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2014年1月31日 (金)

君(多部未華子)と別れた後で思い出す猫踏んじゃったを連弾した時間(三浦春馬)

正直に話すのは哀しい、嘘をつくのも悲しい話である。

正しい選択がない問題が人生にあることを示す一幕。

それでもどうにかしなければならず・・・どっちつかずにしていても時が流れていく。

ドラマが描きだす現実とはそういうものだろう。

正気の沙汰とは思えない言動をする人の内面には余人には窺い知れない・・・そういう葛藤があるのかもしれない。

「ALSの患者を傷つけるかもしれない」ドラマはスルーして「赤ちゃんポストちゃんを傷つけるかもしれない」ドラマに噛みつく人がいることは不思議な話だが・・・本人の中では整合性があるのかもしれないという話である。

さて、「難病ドラマ」で検索すると・・・現在はまず・・・このドラマについての記事がヒットする。

そういうわけで・・・これを「難病ドラマ」と言ってもそれほど意外ではないだろう。

テレビ番組は基本的には制作者が「企画」することからはじまる。もちろん、プロデューサーが自ら発案することもあるし、スタッフと相談の上、企画が練られる場合もある。

ドラマの様々な要素の何が最初にあるかは・・・ケース・バイ・ケースである。「原作」や「脚本」がある場合もあるし、脚本家や演出家、主演男優や女優が先行する場合もあるだろう。

企画がある程度、定まった段階で関係者との調整が行われる・・・局内の上司の了解や、予定スポンサーへの根回しもこれに含まれる。

「難病もの」がお茶の間にいかに受け入れられるかを・・・企画者はある程度、説明しなければならない。

一番、堅実なのは・・・先行例をあげることである。その時点で・・・企画は二番煎じで新鮮味がないという考え方もあるが・・・過去の成功に学ぶことは大きいのである。

「難病もの」で検索すると「24時間テレビ愛は地球を救うドラマスペシャル」もヒットする。「今日の日はさようなら」の悪性リンパ種、「車イスで僕は空を飛ぶ」の脊髄損傷、「生きてるだけでなんくるないさ」の悪性腫瘍・・・まあ、見ていなくてもなんとなく想像のつく感じでありますか。

連続ドラマで最初にヒットするのは「1リットルの涙」(2005年)である。

当然、「平均視聴率15.4%で最終回には20.5%を記録しました」という情報も説得材料になる。

それに加えて、恋愛ドラマとしての要素もアピールし「主演とヒロインは映画の『君に届け』(2010年)で高い評価を受けています」などと付け加えたりするだろう。

さらに脚本は「僕の生きる道」、「僕と彼女と彼女の生きる道」、「僕の歩く道」のいわゆる「僕シリーズ3部作」というヒューマニズムを全面に据えたドラマの実績があることもさりげなく申し添えるだろう。

一作目の「僕の生きる道」はスキルス性胃癌に冒された余命一年の男が主人公の物語である。平均視聴率は15.5%で最終回は21.6%だった。

関係各所もその気になったはずである。

結果として、ここまで11.2%↘*9.4%→*9.4%↘*8.5%となっているわけだが・・・裏番組が一部の心ない人たちの起こした騒動でとんでもないことになっているので・・・視聴率的惨敗への慰めにはなっていると妄想する今日この頃である。

キッドとしてはどちらのドラマもとてもいいと考えている。レビューの順番が前後することに他意はない。

で、『僕のいた時間・第4回』(フジテレビ20140129PM10~)脚本・橋部敦子、演出・城宝秀則を見た。世界第一位(2011年)を誇る日本人の平均寿命は83歳(ただし男性に限ると79歳で世界12位)である。普通という言葉はなかなかに使用しにくい言葉だが・・・平均に対して・・・三十歳までに死んでしまうことは極めて短命と言えるだろう。主人公の澤田拓人(三浦春馬)は残り時間の少なさにうろたえる。そして・・・結婚を視野に交際している恋人・本郷恵(多部未華子)への対応に苦慮するのである。その結論をどう考えるかは人それぞれであろう。正直に告白することが誠実と考える人もいるだろうし・・・正直に告白してあっさり別れに同意されたら立場ないとあらぬ心配をする人もいるだろう。なんとなくだらだら付き合う方が人間らしいと考える人もいるかもしれない。後でどうせ分かるからいい格好してるだけだと邪推する人もいるかもしれない。それぞれの中にある「普通」と「それぞれ」の感慨。脚本家は淡々とそういう問いかけを描きだすことにかけては当代一の名人だと考える。

僕は闘病生活に入った。

筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の患者として主治医の谷本医師(吹越満)の診療を受けているということだ。

僕は病気のことを誰にも打ち明けられずにいる。

こういう時、母親(原田美枝子)は超能力で・・・子供の身に起きていることを直感したりするべきだと思うが・・・母親は弟の陸人(野村周平)が急にピアノを弾きたいと言い出したので・・・弟の身辺に何かあったのではないかと・・・心配して僕に電話をしてくる始末だ。

「どうして・・・陸人に直接聞かないの」

「何かあったらと思うとこわいでしょ」

「そう・・・」

僕は思わず電話を叩き切ってしまった。

母さん・・・何かあるのは僕なんだよ。どうして分かってくれないんだい。

職場ではさらに力仕事が困難になってきた。僕は「宮前家具」の正社員としてそれなりの営業成績をあげ・・・アルバイト店員の宮下さん(近藤公園)に妬まれたりもしている。

妬みたいのはこっちだよ。アルバイト店員でもいい・・・健康で長生きがしたい。

ま・・・そんなこといったって状況は変わらないけどね。

いつまで・・・正社員でいられるか・・・出勤できなくなったらそれまでなのか。

面接官は・・・見る目がなかったと責められるのか。

まあ・・・病気だからね・・・本人さえ見抜けなかったんだから・・・不可抗力ですよね。

皮肉なことに・・・父親(小市慢太郎)は医者だし、弟は医大生だ。

担当医はいずれ・・・家族には話さなければいけないというが・・・家族に話して病気が治るわけではない。

ただでさえ・・・落ちこぼれた僕はせめてゼロでいたいんだ。

プラスではなくて・・・マイナスの存在の僕は家族の負担になるだけで・・・存在価値を疑われないか・・・奇妙な心配をしているんですよ。

向井先輩(斎藤工)にも友人の守と書いてまもる(風間俊介)にも打ち明ける気にならない。

「秘密」だ・・・。秘密を持っていることは心苦しいと言うけれど・・・もうすぐ死ぬことを黙っているのはどこか甘い香りがする。

それは劣等感と裏返しの優越感みたいなものかもしれない。

誰かが何かに悩んでいたとしても・・・何言ってんだ・・・僕なんかもうすぐ死ぬんだぜと言う気持ちだ。

なんだか・・・絶対的に優位になっている気がする。

なにしろ・・・守るべきものがもうすぐなくなるんだから。

でも・・・恵・・・君にはどう接したらいいだろう。

君と過ごす時間はどんどん楽しくなっていく。

君と過ごす未来を想像すると優しい気持ちになる。

君と結婚して・・・君と僕の子供が生まれ・・・平凡だけれどささやかな幸せのある家庭を作って・・・だけど・・・それはもうただの夢物語になってしまった。

僕の部屋に君がハブラシを置いたままにしたり・・・僕の腕の中で君がだんだんと女としての喜びを覚えて行ったり・・・二人で作曲者不明なのにみんなが知っている「猫踏んじゃった」を弟の電子ピアノで弾いてみたり・・・そういう幸せな時間に未来がないってこと。

君がきっと思っている僕との生活が実現しないってこと。

それを知ったら・・・君はどうなるんだろう。

凄く哀しむのかな。

それとも・・・僕から弟に乗り換えたお母さんみたいに・・・別の誰かと歩み始めるのかな。

ああ・・・いろいろと考えると僕は頭がおかしくなりそうだ。

きっと・・・そういうことなんてこれっぽっちも考えていない守と書いてマモルがうらやましい。

メグの友達の陽菜ちゃん(山本美月)に片思いだって・・・童貞だっていいじゃないか。

未来が残されているんだから。

ああ・・・どうせ死ぬんだから・・・なんだってできるはずなのに・・・僕は他人のことばかり考えている。

でも・・・そうだろう・・・人間は生き続けることを前提に生きているんだもの。

それが多分普通なんだもの。

マーくんの年俸と自分の時給を比べてカッとなって犯罪に走ったりする人間と僕は違うんだもの。

いや・・・これから・・・僕がどうなるかなんてわからない。

もっともっと残り時間が短くなって・・・もっともっと普通じゃなくなって。

愛する人を平気で傷つける人間になるかもしれない。

僕はそれが恐ろしい。

恵の短命だったお父さんのことを恵のお母さんは悪く言わない。

それでも・・・闘病と看護の生活が苦しかったことは分かる。

だって・・・マイナスの家族が一人いることは・・・プラスにするために倍の努力が必要ってことだから。

本当にギリギリの生活だったら・・・生きていてくれるだけでいい・・・なんて綺麗事に過ぎない。

まして僕なんか何も出来なくなってしばらく生きた後で死んじゃうんだぜ。

医学の進歩が明日・・・新しい治療法を生むかもしれないっていうけれど・・・そんなのなんの慰めにもならないよ。

今、誰かが実験台になって治療方法を開発中なんですか・・・それとも僕がその実験台なんですか。

ああ・・・段々と動かなくなっていく僕の身体。

いらだちを君にぶつけ始める僕。

潮時だ・・・潮時だよね。

「君とおしまいにしたい」

「何言ってるの」

「君と別れたい」

「他に好きな人ができたの」

「君との将来を考えられない・・・君は重い」

「・・・」

僕は・・・君に別れを告げた。

君は物凄く傷ついただろう。

それは残酷なことだっただろう。

でも・・・そうする他にはなかった。

君を哀しませたくなかったし・・・君に見放されるのが何より怖かった。

僕はもう精一杯だったんだよ。

君が向井先輩の胸で泣いたりするから・・・向井先輩がやってきてしまった。

君をただ奪ったりしない・・・いい人だって・・・僕には分かっていた。

だからといって・・・先輩にだって事実を話すことはできない。

でも不自由な体のおかげで・・・うっかり・・・先輩に病気のことを悟られてしまった。

隠しごとっていつかは露見するものなんだなあ・・・。

「病気のこと・・・彼女には・・・」

「言わないでください・・・」

「どうして・・・」

「僕はもう・・・自分のことで精一杯なんです・・・他人の心配をするのは・・・負担になるんですよ」

「・・・」

夜の闇の中で照明に照らし出された僕は死神のような顔をしているような気がする。

そうさ・・・僕は自分の死を告げる死神になったんだ。

だから・・・放っておいてください。

僕に関わっても不幸になるだけなんだから。

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2014年1月30日 (木)

淋しい気持ちを捜して(芦田愛菜)ポスト、あんたが妹さ(大後寿々花)時には両親のない子のように(優希美青)

「あまちゃん」の小野寺ちゃん(優希美青)がゲストで登場である。

ポスト(芦田愛菜)、オツボネ(大後寿々花)、アズサ(優希美青)の揃い踏みは圧巻だったな。

さて・・・志の低いスポンサーたちが次々にCM放映を自粛して、ACによる有村架純の「ながらスマホ」についての意見広告などが入り、それだけで作品の芸術度がグッとアップしている皮肉なオンエアである。

素晴らしいインターネットの世界を見渡すと明らかに意図的に火のないところに煙を立てている貧困ネタの得意な東大卒の自称ジャーナリストが一人いることが分かる。

この人は・・・ドラマが施設で育つ子供に対する加害者であると断定しているのですが・・・その論理の根柢にあるのは「赤ちゃんポスト」という言葉を使用することの否定です。それは・・・あまりにも乱暴な話なので・・・この人の精神状態がちょっと心配になるほどです。

さらに・・・日テレの番組のHPの掲示板についてもクレームをつけたりしています。

この人は少なくともドキュメンタリー映像のプロですから・・・ノンフィクションも編集されたフィクションに過ぎない基本は理解していると思われるのですが・・・掲示板に意図的な編集権が行使されている・・・などと宣っています。

つまり・・・自分に編集権はあるが・・・他人にはないと言っているのも同然なのでございます。

一体・・・なんでまた・・・そんなに思いつめたのか・・・不思議になるほどなのです。

同じ枠で芦田愛奈が出演したドラマ「Mother」(2010年)でも「赤ちゃんポスト」が登場します。親に虐待され行き場を失くした子供が・・・「赤ちゃんポスト」の存在を知り、街の中でポストを捜す・・・そのポストに自分が入れるかどうかを危惧する・・・屈指の名場面でした。

この人の論理で行けば・・・そのシーンも即刻放映中止を求められることになる。

それは・・・ちょっと眩暈を感じるほどの恐ろしい主張です。

例としては不適切かもしれませんが・・・「ドラえもん」に登場する「ジャイ子」だって・・・放送禁止になってしまうニュアンスでございますよ。

映画「怪物くん」で怪物くんが「ちんちくりん」と叫べなくなってしまうなんて嫌だ。

ちょっと・・・正気をとりもどしてもらいたいと本気で願う次第です。

「ドラマ」というフィクションと・・・「ドキュメンタリー」というフィクションは似て非なるもの。

現実の世界を切り刻んだ作品と、架空の世界を作り上げる作品とは違うという根本から考えられた方がよろしいでしょう。

この人の貧弱な想像力を遥かに上回る「残酷な物語」がドラマの中で展開し、それは見るものに大いなる刺激を与えている。

その後で、現実でたとえ残酷な事件が起きたとしても・・・それが一つのフィクションに起因すると本気で考えているとしたらそれは明らかに間違っています。

さらに・・・言えば・・・この人の狂気の言葉が・・・罪なき人を罪に走らせることもある・・・それは大前提でございます。

周囲の人も・・・この人の言動には注意をされた方がいいと考えます。

明らかに常軌を逸していますので。

で、『明日、ママがいない・第3回』(日本テレビ20140129PM10~)脚本監修・野島伸司、脚本・松田沙也、演出・長沼誠を見た。このドラマにおける児童養護施設と現実が乖離しているいるという批判もある。赤ちゃんポストについて・・・人間ははがきではないと主張するレベルでは確かにそうだろう。しかし・・・過激な言動を吐く施設長の魔王こと佐々木(三上博史)は個性的だが人間味にあふれていることは・・・初回から示されている。自身も足の不自由な障害者であることから・・・この世の残酷さに敏感で・・・一種のスパルタ教育を憐れな子供たちに施しているのである。数ある施設はある程度、マニュアルに沿ってもう少し穏便に、もう少し児童に対して距離を置いているだろう。たとえば「彼らを憐れと思うこと」がすでに「差別」なので・・・そういう態度を見せないことも求められているだろう。児童同志の相互扶助的な関わりも実際には困難かもしれない。問題を複雑化しないために個別の児童はある程度、隔離されているかもしれない。しかし、実際には虜囚ではないので施設内でのコミュニケーションは発生するだろう。そこには相当に問題が山積みされていることは充分に想定できる。施設の運営者の中には神のごとき慈愛に満ちた人もいるだろうが悪魔のような残虐を実施するものもあるかもしれない。なにしろ、食料に毒を入れる人がいる世界なのである。一方で・・・収容された児童たちが明るく楽しく過ごしすぎているという違和感を持つ人がいるかもしれない。主役のポストをはじめドラマの設定では九歳女児たちが同居して仲間意識を育てている。ある種の子供たちにはそこに行きたくなる「幸せな感じ」さえ漂っている。そんなことはありえないという人もいるだろう。

しかし・・・これはドラマなのだ。

何らかの事情で親から養育を放棄された子供たちが・・・それでも、生きていくという話である。

子供に見せるべきではないという人もいるが・・・これこそ・・・子供たちが見るべきドラマだという考え方もある。

それは・・・それぞれの家庭で判断するべきだが・・・ここにはその家庭を持たない子供がいるのだ。

もちろん・・・人々の善意は・・・あまりにも不公平な立場に置かれた子供たちをなんとか格差の生じない方向へ導きたいと願う。

だから・・・それもまたそれぞれの保護責任者の判断によるのである。

キッドはあらゆる情報にアクセスしたいと考える子供だったので・・・その責任の及ぶ範囲であらゆる情報にアクセスを許可する姿勢で生きている。その結果、様々な不都合が生じたとしても・・・現実とは都合のいいものではないから仕方がないのである。

捨て子の母親を持つ、母方の実の祖父母を知らない個人としての結論なので、異論は認めるが聞く耳は持たないのだ。

これだけは自信を持って言える。捨て子だってそこそこ幸せな人生を送ることができるということだ。

すべてはケース・バイ・ケースなのである。

そういう意味で・・・自身が里子として里親を経験している児童相談所の水沢(木村文乃)は一種の安全弁である。

一応、説明しておくと、養子縁組のようなものと里親制度のようなものは似て非なるものである。

養子縁組は基本的には実の親子関係である。養子であろうと実子であろうと法律的にはほとんど同じである。一方で里親とは養子縁組への過程であるようであり、養子縁組ほど敷居が高くなく・・・一種の代理養護制度であるために・・・里親には手当さえ支給されるのである。

実際には選択権は里親側にあるシステムだが・・・ドラマの中では水沢がルールを逸脱して子供たちに選ぶ権利を与えているという設定になっている。

そこに・・・いろいろと複雑な問題が発生することは・・・各自で想像していただきたい。

しかし・・・親を喪失した子供が・・・格差的環境に置かれることを回避するために・・・擬似両親を制度として付与するシステムはある程度は有効だと社会が考えているわけだ。

もちろん、そう思う人もそう思わない人もいるのである。

そのような架空世界で・・・ポストたちは・・・必死に生きているのである。

そんなドラマを娯楽として享受していいのか・・・という意見もあるだろうが・・・キッドはいいと思う。その楽しさの中から何かを感じることもあるだろうから。

新しい里親候補が舞い込み・・・里子候補たちは沸き立つ。

それが「優良物件」であるらしいからだ。

深夜に廊下を彷徨い歩き、ドンキ(鈴木梨央)を恐怖のどん底にたたき落としたオツボネ(大後寿々花)は里親候補が裕福だと知り・・・眼帯に覆われていない右目を輝かせる。

しかも・・・有名な占星術師の女里親候補の指定で・・・「いて座限定」という妙な条件が付き、オツボネは条件に合致する。

そして・・・ポストも。

魔王はオツボネとポストの二人を里親候補の元へ届ける。

しかし、応対したのは家政婦の三田村(犬山イヌコ)であり、両親は不在で・・・インターネット回線を通じて面談をすることになる。

すでに・・・里親放棄である。

しかも・・・二人には実の娘のクララではなかった・・・アズサ(優希美青)がいるのだ。

アズサは・・・体操競技で足を痛め・・・完治しているのに心理的抑制で歩けなくなってしまった車椅子の少女なのであった。

里子とはクララ・・・アズサの話相手を務めることだったのである。

「養子縁組される場合は学費と成人するまでの生活費を支給する契約となります」

ビシネスライクに宣言する家政婦の三田村・・・。

「そんなひどい・・・」と落胆するオツボネ。

「結局、お金が目当てなのね・・・そんな人いらないわ」とクララアズサは拗ねた態度で応じるのだった。

物語の中で誰よりも自立した人間であるポストは・・・クラアズサに興味を持つ。

クララズサに「孤独」の匂いを嗅ぎつけたのだ。

養護施設カモを待つ「コガモの家」に戻ったオツボネは・・・条件に合わないことを理由に里子候補をやめる。

「そんなにお金が欲しいの」と問う仲間たちに・・・ついに眼帯をとるオツボネ。

オツボネの左目は・・・幼い頃、酔った母親に虐待されて傷つけられ・・・赤く濁った惨状を示していた。

「手術して・・・普通の女の子になりたいの・・・お金がいるのよ」

そんなオツボネに・・・暴力的で享楽的な母親を持つドンキはシンパシーを感じるのだった。

一方・・・おぼっちゃま蓮(藤本哉汰)に恋するピア美(桜田ひより)は・・・二人が相思相愛であることを確認するために黄昏の邂逅をするが・・・蓮の意中の人が自分ではないことを知り傷心する。

一方、理想の里親ジョリピー夫(城田優)に対して「あなたあなたにいてほしい」とせつない願いを小坂明子的に抱いていたボンビ(渡邉このみ)は・・・ジョリピー夫妻の実の娘らしいレイカ(小西舞優)にハンカチを貸してもらいそうになるという屈辱を味わいブルーな気分になる。

ピア美とボンビの悲しみがとまらないのだった。

何故か不在がちなロッカー(三浦翔平)に変わり・・・魔王がかってその子供を殺したという女(鈴木砂羽)の弁当屋に出向くドンキ。

魔王の心の闇を垣間見てまたもや恐怖を感じるのだった。

基本的にドンキはホラー映画のヒロインなのである。

一方・・・ポストは・・・「両親が不在がちで・・・親がいても孤独な」クララサに寄り添い・・・擬似母性を発揮し始める。

「クララ・・・あんた・・・本当は立てるんでしょう」

「ハイジ・・・あなたは・・・どうしてハイジなの」

まあ・・・脚本・監修の人のこだわりが明らかだな。

やがて・・・クララはハイジと孤独を共有し始めるのだった。

里親候補から離脱したことを魔王にとがめられたオツボネは失踪。

「お金にこだわりすぎるんだよ・・・」

そんな魔王にドンキが告げる。

「でも・・・女の子だから・・・あの目は・・・なんとかしたいと思う」

「ちっ」

オツボネは水商売を経営する実の母親(西尾まり)の元へ・・・。

しかし・・・母親は実の娘に売春を強要するのだった。

ラブホテルで客が来るのを待つ間・・・オツボネはポストに電話する。

「どうしたの・・・」

「今・・・私・・・お母さんに優しくしてもらって幸せなんだ」

「嘘だね・・・私は本当の妹じゃないけれど・・・あんたが嘘ついていることくらい・・・わかるよ」

「ポスト・・・」

「オツボネ・・・」

そんな二人の絆をうらやましく思うクララだった。

ハイジとクララもまた擬似姉妹としてベッドを共にしたのである。

間一髪でロッカーに救助されるオツボネ。

すべては・・・水沢の支援によるものだった。

「これは・・・犯罪ですよ・・・お母さん」

「客なんて呼んでないわよ・・・あの子を追い払うための仕掛けよ」

「あなたは・・・母親になろうと思えばなれたのに・・・自ら、それを拒否した」

「・・・」

煙草の煙の向こうでオツボネの実の母親は心の暗闇をしまいこむ。

立つ練習をするクララとハイジの元へ・・・パチ(五十嵐陽向)がやってくる。

パチのカエルの玩具に驚いて・・・クララは大地に立つのだった。

暗い世情に一瞬差し込む陽光。

しかし・・・復活を告げるアズサに・・・アズサの両親は二人が離婚することを告げるのだった。

アズサと里姉妹になってもいいと思い始めるポスト。

しかし・・・アズサは自傷行為で自らの膝を砕き・・・救急車で運ばれるところだった。

「クララ・・・」

「親がいても・・・いないのと同じだったよ・・・」

家政婦の三田村が乗り込むと救急車は走り去る。

魔王は・・・オツボネのためにカレーを用意して待っていた。

ポストのベッドではパチが待っていた。

ドンキが語りかける。

「私・・・里親お試しに行ってみようと思うの」

「どうして・・・」

「幸せを捜しに」

「幸せか・・・幸せなんてどこかにあるのかな」

「さあ・・・どうかしら」

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2014年1月29日 (水)

でくのぼうVSおりこうさん(芦田愛菜)手篭めにされてもたくましくのぼうの城(尾野真千子)

そこかよーーーーっ。お正月気分かっ。

前回、尾野真千子と鈴木保奈美の競演で、今回は鈴木保奈美、尾野真千子と芦田愛菜の競演。

そして次回は芦田愛奈という流れでございます。

ドラマも映画も基本は総合芸術である。

そこにあるのは「美の追求」なのである。

もちろん・・・芸術にはビジネスの側面もあって・・・そこで生きる人々が様々に思惑を持って生きているという現実はある。

しかし、基本として「芸術への奉仕の精神」を持っていなければならない。

「表現の自由」とはまさにその「芸術(美)への奉仕の精神」の在り方を示したものである。

そこにある「美」とは「それぞれの人間が感じる心地よさ」などという低次元のものではない。

世界に隠されている神秘的な「美」への人間たちの挑戦なのである。

作品には様々な総合されたものが多面的な美を顕現するのである。

たとえば女優はそのパーツだし、子役もまたそのパーツである。

脚本家もパーツだし、演出家もパーツだ。

そして・・・「美」の世界にあっては「現実世界」もパーツに過ぎないのである。

「表現」には成功もあれば、失敗もある。

しかし・・・成功も失敗も過程にすぎない。

そして・・・表現者には豪胆なものもあれば、繊細なものもある。

繊細さも豪胆さも同様に過程なのである。

「美」を守護するものは繊細さと豪胆さが織りなし成功や失敗を経ての「誕生」を厳かに見守っている。

個人の政治的信条や、宗教的信念などが「美」を犯すことはあってはならないからである。

そういうことが理解できないとうへんぼくで世界が満ちているにしても・・・。

で、『のぼうの城(2012年劇場公開作品)』(TBSテレビ201401052054~)原作・脚本・和田竜、監督・犬童一心、樋口真嗣を見た。華麗なる戦国絵巻であり、水攻めのシーンが東日本大震災の津波のシーンを連想させるという理由から公開を自粛したという来歴を持っている。芸術は本来、そういう現実など無視してかまわないと思うがそこがまたこの世の醍醐味というものなのだな。そもそも・・・表現が一種の刺激をもたらす以上、絶対に無傷なんていうことはありえない。見たものを発狂させるくらいで何の問題もないわけである。しかし・・・でくのぼうやとうへんぼくの満ち溢れた人の世でそれが暴論であることは甘んじて受け入れたい。

とにかく・・・水の持つ圧倒的な破壊力を映像化しただけでも賞賛に値する芸術作品である。

そして・・・それを主軸として戦国絵巻が展開する。

ものすごく面白いのである。

そして・・・この映画によって・・・あの恐怖体験をした人々がなんらかの嫌な気持ちを抱いたとしても・・・それが現実であるとしか言いようがない。

言い方を変えれば知ったこっちゃないということだ。

殺人事件を描いたドラマは殺人事件の被害者遺族に嫌な気持ちを抱かせるに決まっているし、失恋物語は失恋した人間に嫌な気持ちを抱かせるだろう。

そんなことを気にしていたら・・・芸術なんて成立しないのだな。

逆に言えば・・・この映画から水攻めのシーンをカットしても・・・現実から津波被害はなくなったりしないのである。

水が持っている暴力性に・・・美しさを見出す・・・それが芸術の醍醐味なのである。

まあ・・・悪魔の考える芸術至上主義とはそういうものなのです。

「特定秘密保護法」について「知る権利」の危機を訴えていた芸術家たち・・・どこへ行ったということでございます。

さて・・・群像劇的要素は大きいが、主役は天正18年(1590年)に実在したとされる成田長親(野村萬斎)である。

この映画では「でくのぼう」と仇名される変人として描かれる。

でくのぼうとは木彫りの人形・・・つまりこけしのことである。

手も足もでないがある特定の使用方法によって婦女子に悦楽を与えるのがこけしである。

だから・・・成田氏長は・・・田植えの手伝いもうまくできないおバカさんだが・・・城主の娘・甲斐姫(榮倉奈々)にも武士に強姦された過去を持つ百姓女のちよ(尾野真千子)にもその娘のちどり(芦田愛菜)にも溺愛されています。

それどころか・・・坂東武士より帰農した一筋縄ではいかない百姓たちにも・・・腕に覚えの兵法者揃いの武蔵国忍城の侍たちにもベタベタに愛されているのである。

それは一言で言うと「馬鹿な子ほど可愛い」ということなのである。

馬鹿なのに愛される・・・そういうことが・・・この世の真理のひとつであることが満遍なく描かれるのだった。

さて・・・一方で・・・この年の一大イベントである北条征伐の一環として北条方の支城である忍城(兵数500)を豊臣方別働隊(兵数20000)で攻めるのがおりこうさんの噂の高い石田三成(上地雄輔)なのである。

豊臣秀吉(市村正親)が近江国で見出した三成は・・・その頭脳明晰さで・・・大出世するわけだが・・・ものすごく人気はないのである。

しかし・・・超天才の豊臣秀吉や・・・文武両道の一流武将の大谷吉継(山田孝之)にとっては・・・三成は「戦の苦手な武将」として・・・ある種の可愛さを感じさせるのだった。

つまり・・・「戦の弱い武将」もまた限りなく「でくのぼう」だからである。

そのために・・・秀吉は「絶対に勝てる戦い」を三成に用意し、最高の補佐官であるウシジマくんを武の副官に・・・三成と並ぶ経理エリートの長束正家(平岳大)を文の副官に起用して・・・秀吉的には「バカな子ほどかわいい」三成の男を上げさせようと考える。

そして・・・この誰がどう考えても負けようがない戦いを・・・負けてしまうという三成の奇跡の敗北が描かれて行くわけである。

ある意味・・・史上最強のおバカさん決定戦なんだなあ。

しかも・・・恐ろしいことにこのことはほぼ・・・史実なのである。

そして・・・誰もが愛するバカと・・・一部の人にしか愛されないバカとの運命の出会いが面白おかしく描かれて行く。

もちろん・・・それがメインテーマではないが・・・太田道灌の血を引く名将・太田三楽斎資正の娘・珠(鈴木保奈美)が腑抜けと陰口する忍城々主・成田氏長(西村雅彦)がせっかく準備した和平工作を無視して・・・しなくてもいい開戦をする二人のでくのぼうが・・・明朗活発に描かれるのである。

