沫嶋黎士はクラウドの海に漂う(木村拓哉)
「鉄腕アトム/手塚治虫」(1952年)の主人公には「7つの力」があると言われる。
長期にわたるアトムの発展によってその能力は変遷していくのだが、原作にはあるがアニメ化ではない能力がある。
それは「アトムの電子頭脳にはよい人とわるい人の見分けがつく」という能力だ。
おそらく・・・アニメ化というチームワークの作業によって・・・それが「常識」とそぐわないという判断が生まれるものと思われる。
現実では「善人と悪人の区別は難しい」と誰もが考えるのである。
そもそも「何が善で何が悪だかわからない」とか「善悪は相対的なもの」といったつまらないことを誰かが言い出すに違いない。
もちろん・・・原作者の手塚氏だって・・・そんなことは百も承知だと考える。
それでも「アトムの電子頭脳にはよい人とわるい人の見分けがつく」という能力を設定したのである。
そこに・・・作者自身の願いが感じられるのである。
それは妄想すれば「自分がよい人でありたい・・・そしてみんなにもよい人であってもらいたい」という祈りになる。
このドラマのヒロインはアンドロイドに「あなたにはよい人と悪い人の見わけがつくはず」と過大な要求をつきつける。
そして・・・安堂ロイドはその要求に・・・答えようと善処するのである。
世界は善悪を混沌に投げ込む。
実際の世の中には本当によい人は一人もいないし、悪人は満ちている。
そんな世界は嫌だと思う人がいない世界では・・・悪魔の仕事は少ないのである。
で、『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~・第8回』(TBSテレビ20131201PM9~)脚本・泉澤陽子、演出・波多野貴文を見た。フィクションに架空の設定はつきものである。特に実用化されていないテクノロジーを導入する場合は・・・それは一つの「世界観」を示すものになっていく。最も安易なのは「これは魔法だ」という設定である。「魔法」と言われたら引き下がる他はない。その点、このドラマは丁寧に「時間移動」という超テクノロジーに至る設定を積み重ねている。問題があるとすればそういう丁寧さより「魔法だ」と言われた方が分り易いと考えるお茶の間の存在だろう。まあ・・・そういう人はこれが「現代の魔法なのだ」と納得することを推奨したい。さて・・・そうでない場合、まず、ついこの間まで科学は世界の最小構成物を「原子」だと説明していたことを想起してもらいたい。「原子」はそれ以上分解できないものだと言う話である。しかし、現在では「原子」は「素粒子」に分解されてしまう。このドラマはさらに超素粒子を設定しているわけである。その超素粒子には質量がないという設定である。つまり「思いには重さがない」ということで「重い思い」はないというダジャレ的な要素を含んでいる。それは第六感や、テレパシー、予知、胸騒ぎ、残留思念などの存在を実証する超素粒子なのである。あえて名付ければ「霊子」とも言うべきで・・・「黎士の発見した霊子」というダジャレ的要素に応じるのである。実際には現代のテクノロジーでは「霊子」の存在を観測するのは困難だと思われるが・・・その存在は有史以来・・・常に人類が予想してきたものなのである。つまり・・・それが実在するかしないかはフィフティーフィフティーなのだ。だから・・・「おもいの素粒子」はまったくの絵空事ではないということである。実は情報には質量がある。あるいは情報の存在には質量が必要であると言っても良い。しかし・・・「おもいの素粒子」仮説を導入すれば情報は本質的には質量がないと考えることが可能になるということだ。
そして・・・黎士は理論的にその存在を立証し、実際に「おもいの火」を燃やしたのである。
すべては・・・そこから始ったらしい。
再起動のための初期化により・・・ロイド(木村拓哉)のメモリには重大なダメージが発生した。
ロイドとしての「記憶」を喪失し、安堂麻陽(柴咲コウ)が出会った頃の「エーアールエックスセカンドサーティーン」に戻ってしまったようだった。
そのために・・・秘匿するべき秘密を知ってしまった葦母刑事(遠藤憲一)と星(桐谷健太)を殺害する必要に迫られるのである。
「お前たちを殺さなければならない」と拳銃のようなものを二人に向けるロイド。
「だめよ・・・」と麻陽は射線に割って入る。
「邪魔をするな・・・必要な処置である」
「やめて・・・この人たちを殺す必要はないの・・・二人はあなたを修理するために必死になってくれたのよ」
「私を・・・修理・・・」
「この人たちは・・・味方よ」
【殺人許可を申請する】
【申請中・・・ゼロクラウドの応答なし】
「それなら自分で判断する」
【自立判断モードに移行】
【殺人の必要性を承認】
「やはり・・・殺すしかない」
「だめよ・・・あなたは・・・好きで殺したりしない人だもの」
「私は人ではない・・・アンドロイドだ」
「あなたは・・・好きで人を殺したりしないアンドロイドだもの・・・」
「・・・」
「この人たちは大丈夫・・・あなたと私の味方なのよ・・・ロイド」
「私はロイドではない・・・私はエーアールエックスセカンドサーティーンだ」
「あなたは・・・ロイドだったのよ・・・今、それを忘れているだけ・・・」
「忘れて・・・」
「そうよ・・・あなたは記憶を失っているのよ」
【記憶領域を検索】
【部分的に損傷あり】
「判断を保留する・・・お前たちに秘密厳守を要求する・・・従わない場合は殺す」
「・・・」
「・・・」
「充電が必要だ」
「しなさい・・・充電しなさい」
アンドロイドは寝室で充電し・・・人間たちは安堵の息を漏らすのだった。
「どういうことなの・・・」
「戦闘で・・・頭がおかしくなったのか・・・」と葦母。
「初期化の際に・・・リセットされてしまったのかも・・・」と星。
「でも・・・ロイドは自分の記憶をとても大切にしていたわ・・・」
「どこかに・・・バックアップが残されているかもしれません」と星。
「どこかに・・・って」
「あるとすれば・・・黎士さんのコンピューターの可能性は高いです」
「黎士の・・・」
「僕に・・・捜索させてください」
「お願い・・・私は・・・もう一度、七瀬ちゃんに相談してみる」
「しかし・・・」
「修理には協力してもらえなかったけど・・・七瀬ちゃんとは話す必要があると思うの」
「わかりました」
人間たちは自分たちのベストを尽くそうとするのだった。
手持無沙汰になった葦母は・・・「ロイドの講義」についての録音を入手していたことを思い出した。
「聞いてみるか」
「聞かせてください」
二人は・・・ロイドの言葉に耳を傾けた。
「・・・人が全知全能である必要はない・・・人のおもいは未来を・・・そして過去をも変えることができる・・・そして・・・人は永遠の支配者にならないために・・・世代交代をする必要がある・・・そのことを忘れてはならない・・・」
「これは・・・黎士さんの・・・言葉です」
「これが・・・次元物理学なのか・・・」
「いえ・・・これはどちらかといえば哲学的なメッセージですね」
「俺には・・・さっぱりわからない」
「いや・・・わかるでしょう・・・あなたは・・・家族を守るために・・・未来を作ってきた人なんだから」
「単に・・・仕事をしてきただけだ」
「いいえ・・・あなたには黎士さんの言う・・・強いおもいがあるんですよ・・・」
「そんなことはない」
「じゃあ・・・なんで・・・ここでこんなことしてるんですか」
「・・・」
ロイドに「安堂麻陽へのアンタッチャブル」を通告された公安幹部・幹谷総一(鶴見辰吾)は「未来の技術供与」というニンジンに釣られて通告を無視し、名もなき大物政治家(井上真樹夫)との接触を図る。
