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2013年12月10日 (火)

人道、公平、中立、独立、奉仕、単一、世界性でごぜえやす(綾瀬はるか)

たぐいまれなる理想の一つである赤十字社の精神・・・を掲げつつ、気がつけば・・・最終回直前である。

最愛の夫にふたたび先立たれ・・・子もなく・・・敬愛する兄も・・・姪も去った。

残された人生を八重は・・・人道的活動に捧げる。

日清戦争の開始は明治27年(1894年)、従軍看護婦となった八重は49歳。残された余命はまだ37年ある。

つまり・・・最終回は37年間を駆け抜けるのだった。

まあ・・・人生五十年だから・・・残りは余白みたいなものかもしれない。

高齢化時代に・・・この姿勢でいいのかどうかは別として・・・。

おいたちから始る鉄砲人生。その頂点となる戊辰戦争。明治における教育人生。その終焉を告げる日清戦争。

この半生ですでに・・・ボリューム満点だった・・・と言えるだろう。

もう少し、日清、日露の戦役に時間を割くべきだと言う考え方もあるが・・・まあ・・・それは「坂の上の雲」でもやったし・・・それをやるなら・・・主役はまた別の人間でよかったということだろう。

従軍と言っても日清戦争では広島の陸軍予備病院で・・・日露戦争では大阪の陸軍予備病院で看護にあたったに過ぎない。

女衛生兵として戦場を駆け巡ったわけではないのである。

それでは話が面白すぎるわけである。

第二次世界大戦との対比で言えば・・・日清戦争開戦の年は・・・戊辰戦争後27年なので・・・昭和40年代の後半ということになる。

1972年にはグアム島で横井庄一元伍長が発見されている。敗戦国であった日本は復興を遂げる一方で連合赤軍はあさま山荘事件を起こし、札幌冬季オリンピックが開催されるもテルアビブ空港では連合赤軍が乱射事件を起こす。日中国交は正常化し・・・パンダがやってくるのである。一方で戦勝国のアメリカはベトナム戦争を継続中なのである。

そういう混沌が会津にもあったはずだが・・・それはある意味スルーされたのだった。

いつの間にか会津藩士たちは・・・新政府にとりこまれ・・・そして・・・日本人化されていく。

それは・・・アメリカナイズされた日本人の姿と明らかに符号するのだった。

それから・・・八重が死ぬまでの37年間・・・戦後は2009年となる。八重にとっては昭和7年である。その五年後には日中戦争が始るのだ。

つまり・・・来年・・・2014年がその年になる。

歴史は繰り返すのである。願わくば愚かな行為が繰り返されないことを祈るばかりなのだった。

で、『八重の桜・第49回』(NHK総合20131208PM8~)作・山本むつみ、演出・一木正恵を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は八重を慕って半世紀、ついに貴族議員となった山川浩、そして八重を指導し鍛えた最愛の兄・山本覚馬の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。あの戦火をくぐりぬけ・・・身体障害者となっても雄々しく生きた男二人・・・いぶし銀の輝きが胸を射ぬきます。大河ドラマを彩ってくださったイラストの数々も胸を去来しますな。いよいよ・・・来週は最終回・・・無事の完走をお祈り申し上げます。しかし、あくまでマイペースでお願いいたします。

Yaeden049 明治23年(1890年)4月、未亡人・新島八重は日本赤十字社の正社員となる。明治24年(1891年)5月、シベリア鉄道起工。7月、東京音楽学校の卒業式で君が代斉唱。12月、エジソンがラジオの特許を取得。明治25年(1892年)6月、日本赤十字病院が新築され開院。12月、山本覚馬64歳で死去。翌年、山本久榮も23歳で病没。明治26年(1893年)5月、戦時大本営条例公布。海軍軍令部設置。7月御木本幸吉が真珠の養殖に成功する。12月、松平容保59歳で逝去。明治27年(1894年)1月、ロシア・フランス同盟成立。3月、第3回衆議院総選挙。日本に留学経験のある李氏朝鮮の政治家・金玉均が上海にて朝鮮王后で親清派の閔妃の刺客により暗殺される。朝鮮で農民が蜂起し東学党の乱となる。5月、絶対平和主義者・北村透谷自殺。乱徒が朝鮮全州を制圧。6月、明治東京地震発生。死者31人。日本陸軍およそ4000人、朝鮮半島に出兵。7月、日英通商航海条約調印。日本海軍が司令長官伊東祐亨中将による初の連合艦隊を編成。日本軍が朝鮮王宮を占領し興宣大院君を擁立。朝鮮半島の豊島沖で日本艦隊(「吉野」「秋津島」「浪速」)と清国艦隊(「済遠」「広乙」「操江」「高陞号」)が遭遇戦に突入。「広乙」と「高陞号」を撃沈。8月、日清両国が宣戦布告。日清戦争が開始される。