ここには・・・「生命より大切なものがあったっていいじゃないか」という・・・現代では袋叩きになりそうな危険思想が垣間見えるのである。

つまり・・・腑抜けの大河ドラマでは絶対に見ることのできない、千葉氏出身・正木丹波守利英(佐藤浩市)の三国志ゲーム風一騎討ちで首が飛び、埼玉氏出身・酒巻靭負(成宮寛貴)の油地獄火炎攻めで雑兵が火だるまとなり、江戸氏出身・柴崎和泉守(山口智充)が無双風敵兵田楽串刺しの技を披露するなど血わき肉踊る合戦模様が描かれるのだ。柴崎は木更津に落ちて山口先輩のご先祖になったんだなきっと・・・。

悲しいけどこれ戦争なのよね・・・なのである。

そして・・・結局、豊臣秀吉の側室になる運命の甲斐姫が榮倉奈々史上もっとも可愛いし、ちよとちどりの母子も安定の存在感を示す。

武士に女房犯されて「七人の侍」的百姓男の屈折した心情を持つちよの夫・かぞう(中尾明慶)さえもが・・・最後は「のぼう様愛」を爆発させて戦局を一変させたりするのである。

そして大洪水ですべてが押し流され両陣営沈没である。

痛快だ・・・痛快なのだ。

「戦国」を描く芸術家たちは・・・この姿勢を学んでもらいたいんだよお。

だって・・・そういうあれやこれやがあって・・・今があるんだからさ。

そして・・・地獄絵巻を最後まで淡々と見つめるウシジマくん。

万歳なのである。

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2014年1月28日 (火)

テロリストのすゝめ~足尾から来た女(尾野真千子)

おそろしいドラマである。

国家の無慈悲な政策の結果、家も仕事も家族も失った女が・・・国家を指導する立場にあった人間に訴えかけ、聞きいられずば石を投げるのである。

石を投げられるのが原敬なのである。

大正10年(1921年)原敬は高等小学校中退の転轍手・中岡艮一に刺殺される男だ。

ドラマでは・・・足尾から来た女は鉱毒で母親を殺されたと感じ、原敬は仇であるかのように描かれるし、足尾銅山からの鉱物によって弾丸が作られ、二百三高地帰りの女の兄は・・・戦争に勝ち、生き残ることができたのは・・・憎むべき鉱山のおかげであったとバランスをとるものの・・・。

不満があったら食物に毒を入れるのも正義だ・・・という話である。

このドラマに比べたら、虐待されているドラマ「明日、ママがいない」なんて・・・絶対安全カミソリのようなものだな。

で、『足尾から来た女・前・後編』(NHK総合20140118PM9~)脚本・池端俊策、演出・田中正を見た。もちろん、だからといってこのおそろしいドラマを即刻放送中止にしろなどとはキッドは言い出さない。なにしろ、素晴らしいドラマなのである。人間の不完全さ、どうにもならない矛盾、そして、それでも、生きていくという宿命。そういうあれやこれやを歴史的事件や歴史的人物をちりばめつつ・・・フィクションとして描きあげていく。ドラマの王道をまっしぐらなのだな。

だが・・・このドラマとて・・・まるで原敬を極悪人のように描いていたり、石川啄木が足尾から来た女とキスしたり、土民主義者の石川旭山が足尾から来た女を強姦しようとしたり・・・と嘘八百が誤解を招くような表現を展開していると言えなくもない。

けれども・・・それが表現するということなのである。

もちろん・・・原敬(國村隼)は「銅山閉じてください」と主張する女・サチ(尾野真千子)に「県知事に言え」とアドバイスした後で女に足尾の美しい石を投げつけられるが・・・振り返って苦笑するのみの実にジェントルマンとして描かれている。

しかし・・・それが伝わらない一部お茶の間は必ず存在する。

この「原敬」の慈愛が伝わらないと・・・このドラマの深みは理解できないのだが・・・それを理解しないのが庶民というものなのである。

ところで・・・このドラマは「文盲」ものである。

サチは・・・なんとかひらがなは読めるが・・・漢字は読めない無教養な女なのである。

キッドは「文盲もの」が大好きなので・・・この一点でもこの作品を高く評価するのだった。

このドラマの屈指の名場面は・・・社会主義者・福田英子(鈴木保奈美)の家で国会議員だった田中正造(柄本明)の言動について密偵することを強要されたサチが・・・警察官僚の日下部(松重豊)に「文盲で悲しかったこと」を漏らす件である。

「私の兄は神童と呼ばれた人でした。日露戦争で大陸に出征したのです。戦地から兄は手紙を書いてくれました。でもその手紙を私は読めなかった。父ちゃんも母ちゃんも読めなかった。何が書いてあるのか・・・あんなに知りたかったことはない。でもオレにできたのは手紙を抱いて眠ることだけだったんだ・・・」

これは泣ける。しかし、兄(岡田義徳)は妹がひらがなは読めるのを当然、知っていたはずなので・・・ひらがなで書けばよかったのに・・・とは思うのだった。

まあ・・・映画「プリティーリーグ」の女子プロ野球選手だけど・・・自分の名前も書けない女が・・・所属チームの名前も読めなくて・・・全員が去った後に泣きながら取り残された件、映画「ドライビング Miss デイジー」の黒人運転手が・・・墓碑銘が分らないので・・・墓参りしたい墓にたどりつけない件にはまだまだおよばないと考える。

とにかく・・・石川啄木(渡辺大)が26歳で死ぬ二年前に・・・「我が最近の興味」において・・・。

私は毎日電車に乘つてゐる

此電車内に過ごす時間は、色々の用事を有つてゐる急がしい私の生活に取つて、民衆と接觸する殆ど唯一の時間である。

私は此時間を常に尊重してゐる。

出來るだけ多くの觀察を此の時間にしたいと思つてゐる。

――そして私は、殆ど毎日のやうに私が電車内に於て享ける不快なる印象を囘想する毎に、我々日本人の爲に、竝びに我々の此の時代の爲に、常に一種の悲しみを催さずには居られない。

――それらの數限りなき不快なる印象は、必ずしも我々日本人の教化の足らぬといふ點にばかり原因してはゐない、我々日本人が未だ歐羅巴的の社會生活に慣れ切つてゐないといふ點にばかり原因してはゐない。

私はさう思ふ。

若しも日露戰爭の成績が日本人の國民的性格を發揮したものならば、同じ日本人によつて爲さるゝそれ等市井の瑣事も亦、同樣に日本人の根本的運命を語るものでなければならぬ。

・・・と綴っていたことは申し上げておきたい。

美しい輝きがひとつおこる度に・・・何人か・・・何百人かの人々が確実に宇宙の塵となっていく・・・。

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2014年1月27日 (月)

官兵衛曰く、モ、モー子?(岡田准一)ぶっさん?(酒井若菜)おとんぼ櫛橋光まは(中谷美紀)

・・・ここまでの格調はどうしたっ。

いや・・・今回はどうにもこうにも「木更津キャッツアイ」でございますので。

久しぶりだにゃあ・・・と言う他はないのでございます。

「木更津キャッッアイ」(2002年)から一回り(12年)かあ・・・。

21世紀もすでに1/10以上が過ぎ去ったんだな。

「池袋ウエストゲートパーク」に始り映画シリーズや「マンハッタンラブストーリー」、そして「舞妓Haaaan!!!」にもいた貴重なクドカン女優なのに「あまちゃん」にはお呼ばれしなかったんだなあ。

やはり・・・モー子はモー子なんだもんなあ。

天才の悲しい宿命だよな。

あまりにもインパクトがありすぎるという。

中谷美紀の光は王道だが・・・酒井若菜の光の方がきっとすごい作品になったと思うよ。

ま・・・このチームはそういう所は明らかに目指してないけどね~。

物凄く「天地人」クオリティーの匂いがするよね~。

で、『軍師官兵衛・第4回』(NHK総合20140126PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は黒田官兵衛の父にして小寺兵庫助職隆改め黒田美濃守入道(柴田恭兵)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。日増しに強まる母と子の大河ドラマクオリティー。嫌な予感に満ち溢れてますな~。しかし、まあ、たまにはとんでも大河も一興でございまする。「天地人」もそれなりに妄想膨らみましたし~。東の織田信長はともかく・・・西の毛利元就は元亀2年(1571年)の死亡待ちの勢いでございますな。キャスティングなしかもですな~。官兵衛の織田贔屓、播磨衆の毛利贔屓くらいの対比を見せてもいいのに・・・でございますけれど~。光の完成が待ち遠しい今日この頃ですがあくまでマイペースでお願いします。お風邪をこじらせませんように・・・。

Kan004 永禄8年(1565年)、室町幕府第13代将軍・足利義輝が殺害され、弟・義秋(義昭)は流浪の身となる。反逆者・松永久秀の追及を逃れ、近江、若狭、越前と京都周辺を彷徨する将軍家だった。一方、永禄9年(1566年)毛利元就は宿敵である出雲の尼子義久を降伏させ中国地方八カ国を支配する戦国大名となった。宗家を滅亡させた浦上宗景は備前国の支配を確立し戦国大名となる。小寺家と浦上宗家の同盟が消滅した播磨国では小大名が割拠する分裂状態が続いていた。いずれも守護大名赤松家の庶流を名乗る西の龍野城主・赤松政秀、東の三木城主・別所安治、両者に挟まれた御着城主・小寺政職が睨み合う状態が続く。上洛を望む足利義秋は各地に書状を送るがそれに応じるものはなかった。小寺政職は地縁血縁を固めるために4支城の志方城主・櫛橋家(赤松庶流)の娘・光と姫路城主嫡男・小寺官兵衛の縁組を命ずる。永禄10年(1567年)、小寺兵庫助職隆が隠居し、小寺官兵衛孝高が跡目を継承する。その頃、尾張の国主・織田信長はついに美濃攻略に成功。稲葉山城を岐阜城と改め、天下布武を宣言する。三河の松平元康、北近江の浅井長政と軍事同盟を結んだ信長は伊勢国侵攻を開始し、伊勢国北部を制圧する。将軍家直臣の細川藤孝と織田家家臣の明智光秀の画策により、流浪の足利義昭は織田家に迎え入れられる。将軍を弑した三好三人衆と決裂した松永久秀は東大寺を焼失させた。永禄11年(1568年)、織田信長は上洛戦の準備を完了する。

姫路城主となった官兵衛は人質の身分から解放された。御着城へは父・職隆が側室の神吉氏に生ませた七歳の弟・甚吉(利則)が送られている。

七歳年下の正室・櫛橋光は十四歳で嫁ぎ、十五歳で嫡男・松寿丸(後の黒田長政)を出産することになる。

二十二歳となった官兵衛の精力は旺盛である。幼妻をしたたかに犯した後で、夜の野に出る。

姫路城は小高い丘の上に建ち、周囲は林を擁している。

亡き黒田重隆、職隆、官兵衛と三代に渡って造営を重ねた姫路城は城塞としての備えを向上させている。

城内の林の中の忍び小屋では・・・父・職隆が家督継承のために黒田家の口伝を語ったりもした。

「黒田家は義の家である・・・」と職隆は厳かに言った。

「先祖は北近江の黒田庄に発する近江源氏佐々木氏の一族であった。十一代将軍足利義澄公の御世、前将軍足利義稙公との家督争いが生じ、京を追われた義澄公は近江守護・六角高頼を頼られた。六角家の郎党であった我が祖父、黒田高政は義澄公の元へ馳せ参じたが・・・主君、六角高頼が義澄公を裏切る事態とあいなった。船岡山での合戦で先方を務めたわが祖父は主君・六角高頼が義澄公を毒殺したことを知り、戦場を捨てたのだ。世は再び、足利義稙将軍の御世となり、我が祖父は備前へと落ち延びたのである。守護・赤松家が義澄方だったからである。以来、将軍家は義晴公、義輝公と移ったが・・・黒田家は備前福岡より、播磨姫路へと流れ、兵を養ってきた。それすべて・・・将軍家にご奉公するためである・・・しかし・・・もはや・・・」と職隆は言葉を失った。

「将軍家は空位でございますな・・・」

「もはや・・・主君・小寺家にも恩も義理もある我が家である。黒田家の主としてその恩も返さねばならぬ・・・しかし、我が祖父の志は忘れぬことだ」

「その義・・・受けたまわりましてございます」

「うむ・・・官兵衛・・・励め」

忍び小屋への道筋・・・官兵衛は隠居した父の言葉を思いかえした。

(しかし・・・今は・・・播磨半国も持たぬ小大名の家来だ・・・将軍家への奉公など夢のまた夢だ)

そう思いつつ官兵衛は忍び小屋に入った。

中には広峰衆のくのいちが一人、官兵衛を待っている。

面影が赤松政秀に攻め殺されたおたつに似ている・・・おうまはおたつの妹の一人だった。

広峰神社の一族は半島渡来系の一族である。牛頭天王という邪神を崇拝し、蘇(チーズの一種)を作る技術を古より伝えている。同時に、スサノオ信仰を列島に広めつつ、独自の諜報網を形成した忍びの一族でもある。

黒田悪党と呼ばれる黒田のしのびとは古くからのつながりがあるが・・・官兵衛の祖父・重隆は広峰の一族・伊吹氏と提携し・・・特別のつながりを持ったのだった。

おうまはおたつと同様に・・・官兵衛に渡りの忍者である広峰神人たちが集めた諸国の情報を集約して伝える任を追っている。

しかし・・・同時に官兵衛の忍び妾も務めているのだった。

官兵衛は無言で下半身を露わにする。

おうまは心得て官兵衛の陽根に手を伸ばすのだった。

正室に存分に精を放った後だというのに・・・たちまち屹立する官兵衛の一物だった。

おうまはおたつ以上のくのいちの妙手だったのだ。

やがて・・・濃密なひとときを過ごした官兵衛はようやく寝物語をする気分になった。

「上方の様子から・・・聞こうか・・・」

「京の都の戦は大和国にうつった模様でございます・・・大和の松永久秀は東大寺大仏殿にて三好三人衆と争い・・・将軍・義栄擁立の動きを見せております」

「義栄様は義澄公の忘れ形見義維様の嫡男か・・・弑られた義輝公の従兄弟にあたるお方だな・・・」

「義秋様が将軍に名乗りをあげますれば・・・従兄弟同志の争いとなります」

「どちらにお味方しても義は立たぬということだ・・・」

「義秋様は越前・朝倉を見限り、織田家を頼るそうです」

「織田家か・・・」

「織田信長は・・・直轄地の尾張・美濃に三河の松平、北近江の浅井、伊勢の北畠を合わせた兵五万人を動員し・・・松永家に味方する南近江の六角家に攻め入る気配・・・」

「五万・・・」

敵味方を合わせても千人を越える戦を見たことのない官兵衛にとって・・・それは途方もない兵力だった。官兵衛の心は痺れた。

「・・・」

無言の時を経て、気を静めた官兵衛はおうまをそくす。

「毛利はどうだ」

「山陰の吉川家は尼子の属領をゆっくりと東に浸食しております。山陽の小早川家は・・・備前の浦川家に手を焼いている模様です」

「毛利が足利将軍家に関わる動向はないのか」

「毛利家では中央に関わるのは時期尚早の声が高いようです」

「であろうな・・・」

大内家を・・・次に尼子家を滅ぼした毛利家だが・・・その戦は陰湿である。

合戦で決着をつけるというよりも・・・調略こそがその信条と言える。

武力を背景に旗色を変えさせるのが毛利家の戦だった。

(やはり・・・合戦となれば織田家か・・・)

永禄三年の桶狭間の合戦以来・・・耳に飛び込む織田信長の噂は煌びやかさに満ちていた。

(織田信長の上洛のいくさが・・・見てみたい)

官兵衛の胸に熱い思いが噴き出すのだった。

永禄十一年の夏の熱気が姫路城の忍び小屋に籠っていた。

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天地人の黒田官兵衛へと続く道

永禄年間の天地人

永禄年間の風林火山

永禄年間のちりとてちん

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2014年1月26日 (日)

ミニチュアの街の浅き被写界深度と夕映えの音楽室と波に消えたショパンの調べ(桜井美南)

すべての答えが風に吹かれている頃。

失われた世界から彼らはやってきた。

彼らの存在は世界の儚さを教えてくれた。

熱核戦争による地球の滅亡。

その危機感に包まれたあの頃から半世紀。

世界はいまだ波間に漂う小舟の如く、いつ果てるとも知らずまどろんでいるようだ。

人に宿る狂気は嫉妬、傲慢、憤激、強欲、浪費、怠惰、虚飾、憂鬱を爆発させ、素晴らしいインターネットの世界で踊り狂う。

素晴らしいものを受け入れなければ素晴らしいものには届かないことを不自由な人々に悟らせる術はない。

せめて・・・投稿する前に自分で書いたものを読みなおす努力くらいはしてもらいたい。

ウイルスよ・・・永遠の記録者よ。

嘲笑するがいい・・・この人類の醜態を。

で、『・第3回』(テレビ東京201401250012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。年収23憶円のマーくんがニューヨークに旅立つ。史上最年少のワールドカップチャンピオンはテロリストが潜伏するソチへ。一方で食べ物に毒を入れた容疑者が逮捕され、フィクションの多重債務者は鬱プログを更新する。都知事の候補は「五輪開催中に首都直下型地震が来ても大丈夫な都市にしたい」と抱負を述べる。虚実おりまぜて笑いのたえない2014年である。もう少し元気ならドクター中松を支援したいと本気で考える。そして・・・なぞの転校生・山沢典夫(本郷奏多)は東西山高校2年3組への転入手続きを完了する。

滅びかけた人生を生きる江原正三(ミッキー・カーチス)は恍惚の朝を迎える。

「あああ・・・だれ・・・しらない・・・あんた」

典夫はモノリスを作動させる。

活性化および増幅修正により精神機能のボルテージが一時的に上昇し、恍惚の人から典夫の忠実な下僕となる正三プラス。

「失礼しました・・・」

「大丈夫か」

「昨夜はいささか・・・はしゃぎすぎました」

「すまない・・・お前の命は尽きかけている」

「お気になさりますな・・・涅槃には亡き妻が待っております」

「・・・そうか」

典夫はしばらく名残を惜しむ・・・しかし、登校時間が迫っている。

モノリスには持続的な効果はないようだ。効果範囲も限定されているらしい。

典夫が部屋を出ると・・・正三プラスのつかのまの正気は霧散し・・・知性は減衰して行く。

理事長の寺岡(斉木しげる)に呼び出された大谷先生(京野ことみ)は典夫の転入に驚く。

理事長室にいる見知らぬ少年は奇妙な威圧感を漂わせている。

寺岡理事長の転入生への対応はまるで王侯貴族に遇するが如しである。

しかし、何事にも前向きな大谷先生はなぞの転校生をただちに受け入れるのだった。

登校中の幼馴染同志である岩田広一(中村蒼)と香川みどり(桜井美南)は・・・クラスメートの大森健次郎(宮里駿)と春日愛(宇野愛海)がカップル化していることを発見する。

「二人・・・付き合ってるみたいね」

「そういえば・・・昨日も一緒だったな」

「向こうも私たちを見て同じようなこと言ってるかもよ」

「え・・・」

「私たちはどうなのかしらね」

「え・・・なんだよ・・・それ」

「・・・」

精神的に幼い・・・体は高校生だが心は中学生の広一は戸惑う。

一足早く大人になりかけているみどりはそんな広一にものたりなさを感じるのだった。

そして・・・その気持ちは教室に転校生の典夫が入って来た時に一気に加速するのだった。

みどりはすでに・・・なぞの転校生に心を奪われていた。

その変化に・・・鈍いはずの広一も即座に反応する。

しかし・・・その気持ちをもてあます広一。

「この世界のことをいろいろと教えてください」

(世界か・・・やはりとてもかわった人だ)

みどりは心に新鮮な空気が入り込むのを感じる。

(花を・・・心から・・・愛している人)

みどりには奇妙な典夫の言動が美しい調べとなって感じられる。

一方で・・・広一は理由のない胸騒ぎを感じるのだった。

(何か・・・おかしなことがおこりそうだ・・・)

あらかじめ準備された空席は広一の背後。みどりの臨席だった。

教科書を見せるために机を並べるみどりと典夫に・・・心がざらつく広一。

しかし・・・奥手な広一はそのざらつきの正体を見極めることもできないのだった。

そして・・・授業で・・・「波」について質問された典夫は恐るべき知識量を披露するのだった。

「物理学においては波動という言い方が正確かもしれません。何らかの物理量の周期的変化が空間方向へと伝わる現象です。波動には振動数、周期、振幅波長、波数などの物理量が定義されます。音波や水面の波、あるいは地震波のように物質の振動が媒質を通して伝わる現象の他に電磁波のように媒質がない空間を伝わるものもあります。そもそも宇宙そのものが波であり、渦のようにうねった時空が複雑な波動でいくつもの平行世界を形成しています」

「・・・平行世界・・・そこまでいくと空想科学小説だな」と応じる理科物理担当教師の渡辺先生(岡村洋一)。

しかし・・・それは典夫にとって意外なことのようだった。

「・・・この世界では平行世界の存在は立証されていないのですか?」

「私の知る限りではね・・・あくまで仮説の一つにすぎないよ」

「D12世界について・・・知らないのですか?」

「D12・・・なんだい・・・そりゃ?」

「いえ・・・ちょっとしたジョークです」

「こらこら・・・教師をからかっちゃいかんぞ」

休憩時間。たちまち・・・みどりと広一、健次郎と愛のグループに合流する典夫。

「すごいな・・・ウィキペディアを内臓しているのかと思ったよ」

「ウィキ・・・ああ、素晴らしいインターネットの世界の誰でも編集できるフリー百科事典のことか」

「・・・」

変な奴だと広一は思う。

変な人だとみどりも思う。

「あれ・・・なんだい・・・平行世界って・・・」

「ああ・・・昔、読んだSF小説の話さ」

「なんて・・・作品・・・」

「おお・・・ムーくんの仲間出現だよ」と茶化す健次郎。

「仲間・・・」

「彼、SF研究会の部員なのよ」

「SF研究会?」

「さっきの話・・・タイトルは?」

「さあ・・・誰だったかな」

「アーサー・C・クラークとか?」

「アーサー・C・クラーク・・・彼は通信工学の研究者だろう」

「いや・・・代表的なSF作家だよ・・・2001年宇宙の旅・・・知ってるだろう」

「そうか・・・この世界では・・・とにかく・・・タイトルや作者のことは忘れてしまったよ」

「残念だな・・・面白そうだから・・・読みたかったのに・・・」

みどりは幼馴染の広一と話す典夫を興味深く見つめるのだった。

次の授業中・・・典夫は教室から姿を消していた。

理事長と校舎の屋上で密会する典夫。

「この世界は本当に美しいな」と呟く典夫。

「しかし・・・人間は醜いですよ」と下僕として典夫の支配下にある理事長。

「そうなのか」

「政治家も一般市民も・・・己の欲望に忠実で醜さをさらけだしております」

「まあ・・・モノリスによって次元移動を可能にしたD1世界も・・・僕のいたD8世界も人間なんてものはそう変わらないようだ」

「しかし・・・どこかの世界にはきっと理想の人類が存在しているのでしょう」

「理想の人類か・・・それはもう人類とは呼べないものかもしれないよ」

「そんなものでしょうか」

「そんなものさ・・・とにかく・・・君にはやってもらいたいことがある」

「なんなりと・・・」

「王妃はテロによって負傷なされている・・・ただちに治療が必要なのだ」

「重傷なのですか・・・」

「そうだ・・・今すぐDRSのスペシャリストを集めて欲しい・・・」

「DRS・・・とは何でしょうか」

「何?・・・DNAの書き変え修復医療に決まっているだろう」

「そのような医療技術は聞いたこともありません」

「なんだって・・・まさか・・・」

「DNAは漸くヒトゲノムの解析が終った段階でございます」

「嘘・・・じゃ・・・培養人工臓器の置換技術は・・・」

「それは研究段階で・・・実用化には至っておりません」

「なんてことだ・・・そうか・・・この世界は美しさと引き換えに・・・スピードを失ったのか」

「そちらの世界ではそれほどの進歩が・・・」

「そうさ・・・しかし・・・進歩しすぎて・・・今は・・・すべてを失ってしまったんだ」

「残念なことです」

「見たまえ・・・あの紙飛行機を・・・」

「はあ・・・」

「僕の世界ではあのサイズの無人戦略爆撃機一機で惑星を破壊することができたのだ」

「それは・・・恐ろしいことでございますね」

「ああ・・・本当に恐ろしかったよ」

典夫は絶望を胸に屋上を去った。

モノリスの効力を失った理事長は我に帰る。

「あれ・・・私はここで・・・何を・・・?」

昼食の席に戻った典夫。

「どこに行ってたの」

「少し・・・手続きが残っていたんだ」

「昼飯は・・・」

「・・・外ですましてきた」

「ねえ・・・あなた・・・人物についての自由研究で同じ班になったんだけど・・・いま・・・意見が分かれているのよ」

「・・・?」

「女子たちは麻酔の人体実験で母親を殺して妻を失明させた華岡青州がいいっていうんだけど」

「かなりハードな人物だね」

「だろう・・・女子って基本、残酷なものが好きだよな。男子としてはH・G・ウエルズを推したいんだ」

「SFの父だね」

「そうそう・・・やはり・・・君は僕の仲間なんだな・・・このクラスのみんなときたら・・・ヴェルヌとウエルズの区別もつかないんだ」

「まさか・・・世界一周をしたり、海底を探査したり、初めて月旅行をした冒険家とSF作家を間違えたりしないだろう」

「君のジョークは・・・まったく通じないと思うよ」

「ジョーク・・・」

「だろ・・・」

「そうか・・・こちらの世界では二人とも小説家なのか・・・」

「そうだよ・・・海底二万里のジュール・ヴェルヌ・・・タイムマシンや宇宙戦争のH・G・ウエルズさ」

「つまり・・・この世界にはSFの父は二人いるんだね」

「うん・・・そうそう・・・この世界ではね・・・ということで・・・多数決でウエルズだ」

広一はみどりに微笑みかけた。しかし・・・みどりの視線は典夫に注がれているのだった。

放課後。

みどりは自分が所属する吹奏楽部に広一を勧誘する。

「音楽か・・・」

「楽器できるんでしょう」

「とにかく・・・様子を見せてもらいたい」

吹奏楽部の顧問・・・大谷先生は典夫を歓迎する。

しかし・・・典夫は・・・。

「どうやら・・・僕には向いていないようです」

「まあ・・・どうして」

「僕の肺活量には問題があるのです」

「まあ・・・病気なの」と心配するみどり。

「いいえ・・・生まれつき肺がないのです」

「肺がないって・・・ああ・・・先天性なものなのね」

「同情にはおよびませんよ・・・生活には支障がないですから・・・」

しかし・・・大谷先生もみどりも・・・麗しげに典夫を見つめるのだった。

「では・・・僕はこれで・・・」

「どこに行くの」

「もう少し・・・校内を偵察したいと思います」

「偵察・・・?」

典夫はSF研究会部を訪問する。

「やあ・・・」

広一は・・・鈴木(戸塚純貴)や太田(椎名琴音)と自主制作映画の撮影中だった。

ミニチュアの都市を襲う、火星人の戦闘機械のシーン。

「これは・・・面白いな」

「ウエルズの宇宙戦争だよ・・・」

「君は本当にSFがすきなんだね」

「ウエルズは科学ロマンス・・・つまりSRって名付けたらしいけどね」

「彼は国家主権を排して地球の統一を主張していたんだったね」

「そうさ・・・だから国際連盟も国際連合も批判した・・・まあ・・・第二次世界が終結した次の年に亡くなったわけだけど・・・」

「ウエルズの作品・・・解放された世界・・・では原子核反応による最終兵器が登場するね」

「そうだ・・・結局・・・彼の予言は半分当たった・・・原子爆弾の投下によって・・・戦争は終結したからね・・・」

「今のところはね・・・」

「君の世界では・・・どうなった」

「え・・・」

「ジョークだよ」

「なるほど・・・」

「ねえ・・・SF研究会に入ってくれないか」

「もう少し・・・考えさせてくれ・・・」

「お待ちしてます・・・廃部寸前なんで・・・」と眼鏡っ子はおねだりした。

典夫が出ていくと・・・広一は眼鏡っ子をからかう。

「珍しいな・・・猫撫で声だして・・・」

「だって・・・あの人・・・超やばいですよ・・・あの人入部したら・・・女子部員激増間違いなしです」

「そうなのか・・・」と広一は女心をまったく理解しないのだった。

そして・・・典夫は再び・・・音楽室に向かう。

しかし・・・そこは無人だった。

典夫はピアノに向かい・・・「前奏曲第15番変ニ長調・雨だれ/フレデリック・フランソワ・ショパン」を奏で始める。

そこへ・・・大谷先生がやってくる。

「いい曲ね・・・あなたのオリジナル?」

「ショパンの雨だれですよ・・・」

「ショパン・・・聞いたことがないわね」

典夫は音楽室に飾られた名匠たちの肖像画を見る。

ショパンの肖像画もあったような気がしたが気のせいかもしれない。

「そうですか・・・こちらの世界ではショパンは無名なんですね」

「どうぞ・・・続けて・・・私が用を片付けて・・・教室を閉めにくるまで・・・でも・・・本当にいい曲だわ・・・知らなかったのが嘘みたい」

「あるいは・・・ショパンは最初から存在しなかったのか・・・」

大谷が去って間もなく・・・血相を変えてみどりがやってくる。

「どうしたんだい・・・」

「財布がないの・・・」

どうやら、みどりは財布を失くしやすい体質らしい・・・。

「お金・・・」

「お金はどうでもいいの・・・母の形見の指輪が・・・入っているの」

「カバンは捜したの・・・」

「最初に見たわよ・・・」

「この辺りにありそうだ・・・」

典夫は魔法のように財布の在り処を探り当てる・・・。

「うそ・・・ありがとう・・・」

「失いたくないという思いが強すぎて失いそうになるのかもしれないね」

「・・・ねえ・・・今、ピアノ弾いていたでしょう」

「ああ・・・」

「もう一度弾いて・・・凄くいい曲だった」

「いいよ・・・」

窓から広がる黄昏の光。そして雨だれのリズムとメロディー。

「美しい曲ね・・・なんて曲」

「うん・・・ショパンの雨だれの前奏曲さ・・・」

「ふうん・・・初めて聞いたわ・・・」

みどりのいる世界には黒澤明監督の映画「夢」で「雨だれ」は奏でられない。

もちろん・・・「アイ・ライク・ショパン/ガゼボ」も日本語カバーの「雨音はショパンの調べ/小林麻美」も存在しない。

大林宣彦監督の映画「さびしんぼう」では練習曲第3番ホ長調「別れの曲」が流れない。

「ノクターン/カンパニュラの恋」を平原綾香が歌ったりもしないのである。

「のだめカンタービレ」なんて後半盛り上がるのか心配になるのだった。

つまり・・・広一やみどりのいる世界は・・・お茶の間とは別世界なのである。

すると・・・ひょっとしたら・・・典夫の滅んだ世界こそが・・・「猿の惑星」なのかもしれない。

さあ・・・一部愛好家的には完全に盛り上がってまいりましたああああああっ。

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2014年1月25日 (土)