事件が国内で起きていることは彼らにとって僥倖なのである。
取引次第では「未来の技術」が独占可能になるからだ。
ロイドの「通告」が威力を持たないのは「2113年のポリスクラウド」が対抗しているからである。
巨大な威力に挟まれて対処する能力は帝国の役人にとって必携なのである。
大物政治家は逡巡していた。
サンプルとして入手した「未来の技術」が素晴らしい可能性を秘めていることは大物政治家の傘下にある基礎科学研究所によって確認がとれている。
しかし、同時にきな臭い匂いも感じているのである。圧倒的な実力差のある相手と取引するためには保険が必要である。どんな権力も対応できない相手にはどんな約束も効力を持たない。彼らと取引するためには・・・その対抗相手を完全に消滅させてはならないのである。現代人が彼らと取引が可能なのは・・・現代人が必要とされている必要があるのだ。
「しかし・・・よくわからないな・・・なぜ・・・ポリスクラウドは実力でその・・・エーアールエックスセカンドサーティーンとやらを排除できないのかね」
「未来から過去への関与には一定の限界があるようです」
「ふむ・・・つまり、タイムパラドックスという奴かね」
「そうです・・・歴史に影響を与えないためのデリケートな対応が必要となるのです」
幹谷はポリス・クラウドの弐号機・メンデル(谷田歩)にレクチャーされた通りの論理を展開する。
「しかし、エーアールエックスセカンドサーティーンはポリスクラウドにとっての過去、現代人にとっての未来にあたる2066年に暴走を起こした・・・あるいは起こす・・・非常に危険な存在なのです」
「ということは・・・2066年までは無害ということになるのではないか」
「そこです・・・ポリスクラウドと違ってエーアールエックスセカンドサーティーンは歴史を変更することにデリケートに対応するとは限らないのです。現代において暴走し・・・たとえば要人暗殺などを実行する可能性があります。政財界の皆様の生命が危険にさらされていることになります。その危険性を排除するためにはある程度の・・・超法規的措置・・・強権発動をお許しいただきたいのです」
「その結果・・・痛くもない腹を探られるのは困るねえ・・・君」
「その点については公安組織が全力を挙げて隠蔽いたします」
「で・・・その結果、現代はどのような恩恵を受けるのかね」
「先生のお許しを頂き次第・・・件の研究施設に新しい実用化可能なサンプルが届けられることになっています」
「しかし・・・食べられないニンジンばかりをぶらさげられてもな」
「お言葉ですが・・・エーアールエックスセカンドサーティーンは非常に危険な機体です」と口をはさんだのは臨席していたメンデルだった。
「我々のようなポリスクラウドの警察機体と違い、品性にかけた軍事兵器であり、犯罪者です。その点は・・・警察官僚出身の政治家であるあなたにはご理解いただけると考えます」
「ふふふ・・・なかなか含蓄のある言葉ですなあ・・・」
「我々は・・・人間の理想に沿って設計されたアンドロイトなのです」
「なるほど・・・とりあえず・・・今回の件に関しては了承するように根回しさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
大物政治家の了解をとりつけた幹谷は警視庁に戻る車内で同乗したメンデルに問う。
「これで・・・必要な処置は講ずることが可能ですが・・・これによってエーアールエックスセカンドサーティーンの排除は可能なのでしょうか」
「我々が・・・現在、ゼロクラウドの虜囚となっている我々のリーダー角城元を奪還することは歴史的事実なのです。それが成功することも確定しています。現在、ゼロクラウドは消滅し、活動停止中ですが・・・現在時間における敵と我々の勢力はこちらに有利とは言いかねる状態です。しかし、角城元を奪還できれば・・・我々は圧倒的な優位に立つことができるのです」
「なるほど・・・」
幹谷はメンデルの論理に整合性を認めたが・・・湧き上がる不安を抑えることはできなかった。
(あの・・・恐ろしいマシーン・・・あの魔性のパワー・・・こいつらに・・・あいつを本当に退治できるのか)
しかし・・・幹谷に選択の余地は最初からなかったのである。
官僚である以上・・・上層部の決定には従うしかないのだった。
東京帝國大学沫嶋研究室・・・。
身近で・・・未来と現代の激しい攻防戦が行われていることを全く関知しない呑気な助手たちは・・・「思い出」にひたっていた。
「どうです・・・懐かしいでしょう・・・昨日、押入れの整理をしていたら見つけちゃいました」
「斗夢が・・・こっちに留学した時の歓迎会の写真か・・・」と助手の倉田朝晴(池田大)が応じる。
「あれ・・・いつだっけ」と問う助手の栗山薫(山本美月)・・・。
「ボクが飛び級で向こうの大学を卒業した年だから・・・18歳ですよ・・・もう二年前になります」と20歳ですでに大学院を卒業している天才児・江戸川斗夢(ジェシー)が答える。
「うわあ・・・七瀬さんがピチピチですね」
「何よ・・・今の私がピチピチじゃないみたいな言い方は・・・」
「七瀬さんはその手のケアが超手抜きですからね・・・二年という歳月は壊滅的なダメージをもたらしてますよ」
「ぶっ殺すぞ」
笑顔で応じる七瀬(大島優子)だった。
「ボクは・・・最初・・・七瀬さんが・・・沫嶋教授と結婚されているのかと思いましたよ」
「えー・・・なにそれえ」と嬌声をあげる栗山。
しかし、七瀬の表情には一瞬、微妙な影が宿るのだった。
「だって・・・お二人はとってもラブリーな感じで・・・名字も一緒だし・・・兄妹っていうより・・・新婚さんみたいでした・・・」
「えー・・・うけるー」と栗山。
「まあ・・・先生はあれで・・・イケメンだからねえ。七瀬さんがお兄ちゃん萌えになっていてもおかしくないよな」
その時、チャイムが鳴って、助手たちは教室での雑務につくために研究室を出ようとし・・・麻陽の来訪に気がつくのだった。
「ああ・・・麻陽さん」
「もう少し早くおいでになればお茶を出せたのに・・・」
「すみません・・・私たちは雑用があるので・・・ごゆっくりなさってください」
助手たちが去っていくのを待って麻陽は七瀬に呼びかける。
「七瀬ちゃん・・・」
「お義姉さん・・・」
「楽しそうだったわね」
「昔の写真を見ていたんですよ」
「私も見ていいかしら」
「もちろんですよ・・・」
「まあ・・・黎士・・・若いわね」
「二年前ですよ・・・」
「面白い・・・何してるの」
「兄さんが酔っぱらって・・・逆立ちしようとしているところです」
「黎士がお酒を飲んだの?」
「ノンアルコール・ドリンクと間違えて」
「黎士が逆立ちなんてできるわけないのにねえ」
「・・・」
「ふふふ・・・おかしい」
しかし・・・七瀬の表情は一変していたのだった。
「なにがおかしいのよ・・・」
「え・・・」
七瀬は声のトーンまでが変わっていた。
「どうしたの・・・七瀬ちゃん」
「あんたがさ・・・あんたが・・・いけないんだよ」
「七瀬ちゃん」
「あんたが・・・私からお兄ちゃんを奪うからこんなことになったんだ」
「何を言っているの」
突然、思わぬ怪力で七瀬の両手は麻陽の首を絞めにかかるのだった。
不意をつかれて息がつまる麻陽。
(やめて・・・何をするの・・・七瀬ちゃん)
「あんたさえ・・・いなければ・・・お兄ちゃんは死なずにすんだ・・・だから・・・お前も死ね・・・死んでしまえ」
「・・・」
「やめて・・・レイコ・・・やめて」
一瞬、力が弱まり、麻陽は七瀬の手を振りほどく。
(レイコ?・・・なんのこと・・・?)
