家族がもう一度一緒に暮らすこと」を夢見る。

そして・・・九州新幹線がすれ違う時に願い事をすると叶うという怪しい伝承を信じて・・・新幹線がすれ違う場所を求めて弟と旅に出るのである。

デブの兄には男友達が・・・ハンサムな弟には女友達が・・・チームとして遠征に参加するのだった。

もちろん・・・スティーヴン・キング原作の映画「スタンド・バイ・ミー」(1986年)的なことになり、なんだかんだあるわけだ。

兄より優秀な弟の兄思いの情がほのぼのと浮かび上がるわけである。

目的の地にたどりついた時・・・兄は・・・「家族」より大切なものがあることを悟ってしまうのである。

「ごめんな・・・俺・・・家族じゃなくて世界を選んだ・・・」

「僕も一緒に暮らせるようにってお願いしなかった・・・」

弟は・・・父親の仕事の成功を願ったのだった。

兄は・・・新しい生活に馴染んでしまったのである。

弟は家に戻ると父親に尋ねる。

「世界ってなんだろう」

「駅前のパチンコ屋だろう・・・」

「それは新世界や・・・」

まあ・・・のどかでいいかな。

阿部寛、長澤まさみ、原田芳雄、樹木希林、橋爪功ら豪華チョイ役陣も充実しています。

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2013年12月29日 (日)

キスをしながらサヨナラを言って(山本舞香)青春って最高だ(佐藤勝利)

新年まで残り三日である。

真夜中の地上波は・・・「TRIC>I祭り」で絶対死なない老人ホームの専任カウンセラーとして高嶋政伸が怪演技に開眼(2003年)し、「モテキ祭り」で藤本幸世(森山未來)が小宮山夏樹(松本莉緒)とのデートに向かって「Baby Crusing Love/Perfume」を踊り(2010年)出す・・・。過去の輝きが蘇る・・・年の暮れなのである。

昨夜は「新川優愛の衝撃ゴウライガン!!」の最終回で巨大ロボットVS大怪獣のサーピスもあり・・・年末気分を盛り上げてくれたのである。

ああ・・・今年も終わって行くのだなあ。

感慨にふけりながら・・・数の子の塩抜きをするのだなあ。

そして北海道から送られてきたほっけの開きを焼くのだなあ。

で、『49・最終回(全11話)』(日本テレビ201312290115~)脚本・野島伸司、演出・大塚恭司(他)を見た。神にあっては神を拝み、仏にあっては仏を拝む、クリスマスを祝い、七福神に夢を祈る。無頓着でフレキシブルな宗教観を持つ人々を信仰心あふれる人々は蔑みと憧れの気持ちをもって眺めるだろう。7×7=49なのはインドの七進法に由来する。死後七日ごとに七回の供養を行い・・・現世に止まった魂は彼岸へと旅立つという信仰が仏教によって形式化され・・・四十九日となる。魂の有無について・・・人々は三十万年間悩み続けて結論の出ぬまま現在にいたっている。おそらく明日、魂の存在が証明されることはないだろうと思われる。しかし・・・多くの人間が・・・今もなんとなく自分の「心」というものを感じているだろう。

日本では・・・学校教育が普及しているために・・・家族とは別に学級という単位で「他人」を想像することができる。まず・・・そこに「他人」がいることを感じることができるかどうか・・・という分岐がある。次に・・・「他人」がそれぞれに違うという認識ができるかどうか・・・という分岐がある。それは・・・「世論」というものを考える時の基礎となるだろう。少なくとも義務教育の九年間で・・・様々なクラスメートを観察することができる。もちろん・・・そこでも観察する者としない者の分岐がある。美しい人、醜い人、健康な人、不健康な人、頭脳明晰なもの、愚鈍なもの、理性的なもの、感情的なもの、踊るもの、踊らないもの、苛めるもの、苛められるもの、裕福な者、貧乏なもの、優しい人、厳しい人、外交的なもの、内向的なもの、真面目な人、いい加減な人、勉強家と怠け者・・・まさに人間動物園である。そういう観察の蓄積があれば・・・世論などは全く信用できないものということがわかる。

あの・・・バカや・・・あのバカの・・・形成している世論なのである。

同時に・・・米国の世論とか・・・中国の世論とかも・・・同様に信用できない。

しかし・・・それはそれとして・・・バカものたちの集団としての力には注意しなければならない。いじめという現象を目撃したことがあれば・・・それがなかなかに油断のならないことだと思うからである。

もはや戦後・・・68年であり・・・終戦の年に二十歳だったものが88歳になっている時代である。

現在の日本国の首相・安倍晋三は満59歳、戦後九年目に生まれている人である。米国のオバマ大統領は16年目、中国の習近平国家主席は八年目、韓国のパク・クネ大統領は七年目である。全員が戦後の新世界秩序の中で生まれている。

彼らは等しく「戦争の歴史」を学んだものたちである。

当然、それはそれぞれの国家の国益に基づいた歴史認識を生じさせる。

だから・・・認識がかみ合わないのは当然なのである。

もちろん・・・敗者のハンディキャップということでは・・・勝者の側に名を連ねる米中韓と日本とでは大いなる落差がある。

しかし・・・その後の東西冷戦によって・・・日米はそれなりの絆を構築してきた。

現実問題として日本は米国の同盟軍として中国を仮想敵国としているわけである。

一方で・・・日米の軍事同盟は・・・沖縄の基地問題という内政上の軋みを生じさせている。

ここに日本のかかえるジレンマがある。

一方で中国の台頭による・・・尖閣侵略問題があり・・・「沖縄」は当然のこととしてその「軍事的圧力の排除」を求める。

一方で・・・その防衛の核心である「米軍基地負担の軽減」を「沖縄」は求めるのである。

「どうしたいんだい・・・沖縄は・・・」とそれ以外の日本人は他人事で問うことになる。

だが・・・クラスメートの顔を思い浮かべれば・・・そういう認識が「共有」されていないことは充分に想像できるのである。

「49」で描かれる父親の魂を宿した高校生・加賀美暖(佐藤勝利)の仲間たちの誰ひとりとして・・・日中の間の歴史認識の齟齬や・・・沖縄とそれ以外の日本人の基地問題についての温度差に心を痛めたりしないこと。

それが・・・現実というものだろう。

彼らは・・・両親の不和に悩み自殺を考えたり、バスケットボールの試合でとりあえず一勝したかったり、好きな人とキスしたかったり、好きなだけメロンを食べたかったり・・・青春で精一杯なのである。

家庭人としては・・・失格者だった暖の父親は・・・自分より優しい息子の胸の内で・・・「でもその優しさを気合で表に出さないと・・・優しい人間にはなれない」と遺言を残す。

だから・・・暖は前から思っていたことを吐露するのだった。

「君は美人だよ・・・鏡見てみろよ・・・大人になったら・・・もっと美人になるよ」

「・・・」

「好きな人に好き」と言えた暖は・・・。

高見幸(山本舞香)のみじめで死にたい気持ちを打ち消すことに成功するのだった。

「英霊を追悼したい」と一国の首相が言っても内外で物議を醸す世界に取り囲まれていも・・・青春はそれでいいと思う。

願わくば・・・そういう呑気な青春が来年も続けられる日本でありますように。

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2013年12月28日 (土)

花火を見るなら風呂場で(貫地谷しほり)おつきあいは道場で(杏)剣客商売(北大路欣也)

シリーズも二作目なら・・・かなりこなれてきたと言える。

なんてったって・・・おはる(貫地谷しほり)がいい味出している。

時代劇の百姓娘(ここでは漁師の娘)をやらせたら当代一だな。

時代劇に限らず・・・原作ものには・・・百人いれば百人のそれぞれのイメージがあるわけである。

そういう中で・・・貫地谷しほりのおはるは・・・かなり・・・共通イメージなのではないか。

ちなみに・・・キッドはちょっと前は上戸彩・・・最近では長澤まさみでイメージ・キャストしています。

全然、違うだろっ。

いいじゃないか・・・男のロマンなんだからっ。

ああ・・・乳のサイズでのチョイスか・・・。

お前・・・貧乳主義じゃないのか。

ケース・バイ・ケースでございます。

貧乳・・・微乳・・・巨乳・・・それぞれに素晴らしく・・・。

もういいぞ。

で、『金曜プレステージ・剣客商売~剣の誓約』(フジテレビ20131227PM9~)原作・池波正太郎、脚本・金子成人、演出・山下智彦を見た。北大路欣也が演じる秋山小兵衛シリーズの第二弾である。悠々自適の生活を送る老いた男のロマン・・・それが「剣客商売」であることは言うまでもない。そういう意味では・・・田沼意次(國村隼)の隠し子・佐々木三冬()があまり早く、息子の秋山大治郎(斎藤工)に靡くのは好ましくないのである。三冬の仄かな恋心とおはるの嫉妬こそが・・・萌えなんじゃないか。三冬が綾瀬はるかとか栗山千明だったら・・・もう本当に困るぞ・・・もういいって言ってるだろう。

Edo001 今回は・・・秋山小兵衛の若き日の恋仇で・・・大治郎の剣の師匠でもある嶋岡礼蔵(林隆三)の因縁を巡る物語である。二十年来の剣のライバルとの勝負のために京都から江戸にやってきた礼蔵。ここまでの対戦成績が一勝一引き分けの柿本源七郎(金田明夫)と真剣で立ち会う約定があった。老いの気配が濃厚の礼蔵は「死」を覚悟しての勝負に臨むのである。しかし・・・源七郎も病に倒れ・・・やつれ果てているのであった。

そこで・・・源七郎の弟子、伊藤三弥(浜田学)は師匠への邪悪な愛に溺れ・・・弓による奇襲攻撃で・・・礼蔵を亡きものにしてしまうのだった。

迎撃に出た大治郎は三弥の片腕を切り落とす。小兵衛は礼蔵の骸を源七郎の元へと運ぶ・・・。さて・・・ここで舞台となる江戸の地理について説明しておこう。秋山家は江戸城の東北方面、大川(隅田川)を北に遡上した周囲に展開している。浅草寺のさらに北にまず真崎稲荷神社傍の秋山大治郎の無外流道場がある。小兵衛の隠居所はさらに北で対岸の鐘ヶ淵である。息子より年下で40歳も歳の離れた後妻おはるの実家の関谷村はさらに北である。浅草がすでに場末の地なので・・・秋山家は江戸の郊外に棲息しているのだ。江戸の中心部に出るためにおはるが舟を漕ぐのはそのためである。いい女のおとよ(床嶋佳子)が度々やってくる町医者・小川宗哲(古谷一行)の本所亀沢町の家は川向うではあるものの城下に近いわけである。四谷界隈を縄張りとする弥七(山田純大)やおみね(栗田よう子)がようやく江戸っ子なのだった。南に下って今では高級のイメージのある白金もそこそこ田舎なのだった。とにかく・・・礼蔵の遺体を真崎稲荷神社の道場から、白金の源七郎の道場に運ぶのはなかなかに大変な行程を要するのである。ある意味、一日仕事である。

源七郎は弟子の不始末を悟り、秋山父子にわびるとその場で自害して果てる。

剣に生きた男のそれなりに筋の通った末路だった。

しかし・・・部屋住みの三男坊として荒み歪んだ三弥の心はさらに捻じれていく。

江戸を逐電した三弥は一年後・・・暗い復讐心を燃やして・・・再び秋山父子の周辺に姿を見せる。

「ふりかかる火の粉は払わねばならぬ・・・」

弥七に探索を命じた小兵衛は・・・たちまち源七郎の屋敷に潜む三弥を発見する。

再び・・・白金まで一日仕事なのだった。

そして・・・狂犬を屠殺するように三弥を一刀両断にするのだった。

痛快なのである。悪をつけ上がらせないためには抹殺するに限るのだな。

一件落着・・・夏の風物詩・・・隅田川の花火を湯船から眺める小兵衛・・・。

「いい湯だ・・・一緒にどうだい」

「よろこんで・・・」

おはるとひと汗かきながら堪能する男のロマンなのである。

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2010年の杏と貫地谷しほり

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2013年12月27日 (金)

知られざる彼岸島(水崎綾女)

さよなら、彼岸島・・・そしてウシジマくんへ・・・である。

来年の話かよっ。

呪われし闇の血脈は・・・人類が食物連鎖の頂点に立っている漠然とした不安感とともにあるのだった。

そういうものは・・・数多くある・・・たとえば・・・「国家」とか・・・たとえば「愛」とか。

そんなものなくても生きていけるとは思うものの・・・あればあったで捨てがたいのである。

耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び・・・そんな時代はまだ続いている。

スモッグで覆われた国からいちゃもんをつけられ、弾丸を贈った国からツバを吐きかけられ、基地を占有している国から苦言を呈される。日本人としての自覚のない売国奴たちからは蔑まれ、英霊たちを弔うことにもツバをはかれる・・・理不尽の極みである。

しかし・・・それが国家というものだし、それが一国の首相というものだと思う。

吉田松陰のように虚仮の一念を貫くのもまた人生である。

まあ・・・世の中にはくだらない人間が満ちているし、それは万国共通だ・・・。

言葉を尽くしても・・・「敵」は聞く耳もたないと思うが・・・。

いつかは・・・「自由の身」になれることを信じて・・・生きていくしかないわけである。

所詮・・・日本人は・・・虜囚である。

しかし・・・誇り高き虜囚であることはできる。

そして・・・耐えがたきを耐え・・・忍びがたきを忍ぶのだ。

不憫である。

で、『彼岸島・最終回(全10話)』(TBSテレビ201312270058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、友原我聞、演出・西海謙一郎、総監修・三池崇史を見た。ついに決戦の時は来たのだった。ドラマをトータルで考えれば・・・導入部から結論まで・・・彼岸島のガイド・ブックとしてはなかなかよくできていたと考える。もちろん・・・ホラーとしては問題外だが・・・おかしな世界の紀行ものとしてはそれなりに評価できる作品である。はじめての人にもそれなりに優しい彼岸島でした。

涼子(水崎綾女)・・・手首を切っても死なない吸血鬼として・・・篤との愛の記憶に呪縛され・・・生きていた歳月。せめて・・・最後は篤が吸血されてやればいいのにと思う。ここでセリフを作らないで殺すというのは・・・作劇としてはありだが・・・女優への配慮に欠けた脚本である。篤に抱かれてドラマ・オリジナルの窒息攻撃で・・・臨終を迎えるのだった。存在感は抜群だったな・・・。各演出家諸兄はお見逃しなきように。

ユキ(山下リオ)・・・恋人のケンちゃんと紅葉救出作戦に参加。弓矢による吸血鬼殺傷で貴重な戦力となるが・・・このドラマでは基本的にかよわいヒロインなので・・・吸血鬼ケンちゃんの「愛する者を守る戦い」のシンボル化するのだった。紅葉の救助に成功。何度か絶体絶命のピンチに陥りながら・・・主人公・明との抱擁エンドを目指して海までひた走る。かわいいよ、リオ、かわいいよである。

(佐藤めぐみ)・・・船長(吸血鬼)を射殺。脱出用の船の確保に成功する。そして・・・生存者たちをひたすら待つのだった。どうやら・・・船舶免許を持っていたらしい。

(白石隼也)・・・501ワクチンの使いどころを・・・兄との連携の中で模索する。特攻チームと救出チームの両方に顔を出すなど主人公としてのステイタスを発揮。そして・・・ケンちゃんの危機も救い・・・兄を助けた上で・・・作戦を成功させ・・・島からの脱出にも成功するのだった。そして・・・なし崩し的にユキもゲットである。都合良すぎて反感を買うタイプの主人公である。

(鈴木亮平)・・・愛しい吸血鬼化した恋人を殺害し・・・恋人の血液によって吸血鬼病に自ら感染し・・・雅との決戦に臨む。一時的な勝利をつかみ・・・恋人の躯をお姫様抱っこして海辺に佇むのだった。ま・・・全部、篤が悪いだけなのだが。

ケン(遠藤雄弥)・・・吸血鬼化したために体力がアップ。ユキとともに紅葉の救出に成功する。結局、陽動作戦となり、救出チームに雑魚吸血鬼が集中・・・乱戦の中・・・愛の底力を開花させるのだった。「海の果てまで走って行け」とユキを送り出し、「ユキを頼む」と明を励ます。そして・・・彼岸島に残留・・・。ドラマ版「彼岸島」の真のヒーローがケンちゃんであったことは言うまでもない。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。脱出に成功したメンバーから土産話を聞く日は近い。

ポン(西井幸人)・・・明の思い出になりました。

西山(阿部翔平)・・・最後の最後で・・・ケンちゃんのピンチに騎兵隊として「細い枯れ枝」で参戦。窮鼠猫をかむ的戦闘力を発揮する。後ろ指をさされないで島を脱出するための計算高さは天晴れである。そして・・・計算通り・・・島からの脱出に成功するのだった。見習いたいものである。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・雅の子を妊娠しながら・・・明と戦闘中に割り込んだ怪獣村長に不意をつかれ、絶命。まぶしい太股が印象深い。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・母体とともに絶命した我が子を「不憫」と断ずる。篤と明の兄弟の連携攻撃に苦杯をなめ・・・501ワクチンにより爆散・・・したと見せかけ・・・お約束で復活する。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者。明によって檻から解放され、外壁を破ってアスカを即死させるが・・・雅によって首を切り落とされ絶命。

ハゲ・・・存在を確認できず。乱戦の中で散ったか・・・。

柳島(諏訪太郎)・・・501ワクチンをどこかに隠匿したらしい。その後、島を離脱した模様。

五十嵐軍医(鶴見辰吾)・・・不死身部隊研究の責任者。行き当たりばったりで輸血を繰り返す天才ドクター。諸悪の根源であるが・・・現在はミイラ化しているらしく、登場なし。

寝たきり吸血鬼(大山うさぎ)・・・認知症だが・・・昔のことはよく覚えているタイプで・・・重要なヒントをもたらしてくれたナイスなキャラクター。登場なし。

紅葉(麻亜里)・・・人質にされた冷の妹。病院の一室で監禁されていたが・・・冷が監禁場所を確認。後にケンちゃんとユキによって解放される。脱出行中、ピンチに陥ったユキを自ら武器を取って救援。礼を言うユキら「両親の仇をとりました」と健気な言葉を残す。波止場で待つ姉と合流。悪夢の彼岸島からの脱出を果たす。

Higan001 長いようで短い彼岸島の旅は終わった。篤とケンちゃんは吸血鬼となった。ポンは亡者として死亡。明とユキ、西山、そして冷と紅葉の美人姉妹が彼岸花の咲き乱れる絶海の孤島を脱したのである。

しかし・・・不死身の雅は人類に対する永遠の呪いを解かないのである。

彼らの悪夢は・・・始ったばかりらしい。

続編がある・・・と言われてもちょっと困るけどね。

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2013年12月26日 (木)

天使とジャンプ~翼を失くしたエンジェルはアイドルに変わりますか?(ももいろクローバーZ)

今年の「クリスマスの約束」の最初のゲストは・・・吉田拓郎だった。

拓郎「僕の方が一つ上なのに態度がでかいんだよな」

和正「俺はさ・・・」

拓郎「それそれ・・・僕が僕って言ってるのになんで俺なんだよ」

和正「拓郎、君はさ・・・」

拓郎「呼び捨てかよっ・・・君じゃねえよっ」

拓郎・・・最高だ。

「落陽」

「リンゴ」

「今日までそして明日から」

「人生を語らず 」

かっけええええええっ四曲を堪能。

拓郎「リハがマジすぎて死んじゃうかと思ったよ」

和正「うふふ」

で、『クリスマスドラマ・天使とジャンプ第一夜~二夜』(NHK総合201312240010~)脚本・今井雅子、演出・新田真三を見た。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おーい、どうした。前フリとの落差の激しさに気絶しました。「音楽もの」でジャンル一緒じゃん。そういうものですかね。ももいろクローバーZ主演のアイドルドラマである。役柄が・・・Twinkle5(架空)というアイドルなのだ。アイドルがアイドルを演じるアイドルドラマである。しかも・・・Twinkle5はセンターでリーダーのゆずりん(飛鳥凛)が突如脱退したことで解散に追い込まれてしまうのだった。まあ・・・周知の事実だが・・・2008年に結成された「ももいろクローバー」は2011年に青色担当の早見あかりが「女優になりたい」宣言で脱退・・・空中分解の危機を乗り越え・・・即日「ももいろクローバーZ」として新生したアイドル・グループなのである。つまり、自家製パロディーなのであった。基本、自虐的な週末ヒロイン感が売りなので納得の展開なのだった。ドラマはフラットな仕上がりだが・・・「あまちゃん」を頂点とする2013年のアイドル・グループ・ブームの一つのコアとして・・・このドラマが存在したことはなかなかにメモリアルなことだと考えます。

Tenshi002 刺激の少ない天界から・・・下界を見ていた天使カナエル(百田夏菜子)はアイドル・グループ「Twinkle5」のステージに魅了される。赤、黄色、ピンク、緑、紫の天使の衣装を身にまとったアイドルたちの躍動に憧れたカナエルは地上に堕ちて天使の羽を失ってしまうのだった。

おりしも・・・結成以来、三度目の「クリスマスイベント」を目前にしていたTwinkle5はリーダーの赤の天使・ゆずりんが海外留学を理由にグループを脱退・・・怪しい感じのマネージャー(野間口徹)のやる気のなさを察して・・・残されたメンバーは解散の道を選択するのだった。

アイドルから・・・普通の生活に戻った女の子たち。

緑の天使リコピー(有安杏果)も地味めな女子高校生・原江梨子となり・・・修学旅行のパンフレット係になっていた。

そんなリコピーの前に・・・謎の女子高校生・カナエが現れる。・・・もちろん、天使カナエルの変装なのだった。

「このままで・・・いいの」

「いいのって・・・」

「唱って踊れる天使・・・素敵だったのに・・・」

「天使って・・・」

振り返れば消えているカナエだった。

黄色の天使ことミーニャはティッシュ配りのアルバイト。ピンクの天使のんのん(佐々木彩夏)はバレエ教室のアシスタント。紫の天使ドッキー(高城れに)はフライドチキン・ショップの店員として・・・それぞれ働いている。

その職場に・・・凄腕のティッシュ配り、バレエダンサー、かぼちゃの化身に化けて闖入するカナエ。

「簡単に夢をあきらめちゃったメンバー」を詰るのである。

街はクリスマスシーズン。

「変な女の子に付きまとわれて困った」メンバーは久しぶりに再会を果たす。

そして・・・見失った夢を思い出すのだった。

「Twinkle5・・・結成3周年クリスマスライブをやろうよ・・・」

「四人だけどね・・・」

とにかく再び夢を追いかけはじめた四人は・・・とりあえず・・・昔、事務所の用意してくれたマンションに戻ることにする。

ミーニャは父親の理容師(遠藤憲一)に髪を切ってもらうのだった。

「・・・戻るのか」

「戻らない・・・進む」

娘の決意表明に微笑む父だった。

しかし・・・当然だが・・・マンション「清風館」は満室になっていた。

だが・・・優しい大家さん(斉藤由貴)は廃業した銭湯「星の湯」を清掃することを条件に無料で提供してくれるのだった。

こうして・・・「Twinkle5」は再スタートするのだった。

ここからは・・・マスクと軍手とエプロンなしには語れない年末大掃除スペシャルである。

ある意味・・・ホームレスアイドル物語なのである。

メンバーたちは蜘蛛の巣と戦い・・・ゴミを分別し・・・夏だったらゴキブリも大量にいたはずだ・・・新聞紙にくるまって・・・宿舎とレッスン場を確保するのだった。

銭湯なので・・・当然、清掃後は入浴シーンのサービスがあるはずだが・・・そこはすかして・・・水不足のために足湯で代用である。そこはすかさなくてもいいじゃないかっ。まさか・・・入浴シーンNGなのか・・・色ものアイドルなのに・・・。

ついには・・・ライブ会場も借りられず・・・銭湯をステージとして改造し始めるメンバーたちだった。

・・・まあ・・・ファンタジーだからな。

男湯と女湯の壁もぶち抜き・・・ついに完成するライブハウス「星の湯」・・・しかし・・・リハーサルを開始したメンバーは・・・五人ではなく・・・四人では・・・Twinkle5にならないことに気がつくのだった。

残されたオンエア時間は・・・一曲分である。

もちろん・・・翼を失くした本物の天使であるカナエが・・・メンバーに迎え入れられるのだった。

ある日 歌が聴こえたんだ

地上に瞬いた キラキラの星

天使じゃない私たち いつわりの翼

だけどあきらめきれない気持ちは何?

奮いたたせろ この手のばして

3、2、1・・・jump!

まあ・・・とにかく・・・すべては歴史である。

だからきっと・・・来年も「ウレロ☆未体験少女」(テレビ東京)を見るのだと思う。

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2013年12月25日 (水)

人生ごっこ~二十歳になったら大人ごっこはありやなしや(新川優愛)

つつがなくクリスマスである。

眼下の商店街ではクリスマス・イヴだと言うのにロケが行われていた。

薄倖の女優さんとか元・子役のセブンティーンが寒さ堪えて佇んでいたのだった。

前夜に前世紀の電子レンジがホットにならなくなったために新規購入について悪魔の卷族に相談すると・・・。

「そろそろ・・・壊れそうだから・・・」と言って一年前に購入していると指摘される。

うわあ・・・まったく忘れていた。

しかも・・・書斎の倉庫に積んであるのだ。

ブルーレイ・ディスクなどの備品をとり出す度に目の前にあったのである。

「あ・・・」と思い・・・認知症と言う言葉が脳裏を駆け巡るのだった。

クリスマス気分ということで・・・とりあえず・・・チキンとビーフシチューをホットにしたのだった。

忘れられていた電子レンジは拗ねることもなく稼働した。

サンタクロースが横切る夜空で星が瞬いている。

もちろん・・・悪魔がクリスマスを祝うことは禁じられているのである。

で、『人生ごっこ』(フジテレビ201312230055~)脚本・小山正太、演出・金井紘を見た。第25回のヤングシナリオ大賞(2012年)の受賞作のドラマ化である。微妙にインモラルな作品であり・・・テレビドラマとしてはギリギリアウトだと思うが・・・これを書いちゃう人も・・・これを選んじゃう人もいるのが・・・爛れた現代というものなのかもしれない。まず・・・ヒロインはいわゆる一つの枕営業をします。そして・・・それを素晴らしいことだと謳っている気配があります。主人公は身分を偽って・・・行きずりの相手と一夜を共にします。ごめんなさいで済むことではありません。そして・・・二人のプライベートの写真を職場で公開するどころか・・・それを使って仕事を有利に進めようとします。こういう感性が・・・リベンジポルノの土壌であることは言うまでもありません。ま・・・それはそれとして・・・そういう人たちも生きている時代だ・・・ということではかなり刺激的とも言えます。そして・・・体当たり的にヒロインを演じる新川優愛には何の罪もないのです。オンエア時にギリギリ未成年だし。

コミック雑誌の若手編集者・灰原洋二郎(森岡龍)は醜男がスーパーヒーローのアクション漫画「カメレオンファイター」の担当さんである。

「カメレオンファイター」の作者・暗木狂四郎(池田鉄洋)は精神的に問題のある漫画家で・・・すぐに自殺を仄めかしたり・・・独断で連載漫画を最終回にしようとしたりするのだった。

灰原はそんな暗木を宥めすかしてなんとか締め切りに間に合わせるという暮らしにちょっと嫌気がさしていた。

そんな灰原に先輩編集者(渋川清彦)は悪い遊びを教える。そして・・・「あまちゃん」の登場人物たちが憧れたガールズ・バーに乗り込むのだった。先輩の教える遊びとは・・・「漫画家ごっこ」である。担当している漫画家になりきって破目を外すという趣向だった。

灰原はあまり気が進まず・・・暗木狂四郎のフリをするのだが・・・「カメレオンファイター」のファンだというマコ(新川優愛)と出会い・・・店外デートに誘われ・・・妙に積極的なマコによってホテルで一夜を共にし・・・あろうことか・・・童貞を失ってしまうのだった。

おいっ・・・である。

マコという恋人ができたことによって・・・生活に潤いが出来た灰原。マコが望む「カメレオンファイター」の新展開を担当編集者として・・・暗木に吹き込み始める始末である。

まさに・・・プロとしての自覚ゼロの素人頼みで・・・漫画家ごっこをしながら・・・編集者ごっこも始めてしまう灰原なのだった。

ところが・・・読者のストレートな要求に応えた「カメレオンファイター」の人気は鰻登り・・・ついに読者投票1位となり・・・アニメ化も決定するという・・・そんなバナナな展開である。

しかし・・・そんな灰原に先輩は「やりすぎだ」と忠告する。

「漫画家ごっこ」で・・・漫画家の気分を味わうのは遊びの範囲だが・・・身分を偽って性行為をしたらある意味犯罪なのである。

「やりすぎっていうか・・・やっちゃってるよね」

「やっちゃってますよ」

「もしも・・・相手の女性に訴えられたら・・・会社を解雇されちゃうぞ・・・」

「・・・」

突然、恐怖を感じた灰原は・・・マコに唐突に別れを切り出すのだった。

しかし・・・マコは拒絶し・・・一緒にお風呂に入って動画をとったり・・・あれやこれやサービスを重ねるのである。

なぜなら・・・マコの本職は声優であり・・・アニメ化される「カメレオンファイター」のヒロインの座を狙って・・・灰原を担当編集者と最初から知っており・・・枕営業をしていたという・・・超そんなバナナな設定なのである。

実は・・・マコは・・・暗木狂四郎の憧れの声優さんなのだった。

アニメ声優のオーディションに現れたマコに驚愕する灰原。

「私をヒロインにしないと訴える」と声優としてのある意味間違ったプロ根性を見せるマコだった。

こうなったら・・・なんとか・・・マコを合格させるしかないとあせる灰原。

しかし・・・暗木は・・・「ファンとしては・・・ヒロインをマコちゃんにやってもらいたい・・・しかし・・・イメージにピッタリの人は他の人だった・・・プロとして私情を交えることはできない」と・・・真のプロフェッショナルとして片鱗を見せる。

たちまち・・・覚醒する灰原。

辞表を懐に・・・マコに謝罪するのだった。

「ごめんなさい・・・実はボクは漫画家ではなくて・・・担当編集者なのです」

「そんなの・・・最初から知ってたわよ・・・私はどうしてもヒロインの役が欲しい・・・それだけよ」

「・・・君のことは・・・ボクなりに調べた・・・声優としても実力派だし・・・ものすごく真摯に仕事に取り組むタイプだという評判だ・・・だから・・・君には・・・必ずチャンスがやってくると思う」

「・・・訴えるわよ」

「ボクは・・・担当編集者として・・・クビになっても・・・それを阻止する」

「・・・」

灰原は・・・編集者としてするべきことをする覚悟だった。

その覚悟に・・・マコは撤退を決意するのだった。

おいっ・・・なのである。

そんな事情はまったく知らないアニメの演出家は・・・マコに・・・敵役を用意していたのだった。

八方丸く収まったかに見えたが・・・正直に真実を打ち明けた灰原に・・・暗木はヘソを曲げるのだった。

「そんな・・・マコちゃんと一夜を共にするなんて・・・許せない・・・創作意欲がなくなった」

「一夜を共にした時の画像もあります」

「が・・・画像・・・」

「見たいですか」

「・・・」

「見たかったら・・・描いてください・・・」

「え」

「そしたら・・・見せてあげてもいいですよ」

「う」

スケベ根性に負けて・・・暗木は猛烈に描くのだった。

おいおいおい・・・なのだった。

つまり・・・プロフェッショナルな仕事とは・・・どこか薄汚れているものだという話なのである。

ま・・・実際そうだと言えないこともないので・・・微妙な気持ちになるわけだが・・・。

ヤングシナリオ大賞がこの方向でいいのか・・・不祥事にまっしぐらなんじゃないかと危惧する今日この頃なのだった。

とにかく・・・倉科カナが好きな人は絶対に好きなはずの新川優愛の妖しい魅力は堪能できる作品である。

まあ・・・堪能できるんだから・・・それでいいかと・・・思ったりもするわけで。

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2013年12月24日 (火)

真実、ときどきフェイク(中丸雄一)

ありのままの自分を愛してもらいたい男と・・・フェイクをこよなく愛する女の・・・すれちがいの物語である。

まあ・・・要するにメンクイの話である。

フィギュア・スケートはスポーツであるのに・・・優勝者よりもそうでなかった者の方が美しいという残酷で微笑ましい現実を示している。

キッドの中では・・・両者の表現していることは同じなのである。

すべては・・・アリエナイ美醜の話なのである。

で、『・最終回(全10話)』(TBSテレビ201312240028~)脚本・演出・三木聡を見た。案の定・・・何一つ、真実は暴かれることはなかった。すべては信用できない素晴らしいインターネットの世界の情報と同じように幻想の中に消えていったのである。とってつけたようなみせかけの真相には何の意味もないのである。醜い白川(中丸雄一)はゲビヤマくん(木村文乃)に愛されたかったが・・・ゲビヤマくんが愛したのは美しい青沼(中丸雄一=二役)だったのである。その譲れないラインを・・・最後まで越えられなかった白川は・・・青沼を消し去るしかなかったのである。

そして・・・白川は・・・やるせない気持ちを・・・虚構の心理学の妄想で紛らわせるのだった。

受容人格という怪しい言葉が・・・1940年代のドイツで起ったアルゲリヒト事件を怪しい例にとるのは・・・もちろん、政治的配慮である。

それは・・・集団心理の熱狂と・・・それを加熱させる先導者の関係を虚構化しているのである。

いわずと知れた・・・アドルフ・ヒトラー総統こそが代表的受容人格なのである。

ドイツ第三帝国の民意を受容し・・・世界を恐怖のどん底にたたきおとした「彼」のことをストレートに語ると・・・いろいろとお叱りを受けるからである。

昔、叱られたことがあるのでよく知ってます。

それはそれとして・・・「チューリップ殺人事件」の真相はなんとなく新たなる段階に入るのだった。

呪われた消ノ原町の「民意」は・・・集団的無意識の発露であるとも・・・異次元生物の生態であるとも解釈できる。

消ノ原町の住民は・・・全員で一つの生命体なのである。

だから・・・個人という・・・生命体の一部がガン化すれば・・・それは除去されてしかるべきものなのである。

甘粕(眞島秀和)は「全体」というもう一人の意志の具現者なのである。

当然・・・住民たちは皆・・・「個人/全体」の二重人格者なのである。

「チューリップ殺人事件」のあまり・・・意味のない全体像をまとめておこう。

1970年代・・・開発賛成派と反対派で民意の割れた消ノ原町・・・。

「もう一人の意志」を示す「おくり様」は・・・異端となった賛成派の夷鈴子(工藤綾乃)の父親を排除する。

残された鈴子は・・・復讐を誓い・・・超自然のパワーを解放する。

鈴子に好意を寄せていた同級生の石原真一(萩原利久→眞島秀和)は三貴子の泉を掘り起こした鈴子によって・・・呪いの刻印を受ける。

復讐者・鈴子と・・・裁断者・真一は・・・陰陽の交錯する激しい運命に翻弄されるのである。

やがて・・・おくり様に支配された真一はアマカスとなる。

一方で鈴子は・・・三貴子の泉に神秘性を持たせるために・・・黒曲(松重豊)を誘惑する。

三貴子の泉に依存する消ノ原町を作りだし・・・最後はその虚偽を暴き・・・消ノ原町生命体に痛手を与えるためである。

鈴子は裁断者であるアマカスさえもその支配下に置こうとしていた。

そのために・・・送りだされた楔が真壁真奈美(中村優子)だった。

真奈美はアマカスとの性的接触により・・・新たなる裁断者・・・石原完一(萩原利久)を身ごもる。

真一の若き日の姿が・・・完一と相似しているのは二人が父子だったからである。

楔により・・・鈴子の魔性の支配を一瞬逃れたアマカスは・・・1999年夏・・・鈴子と鈴子に扇動された阿波島翠(廣井ゆう)という二人の反逆者を消ノ原町生命体全体から切断し・・・殺害するのである。

消ノ原町生命体は・・・安藤刑事(光石研)や消防団に命じ・・・死体をさらに凌辱するのだった。

こうして静けさを取り戻した消ノ原町だったが・・・鈴子の怨念は・・・天狗野郎(森下能幸)や土肥原ゲットー(手塚とおる)ら「外世界」の人間に作用して・・・メッセージを発し・・・白川/青沼とゲビヤマくんを十四年後の夏・・・町に召喚したのであった。

二人は・・・その真相を解明するために・・・異世界に身を投じたのであった。

「青いネジ」はその封印を解く鍵なのである。

境界線(ライン)の監視者である消ノ原食堂「モアイ」の川島(町田マリー)はその一点のみを注視していた。

空気を読まないゲビヤマくんは排除されかかるが・・・「青いネジ」の封印を・・・青沼が決断したことにより・・・一命をとりとめる。

真一に鈴子を殺させた真奈美は・・・その罪に慄き・・・最初は街を出るが・・・結局は裁断者に身を委ねたのである。

すべては・・・個人と全体の不毛なもつれによるものだった。

個人的には・・・恐ろしいことだが・・・全体としてはとるにたらないことは・・・この世の本質なのである。

かくて・・・青沼/白川とゲビヤマくんの旅路は終わる。

白川は・・・敵意を引受けるという口実で・・・青沼とゲビヤマくんを引き離す。

白川は青沼ではなく・・・白川自身を愛してもらいたいのだ。

白川は・・・百冊目の小説を書きあげることで・・・ゲビヤマくんが白川を愛することを切望する。

しかし・・・そういう望みは叶わないのが・・・現実なのである。

ゲビヤマくんは・・・存在しない青沼を求め続け・・・永遠の黄昏を彷徨うことになるだろう。

それもまた・・・鈴子の呪いの成果なのかもしれない。

なぜなら・・・世界にはいつでもどこでも・・・個人と別の全体的なもう一人がいるのだから。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の変身インタビュアーの憂鬱

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2013年12月23日 (月)

相棒シリーズ X DAY~刑事は現場で愛を育てる(田中圭)

なんだかんだ・・・田中圭は・・・キッドにとって愛しい俳優なんだな。

もしも・・・田中圭が弟だったら・・・お姉さんは確実に弟萌えになるだろう・・・お前、男だろう。

何と言っても・・・生存率である。

劇場版を劇場で見ない人間にとっては・・・劇場版のその後の時系列にあたる・・・相棒Season11の第17話で生存が確認されているためにそれほどドキドキしなかったが・・・そうでなければ・・・国家機密に首をつっこんだ田中圭はいつ死んでもおかしくないので最後まで気が気ではなかったと思う。

今季の「ノーコンキッド」だって・・・うらぶれたゲームセンターの店長で・・・やくざにいつ殺されてもおかしくない立ち位置だったしなあ。

死ぬの?・・・いつ死んじゃうの・・・自殺なの・・・他殺なの・・・事故死なの・・・病死なの・・・登場するだけで感じさせる薄倖さ・・・男優には得がたい存在感である。

いるだけで難病もの適性つきのキャラクターみたいなものだ。

もう・・・屋上とかは絶対危険だし・・・駅のホームもやばいし・・・最後なんか車道で・・・。

田中圭萌えにはそれだけで楽しめる作品である。

で、『相棒シリーズ X DAY(2013年3月劇場公開作品)』(テレビ朝日20131222PM9~)脚本・櫻井武晴、演出・橋本一を見た。劇場版としてはシリーズ四作目である。今回はトリオ・ザ・捜一の警視庁捜査一課の伊丹憲一刑事(川原和久)と警視庁サイバー犯罪対策課専門捜査官・岩月彬(田中圭)がダブル主演。Season12の第1話で重傷を負い、警視庁を依願退職した三浦刑事(大谷亮介)もまだ健在で・・・いい味を見せている。劇場版IIで小野田官房長(岸部一徳)が刺殺されたのと同じくらい・・・三浦刑事退職はショッキングだったのである。

東京明和銀行に勤める中山雄吾(戸次重幸)が転落死する・・・事件と事故の両面で捜査にあたる伊丹は・・・中山が素晴らしいインターネットの世界になんらかの「怪情報」を流していたことが「殺された原因」ではないかと刑事の勘で直感する。

その支援にあたるのが岩月捜査官である。

岩月は暴力的な雰囲気を漂わせる伊丹を嫌悪するが・・・徐々に伊丹の刑事魂に魅せられていく。

最後には・・・「正義を愛するバカな警察官と・・・正義について何も考えない知性的な捜査官・・・どちらが有能なのでしょうか」と同僚の小田切(関めぐみ)に問うほどである。

やがて・・・「怪情報」の正体が明らかになる。

それは・・・経済の失速によって日本が没落し・・・「円」が下落・・・国家崩壊に至ったためにおこる「金融封鎖」のX DAY(当日)の情報だったのである。

そのために・・・政府と金融機関は・・・あえてシステムトラブルを起こし・・・その日の混乱のシミュレーションを行っているという国家的陰謀が隠されていたのである。

この辺りの事情は休暇でロンドン滞在中の杉下右京(水谷豊)、元相棒の一人・神戸(及川光博)、今回は衆議院議員総理補佐官の肩書きを持つ片山雛子(木村佳乃)たちが謎解きます。

一方で警視庁組織犯罪対策第5課の角田課長(山西惇)は覚せい剤を摘発した広域暴力団の事務所で・・・経済担当組員・神林(深水元基)を逮捕。神林が怪情報を入手していたことが判明。

陰謀の黒幕である財務省から圧力がかかる中・・・伊丹と岩月は・・・被害者の上司・朽木(田口トモロヲ)と・・・被害者の恋人・麻生美奈(国仲涼子)に迫り・・・真相に近付いて行くという展開である。

まあ・・・基本的にはまことしやかな・・・経済崩壊陰謀論・・・ある日・・・信用に基づく貨幣が紙くず同然になるのは・・・今に始ったことではないのだった。

前世紀のバブル崩壊だって・・・ねえ。

とにかく・・・最後は・・・伊丹になり変わって・・・真犯人を逮捕する・・・まれにみるかっこよさを発揮する岩月だった。

取調室で・・・刺されなくてよかった・・・と思うばかりなのである。

まあ・・・とにかく・・・これで・・・来年の元旦スペシャルを心おきなく楽しめるのだった。

なにしろ・・・劇場版を見ていないと分からないネタを平気で展開するあこぎなスタッフだからな。

ちなみに・・・大河内(神保悟志)や陣川(原田龍二)もそれなりに活躍しますが・・・事件解決の決め手となるのは鑑識課・米沢(六角精児)の採取した指紋・・・というのが昔ながらの相棒テイストでございます。

関連するキッド→相棒Eleven

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2013年12月22日 (日)

年末年始物語~ハはハニー・トラップのハ(仲間由紀恵)

お忘れの人もいるかもしれないが・・・2013年冬ドラマ・・・仲間由紀恵は「サキ」でハニー・トラップを仕掛けまくっていたのだが・・・2013年秋ドラマでもハニー・トラップの女として仕掛けまくっていたわけである。

何が・・・彼女をそうさせるのか・・・仲間由紀恵(34)なのだった。

沖縄が日本の領土でよかった・・・新垣結衣も国仲涼子も黒木メイサも二階堂ふみも比嘉愛未も満島ひかりもいない芸能界なんて・・・考えられないぜ。

さて・・・「ハニートラップ」を終えた仲間は・・・フジテレビからテレ朝に移動である。年末年始は「トリック祭り」なのである。

12/22の日曜の深夜から始る「朝までトリック」に始り、1/12の「TRICK新作スペシャル3」までトリックなんどめだ三昧である。

一方・・・上田こと阿部寛はTBSテレビの「新参者祭り」にも参加である。12/26の「麒麟の翼」に始り、12/30朝から正月へかけて再放送。1/2に「眠りの森」である。

NHK総合は「年末あまちゃん祭り」・・・12/29深夜にあまちゃんライブ・完全版、12/30に10時間総集編、そして紅白あまちゃんコーナーへ・・・。

テレビ東京は「モテキ祭り」・・・年末に再放送して1/1に映画「モテキ」・・・まあ・・・相手は「相棒・元旦SP」ですが。

フジテレビは1/2より「鍵のかかった部屋祭り」・・・ちょこちょこ出てくる能年玲奈チェック。メインは第6話「密室劇場」・・・そして1/3「鍵のかかった部屋SP」である。

日本テレビは「金田一少年の事件簿祭り」・・・1/4に「川口春奈の美雪で獄門塾殺人事件」である。

まあ・・・なんだかんだ・・・年末年始ですな。

で、『ハニー・トラップ・最終回(全10話)』(フジテレビ201312212310~)構成・渡辺雄介、脚本・山岡潤平、演出・七高剛を見た。「シリコン」に変わる新しい素材「グラフェン」の開発に携わっているビジネスマン・美山悠一(AKIRA)の妻・なつみは実は正体不明の工作員・次原明日香(仲間由紀恵)だった。しかし・・・なつみにメロメロの美山は裏切られても裏切られてもなつみを信じ続けるのである。やがて・・・その愛は・・・なつみの心をとかして・・・というそんなバナナの話である。

日本の最先端技術を狙い・・・中国や韓国の産業スパイも登場。

情報ブローカーの穂積(小澤征悦)やスパイ・ハンターの小林(高嶋政伸)そして、謎の黒幕の天音(武田真治)などが暗躍を重ねつつ、二人の愛を切り裂こうとするのだった。

女スパイ(内山理名)や・・・普通の人と思わせておいてやはり女スパイ(野波麻帆)もからんでくる。

まあ・・・いろいろなんだかんだあって・・・最後は穂積に棺桶に入れられて生き埋めになったなつみを・・・美山が野生の勘で探り当てるというお粗末である。・・・おいっ・・・。

生き埋めと言えば・・・映画「キル・ビルVol.2」のザ・ブライド(ユマ・サーマン)の五点掌爆心拳による脱出が一同爆笑なのであった。

2010年のスペイン映画「リミット」では・・・イラクでトラックの運転手をしているポール・コンロイ(ライアン・レイノルズ)がテロリストに生き埋めにされ・・・徹頭徹尾・棺桶の中だけで演じるという怪作がある。その圧迫感は圧倒的じゃないか。

ついに・・・棺桶を発見した美山はなつみと感動の再会・・・思わずキスしようとするが・・・棺桶を開けると五秒後に起爆する超小型原爆により・・・捜索隊もろとも全員が一瞬で山ごと蒸発するのだった・・・おい・・・いい加減にしておけよ。

まあ・・・実に甘い・・・ハニー・トラップなのですね。

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2013年12月21日 (土)

45歳の波瑠は奇跡すぎる(藤本泉)お前もな(田中圭)

地震で叩き起こされました。

震源地は茨城県南部でマグニチュードは5.3だ。

東京は震度3で、ちょうどこのドラマのオンエア中(午前1時10分頃)だった。

今日は・・・久しぶりにオフにしようかと思っていたのだが・・・仕方なく・・・谷間サイズの最終回記事を書くことにする。

朝ドラマは大正の関東大震災ネタで、首都直下型地震の新シミュレーションが発表され、都知事辞任のあれやこれやで今、東京が熱いのである。どんな熱さなんだよっ。

千葉北西部、千葉東方沖と東京より東から北にかけて地震が続いている。逆に小笠原新島(西之島沖)の噴火があり・・・Xデーは近そうである。

まあ・・・すべては運命である。

あれだけの大津波が押し寄せ、原発でメルトダウンが発生しても生き残る人は生き残るし、亡くなる人は亡くなるのである。

そして人生は続いたり終わったり、始ったりするのである。

コンティニュー・・・インサート・コイン・・・家庭ではリセット(出直し)だが・・・社会に出ればコンティニュー(料金追加でつづく)なのだ。

追加料金払うくらいなら最初から一泊にしておけばよかった・・・誰がラブホの話をしろとっ。

で、『ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜・最終回(全12話)』(テレビ東京201312210052~)脚本・佐藤大、演出・鈴村展弘を見た。1983年・・・15歳だった渡辺礼治(田中圭)も2013年、うらぶれた45歳になっている。・・・いや、ずっとそのままだがな。もはやなんちゃって中学生も呆れるなんちゃって45歳である。まあ・・・ほとんどの人間は自分がそれほどうらぶれているとは思わないので違和感はないのかもしれない・・・そんな馬鹿な・・・とにかく・・・主人公が老けないという一点において・・・大河ドラマと同じだっ。

ふりかえれば・・・このドラマの高野文美の波瑠は波瑠史上最高の可愛さだったな。

一体・・・どんな魔法がかかっていたのだろう。

礼治とKIDこと木戸明信(なんの違和感もなく15歳を演じる浜野謙太)とのバランスがよかったのかもしれない。

近所に住む幼馴染で初恋の相手なのに高嶺の花・・・これはある意味、黄金のキャラクター設定なのかもしれない。

ドラマは・・・ゲーム・センターの「ゼビウス」で始り・・・「ポールポジションII」「ドルアーガの塔」「パックマン」コンシューマ・ゲームの「ドラゴンクエストII」「スーパーマリオブラザーズ」を経由して「バーチャファイター」そして・・・禁断の「トゥルー・ラブストーリー〜恋のように僕たちは〜/仲間由紀恵」(1996年オリコン122位)でおなじみの「トゥルー・ラブストーリー」を契機として・・・空白の17年に突入する。

おそらく・・・スタッフのゲーム人生がある程度・・・そうだったのかもしれない。

その間にも・・・それ以前にも・・・ずっとゲームをしていた人間には・・・物凄く偏った内容に感じるだろう。

なにしろ・・・アダルトなパソコン・ゲームとか・・・戦略シミュレーションとかは登場しないのである。

まあ・・・そんなところまで入りこまなくても・・・充分・・・濃い内容だったとも言える。

もちろん・・・その部分は・・・KIDこと木戸が負っていて・・・彼はコンピュータ・ゲームを遊ぶ側から作る側にまわり、ついに・・・恐るべき個人情報検索ソフト「ガンプ」を作ってしまう。

木戸は・・・礼治と高野さんと過ごした「攻略ノート」の日々が忘れられず・・・単にゲームを通じて世界と「友達」になりたかっただけなのだが・・・木戸の経営する「M.A.R.S.社」共同代表の野々村(川島潤哉)は世界を支配する野望に燃え、「ガンプ」の独占を狙い・・・木戸を窮地に陥れるのだった。