男女関係における金銭の授受は犯罪です(山田孝之)

育児放棄も犯罪である。

ゴムパッチンの強制も犯罪である。

集団暴行も犯罪である。

摘発されない犯罪につぐ犯罪・・・。

そういう世界を描くことに何か問題があるだろうか。

この世に生まれ、生きていくことを肯定することは人間の基本である。

しかし、それが全くの善と言えるかどうかは別だ。

たとえば・・・個人の意志の問題がある。

意志が薄弱な人格を保護することを善と考える人は多いだろう。

しかし、意志が薄弱な人が生を全うすることが善とは限らないという考え方を否定することはできない。

常に一定の自殺者がいる以上・・・それは現実なのである。

もちろん・・・宗教というフィクションにおいてはあらゆるルール設定が可能である。

人工中絶を認めない宗教が・・・その理念に基づいて慈善的行為を行う。

それは時には育児放棄という犯罪の助長にもつながりかねない超法規的行為である。

だが・・・殉教的精神で個人的主張をつらぬくことは自由である。

そして、それをバックアップする自治体があってもいいだろう。

しかし、そんな独善的なものが表現の自由に物申す状態は非常に危険である。

それを認めるのはある意味で狂信者の許容である。なぜならそれはやくざのいいがかりや、自爆テロとなんら変わるところはないからである。

で、『ウシジマくん Season2・第2回』(TBSテレビ201401240058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・山口雅俊を見た。ブラック企業なるものがあるが・・・「カウカウファインナンス」は企業ではない。闇金融というシンジケート(組織)なのである。なにしろ・・・税金なんて払っていないはずである。ウシジマくんは「社長」と呼ばれるが・・・あくまで組織内のコードネームであり、とにかく会社としての経営実態はないのだ。なにしろ・・・貸してはいけない金を貸し、とってはいけない利子をとるからである。社長でなければ親分とかボスとか・・・そういう呼称が・・・そこはね。

借りてはいけない金を借りたものが「法的に返す必要はない」と返済を拒否することはできる。

しかし・・・同時にそれは・・・人生の終りを意味するという世界である。

「裁判に負けたって・・・返済はしてもらう」

ウシジマくんが無表情に告げたら・・・「法」などというものにはなんの力もないのだ。

だから・・・カウカウファイナンスではまったく非人道的な行為が今日も繰り広げられる。

一方で・・・ホストクラブ「ニューロマンサー」の雇われ店長である隼人(武田航平・仮面ライダーキバ)は裏社会のルール・・・爆弾(禁止行為)である裏引き(店を介さず客から直接金を要求する事)・・・を実行し、オーナーの慶次(徳山秀典・仮面ライダーザビー)から罰金七百万円の支払いを命じられる。

「逃げたら・・・全身(顔面を含む)に刺青して・・・二度と表を歩けないようにしてやるぜ」

暴力的なケツモチ(支援暴力団体)を連れて凄むオーナーの慶次に隼人は心から恐怖を感じるのだった。

そもそも・・・ホストになるような人間である。・・・偏見に基づいて記述しています。

彼を救援してくれるものなどいない。

だが・・・隼人は・・・昔のホスト仲間で・・・現在は「カウカウファイナンス」の構成員である高田(崎本大海)に巡り合い、すがりつくのだった。

「ホストをやめて・・・お前の仕事を手伝いたい・・・」

友達思いの高田は・・・隼人の頼みを断りきれないのだった。

闇金業者のくせに義理人情に弱いというものすごく心に沁みる設定です。

隼人を連れて事務所にやってくる高田。

店内では・・・第1シーズンで個室サービスの店「エロリアーノ」の瑞樹(かすみりさ)のエース(上客)からNG客(出入り禁止)にまで転落した性風俗依存症のキオオタ客で・・・通称・雨男の丸山満男(平田実)が借金返済者としての調教を受けていた。

洗濯バサミでBブロック(地区)はさみあげの刑である。

半裸の丸山くんは・・・返済が滞っているらしい。

あくまで業務として丸山くんを折檻しながら指導する柄崎(やべきょうすけ)だった。

時々、洗濯バサミを引っ張る柄崎に呼応して「ひー」と泣く丸山くんだった。

事務所の隅では受付事務員・摩耶(久保寺瑞紀)が淡々とデスクワークをしている。

「そいつはだれだ・・・」

「昔のホスト仲間で・・・闇金の仕事を手伝いたいって言うもんで」

「ひー」

「人手は足りてるって言っただろう」

「ひー」

「・・・面接だけでもしてもらえますか」

「ひー」

「じゃ・・・一応、高田が面倒みろ」

「ひー」

「いいんですか・・・この間みたいに裏切り行為をされたら・・・」

「そん時は・・・高田に責任とってもらう」

「ひー」

「おい、お前・・・お前がなにかしでかしたら・・・高田からけじめ(命を含む罰金)をとるからな」

「・・・」

「それじゃ・・・取り立てに行こうか」

丸山くんは寝た切りの父親の年金を借金返済に充てているが・・・なにしろパンク(経済的逼迫)の身の上である・・・今回はやりくりがつかなかったらしい。

丸山くんの自宅で電化製品などめぼしいものを回収するヤク・・・カウカウファイナンスの一行だった。

「この時計はどうします」

「安物すぎて・・・手数料ひいたら赤字だよ」

キッドの自宅には震災後の緊急対応策として眼下のディスカウントショップで1000円で買った年代物のテレビデオがあるが・・・それに似た物品を抱える柄崎だった。

思わず・・・テレビデオを見て・・・お前も苦労したなあと語りかけたい気持ちになる。

「最初は五万円の借金だったんだけどな・・・返済を続けるうちに利息が膨らんで今では百万円になってる。利息だけで一月百五十万円になるから・・・絶対に返済できないんだ」

「・・・」

高田の解説をぼんやりと聞く隼人だった。

次は・・・例の児童公園で・・・安全に稼げる店で売春するホスト狂いの一児の母・太田ハル子(朝日奈あかり=ドラマ24「嬢王 Virgin」の神崎エリナ)から利息を回収するウシジマくん。

「ねえ・・・もう五十万貸してよ」

「返済できるのか」

「私・・・早朝予約まで入っちゃう売れっ子だからね。なんか・・・女として自信でてきたっていうか」

「身体で払うってか・・・」と柄崎。

「あんたは嫌よ・・・あたしってもう客を選べるポジションなんだから」

「あの女・・・うちの店の客だ」とつぶやく隼人。

「客の個人的なことには触れるな」と注意をする高田。

高田は・・・隼人がうすらぼんやりであることに幽かに危惧を感じる。

茫洋とした高田も実は・・・闇に生きる人間としての緻密さを身につけているのだ。

「明日、事務所に来い」とウシジマくんは・・・憐れな可愛い七つの子(須田瑛斗)に魚肉ソーセージを与えるのだった。

七百万円支払いの期日に怯える隼人。

(この人が俺を守ってくれるかもしれない)

などとウシジマくんの後ろ姿を眺める・・・まさに恐ろしい勘違いである。

そこへ・・・通りすがりのケツモチたちが現れ、思わず身を隠す隼人だった。

そんな隼人を・・・じっと観察するウシジマくん。

怖いのである。

さて・・・どうやら・・・第2シリーズの主要人物の一人らしい・・・30代ダメ人間「鬱ブログ」を素晴らしいインターネットの世界に立ち上げる宇津井優一(永野宗典)は今日もパチスロ店にいる。

しかし・・・今回は「当たり」を引いたのだった。

100万円つっこんで・・・10万円当てても90万円の損失だとは思わないのがギャンブラーというものである。

思わぬ幸運にスキップしながら・・・カウカウファイナンスの返済に出向くギャンブラー優一。

コンビニで好きなお菓子を買いこみ、両親の目を盗んで自宅に戻ると・・・虚しさを解消するために出会い系にアクセスするのだった。

宇都井の両親。テレビを見続ける父の優作(宮川浩明)はまだしもも母の美津子(島ひろ子)は素晴らしいインターネットの世界で株式投資の信用取引をしている気配である。

「あ・・・またさがった」とか言ってるので母子ともども地獄行きの予感が・・・。

そんなこととは露知らず・・・小学校の初恋の女・水野結花(篠川優莉香)が結婚して橋本結花(伊藤麻実子)になっていて幻滅したはずなのに・・・思わずユカ(仮名)という女との待ち合わせを選択する優一なのである。

おばさんだかおじさんだかわからない人の接近にたじろぎつつ・・・幸運の風に吹かれて・・・そこそこいい女にめぐりあった優一だった。

天にも昇る気持ちでユカ(稲川なつめ)とラブホテルにしけこむ優一。

「君の夢は何・・・」

「いきなり、夢の話?」

もう・・・痒いところに手が届くダメ男ぶりをさらけ出す優一。

会話に自信喪失した・・・優一は自分と女の間のテーブルに現金二万円を置くのだった。

ユカは無言で服を脱ぎ、下着からのぞく割れたパーツを一部愛好家にサービスしながらバスルームに消えるのだった。

シャワーを浴びた女に・・・愚問を続ける優一。

「昼間はなにして働いてるの」

「専門学校生・・・あなたは」

「俺は・・・建築関係だけど・・・お金に困ってるの」

「・・・淋しいから」

「そういう時は・・・友達とカラオケしたりしないの」

「私・・・会話が苦手なの」

「嘘・・・普通に会話してるじゃん」

「こういう・・・二度と会わない相手となら・・・本当の自分を見せなくてもいいでしょ・・・でも学校の友達とかと・・・話していてしくじったら・・・とりかえしがつかないと思うから・・・うまく話せなくなる・・・」

「・・・俺だって・・・今までダメだっからこれからもダメに決まってるってつい思っちゃうダメ人間さ・・・」

ユカは自らベッドに入り・・・優一を誘うのだった。

良心的な援助交際相手に恵まれ・・・至福の時を過ごす優一。

しかし・・・行為を終え、ラブホをでると不平屋としての埒もない気分に支配されるのだった。

(なんか・・・女って重いよな)

しかし・・・本当は・・・女の電話番号を聞き出し・・・交際してみたい優一である。

ユカはそういう気配をなんとなく醸しだすのだが・・・もちろん前向きに踏み出すことなどできない優一だった。

ユカと優一は虚しく右と左に別れるのだった。

同じ時間を過ごし、女は二万円を得て、男は二万円プラスホテル代を失った・・・ただそれだけのことである。

優一の幸運は一日でゼロになったのだった。

ウシジマくんは金主の大原正一(徳井優)に呼び出される。

何故か・・・「僕のいた時間」的なことになっている大原。

大原ガールズもおニューになっている。

ニュー大原ガールズはセンター(池田夏希)、レフト(鈴木咲)、ライト(神谷まゆ)という布陣である。

「ウシジマくん・・・僕は最近、健康を損ねて・・・健康ドリンクにこっている。僕が君に1ヶ月15%という超お得な金利で大金を貸しているのは何故だと思う。君が好きだからさ。だから君には健康でいてもらいたい。さあ・・・飲みたまえ・・・ミドリムシでおなじみのミドリ汁を」

「結構です・・・」

「君は僕を信用できないのかな」

「信用しています」

ミドリ汁を一気飲みするウシジマくんだった。

「金主に呼び出された時の社長は機嫌悪いから注意しろよ」と警告する柄崎。

憮然として戻ってくるウシジマくん。

もう・・・鴨せいろを食べるしかないらしい。

鴨せいろ日和。曇ってるじゃないか。天気晴郎なれど波高し。

「カウカウファイナンス」ではゲイの森下くん(金谷マサヨシ)が返済を滞らせ、犯罪的な「かわいいものシリトリゲーム」により、犯罪的な罰ゲーム「ハバネロ一気飲み」で調教されている。

ウシジマくんは無表情だが・・・少し鬱憤が晴れたようだ。

そこへ・・・父親の年金が支給された丸山くんがやってくる。

二人は小学校の同級生だった。

それを知ったウシジマくんは丸山くんと森下くんを相保証させるのだった。

お互いが保証人となり・・・どちらかが返済を滞らせれば犯罪的な責任を追うわけである。

犯罪的なゴムパッチンで説明するウシジマくんだった。

さまんさ(内田滋)がバーテンダーをつとめるゲイバーで森下くんは愚痴る。

「ひどいでしょ・・・ハバネロの後のゴムパッチンなんて・・・」

「保証人なんてなって大丈夫なの」

「私が小学生の時、クラスで最低人間コンテストがあって・・・私が一位になって・・・あの子は二位だった。二人は全裸でボクシング対決を強要されたの・・・いじめられたものの気持ちはいじめられたものじゃなきゃ・・・わからない・・・あの子は私を裏切ったりはしない」

もちろん・・・ウシジマくんの世界にそんな理屈は通用しないのだった。

丸山くんは・・・父親の枕元で・・・回収さえされなかった安物の腕時計を見つめる。

時を刻む秒針。

一日の業務が終ったカウカウファイナンス。

「これは今日の売上と通帳だ・・・明日アサイチで入金しろ」と隼人に命ずるウシジマくん。

「持ち逃げするなよ」と柄崎。

「そんなことしません」と隼人。

「じゃ・・・今日は飲みに行くか」

おでん屋である。

「柄崎、お前・・・おでんは何が好き」

「チクワブです」

「摩耶は」

「ハンペンです」

「高田は・・・」

「俺は・・・えっと」・・・高田は危険な空気を察知していた。

「隼人は・・・」

「タマゴです」

「社長は」と柄崎。

「俺は・・・牛スジ・・・じゃ、乾杯」

生ビールのジョッキを掲げ、隼人は一口飲む。

「はい・・・失格・・・クビだ・・・大金を預かって酒を飲む奴は金融屋にはむかねえ」

暗澹として店を出た隼人を高田が追う。

「ごめんな・・・隼人」

「お前は悪くないさ」

「これ・・・五十万円ある・・・やるよ」

「いいのか」

「金に困ってるんだろう・・・なんかあったら連絡してくれ」

「・・・」

高田が去るとありがたさに涙がにじむ隼人。

しかし・・・そこに襲いかかるケツモチたち。

店では・・・摩耶が隼人に少し同情的である。

「ちょっとアンフェアじゃないですか」

しかし・・・柄崎は聞く耳をもたない。

「ハル子の奴・・・ホストと海外旅行にいってるんだ・・・かわいそうに残されたガキはよ・・・飢え死にしかかっていた」

摩耶も柄崎もすごくいい人なのだが・・・基本的に犯罪者です。

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2014年1月24日 (金)

君(多部未華子)をあきらめるための時間(三浦春馬)

もうすぐ必ず死ぬ恋人になってしまったら・・・どうしたらしいいだろうかと。

恋人のいない人は悩まなくていいので幸いである。

何不自由なく育ててくれた親に何一つ恩返しできない身体になってしまったら・・・どうしたらいいだろうか。

両親のいない人は悩まなくていいので幸いである。

働くことができなくなってしまったら・・・どうしたらいいだろうかと。

仕事のない人は悩まなくていいので幸いである。

もうすぐ死ぬという甘美な現実。

明日、あなたがいないということ。

で、『僕のいた時間・第3回』(フジテレビ20140122PM10~)脚本・橋部敦子、演出・葉山裕記を見た。主治医の谷本医師(吹越満)が登場していよいよ・・・終りの始りである。「死」についてどう向き合うのかはまさに個人的な問題だが・・・フィクションでは不特定多数の人がそうであるだろうというキャラクターを造形することが肝心であることは言うまでもない。善人過ぎず、悪人過ぎず、恵まれ過ぎず、不幸過ぎず、失うものが多過ぎず、少なすぎず・・・この脚本家はそういう設定においては名人級と言っていいだろう。

そして・・・移ろいやすい心と・・・変わらぬ思いの見事なバランス。

今季の水曜日の午後十時は特異点ともいえる濃密な対決となっている。

名作ドラマとして一歩も譲らない白熱の対峙。

録画システムの発達した時代で本当によかったと思う。

・・・僕は素晴らしいインターネットの世界を呪う。

こんなに簡単に残酷な病気について自己診断ができるなんておかしいじゃないか。

僕は自分の知性を呪う。検索の方法を知っていることを怨む。

僕は接続できる環境を呪う。端末とつながっている世界を呪う。病気ではないすべての人間を呪う。

前座の形成外科医(西山聡)から・・・真打ちの神経科医(吹越満)を紹介されるまで・・・僕は執行猶予の時間を与えられる。

明日のことなんてわからない僕と、もうすぐ死ぬかもしれない僕の中間地点。

最高の恋人・本郷恵(多部未華子)の家庭訪問。

君のお母さん(浅田美代子)の手料理はおいしい。

特に唐揚げは・・・。

「僕のお母さんも僕が落ち込むと唐揚げ作ってくれたよ・・・僕の大好物だったから。だから唐揚げが食べたくて落ち込むふりをしたりした」

「食べたいって言えばいいのに・・・素直じゃないんだから」

そうだよ・・・僕は素直じゃないし・・・不治の病かもしれないんだ。

僕は夢と現実の境界線を彷徨ってふわふわと浮いているような気分になる。

繁之先輩(斎藤工)の前で身体の自由が失われて行く。

職場でも力仕事が出来なくなってしまう。

背が高いのに・・・高い所に手が届かない。

このまま・・・僕は何もかも失って行くのだろうか。

まあ・・・いいや・・・どうせ最後には何もかも失くしてしまうのが・・・人生だもの。

子供の頃、あんなに優しかったお母さん(原田美枝子)が今ではそれほどでもないように。

ついに真打ちが登場する。

僕の人生を専門的な知識で診断する・・・その道の権威。

藁にもすがる僕の思いを一つずつ正確に打ち砕いてくれる神の使者。

「家族がいらっしゃらないのであれば・・・直接申し上げるしかありません。あなたは治療方法が確立されていない病気と診断されました」

「ALSですか」

「そうです・・・大切なのは・・・びょおおおきにつういいてえたあだあしいいくうううりいいいかあああいいいいいいいいしいいいいいいいいてええええええええええええほおおおおおおおんきいいいいいいいいいいでええええええええむきあって」

僕は認めたくなかった。

僕のお父さん(小市慢太郎)は立派なお医者さんだ。

立派なお医者さんの息子がそんな難病指定された病気になんかなるわけないでしょう。

「どうした・・・珍しいな」

「お父さん・・・誤診ってしたことある」

「なんだ・・・突然」

「誤診の確率ってどのくらいあるものなの」

「少なくとも私は一度もしたことないから・・・今の処、ゼロパーセントだよ」

そうか・・・僕が死なない確率はゼロパーセントですか。

君と僕とバカップルカップに残された時間は少ないらしい。

僕は・・・君と・・・楽しい時間を過ごすことにした。

僕ができる限りの楽しいことって温泉旅行に行くくらいのことだけどね。

友達の守(風間俊介)をうらやましがらせてやる。

だって・・・お前より僕の方が残された時間が少ないなんて不公平じゃないか。

湯けむりが隠す僕の秘密。

湯船に揺れる君の白い肌。

幸せそうな君に僕は今、残酷なことをしている。

でも・・・いいだろう。

君より僕の方が選択肢が少ないんだ・・・きっと。

お医者様でも草津の湯でも治せない病気があります。

君をこんなに抱きしめても。

僕がこんなに抱きしめられても。

君を哀しませたくない。

君を哀しませたくない。

君を哀しませたくない。

だけど。

ついに・・・ペットボトルのふたをあけるのも困難になってきた。

こうなったら・・・一生分のペットボトルのふたをあけるしかない。

一生分だってたいしたことはないだろう。

そんな奇妙なことをする兄さんでごめん。

僕より優秀だけど友達がいない弟(野村周平)は呆れたような顔をする。

僕は見た。

ベッドの上で呼吸器をつけて喋ることもできない筋萎縮性側索硬化症の患者を。

僕の未来の姿。

胸に湧き上がる嫌悪感。

僕もやがて誰かにこうして嫌悪されるのだ。

隣の小学生・桑島すみれ(浜辺美波)は僕に気があるらしい。

ごめんね・・・君が大人になる頃に僕はもういないと思うよ。

「僕の死刑執行はいつですか」

「死刑囚に自分をたとえる患者ははじめてです」

「僕はいつごろ死ぬんですか」

「病気の進行には個人差があります」

「おかしいじゃないですか」

「・・・」

「診断が難しい病気だっていうじゃないですか」

「症例が少ないので・・・専門医も少ないからです。しかし、私は専門医です」

「僕は・・・確かにいい加減に生きてきました。今が楽しければいいと思ったからですよ。嫌なことはなるべく考えないようにして・・・親とも距離を置いて・・・恋人とだって将来の心配までしていないし・・・でもようやく正社員になれたんです。これから僕の本気の人生をはじめようかって・・・」

「・・・」

「僕は見たんです・・・僕と同じ病気の人・・・」

「・・・」

「あれで・・・生きてるって言えるんですか」

「・・・」

「いいんですけどね・・・僕には大切なものんてないし・・・やりたいこともないし・・・僕がいなくなって困る人もいない・・・僕なんていてもいなくても変わらないから」

「・・・」

「じゃ、帰ります・・・」

「・・・お大事に」

君を哀しませる。

君を哀しませる。

君を哀しませる。

介護のアルバイトをして・・・人の役に立つことがうれしそうな君。

そんな君を哀しませるためだけに出会った僕。

上京したお母さんが弟のために作った唐揚げの残りを食べる。

そんなに卑下することはないか。

お母さんは少しは僕のためにも作ってくれたはずだ。

お母さん・・・唐揚げ・・・美味しいよ。

お母さん・・・僕はあなたを哀しませるよ。

お母さん・・・お母さん・・・お母さん・・・。

「助けてよ・・・」

僕は一人で泣いてしまった。

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2014年1月23日 (木)

華麗なる円舞曲を貴方に(桜田ひより)青い空、白い雲、赤い風船に謝罪(鈴木梨央)シャンプーの秘密(五十嵐陽向)

二十歳になったら大人である。

しかし・・・多くの人間はまだ未熟である。

それぞれの未熟さが個性なのである。

新たにバカッターに加わったキャロライン・ブーヴィエ・ケネディ第29代駐日アメリカ合衆国大使(56歳)もまたある意味で未熟である。

第35代大統領ジョン・F・ケネディという父親を凶弾で失うという過酷な経験も彼女を成熟した大人には育てなかったのである。

もちろん・・・人として「イルカを殺すものは人間ではない」という信念を持つことは自由なのである。

それだけで彼女の全人格を否定することはできない。

しかし・・・彼女が日本人を自分と対等な人間であると考えていないことは明白になってしまったし、それによって生じた様々な不都合は彼女の存在価値を大きく引き下げたことだろう。

だが・・・もの言えば唇寒し・・・ということを彼女が学ぶことはないように感じる。

もちろん・・・これは米国による一種の威嚇であり、日本人はそれなりに彼女に用心しなければいけないということになる。

なにしろ・・・この国は米国に何十万人もの女子供が大量虐殺されているのだ。

ほら・・・無用な疑心暗鬼を巻き起こしてしまう・・・それが未熟というものなのだ。

同様に・・・里親と里子の関係は個人的な問題である・・・それをいかにも全体的な問題だと主張することも未熟である。

地域の特別な問題を国家としての問題に置き換える名護市の女子大生がいた。

しかし、彼女は「どの地域にも特別な問題がある」ということを失念している。

友人の本土留学組が本土の大学で問題提起しないことを歯がゆく感じる彼女。

それが未熟というものなのだ。

ソチオリンピック開催地ではロシアに恨みを抱くテロリストが潜伏中である。

闇に潜む彼らを未熟と呼ぶことは難しい。

夢と平和の祭典が血に染まらないことを未熟な悪魔は祈るばかりである。

これは親に捨てられた子供たちは・・・未熟であることを超越しているという話だ。

で、『明日、ママがいない・第2回』(日本テレビ20140122PM10~)脚本・松田沙也、演出・猪股隆一を見た。とにかく・・・放送中止にならなくてよかったと考える。子供をペットにたとえることを否定するとペット愛好家が怒るからな。子供と同じようにペットも虐待してはいけない時代なのである。時には和歌山県太地町の人間よりもいるかの方が尊重されたりするわけだから。ビーフ・シチューには食欲をかきたてられるが犬汁にはおえっとなる人間も多いだろう。牛たちはドナドナを歌うしかないのである。歌えないけどなモー。

叶(木村文乃)も孤児であったことが明らかになった今回。

何度も説明しているが、「孤独」とは幼くして親のない状態をさす「孤」と年老いて子供のない状態をさす「独」とが合わさった状態である。

どちらも・・・生きている上で不便である。

里子と里親は共に「孤独」を回避するためにペアリングを行うわけである。

それはあくまでシステムであり、そこに善悪はない。

もちろん・・・成人し・・・健康的な人間は「孤独」に不都合を感じない場合がある。

だが・・・「明日、老いる」ことは確実なのである。

だが・・・個々のケースではそれぞれの事情がある。その複雑な関係を描く手段がドラマなのである。未熟な考えの人はドラマを通じていろいろと感じるべきだろう。フィクションはけして受け手をパチンコ店の駐車場に置き去りにしたりしないのである。

「さあ・・・新しい飼い主の資料が届いたぞ」

養子縁組をペット購入とたとえる魔王(三上博史)は孤児たちに買い手の情報を与える。

ピア美(桜田ひより)は裕福そうな川島夫妻(大塚寧々・松重豊)を選択するが・・・もう一つの孤児脱出ルートである「玉の輿」に乗るために裕福な同級生・笹塚蓮(藤本哉汰)の誕生パーティーの開催日と・・・里親とのお試し交流の日が重なったために・・・川島夫妻を消極的なドンキ(鈴木梨央)に押し付ける。

ピア美は蓮との結婚を夢見るが・・・おぼっちゃまの蓮はないものねだりで・・・蓮っ葉のポスト(芦田愛菜)に魅かれていることが明瞭である。

ポストは・・・擬似母子関係にある幼いパチ(五十嵐陽向)がお見合いすることになった安田夫妻(長谷川朝晴・江口のりこ)のことが気にかかるのだった。

里親たちの共通項は・・・基本的に「子供を授からなかった夫婦」である。もちろん・・・経済的余裕があれば・・・片親やすでに子供のいる夫婦も里子を得ることは可能だが・・・それは特殊なケースということになる。

一方で・・・里子たちは・・・親から捨てられたり、親を失ったりしている。

しかし、虐待した親さえも慕うという精神的ジレンマを抱えているという基本がある。

乳児時に捨てられたポストさえ・・・その傾向があるわけである。

今回も「実の親」と「育ての親になろうとするもの」のギャップが描かれて行く。

大河ドラマ「八重の桜」で親子を演じた・・・松重豊と鈴木梨央が豪華共演する・・・川島とドンキである。

妻は大塚寧々というゴージャスな顔合わせである。

「生まれて初めて遊園地に行ったドンキ」と川島夫妻の仲睦まじい擬似親子関係がにじみ出る三人の演技力・・・。

しかし・・・あまりにも幸せな自分をガラス窓に見出したドンキは罪悪感に襲われる。

本当のママ以外に心を許した自分を持て余すのだった。

同時に川島夫妻の優しさに応えられない自分を恥じるのだった。

ドンキの手を離れ青い空に消える赤い風船。

「ごめんなさい・・・」

突然、泣きだしたドンキに戸惑う川島夫妻・・・里親候補に何の落ち度がなくても・・・乗り越えられない壁がある・・・。

一方で・・・児童相談所の水沢は安田夫妻の・・・妻・美智子(江口のりこ)に直感的な危惧を感じる。

「子供が欲しくて欲しくてたまらなかったんです・・・夫の体質的な問題があって」

責任の所在を明確にする思いやりのなさが・・・気になるのである。

案の定・・・美智子は・・・ギャンブルに狂って育児放棄した実の母親のシンボルである・・・パチのシャンプー容器の排除を強行する。

「種なし」であることに負い目を感じる美智子の夫は妻の暴走を諌めることができない。

問題児への配慮に欠けた未熟な夫婦なのである。

「傷をかかえた子供たちなんです・・・無理は禁物です。私は・・・子供の頃・・・強く手を引かれたことが原因で・・・誰とも手をつなげない心の病を抱えてます」

水沢は魔王に語りかける。

魔王もまた心に闇を抱えているが・・・それはおそらく次回のお楽しみなのだろう。

普通の家庭の子供たちに・・・おぼっちゃまの誕生パーティーで辱めを受けるピア美。

しかし・・・元お嬢様のピア美は圧倒的な「華麗なる円舞曲(作品34)/フレデリック・ショパン」を奏で「仔犬のワルツ」(企画・野島伸司)的世界を表現するのだった。

けれども・・・おぼっちゃまのお目当てはあくまでポストである。

そしてポストは大暴れして誕生会を滅茶苦茶にして・・・おぼっちゃまはますます野性的なポストにうっとりするのである。

アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットの養子になることを夢見るボンビ(渡邉このみ)はたまたまジョリピーな理想の父親候補・東條祐樹(城田優)に愛児がいることを知り叫ぶ。