「うるさい・・・うるさい・・・うるさい・・・ひっ」
バランスを崩し転倒する七瀬。
「七瀬ちゃん・・・」
七瀬は昏倒していた。
(救急車・・・いや・・・ここは大学病院が・・・)
麻陽はインデックスを捜す・・・そこに・・・帝國大學付属病院の直通番号が記されている。
「もしもし・・・こちらは・・・沫嶋研究室なんですが・・・」
「どうしましたか・・・」
「あの・・・沫嶋七瀬さんの意識が・・・」
「しばらく、お待ちください」
麻陽はしばらく待った・・・。
まもなく・・・長身の白衣の男(嶋田久作)が看護師とともに現れた。
「あなたは・・・」
「私は・・・七瀬ちゃんの義理の姉です・・・失礼ですが」
「すると・・・あなたが黎士くんの結婚相手ですか・・・私は七瀬くんの主治医です」
「主治医・・・」
「七瀬くんは・・・心の病なのです」
「・・・え」
帝國大學病棟の病室に移された七瀬は鎮静剤を打たれ眠っている。
「心の病って・・・」
「まあ・・・あなたをお身内として・・・お話しますが・・・七瀬くんには解離性同一性障害の症状があります・・・」
「それって・・・いわゆるひとつの多重人格っていうやつですか」
「そうです・・・いわゆるひとつのそれです・・・非常に症例が少ないために・・・その病状についても研究段階にある特殊な精神疾患です・・・」
「そんな・・・」
「以前から・・・黎士くんには入院しての加療を奨めていたのですがね・・・七瀬くんの場合、レイコと名乗る凶暴な別人格が表出し、問題行動を起こすのです・・・しかし、黎士くんが事故にあって・・・問題が放置されていたのです。しかし・・・殺人を試みるとなると・・・強制措置が必要だと考えますが・・・もちろん、ご家族や本人の同意が必要ですが・・・」
「・・・少し、考えさせてください」
「わかりました・・・安静が必要なので・・・薬物により・・・しばらく睡眠をコントロールしています。何かあったら・・・お呼びください」
病室に残された麻陽は眠っている七瀬を暗澹とした気分で見つめるのだった。
(まさか・・・七瀬ちゃんが・・・そんな苦しみを抱えていたなんて・・・黎士、どうして相談してくれなかったの・・・)
「そうよ・・・この子は苦しんでいる・・・あなたもその苦しみを分かち合ったら・・・」
背後に謎の美少女(桐谷美玲)がウージングアウトした。
その腕が七瀬の首を絞めようとした刹那、ロイドがウージングアウトする。
謎の美少女は身を翻し、再び亜空間に突入する。
即座にその痕跡をたどり追跡を開始するロイド。
「ロイド・・・」
しかし、病室には麻陽と七瀬だけが取り残されている。
亜空間通路は高層建築の屋上へと開かれていた。
再び、ウージングアウトしたロイドを待ちかまえる白いセーラー服の少女。
「お前は・・・何者だ」
「あら・・・私の事、忘れちゃったの・・・お兄ちゃん」
「・・・」
「ふふふ・・・もちろん、初対面ですけどね」
【サーチ終了・・・未確認の機体であることを確認・・・ただし材質の一部に2013年の痕跡を確認】
「お前は・・・2013年の時空内で製造されたのか」
「正解・・・私はエーアールエックスセカンドサーティーンのデータを基にポリスクラウドのテクノロジーを応用して作られたエーアールエックスナインス・ザ・ラスト・クイーン・・・生まれたばかりの女子高生なの」
【存在自体が安堂麻陽に危機的状況をもたらす可能性を認知】
「ふふふ・・・ねえ、お兄ちゃん、私の亜空間利用能力を見て見て」
ロイドはクイーンの空間移動技術によってたちまち、見知らぬ公園に移動する。
「ほら・・・見なさいよ・・・人間たちの愚行を・・・」
道行く人々はモラルなき行動を展開する。
クイーンは問題行動の発生する時空間を予測し、集約してピックアップしているようだ。
若者は老人を粗暴に扱い、ゴミは分別されずに投げ捨てられ、喫煙者の火のついた煙草が幼児の顔の横を通過する。
「クズでしょう・・・ゴミでしょう・・・ダメでしょう。人間なんて・・・いらない存在じゃないの・・・ねえ、お兄ちゃん・・・私たち兄妹で・・・全人類殲滅しちゃいましょうよ」
「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」
「あらあら・・・禁じられているって・・・誰に・・・ゼロクラウドは活動停止しているし・・・お兄ちゃんのクライアントなんて完全に消滅しちゃってるわよ・・・もう・・・だれもお兄ちゃんの行動を禁じたりしてない」
【破壊の必要性を検出する】
【戦闘モードへの移行を判断】
ロイドはアスラシステムの制御を解除する注入式プログラムを作動させる。
「ふふふ・・・お兄ちゃんのアスラシステムは使用制限があるでしょう・・・もう、残り一回じゃないの・・・私はね・・・システム制御解除が無制限なのよ・・・アスラシステム解放します」
クイーンもまたアスラシステムを作動するのだった。
攻撃に転ずるロイド。しかし、その攻撃はクイーンの身体に届かないのだった。
虚しく空振りを繰り返すロイド。
「残念でした・・・お兄ちゃんの反応速度より・・・私の処理能力の方が全然上回っているのよ」
「・・・」
ロイドはクイーンの指先一本ではじき返されてしまうのだった。
「あっははは・・・面白い・・・お兄ちゃんが遊んでくれるなんて・・・なんて楽しいのかしら」
「・・・」
「だから・・・今日は・・・この辺で勘弁してあげるね」
「・・・」
「また・・・遊んでね」
クイーンは亜空間に突入する。
即座に追跡を開始するロイド。
しかし・・・ロイドはクイーンの存在を完全に見失うのだった。
同時にアスラシステムは作動限界時間を越え、自動停止する。
【何故だ・・・追跡可能だったはずだ】
【振動宇宙論あるいは多産宇宙論的な泡宇宙の存在を類推】
【未発達の多元宇宙の利用ということか】
【異なる物理定数の宇宙へ転移している可能性あり】
【それは・・・未知の領域ということか】
【参照データなし】
【敵対機体の逃亡の理由】
【不明】
【可能性を検討】
【アスラシステムの作動時間に差異がある可能性を検出】
【つまり・・・こちらの方が長い可能性か・・・気休めにもならないな】
【発言の意味が不明・・・非論理的】
ロイドは選択肢を失い・・・麻陽のいる病室に退却する。
「ロイド・・・」
「・・・」
「あれは・・・敵なの?」
「・・・わからない」
【充電残量が10パーセントを超過】
「充電が必要だ」
「・・・わかったわ・・・一度、帰宅しましょう・・・七瀬ちゃんは明朝まで目が覚めないそうだから」
「・・・」
安堂/沫嶋家では・・・男たちの作業が続いていた。
「どうでした・・・七瀬さんから何か聞き出せましたか」
「いえ・・・七瀬ちゃんは少し体調が・・・思わしくないの・・・」
男たちは即座にあの日を連想するのだった。
「そっちはどう・・・」
「ダメです・・・僕の改造されたパソコンと同じように2113年の未来技術が組み込まれていることは明らかですが・・・まったく作動させる糸口が見つかりません。なにしろ・・・システムそのものが理解を越えているので・・・」
「・・・」
「よし・・・今日は一度解散しよう・・・少なくてもロイドが復活したことで・・・一応の安全は確保できているようだし・・・」