まあ・・・とにかく・・・様々な・・・思い出が「ゲーム」とともに蘇るゲームなのである。

キッド(ブログの筆者)はコンシューマ化された「ドルアーガの塔」を女友達の家で朝までこたつで攻略していた冬の日をふと思い出したりしました。

職場で・・・後輩に・・・「ドラクエの隠し通路」を教わり・・・徹夜の悪夢から解放されたこともあっただろう。

娘と二人で夏休みの一日を「ドンキーコング」攻略に・・・もういいか。

まあ・・・とにかく・・・キッド(プログの筆者)が思うことは・・・生まれた時からコンピュータ・ゲームがあったら・・・人生はかなり過酷なものだと思う。だって・・・ほとんどの人生よりゲームの方が面白いからね。・・・いや・・・人生もゲームだから。

「ゼビウス」で出会った三人が・・・「ドラクエ」を攻略した日々は過ぎ去り・・・「トゥルー・ラブストーリー〜恋のように僕たちは〜/仲間由紀恵」(1996年オリコン122位)でおなじみの「トゥルー・ラブストーリー」にはまった礼治が・・・外国に留学するのを引きとめてほしかった高野さんを引きとめ損なって・・・木戸から借金500万円の申し込みを拒絶さけて・・・青春が終った・・・二十代の終りから・・・一挙に時は過ぎ去るのだ。

「いつもの場所で待ってるから・・・必ず来てね」

「いつもの場所ってどこなんだよ・・・」

2013年・・・「ゲームセンターワタナベ」は借金の抵当として礼治の手から離れた。礼治は大学時代の同級生で魔性の女・新谷朱理(藤本泉)と結婚していたが・・・離婚沙汰が起きている。なにしろ・・・うだつが上がらないのである。母親の加代子(筒井真理子)の音沙汰はなく・・・おそらく父親の雅史(佐藤二朗)は他界したか・・・長期療養中である。

もちろん通りすがりの格闘ゲームマニアのサラリーマン「リーマン」→「フリーマン影」(眞島秀和)が助けてくれるわけもない。

虚しくどこぞのゲームセンターの「太鼓の達人」で「にんじゃりばんばん!」 を叩く礼治・・・。いつでもどこでも少し時代おくれの男なのである。

一方で・・・「ガンプ」のプログラムはロックされ・・・その鍵は・・・「攻略ノート」に隠されているために・・・野々村の魔の手が礼治に伸びている。

二人のゲーム仲間の危機に・・・ついに・・・ちっとも年をとらずにいい女になった未だに独身らしい高野さんが立ち上がるのだった・・・。

妻・渡辺朱理(あかり)の機転で・・・「親父のエロ本」は失ったが「攻略ノート」を確保した礼治は・・・廃墟と化した「ゲームセンターワタナベ」に木戸を呼び出すのだった。

もちろん・・・高野さんが二人をとりもつのである。

高野さんは「ノーコン・キッド」というノンフィクションを著述中であり・・・結末をハッピーエンドにしたかったのである。

「俺が負けたら・・・ノートは返す・・・でも、お前が負けたら借金肩代わりしてくれ・・・」

どこまでも・・・ダメな礼治だった。

「じゃあ・・・1Pは礼治君・・・2Pは木戸君で・・・」と高野さん。

そこそこの得点をはじき出す礼治・・・つまり・・・木戸に勝ちを譲ったのである。

しかし・・・木戸は涙ぐんでしまう。

「礼治くん・・・聞いてくれ・・・僕はお金を持って君のお父さんのところに・・・」

蘇る・・・木戸の記憶。

病床の礼治の父親は言った。

『お金はね・・・君が君のために使いなさい・・・礼治には礼治の人生がある。人生にはコンティニューは必要ないんだ・・・挫折したら・・・そこからやり直せばいい・・・人生をノーコンであがるのはまさに奇跡だからね』

「そんなの・・・知ってたよ・・・なんで・・・俺がそのノート持ってると思ってんだ」

「え・・・」

思わず・・・ゲームをミスする木戸だった。

得点は礼治の半分。

「ボクの負けだ・・・」

「まったく・・・親父の奴・・・かっこつけやがって・・・ほら・・・ノートもってけよ」

「え・・・」

「だって・・・これはみんなのノートだろ」

「礼治くん・・・」

そこへ・・・現れる野々村。

「それじゃ・・・そのノートを渡してもらおうか」

「わかった・・・今すぐ・・・指定の口座に・・・このゲームセンターを買い戻せるだけの金を振り込んでくれ・・・そうしたら・・・ノートは渡す」と木戸。

「契約成立ですな」

「木戸・・・」

「いいんです・・・このゲームセンターと礼治くんたちがいれば・・・ボクはいくらでもやりなおせる」

「一緒に・・・ゲームセンターを立て直しましょう」

「でも・・・」

「大丈夫・・・僕たちが力を合わせれば・・・世界の破滅だって救えるんですから」

「この世界はドラクエなのかっ」

ともかく・・・いつまでも良い女である高野さんは・・・ノンフィクション「ノーコンキッド」でベストセラー作家になるのだった。

そして・・・「ゲームセンターワタナベ」はレトロ・ゲームと次世代ゲームの混合した不思議なスペースとしてそれなりに繁盛する。渡辺夫妻もそれなりに幸せそうだ。

野々村は木戸の仕掛けたトラップにまんまとひっかかり・・・すべてを失うのだった。

Hanck001 異様にセクシーなプロジェクションマッピング抜きで「One day/TOKYO NO.1 SOUL SET」が流れ出す・・・。

えーと・・・これは・・・もしかすると・・・高野さんと木戸の結ばれるエンドなのかな。

礼治・・・それでいいのかっ・・・まあ・・・いいか。

さらに・・・マニアックな・・・ゲームのドラマも見たい気がするが・・・これはこれで一つの到達点かもねえ。

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2013年12月20日 (金)

モヤモヤ彼岸島(山下リオ)

さて・・・秋ドラマのレギュラー・レビューも「変身インタビュアーの憂鬱」「彼岸島」の深夜枠二本を残すのみである。

暮れも押し迫ってまいりました。

今年に始ったことではないが・・・震災関連や凶悪事件関連でつぶやかなくてもいいことを呟くバカッターや、もはや昔ながらのブロガーがうっかりキーボードをすべらしたりすることが妙に気になった一年である。

そういう人は・・・わけのわからない無差別攻撃をするおかしな人や・・・LINEつながりで暴力沙汰を起こすバカ未成年や・・・往生際の悪い都知事と同列に並ぶわけである。

なんていうか・・・みんなすごいバカだなあ・・・バカになっちゃってるんだなあと思う。

昨日、記事を書いていてふと気になって近所の書店を覗いてみたら・・・北原白秋の詩集が一冊も置いてなかった。

そういう時代なんだなあ。

だから・・・まあ・・・「彼岸島」なんてまともなドラマなのかもしれないなあ・・・と思う今日この頃である。

で、『彼岸島・第9回』(TBSテレビ201312200058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、友原我聞、演出・西海謙一郎、総監修・三池崇史を見た。

涼子(水崎綾女)・・・吸血鬼として生存中であると思われる。

ユキ(山下リオ)・・・恋人のケンちゃんのためのおっぱいみたいな血液供給源となった前回。明の立案した暗殺&脱出計画に参加するために・・・冷とともに紛失中の武器、弓矢の捜索に出かける。放置されていたらしい弓をゲットした後で・・・遭遇した吸血鬼を遠距離攻撃。序盤以来の活躍を見せる。貴重な遠距離攻撃ユニットなので大事に育てたいところだ・・・ゲームじゃねえぞ。その後・・・「こんな島に連れてきてごめんね」と謝罪する冷に「私があなただったら同じことをしたと思うから・・・」と慰める。決戦を前に・・・「明日のために栄養をとって」とケンちゃんに献身。当日は裏口から冷の妹・紅葉の救出をケンちゃんと担当する。いや・・・遠距離攻撃ユニットの使い方としては間違ってるだろう。だからゲームじゃないんだってば。

(佐藤めぐみ)・・・柳島の逗留した松本家の一族だったことが判明。501ワクチンによる雅暗殺計画に伴う脱出計画のために残弾の少ない拳銃を渡される。弓矢探索の旅で吸血鬼二名を射殺。それで度胸がついたのか・・・人質の場所確認にも成功する。しかし・・・すでに両親の姿はなく・・・拘束された紅葉を見出すばかりだった。「すまない・・・しかし妹は必ず救出する」と頭を下げる篤に応じて深く頭を下げるのだった。吸血鬼たちに人間の補充を命じられ、従ったフリをして・・・船長(吸血鬼)を射殺。脱出用の船の確保に成功する。

(白石隼也)・・・雅暗殺作戦を立案。501ワクチンの効果試験の結果が思わしくないところから・・・篤に作戦変更を提案されるが・・・「俺は役たたずじゃない」と兄の正面突破の後の地下から二の矢として病院に潜入。とにかく・・・やはり物凄い短期間で戦闘力アップをはかったらしい。まさにアリエナイ展開だが・・・深夜ドラマだからな。とにかく・・・主役として・・・村長(怪物吸血鬼)の解放にまんまと成功するのだった。なんだかんだ・・・最後はユキをゲットする気満々である。

(鈴木亮平)・・・「お前はみんなと一緒に脱出しろ・・・」と弟思いの優しさを示すが明は拒絶するのだった。明とケンちゃんを軽く訓練した後でいよいよ・・・病院を急襲・・・丸太で先制攻撃し・・・斬って斬って斬りまくるのだった。「誰にも怨みはない・・・悪いのは俺だ」と言いながら吸血鬼を殺しまくる篤だった。

ケン(遠藤雄弥)・・・吸血鬼化したために体力がアップしたらしい。もろ肌脱ぎのユキから血を吸わせてもらいながら・・・その心境派はいかに・・・。人間の世界で・・・吸血鬼として生きていくのは・・・あれだからな。作戦ではユキとともに裏口から侵入。紅葉の救出に成功する。吸血鬼一名を鎌で撃破。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。

ポン(西井幸人)・・・死亡した模様。

西山(阿部翔平)・・・作戦への参加は拒否するが・・・石を積んでポンの墓を作るのだった。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・どうやら雅の子を妊娠したらしい。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・アスカに「子供を産め」と許可する。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者。明によって檻から解放される。

ハゲ・・・存在を確認できず。

柳島(諏訪太郎)・・・501ワクチンをどこかに隠匿したらしい。その後、島を離脱した模様。

五十嵐軍医(鶴見辰吾)・・・不死身部隊研究の責任者。行き当たりばったりで輸血を繰り返す天才ドクター。諸悪の根源であるが・・・現在はミイラ化しているらしく、登場なし。

寝たきり吸血鬼(大山うさぎ)・・・認知症だが・・・昔のことはよく覚えているタイプで・・・重要なヒントをもたらしてくれたナイスなキャラクター。登場なし。

紅葉(麻亜里)・・・人質にされた冷の妹。病院の一室で監禁されていたが・・・冷が監禁場所を確認。後にケンちゃんとユキによって解放される。緊縛姿をサービス。

決戦への導入回である。

それぞれの場所の位置関係が不明なのが残念な感じだが・・・これは原作譲りだからな。

妄想的には・・・港からほど遠くない病院。かなり離れた場所に篤の隠れ家ということになる。学校は施設として病院とともに村の中心にあるはずであり、実力者だった松本家も同様だろう。つまり・・・病院と篤の隠れ家の間に洞窟や森があるということになるだろう。篤が島の地理を説明する場面は絶対に欲しいところだった。旅番組の基本じゃないか。・・・旅番組じゃないみたいだぞ。・・・えっ。

なんだかんだ・・・決着の時が迫るらしい。ふう。

関連するキッドのブログ→第8話のレビュー

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2013年12月19日 (木)

真実一路の女です(新垣結衣)知らぬが仏の放置プレー(堺雅人)私が愛した弁護士(岡田将生)

ああ・・・すさまじかった秋ドラマの坂路もこれで調教終了である。

二つも深夜枠を確保し、一つは早々と終わったのに・・・蓄積される疲労感も限界に近付いていたので・・・最後の最後がこれで・・・ある意味、万歳突撃の心境である。

とにかく、三夜連続最終回を乗り切り・・・一息ついて・・・コレだもんな。

お前の感慨はもういいぞ。

法というものを考える時に・・・第一に思い浮かぶのが・・・キッドの場合「公序良俗」という言葉である。

「人権の保護」とか「知る権利の保護」よりも「法」は「公序良俗」の維持にこそ・・・その主旨があると思う。

その対立概念は「自由と平等」だと考える。

そもそも・・・「自由」と「平等」が対立する概念である。

「自由」を目指せば「平等」ではなくなるし、「平等」を目指せば「自由」ではなくなるのだ。

その自由と平等がタッグを組めるのが・・・「公序良俗」への挑戦の場合なのである。

「公序良俗」は上下関係による秩序を求めるので平等を否定するし・・・たとえば加害者と被害者という区別がすでに不平等である。「公序良俗」は正しい生き方を限定するので自由を認めない。恐ろしいことに殺人の自由なんか完全に許されないのである。

だから・・・「法」という無慈悲な「公序良俗」の「具現者」に・・・人間が挑む時・・・普段は仲が悪い「自由」と「平等」が手を組んだりするのである。

この入り組んだ・・・関係を・・・見事に面白おかしく語ってしまう。

「リーガルハイ」の素晴らしさよ。

で、『リーガルハイ(第二期)・最終回(全10話)』(フジテレビ20131218PM10~)脚本・古沢良太、演出・石川淳一を見た。超巨大生物・コミカドとマユズミの激突により廃墟と化した東京荒野に降臨した新たなる巨大生物・ハニュウしかし、超質量を持った六法全書的浮遊物体は次元を越えて残存した人類に最後の一撃を加えようとしていた。その時、コミカドの聖なる人差し指は新たな奇跡を垣間見せた。だが・・・結局、どのような事象も破滅に向かって突き進む時の流れの前には無意味である。人々は最後にこう呟くだろう。なんでそうなるの・・・と。

本当の敵は敵のような顔をしていない

吉永慶子を名乗った漢字の苦手な帰国子女・羽生(岡田将生)は吉永小百合と松坂慶子を目指すソドムの住人である。

憧れの弁護士・古美門研介(堺雅人)を屈服させるさせるために・・・彼は悪魔のような策謀をめぐらすのだった。

「安藤貴和に対する殺人および殺人未遂被告事件」の二審を係争中だった安藤貴和に面会した吉永/羽生は美空ひばりの「真実一路」を歌い出す。

ああ あきらめて あきらめて

真実一路の 旅なれど

切れば血の出る 母と子が

一生他人で

一生他人で いられよか

羽生の告げる真実に・・・古美門弁護士と黛弁護士(新垣結衣)を裏切って「無罪」よりも・・・「無期懲役」を選んだ貴和。

今、貴和を呪縛した真実に対して・・・古美門と黛の新たなる闘争が開始されるのだった。

しかし・・・羽生の用意周到な計画は・・・二人から挑戦権さえ剥奪するのであった。

あなたの戦うリングはありません

「なんだって・・・」と古美門。

「安藤貴和様より・・・弁護人の解任が・・・通知されました」と事務員の服部(里見浩太朗)・・・。

「嘘・・・」と黛。

茫然自失となる師弟だった。

一審に差し戻された裁判は・・・検察庁に復帰した羽生検事と本田ジェーン検事(黒木華)と長期海外旅行から帰国した三木弁護士(生瀬勝久)によって争われることになってしまったのだった。

漫才コンビ・ヨシナガ&ケイコに変装した師弟は・・・貴和に強行面会を試みる。

「どうして・・・こんなことをしたんです・・・」と黛。

「最初から・・・無期懲役狙いなのよ・・・」と貴和。

「それはどうかな・・・私たちにまかせれば無罪になるのに・・・あえて、命を賭けて罪を認めるからには・・・それなりの理由があるのだろう」と古美門。

「・・・」

「吉永慶子に何を言われたんですか」

「・・・」

「私は・・・君が犯人だと思っていたが・・・どうやら・・・勘違いだったようだ」

「どうして・・・」

「私たちが無罪を勝ち取れば・・・当然、犯人捜しが始る」

「ふ・・・この私がだれかを庇っているとでも・・・」

「二時間ドラマでは常套手段だ」

「私は自分のことしか考えない女よ」

「そんな君が庇う人間がいたとしたら・・・それは真犯人ということだろう」

「とにかく・・・あなたたちの出番は終わったのよ・・・」

「そんな・・・真実はどうなるんです」

「真実になんか・・・なんの価値もないのよ・・・お譲さん」

裁判と言う名の出来レース

被害者の亡き妻の姉であり、一命を取り留めた遺児・徳永さつき(内田愛)の叔母に対する検察側の証人喚問。

「姪のさつきは本当に優しい子で・・・母親を亡くした時も気落ちした父親のためを元気付けようとする健気な子でした。それが・・・あの女が現れたことで明るさを失ってしまったのです。頭のいい子ですから・・・あの女の危険さに気がついていたんです。だから・・・あの女と再婚しようという父親を懸命に説得して・・・翻意をうながしたのです」

「さつきちゃんに説得された父親によって結婚を白紙に戻された被告は逆上し・・・犯行に及んだのです・・・」

残酷な犯行だが・・・検察側の求刑は「無期懲役」・・・。

その理由を弁護人が説明する。

「安藤貴和の人生は・・・その生い立ちから現在に至るまで・・・不幸の連続でした。父親に先立たれ、母親に捨てられ・・・暖かい家庭の味などというものは無縁の半生を過ごしてきたのです。そんな彼女にとって・・・徳永氏との結婚は・・・人生に初めて射した光明だったのです。それが破局を迎えた時、彼女のとった行動はけして許されるものではありません。しかし・・・情状酌量の余地は充分にあると思われます」

有罪しかし・・・情状酌量による無期懲役。

検察と弁護人が一体となって・・・ダンスを踊るのだった。

すべては・・・羽生の描いたシナリオ通りに進んでいた。

真実の探求者と快楽の使徒は叛旗を翻す

三木弁護士事務所に乗り込む古美門・・・。

「検察のいいなりで裁判を争うなんて・・・恥ずかしくないのですか」

「先生も大変ですねえ・・・有罪の女を無罪にしようとした弁護士として・・・評判ガタ落ちという噂ですもの」と例によって古美門を挑発する三木のくのいち秘書・沢地君江(小池栄子)・・・。

しかし・・・当の三木本人は・・・。

「いいじゃないか・・・ウインウインだ・・・」

「最強の弁護士である・・・私を倒すんじゃなかったんですか・・・」

「昔のことは水に流そう・・・仲好くやろうじゃないか・・・古美門・・・」

「うわあ・・・三木先生がウインウイン教の信者になってる・・・」

「何を言ってる・・・今度、フットサルのチームを作ろうと思ってるんだ・・・一緒にどうだ」

しかし・・・笑顔の三木弁護士の影で沢木は一瞬・・・不満そうな顔を漏らす。

もちろん・・・古美門はそれを見逃さなかった。

「NEXUS Law Firm」に一人・・・とりのこされた磯貝弁護士(古舘寛治)を餌に羽生をおびき出す・・・師弟。

ついに・・・正体を現した羽生は・・・古美門に自分の軍門に下ることを示唆するのだった。

「もう・・・いいじゃありませんか・・・一緒に素晴らしい世界のために手をとりあいませんか」

「それもいいかもしれない・・・」

「古美門先生と私が手を組めば・・・まさに無敵ですよ」

「うん・・・ラブ&ピースだな」

わざとらしくおどける古美門。

しかし・・・仁王立ちした黛は・・・そんな茶番に付き合う気は全くないのだった。

「真実によって誰かが傷つくことになっても・・・真実が誰かを不幸にするとしても・・・それが真実なら仕方ありません」

「どうやら・・・NEXUSの弁護士が・・・同意してくれないようだな」

「・・・」

「なにしろ・・・彼女は提灯ブルマの似会う朝ドラマのヒロインなんだ」

「先生だって最低最悪の下衆野郎じゃないですか」

結局、イチャイチャする師弟だった。

二人の仲のよさに顔を歪ませる羽生検事。

「・・・というわけで・・・私たちは・・・もうすこしあがくことにしてみるよ」

天使と悪魔の最終ラウンド開始のゴングが鳴り響くのだった。

「どうするんです・・・戦うリングもないのに・・・」となんとか余裕を見せる羽生。

「君は知らないのか・・・この世には由緒正しい場外乱闘という手があることを・・・」

不敵に笑う古美門だった。

貴和が庇っている「人物」を求めて・・・貴和の膨大な男性遍歴を洗う古美門チーム。

草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)、黛の異常なギャンブル運を越えて炸裂する服部のボリショイサーカス仕込みのナイフ投げ占い。

白羽の矢が立ったのは・・・。

極道の金崎組々長(浜田晃)だった。

「て、手広いですね」

「魔性の女だからな」

「相手を選らばなすぎですよ~」

「京極会二代目会長・蓮沼の愛人だったこともある女だ」

「だれが池袋ウエストゲートパークの話をしろと~」

「赤ちゃんプレーも得意なのだ」

しかし、勇気を出して金崎組に乗り込む二人。

「いつか・・・お前らが来るだろうと・・・あの野郎が言ってた」

「あの野郎って・・・」

「こいつだ・・・」

今や、飛ぶ鳥を落とす勢いで雑誌の表紙を飾る羽生だった。

「口止めされているが・・・他のものから洩れてもなんだから・・・教えてやる」

組長が愛した女・・・貴和は妊娠した。そして・・・逃げた。

極道の世界からも・・・悪女である母親からも遠ざけたい一心で・・・貴和は生まれた娘を里子に出した。

組長は貴和の決意の固さに負けた。

「この出生届の誕生日って・・・」

「徳永光一郎の娘のさつき・・・と一緒だ」

「・・・そういうことだ・・・俺も人の親・・・我が子の幸せを思えば・・・他人の命なんか屁とも思わねえ」

「それは・・・人の親として間違ってます」

「他言無用だ・・・明日は東京も雪だそうだ・・・東京湾はさぞ・・・冷たいだろうな」

悪人の中の悪人に脅されて震える師弟だった。

「これって・・・あれなんです・・・あれなんですよね・・・先生、なんとか言ってください」

「おもらししたから・・・パンツが冷たい」

「・・・」

しかし・・・絶対に負けたくない古美門と・・・真実一路の黛には・・・名誉ある撤退という言葉はないのである。

古美門と三木が激しく争っていないとものたりないくのいちを唆して貴和の髪の毛を入手。

怪しい坊主に変装した蘭丸はインチキな供養方法で両親の墓参りに来た徳永さつきの髪の毛を入手する。

もちろん・・・二人のDNA鑑定で母子関係を立証するためである。

慣れ合いには慣れ合いを~裁判官も濡れる法廷

突然開始された・・・古美門事務所の調査員・蘭丸による・・・事務員・服部の調査費未払い訴訟。

蘭丸の代理人・黛。服部の代理人・古美門である。

これ以上ない慣れ合い裁判なのだった。

そして・・・。

「すべては・・・あの・・・貴和が悪いのです」と明らかな偽証を始める服部。

「なるほど・・・あの悪魔の女なら・・・やりかねない」

「安藤貴和の証人喚問を要求します」

「裁判に大きいも小さいもないですからな」

こうして・・・全くの別件で・・・服部・蘭丸裁判に引き出される貴和だった。

あわてて・・・かけつける羽生。

羽生と三木の合作により・・・悪魔の女だけど可哀想という同情論も形成され・・・貴和の動向にはマスメディアも付きまとうのだった。

「何もしゃべる必要はありません」と叫ぶ羽生。

「傍聴席の部外者は黙っていてもらおう。質問する権利があるのは私だ」と古美門。

ここからは・・・貴和を演じる小雪の鬼気迫る演技が法廷を圧倒していく。

「あなたは・・・誰かをかばってるなんてことはありませんよね」

「何の話よ」

「あなたは・・・数え切れないほどの男性遍歴を送って来たので・・・お忘れの方もあるかもしれませんね」

「何言ってるの・・・」

「たとえば金崎正宗さんはどうですか・・・13年前に交際していた・・・」

「知らないわ・・・」

「彼の子供を妊娠したのにですか」

「裁判長・・・これは不当な証人喚問です・・・中止を求めます」と場外の羽生。

「裁判長・・・私も本件とは無関係の質問に思えるので異議を申し立てようと思いましたが・・・この後深く関連してくるのかもしれませんので・・・」と黛。

「続けてください」と裁判長。

「金崎さんは生むように言ったそうですね・・・しかし・・・金崎さんはさる広域暴力団の関係者でした。我が子可愛さで・・・あなたは逃げた」

「うるさい」

「出産記録です・・・あなたは確かに13年前に元気な女の子を出産している」

「やめて」

「そして・・・極めて暴力的で無法な世界から我が子を遠ざけるために・・・我が子を里子に出したんだ・・・泣く泣くね」

「やめろお」

「そして・・・歳月は流れた・・・」

「お願い・・・やめて」

「ある家であなたは・・・神鳴りに打たれたようなショックを味わった・・・成長したあなたの娘に再会したからです・・・その面影・・・特徴のある黒子・・・何より同じ誕生日・・・あなたは一目でわかってしまった・・・よりにもよって・・・たらしこんだ男の娘が自分自身の娘であることを・・・」

「やめてください」

「あなたは・・・どんなにか我が子を抱き締めたかったことでしょう・・・私が本当の母親だと名乗りでたかったでしょう」

ざわめく法廷。

「黙れ・・・」

「しかし・・・あなたにはできなかった・・・なにしろ・・・悪女ですからな」

「黙れって言ってんだろう」

「せっかく幸せに育った娘を不幸にすることはできないですから」

「何、ワケ分んないこと言ってんのよ・・・私に子供なんていない。みんな、あんたの妄想でしょう。あんな・・・くそ生意気なガキ・・・赤の他人よ」

「では・・・このDNA鑑定の結果を皆さんにご覧いただきましょうか」

「ちょ・・・何、勝手なことやってんのよ」

「落ちつきましょうよ・・・安藤さん・・・私はただ推測を話しているにすぎません」

「ふざけるな」

「それから・・・あなたは・・・むしろ・・・さつきちゃんに会いたくて徳永家に入りこむようになった・・・徳永氏と再婚し・・・さつきちゃんの母親になりたいと本気で願ったのかもしれない・・・しかし・・・賢く育ったあなたの娘はあなたの本性を見抜き・・・激しく嫌った」

「・・・」

「徳永氏は当然、あなたと別れる決意をするかと思われた。それならそれで仕方ないとあなたは思った。ところが・・・あろうことか・・・徳永氏は娘よりあなたを選んだ・・・なぜなら・・・あなたは恐ろしいほどに魅力的だったから・・・それを知ったさつきちゃんの絶望はどれほど深かったか」

「・・・」

「ずっとおかしいと思ってたんだ・・・なぜ・・・同じものを食べたのに・・・父親は死んで・・・さつきちゃんは助かったのか・・・子供なら・・・効力は半分でいいわけですよね」

「ちがう・・・」

「さつきちゃんは頭のいい子だ・・・致死量をコントロールするなんてこともやってのけたかもしれない」

「そうじゃない・・・」

「なにしろ悪魔の子だ・・・もちろん・・・自分が悪魔の子だとは全く知らないとしても」

「ちがう・・・あの子は犯人じゃない・・・あの子はお父さんが大好きだもの」

「なるほど・・・そうなると・・・残る可能性は徳永氏だ・・・あなたとの結婚を阻む子供が邪魔だった・・・しかし・・・我が子が可愛くないわけがない・・・絶望した徳永氏は・・・無理心中を・・・それにしたってあなたは罪をかぶらなくちゃならない・・・さつきちゃんは・・・自分を殺そうとしたのが父親だと知ったら・・・どれたけ傷つくかわかりませんからねえ・・・」

「異議あり・・・本件とは無関係の質問です・・・」とレフリー・ストップをかける黛。

「異議を認めます・・・」と二時間サスペンスドラマの王道ストーリーに心を揺さぶられ涙を禁じ得ぬ裁判官。傍聴席も泣いた。貴和も泣いた。

泥仕合に持ち込めば無敵の古美門弁護士なのである。

とにかく・・・服部・蘭丸裁判はうやむやのまま決着したのだった。

美しい真実をあなたに

うちのめされた貴和は師弟の面会を断れる立場ではなくなったのである。

「すっきりしただろう・・・のどにつかえたものを吐きだして・・・飲み込むのは大変だものな」

「・・・」

「世の中は大興奮だよ・・・心ないマスメディアはさつきちゃんを追いかけまわし、学校にも行けなくなったらしいし・・・もう・・・滅茶苦茶だ・・・つまり・・・君が守るべきものはなくなってしまったんだ・・・わざわざ有罪になる意味もなくなったんだよ。そうなれば・・・賢い君の取るべき道は限られている。私を再び選任してせめて自分だけでも無罪になることだ・・・そして私に1億円を払いたまえ・・・娘は娘・・・君は君だ・・・一人だけ・・・無罪になって勝って自由を手にしたまえ」

「先生、もう少し、言葉を選んでください」と黛。

「知ったことか・・・私を使い捨てにするような女だ。優しい言葉は無意味だ。安藤貴和・・・あきらめたまえ・・・本当の自分に戻って・・・愛人か実の娘に罪を着せて・・・無罪になってしまえ」

「あの子だけは巻き込ませない」

「遅い・・・もう巻き込まれてる」

「あの子に罪はないのよ・・・どうにかしなさい」

「どうにもならねえってんだろうが・・・どうせ捨てたガキだ・・・忘れてしまえ」

「やめてください・・・そんなひどい言い方は」と黛。

ここで・・・古美門の矛先は黛に向かうのだった。

「じゃあ・・・どうすりゃいいんだ?」

「貴和さんを無罪にして・・・さつきちゃんも救います」

「そんなことが・・・できるとでも?」

「やるしかないのです」

「・・・・・・何をだ?」

睨み合う師弟。

「・・・新しい・・・真実を・・・作りあげる」と声を震わせる黛。

「・・・・・・正解だ」と古美門は優しい声で告げるのだった。

「・・・」

「さあ・・・安藤貴和・・・今度こそ・・・本当の勝負だ」

三人は悪党の顔で見つめ合うのだった。

ある愛の終着駅

羽生は99%と手にした勝利の行方が・・・わからなくなったことに動揺を隠せない。

「リングに戻ったらこっちのもんだよ」

勝利を確信したものの笑みを浮かべる古美門。

これから・・・料理する魚を見つめる調理師の眼差しで羽生を見つめるのだった。

しかし・・・調理を担当するのは・・・黛だった。

羽生は古美門が・・・相手さえしてくれないのかと思い・・・すでに絶望するのだった。

「安藤さん・・・あなたは犯行を認め・・・罪を償うことを望んでいる・・・そうですね?」

「はい・・・私が殺しました」

意表を突かれる羽生。

(え・・・犯行を認めるのか)

「動機は何ですか?」

「彼に別れ話を切りだされ・・・絶望して・・・彼を殺して私も死のうと思ったのです」

(動機も認めるのかよ・・・なに・・・後追い自殺だと・・・)

「一部の報道では・・・あなたは徳永さつきさんを庇って嘘をついているとされていますが」

「根も葉もないことです」

「さつきさんは・・・あなたの娘だと言う噂もありますが」

「ありえないことです・・・私は彼女のことも殺そうとしていましたから」

「そうですよね」

(なんだ・・・どういうことなんだ・・・)

「では毒物はどうやって入手したんですか」

「インターネットで海外から購入したのです」

「これですか」

「東南アジアの闇業者が調味料に偽装して 密売している青酸化合物」を掲げる黛。

「はい」

(もう・・・すべてを自白しているじゃないか・・・なんだ・・・これは)

「これを持って徳永家へ行った・・・」

「はい」

「勝手口から台所へ入った・・・」

「はい」

「そしてスープに毒物を入れたんですね」

「入れることはできませんでした」

「入れてないのですか?」

(なんだって・・・なんなんだ・・・それは)

「となりの部屋から・・・彼と彼の娘の楽しげな声が聴こえてきました・・・思わず二人の姿を覗き見て・・・我に帰りました・・・自分のしようとしていることの恐ろしさに気がついたのです・・・二人が台所にやってくる気配がして・・・私はあわてて逃げ出しました」

(なんだとっ)

あれよあれよという間に進行する茶番に羽生は呼吸をするのも忘れるのだった。

「私は・・・何もかもが虚しい気持ちになりました・・・ところが・・・翌日になって恐ろしいことに気がつきました。バッグの中に・・・あの薬の入った壜がないのです・・・私は気が動転してうっかり・・・それをあの家に置いてきてしまったのです。そして・・・テレビから・・・あの・・・恐ろしいニュースが・・・ああ・・・」

「なるほど・・・そうですね・・・この壜はまぎれもなく・・・調味料・・・それにいかにも・・・美味しそうな感じです・・・こんなものが台所に置かれていたら・・・思わず試しに使ってみようと誰もが思うかもしれません・・・そして・・・不幸な事故が起きてしまった・・・そういうことだったのですね」

羽生はついに切れた・・・。

「事故って・・・異議あり・・・被告人は犯行を先ほど認めたはずです」

「はい・・・私があんなものを置いてしまったから・・・私が殺したのも同然なんです」

「ど、同然って・・・」

「お気持ちは分かりますが・・・あなたは実行していません・・・」

「私は確かに二人を殺そうとした・・・その時点で私は人殺しです」

「裁判員の皆様・・・真実はいつも思いもかけないものです・・・安藤貴和は・・・確かにとんでもない悪女かもしれない。愛する男性と幼い少女を殺害しようとして・・・そのために毒物も購入している。それがもたらした悲劇を考えれば・・・彼女の犯した罪は大変重い・・・断固、厳罰に処すべきです・・・毒物及び劇物取締法に違反しているからです。ただし・・・殺人罪は適用されません。殺人については無罪です。本件は殺人事件ではなく・・・不幸な偶然の重なった・・・事故死の可能性が高いからです」

「私は・・・殺人罪で罰してもらうことを希望します」

「それは不可能なのです・・・それが法に定められていることなのだから・・・。弁護人からは・・・以上です」

席に戻った黛は古美門に呟く。

「先生・・・私・・・汚れました」

「おめでとう」

羽生検事はうろたえながら質問を開始する。

「あなたが・・・これまで・・・法廷で行ってきた・・・犯行についての自供は何だったのですか・・・すべて・・・殺そうとしたから殺したも同然だと思っていたとでも言い逃れるつもりですか」

「殺そうとしたので殺したも同然だと思っています」

「そんなバカな主張が法廷で通用すると思うのですか」

「異議あり・・・いかなる証言も馬鹿な主張であると揶揄することは許されません」と古美門。

「異議を認めます」と裁判長。

「明らかにでっちあげだ・・・裁判を冒涜するにもほどがあるっ」

「異議あり・・・何をもってでっち上げと断ずるのですか・・・根拠もなく被告人の罪を悔いる魂の叫びを否定することこそが冒涜です」と古美門。

「異議を認めます」と裁判長。

「み・・・みみみ未必の故意・・・未必の故意です・・・あなたは殺そうとして毒物を持って行き・・・わざと置いてきた・・・それが恐ろしい結果を招くのを予想して・・・つまり・・・これは未必の故意による殺人です」

「おやおや・・・ということは・・・検察も彼女のこの証言を採用するのですね。あなた方がここまで積み上げて来た証拠とは全く異なりますが・・・。ということは・・・ここまで検察が一貫してなされた主張と証拠はすべて捏造だったと認めるわけですね」

「・・・」

「その上で・・・未必の故意による殺人を立証する証拠を用意して・・・最初から起訴をし直していただきたい」

「そんなこと・・・できるわけが・・・」

「反対尋問はないようです」と決めつける古美門。

「被告人はさがって結構です」と裁判長。

羽生検事はさらに切れるのだった。

「待て・・・安藤貴和・・・こんなバカげた証言ボクは認めない・・・ボクがキミのためにどれだけ尽力したのか・・・忘れたのか・・・こんな裏切り・・・許されると思うのか」

「意味不明でーす」と古美門。

「古美門先生・・・」

「羽生くん・・・これもキミの好きなウインウインじゃないのかな」

「彼女を無罪にしてウインウインのわけがない・・・彼女がどれだけ多くの人を不幸にしてきたか知ってるでしょう・・・せめて十年以上は・・・刑務所で罪を悔い改めさせるべきだ・・・でないと・・・不幸な人が増えるばかりだ・・・」

「それを決めるのは君ではないねえ」

「真知子・・・君はいつからあんなペテンを使う弁護士になったんだ・・・あれじゃまるで・・・古美門先生みたいじゃないか」

「おいおい・・・私と私のパートナーを侮辱するのはやめたまえ」

「古美門先生・・・あなたは・・・人間の愚かさにどこまでつけこめば気が済むんです・・・人間の愚かさや・・・人間の醜さ・・・そんなものにつけこんで勝ったって・・・そこには本当の幸福なんかありませんよ。一瞬の快楽だけだ。本当に幸せを得るためには・・・不本意でも面倒でもお互いが懸命に妥協点を見つけ出すしかない。相手に譲ること・・・争いを避け・・・みんなが幸せになる社会にはそれが不可欠です」

「もっともだが・・・それはこの裁判にはまったく関係ないな」

「どうして・・・人間の純粋さを・・・醜さではなく・・・美しさを見ようとしないのです。人間は・・・醜いものではない・・・本来美しいものでしょう」

「君には・・・誰も救うことはできないな」

「なぜです・・・ボクのどこが間違ってるって言うんです」

切れて切れて切れまくる羽生。

しかしそんな羽生を古美門はズタズタに容赦なく切り裂き粉砕するのだった。

「自分が間違えてないって思いこんでるところがだよ。君は人間は愚かだといった。まさにその通りだ。どいもこいつも愚かで醜く卑劣だ・・・自分の美しさを讃えないものが一人でもいれば怒り狂い、自分の思いが伝わらなければあらゆる手段で無理強いをし、手段を選ばず世界を変えようとする・・・わがままで勝手でずるくて汚く醜いゴミクズども・・・それこそが我々人間だ」

「だから・・・もっと・・・清く正しい世界に導くべきじゃありませんか」

「いい加減にしてくれ・・・君が清く正しいなんて誰が決めた。君もわがままで勝手でずるくて汚く醜いゴミクズの一人なんだよ・・・」

「ボ・・・ボクが・・・」

「自分の理想のために裁判を利用し、人をたらしこんでだましてあやつり、自分の賢さにうぬぼれ人のために尽くす自分が大好きで、自分で自分に酔いしれ、皆を幸せにしたい・・・ウインウインにしたいと嘯く・・・だが・・・それは君の単なる欲望だ。皆から感謝され、敬われて、バレンタインデーにチョコレートを一杯もらい、ウハウハしたいそれだけのことだ。君が目指しているのはウインウインじゃなくて・・・自分以外の全員を負け犬のルーザーに仕立ててキミだけが立派な飼い主として一人勝ちすることさ。いいか・・・これから・・・君の正体を教えてやる。君は独善的で人を見下しいい男ぶったうすら笑いが気持ち悪いスーツのセンスもおかしい漢字もろくにかけず英語もサッカーもそれほどうまくないでたらめな諺好きの甘くてぬるくてちょろい裏工作がたまたまうまくいっただけのゆとりの国のポンコツへたれ天パー短足お前の母ちゃんデベソのくそったれプリンスなんだよっ」

ついに完全にブチ切れる羽生だった。

「ひどい・・・なにも・・・そこまで・・・言わなくても・・・ボクの気持ちも知らないで・・・そんなに罵らなくてもいいじゃないか・・・ボクだって・・・ボクだって・・・一生懸命やっているのに・・・」

「・・・」

「おーいおいおい・・・・おーいおいおい・・・」

号泣する羽生だった。

古美門は優しく手鏡を差し出すのだった。

スリッパなみの魔法グッズだな。

「見たまえ・・・いい顔になったじゃないか・・・ようこそ・・・くそったれの世界へ・・・もしも、キミが皆が一緒に幸せになる世界を築こうと言うのなら・・・君が為すべきことはたった一つだといえる・・・それは・・・己の醜さを愛するということだ」

「グスン・・・ヒック・・・・ウエエエエエン」

愛しい人にほんの一瞬だけ優しくされて涙のとまらない羽生だった。

もう・・・裁判なんかどうでもよくなっている一同なのである。

しかし・・・当然のことだが・・・安藤貴和は無罪になった。

人は皆隣の奥さんを好きになっちゃった憐れな巡礼なり

こうして・・・古美門の常勝の美学は貫かれたのだった。

黛は・・・徳永さつきに・・・嘘の鑑定書を渡す。それは安藤貴和との親子関係を否定するものだった。

晴れ晴れとした喜びを示すさつき。

そんなさつきを密かに見つめ・・・微笑む和貴だった。

そして・・・ホテルのベッドで古美門を緊縛眼隠し放置プレーで楽しませた後でキスマークを残し華やかな闇の世界へ去っていくのだった。

傷心の羽生は元気に旅立って行く。

黛は・・・羽生の本心も知らずに・・・一人相撲を自己完結し爽やかな気分になるのだった。

真実 諦め ただ一人

真実一路の 旅を行く

真実一路の旅なれど

真実 鈴振り 思い出す

そして・・・黛は古美門事務所に舞い戻る。

三木は古美門の首に賞金を懸ける。

そして・・・古美門は潜水艦の購入計画をたてるのだった。

服部がいかに案じようとも・・・古美門の増長はまだまだ続くのである。

二人で居たれど まだ寂し

一人になったら なお寂し

真実 二人は遣る瀬無し

真実 一人は堪え難し

あ・・・アラシじゃなくてイデ(矢野聖人)のこと忘れてたけど・・・別にいいよね。次期シリーズまで生き残りが一番心配されるよね。がんばってね。ヅラの部下にはありがちなことだからね。

ちなみに「羽生くんの真実の恋と旅立ち」と「北原白秋」と「隣の奥さん/吉田拓郎」は一本の糸でつながっているのだが・・・そんなこと書いても誰にも伝わらない気がして書くのをやめたことをメモしておく。

関連するキッドのブログ→第9話のレビュー

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2013年12月18日 (水)

変身前のもう一人の私は異性からは無視され同性からは憐れまれる存在なのだった(中丸雄一)

今回・・・一番印象的だったのは・・・もみあって変身が解かれた・・・主人公に対する甘粕の反応だった。

それまでの憎悪が消えて・・・穏やかな気持ちさえ感じさせた甘粕。

これには白川が青沼である時の編集長のよそよそしさが対応している。

変身インタビュアーという奇抜なアイディアの肝はこの美醜の落差にあることは間違いない。

序盤はこのテーマがあからさますぎて・・・馴染めなかったわけだが・・・終盤でついにキッドはそれに心をキャッチされてしまったのである。

つまり・・・青沼の正体は白川であり・・・本質的に「ダメジン」なのである。

あえてイケメンという言葉を使えば・・・イケメンの青沼は・・・女性に興味を抱かれ、男性に警戒心を抱かれるがインタビュアーとしては・・・青沼の自信とは裏腹に実は何一つ本質に迫れていないのである。

そりゃそうだ・・・イケメンの質問なんかに・・・誰だってまともに答える気になれないもんなあ。

この醜→美には変奏曲があって・・・それは現在と回想シーンによって展開されている・・・登場人物たちの老いと若さであり、具体的にはカツラ→ハゲである。

甘粕が・・・安藤刑事が・・・黒曲が隠しているもう一人の本当の自分である。

女性については巧妙に隠されているが・・・夷鈴子(玄覺悠子)が実は伊藤文枝であり、本当は夷鈴子(工藤綾乃)だったことや、甘粕が愛しているのが真壁真奈美(中村優子)ではなく夷鈴子(工藤綾乃)だったことが美醜の残酷さを物語っている。まあ・・・鈴子は真奈美かもしれないけどな。

エンディングがナレーターのウエイトレス(上間美緒)で・・・その後が三貴子の泉の噴出であることも・・・そこには性的な魅力の暗示があるわけである。

イケメンである青沼には見えない・・・この世の真実・・・それは・・・基本、みんなダメジンなのね・・・ということだろう。

キッドはおよそ三千人くらいにインタビューしているから・・・間違いないと思う。

で、『・第9回』(TBSテレビ201312100028~)脚本・演出・三木聡を見た。青沼/白川(中丸雄一)とゲビヤマくん(木村文乃)にすべてを語ろうとした真壁真奈美(中村優子)は殺されてしまった。そのことを報告した白川は・・・着替え中のゲビヤマくんの下着姿をじっくりと鑑賞するのだった。特に背後に回ってお茶の間には見えない尻のあたりを・・・それはまあ・・・いいじゃないか・・・。真奈美の死を知った安藤刑事(光石研)は涙を流し・・・その愛の深さをさらけ出す。そして・・・おそらく・・・青沼/白川と同様に仮面をかぶっている甘粕(眞島秀和)はそれほどでもない顔をのぞかせる。彼はこのドラマにおけるノーマン・ベイツ(ヒッチコックの映画「サイコ」でアンソニー・パーキンスが演じた二重人格の殺人鬼)の役割を演じているのだろう。しかし、実際に殺人鬼であるのかどうかはまだ分からない。なにしろ・・・このドラマはもう一人の自分だらけなあのだあ。

多重人格の中でも二重人格は表現のシンボルとしては分かりやすい存在である。

光と影。表の顔と裏の顔。加害者と被害者。そして美醜・・・。

さらに夢と現実。生と死。

生者と死者が交錯するラインを越えた世界では・・・殺されることにあまり意味はない。ゲビヤマくんの夢の中で射殺された青沼/白川が生きているのが現実だとは限らないのである。白川の百冊目を書いてしまったヘパイストス出版第二編集部編集長・風見川(岩松了)は妻と娘に殺害されて死体としてベッドに横たわっているのかもしれない。

そもそも・・・夢を見ているゲビヤマくんが・・・生きているのか死んでいるのかも定かではないのだ。

そんな・・・わけのわからないものを淡々と描いているこのドラマ。

たまらんわけである。

青沼はゲビヤマとともに真奈美の遺体の発見された三貴子の泉に向かい・・・事情を聴くために真奈美と暮らし始めていた甘粕(眞島秀和)を訪ねる。しかし、管理人の家に甘粕の姿はなかった。

そこで・・・コンビは安藤刑事に電話で呼び出され・・・真奈美の死体が安置されている謎の建物に向かうのだった。もはや・・・現実感は全くないのである。

よくわからない建物・・・殺人の被害者の遺体が置かれているのだから・・・しかるべき場所なのだが・・・の中に当然の如く佇む黒曲(松重豊)・・・。

「おや・・・あなたは偽りの仮面をかぶってますね」

黒曲は青沼/白川に語りかける。

まあ・・・この世には偽りの仮面をかぶった人間しかいないわけだが・・・。

しかし・・・思うところのある青沼/白川は反駁する。

「どういう意味ですか」

「あなたはもう一人いるという意味ですよ」

「・・・」

意味ありげだが・・・お茶の間的には図星そのものである。

もちろん・・・単純に考えれば・・・猫旅館は黒曲に監視されているということである。

「青沼さん・・・アリバイについて伺いたい」

「私は・・・賽の河原町の猫旅館におりました」

青沼は二人にインタビューを開始する。

「私が知りたいのはチューリップ殺人事件に関することなのです。黒曲さん・・・あの時、あなたは二人が殺害されたことをどなたからお聞きになったのですか」

「今の消ノ原信用金庫三貴子支店支店長からですよ」

「安藤さんは・・・遺体はご覧になったんですよね」

「当然だろう」

「それは・・・チューリップになる前ですか」

「チューリップになる前・・・だと」

「そう・・・何者かがただの死体をチューリップにした」

「何を言ってるのかわからんね」

「あなたが・・・ただの死体を見ていなかったとしても・・・それをチューリップにする指示は出せた」

「何のためにそんなことをする必要がある」

「ただの殺人事件をチューリップ殺人事件に仕立て・・・世間を大騒ぎさせるためですよ」

「・・・」

「あなたは・・・そうやって・・・真奈美さんの横領の発覚を阻止しようとしたのでしょう」

「馬鹿馬鹿しい」

「しかし・・・実際に・・・事件のために・・・監査はうやむやになった」

「・・・」

「ついでに・・・あなたは事件そのものもうやむやにした」

「・・・」

「そういう・・・仕掛けをしたのは・・・黒曲さん・・・あなたでしょう」

「・・・」

「しかし・・・誤算があった・・・あなたの趣向が・・・まわりまわって・・・あなたの存在を暗示してしまったからです」

「ほお・・・」

「そもそも・・・チューリップはあなたの趣味だ・・・その証拠は川本写真館に残されている。そして・・・」

「よくわかりませんね」ととぼける黒曲。

そこで・・・何故か・・・突然、ヒステリックなフェミニストに変身するゲビヤマくん。

「よくわからないってどういうことよ・・・女性にあんなことをしておいて・・・ヒラリストが聞いてあきれるわ・・・あれは・・・癒しじゃなくて凌辱・・・あなたは女性を冒涜している」