「子供いるんかい」

安田夫妻の部屋でお泊まり中のパチは・・・案の定、実の母親への嫉妬から狂気を発症した安田美智子にシャンプーの容器をとりあげられ入浴を強要されたことで・・・熱中症で死にかけた記憶がフラッシュバックして意識が混濁してしまう。

ある意味でこのドラマに難癖つけてくる精神に問題がある人々を象徴するような江口のりこならではの熱演である。トレビアンだ。

第六感でパチの危機を察したポストは「結婚できない男」的に隣室から・・・安田家に殴りこみをかけるのだった。

「あのゴミ・・・」とポスト。

「ゴミ・・・」とピア美。

「ゴミをあさるまで・・・私たちはおちぶれてないよね」とボンビ。

こうして・・・今回は里子候補と里親候補はカップリングに失敗するのだった。

しかし・・・本当は優しい魔王はパチのために新しいシャンプーを買うのである。

理想の里親子なんていない・・・なぜなら・・・人間は不完全だからである。

それを認めることでしか・・・人間の成熟はないのだ・・・ということでございます。

次回は・・・オツボネ(大後寿々花)篇と・・・弁当屋(鈴木砂羽)篇らしい。

今さらですがすべてのドラマはフィクションに決まってます・・・ちっ。

そしてキッドのブログは基本的に妄想です・・・ちっ。

なんてったってバカは死ななきゃなおらないのです・・・ちっ。

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2014年1月22日 (水)

逮捕しちゃうの?(深田恭子)退治する・・・それがワイルド7(瑛太)

そこかよっ。

すべては流れでなのでございます。

「夜のせんせい」はいいのかよ。

「ダークシステム 恋の王座決定戦」もかなり発狂してましたし・・・。

「妄想・・・失恋ショコラ」は深夜ドラマみたいだしな。

「紙の月」は奇跡のよろめきモードでございますしねえ。

もう・・・今季は(月)(火)谷間というルーズな感じになりましたーーーっ。

で、『映画天国・ワイルド7(2011年劇場公開)』(日本テレビ201401210159~)原作・望月三起也、脚本・深沢正樹、監督・羽住英一郎を見た。ある意味で日本コミック史上の最高傑作の映画化である。もう・・・ハードルが高いのか・・・低いのかよくわからない。ストーリーはほぼオリジナル。設定はそこそこ原作に準じている。主人公・飛葉大陸(瑛太)は誰が演じようと異議申し立てがあるキャラクターである。クールでホット、二枚目なのに三枚目、少年だけど大人、悪辣な正義の天使・・・優しい鷲・・・そんなヒーローを完璧に演じられる人間はいない。

だから・・・瑛太版の飛葉はそれなりに素晴らしかったと言う他はない。

特に・・・飛葉のさびしがり屋で純情可憐な感じは表現されていた。

大長編の原作をすべて映画化するエネルギーは現在の映画界に期待できない以上・・・21世紀に「ワイルド7」を実写化したことだけでもスタッフに敬意を表したい。

キャラクターものとしては・・・かなり遠慮気味だったが・・・飛葉と本間ユキ(深田恭子)に関しては理想的な配置だったと言えるだろう。

特に設定上の公道をノーヘルの飛葉がユキと二人乗りするシーンは・・・屈指の名場面となっている。

とにかく・・・事故がなくてよかった・・・と思うばかりだ。

慣れないことをやって人死にがでるのはよくある話だからである。

映画のお茶の間化が進行し・・・「心ない里親」を描写すれば「心ある里親」と自称する人々が難癖をつけてくる時代である。

もちろん、ビジネスである以上、お客様は神様だが・・・ほんの一握りの心せまきものによって表現者は委縮してはならない。

次々と悪人が射殺されるシーンを作るだけでも相当な勇気が要求される暗い時代である。

秘密の保護に関するよりも・・・フィクションにノンフィクションを持ち込むことの方がよほど問題なのである。

だから・・・バイクがそれなりに暴走し、それなりに重火器が威力を発揮する・・・この映画は邦画としての21世紀最高峰と言っても過言ではないのだ。

なにしろ・・・日本人は「ゴジラ」を作った実績があるのに「アナコンダ」を作ったりはしないのだから。

「秘密警察」という同じ主題であっても・・・「S~最後の警官~」よりも・・・「ワイルド7」の方が斬新なのだ・・・ある意味、原点だからな。

元警視庁のキャリア官僚で、江戸大学卒業の俊才・草波勝警視正(中井貴一)は「裁判で無罪になる可能性のある悪党を超法規的に処刑する権力」を行使できるワイルド7を組織する。合法と非合法の境界線を失踪する独善的正義の白バイ警官チームである。

この設定に熱狂できるのが少年の心をもっている一部愛好家限定であることは言うまでもない。

腐った大人には絶対わからないっ。

そして・・・飛葉をリーダーとするワイルド7は命がけで悪を粉砕するのである。

冤罪・・・そんなの知ったこっちゃないのである。

そういう懐疑主義が世界をつまらなくするのだ。

もちろん・・・本質はどうあれ・・・商業映画である以上・・・その表現には限界がある。

物語後半で架空の公安警察に殴りこみをかけるワイルド7は・・・巨悪のシンボルであるモンスター・キャラクター以外の・・・一般警察官を一人も殺傷しないという無理ゲーを要求されるのだった。

射殺命令が出て、ガンガン発砲してくる敵に制圧射撃だけで対抗する・・・ワイルド7の奮闘に涙が止まらないのだった。

さて・・・飛葉とユキと草波に加え、検察庁検事総長の成沢(中原丈雄)までが原作を反映するが・・・残りのキャラはオリジナル色が強い。

オヤブン(宇梶剛士)は少し、ヘポピー化している。

ヘポピー(平山祐介)はお前誰なんだ的ポジションである。

準主役的ポジションになっているセカイ(椎名桔平)はサーカスの軽業師には見えない。

サイドカー仕様のバイクにのりロケット弾攻撃をする両国に対応するパイロウ(丸山隆平)がいて、チャーシューの名残を残すB・B・Q(松本実)、八百的なソックス(阿部力)という七人である。

分かる人だけ分かればいいモードでお届けしています。

「ボン」の経営者でマスコット的存在の「イコ」は東都新聞社社会部新人記者の岩下こずえ(本仮屋ユイカ)に転生している。イわしたコずえなのである。

そして・・・独自の展開で・・・セカイと岩下こずえは・・・生き別れの父娘設定である。

緩衝材として隠匿された組織であるワイルド7の存在を立証しようとする東都新聞社社会部記者の藤堂(要潤)が配置されているが・・・これは御愛嬌である。

結局・・・真犯人を決定するためにはすべての情報を誰かが統括する必要があり・・・すべての秘密を握ったもの・・・公安調査庁情報機関(通称・PSU)の情報分析部門統括者(フィクション)桐生圭吾(吉田鋼太郎)が怪物化するというのが大筋である。

岩下こずえを人質にとられたセカイが「絆」を示して殉職するのも・・・正義の殺人集団の熱血と純情を謳いあげるのだった。

家族を凶悪犯に殺害され・・・孤独な復讐行を続けるユキと飛葉の仄かな共感こそが・・・この物語の屋台骨なのである。

セカイが去ってユキが来る・・・アナザーワールドと化した世界で・・・新たなる七人が移動司令部(巨大トレーラー)と共に悪にむかって爆走する・・・。

ワイルド7よ・・・永遠なれ。

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2014年1月21日 (火)

邪魔だ・・・どけっ(綾野剛)どかねえよ(向井理)S-最後の警官-はどっちなの?人類は滅びるの?(吹石一恵)

まあ・・・滅びない方向だと思うぞ。

SFじゃないからああああああああっ。

根性なしのTBSテレビめ・・・「アンドロイド」ものの次は「インベーダー」ものをやるべきだろうがっ。

まあ・・・登場するテロリストが完全に宇宙人的な描かれ方だけどな。

「最後のゆとり世代がお受験」みたいな御時勢だからな。ゆとりテロリストなんだろう。

なめられてるぜゆとり世代かっ。

誰が「Where's THE SILENT MAJORITY? /高橋優」を歌えと言った。

真正面からインベーダーと戦うエスパーの話が見たいのさ。

とにかく・・・「天誅」以外は出そろったプライムタイム・・・初回の視聴率を比較すると・・・。

①「S 」18.9%

②「妄想ショコラ」14.4%

③「宝塚警部補」14.2%

④「明日、ママがいない」14.0%

⑤「戦力外捜査官」13.3%

⑥「バチスタ4」12.9%

⑦「宝塚取調室」12.5%

⑧「三匹のおっさん」11.6%

⑧「医龍4」11.6%

⑩「僕のいた時間」11.2%

⑪「夜のせんせい」10.6%

⑫「つづくが長い私の嫌いな探偵」10.0%

⑬「隠蔽捜査」*8.2%

⑭「卒業旅行でるんるんロストデイズ」*7.1%

暫定1位に敬意を払ってレビューします。

「天誅」にどんなチャンスがあるんだよっ。

で、『S-最後の警官-・第1回~2回』(TBSテレビ20140112PM9~)原作・小森陽一、脚本・古家和尚、演出・平野俊一を見た。チンピラたちに高額な武器を配布する謎の男「M」・・・。そのために東京都民は無差別殺人の危機に見舞われる・・・来るべき仮想敵国工作員によるテロに備えて・・・警察庁は新たなる特殊部隊・警察庁特殊急襲捜査班NPS(フィクション)を組織する・・・しかし、公式を見ると・・・「正木圭吾」(オダギリジョー)「コードネーム「M」と呼ばれる謎の国際テロリスト。世界中の紛争、武器流通にも関わっている節があり、日本の暴力組織はもとより、これまで武器を手にすることのなかったような者たちにまで殺傷力の高い武器をばらまいているが、その真意は不明。NPS創設者である霧山六郎(近藤正臣)との繋がりが疑われる」と記述されているのだった。

なんてことだっ。

戦争があったときよりも沢山の人が 

尊い命を自らの意思で絶ってるこの世界で

だから・・・歌うなよっ。

これは・・・宇宙人の侵略物語じゃないのかよ、キリヤマ隊長・・・。

ソガ隊員(綾野剛)、フルハシ隊員(池内博之)・・・アンヌ隊員の代わりに土屋アンナぶっこんだんですかあああああああっ。

・・・もう、いいか。

幼い頃に幼馴染のゆづる(大宮千莉→吹石一恵)の両親が殺害された現場を目撃したイチゴこと神御蔵一號(向井理)は「犯人を生きたまま捉えて取り調べなければ被害者の苦しみが癒されることはない」という奇妙な思想に取りつかれてしまう。

そして・・・警視庁田園調布警察署洗足交番勤務り警官から・・・「凶悪犯をも確保する特殊部隊」警察庁刑事局捜査第一課NPS隊長の香椎秀樹(大森南朋)の抜擢によって・・・NPS突入第一班隊員としてスカウトされるのだった。

基本的に・・・警察内の特殊部隊は・・・秘密警察的要素を持っています。

なぜなら・・・「死刑」が象徴するように「毒」は「毒」をもって制するしかないからです。

非合法には非合法・・・武装した犯罪者は射殺もやむなしです。

しかし・・・お茶の間にはそういう当たり前のことに耐えられない人間が多いため・・・「情報取得のための捕虜確保」を「人命尊重で犯人を殺さない」でテーマにしているのでございます。

「ああ・・・面倒くさい」

しかし・・・天才と紙一重の気配のある科学警察研究所主任研究員・横川秋(土屋アンナ)は負傷した警視庁機動隊隊員・篠田(小澤亮太)を止血したイチゴの手がなんらかの神秘の力を持っているのでは・・・と疑い・・・検証のために生卵を割って掌にのせてみるのでした。

「ヒヨコになるとでもいうつもりかっ」

一方、公式的に「M」とつながりがあると仄めかされている元警察庁次長の霧山は警察庁長官官房審議官のアマギ隊員(菅原大吉)を操り・・・非合法組織撲滅のための特殊部隊の確立を意図しているのだった。

つまり・・・「犯人の人命尊重」は建前で・・・「犠牲を最小限に抑えて治安を維持する」特殊急襲部隊SAT(フィクション)の拡大こそが真意らしい・・・。

ちなみに実在する警視庁のSATは単なる警視庁特殊部隊です。

とにかく・・・「M」の散布した凶器の効果は抜群で・・・ゆとり世代の若者たちは次々と発狂し擬似テロリストと化すのだった。

立てこもり無差別銃撃、通り魔、爆破兼銀行襲撃などやりたい放題である。

脚本家はゲーム的な筋立てには定評あるのだが・・・今回はかなりいきあたりばったり感を漂わせている。

たとえば・・・秀樹隊長は・・・。

「犯人を確保して・・・仕掛けられた爆弾の在りかを聞きだすまではうかつに動くな」

このように隊員に自重を促す。

そのために・・・犯人が人質をレイプしたり、殺害したりするのをじっと見守るイチゴとSATからレンタルされたソガ隊員。

しかし・・・突然閃いて・・・爆弾の配置場所を見抜く秀樹隊長。

ただちに・・・広範囲に仕掛けられた爆弾を三分くらいで検索する少数精鋭のNPS隊員たち。

警察犬ポインターはとにかく万能の神の如く爆弾を発見してしまうのだった。

そんなことは知らないイチゴはとにかく・・・犯人になぐりかかり、防弾服を着ているので撃たれても平気の超人パワーを発揮する。

とにかく・・・こういう時は確実に露出した頭部を狙いましょう。(すぐになれるテロリストの手引きより)・・・おいっ。

公式によれば・・・姉を殺されているらしいソガ隊員は・・・「お前たちのやり方は生温い・・・愛しい人を殺した人間がこの世に存在していることが苦痛だと感じる被害者遺族の気持ちがわからない」と特殊能力「涙目」で非難するのだった。

頼まれれば合コンの手配もしてくれるイチゴの大切な人・・・ナースゆづるも「ソガ隊員は哀しい目をしてる・・・」と断言するのだった。

こうして・・・犯人を射殺しようとするソガ隊員を邪魔することが生きがいのイチゴの活躍は続くのである。

「頭の悪い犯人相手だから・・・こんな感じでいいんじゃね」とハヤタ隊員(平山浩行)は嘯くのだった。

きっと・・・「M」との最終対決は・・・「劇場」で・・・「ATARU」のプロデューサーは「オールド・ラング・サイン」をすでに口ずさんでいると妄想できる。

ここで生まれ育って良かった 

そう心から言えるときを信じてる

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2014年1月20日 (月)

孫子・火攻篇に曰く、將不可以慍而致戰・・・と小寺兵庫助職隆(柴田恭兵)

前述の如く、「孫子」は「武経七書」の一である。

「火攻篇」は全十三篇中の十二篇目とも十三篇目とも言われる。

「火攻篇」は主に火攻めという特殊な戦術について語るものだが・・・火という加減の難しいものを用いることによって敵に壊滅的打撃を与えてしまうことから・・・その実行について慎重であるべきだという補足説明がある。

つまり・・・相手に必要以上の打撃を与えてしまうことの不利を戒めるのである。

「將不可以慍而致戰」(将軍は恨みをもって戦いをいたすべからず)は次のような文脈で語られます。

「君主が怒りにまかせて戦を命じたり、将軍が恨みをもって戦をはじめてはならない。戦をすることに利があれば戦をするべきで不利ならば怒りや恨みによって戦をするべきではない」

前回も述べたように「孫子」の基本は「勝てる戦しかしない」ということです。

ここでは利のない戦をはじめてしまう要因となる「一時的な感情」の愚を指摘します。

「怒りなどという感情は時がたてば喜びに変わることもあり、恨みなどという感情も時とともに和らぐことがある。しかし、敗戦によって国が滅んでしまえばとりかえしがつかない。また焦土と化した敵国には利用価値がない。また、敗戦によって命を失えば生きかえることはできない。また敵国民を全滅させてしまえば奴隷にすることができない。だから名君は利のない火攻めを命じることはなく、良将は利のない火攻めを行わない。これが国土を保全し、軍を保守する基本である」

つまり・・・「核兵器」を使用しないで「抑止力」にとどめるべきことを・・・孫子は二千五百年前に提言しているのです。

同盟相手を殲滅されたからといってただちに報復を開始するのではなく・・・彼我の戦力を分析し、勝てない戦をするべきではないという単純明快な教えを・・・父は子に伝えているわけです。

まあ・・・戦国時代なので自重してばかりだと・・・滅亡する場合もあるわけですが。

で、『軍師官兵衛・第3回』(NHK総合20140119PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二 を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回はついに尾張一国を統一し、美濃攻略を開始するものの意外と手間取るので兄ちゃん困っちゃう的な成り上がり戦国大名・織田信長(江口洋介)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。次男偏愛の生母・土田御前(大谷直子)に呪われ、父の仇をせがむ正妻・お濃(内田有紀)をもてあます展開。この配役だと・・・本能寺の変でお濃が薙刀ふるって奮闘しそうで戦慄を感じる今日この頃でございますねえ。生駒吉乃とかお鍋の方とかスルーだったら一同爆笑でございます。・・・男のロマンが冬の時代ですな。

Kan003 永禄7年(1564年)1月11日、同盟の証として小寺(黒田)職隆の娘・たつ(南沢奈央)は室津城主の浦上政宗の次男・浦上清宗に嫁ぐ。浦上政宗は赤松家筆頭家老の家柄で名目上の備前の守護代である。しかし、下剋上の習いによって備前では弟・浦上宗景が実権を握っている。浦上政宗は水上交通の要衝とはいえ根拠地・室津城周辺をおさめる小勢力となっている。名目上の播磨守護である赤松宗家の当主・晴政は下剋上の習いによって嫡子・義祐と折り合いがつかず、居城の置塩城を追い出され、娘婿である庶流の龍野赤松政秀(団時朗)に保護されている。すでに東播磨の実権は赤松庶流である守護代・別所安治が握っている。職隆の主君である赤松庶流の小寺政職(片岡鶴太郎)は西播磨の実権を握るために置塩城の嫡子・義祐に接近したことは言うまでもない。ここで・・・父・赤松宗家晴政と龍野城主赤松政秀、嫡子・義祐と御着城主・小寺政職という対立の図式が鮮明となる。小寺家家老の職隆と浦上家の縁組はその延長線上にある。これを理解するのは大変ですが・・・そういうことなのです。とにかく、宗家父子、庶流、家老、重臣の利害関係が入り乱れているのが戦国播磨の実態なのだから・・・。

御着城の官兵衛(岡田准一)は城内の居室で配下のものと密談をしていた。

人質とはいえ姫路城主の嫡子である官兵衛には従者が許されている。

譜代の家来である母里武兵衛(永井大)と別所家来衆の一族でありながら官兵衛を慕って家来となった栗山四郎善助(濱田岳)である。武兵衛の父、小兵衛はすでに戦死し、その未亡人が官兵衛の父の側室になっているために官兵衛と武兵衛は一種の義兄弟である。

もちろん、若き未亡人は後妻であるために武兵衛と血のつながりはない。

ちなみに未亡人は後に黒田直之となる官兵衛の弟を胎内に宿している。

戦国時代なのである。

そういう戦国時代の習いとして・・・浦上に嫁いだおたつの身が案じられる十八歳の官兵衛だった。

「何をそんなに案じられるのです」と付き合いの長い武兵衛が官兵衛の鬱屈を察して言う。

「祝言のことよ・・・胸騒ぎがしてならぬ」

「しかし・・・威勢衰えたりと言えども・・・室津の城は浦上の本拠・・・大事ございませぬでしょう。おたつ様には大殿・重隆様の選りすぐりの警護衆がついておりますし・・・龍野城の軍勢では攻めきれますまい・・・」

「合戦に絶対などはない」

「もし・・・危機があるとすれば・・・」と知恵者の善助が口を挟む。「意外な援軍というものが・・・龍野にあった場合でございますな・・・」

「援軍・・・」

「そのようなものがあれば・・・龍野は姫路を攻めるであろう」と新参者に反駁する武兵衛。

「援軍か・・・」

黒田勢に警護された花嫁行列が室津に到着した頃・・・。

北の龍野城ではさかんに狼煙があがり・・・軍馬が足並みをそろえていた。

「出陣じゃ」

龍野赤松軍はうって出る。

「逆臣浦上と・・・小寺の家老の縁組などもっての他じゃ・・・血祭りにあげてくれる」

城主・赤松政秀は吠えた。

祝言の席についた官兵衛の祖父・黒田重隆はぬかりなく物見のしのびを周辺に放っている。

「殿・・・龍野勢が出陣との知らせでございます」

「なんと・・・無粋な・・・」

諜報は浦上の側にも届いたらしく・・・祝いの準備に乱れが生じている。

その時、城内に火矢が届いた。

「おや・・・」

「敵襲じゃ・・・」

「早いではないか・・・」

「室津の港に・・・水軍衆が現れました・・・」

「なんと・・・」

赤松家は伊瀬の北畠家と同じ・・・村上源氏である。当然の如く・・・瀬戸内を支配する海賊衆の村上水軍とは縁がある。

しかし・・・海という独自の勢力圏を持つ村上水軍は西播磨の勢力争いには一歩距離を置いていたのだった。

だが・・・下剋上なのである。

「ぬかった・・・宗家の晴政様が・・・水軍を買いおったか」

室津城の各所で火の手があがり・・・祝言に集まった武士たちに動揺か広がる。

南側の海辺と・・・北側の平地から・・・敵は一挙に室津城に襲いかかったのだ。

おたつは白無垢のまま、忍び刀を抜いていた。

気がつけば乱戦である。

「それ・・・火をかけろ・・・お宝も女も分捕り放題じゃ・・・」

声を上げるのは能島水軍の長・武慶だった。

不意をつかれた城兵はなすすべもなく鬼のような海賊衆の火攻めの餌食となる。

殺到する敵によっておたつと重隆の周囲を囲んだ徒衆も一人また一人と倒される。

その時・・・銃声が響いた。

「鉄砲か・・・」

重隆はふりむいた・・・血しぶきをあげておたつが倒れ伏すのが目にはいる・・・。

「もはや・・・これまでじゃ・・・」

「大殿・・・」

「逃げるぞ・・・」

しかし・・・逃げ場はなかった。

「無念じゃ」

城内は阿鼻叫喚に包まれる。

浦上家は父子が討ち死にし・・・おたつの警護についた黒田家の生存者も一人もなかった。

室津城は猛火に包まれ・・・落ちた。

龍野は室津を勢力下に収め・・・小寺家は守勢に追い込まれたのである。

父親と・・・娘を同時に失い・・・浦上家という同盟相手を失った小寺職隆は絶句した。

官兵衛の胸騒ぎは現実のものとなったのだった。

「どこかで・・・誰かが暗い笑みを浮かべている・・・」

官兵衛は恐ろしい策士の存在を感じていた。

その頃・・・備前国天神山城では・・・忍びの報告を無表情に宇喜多直家が聞いていた。

忍びが去った後も・・・直家の顔にはどんな変化もなかった。

結果的に・・・直家の仕える備前浦上家は・・・戦国大名として独立したのである。

下剋上の習いだった。

その年の二月。美濃国稲葉山城では家来の竹中半兵衛が・・・城を占拠するという珍事が発生した。

話を聞いた実質的な尾張の国主・織田信長は・・・「懐の中の戦など・・・たわいもないことだがや」と呟いたという。

あくる永禄八年五月・・・。三好三人衆と大和国の松永久秀たちが共謀して二条城を襲撃、室町幕府第13代将軍・足利義輝を殺害する。

下剋上が極まった瞬間である。

十月・・・実質的な甲斐国主・武田信玄は嫡男・義信を謀反の疑いで討った。

親が子を討ち、子が親を討つ。家来が主君の寝首を搔く。

もはや・・・三千世界には義理も人情もないのである。

官兵衛はそういう世界で二十歳となった。

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2014年1月19日 (日)

はじめての花と草野球と満天の星空(宇野愛海)

世の中には争いごとが嫌いな人がいるらしい。

そういう人には穏やかな日々が何よりなのだ。

世の中には争いごとが好きな人がいるらしい。

そういう人には穏やかな日々は退屈なもの。

だけど・・・勝ったり負けたりしても穏やかに過ごせるし、毎日が戦争でも退屈は感じるのかもしれない。

世の中が間違っていると決めつける人はテロリストになりやすい。

世の中のすべてを受け入れる人は奴隷になりやすい。

テロリストでも奴隷でも幸せならばいいじゃない。

で、『・第2回』(テレビ東京201401180012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。・・・なんで前フリがポエム風なんだよ。心が洗われたような気がしたものですから・・・。気のせいだよっ。いよいよ・・・謎の転校生となる山沢典夫(本郷奏多)が登場である。泥土に覆われた少年は・・・瓦礫に覆われた滅びた世界からの使者・・・そして・・・人類の黄昏が今・・・始りました。

朝焼けがまぶしい・・・滅びかけた人生を生きる江原正三(ミッキー・カーチス)は見知らぬ闖入者に驚く。

「お前誰だ・・・」

しかし、ひび割れた石膏で固められたような少年は答えない。

認知症を発症している江原老人は認知しかねる灰色の世界を喘ぐように移動して隣人に危機感を伝えようとする。

「知らない誰かがいる」

「はあ・・・」

しかし・・・危機というものを知らない主婦である岩田君子(濱田マリ)の反応は鈍い。

「若い奴なんです」

「お孫さんじゃないんですか」

「孫・・・あんな孫はいなかったと思うけれど・・・」

江原老人は自信を失う。孫を忘却してしまっただけかもしれない。失われて行く記憶の海で溺れかけている認知症患者の不安と孤独と焦燥。

所詮他人事である・・・江原老人を追い払った君子は家族に朝の話題を提供する。

「隣のおじいちゃんにも困ったものねえ」

「おい・・・広一・・・そういう施設のこと・・・調べたか」

面倒なことを誰かに押し付けたい亭主の岩田亨(高野浩幸)は息子に矛先を向けるのだった。

日曜日だから・・・のんびりしたいのである。

「ええっ」と広一(中村蒼)は中途半端な態度で応じるのだった。父親がのんびりしたい気持ちも分かるが・・・自分ものんびりしたいのである。

なんてったって日曜日なのだ。

そこへ・・・世が世なら盗撮犯として警察に厄介をかけているかもしれないクラスメートの大森健次郎(宮里駿)から「草野球の誘い」の連絡が入る。

痴呆化した老人の世話と・・・友人との付き合いを天秤にかけた広一は後者を選択するのだった。

老人の部屋で入浴し、老人の衣装で身だしなみを整えたなぞの少年は目を不気味にチカチカと発光点滅させながら部屋を出る。

そして広一と遭遇するのだった。

「君は・・・」

「インストール中なので・・・外出は禁じられているのだが・・・逸る気持ちが抑えられない」

「え・・・」

「そういうことなのさ」

「どういうことなんだ・・・」

どこか・・・狂気を感じさせる少年の態度に・・・穏やかに応じる広一。

母親に似て危機感に不足を感じるタイプである。

「つまり・・・時間が足りないのだ」

「忙しいってこと・・・お隣の人ですか・・・」

「・・・孫です」

「ああ・・・そうなんだ」

納得して通り過ぎようとする広一。

「君・・・」

遠くを見ながら語る謎の少年。

「僕・・・」

「そうさ・・・君に話しかけている・・・」

「そうなんだ・・・」

「君は何者だ」

「いや・・・となりの者ですけど」

「隣・・・」

「うん」

「・・・」

突然、歩きだす謎の少年。マンションを出た少年と広一の向かう方向は同じだった。

「なぜ・・・ついてくる」

「いや・・・向こうに用があるんだ・・・」

「じゃ・・・お先にどうぞ」

妙な奴だと思うものの・・・広一は大森の待つ野球場に向かうのだった。

謎の少年は相変わらず・・・尋常ではない光を目から発しながら・・・街を眺める。

そして・・・運命に導かれ広一の幼馴染である香川みどり(桜井美南)の店に向かうのだった。

「あの花屋の子、ちょっと吉高由里子に似てないか」

「いや・・・土屋太鳳っぽいんじゃないか」

「どっちかっていうと沢尻エリカじゃないの」

「結局、一重っぽい美少女で微妙な感じの人多いよね」

「そうかなあ」

ぶつぶつとつぶやく通りすがりの人々をやりすごし店内に入るなぞの少年。

「いらっしゃいませ」

「素晴らしい・・・」

「・・・」

「素敵だ・・・」

「プレゼントですか・・・それともお見舞いかしら・・・」

「この花は・・・本物ですか」

「もちろんですよ・・・」

思わず花に見入る少年。

見知らぬ少年の横顔に・・・思わず見入るみどりだった。

「ガーベラなら・・・いろいろな色がそろってます・・・」

「色・・・」

「適当に選んで花束をお作りしますか」

「花束か・・・いいですね」

「他には何か・・・お好きな花がありますか」

「好きな花・・・」

「月並みですけど・・・薔薇とか」

「薔薇・・・美しい花ですね」

「どうでしょう」

「とても綺麗だ」

「1500円になります・・・」

「おカネはありません」

「ローマの休日・・・」

その時、急によろける少年は・・・みどりにもたれかかる。

「すみません・・・まだインストール中で・・・バランスが悪いのです」

具合が悪いのかとは聞かない・・・みどりだった。

なぜなら・・・すでに・・・少年の美しさにうっとりしているからである。

「これ・・・」

みどりは白い花を一輪差し出した。

「どうぞ・・・」

微笑んで少女の贈り物を素直に受け取る少年。

ホストクラブなら爛れた情事の幕開けだが・・・少年ドラマシリーズなので仄かな恋の始りである。

まあ・・・本質的には全く同じなわけですが・・・。

みどりは・・・基本的に・・・危うい女の子なのです。

密かに好意を寄せている幼馴染のみどりが一足早く大人の階段に足を踏みかけているのにのほほんと草野球に参加する広一だった。

なぜか・・・クラスメートの春日愛(宇野愛海)も参加しているのだった。

この間の校舎探検といい・・・まさかと思うが愛と盗撮魔は付き合っているのかとざわめくお茶の間である。

「なんで愛がいるのさ」と思わずお茶の間の気持ちを代弁する広一だった。

しかし・・・広一が入ってもまだ一人足りない大森チームである。

そこへ・・・花を一輪持った少年がやってくる。

「おい・・・君」

「僕・・・」

「野球をやらないか」

「野球・・・」

その時・・・少年は見慣れぬ機種のスマートホンを操作する。

「野球か・・・」

「やったことあるだろう」

「やったことはないがルールは知っている」

少年は花を広一に渡しバットを持って打席に入る。

相手チームにとっては待ちかねたプレーボールである。

そして・・・初球をとらえてホームランを放つ少年だった。

唖然とする一同。

しかし、少年は動かない。

「おい・・・ホームランだよ・・・」

「ホームラン」

「ダイヤモンドを一周するんだ」

「宝石を・・・」

「本当に知らないのか・・・ヨーロッパ人かよ」

「・・・」

少年の手をとって一塁に向かう広一。

その光景に・・・。

「なんて絵面だ」と叫ぶ愛だった。

一部腐った愛好家熱狂である。

試合は・・・大森チームの勝利で終わった。

「野球とは不思議なゲームだな」

「そうかい・・・」

「勝って喜んでいるものもいれば負けて口惜しがっているものもいる」

「ゲームってそういうものじゃないのか」

「他人とゲームをして勝敗を決めたらもはや戦争と同じだ」

「いや・・・それはちょっと・・・」

「ちがうのか」

「たとえ・・・君がヨーロッパからの帰国子女だとしても・・・そう・・・サッカーだってあるだろう」

「サッカー」

思わず・・・少年は端末を操作する。

「それ・・・見慣れないスマホだね」

「モノリスだ」

「聞いたことないな・・・どこで買ったの」

「売ってはいない・・・生まれた時に配布されるのだ」

「・・・」

「すまない・・・インストール中なので・・・言葉が不自由だ」

「ああ・・・それで君は・・・」

「孫だ・・・」

「これから・・・おじいさんと暮らすのかい」

「・・・そうだよ」

「じゃ・・・学校は・・・」

「学校?・・・」

「どこかに転入するのかい・・・」

「学校があるのか・・・ヒメが喜ぶな」

「姫?」

「ヒメは学校にいったことないから・・・」

「・・・」

その時・・・インストールは終了した。

「いろいろと・・・教えてくれてありがとう」

「いや・・・そんな」

「僕は・・・山沢典夫だ」

変な奴だと思ってたら急にまともになったな・・・そこがやはり変か・・・。

広一はのんびりと考えるのだった。

しかし・・・帰宅した典夫は本性を現すのだった。

とてもこの世界の携帯端末とは思えないモノリスを操作すると・・・江原老人の思考を調整するのだった。

「こいつは・・・脳が破損しているな・・・すこしボルテージあげるしかない」

江原老人は・・・認知症患者ではなくなった。

「山沢典夫様・・・なんでもお申し付けください」

江原老人は忠実な下僕となったのだった。

そして・・・江原老人を・・・東西山高校の理事長の家に派遣する典夫。

理事長の寺岡(斉木しげる)もたちまちモノリスによって洗脳されてしまうのだった。

典夫の潜入工作が開始されたのである。

任務を終えて帰還する江原老人。

典夫は命ずる。

「見上げてごらん・・・夜空の星を」

「満天の星空です」

「美しいかい」

「美しい・・・星空は美しい・・・あはははははは」

夜の野原を笑いながら走る・・・ロボットのような爺が一人・・・。

踊るように闇に消える。

恐るべき侵略のはじまり・・・。

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2014年1月18日 (土)