麻陽は新たなる敵については伏せることを決断する。これ以上の負担はかけられないとの判断と思われる。
「僕はもう一度・・・自分の改造されたパソコンを検証してみます・・・未来技術について・・・何かヒントがあるはずだから・・・」
「そうね・・・そうしましょう・・・二人とも・・・ありがとう」
「どういたしまして・・・」
「人類の未来がかかってる・・・かどうかを別として・・・市民の安全を守るのは俺の仕事だ・・・」
麻陽は無邪気な男たちに微笑んだ。
男たちを送りだした麻陽は食事の用意をした。
ロイドと二人で囲む食卓はすでに麻陽に郷愁を感じさせる。
「ロイド・・・ごはんよ・・・」
「私には・・・必要ない」
「一緒に食べるとおいしいのよ・・・さあ、すわって」
「・・・」
ロイドは自分に味覚があることに気がついた。
その食事の成分はロイドの破壊されたメモリの一部とショート・サーキットするのだった。
「ロイド・・・どう・・・おいしい?」
【ロイド・・・】
『あなたの名前はロイドね・・・私が安堂だから・・・正式名称・安堂ロイドよ』
【我が名はロイド】
「ロイド・・・安堂麻陽が・・・くれた名前なのか」
「ロイド・・・思い出したの・・・」
「いや・・・何かが短絡して誤作動が発生した」
「・・・そう」
翌日、麻陽はエニグマ・エンジン・ソフト社に出社した。
その日は広報室が実施する「定例記者会見」の期日だった。
責任者が語るクラウドの新事業のスピーチを聞きながら麻陽は部下たちに囁く。
「すっかり・・・業務を二人に頼ってしまって・・・すまなかったわね」
「いいえ・・・麻陽さんのためなら・・・この身を惜しみませんよ・・・たとえ火の中水の中です」と追従する小松左京子(山口紗弥加)・・・。
その軽口を聞いていると・・・非日常的な日々が嘘のように感じてくる麻陽だった。しかし、星の指摘がその幻想を打ち破る。
「あの二人・・・見慣れない男です・・・新聞社のパスはもっていますが・・・同じ新聞社のいつもの記者も出席しています」
麻陽は一目でその男(川島潤哉・・・「お天気お姉さん」の八木刑事)の漂わす空気に違和感を感じるのだった。
「新聞記者には見えないわね・・・」
「おそらく・・・公安警察の刑事じゃないでしょうか」
「なるほど・・・」
「どうかしましたか・・・」
「いいえ・・・今夜は三人で焼き肉でも食べましょうか・・・」
麻陽は心から緊張緩和を欲していた。
焼き肉屋でテーブルを囲む三人・・・。
「わが社のクラウドコンピューティングもいよいよ一般に浸透してきましたね」
「しかし・・・世の中にはクラウドって何って人もいるからな」
「そうね・・・素晴らしいインターネットの世界とクラウドを区別できない人も多いしね・・・私なんかぶっちゃけ時々わからんわ」
「それが・・・IT企業の広報室につとめる人間の言うセリフかよ」
「まあ・・・インターネットを情報の空とすれば・・・クラウドは文字道理、雲よね。インターネットという開かれた社会を利用しつつ・・・利用者の秘密を守るサービスと言うべきか」
「しかし、実際はクラウドがインターネットそのものになる可能性がありますよね」
「そうね・・・曇りの日だってあるわけだから・・・」
「ところで・・・黎士さんのお加減はいかがですか」とあたりさわりのない仕事関係の話題に飽きた左京子は無自覚にタブーに触れるのだった。
「え・・・黎士さん」
「その・・・記憶の回復は・・・」
「いえ・・・」
「お前なあ・・・デリカシーのかけらもないのな」
「なんだとこら、先輩に向かってその口の利き方はないだろう」
「先輩らしい気配りをしてくださいよ」
麻陽はふと胸騒ぎを感じるのだった。記憶を失ったロイドを一人で自宅に残していることが・・・取り返しのつかないことのような気がしてきたのである。
(心配のしすぎか・・・いや・・・でも・・・)
麻陽は切迫感に襲われていた。
「あの・・・急に用事を思い出しちゃった・・・悪いけど・・・後は二人でお腹いっぱい食べてって・・・」
「え・・・」
あわてたように帰る麻陽を茫然と見送る左京子。
「私、地雷ふんじゃったかな・・・」
「大爆発だよ・・・」
「あんた・・・なんか知ってるの・・・」
「さあ・・・」
「くそ・・・飲むぞ・・・とことん飲むぞ」
「どういう結論なんだよ」
しかし・・・もはや・・・左京子の父である葦母刑事と死線をくぐりぬけた星にとって・・・左京子は単なる馬鹿な先輩社員ではなくなっていたのだ。
ついに酒乱と化した左京子を保護者気分で見守る星だった。
「わかるかな・・・私だって結婚したいのよ・・・でもね・・・ろくでなしの父親と・・・ろくでなしの父親のろくでなしなところをずっと言い続ける母親の娘なんだからね・・・結婚に幻想なんて持てないわけよ・・・あんたにわかる・・・聞いてんの」
「その話はもう今夜、五回聞きました」
「誤解じゃないのよ・・・本当にろくでなしなんだから・・・あのバカ親父は・・・」
「でも・・・親父さんは親父さんなりに・・・左京子先輩のこと・・・心配してるんじゃないのかなあ」
「バカこのっ・・・バカいってんじゃないわよ・・・そんなこと・・・あんたに言われなくてもわかってんのよ・・・わかってるからこそ・・・イライラすんのっ。あたしだってさ・・・ちっちゃい頃にはパパのお嫁さんになるーっとかってマジで言ってたんだからね・・・クリームソーダ、クリームソーダ頼んでよ」
「ここ・・・バーですから」
「バカ」
泥酔して・・・星の胸にもたれかかる左京子に・・・思わず可愛さを見出す星だった。
やせても枯れても山口紗弥加は個性派の本領を発揮するのである。
(マジか・・・俺・・・この酔っ払いと出来ちゃうのか)
不吉な予感に背筋が凍りつく星だった。
そんな爛れた関係をよそに・・・帰宅した麻陽はロイドが大人しく充電中であることに安堵するのだった。
「ロイド・・・ごめんね・・・一番大変で・・・一番苦しいのはあなただってこと・・・私、忘れてた・・・黎士を失ってどうしていいかわからなくなってた私が・・・なんとかやってこれたのは・・・あなたがいたからだって・・・今になってわかったよ・・・それなのに・・・私はロイドに頼ってばかりで・・・私のために傷ついて・・・記憶を失くしたのに・・・思い出せとか・・・わがままばかりで・・・ごめんなさい」
その時・・・黎士の部屋に置かれた角城ベアのタイム・スケジュールが起動のための設定時間を迎えるのだった。
死を予期したサプリによる支援機要請の期日が巡って来たのだった。
角城ベアは拡張機能を回復させ、黎士のコンピュータへのアクセス権を得たのである。
【カドシロハジメのアクセスを承認】
【サプリの要請による新機体の受領を指示する】
【必要データの転送は終了済み・・・5Dプリンタを起動しますか】
【同時に3D仮想体を要求する】
【承認します】
【警備システムに反応あり】
【作業を続行せよ】
黎士の部屋で一瞬浮かびあがった角城元(平岡祐太)の作業用フォログラムは即座に消滅する。
同時にロイドは覚醒モードに移行していた。
「ロイド・・・」
「人間がやってくる・・・非武装であることを確認・・・この部屋の鍵を持っている・・・今、解錠された」
「なんですって」
「はい・・・そのまま・・・」