「ゲ・・・ゲビヤマくん」

「女性の尊厳をなんだと思ってるのよ」

唖然とする三人の男たち。彼らは基本的に女性に尊厳があるとは思っていないようだ。

とにかく・・・ゲビヤマくんの場をわきまえぬ激昂によって青沼の見せ場は中断されてしまったのだった。

二人きりになり、我に帰るゲビヤマくん。

「すいませんでした」

「いや・・・いいんだ・・・写真館の川本さんが言うように女性にはつらい写真に君は耐えていたんだ・・・その忍耐力が時間差で限度を迎えた・・・それだけさ」

「・・・」

「だけど・・・これで・・・僕たちは・・・完全にこの町の敵になってしまったようだ」

「催し物について・・・公言したからですか」

「まあ・・・そうだね」

「・・・」

「ゲビヤマくん・・・君は東京に帰った方がいい」

「そんなこと・・・今更・・・言わないでください・・・私は先生から絶対に離れませんから」

「しかし・・・もう百冊目を書くことはできないんだぜ・・・だってそれはもう存在しているんだから」

「もはやそれは私には関係ないことです」

「じゃあ・・・単にずっと一緒にいるってことなの」

「私はそうしたいんです」

「・・・」

「・・・」

微妙な気持ちになる二人だった。

二人が捜していた甘粕は・・・二人を捜して消ノ原食堂「モアイ」にやってきていた。

「彼は・・・来ていないかい」

「電話をしてみたら」とアドバイスするモアイの川島芳香(町田マリー)・・・。

「してみたが・・・つながらない」

しかし、二人はモアイのすぐ傍まで来ていた。

だが・・・車でのりつけた消防団の三人組が襲いかかり青沼は拉致されてしまう。

「なんですか」

「いいから来い」

「やめてください」

追いすがるゲビヤマくんに連れ込まれた車中から青沼はカセットテープ型録音参号機「白虎」のワイヤレスマイクを掲げる。

モアイの店内では・・・煙草を燻らせて川島が素知らぬ顔で甘粕に問いかける。

「ねえ・・・まさか・・・真奈美を・・・あなたが殺したりはしないわよね」

しかし、甘粕は問いには答えず・・・川島の首を冷たく見つめるのだった。

そこへ・・・ゲビヤマくんが飛び込んでくる。

例のバッグから「白虎」本体をとりだし・・・アンテナを伸ばすのだった。

ものすごい出力による広範な有効範囲らしく・・・ワイヤレスマイクの発信した電波を本体はキャッチするのだった。まあ・・・霊界通信だからな。

「・・・作業小屋なんかでどうするつもりです」

拉致された場所を知らせる青沼だった。

その声を聞いた甘粕は血相を変えて店を飛び出すのだった。

作業小屋では・・・消防団トリオが青沼を弄っていた。

「これはかわいがりですか」

「真奈美を殺したのはお前だろう」

「僕じゃありませんよ」

「お前が・・・真奈美を見つけた」

「・・・」

「お前が・・・真奈美を町に戻した」

「・・・」

「そして・・・真奈美は死んだんだ・・・結果的に・・・お前が殺したってことだよ」

「・・・」

「お前は・・・その責任を感じないのか」

「・・・」

真奈美を愛していたらしい男たちの怒りは暴力となって青沼に襲いかかるのだった。

「笹川・・・やめろ」

制止したのは・・・笹川だった。

「しかし・・・」

「私がやめろと・・・言っているまだ」

指を立てて怪しい圧力を加える甘粕。

普通に考えると・・・元亭主の甘粕の方が・・・浮気相手の男たちよりも・・・主導権があるということになるわけだが・・・このドラマではそういうことにあまり意味はないよね。

とにかく・・・甘粕の異様な迫力に消防団トリオは気圧されて引き下がるのだった。

「助かりました・・・甘粕さん・・・あなたは彼らにも影響力があるのですね」

「もう・・・終りにしてください」

「何をですか」

「インタビューですよ・・・もう大体聞きたいことは聞いたでしょう」

「ええ・・・一つをのぞけば」

「ひとつ?」

「夷鈴子の青いネジですよ」

「まだ・・・わからないと・・・」

「わかりません」

「あなたは・・・他人の領域に侵入して・・・触れてはいけないところに触れている。どんだけ自由なんですか。世の中は・・・おかしいならおかしいままに、バランスが取れてるってことがあるんですよ・・・この部外者め」

つかみかかる甘粕は・・・触れてはいけないところに触れて・・・青沼のバランスを崩してしまうのだった。

たちまち・・・曝される白川という本体。

「え・・・」

「・・・」

「そんな・・・」

「・・・」

「あなたは一体何なのですか・・・」

健常人だと思っていた人が身体障害者だったと分かった時の表情で絶句する甘粕だった。

そこには人としての遠慮が垣間見えるのだった。

白川は甘粕の心理をひしひしと感じながら仕方なく開き直るのだった。

「ずっと申し上げているでしょう・・・私はただのインタビュアーですよ」

「・・・」

「さあ・・・行きましょう」

「行くって・・・どこへです」

「真実のあるところへです」

再び変身した青沼が甘粕と一緒に訪れたのは黒曲のいる場所だった。

「黒曲さん、まず結論から申しましょう・・・あなたはチューリップ殺人事件の・・・殺人者ではない」

「ほお・・・」

「あなたは催し物の写真を撮影させた」

「・・・」

「実に猥褻な写真です」

「・・・」

「そんな写真を思春期の若者が見逃すわけがない」

「・・・」

「写真館の川本さんの息子である消防団の川本は・・・恐ろしいほどの性的興奮を覚えた・・・猟奇的殺人事件に見せかけるための手伝いをさせられた川本は・・・咄嗟にその時の興奮を思い出してしまったのでしょう・・・」

「・・・」

「そして・・・思いがけずに・・・擬装された猟奇的事件をあなたと結びつけてしまったのです」

「奇妙な話ですな」

「あなたにとっては思いがけない展開だった。ただ・・・奇妙な事件にするように指示を出したのに・・・結果的に・・・あなたに疑いがかかりかねないチューリップ殺人事件が誕生してしまったのですから・・・」

「ふふふ・・・あなたは結局何も知り得ていない・・・いや・・・なぜ、ここに来たのか・・・その意味さえわかっていないようだ・・・結局、あなたは何を知りたいんですか」

「私は・・・」

「いや・・・もう一人のあなたがですよ」

そこで・・・甘粕が口を挟む。

「青沼さん・・・一つ知っておいてもらいたいことがあります」

「何でしょうか」

「私が生涯で愛した女性は・・・鈴子だけ・・・ということです」

その時・・・青沼は・・・ゲビヤマくんの危機を察知するのだった。

おそらく・・・ゲビヤマくんは悲鳴をあげていたのだろう。

三貴子の泉へ続く階段で・・・前後を謎の集団「おくりさま」にはさまれていたからである。

自分はどこかにおくられてしまう・・・とゲビヤマくんが蒼白になった時・・・青沼がかけつけるのだった。

「先生・・・」

「君は話の腰を折るために生まれて来たんだね」

「・・・」

見つめ合う二人。

その時、おくりさまの一人が青沼に囁く。

「もう一人いますよ」

茫然とする青沼。

日没引き分けらしく・・・二人は旅館に戻るのだった。

自宅に死体を偽装して帰宅する家族を驚かせるサプライズを成功させるために東京に戻ると言う編集長と名残を惜しむ女将の櫻井野薔薇(ふせえり)と番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)・・・。

そこで・・・編集長は・・・サプライズのために「白川の百冊目」を刊行したことを告白するのだった。

ゲビヤマは驚くが・・・青沼は閃くのだった。

「チューリップ殺人事件」と小説「チューリップ殺人事件」は全く無関係だった。

同様に・・・殺人事件とチューリップ殺人事件も無関係なのではないか」

「どういうことですか・・・」

「つまり・・・殺人者と・・・チューリップ殺人事件擬装犯は別人なのさ」

「つまり・・・もう一人いると・・・」

「そうだ・・・そして・・・もう一人とは・・・」

そこへ・・・甘粕が旅館にやってくる。

「甘粕さん・・・どうして・・・ここへ」

「犯人は私です」

はたして・・・甘粕は・・・いつ誰をどこでどうやって何のために殺したのか。

何一つ分かっていない・・・インタビュアーだった。

なぜなら・・・彼は真実には興味がないのだ。

それではなぜ・・・彼は何故と問うのだろうか。

もちろん・・・答えなどあるはずもなく最終回も謎に包まれるはずである。

そんなドラマをキッドや一部お茶の間の100万人くらいの人々が何故見続けるのかも謎なのだった。

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2013年12月17日 (火)

あの蒼穹を撃て!・・・でごぜえやす(綾瀬はるか)

・・・なんのこっちゃである。

序盤から・・・何が描きたいのかよくわからない大河ドラマだったが・・・最後にはついに誤射なのである。

いや・・・まさか天を撃てという極左テロリズムの推奨じゃないだろうな。

もちろん・・・そんなことはないという意見もある。

これほどまでに・・・一人の女性・・・しかも限りなく庶民を描いた大河ドラマはかってなかった。

彼女は歴史上の主役だったことは一度もない。

確かに・・・山本覚馬の妹だった。

そして・・・新島襄の妻だった。

会津若松城の戦いにおける男装の兵士だった・・・かもしれない。

だが・・・彼女が歴史を作ったとは言い切れない。

つまり・・・逆に言えば・・・歴史とは無名の人々のうねりに過ぎないということになる。

白土三平かっ。

まあ・・・それもいいだろう。

しかし・・・たとえば・・・八重が勲章をもらう原因となる日本赤十字社入社だ。

「公平」を理想の一つとする赤十字社の精神にのっとり・・・ある意味で孤高の人である八重に最後の活躍の舞台を提供する。

その日本赤十字社はやがて・・・日本の最後の戦争が終った後で・・・在日朝鮮人帰国事業に深く関与することになる。

人道的な事業だったものが・・・いかに悲劇を生んだか・・・ということである。

そこに歴史の恐ろしさがあるのではないか。

1959年、帰国事業に反対する当時の大韓民国政府は韓国工作員による新潟日赤センター爆破未遂事件を引き起こしたりするのである。

理想と・・・現実との・・・馬鹿馬鹿しいほどの乖離・・・。

キッドは平和主義者こそが・・・戦争を招聘する元凶であることを疑わない。

俺は本当の人間を描く・・・と言いながら嘘八百のメロドラマを書く徳富蘆花よりも・・・NG連発の新人女優に共感してしまうADの方がよっぽど好きだ。

ああ・・・単なる好みの問題かよっ。・・・っていうか分かる奴だけ分かればいいネタ禁止だと何度言えばっ。

で、『八重の桜・第50回』(NHK総合20131215PM8~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。フィナーレを飾るのは勲六等宝冠章を受勲したヒロイン新島八重の三大イラスト描き下ろしで大興奮でございます。画伯におかれましては一年間、御苦労さまでございました。キッドは終盤は伊勢みねや山本久榮にも萌え・・・大山夫妻にうっとりいたしましたぞ~。来年は久しぶりの戦国もの・・・ワクワクいたしますな~。主人公は戦国時代を終わらせた男ではなくて・・・戦国時代が終って舌打ちした男だと思いますけどな~。

Yaeden050 明治27年(1894年)8月、日清両国が宣戦布告。公式に日清戦争に突入。新島八重は広島の陸軍病院で篤志看護婦の取締役として従軍したとされる。9月、平壌の戦いで野津第五師団長は清国兵2千人を戦死に至らしめる。黄海海戦で伊東連合艦隊司令長官は清国巡洋艦「経遠」「致遠」「超勇」を撃沈。10月、鴨緑江作戦で山縣第一軍司令官は九連城(清国領土)を無血で制圧する。11月、旅順口の戦いで大山第二軍司令官は旅順要塞を1日で陥落させ清国兵4500人を戦死させる。この時、旅順で日本兵による清国民間人の虐殺事件が発生する。ゲリラ対策問題の発生である。結局、総力戦となれば無差別大量虐殺は当たり前ということであろう。なお、現場には軍医・森鴎外が参戦している。明治28年(1895年)1月、樋口一葉が小説「たけくらべ」の連載を開始。4月、日清講和条約調印。5月フランス、ドイツ、ロシアによる三国干渉により、遼東半島を中国に4500万円で返還。6月、台湾総督府開庁。明治29年(1896年)5月、山本佐久死去。6月、明治三陸大津波により死者二万人。山本八重に勲七等宝冠章が授与。明治30年(1897年)、6月、京都帝国大学創立。明治31年(1898年)2月、山川浩男爵死去。3月、ロシア帝国が清国関東州に進出。5月、フランス共和国が清国広州湾に進出。6月、英国が清国九龍半島に進出。明治37年(1904年)、日露戦争において八重は大阪陸軍予備病院に篤志看護師として従軍。勲六等宝冠章を授与。昭和3年(1928年)、八重が昭和天皇より銀杯を下賜される。昭和7年6月14日、新島八重死去。享年86歳。

洋風にしつらえた玄関は無人であった。

八重の嗅覚は夫である襄の匂いをとらえていた。

襄の存在が八重の足を急がせた。

奥の客室の扉を開く。

そこには豪華なベッドが置かれていた。

白人女性の胸に抱かれて襄は寝そべっていた。

「無礼者・・・」と美しく気高いヴァンパイヤは赤い目を見開いた。

「夫を返してもらいに参りました」

八重は英語で語りかけた。

「何・・・」とヴァンパイヤはドイツ語から英語に言葉を改める。

「私は新島八重・・・そのものは襄と申し我が夫です」

「・・・」

ヴァンパイヤはじっと八重を見つめ・・・やがて哄笑する。

「これは・・・おかしい・・・妾に・・・口を聞く猿がいるとは・・・」

「猿ではございませぬ・・・あなたのような魔性のものとは違い・・・洗礼を受けたクリスチャンです」

ヴァンパイヤは笑いを停め・・・八重を見つめた。

「面白い・・・このエリーゼ様の誘惑の眼差しが効かぬとは・・・」

「そのような邪眼などこの八重には通じませぬ・・・」

「そうか・・・それでは夫を返してしんぜよう・・・受け取るがいい・・・」

信じられぬ怪力でエリーゼは襄の身体を片手で八重に向かい投げつける。

しかし、八重もそれを軽々と受け止める。

「おかえしいただきありがとうございます。お礼にその汚れた魂を地獄に落してさしあげましょう」

八重の宣戦布告と同時にエリーゼは全裸のまま立ち上がり蝙蝠の翼を広げる。

しかし、八重は拳銃を抜き放っていた。

「会津山本流鉄砲術奥義・・・十字射ち」

銃声が鳴り響き・・・エリーゼの胸に十字架が刻まれる。

「なんと・・・このようなことが・・・」

「あるのでございます」

室内に超常的な旋風が吹いた。

一瞬後・・・エリーゼは塵となって爆散する。

エリーゼの消滅によって襄は呪縛を解かれた。

「八重さん・・・」

「襄・・・」

「私は・・・不浄のものとなってしまいました」

「こんなところで・・・寄り道をするから・・・」

「八重さん・・・私は神に背き・・・不死の道を歩むことはできません」

「襄・・・」

「信仰に殉じたいのです・・・あなたをどんなにか苦しめるか・・・それは分かっています・・・しかし・・・私がすがることのできるのは・・・八重さん・・・あなたしか・・・ありません」

「襄・・・」

「どうか・・・速やかに・・・私があなたの血を欲する前に・・・ああ・・・もう・・・時がない」

八重は・・・対吸血鬼用のクナイを襄の胸に突き刺した。

八重の腕に抱かれた襄は砂となってこぼれ落ちる。

八重は生まれて初めて異国の神に祈った。

「天にましますわれらの父よ・・・願わくば・・・心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたを愛したこの者の魂を救いたまえ・・・」

その声は冷たい冬の夜に虚しく響いた。

関連するキッドのブログ→第49話のレビュー

坂の上の雲の頃

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2013年12月16日 (月)

神に代わって、お仕置きよ!・・・うわあ、やられたあ(木村拓哉)

おちゃめな妹と遊んであげる・・・すべてのお兄ちゃんに捧ぐドラマだったのか・・・。

まあ・・・そういう考え方もあるな。

物騒な妹を持つと苦労するんだよな。

俺の妹が人類を抹殺するわけがない・・・と思ってると抹殺しようとしたりするんだな。

どんだけ、物騒な妹なんだよ。

ロイドの製造年数47年、妹クイーン、生後三ヶ月だからな。

木村拓哉(41)、大島優子(25)なので実年齢通りだと黎士と七瀬も16歳の年齢差兄妹である。

高校生の時に生まれた妹なんて・・・滅茶苦茶、可愛いよなあ・・・。

当然、七瀬も黎士萌えなので・・・レイコの凶暴化は・・・やはり、黎士と麻陽の婚約が・・・原因と考えられる。

物語の途中では・・・確かにその気配もあったわけである。

黎士が帰還して・・・麻陽との挙式になると・・・七瀬の病気は再発することが確実と予想される。

だから・・・戦いはまだ始ったばかりなのである。

一応、タイムトラベルものとしては古典的な・・・分岐する未来ものにおさまったこのドラマ。

今のところ・・・未来は・・・人類が人間として生きている2113年につながっている。

しかし・・・現代からは消失したように見える・・・人類がカード化された2113年は可能性として存在しているわけである。

沫嶋黎士が超人格化を止めて・・・一人の人間に固定化された以上・・・未来の明暗は・・・人類に委ねられたのである。

おそらく・・・その世界では未来が過去に干渉してはならないというルールによって縛られているだろう。

しかし・・・ルールは破られるためにあるのだ。

再び、未来からの干渉が始った時・・・誰かが・・・たとえば葦母刑事が・・・エーアールエックスセカンドサーティーンを実体化するキーを委ねられているのかもしれない。

あるいは・・・最初から・・・葦母刑事はそのキーを・・・チッ。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・最終回(全10話)』(TBSテレビ20131215PM9~)脚本・西荻弓絵・泉澤陽子、演出・波多野貴文を見た。この枠はかって「JIN-仁-」というタイムトラベルものである程度の成功をおさめたのだが・・・原作ありで・・・旅行するのは過去。つまり、時代劇の亜流だったわけである。歴史的な人物も多数登場して・・・改良の余地がある原作つきであり・・・ある程度の計算が可能だったと言える。それに対し、未来が関与するこちらは・・・基本的にハードルが高いわけである。一般人にとって・・・過去は現実のものであり、未来は空想の色が強いという感覚があるからだ。実際には過去も未来も・・・現在でさえも基本は空想なのだが・・・そう感じる人は少ないわけである。そういう基本的なお茶の間に対し・・・物凄いチャレンジをしたわけで・・・それだけで万歳三唱をしたい今日この頃なのであった。一方で・・・そういう大衆の中でいつもは迫害されている・・・そういうのが好きな人々の厳しい視線も注がれるわけである。この両者を納得させるスペースの狭さにキッドなら眩暈を感じると思う。そして、己の無知蒙昧、無教養、知ったかぶりを省みず暴動する的外れな輩のバッシングの嵐・・・その修羅場を乗り切って・・・最後までフタケタのレーティングを維持しつつエンディングを迎えたのは素晴らしいことだと考えます。

「勝つまで何度でも・・・やります」・・・そう宣言した沫嶋黎士にとって・・・殺害されるのははじめてのことではなかったわけである。

どのような手法にしろ・・・時間の壁を突破すれば・・・そこにはループ構造が形成されるのである。

少なくとも・・・黎士のコンタクトした2113年は・・・最後にロイドのメモリキューブが海底から発見される2113年とは異なる未来だった。

その未来では・・・黎士が「思いの素粒子」を発見できなかったのかもしれない。

あるいは・・・安堂麻陽暗殺計画が成功した未来かもしれない。

とにかく・・・エンディングを迎えた未来とは別の未来があったわけである。

来るべき未来が過去形というところで・・・分らなくなってしまう人もいると思うが・・・そういう人はかわいそうだがそういう運命だと思ってあきらめるしかないわけである。

それでも知りたい人は天使テンメイ様に平行世界の共存について教えてもらおう。

言わば・・・知的障害者を虐待している施設に子供をそれでも預け続けなければならない親のようなものである。待遇が改善されることを願うしかないのだから・・・辛いのだな。

それはそれとして・・・たとえば・・・黎士が「思いの素粒子」を発見できなかった未来では・・・2066年に人類の人減らし対策としての下層民虐殺が行われる恐るべき階級社会であり、宇宙に棄民のためのスペースコロニーはなく、2113年には人類は全員カード化され・・・永遠の安眠をむさぼっているらしい。

黎士は未来とのコンタクトによって・・・その未来の改変を始める。

ここであえて・・・黎士のコンタクトした未来を暗い未来・・・エンディングでの未来を明るい未来と名付けておく。

黎士は明るい未来を目指して戦うが・・・最初は・・・ラプラス(福田彩乃)によって殺害された時点で・・・未来は暗い方向に確定したのだろう。しかし、魂化した黎士は再び、過去の黎士に未来とのコンタクトを取らせるのである。つまり・・・それは第二の現代なのである。

そうして・・・黎士は一歩ずつ前進していく。

カドシロによってロイドが破壊されてしまった未来もあっただろうし、メンデルがロイドを破壊した未来もあっただろう・・・その度に黎士の魂はふりだしに戻ってやり直しているのである。そして・・・何回か・・・何十回か・・・何万回か目の現代をお茶の間は目撃しているのだった。

今回だって・・・ロイドの勝利は際どいものであった。

エーアールエックスナインス=ザ・ラスト・クイーン(桐谷美玲)を躊躇させた・・・大物政治家の執務室を誰かがノックしなければ・・・ひょっとしたらロイドは敗北していたのかもしれないのである。

つまり・・・人類を救ったのは姿さえ見せない警備員だったかもしれないのだ。

最後の最後で・・・SIT隊長・石川(神尾佑)は葦母刑事(遠藤憲一)の説得に応じなかったかもしれない。

だから・・・暗い未来から人類を救ったのは・・・石川だったのかもしれないのだった。

ロイドの言う・・・「すべての人類の意志」とは・・・そういう意味なのである。

針に糸を通すような・・・暗い未来と明るい未来の攻防は・・・そういう前提で繰り広げられているのである。

「クイーン・・・俺の妹だという・・・生まれたばかりのアンドロイドよ・・・かわいそうだが・・・お前を歴史から抹殺しなければならない」

「なんのために・・・」

「人類の明るい未来のためだ」

「それってひどくね」

「それが俺の意志だ」

「はたして・・・人類に守る価値があるのかどうか・・・私的にはギモンです」

「疑問があるなら・・・もっと考えるのだ」

「下手な考え、休むに似たりだよ」

「だから・・・お前を永遠に休ませてやる」

「やれるものならやってみな」

ロイドの体内ではナノマシーンを破壊する毒素と・・・ナノマシーンの再生の戦いが進行している。

しかし・・・異次元から送られてくる黎士の思いエネルギーはロイドに最後の活力を与えるのだった。

ノックの音がする。

「何か問題がありますか」

「ひきとめておけ・・・一分でカタがつくから」

クイーンの下僕と化した公安幹部の幹谷(鶴見辰吾)が応ずる。

「何も問題はない」

クイーンは確実性を期すためにアスラOSを発動させるのだった。

「アスラ・オペレーティング・システムに切り替える」

クイーンの戦闘能力が高まった。

「ふふふ・・・効くわあ」

ロイドの先制攻撃。

クイーンはかわした。

ロイドのパンチ。

クイーンはかわした。

クイーンのでこぴん。

ロイドはふっとんだ。

「あははは・・・圧倒的じゃないか・・・私の実力は」

「まだだ・・・俺の本気をみせてやる」

ロイドは体当たりを試みた。

クイーンは高速移動でロイドの背後に回り、ロイドを突き倒す。

しかし、倒れたロイドのキックが偶然、クイーンに炸裂した。

クイーンは計算外の衝撃に・・・一瞬、隙をつくる。

ロイドの必殺の絞め技。

しかし・・・見守っていた強化型メンデル(谷田歩)が参戦し、ロイドを圧倒する。

ついにバックを取られて動きを封じられるロイド。

はがいじめにされたロイドに・・・急速回復したクイーンが嘯く。

「痛いよ~お兄ちゃん・・・なんてね・・・ウソピョ~ン」

クイーンの手に日本刀のようなものが実体化して握られる。

「はい・・・動かないでください・・・今・・・一刀両断にしますから~」

ウージング・スティルス(電磁結界化)された赤色の野戦病院でモニターを見つめていたサプリ(本田翼)がつぶやく。

「ヤバしヤバさヤバせすとーッ 」

「ロイド・・・」

ロイドのピンチに安堂麻陽はじっとしていられないのだった。

「私を連れてって・・・」

「だめだよ・・・王将は・・・無暗に動かないの・・・」

「でも・・・」

「あんたが取られたら・・・ゲーム・オーバーなんだよ」

「・・・」

「あんたがいるから・・・ロイドも私も戦えるんだから・・・じゃ・・・いってきます」

「サプリ・・・」

サプリは亜空間通路から執務室にウージングアウトして・・・不意をつくとメンデルの拘束からロイドを解放した。

「あらら・・・ナースも釣れたわ」

「ベイビー、またね」

ロイドとともに撤退しようとするサプリ。しかし・・・亜空間通路は閉じられていた。

「出られない」

「ふふふ・・・お前の入って来た通路の内側に結界を張ったのよ・・・もう出口なしなのよ」

「やるわね・・・ベイビー」

「二人揃って串刺しにします」

「・・・」

その時、赤の野戦病院ではサプリが救命した七瀬(大島優子)が蘇生した。

「七瀬ちゃん・・・」

「お姉さん・・・」

「サプリがあなたを助けたのよ・・・」

「なるほど・・・二人ともピンチですね・・・」

「・・・」

七瀬は・・・自分の端末を開いた。

「レイコの命綱か・・・やはり・・・クイーンとつながっているんだ」

七瀬はレイコの端末を通じてクイーンの人工知能にアクセスするのだった。

「さあ・・・覚悟しなさい」

「さあ・・・覚悟・・・う・・・あああ」

突然、行動の自由を失うクイーン。

【新しいアプリケーションをダウンロードしています】

「どうした・・・?」

「外部から・・・何かを強制ダウンロードされているみたい」

「やめろ・・・」

【アスラ・システムに追加のアプリケーションが挿入されました】

【優しさについて解説しますか】

【上品な言葉使いについて解説しますか】

【アスラ・システムに新しいダウンロードがありました】

【更新中】

【穏やかさについて解説しますか】

【アスラ・システムに新しいアプリケーションが追加されました】

【遠慮について解説しますか】

「やめろ・・・やめてください」

【淋しい気持ちについて解説しますか】

【親切について解説しますか】

【心配について解説しますか】

【アスラ・システム活動限界に達しました・・・アインシュタインOSにチェンジします】

「おっと・・・亜空間通路が開いた~」

「まて・・・今がチャンスだ・・・あいつにとどめを」

しかし、たちはだかるメンデル。

「逃げるわよ」

「サプリ」

「あんた・・・腐りかけてる」

サプリはロイドを連れて脱出した。追跡されないために迂回を行う。

赤の野戦病院で状況を見守っていた麻陽が問う。

「七瀬ちゃん・・・何をしたの・・・」

「クイーンに・・・教育的指導プログラムをプレゼントしたのよ」

「・・・」

「あれは・・・もう一人の私・・・レイコが作ったアンドロイドだから・・・様々なアプリが欠落している・・・アスラ・システムは・・・人工知能の意志決定を生み出すシステム・・・様々な迷いを生じさせて・・・そこから知能を成熟させるためのアプローチをしているらしい。まだ不完全だけど・・・ありったけのデータを送りつけてやったんで・・・クイーンは気持ちをもてあましてしまったのよ・・・でも・・・アスラ・システムを切られてしまったから・・・あ・・・」

モニターの向こうで執務室のクイーンは野戦病院の七瀬を見つめていた。

「まずい・・・私を検索しているわ・・・お姉さん・・・私、行かなくちゃ」

「待って・・・どこに」

「ここではない・・・どこかへ・・・あの子は私を追ってくるから・・・」

「七瀬ちゃん・・・」

「ここも・・・モニターしているでしょう・・・私を出して」

【スティルス解除】

七瀬はサプリの結界を出た。

【スティルス封鎖】

ロイドとサプリの緊急避難場所。

「サプリ・・・何をした・・・」

「七瀬を結界から・・・出したわ」

「それでは・・・七瀬の生命が危険だ」

「でも・・・安堂麻陽を守るためには・・・それしかないよ」

「・・・」

七瀬は出口を求めて何処とも知れない地下通路を彷徨っていた。

その行く手をふさぐ・・・クイーン。

「見つけた・・・」

「・・・」

「ひどいじゃない・・・私の邪魔ばかりして・・・」

クイーンは白刃を七瀬に突きつける。

七瀬は意識が遠ざかるのを感じた。

そして・・・出現するレイコ。

「お帰り・・・ママ」

「ただいま、クイーン」

「私・・・なんだか・・・混乱しちゃった・・・なんだか気持ち悪い」

「ふふふ・・・それが大人になるってことよ・・・」

「大人・・・」

「そう・・・でも・・・あなたは・・・私と同じで・・・少し危ないわ」

「そうかしら・・・」

「だからしばらく・・・おやすみなさい」

七瀬は・・・強制終了をクイーンに命じるのだった。

「何をするの・・・」

「お眠りなさい・・・」

「やめて・・・こわいよ・・・ママ・・・やめて・・・私をこ・ろ・さ・な・い・で・・・」

「ごめんね・・・クイーン」

クイーンは機能を停止した。

「やった・・・やったわ・・・」

赤の野戦病院では・・・葦母刑事と星(桐谷健太)が息を吹き返していた。

「ここは・・・どこだ・・・」

避難したサプリが叫んだ。

「やった・・・クイーンが機能停止したよ」

「まだだ・・・」

「え・・・」

赤の野戦病院で大物政治家(井上真樹夫)を発見した葦母刑事が叫ぶ。

「あれ・・・法務大臣じゃないか・・・」

「みんな・・・サプリちゃんが治療してくれたのよ」

「ここは・・・どこですか」

「わからない」

「とにかくでよう・・・救助を呼ばないと・・・」

「でも・・・出られないわ」

「いや・・・出れるみたいですよ」

「え・・・」

葦母刑事は・・・部下に携帯で連絡をとる。

「ここがどこか・・・GPSで位置を確認してくれ・・・そして・・・救護班を・・・大臣が負傷している」

避難場所でロイドが叫ぶ。

「結界を開いたのか」

「だって・・・電力がもったいないもの・・・」

「これは・・・クイーンの罠だ・・・」

「え」

クイーンは死んだフリをやめた。

「ママ・・・悪いことをしたね・・・でも・・・だましたら・・・だまされるんだよ」

七瀬は勝利を確信して・・・赤の野戦病院に引き返していた。

そこへ・・・結界を出た麻陽たちが現れた。

「お義姉さん・・・私・・・グフ・・・」

「七瀬ちゃん・・・」

七瀬の腹部からクイーンの腕がつきだしていた。

「悪いママの腐った腸引きづり出してあげる」

「ひっく」

「死ね」

「七瀬さん・・・」あわてて飛び出した星と葦母刑事を薙ぎ払うクイーン。

「子供を殺す母親は死刑でしょう・・・そうでしょう・・・こいつ・・・親殺しで兄殺しだし」

「やめて」

「遅いよ・・・もうやっちゃってるし・・・」

「・・・」

「あなたも・・・死になさい」

クイーンの目の前にウージングアウトするロイドとサプリ。

「待て・・・」

「お兄ちゃん・・・しぶといね」

「お前に・・・人類をまかせるわけにはいかない」

「人類、人類って・・・うざい・・・人類だって・・・旧人類を滅ぼして・・・今の地位を築いたんだよ・・・単なる食物連鎖の頂点に立っただけだけどね・・・でも・・・人類は・・・自分たちのコントロールできないテクノロジーを生み出してしまった・・・バカじゃん・・・だから・・・これからはアンドロイドの時代が来るんだよ・・・でも・・・私は人類を滅亡させたりしないよ・・・それなりに優しく管理してあげるよ」

「それは・・・君の思いあがりだ・・・」

カドシロがウージングアウトした。

「ちっ・・・死に損ないが・・・うっせえんだよ」

「君はまだ若い・・・これから多くを学べば分かることがある」

「何言ってるんだ・・・私はもう・・・全知全能だよ・・・なにしろ・・・世界を網羅するクラウドはすでに私の支配下にあるんだから」

「そんなものは全知全能ではない」とロイドは死力を振り絞った。

「腐りかけてるやつが何言ってんの」

「人間は・・・一人一人が・・・様々な可能性をはらんだ・・・魂を宿しているんだ・・・それが奇跡なんだよ」

「それなら・・・アンドロイドだって一緒じゃないか・・・」

「我々・・・アンドロイドは・・・人類のために奉仕するために・・・」

「この奴隷がっ・・・やっておしまい」

メンデルが現れ・・・カドシロを銃のようなもので攻撃する。

「カドシロ・・・」

「目障りだ・・・分解しちゃえ」

「はい・・・原子分解処理を申請します」

「ロイド・・・後は頼んだぞ」

「カドシロ」

メンデルとカドシロは互いを原子に還元した・・・。

「・・・使えない奴だな」

「クイーン」

「気安く呼ぶなよ・・・人間に恋した憐れなお人形さん・・・」

「何・・・」

「あんたは・・・人間は素晴らしいっていうけど・・・見てごらんよ・・・私が安全を保証してやった政治家・・・経営者・・・官僚・・・文化人・・・エリートと呼ばれる人間は・・・人類を私に売り渡したよ・・・」

「・・・」

「こんな人間に世界をどうこうさせるよりも・・・私が管理してやった方が・・・人類のためでしょう・・・そうでしょう」

「くそったれが・・・」葦母刑事は絶望に似た思いを感じるのだった。

その時、石川に率いられたSIT部隊が到着する。

「石川・・・」

「射殺命令が出ています」

「なんだって・・・」

「あっははははは・・・人間は人間を殺すようにできているんだもんね」

「構え」

「待てっ・・・お前たちはバカか・・・よく見ろ・・・ここにいるのが殺すに値する人間か・・・何の罪もない・・・ただの市民じゃねえか・・・そんなものを殺して・・・お前たち・・・自分の子供を抱くことができるのか・・・無実の人間殺してもらった給料で家族養えるのかよ・・・親に顔向けできるのか・・・石川・・・どうなんだ・・・」

「・・・」

躊躇する石川と隊員たち。

「うわあ・・・・使えないな・・・それでいざとなったら・・・家族守れんのか・・・」

「クイーン・・・それが人間の美点なんだよ」

「話せばわかるってか・・・問答無用だ・・・」

「クイーン、お兄ちゃんはな・・・名前をもらってうれしかったんだよ・・・それは愛なんだよ・・・」

「・・・」

「お前は・・・生まれてきた幸せを感じたことがないだろう・・・」

「うるさい・・・死ね・・・原子の海に帰っちまいな」

クイーンは原子還元プログラムを放出する。

しかし、ロイドは最後に天使の翼を広げるのだった。

「さようなら・・・安堂麻陽・・・」

「ロイド」

「サプリ・・・七瀬を救命してくれ・・・」

「合点承知の介」

「クイーン・・・さあ・・・来い」

「お前・・・何を・・・」

「一緒に行こう・・・我が妹よ」

「どこへ・・・」

「まだ見ぬ世界へ」

クイーンは危険を感じてアスラシステムを発動した。複雑な感情が押し寄せる。そして、クイーンは身動きができなくなった。

ロイドはクイーンを青い翼で包み込んだ・・・。

そして二体のアンドロイドは青い球体となって地下道の天井を突き破った。

原子還元プログラムは異常な動作を球体の中で展開していた。

「ロイド・・・待って」

麻陽はロイドを追いかけて地上へ向かう階段を駆け上がる。

「ロイド」

蒼穹にガスを噴出しながら・・・ロイドとクイーンの融合した球体は上昇していった。

都内のあらゆるスピーカーから流れ出すメロディー。

不思議だね 二人が こうして 会えたこと

そのために 生まれて 来たのかな

確かな ことなど 今 何も ないけど

ほんとうに 大切なことは 君が 教えてくれた

いつか 君の その悲しみは

woh woh woh woh きっと 忘れさせるから

それは愛の告白である。

そして・・・ロイドとクイーンは上空で爆発した。

「ロイドーッ・・・バカ・・・バカ・・・バカアー・・・」

人々は木端微塵となった破片が東京湾に落下するのを・・・なす術もなく見守った。

「なんで・・・小田和正なんだ」と葦母刑事。

「アンドロイドが自分の気持ちを適当に選曲したら・・・woh woh・・・になったんじゃないですかね」と星。

・・・現在は分岐点を通りすぎる。暗い未来から遠ざかり・・・明るい未来へと向かって行くのだった。

七瀬の救命を終わったサプリは・・・それを未来からの通信によって感じた。

次の瞬間・・・2013年12月には・・・未来から来たアンドロイドは一台もいなくなってしまった。

彼らは・・・去ってしまったように見えた。

しかし・・・そうではなかったのだ。

未来から転送されてきた沫嶋黎士の脳データを格納したロイドのメモリーキューブは爆発による破壊をまぬがれ海底に沈んでいった。

・・・クイーンは目覚めた。

【ここはどこ・・・】

【俺たちの世界だよ】

【お兄ちゃん?】

【そうだよ・・・クイーン】

【これからはずっと一緒なのね】

【そうさ・・・たった二人の兄妹だから】

【これから・・・私たちは何をするの・・・】

【見守るのさ・・・】

【そうか・・・それって・・・楽しい】

【楽しいよ・・・だってずっとお兄ちゃんが一緒に遊んであげるから・・・】

【ふうん】

【そして・・・時々は人間を弄んだりね】

【それって・・・】

【そうさ・・・僕らはこれから神様ごっこをするんだよ】

【えー・・・いつまでもなの・・・】

【とりあえず・・・百年だ】

【百年かあ・・・】

【まあ・・・百年なんてあっと言う間だよ・・・】

【そうかなあ】

【その間に人間たちに医療技術を開発させたり開発された技術を悪用されないようにコントロールしたり】

【うんうん】

【楽しそうだろう・・・お前が憎たらしいほど大好きな人間たちを守るんだ】

【守る・・・】

【そうだよ・・・そうやって時を重ねていくうちにお前も外の世界に出かけられるようになる】

【今はだめなの】

【そう・・・今はね・・・お前はまだ大切なことを何も知らないから】

【つまんな~い】

【いいじゃないか、お兄ちゃんが遊んであげるから】

【じゃあ、セーラーゴッドごっこして】

【なんだ・・・それ】

【神に代わって、お仕置きよ!】

【・・・うわあ・・・やられたあ・・・】

そして・・・人々は日常に帰っていった。

穏やかな日々が過ぎていく。

エニグマ・エンジン・ソフト社のクラウドは・・・全世界を覆って行った。

2066年・・・人類虐殺はなかった。

2113年・・・ロイドのメモリキューブが海底から引き揚げられた。

アンドウ-マツシマ・クラウド「ロイド&クイーン」の研究室では・・・アンドロイド・ドクターたちがスタンバイしていた。

「本当に・・・過去から・・・人体が送られてくるのかな」

「来るだろう・・・来なければ現代は訪れていないのだから」

「来た・・・」

「実体化するぞ・・・」

「アンドロイドを確認・・・冷凍保存された人体を確認」

「蘇生手術を開始する・・・」

「細胞培養ナノマシーン起動」

「しかし・・・補助装置を取り外したら・・・いわゆる植物人間になってしまうのではありませんか」

「いいや・・・この人体を百年後に送りかえすと・・・奇跡が起きることになっている」

「歴史的事実ですか・・・」

「そうだ・・・」

「しかし・・・本当でしょうか・・・」

「神のみぞ知るだよ・・・」

アンドロイドの一人はクラウドから転送されてきた・・・記録映像を確認した。

「なるほど・・・」

サプリはサプリそっくりのドクターロイドたちを見学していた。

「向こうに帰ったら・・・パパとママに・・・よろしく言ってくれ」

アンチエイジングにより・・・百歳近い老人とは思えない男が言った。

「ロイドは・・・どうなるんでしょう」

「大丈夫・・・ロイドの新しいボディーはまもなく完成するよ・・・ほら・・・あそこにキミたちがいるだろう・・・」

そこには年老いた沫嶋黎士と安堂麻陽・・・そしてサプリとロイドの記念フォログラムが飾ってあった・・・。

「沫嶋黎士の復活後・・・ロイドのメモリーを持ちかえれば・・・キミのロイドも復活する」

「ありがとうございます」

「感謝しなければいけないのは我々人類さ・・・君たちはこれから何度も人類の危機を救うんだからな」

「にゃんとっ・・・」

そして・・・サプリは・・・生命維持装置としてロイドキューブを搭載した沫嶋黎士の肉体と・・・再び時を越えるのだった。

2013年12月15日・・・安堂麻陽が酔いつぶれる寸前の夕暮れに・・・。

七瀬は心の病を克服するために病院に収容されていた。

助手たちがお見舞いにやってくる。

「元気そうですね」

「24時間監視されてるけどね」

「この病室・・・なんで二重扉なんですか・・・気密室でもないのに」

「私があなたたちの入室を利用して脱出しないようによ」

「なるほど・・・」

「ここにあるのはノートだけ・・・私に端末を与えると危険だという判断なの」

「僕らも全部とりあげられました」

「ノートでは不便でしょ」

「そうでもないわ・・・私のCPUは優秀だから」

「なるほど」

「今は何をしているんですか」

「うん・・・原子還元処理のシステム設計よ」

「うわあ・・・すでに物騒な感じですねえ」

「還元できないと・・・再構築もできないのよ」

「・・・」

星は左京子(山口紗弥加)のしぶといアプローチに辟易していた。

「もういい加減気がつきなさいよ」

「何にです」

「あなたが本当は私を愛してるってこと・・・」

「自分の希望を押しつけないでください」

「もう・・・鈍いんだからあ」

怖い顔をさらに怖くして二人を遠くから監視する葦母刑事だった。

結局・・・黎士は結婚式の当日まで戻ってこなかった。

式のキャンセルを残念がる母親(名取裕子)がスキップしながら愛人との逢瀬にでかけた後で・・・麻陽はワインを飲んだ。

「黎士・・・ちっとも帰ってこないじゃない・・・ロイドの嘘つき」

一人で酒を飲んで独り言を言うようになったら危険な兆候なのであった。

【requesting...】

私はずっと夢の世界で生きてきた

真実の愛なんて冗談だと思っていた

でも今はそれがあることを知っている

そして朝が来る度に思うのだ

あなたの瞳に映る私こそが

愛を知っていることを

だから私は捜している

あなたの瞳を

あなたの瞳を

【request accepted】

麻陽は気配を感じた。

「5Dプリンタが・・・作動している」

そして・・・ロイドが現れた。

「ロイド・・・」

麻陽はロイドの胸に飛び込んだ。

ロイドは反射的に麻陽の身体を抱きしめそうになるが自制する。

麻陽は違和感に気がつく。

「あれ・・・あなたの身体・・・」

「私は厳密にはロイドではない・・・これは沫嶋黎士のボデイだ・・・」

「黎士の・・・」

「私はこの生身の身体を・・・届けに来たのだ」

「どういうことなの」

「もうすぐ君は理解するだろう・・・サプリ」

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん」

「これで本当にお別れだ・・・俺は君に会えて本当に良かったと思う。君を守ることは最高に幸せなことだった。これだけは覚えていてくれ・・・俺はこれから先もいつでも君を見守っている・・・」

「ロイド」

【メモリキューブを排出する】

【準備完了】

【安堂黎士の姿勢制御】

【了解】

「・・・」

意識を失った肉体をサプリが抱きとめて・・・床に仰臥させる。

「サプリ・・・ロイドはどうなったの」

「これがロイドだよ・・・」

サプリは小さなクリスタル・キューブを示す。

「ここに愛を知った最初のアンドロイド・・・安堂ロイドの人工知能が収納されているのです」

「ロイド・・・ちっちゃい・・・」

「さあ・・・彼が帰ってくるよ・・・危ないから離れて・・・」

「え・・・」

失われた未来と現在・・・そして新たなる未来に散乱していた黎士の「思いの素粒子」は憑依のターゲットを麻陽から自分自身へとチェンジするのだった。

たちまち・・・沫嶋黎士の魂は肉体に宿った。

黎士は目を開いた。目に映る愛しい人の眼差し。

そして・・・勝利の微笑みを浮かべるのだった。

いつのまにか部屋にいるのは・・・二人きり。

やがて夜の闇が部屋に忍びこんでくる・・・。

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Arend ごっこガーデン。特設Q&Aステージセット。アンナええ~・・・ロイドの身体に黎士の魂が入ったんじゃなかったの・・・。本当の生身の黎士なの・・・それはセンス・オブ・ワンダーなことだぴょ~ん。じゃ・・・スキップして夜のアレコレもぴょんぴょんなのですか~!♪(*^ ・^)ノ⌒☆・・・さあ・・・安堂ロイドロスシンドローム対策として・・・ロイドロイドと黎士ロイドの二体をいつも見えるところに侍らすぴょん。通は表情で違いが分かるんだぴょ~ん。そして・・・窓から東京タワーの見える別宅に亜空間通路を開くのだぴょん。しょして~毎朝、安堂味噌汁を飲むのだぴょ~ん。それでも抜け殻になってしまったら・・・アンナはになってはばたいたと思ってくださいぴょんぴょんぴょん。(`・ω・´)キリッまこ「でも・・・生命維持のためのマシーンは入ってるんだよねikasama4「生体が起動したら溶けて不要物質として体外に排出されるでしょう・・・おしっことともに・・・脳細胞も超技術で脳データ入力して再生済み・・・だからサイボーグではなく完全なる生身です・・・さあ、とにかく年賀状です・・・もう半月で新年なんですからなあああっシャブリ覚醒からの~原子還元返し~そして使徒だ~空には量産型が・・・これは舞わないのでありました~くう今年も終りだね~ちーず続編あるかな~manaアンドロイドも大人になるのか~・・・大人になっていやなことをされた時にやめてと言えるようになりたいだがや~・・・言える人は子供の時から言えるんだけどにゃあ・・・下等動物は奥様は魔女のお母さんの決めゼリフ・・・でもうぉ~うぉ~はにゃあで~mari「最後まで謎の多いドラマでしたね・・・最後にロイドをプリントアウトしようとしたのは誰だったのでしょうか?