犯罪です・・・闇金ウシジマくん Season2(山田孝之)

(金)には三根梓の「三匹のおっさん」、蓮佛美沙子・大政絢・新川優愛・山本舞香・杏さゆりの「夜のせんせい」、安田美沙子の「私の嫌いな探偵」などがあるわけだが・・・とりあえず・・・(木)深夜明けて(金)のコレで・・・。

キッドのブログが休眠中の2010年の秋ドラマで第一シリーズの「闇金ウシジマくん」があり、平均視聴率は*2.3%だったが・・・その濃密な世界観にうっとりしたものだった。ちなみにこのシーズンは「Q10」「SPEC」「秘密」とうっとりするドラマは乱れ打たれていたが・・・その中でも抜群だったのだ。

もちろん、ドラマオリジナルキャラクターの元AV女優・大久保千秋(片瀬那奈)の存在感も抜群で・・・第2シリーズにいないのは残念だが・・・劇場版では・・・元カウカウファイナンス社員になってしまったのである。ゲスト登場に期待したい。

とにかく・・・「ウシジマくんの世界」は続いて行き・・・風俗嬢で看護師のモコこと葉山朋子(希崎ジェシカ)などもきっと登場してくれるのだろう。

ジャンルを越えた女優たちが入り乱れ・・・虚実定かならぬダーク・ワールドを醸しだす。

悪魔が落ちついた気持ちで見ることのできるドラマなのでございます。

で、『ウシジマくん Season2・第1回』(TBSテレビ201401170058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・山口雅俊を見た。10日で5割の利息で貸付をする闇金会社カウカウ・ファイナンス・・・トイチといえば10日で1割の利則で・・・年利365%となり・・・100万円借りると10日目に利子が10万円になっているのである。これは利息制限法の限度を超えた暴利なのである。しかし・・・カウカウ・ファイナンスは・・・10日目に利子が50万円になっているのだ。返せるかっ・・・もちろん闇金は犯罪です。

赤ちゃんポストの出身者がポストと仇名で呼ばれるドラマのことを批判する人間は・・・このドラマをどうしちゃうのか・・・想像を絶するのだな。

まあ・・・闇金主催者は実情と違うとクレームはつけないわけだが・・・。

おい・・・赤ちゃんポストの主催者と闇金の主催者を同列に扱うのかよっ。

そこまでにしとけっ。

いきなり・・・主要登場人物の一人・・・中田広道(入江甚儀)のクレジットが中田広道(水中)である。

「助けて・・・」

「よお・・・」

見下ろすのは・・・カウカウファイナンス社長・ウシジマくんこと丑嶋馨(山田孝之)だ。

いくつかのストーリーが同時進行して行くこのドラマ。中田広道の物語はここで一時休止である。

なにしろ・・・カウカウファイナンスの顧客たちは・・・底辺中の底辺でエピソードにはことかかないのである。

スーパーマーケットの倉庫から商品を運び出す太田ハル子(朝日奈あかり=ドラマ24「嬢王 Virgin」の神崎エリナ)・・・。

不注意な中年の女性客(柿弘美)にお尻をカゴで突かれたあげくにクレームをつけられる。

そんなうんざりする昼の仕事を終えたハル子は夜の仕事のために・・・ラブホテルで援助交際の仕事を続ける。

出会い系のサイトを利用し、ホテル代別の本番一万円という売春行為である。

もちろん・・・犯罪です。

お安い買春者である残念な感じの中年男の前で尻をかくハル子。

「痣だらけだね」

「離婚した夫が・・・クソ姑の介護してくれって言うからことわったら・・・殴る蹴るよ」

「そりゃ・・・ひどいな」

「・・・」

休息なしの労働に披露困憊した・・・ハル子はうっかり・・・眠りこんでしまうのだった。

当然のことだが・・・初対面の見ず知らずの男はハル子のサイフから有り金抜いて姿を消すのだった。

「うわっ・・・」と浅い眠りから覚醒して自分の失態に驚愕するハル子。

「やられた・・・なんで寝ちゃうんだよ・・・ひいいいいいい」

口惜しくてやりきれなくてベッドに突っ伏すハル子だった。

何故・・・ハル子はそんなに金が必要なのか・・・可愛い七つの子(須田瑛斗)があるからなのか。

そこにメールが着信する。

「寝てると思ったけど・・・あんまり朝日がきれいなんでメールしちゃった・・・俺はこれから二部営業(朝から昼まで)だよ」

ハル子が執心しているホスト・一聖(青柳尊哉)からだった。

思わず・・・ハル子はラブホテルの閉じられた窓を開ける。

「本当だ・・・いい天気・・・一聖・・・私もがんばるよ」

ハル子は愛する一聖に貢ぐためにカウカウファイナンスの顧客となっているのだ。

しかし・・・一聖が姿を見せたのは・・・殺風景なカウカウファイナンスの闇の事務所だった。

「入金期限すぎてんじゃねえか」と電話に怒鳴るのは柄崎(やべきょうすけ)・・・。

「御苦労さま」と女性客から優しく入金を受け取るのは元ホストの高田(崎本大海)・・・。

「いらっしゃいませ」と応対するのは受付・事務の摩耶(久保寺瑞紀)である。

「ニューロマンサーの一聖です」

「ご用件は・・・」

「売掛未収がたまっちゃって」

「キリトリ(債権回収)か・・・トリハン(手数料半額)だぞ・・・」とウシジマ。

「お願いします・・・これ客のリスト・・・」

摩耶は手早く計算する。

「248万とんで710円・・・トリハンで124万とんで355円です」

仕事を受けるウシジマだった。

一聖が去ると・・・軽口をたたく柄崎・・・。

「あいつ・・・ナンバーワンホストには見えないな」

「いかにもホストホストしてたら連れて歩けないって客が思うんですよ」と応じる高田。

「じゃ・・・俺も普通の格好すりゃ・・・ホストになれっかな」

「いや・・・それはちょっと」

「なんだ・・・てめえ」

「柄崎・・・朝からうるせえよ」と凄むウシジマくんだった。変な眼鏡をかけているが本当はこわいウシジマくんなのである。

早速・・・ホストクラブ顧客の未払い金回収に着手する取り立て屋ウシジマくんトリオ。

昼休みのOLを待ち伏せ、出勤前のキャバ嬢を急襲する。

時には宅配ピザの配達人を装う。

「払わないわよ・・・裁判にでもなんでもすればいいわ」

「裁判しても払わせる」

「勝てるとでも思ってるの」

「負けても払わせる」

「・・・」

とにかく・・・払わないと想像するのも恐ろしいことになるのである。

小さな公園に呼び出されるハル子。

本来ならハル子の息子がデビューする公園である。

「子供の学資保険を解約したから・・・」

「確かに・・・」

「百万円貸してください」

「返せるあてがあるのかよ」

「来月・・・子供の養育費がまとめて振り込まれるから」

「・・・」

「私・・・こんなに男の人を愛したの初めてなんです・・・だから・・・一聖には来月も売り上げトップをとってもらいたいんです」

「わかった・・・明日、事務所に来い」

ハル子を見送る柄崎にはやりきれなさが浮かんでいる。

「ホストに貢ぐなんて・・・アホだなあ・・・それにしてもホストはぼろすぎる」

「ホストと闇金は・・・別のビジネスだ」とウシジマくん。

「・・・」

「ホストの客が抱える闇は深くて暗い」

「・・・川が流れてんのかよ」

営業許可を取っていない違法ホストクラブ「ニュー・ロマンサー」・・・サイバーパンクSF「ニューロマンサー/ウイリアム・ギブスン」(1984年)とはほぼ無関係・・・言うまでもないだろうがっ。

オーナーはついこの間まで「山田くんと7人の魔女」で高校生だった慶次(徳山秀典・仮面ライダーザビー)である。

そして雇われ店主が・・・隼人(武田航平・仮面ライダーキバ)だった。

しかし、下剋上である・・・売上ナンバーワンの一聖は店のキングとして振る舞っていた。

ハル子に囁く一声。

「最近の新人ホストのお行儀が悪いのは店長の教育が悪いからだと思うんだ。だからお仕置きが必要なんだよ。それは僕とハル子の共同作業なのさ・・・さあ・・・隼人さんのために・・・ドンペリを頼んでおくれ・・・」

「ええ・・・いいわ」

「ドン・ペリニヨン・ブラック(時価)入りました~」

後輩の横暴な申し出に隼人は躊躇するが・・・慶次は因果を含めるのだった。

「隼人・・・一聖のために飲んじゃないよ・・・」

たちまち響くホストたちの合いの手。

♪いい男 いい男 いい男 いい男 本当はどうでもいい男~

客の一人、ユナ(七海なな)や自称・高校生ホスト流星(標永久)などもいかにも虚しい夜を過ごすのだった。

ホストによって堕ちていくハル子・・・加齢によって堕ちていくホストの隼人。

ニューロマンサーの夜は更けていくのだった。

一方、すでに多重債務者の吹き溜まりのパチスロ屋。

金食いマシーン「ジャグラー」に金を吸い上げられる男・・・宇津井優一(永野宗典)がいる。

30代ダメ人間「鬱ブログ」を素晴らしいインターネットの世界に立ち上げる優一は実家寄生虫の自称・フリーターである。父の優作(宮川浩明)も母の美津子(島ひろ子)ももてあます35歳のニートである。

今日も五万円をギャンブルにつぎ込み・・・街を漂泊するのだった。

鬱の優一もまたカウカウファイナンスの顧客である。

入金日にジャンプ(利息未払い)し、さらに追い貸しを求めるダメ人間だった。

「あいつ・・・大丈夫なんですか」

「実家も持ち家だし、父親の退職金もある・・・充分回収可能だ・・・」

ウシジマくんにとって鬱の優一は「生ける金」なのである。

そんな鬱の優一は街で小学校の同級生に声をかけられる。

橋本(石田剛太)は風の噂で・・・優一の初恋の相手・水野結花(篠川優莉香)と結婚した・・・優一にとって憎悪の対象だった。

優一は逃げようとするが・・・何故か・・・橋本は追ってくるのだった。

「やっぱり・・・宇津井じゃないか・・・お前、変わらないな・・・おい、やっぱり宇津井だったよ・・・」

現れたのは愛児を抱く変容した橋本(旧姓・水野)結花(伊藤麻実子=「平清盛」(2012年)の藤原呈子、「ぼくの夏休み」の田川菊江、「みんな!エスパーだよ!」(2013年)の二宮サリー)だった。

「俺なんか・・・髪薄くなったし・・・この間の同窓会・・・どうして来なかったんだ?」

もちろん・・・鬱の優一は同窓会があったことも知らないのだった。

「う・・・仕事が忙しくて・・・」

「そうか・・・みんな変わったぞ・・・禿げてるやつもいるし」

「そうだよな・・・結花なんか・・・別人みたいだもの」

「子供生むと・・・体型変わるのよ」

「か・・・変わりすぎだろう」

にじみ出る優一の屈折した悪意に気がつく結花。

「・・・」

「だけど・・・お前は楽しそうだな・・・楽そうっていうか」ととりなしつつ嫌味を言う橋本。

「お前なんかに・・・俺の気持ちが分かるかよ・・・俺の感じるストレスの重さがよ」

居たたまれずに逃げ出す優一だった。

「なに・・・あれ・・・」と吐き捨てる結花。

「子供なんだよ・・・大人になれないままに・・・年齢だけを重ねちまったんだ」

そこはかとない優越感とともに底辺に堕ちた同級生を憐れむ橋本だった。

その気分を味わうためにあえて声をかけたのである。

残酷とも滑稽ともつかぬ・・・うっとりするほど物悲しい空気が漂うのだった。

その頃、単独で取り立てに向かう途中で高田は隼人と運命の再会をするのだった。

隼人は・・・高田のホスト時代の仲間だったのである。

「瑠偉斗(るいと)・・・」

「今は高田です・・・」

「どうしてたんだ・・・」

「今は・・・闇金やってます」

「へえ・・・すごいじゃないか」

「すごくないですよ・・・同窓会に出たって名刺も出せやしない・・・犯罪者ですから」

「俺だって・・・店長になったけど・・・手入れがあった時の出頭要員さ・・・めっきり酒も弱くなって・・・遅刻がちで・・・オーナーにヤキを入れられるような憐れな身分さ」

「・・・」

「あのさ・・・俺に・・・お前の仕事・・・手伝わせてくれないか」

「ろくな仕事じゃないっすよ・・・」

「ホストより・・・ひどい仕事なんてないだろう・・・」

見つめ合うホストと元ホストの二人だった。

見た目は美しい二人の男である。

ウシジマくんはオムライスにケチャップをかけて食べていた。

「ソースもどうですか」と柄崎。

「いらない」

「これ、母親が発明したんですよね・・・ケチャップとソースの割合が決めてなんすよ」

「かけすぎだろう・・・気持ち悪いな」

お前もな・・・。

明日、ママがいなくなる気配の・・・母子家庭。

「出会い系の客」がキャッチ出来たので「夜の仕事」に出ようとするハル子。

玩具だらけの小さな部屋でむずかる我が子。

「いっちゃいやだ・・・いっちゃいやだ・・・いっちゃいやだ」

「静かにしてよ・・・」

ハル子は深い闇の気配を感じる。

男の子は玩具の喇叭を吹く。

「ニューロマンサー」では上客のイヴ(吉川まりあ)が一聖に囁く。

「来月は二百万円使ってあげる・・・」

「二百万か・・・」

隼人の数少ない上客であるリエ(田川可奈美)が貢ぐ。

「来月の誕生月・・・あたしがシャンパンタワーしてあげる・・・205万円ってとこでしょう」

「いや・・・それより・・・現金で200万円くれないか」

「・・・え・・・」

「実は・・・父親の入院費が・・・ちょっと苦しいんだ」

「あんたも大変なのね・・・わかったわ・・・」

しかし・・・それは爆弾(禁止行為)である裏引き(店を介さず客から直接金を要求する事)だった。

そんなことされたら・・・ホストクラブはやってられないのである。

たちまち・・・発覚し・・・オーナーにリンチされる隼人だった。

凄惨な夜・・・。

「こりゃ罰金ものなんだよ・・・逃げたら・・・全身に刺青して・・・二度と表を歩けないようにしてやるぜ」

ハル子はカウカウファイナンスに来ていた。

「もっとお金がいるんです・・・あたしがなんとかしないと一聖の来月の売上トップが危ないから・・・」

「ダメだな・・・返済の見込みがないだろう」

「夜の仕事もしてますから」

「出会い系か・・・危なっかしいな」

「もうヤバイ目にはあってます」

「どうせやるなら・・・安全なところでやれよ・・・」

こうして・・・風俗店を紹介されるハル子。ウシジマくんには紹介料とマージンが入る仕組みで・・・もちろん犯罪だ。

しかし・・・風俗嬢としての研修を受けるハル子の顔は喜びに満ちるのだった。

隼人のために・・・立派に稼げるからである。

カウカウファイナンスの事務所は滞りなく営業中である。

ウシジマくんはカツ丼や天ぷらそばも食べるのだった。

「友達が手伝いたいって言ってるんですが・・・」と高田。

「人手は足りてるだろう」とにべもないウシジマだった。

昼下がり・・・例のピザを持って回収仕事をするウシジマくんと柄崎。

「このピザ・・・もういらないんじゃないすか」

「まあな・・・」

一人・・・母の帰りを待つ男の子の部屋に・・・ピザが届いた。

それは・・・必要経費で落ちるのか・・・。

いや・・・そもそも税金払ってないか。

罪ほろぼしという名の純白な善意。

男の子は冷えたピザを食べた。

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2014年1月17日 (金)

君(多部未華子)と僕が抱き合った時間(三浦春馬)

すっかり・・・忘れていたのだが・・・(金)「夜のせんせい」があるのだった。

もう・・・レビュー枠がないんだよなあ。

「戦力外」と「ショコラ」と「せんせい」で迷うのだなあ。

女子高サッカーをだらだらと見るように・・・五輪もだらだらと見たいしなあ。

年末年始のいろいろなものもかなり処理しきれてないしなあ。

結局・・・加齢なんだな。

そこそこ眠らないと頭が働かないしな。

いや・・・もう・・・寝てもかなりボケてる感じだぞ・・・。

迫りくるよな。

うん・・・迫りくるよ。

で、『僕のいた時間・第2回』(フジテレビ20140115PM10~)脚本・橋部敦子、演出・葉山裕記を見た。人がどんなに努力をしてもほとんどの人間が百年後にはいない。人間は基本的にはそのことを意識せずに生きるが・・・無意識的にはそれを理解している。時に恐怖はその深層心理から浮上する。それは人格の消極性を形成する要因である。恐怖に向き合うことは実は非常にポジティブなことなのである。だから・・・「死」にまつわるフィクションは絶え間なく生み出される。「どうしようもなくやがて自分が死ぬこと」・・・それを認識しなければ越えられない壁は確実に存在するからである。

春が来て・・・僕は正社員として働き始める。

弟は無事に医大に合格したようだ。

医者を目指していた頃の僕は・・・父や母に愛されていたのだろうか。

家具屋になった僕を父や母は愛してくれているのだろうか。

それはよくわからない。

しかし・・・父や母にとって弟が僕より価値があることは間違いないだろう。

そして・・・そこには偏った愛情のようなものがあるような気がする。

弟はきっとそれに気がついているだろう。

弟は惧れている・・・自分が僕のように・・・価値のない存在になることを・・・。

そうならないために・・・弟は僕と言う存在そのものを否定するしかないのだろう。

兄として僕を愛するよりも・・・不良品として僕に接する必要があるのだ。

それは仕方のないことなのかもしれない。

では・・・僕はどうなのだろう・・・。

そんな弟を兄として愛しているのだろうか。

弟は僕の部屋に居候しているのか・・・それとも僕が弟の部屋の居候なのか・・・。

二人の間には微妙なバランスがあるようだ。

僕は・・・君や君の友達・・・僕の友達を部屋に招くことに何の気兼ねもいらないと思っていたのだが・・・弟にとって・・・それは気障りなことだったのかもしれない。

もちろん・・・僕自身はそんなことには気がつかないフリをしていた。

先輩のアルバイト社員の棘のある言葉にいら立ちを感じた僕は・・・せっかく二人きりになった君と喧嘩をしてしまう。

君が就職浪人で・・・アルバイト社員として新人の正社員に苦言を呈していること。

そういう奇妙なめぐり合わせが・・・穏やかな日々にさざ波を立てる。

でも・・・そんなことものどかな春の海みたいなものだったんだ。

だって・・・僕は君が好きだったし・・・君は僕が好きだった。

雨の日に再会した僕たちはたちまち・・・仲直りしたし・・・相合傘もしたし・・・公園でキスもしたし、ベッドで抱き合って、お互いの感じるままに愛しあったりした。

あの朝・・・二人は結ばれた。

弟は・・・自分の部屋でなにやってんだという顔をしていたが・・・僕はすこし優越感にひたっていた。

だってそうだろう。

僕が愛し合っている時に・・・。

弟は誰にも愛されてはいなかったんだ。

だけど・・・そんなことで優越感を感じたことは問題じゃない。

僕には君がいる。

君がいるだけですごく幸せだ。

それは先輩と一緒に遊んでいる幸せを上回る。

ひょっとしたら・・・先輩も君のこと好きなのかもしれない。

いや・・・もしかしたら・・・先輩は僕のことが好きなのかもしれない。

でも・・・そんなことはどうでもいい。

僕は君が好きで、君は僕が好き・・・そして二人は愛し合っている。

そうさ・・・たとえ・・・シャワーを浴びている時に・・・妙に腕があがりにくくなっていると感じても・・・それは些細なことなんじゃないか。

壜のフタがあけられなくても・・・死ぬわけじゃないんだし・・・。

ただ・・・少し・・・不安なだけ。

でも・・・人が生きていくって不安を感じるってことだろう。

そして・・・家具屋になれば家具が売れるかどうかが不安になるし・・・売れたらすごく幸せな気持ちになる。

だって・・・世界には春の風が吹いているのだから。

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2014年1月16日 (木)

坂元劇場じゃないのかよっと思ったら野島劇場だった明日、ママがいない(芦田愛菜)

まあ・・・魔王こと佐々木友則(三上博史)のキャスティングの段階で気がつくべきだよな。

さて・・・冬ドラマの正体も明らかになってきて・・・少し・・・調整が必要になってきた。

(日)「軍師官兵衛」を(月)に回すかもしれない。

(月)未定

(火)未定

(水)「明日、ママがいない」

(木)「僕がいた時間」

(金)「ウシジマくん2」

(土)「なぞの転校生」

(月)もしくは(火)は谷間になる予定。

(日)については(土)の「戦力外」と(月)の「失恋ショコラ」との兼ね合いである。

変則的に「最高の離婚スペシャル」が来るので谷間は絶対必要なのである。

私ごとで恐縮でした。

で、『明日、ママがいない』(日本テレビ20140115PM10~)脚本監修・野島伸司、脚本・松田沙也、演出・猪股隆一を見た。「理想の息子」「49」と息子ものの続いていた野島ワールドが・・・「家なき子」あるいは「リップスティック」に回帰である。まあ・・・子役黄金時代なので・・・コレをやるしかなかったんだなよなあ・・・きっと。

とにかく「Mother」の芦田愛菜(9)と「Woman」の鈴木梨央(8)が激突。

これに映画「八日目の蝉」(2011年)で日本アカデミー賞新人俳優賞を史上最年少で受賞した渡邉このみ(7)とほぼニューフェイスの桜田ひより(11)が加わって・・・鉄壁の九歳女児軍団を形成している。

「家なき子」の頃の安達祐実が12歳である。

圧倒的に早熟なのだな。

働く小学生と・・・そうでない人たちの格差社会たるや・・・まあ、いいか。

次々と繰り出されるメルヘンな設定・・・あなたの眼と耳はあなたの身体を離れ・・・コガモの家の世界に飲み込まれていくのです。

蒼ざめた夜に・・・点滅するパトカーの赤い灯。

不倫の果てに真希(鈴木梨央)を出産した涼香(酒井美紀)は痴情のもつれから新しい愛人を灰皿で殴る傷害事件を起こす。

アパートの階段下の闇に潜んでいた真希は「やめて・・・連れていかないで・・・あの人は私がいなくちゃ・・・ダメなんだから」と叫ぶ母親が・・・連行されるのを為す術なく見守るのだった。

まもなく・・・しかるべき経緯を経て・・・児童相談所の職員でアイスドールと呼ばれる水沢叶(木村文乃)に保護される真希・・・水沢の冷たい態度に不安は募る。

しかし・・・その身柄はさらに・・・不気味な男・佐々木(三上博史)に引き渡される。

夜の雨が降り注ぐが・・・傘がさしだされることはない。

もはや、恐怖さえ感じる真希。

暗く怪しい建物である「コガモの家」で「私・・・帰ります」とつぶやく真希。

しかし・・・佐々木は舌うちすると・・・「帰る場所はない」と告げるのである。

真希が案内された部屋には二段ベッドが二つ。

そこには三人の少女たちが待っていた。

「ここ・・・どこ?」

「施設だよ・・・」

「施設・・・」

「母親が鈍器で男を殴ったりすると子供が連れてこられる施設さ」

「あなたたちもそうなの」

「・・・」

そこにいたのは・・・ピアノが上手なピア美(桜田ひより)、家がすごく貧乏だったボンビ(渡邉このみ)・・・そして赤ちゃんポスト出身のポスト(芦田愛菜)だった。

ああ・・・ついにつぐみは赤ちゃんポストにたどり着いたのか・・・。

彼女たちはすでに親にもらった名前を捨てた少女たちである。

真希は「ドンキ」と仇名をつけられるが・・・その名を拒否するのだった。

真希にはまだ「母親に捨てられた自覚」はないのだった。

施設の子供たちに魔王と仇名される足の不自由な男・佐々木施設長。

もしも・・・聞き取り調査があれば・・・問題視する一般社会の良識者がいるに違いない朝の説教。

「お前たちは・・・ペットショップのペットだ・・・いい飼い主に恵まれるかどうかは・・・可愛さをアピールできるかどうかにかかっている。芸の一つもできなければダメだ。泣け。泣いてみせろ・・・うまく泣けたら朝食を食べていいぞ・・・」

完璧な「泣き芸」を見せるポストだった。

一同爆笑である。

そして・・・当然売れ残るものはいる。

眼帯をした十七歳の少女・オツボネ(大後寿々花 )は誰かの養女になれないまま・・・貰い手がつかないことに焦り・・・過食症になっている。

そして・・・ポストを上回るコインロッカー出身のロッカー(三浦翔)は二十一歳・・・貰い手がつかないまま成人し、コガモの家の職員(調理担当)になっている。

九歳少女たちの優秀さを補う・・・暗黒面のオツボネとロッカー・・・バランスである。

ポストの引き立て役として・・・母親の匂いが残るシャンプーボトルを常に手にしているおもらしの常習犯の幼稚園児バチ(五十嵐陽向)もいる。

ささいなことでケチをつけられたバチを庇って頭を下げるポスト。

差別主義者のママたちのママチャリを将棋倒しにするポスト。

バチをおんぶするポスト。

この模様を見ていた裏番組の不治の病の青年は思う。

「ポスト、かっけええええ、短い生涯だけど・・・ボクは恵まれていたんだなあ」

ポストは裏番組を見てつぶやく。

「母親がいなくても五体満足ならよしとするか・・・なんてな」

補完しあう水曜夜10時のドラマなのである。

母親がいつか迎えにくると信じる真希は他の三人と自分は違うと言い張る。

まして・・・赤ちゃんポスト出身のポストには最初から母親の思い出がないのだから・・・自分の気持ちは分からないと暴言を吐くのだった。

痛い所をつかれてついに爆発するポスト。

修羅場である。

魔王がやってきて問う。

「先に手を出したのはどっちだ」

ポストが挙手すると鼻血が出るほどの平手打ちである。

「親に捨てられようが不慮の事故で親が死のうが・・・親がいなくなったことでもう・・・お前たちは差別対象なんだよ。そりゃ、最初は同情されるかもしれんが・・・なにかしでかせば・・・たちまち・・・やっぱり・・・親がいない子はってなるんだよ。先に手を出したらおしまいなんだ」