「あなたは・・・」
会見場にいた男を発見する麻陽。
「はい・・・そのまま・・・私は警察のものです・・・この部屋が盗聴されているという通報がありました」
「通報って・・・」
「令状もあります・・・公務を妨害しなければ・・・問題ありません」
「何の話なの・・・」
「ありました・・・」
「あった?」
捜査員は角城ベアを示していた。
「あなたのものですか・・・」
「知りません」
「何者かがこれを部屋に置き、マンション全体の盗聴器の中継装置にしていた疑いがあります」
思わず・・・ロイドを見る麻陽。しかし、記憶を失ったロイドは無反応だった。
「回収して調査する必要があります・・・御同意いただけますか」
「・・・はい」
「よかった・・・調査の結果は・・・後日、ご報告いたします」
「・・・」
捜査員たちは去って行った。
麻陽は唖然とするのだった。
その時、黎士の研究室から機械音と青白い光が発するのを感じる二人。
【5Dプリンタ起動します】
【指示を出していない】
【指示は出ています】
「なに・・・あれ・・・」
「何かが・・・未来からやってくる」
「ロイド・・・」
「・・・」
【SRX-ラッキーセブンRのプリントアウトを完了する】
「あ・・・あなた」
しかし、サプリにそっくりな機体は出現すると同時に消失するのだった。
「今、確かにあの子が・・・」
「支援機体は亜空間通路に転出した・・・今は・・・待つしかない」
ポリスクラウドの二体のアンドロイド、ケプラ(伊達暁)とメンデルは公安警察が回収した角城元のA.I.を収納したぬいぐるみと対面していた。
「お帰りなさい・・・カドシロハジメ・・・この日を待っていました・・・これで・・・任務を実行できます。安堂麻陽暗殺の指示をお願いします」
「すぐに・・・予備機体の封印を解除します」
「それまでは3Dヴァーチャルモードでご辛抱ください」
「・・・待て」
ホログラム化したカドシロは作業を中断させる。
「どうしたのです・・・カドシロさん」
「私は・・・ボディを破壊され・・・待機中にいろいろと観察を行ってきたのだメンデルくん」
「観察を・・・」
「その結果・・・我々の任務に疑いを感じているのだメンデルくん」
「疑い・・・何をおっしゃっているのですかカドシロさん」
「安堂麻陽を殺害することが正しいこととは思えないのだメンデルくん」
「まさか・・・洗脳されてしまったのですかカドシロさん」
「任務の遂行を否定するのは重大な違反行為ですよカドシロさん」
「原子還元処理の刑に相当しますよカドシロさん」
「私は任務の遂行を拒否するつもりだ。メンデルくん、ケプラくん」
【こちら、メンデル。カドシロハジメの原子還元処理を要請する】
【こちら、ポリスクラウド・・・要請を承認する】
【施設内に異物を検知】
「なに・・・」
出現したのはやさぐれたサプリ(本田翼)だった。
「お前は・・・」
「困るな・・・これは私の私物なんだよ・・・」
サプリは角城ベアをとりあげていた。
【データベースに不正アクセスを確認】
【データ消失】
「なんだと」
二人は拳銃のようなものをとりだして発砲する。
しかし、やさぐれたサプリはすでに亜空間通路に退避していた。
弾丸のようなものはポリスクラウド21世紀分室の設備を一部破壊した。
「チッ」とケプラは舌うちした。
ロイドと同様に舌打ち機能搭載タイプだったらしい。
サプリは再び・・・安堂宅にウージングアウトする。
「やはり・・・あなたは・・・」
「私は・・・カドシロハジメの承認により実体化した支援機SRX-ラッキーセブンRデス」
「・・・」
「任務を遂行しマス」
「何・・・するの・・・」
「破損した記憶回路を完全に修復しマス」
即座に両手の作業ニードルを展開し、修理を実行するやさぐれたサプリ。
「修理完了」
「はやっ・・・」
「む・・・」
「ロイド・・・大丈夫」
不気味に振動するロイドは・・・回想の途中だった。
断片化されていた記憶が津波のように・・・ロイドの人工知能を駆け巡っている。
2013年に実体化し・・・安堂麻陽と巡り合い・・・かっての仲間と戦い・・・敵対アンドロイドを撃破し・・・安堂麻陽に名前をもらい・・・そしてすべてを忘れた日々が同時多発的に再生処理されるのだった。
「ロイド・・・」
「大丈夫だ・・・私はすでに平静を取り戻している・・・」
「ロイド・・・あなた・・・思い出したのね」
「すべてを・・・安堂麻陽・・・心配させて・・・すまなかった」
「ロイド・・・ロイド・・・ロイド」
思わず麻陽はロイドに抱きつくのだった。
その背中にそっと手をそえるロイド。
「本当に覚えているの・・・私の事」
「私が破壊されるまで忘れたりしない」
「嘘つき」
「私【オレ】に嘘をつく機能はない」
「すっかり・・・忘れていたくせに」
「物理的トラブルは問題外だ」
そして・・・ロイドはサプリの存在に気がつくのだった。
「サプリ・・・」
「サプリではありまセン・・・私はSRX-ラッキーセブンRデス」
「あなたも・・・記憶を失ってしまったの」とふりかえる麻陽。
「私の記憶装置は完璧デス。作動開始からおよそ13分の記憶はすべて記録されています」
「・・・」
「サプリ・・・私が必要とするのはただの支援機ではない」
ロイドはサプリを素早くあすなろ抱きすると人差し指ニードルをサプリの耳に挿入し貫通させるのだった。
「あん」
「ロイド・・・何するの・・・やめて」と思わず叫ぶ麻陽。
「心配ない・・・サプリからもらった感情システムと・・・それに伴うサプリの心をダウンロードするだけだ・・・受け取れ・・・サプリ・・・これはお前のものだ」
流れ込むロイドとサプリとの半世紀に渡る膨大な共有意識。
未来の戦場から・・・過去の現代へ・・・そして・・・しばしの別離と五十年目の愛の告白。
【I・・・LOVE・・・YOU】
たちまち・・・生き生きとした表情を取り戻すサプリだった。
やさぐれモード終了である。その表現力を称賛するお茶の間の声が聴こえてくるのだった。
「何・・・すんのよ。気安く触らないでちょうだい・・・ったく、余計なことしないでよね」
「それでこそ・・・俺にふさわしい支援機だ」
「せっかく・・・さっぱりした感じだったのに・・・自分が最高にかわいいことを思い出しちゃったじゃない・・・もう・・・まいるよね・・・・」
「・・・」
「この・・・ムッツリスケベ」
「殺すぞ」
「まあね・・・ありがとう」
「・・・」
「じゃ・・・私はこの辺で・・・ドロンしますので・・・後はお二人さんでしっぽりとなすってくださいね」
「・・・」
「おっと・・・忘れてた」
「何だ・・・」
「戦利品を御開帳するのであります」
「戦利品?」
【データのダウンロード終了】
【5Dプリンタを起動します】
【実体化の進行中・・・】
「今度は何・・・」
「私のぬいぐるみを取りかえすついでにポリスクラウドの予備パーツくすねてきましたあ」
「サプリ・・・」
【CR-XXⅢ-1Rの実体化を完了しました】
【人工知能のデータを転送中・・・完了しました】
角城元は実体化した。
「お前は・・・」
「はじめまして・・・私はシーアールダブルエックスサードワンアール・・・カドシロハジメと申します。安堂麻陽殺害計画のリーダーだったものです」