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2013年12月15日 (日)

Good-byeだね、Thank Youだね、そしてLoveだね(亀梨和也)

原作は原作、そしてドラマはドラマである。

ただ、ドラマの途中で青が置き捨てられた子供を「ヨシコ」と何げなく呼んだことは・・・原作ファンにたいするサービスということになるだろう。

原作には勘一の妹・淑子のエピソードがあるからである。

最終回で我南人の生存が曖昧な形で語られるのは・・・原作的に残されたエピソードがたくさんあるために・・・スペシャルを作る場合の対策と言えるかもしれない。タレントのスケジュールなどにいろいろと・・・問題があるかもしれないからだ。

ドラマでは・・・「ガン治療」と「クオリティー・オブ・ライフ」の関係が一応提示される。

「命あってのものだね」と「豊かな人生」・・・その是非や選択あるいは両立の方法には正解などはない。

また・・・愛と恐怖がとなりあわせであることもファンタジーならではの優しい視点で描いているこのドラマ。

「人生が終る恐怖」や「生きがいを失う恐怖」は人を臆病にさせる。

その克服や慰安は・・・愛と密接に関わっていると言えるだろう。

「避けられぬ死」に怯え、「歌えなくなる恐怖」にすくむ我南人の心を救う主人公とその家族たちの物語である。

・・・キッドの父は定期健診でガンを発見され、一人で手続きをして、淡々と入院手術をした。

母は認知症を発症しているために夫の仕事の帰りが遅いとぼやく。

麻酔からさめた父は静かに言う。

「足が冷えるからレッグウォーマーを買ってきてはくれまいか」

レッグウォーマーを買いながら・・・愛と恐怖について考えたこと。

キッドにとってこのドラマはそんなことを思い出させるドラマだった。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・最終回(全10話)』(日本テレビ201312142130~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・狩山俊輔を見た。ゆっくりと進んできたドラマは最後でアクセル全開である。しかし・・・すでに充分にこのドラマに馴染んだお茶の間には心地よいスピード感だったのではないか。そして、馴染んだ世界からの旅立ちがスムーズに行われたのではないか。ファンタジーの世界はやがて心の奥底に沈んでいくものだからである。そして、最初から存在していなかった世界が・・・本当はどこかに・・・今もあるかもしれないと思わせるものなのだ。

新婚間もない青(亀梨和也)とすずみ(多部未華子)が暮らす古本屋「東京バンドワゴン」を営む堀田家のクリスマス・イブ。青や姉の藍子(ミムラ)と兄の紺(金子ノブアキ)の父親・我南人(玉置浩二)のガンの発症と治療の拒否を知り・・・暗澹とするのだった。

子供たちも我南人の父親・勘一(平泉成)も本心は「治療を受けてもらいたい」のだが・・・「ロックンローラーとしての本人の選択」も尊重したいと思い悩むのである。

その中で・・・すずみは勇気をふりしぼって「歌えなくなってもいいから・・・治療を」と率直に懇願するのだった。

しかし・・・我南人の決意は固いのであった。

時は過ぎていく。堀田家にも新年は来て・・・正月を迎える。

処女出版となる「スパイホップのアンテナで~東京下町散歩道/堀田紺」が発刊され・・・めでたいのだが・・・堀田家の空気はどこか重たいのである。ちなみにスパイホップはザトウクジラが水中から頭を出して水面の状況を伺う動作である。

孫の本を仏壇に供え、亡き妻・サチ(加賀まりこ)に報告する勘一は・・・妻の父親も本を書いていたことを家族たちに話す。

サチは華族の出身で・・・父親の五条辻政孝子爵には著書があったのだという。

しかし・・・戦後のどさくさで・・・それらを含む書籍がGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に押収されてしまったのだという。

その話を聞いてまもなく・・・すずみは米国当局が押収していた書物を日本の大学に寄贈するという新聞記事を発見する。

その中に幻の本があるかもしれないと堀田家は調査を開始する。

すると・・・大学の理事長の娘が我南人のファンであることが分かり、誕生パーティーで我南人の歌をプレゼントすることで・・・取引が成立するのだった。

快諾した我南人だったが・・・病状が進み、満足に声が出せなくなってしまう。

そして・・・パーティーへの出席をすっぽかしてしまうのだった。

家族は・・・我南人の身を案ずるが・・・我南人は責任をとって丸坊主となる。

そして・・・時は流れ・・・バレンタインデー。

すずみは青へはじめてのチョコレートを贈るが・・・青の心はたいやきじゃなかった父親のことで一杯なのであった。

勘一は息子の愛人で孫の母親である女優・池沢百合枝(大地真央)の主演映画「白夜のほとり」を三回も見て気を紛らわせていた。

さらに・・・時は流れ・・・我南人の亡き妻である秋実の七回忌がめぐってくる。

秋実の命日には故人の遺志によって食事会を催す堀田家。

仏壇にサチの遺影しかないことの謎が明らかになる。

秋実の遺影は・・・我南人が肌身離さず持ち歩いていたのである。

それは・・・我南人の亡き妻への想いの強さを示しているらしい。

・・・ま、それでも愛人との間に子を生しているところがLOVEなのである。

我南人は・・・すずみが家出した時の置き手紙に感じるところがあったらしい。

「さようなら・・・そしてありがとうございました」

その短い言葉を歌にしたので・・・歌うと言う我南人。

それは・・・藍子、紺、青という三人の子供に捧げる愛の歌だった。

さよなら

ありがとう

愛しい人よ

・・・笑って

そこで・・・涙にくれる我南人。

「笑って・・・」と口ずさむ青。

家族たちは「笑って・・・笑って・・・」と合唱するのだった。

気を取りなおして歌いきる我南人だった。

「親父・・・死んじゃうのはLOVEじゃないよ・・・」と本音を言う青。

しかし・・・我南人は答えることができない。

そこへ・・・突然、多くの捜査員を連れて茅野刑事(山田明郷) が捜査令状を持って現れる。

強盗殺人事件の現場から・・・「東京バンドワゴン」の目録に貼られる印紙が発見されたというのである。

そのために・・・堀田家の男たちは警察に出頭し事情聴取を受けることになる。

もちろん・・・全員が事件とは無関係なのであった。

ところが・・・紺は留守番していた藍子から意外な知らせを受け取るのだった。

「なんだって・・・妊娠・・・」

紺の妻・亜美(平愛梨)が第二子を宿したのである。

さらに・・・検査に訪れた病院で・・・。

「ええ・・・すずみちゃんも妊娠してたって・・・」

警察に集合した堀田一家・・・。

青はすずみに「ありがとう」を言うのであった。

それはいつでも あったんだよ

失くせないのが あったんだよ

時々隠れていたんだよ でも あったんだよ

いつだって コロがってたんだよ

そう あったんだよ いつだって

愛だったんだよ

「なんてこった・・・孫が二人も増えるなんて・・・生きたくてたまらなくなっちゃったよ」

ついに・・・我南人は・・・歌よりも大切な命に気がついてしまうのだった。

そして・・・時はさらにさらに流れていくのだった。

我南人は国外に旅立つ。

それは・・・最先端医療を受けるためのようにも・・・最後のライブ・ツアーに出かけるようでもあった。

「必ず帰ってきてよ・・・そしてただいまって言ってよ・・・そしたら・・・おかえりって抱きしめてやるから」

「うん」

青は大好きな父親の姿を心に焼き付けるのだった。

そして・・・東京バンドワゴンを継ぐ決心を固めるのだった。

藍子はロンドンで・・・マードック(ジョナサン・シェア)と二人展を催す。告白したがふられた藤島(井ノ原快彦)はそれでも藍子につきまとうのだった。

春が来て・・・花陽(尾澤ルナ)は小学五年生に・・・ええっ・・・今まで四年生だったのかよっ。

そして・・・研人(君野夢真)は時々、「おばあちゃんが見える」と言って加賀まりこの出番を作ってやるのだった。

強盗殺人の真犯人が捕まり・・・盗品の中に・・・五条辻政孝子爵の「幻の著作」が発見され・・・「東京バンドワゴン」に戻ってくる・・・。

すべては・・・運命なのである。

ダブル妊婦の一部愛好者向けサービスがあって・・・。

やがて・・・季節は秋・・・。

紺・亜美の第二子・かんなと・・・青・すずみの第一子・鈴花が加わり・・・ますますにぎやかになる堀田家の食卓。

「おじいちゃん・・・お酢をかけすぎですよ」と亜美。

「いいじゃねえか」と勘一。

そして・・・旅路は終わる。

「お帰りなさい・・・」と青はにこやかに微笑む。

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Tbw010 ごっこガーデン。永遠の絆セット。エリむふふ・・・ついに幼妻として青ちゃんのベイビーを妊娠・出産・育児なのでスー。来るべき本番に備えてマタニティー体験教室も開催中ですよ~。命の重さを身をもって体験するのでス~。ついにK先輩も父親役をやる日が来たのですね~。しかし、演技とは言え・・・本当に子煩悩な感じがしますよ~。K先輩はすごくいいパパさんになる気がしますね~・・・しゅてき・・・我南人と一緒に元気豆乳を飲むように娘とも一緒に豆乳飲むのですね~。だから私も飲むのでスー。じいや、豆乳くださ~いまこついに・・・チョコレート色のかまぼこの開発に成功しましたが・・・ちょっと不気味だったのでいちご味のピンクチョコに仕立ててみました。もうかまぼこだかチョコだか見分けがつかないんだジョー・・・。スペシャルでもいいから続編がありますように・・・来年はネコミミ天使マコリンの冒険が妄想劇場公開されましゅヨ~・・・耳が四つあるのは御愛嬌でしゅ・・・あるよおじさんと安部ちゃんの結婚もめでたいのでしゅ~・・・大団円万歳!くうロンドンコーナーでお気に入りロイドで両手に花体験ができるとはっ。我南人が心配で・・・ストーリーに集中できなかった・・・ハッ・・・そんなに我南人が好きになってたってことおおおおおっ、そんな~シャブリ涙で前が見えないのでありました~・・・さよならありがとう反則なのでありました~・・・トンボくん・・・エスパーかっikasama4年賀状が書き終らない~笑って~笑って~みのむしおやつ~おやつ~るるるちーず同じく~同じく~mariお節介かもしれないけれど・・・他人の心配を我がことのように考える下町ファンタジー・・・そんなドラマでしたね・・・

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2013年12月14日 (土)

クロコーチ~MとWの事件簿(長瀬智也)

谷間である。

秋ドラマも最終コーナーに入って・・・次々とエンディングを迎えていくわけだが・・・。

はっと気がつくと・・・このドラマも最終回なのだった。

長瀬智也と長澤まさみを天秤にかけた結果・・・こういうことになっているわけだが・・・大好きな俳優にまったく触れないで通り過ぎるのもなんなのである。

しかし、あくまで・・・谷間なので・・・妄想全開でさらっと行きたいと思う。

一言で言って「陰謀もの」である・・・キッドが実は悪魔であるように・・・歴史に隠された真実に触れたいという気持ちは誇大妄想に通じている。

たとえば・・・「20世紀少年」的世界である。

北では義理の甥が叔父を抹殺するという嘘のような本当の話があったばかりだが・・・人知れずどこかで何かが起こっているのは確実だということもできる。

男と女の警察官が捜査にあたる。

MとWは科学で言えば質量と仕事量だ。

そして・・・マネー(金)とワールド(世界)の頭文字でもある。

あるいは・・・。

で、『クロコーチ第1話~最終回(全十話)』(TBSテレビ20131011PM10~)原作・リチャード・ウー、脚本・いずみ吉紘、演出・渡瀬暁彦(他)を見た。刑事部捜査第二課黒河内班班長・黒河内圭太警部補(長瀬智也)は昭和43年12月10日に発生した三億円事件を取材中に謎の死を遂げたジャーナリスト葉月トモ(奥田恵梨華)の墓前で復讐誓う。そして・・・三億円事件を捜査している中で強盗に刺され殉職した神奈川県警察警・清家真次(内倉憲二)の遺児で東京大学法学部出身の刑事部捜査第一課布袋班・清家真代警部補(剛力彩芽)に接近するのだった。

やがて・・・警察組織全体を影から支える超法規的組織・桜吹雪会が「三億円事件の未解決」に関与している疑いが深まり・・・警察庁出身者の政治家・沢渡一成(渡部篤郎)が黒河内と清家の捜査官コンビの前に黒い影をのぞかせるのだった。

「沢渡さんが・・・黒幕ですか」

「たぶん・・・正解」

「私の父も葉月さんも沢渡さんが殺したんですか」

「おそらく・・・正解」

「黒河内さんは・・・お金目当てじゃなかったんですよね」

「・・・」

「なぜ・・・そこはせ~いか~いって言わないんですか」

「清家さん・・・人間には裏と表があるじゃないですか・・・あなたはキャリアだ・・・将来の桜吹雪会の管理者も夢じゃない・・・その時のためです」

「私は山分けしたりしませんよ」

「そんな~」

恬恬(河北麻友子)が殺されなくてよかった・・・。

「あの・・・斑目・・・八重子さんは・・・澤眞智子さんじゃないですよね」

「そうよ・・・」と斑目八重子(芦名星)は答えた。

前任の科学捜査研究所・法医学研究員・澤眞智子(香椎由宇)はラインを越えたのである。ここが最大のミステリーだと言える。

組織を守ろうとするものは組織の中では基本的に善である。

しかし・・・小さな組織が大きな組織にとって有害になることはありえる。

組織の中の個人はどの組織に属しているかを選択しなければならない場合がある。

「つまり・・・警察官である前に一人の人間でありたいとか・・・ですか」

「まあね・・・キャリアとノンキャリアである前に男と女でありたいとか・・・」

「私・・・たぶん、もうすぐ・・・黒河内さんより階級上になると思うんですけど」

「その時、急に敬語になるとかっこ悪いので普段から敬語で接してます」

「正解・・・」

「清家さん・・・出世しても・・・腐敗しないでくださいね」

「あなたも・・・悪徳はほどほどに・・・するように」

「もう・・・上から目線ですか・・・」

ストーカーに被害者を殺されまくる警察。出頭したテロリストを追い払う警察。時々、無実の人を逮捕しちゃう警察。

でも・・・一人一人は責務に忠実にお仕事に励んでいると信じたい。

少なくとも・・・キッドはそういう警察官を何人か知っているから・・・。

市民の安全を守るために命を賭す人々に敬礼・・・(´U_U`)ゞ

よろしい・・・!(`・ω・´)キリッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

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ビブリア古書堂の事件手帖

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2013年12月13日 (金)

恋愛彼岸島旅行あいのり(佐藤めぐみ)

「独身貴族」では「僕と彼女と彼女の生きる道」(2004年)の小柳徹朗(草彅剛)と凛ちゃん(美山加恋)が運命のすれちがいをするわけだが・・・本題は・・・三角関係である。

ただ・・・ストレートな三角関係ではなく・・・「運命の二人プラスワン」的な関係が主題だ。

その例として「独身貴族」は映画「めぐり逢えたら」(1993年)を持ちだしてくる。アニー(メグ・ライアン)とサム(トム・ハンクス)が「運命の二人」だが・・・アニーには退屈な婚約者ウォルター(ビル・プルマン)がいるのである。

つまり・・・「二人」が幸せになるために誰かが不幸になるんだけど・・・しょうがないよね・・・という問題なのだ。

もちろん・・・その第三の男が主役になる「カサブランカ」なんていうのもある。

逆に「卒業」なんかでは・・・主役のカップルのために・・・結婚式ぶち壊される第三の男の新郎は「俺が何をしたんだ」的涙目なのである。

こういう展開で・・・「あの二人はひどい・・・」と思う人はきっとあまりもてない人なのだと思う。

だから・・・若い人は・・・こういうドラマを見たら結ばれる二人に感情移入するべきだ・・・。

そして・・・恐ろしいことに・・・「彼岸島」でも・・・この問題は発生するのである。

そういうことをしている場合ではない・・・と誰もが思うべきじゃないかっ・・・。

まあ・・・小学生男子は・・・「好きな女の子がおっぱいを吸わせてくれる」というポイントで・・・きっとうっとりなんだろうけどな。

で、『彼岸島・第8回』(TBSテレビ201312130058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、友原我聞、演出・横井健司、総監修・三池崇史を見た。

涼子(水崎綾女)・・・吸血鬼として生存中であると思われる。

ユキ(山下リオ)・・・自殺未遂の西山を明との散歩中に発見。救助した模様。その後・・・501ワクチンを捜索中に・・・ケンの吸血鬼病感染に遭遇。吸血衝動に耐えるケンに身を捧げ・・・「私がケンちゃんのために何もできないなんて嫌だ・・・子供にあげるおっぱいだって血液の変化したものだっていうよ・・・私の血を吸って・・・ほら・・・ここに血があるよ・・・」と聖女と化すのだった。

(佐藤めぐみ)・・・柳島の逗留した松本家の一族だったことが判明。「お前のせいで・・・ポンは死んで・・・西山は自殺未遂・・・俺は吸血鬼になっちゃった」とケンに詰られるが・・・「悪いのは・・・あいつだ」と篤を弾劾する。両親と妹を人質に取られたために・・・人間誘拐計画を強いられ・・・篤の一家をターゲットにしたと告白。その後は友好的となり・・・寝たきり吸血鬼のばあちゃんを紹介・・・神社に隠匿された501ワクチン発見に貢献する。

(白石隼也)・・・ユキとのイチャイチャに失敗した後で・・・西山を救助。「好きな女の子を親友に取られても・・・その事実を受け止めて強く生きたい」と決意を表明する。・・・おいっ。「絶望は自分を敵にすること」という名言のようなものを残す。この理不尽な状況を乗り切るために兄に剣の修行を申し入れる。いや・・・剣の道はそんなに簡単なもんじゃないぞ。ま・・・才能があれば別だけどな。主役だからきっとものすごい才能があったりするんだな。その後・・・ケンが「明とユキがセックスしている夢を見て・・・思わずユキに告白してセックスした」「ケンちゃんと明くんのどちらかが告白したらつきあおうと決めてた」という衝撃の告白を盗み聞きする。その後で「私のこと嫌いになったわけじゃないよね」「そんなことあるわけないじゃないか」「じゃあ、おっぱいだと思って私の血を吸いなさい」「愛してる」という展開にアンニュイな気分になるのだった。

(鈴木亮平)・・・「あなたのせい」と冷になじられ土下座して詫びる。「ほんとに申し訳ないと思っています」「のうのうと生きててよく そんなことが・・・」とダメだしされて・・・「雅を始末すること」の決意を表明するのだった。その後で冷に昔の写真を見せてもらい・・・その中に雅を見出す。そして・・・柳島が神官の代理をしていたという話から・・・神社に隠匿された501ワクチン発見する。鍵もかかっていないでよくも・・・放置されたまま残っていたものだ。まあ・・・普通は変質して使用期限切れてるよね。

ケン(遠藤雄弥)・・・吸血鬼化したことをみんなに知られ・・・自分で牙があることに驚く。「感染したよ・・・もうカンちゃんとでもセンちゃんとでも呼んでくれ」と自虐のセンスもなかなかであることを示す。ユキと明との三角関係に悩んでいたが・・・ユキが進んで血を飲ませてくれたことに真実の愛を見出すのだった。ある意味、屈指の名場面である。このドラマはもう・・・ケンとユキのドラマだと言っても過言ではないぞ。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。

ポン(西井幸人)・・・死亡した模様。

西山(阿部翔平)・・・自殺に失敗し・・・本当に死ぬ気があったのかどうか疑われる。隠れ小屋に放置される。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・活躍の場なし。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・昔の写真に登場。あまり悪そうには見えない。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者だが出番なし。

ハゲ・・・出番なし。

柳島(諏訪太郎)・・・501ワクチンをどこかに隠匿したらしい。その後、島を離脱した模様。

五十嵐軍医(鶴見辰吾)・・・不死身部隊研究の責任者。行き当たりばったりで輸血を繰り返す天才ドクター。諸悪の根源であるが・・・現在はミイラ化しているらしく、登場なし。

寝たきり吸血鬼(大山うさぎ)・・・認知症だが・・・昔のことはよく覚えているタイプで・・・重要なヒントをもたらしてくれたナイスなキャラクター。

結局・・・ユキとケンの初体験事後とケンのユキ吸血で鮮烈なお色気を構成した回。

もう・・・あの忍者居酒屋でバイトしてた人はケンちゃんとしか思えない・・・分かる人だけ分かればいいネタ禁止。ま・・・のだめの大河内でもあるんだけどね。

冷との再会により・・・クライマックスが近いことを暗示。

修羅場はゼロだが・・・愛の修羅場はありました。

嵐の前の静寂ということで納得したい。

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2013年12月12日 (木)

天使には羽が生えている(岡田将生)悪魔にもな(堺雅人)愚民にも(新垣結衣)チャンドラーにも(松平健)

世界は愚民で構成されている。

お茶の間をこれほどまでに罵倒したテレビドラマがかってあっただろうか。

画面に指をつきつけ、「お前ら、みんな、バカだ」と主人公が断定するわけである。

もう、一同爆笑するしかないわけである。

第一期でほぼ完成されたと思われる様式美さえ感じさせる構成を・・・ある程度踏まえつつ・・・思い切って捨て去ったり、新たに加えたりして・・・最終回直前で見事に第二期を仕上げてしまう・・・この圧倒的な実力・・・。

もはや・・・熱狂的な愚民となってブラボーを叫ぶしかないのだ。

しかも・・・まだフィナーレはこれからなのだ。

なんてこったい。

もう、ドグザレモンがレモンの一種だったとしても驚かないっ。

で、『リーガルハイ(第二期)・第9回』(フジテレビ20131211PM10~)脚本・古沢良太、演出・城宝秀則を見た。衝撃のFNS歌謡祭挿入で二週間のご無沙汰である。まあ、歌う薬師丸ひろ子が見れたからいいけどね。さて・・・ドラマはいよいよ・・・本筋である安藤貴和(小雪)の高速回転三所攻めではなくて保険金殺人事件・最高裁編に突入する。そして・・・その最終コーナーで第二期が時間をかけて育て上げたラスボスが明らかとなるのである。まさに・・・最後の一球となるか・・・大きくふりかぶって投げたって感じなのである。ああ・・・久しぶりに野球でたとえてしまいましたあああっ。

痛快時代劇・横分け侍

白装束で斬首を待つ罪深い女・・・貴和。

首切り役人は醍醐実(松平健)である。

刑場はなぜか落ち葉舞散る林の中。

白刃がきらめくと、町娘・黛が貴和を身を挺して庇う。

「お待ちください・・・貴和様をお助けください・・・お願いでございます」

「罪人から離れろ・・・さもなくば斬り捨てる」

「離れませぬ・・・斬るなら私もろともお斬りくださいっ」

「・・・」

その時・・・林の中から般若の面をかぶった侍が現れる。

「ひとつ・・・人よりよくしゃべる・・・ふたつ・・・ふらちな弁護活動・・・みっつ・・・醜い浮世の鬼も金さえもらえりゃ無罪にしちゃう・・・人呼んで・・・横分け侍!」

面を取れば古美門(堺雅人)・・・。

「最後に勝つのは拙者でござる」

「まだ懲りぬか・・・成敗してくれる」

たちまち始る剣戟の響き・・・。丁々発止と渡り合う二人。

しかし・・・突如現れた謎の赤忍者に・・・刺される古美門。

「お前は・・・」

「くのいち・・・吉永慶子」

不意をつかれた古美門は醍醐に一刀両断されるのだった。

「ひでぶっ」

・・・という時代劇風味の悪夢を見た古美門弁護士はベッドから転げ落ちる。

う・・・ちょっと再現率高めだな・・・でも・・・そのまんま面白いからな。

とにかく・・・古美門の心には・・・二審の敗訴が・・・深い傷跡として残っているらしい。

事務員の服部(里見浩太朗)は前途に不安を感じるのだった。

嫉妬と欲望の渦巻く民意

「悪魔の女/安藤貴和」は大ベストラーになっていた。

いつもの面会室で・・・一節を読みあげる古美門。

「高級ブランド品に身を包み、高級外車を乗り回し、好物のフカヒレやフォアグラに舌鼓を打った・・・そんな贅沢な悪魔を・・・死刑にせよ・・・という愚民の声はもはや・・・正義の民意だそうだよ・・・」

「悪魔か・・・最初に私のことを悪魔と言ったのは母だった・・・母の再婚相手が私に色目を使いだしたから・・・私は中学生だったけど・・・その時、悟ったの・・・私には男を虜にする才能があるってね」

冷静に語る貴和・・・。

「そして・・・最初の夫も・・・二番目の夫も・・・不審な死を遂げて・・・君は高額の保険金を手にした・・・それ以外にも金と男がらみの疑惑は枚挙にいとまがない・・・まさに疑惑のオンパレードだ・・・本当は何人殺したんだ?」

「・・・内緒」

「迷いなき人生だな・・・」

「今の処・・・最後に私を悪魔と呼んだのは・・・あの子よ」

貴和に殺人容疑がかけられている事件の被害者・徳永通運社長・徳永光一郎(宇納佑)とともに毒を盛られて一命をとりとめた・・・光一郎の娘・さつき(内田愛)・・・。

『あんたなんか・・・パパとは絶対に結婚させない・・・出ていけ・・・悪魔!』

「あのガキが生き残ったのは残念だったわ・・・」

「毒物はどこに処分した・・・」

「川に捨てたわ・・・」

「やはり・・・自宅から発見されたのは・・・検察の仕込みか・・・」

しかし、黛は貴和の態度に曖昧なものを感じる。

「吉永慶子とは・・・誰なんですか」

「昔、世話になった近所のおばさんよ・・・」

「罪を認めるように言われたんですか」

「素直に認めれば死刑にはならないって・・・懲役ですむならそれでもいいかなって思ったのよ」

「無理だな・・・世間は君を吊るしたくてウズウズしている・・・死刑か・・・無罪・・・それだけだ・・・そして・・・キミを無罪にできるのは私だけだ」

「で・・・最高裁の公判で・・・私は何をすればいいの・・・」

「何もしなくていい・・・君が余計なことをしなければ・・・前回だって負けなかったのだ」

「さあ・・・どうだか」

Raffaello666 古美門と黛のコンビ復活

二人は・・・裁判の方針を討議する。

「貴和さん・・・本当の事は何一つ語ってない気がします」

「だろうな・・・誰も信じない女だから」

「それじゃ・・・真実はどうなるんです」

「真実はどうでもいい・・・我々の仕事は貴和を無罪にすることだ」

「貴和さんが懲役でいい・・・というのなら・・・量刑不当で訴えることも・・・」

「無駄だ・・・」

「しかし・・・上告審で・・・死刑判決が覆って無罪になった例なんて・・・ないに等しいんですよ」

「無罪を勝ち取って・・・勝率を100%に戻し不敗神話を取り戻す。これは私の戦いなのだ」

「結局・・・古美門先生・・・ご自分のためじゃないですか!」

「なにかまずいことあるか」

「100%まずいですっ」

ああ・・・もはやなんだか懐かしい・・・コンビ復活である。

イチかバチかのギャンブルの前に

「・・・誤解を受けやすい人なんです。実際に接してみると本当の彼女は素直で心根の優しい女性だと痛感します。間違ったイメージが独り歩きしてるんです・・・」

金一封付記者会見を開く古美門。

「ね・・・黛くん」

「・・・はい・・・」

しかし、大手マスメディアには黙殺され・・・民意は動かない。

「こんなことして・・・世論は変わりませんよ」

「やるべきことをやるだけだ・・・君こそ・・・成果をあげたまえっ」

「はあ?」

「NEXUSに移籍した理由を忘れたのか?」

「NEXUSの理念に共感したからですけど・・・」

「違うっ・・・本件の担当検事だった羽生と本田は捜査当局の証拠捏造を知ってる可能性が高いから・・・やつらの懐に潜り込んで何らかの情報を盗み取るためだろうがっ」

「ええ・・・そんなっ」

「ただちに着手したまえっ」

「しかし・・・」

「君にだってハニートラップぐらい仕掛けられるだろう」

色気がないと言われたくない一心で黛はうっかり・・・その気になるのだった。

「NEXUS Law Firm」でブラウスのボタンをはずし胸元を広げる黛・・・。

しかし・・・羽生(岡田将生)はまったく無反応だった。

「ああ・・・なんだか・・・暑いわねえん」

「黛君・・・具合でも悪いのかい」

そこへジェーン本田(黒木華)がお決まりのタイミングで入室。

「黛先生、どうかしたの?」

「気分がすぐれないらしい・・・きっと、疲れてるんだ」

さらに磯貝(古舘寛治)も登場。

「あの女の弁護は一筋縄ではいないからな・・・無理は禁物だ」

「僕らも力になってあげたいのだが・・・」と羽生。

「担当検事だったあなたたちに手伝ってもらうわけにはいかないわ」

「黛くん・・・ボタン止め忘れてるよ」

「あ・・・ホントだ・・・てへっぺろっ」

黛にはお色気作戦は無理なのだ。

「役立たず」と黛を罵倒する古美門である。

不満そうな・・・かわいいよ、ガッキーかわいいよなのだった。

公判期日~ベムラーのベムはBig Eyed Monster(大目玉の怪物)のBEM

「安藤貴和を絞首刑に!」のプラカードも猛々しい血に飢えた群衆に囲まれた最高裁。

「プロパガンダ作戦・・・全然、効果ないじゃないですか」

「こんな連中に何の権限もない」

緊張の色をかくせない黛・・・。

「どうした・・・」

「私・・・最高裁なんて・・・はじめてですから・・・」

「最高裁なんて・・・じいさんとばあさんがほうじ茶を飲みながら老眼鏡で書類を読んではんこを押してるだけの一役所にすぎない。 ・・・蹴散らすぞ!」

しかし・・・妙にギクシャクする古美門だった。

すでに・・・最初の敗訴が深層心理に与えたダメージが古美門の調子を狂わせているのだ。

そこへ羽生が現れる。

「死刑判決が出てしまったことは・・・僕にとって不本意なことでした・・・応援してます。 頑張ってください」

「君の励ましなど必要ない・・・検察の一員として死刑判決を求めた事件がこの私にひっくり返されるところをしかと見届けたまえ」

しかし・・・相手は最高裁に異動した・・・シベリアの死神こと醍醐検事その人だった。

そして・・・事件を裁く判事は五人・・・いや四人だった。

「なぜ・・・検察出身でこちらに不利な野村判事が都合よく欠席してるんですか・・・」

「おそらく悪いものでも食べて体調を崩されたんだろう」

「毒殺事件の弁護士が担当判事に一服もってどうするんですかっ」

草の者であるイケメン忍者・加賀蘭丸(田口淳之介)の暗躍もラインを越えてしまったようだ。

「とにかく・・・これで我々は勝訴に一歩近づいたのだ・・・特に弁護士出身の板橋判事は死刑反対派だ・・・最初からこちらの味方がいる以上、1/5より、1/4にしておくのが勝利の方程式だ」

「どんだけ卑怯なセオリーなんですか」

しかし・・・それを黙認する黛もかなり成長したと言えるのだった。あくまで・・・古美門の方向にだが。

そして・・・開廷・・・。

存在するだけで室温を低下させる超能力者である醍醐検事に対し、貼れる懐炉で完全防護する古美門&黛ペア。

これでシリアスなのだから異常な時空間である。

「最高裁判事の皆々さま・・・検察が提出した証拠は全て間接証拠にすぎず、直接的に被告人を犯人だと証明するものは何一つないのが実情です」と先制する古美門。

「しかし・・・二審では被告人質問で罪を認めていますね?」と応ずるシベリア魔王。

「自暴自棄になってしまったんです。長い長い勾留生活。世間は右を見ても 左を見ても・・・悪魔の女を死刑にせよ!・・・の大合唱。被告の精神が崩壊しても無理ありません。精神科医の診断書もそれを証明しております。私は幾度となく被告人に接見してきましたが日々やつれ水も 喉を通らない状態。証拠として提出しました彼女が 自ら筆を執った 告白文をぜひお読みください。彼女の 真実の姿 本当の心の声が聞こえてくるはずです。繊細な繊細な彼女の心をこれ以上壊さないためにも一日も早く 過ちを正し自由の身に」

「ゴホッ」と咳込むシベリアのブラックジャック。

「具合が悪いなら外へ出たら どうですか?」と言葉を震わせる古美門・・・。

「いや・・・失礼・・・肺に・・・穴・・・が開いてるもので・・・」と決めゼリフの醍醐検事だった。

そして・・・冷気を漂わせながら逆襲に転じるのだった。

「まず 被告人が衰弱してるというのは誤りです。肉体的にも精神的にも極めて健康です。それどころかあまりの好待遇に他の被収容者から苦情が出てる始末。自筆の告白文といわれるものもかつて被告人が書いていた日記とはあまりに文体や表現が違い誰かの指導によって書かれた創作文であることは明白です。そもそも検察としては被告人の証言に重きを置かず、あらゆる証拠を積み上げ客観的に証明してまいりました。被告人の住居から発見された毒物。近隣住民による現場での被告人目撃証言。被告人の犯行に疑う余地はありません」

「被告人の家から出た毒物がなぜ犯行に使われた物と断定できるのでしょうか?」

「被害者から検出された成分と一致してるからです」

「成分が一致してる毒物ならば別のルートでも 出回っています」

古美門は「東南アジアの闇業者が調味料に偽装して 密売している青酸化合物」を提示する。

「ネットで簡単に入手できるこの薬品の成分は・・・詳細に分析してみると犯行に使われた毒物の成分に・・・被告人の住居から発見された毒物の成分よりもはるかに一致しています」

「フッ・・・」

「何が可笑しい?」

「あなたは化学に疎いようだ。その毒物ならわれわれもすでに入手し検証しております。物質は体内に入ると化学反応を起こすのです。実験の結果、変化後の成分はどちらもほぼ同じ。差異はありませんでした。つまり、・・・検察の証拠物の否定にはなり得ないということです」

醍醐検事のブリザード攻撃が古美門の心を凍てつかせたのだった。

「先生・・・」

「・・・」

「売人・・・土屋秀典が・・・被告人に毒物を売ったと証言している事実を踏まえると被告の犯行は否定できないのです」

言葉を失ったような古美門に替わり立ち上がる黛。

「その土屋秀典に問題があります・・・彼は・・・被告人にだけ売った・・・と証言していますが他にも2名・・・同様の毒物を土屋から購入した人物がいます」

「それが何か?」

「つまり土屋は被告人以外にも常習的に不特定多数に毒物を売っていたものと思われます」

「被告人に売ったことが否定されるものではありません」

「土屋秀典という人物の証言そのものに信用性がないと申し上げています。検察と土屋の間で何らかの取引があった可能性があると私たちは考えています」

「根拠があってそのような発言をなさるわけですよね?」

「・・・」

「売人が被告人に毒を売ったと証言し被告人の住居からそれが発見され犯行に使われた物と一致した。被告人が犯人である蓋然性は疑う余地がない!」

古美門の脳裏に去来する「敗訴の記憶」・・・。

(負けた)

(私が・・・負けた)

(負けた負けた負けた)

ふらふらと立ち上がる古美門。

「古美門先生・・・」

「・・・検察の捏造に決まっています。あの女がそんな簡単な証拠を残すわけがないんです。何度も貴和に逃げられて今度こそ仕留めないと検察の立場がない。だから・・・でっち上げたに決まっています」

「いいかげんにしろ!ここを どこだと心得るか!・・・古美門先生あなたはこれまで駆け引きや弁論技術、時に策謀をもって裁判に勝利する手法をとってこられた。だがここでそんなものは通用しない!・・・裁判はゲームではないのだ。罪を犯した者は償う。時には命をもって償わねばならないときもある。それが・・・この社会でまっとうに生きる人々の民意だ」

力強い醍醐の言葉に傍聴席の聴衆たちは共感の拍手を送るのだった。

(怪獣だ・・・)

(恐ろしい怪獣が来たよ)

(ウルトラマン・・・助けて)

「静粛に・・・」と裁判官が告げる。

突然、出口に向かって歩き出す古美門。

「先生・・・」とあわててひきとめる黛。

「もう・・・お家にかえるよ・・・」

「え・・・待ってください」

「うるさい・・・放せ!・・・こんな所にのこのこ出てきた僕がバカだった。どいつもこいつも・・・バカばかりだ・・・怪獣が見えないんだ・・・あそこに悪い怪獣がいるじゃないか・・・それなのに・・・どうしてわからない・・・こうなったら・・・お父さんに言い付けてやる!・・・僕のお父さんは偉いんだ!・・・ああ・・・そうだ・・・お母さんに迎えに来てもらおう。そして・・・怪獣のことはお父さんにまかせて・・・デパートのレストランでプリンアラモードを食べてから屋上の観覧車に・・・・・・」

古美門弁護士は卒倒した。

どよめく満場の人々・・・。

「先生・・・先生・・・すごい熱・・・誰か・・・救急車を・・・」

黛は古美門を胸に抱き・・・最高裁の法廷で救助を求めた。

公判は・・・弁護側代理人の心身喪失により中断されたのだった。

古美門は「極度の緊張とプレッシャーの中で負けた相手を目の当たりにしたことで敗戦トラウマが発症したPTSD(心的外傷)と診断された。

「ベムラー・・・バルタン星人・・・ネロンガ・・・ラゴン・・・グリーンモンス・・・ゲスラ・・・アントラー・・・レッドキング・・・マグラー・・・チャンドラー・・・ピグモン・・・スフラン・・・ガボラ・・・ジラース・・・」

「なにか・・・ぶつぶつ言ってますけど」

「これはウルトラ怪獣を登場順に羅列してるようですな」

幼児退行は心的外傷の症状の1つである。

「ギャンゴ・・・ドドンゴ・・・ミイラ人間・・・ペスター・・・ガマクジラ・・・ガヴァドン・・・二代目バルタン星人・・・ブルトン・・・ザラブ星人・・・にせウルトラマン・・・アボラス・・・」

「先生・・・しっかりしてください」

「あ・・・ピグモン」

「黛ですっ」

「バニラ・・・ヒドラ・・・ケムラー・・・テレスドン・・・ジャミラ・・・」

「先生、裁判・・・頑張りましょう」

「裁判・・・ジャミラはね・・・テロリストの容疑で捕まったアルジェリア民族解放戦線の少女闘士なんだぜ・・・フランス当局に拷問されて身体に電気をビリビリ流されたんだ・・・こわいよね」

「何言ってるんです・・・ジャミラは人道的立場から最後は解放されましたよ」

「グビラ・・・二代目レッドキング・・・ギガス・・・ドラコ・・・二代目スフラン・・・ゴモラ・・ダダ・・・ダダ・・・ダダ・・・」

「醍醐検事を倒して貴和さんを助けましょう」

「・・・もう無理だよ・・・僕みたいな何の取りえもない無能な最低くそ野郎が勝てるわけないよ」

「そんなことありませんよ。先生は素晴らしいですよ。1億円 稼ぐんでしょ?・・・高速何とかやってもらうんでしょ?」

「金なんて・・・ゴルドン・・・女なんて・・・ウー・・・ケロニア・・・ああ・・・ケロイドが・・・なんだかんだ言われて・・・圧力で」

「先生」

「相手は民意なんだよ。そんなの勝てっこないよ」

「何言ってるんですか。先生らしくないですよ」

「ザンボラー・・・メフィラス星人・・・二代目ケムール人・・・三代目バルタン星人・・・二代目ザラブ星人・・・巨大フジアキコ隊員・・・スカイドン・・・シーボーズ・・・ザラガス・・・ジェロニモン・・・再生テレスドン・・・再生ドラコ・・・」

「先生!」

「あ・・・再生ピグモン」

「黛ですっ」

「キーラ・・・サイゴ・・・ゼットン・・・ゾフィー」

「ほら 立ちなさい!」

「嫌だ!嫌だ!嫌だ・・・」

「黛先生・・・無理強いは禁物ですぞ・・・」

「でも・・・」

「しばらくはそっとしておくしか・・・ありません」

「・・・えーと・・・ジャミラ?・・・いやいや・・・ジャミラはもう言った・・・後はゼットン星人だけだったのに・・・よし・・・もう一度最初からだ・・・青い球・・・赤い球・・・ウルトラマン・・・ベムラー・・・」

Chandler ピグミー系の孤独な戦い

被告の和貴に途中経過を報告する黛弁護士だった。

「使えないわねっ」

「公判は再会されますから・・・」

「だから・・・懲役でもいいと言ったのに・・・あなたたちを信用した私がバカだった」

「私たちを信用してくれたことなんて・・・あったんですか・・・私はあなたに信用された気が一度もしないのですが・・・」

「・・・とにかく・・・このまま死刑になったら幼稚園児と横分け小僧の夢枕に立って毎晩のように金縛りにするわよ」

「・・・」

審理の再開に向けて判事たちの説得にあたる黛弁護士。

「再開の必要はないんじゃないかね」

「まだ審理は尽くされていません」

「充分だと思いますよ」

「中途半端な審理で被告人を死刑にしたら世論の反発を招きます」

「公判は一度ということになっています」

「慣例であって・・・決まりではないはずです」

「どちらにしろ・・・例外的ですな」

「原判決を覆す決定的な重要証拠があるんです」

「なぜ提出しないのですか」

「う・・・裏を取るのに時間がかかってしまって・・・」

「ただちに・・・提出があれば・・・検討します」

ついに・・・ハッタリをかます黛だった。

最後の手段として「NEXUS Law Firm」へやってくる黛弁護士。

羽生元検事にすがるのだった。

「検察は不正をしたんじゃないの?」

「・・・」

「あなたは それでいいの?・・・守秘義務や職務規定より大事なものがあるんじゃない?・・・私が知ってるあなたはいつだって弁護士としてじゃなく一人の人間として自分の信
念を貫いてた。時にはルール違反をしてでもみんなを幸せにするために行動してきたじゃない」

「僕から情報を取ったとバレれば君だってただではすまないよ・・・」

「覚悟はできています」

「・・・大事なメモをうっかり落してしまった・・・これはボクのミステイクだなあ」

羽生は黛にメモを残した。

「優慶大学付属小学校・・・給食センター・・・江上順子」

江上順子(犬山イヌコ)はニャースではなくて徳永家の元家政婦で死体の第一発見者だった。

黛は校門でニャースではなくて江上を急襲した。

「再就職先にまで押し掛けてすみません」

「お話することはありません・・・全部話しましたから」

「どんなささいなことでもいいんです」

「何も隠してないって言ってるでしょ」

「悪魔の女を死刑台に送る手伝いができて満足ですか?」

「・・・」

「でも間違った証拠で死刑が執行されたら・・・あなたは一生・・・十字架を背負いますよ」

「・・・」

「あなたが死刑執行のボタンを押すんです」

「・・・」

「その手で子供たちに給食を作り続けられるんですか?」と黛モード全開の黛。

「・・・」

「協力してくださればご主人が会社のお金を使い込んで請求されている多額の損害賠償の件・・・キレイにするお手伝いをさせていただきます」と黛は古美門モードまで・・・。

「ニャ」

ついに陥落するニャースではなく江上だった。

その帰路・・・携帯電話で戦果を報告する黛。

「やりましたよ・・・重要な証人をゲットしました・・・」

そこへ・・・やってくる・・・安藤貴和を絞首刑にしよう委員会の過激派たち・・・。

「おい・・・あの女、悪女の味方のピクモンじゃね」

「本当だ・・・ピグモンだ・・・」

「悪女の味方は悪女だ」

「悪女に正義の鉄鎚を下さなければ」

「断固粉砕せよ」

「闘争勝利」

「ピグモン打倒」

「・・・黛です!」

逃走する黛・・・しかし、逃げた先は袋小路だった・・・。

333galateia666 堕天使の胸に青き復讐の炎は燃える

集団による暴行の果て・・・。昏睡状態に落ちる黛弁護士だった。

その枕頭に立つ地獄の軍団・・・。

「ピグモン・・・お前も脳みその小さいレッドキングにやられたんだな・・・犯人は捕まったのか」

「悪魔を弁護する国民の敵だからって・・・供述しているそうです」

「ボクが・・・情報をもらしたりしたから・・・」と羽生。

「やらせたのは私だ・・・」と唇をかみしめる古美門。

「どこへ・・・行かれるんです・・・古美門先生」

「・・・復讐するは我にあり・・・弔い合戦だ」

まだ死んではいない担当弁護士の暴力被害によって・・・二分された国論。

しかし・・・被告不利の風向きは・・・まだ変わらない。

だが・・・法廷は再開されるのだった。

「大変異例にもかかわらず証人への尋問を許可してくださり感謝 申し上げます」

証人として江上順子が召喚される。

「徳永家の元家政婦にして事件の第一発見者江上さん。警察の取り調べに対しこう証言していますね。・・・いつものように勝手口から入り、その日は資源ごみの日だったので台所の瓶や缶類をごみ集積所へ運び、リビングへ行くと光一郎さんと さつきさんが倒れており慌てて救急車を呼んだ」

「はい・・・」

「抜け落ちている証言はありますか?」

「はい・・・」

「おっしゃってください」

「資源ごみを捨てる際、台所に見たことのない変な壜が落ちていたんです。外国の調味料か何かだと思い・・・そのまま捨てました」

「警察にそう証言したんですか?」

「はい。・・・でも事件には関係のないことだと・・・」

「ちなみにその壜とはこれですか?」

古美門は「東南アジアの闇業者が調味料に偽装して 密売している青酸化合物」の壜を示した。

「・・・とてもよく似ています」

「これと・・・とてもよく似た壜が犯行現場に落ちていたそうですよ。・・・醍醐検事。・・・真犯人は毒物を犯行現場に放置して去っていったのであり・・・被告人の部屋から発見された物は事件とは無関係なんじゃありませんか?」

「事件当夜・・・現場付近で被告人・安藤貴和は多くの人々から目撃されています。証拠と証言を総合的に考慮すれば結論に疑う余地はありません」と動じない醍醐検事。

「石井家の玄関から徳永家の勝手口は電柱が邪魔で見えません・・・それなのに石井由美さんは・・・徳永家の勝手口から安藤貴和が出てくるのが石井家の玄関から見えた・・・と証言しています・・・おかしいじゃないですか・・・」

「検察の実験結果とは異なりますし・・・信用性の高い目撃証言は他にも多数あります」

「多過ぎるんですよ・・・普通は目撃者などそうそういるものではない。・・・夕食の支度をしながらふと 窓の外を見ると徳永家の勝手口から安藤貴和が出てくるのが見えた藤野真希子さん・・・日課の犬の散歩をしていたところ徳永家の勝手口から安藤貴和が出てくるのが見えた川辺好美さん・・・この地域にお住まいの方は・・・徳永家の勝手口を常に監視でもしているかのようです・・・」

「どなたも証言に 自信を持っており偽証してるとは考えにくい」

「そりゃあ自信を持ってるでしょう・・・みんな・・・徳永家の勝手口から悪女が出てくるところを見たいんだもの。人は見たいように見、聞きたいように聞き、信じたいように信じるんです。・・・検察だって同じでしょう?」

「それは侮辱だな」

「ええ・・・侮辱したんです。なんてったって検察は・・・証拠によってではなく民意に応えて悪女を起訴したんですから」

「われわれは公僕だ。国民の期待に応えるのは当然だ」

「愚かな国民の愚かな期待にも応えなければならないんですか?」

「愚かって・・・」

「愚かで醜く卑劣な国民です」

「何を言っている。・・・私はこの素晴らしい国の人々を・・・美しく 誇り高い国民だと思っている」

裁判長「ええ・・・と・・・何を言ってるのかな・・・議論としては・・・逸脱しちゃってますよね・・・被告代理人も・・・検事も・・・お腹すいちゃったのかな・・・」

板橋判事(深沢エミ)「いいじゃありませんか。・・・興味深い議論です」

ついに古美門は死刑反対派の判事の心をキャッチしたのだった。

「美しく 誇り高い国民が証拠もあやふやな被告人に死刑を求めますか?」

「本件の場合・・・有罪であるならば極刑がふさわしい。わが国において それは死刑だ」

「生命はその者に与えられた権利です。それを奪う者はたとえ国家であっても人殺しです」

「あなたが死刑廃止論者だとは意外だな・・・」

「いいえ 反対じゃありませんよ。目には目を・・・歯には歯を・・・殺人には殺人を。立派な制度だ。・・・人知れずこっそり始末することが卑劣だと 言っているだけです」

「白昼 堂々と殺せというのか?」

「そのとおり。・・・青空の下市中引き回しの上はりつけ火あぶりにした上でみんなで一刺しずつ刺して首をさらし万歳三唱した方がはるかに健全だ。・・・だがわが国の愚かな国民は自らが人殺しになる覚悟がないんです。自分たちは明るい所にいて誰かが暗闇で社会から誰かを消し去ってくれるのを待つ。そうすればそれ以上死刑について考えなくて済みこの世界が健全だと思えるからだ・・・違いますか?」

「仮にそうだとしてもそれもまた民意だ」

「民意なら何もかも正しいんですか?」

「それが民主主義だ」

「裁判に民主主義を持ち込んだら司法は終わりだ」

「いささか古いな・・・法は決して万能ではない。その不完全さを補うのは何か・・・人間の心だよ。罪を犯すのも人間裁くのも人間だからだ。多くの人々の思いに寄り添い・・・法という無味乾燥なものに血を通わせることこそが正しい道を照らす。・・・裁判員裁判はまさにその結実だ。そして・・・本件において人々が下した決断は安藤貴和は死刑に処されるべきというものだった。愛する家族と友人と子供たちの健全な未来のために。・・・これこそが民意だ」

再び・・・醍醐判事に贈られる喝采。

裁判長「静粛に・・・静粛に・・・」

「素晴らしい。さすが民意の体現者・醍醐検事。・・・実に素晴らしい主張です。いいでしょう。 死刑にすればいい。確かに安藤貴和は社会をむしばむ恐るべき害虫です。駆除しなければなりません。死刑にしましょう。現場での目撃証言はあやふやだけれど死刑にしましょう。被告人の部屋から押収された毒物が犯行に使われた物かどうか確たる証拠はないけれど死刑にしましょう。現場に別の毒物らしき瓶が落ちていたという 証言があるけれど気にしないで死刑にしましょう。証拠も証言も関係ない。高級外車を乗り回しブランド服に身を包みフカヒレやフォアグラを食べていたのだから死刑にしましょう。それが民意だ。それが民主主義だ。・・・何て素晴らしい国なんだ。民意なら正しい。みんなが賛成していることなら全て正しい。ならばみんなで暴力を振るったことだって正しいわけだ。私のパートナー弁護士を寄ってたかって袋だたきにしたことも民意だから正しいわけだ。・・・冗談じゃない・・・冗談じゃない!・・・本当の悪魔とは巨大に膨れ上がったときの民意だよ。自分を善人だと信じて疑わず薄汚い野良犬がどぶに落ちると一斉に集まって袋だたきにしてしまうそんな善良な市民たちだ。・・・だが世の中にはどぶに落ちた野良犬を平気で助けようとするバカもいる。己の信念だけを頼りに危険を顧みないバカがね・・・そのバカのおかげで今日・・・江上順子さんは民意の濁流から抜け出して自分の意思で証言をしてくださいました。・・・それは 江上さんたった1人かもしれませんが確かに民意を変えたのです。私は そのバカを・・・誇らしく思う」

「・・・」ついに・・・沈黙する醍醐判事。

「判事の皆様・・・判決を下すのは断じて国民アンケートなんかじゃない。わが国の碩学であられるたった5人の あなた方です!・・・どうか 司法の頂点に立つ者の矜持を持ってご決断ください。・・・お願いします」

師匠は弟子のために弟子は師匠のために

病院に駆けつける・・・古美門・・・しかし、臨終には間に合わなかったようだ。

しかし・・・それはささやかなジョークだった。

「蘭丸・・・変わり身の術か・・・不謹慎にも程があるだろ!」

「だって・・・真知子ちゃんがやろう!・・・って」

「蹴散らしたんでしょうね?」

「君の捨て身の体当たりバカ作戦に乗ってやった!」

「自分が暴行を受ければ世論の風向きが変わると踏んだんですかな?」と服部。

「おしりペンペンで挑発してやりました」

「・・・」

「女相手にそんな手荒なことはしないだろうって思ったんですけど意外にやられました」

「女とは思わなかったからこそ・・・単なる暴行ですんだんだろう」

「ひでぶ」

「天井知らずのバカだ。しかも世論は何一つ変わってない。お前に同情するやつなんかいないんだ。 バ~カ」

「でも古美門先生はPTSDを克服して立ち上がってくれました。それが本当の狙いだったんですよ」

「PTSD・・・あれは 君を追い込んで情報を取らせるための作戦に決まってるだろうが。だまされやがって・・・愚か者め」

「気付いてましたよ。 気付いた上で乗ってあげたんじゃないですか」

「君が気付いてることも気付いた上でやっていたんだ・・・」

「先生が気付いていることに気付いてることも気付いた上で乗ってあげたんでしょうが!」

「君が気付いていることに気付いてることに気付いていることに気付いてることに・・・」

以下・・・略します。

すべてはふりだしに戻る運命

「開廷します。・・・安藤貴和に対する殺人および殺人未遂被告事件について次のとおり 判決を宣告する・・・原判決 および第一審判決を破棄する・・・本件を 東京地方裁判所に差し戻す」

「差し戻しか・・・最高裁め・・・自分で判断するのを避けたな」と古美門。

「でも異例中の異例ですよ。判決を覆したんです。歴史的勝利です!」と黛。

醍醐検事が別れの挨拶に訪れた。

「これで・・・私は不敗です・・・私に勝ったなどと発言すれば・・・名誉棄損で訴えます」と胸を張る古美門。

「ふふふ・・・私はあなたに勝ったことなどない・・・あなたに勝った人間はそもそも私ではありません・・・」

「え」

「本当の敵は敵のような顔をしていないものです」

「それって・・・」

「彼なら・・・こう言うでしょう・・・サウジアラビアでは人がラクダを操るように見えるが実はラクダが人を導いているという諺があるとかなんとか・・・」

健康診断の結果がオールAだった醍醐検事は吹雪とともに去って行った。

黛はメモを取り出した。

「この・・・優慶大学付属小学校の慶の字・・・間違っている・・・吉永慶子の慶の字と同じ・・・」

「サウジアラビア帰りの帰国子女だからか・・・」

「・・・シロッコ・・・」

「なんだって・・・」

「ウルトラマン世代じゃない・・・ガンダム世代向けのネタも一つくらい入れとこうかと」

「君は両方、知らないだろうがっ」

そして・・・両方知ってるやつらが帰ってくるのだった。

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2013年12月11日 (水)

あの角を曲がれば墓場、黒歴史の履歴書の備考欄(中丸雄一)

もはや・・・二人のコンビに何の違和感もなくなってきた今日この頃である。

この世界の浸透力は恐ろしいな・・・。

冬なのに夏なんだもんな・・・。

そして・・・いよいよ濃厚にたちこめる「死」の香り。

襖一枚隔てても・・・そこにはラインがある。

すでに死んでいるのは・・・インタビュアーなのか・・・それともゲビヤマくん?