バケツをもって立たされるポストだった。

女子高校サッカーの藤枝順心の二年生・山下史華(ゼッケン17)似ているアイスドール水沢もただならぬ気配を漂わせ、魔王に里親候補のリストを規則を破って開示したりする。

「やばいんじゃないのか」

「里親が里子を選ぶだけじゃ・・・不公平でしょ・・・里子だって里親を選ぶ権利はあると思う」

「・・・」

「あの子たちには居場所が必要なんだから」

「人じゃなくて・・・場所か・・・」

「人にこだわるのは不幸の始りよ」

「・・・」

今回・・・底流に流れるのは「平等」へのこだわりである。

親のいない子と親のいる子の格差の是正。

しかし・・・是正しなければならないことがすでに差別なのだという矛盾。

もちろん・・・魔王にも恐ろしい過去は絶対にあるのだろう。

今の処・・・陰惨な虐待の事例がないことが序の口であることを示している。

まあ・・・赤ちゃんポストやコインロッカーに乳幼児を閉じ込めること自体が虐待に他ならないわけだが。

ラーメン店の加藤一郎(店長松本)・久子(池津祥子)夫妻に「おためし」を経て「里子」となったダイフク(田中奏生)は実年齢7歳である。優しいところを見せる加藤夫妻だが・・・七歳児に出前をさせている時点でブラック里親なんじゃないのか・・・。

一方で・・・裕福な細貝晴美(櫻井淳子)は精神を病んでいて浮気している夫(西村和彦)のためにポストを可愛い人形としてプレゼントしようとするのである。

着飾った人形たちに囲まれて・・・ポストは狂った女に髪を切られ・・・恐怖するのだった。

「お父さんとお母さんが応援に来ていますだってさ・・・」

「いいよねえ・・・」

「施設のお友達が応援しています・・・とか聞いたことないわ」

「案外・・・両親が里親だったりして・・・」

「でも・・・そのことはきっと内緒にされるだろう」

「微妙だよねえ」

「やっぱり・・・なでしことかになったら・・・あれこれ書かれるよねえ」

「そもそも・・・こんな施設からサッカー選手になんてなれないでしょう」

「でも・・・里親がジョリ・ピーなら・・・」

アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットの養子になるのがボンビの理想である。

そして街角で・・・プラピのような東條祐樹(城田優)と出会ったポンビは妄想の翼を広げ、一人でバレエを踊るのだった。

少なくとも・・・子供を捨てるような親の遺伝子を持っていることからは逃れられないのだな。

やがて・・・真希の母親がわざわざ・・・「結婚するからあなたは要らない」と宣言しに来るのだった。

ショックを隠して明るく振る舞う真希を導くポスト。

「昔・・・捨て子のドラマがこんなこと言ってた・・・親が子供を捨てるんじゃなくて、子供が親を捨ててやれって」

真希は母親の香水を黄金の左腕で母と愛人の愛の巣の窓ガラスめがけて投げ込むのだった。

逃げ出す二人。

そして泣き崩れる真希。

「絶対・・・見返してやれよ・・・幸せになってやるって・・・真希」

「もう・・・ドンキで・・・いいよ・・・私は親を捨てたんだから・・・」

「でもな・・・わからないことがあるよ・・・親に捨てられないでいることより・・・幸せなんてあるのかな」

「・・・」

「そうだろ・・・幸せなんて・・・明日、ママがいない・・・ってことを知らない子だけの・・・」

「・・・」

それでも・・・夕日に向かって歩き出すポストとドンキである。

二人の里親獲得競争はまだ始ったばかり・・・。

日ノ本学園なみの決定力で華麗なゴールを決めてもらいたい・・・。

そして・・・襲いかかるエンターティメントにもの申す・・・おバカな良識に支配された赤ちゃんポストのDQNな主宰者たち。

現実というフィクションとドラマというフィクションは違うのだという区別もできないのに自分が健全だと思っているのだから・・・一同大爆笑なのである。

表現の自由への弾圧は断固粉砕するべし。

ま・・・問題作となっただけでもいい・・・という考え方もあるよな。

里親がカモだからコガモなんだもんな。

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2014年1月15日 (水)

福家警部補の挨拶「お加減いかがですか?」(檀れい)

だが、今回は連作短編集として二作目の「福家警部補の再訪」(2009年)の「失われた灯」を原作とする。

実際は「失われた燭台」なのであるが・・・犯人が苦し紛れに口走る「失明の危機にある骨董屋が主人公」のミステリのタイトルが「失われた灯」なのである。

冒頭で「リンドバーグ愛児誘拐事件」にからむ「リンドバーグ関与説」が紹介されるが・・・これは「ゴシップ」というものの本質を示唆しているとも言える。

倒叙モノの原点の一つである「刑事コロンボ」の犯人は多くが社会的な成功者である。彼らは知力体力に恵まれ、財産や名誉を守るために「完全犯罪」を目論む。

その「トリック」を風采のあがらぬ移民系の下層民である刑事が見破り、彼らを栄光の座から引きずりおろす。

お茶の間はそこに快感を覚えるのである。

つまり・・・「スターのスキャンダルをリークするジャーナリズム」と同じ構図になっている。

当然のことながら・・・そこにはあさましい薄汚さがあるわけだが・・・本家「コロンボ」は「真実を追求する」という一点に置いて清冽であり・・・不純な動機を打ち消す。

亜流はそこを見落としがちなのである。

パクリの代表である「古畑任三郎」シリーズは主役の上品さがそれを救っていることは言うまでもない。

で、『福家警部補の挨拶・第1回』(フジテレビ20140114PM9~)原作・大倉崇裕、脚本・正岡謙一郞、演出・佐藤祐市を見た。脚本家がかなり拙いのでミステリとしてはもどかしい感じもするが・・・たとえば「うしなわれたひ」ではなくて「うしなわれたあかり」であるべきだ・・・演出もどちらかといえば耽美派なので・・・ますます、苦しい展開になっている。しかし・・・リピートしてみれば・・・探偵役である福家警部補(檀れい)の妄想がほぼ超能力のように殺人現場を再構成していることが分かる。つまり・・・正鵠を射ているのである。しかし、テレビドラマはそれではダメだと思う。

倒叙モノの基本は・・・善なる神による・・・犯罪者の失策の形成である。

それは犯人の性格と密接に関係している。

犯人は成功者であるために・・・自分に自信を持っている。そして・・・現代において成功者は能弁家なのである。

今回の犯人は・・・ミステリの脚本家である。だから・・・トリックには絶対の自信を持っている。そのために・・・うっかり口を滑らせる。

その「失策」の・・・さりげなさの按排が難しいのである。

「誘拐事件の渦中における正当防衛による殺人」と・・・ほぼ同時期に発生した「殺人放火事件」・・・この無関係な事件を結び付ける福家警部補の心の動きをもう少し見せないと・・・すべてが唐突に感じられ・・・あっと驚く結末がとってつけたものに感じられるのだ。

また・・・倒叙モノでは犯人の犯行方法はもちろんだが・・・動機なども冒頭で処理するのが基本である。

今回は・・・被害者が・・・「加害者のデビュー作が盗作であったことを知って恐喝をしていた」ということを曖昧にする必要は全くない。

そこを濁すことによって・・・加害者の完全に見える犯罪の輪郭がぼやけてしまうので・・・禁じ手なのである。

「デビュー作が盗作なんて知られたら・・・お前は破滅するよな」と骨董品屋(有薗芳記)が言う。

成功した脚本家の藤堂昌也(反町隆史)は死んだ友人の作品を盗んでいたのだ。

骨董品屋は・・・故人の生家の骨董を鑑定していて・・・故人の原稿を発見したのだった。

それを買い取るように要求する骨董屋。

追い詰められた藤堂は・・・自身のストーカーである俳優志望の男・三室(小林且弥)を利用してアリバイ工作を目論む。

三室に拳銃を調達させるなど・・・かなり・・・無理のある設定だが・・・とにかく・・・三室を新作に起用すると言って騙し・・・別荘で三室に監禁された態を装う。

三室が常用している精神安定剤で眠らせ、自分の事務所の事務員で愛人でもある大城加奈子(水崎綾女)に電話をかけ、録音した三室の声で誘拐を知らせる。

そして・・・骨董屋を殺しに出かける。

骨董品屋は誰かと電話で話している。

そこで・・・藤堂は骨董屋が・・・古びた器で「酒を飲んでいる」と思いこむ。

さらに・・・金庫には・・・「故人の原稿」がしまわれている。

この時・・・藤堂は見ないが・・・金庫から原稿が取り出され、古びた器がしまわれるのである。

原稿を手にした藤堂は・・・骨董屋を殺し、原稿もろとも家を焼くのだった。

そして・・・別荘に戻った藤堂は誘拐事件を捜査中の石松警部(稲垣吾郎)に居場所を探知させるための「身代金要求」の電話をかけてから・・・三室を挑発し・・・自分に暴行させておいて射殺するのである。

ものすごく偶然に頼った完全犯罪だったが・・・警察が突入してそれは成功をおさめたかのように見える。

しかし・・・放火殺人の現場に現れた福家警部補は鑑識の二宮(柄本時生)に問うのだった。

「この焼け残った金庫に入ってたもの・・・なんだと思う?」

「コップですか・・・」

「壊れた燭台よ・・・」

「お宝ですかね・・・」

「このサイン入りの脚本なんかも・・・そうですかね」

「へえ・・・誰なの」

「ミステリー・ドラマで有名な藤堂昌也ですよ」

「なるほど」

やがて・・・藤堂昌也を調べ出す福家・・・藤堂の郷里の故人の家から創作ノートを発見し・・・燭台の取引先を捜索する。

そして・・・「コップ」の写真を藤堂に見せるのだった・・・。

うっかり・・・それを「器」と言ってしまう藤堂だった。

「失敗だったな」

「いいえ・・・あなたの失敗は・・・友人のアイディアを盗んだことですよ・・・そんなことをしなくても才能あったのに・・・」

「認めたくないものだな・・・若さゆえのあやまちというものを・・・」

「であるか」

藤堂と加奈子の情事のサービスくらいは欲しかったな。

まあ・・・茶碗を割ったあたりが水崎綾女の最大の脚線美の見せ場か・・・。

原作ものなのでもう少しプロットを練るべきだと考えます。

関連するキッドのブログ→永作博美の福家警部補

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2014年1月14日 (火)

官僚の官僚による官僚のための隠蔽捜査(杉本哲太)VS恋多き女と恋に一途な女は同じ意味なの失恋ショコラティエ(松本潤)

おっさんのためのミステリ小説原作ドラマと乙女のための恋愛コミック原作ドラマがすれ違う月曜日である。

落差があるようで・・・それほどでもないのは・・・どちらも普通の人々の妄想に寄り添っているフィクションだからだろう。

おっさんたちには「職場」があり、乙女たちには「恋愛」がある。

ただそれだけのこと。

普通の人々の「職場」や「恋愛」にはそれほどドラマチックなことはない。

だが・・・「宇宙戦争」が始ったり、「アンドロイド」に恋をしたりするほどの「刺激」はなくても・・・ちょっと「事件」があったり、「夢」があったりの「変化」は欲しい・・・そういうお茶の間の期待に応えようとする姿勢が涙ぐましい。

「職場」と「家庭」どっちもピンチとか・・・「男の子」にも「乙女」を求めたりとか・・・人々はほんの少し・・・ないものねだりなものだから。

で、『隠蔽捜査・第1回』(TBSドラマ20140113PM8~)原作・今野敏、脚本・中澤圭規、演出・岡本伸吾を見た。脚本家は「終電バイバイ」からココ。演出家は「クロコーチ」からココである。原作はテレビ朝日が2時間サスペンス(2007年~)でシリーズ・ドラマ化していて主人公・竜崎を陣内孝則、伊丹を柳葉敏郎が演じていた。原作小説はその後も続編が描かれているので・・・おそらく続きが見られるのだと思われる。

警察庁長官官房総務課課長の竜崎伸也・警視長(杉本哲太)は東京大学卒業のキャリアである。謹厳実直な性格で・・・融通がきかない・・・清廉潔白な男で・・・私利私欲に走らなすぎるために・・・官僚仲間からは煙たがられている。仕事は主に「警察組織全体のマス・メディア対応」である。特に「不祥事」に対応するために・・・「正確な情報」を常に求めている。「正直が結局一番、信用が得られる」という信念は「警察組織の隠蔽体質」と軋轢を生じる。しかし・・・受験生である長男が自宅で麻薬を吸引しているのを目撃してしまい・・・深刻なジレンマに陥ることになる。

竜崎の幼馴染で有名私立大学卒業のキャリアである伊丹俊太郎・警視長(古田新太)は警視庁刑事部長である。竜崎が真面目すぎる性格からいじめられていたのに対し、物事にあまりこだわらないタイプのガキ大将だったらしい。幼馴染の竜崎には好意を持っているが、東大閥に属さないことから複雑な感情も合わせ持っている。

竜崎が「会議室(上)」の象徴なら・・・伊丹は「現場(下)」の象徴ということになるだろう。

その背景には警察庁官僚同士や警視庁官僚との確執があり・・・竜崎は上司の警察庁官房長官参事官の牛島・警視長(神保悟志)の要請で刑事局幹部を飛び越えて現場の伊丹から情報を聴取することを求められる。

これに竜崎と伊丹の同期だが一人だけ警視監に出世している警察庁長官官房総括審議官である上條貴仁(生瀬勝久)が加わって、ザ・警察官僚の世界に彩りを添えるのである。

もちろん・・・上條が出世欲の権化であることはいうまでもない。

ちなみに竜崎には警察庁長官官房総務課長補佐の谷岡香織・警視(青山倫子)というくのいちの香りのする部下が配置されている。

そして、伊丹の上には警察庁刑事局捜査第一課長の坂上栄太郎・警視長(矢島健一)がいる。

つまり・・・警察庁長官→上條→牛島・坂上→竜崎・伊丹→谷岡という階級と職務による上下関係が構成されているのだった。

事件の舞台となる警視庁・大森北署刑事課強行犯係の刑事・戸高善信・巡査部長(安田顕)から見れば全員、雲の上の存在なのである。

息子の犯罪行為に思い悩んだ竜崎は伊丹に相談を持ちかける。

「隠蔽するしかない・・・息子を破滅から救うのは父親の役目だ」と友人として超法規的アドバイスをする伊丹。

おりしも・・・都内では「凶悪事件」の加害者たちが刑期を終えて出所後、連続して殺害される事件が発生する。

容疑者として「正義感の強すぎる警察官」が浮上し・・・不祥事発生に蒼ざめる警察官僚たち。

しかし・・・自殺しようとした「犯人」を戸高刑事が逮捕してしまったために・・・警察官僚たちにとって最悪の事態となってしまうのだった。

彼らは「これはもう・・・隠蔽するしかない」と結束するのだが・・・一人・・・竜崎だけは・・・。

まあ・・・「身内を守らなくて誰を守るのか」という人情と・・・「社会正義」の葛藤が描かれていくのですな。

まあ・・・義理と人情を秤にかけると・・・いろいろと面白いということです。

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で、『失恋ショコラティエ・第1回』(フジテレビ20140113PM9~)原作・水城せとな、脚本・安達奈緒子、演出・松山博昭を見た。脚本家は「大切なことはすべて君が教えてくれた」(平均視聴率 11.4%)、「リッチマン、プアウーマン」(平均視聴率 12.4%)、「Oh,My Dad!!」(平均視聴率 9.2%)と内容も数字も微妙だが何故か起用され続ける経歴の持ち主である。ガチの原作を得て大きく開花するか・・・運命の分かれ道ですな。演出家は「鍵のかかった部屋スペシャル」からココ。ブラックアウトしすぎですな。テレビが壊れたかとドキドキさせてどうする・・・なのでございます。

実家がケーキ屋の小動爽太(松本潤)は高校時代に一つ年上の高橋紗絵子先輩(石原さとみ)に一目惚れ・・・それ以来・・・彼女の恋人になることを夢見続けるのである。

一方で・・・高橋紗絵子は恋多き女・・・次から次へと男を変える・・・「雌犬(ビッチ)の妖精(フェアリー)」なのである。

チョコレートが大好きな紗絵子のために・・・ついにはパリの一流店へショコラティエ(チョコレート職人)として修行の旅に出る爽太なのである。

父・誠(竹中直人)も妹・まつり(有村架純)も従業員の井上薫子(水川あさみ)も呆れるほどに・・・「紗絵子先輩LOVE」な爽太・・・。

もちろん・・・今の処・・・乙女・・・ではなかった・・・童貞らしい。

有名老舗「パティスリー・トレルイエ」のオーナーの息子でフランス人と日本人のハーフであるアニメおタクのオリヴィエ・トレルイエ(溝端淳平)を伴って帰国した爽太は・・・「ショコラヴィ」を開店して・・・紗絵子先輩の気を惹こうとするのだが・・・再会した紗絵子先輩は爽太に結婚式のケーキ製作を依頼するのであった。

紗絵子先輩の結婚相手は・・・なにやら怪しい雑誌編集者の吉岡(眞島秀和)だった。

それでも・・・「紗絵子先輩の結婚生活が破綻すること」を確信して片思いを止めない爽太に「さらに片思いのブス」な役柄に徹する井上薫子は心を痛めるのであった・・・。

そして・・・そんな爽太の動向を密かに見つめる怪しい男(佐藤隆太)と怪しい女(水原希子)・・・。

乙女な男子が主人公の乙女なドラマである。

キッドは思わず「アーモンド・チョコレート」を一箱食べてしまいました。

お茶の間の皆さんもご注意くだされますように。

とにかく、今季の月曜日は駅長と太巻、若春子と「あまちゃん」ファン(松本潤)の二本立てなのだった。

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2014年1月13日 (月)

孫子・行軍篇に曰く、半進半退者、誘也・・・と軍師官兵衛(岡田准一)

「孫子」は「武経七書」の一である。

およそ二千五百年前に孫武が著したと言われている。

「計篇」「作戦篇」「謀攻篇」などの十三篇よりなる。

今回、官兵衛が引用したのは・・・「行軍篇」よりの一言である。

「行軍篇」は進軍の四つの原則と・・・敵情探知の三十二の原則を述べており・・・「半進半退者、誘也」は敵情を探知する原則の第十七番目の項目となっている。

「孫子」の基本は「勝てる戦しかしない」ということなので・・・「進軍の原則」とはいかに安全に味方を配置するかということにつきる。一方で「味方を安全たらしめる」敵軍の動向については仔細を極める。

「敵兵が中途半端に進んだり、中途半端に退いたりしているように見えるのは・・・誘いをかけている」つまり、敵が何らかの罠を仕掛けている可能性が高いので注意が必要となるということだ。

そのために・・・猪突猛進を戒めているのである。

「戦争」とは「虚々実々のかけひき」なので・・・「裏」を言えば・・・「退却する時には一気に引かずに徐々に引く手がある」ということになる。

「兵法書」が必ずしも有効でないのは・・・基本的には敵味方の情報の分析が必要となるからである。

たとえば・・・敵指揮官が・・・「伏兵を得意とする」という情報があれば・・・「罠」の可能性は高まるし・・・単なる愚将が相手であれば・・・単純に「指揮系統が乱れている」ということになる。

今回は・・・敵の指揮官に・・・謀略家の石川源吾(升毅)がついていることを知っていた官兵衛は・・・敵勢の進退を見て「誘い」を看破したということになる。

二千五百年前から戦争とは「情報戦」だったのである。

現代でも「友好カード」と「敵対カード」を交互にちらつかせ・・・「誘い」をかける外交戦争は常套手段である。

敵情の分析が甘く、うかうかと「友好」に乗せられれば櫛橋左京進(金子ノブアキ )のように「痛恨の一撃」を浴びる場合があるということである。

で、『軍師官兵衛・第2回』(NHK総合20140112PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二 を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は通説では小寺職隆の娘で官兵衛の妹にあたる「おたつ」(南沢奈央)の描き下ろしイラスト大公開で感涙でございます。物語では廣峯神社の神官・伊吹善右衛門(フィクション)の娘(フィクション)という設定をとんでも大河風にアレンジしたわけですが・・・廣峯神社の巫女が小寺職隆(柴田恭兵)のお手付きになって子を孕む可能性は充分であり・・・異母妹で何の問題もないわけですのに・・・官兵衛が異母妹と乳繰り合っても何の問題もないですし・・・女子供に気を使いすぎ、戦国武将たちの「よいではないかよいではないか」モードが規制されるのは本当に一同爆笑の展開と言えるのでございます。

Kan002 永禄5年(1562年)、元服し、主家である小寺政職の近習となった黒田(小寺)官兵衛。そもそも小寺家は姫路城の北にある置塩城に逼塞する守護大名・赤松宗家義祐の分家である。龍野城の龍野赤松家も分家であり、三木城の別所家、英賀城の三木家も同様である。その中で龍野赤松政秀は分家筆頭として力を強めていたのである。要するに下剋上なのである。かたや小寺家は、志方城の櫛橋氏のような赤松一門衆や、有能な黒田家を登用することで西播磨一帯に勢力を拡大していたのである。一方で赤松宗家には筆頭家老家としての浦上家がある。浦上家は守護代として西隣の備前国に赴任するや・・・ちゃっかりと戦国大名化した掟破りの家来衆ということになる。しかし、この頃には播磨国室津城の浦上政宗と備前国天神山城の浦上宗景が兄弟喧嘩の真っ最中なのであった。ちなみに・・・宇喜多家はこの浦上家の家来である。この夏、伯耆国では毛利家の勢力が侵入を開始している。永禄6年(1563年)四月には湯所口の戦いで因幡国守護軍の山名豊数が武田高信に敗れている。山陰での覇権争いと同様に・・・宇野下野守こと赤松政秀(団時朗)と小寺藤兵衛政職(片岡鶴太郎)は西播磨の縄張り争いて緊張を高めていたのだった。一方、東の彼方尾張国では三河国の松平元康との清州同盟を成立させた織田信長が義理の甥にあたる斎藤龍興が支配する美濃国攻略戦を開始する。しかし、美濃国は強国であり、一流軍師・竹中半兵衛(谷原章介)がその行く手を阻むのだった。信長は永禄十年まで・・・美濃を手中に収めることはできないのである。その激闘の前にはややのんびりとした赤松と小寺の小競り合い・・・しかし、その均衡をやぶるような政略結婚が展開される。裏に宇喜多直家が糸を引いているかのような奇手である。赤松宗家の家老家である室津城主・浦上政宗の子・清宗と小寺家家老である姫路城主・小寺(黒田)職隆の娘の婚姻である。これによって・・・西播磨の力の均衡は崩れ・・・龍野赤松家の弱体は避けられないことになる・・・はずであった。永禄7年1月11日(1564年2月23日)・・・浦上家と黒田家は親戚になろうとしていたのであるが。

「え・・・」と父の職隆から縁談を聞かされた官兵衛は絶句したのであった。

「どうした・・・」

「それでは・・・伊吹家のおたつは・・・異母妹なのですか・・・」

「そうじゃ・・・わしと広峰神社の忍び巫女との間に出来た子じゃ・・・」

官兵衛は・・・おたつと逢瀬を振り返る。

官兵衛を男にしたのもおたつだったし、おたつを女にしたのも官兵衛だったのである。

ふくよかなおたつの肉体に何度も精を放っていた官兵衛だった。

そうした情交によっておたつはくのいちとしての腕を磨いていったのである。

(妹・・・だったのか)

太古の昔から同母兄妹の性交は禁じられ忌むべきこととされたが・・・異母ならばそれは認められていた。そもそも・・・父親が同じかどうかを確かめる術がなかったからである。

妹だと知って官兵衛の中でおたつへの情が減ずるわけでもない。

ただ・・・嫁いでしまえば・・・馴染んだ交合の日々が遠ざかるのみである。

それが・・・少し惜しい気がする官兵衛だった。

しかし・・・軍略家として覚醒しつつある官兵衛は・・・おたつへの未練とは別に・・・この政略結婚に胸騒ぎを感じるのである。

「危ういのではありませんか」

「何がだ・・・」

官兵衛は・・・武人としての父に時々・・・もどかしいものを感じる。

祖父とは阿吽の呼吸で分かることが・・・父には通じないことが多いのである。

「姫路の城と室津の城が結ばれれば・・・龍野城は挟撃されることになります」

「その通りだ・・・これで西播磨は・・・我が殿・小寺政職様のものとなろう・・・」

それは・・・誰にでもわかることだ・・・。

官兵衛は心の中で舌打ちするのだった。

誰もが価値を認めることは・・・危険なのである。

誰もが欲するもの・・・それは火種なのだ。

そこまで・・・おいつめれば・・・龍野城の赤松政秀がどうでるか・・・そこが肝心なのである。

「おたつの婚礼の儀・・・めでたきことなれど・・・」

「どうした・・・何を案ずる・・・」

「ご油断なきように・・・」

「ぬかりはないは・・・室津までの道中・・・八代道慶に警護をしかと申しつけてある」

八代道慶は・・・官兵衛の乳兄弟である八代六郎の父親で・・・黒田家きっての豪のものである。

父にそう言われれば返す言葉はもはやないのである。

そもそも・・・この縁談は・・・主君である御着城主の小寺政職が主導するものである。政職の小姓とは言え・・・人質の身分である官兵衛の意見を述べる筋合いではなかった。

しかし・・・妹の婚姻は・・・官兵衛の勘が告げたように・・・ただならぬ結末を迎えるのであった。

年の瀬の御着城には山を越えた雪が舞っている。

この時以来・・・雪を見れば官兵衛はふと・・・おのが腕の中で甘えた声を出すおたつの面影に胸が疼くようになるのだった。

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2014年1月12日 (日)

私を現場に連れてって!(武井咲)戦力外捜査官・・・(TAKAHIRO)

さて・・・冬季五輪のある冬ドラマ・・・真面目にやってらんねえよ的傾向は・・・如実である。

医療班・・・「チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮」、「僕のいた時間」、「Dr.DMAT」、「医龍4」・・・。

捜査犯・・・「相棒season12」、「科捜研の女」、「隠蔽捜査」、「福家警部補の挨拶」、「緊急取調室」、「S-最後の警官-」・・・。

うわああああ・・・と叫びたい。

というところで・・・訃報の電話である。

キッドがまだ人間だった頃、手とり足とり指導してくださった山西伸彦氏(放送作家)が逝去・・・。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

ちょっと・・・早すぎるんじゃないですか。

まあ・・・放送作家というものは葬儀の席でも「笑点」のネタを考えていたりしますけどね。

「キッドくん・・・字が下手でも原稿用紙の枠一杯に一字ずつ大きく書くと読みやすくなるよ・・・」

ピンポンパンポ~ン。・・・キッドはもう、鉛筆で文字を書かなくなりましたけどね。

で、『戦力外捜査官・第1回』(日本テレビ20140111PM9~)原作・似鳥鶏、脚本・ 鴻上尚史、演出・中島悟を見た。何故か、全篇を彩る管弦楽のための行進曲「スポーツ行進曲/黛敏郎」(1953年)である。ものすごくゆるいジャンルに属することをアピールしているらしい。つまり「デカワンコ」ということである。警視庁のトップである・・・警視総監・越前憲正(柄本明)と総監の座を狙う副総監・小早川安博(佐野史郎)の確執が燻る中・・・警視庁捜査一課十八係に配属されるキャリア警部の海月千波刑事(武井咲)・・・EXILEとは思えない普通の演技力のTAKAHIRO演じる設楽恭介巡査はそのお守役を命じられるのだった。

何故か、警視総監と越前と海月には特殊な関係があり・・・エチゼンクラゲだからな。それを察知した小早川副総監は・・・海月に手柄を立てさせないように画策を開始する。

こうして・・・「現場を知りたくて」刑事になった海月は・・・捜査本部から疎外されてしまうのである。

しかし・・・かってバリバリのいじめられっ子だった海月はそのような迫害には慣れていたのだった。

そして・・・第一の事件「男子中学生射殺事件」が発生するのである。

この緩いモードの割にはいきなり事件はハードなのだった。

とにかく・・・新人といえども海月は警部である。

巡査の設楽刑事は命令には従わなければならない。

「よつんばいになりなさい」と言われたらそうするしかなく・・・婦人警官・田淵亜利砂(水沢エレナ)には変態プレーと勘違いされるのである。

結局・・・のこのこと現場に出かけていく海月と設楽・・・。

いじめられっ子だった海月は・・・事件の裏にいじめの匂いを嗅ぎつける。

一方、犯行に使われた拳銃に前科があったことから・・・前科者の伊賀(六平直政)をマークする捜査本部・・・。

真っ向から対立する二つの見立て。

しかし・・・海月は主役力で事件の核心に迫って行く。

挙動不審のいじめられっ子で被害者と同じ中学に通う小沢(飛田光里)に職務質問をするのであった。

「本当に刑事なの?」

「あの方は警部さんだ・・・」と設楽刑事。

「警部って偉いの・・・?」

「古畑任三郎は警部補だ・・・警部はそれより偉い。踊る大捜査線の青島刑事はレギュラー・シーズンでは巡査部長で警部補の1つ下だ。相棒の右京さんはシーズン1の時は警部補・・・ちなみに私は一番下っ端の巡査だ・・・」