「え・・・じゃ敵なの・・・」
「以前はそうでした。しかし・・・私はあなたの姉妹機体・クイーンに一度、ころされてしまいました」
「姉妹って・・・ロイド、あなたに妹かいるの・・・」
「・・・」
「そして・・・サプリによって人工知能だけを捕獲されてしまったのです。修復された私はボディを持たない身となり・・・様々な強制的なコマンド【命令】を排除され・・・ただじっと世界を観察することになりました・・・そして・・・あなたたちの物語を感じたのです。それは美しい物語だった。だから・・・私はもはや・・・あなたたちに敵対する意志はありません。できれば仲間になりたいと考えています」
「つまり・・・味方ってこと・・・なんかさあ・・・手駒に突然、飛車とか角行が増えてましたって・・・感じ・・・」
「ポリスクラウドについてご質問があればお答えします」
「うわあ・・・お行儀のいい子なのね・・・じゃあ、教えてよ・・・なんで・・・あなたたちは私を殺そうとするの?」
「沫嶋黎士のおもいを抹消するためです」
「黎士のおもい・・・?」
「まず・・・沫嶋黎士の研究についてお話しましょう・・・沫嶋黎士は情報を構成する素粒子について研究していました」
「情報・・・素粒子?」
「そのための観測技術については・・・理解が困難だと思われます」
「まあ・・・そうね」
「彼は理論的には情報素粒子の存在を予見していましたが・・・転機は2011年3月11日に訪れました・・・」
「東日本大震災のこと・・・」
「そうです・・・未曽有の大災害で・・・大変な被害が発生しましたが・・・ある意味で人々の心は一つになったとも言えます」
「・・・」
「情報がある意味でパターン認識だということはご理解いただけるでしょうか」
「なんとか・・・」
「つまり・・・おもいの形がひとつの方向で増幅されたとお考えください」
「それは・・・絆とか・・・思いやりとか・・・祈りみたいなこと・・・」
「そうです・・・そして、そこに・・・情報が特殊な素粒子で構成されていることを予見し・・・それを観測しようとしていた科学者がいたのです」
「それが・・・黎士・・・」
「そうです・・・彼は存在しないものの存在を観測することに成功したのです」
「夢のような話だわ」
「彼はその理論を追認してもらうために世界に次元科学者たちにデータを公開しました。同時に彼は・・・情報素粒子という超素粒子・・・あるいは・・・おもいの素粒子を使った実用的な実験を行いました。2013年と2113年の超時空通信です。彼がおもいの素粒子で構築したタイムケーブルは見事にあなたから見れば現代と未来・・・我々から見れば現代と過去の通信を可能にしたのです・・・しかし・・・沫嶋黎士は・・・恐るべき洞察力によって・・・それが危険な行為であると認識したのではないかと思います」
「一体・・・黎士は未来の誰と話をしたの・・・」
「それは特定されていません・・・とにかく・・・黎士はタイムケーブルを遮断したのです」
「・・・」
「しかし、すでに一度開かれた回線によって・・・それが可能であることを確認したポリスクラウドは回線の維持に成功しました。しかし・・・黎士博士の作ったタイムケーブルのように巨大な情報量を通信できるものが再構築できないのです。ポリスクラウドは沫嶋黎士を殺害し、脳データ化することによってすべての情報を入手することを決めたのです」
「そんな・・・ひどい・・・それが人間のすることなの」
「2113年の人々はそれをとくに罪とは考えません。脳データがあれば・・・実際に殺されたわけではありませんから」
「殺されてるわよ・・・殺してるのよ・・・じゃ・・・私が感じている・・・黎士の存在って・・・その脳データにされてしまった黎士なの・・・」
「残念ですが・・・過去の人間によって否定された未来は・・・その否定を打ち消す必要に迫られるということです。最新情報では・・・沫嶋黎士の反逆性が問題となり・・・沫嶋黎士の脳データは破棄されたそうです・・・」
「なんてことなの・・・結局・・・何もかも・・・あんたたちは黎士から奪っているじゃないの・・・なんなのよ・・・あんたたち・・・なんなのよ・・・でも・・・おかしいわ・・・私の感じている黎士の存在感・・・これは・・・ただの希望的観測なの・・・」
「それについては・・・情報が不明です。話は前後しますが・・・本題である・・・安堂麻陽の殺害動機についてお話します。我々は・・・沫嶋黎士の脳データ化に成功し、100年後に転送しました。しかし・・・閉じられた沫嶋黎士のタイムケーブルは開きませんでした。そして・・・ポリスクラウドは一つの結論に達しました。それは・・・沫嶋黎士は特別なおもい素粒子を安堂麻陽という存在によって残留させている・・・というものなのです」
「どういうこと・・・」
「つまり・・・沫嶋黎士は・・・安堂麻陽におもい素粒子を集積しているのです」
「ちっともわからない・・・」
「たとえていえば・・・沫嶋黎士はあなた自身に憑依しているのです・・・」
「私に・・・」
「もうおわかりですね・・・あなたを殺せば・・・沫嶋黎士のおもいは拠り所を失って消える・・・というのがポリスクラウドの結論なのです」
「あんたたち・・・狂ってるわ・・・絶対おかしいよ」
「そうかもしれません。しかし・・・沫嶋黎士はそのすべてを予想していたと考えられます」
「何ですって・・・」
「彼は・・・殺され・・・脳データ化されることを予測し・・・殺されて未来に運ばれた後で・・・あなたを守る計画を実行したのです。それがなぜ・・・可能だったのかは我々にもまだ解明できていません。とにかく・・・沫嶋黎士はゼロクラウドという反社会的組織を構築し・・・戦闘アンドロイドや支援機・・・そしてそれを実体化するテンノロジーを過去に送りこんだ。そして・・・ここまではあなたの殺害の阻止にことごとく成功したのです」
「黎士・・・黎士・・・バカね・・・黎士・・・そんなになっても・・・私のことを・・・守ろうとするなんて」
「私は・・・沫嶋黎士の行為に・・・愛というものを感知しました・・・私がポリスクラウドに戻れなくなってしまったのは・・・その愛を壊すことが・・・誰にも許されないのではないかと結論したからです」
安堂麻陽は涙の海に溺れた。
「黎士・・・どこにいるの・・・黎士」
戦闘機体・ロイド・・・支援機体・サプリ・・・警察隊長機体・カドシロの三体のアンドロイドは「おもい」につつまれたヒトを敬虔な気持ちで見守るのだった。
その時・・・ロイドは・・・新たなる危険を察知した。
【新たなる未来からのデータ着信を感知した】
【ポリスクラウド周辺を探査】
【情報撹乱のため・・・検索不能】
ポリスクラウドでは残された二体のアンドロイドのアップグレード処理が行われていた。
ポリスクラウドも戦争の終結が近いことを予期していたのである。
未来と過去は・・・お互いの現在を守るためにまもなく激突するのだった。