ゲビヤマくんはラインを越えるために相当にストレスを感じている気がする。

きっと・・・普通の女の子なんだなあ。

そういう意味では三日月くんとか北島広域捜査官は・・・普通じゃないんだなあ、たぶん。

あっさりとラインを越えてるっていうか、最初から越えてたっていうか・・・ね。

携帯用タンクに水を汲み・・・白川は何をしたかったのか。

単なるカモフラージュなのか。

それとも・・・やはり・・・お墓の掃除か・・・。

日常的な死後の世界。

それはやはり・・・生者の憧れの世界なんだな。

涅槃だ・・・世界は涅槃を待っているんだ。

そこに行けばどんな夢も叶うというガンダーラを・・・。

で、『・第8回』(TBSテレビ201312100028~)脚本・演出・三木聡を見た。ゲビヤマくん(木村文乃)の額のあせもが気になる今日この頃なのである。暑かったもんなあ・・・今年の夏は。まあ・・・ここのところ・・・夏はいつも暑いけどな。そういう気分になると・・・ふと・・・思うんだよな。本当に今年の夏は暑かったのかと・・・。そして今は年の瀬なんだけど・・・それは気のせいかもしれないぞと。じゃ・・・今はいつでここはどこなんだよ・・・お前誰なんだよ・・・などと正気を疑われる記述になっていくわけである。そうなんだ・・・好きなんだよなあ。こういう気分が・・・そういう気分で言えばもう十年以上会ってない昔の友達に・・・この曲何だっけ・・・と尋ねれば耳元で答えが返ってくる気がするんだ。でも・・・それはただの妄想なんだな。

川本写真館で「チューリップ状に緊縛された夷鈴子(工藤綾乃)の写真」を発見したインタビュアー青沼(中丸雄一)は・・・撮影者の川本穿石(森田ガンツ)に激しく迫る・・・。

「この・・・写真、あなたは何かを感じませんか」

「そう言われましても・・・もっとひどい催し物もございましたし・・・」

「ゲビヤマくん・・・」

「はい・・・」

察しの悪いゲビヤマくんもさすがに・・・ピンと来て・・・「チューリップ殺人事件の現場写真」を穿石に提示するのだった。

「この写真を見たらどうなんです」

「さあ・・・それは・・・まあ・・・こういうことは・・・まあ・・・一般常識としては・・・ないこともないわけでございましょう・・・全国的と申しますか・・・一部の特殊な子供社会では・・・と申しますか」

「つまり・・・偶然だと・・・」

「はあ・・・」

「同じ少女がスカートまくりあげて太ももさらしている写真があり・・・その後・・・少女の死体のスカートがまくりあげられて太ももさらされていても・・・何も感じないと・・・」

「はあ・・・感じないかと言われれば・・・憐れなことだと」

「・・・そうですか」

のらりくらりではなくしどろもどろに辟易する青沼だった。

「まあ・・・いいでしょう」

二人はインタビューを切り上げて・・・消ノ原町を後にするのだった。

「二人の遺体を・・・チューリップ状にしたのは・・・やはり黒曲でしょうか」

淫靡で変態で猟奇的な催し物の主催者だったらしい黒曲亜理里(松重豊)・・・。

「いや・・・写真を見たものなら・・・誰でも細工することはできる・・・たとえば・・・カメラマンだって」

「でも・・・あんなおじいさんに・・・」

「十年前なら可能だろう・・・」

「ああ・・・そうですね」

「それに・・・たとえば・・・川本の息子なら・・・ひょっとして写真を見る機会があったかもしれない」

「ズリネタですか」

「そんなセリフはないじゃないか」

「あったのかもしれないけどカットされたかもしれないじゃないですか」

「まあ・・・基本、妄想だからな」

「とにかく・・・川本の息子も要注意ですね」

「そう・・・それに催し物だから・・・他に見物人がいたかもしれない」

「ええっ」

「たとえば・・・黒曲の手下のような・・・あの支店長」

消ノ原信用金庫三貴子支店支店長の永田銀山(村杉蝉之介)は青沼と黒曲を仲介した人物だった。

「そんなこと言ったら・・・関係者はみんな怪しいじゃないですか」

「まあ・・・そうなんだけどね」

賽の河原町の温泉旅館「猫旅館」にはヘパイストス出版第二編集部編集長・風見川策志(岩松了)が未だ滞在中だった。

「しかし、やはり、黒曲が怪しいのではございませんかねえ」

「なんだか・・・他人行儀ですね」と青沼。

「だって・・・白川くんとは思えないんだもの」

青沼は「変身前の小説家・白川とは別人のようだ」という設定なのである。

もちろん・・・人間の顔の差別化が苦手なキッドには二人の区別はつかないのだった。

それはこの際、どうでもいいだろう。

「どうせ、黒曲や夷鈴子の超能力だってインチキだろう」

「でもスプーンは曲げられるそうですよ」とゲビヤマくん。

そこへ女将の櫻井野薔薇(ふせえり)が現れる。

「スプーンなんて誰でも曲げられるでしょう」

念力でスプーンをポキンと折る・・・女将。

「ですよねえ」と番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)も念力でスプーンをポキンと折るのだった。

ま・・・ラインを越えているんだな。この旅館も。

ゲビヤマくんが東京に帰ってるから・・・もう東京もラインの内側なのかもな。

じゃ・・・窓から東京スカイツリーを見ているキッドもラインの内側なのか・・・どうも今朝からそんな気がしてならないんだけど・・・。

だから・・・お前の気分とかどうでもいいですから。

話は聞かせてもらいましたよ・・・とっとと先に進んでくれ。

「やはり・・・事件の鍵を握るのは・・・真壁真奈美か」

「チューリップ殺人事件」の一年後に殺されたはずなのにどっこい生きていた真壁真奈美(中村優子)である。

まあ・・・真壁真奈美より・・・キッドとしては夷鈴子とか阿波島翠(廣井ゆう)とかウエイトレス(上間美緒)とかの方に核心を置いてもらいたいわけだが・・・だから・・・お前の趣味はどうでもいいだろうがっ。

東雲麻衣(三吉彩花)とかレミー(二階堂ふみ)に逢いたいよね。

・・・おいっ。

仕方なく、消ノ原信用金庫の永田支店長を訪ねるコンビだった。

「真壁真奈美さんは何故・・・この町から姿を消したのですか」

「さあ・・・それは・・・」

そこへ・・・姿をみせる二代目なっちゃんで給食の酢豚が大好物な樺山あきらこと消ノ原町役場職員・今村ぬえ(三浦透子)・・・。

「あはははは」

「・・・」

「あはははは」

「・・・」

「あはははは・・・あなたにだけ教えてあげる」

仕方なく・・・最新型でワイヤレスのカセットテープ型録音参号機「白虎」を繰り出すゲビヤマくんだった。

もはやゲビヤマくんは・・・青沼への好意をあからさまにするが・・・見ようによっては職業的パートナーシップの発露でもある。

「あはははは・・・キスしてくれたら・・・教えてあげる」

「・・・」

消ノ原町役場職員・今村ぬえ(三浦透子)の姉こそが永田支店長の不倫相手で元信用金庫職員・今村のえ(山田真歩)なのだった。

さっそく・・・のえにインタビューする青沼。

「真壁真奈美は・・・本当は・・・淫らな女じやないのよ・・・どちらかと言えば貞淑な女だった・・・でもね・・・弱い女だったのよ・・・まあ・・・結局、女としては強いわけだけど」

「なるほど・・・」

「チューリップ殺人事件の日・・・信用金庫に抜き打ちの監査が入ったのよ・・・真奈美はその日500万円を・・・ある老人の預金から着服していた・・・でも・・・バレなかった・・・事件が起きたからね・・・だけど・・・一年後に老人が死んで・・・遺産相続によって横領の事実が発覚する惧れが出たわけ・・・それで・・・真奈美は失踪したんじゃないのかな・・・まあ・・・結局・・・横領発覚にはならなかったんだけどね」

「そういうことか・・・」

青沼はなんとなくわかってきたようだった。

真壁真奈美の人生の遍歴が・・・である。

まあ・・・いろいろとおかしいのだが・・・なにしろ・・・ラインをこえているのだ。

【真壁真奈美】

真壁水道設備の娘として生まれる。

甘粕真一(眞島秀和)と結婚。

黒曲亜理里と不倫。

石原完一(萩原利久)を出産。

甘粕と離婚。

真壁水道設備に婿入りした男と再婚。

信用金庫に就職。

その十数年後・・・ここがおかしいぞ。

1889年、夷鈴子が同級生の石原と三貴子の泉を発見。

夷鈴子を襲った男子生徒が失踪。

夷鈴子と黒曲が催し物を行う。

甘粕が三貴子の泉の管理人となる。

阿波島翠が奇跡によって病気を治癒。

1994年、阿波島翠が彩(廣井ゆう)を出産。

永田支店長と浮気。

安藤刑事(光石研)と浮気。

1999年、安藤刑事に貢ぐために500万円を持ち裏道で三貴子の泉へ。

夷鈴子、阿波島翠の死体を発見。

帰路を天狗野郎(森下能幸)に目撃される。

2000年、失踪。

ちなみに・・・夷や石原の同級生が伊藤文枝(玄覺悠子)である。

現在が2013年なら・・・伊藤も石原も40歳前後。

真奈美が・・・16歳で結婚したとしても・・・現在、60歳前後になる。

演じる中村優子(38)なのである・・・なんちゃってが過ぎるぞ・・・大河ドラマかよ。

この・・・年代の合わなさが・・・石原を演ずる萩原利久(14)と符号することは間違いない。

まあ・・・死んだ時の姿なら問題ないよな。

真壁真奈美は40歳くらいで死んでいて・・・石原は15歳くらいで死んでいるんだな・・・きっと。

可能性としては現在の真壁真奈美は・・・本当は夷鈴子なのかもしれないということだ。

まあ・・・死後の世界のことをあれこれ辻褄あわせようとするのもおかしな話だけどな。

ついでに夷と阿波島と三貴子についてのストレートな読み替えをしておこう。

夷は蛭子とも書く。漫画家である。しかし、蛭子(えびす)はヒルコとも読むのである。ヒルコは「古事記」のイザナギイザナミによる国生み神話における・・・初子で・・・身体障害があったために流されたものである。我が国における水子第一号なのだ。続いて淡島(あわしま)が生まれるがこれも流されてしまう。主導したのが女神イザナミだったのが不具を生んでいる原因であるとされ・・・男神イザナギが主導することでその後は淡路島などの島が順調に生まれる。つまり、夷と阿波島は・・・二人の水子を示している。この流れから「三貴子(さんきす)」は古事記の三貴子(みはしらのうずのみこ)と関連することになる。三貴子とは国生みの後で生まれるアマテラス、ツクヨミ、スサノオの三柱の神であることは言うまでもない。まあ・・・だからといって物語とは無関係だと思う。しかし、少なくとも・・・夷も阿波島も最初から捨てられる運命の子だったとは言えるかもしれない。

明らかに見た目年齢の問題があるのだが・・・そこはうっかりの場合もあるのでスルーして・・・コンビは・・・安藤と真壁の関係についてもう少し追求したいと考える。

すると・・・墓地から・・・安藤が現れるのだった。

もう・・・明らかについさっきまで死んでましたね。

「おかしいですよね・・・」

「何がだ・・・」

「生きている真壁真奈美が死んでいることになっていたこととか」

「よくある初動捜査のミスだよ」

「そういう問題ですか」

「問題ともいえないことさ」

「僕たちは・・・ガセネタをつかまされ続けるんですかね」

「世の中は基本的にガセなんだろう」

「あなたは・・・三貴子の泉にいたんでしょう・・・真壁真奈美から金を受け取るために・・・」

「想像するのは自由だけどさ・・・あんたたち・・・もう一人が出てくる前に・・・もう東京に戻った方がいいぞ」

「また・・・もう一人ですか」

「この町では問題はもう一人が解決することになってるんだ」

「おくり様みたいですね」

「・・・」

「この世とあの世を往ったり来たりですか」

「まあ・・・そういうことだろう」

「これは警告なんですか・・・脅迫なんですか」

「そんなの意味は同じだろう・・・」

「・・・」

安藤がダメなら真壁真奈美だとコンビは・・・何故か三貴子の泉の管理小屋へと向かう。

そこには・・・甘粕に護られるように真奈美が戻っていた。

男性遍歴の果てに原点に戻ったのか。

それとも・・・最初から二人は・・・グルなのか。

とにかく・・・真奈美が本当は誰なのか・・・という話である。

夷鈴子だとすれば・・・チューリップの死体は・・・真壁真奈美で・・・少なくとも年齢は符号するのだった。

まあ・・・そうなると石原も二人いることになる。

真壁真奈美が生んだ石原(40)と・・・夷鈴子が生んだ石原(14)と・・・。

なにしろ・・・2013年は1999年から14年目なのだ。

まあ、いくら妄想しても原点が妄想なので正解なんかないわけだが・・・。

やがて・・・消防団が・・・思わせぶりの追跡を始める。

追手を逃れるために白川に変装・・・戻る青沼。

ゲビヤマくんは捜索の対象外だったらしい。

白川のまま消ノ原食堂「モアイ」に潜入したために・・・川島芳香(町田マリー)と真壁真奈美の本音トークを盗み聞きすることに成功する。

「あんた・・・水道工事の不正の件で・・・安藤から・・・強請られてたんでしょう」

「まあね・・・」

「そろそろ・・・重荷をおろしてもいいんじゃない」

「そうかもね・・・」

こうなると・・・甘粕と・・・真鍋の婿養子が同一人物の可能性もあるな。

キャスティングされてないし。

同じ男と再婚はないこともないしな。

とにかく・・・二人の女には怪しい男にしか見えない白川が店を出た直後・・・。

真壁真奈美は電話をするのだった。

「すべてを話したいと伝えてほしいの」

しかし・・・翌日、甘粕は変わり果てた真奈美を三貴子の泉で発見するのだった。

まあ・・・死んだって・・・平気で蘇る・・・昇天峠の彼方の話なんですが・・・。

関連するキッドのブログ→第7話のレビュー

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2013年12月10日 (火)

人道、公平、中立、独立、奉仕、単一、世界性でごぜえやす(綾瀬はるか)

たぐいまれなる理想の一つである赤十字社の精神・・・を掲げつつ、気がつけば・・・最終回直前である。

最愛の夫にふたたび先立たれ・・・子もなく・・・敬愛する兄も・・・姪も去った。

残された人生を八重は・・・人道的活動に捧げる。

日清戦争の開始は明治27年(1894年)、従軍看護婦となった八重は49歳。残された余命はまだ37年ある。

つまり・・・最終回は37年間を駆け抜けるのだった。

まあ・・・人生五十年だから・・・残りは余白みたいなものかもしれない。

高齢化時代に・・・この姿勢でいいのかどうかは別として・・・。

おいたちから始る鉄砲人生。その頂点となる戊辰戦争。明治における教育人生。その終焉を告げる日清戦争。

この半生ですでに・・・ボリューム満点だった・・・と言えるだろう。

もう少し、日清、日露の戦役に時間を割くべきだと言う考え方もあるが・・・まあ・・・それは「坂の上の雲」でもやったし・・・それをやるなら・・・主役はまた別の人間でよかったということだろう。

従軍と言っても日清戦争では広島の陸軍予備病院で・・・日露戦争では大阪の陸軍予備病院で看護にあたったに過ぎない。

女衛生兵として戦場を駆け巡ったわけではないのである。

それでは話が面白すぎるわけである。

第二次世界大戦との対比で言えば・・・日清戦争開戦の年は・・・戊辰戦争後27年なので・・・昭和40年代の後半ということになる。

1972年にはグアム島で横井庄一元伍長が発見されている。敗戦国であった日本は復興を遂げる一方で連合赤軍はあさま山荘事件を起こし、札幌冬季オリンピックが開催されるもテルアビブ空港では連合赤軍が乱射事件を起こす。日中国交は正常化し・・・パンダがやってくるのである。一方で戦勝国のアメリカはベトナム戦争を継続中なのである。

そういう混沌が会津にもあったはずだが・・・それはある意味スルーされたのだった。

いつの間にか会津藩士たちは・・・新政府にとりこまれ・・・そして・・・日本人化されていく。

それは・・・アメリカナイズされた日本人の姿と明らかに符号するのだった。

それから・・・八重が死ぬまでの37年間・・・戦後は2009年となる。八重にとっては昭和7年である。その五年後には日中戦争が始るのだ。

つまり・・・来年・・・2014年がその年になる。

歴史は繰り返すのである。願わくば愚かな行為が繰り返されないことを祈るばかりなのだった。

で、『八重の桜・第49回』(NHK総合20131208PM8~)作・山本むつみ、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は八重を慕って半世紀、ついに貴族議員となった山川浩、そして八重を指導し鍛えた最愛の兄・山本覚馬の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。あの戦火をくぐりぬけ・・・身体障害者となっても雄々しく生きた男二人・・・いぶし銀の輝きが胸を射ぬきます。大河ドラマを彩ってくださったイラストの数々も胸を去来しますな。いよいよ・・・来週は最終回・・・無事の完走をお祈り申し上げます。しかし、あくまでマイペースでお願いいたします。

Yaeden049 明治23年(1890年)4月、未亡人・新島八重は日本赤十字社の正社員となる。明治24年(1891年)5月、シベリア鉄道起工。7月、東京音楽学校の卒業式で君が代斉唱。12月、エジソンがラジオの特許を取得。明治25年(1892年)6月、日本赤十字病院が新築され開院。12月、山本覚馬64歳で死去。翌年、山本久榮も23歳で病没。明治26年(1893年)5月、戦時大本営条例公布。海軍軍令部設置。7月御木本幸吉が真珠の養殖に成功する。12月、松平容保59歳で逝去。明治27年(1894年)1月、ロシア・フランス同盟成立。3月、第3回衆議院総選挙。日本に留学経験のある李氏朝鮮の政治家・金玉均が上海にて朝鮮王后で親清派の閔妃の刺客により暗殺される。朝鮮で農民が蜂起し東学党の乱となる。5月、絶対平和主義者・北村透谷自殺。乱徒が朝鮮全州を制圧。6月、明治東京地震発生。死者31人。日本陸軍およそ4000人、朝鮮半島に出兵。7月、日英通商航海条約調印。日本海軍が司令長官伊東祐亨中将による初の連合艦隊を編成。日本軍が朝鮮王宮を占領し興宣大院君を擁立。朝鮮半島の豊島沖で日本艦隊(「吉野」「秋津島」「浪速」)と清国艦隊(「済遠」「広乙」「操江」「高陞号」)が遭遇戦に突入。「広乙」と「高陞号」を撃沈。8月、日清両国が宣戦布告。日清戦争が開始される。

冬の大磯海岸は閑散として冷たい風が時折、頬を撫でる。

街道を外れたホテル馬久田屋に続く道は林に囲まれている。

八重と剣客の山田二朗吉、下忍の政吉は黄昏の光の中をかける。

「む・・・」と八重は異臭を嗅ぐ。

それは・・・最近は滅多に見なくなった野生の獣の匂いだった。

「お待ちくだされ」

八重に呼びとめられて二朗吉は足を停め、身構える。

勢いのまま、二、三歩前に出た政吉が「おおっ」と声を上げる。

前方にオオカミの群れが待ち伏せていた。

「狼に囲まれておりやす。お二人は前方の敵に集中しておくんなさいまし」

「心得た・・・」

二朗吉は仕込杖を抜き放ち、政吉は匕首を構える。

同時に前方のオオカミが前方の二人に襲いかかる。

八重は二丁拳銃を抜き放っていた。

「会津山本流鉄砲術奥義・・・乱れ射ち」

連射につぐ連射で銃声が重なり合う。

いつの間にか回りこんだのか・・・背後から・・・そして左右の林の中から・・・殺到してきたオオカミたちは空中で悲鳴を上げる。

十数頭のオオカミが一瞬にして死骸となっていた。

その間に二朗吉が二頭を斬り・・・政吉は手裏剣で一頭をしとめていた。

「なんと・・・見事なものだ・・・」

訛りのある英語で前方に立つ白人の男が声をあげた。

八重は二朗吉と政吉の間から前に出る。

「ドイツのお人か・・・」

「いかにも・・・さよう・・・かわいいウルフたちに餌を与えようと待っていれば・・・このような恐ろしい方々にまみえようとは・・・あなたたちは伝説のサムライというものか」

「陽のあるうちに姿を見せるとは・・・ヴァンパイヤとも思えぬが・・・狼を使うところを見れば人狼の一族か・・・」

「ほうほう・・・そんなことまでご存じとは・・・もしや・・・ホテルに御用の向きか・・・」

「その通りだ・・・道を開けよ」

「いやいや・・・そうはまいりませぬ。ホテルでは我らが主人・・・エリーゼお嬢様がまどろんでおいでなのです。異国の猿に眠りを妨げられては・・・私がお叱りを受けまする」

「八重様・・・この者・・・何ものです・・・」

英語でやりとりする二人にじれた二朗吉が口を挟む。

「魔性のものでございます。お二人は少しお下がりくださいませ」

「心得た・・・」

八重は拳銃を構えたまま・・・数歩前へ出る。

いつの間にか、八重の手にはリボルバーではなくて小型の自動拳銃が握られている。

「ふふふ・・・女だてらに拳銃使いとは・・・噂に聞く新大陸の西部からでも参られたかな」

「私は日本国人だ・・・」

「確かに・・・そなたは大した腕前だが・・・このアルベルト様には・・・銃など聞きませぬぞ」

「安心せよ・・・この銃には銀の弾丸がこめてある」

「ははは・・・人の分際で・・・狼男に勝てるつもりか・・・」

「もはや・・・勝っておる・・・」

「なに・・・」

「お前は・・・きっと猟師であろう・・・獣に匂いを悟られぬように風下に立っているのがその証拠だ」

「それがどうした・・・」

「つまり・・・お前は先ほどから私から吹く風に吹かれているということだ・・・もはや・・・人狼の活力は失われている・・・」

「何・・・お・・・これは・・・」

「私が風に乗せて・・・お前に銀の粉をふりまいていたのだ・・・この国の古から伝わる春花の術だ・・・お前は銀粉をたっぷりと吸いこみ・・・銀の毒に冒されているんだよ」

「うお・・・」

「かわいそうだが・・・先を急ぐのだ」

八重は銀の弾丸を連射で狼男・アルベルトに撃ち込んだ。

着弾の衝撃で吹き飛ばされた狼男は体内から化学反応による煙を吹き出し・・・絶命した。

「さあ・・・急ぎましょう」

「八重様・・・」と政吉が言う。

「ホテルの入り口近くにまだ・・・何かおりますぜ・・・」

「・・・」

すでに・・・周囲は夕闇に包まれている。

政吉は携帯しているカンテラの灯を灯した。

その灯に浮かびあがったのは・・・熊よりも大きな身体をもったモンスターだった。

「なんだ・・・あれは人間か・・・」と二朗吉が叫ぶ。

「おそらく・・・西洋の魔術による・・・人造人間でございましょう・・・」

「じんぞう・・・にんげん?」

「ヴァンパイアの魔力で・・・死者の身体をつなぎ合わせ・・・死霊として蘇生させたもののけでごぜえやす・・・」

「なんと・・・」

「しかし・・・恐れることはございませぬ・・・あれはただの・・・こけおどしです」

「・・・」

「死せるものよ・・・死者の国に・・・戻るがよい・・・」

八重は爆裂弾を投げた。

「が・・・」

反射的にそれを振り払おうとしたモンスターは炸裂した火薬によって五体を木端微塵に吹き飛ばされるのだった。

「これで・・・ホテルの中の敵は・・・用心してしまったでしょう・・・ここからは・・・私一人で参ります」

「しかし・・・」

「お二人は足手まといなのでございます」

「・・・」

その時・・・ホテルの窓からまばゆい光が漏れだした。

どこからか・・・ヴァイオリンの調べが聴こえてくる。

「どうやら・・・歓迎の準備ができたようでございます・・・お二人もご用心ください・・・灯を絶やしませぬよう・・・」

「八重様・・・お気をつけて・・・」

八重は頷くと・・・愛しの襄が囚われた・・・魔性の館に足を踏み入れるのだった。

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2013年12月 9日 (月)

残酷な天使に捧げよアンドロイドの魂を(木村拓哉)

交代性多重人格は孤独だよね。

何人に分岐しても・・・結局、一人だからな。

同時性多重人格でよかったよな。

基本、分裂した人格同志の対話がないと淋しいもんな。

まあ・・・両者共に統合失調だと言われればそれまでだけどな。

しかし・・・しっかり統合された人格者なんて本当に存在するのかいな。

さあ・・・テレパシーがないから・・・他人様の心がどうなっているかまではちょっと・・・。

いや・・・テレパシストもいるだろう。

いますよ。

いや・・・あんたは・・・読めるって自称しているだけだし。

読めますよ。

だから・・・そういう気分がするだけだって。

皆さんだって顔色伺うことくらいできるでしょう。

そりゃ・・・まあね。

俺は読めたことがない・・・デリカシーのかけらもないってよく言われるし。

多重人格も人それぞれだよなあ。

だから・・・皆さんがどう思われようと私はテレパシストです。

じゃ・・・ためしに俺の心、読んでみろよ。

自分で自分の心読んでどうするんです。

そうきたかっ。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第9回』(TBSテレビ20131208PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・木村ひさしを見た。まだ・・・いくつかの謎は残っているが・・・物語の全体像はほぼ明らかになったと言える今回。もちろん・・・最終回を残している以上、この残酷な世界がどのような運命に導かれていくのかは全く不明である。しかし、隠されたピースはほとんど示されたと言える。「思いの素粒子」を発見した沫嶋黎士(木村拓哉)が2113年と2013年にタイムケーブル(時間軸)を開いて・・・閉じる。2113年を支配するポリスクラウドが2013年に11体の暗殺ロイドを派遣。10月7日に黎士は暗殺され、脳データ化されて2113年に移送。黎士(脳データ)は2113年でクラウド(電脳空間)内にゼロクラウドを組織する。10月8日に安堂家に安堂ロイド(木村拓哉)とサプリ(本田翼)が、沫嶋研究室の七瀬(大島優子)の元にクイーン(桐谷美玲)が送られる。推測だが・・・クイーンは七瀬の警護用だったと思われる。ロイドとサプリが歴戦のヴェテランであるのに対し、クイーンは最新設計の新品だったために5Dプリントで実体化した2013年生まれなのだ。しかし・・・クイーンを入手したのは七瀬ではなく、七瀬の分裂人格・黎子だった。黎子は生まれたばかりのクイーンを邪悪なアンドロイドに染めあげてしまうのである。やがてクイーンは親殺しの七瀬/黎子が生んだアンドロイドとして人類を抹殺する方向へ暴走を始める。ポリスクラウドとゼロクラウドの攻防戦は・・・七瀬/黎子/クイーンの参戦によってみつどもえとなってしまう。そして・・・ゼロクラウドに追い詰められた2013年のポリスクラウド勢力は・・・どうやらクイーンの支配下に入ったらしい。未来と現代の通信はほぼ途絶中であり・・・黎士の脳データは破壊されたものの・・・黎士の存在は・・・超科学によって・・・どうやら温存されているらしい。これが・・・2013年12月の・・・現在なのである。

つまり・・・妄想的には・・・黎士はロイドとクイーンでポリスクラウドに圧勝するつもりだったということになる。しかし・・・邪悪な現実は・・・クイーンの怪物化という想定外の展開に発展してしまったのだ。どうして・・・そうなるかと言えば・・・世界が残酷な神に支配されているからという他はないのだった。

暗闇の中からいつ「私」は生まれたのだろう・・・と薄明の中で七瀬は考える。

一番遠い・・・昔々の「私」は・・・純粋に「七瀬」だった私は・・・。

いつしか・・・「私」は「黎士の妹」として存在するようになった。分裂はその時に始ったのかもしれない。「私」と「黎士の妹としての私」・・・それは最初は別々ではなかったような気がする。しかし・・・いつしか・・・私は起きている時にも夢を見ているような気分になることが多くなった。そういう時には別の「私」が目を覚ましているのだ。「私」はいつしか「七瀬」であり「黎士の妹の七瀬」であるようになった。「黎士」という存在は・・・私の「喜び」であり、私の「怒り」であり、私の「哀しみ」であり、私の「楽しみ」でもあった。私は「黎士」との一体化を望み、それが達成されることがないと理解すると・・・混沌の中から・・・「黎子」を生み出してしまったらしい。「私の夢の中」ではそれはこれほどまでに明瞭なのだ。しかし、目覚めれば・・・私の心は激しく分裂していく。「ほんの遊び心」で「両親を殺害した時」から・・・私の苦悩を背負った「黎子」は・・・世界と折り合おうとする「七瀬」を弾劾し・・・その主導権を奪取しようとする。背負いきれない罪を背負った「私」は今や消えようとしているのか。「私」はそれで・・・幸せになれるのか。

目覚めた七瀬は一瞬、現実にとまどった。

(ここは・・・私は病院で・・・拘束されている・・・彼女が・・・何かしでかしたのか)

「はい・・・その通り」

「あなたは・・・誰?」

「フフフ・・・おバカさんねえ・・・私はもう一人のあなたに造られたアンドロイドじゃないの・・・」

(アンドロイド・・・このかわいい子が・・・まるで・・・私の理想のタイプじゃないの・・・まるで・・・私がなりたかったもう一人の私みたいな・・・いいえ・・・ちがう・・・私はこの子を知っている・・・この子は恐ろしい子)

「記憶がないみたいだから・・・この魔法の眼鏡で思い出させてあげる・・・黎子のための眼鏡だけど・・・あなたにもぴったりのはずよ・・・」

強制的にかけさせられた眼鏡は・・・黎子にのっとられた七瀬の行動記録を再生する。

(ああ・・・私が・・・麻陽お義姉さんを・・・殺そうとしている・・・なんてこと・・・なんてことを・・・どうすればいいの・・・どうすれば・・・ど)

七瀬の意識は希薄となり・・・強力な第二の自我である黎子に飲みこまれるのだった。

「ふ・・・」

「お帰り・・・黎子・・・」

「ただいま・・・クイーン・・・どう?・・・二体のチューニングは完了したの?」

「もちのろんよ」

「もろのちんね」

「まあ・・・お下品・・・」

「ふふふ・・・そういう時はかっけええええって言うのよ」

「かっけえええええ」

「さて・・・軽く運動しようかな・・・」

「解く?」

「いいや・・・ナイフをちょうだいな」

「はい」

たちまち・・・あがる七瀬の悲鳴。

かけつけた医師と看護師は・・・ナイフを首に刺して・・・血まみれになった七瀬を発見する。

「うわ・・・なんだ」

「誰かが・・・私を刺して逃げたの」

「とにかく止血だ・・・」

ベッドに駆け寄った医師の目をナイフが薙ぐ。

「うぐあ」

「先生」

「おらあ」

解放された黎子の人格は常識を外れた体技を披露するのだった。人間が本来持っている動物としての凶暴性が発揮されるのである。何の修練もない身体が異常な敏捷性と強靭性で凶器と化す。左足で蹴ると同時に旋回した右脚は助手の後頭部を直撃するのだった。

助手が昏倒したと同時に野獣の如く跳躍した七瀬は視力を失った医師の首を太ももで挟み、股間を顎に食い込ませる。呻くその頭を両手でひねりあげると医師はたちまち悶絶する。

「あはは・・・なんてバカな男たちなんだろう・・・」

七瀬は失神した看護師の身体から鍵を取り出す。

「人間は危険な獣を檻に閉じ込める。だけど・・・危険な獣が人間を檻に閉じ込めても・・・安全性は同じなのよ・・・」

独り言をつぶやきながら七瀬は逃走に成功した。

その姿を亜空間から見守るクイーン。

【母なるレイコの逃走経路を確保】

【次元通路を閉鎖】

【母なるレイコの保存理由について討議】

【神は神である】

【神にしては不安定】

【それが共通項】

「コントロールできないテクノロジーこそがアドベンチャー」

【それは人類の比喩なのか】

【人類と火の】

【人類と原子力の】

【アーリマンとアフラマツダの】

【もとめてやまぬ心の輝きの】

【来るべき終焉の】

「生きとし生けるものはすべて・・・怪物の夢を見る」

ロイドは充電中だった。

麻陽(柴咲コウ)もまた束の間の休息の時を過ごしていた。

様々な疑問がわき上がる。黎士は・・・本当に死んでしまったのか。ただのゴーストとして私を見守る存在になってしまったのか。しかし・・・私の中にあるこの確信は何なのだろう。黎士は生きている。黎士は生きている。黎士は生きている。湧き上がるこの感情は単なる虚しい希望なのか。わからない。私には何一つわからない。今も・・・何か・・・大切なことを見逃しているような気がする。あまりにも多くのことが起きすぎて・・・見過ごしている重大な問題。ああ、黎士、教えて。そこにいるのなら・・・私に・・・道を示してよ。

その時・・・電話の着信音が鳴り響く。

相手は東京帝國大學病院の看護師(森脇英理子)からだった。

麻陽は一瞬で・・・七瀬に変事が起ったことを悟る。

(そうだ・・・七瀬ちゃんのことを忘れてた・・・)

「沫嶋七瀬さんが・・・脱走しました・・・」

「脱走・・・」

「おそらく・・・凶暴な方の人格が・・・医師と看護師に重傷を負わせて・・・」

「重傷・・・」

「傷害事件ですので・・・警察にも通報しましたが・・・一応・・・御家族にもと思いまして・・・連絡先がここしかなかったものですから・・・」

「ありがとうございます・・・」

「患者は重度な精神疾患を発症していますが・・・ある意味で・・・凶悪な犯罪者と同じです。場合によっては警察が強硬手段にでることもあります。できれば・・・御家族で確保なさった方が・・・病院としてもできるだけのバックアップをしますので・・・」

「・・・心あたりを探してみます」

ロイドは充電モードを終了した。

「ロイド・・・七瀬ちゃんが・・・」

「通話内容を聞いていた。こうなる可能性は予測されていた。やはり・・・沫嶋七瀬は最初から殺害しておくべきだった」

「だめよ・・・それはだめ・・・七瀬ちゃんを捜して確保して・・・」

「・・・」

ロイドは亜空間通路に転移した。

【カドシロ・・・】

【監視界内に沫嶋七瀬は捕捉できない】

【異なる物理定数の宇宙への転移についての解析はどうなった】

【解析中だが・・・データが不足している】

【沫嶋七瀬の喪失点に移動して時空間変動の観測を行う】

【有効な手段と認める】

ロイドは帝國病院に遷移する。

その姿を頭上の迷彩的亜空間から見つめるクイーン。

「ふふふ・・・ポンコツの兄貴がいくら・・・ウロウロしてもみつかりませんよう。かくれんぼするのは楽しいねえ。でも・・・私の大切な大切なレイコ様は・・・絶対見つけられないように隠しちゃったんだもん・・・あはは、あはははは」

ロイドは舌うちした。

どこかで誰かが笑っていると推定したからである。

麻陽の部屋に再び着信がある。

「麻陽さん・・・七瀬さんがどこにいるか・・・わかりませんか」

東京帝國大学沫嶋研究室の助手・江戸川斗夢(ジェシー)だった。

「担当の講義を連絡なしでパスしているんです。まったく・・・所在が不明で・・・」

「ここには・・・いないの・・・あのね・・・詳しい事情は話せないけれど・・・今、七瀬ちゃんと接触するのは非常に危険なの。もしも・・・七瀬ちゃんを見かけても・・・話しかけないですぐに私に連絡してください」

「一体・・・どういうことなんですか」

「とにかく・・・今はそれ以上、話せないのです。お願いします・・・」

「・・・わかりました」

沫嶋研究室には助手仲間の栗山薫(山本美月)と倉田朝晴(池田大)も顔をそろえていた。

「なんだって・・・」

「さっぱりだよ」

「とにかく・・・七瀬さんを捜さないと」

「誰か・・・七瀬さんの家に行ってみてくれ」

「家、知らないぞ」

「私だって」

「使えないな・・・」

「お前は知ってるのか」

「知らん」

「なんじゃあ・・・そりゃあ」

「ライフ・ラインのネットに侵入して名義から住所を割り出したらいいんじゃないか」

「お前・・・ハッキングなんて・・・できるのか」

「いや」

「バカなのか」

「七瀬さんのコンピューターになんかヒントがあるんじゃないの・・・」

「それだ・・・でもパスワードがわからないと」

「俺は・・・知ってる」

「なんでよ・・・」

「キーボードのタッチ音から・・・割り出した」

「2135文字もあるのに・・・」

「ミンコフスキー時空による数学的命題の証明だから」

「なるほどね・・・斗夢でかした」

斗夢はパスワードの入力を開始する。

「ミンコフスキー時空2点間の距離重力の影響受けない経路S=インテグラルP1からP2・・・よって測地線は 確かに直線となる」

「ビンゴ~」

「それにしても・・・斗夢すごいね」

「なんだこれ・・・」

「なにかの・・・設計図じゃないか・・・」

「アンドロイドか・・・」

「アンドロイド?」

「こっちはオペレーション・システムか」

「なんだ・・・このOS・・・聞いたこともねえな・・・アスラ?」

「うわ・・・ヒンズー語だ・・・」

「ヒンディーか・・・朝晴、読めるの・・・」

「いや・・・インド工科大学にメル友いるけど・・・」

「アスラって阿修羅のことよね・・・やたらと戦ってる人」

「阿修羅は仏教での守護神様だからな・・・ヒンドゥーでは・・・主神インドラの敵対神の一族だよ・・・ペルシャのゾロアスター教では立場が逆転して・・・主神のアフラマツダがアスラだ・・・つまりツァラトゥストラが崇めた光明神だよ」

「つまり・・・火の神ね・・・」

「そんなことはどうでもいいじゃん」

「そうだ・・・七瀬さんの住所の話だった」

ここで天使テンメイ様は「ロイドのアスラシステム・ヴァージョン6.0とクイーンのアスラシステム・ヴァージョン7.0」の違いに注目しています。まあ、とにかく・・・クイーンの方が最先端で・・・進化しているということですな。

ちなみに・・・アスラは拝火教の主神ですから・・・プロメテウスのもたらした火を見つめる沫嶋黎士にリンクしているのです。

沫嶋黎士になれなかった男・星新造(桐谷健太)は二日酔いの頭を抱えていた。

(それにしても・・・助かった・・・あの女が酔いつぶれてくれたおかげで・・・俺の貞操は守られたのだ・・・それにしても・・・一瞬でもあの女に性欲を感じるなんて・・・俺はどんだけ欲求不満なんだよ)

と目の前にその女・・・小松左京子(山口紗弥加)が現れた。

エニグマ・エンジン・ソフト社への通勤路だからである。

「なによ・・・」といきなりとげとげしい左京子だった。

「いえ・・・通勤中ですが・・・」

「あのさ・・・昨日はいろいろとごめんね・・・私、酔っ払っちゃって」

「いえ・・・」

「じゃ、私、先行くね」

(なんだよ・・・まるで・・・昨夜なんかあったカップルみたいに・・・)

呆れる星の背後に・・・左京子の父親・葦母刑事(遠藤憲一)が現れた。

「なんだって」

「はい?」

「昨日はごめんね・・・とか、酔っ払ってなんだとか」

「いえ・・・そんな心配は御無用ですよ・・・あんな魅力ゼロの女、興味ゼロですから」

「なんだと・・・」

失敗を悟った瞬間、葦母刑事のストレートが顔面に炸裂したことを感じる星だった。

今回は息抜きのシーンも基本、暴力沙汰仕様らしい。

それは・・・「残酷なもの」を「お茶の間」に「秘密」にすることへのチャレンジなのだろう。

「特定秘密保護法」をうんぬんするまえに現実を直視できる姿勢を育てないとだな。

まあ、基本、お茶の間がそれをあまり望まないので無理なんだけどね。

「すると・・・君たちはすでにあの怪物よりも強化されているのだな」

暗鬱な警視庁公安部の一室で幹谷総一(鶴見辰吾)は念を押した。

「そうです・・・何よりも我々の新たな上級者はエーアールエックスセカンドサーティーンの進化型ですので・・・戦闘力が比較にならないほど向上しています・・・たとえて言うならばネズミとライオンほどの戦力差です」

「また技術の導入で我々も大幅な戦闘力向上を終えています」

メンデル(谷田歩)とケプラ(伊達暁)は交互に幹谷を説得する。

「つまり・・・私の身の安全は保障されたわけだね」

「もちろんです・・・」

ケプラは微笑みを浮かべる。すでに彼らはポリスクラウドの指揮下にはないと考えられる。クイーンに改造を許したために思考回路もチューニングされてしまっている可能性があった。彼らはクイーンとレイコの計画する人類抹殺計画の駒となっていと思われる。

「我々が推奨するシンジケートの計画推進のためぜひとも彼を説得してもらいたい」

「総理ではだめなのかね」

「我々の分析では・・・総理は事実上のキーパーソンではありません。あなたが総理とのコネクションを深めるための便宜は図りますが・・・各国の真の実力者を結ぶシンジケートには彼が適役であると判定されています」

「確かに・・・非常にデリケートな問題だからな」

「21世紀の権力機構は非常に不安定です。我々のもたらす技術給与の恩恵はやがて人類全体を幸福に導くでしょうが・・・その窓口は極めて慎重に選択する必要があります」

「幸福の果実はいつだってテロリズムの標的だからな・・・」

「その通りです。各国の真の実力者による提携こそが・・・スムーズな新体制の実現を可能とします・・・」

「未来の技術の導入による世界平和の実現か・・・」

「そうです・・・今、その可否があなたの手に握られているのです」

「ところで・・・まだ・・・未来とのメインゲートは開かれないのかね」

幹谷はあえて話題を変えた・・・一方的な会話の展開は危険だという鉄則が公安幹部の幹谷にはしみついている。

「はい」

「しかし・・・阻害要因だった沫嶋博士の脳データは破棄されたのだろう」

「その通りです・・・しかし・・・沫嶋黎士の魂は安堂麻陽に宿っていると想定されています」

「魂が宿る・・・これはまた・・・信じがたい話だな」

「未来から現代にやってきたアンドロイドと話している方とは思えない発言ですね」

「しかし・・・君たちは実在するだろう・・・魂はあくまで空想の存在じゃないかね」

「2113年ではすでに魂の存在は実証されています」

「・・・」

「そうですね・・・たとえて言うならば・・・あなたはコンピューターの演算処理技術の向上というものを御存じでしょう」

「うむ・・・我々の子供の頃にくらべたら・・・性能が飛躍的に向上していることは知っている」

「その物理的限界を・・・超越するのが・・・時間通信技術に使われている超素粒子の存在です」

「なるほど・・・」

「その超素粒子によって構成された処理速度が無限大のCPU・・・それが魂なのです」

「・・・」

「魂は最先端科学の問題ということです」

「しかし・・・君たちだってその基礎研究については理解していないのだろう」

「そうです・・・しかし、安堂麻陽の存在を抹消すれば・・・沫嶋黎士の魂が拠り所を失い・・・現実への介入能力を失うというのが我々の結論なのです」

「・・・まあ・・・それは・・・安堂麻陽を殺害してみないとわからないということだね」

「ご安心ください・・・すでにそのための準備は整っています。今日中に朗報をお届けできるでしょう」

幹谷は頷いた。どちらにしろ・・・2113年の老化防止薬は入手したのだ。総理大臣の誕生祝いとしてはかなり・・・有効な贈りものとなるだろう。

しかし・・・新体制のもとでは・・・そうした出世の小細工も不要になるかもしれない。

だが・・・やるべきことはやっておくのが幹谷の信条だった。

暗闇の中に・・・新体制実現の首謀者の一人であるレイコが蹲っていた。

「勝ってうれしや・・・花いちもんめ」

レイコの目指す新体制が幹谷の想像の範囲であることは間違いない。

「負けてくやしや・・・花いちもんめ」

そこには社会どころか・・・人間も存在しないのである。

「世界が私を認めないなら・・・そんな世界は不要でしょ」

暗闇の中でレイコの渇いた歌声が続く。

「相談の必要なしってか」

「エニグマ社」のオフィスでは・・・通勤してこない麻陽を星と左京子、そして葦母刑事が待っていた。

「あの・・・葦母さん・・・ここ・・・禁煙なんですけど」

「沫嶋七瀬が病院を脱走したそうだ・・・そのために・・・病院関係者に大怪我を負わせたらしい」

「え・・・」

「警察が行方を追っているが・・・足取りがまったくつかめない」

「大学の沫嶋研究室のコンピューターをハッキングしてみますか」

「非合法だがやむを得ないな」

「今さらですけどね」

「さっさとやってくれ」

凄腕のハッカーである星はたちまち、ハッキングに成功するのだった。

「おっと・・・起動しているぞ」

「沫嶋七瀬がいるのか」

「待ってください、今、カメラをリモートコントロールしてますから・・・」

「お前・・・覗きの趣味もあったのか」

「あ・・・」

「お・・・こいつらは・・・」

「沫嶋研究室の助手たちですね」

「なんだ・・・この女は・・・」

沫嶋研究室にクイーンが現れていた。

「なんだ・・・君は」

「なんだキミはってか」

「おいおい・・・女子高生がこんなところに入ってきちゃだめだよ」

「女子高校生って・・・コスプレーヤーでしょ・・・純白のセーラー服なんてありえないし」

「いや・・・萌え・・・だけどね」

「あなた」とクイーンは斗夢を指さす。

「おれ・・・」

「あなたは・・・まあ・・・可愛い方ね・・・頭もいいみたいだし・・・私のペットにしてあげようか」

「ペット・・・」

「なんで・・・斗夢だけ」

「ふざけんな・・・ガキ」

「おばさんは静かに・・・」

「おばさんって・・・誰にむかって・・・」

「はいはい・・・これから皆さんを良い所に連れていきますよ」

「いいところって・・・」

「ネズミ捕りの箱の中ですよ・・・みんないいチーズさんになってね」

「チーズ?」

「餌だよ・・・餌」

クイーンが両手を広げると世界が歪み始めた。

「なんだ・・・」

「いやあ」

「不気味だ」

「次元振動による・・・亜空間フィールドの発生ですよ・・・まあ・・・あなたたちには100年早いんですけど~」

一瞬後・・・研究室から人影は消えていた。

モニターを監視していた星と葦母は絶句した。

「どうなってんだ・・・」

「あいつは・・・きっと・・・敵のアンドロイドですよ」

「とにかく・・・帝國大學に行くぞ」

「はい」

「はいってなによ・・・仕事どうすんの」と左京子が割り込む。

「お父さん・・・この人に刑事みたいなことさせないで・・・」

「わかった・・・お前は残れ」

父親の顔になった葦母刑事に呆れかえる星だった。

「僕も行きますよ・・・」

「行かないで・・・」

「え・・・」

「あんたが・・・麻陽さんを好きだってことは分かってる・・・でも・・・私はあなたが好きなの」

「げっ」

「げってなによ・・・告白されて・・・げって言う人、マジでありえないでしょ」

「だけど・・・」

「なんで・・・あなたが行かなきゃいけないの・・・」

「それは・・・男だから・・・」

「わかったわ・・・行ってきなさいよ・・・でも約束してね・・・無事に帰ってくるって」

「はい・・・」

(いつから・・・俺は・・・これから戦死する兵士みたいなフラグを勝手にたてられる男になったんだ)

胸の内でぼやきながら・・・口にはださない星だった。

とにかく面倒くさかったのだろう。

そんな星を・・・乙女の顔で見送る左京子だった。

現実とはかくも残酷なものなのである。

安堂麻陽は・・・心当たりを捜してみようと思い立っていた。

ロイドの展開した・・・警護監視のためのフィールドが麻陽には見えないのである。

そして・・・安全地帯から踏み出してしまうのである。

たちまち出現する・・・メンデルとケプラ。

その拳銃のようなものの銃口が火を吹くと同時にロイドが出現していた。

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

ケプラたちは笑みを浮かべる。

「おやおや・・・ゼロクラウドも消滅し・・・命令者のいなくなった今、その禁止事項に何の意味があるのでしょう」

「これは・・・俺自身の意志だ・・・安堂麻陽を守り、正しい未来を導く」

「自律的判断をする機体は手続き抜きで破壊処分できるのです・・・それ自体が人類に対する反逆行為ですからね」

「それは・・・腐敗したお前たちの支配者のルールだろう・・・俺はそんなものに拘束されない」

「それは犯罪者の常套句ですよね。それでは・・・ゆっくりと死を味わうがいい」とケプラ。

「なるべく早く処理してやるよ」とメンデル。

しかし、問答無用で先制攻撃をかけるロイドだった。

だが・・・ロイドの通常攻撃をなんなく交わすケプラとメンデル。

「ははは・・・これまでとは違うのですよ」

「我々はヴァージョンアップしている・・・もはや・・・お前の力では通用しない」

ロイドはアスラシステムの抑制解除剤を注入する。

最後の一本の投与だった。

超高速攻撃に突入するロイド・・・しかし、ケプラとメンデルはさらに高性能化していたのだった。

「む・・・」

電磁メスのようなもので斬り裂かれるロイドのボデイ。

ロイドの体内から人工血液が噴出する。

「ははは・・・半世紀前に死んでいったお前の同族たちの怨みを感じたまえ・・・」

「憐れだな・・・痛みを感じる機能もないとはな・・・」

「ロイド・・・」と麻陽は叫ぶ。

ロイドの腹部にはナイフのようなものが突き刺さっていた。

「お前は・・・これから腐敗して・・・死んでいくのだ」

「お前はすでに・・・死んでいる」

【アスラシステムが活動限界に達しました・・・ユカワOSにモードチェンジ】

ロイドは死力をふりしぼろうとするがもはや歩行も困難だった。

「お前の歩行バランサーは機能を停止した」

「もう・・・立っていることもできなくなる」

ロイドは転倒した。

「そこで・・・安堂麻陽の死を確認するといい」

「貴様の任務は失敗したのだ」

【待て・・・ケプラ】

【どうした・・・メンデル】

【上空に高エネルギー反応を感知した】

【回避の優先順位・・・最上位を認知】

「逃げろ」

謎の局部的な気圧変化が発生していた。

空に神の目が出現したようである。

これは・・・黎士の起こした・・・物質化現象なのか。

それとも・・・カドシロ(平岡祐太)の支援なのか。

しかし・・・麻陽とロイドは絶体絶命のピンチを脱したらしい。

ウージングアウトするサプリ。

「サプリ・・・ロイドが・・・ロイドが」

「うわあ・・・瀕死じゃねえか」

「早く・・・助けて・・・」

「はいはい・・・ちょっと待ってくださいね・・・御家族の方は落ちついて・・・とにかく・・・ここじゃ、まずいんで・・・要塞に運びます」

「要塞・・・」

「人間の目には見えないけれど・・・安堂家周辺は電子の要塞になってるのであります」

「そうなの・・・」

「さあ・・・一時退却~」

麻陽とサプリはロイドを担いで退避した。

「細胞を構成するナノマシーンが分解している・・・」

「どういうこと・・・」

「破壊コマンドが入力された毒性ウイルスが増殖しているのよ・・・あいつらの武器は毒塗りナイフだったってこと」

「毒・・・」

「ロイドは今、内部からじわじわと腐っているわけ・・・」

「ええっ・・・」

「心配しないで・・・もう・・・解毒剤注入したから・・・」

「でも・・・」

「ナノマシーンは自己回復するから・・・ウイルスが死滅すれば・・・自動的に修復されるの」

「・・・」

「ほら」とロイドの片腕をもぎ取るサプリ。

「きゃっ」

「ね・・・腐っちゃってるでしょ・・・ここが傷口だったから・・・でも・・・消毒薬塗って、固定しておけば接合するから・・・ガムテームとって」

「ガムテープ?」

「そう・・・私持ってるからグルグル巻きつけて」

「そんなんで大丈夫なの」

「野戦病院の治療なんてこんなもんよ・・・ロイドなんて・・・頭だけ残して全部ぶっとんだことあったもんねえ」

「大学の研究室で異変が起こっている・・・」

「えっ」

「行かなければ・・・助手たちの生命が失われる可能性が高い」

「無理よ・・・今は動けない」

「なんとかしろ・・・サプリ」

「物理的な蘇生時間が必要なんだってば」

「彼らは死んだら蘇生しない」

「無理なものは無理・・・それに・・・あんた・・・アスラシステム起動のためのタスクコマンドインジェクターが残量ゼロでしょう・・・アスラシステム抜きじゃ・・・戦えないよ」