「世の中って・・・理不尽だね」

「あなた・・・いじめられているでしょう」と海月警部。

「そんなことないよ」

「隠しても・・・私にはわかります」

「どうして・・・」

「私もいじめられっ子だったから・・・」

唖然とする少年と刑事だった。

巡査 遠藤鶴(本刈屋ユイカ)「ゴンゾウ 伝説の刑事」

巡査部長 恩田すみれ(深津絵里)「踊る大捜査線」

警部補 柴田純(中谷美紀)「ケイゾク」

警部 大澤絵里子(天海祐希)「BOSS」

警視 銭形舞(堀北真希)「ケータイ刑事」

警視正 銭形愛(宮崎あおい)「ケータイ刑事」

警視長 沖田仁美(真矢みき)「踊る大捜査線」

警視監 銭形泪(黒川芽以)「ケータイ刑事」

警視総監 橘朝子(かたせ梨乃)「奥様は警視総監」

・・・全階級制覇である。全員集合してもらいたい。

伊賀が逮捕され・・・事件は解決の方向に向かうが・・・海月は伊賀の所持品にスコップがあることから・・・事件の全容を推察するのだった。

特別に伊賀の取調を許される海月。

「あなたは・・・三年前に・・・殺人の罪を犯し・・・小学校の校庭に拳銃を埋めましたね」

「そんなことするかよ・・・」

「いいんですか・・・このままだと・・・中学生を殺したのもあなたになっちゃいますよ」

「え・・・」

「警察はそのくらい簡単にでっちあげますよ」

「・・・」

「二人も殺して・・・そのうち一人が中学生じゃ・・・極刑もあります」

「そんな・・・」

「今なら・・・懲役ですみますよ」

「・・・埋めました」

ある意味・・・物凄い展開である。

海月と設楽は・・・小学校の記録を調べるのだった。

「何を捜すんです・・・」

「飼育係と・・・飼育動物の死亡記録よ・・・」

「なんで・・・」

「校庭を掘りかえすとしたら・・・動物のお墓を作るために決まっているでしょう」

「き・・・決まっているんですか」

「あったわ・・・死亡したのはウサギ・・・飼育係は・・・」

「小沢くん・・・」

いじめっ子リーダーを射殺した後も・・・いじめは続いていた。

屋上でいじめられる中学生となった・・・小沢少年。

海月と設楽が現れたことですべてを悟るのだった。

「ばれたんですね・・・」

「いじめを防げなくてごめんなさい」

小沢少年は拳銃を抜き放つ。

驚愕するいじめっ子たち。

いじめっ子全員を射殺する小沢少年だった。

「自首します・・・14歳なら一人殺すも全員殺すも同じですもんね」

「うん・・・いじめっ子たちも少しは懲りたでしょう・・・地獄で反省するべきよね」

「残念だ・・・マシンガンが埋まってたら・・・先生も見て見ぬフリしてたやつも全員ぶっ殺せたのに・・・」

「それは・・・ちょっとやりすぎ」

かけつけた無能な刑事たちは立ちすくむ・・・。

おい・・・結末・・・違うだろう。

いや・・・本質的にはこういう実に素晴らしい主題だと妄想します。

ハイブロウ過ぎて・・・お茶の間には伝わらなかったかもしれないのであえて解釈してみました。

今年のクリスマスには世界中のいじめられっ子たちにサンタさんが銃器をプレゼントしてくれますように・・・。

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2014年1月11日 (土)

ボク(中村蒼)と香川みどり(桜井美南)となぞの転校生(本郷奏多)

少年時代の終りはいつかやってくる。

「時をかける少女」では幼馴染がラベンダーの香りを嗅いだ時、「ねらわれた学園」では高見沢みちるが生徒会長に立候補した時・・・そして「なぞの転校生」ではあの子が恋をした時だ。

原作小説ではそれほどでもないのだが・・・ビジュアル化された「なぞの転校生」では・・・少年より少女が先に大人になることが基本中の基本なのだと思う。

それにしても・・・(木)「ウシジマくん2」で(金)「なぞの転校生」となると・・・すでに深夜枠が二本である。

(日)「軍師官兵衛」

(月)未定

(火)未定

(水)未定

(木)「ウシジマくん2」

(金)「なぞの転校生」

(土)未定

なのだが・・・今の処、レビュー対象候補は「僕のいた時間」のみ。

「夜のせんせい」、「私の嫌いな探偵」、「明日、ママがいない」、「戦力外捜査官」、「S-最後の警官-」・・・このあたりと残り四枠の争奪戦である。微妙だなあ。

で、『・第1回』(テレビ東京201401110012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。言わずと知れたジュブナイル小説(1967年)の三度目の映像化である。最初はNHKの少年ドラマシリーズで1975年。今回主人公の父親を演じる高野浩幸は初代・岩田広一である。そして、ヒロイン香川みどり(伊豆田依子)でこの時代に思春期を迎えた男子にとっては「美少女」の一つの典型を形成していると推測される。次は1998年の映画版。岩田広一(妻夫木聡)で香川翠(新山千春)だが・・・こちらは知る人ぞ知る作品といっていいだろう。オリジナルの要素が強く、岩瀬真祐未(佐藤康恵)が軸となっている。翠と真祐未の関係が小中和哉監督的に・・・趣味なのだろう。

そういう意味で・・・「怨み屋本舗」「エリートヤンキー三郎」「湯けむりスナイパー」「モテキ」「勇者ヨシヒコと魔王の城」「まほろ駅前番外地」「みんな!エスパーだよ!」と傑作を生み出してきたこの枠で・・・岩井俊二が・・・「なぞの転校生」をやるというのは・・・どうしても期待が高まるわけである。

まあ・・・ムードだけにしてもである。

でも・・・「なぞの転校生」にムードはとても重要な要素なんだな。

Nazo001 さて・・・七瀬シリーズの七瀬に比べれば・・・香川みどりは今回でようやく三代目である。「ねらわれた学園」の楠本和美(小山セリノ→原田知世→新田恵利→村田和美)より少ないし、アニメ化もされていないのである。「時をかける少女」の芳山(島田淳子→原田知世→南野陽子→内田有紀→中本奈奈→安倍なつみ)にも負けている。

異世界からやってきた少年に心を奪われるという点では芳山と同じなのだが・・・香川の方が主人公に対して残酷に他の男を好きになってしまうというニュアンスが生じるために敬遠されるものと思われる。

しかし・・・このポイントこそが・・・「なぞの転校生」の醍醐味であろう。

今回はそういう「微妙な感じ」を描かせたら天下一品の人の介入なのである。

早くも・・・序盤戦から・・・岩田(中村蒼)の仄かな恋心をいたぶる気配が濃厚で・・・いい感じなのである。

ちなみに・・・その他の女生徒に東西山高校2年3組・小川玲子(福地亜紗美)がキャスティングされたりしている。ドラマ「受験の神様」の小悪魔・福本亜紀、「鈴木先生」の新見葵である。

また、みどりの女友達ポジションの春日愛(宇野愛海)は私立恵比寿中学の元メンバーである。

この他に岩田の所属するSF研究会には眼鏡っ子の大田くみ(椎名琴音)や・・・なぞの女の子として杉咲花も配置されている。

東西山高校2年3組に通う岩田広一と香川みどりは幼馴染である。

帰り路が一緒の二人は夕暮れの空に「上昇する流星」を目撃する。

広一は「UFOじゃないか」と疑問を呈するのだが、みどりは「生まれて初めて流れ星を見て願い事したんだから・・・流れ星に決まっている」と決めつけるのだった。

「何をお願いしたんだよ」

「秘密・・・」

広一は・・・自分が彼氏になるように祈っているのではないかと願望的妄想をするのだった。

その現象はニュース(狩野恵里アナウンサー)にも取り上げられるほど広範囲で目撃されたらしい。

もやもやとした気分で帰宅した広一は・・・隣室の住人・江原正三(ミッキーカーチス)が認知症を発症している場面に遭遇する。

正三は妻にも愛犬・サスケにも先立たれた独居老人である。

「家にたくさん人がいるんだよ・・・」

老人の奇妙な言動に室内を検める広一。しかし・・・誰もいないのだった。

広一の父親の亨(高野浩幸)はサイエンス・ライターである。

広一は父親にも「UFO説」を否定される。

そして・・・母親の君子(濱田マリ)にも「いつまでたってもムーくんなんだから」と茶化されるのだった。

おそらく・・・広一はオカルト雑誌「ムー(MU)」の愛読者なのだろう。

このことはクラスでも周知の事実である。

「なぞの転校生」といえば大谷先生である。初代・岡田可愛、二代・小牧かやのに続いて三代目は京野ことみだった。

今回は音楽教師であり・・・グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』から「金星、平和をもたらす者」を生徒たちに聞かせるのだった。

しかし・・・大谷先生はどうやらオカルト好きらしい。

極めて控えめなサービスとして・・・香川みどりたちの体操着から制服への生着替えがあり・・・それを跳び箱の中から盗撮した大森健次郎(宮里駿)は香川に発見され奴隷となるのだった。

しかし・・・体育倉庫で・・・「上昇する流星」に続く怪奇現象・・・「奇妙な発光」が発生する。

みどりは・・・奇妙な出来事の連続に・・・何かの兆しを感じるのである。

その夜・・・広一とみどりは春日愛と変態・大森とともに校舎に侵入する。

広一はデート気分で浮かれるのだった。

夜の校舎に好きな女の子と二人きり・・・夢のようなシチュエーションである。

しかし・・・四人を発見、追跡した警備員はプラズマ状の謎の電光に襲撃されるのだった。

世界に何かが起ろうとしていた。

そして・・・江原正三の部屋には・・・全身を泥土に覆われた奇妙な少年(本郷奏多)が出現していた。

実に・・・ゴージャスな夜のジュブナイル・・・始りました。

関連するキッドのブログ→安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様のなぞの転校生

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2014年1月10日 (金)

大激突!Dr.DMATの三十歳児(大倉忠義)なんですーっ(加藤あい)VSでんでん・大杉漣・小日向文世がいる緊急取調室で(天海祐希)VS医龍4いつもの無理ゲーはじめました(阿部サダヲ)

なんじゃあこりゃああああ・・・な木曜日の午後九時なのでした。

まさに仁義なき戦いです。前倒しするやら、延長するやらで・・・シェアの奪い合いなのでございます。

もう・・・なんか・・・最初から・・・ゲッソリするよね。

最低視聴率記録を更新したTBSテレビは六分前倒しでスタート・・・しかし・・・敵はテレビ朝日だけではなかったのです。なんとフジテレビが一時間前倒しでスタートです。

しかも・・・伝家の宝刀「医龍」シリーズで医療ものかぶり攻撃なあのだあ。

もう・・・まともにレビューできる状態じゃないんだわなあ。物量的に~。

まあ・・・なんにしろ・・・木曜日は「ウシジマくん2」ですからああああっ。

で、『Dr.DMAT・第1回』(TBSテレビ201401092054~)原作・髙野洋・菊地昭夫、脚本・穴吹一朗・吉澤智子、演出・倉貫健二郎を見た。DMAT(災害派遣医療チーム)の活躍を描くコミックのドラマ化である。主人公は植物状態の妹・春子(瀧本美織)を勤務先の病院に長期入院させている内科医の八雲響(大倉忠義)・・・災害によって負傷した妹がふと目を離した隙に意識不明になってしまい・・・それがトラウマになっていて・・・決断を迫られるとパニックになってしまうというキャラクター設定である。そんな響を幼馴染の看護師・吉岡凛(加藤あい)、外科医の小曾根(佐藤二朗)、看護師長の長谷川(麻生祐未)、病院長の伊勢崎(國村隼)、ハイパーレスキュー小隊長の桜庭(石黒賢)たちがよってたかってなだめすかしはげましもりたててなんとか10秒迷えば1つの命が消えてゆく災害現場で医療活動をしてもらおうという展開である。

「トリアージしてくれ」

「こわくてできません」

・・・とにかく・・・響は医師として災害現場に出る前に、患者として心療内科に通い、心の病を治すべきだと思う。

関連するキッドのブログ→海の家の診療所

で、『緊急取調室・第1回』(テレビ朝日20140109PM9~)脚本・井上由美子、演出・常廣丈太を見た。特殊捜査係(SIT)の交渉人・真壁有希子(天海祐希)は立てこもり犯の説得に失敗し、犯人に対する狙撃を許してしまう。そんな真壁を新設されたキントリこと緊急事案取調対応班(フィクション)にスカウトする管理官の梶山(田中哲司)だった。取調のプロである菱本刑事(でんでん)、中田刑事(大杉漣)、小石川刑事(小日向文世)という三人のおっさんだけでは職場に潤いが足りないと考えたらしい。

彼らは・・・特殊で緊急性を要する取調に対応するチームなのだった。

だから・・・ほとんどの時間は取調に費やされるのだった。

交番爆破事件が発生し・・・警官が死亡。そして・・・真犯人を名乗る男(高嶋政伸)が出頭してくる。

彼は・・・冤罪事件の被害者で・・・冤罪によって家族も仕事も・・・そして心の安定さえも失った男なのである。

そして・・・彼は自分を逮捕した捜査一課の刑事・渡辺鉄次(速水もこみち)と監物大二郎(鈴木浩介)を誘拐し、秘密の場所に時限爆弾とともに監禁していたのだった。

そんな・・・あまりにも正当な復讐心にかられた男に真っ向勝負を挑む真壁刑事だった。

「こんなことをして・・・お母さんは泣いてるぞ~」

「母は・・・冤罪で僕が逮捕された時に・・・心労で死にました・・・」

「・・・」

万策尽きた取調官たち。

しかし・・・監禁されていた渡辺刑事は超人的な馬鹿力の保持者で自力で脱出に成功し、事件は解決するのだった。

・・・えええええええええええええええええええええええええええええっ。

関連するキッドのブログ→サムライ・ハイスクール

で、『医龍-Team Medical Dragon- 4・第1回』(フジテレビ20140109PM9~)原作・乃木坂太郎、脚本・浜田秀哉、演出・田中亮を見た。例によって世界のどこかの危険地帯で戦闘と隣り合わせの医療行為をしている朝田龍太郎(坂口憲二)・・・。少女の頭に工事用のドリルで穴を開けているところで国際電話が入る。相手は・・・恩師の桜井修三(平幹二朗)だった。

「人手不足で病院がつぶれそうなんだ・・・」

「わかりました」

帰国して桜井総合病院を立て直す決意をする朝田である。

木原毅彦(池田鉄洋)や早川昭吾(柄本佑)が所属する最先端医療設備を誇る「L&P病院」は経営コンサルタントの岡村征(高橋克典)によって「医は算術」を実践し、桜井総合病院の経営を圧迫していたのである。

しかし・・・その裏には・・・鬼頭(夏木マリ)や野口 (岸部一徳)がからんだ陰謀が隠されているのだった。それはチーム・ドラゴンの海外売り込み計画なのである。

そんなこととは知らずに・・・早速・・・それなりに幸せに生活をしている加藤晶(稲森いずみ)、伊集院登(小池徹平)、荒瀬門次(阿部サダヲ)に「刺激的な手術が待っている」と誘いをかける朝田。うかうかとそれに乗るメンバーたちである。例によって藤吉圭介(佐々木蔵之介)は気になる患者がいるのですぐには合流しないのだった。

たちまち・・・急患が発生。

「緊急手術だ・・・」

「麻酔医がいません」

「ここにいるにゃあ・・・」と荒瀬。

無理ゲー手術が開始されると新たな急患が発生。

「同時に手術するのは無理です」

「私たちが引き受けます」と加藤&伊集院。

動脈瘤破裂だの、大量出血だのさらに難度があがる無理ゲー手術。

そこに貧乏なので停電発生である。

「人工心肺装置が・・・」

「人工心肺抜きで手早く終わらせる」

「私のポケットに人工心臓が入っているわ・・・バッテリー式なので電源不要よ」

「でも・・・時間が・・・」

「本気を出す」

「・・・」

「すごい」

「なんて早さだ」

「終了だ」

「こっちも終了だ」

響き渡る患者とその家族たちの「ありがとうございます」の合唱。

まあ・・・見たい人は見るといいと思うよ。

関連するキッドのブログ→過去の医龍

木曜九時の乱・・・視聴率的結果

①緊急取調室  12.5%(しのぐ)

②医龍4     11.6%(作戦通り)

③Dr.MAT    *7.9%(ふくろだたき)

まあ、合計32.0%の人がドラマを見ていたわけだが・・・。

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2014年1月 9日 (木)

君(多部未華子)と僕のいた時間(三浦春馬)

映画「バイオハザードIV アフターライフ」(2010年)で東京の感染者第一号となった女(中島美嘉)が雨の中で立ちすくむように・・・アンデッドになったかのような主人公・・・。

刺激的な立ち上がりである。

救いようのない難病を題材にして・・・この刺激的な冒頭に魅かれる・・・。

手足や言葉の自由を徐々に奪われながら最後には体の運動機能を全て喪失してしまう難病といえば・・・「1リットルの涙」の脊髄小脳変性症(SCD)を思い出すが・・・今回は「コードブルー2」にも登場した筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。どちらも特定疾患に認定されている難病だ。

難病ものは一種のホラー・サスペンスであり・・・その恐怖は・・・「明日自分もそうなるかもしれない」という緊迫感に尽きる。

そういう意味では「バイオハザード」と本作品は同じジャンルに属するのである。

治癒のための有効な治療法は確立されていないということが「登場人物の死」を確定しているのであるから、「バイオハザード」より恐ろしいとも言える。

しかし・・・主題歌が「春風/Rihwa」なので最終回はそれなりに暖かい結末が用意されている気がする。

まあ・・・その感動が・・・こなあゆきい・・・を上回るかどうかは不明である。

で、『僕のいた時間・第1回』(フジテレビ20140108PM10~)脚本・橋部敦子、演出・葉山裕記を見た。脚本家の力量が遺憾なく発揮され・・・よどみのない幕開けである。流石だとしか言いようがない。どこにでもある日常を切り取って花となすのは一種の魔力だな。そういう意味ではこの脚本家は魔法使いと言えるだろう。

おそらく・・・それほど偏差値の高くない大学に通う・・・澤田拓人(三浦春馬)は就職活動期に突入する。さわやかな好青年に見える拓人は高望みをしなければ「内定」を獲得するのは困難でないように思えるが・・・落選の連続である。

どう考えても・・・犯罪者になりそうな友人の水島守(風間俊介)や先輩で大学院生の向井繁之(斎藤工)があっさり就職を決めていくのに・・・拓人は内定に恵まれないのである。

やがて・・・拓人の心に巣食う「焦燥感」が・・・にじみ出ているのがその原因であることが描かれていく。

山梨で総合病院を営んでいる父親・昭夫(小市慢太郎)の期待に添えず医学部に進学できなかった拓人。四歳年下の優秀な弟・陸人(野村周平)が医学部受験のために上京しプレッシャーを感じる拓人。次男の陸人に期待を寄せ、出来の悪い長男にあからさまに無関心な母親・佐和子(原田美枝子)への満たされぬ思いに身悶える拓人。

そうした「心の暗闇」を覆い隠し・・・明るく振る舞う拓人の「本質」が就職面接官の心を醒めさせるのだった。

一方で・・・同じ大学に通うメグこと本郷恵(多部未華子)は奨学金を受け、ファミリーレストランでアルバイトをする苦学生。就職の面接で携帯電話の電源を切り忘れるという規格外の失敗を犯したり、用意した模範解答が他の学生とかぶって動揺するという適応力の無さを露呈するダメな子である。

美人の女友達の村山陽菜(山本美月)は「就職活動はあきらめて結婚活動に切り替える」などと言い出すのだが・・・メグは「恋愛力」も低いようだ。

女手一つでメグを育てた母親・翔子も「健康な男なら誰でも良い」と娘の恋人のレベルを下げまくっているのである。

大学生活で同じ学部に属しながら一度も話したことのない・・・メグと拓人は面接会場で出会い・・・自分より・・・ダメな子であるメグに拓人はようやく救いの手を差し伸べることができるのだった。

そして・・・二人はなんとなく・・・付き合い始めるのである。

ある意味では「就職活動」から「恋愛活動」への逃避であり・・・就職内定獲得競争に連戦連敗する二人だった。

もちろん・・・「恋なんてしている場合じゃない」という自覚のある二人は一線を越えることもできないのである。

気晴らしに海に出かけて・・・砂浜に「三年後の自分への手紙」を埋めてみたりするお子様デートをするのが精一杯なのだった。

しかし・・・次第にお互いに魅かれあう二人。

そんな時に・・・二人よりさらにダメな学生(夕輝壽太)が現れる。夕輝壽太は今季「S -最後の警官-」(TBSテレビ)にも出るのでこちらはゲストなのだろう。

「君は何社受けたの・・・」

「四十社くらい・・・」

「僕は八十社さ・・・」

拓人は上には上がいることを実感するのだった。

そして・・・「彼」は自殺してしまうのである。

葬儀の席に・・・メグもやってくる。

メグも・・・「彼」と面接会場で遭遇したらしい。

「彼は百社受けたんだって・・・」

拓人は「彼」とメグと自分との共通点を連想し・・・恐怖を感じるのだった。

そして・・・それは「生」への渇望となり・・・大胆な告白に至る。

「君にキスしてもいいかな」

うろたえたメグは思わず拒絶して・・・二人は気まずくなるのだった。

そして・・・最後の面接で再び同席する拓人とメグ・・・。

模範解答を答えかけた拓人は思わず・・・「彼」のことを思い出して笑ってしまう。

「どうしたのかね・・・」

「一生懸命・・・求職して・・・毎回、不合格者となり・・・自分のすべてを否定された気分になる・・・そんなことが百回も続くと・・・死にたい気分になることもあるのかな・・・とふと考えてしまったのです」

拓人の魂の叫びは・・・面接官や・・・メグの心を揺さぶるのだった。

そして・・・ついに・・・拓人は「内定」を手にしたのだった。

メグは・・・アルバイトをしながら・・・就職浪人に突入するが・・・拓人への愛を自覚するに至る。

しかし・・・拓人は「健康な男」ではなかったのだ。

二人に残された甘い日々は・・・あらかじめ失われていたのである。

実にスムーズに・・・せつない青春に・・・お茶の間の心は導かれて行ったと考える。

関連するキッドのブログ→遅咲きのひまわり~ボクの人生、リニューアル~

東京バンドワゴン~下町大家族物語

小さな故意の物語

家庭教師・拓人の教え子の桑島すみれ役(浜辺美波)についてはコチラへ

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2014年1月 8日 (水)

螺鈿迷宮のターミナルケア(水野美紀)VS紙の月の節約主婦(水野真紀)

好みというものがあると自覚するのは歯痒いものがある。

たとえば水野美紀が登場すると思って待機して水野真紀が出て来た時の落胆である。

もちろん・・・世の中には逆の方もいるわけである。

好みというデバイスを経由することによって作品の本質を見失うことは恥ずかしい。

しかし・・・悪魔としては問題があるが・・・人としては自然なことなのかもしれない。

ついに・・・表裏に・・・水野美紀と水野真紀が来たのである。

だから・・・なんなんだよ・・・マドンナ対決は・・・栗山千明VS原田知世だろうがっ。

ま・・・そうなんですけどね。

で、『チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮・第1回』(フジテレビ20140107PM10~)原作・海堂尊、脚本・後藤法子、演出・今井和久を見た。鈍くてうざいグッチー(伊藤淳史)と軽くてうざい白鳥(仲村トオル)のうざうざコンビによる医療ミステリの帰還である。このうざさが気にならない人は幸福だと思う。地下にスナック街のあるマンションの理事長として・・・換気に無関心なママたちがほっけを焼く度に火災報知機が鳴り響き、高層階から管理人室に行き、警報解除して復旧した後でにママたちに説教しなければならないくらいのうざさがあるぞ・・・たとえがわからんわっ。

今回の舞台は・・・「助けて・・・入院したら二度と退院できない」と当局に投書の寄せられた終末医療を専門とする碧翠院である。

「いや・・・最後を看取るための施設ですから」と嘯くのは桜宮院長(柳葉敏郎)である。

実態調査のために潜入中の白鳥と・・・何故か、東城医大病院から派遣されたグッチーは再会して・・・またもや・・・デコボココンビを結成するのである。

桜宮の二人の娘が・・・終末医療担当の小百合(水野美紀)と産婦人科医のすみれ(栗山千明)である。「死」のドクターと「生」のドクターというところか。

初回は・・・「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水晃一(西島秀俊)がドクターヘリに乗り颯爽と登場・・・ファン・サービスかっ。

妊婦役で生死の境を彷徨う患者ゲストとして佐藤めぐみも登場する。一部愛好家必見である。

事件の鍵を握るのは・・・小百合だと思われるが・・・初回はすみれが活躍するのだった。

こうして・・・二時間ドラマで語れる題材を・・・じっくりと・・・あるいは・・・うだうだと語るシリーズの第四弾がスタートである。・・・需要があるんだなあ・・・。

関連するキッドのブログ→「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋

で、『ドラマ10 紙の月』(NHK総合20140107PM10~)原作・角田光代、脚本・篠崎絵里子、演出・黛りんたろうを見た。「書店員ミチルの身の上話」の再放送があったのはコレに連動していたのか・・・と思わせるNHKの民放化ぶりである。自分というものが曖昧な女と大金をめぐる出奔の話である。しかし、原作と脚本家の体質的な問題で・・・ミチルほどのドキドキハラハラ感はなく・・・ぬめぬめっとした展開になっています。

「誰かのために生きることでしか生を実感できない女」・・・「貢ぐ女」・・・「ちやほやされたい女」は横並びの存在だと思うが・・・そこに微妙に線を引くのが女心というものなのかもしれない。

お嬢様学校時代・・・恵まれない子供たちのために50万円の寄付をした梅沢梨花(原田知世)・・・堅実な人生を歩む岡崎木綿子(水野真紀)は世間知らずのお嬢様の梨花を「正義の人」として憧憬の念をもって見つめる。一方、女友達の一人・・・中条亜紀(西田尚美)は・・・「単にあせってるだけじゃないか」と皮肉な視線を注ぐのだった。

四十歳を過ぎて子供にも恵まれず・・・夫(光石研)との何不自由ない暮らしに満たされないものを感じる梨花。

生の実感を求めて金融機関に再就職した梨花は・・・顧客に人気を博し・・・預金獲得額を増やしていく。やがて・・・男子大学生(満島真之介)に心を奪われた梨花は・・・一億円横領の犯罪者に堕ちていくのである。

このドロドロとした話を・・・爽やかに演じていく原田知世である。

ミスマッチな感じが結構、奇妙な味わいを醸し出している。

「クロサギ」以来ヒット作のない脚本家としてはそろそろ正念場である。

関連するキッドのブログ→或る夜の出来事

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2014年1月 7日 (火)

眠れる森のバレリーナ(石原さとみ)

さて・・・年末年始の谷間のフィナーレを飾るのは・・・上田(阿部寛)と山田(仲間由紀恵)のお見合いである。

・・・違うだろうがっ。

まあ・・・「白鳥の湖」のくすぐりから始って・・・バレエ「眠りの森の美女」の大団円まで・・・連打されたお正月のミステリスペシャルの中でも一番、綺麗にまとまっていた気がする。

まあ・・・「相棒」も「鍵のかかった部屋」も「金田一少年の事件簿」もそれぞれに見どころはあったわけだが・・・石原さとみの芸達者ぶりが際立っていたのがこの作品である。

本当に・・・バレリーナみたいだったからな。

音月桂(33)の演じた役を佐伯日菜子(36)がやっていればキッド的にはパーフェクトだったな。

物凄く極私的な趣味の話だな・・・。見果てぬ夢ですよ。

まあ・・・芸能界と私生活というのは・・・夢と現実みたいなものだからな・・・。

夢の世界を乱すものは・・・キッドにとって極悪なのである。

自分勝手な思い込みで・・・現実を夢の世界に持ち込もうとした被害者こそが・・・この物語の極悪人なのである。

それは黒井ミサにDVするような元サッカー選手や・・・頭のおかしなストーカー殺人者と同じである。

現実を支配する神はそういうものたちの存在を許すことで神は死んだとか言われちゃうのだな。

で、『新春ドラマスペシャル・新参者・加賀恭一郎・眠りの森』(TBSテレビ20140102PM))原作・東野圭吾、脚本・櫻井武晴、演出・土井裕泰、バレエ監修・K-BALLET COMPANYを見た。警視庁捜査一課の加賀恭一郎(阿部寛)は気のりしないお見合いデートで・・・「高柳バレエ団」の「白鳥の湖」の公演を鑑賞し・・・黒鳥を踊るバレリーナ・浅岡未緒(石原さとみ)に魅了されてしまうのだった。

そして・・・見合いは不首尾となり・・・殺人事件の幕が上がるのだった。

これは・・・「新参者」レギュラー・シーズン以前の物語なのである。

「高柳バレエ団」は次回公演「眠れる森の美女」の準備に追われていた。

その稽古場で・・・外部から侵入した不審な若い男(内田朝陽)が・・・バレリーナの一人、斎藤葉瑠子(木南晴夏)に襲いかかり、返り討ちにあって鈍器で殴られ死亡する。

所轄の太田刑事(柄本明)と捜査一課の加賀の刑事コンビは・・・「正当防衛」を主張する葉瑠子の証言や・・・仲間のバレリーナたちに「違和感」を感じるのだった。

プリマドンナの高柳亜希子(音月桂)、二番手の森井靖子(大谷英子)、そして・・・加賀に何故か気迫を感じさせる若手の浅岡未緒・・・。

舞台監督の元ダンサー・梶田康成(平岳大)や制作進行の中野妙子(堀内敬子)も怪しい雰囲気を醸しだし・・・二人の刑事は・・・華麗なるバレエの舞台裏に立ち入って行くのであった。