冬の大磯海岸は閑散として冷たい風が時折、頬を撫でる。

街道を外れたホテル馬久田屋に続く道は林に囲まれている。

八重と剣客の山田二朗吉、下忍の政吉は黄昏の光の中をかける。

「む・・・」と八重は異臭を嗅ぐ。

それは・・・最近は滅多に見なくなった野生の獣の匂いだった。

「お待ちくだされ」

八重に呼びとめられて二朗吉は足を停め、身構える。

勢いのまま、二、三歩前に出た政吉が「おおっ」と声を上げる。

前方にオオカミの群れが待ち伏せていた。

「狼に囲まれておりやす。お二人は前方の敵に集中しておくんなさいまし」

「心得た・・・」

二朗吉は仕込杖を抜き放ち、政吉は匕首を構える。

同時に前方のオオカミが前方の二人に襲いかかる。

八重は二丁拳銃を抜き放っていた。

「会津山本流鉄砲術奥義・・・乱れ射ち」

連射につぐ連射で銃声が重なり合う。

いつの間にか回りこんだのか・・・背後から・・・そして左右の林の中から・・・殺到してきたオオカミたちは空中で悲鳴を上げる。

十数頭のオオカミが一瞬にして死骸となっていた。

その間に二朗吉が二頭を斬り・・・政吉は手裏剣で一頭をしとめていた。

「なんと・・・見事なものだ・・・」

訛りのある英語で前方に立つ白人の男が声をあげた。

八重は二朗吉と政吉の間から前に出る。

「ドイツのお人か・・・」

「いかにも・・・さよう・・・かわいいウルフたちに餌を与えようと待っていれば・・・このような恐ろしい方々にまみえようとは・・・あなたたちは伝説のサムライというものか」

「陽のあるうちに姿を見せるとは・・・ヴァンパイヤとも思えぬが・・・狼を使うところを見れば人狼の一族か・・・」

「ほうほう・・・そんなことまでご存じとは・・・もしや・・・ホテルに御用の向きか・・・」

「その通りだ・・・道を開けよ」

「いやいや・・・そうはまいりませぬ。ホテルでは我らが主人・・・エリーゼお嬢様がまどろんでおいでなのです。異国の猿に眠りを妨げられては・・・私がお叱りを受けまする」

「八重様・・・この者・・・何ものです・・・」

英語でやりとりする二人にじれた二朗吉が口を挟む。

「魔性のものでございます。お二人は少しお下がりくださいませ」

「心得た・・・」

八重は拳銃を構えたまま・・・数歩前へ出る。

いつの間にか、八重の手にはリボルバーではなくて小型の自動拳銃が握られている。

「ふふふ・・・女だてらに拳銃使いとは・・・噂に聞く新大陸の西部からでも参られたかな」

「私は日本国人だ・・・」

「確かに・・・そなたは大した腕前だが・・・このアルベルト様には・・・銃など聞きませぬぞ」

「安心せよ・・・この銃には銀の弾丸がこめてある」

「ははは・・・人の分際で・・・狼男に勝てるつもりか・・・」

「もはや・・・勝っておる・・・」

「なに・・・」

「お前は・・・きっと猟師であろう・・・獣に匂いを悟られぬように風下に立っているのがその証拠だ」

「それがどうした・・・」

「つまり・・・お前は先ほどから私から吹く風に吹かれているということだ・・・もはや・・・人狼の活力は失われている・・・」

「何・・・お・・・これは・・・」

「私が風に乗せて・・・お前に銀の粉をふりまいていたのだ・・・この国の古から伝わる春花の術だ・・・お前は銀粉をたっぷりと吸いこみ・・・銀の毒に冒されているんだよ」

「うお・・・」

「かわいそうだが・・・先を急ぐのだ」

八重は銀の弾丸を連射で狼男・アルベルトに撃ち込んだ。

着弾の衝撃で吹き飛ばされた狼男は体内から化学反応による煙を吹き出し・・・絶命した。

「さあ・・・急ぎましょう」

「八重様・・・」と政吉が言う。

「ホテルの入り口近くにまだ・・・何かおりますぜ・・・」

「・・・」

すでに・・・周囲は夕闇に包まれている。

政吉は携帯しているカンテラの灯を灯した。

その灯に浮かびあがったのは・・・熊よりも大きな身体をもったモンスターだった。

「なんだ・・・あれは人間か・・・」と二朗吉が叫ぶ。

「おそらく・・・西洋の魔術による・・・人造人間でございましょう・・・」

「じんぞう・・・にんげん?」

「ヴァンパイアの魔力で・・・死者の身体をつなぎ合わせ・・・死霊として蘇生させたもののけでごぜえやす・・・」

「なんと・・・」

「しかし・・・恐れることはございませぬ・・・あれはただの・・・こけおどしです」

「・・・」

「死せるものよ・・・死者の国に・・・戻るがよい・・・」

八重は爆裂弾を投げた。

「が・・・」

反射的にそれを振り払おうとしたモンスターは炸裂した火薬によって五体を木端微塵に吹き飛ばされるのだった。

「これで・・・ホテルの中の敵は・・・用心してしまったでしょう・・・ここからは・・・私一人で参ります」

「しかし・・・」

「お二人は足手まといなのでございます」

「・・・」

その時・・・ホテルの窓からまばゆい光が漏れだした。

どこからか・・・ヴァイオリンの調べが聴こえてくる。

「どうやら・・・歓迎の準備ができたようでございます・・・お二人もご用心ください・・・灯を絶やしませぬよう・・・」

「八重様・・・お気をつけて・・・」

八重は頷くと・・・愛しの襄が囚われた・・・魔性の館に足を踏み入れるのだった。

関連するキッドのブログ→第48話のレビュー

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