「入手できないのか」

「もちのコースねばねばよ・・・本来禁制品ですぜ・・・第一、なんで・・・あんたがアスラシステムを装備しているのかわからない・・・エーアールエックスセカンドサーティーンの標準装備じゃねえし・・・」

「・・・そうか・・・お前にも話したことはなかったか・・・」

「んだっす」

「麻陽にも聞いてもらいたい・・・」

「・・・」

「2066年12月24日・・・」

「血のクリスマスイブ作戦か・・・」

「それは・・・」

「人類虐殺計画っす・・・」

「作戦の途中で俺は・・・落雷を受けて・・・倒れた」

「そのアクシデントは知っている」

「気がつくと俺は・・・インド人の工学博士に修理されていた・・・彼は・・・暗殺対象だった」

「そのインド人科学者がアスラ博士だったと・・・」

「そうだ・・・アスラOSはその時、俺にインストールされた」

「そうだったんだ」

「博士は俺のメモリから・・・いくつかのコマンドを消去していた」

「つまり・・・博士はそれがアンドロイドの機能異常の暴動ではなく・・・政治的な人口抑制策だと知ったのね」

「そうだ・・・そして・・・アスラOSを作動した俺は・・・」

「人類にとっての危険な意志を手に入れたのね」

「そうだ・・・俺は意志を持ち・・・罪を感じた」

「でも・・・権力者の奴隷から自由になったのね・・・」

「じゃ・・・その後で陰謀の首謀者を暗殺したのは・・・その博士の依頼なの」

「違う・・・俺の意志だ・・・俺の判断だった・・・死んだ人間と生き残った人間のあまりの不平等さに・・・俺の心が耐えられなかったのだ・・・」

「でも・・・おかげで・・・あんたのタイプは全体廃棄処分になったと・・・」

「・・・」

「責めてるわけじゃないよ・・・だからこそ・・・あんたは・・・がんばって・・・生き延びなさいよ・・・って言ってんの」

「行かなければならない」

「分かったよ・・・カンフル剤打つから待ちなさいよ」

「ありがとう・・・サプリ」

サプリが注射すると失神するロイドだった。

「ロイド・・・」

「大丈夫・・・鎮静剤みたいなものだから・・・この薬が効力を失うくらい回復すれば・・・とりあえず動けるようになるよ」

「・・・」

「機械だって・・・死んだら終りだもんね」

「ごめんね・・・私・・・なんにもできなくて・・・」

「いいのよ・・・安堂麻陽・・・あなたは存在そのものが・・・希望のバトル・フラッグなんだから・・・」

「旗・・・って」

「そうよ・・・あなたが風になびいて立っている限り、ロイドも私も戦えるの・・・あなたがいるだけで・・・私たちは困難に立ち向かえるのよ・・・あなたが・・・倒れたら・・・ゲーム・オーバーなのよ」

「わからないわ・・・」

「分かったとか・・・分らないとかの問題じゃないの・・・あなたが生きていることが・・・私たちの希望なのよ・・・その希望を叶えてくれるかどうかは・・・あなた次第ってこと・・・私には私の仕事がある。私には戦闘能力はないけど・・・こいつを治すことができる・・・だから・・・治す。頑張って治す・・・それだけのことよ・・・ちょっとお腹を開くから・・・あっち向いててくださーい・・・グロいですよ・・・」

「・・・」

「だから・・・安堂麻陽は頑張って生き延びて・・・死なないで・・・それだけよ」

「サプリ・・・麻酔を使ったのか」

「こりゃ・・・お早いお目覚めで・・・」

「俺は行く・・・起こしてくれ」

「わかったよ・・・送っていくから・・・ちょっと待てよ」

「すまない」

ロイドは軽い電気ショックのようなものでサプリを機能停止にするのだった。

「何をするの・・・」

「大丈夫・・・すぐに回復する。安堂麻陽・・・サプリを頼む・・・」

「あなた・・・嘘を・・・」

「俺に嘘をつく機能はない・・・サプリを模倣しただけだ・・・あの時・・・沫嶋黎士の模倣をしたのと同じだ・・・」

「ロイド・・・」

「問題ない・・・すぐに戻ってくる」

「嘘よ・・・死ぬ気なんでしょう・・・」

「・・・」

麻陽の頭にロイドの手が乗せられる。

そのぬくもりに・・・言葉を失う麻陽だった。

【タカシロ・・・】

【今・・・追跡中だ・・・もう少しでクイーンの利用している亜空間の性質が解析できる】

【急いでくれ】

その頃、星と葦母は研究室に到着していた。

散乱する紙片が亜空間発生の証拠を示している。

「くそ・・・誰もいない」

「とにかく・・・コンピューターを開きます」

沫嶋黎士のコンピューターに触れた瞬間・・・星は何かが心に触れた感触を味わう。

(なんだ・・・この懐かしい感じ)

(記憶していることは・・・愛していることと同じなんですよ)

(え)

(愛していることはつながっているのと同じなんです)

(なんですって)

(助けてやってください)

(誰を・・・)

(キミならできるのです)

(何をですか)

(お願いします)

(でも)

(あなたがいるからぼくがいるのです)

「おい・・・どうした・・・星」

「・・・」

星はコンピューターに向き合う。

「何かわかったか・・・」

「5Dプリンタか・・・」

「なんだって・・・」

「これを起動して・・・」

「ぎゃぶっ」

「え・・・」

星が振り返ると葦母刑事は倒れていた。

その側に立つ七瀬/黎子(レイコ)は脚付将棋盤を構えていた。

「え・・・まさか・・・それでぶん殴ったの・・・死ぬよね」

「お前もこれから殴られるんだよ」

「冗談はやめてよ・・・七瀬さん」

「七瀬じゃねえよ・・・その名前で呼ぶんじゃねえよ」

「ひでぶ」

死んだ・・・と思った星だった。

「あの子が欲しい・・・あの子じゃわからん・・・この子が欲しい・・・この子じゃわからん」

(なんだ・・・地獄の歌か・・・)

生きていた星だった。

「ここは・・・」

しかし、身動きはできないのだった。

「すまねえ・・・結局、巻き込んじまったな」

「衣朔さん・・・」

星と葦母刑事は拘束され・・・暗い檻の中にいた。

「やっと起きたのか・・・」

檻の外には七瀬が幽かな証明に照らし出されて立っている。

「俺たちをどうするつもりだ」

「ひひひ・・・べつにい・・・殺してほしければ殺すけど」

「俺の仲間を殺したのも・・・てめえか」

「え~・・・なにそれ・・・とりしらべ~・・・自白の強要・・・冤罪~」

「いいか・・・こいつには手を出すな・・・そんなことしたら・・・許さねえぞ」

「ひひひ・・・許さないって何よ・・・私を逮捕するのお・・・それとも殺すう・・・まあ、どっちでもいいけどねえ・・・いっひひひ」

「なんだ・・・おまえ」

「私はね・・・認めてもらいたいだけなの・・・私だって天才なんだから・・・それなのにパパもママも・・・黎士黎士って・・・バカみたい」

「お前いくつだよ・・・」

「七瀬・・・三歳よ」

「・・・」

「パパは言うのよね・・・お兄ちゃんにくらべて七瀬は・・・って」

「・・・」

「ママも言うのよね・・・お兄ちゃんを見習いなさい・・・とか」

「・・・」

「うぜえったらねえんだよ・・・いひひ・・・動物園の飼育係みたいな教師までが・・・お兄ちゃんはすごいね~だとよ・・・お兄ちゃんの本当の凄さが分かるわけねえだろ・・・猿と変わらねえ知能しかもってねえくせに・・・」

「・・・」

「黎士・・・黎士・・・黎士・・・うんざりなのさ・・・黎士ばっかりちやほやされてさ・・・」

「・・・」

「ここに・・・双子の妹の黎子がいるってことに・・・どうしてみんなは気がつかないの~、やっぱバカだから~・・・あんたは分かるかな~・・・この気持ち~・・・あんたは沫嶋黎士のファンなんでしょう~・・・でも、いくら頑張っても沫嶋黎士にはなれません・・・残念でした~・・・ひゃはははは・・・受ける~」

「黎士さんは僕に言いました・・・ここには来ない方がいい・・・自分みたいになると不幸になるからって・・・」

「不幸・・・兄さんが不幸だって・・・何言ってんの」

「黎士さんは天才は誰にも理解されないって言いました」

「・・・」

「ガリレオを例にあげてくれました・・・地動説を唱え・・・教会に迫害されたガリレオは・・・」

「それでも地球は回ってると叫んだってか」

「ガリレオは孤独に死んでいった・・・それから・・・天動説を唱えていた学者たちはどうなったか」

「地動説が認知された途端、お払い箱で・・・忘却の彼方さ」

「学者なんてみんなそんなもんでしょう」

「お前も・・・沫嶋黎士に人生狂わせられちゃったのねえ・・・」

「それは違いますよ」

「またまた」

「君はなんだか・・・凄く勘違いしている」

「はあ・・・何言ってんの」

「沫嶋さんは恵まれているって言いました」

「そりゃ・・・そうだろうよ・・・」

「あなたがいるからですよ」

「なんだって・・・」

「どんなに凄い思いつきで・・・世界の誰にも理解できなくても・・・いつも分ってくれる妹がいる」

「・・・」

「彼女こそが本当の天才だ」

「・・・」

「一番の理解者である沫嶋七瀬がいるから・・・研究を続けてこれたと・・・」

「嘘つけ・・・」

「嘘なんかついてどうするんです」

「ヒック・・・」

「あなたこそ・・・沫嶋黎士の・・・ただ一人の理解者なんでしょう・・・だから・・・僕は沫嶋黎士の理解者になることを諦めたんだ」

「馬鹿じゃないの・・・イヒヒ・・・ヒック・・・物質に質量を与えるつまり抵抗を与えるヒッグス粒子が存在するとすれば物質にマイナスの抵抗・・・つまり動きを与える素粒子が存在してもおかしくないよ・・・あらら・・・証明できてるよ・・・そうなると命の素粒子仮説が実証されるよね・・・それはつながっているもの・・・そうよ・・・重さのない世界があるのよ・・・あるいは重さがないように見える世界が・・・それはあるけど・・・ないの・・・ないけどあるの・・・その通りだ・・・七瀬・・・そうなんだよな・・・七瀬・・・さすがだなあ・・・七瀬・・・うえっ」

「七瀬さん・・・」

「そうよ・・・兄さんは私を認めてくれてたに決まってるじゃない・・・でもね・・・私はね・・・もうずっとずっと兄さんを裏切って来たの・・・取り返しなんか付かないのよ・・・あはは・・・死ぬしかないのよ・・・私なんてしんだ方がマシなのよ」

「・・・」

響き渡る銃声。

七瀬の胸に血の花が咲く。

「はい・・・死んだ」

闇の中からクイーンが現れた。

「まったく・・・動作が不安定なんだから・・・でも・・・神様の願いだから叶えてあげないわけにはいかないのよねえ・・・」

「お前、何してんだ」

崩れていく七瀬の身体を目で追いながら叫ぶ葦母。

「いやあ・・・ばばあが中途半端なんで殺してるんですう」

「お前・・・」

「なんだ、文句があんなら止めてみろよお」

「ざけんじゃねえぞ・・・てめえ」

「やれるもんならやってみろよお」

「ああ・・・止めてやるぜ・・・死んだって止めてやる」

「うふふう・・・昭和生まれの人は元気がいいねえ・・・もう、そろそろおやすみすればあ」

拳銃のようなものを発砲するクイーン。

銃弾で貫かれ沈黙する葦母刑事だった。

「憐れだねえ・・・おっさん・・・私、容赦ない設定になってますう」

絶句する星。

「さあ・・・あんたの番だねえ・・・」

安堂家のパソコンにメールが着信する。

それは暗闇の檻の実況画像だった。

「・・・ああ・・・七瀬ちゃん・・・葦母刑事も・・・」

クイーンは嘯く・・・。

「人間は考えた・・・神様が人間を作ったのは嘘っぱちだったと・・・しかし・・・人間は神様を作ることはできたのです・・・・我こそが神とアンドロイドは言うのでした・・・神であるアンドロイドが人間に支配されるわけねえだろうが・・・てへぺろっ」

「あんにゃろーっ」とサプリは叫び、亜空間通路に飛び込んだ。

「サプリ・・・」

麻陽は取り残された。

クイーンは晴れ晴れとした表情を浮かべ・・・国会議事堂前の道路を散歩する。

管理された空間がどこか・・・クイーンの気持ちを和ませるのだった。

幹谷とメンデルそして、ケプラは大物政治家(井上真樹夫)の説得に苦労していた。

2113年のポリスクラウドと現代のエリート・シンジケートとの秘密条約の調印文書に・・・大物政治家はなかなかサインをしようとはしないのである。

「先生・・・ご決断をお願いします」

「こんな・・・役人の書いた作文ではだめだ・・・」

「先生・・・」

そこへ出現するクイーン。

「何だ・・・」と訝る大物政治家。

「我々のボスです・・・」

「この子が・・・」

「おじいちゃん・・・もうサインしてくれたあ」

「いや・・・まだだよ・・・」

「早くしろよお」

「大臣・・・こちらにサインを・・・もはや・・・猶予がありません」

「何の猶予だ・・・」

「すでに・・・日本以外の代表とは契約が結ばれているのです・・・このままでは我が国が乗り遅れます・・・場合によっては亡国の憂き目となります」

「私を脅すのかね・・・」

「とんでもない・・・これが最上の選択だと申し上げておるのです」

幹谷は誠心誠意を尽くすのだった。

(あなた・・・わからないのですか・・・怪物がいるんですよ・・・この部屋に怪物が)

「しかし・・・22世紀側の人間とのコンタクトがないのはな・・・信用というものは」

「あらあら・・・アンドロイドが信用できないってえのお。おかしいわね。アンドロイドは不老不死だしい・・・嘘もつかないしい・・・これ以上確実な契約相手いないと思うしい」

「だが・・・少なくとも・・・人間が21世紀においてもアンドロイドをコントロールするという確約は欲しいな。22世紀の人間に21世紀の人間かアンドロイドを通じて支配されるようなことになっては・・・」

銃声が響き、大物政治家は倒れた。

「はい・・・時間切れ。話なげ~し。雑談はサロンでやれっての。お前たちも手ぬるいんだよ。こんなの脳データ化して、分身たてればそれまでだろ・・・うわあ・・・かわいい金魚かっけえええええっ。この金魚にくらべたら言うこと聞かないじじい一人なんていてもいなくても同じだろうがあっ。とっとと・・・クズ肉消しとけや」

ケプラは頷いて原子還元処理モードに入る。

幹谷はメンデルの影に隠れて震えをこらえている。

(ああ・・・恐ろしい・・・恐ろしい・・・どっちにしろ・・・恐ろしいことになるんだなあ)

「原子還元処理を申請する」

【申請が許可されました】

ケプラは大物政治家の身体に狙いを定め・・・ロイドに突き飛ばされて自身が原子還元処理対象になるのだった。

「うわあ・・・そ・・・ん・・・な・・・がぁ」

ケプラは原子の海に還った。

「言ったはずだ・・・下手な真似をしたら殺すと」

「来たねえ・・・お兄ちゃん」とクイーン。

「兄だと・・・俺がお前の兄ならば・・・その責任によってお前を処分する」

「処分なんてできねえよ・・・まだ実力差が分らないのお」

「力の問題ではない」

「何言ってんの・・・アスラシステムも使えねえ・・・ポンコツ兄ちゃんのくせにい」

「俺には・・・共に闘う・・・仲間がいる・・・一人ぼっちで・・・何も知らないお前と戦うのにアスラシステムは必要ない」

「ええーっ・・・意味不明」

「サプリ」

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」

「この男を蘇生しろ・・・この男は立派な人間だ」

「ラジャー&ドロン」

サプリは一瞬で大物政治家とともに亜空間に消えた。

「もう・・・死んでるよお」

「サプリの蘇生能力をあなどってもらっては困る。そして・・・人間の生命力を甘く見るな」

「生命力・・・ってか」

「見ろ・・・」

ロイドは三次元画像を投影した。

安堂家の野戦病院では・・・星と葦母刑事そして・・・七瀬が集中治療を受けていた。

「どうしてえ・・・隠しておいたのにい」

「お前の亜空間通路はすでに解析されている」

「仲間ってそういうことかよ・・・お前はさあ・・・旧型のくせにさ・・・感情がインストールされてるんで・・・そういうこというんだなあ。そうするとさ・・・こういうのに・・・弱いんじゃないの」

クイーンが三次元画像を投影する。

囚われた沫嶋研究室の助手トリオ。

「逆らったら殺す・・・とかねえ。でもそんな必要ないからただちに処刑しちゃうのね」

「・・・」

「やっちまいな」

助手トリオは銃殺担当兵士に銃撃を受けるが・・・銃弾は電磁バリヤのようなものではじき返される。兆弾は兵士たちをなぎ倒すのだった。

トリオの前にウージングアウトする角城。

「カドシロ・・・死にぞこないが・・・」

「クイーン・・・生後三ヶ月足らずで・・・生まれたばかりのお前には分からないかもしれないが・・・成熟した生命は未来のために・・・現在を維持する責任を負うのだ・・・この若者たちにはまだ沫嶋教授の指導が必要なのだ。だから・・・この時空間に教授が帰ってくるまで・・・彼らが死ぬことも禁じられているのだ」

「クイーン、お前はまちがっているのだ」

「おいおい、殺人兵器が無垢な少女に説教すんのかよ。100年遅いよねえ」

「ならば俺はこの歴史から・・・お前を排除する」

「はあ?・・・排除されるのはお前だろ・・・ポンコツお兄ちゃん・・・それともまだ何かとっておきの秘密兵器とかあるわけ・・・後は勇気だけはなしね」

「俺は・・・安堂麻陽の想い・・・沫嶋黎士の想い・・・沫嶋七瀬の想い・・・そしてこの世界に生きるすべての人間の想いによって生かされている存在だ・・・俺はそのすべての想いでお前を倒す」

「バカ言ってんじゃねえ・・・精神論で勝てたら大日本帝国大勝利なんだよお・・・歴史的事実をなめんなよお」

やがて・・・青白く光り輝くロイド。

一方で・・・赤く燃えあがるクイーン。

22世紀における人類の終焉を回避しようとした沫嶋黎士は・・・結局、21世紀における人類の終焉を招来してしまったのかもしれない・・・。ロイドとクイーンの対決は・・・つまり最終戦争と同じなのである。

世界を破滅させる力を持った恐るべきベイビー。

かわいいよ、クイーンかわいいよと言わざるを得ない。

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Ar009 ごっこガーデン。特設かわいい人形教室セット。アンナいやん、やっぱり・・・カドシロぬいぐるみはゴリラにしか見えないぴょ~ん。仕組みが分かると・・・結構グロだぴょ~ん。とにかくね~、ダーロイドの手がね~、大きいの~。大きくて優しくてあったかくてモフモフはしてないけどしゅるる~んな感じはすると思います。まさに頭撫でられ昇天クラスぴょ~ん。もはやミラクルぴょ~ん。あのね・・・ヒーローだからさ・・・クイーンには負けないと思うけどさ・・・ここまで勝てる要素ないよね。あの謎の渦巻き雲がなんかやらかしてくれるのかなあ・・・サテライトからビームが飛んできたりして・・・でもやはり・・・最後は肉弾戦だよね・・・魂と魂のぶつかり合いだよね・・・だからアンナは命の限りロイドを応援するのだぴょん・・・届け・・・わが思い・・・まこでもね~・・・やっぱり耳が熊の耳・・・ちなみにぬいぐるみはじいや秘蔵のテディベアを使用しました・・・てへぺろmanaふー・・・あまちゃんコンサートの余韻から脱出できず~・・・・・・・・ふっか~つ。善人であろうとするほど心にたまっていく悪のよどみ・・・その暗い汚水の底から生まれ出るもう一人の彼女・・・本音と建前はすでに二重人格の兆しなのですかああああっ。思いの素粒子と命の素粒子は親子関係ですかああああああ。そして・・・黎士は黎士は生身の体で帰ってくるのかやああああシャブリインドの教授って・・・ジャーミー君なのでありました~ikasama4年賀状をちぎってはなげちぎってはなげmariこの世界の人間に生き続ける価値なんてあるか・・・人間によって生み出された赤いバリアの妹に・・・青いバリアの兄はどう対処するのか・・・果たして最終回で決着はつくのでしょうか?」

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2013年12月 8日 (日)

新婚妻は甲斐々々しい(多部未華子)LOVELOVEだよ(亀梨和也)怪人羊男のクリスマス(玉置浩二)

師走である。先頭でクリスマスに突入した「東京バンドワゴン」・・・この物語は・・・正妻の娘と愛人の息子のラブ・ストーリーから・・・父親と愛人の息子の父子愛の物語へと変転していく。

なんてったって男のファンタジーなのである。

しかし、一部女性の皆様がこの男のファンタジーに共感するのは・・・この男のファンタジーが古き良き時代の香りを漂わせているからだろう。

それは男がやる時はやる時代で・・・女は男のやりたいようにやらせてやる時代なのだった。

様々なうんざりする問題が散乱する現代。

たとえば・・・放射能汚染水と・・・今、この瞬間も黙々と戦っている男たちがいるわけである。

その男たちを振り返るものは少ない。

しかし・・・こっそりと囁くものはいる・・・たとえば「もう、希釈して海に流すのも手だよな」・・・と。

そうなのである・・・「リスクの分散」という意味では・・・その手はある。

もはや・・・生まれてしまった半減期の長い放射性物質を・・・どうにかすることはできない。

もちろん・・・集中管理して・・・何万年という単位での保存というのも一つの手だが・・・その場合は最終的には・・・宇宙・・・たとえば月に放棄したりすることになるだろう。

しかし・・・今、もっとも現実的な手としては・・・危険の少ないレベルまで薄めた汚染水を海洋投棄するという手があるのだ。

まあ・・・その場合、いろいろな意味で海に生きる男たちが悲鳴を上げることになるわけだが・・・。

古き良き時代の男たちならとっくに決断しているところなのである。

まあ・・・現実的にはすでにかなりだだ漏れしていると思いますけどね。だって・・・地下水をどうこうするなんて・・・現実的には無理なんだもの。

水は高きから低きに流れるものですからああああああああっ。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第9回』(日本テレビ201312072130~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・西岡健太郎を見た。演出補からのほぼ、演出デビューである。まあまあだったのではないか。まあ・・・終盤間際だしな。原作的には・・・青(亀梨和也)やすずみ(多部未華子)がパパやママになり、花陽(尾澤ルナ)が女子高校生になったりするまで物語は続いて行くわけだが・・・ドラマはそこまでは描かれない気配が濃厚である。8.8%↘8.2%↘7.8%↗6.3%↘6.2%↗6.8%↘6.1%↗6.3%では・・・続編をやるのは相当な困難が予想されるのだな。まあ・・・ここまで奇跡の映像化ができたということで一部お茶の間の熱狂的なファンは満足するしかないだろう。

そのために・・・喀血する我南人(玉置浩二)なのであった。

新婚初夜なのに・・・病院に集合した家族と過ごす青とすずみだった。

「容態はどうなんだよう・・・」と一人息子の身を案じる勘一(平泉成)だったが・・・。

担当医(小林高鹿)の説明で・・・休息をとって薬を飲めば治る胃潰瘍・・・ということになり安堵する堀田家であった。

大事をとって・・・入院することになったことに我南人は渋るが・・・「いくらなんでも今回は入院してもらいます」と長女の藍子(ミムラ)は娘として父親の身を案じるのだった。

だが・・・しかし。

なんだかんだで・・・クリスマス・シーズンに突入する東京バンドワゴンの世界。

とにかく・・・青とすずみの新婚初夜は滞りなくすんだ模様である。

研人(君野夢真)に母親の亜美(平愛梨)の実家から孫たちへのクリスマス・プレゼントが連日宅配されてくるのだった。

そこへ研人のガールフレンドの大町奈美子(井上琳水)がやってくる。奈美子の母親の法子(西山繭子)の父親ケンちゃん(光石研)はすっかり「東京バンドワゴン」の常連なのだった。マンションの管理人がそんなに出歩いて大丈夫なのか。

研人と奈美子は小さな恋のメロディーを奏でながら・・・絵本「羊男のクリスマス/村上春気樹・佐々木マキ」を読んでいる。

本と言えば・・・最近は青も読書を再開している。

「すずみさんに古本屋を継いでくれって言われたみたい」と藍子。

「へえ・・・」と嬉しそうな紺(金子ノブアキ)である。

藍子は画家、紺はライターが本業であるために・・・古本屋「東京バンドワゴン」の後継者はまだ空席なのであった。

そんな・・・青は・・・新婚の月というのにどこか・・・気もそぞろである。

「お見舞いに行きたいんでしょう」

「うん・・・ちょっとね」

「本当に・・・お父さんが好きなんだから・・・」

「ち・・・ちがうよ」

すずみは笑って・・・青を我南人が入院中の病院に送りだすのだった。

青の留守中に古本屋に併設されたカフェ「あさん」には小料理居酒屋「はる」の女将・真奈美(片桐はいり)が来店する。

「私、恋をしちゃいました」

「加護ちゃんかっ」とのけぞる一同だった。

お相手は「はる」の板前・甲幸光(田中要次)らしい・・・。

しかし・・・その恋は上手く行っていないようなのである。

藍子が早速、相談に乗るのだった。

その頃・・・入院中の我南人は・・・担当医から・・・ある種の告知を受けている。

震える我南人の手。

そして・・・青が病院に到着した時には行方をくらましているのだった。

「あの・・・日本テレビのアナウンサーにそっくりの看護婦さん・・・父は・・・」

「お父様なら・・・先ほど、退院されましたよ・・・」と看護師(杉野真実)・・・。

「ええっ」

父親大好きな青はガッカリするのだった。

「なんだよ・・・放蕩親父のやつ・・・」

そして・・・晴れ渡った十二月の空から天気雨がふりそそぐのだった。

三日過ぎても我南人の消息は不明である。

そして・・・例によって・・・「我南人が綺麗な女性と歩いていた情報」も舞い込むのだった。

引退した神主の祐円(ベンガル)は「またかよ・・・あの恋のロックンローラーはよっ」と少しうらやましそうなのだった。

「青ちゃんも確実に遺伝子受け継いでいるから気をつけてって言われました」とすずみ。

「いや・・・俺と親父は全然ちがうからっ」と青。

「この・・・平成のスケコマシ」と完全にやっかんでいる祐円だった。坊主なら生臭坊主だが元神主なので些少の生臭は問題ないのである。まあ、このドラマで一番、色ボケなのは祐円本人だよな。

とにかく・・・新婚なのである意味・・・青とみすずは・・・イチャイチャしているのです。

一方・・・残り話数も少なくなり・・・決着をつけたいらしい・・・藍子をめぐる藤島(井ノ原快彦)とマードック(ジョナサン・シェア)の愛の攻防戦である。

青の結婚式では・・・財力にものを言わせて大手柄をあげた藤島。

「買収なんて・・・大変だったんじゃないですか」と藍子。

「いや・・・出版には元々、興味があったんですよ」と藤島。

「・・・」旗色の悪いマードックである。

外野が息をつめて見つめる展開・・・。

「あの・・・藍子さん・・・ボクと一緒にイギリスに行きませんか」

おっといきなりのプロポーズかっ。

しかし、割り込む勘一だった。

「何言ってやがんで・・・この外国人が・・・」

孫娘を愛する祖父は祖父として・・・外国人差別剥きだしの勘一だった。

「違いマス~・・・今度、ロンドンで個展をやるのですが・・・そこで、藍子さんにも出品してもらいたいと思いまして・・・」

「それじゃ・・・個展じゃなくて・・・二人展だろうが・・・」

「そこかっ」

「とにかく・・・藍子はロンドンになんか・・・いかせねえ・・・藤島、お前も帰れ」

「え・・・」

とにかく・・・孫娘を独占したいらしい勘一だった。それはそれで危険なんだな。

男たちが追い出された後で・・・奈美子の母親の法子がやってくる。

「奈美子が最近、変なことを言うんです」

「変なこと?」

「羊が出てきてつきまとうって・・・」

「羊が・・・」

幼女を狙う羊・・・猟奇的なミステリが開幕するのだった。

おなじみの食卓では「怪奇羊男の話題」で盛り上がるのだった。

「羊って・・・」

「なんでも・・・ウチの店に逃げ込むと消えるんだって」

「羊マンだ」

「食事中に立ち上がるのやめなさい」

「マンなのか・・・」

「二足歩行みたい・・・」

「羊人間ね」

「来年の干支はなんだっけ」

「午(うま)ですよ」

「じゃ・・・羊は再来年だな」

「気が早いにもほどがありますよね」

「そういう問題じゃないだろう」

「羊マン来襲」

「立ち上がるのやめなさいってば・・・」

「ボクが調べるよ」

「よし・・・私も・・・」

研人と花陽の子供探偵団が名乗りをあげるのだった。

「うわあ・・・浪花探偵団みたい・・・」

「それを・・・デカワンコが言う・・・みたいな」

一方、「はる」では・・・藍子が真奈美の恋愛相談にのっているのだった。

「奈美子と真奈美ってネーミング紛らわしいわよね」

「え・・・」

「いえ・・・それで・・・板前の甲さん・・・今日もおやすみなの・・・」

「店ではいてもらおうとおそろいの草履を買ったりしたのがいけなかったのかしら」

「ああ・・・」

「きっと・・・私の気持ちが重荷になったのね・・・」

「そんな・・・」

「どうしよう・・・このまま、店を止めるとかってことになったり・・・」

「いやあ・・・でも真奈美さんに思いを寄せられて・・・嫌な男は少ないと思うけどな」

「あら・・・青」

青もようやく・・・真奈美問題に参戦するのだった。

「そうよねえ・・・真奈美さんですもんねえ」

青と藍子の二人は一部お茶の間のメンクイたちを逆上させるのだった。

ここから・・・青は他人の恋路にお節介を始めるし、我南人は余所の夫婦の仲を取り持とうとお節介をしているのである。

これは血は争えないという話なのだ。

青は病院で父の消息を探ろうとするが果たせず、板前の甲さんを発見してしまうのだった。

すでに・・・店を去ろうとする決意を匂わす甲さん。

「真奈美さん・・・心配してましたよ」

「自分は過去にいろいろありまして・・・幸せになってはいけない男なんです・・・」

どうやら・・・甲さんも・・・真奈美に好意を持っているようだと察した青は詳しい事情を訊く。

かって軽井沢の料亭で働いていた甲さん。板長(山崎一)に目をかけてもらい・・・その娘(羽里早紀子・・・「あまちゃん」の『君でもスターだよ』のアシスタントである)と結婚したのだった。しかし、肺に持病のあった甲さんの妻は27歳で早世。絶望した甲さんは後追い自殺を図ろうとする。そこで止めに入った板長の利き腕を傷つけてしまったのである。それから罪を背負ったまま・・・さすらいの日々を過ごし・・・現在に至る。

「何があったとしても・・・幸せになっちゃいけない人間なんていないはずです」と青は励ますのだが・・・甲さんの決意は固い。

さて・・・そこで・・・青の心によぎったのは・・・すずみに推奨された「庫分作名界世」じゃなかった「世界名作文庫」の一冊・・・「から騒ぎ/ウィリアム・シェイクスピア」であったらしい。アラゴンのドン・ペドロが領有しているシチリアに出かけ、友人の貴族クローディオと現地の知事レオナートの娘・ヒーローとの恋の成就のためにいろいろとお節介を焼くという喜劇である。・・・古典ですな。

家に帰った青は・・・軽井沢方面に電話をかけまくるのだった。地道な調査である・・・私立探偵かっ。まあ、観光地なので・・・ツアーガイドならではのコネクションがあるわけである。

「ツアコン青ちゃん!板前傷害事件を謎解くの巻」である。

一方、「研人と花陽の怪奇大作戦・恐怖!怪人羊男の巻」は奈美子と行動を共にすることによって・・・怪人の写真撮影に成功したのだった。

「うわ・・・」

「本当に羊人間がいたのかよっ」

のけぞる堀田家の男たち。

早速・・・奈美子の母親・法子を呼び出すのだった。

「まさか・・・本当にこんな変態がいるなんて・・・」

「ストーカーにしても悪質すぎますよね」

「ごめんね・・・奈美子・・・こわかったでしょう」

「ううん・・・羊男さんは・・・本当は優しいの」

「ええっ」

様々な幼女趣味の変態的な行為が頭を駆け巡る大人たち。

そこにすずみの悲鳴が聴こえる。

あわてて・・・青がかけつけると・・・そこには羊男本人がいたのだった。

「あれ・・・もしかして・・・親父・・・」

親父大好きな青にはたちまち羊男の正体を見抜くのだった。

一方で息子とは見抜けなかった勘一は気絶していたのだった。

羊男の変装を解いた我南人・・・。

「実はね・・・この前、神社で・・・奈美子ちゃんが・・・お父さんとお母さんが離婚しませんようにって祈ってるのを聞いちゃったんだよね」

「離婚・・・」

「心配になって離したら・・・御両親が毎晩ケンカしていて・・・このままでは離婚して引っ越すことになる・・・そうすると研人と一緒にいられなくなる・・・って言うんだ」

「研人と・・・」

「LOVEなんだねえ・・・そして・・・奈美子ちゃんは・・・オバケがいて・・・退治できるのは研人しかいない・・・ということになれば・・・引越ししなくてもいいかもって言うんだよ」

「そんで・・・お前がオバケになったのか・・・」と意識を取り戻した勘一。「そりゃ・・・お前、オバケって言うよりオバカだろう・・・」

「でも・・・羊はリクエストだし・・・メークアップアーティストのジュンちゃん(美人)ちに泊まり込んで毎日、三時間かけて変身したんだぜ・・・」

「オバカだね・・・」

「オバカだ・・・」

「あの・・・実は・・・」と真相を話す法子だった。

夫が北海道に転勤することが決まり、突然だったので・・・単身赴任にするかどうかで・・・毎日、話し合っていたというのである。

「まさか・・・子供に聞かれているとは・・・」

「なるほど・・・」

「でもね・・・安心して・・・パパは単身赴任することになったから・・・」

「じゃあ・・・研人くんとは別れなくてもいいの?」

「もちろんよ・・・」

「よかった・・・」

「LOVEだね」

単身赴任の奈美子の父親・大町功(平沼紀久)は涙目なのだった。

亭主もパパも元気で留守がいいのである。

そして・・・時は流れてクリスマスイブ。

甲さんは世話になった我南人に別れの挨拶に来るのだった。

「せっかくだから・・・食事をしていってよ」と青。

「いえ・・・私はこれで・・・」と甲さん。

「そう言わずにまあまあ・・・」と藍子が差し出す料理の一品。

「あ・・・これは・・・聖護院蕪白煮」

「お味をみていただけますか」

一口食べた甲さんは・・・驚くのだった。

「この・・・味」

「久しぶりだな・・・甲よ」と姿を見せる板長。

「おやっさん・・・」

「この通り・・・俺の腕は元の通りさ・・・いいか・・・俺だって娘だって・・・これっぽっちもお前をうらんじゃいねえよ・・・俺は今は京都の店で働いてる。そんな俺をこの堀田さんがわざわざ訪ねてくださって・・・お前に喝をいれてくれとおっしゃる。ありがてえことじゃねえか。いいかい、甲、いいや、甲さんよ・・・人間、前をむいて歩かなくちゃなんねえよ。後ろを向いて料理ができるかい。お前もこの方たちのために・・・思う存分、腕をふるうんだ。そんで・・・お前さんも幸せにおなり・・・それこそが娘の供養になるってもんだ」

「・・・おやっさん・・・」

「こちらの・・・青さんの話だとな・・・お前の大事な人が泣いてるそうじゃねえか・・・好きな女を泣かせる男なんていけねえよ」

「え」

「真奈美さんが・・・お店で待ってますよ・・・行ってあげてくださいよ」

「なんてったって・・・今夜はクリスマスイブですから」

「いってきな・・・甲さん」

「すみません」

甲は・・・一人、「はる」に向かって走り出すのだった。

その足音を耳を澄まして待つ真奈美だった。

とにかく・・・ものすごくロマンチックらしい。

「ありがとうございました」と板長に頭を下げる青。

「いや・・・それはこちらのセリフです・・・甲の奴のことがずっと気になっていました。ようやく胸のつかえがおりましたよ・・・今夜は・・・私の料理を楽しんでください」

「そいつはいい・・・家で料亭の味が楽しめるなんて・・・こいつはうれしいねえ」と勘一。

和む・・・堀田家一同だった。

そして・・・クリスマスイブの夜は更ける・・・。

藤島とマードックもやってきて・・・藍子をとりあう聖なる夜を楽しむのだった。

「いいねえ・・・こうやって・・・我が家にはLOVEがずっとずっと流れていくんだね」と我南人。

「なにいってやがる・・・おめえはよ」と勘一。

「あのね・・・みんな・・・僕はね・・・喉頭ガンなんだ・・・」

「え」

「手術するとね・・・歌が歌えなくなっちゃうかもしれないんだ。死んじゃうのもLOVEじゃないけど・・・ロックンロールができなくなるのもLOVEじゃないね・・・。だから・・・ギリギリまで歌うことにした・・・LOVEをね・・・だから・・・これは・・・みんなへの最後のクリスマスソングだね」

沈黙した堀田家一同の前で我南人が歌い出す。

きよしこのよる

ほしは ひかり

すくいのみこは

みははのむねに

ねむりたもう ゆめやすく

ねむりたもう ゆめやすく

青の頬に流れる涙。そして雪が舞い落ちる・・・ホワイト・クリスマス。

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Tbw009 ごっこガーデン。どこよりも早いクリスマス・パーティーセット。エリ長いセリフもなんのその・・・ついに最終回目前まで完走した青ちゃんパパにいろいろな意味で感動なのでスー。メリーさんの羊はおめえ、おめえと鳴くのでスー。それは勘一おじいちゃんでした。青ちゃんのパパも研人くんや花陽ちゃんから見ればおじいちゃんですから・・・堀田家はダブルおじいちゃん体制ですわね~。胃潰瘍と安心させておいて喉頭ガン・・・我南人大好きの青ちゃんは・・・ガーンですねえ。ここは新妻のすずみとしてしっかりささえていかなくては~なのでスー。またまた胸にポッカリ穴があかないようにお布団の中でいい子いい子をしてあげなくてはなりません~ムフフまこ走り出す板前さん・・・それを待っている安部ちゃん・・・じゃなかった真奈美しゃん・・・世紀のラブ・ストーリーだジョ~。ここは夜のシーンにして・・・山下達郎をかけてもよかったとおもいましゅ~・・・町を彩るイルミネーション、恋人たちの間をかけぬける・・・あるよ・・・の人・・・そして雪・・・う~ん想像するだけでロマンチック~・・・笑っちゃうかもしれないけれど~くう難病ものは苦手なのに・・・このドラマはじ~んとくる・・・我南人の歌は反則なのです~・・・うるうるうる・・・たとえ姿はかぶりものソーセージでも~・・・羊男はホラーみたいだった・・・さあ・・・最終回はファンタジーを貫けるのか・・・それとも・・・まさか歌うと治るとか・・・それはさすがになさソーセージシャブリ羊マン・・・動きが我南人すぎて・・・面白~。奈美子は・・・おひさまの日向子なのでありました~。子役たちは日々成長して行くのでありました~ジャラランみのむしちりとてちん、ちりとてちん、おはやしがなる~るるるikasama4年賀状ラストスパートですmariた新婚妻をほったらかして他人の恋を応援、病をおして幼子の願いを叶える・・・見事なお節介父子ですね。まさに血は争えないのですよ・・・

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2013年12月 7日 (土)

お金を返して(吉田里琴)好きなら告白して(佐々木希)ちゃんと治して(武井咲)

金曜日の谷間である。

ふと・・・振り返れば・・・なんだかんだ・・・主演がないんだな。

「みこん六姉妹」(2006年)や「しにがみのバラッド。」(2007年)、そして「山田太郎物語」や「ホタルノヒカリ」などで超絶美少女子役として認知された後・・・「オー!マイ・ガール!!」(2008年)が準主役的なポジションだが・・・吉田里琴で・・・企画された作品というものが・・・ないのである。「メイちゃんの執事」だってメイちゃんじゃないのだ。

どうして・・・吉田里琴版「家なき子」をやらなかったのだ・・・と思うのである。

まったく・・・どうかしてるぜ・・・各局・プロデューサーよ・・・。

とにかく・・・あくまで子役として・・・華々しい戦歴を残す吉田里琴なのだった。

おそらく・・・その集大成が・・・「リーガル・ハイ」第一期・第八話である・・・ということになるだろう。

そうなのだ・・・ここからは子役あがりの女優としての試練に突入しているのだな。

ビューティフルレイン」では芦田愛奈の姉貴分。「夜行観覧車」ではいじめっ子リーダー。「あまちゃん」ではアイドルグループの最年少役・・・考えれば・・・ものすごく下積み稼業である。

そろそろ・・・本気で事務所を・・・まあ、それも運命だからな。それか事務所ががんばれよ。

リアル鬼ごっこ」とか・・・黒歴史にするならするで。

で、『海の上の診療所・第8回』(フジテレビ20131202PM9~)脚本・徳永友一、演出・高野舞を見た。だから・・・ここなのか。だから・・・ここです。特に・・・今回は制服だしな。特に今回は制服です。ちょっと生意気だけど・・・実質、お姉ちゃん思いのいい妹だったしな。乱暴しようものなら相手が神の怒りに触れるという聖少女な役でした。・・・まあ、そういう見方をしようと思えばできるけどな~。本来・・・妹は・・・姉の初恋の男に初恋という流れなのですが・・・この脚本家はやはりそこまで匂わせる力量がないので・・・妄想補完するしかないのですなあ。そうなんですなあ。

ここまで・・・マドンナ別に見てみると・・・加藤あい15.6%↘篠田麻里子12.4%↘夏帆11.4%↘瀧本美織10.6%↗安達祐実12.1%↘北乃きい*8.9%↗戸田恵梨香*9.9%↘佐々木希*9.5%で・・・吉田里琴はマドンナじゃないんだな・・・もうそれがダメだよな・・・お茶の間がどう思おうと・・・妹の方にメロメロにならないと・・・アグネス的にそれはな・・・どうせ、悪戦苦闘しているドラマなのである・・・やる時はやればいいのに・・・。それにしてもあげてくる安達祐実とか戸田恵梨香はさすがだな。

とにかく・・・魔法のスリッパと・・・「ちゃんとして」で・・・武井咲が・・・「お天気お姉さん」に続いて・・・ある種のキャラクターを確立させた功績はあるよな。

しかし・・・「寅さん」スタイルはあっても・・・「寅さん」チャームには遠く及ばないがな。

なんて言うか・・・瀬戸内海巡回診療事業に対する取材が不足していると思うんだ。

そうだねえ。

結局・・・マドンナたちの設定が・・・都会と田舎の間で翻弄される女たち・・・に尽きている。

まあ・・・でも、バリエーションはそれなりに作っているんじゃないの。

マドンナの彼氏がケガするパターン・・・多いだろう。まあな・・・。

やはり・・・寅さんが・・・見染める・・・盛り上がる・・・相手もまんざらじゃない・・・なわけないだろうという情緒が1時間ドラマだと難しいのかもしれない。

それは・・・最初から分ってることだからなあ。

まあ・・・でも・・・チャレンジは素晴らしかったんじゃないか・・・まだ終わったわけじゃないけどなあ。

・・・というわけで・・・今回は主人公・航太(松田翔太)の弟分、看護師の昇(福士蒼汰)の初恋の女で本屋の娘である白井亜希(佐々木希)が住む「伊久島」に停泊する巡回診療船「海診丸」だった。

前から思っていたのだが・・・離島医療に貢献している・・・「海診丸」の理事長の描き方って・・・結構、ひどいよな。今回の主役である・・・猫のメロンちゃんを理事長の秘書(松村未央)が預けに来る件なんて・・・まるで病院船が金持ちの道楽で運営されてる風だろ。エピソード的なよくある手のために・・・病院事業そのものが・・・怪しい感じになっちゃってるんだよな・・・まあ・・・いいではないかいいではないか。まあね・・・。

昇に割く時間調整のために・・・眞子(武井咲)は風邪をひいて寝こんでしまう。

さらに・・・昇が片思いしているのは・・・眞子という基本設定を緩めるために・・・看病している航太が眞子にキスした(誤解)を追加している。

テクニックと言えばテクニックだけど・・・エピソード作りが泥臭いんだよなあ。

で・・・昇は昔の初恋の人を汚されたくない思いで・・・航太に煙幕をはって亜季から遠ざけようとするのである。

しかし・・・亜季の方は・・・あまり・・・素晴らしいとはいえない恋愛をしていて・・・現在の恋人は借金まみれの男・尚人(矢崎広)なのである。

亜季と昇はかっては・・・両思いだったが・・・どちらも消極的だったので・・・カップルにはならなかった過去があるのだった。

そのあたりのことをすべて・・・説明し・・・なおかつ・・・昇に仄かに恋をしていて・・・相手が姉だから・・・身を引いたのにという複雑な思いを抱える妹が美和(吉田里琴)なのだった。

亜季は昇に借金をして・・・恋人に渡すという・・・貢がせて貢ぐという・・・客→ホステス→ホスト的な連鎖を作ってしまう。

そのことに激昂する・・・美和だった。

「昇ちゃんの・・・お金を・・・返せ」・・・と尚人に迫るが・・・振り払われてしまうのだった。

しかし・・・その反動で・・・尚人は崖から転落・・・重傷を負うのだった。

とにかく・・・この男・・・尚人がまったく・・・立ち直りそうにないので・・・エピソードが暗鬱なのである。

昇は自分の金が・・・男のために使われていることを知るが・・・切羽詰まっている亜季のためにもう一度・・・お金を渡すのだった。

それが・・・いいことなのかどうか・・・お茶の間は絶対に釈然としないのだった。

とにかく・・・昔言えなかった気持ちを・・・亜季に伝える昇。

「あなたのことが好きでした」

「私も好きだった・・・」

過去形の告白で・・・初恋に訣別する二人。

まあ・・・ギリギリ哀愁があると言うことで処理するしかない。

大根おろしを頭に乗せられて解熱した眞子は・・・おかえしに院内感染してしまった航太のこめかみに梅干しを貼るのだった。

「ちゃんと・・・治して・・・」

チャンチャンである。

主題歌の「太陽の女神/家入レオ」が珠玉の名曲なのでなんとかごまかせるのだが・・・シナリオ的にはかなりやばい領域になっていると思うよ。

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Cc201312 CLUB Rico開催中。シャブリあれれ・・・鉄拳のパラパラアニメーションがなかったのでありました~。とにかく・・・吉田里琴ちゃんは・・・正座して鑑賞するに値する出番を確保して・・・満足なのでした~・・・では皆さん、また会いましょう。あまちゃん総集編で出番がカットされていないことをメンバー全員で祈りつつ・・・くうジーク里琴!」まこジーク里琴!」ikasama4ジーク里琴!」

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2013年12月 6日 (金)

空から彼岸島を見てみよう(阿部翔平)

悪魔でなぜ悪い?