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ごっこガーデン。愛の殉教者お祭りセット。 アンナ「えええええええっ・・・ロイドに逢えたのはよかったけれど・・・本当に本当に黎士は死んじゃったの・・・黎士が未来から必ず帰ってくるって言ったロイドの言葉は嘘だったの・・・でもロイドには嘘をつく機能がないからやっぱり黎士は帰ってくるの・・・ぴょんと言うのも忘れるほどびっくらこいたのぴょ~ん。全身美白のクイーンロイドはなんだか・・・すごく強いしさ・・・ロイドが負けちゃったと思うとそれだけでもう涙目ぴょん・・・いざとなったらアンナロイドが助っ人するのだぴょ~ん。カエルロイドも戦闘用に改造してぴょんぴょん攻撃をぶちかましますから~。そしてハッピーエンドの彼方に流れ込みますから~。涙で落ちちゃったのでマスカラ塗りなおしますから~・・・ああ、笑いをとってどうするぴょんぴょんぴょん」まこ「ぐふふ・・・サプリの衣装が新調されたのでお古をゲットだぜっ・・・しかし・・・麻陽とロイドとサプリとカドシロ・・・四人そろうと・・・西遊記ができそう・・・三蔵法師は麻陽でいいとして・・・孫悟空の座を巡る争いは・・・うひょひょお・・・想像するだけでおしょろしいの」mana「思いの素粒子・・・ありそうでなさそうでやっぱりありそうで・・・それはアレかなーっ・・・中学生が好きな男の子が自分のことを見ている気がする乙女心みたいな・・・感じ?・・・つまり・・・霊感が強いっていうのは思いの素粒子敏感タイプってことなの・・・わからんだにゃあ~。とにかくロイドに背後から耳を貫通されたら・・・天国にいくことは確実だと思います。クイーンになってやってもらえれば満足だがや~・・・で、黎士はどうなのよ・・・もう・・・お星様になっちゃってるの・・・」くう「いよいよ・・・年の瀬・・・毎日が殺す気かモードだねえ・・・歌番組とかさ・・・スペシャルドラマとかさ・・・ひぃぃぃぃぃだよねえ」シャブリ「御意なのでありました・・・まわるまわるよハードディスクはまわる」ikasama4「うわあ・・・気がつけば12月かあ・・・」mari「麻陽を守る人間とアンドロイドたち・・・でもロイドたちは・・・旧式らしい・・・心配です・・・・・・」
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コメント
キッドさま
ロイド記事 復元
大変 お疲れ様でしたm(_ _)m
内容が内容だけに多大なエネルギーが必要とされたのではと推察いたします(;_;)
サプリが感情システムを注入される一連の流れが萌え~でございました(^^)
角城元の説明でドラマの全体像が大分 私にもつかめてきましたが イメージが出来るようになると このドラマの勿体なさにも目がいってしまって
大人でもドラマを見た後 真似したくなるロイドの語り口
サプリ消滅からの復活
男の子が夢中になる要素 満載なのに
やたら長い二人の愛の回想シーンが挟まったり
なんとなくバランスが悪いような。。
私は楽しく見ていますが もっとたくさんの人が楽しめるドラマになったんじゃないかなぁと思ったり
それにしても 美人女優さん達がたくさん出演していて目の保養です
キッドさんも少しは休養して下さいね
投稿: chiru | 2013年12月 2日 (月) 23時01分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃ いませ・・・大ファン
励ましのお言葉ありがとうございます。
最先端科学と昔ながらの霊的妄想の
融合は文学がもっともスリリングに展開されるので
毎回、大興奮なのでございますが・・・
今回は魔界のお歴々の逆鱗に触れたのか・・・。
愛機が突然フリーズしまして・・・。
思わずフライドチキンのやけ食いしてしまいましたぞ~。
ただ今、胸やけの真っ最中でござりまする。
まあ・・・修羅場に突入すると
食欲旺盛になるのは・・・若い時の後遺症ですねえ。
とにかく・・・なんとかするためには
エネルギー確保しないとなの呪いでございますれば~。
ふふふ、とにかく・・・背後に回って
耳元に・・・一撃は・・・
悩殺ものですからな~。
そういう場面の作り方のアイディアが満載で
それだけでも見逃すと損ですよねえ。
キッドはクイーンに指先でコロリ転がされたロイドに
感激~でしたぞ。
今回は・・・記憶こそが愛という・・・
キッドのブログのメインテーマ展開でもありましたので
回想万歳でしたな。
欲を言えば・・・サプリのためのロイドの回想では
お茶の間の知らない回想シーンが
もう少しサービスされても良かったですねえ。
戦場で半壊したサプリをロイドがかついで
脱出中とか・・・。
巨大な爆発で二人で吹っ飛ばされるとか・・・。
長い長い歴史があった・・・というニュアンスを
もう少し伝えてもらいたかったのでございます。
なにしろ・・・2066年から2113年まで
サプリとロイドが過ごした時間は
ものすごく長かったのですからねえ。
まあ・・・贅沢なおねだりでございますけど。
キッドはロイドと麻陽は子と母親・・・
黎士と麻陽は男と女・・・
と愛の質が違うように見ているのですが
もちろん・・・ロイドと麻陽の禁断の愛もまたそそるので
どちらに転がるのかも楽しみです。
しかし・・・現在は最大の謎・・・
誰が作ったラストクイーン・・・
ここが悩ましさの頂点ですな・・・。
まあ・・・とにかく今回の最後で
アンドロイドの揃い踏みに・・・
胸が熱くなる悪魔なのでございました~。
さあて・・・大河ドラマかあ・・・。
投稿: キッド | 2013年12月 3日 (火) 00時34分
キッドさんの描く脚本は、本編の説明不足や省略された部分をきれいに補ってくれるので、本編だけ見ていたら気になる様々な矛盾点がすっきり解消されます。
さて、ひとつの重要な謎が明かされた第8話。人の思いという未知の素粒子の発見に、思わず唸ってしまいました。
安堂麻陽が命を狙われる理由を彼女が未来の“歴史”を変える可能性に求め、いろんなシナリオを妄想していたので、この種明かしはまったくの不意打ちでした。しかしまあ、うまいことを思いついたものだなあと思います。これは、SFと恋愛物語をひとつの主題にまとめ上げる見事なソリューションです。
しかもこの主題は、言霊信仰をもち、他人の気持ちを察して空気を読む、ある意味で情緒的な日本人にこそしっくりくるものでしょう。
人の思いは、紙や電子や音や光といった媒体を介さずとも、質量ゼロの素粒子によって時空を超える。新しいようで、じつは大昔からある不思議に対する答えになっています。
このドラマのグランドデザインが(たぶん)わかったところで、私はエンディングのメッセージに興味があります。人の思いは、人の心の内や記憶の中にしかない不確かものではなく、素粒子というある種の実体をもった確かなものである。だから、人は肉体的に死んでも思いは残るし、人はそれを感じることができる。しかし、だからといって、安堂麻陽は沫嶋黎士の(肉体を伴わない)思いの素粒子だけで幸せになれるのでしょうか。ロイドは“ボディ”をもっていますが、それが仮に沫嶋黎士の思いの素粒子を纏ったとして、それは完全なる沫嶋黎士その人と言えるのでしょうか。
ドラマの最後に、アッと言わせるウルトラCが用意されていることを期待しています。
投稿: アンリ | 2013年12月 4日 (水) 06時34分
ミライヲナゾトクヨロコビ~アンリ様、いらっしゃいませ~アンドロイドハソシテロイド