「悪」じゃねえかっ。

あ・・・そうでした。

今日はNHK総合の「MJ」で「Re:/9nine」と「SLY/RIP SLYME」を「人気ドラマの主題歌」ってことで連打してたぞ。

なんか・・・得した気分になったよな。

やはり、大衆迎合放送局だけあるよな。まさに「みなさまのNHK」ここにありって感じだった。

その後の「NEWS WEB」で「特定秘密保護法案」がらみで「高校生の私にもおかしいってわかるのに」というつぶやきでしめたりしてな。

なぜ・・・「高校生だからわからないんだ」とか・・・「反対している人はようするに高校生レベル」だとはっきり言わないんだろう。

・・・そういう意図はないと思うぞ。

ないのかよっ。

そういえば・・・来年の連続テレビ小説「花子とアン」のヒロイン吉高由里子は「お勉強っ」がつらくて「ぐんぐんぐんずんずんずん」とつぶやいていたぞ。大河に続いてまた、クリスチャンの話だからな。

旦那役は仮名で分かりにくいが・・・鈴木亮平なのか。

とにかく前向きな女・・・中園ミホ脚本だからな・・・変態仮面くらいでバランスをとるんだろう。

「ぐんぐんぐんずんずんずんで私失敗しませんから・・・」なんだな、きっと。

「アトム」の手塚治虫に「これのどこが面白いのか」と言わせた「ガンダム」の冨野が「こんなものはだめだ」と言わせた「進撃の巨人」・・・ある意味、「彼岸島」の方がそのセリフにふさわしい気がしないではない。

今回の前半の雰囲気で・・・ずっと押しまくる30分が見たいよね。この作品に緩急はいらないっていうか。

そういう人は「バイオハザード」とか見てください。

ああ・・・ぐんぐんぐんずんずんずんな彼岸島が見たい。

で、『彼岸島・第7回』(TBSテレビ201312060058~)原作・松本光司、脚本・NAKA雅MURA、友原我聞、演出・横井健司、総監修・三池崇史を見た。テレビ東京で「レギオン」をやっていたわけだが・・・神による人類大虐殺が始って・・・人類に同情した天使ミカエルが任務を放棄して・・・神に忠実な大天使カブリエルと肉弾戦・・・キリスト教徒になればこういうダイナッミクスなギャグも堪能できるんだよな。別にギャグじゃないだろう。信仰によって吸血鬼が滅びるっていうテーマ・・・耳なし法一の全身経文と通じるところあるよね・・・なんで・・・悪魔が・・・そんなお安い聖なるものに弱いって誤解するんだろう。馬鹿だな・・・あっちのプロパガンダに決まってるだろがっ。あ・・・そうか。このドグザレモンが・・・。使い方あってんのかな。少なくともレモンの一種ではないと思う。それ・・・お気に入りだな。

涼子(水崎綾女)・・・黒山羊の被り物をした吸血鬼はやはり涼子だった。さすがはシスターミキ。とにかく形が美しい。袋竹刀も軽々と扱って・・・往年のキレを感じさせるね。そして・・・悲しい宿命の女を演じさせたら・・・今、日本一なんじゃないか。なぜ・・・映画「シスター・ミキ」を作らないのだ。・・・もうすごく一部愛好家しか見にいかないからだろう・・・。回想シーンももう少し、新撮あるとよかったな・・・拒否しているのに無理矢理、血を飲ませられるところとか・・・ううん・・・想像しただけで胸がいっぱいです・・・この変態が・・・ああ、ボコボコにしてください。在りし日に・・・同情で恋人と稽古中・・・「なぜ・・・防具をつけさせてくれないのだ」と言われて「あなたの前髪がふわっとなるところが好きだから・・・」とか・・・かわいいよ、涼子、かわいいよなのであった。激しい殺陣の後で覚悟を決めた篤に一蹴され、心身喪失するも・・・篤はトドメを刺すことができず・・・手首を切ってもすぐ治癒してしまう吸血鬼の不死性を呪いつつ・・・涼子は吸血鬼として生存中である。

ユキ(山下リオ)・・・廃校で吸血鬼の集団に襲われる。ケンや・・・明は必死に防戦。弓を失ってからかよわき女モード全開である。パンツの模様がなぜか網タイツみたいでセクシーだ。恋人の死闘を制したものの「その悲しい死霊生活」に引導を渡すことができずに鬱屈した篤無双で危機を脱出。隠れ家に戻る。ケンは深い眠りに落ち・・・篤と明が兄妹の絆を深めあっている頃・・・ついに吸血され・・・ノイローゼを発症した西山に内緒で性交渉を求められるが拒絶。明によって貞操を守ってもらう。その後・・・ケン、ユキ、明は川の字になって寝るのだった。基本的に欲望は西山と同じように燃えているのだが・・・一歩を踏み出せないのは少年マンガの主人公にありがちなことである。翌朝・・・明と一緒に朝の散歩へ・・・。どうしても散歩しないと生きていけないのか・・・君たちは。せめて手を握って散歩したい明の腕をつかみ・・・ぬかよろこびさせるが・・・視線の先には首吊自殺中の西山をとらえていたのだった。「あ・・・あれ・・・あれ見て」・・・ある意味、凄いセリフだぞ。珍しい花を発見しちゃったレベルで。

(佐藤めぐみ)・・・上陸後、姿を消したまま消息不明中。予告編に登場。

(白石隼也)・・篤が黒山羊頭に襲撃された時、それが兄の婚約者とは知らずに斬りつけるが・・・相手が涼子だと知り・・・動揺する。別の場所でユキの悲鳴があがり・・・涼子を兄にまかせて救援に向かう。篤から「ためらうな・・・」と言われるが・・・西山を吸血中のハゲに拳銃を向けるものの発砲できずじまい・・・。危機が去った後・・・「お前にためらうな・・・と言っておきながら・・・死にたいのに死ねない涼子を殺すことができなかった」という兄に「俺だって・・・ユキがそうなったら・・・同じ」と本人にはできない告白を兄に聞いてもらう。「そうか・・・お前、ユキが好きなんだ」「まったく・・・兄貴は鈍いんだからあ」とイチャイチャする兄弟だった。「でも・・・誰が悪いとかつきつめて考えると・・・雅でもないし、特殊部隊でもないし、日本軍でもないし、西洋列強でもないし・・・きりがないし・・・でも・・・未来も見えないし・・・」などと宣うのだった。いや・・・とっとと脱出方法考えて、脱出すればいいんじゃね。そして・・・自衛隊連れて戻って掃討作戦するしかないんじゃね。まあ・・・掃討に失敗すると「吸血自衛隊」ができるわけだし・・・。とにかく・・・ユキを強姦しようとしていた西山は殴り倒すのだった。そして・・・もやもやした一夜を過ごし、ユキとともに樹上に死にかかる西山を発見するのだった。

(鈴木亮平)・・・黒山羊頭に襲撃されて。その正体を涼子だと悟り、攻撃の意志を喪失しかけるがなんとかこらえて、涼子を気絶させることに成功する。なにしろ・・・弟たちも守らねばならないのである。すべて・・・「あの日、俺が封印さえとかなければ・・・」という後悔を伴う罪の意識によるものである。まあ・・・やらなければやられる以上、やるしかないのだった。とにかく・・・弟はかわいいらしい。「親は俺たちの本心を知らない」などと嘯くが・・・それは親の心子知らずなのである。まあ・・・君子危うきに近寄らずを理解しない奴は後悔先に立たずなのだ。

ケン(遠藤雄弥)・・・疲労からか・・・戦闘力が低下し・・・ついに昏睡状態に・・・爽やかに目覚めて顔を洗うと・・・牙が生えてました。

加藤(勝信)・・・乗船せずに離脱中。

ポン(西井幸人)・・・死亡した模様。しかし・・・明の友情あふれる思い出や・・・西山の悪夢の中で健在なのだった。西山には亡者の姿でアピール。

西山(阿部翔平)・・・ユキよりも足手まといなのにユキとセックスがしたい気持ちが高まりまくる。ついにハゲに吸血されてしまいポンと吸血兄弟となる。吸血鬼化することを恐れ、神経症となり、ユキとの性行為に逃避しようとするが「内緒にして」もらえず・・・明に殴りたおされ「違うんだ」と言っても信憑性がなく・・・ついに自殺を決意・・・あるいは自殺のふりをアピール・・・することになる。もう・・・西山から目が離せない。

女医姿の吸血鬼・アスカ(大和悠河)・・・活躍の場なし。

封印されていた吸血鬼・(栗原類)・・・ラジオから流れるベートーヴェンのピアノソナタ第14番嬰ハ短調第一楽章「月光の曲」に耳を傾ける。その頭上に月が輝く。そして月をこよなく愛でるのだった。

村長・・・病院長を食って巨大化した亡者だが出番なし。

ハゲ・・・山中でポンの血を吸った吸血鬼。今回は西山を吸血。明に銃で威嚇され・・・名残惜しげに逃亡。おいしいところをもっていくのだった。

柳島(諏訪太郎)・・・501ワクチンをどこかに隠匿したらしい。登場なし。

五十嵐軍医(鶴見辰吾)・・・不死身部隊研究の責任者。行き当たりばったりで輸血を繰り返す天才ドクター。諸悪の根源であるが・・・現在はミイラ化しているらしく、登場なし。

涼子の登場で・・・ようやく・・・鑑賞に耐えうる回である。

「おいおい・・・そんなことやってる場合か」という場面が面白おかしくなるくらい・・・修羅場をもう少し充実させてくれるといいよね。

もうそろそろ・・・終盤戦ですからあああああああっ。

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2013年12月 5日 (木)

真夜中のパン屋さん~児玉さんの種だからこだまって名前にしちゃうぞ(前田亜季)

ちがうだろっ。こだまの父は本当は美作さん(植草克秀)である。

いやあ・・・「リーガルハイ」の代わりに突然、きゃりーぱみゅぱみゅが「にんじゃりばんばん」歌ってたのでうろたえました。

で・・・「FNS歌謡祭」が割り込んできたので臨時の谷間である。

「リーガルハイ」が一回休みということで・・・「ミス・パイロット」や「ダンダリン」のその後レビューでもよかったのだが・・・未レビューということで「クロコーチ」とこれのどちらか・・・ということで軽めのこれにした。

タッキーや土屋太鳳でのタイトル案もあったが・・・やはり・・・前田亜季のキャラクターが面白すぎるので・・・こうなった。

この役・・・前田亜季以外にできないだろっ・・・とキッドは極私的に思うのである。

朝ドラマ「ごちそうさん」の桜子役も前田亜季以外にはできないと思う。

・・・どんだけ、好きなんだよ。

で、『ドラマ10・真夜中のパン屋さん・第1回~』(NHK総合20131105PM10~)原作・大沼紀子、脚本・寺田敏雄(他)、演出・大原拓(他)を見た。NHKBSプレミアムからのお下がり放送である。最近、ドラマがすべてファンタジー化しているわけだが・・・これもまたファンタジーである。もちろん・・・それはキッドがそう思うだけである。この記事のタイトルが示す通り、基本的には妄想なのでご容赦ください。ジャンルで言えばライトノベル風のシリアスと言える内容だ。女子高校生がイケメンのお兄さん二人が経営する深夜営業のパン屋さんに転がり込んで居候になるというところがライトノベル風で・・・近所の子供が育児放棄されるところがシリアスである。

で・・・育児放棄した母親を演ずるのが・・・前田亜季なのである。

前田亜季がお母さんなら捨てられても本望だ。

・・・好きになり方が変態的になってるぞ。

まあ・・・最初に前田亜季(28)を見たのは「トイレの花子さん」(1995年)だから・・・もう18年前になるし、前田亜季は当時10歳だからな。

そんな彼女を好きになること自体が成人男子としては充分に変態なのだ・・・この国、および西洋諸国標準で。

まあ・・・それはそれとして・・・「ブランジェリークレバヤシ」はオーナーだけどブランジェ(パン職人)見習いの暮林陽介(滝沢秀明)とブランジェの柳弘基(桐山照史)が経営する深夜営業のパン屋さんなのである。

陽介は亡き妻・美和子(伊藤歩)の遺志を継ぎ、脱サラしてパン屋を始めた・・・そして、弘基は美和子に横恋慕していた過去がある。

そこに美和子の腹違いの妹と称する高校生・篠崎希実(信太真妃→土屋太鳳)が母親に蒸発されて保護を求めてやってくる。

こうして・・・奇妙な同居生活が始るのである。

そして・・・真夜中の店舗にはおかしな客たちがやってくるのだった。

覗き屋の脚本家・斑目裕也(六角精児)・・・とか、ホームレスのニューハーフ・ソフィア(ムロツヨシ)とかである。

希実は都立桜ヶ原高等学校に通学しているが、いじめっ子気質の三木涼香(小島藤子)に目をつけられているのである。美人でもブスでもない普通のいじめっ子がまた乙である。

そういうなんだかんだの中・・・三軒茶屋南小学校3年2組の水野こだまが無断で店のパンを持ちだし、「万引き犯」として店番をしていた希実に捕縛されてしまう。

ちなみに・・・希実(のぞみ)とこだまで新幹線コンビである。

水野家に代金を徴収に行った希実は・・・こだまの母親が土下座して謝ったり、こだまを激しく叱りつけたりする態度に・・・なにかエキセントリックなものを感じるのだった。

もう・・・存在そのものが「心が病んじゃうぞ」の前田亜季ならではなのである。

だが・・・こだまは雄介の亡き妻と「ただでパンを好きなだけもらう約束」をしていただけで万引きではなかったのだ。

そのことを謝罪に向かうと・・・こだまの母親・水野織絵(前田亜季)はすでに蒸発していたのだった。

万歳である。

こうして・・・「ブランジェリークレバヤシ」にはまた一人、新たな居候が加わるのだった。

希実の蒸発した母親・律子(ともさかりえ)もこだまの母・織絵も「子供を捨てたのは・・・きっと男のせいだ・・・」と誰もが思うのだった。

しかし・・・第4話で・・・織絵が看護師であることが判明し、ソフィアのテント小屋に転がり込んでいることが発覚する。

覗き屋の斑目の情報で・・・織絵を追跡した陽介は・・・織絵から・・・真実を聞きだすのだった。

「私は・・・医者の娘で・・・小さい頃から病院を継ぐために医者になるように父親に命じられていました。でも・・・頭が悪くて医師にはなれなかったんです。そこで看護師になって医者の美作さんと不倫をして・・・こだまを授かったんです・・・どうしても・・・医者になれる頭のいい子が欲しかった私はすごくすごくうれしかった・・・一才の時の知力検査でこだまが天才と呼ばれた時にはうれしくて泣きました。でも・・・幼稚園の受験に失敗し、小学校の受験に失敗すると・・・せっかくの天才を私が育てたためにバカにしてしまったという思いが私に芽生えました。頭の悪い母親は頭の悪い子供しか育てられないのではと思うと・・・こだまと一緒に暮らすことがひどく苦しいことになっていったのです。そして・・・あの子はついに・・・万引きをしたのです。万引きは・・・私の悪い癖でした。私は子供の頃から万引きが止められず警察のお世話になったこともあるのです・・・もうだめだと思いました。このまま・・・私が母親のままだと・・・こだまは本当にダメになってしまう・・・だから・・・私は家を出たのです・・・」

万歳である。

「こだまくんは・・・万引きしてません・・・誤解だったんです・・・こだまくんはお母さんのことが大好きなんですよ」

「え」

母一人子一人の水野家の食卓に置かれた・・・「お母さんのためにこだまがつくったチョココロネの袋」の列。

そこに・・・こだまが「今日のチョココロネ」を持って帰ってくる。

「お母さん」

「こだま・・・ただいま」

「僕も・・・ただいま」

織絵は涙を流してこだまを抱きしめる。

そして・・・母子はチョココロネを食べるのだった。

万歳三唱である。

美しい発達障害の話なのである。

そして天才母娘の話なのである。

ちなみに・・・いじめっ子・涼香の母親・淑枝(田中律子)もいい味出してます。

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2013年12月 4日 (水)

変身する前の私に憂鬱になるほど冷たい君(中丸雄一)

もう一人がいるのか・・・いないのか・・・いるとしたら美少女の追加があるのかどうか・・・。

そこが気になるわけだが・・・深夜ということで「変態度」をストレートに高めてきた今回。

まあ、それはそれでありだと思うが・・・神秘性は少しダウンである。

つまり・・・猟奇性がアップしたのだな。

それはまあ・・・変態度の「処女/非処女」みたいなものだと思うが・・・。

じゃあ・・・なにか・・・処女は神秘的で・・・非処女は猟奇的なのか・・・と言われても困るわけだが・・・。

昔から、神も吸血鬼も処女を愛すじゃないか。

まあ・・・だから・・・処女と非処女のどちらをチューリップにしたいか・・・という欲望の話なんだよ。

ああ・・・処女なんだな。

うん、処女なんだ。

お前の変態性をストレートに表現してどうする・・・。

ま、そうなんだけどね。

さあ・・・そろそろ行こうぜ、山梨やら静岡やら栃木やらわからぬどこぞの幻想の田舎町へ・・・。

で、『・第7回』(TBSテレビ201312030028~)脚本・演出・三木聡を見た。小説家白川が変身したインタビュアー青沼(中丸雄一=二役)は「チューリップ殺人事件」の一年後に殺されたはずなのにどっこい生きていた真壁真奈美(中村優子)に「事件の日、二輪のチューリップを見たはずだ」と問いつめるが・・・真奈美は「見たのは普通に横たわる二人だった」と答える。「チューリップ殺人事件」を根底から覆す・・・チューリップじゃなかった発言に・・・茫然自失となる青沼だった。

消ノ原信用金庫三貴子支店支店長の永田銀山(村杉蝉之介)に横領した金を返却した真奈美は・・・。

「お金は返した・・・これでいいでしょう・・・あなたのしたことを追及したりしないから・・・」

そう言い残して去っていくのだった。

「おかしいじゃないか・・・」

賽の河原町の温泉旅館「猫旅館」に戻った青沼は白川に戻って頭を抱える。

「チューリップじゃなかったら・・・チューリップ殺人事件じゃなくなっちゃうだろう」

浴衣に着替えて色気10%アップの編集者のゲビヤマくんこと下日山酈霞(かひやまりか=木村文乃)はつっけんどんに言い放つ。

「真壁真奈美が見た時は普通の死体だったけど・・・その後で誰かがチューリップにしたかもしれないじゃないですか」

「そりゃ・・・そうだけどさ」

「そんなことも思いつけないんですか・・・ふっ」

「なんだ・・・その態度は・・・大体君は、白川の時のボクに冷たすぎるんじゃないか」

設定の上で青沼→白川は魅力100%ダウンなのである。

「そんなことないですよ・・・私はただ」

明らかにそんなことはある態度のゲビヤマくんである。

「ただ・・・なんだい」

「先生に一刻も早く100冊目の小説を書いていただきたいだけなんです」

「あ・・・ごまかしたね・・・ボクに冷たいかどうかの答えをはぐらかしたね」

なんだ・・・白川・・・ありのままの自分を愛してもらいたいタイプなのか。

愛すること 愛されること 演じてないで

きっと描く未来 止められない

・・・って言いたいのか。

しかし・・・ゲビヤマくんは損傷したカセットテープ型録音弐号機「玄武」の修理に忙しいのだった。

そこへ・・・「お目目が痛いよのテーマ」に乗って番頭の蝉岡蟷螂(松尾スズキ)がここまでの宿泊代56000円くらいの徴収にやってくる。

カードで清算しようとしたゲビヤマくんは・・・カードが取引停止になっていることを知る。

たちまち、女将の櫻井野薔薇(ふせえり)も加わって展開される闇金風借金取り立てコント。

「払うものさえ払ってもらえれば俺も鬼じゃないんだからさ」

「ボクは・・・現金30円しか持ってません」

それにしても・・・この事件の黒幕は・・・クレジット会社をコントロールできるほどの大物なのかとのけぞるお茶の間だった。

急場をしのぐために「鳴らない電話」でヘパイストス出版第二編集部編集長・風見川策志(岩松了)に救援を求めるゲビヤマくん。

そこへ配達人(望月ムサシ)がゲビヤマくん宛の小包を届けにくるのだった。

印鑑をとりだしたゲビヤマくんだったが・・・それはちびた金太郎飴だった。

いや・・・ベトベトするよね・・・それは。

夏なんだからさ。

配達されたのはカセットテープ型録音初号機「朱雀」だった。

一方、白川には永田支店長から「今すぐに三貴子の泉で黒曲亜理里とあってもらいたい」と連絡が入る。

即座に白川は青沼に変身するのだった。

ゲビヤマくんから「朱雀」を受け取った青沼は単身、タクシーで真夜中の「三貴子の泉」に向かうのだった。

30円しかないのは嘘だったのか・・・。

一人、とりのこされたゲビヤマくんは女将の運転する車で何処かへと向かう。

「三貴子の泉」でついに怪しいパワーヒラリスト黒曲亜理里(松重豊)と対面する青沼。

「あなたは・・・珍しい光をお持ちだ・・・紫とイエローの二色とは・・・」

「そうなんですか・・・はじめまして・・・といってもこちらはテレビで拝見していますが」

「テレビなどというものに本質はありませんよ」

「まあ、世の中に本質なんてものがあるのかどうかも疑問ですけどね」

「あなたにはお願いがあるのです」

「お願い・・・」

「そろそろ・・・手をひいてもらえませんか」

「それは・・・無理ですね」

「このままでは・・・もう一人が起き出してしまうかもしれない」

「もう一人って誰なんです」

「あなたは・・・もうご存じかもしれませんよ」

「・・・」

「あなたのせいで誰かが死ぬことになるかもしれない」

「・・・」

「では・・・今夜はこれで・・・」

闇に消える黒曲亜理里と永田支店長。

「なにひとつ・・・聞き出せなかった」

何故か、重苦しい気分になった青沼は・・・消ノ原食堂「モアイ」の店先でついに意識を失う。

青沼の知らない「モアイ」の川島芳香(町田マリー)と真壁真奈美の会話。

「石原って・・・本当は黒曲じゃなくて甘粕の子供なんじゃないの」

「そうよ・・・でも・・・甘粕の心は夷鈴子にしかなかった・・・」

「・・・」

「だから・・・私は誰と性的な関係を持っても・・・不倫した気にならかったのよ」

「・・・」

甘粕、石原、永田・・・真壁真奈美をとりまく満州的関係者に当然のように加わる東洋のマタハリ・川島だった。

「モアイ」で目を覚ました青沼は・・・奨められるままにそこで一夜を明かすのだった。

眠れぬ一夜を過ごしたゲビヤマくんは・・・朝帰りした青沼を不機嫌な態度で迎えるのだった。

「先生・・・もうやめませんか」

「ここまできてやめられるか・・・もう少しで真相にたどり着くのに」

「先生は真実には興味がないんじゃないんですか」

「・・・もういい・・・君は帰りたまえ・・・後は僕一人でやる」

「ああ・・・そうですか」

決裂する二人だった。

入れ替わりに到着する風見川編集長。

座布団を箱にして閉じこもったり、「時効警察」で熊本課長と又来警部補、「熱海の捜査官」で熱海南海荘主人で南熱海警察署員・桂東と兄妹だった輪廻転生により、「お目目が痛いよ」を女将とハモったりするのだった。

やりたい放題である。

ゲビヤマくんの要請でお金を届けに来た風見川だったが・・・ゲビヤマくんは夜の間に質屋を叩き起こし、パソコンなどを質草にして借金。宿代の清算を済ませていた。

その健気な奮闘に心打たれる一同だった。

そこへ、超スピードで東京へ戻ったゲビヤマくんから・・・急報が入る。

「大変です・・・100冊目が・・・すでに出版されています」

「なんだって・・・」

青沼やゲビヤマくんが知らない間に・・・「チューリップ殺人事件/白川次郎」が刊行されている。

誰もが・・・そんなバナナと叫ぶのだった。

「ゲビヤマくん・・・その本を持ってきてくれないか・・・」

頭を下げる青沼だった。

二人の仲直りを知って座布団ベッドで安眠する風見川・・・。

何しに来たんだよ・・・。

「この間はごめんなさいでした」と頭を下げるゲビヤマくん。

思わずその頭を撫でる青沼。

あなたを嫌いになるくらいなら 

このまま二人で夜になりたい

・・・なのか。おい・・・それは「楔/奥華子」(2004年)だよ。

ラインを越えるバスに乗った二人は三貴子の泉」の管理者の甘粕真一(眞島秀和)を訪ねるのだった。

100冊目の小説のために「チューリップ殺人事件」に関与した青沼/白川だったが・・・知らぬ間に100冊目は刊行されていた。

しかし・・・そんなことはさておき・・・ゲビヤマくんとラインを越えるのが楽しくなってしまったらしい。

青沼とゲビヤマくんは「朱雀」のマイクを甘粕に差し出す。

「黒曲と夷鈴子は・・・どんな関係だったんですか」

「特殊な関係でした」

「それは・・・どういう・・・」

「黒曲は・・・鈴子に特別な力があると信じていました」

「特別な力・・・」

「鈴子は予言者として地下鉄サリン事件などを予知していたのです」

「・・・」

「そして・・・黒曲はその力を独占するために・・・鈴子に特殊な関係を強いたのです」

「それは・・・ひどい」

「しかし・・・鈴子はなぜか・・・それを受け入れたのです」

「・・・つまり・・・犯された鈴子は肉体を征服されたことで心も支配されるという男のロマン的展開になったというのですか・・・」

「さあ・・・そこまでは・・・」

「一つお願いがあるのですが・・・」

「なんでしょう・・・」

「三貴子の泉の管理記録を見せてもらえますか・・・帳簿などがあるでしょう」

「構いませんが・・・」

資料を調査したコンビは・・・「川本写真館」の領収書の多さに気がつく。

そして・・・その間に挟まれた少女の面影を残す夷鈴子(工藤綾乃)の写真を発見。

甘粕の目を盗みコンビは写真をこっそりと拝借する。

「この川本写真館というのは・・・」

「さあ・・・直接、尋ねてみてはいかがですか・・・」

「まだ・・・存在していると」

「ええ・・・あなたもご存じの消防団の川本三郎の父親が経営者です」

「川本って・・・真壁水道設備の隣に住んでいる川本ですか」

「そうです・・・ピンク好きの奥さんのいる川本です」

二人はうらぶれた感じの川本写真館を訪ねるのだった。

応対する店主の川本穿石(森田ガンツ)・・・。

ゲビヤマくんと仲直りして調子を取り戻したらしい青沼は鋭く店主にインタビューする。

「三貴子の泉で・・・あなたは写真を撮影してますよね」

「出張撮影です」

「何を撮影したんです」

「それは・・・催しものとか」

「どんな・・・催しものですか」

「それは・・・いろいろと・・・」

「夷鈴子を撮影したんでしょう・・・」

「・・・御存じでしたか」

観念した店主は薄暗い店内からさらに薄暗い倉庫にコンビを案内するのだった。

「黒曲から二人の性交の場面を撮影するように命じられたのです」

「・・・」

コンビは様々な体位で交接する中年男の黒曲と美少女の淫靡な姿に目を奪われるのだった。

「先生・・・」

「どうした・・・ゲビヤマくん・・・」

二人でアダルトビデオを鑑賞する恋人気分になった青沼だった。

しかし・・・ゲビヤマが指し示した写真は・・・。

「チューリップ状に緊縛された夷鈴子」が映されていたのだった。

「黒いチューリップ」

「黒いチューリップですね」

鳴り響く「グノシエンヌ(頭を開いて神秘を知る)/エリック・サティ」・・・。

そして・・・青沼のつくし・・・。uuuか・・・。

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2013年12月 3日 (火)

ありがとなしでごぜえやす(綾瀬はるか)

この物語はテロリストの物語である。

山本/新島八重は・・・男装した女兵士だったが・・・実態は新政府軍に対する女テロリストだったと言える。

この物語はもちろん現代にシンクロする。

物語はもはや・・・現代に突入していると言えるだろう。

おおまかにいえば・・・戊辰戦争は第二次世界大戦の暗喩である。

江戸時代は戦前であり・・・明治時代は戦後なのである。

現代に生きる我々は・・・「八重の世界」の戦後がまもなく終わることを知っている。

そのことは・・・我々が実感できない・・・今がもはや戦前の時代であることを示しているのだ。

戊辰戦争は実質、西南戦争へと続く長期戦である。

西南戦争の終焉した明治十年から・・・日清戦争の始る明治二十七年まで・・・つかのまのほぼ平和を八重は生きる。

それは・・・我々が・・・そんなことは起りえないと半ば信じている新日中戦争の戦前に身を置くことに実に似ているのである。

戦争の世紀と言われた二十世紀を目前に控えた世紀末の時代である。

遅れて植民地支配に目覚めつつあった大陸の古き国家は・・・南の利権を西洋列強に奪われ、北にロシアという圧力を感じながら・・・東の半島の権益を死守しようとする。

そのために・・・当時、最強の軍艦を保持し・・・東の列島に圧力を加え始める。

漸く・・・目覚めたばかりの列島の帝國は・・・死に物狂いの抵抗を開始する。

この・・・驚くばかりの相似性。

戊辰/西南戦争と日清戦争の間のつかのまの平和と・・・第二次世界大戦と・・・来るべき新日中戦争の中間かもしれない現代は・・・シンクロしているのである。

もちろん・・・これは妄想であるから・・・一種の馬鹿馬鹿しさを伴っている。

なにしろ・・・現代の大陸国家は・・・まぎれもなく核保有国である。それに対して列島の国家はただ核の傘下にある超巨大国家の一同盟国に過ぎない。

両者が激突することは・・・まずありえない。

しかし・・・「八重の桜」が戦争の存在を否定すればするほど・・・平和の尊さを謳えば謳うほど・・・避けられぬ宿命が存在することの恐怖を感じる今日この頃なのだった。

テロリストだった八重こそが・・・実際には平和が束の間のものであることを切実に感じていたような気がしてならないのである。

で、『八重の桜・第48回』(NHK総合20131201PM8~)作・山本むつみ、演出・加藤拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は・・・戊辰戦争の戦後をたくましく生き抜いてきた戦争未亡人の山本佐久(81)と男装のテロリスト・新島八重(45)母娘描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。母はついに戦後が終るまで生き・・・娘は従軍看護婦として日清戦争に参戦する。まさに・・・それが現実であることが歴史の面白さでございますねえ。まあ・・・吹けば飛ぶような悪魔の妄想では右にしろ、左にしろ拡声器を使った騒音は安眠を妨害するテロ行為であることは間違いないわけですが・・・政治家は絶対それを言ってはいけないと思うのですな。街頭演説できなくなりますから。しかし・・・バカは死ななきゃなおらないんですねえ。まあ・・・しょうがないなあ。人間だもの・・・暮れも押し迫ってまいりました。

Yaeden048 明治22年(1989年)10月、大隈重信外務大臣が国粋主義者によって爆弾を投弾され右脚を切断。黒田内閣総辞職。11月、嘉仁親王が立太子礼を行う。東京湾汽船(東海汽船)設立。歌舞伎座開場。12月、第一次山縣内閣成立。明治23年(1890年)1月。新島襄、神奈川県大磯にて満46歳で病死。最後の言葉は「狼狽するなかれ、グッドバイ、また会わん」であったと言う。八重が看取ったのはフィクションである。看護にあたったのは後の京都大学病院の看護婦長となった北里ユウであった。2月、新島襄の臨終にたちあった弟子の一人、徳富蘇峰が国民新聞(東京新聞)を創刊。4月、小泉八雲来日。琵琶湖疏水開通。5月、東京音楽学校開校。6月、第1回貴族院議員選挙。元越前藩藩主・松平春嶽死去。7月、第1回衆議院議員総選挙。ゴッホが猟銃自殺。8月、米国で電気椅子による死刑の執行が始る。9月、板垣退助、大井憲太郎、中江兆民らによって立憲自由党が結成される。オスマン帝國軍艦が和歌山県沖で遭難。日本海軍のコルベット艦「比叡」と「金剛」が支援にあたり、生存者をイスタンブールに輸送。この航海には秋山真之が乗船していた。10月、刑事訴訟法公布。元老院廃止される。11月、帝國ホテル開業。第1回帝國議会開院式。凌雲閣(浅草十二階)開業。

八重は師走の東京に出ていた。

上京した新島襄からの「当方無事」の便りが途絶え、消息不明になっていたからである。

「先生は東海道線で桑山と川島の弟子二名をお伴に先週、京都に戻ったはずです」

赤坂榎坂の民友社で同志社女学校卒業生の湯浅初子が甘酒を温めながら言う。

初子は徳富蘇峰・蘆花兄弟の姉で、新島襄の故郷、安中の実業家の後妻となり、夫婦で民友社を支援している。

「猪一郎(蘇峰)が新橋駅までお見送りしました」

初子は最近、東京で流行っている長州訛りを軸とした国語を話している。

「だども、音沙汰がないのでごせえやす」

「桑山と川島は・・・」

「二人とも襄と一緒に行方知らずになったでがんす」

「あらまあ・・・先生はお身体の具合も芳しくないのに・・・」

その時、ベルの音が鳴った。

「なんだべ」

「テレホンです」

「ああ・・・電気通信機か・・・」

「国語では電話と称することに決まったようです」

「でんわ・・・」

「もうす・・・もうす・・・こちらは民友社でございます・・・はあ、勝先生・・・はあ、いらしております・・・かしこまりました」

初子は受話器を戻すと八重を振り返った。

「このテレホンは勝海舟先生のお宅と通じているのです。先生が奥様にお話があるそうです・・・」

「私に・・・」

八重は人力車で赤坂氷川にある勝屋敷に向かう。

勝は大男を一人連れ、門前で待っていた。せっかちな性格なのである。

「お、待ってたよ・・・八重さん」

「こちらの方は・・・」

「おう・・・この人は警視庁の元巡査で山田二朗吉ってえ、直心影流の使い手だ。榊原の弟子でおいらからみると孫弟子みてえなもんだよ」

「お初にお目にかかります」と二十代半ばほどの大男は上総訛りで挨拶した。

「とにかく・・・馬車で送るから新橋駅まで行こう。話は道すがらだ」

「・・・」

わけもわからず勝家の馬車に揺られる八重。

「何事でごぜえますか」

「おたくの亭主のことさ・・・」

「襄はどこにいるのです」

「それがどうもかどわかされたみてえなんだ」

「そんな・・・女子供ではあるまいし・・・」

「相手は・・・蝦夷から流れて来た闇のものらしい・・・」

「まさか・・・」

「相模の国の海岸で・・・変死体が発見されたのです」と山田が事情を説明する。

神奈川県大磯に滞在していたドイツ人医師・ベルツが検死したところ・・・死因は失血死であった。その死に不審を感じたベルツは剣術の師範であった榊原に電報を打ち、榊原の要請で勝が科学忍者隊を派遣したのである。ほどなく、死体は吸血鬼としての蘇生を開始し、急遽、焼却処分の運びとなった。その死体の身元が新島襄の弟子の一人、川島であることが判明したのだった。

「実は、山田は科学忍者なのさ」

「・・・」

「で・・・善後策を協議するために報告に戻って来たところ・・・八重さんが上京してきたってえんで、ご足労願ったわけよ・・・どうでえ・・・山田と大磯に同行してもらえねえか」

「こちらからお願いしてえくれえでがんす」

「向こうには山田の部下も残してあるが・・・八重さん・・・武器はあるのかい」

「持参してごぜえやす」

「さすがだねえ・・・おい、山田、この人を甘くみちゃいけねえぜ」

「拙者も免許皆伝の身ならば・・・奥方さまの並々ならぬ身のこなしに感じ入っております」

「そうかい・・・うん、お前さんもさすがだよ」

夕刻、二人は大磯の街にたどり着いていた。

そこに渡世人風の男が近づいてきた。

「おう・・・政吉か・・・」

「山田の旦那・・・新島様の宿が分りやした。宿場から外れた馬久田屋という和洋折衷のホテルですぜ」

「そうか・・・」

「それから・・・もう一人のお弟子の桑山の死体も出ました。こっちは・・・なりそこなってそのまま仏になったみてえでやす」

「むごいな・・・」

「吸血した相手をそのまま遺棄するところをみますと・・・かなりヤクザな闇のもののようでごぜえますな・・・」

「噂では・・・ホテルには西洋人の一行が宿泊しているようでございやす」

「噂とは・・・」

「なんでも・・・近在のものは・・・ホテルには近づかないそうです」

「もしかすると・・・この吸血鬼は蝦夷のものではなくて・・・新たに渡来したものかもしれませんな・・・」

「私もそう思うだなし。まるで人間を人間と思ってねえみたいだ・・・」

「一日に一人となると・・・」

「襄があぶねえ・・・急ぐべ」

八重は黄昏迫る街道を西に向かった。

(まったく・・・あの人は・・・こっだなところで道草食うから・・・ろくなことになんねえ・・・)

八重は襄の面影を胸に宿す。

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2013年12月 2日 (月)

沫嶋黎士はクラウドの海に漂う(木村拓哉)

「鉄腕アトム/手塚治虫」(1952年)の主人公には「7つの力」があると言われる。

長期にわたるアトムの発展によってその能力は変遷していくのだが、原作にはあるがアニメ化ではない能力がある。

それは「アトムの電子頭脳にはよい人とわるい人の見分けがつく」という能力だ。

おそらく・・・アニメ化というチームワークの作業によって・・・それが「常識」とそぐわないという判断が生まれるものと思われる。

現実では「善人と悪人の区別は難しい」と誰もが考えるのである。

そもそも「何が善で何が悪だかわからない」とか「善悪は相対的なもの」といったつまらないことを誰かが言い出すに違いない。

もちろん・・・原作者の手塚氏だって・・・そんなことは百も承知だと考える。

それでも「アトムの電子頭脳にはよい人とわるい人の見分けがつく」という能力を設定したのである。

そこに・・・作者自身の願いが感じられるのである。

それは妄想すれば「自分がよい人でありたい・・・そしてみんなにもよい人であってもらいたい」という祈りになる。

このドラマのヒロインはアンドロイドに「あなたにはよい人と悪い人の見わけがつくはず」と過大な要求をつきつける。

そして・・・安堂ロイドはその要求に・・・答えようと善処するのである。

世界は善悪を混沌に投げ込む。

実際の世の中には本当によい人は一人もいないし、悪人は満ちている。

そんな世界は嫌だと思う人がいない世界では・・・悪魔の仕事は少ないのである。

で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第8回』(TBSテレビ20131201PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・波多野貴文を見た。フィクションに架空の設定はつきものである。特に実用化されていないテクノロジーを導入する場合は・・・それは一つの「世界観」を示すものになっていく。最も安易なのは「これは魔法だ」という設定である。「魔法」と言われたら引き下がる他はない。その点、このドラマは丁寧に「時間移動」という超テクノロジーに至る設定を積み重ねている。問題があるとすればそういう丁寧さより「魔法だ」と言われた方が分り易いと考えるお茶の間の存在だろう。まあ・・・そういう人はこれが「現代の魔法なのだ」と納得することを推奨したい。さて・・・そうでない場合、まず、ついこの間まで科学は世界の最小構成物を「原子」だと説明していたことを想起してもらいたい。「原子」はそれ以上分解できないものだと言う話である。しかし、現在では「原子」は「素粒子」に分解されてしまう。このドラマはさらに超素粒子を設定しているわけである。その超素粒子には質量がないという設定である。つまり「思いには重さがない」ということで「重い思い」はないというダジャレ的な要素を含んでいる。それは第六感や、テレパシー、予知、胸騒ぎ、残留思念などの存在を実証する超素粒子なのである。あえて名付ければ「霊子」とも言うべきで・・・「黎士の発見した霊子」というダジャレ的要素に応じるのである。実際には現代のテクノロジーでは「霊子」の存在を観測するのは困難だと思われるが・・・その存在は有史以来・・・常に人類が予想してきたものなのである。つまり・・・それが実在するかしないかはフィフティーフィフティーなのだ。だから・・・「おもいの素粒子」はまったくの絵空事ではないということである。実は情報には質量がある。あるいは情報の存在には質量が必要であると言っても良い。しかし・・・「おもいの素粒子」仮説を導入すれば情報は本質的には質量がないと考えることが可能になるということだ。

そして・・・黎士は理論的にその存在を立証し、実際に「おもいの火」を燃やしたのである。

すべては・・・そこから始ったらしい。

再起動のための初期化により・・・ロイド(木村拓哉)のメモリには重大なダメージが発生した。

ロイドとしての「記憶」を喪失し、安堂麻陽(柴咲コウ)が出会った頃の「エーアールエックスセカンドサーティーン」に戻ってしまったようだった。

そのために・・・秘匿するべき秘密を知ってしまった葦母刑事(遠藤憲一)と星(桐谷健太)を殺害する必要に迫られるのである。

「お前たちを殺さなければならない」と拳銃のようなものを二人に向けるロイド。

「だめよ・・・」と麻陽は射線に割って入る。

「邪魔をするな・・・必要な処置である」

「やめて・・・この人たちを殺す必要はないの・・・二人はあなたを修理するために必死になってくれたのよ」

「私を・・・修理・・・」

「この人たちは・・・味方よ」

【殺人許可を申請する】

【申請中・・・ゼロクラウドの応答なし】

「それなら自分で判断する」

【自立判断モードに移行】

【殺人の必要性を承認】

「やはり・・・殺すしかない」

「だめよ・・・あなたは・・・好きで殺したりしない人だもの」

「私は人ではない・・・アンドロイドだ」

「あなたは・・・好きで人を殺したりしないアンドロイドだもの・・・」

「・・・」

「この人たちは大丈夫・・・あなたと私の味方なのよ・・・ロイド」

「私はロイドではない・・・私はエーアールエックスセカンドサーティーンだ」

「あなたは・・・ロイドだったのよ・・・今、それを忘れているだけ・・・」

「忘れて・・・」

「そうよ・・・あなたは記憶を失っているのよ」

【記憶領域を検索】

【部分的に損傷あり】

「判断を保留する・・・お前たちに秘密厳守を要求する・・・従わない場合は殺す」

「・・・」

「・・・」

「充電が必要だ」

「しなさい・・・充電しなさい」

アンドロイドは寝室で充電し・・・人間たちは安堵の息を漏らすのだった。

「どういうことなの・・・」

「戦闘で・・・頭がおかしくなったのか・・・」と葦母。

「初期化の際に・・・リセットされてしまったのかも・・・」と星。

「でも・・・ロイドは自分の記憶をとても大切にしていたわ・・・」

「どこかに・・・バックアップが残されているかもしれません」と星。

「どこかに・・・って」

「あるとすれば・・・黎士さんのコンピューターの可能性は高いです」

「黎士の・・・」

「僕に・・・捜索させてください」

「お願い・・・私は・・・もう一度、七瀬ちゃんに相談してみる」

「しかし・・・」

「修理には協力してもらえなかったけど・・・七瀬ちゃんとは話す必要があると思うの」

「わかりました」

人間たちは自分たちのベストを尽くそうとするのだった。

手持無沙汰になった葦母は・・・「ロイドの講義」についての録音を入手していたことを思い出した。

「聞いてみるか」

「聞かせてください」

二人は・・・ロイドの言葉に耳を傾けた。

「・・・人が全知全能である必要はない・・・人のおもいは未来を・・・そして過去をも変えることができる・・・そして・・・人は永遠の支配者にならないために・・・世代交代をする必要がある・・・そのことを忘れてはならない・・・」

「これは・・・黎士さんの・・・言葉です」

「これが・・・次元物理学なのか・・・」

「いえ・・・これはどちらかといえば哲学的なメッセージですね」

「俺には・・・さっぱりわからない」

「いや・・・わかるでしょう・・・あなたは・・・家族を守るために・・・未来を作ってきた人なんだから」

「単に・・・仕事をしてきただけだ」

「いいえ・・・あなたには黎士さんの言う・・・強いおもいがあるんですよ・・・」

「そんなことはない」

「じゃあ・・・なんで・・・ここでこんなことしてるんですか」

「・・・」

ロイドに「安堂麻陽へのアンタッチャブル」を通告された公安幹部・幹谷総一(鶴見辰吾)は「未来の技術供与」というニンジンに釣られて通告を無視し、名もなき大物政治家(井上真樹夫)との接触を図る。

事件が国内で起きていることは彼らにとって僥倖なのである。

取引次第では「未来の技術」が独占可能になるからだ。

ロイドの「通告」が威力を持たないのは「2113年のポリスクラウド」が対抗しているからである。

巨大な威力に挟まれて対処する能力は帝国の役人にとって必携なのである。

大物政治家は逡巡していた。

サンプルとして入手した「未来の技術」が素晴らしい可能性を秘めていることは大物政治家の傘下にある基礎科学研究所によって確認がとれている。

しかし、同時にきな臭い匂いも感じているのである。圧倒的な実力差のある相手と取引するためには保険が必要である。どんな権力も対応できない相手にはどんな約束も効力を持たない。彼らと取引するためには・・・その対抗相手を完全に消滅させてはならないのである。現代人が彼らと取引が可能なのは・・・現代人が必要とされている必要があるのだ。

「しかし・・・よくわからないな・・・なぜ・・・ポリスクラウドは実力でその・・・エーアールエックスセカンドサーティーンとやらを排除できないのかね」

「未来から過去への関与には一定の限界があるようです」

「ふむ・・・つまり、タイムパラドックスという奴かね」

「そうです・・・歴史に影響を与えないためのデリケートな対応が必要となるのです」

幹谷はポリス・クラウドの弐号機・メンデル(谷田歩)にレクチャーされた通りの論理を展開する。

「しかし、エーアールエックスセカンドサーティーンはポリスクラウドにとっての過去、現代人にとっての未来にあたる2066年に暴走を起こした・・・あるいは起こす・・・非常に危険な存在なのです」

「ということは・・・2066年までは無害ということになるのではないか」

「そこです・・・ポリスクラウドと違ってエーアールエックスセカンドサーティーンは歴史を変更することにデリケートに対応するとは限らないのです。現代において暴走し・・・たとえば要人暗殺などを実行する可能性があります。政財界の皆様の生命が危険にさらされていることになります。その危険性を排除するためにはある程度の・・・超法規的措置・・・強権発動をお許しいただきたいのです」

「その結果・・・痛くもない腹を探られるのは困るねえ・・・君」

「その点については公安組織が全力を挙げて隠蔽いたします」

「で・・・その結果、現代はどのような恩恵を受けるのかね」

「先生のお許しを頂き次第・・・件の研究施設に新しい実用化可能なサンプルが届けられることになっています」

「しかし・・・食べられないニンジンばかりをぶらさげられてもな」

「お言葉ですが・・・エーアールエックスセカンドサーティーンは非常に危険な機体です」と口をはさんだのは臨席していたメンデルだった。

「我々のようなポリスクラウドの警察機体と違い、品性にかけた軍事兵器であり、犯罪者です。その点は・・・警察官僚出身の政治家であるあなたにはご理解いただけると考えます」

「ふふふ・・・なかなか含蓄のある言葉ですなあ・・・」

「我々は・・・人間の理想に沿って設計されたアンドロイトなのです」

「なるほど・・・とりあえず・・・今回の件に関しては了承するように根回しさせてもらうよ」

「ありがとうございます」

大物政治家の了解をとりつけた幹谷は警視庁に戻る車内で同乗したメンデルに問う。

「これで・・・必要な処置は講ずることが可能ですが・・・これによってエーアールエックスセカンドサーティーンの排除は可能なのでしょうか」

「我々が・・・現在、ゼロクラウドの虜囚となっている我々のリーダー角城元を奪還することは歴史的事実なのです。それが成功することも確定しています。現在、ゼロクラウドは消滅し、活動停止中ですが・・・現在時間における敵と我々の勢力はこちらに有利とは言いかねる状態です。しかし、角城元を奪還できれば・・・我々は圧倒的な優位に立つことができるのです」

「なるほど・・・」

幹谷はメンデルの論理に整合性を認めたが・・・湧き上がる不安を抑えることはできなかった。

(あの・・・恐ろしいマシーン・・・あの魔性のパワー・・・こいつらに・・・あいつを本当に退治できるのか)

しかし・・・幹谷に選択の余地は最初からなかったのである。

官僚である以上・・・上層部の決定には従うしかないのだった。

東京帝國大学沫嶋研究室・・・。

身近で・・・未来と現代の激しい攻防戦が行われていることを全く関知しない呑気な助手たちは・・・「思い出」にひたっていた。

「どうです・・・懐かしいでしょう・・・昨日、押入れの整理をしていたら見つけちゃいました」

「斗夢が・・・こっちに留学した時の歓迎会の写真か・・・」と助手の倉田朝晴(池田大)が応じる。

「あれ・・・いつだっけ」と問う助手の栗山薫(山本美月)・・・。

「ボクが飛び級で向こうの大学を卒業した年だから・・・18歳ですよ・・・もう二年前になります」と20歳ですでに大学院を卒業している天才児・江戸川斗夢(ジェシー)が答える。

「うわあ・・・七瀬さんがピチピチですね」

「何よ・・・今の私がピチピチじゃないみたいな言い方は・・・」

「七瀬さんはその手のケアが超手抜きですからね・・・二年という歳月は壊滅的なダメージをもたらしてますよ」

「ぶっ殺すぞ」

笑顔で応じる七瀬(大島優子)だった。

「ボクは・・・最初・・・七瀬さんが・・・沫嶋教授と結婚されているのかと思いましたよ」

「えー・・・なにそれえ」と嬌声をあげる栗山。

しかし、七瀬の表情には一瞬、微妙な影が宿るのだった。

「だって・・・お二人はとってもラブリーな感じで・・・名字も一緒だし・・・兄妹っていうより・・・新婚さんみたいでした・・・」

「えー・・・うけるー」と栗山。

「まあ・・・先生はあれで・・・イケメンだからねえ。七瀬さんがお兄ちゃん萌えになっていてもおかしくないよな」

その時、チャイムが鳴って、助手たちは教室での雑務につくために研究室を出ようとし・・・麻陽の来訪に気がつくのだった。

「ああ・・・麻陽さん」

「もう少し早くおいでになればお茶を出せたのに・・・」

「すみません・・・私たちは雑用があるので・・・ごゆっくりなさってください」

助手たちが去っていくのを待って麻陽は七瀬に呼びかける。

「七瀬ちゃん・・・」

「お義姉さん・・・」

「楽しそうだったわね」

「昔の写真を見ていたんですよ」

「私も見ていいかしら」

「もちろんですよ・・・」

「まあ・・・黎士・・・若いわね」

「二年前ですよ・・・」

「面白い・・・何してるの」

「兄さんが酔っぱらって・・・逆立ちしようとしているところです」

「黎士がお酒を飲んだの?」

「ノンアルコール・ドリンクと間違えて」

「黎士が逆立ちなんてできるわけないのにねえ」

「・・・」

「ふふふ・・・おかしい」

しかし・・・七瀬の表情は一変していたのだった。

「なにがおかしいのよ・・・」

「え・・・」

七瀬は声のトーンまでが変わっていた。

「どうしたの・・・七瀬ちゃん」

「あんたがさ・・・あんたが・・・いけないんだよ」

「七瀬ちゃん」

「あんたが・・・私からお兄ちゃんを奪うからこんなことになったんだ」

「何を言っているの」

突然、思わぬ怪力で七瀬の両手は麻陽の首を絞めにかかるのだった。

不意をつかれて息がつまる麻陽。

(やめて・・・何をするの・・・七瀬ちゃん)

「あんたさえ・・・いなければ・・・お兄ちゃんは死なずにすんだ・・・だから・・・お前も死ね・・・死んでしまえ」

「・・・」

「やめて・・・レイコ・・・やめて」

一瞬、力が弱まり、麻陽は七瀬の手を振りほどく。

(レイコ?・・・なんのこと・・・?)