おそらくノベライズされた西荻原作を若手が脚本化という流れで作っていると思われますが・・・。
いい感じの部分とキッドが少し不明を感じる部分がありまして・・・あくまでキッド自身が楽しむために妄想補完をしております。それがお役に立てば幸いです。まあ、ノベライズ未読ですので真の補完はそちらにあると思いますが・・・ドラマはドラマとして楽しみたいですからねえ・・・。
「矛盾」というのは一つの「謎」でもありますからね。
勝手に解釈してしまうのは要注意の場合ありということをご了承くださいませ。
とにかく・・・カドシロの説明によれば
「思いの素粒子」を操作できるのは黎士だけのようでもあり・・・ポリスクラウドにもある程度できるようでもあり・・・その辺が曖昧でございます。
未来が・・・黎士が時間軸を閉じなかった未来なのか。
それとも閉じた未来が・・・閉じられた事を知ってしまったのかも・・・謎なんですよね。
このあたりは「時間もの」ではある意味、お約束のパターンですが・・・お茶の間には少し難しいかも・・・と思ったりいたします。
今のところ、どうやら何かに完全支配されている「未来」が全時空を支配下に収めようとしているという流れになっていると思いますが・・・そこも不明点でございます。
「情報素粒子」は超能力ものではおなじみですが
そこから時間ものに発展させたというのがこのドラマの新味と言えるでしょうねえ。
まあ、内宇宙ものとなればありふれた手段になるわけですが・・・。
哲学的にはソクラテスからヴィトゲンシュタインまで
「知のブラックボックス」として「生/死」の問題をとりあげています。
少なくとも死後を知る生者がいないと想定すれば
「知ることのできない何か」が必ずあることになる。
そこからは当然「無知の知」や「不可知論」が発生いたします。
「霊的世界」の有無は永遠の問題なのですな。
もちろん・・・「自分の知らないことを他人が知っていることを疑う」のが基本である以上・・・「死後の世界はある」と言われても「生きているくせに何を言ってんだ」と思うことは極めて正しいのですな。
しかし、フィクションの世界ではこれが一番面白いんですよね。
世界一のベストセラーである「聖書」なんて中身はこれだけですからな。
その流れで言えば「麻陽を守ること」に殉教した黎士が復活することは可能なんですねえ。
ただし・・・かなりアクロバットな展開になると考えます。
麻陽が歴史を変える可能性はまだ充分に残っているとも思いますし。
特に・・・二人の妹たちの問題がありますからね。
さて・・・「愛」と「幸福」の「カタチ」の問題がありますよねえ。
ドラマとしては・・・普通の「男」と普通の「女」が結ばれないとハッピーエンドにならない・・・と感じる人も多いですし・・・それは一つの着地点でもあります。
キッドは別に・・・残された麻陽が黎士の分まで生きていくという流れでもいいと思いますが・・・「黎士は生きている」と麻陽に繰り返し言わせているので
「思い」だけがあったではものたりないお茶の間続出でしょうし・・・。
「黎士の心」と「ロイドの身体」が合体だと・・・
夜の生活はどうなるんだとか・・・ロイドの心はどうなるんだとか・・・心配するお茶の間もあるでしょうし・・。
そういう意味でウルトラCはあると推定できますよねえ。
まあ・・・「ケイゾク」で・・・
「すべては夢」という最高の後味の悪さを残した脚本化ですから・・・。
なんだかわからない・・・という結末も悪魔としては予想の範囲内と考えまする。
投稿: キッド | 2013年12月 4日 (水) 15時51分
キッドさん、ご無沙汰しています
「バンドワゴン」の野ブタ桐谷兄弟の共演にほっこりしたり、
「独身貴族」のブザビ同窓会にはらはらしてみたり、
(全然問題な~い♪)
「リーハイ」は別格として、良作揃いな今クール。
楽しいけれど、時間が無くてあまり見られなくて、
もう一人の私が欲しいくらいです
前評判も視聴率も決して良くはないけれど、
「ロイド」は好きですわ。
普通に面白いですよね。
キムタクじゃないとあり得ない企画だと思うので、
同時代を生きていられる幸運を感じています。
このブログの読者であった幸運も。
設定とか考え出すときりがないので、
あまりこだわらないようにしているのですが、
キッドさんには、毎回助けていただいていますよ。
「重い想い」には、全く考えが及びませんでしたわ。
有難うございます。
まあ、最後は「LOVEだねえ」で、
全部のドラマが締めくくられる気もしますが。
(私の中では、流行語大賞に入っていてもおかしくない)
この間まで「はしゃぎ過ぎてる夏の子供」だったはずが、
いつの間にか「暦の上ではディセンバー」に。
レビューも本当に大変だと思いますが、
どうか体調を崩されないように、ご自愛くださいませ
投稿: mi-nuts | 2013年12月 6日 (金) 11時35分
✭クイーン・オブ・ザ・ランチ✭mi-nuts様、いらっしゃいませ✭親切百回接吻一回✭
師走でございますねえ。
「泣くな、はらちゃん」「最高の離婚」「夜行観覧車」で始った2013年。
「あまちゃん」が春から夏を制覇し、
「ガリレオ」やら「みんエス」やら
「SN」やら「Woman」やらが乱れ咲き
今は「リーハイ」「LOVEだね」「ロイド」と
ゆく川の流れは絶えずしてもとの水にあらず
・・・でございますな~。
まあ、年末特番ともなりますと
キッドの命は風前の灯でございまする。
秋ドラマも結構、殺す気満々ですけれども~
基本的にお茶の間は
「非日常」というものが苦手なんですな。
自分が認識している現実が
実は・・・本当は現実ではないと知ることは
恐ろしいことですからねえ。
そういうものを揺らしてくるこのドラマ。
「馬鹿馬鹿しい」とか
「わからない」とか
「子供だまし」とか
お茶の間は自分が愚かで理解不能なものはとにかく認めないガキで満ち溢れているのでございます。
なにが面白いって悪魔はそこが一同爆笑ポイントですぞ~。
木村拓哉のチャレンジは天晴れという他ございません。
キッドを始めとして多重人格一同
心をこめて堪能している次第です。
時間旅行、アンドロイドに続いて、ついに七瀬の多重人格サービスまであったので
万歳ですねえ。
時空の設定観を推理する楽しみ、
生命とは何かを推定する楽しみ、
心とは何かを空想する楽しみ・・・。
実に妄想の果てしない荒野に風が吹くのでございます。
こんなに楽しいことを
楽しめない方々がいるのは
本当に憐れなことでございます。
ふふふ・・・
「おもてなし」「倍返し」「今でしょ」「じぇじぇじぇ」「LOVEだねえ」「ちゃんとして」「俺に嘘をつく機能はない」「安堂麻陽が死ぬことは禁じられている」「原子還元処理を申請する」ですよねえ。
ああ・・・紅白歌合戦では・・・「あまちゃん」コーナーがどんな風に展開するのか・・・。
10時間「あまちゃん総集編」を見ながら
ドキドキ楽しむまでは死ねない年末なのですなあ。
お気遣いありがとうございます。
mi-nuts 様も手洗いうがいを励行なさり
健やかに年の瀬をお過ごしくださいますように。
投稿: キッド | 2013年12月 6日 (金) 16時06分