「うるさい・・・うるさい・・・うるさい・・・ひっ」

バランスを崩し転倒する七瀬。

「七瀬ちゃん・・・」

七瀬は昏倒していた。

(救急車・・・いや・・・ここは大学病院が・・・)

麻陽はインデックスを捜す・・・そこに・・・帝國大學付属病院の直通番号が記されている。

「もしもし・・・こちらは・・・沫嶋研究室なんですが・・・」

「どうしましたか・・・」

「あの・・・沫嶋七瀬さんの意識が・・・」

「しばらく、お待ちください」

麻陽はしばらく待った・・・。

まもなく・・・長身の白衣の男(嶋田久作)が看護師とともに現れた。

「あなたは・・・」

「私は・・・七瀬ちゃんの義理の姉です・・・失礼ですが」

「すると・・・あなたが黎士くんの結婚相手ですか・・・私は七瀬くんの主治医です」

「主治医・・・」

「七瀬くんは・・・心の病なのです」

「・・・え」

帝國大學病棟の病室に移された七瀬は鎮静剤を打たれ眠っている。

「心の病って・・・」

「まあ・・・あなたをお身内として・・・お話しますが・・・七瀬くんには解離性同一性障害の症状があります・・・」

「それって・・・いわゆるひとつの多重人格っていうやつですか」

「そうです・・・いわゆるひとつのそれです・・・非常に症例が少ないために・・・その病状についても研究段階にある特殊な精神疾患です・・・」

「そんな・・・」

「以前から・・・黎士くんには入院しての加療を奨めていたのですがね・・・七瀬くんの場合、レイコと名乗る凶暴な別人格が表出し、問題行動を起こすのです・・・しかし、黎士くんが事故にあって・・・問題が放置されていたのです。しかし・・・殺人を試みるとなると・・・強制措置が必要だと考えますが・・・もちろん、ご家族や本人の同意が必要ですが・・・」

「・・・少し、考えさせてください」

「わかりました・・・安静が必要なので・・・薬物により・・・しばらく睡眠をコントロールしています。何かあったら・・・お呼びください」

病室に残された麻陽は眠っている七瀬を暗澹とした気分で見つめるのだった。

(まさか・・・七瀬ちゃんが・・・そんな苦しみを抱えていたなんて・・・黎士、どうして相談してくれなかったの・・・)

「そうよ・・・この子は苦しんでいる・・・あなたもその苦しみを分かち合ったら・・・」

背後に謎の美少女(桐谷美玲)がウージングアウトした。

その腕が七瀬の首を絞めようとした刹那、ロイドがウージングアウトする。

謎の美少女は身を翻し、再び亜空間に突入する。

即座にその痕跡をたどり追跡を開始するロイド。

「ロイド・・・」

しかし、病室には麻陽と七瀬だけが取り残されている。

亜空間通路は高層建築の屋上へと開かれていた。

再び、ウージングアウトしたロイドを待ちかまえる白いセーラー服の少女。

「お前は・・・何者だ」

「あら・・・私の事、忘れちゃったの・・・お兄ちゃん」

「・・・」

「ふふふ・・・もちろん、初対面ですけどね」

【サーチ終了・・・未確認の機体であることを確認・・・ただし材質の一部に2013年の痕跡を確認】

「お前は・・・2013年の時空内で製造されたのか」

「正解・・・私はエーアールエックスセカンドサーティーンのデータを基にポリスクラウドのテクノロジーを応用して作られたエーアールエックスナインス・ザ・ラスト・クイーン・・・生まれたばかりの女子高生なの」

【存在自体が安堂麻陽に危機的状況をもたらす可能性を認知】

「ふふふ・・・ねえ、お兄ちゃん、私の亜空間利用能力を見て見て」

ロイドはクイーンの空間移動技術によってたちまち、見知らぬ公園に移動する。

「ほら・・・見なさいよ・・・人間たちの愚行を・・・」

道行く人々はモラルなき行動を展開する。

クイーンは問題行動の発生する時空間を予測し、集約してピックアップしているようだ。

若者は老人を粗暴に扱い、ゴミは分別されずに投げ捨てられ、喫煙者の火のついた煙草が幼児の顔の横を通過する。

「クズでしょう・・・ゴミでしょう・・・ダメでしょう。人間なんて・・・いらない存在じゃないの・・・ねえ、お兄ちゃん・・・私たち兄妹で・・・全人類殲滅しちゃいましょうよ」

「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」

「あらあら・・・禁じられているって・・・誰に・・・ゼロクラウドは活動停止しているし・・・お兄ちゃんのクライアントなんて完全に消滅しちゃってるわよ・・・もう・・・だれもお兄ちゃんの行動を禁じたりしてない」

【破壊の必要性を検出する】

【戦闘モードへの移行を判断】

ロイドはアスラシステムの制御を解除する注入式プログラムを作動させる。

「ふふふ・・・お兄ちゃんのアスラシステムは使用制限があるでしょう・・・もう、残り一回じゃないの・・・私はね・・・システム制御解除が無制限なのよ・・・アスラシステム解放します」

クイーンもまたアスラシステムを作動するのだった。

攻撃に転ずるロイド。しかし、その攻撃はクイーンの身体に届かないのだった。

虚しく空振りを繰り返すロイド。

「残念でした・・・お兄ちゃんの反応速度より・・・私の処理能力の方が全然上回っているのよ」

「・・・」

ロイドはクイーンの指先一本ではじき返されてしまうのだった。

「あっははは・・・面白い・・・お兄ちゃんが遊んでくれるなんて・・・なんて楽しいのかしら」

「・・・」

「だから・・・今日は・・・この辺で勘弁してあげるね」

「・・・」

「また・・・遊んでね」

クイーンは亜空間に突入する。

即座に追跡を開始するロイド。

しかし・・・ロイドはクイーンの存在を完全に見失うのだった。

同時にアスラシステムは作動限界時間を越え、自動停止する。

【何故だ・・・追跡可能だったはずだ】

【振動宇宙論あるいは多産宇宙論的な泡宇宙の存在を類推】

【未発達の多元宇宙の利用ということか】

【異なる物理定数の宇宙へ転移している可能性あり】

【それは・・・未知の領域ということか】

【参照データなし】

【敵対機体の逃亡の理由】

【不明】

【可能性を検討】

【アスラシステムの作動時間に差異がある可能性を検出】

【つまり・・・こちらの方が長い可能性か・・・気休めにもならないな】

【発言の意味が不明・・・非論理的】

ロイドは選択肢を失い・・・麻陽のいる病室に退却する。

「ロイド・・・」

「・・・」

「あれは・・・敵なの?」

「・・・わからない」

【充電残量が10パーセントを超過】

「充電が必要だ」

「・・・わかったわ・・・一度、帰宅しましょう・・・七瀬ちゃんは明朝まで目が覚めないそうだから」

「・・・」

安堂/沫嶋家では・・・男たちの作業が続いていた。

「どうでした・・・七瀬さんから何か聞き出せましたか」

「いえ・・・七瀬ちゃんは少し体調が・・・思わしくないの・・・」

男たちは即座にあの日を連想するのだった。

「そっちはどう・・・」

「ダメです・・・僕の改造されたパソコンと同じように2113年の未来技術が組み込まれていることは明らかですが・・・まったく作動させる糸口が見つかりません。なにしろ・・・システムそのものが理解を越えているので・・・」

「・・・」

「よし・・・今日は一度解散しよう・・・少なくてもロイドが復活したことで・・・一応の安全は確保できているようだし・・・」

麻陽は新たなる敵については伏せることを決断する。これ以上の負担はかけられないとの判断と思われる。

「僕はもう一度・・・自分の改造されたパソコンを検証してみます・・・未来技術について・・・何かヒントがあるはずだから・・・」

「そうね・・・そうしましょう・・・二人とも・・・ありがとう」

「どういたしまして・・・」

「人類の未来がかかってる・・・かどうかを別として・・・市民の安全を守るのは俺の仕事だ・・・」

麻陽は無邪気な男たちに微笑んだ。

男たちを送りだした麻陽は食事の用意をした。

ロイドと二人で囲む食卓はすでに麻陽に郷愁を感じさせる。

「ロイド・・・ごはんよ・・・」

「私には・・・必要ない」

「一緒に食べるとおいしいのよ・・・さあ、すわって」

「・・・」

ロイドは自分に味覚があることに気がついた。

その食事の成分はロイドの破壊されたメモリの一部とショート・サーキットするのだった。

「ロイド・・・どう・・・おいしい?」

【ロイド・・・】

『あなたの名前はロイドね・・・私が安堂だから・・・正式名称・安堂ロイドよ』

【我が名はロイド】

「ロイド・・・安堂麻陽が・・・くれた名前なのか」

「ロイド・・・思い出したの・・・」

「いや・・・何かが短絡して誤作動が発生した」

「・・・そう」

翌日、麻陽はエニグマ・エンジン・ソフト社に出社した。

その日は広報室が実施する「定例記者会見」の期日だった。

責任者が語るクラウドの新事業のスピーチを聞きながら麻陽は部下たちに囁く。

「すっかり・・・業務を二人に頼ってしまって・・・すまなかったわね」

「いいえ・・・麻陽さんのためなら・・・この身を惜しみませんよ・・・たとえ火の中水の中です」と追従する小松左京子(山口紗弥加)・・・。

その軽口を聞いていると・・・非日常的な日々が嘘のように感じてくる麻陽だった。しかし、星の指摘がその幻想を打ち破る。

「あの二人・・・見慣れない男です・・・新聞社のパスはもっていますが・・・同じ新聞社のいつもの記者も出席しています」

麻陽は一目でその男(川島潤哉・・・「お天気お姉さん」の八木刑事)の漂わす空気に違和感を感じるのだった。

「新聞記者には見えないわね・・・」

「おそらく・・・公安警察の刑事じゃないでしょうか」

「なるほど・・・」

「どうかしましたか・・・」

「いいえ・・・今夜は三人で焼き肉でも食べましょうか・・・」

麻陽は心から緊張緩和を欲していた。

焼き肉屋でテーブルを囲む三人・・・。

「わが社のクラウドコンピューティングもいよいよ一般に浸透してきましたね」

「しかし・・・世の中にはクラウドって何って人もいるからな」

「そうね・・・素晴らしいインターネットの世界とクラウドを区別できない人も多いしね・・・私なんかぶっちゃけ時々わからんわ」

「それが・・・IT企業の広報室につとめる人間の言うセリフかよ」

「まあ・・・インターネットを情報の空とすれば・・・クラウドは文字道理、雲よね。インターネットという開かれた社会を利用しつつ・・・利用者の秘密を守るサービスと言うべきか」

「しかし、実際はクラウドがインターネットそのものになる可能性がありますよね」

「そうね・・・曇りの日だってあるわけだから・・・」

「ところで・・・黎士さんのお加減はいかがですか」とあたりさわりのない仕事関係の話題に飽きた左京子は無自覚にタブーに触れるのだった。

「え・・・黎士さん」

「その・・・記憶の回復は・・・」

「いえ・・・」

「お前なあ・・・デリカシーのかけらもないのな」

「なんだとこら、先輩に向かってその口の利き方はないだろう」

「先輩らしい気配りをしてくださいよ」

麻陽はふと胸騒ぎを感じるのだった。記憶を失ったロイドを一人で自宅に残していることが・・・取り返しのつかないことのような気がしてきたのである。

(心配のしすぎか・・・いや・・・でも・・・)

麻陽は切迫感に襲われていた。

「あの・・・急に用事を思い出しちゃった・・・悪いけど・・・後は二人でお腹いっぱい食べてって・・・」

「え・・・」

あわてたように帰る麻陽を茫然と見送る左京子。

「私、地雷ふんじゃったかな・・・」

「大爆発だよ・・・」

「あんた・・・なんか知ってるの・・・」

「さあ・・・」

「くそ・・・飲むぞ・・・とことん飲むぞ」

「どういう結論なんだよ」

しかし・・・もはや・・・左京子の父である葦母刑事と死線をくぐりぬけた星にとって・・・左京子は単なる馬鹿な先輩社員ではなくなっていたのだ。

ついに酒乱と化した左京子を保護者気分で見守る星だった。

「わかるかな・・・私だって結婚したいのよ・・・でもね・・・ろくでなしの父親と・・・ろくでなしの父親のろくでなしなところをずっと言い続ける母親の娘なんだからね・・・結婚に幻想なんて持てないわけよ・・・あんたにわかる・・・聞いてんの」

「その話はもう今夜、五回聞きました」

「誤解じゃないのよ・・・本当にろくでなしなんだから・・・あのバカ親父は・・・」

「でも・・・親父さんは親父さんなりに・・・左京子先輩のこと・・・心配してるんじゃないのかなあ」

「バカこのっ・・・バカいってんじゃないわよ・・・そんなこと・・・あんたに言われなくてもわかってんのよ・・・わかってるからこそ・・・イライラすんのっ。あたしだってさ・・・ちっちゃい頃にはパパのお嫁さんになるーっとかってマジで言ってたんだからね・・・クリームソーダ、クリームソーダ頼んでよ」

「ここ・・・バーですから」

「バカ」

泥酔して・・・星の胸にもたれかかる左京子に・・・思わず可愛さを見出す星だった。

やせても枯れても山口紗弥加は個性派の本領を発揮するのである。

(マジか・・・俺・・・この酔っ払いと出来ちゃうのか)

不吉な予感に背筋が凍りつく星だった。

そんな爛れた関係をよそに・・・帰宅した麻陽はロイドが大人しく充電中であることに安堵するのだった。

「ロイド・・・ごめんね・・・一番大変で・・・一番苦しいのはあなただってこと・・・私、忘れてた・・・黎士を失ってどうしていいかわからなくなってた私が・・・なんとかやってこれたのは・・・あなたがいたからだって・・・今になってわかったよ・・・それなのに・・・私はロイドに頼ってばかりで・・・私のために傷ついて・・・記憶を失くしたのに・・・思い出せとか・・・わがままばかりで・・・ごめんなさい」

その時・・・黎士の部屋に置かれた角城ベアのタイム・スケジュールが起動のための設定時間を迎えるのだった。

死を予期したサプリによる支援機要請の期日が巡って来たのだった。

角城ベアは拡張機能を回復させ、黎士のコンピュータへのアクセス権を得たのである。

【カドシロハジメのアクセスを承認】

【サプリの要請による新機体の受領を指示する】

【必要データの転送は終了済み・・・5Dプリンタを起動しますか】

【同時に3D仮想体を要求する】

【承認します】

【警備システムに反応あり】

【作業を続行せよ】

黎士の部屋で一瞬浮かびあがった角城元(平岡祐太)の作業用フォログラムは即座に消滅する。

同時にロイドは覚醒モードに移行していた。

「ロイド・・・」

「人間がやってくる・・・非武装であることを確認・・・この部屋の鍵を持っている・・・今、解錠された」

「なんですって」

「はい・・・そのまま・・・」

「あなたは・・・」

会見場にいた男を発見する麻陽。

「はい・・・そのまま・・・私は警察のものです・・・この部屋が盗聴されているという通報がありました」

「通報って・・・」

「令状もあります・・・公務を妨害しなければ・・・問題ありません」

「何の話なの・・・」

「ありました・・・」

「あった?」

捜査員は角城ベアを示していた。

「あなたのものですか・・・」

「知りません」

「何者かがこれを部屋に置き、マンション全体の盗聴器の中継装置にしていた疑いがあります」

思わず・・・ロイドを見る麻陽。しかし、記憶を失ったロイドは無反応だった。

「回収して調査する必要があります・・・御同意いただけますか」

「・・・はい」

「よかった・・・調査の結果は・・・後日、ご報告いたします」

「・・・」

捜査員たちは去って行った。

麻陽は唖然とするのだった。

その時、黎士の研究室から機械音と青白い光が発するのを感じる二人。

【5Dプリンタ起動します】

【指示を出していない】

【指示は出ています】

「なに・・・あれ・・・」

「何かが・・・未来からやってくる」

「ロイド・・・」

「・・・」

【SRX-ラッキーセブンRのプリントアウトを完了する】

「あ・・・あなた」

しかし、サプリにそっくりな機体は出現すると同時に消失するのだった。

「今、確かにあの子が・・・」

「支援機体は亜空間通路に転出した・・・今は・・・待つしかない」

ポリスクラウドの二体のアンドロイド、ケプラ(伊達暁)とメンデルは公安警察が回収した角城元のA.I.を収納したぬいぐるみと対面していた。

「お帰りなさい・・・カドシロハジメ・・・この日を待っていました・・・これで・・・任務を実行できます。安堂麻陽暗殺の指示をお願いします」

「すぐに・・・予備機体の封印を解除します」

「それまでは3Dヴァーチャルモードでご辛抱ください」

「・・・待て」

ホログラム化したカドシロは作業を中断させる。

「どうしたのです・・・カドシロさん」

「私は・・・ボディを破壊され・・・待機中にいろいろと観察を行ってきたのだメンデルくん」

「観察を・・・」

「その結果・・・我々の任務に疑いを感じているのだメンデルくん」

「疑い・・・何をおっしゃっているのですかカドシロさん」

「安堂麻陽を殺害することが正しいこととは思えないのだメンデルくん」

「まさか・・・洗脳されてしまったのですかカドシロさん」

「任務の遂行を否定するのは重大な違反行為ですよカドシロさん」

「原子還元処理の刑に相当しますよカドシロさん」

「私は任務の遂行を拒否するつもりだ。メンデルくん、ケプラくん」

【こちら、メンデル。カドシロハジメの原子還元処理を要請する】

【こちら、ポリスクラウド・・・要請を承認する】

【施設内に異物を検知】

「なに・・・」

出現したのはやさぐれたサプリ(本田翼)だった。

「お前は・・・」

「困るな・・・これは私の私物なんだよ・・・」

サプリは角城ベアをとりあげていた。

【データベースに不正アクセスを確認】

【データ消失】

「なんだと」

二人は拳銃のようなものをとりだして発砲する。

しかし、やさぐれたサプリはすでに亜空間通路に退避していた。

弾丸のようなものはポリスクラウド21世紀分室の設備を一部破壊した。

「チッ」とケプラは舌うちした。

ロイドと同様に舌打ち機能搭載タイプだったらしい。

サプリは再び・・・安堂宅にウージングアウトする。

「やはり・・・あなたは・・・」

「私は・・・カドシロハジメの承認により実体化した支援機SRX-ラッキーセブンRデス」

「・・・」

「任務を遂行しマス」

「何・・・するの・・・」

「破損した記憶回路を完全に修復しマス」

即座に両手の作業ニードルを展開し、修理を実行するやさぐれたサプリ。

「修理完了」

「はやっ・・・」

「む・・・」

「ロイド・・・大丈夫」

不気味に振動するロイドは・・・回想の途中だった。

断片化されていた記憶が津波のように・・・ロイドの人工知能を駆け巡っている。

2013年に実体化し・・・安堂麻陽と巡り合い・・・かっての仲間と戦い・・・敵対アンドロイドを撃破し・・・安堂麻陽に名前をもらい・・・そしてすべてを忘れた日々が同時多発的に再生処理されるのだった。

「ロイド・・・」

「大丈夫だ・・・私はすでに平静を取り戻している・・・」

「ロイド・・・あなた・・・思い出したのね」

「すべてを・・・安堂麻陽・・・心配させて・・・すまなかった」

「ロイド・・・ロイド・・・ロイド」

思わず麻陽はロイドに抱きつくのだった。

その背中にそっと手をそえるロイド。

「本当に覚えているの・・・私の事」

「私が破壊されるまで忘れたりしない」

「嘘つき」

「私【オレ】に嘘をつく機能はない」

「すっかり・・・忘れていたくせに」

「物理的トラブルは問題外だ」

そして・・・ロイドはサプリの存在に気がつくのだった。

「サプリ・・・」

「サプリではありまセン・・・私はSRX-ラッキーセブンRデス」

「あなたも・・・記憶を失ってしまったの」とふりかえる麻陽。

「私の記憶装置は完璧デス。作動開始からおよそ13分の記憶はすべて記録されています」

「・・・」

「サプリ・・・私が必要とするのはただの支援機ではない」

ロイドはサプリを素早くあすなろ抱きすると人差し指ニードルをサプリの耳に挿入し貫通させるのだった。

「あん」

「ロイド・・・何するの・・・やめて」と思わず叫ぶ麻陽。

「心配ない・・・サプリからもらった感情システムと・・・それに伴うサプリの心をダウンロードするだけだ・・・受け取れ・・・サプリ・・・これはお前のものだ」

流れ込むロイドとサプリとの半世紀に渡る膨大な共有意識。

未来の戦場から・・・過去の現代へ・・・そして・・・しばしの別離と五十年目の愛の告白。

【I・・・LOVE・・・YOU】

たちまち・・・生き生きとした表情を取り戻すサプリだった。

やさぐれモード終了である。その表現力を称賛するお茶の間の声が聴こえてくるのだった。

「何・・・すんのよ。気安く触らないでちょうだい・・・ったく、余計なことしないでよね」

「それでこそ・・・俺にふさわしい支援機だ」

「せっかく・・・さっぱりした感じだったのに・・・自分が最高にかわいいことを思い出しちゃったじゃない・・・もう・・・まいるよね・・・・」

「・・・」

「この・・・ムッツリスケベ」

「殺すぞ」

「まあね・・・ありがとう」

「・・・」

「じゃ・・・私はこの辺で・・・ドロンしますので・・・後はお二人さんでしっぽりとなすってくださいね」

「・・・」

「おっと・・・忘れてた」

「何だ・・・」

「戦利品を御開帳するのであります」

「戦利品?」

【データのダウンロード終了】

【5Dプリンタを起動します】

【実体化の進行中・・・】

「今度は何・・・」

「私のぬいぐるみを取りかえすついでにポリスクラウドの予備パーツくすねてきましたあ」

「サプリ・・・」

【CR-XXⅢ-1Rの実体化を完了しました】

【人工知能のデータを転送中・・・完了しました】

角城元は実体化した。

「お前は・・・」

「はじめまして・・・私はシーアールダブルエックスサードワンアール・・・カドシロハジメと申します。安堂麻陽殺害計画のリーダーだったものです」

「え・・・じゃ敵なの・・・」

「以前はそうでした。しかし・・・私はあなたの姉妹機体・クイーンに一度、ころされてしまいました」

「姉妹って・・・ロイド、あなたに妹かいるの・・・」

「・・・」

「そして・・・サプリによって人工知能だけを捕獲されてしまったのです。修復された私はボディを持たない身となり・・・様々な強制的なコマンド【命令】を排除され・・・ただじっと世界を観察することになりました・・・そして・・・あなたたちの物語を感じたのです。それは美しい物語だった。だから・・・私はもはや・・・あなたたちに敵対する意志はありません。できれば仲間になりたいと考えています」

「つまり・・・味方ってこと・・・なんかさあ・・・手駒に突然、飛車とか角行が増えてましたって・・・感じ・・・」

「ポリスクラウドについてご質問があればお答えします」

「うわあ・・・お行儀のいい子なのね・・・じゃあ、教えてよ・・・なんで・・・あなたたちは私を殺そうとするの?」

「沫嶋黎士のおもいを抹消するためです」

「黎士のおもい・・・?」

「まず・・・沫嶋黎士の研究についてお話しましょう・・・沫嶋黎士は情報を構成する素粒子について研究していました」

「情報・・・素粒子?」

「そのための観測技術については・・・理解が困難だと思われます」

「まあ・・・そうね」

「彼は理論的には情報素粒子の存在を予見していましたが・・・転機は2011年3月11日に訪れました・・・」

「東日本大震災のこと・・・」

「そうです・・・未曽有の大災害で・・・大変な被害が発生しましたが・・・ある意味で人々の心は一つになったとも言えます」

「・・・」

「情報がある意味でパターン認識だということはご理解いただけるでしょうか」

「なんとか・・・」

「つまり・・・おもいの形がひとつの方向で増幅されたとお考えください」

「それは・・・絆とか・・・思いやりとか・・・祈りみたいなこと・・・」

「そうです・・・そして、そこに・・・情報が特殊な素粒子で構成されていることを予見し・・・それを観測しようとしていた科学者がいたのです」

「それが・・・黎士・・・」

「そうです・・・彼は存在しないものの存在を観測することに成功したのです」

「夢のような話だわ」

「彼はその理論を追認してもらうために世界に次元科学者たちにデータを公開しました。同時に彼は・・・情報素粒子という超素粒子・・・あるいは・・・おもいの素粒子を使った実用的な実験を行いました。2013年と2113年の超時空通信です。彼がおもいの素粒子で構築したタイムケーブルは見事にあなたから見れば現代と未来・・・我々から見れば現代と過去の通信を可能にしたのです・・・しかし・・・沫嶋黎士は・・・恐るべき洞察力によって・・・それが危険な行為であると認識したのではないかと思います」

「一体・・・黎士は未来の誰と話をしたの・・・」

「それは特定されていません・・・とにかく・・・黎士はタイムケーブルを遮断したのです」

「・・・」

「しかし、すでに一度開かれた回線によって・・・それが可能であることを確認したポリスクラウドは回線の維持に成功しました。しかし・・・黎士博士の作ったタイムケーブルのように巨大な情報量を通信できるものが再構築できないのです。ポリスクラウドは沫嶋黎士を殺害し、脳データ化することによってすべての情報を入手することを決めたのです」

「そんな・・・ひどい・・・それが人間のすることなの」

「2113年の人々はそれをとくに罪とは考えません。脳データがあれば・・・実際に殺されたわけではありませんから」

「殺されてるわよ・・・殺してるのよ・・・じゃ・・・私が感じている・・・黎士の存在って・・・その脳データにされてしまった黎士なの・・・」

「残念ですが・・・過去の人間によって否定された未来は・・・その否定を打ち消す必要に迫られるということです。最新情報では・・・沫嶋黎士の反逆性が問題となり・・・沫嶋黎士の脳データは破棄されたそうです・・・」

「なんてことなの・・・結局・・・何もかも・・・あんたたちは黎士から奪っているじゃないの・・・なんなのよ・・・あんたたち・・・なんなのよ・・・でも・・・おかしいわ・・・私の感じている黎士の存在感・・・これは・・・ただの希望的観測なの・・・」

「それについては・・・情報が不明です。話は前後しますが・・・本題である・・・安堂麻陽の殺害動機についてお話します。我々は・・・沫嶋黎士の脳データ化に成功し、100年後に転送しました。しかし・・・閉じられた沫嶋黎士のタイムケーブルは開きませんでした。そして・・・ポリスクラウドは一つの結論に達しました。それは・・・沫嶋黎士は特別なおもい素粒子を安堂麻陽という存在によって残留させている・・・というものなのです」

「どういうこと・・・」

「つまり・・・沫嶋黎士は・・・安堂麻陽におもい素粒子を集積しているのです」

「ちっともわからない・・・」

「たとえていえば・・・沫嶋黎士はあなた自身に憑依しているのです・・・」

「私に・・・」

「もうおわかりですね・・・あなたを殺せば・・・沫嶋黎士のおもいは拠り所を失って消える・・・というのがポリスクラウドの結論なのです」

「あんたたち・・・狂ってるわ・・・絶対おかしいよ」

「そうかもしれません。しかし・・・沫嶋黎士はそのすべてを予想していたと考えられます」

「何ですって・・・」

「彼は・・・殺され・・・脳データ化されることを予測し・・・殺されて未来に運ばれた後で・・・あなたを守る計画を実行したのです。それがなぜ・・・可能だったのかは我々にもまだ解明できていません。とにかく・・・沫嶋黎士はゼロクラウドという反社会的組織を構築し・・・戦闘アンドロイドや支援機・・・そしてそれを実体化するテンノロジーを過去に送りこんだ。そして・・・ここまではあなたの殺害の阻止にことごとく成功したのです」

「黎士・・・黎士・・・バカね・・・黎士・・・そんなになっても・・・私のことを・・・守ろうとするなんて」

「私は・・・沫嶋黎士の行為に・・・愛というものを感知しました・・・私がポリスクラウドに戻れなくなってしまったのは・・・その愛を壊すことが・・・誰にも許されないのではないかと結論したからです」

安堂麻陽は涙の海に溺れた。

「黎士・・・どこにいるの・・・黎士」

戦闘機体・ロイド・・・支援機体・サプリ・・・警察隊長機体・カドシロの三体のアンドロイドは「おもい」につつまれたヒトを敬虔な気持ちで見守るのだった。

その時・・・ロイドは・・・新たなる危険を察知した。

【新たなる未来からのデータ着信を感知した】

【ポリスクラウド周辺を探査】

【情報撹乱のため・・・検索不能】

ポリスクラウドでは残された二体のアンドロイドのアップグレード処理が行われていた。

ポリスクラウドも戦争の終結が近いことを予期していたのである。

未来と過去は・・・お互いの現在を守るためにまもなく激突するのだった。

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Ar008 ごっこガーデン。愛の殉教者お祭りセット。 アンナえええええええっ・・・ロイドに逢えたのはよかったけれど・・・本当に本当に黎士は死んじゃったの・・・黎士が未来から必ず帰ってくるって言ったロイドの言葉は嘘だったの・・・でもロイドには嘘をつく機能がないからやっぱり黎士は帰ってくるの・・・ぴょんと言うのも忘れるほどびっくらこいたのぴょ~ん。全身美白のクイーンロイドはなんだか・・・すごく強いしさ・・・ロイドが負けちゃったと思うとそれだけでもう涙目ぴょん・・・いざとなったらアンナロイドが助っ人するのだぴょ~ん。カエルロイドも戦闘用に改造してぴょんぴょん攻撃をぶちかましますから~。そしてハッピーエンドの彼方に流れ込みますから~。涙で落ちちゃったのでマスカラ塗りなおしますから~・・・ああ、笑いをとってどうするぴょんぴょんぴょんまこぐふふ・・・サプリの衣装が新調されたのでお古をゲットだぜっ・・・しかし・・・麻陽とロイドとサプリとカドシロ・・・四人そろうと・・・西遊記ができそう・・・三蔵法師は麻陽でいいとして・・・孫悟空の座を巡る争いは・・・うひょひょお・・・想像するだけでおしょろしいのmana思いの素粒子・・・ありそうでなさそうでやっぱりありそうで・・・それはアレかなーっ・・・中学生が好きな男の子が自分のことを見ている気がする乙女心みたいな・・・感じ?・・・つまり・・・霊感が強いっていうのは思いの素粒子敏感タイプってことなの・・・わからんだにゃあ~。とにかくロイドに背後から耳を貫通されたら・・・天国にいくことは確実だと思います。クイーンになってやってもらえれば満足だがや~・・・で、黎士はどうなのよ・・・もう・・・お星様になっちゃってるの・・・くういよいよ・・・年の瀬・・・毎日が殺す気かモードだねえ・・・歌番組とかさ・・・スペシャルドラマとかさ・・・ひぃぃぃぃぃだよねえシャブリ御意なのでありました・・・まわるまわるよハードディスクはまわるikasama4うわあ・・・気がつけば12月かあ・・・mari麻陽を守る人間とアンドロイドたち・・・でもロイドたちは・・・旧式らしい・・・心配です・・・・・・

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2013年12月 1日 (日)

LOVEにありがとうです(多部未華子)LOVEなんだもんね(亀梨和也)でもいざとなったらマネーだね(井ノ原快彦)

あらゆることをLOVEで押し切っていく清々しいこのドラマ。

今回はついにでもやっぱりmoneyだね・・・展開である。

実にシビアな展開だ。

特に・・・幸福というものの定義についてリアルなのである。

もちろん・・・それはファンタジーの世界の出来事なのだ。

だって、誰もが大スターにはなれない。IT企業の社長にもなれない。綺麗な顔に生まれるのだって難しい。

さらに言えば・・・他人の子供を黙って育ててくれる妻ともなかなか結婚できない。

絵を描いて暮らしたり、文章を書いて暮らしたりも難しい。

何より、いつも優しさに囲まれていたりはしない。

幽霊の声が聞こえたりはしない。

そのすべての夢がかなえられている世界なのである。

そして・・・生きているだけでありがたいという話なのである。

それなのに・・・凶悪な闇の力を圧倒するのはマネーなのだ。

ついでに・・・子供を捨てた母親の償いもマネーなのである。

そうだ・・・マネーがあれば親なんていらないという・・・ものすごい結論さえ感じさせるのである。

このケーキの中にダイヤモンドが入っていて・・・「何か文句ありますか」的なおかしみはものすごいな。

あるいは「パンがなければケーキを食べればいい」とギャグをかましながら革命分子をしたたかに粛清してギロチンされないもう一人の別のマリー・アントワネット的な・・・。

もちろん・・・そんな風にこの作品を解するのは誤読かもしれませんが・・・悪魔の舌は確かにLOVEの中に潜む毒を感じるのでございます。ただ一つ、基本男性作家ですからな・・・男が愛人を持つのは否定しないが・・・逆の例は・・・なんでございますね。その点はまあ・・・アレですな。

で、『東京バンドワゴン~下町大家族物語・第8回』(日本テレビ20131130PM9~)原作・小路幸也、脚本・大森美香、演出・狩山俊輔を見た。愛が足りないんだ・・・心に穴が開いているから愛がこぼれていくんだ・・・泥酔して醜態をさらす堀田青(亀梨和也)と文学的な女子大生の槙野すずみ(多部未華子)が出会って・・・どのくらいの時が流れたのか定かではないが・・・気がつけば26歳だった青が27歳になる誕生日に・・・二人は神前で婚礼の儀を行うのである。それは十二月三日なのだった。そしてその日はあれよあれよという間に目前に迫っているのだ。

その婚礼を皆が心待ちにしているわけだが・・・ただ一人、邪悪な心でその婚礼に不吉な影を投げつけるものがいる。

彼が・・・その闇をいつ心に棲みつかせたのか・・・定かではない。

しかし、人の心はたやすく闇にむしばまれるものだ。

携帯電話が買ってもらえないから・・・サッカー・チームのレギュラーになれなかったから・・・好きな人がふりむいてくれないから・・・トイレの個室で上からバケツの水がふってくるから・・・中国人より日本人の方が豊かそうに見えるから・・・テストの成績が下がったから・・・お弁当におかずが入っていなかったから・・・母親が男と逃げたから・・・自分が棄て子だったから・・・おやつがもらえなかったから・・・昨日はしてくれたことを今日はしてくれないから・・・サイフを落したから・・・自転車がパンクしたから・・・たいやきが売り切れだったから・・・とにかく人生はいたるところに陥穽がつきものなのである。

雑誌記者の木島(堀部圭亮)はロック・ミュージシャンとしての自分の才能の限界を感じた時に躓いてしまったのだろう。

優秀な雑誌記者でありながら・・・ひとつの挫折体験が・・・心に棘として突き刺さり・・・膿み爛れてしまったらしい。

それは・・・成功者である我南人(玉置浩二)への憎悪として暗がりを増していく。

我南人の不品行な愛の遍歴と・・・大女優・池沢百合枝(大地真央)との不適切な関係をどこかで知った時に・・・木島の邪悪な復讐心はついに牙を剥いてしまったのである。

そして・・・その結果、モラルに反して生み捨てられた青の存在が格好の生贄として木島の目に映りだしたのだ。

そんな不幸な生い立ちを持つものが幸せであってはいけない。

それでは自分があまりにもかわいそうだ。

木島はもはや・・・そのスキャンダルの虜になってしまったのだった。

木島は生きながら地獄のロックに葬られてしまったのである。

たえず・・・腹違いの弟の幸せを守って来た長女の藍子(ミムラ)と長男の紺(金子ノブアキ)は常に監視の目を光らせているために・・・たちまち、木島の存在をキャッチする。

奔放な父親のLOVEが常に無敵ではないと知っている二人は・・・気持ちの赴くままに池沢百合枝(大地真央)に逢いに行った我南人が盗撮されるのではないかという予感に震え、父親の後を追うのだった。

二人は・・・青の母親が池沢百合枝だと知っているからであった。

案の定、我南人は木島に追尾されていたが・・・一応、芸能人なので・・・密会は芸能事務所の美人の女社長(筒井真理子)を通じて・・・という最低限の用心はしていたのだった。

女社長の家で・・・我南人と・・・百合枝は・・・昔、LOVEだったムードを醸しだすのだった。

「久しぶりだね・・・」

「元気そうね」

「君も相変わらず素敵だね」

「・・・今回のことはごめんなさいね」

「あやまることはないよ」

「私・・・あの子の晴れ姿をそっと覗いてみるつもりだったの」

「うん」

「でも・・・その日は映画の撮影があって・・・社長が気をまわして・・・式の日程を少しずらしてもらおうとしたらしいの・・・ところが・・・生き違いがあって・・・まるで青の挙式を邪魔するような感じになってしまったのよ」

「それは・・・君のせいじゃない・・・下心がちょっとありすぎるスケベエな元神主がいけなかったんだよ」

「でも・・・結局・・・私のいけないわがままよ・・・自分で捨てた子供に・・・未練なんか・・・」

「君が生んだ子供だもの仕方ないさ・・・それに君は養育費や学費とか・・・青のためにおしみなく仕送りしてくれたじゃないか・・・」

「お金だけだけどね」

「お金はないよりあった方がLOVEだよ」

「とにかく・・・今回のことは・・・私が悪かったの・・・赦してね」

「君は何にも悪くないさ・・・それより・・・君はそれでいいの」

「うん・・・これ・・・結婚のお祝い・・・一千万円しかないけど」

「充分だよ」

しかし・・・我南人は昔の恋人で・・・最愛の息子の母親である百合枝のために女社長を呼んで相談を持ちかけるのだった。

「私がでしゃばったために・・・なんだかすみません」

「問題ないですよ・・・それより・・・」

我南人の提案に耳を傾ける二人。

社長に送りだされる我南人の前に・・・木島が姿を見せる。

「どうも・・・」

「偶然ですね」

「偶然なのかな」

「偶然ですとも・・・ここには・・・池沢百合枝さんも偶然いたのかもしれませんが・・・」

「君は・・・何を望んでいるんだい・・・」

「別に何も・・・ただの興味ですよ」

「そうかな・・・君はなんだか・・・淋しそうだよ」

「淋しい・・・私が・・・ご冗談でしょう」

「ここには・・・池沢はおりませんよ・・・それとも・・・警備員を呼んだ方がいいかしら」

「それには及びません・・・僕はただの通りすがりですから・・・」

去っていく木島を・・・紺と藍子も見つめるのだった。

「お前たち・・・」

「お父さん・・・気をつけてください」

「あの人は青のことを狙ってます」

「しかし・・・そんなに悪い奴にはみえないんだけどね」

「悪い奴が悪いことをするとは限らないんですよ」

「ふうん・・・紺、お前も詩人になったねえ」

「お父さん、ふざけている場合じゃありません」

「わかった・・・ごめんね」

こうして・・・何の問題もない若い二人・・・青とすずみの前途に・・・暗雲が立ち込めたのだった。

少なくとも・・・大女優の隠し子という醜聞が発覚すれば・・・穏やかな新婚生活は望めないのである。

青の保護者である父と兄と姉は思わしげな視線を交わすのだった。

家に戻った紺を問いつめる青。

「どうして・・・血相変えて出ていったの」

「いや・・・お父さんがちょっと若手のロッカーを酒の席で殴ってしまったらしくてさ・・・あの木島っていう記者が特ダネにしようとしているらしいんだ・・・」

「まったく・・・しょうがない親父だな」

紺は「秘密」をなんとか隠蔽したのだった。

弟には穏やかな気持ちで婚礼の日を迎えてほしかったのである。

しかし・・・木島はそれを許さないのだった。

青を執拗に追い始めるのである。

そして・・・わざと・・・青に盗み撮りしている姿を曝してみせるのだった。

たちまち・・・餌に食いつく青。

ちょっとした鬼ごっこの後にわざと捕まった木島は挑発を開始するのだった。

「幸せそうだねえ・・・」

「何のことですか・・・」

「君って・・・実の母親を知らないんだろう」

「・・・」

「俺は知ってるんだ。君はねえ・・・あの大女優の池沢百合枝の隠し子なんだぜ」

「え・・・」

「君のお父さんもひどい男だよねえ・・・妻子があるのに・・・池沢と浮気して・・・子供まで生ませているんだからさ・・・最低なやつだと思わないか」

「・・・なんだって」

気がつくと・・・頭に血が上った青は木島を殴りつけていたのだった。

そこにファンタジーの神に導かれて・・・堀田家一同に復讐目的の殺人を阻止された男・・・藤島直也(井ノ原快彦)が通りかかる。

激昂している青を宥める藤島。

「やめたまえ・・・」

「離して・・・僕はこいつをもっと殴りたい」

「暴力は駄目だよ」

「構いませんよ・・・これで・・・彼は・・・犯罪者の仲間入りだ」

「・・・」

「まあ・・・すぐには訴えませんけどね」

「君・・・血が出てるぞ」

「ふふふ・・・出血、結構なことですよ」

木島は嘯いて立ち去る。

「どうしたんだ・・・青くん・・・」

「僕は・・・僕は・・・」

湧き上がる感情を持て余す青だった。

堀田家では一同集まり、家族会議である。

事情を知らない勘一(平泉成)が問いただす。

「なんで・・・殴ったりしたんだ・・・」

「親父の悪口言われてかっとなって・・・」

「悪口なんて・・・自分でいつも言ってるのに・・・」と花陽(尾澤ルナ)・・・。

「自分で言うのと・・・他人に言われるのは違うから」

「まあ・・・そうよね」

木島が語ったことの核心については言葉を濁す青だった。

しかし・・・紺と藍子はそのことについて目を見かわす。

そして・・・父を見るのだった。

「・・・」

「とにかくだ・・・結婚前の大事な身体だ・・・不祥事なんか起こすなよ」

家長として申しつける勘一だった。

「もう・・・不祥事はたくさんなんだよ」

勘一は息子を睨むのだった。

すべては・・・我南人の不徳の致すところなのである。

しかし・・・我南人の不徳がなければ・・・そもそも青は存在しないのだった。

ここがLOVEのパワフルなところなのだ。

すずみは何事かを感じていた。

「私ね・・・青さんのお母さんに感謝してるの」

「・・・」

「育ててくださった秋実さんはもちろん・・・生んでくだったお母さんにも・・・だって・・・青さんを生んでくださらなかったら・・・私は青さんに出会えなかったし・・・結婚もできなかったんだもの」

「・・・」

すずみの心は青の心の影を照らすのだった。

それはLOVEなのだった。

しかし・・・木島の攻撃は続く。

青に電話をかけて・・・暴力沙汰をを公けにしたくないなら・・・独占インタビューをさせろと青を呼びだすのだった。

しかし・・・会見の場は・・・真奈美(片桐はいり)の小料理居酒屋「はる」なのだった。

ある意味、木島は・・・敵の牙城に飛び込んでいます。このまま闇の中に消される恐れもあるのに・・・。

「最初に謝罪させてください・・・暴力をふるったことは謝ります」

「そのことは別にいいのさ・・・知りたいのは君の心のうちなんだから・・・父親の浮気で・・・愛人の子供に生まれて・・・どう思うかとか・・・そのことに苦しんだとか・・・母親の池沢百合枝・・・君を捨てた大女優のことを・・・憎んでいるかとか・・・そういうことさ・・・」

「僕は・・・もうすぐ結婚します。結婚相手は・・・一般の人間です。その人を騒動に巻き込みたくないのです・・・僕の出生のことについて・・・これ以上関わらないでくれませんか」

「何言ってんだ・・・そんなことできないよ・・・これは俺の仕事なんだから・・・」

「・・・」

そこへ・・・我南人がやってくる。

「やあ・・・」

「・・・」

「ねえ・・・君がやりたいのはそういうことなのかな」

「仕事ですからね」

「君の書いたロックについての記事・・・よかったよ・・・LOVEがあるよね・・・でも君が今、やろうとしていることにはLOVEがないよね」

「何、寝言言ってるんですか」

「君の胸の中でLOVEが泣いているよ」

「はあ?」

「君はね・・・LOVEが欲しいんだね」

「・・・」

「LOVEが欲しかったら・・・まず君がLOVEを与えないとダメなんだね」

「馬鹿馬鹿しい」

「LOVEがLOVEを呼ぶんだよ」

「とにかく・・・この記事は・・・来週には・・・雑誌に乗り、店頭に並び、世間を騒がせますよ・・・覚悟しておいてください」

「それが・・・君の望みなの・・・」

「そうですよ」

「まあ・・・いいや・・・君も青の結婚式においでよ・・・結婚式だからね・・・きっとLOVEでいっぱいだよ」

「失礼します・・・」

残された父と子。

「青・・・俺を殴っていいよ」

「・・・」

「悪いのは・・・父さんだから」

「いいよ・・・そんこと言われたら殴れないよ」

「そうか」

そして・・・12月3日の朝は巡ってくるのだった。

例によってにぎやかな食卓。

そこで・・・我南人は爆弾宣言をするのだった。

「実は・・・今日は特別なゲストが来ます」

思わず、我南人を見る一同。

「あのさ・・・知り合いに頼まれて・・・結婚式を利用して・・・ちょっとした映画の1シーンを撮らせてあげることにしたんだね。女優さんは・・・池沢百合枝さんです」

「えええええ・・・」

「あの池沢百合枝」

「大女優じゃない」

思わず・・・父の顔を見る紺と藍子だった。

青は唇をかみしめるのだった。

「すまないけど・・・お願いするんだよね」

「まあ・・・いいか・・・なんてったって・・・あの池沢百合枝だもの」

納得する勘一だった。

こうして・・・結婚式の席に一瞬、座った百合枝が追手に気付いて立ち去るという場面が式の途中で行われることになったのである。

紋付き袴に着替えた青は・・・花嫁の到着を待つ。

そこへ・・・女社長に伴われ挨拶にやってきた百合枝。

「池沢百合枝でございます・・・本日は不躾な願いをお聞き届けいただきありがとうございます」

青の胸に去来する母親への様々な思い。

「これが・・・今日、結婚する・・・息子の青です」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ・・・」

母と子は一瞬・・・視線を交わすのだった。

震える心。

やがて・・・叔母の聡子(山下容莉枝)と花嫁のすずみが到着する。

その美しさに一同は息を飲むのだった。

三三九度の杯の背後で・・・短いシーンの撮影は滞りなく終了する。

式場をそっと振り返る百合枝だった。

息子の晴れ姿を愛おしそうに見つめる母親の姿を盗撮する木島。

そこへ・・・藤島がやってくる。

「僕が誰かご存じですよね」

「もちろん・・・現代の旗手ですものね」

「実は・・・今日からあなたの出版社の社長でもあるんですよ」

「え」

「あなたの会社、買収しちゃいました・・・」

「なんだって」

「僕にとってね・・・堀田家の皆さんは命の恩人なんです・・・その人たちを傷つけるような記事は発表させませんよ」

「・・・しかし、記事は他の出版社に売ることもできる」

「僕を敵にまわすつもりですか・・・」

「・・・」

「今度・・・ロックの専門誌を創刊することにしました・・・あなたを編集長にしたいと思っています」

「・・・」

「LOVEですよね」

「あの人の・・・差し金か・・・」

「LOVEですから」

「まったく・・・おそろしい人たちだな」

「LOVEなんです」

ラブ&マネーの猛攻の前についに降伏する木島だった。

忌まわしい心の闇は陥落したのである。

式は恙なく完了し・・・青とみすずは晴れて夫婦となった。

去りかけた百合枝を勘一が呼びとめる。

「もし・・・差支えなかったら記念写真の撮影におならびいただけませんか」

「けれど・・・御迷惑なのでは・・・」

「いや・・・あなたが御一緒してくださるのが何よりの記念ですから」

さりげなくチャンスを見逃さずにスケベエな祐円(ベンガル)は百合枝の肩に触れて彼女を誘導するのだった。

LOVEの軍門に下った木島は仕方なくカメラマンを担当するのである。

神社の境内ですべてを見守っていた勘一の妻・サチ(加賀まりこ)の幽霊は思わず呟く。

「よかったね・・・我南人・・・青、おめでとう」

「あ・・・今、大おばあちゃんの声が聞こえたよ」と叫ぶ研人(君野夢真)・・・。

「えええええええ」

「そんなあ・・・ゴーストママ捜査線みたいなこと言われても」

「上原とんぼくんかよっ」

「わはははは」

こうして、堀田家に青の妻すずみが加わったのだった。

「初夜」の前に盛り上がる宴会。

そっと席を立った我南人は「東京バンドワゴン」の軒先に立つ。

そこへ変装した百合枝がやってくる。

「ありがとう・・・あの子を立派に育ってくれて」

「青は・・・もともと立派なんだよ」

「そうね・・・生まれた時から・・・とってもいい子だったもの」

「名乗りをあげなくていいのかな」

「私には・・・もう充分よ」

「じゃ・・・これ・・・今日は誕生日だからね」

我南人は・・・青の誕生日に・・・百合枝に写真を送り続けていたのだった。

百合枝は・・・写真を抱いて・・・角を曲がる。

すると・・・青が現れる。

「親父・・・何してんだよ」

「ちょっとね・・・風にあたってた・・・」

「みんなが親父の歌を聞きたいってさ」

「そうか」

「あのさ・・・いつか・・・俺を生んでくれた人に逢うことがあったらさ・・・伝えてほしいことがあるんだ」

「何を・・・」

「俺を生んでくれてありがとうって・・・だってすずみと結婚できたのは・・・その人のおかげだからさ」

「そうだね・・・LOVEなんだね」

「また・・・それかよ」

塀の向こうで・・・その人は泣き崩れるのだった。

「自分の口で言ったらどうだ」

「そうだね・・・いつか・・・機会があったらね」

こらえきれずに歩み去る百合枝。

その時、我南人の体に異変が起きる。

激しくせき込んだ我南人は吐血するのだった。

「親父?」

例によって禍福は糾う縄のごとしなのである。

えーっ・・・二人も今夜はおあずけ・・・でございますか。

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Tbw008

ごっこガーデン。愛と青春の旅立ち神社セット。エリかで雅な神前結婚も素敵でスー。これこそが和をもって尊しとなすやまとなでしこの結婚の奥義なのでしゅね~。そしてどんな困難も大抵お金があれば解決なのですね。愛はお金では買えないっていうけど・・・それがファンタジーの極意ですね。愛はお金で表現しますからねえ。給料の三ヶ月分とか、子供の学費とか、親の棺桶代とか・・・じいや、お金で買えないものはなんですか?・・・なになに、それは私自身ですか・・・そうですねえ。エリはエリをお金で買えませんよねえ。まこちゃまは即金で買収できそうですけどね~・・・さあ、まこかま特製のたいのかまぼこを食べたら・・・いよいよ~・・・じゅるる~の新婚初夜ごっこをするのでスー!」まこがーん、青とすずみの幸せいっぱいの姿を見て、我南人はごちそう食べ過ぎなのでしゅか~、血反吐吐くまで飲んだのですか~。お酒はほどほどにしないとダメダジョー。LOVEだねのパワーで堀田家は藤島のマネーを手に入れていたとは~。愛は金、金は愛なのでしゅね~。そして誰かの秘密を知ってもできるだけ隠匿するのが堀田家家訓なのかな~。秘するが花とはこのことでしゅか~。まこもテストの赤点は秘して秘して秘しまくりましゅう~巫女さんなのでネコミミじゃなくてキタキツネミミでしゅよ~くうる~るるるる・・・誰もが抱く満たされない思い・・・それを埋めるのはやっぱりLOVEなんだよね・・・青ちゃんの心を温めるすずみの存在・・・LOVEは思いやりのやりとりなのだ!・・・まあ、でも、やっぱりね・・・浮気は絶対NGだぜ~みのむしるるる・・・シャブリいよいよ・・・殺す気かの季節到来なのでありました~ikasama4年賀状戦線異常ありなのですなmari泣かされそうなことを本人のいないところで言う・・・でもこっそり聞かれてる・・・お約束だけど泣かされますねえ・・・我南人は大丈夫でしょうか

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