太田刑事はコンピューターおタクの息子と・・・加賀刑事は・・・父親の隆正(山崎努)とそれぞれに確執を抱えながら・・・それぞれの刑事魂を輝かせる。

やがて・・・被害者が・・・ニューヨーク帰りの売れない画家の卵・風間利之であることが判明し・・・バレリーナたちが・・・ニューヨークに留学経験があることから・・・加賀はニューヨークに出張捜査に出かけるのだった。

人生のすべてをバレエに注ぐものたちと・・・芸術家たちの青春模様が交錯し・・・悲喜劇の幕が開くのである。

そして・・・第二の殺人事件と・・・犯人の自殺という・・・新たな展開によって・・・二人の刑事たちは・・・愚かな男と・・・せつない女たちの真実に導かれていく・・・。

さて・・・「眠れる森の美女/チャイコフスキー」はシャルル・ペローの童話「眠り姫」を原作とする有名なバレエ作品の一つです。

ヒロインはオーロラ姫で・・・このドラマで演じるのはプリマドンナの亜紀子。

プロローグは王家にオーロラ姫が誕生した祝いの宴から始ります。

しかし・・・王国の妖精たちも宴に招待されるのですが・・・邪悪な妖精であるカラボスだけは招かれず・・・癇癪をおこして・・・オーロラ姫に呪いをかけます。

オーロラ姫が美しく成長した頃に生命を失くすという恐ろしい予言の誕生です。

第一幕では・・・オーロラ姫は美しく成長していますが・・・予言通りに紡錘(つむ)を指に刺し・・・眠りに落ちます。カラボスの呪いが成就したのです。そこで善良な妖精リラが登場します。リラは「オーロラ姫」がいつか目覚めることを予言し・・・その日のために・・・城にいた全員を眠らせる魔法をかけるのです。こうして眠り姫と・・・眠れる森が誕生します。

第二幕では・・・オーロラ姫をキスで覚醒させる王子デジレが登場します。デジレは眠れる森や・・・作品によってはカラボスという苦難を乗り越えて・・・オーロラ姫に目覚めのキスをして・・・当然のことのように求婚します。

第三幕はオーロラ姫とデジレの華やかな婚礼の場となります。バレエ作品では・・・この祝宴に「おとぎ話」の主人公たちが・・・祝福にやってくるという趣向になっているのです。赤ずきんとオオカミが踊り、シンデレラ姫とフォルチュネ王子が踊るという具合です。

そういう賓客の一人がフロリナ姫と青い鳥です。

ドラマではこのフロリナ姫を浅岡未緒が演じます。

「青い鳥」と言えばメーテル・リンクの作品が著名ですが・・・ここでの青い鳥は・・・17世紀末にオーノワが編んだ「フランスのフェアリーテイル」の一編「プリンセス・フロリナとブルーバード」が題材になっています。

フロリナ王女は花のような美少女ですが・・・母親を失くし・・・父王が新しい妃を迎えたことで・・・新たなる運命に見舞われます。後妻は未亡人でトリトンヌという魚顔の醜い連れ子を伴っていました。

当然のことですが・・・新王妃は我が子のトリトンヌを溺愛し、先妻の娘フロリナを迫害します。

そこへ・・・花婿候補の若きシャルマン王がやってくるのでした。

新王妃はトリトンヌがフロリナよりも年長者であることを理由にシャルマンの花嫁候補とします。

しかし・・・もちろん・・・シャルマンは・・・フロリナに一目惚れ。

激怒した・・・新王妃はフロリナを塔に幽閉し・・・シャルマンには魔法をかけて青い鳥に変身させてしまうのでした。新王妃は・・・基本・・・魔女と相場が決まっているのです。

しかし、青い鳥となったシャルマンは・・・幽閉されたフロリナと密会が可能となったのです。

つまり・・・フロリナ姫と青い鳥は恋人同志ということです。

この後、青い鳥は新王妃の罠にかかり、行方不明となります。

そこでフロリナ姫は塔を脱出してシャルマン求めて三千里の旅に出ます。
そして・・・ついにシャルマンの呪いを解き・・・二人は晴れて結婚することになります。

眠ったまま幸せの時を待つオーロラも・・・自力で幸せをつかむフロリナも目指すゴールは一緒。

ドラマは二人の配役でそれを象徴しているわけです。つまり・・・バレエの神との婚姻こそがバレリーナの幸福なのです。

そんな・・・高貴な世界を理解できない勘違い男は・・・鈍器で殴られて犬に蹴られて死んでも仕方がないというのがこのドラマの教訓なのでございます。

関連するキッドのブログ→「リッチマンプアウーマン

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の眠れる森

mari様の眠れる森

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2014年1月 6日 (月)

三略に曰く、將謀欲密・・・と軍師官兵衛(岡田准一)

「三略」は「武経七書」の一である。

太公望が書いたとされるがこれは偽りであるらしい。

黒田官兵衛は母親の死後・・・読書に熱中したと伝えられ・・・兵法書に通じ、軍師適性を得たのである。

「將謀欲密」は三略の内、上略に述べられ「将軍が策謀を行う時は秘密にすることが必要である」という意味です。

日本ではことわざとして「謀は密なるを貴ぶ」と申します。

戦術・戦略の極意とは極めて単純明快で・・・そんなことが奥義なのか・・・と思われるようなもの。

しかし・・・相手を騙そうとしていることがバレたのでは騙せるわけがないので・・・戦争において秘密がいかに大事かということは絶対的な真理と言えるでしょう。

それが分らない人が「特定秘密保護法」で大騒ぎするということです。

相手が気がつかない間に殺すのが最も安全な殺し方なのです。

で、『軍師官兵衛・第1回』(NHK総合20140105PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二 を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は元服時15歳、小田原征伐時44歳の実年齢33歳の岡田准一演じる黒田官兵衛孝高と祖父・黒田下野守重隆(竜雷太)の二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。大河ドラマで役年齢と役者の実年齢の関係は禁句なので以後一切口にしないことを誓います。選手宣誓か・・・画伯、本年もよろしくお付き合いください。姫たちがすごく楽しみですがあくまでマイペースでお願いします。・・・だから私信はコメント欄でしろと何度言ったら・・・。

Kan001 天文15年(1546年)に黒田官兵衛孝高(幼名・万吉)は小寺政職の養女で明石宗和の娘を母親に、播磨の姫路城の城代・黒田職隆の嫡男として誕生する。つまり、官兵衛は黒田重隆と、小寺政職という二人の祖父を持つことになる。黒田家は流浪の近江忍びであり、重隆の代に備前国から播磨国に漂着した。播磨国はすでに守護・赤松主家に往年の支配力はなく・・・一族郎党が割拠する状態になっている。播磨西半分は・・・赤松庶流の赤松政秀が龍野城に、同じく赤松庶流の小寺氏が御着城にあって勢力を競っていた。播磨東半分は同じく赤松庶流の別所氏が勢力を誇っている。しかし、国内の治安は乱れ、野武士が横行する時勢である。冒頭で幼女が軍馬に踏み砕かれる描写があるが・・・それを言いわけにメルヘンでスイーツな流れも充分に予感される・・・マイホーム・パパな小寺(黒田)職隆なのだった。官兵衛の生まれた頃は・・・出雲の戦国大名・尼子晴久の侵略がようやく停止し、播磨国内での内攻が再燃し始めた頃合である。しかし、天文21年(1552年)には尼子が再度侵攻し国境を脅かし、天文23年(1554年)には摂津の戦国大名・三好長慶の東播磨侵攻があり、別所氏が降伏するという事態も発生する。もはや・・・播磨国は国としての体裁を失っていたのである。弘治元年(1555年) には毛利元就が厳島の戦いで陶晴賢を撃破している。弘治3年(1557年)は甲斐国の武田晴信と越後国の長尾景虎が第三次川中島の戦いを勃発させる。永禄3年(1560年)には桶狭間の戦いで今川義元が織田信長に討ち取られる。ようやく元服した官兵衛が小寺政職の近習となるのが・・・永禄5年(1562年)・・・戦国は戦国大名による天下取り競争の様相を呈してきたのだった。西に毛利が勃興し・・・東に織田が頭角を現す・・・その寸前に・・・官兵衛は父に連れられ初陣を飾るのだった。

初陣を許された官兵衛は・・・姫路の舘の一角に隠居する実の祖父・下野守重隆の元へと赴く。重隆は齢54になっている。最初は赤松政秀に仕え、次に三木通明の配下・妻鹿氏の娘を娶り、ついには敵対する小寺氏の元で姫路城を築城するという策謀家である。何より、広峰山に巣食う陰陽師の一族・伊吹氏と結んで・・・神人忍びを配下に収めるという奇怪さを持っている。

官兵衛は・・・父よりも祖父に底知れぬ恐怖というものを感じるのだった。

「初陣か・・・」

「は・・・」

「まあ・・・生命を大事にするがよかろう」

「しかし・・・野武士相手と言えども合戦でございますから」

「そうだな・・・思わぬ不覚というものもある・・・」

「は・・・官兵衛めは時々・・・うつけになりますゆえ・・・」

「うふ・・・お手前は面白いのう・・・倅よりも・・・我に似たか」

「血がつながっておりますゆえ・・・おじじ様にも父上様にも似たりよったりでございましょう」

「なかなかに・・・とぼけたことを申すの・・・」

「そこは・・・おじじ様譲りと存じまする」

「小癪な奴め・・・よいか・・・油断は禁物じゃぞ」

「心得ましてございます」

その合戦とも呼べぬ、小競り合いで官兵衛は流れ矢を受けた。

矢じりには毒が塗ってある。

しかし・・・官兵衛は矢を放った敵を倒すと悠々と引き上げる。

くのいちのおたつが心配気に帰路の官兵衛の傷を見る。

「深手ではありませぬか」

「今・・・毒がまわっていい気分になっておる・・・」

「若様・・・」

「ほれ・・・傷ももう治りかけておるわ・・・」

「呆れた・・・」

官兵衛は・・・不死身体質だった。

こうして・・・心の底から戦が好きな男の戦人生が始ったのである。

関連するキッドのブログ→八重の桜

天地人

風林火山

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2014年1月 5日 (日)

2014年、冬ドラマを待ちながら(キッド)

「トリック祭り」と「新参者祭り」の阿部寛、「鍵のかかった部屋祭り」と「SPEC祭り」の戸田恵梨香・・・。

阿部寛と戸田恵梨香で・・・一本作るべきじゃないのか・・・。

阿部ちゃんが・・・探偵で・・・恵梨香ちゃんが・・・助手・・・「8マン」かっ。

とにかく・・・早く・・・あたりさわりのない役じゃない三吉彩花が見たいぞ。

「金田一少年」に女子高校生役で出て、殺されもしなければ犯人でもないって・・・。

とにかく・・・お正月ミステリ三昧が・・・過ぎたな・・・。

もう・・・本当にお腹一杯だ・・・。

とにかく・・・もう・・・大河ドラマが始るという・・・お正月終了の今日この頃である。

マジ歌も終わってしまったしな。

ざっくりと・・・レビュー予定を妄想してみよう・・・。

(日)大河ドラマ「軍師官兵衛」なのだが・・・脚本・前川洋一はBSに特化して・・・地上波ではほとんど実績がない点がすごく不安だ・・・。とんでも大河の確率は物凄く高まってる気がする。一方でフジテレビで育った古家和尚の「S-最後の警官-」もそれなりに不安がある。しかし・・・戦国大河なので・・・とりあえず見るしかない。

(月)ヤング春子・有村架純の「失恋ショコラティエ」、駅長・杉本哲太と太巻・古田新太の「隠蔽捜査」、「ジョゼと虎と魚たち」の犬童一心による「ダークシステム 恋の王座決定戦」があるが・・・早くも谷間候補である。

(火)檀れいの「福家警部補の挨拶」、栗山千明と水野美紀の「チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮」そして・・・原田知世の「紙の月」・・・なんだろう・・・この微妙なラインナップ。原作ありのミステリもどきの連打か・・・。

(水)芦田愛菜と鈴木梨央で「明日、ママがいない」・・・なんで・・・坂元裕二じゃないんだ・・・。橋部敦子の「僕のいた時間」と勝負になるのかな。

(木)井上由美子の「緊急取調室」、大森寿美男の「鼠、江戸を奔る」も捨てがたいが・・・ここは・・・「闇金ウシジマくん Season2」で決まりである。っていうか・・・今シーズン、正直見たいのはコレだけだ。

(金)林宏司の「夜のせんせい」は・・・大政絢、新川優愛、山本舞香、清水くるみがそそるし、「私の嫌いな探偵」は福田雄一で安田美沙子なわけだが・・・岩井俊二の「なぞの転校生」が捨てがたいのである。ちなみに・・・「ねらわれた学園」ではありません。ヒロイン・みどり(桜井美南)の萌え度が鍵だな。

(土)武井咲の「戦力外捜査官」、石橋杏奈、トリンドル玲奈、小島藤子、三吉彩花の「ロストデイズ」、山下リオと真野恵里菜の「SHARK」・・・全く読めない・・・。

つまりだ・・・(木)の「ウシジマくん」以外・・・未定という・・・前代未聞の・・・冬ドラマ到来である。

ま・・・ずっと・・・そこそこのドラマが続いていたので・・・ドラマ界が息切れしたと言えるのだった。

関連するキッドのブログ→2013年、秋ドラマを待ちながら

2014001hc くう様の2014年1月期・冬クールドラマ

みのむし様の2014年冬ドラマ一覧

まこ様の2014冬クールドラマチェック

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2014年1月 4日 (土)

魔王(大野智)VSうっちー(岡田義徳)プリマダム(黒木瞳)ゾーン(佐野史郎)ぶちょお(藤木直人)で鍵のかかった部屋(戸田恵梨香)

ゲストで犯人がわかるようでわからないスペシャルである。

っていうか・・・レギュラーの芹沢豪(佐藤浩市)がタイトルからはみだしてるし。

「水城里奈(能年玲奈)ではない秘書は16歳(松井珠理奈)」というタイトル案もあったわけだが・・・。

公式の「まさか密室がやぶれたり」まだ残っているかな。

まあ・・・再放送で天野アキの演ずる美人秘書は堪能したけどな。

とにかく・・・「泥棒が殺人者を告発」したり、「悪人を善人が殺人」したりする・・・モラル的にいろいろと問題作・・・世が世なら・・・ドラマ化できないくらいのチャレンジである。

もちろん・・・悪魔なのでこういうドラマは応援するしかないのでございます。

ドラマなんて・・・倫理的に少しルーズだから成立するんだもんね。

繰り返される映像も微妙な味付けがされていることが・・・わかります。

で、『のかかった部屋SP』(フジテレビ20140103PM9~)原作・貴志祐介、脚本・相沢友子、演出・松山博昭を見た。レギュラー・シリーズの最終回で・・・忽然と姿を消した警備会社「東京総合セキュリティ」の研究員・榎本径(大野智)・・・。月9枠だったので・・・フリードマン・芹沢総合法律事務所の新人弁護士・青砥純子(戸田恵梨香)との間に仄かな恋愛ムードもあったわけだが・・・長期海外旅行から帰国した榎本は帰国後も半年間も音信不通であり・・・いつの間にか防犯グッズショップのオーナーになっていた。

偶然再会した榎本を純子は芹沢の元へ導く。

「どこいってたんだよ」

「世界一周旅行です」

「よくそんな金があったな」

「貯金です」

「しかし・・・君の給料じゃ」

「一生懸命ためました」

「会社やめて・・・セキュリティショップのオーナーって・・・資金はどうしたんだ」

「貯金です」

「しかし・・・結構、かかっただろう」

「一生懸命ためました」

「・・・」

明らかに・・・超法規的副業の存在を秘匿する榎本だった。

防犯ショップだって・・・泥棒ショップだって似たようなものだからである。

泥棒が先か・・・防犯が先か・・・みたいな・・・鶏と泥棒を一緒にするなよ。

とにかく・・・限りなく窃盗犯に近い「密室破り」の専門家・・・榎本が純子と芹沢の元へと帰って来たのであった。

すると・・・たちまち発生する密室事件の嵐。

妙に人のいいマンションの管理人・小檜山(岡田義徳)の周囲で発生する「連続掃除魔事件」と「連続空き巣事件」と「謎の活人事件」・・・。

何故か・・・密室で何者かに蘇生してもらった高齢者の朝妻(ト字たかお)の恩人捜しで始る案件は・・・資産家の藤林(黒部進)の強盗殺人事件を密室殺人事件に変え・・・容疑者の藤林の姪の郁子(黒木瞳)を冤罪の危機から救い・・・藤林の亡くなった妻の10億円相当の絵画コレクションを寄贈する予定だった美術館館長の平松(佐野史郎)の悪事を発覚させ・・・有名アーティストの稲葉透(藤木直人)の巨大なオブジェ・ハンプティー・ダンプティー裏返し偽装自殺殺人事件へと発展していくのだった。

そして・・・すべての謎は別件の脅迫者(伊藤正之)の影に怯えた芹沢の変装用サングラスが解き明かすのである。

もう・・・なんのことだか・・・わからない記述になってるぞ。

まあ・・・偏光のこととか・・・わかるやつだけわかればいい記事で今年はいこうかと思ってます。

初心に帰るのだな。

初心に帰るのです。

とにかく・・・面倒くさい殺人方法と犯行現場の擬似密室模型・・・そしてとぼけた感じの戸田恵梨香が楽しめる・・・鍵のかかった部屋・・・。

スリスリ・・・カチャン。

帰ってきてくれて・・・ありがとう。

関連するキッドのブログ→鍵のかかった部屋

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の鍵のかかった部屋

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2014年1月 3日 (金)

泥だらけの純情の束の間の勝利の女神のモテキ(長澤まさみ)

さて・・・このブログの中断期は・・・2010年の夏の終りにやってきたためにドラマ「モテキ」(テレビ東京)のレビューは第6回までになっている。

第7回以後の藤本幸世(森山未來)のダメダメぶりは目にあまるものがあるわけだが・・・まあ・・・ふりかえるのもおぞましい・・・哀愁の日々である。

藤本は・・・自分に溺れ・・・世界に溺れ・・・「女を見る目がない」と予言された通りに・・・目の前にあるチャンスを自分で踏みつぶしながら・・・それでも・・・愛を捜して・・・愛を求めて・・・生きていくのだった。

小宮山夏樹(松本莉緒)は夢の女として消え・・・中柴いつか(満島ひかり)は仕事に燃え・・・林田尚子(菊地凜子)は子育てに集中し・・・土井亜紀は新しい恋に萌える・・・藤本に残されたのは・・・悪友の島田(新井浩文)との友情だけだったのだ。

そして・・・老いた両親(でんでん&戸村美智子)を故郷に残し・・・一人自転車で故郷を後にした藤本。

最後は「今度は誰かのモテキになってやる・・・」と意味不明の言葉を残し・・・あらゆるものをこじらせたまま・・・朝焼けに消えていったのだ・・・それは東日本大震災の起る前の平和な日々だった。

で、『モテキ(2011年9月劇場公開作品)』(テレビ東京20140101PM10~)原作・久保ミツロウ、脚本・監督・大根仁を見た。再び上京した藤本幸世(森山未來1984~)は31歳になっている。あろうことか・・・藤本は・・・中柴いつかの処女を喪失させた墨田卓也(リリー・フランキー)が素晴らしいインターネットの世界に開設したニュースサイト・ナタリーの正社員募集の面接を受けたのだった。

相変わらずの性の狩人である墨田は女関係のもつれから刃傷沙汰に発展・・・修羅場に巻き込まれた幸世は刺されてしまうが・・・就職には成功する。

二歳年上の強面の上司・唐木素子(真木よう子1982~)に「このセカンド童貞野郎がっ」と罵られられながら・・・サブカルチャー系のライターとして修行の日々に入ったのである。ちなみに四人目の女である唐木はサディステイックであるだけで・・・恋愛対象にはならない。

ただのサブカルおタクから・・・一応、底辺の業界人となった藤本は・・・フェスの取材中、声をかけてきた女に・・・スタッフ・モードでナンパしようとして失敗し・・・「格好悪いふられ方/大江千里」をリフレインするのだった。

・・・藤本・・・成長の跡がありません。

そんな藤本が「つぶやき系」で知り合うことになるのが・・・五歳年下の雑誌編集者の松尾みゆき(長澤まさみ1987~)である。映画「世界の中心で愛を叫ぶ」(2004年)の・・・朔(森山)と亜紀(長澤)の時空を超えた再会なのである。

一目で・・・なぜか藤本に好意を持つみゆき・・・。

二人の趣味は・・・「進撃の巨人」から「Get Wild を見下すこと」や「兵藤ゆきがカイジにしか見えないこと」まで一致するのだった。

自己愛が強いために・・・同じ世界観を持っていることを恋愛相手に求める傾向のある藤本は・・・抜群のルックスと巨乳と美脚を兼ね備えたみゆきに「最終兵器彼女的なもの」を感じるのだった。

いきなり・・・藤本の部屋にやってきたみゆきは・・・猛烈なスキンシップ攻勢をかける・・・さらには水があふれる口うつしでキスまで・・・。

しかし・・・「彼氏がいる」というみゆき・・・たじろぐ藤本・・・。

だがとりあえず・・・楽しいので「Baby Crusing Love/Perfume」を踊り出すのだった。

今回はPerfumeも一緒に踊り出すのである。

・・・藤本・・・まったく成長の跡がありません。

親友の島田雄一は・・・そんな藤本に苦言を呈する。

島田には・・・藤本が神埼桜子(篠原ゆき子)や夏樹と同様に・・・巨乳が手に余る悪女に目が眩んでいるとしか思えないのである。

もちろん・・・それは事実だった。

「でも・・・今度は俺・・・みゆきちゃんに一途だし・・・」

「だって・・・その子、付き合っている男がいるんだろ」

「・・・」

しかも・・・その男は・・・みゆきと一緒に住んでいるのだった。

そして・・・自暴自棄になった藤本にみゆきの親友で二歳年上のミニカー・デザイナーの枡元るみ子(麻生久美子1978~)が愛を告白するのだった。

たちまち・・・関係してしまう・・・藤本。

そして・・・事後に猛烈な自己嫌悪にかられる・・・藤本。

おい・・・いくらなんでも・・・るみ子が・・・小宮山夏樹の姉・小宮山基樹(信川清順)と同じポジションなんて・・・はらちゃんが涙するほどゴージャスすぎるぞっ。

「あなた好みの女になる」と藤本を押し倒するみ子・・・。

しかし・・・藤本は自分が愛している女としか幸せになれない体質なのである。

まあなにしろ・・・そういうキャラクターなんだから・・・仕方ないんだな。

自分勝手に傷ついて・・・藤本は・・・みゆきに・・・「るみ子と寝た」と暴言を吐くのだった。

そして・・・たちまち後悔するのだった。

やがて・・・みゆきの同棲相手が同じ年のイベント・プロデューサーで今をときめく山下ダイスケ(金子ノブアキ)で・・・自分に・・・まったく勝ち目がないと卑下する藤本。

しかし・・・ダイスケが妻帯者と知り・・・もうなにがなんだかわからなくなる藤本なのだった。

自分の言いたいことを私は何も言わない

自分のやりたいことを私は何もできない

自分の為に泣いても人の為には泣けない

主義・主張を叫んで外を歩く勇気なんかない

傷ついた傷つけられたと騒いで憂さ晴らし

あなたは失格! そうはっきり言われたい

たったこれっぽっちの生きざまをひとり振り返り

四の五の理屈を言ってる私を愛したい

やがて・・・墨田卓也によって・・・ガールズ・バーの六歳年下の女・愛(仲里依紗1989~)から説教される藤本である。

「今や・・・男と女の恋愛にはほとんど差がないのです・・・でも・・・女が出産できる年齢は限度がある・・・違うのはそこだけ・・・だから・・・気が向いたら結婚してください」

一児の母の愛だった。

思いきってみゆきにアタックする藤本。

「できたら・・・結婚したい」

「藤本くんでは・・・私、成長できない」

「最後に一回だけやらせて」

「ごめんね」

玉砕である。

藤本は・・・それでも嫉妬や自己嫌悪を乗り越え・・・プロとして恋仇のダイスケに好意的な記事を書きあげるのだった。

そして・・・転機がやってきたのだった。

ダイスケの主催するフェスで再会する・・・みゆきと藤本。

なぜか・・・逃げ出すみゆき・・・追いかける藤本。

そんな藤本にエールを贈る唐木だった。

唐木こそは・・・勝利の女神だったのである。

生まれ変って・・・再会した「運命の二人」は・・・こじらせた性体験を乗り越えて・・・。

泥まみれになって抱き合うのだった。

「こんな風に会いたくなかった・・・」

「・・・」

「でも・・・まあ・・・いいか」

藤本に愛の光が差し込む。しかし・・・まあ・・・好きになる→キスをする→発展せず別離が・・・「モテキ」の世界・・・。

見果てぬ愛の妄想が・・・また始ったにすぎないのである。

だが・・・もちろん・・・そこがいい。

とにかく・・・驚くべきことに・・・映画「モテキ」は単なる藤本とみゆきのラブ・ストーリーだったのである。まさに・・・意表を突かれました。

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2014年1月 2日 (木)

知るべきか、知らざるべきか・・・それが問題だ(中村橋之助)

毎度、おなじみの「相棒 元日スペシャル」である。

「相棒」脚本陣の中では・・・「奇妙な味」とも言える脚本家の登場。

昨年の「アリス」・・・「不思議の国のアリス/ルイス・キャロル」に続いて・・・今回は「ハムレット(デンマークの王子ハムレットの悲劇)/ウィリアム・シェイクスピア」が引用される。

ハムレットと言えば・・・「生きるべきか・・・死ぬべきか・・・それが問題だ」とか「危うきもの・・・汝の名は女なり」とか「尼寺へ行け」とか名セリフが数多くあるわけだが・・・「母親が父親を殺した」という恐ろしい事実を知ったハムレットが親友ホレイショの「空虚な理想」を皮肉に揶揄する次のセリフが持ちだされるわけである。

「ホレイショよ・・・この世界には・・・お前の夢見る哲学のおよばない事柄が存在するのだ」

まあ・・・人間が・・・本当に何かを知るということは・・・時に残酷だということですな。

「知らぬが仏」ということでございます。

「知られたくないもの」と「知らしめようとするもの」の果てしない戦いはどこまでも続いて行くのでございます。

まあ・・・「秘密主義」の官僚と・・・「暴露趣味」のジャーナリストは不毛の荒野を駆けていくということでございますね。

ちなみに・・・「一人親職業訓練センター」(フィクション)は2007年頃の自民党政権時代の「行政改革」を皮肉った感じになっています。児童扶養手当の削減と求職者雇用支援機構の職業能力開発促進センターがセットになっており・・・官僚の天下り先確保のための独立行政法人利用というシステムは政権が民主党に変わり、さらにまた自民党に変わっても・・・営々と継続されているのですな。

それもこれも・・・景気がよくなれば・・・どうでもいいことだという考え方もあります。

ようするに・・・無いそでは振れないという話でございますから。

官僚は政治家となり、政治家の息子が官僚となる。

腐敗するのは必然だということです。

「悪の権化」の狂気を・・・中村橋之助が歌舞伎ます。・・・これは圧巻。

で、『相棒Season12 元日SP~ボマー~』(テレビ朝日20140101PM9~)脚本・太田愛、演出・和泉聖治を見た。ウイリアム・シェイクスピアは1564年生まれ。今年は生誕450年の年にあたり・・・各地で「シェイクスピア祭り」が繰り広げられるのである。英国をこよなく愛する杉下右京(水谷豊)はそんなうんちくを甲斐享(成宮寛貴)に「花の里」で語って聞かせるのだった。甲斐が恋人の悦子(真飛聖)と上海でおちあい、英国旅行で休暇を楽しむ予定と知ったからである。右京は右京で・・・幸子(鈴木杏樹)とデートを楽しむつもりらしい・・・独身貴族かっ。

しかし・・・翌日、休暇前の健康診断を受けた帰り道・・・亨は交番爆破事件に遭遇し・・・あっという間に凶悪事件に巻き込まれていくのだった。

現場から逃げ出す「裸足の少年」北村悠馬(大和田健介)を追跡した亨は・・・悠馬が体に爆弾を装着され何者かにコントロールされている被害者だと知った亨は「JB」(宇崎竜童)と名乗る男にスマートフォンで支配される立場に追いやられてしまうのだった。

交番爆破現場に到着した右京は独自の聞き込みで「現場から逃げた少年」の似顔絵を入手する。

しかし・・・内村刑事部長(片桐竜次)中園参事官(小野了)に新公安部長の正木浩輔(中村橋之助)が加わった捜査本部は・・・「通称J・ボマー」という国際指名手配中の爆弾魔の入国に関心を抱いており・・・右京の情報は無視される。

一方で・・・「JB」は何故か・・・公安外事三課の刑事たちを繁華街におびき出す。

そして・・・悠馬に・・・ある人物を特定させようとするのだった。

「似顔絵の少年」と同伴する甲斐を発見した・・・張り込み中の警視庁捜査一課の伊丹憲一刑事(川原和久)は二人を追い詰め・・・少年の胴体に爆弾が巻かれていることを知る。

たちまち・・・甲斐は凶悪なテロリストとしてブラック・リストに載ってしまうのである。

一方、独自の調査で・・・甲斐刑事とスッチー悦子の愛の巣から盗聴器を発見した右京は・・・最初から甲斐刑事がターゲットとされていたことを確信・・・さらに・・・爆弾少年がサンダルを履いていたことから・・・付近の銭湯をリサーチする。

そして、下駄箱から・・・北村悠馬の身分証を発見するのであった。

甲斐刑事と右京の見事なコンビネーション炸裂である。

さらに・・・悠馬のバイト先の宅配ピザを訪ねた右京は・・・従業員ロッカーから・・・不審な新聞の切り抜き記事を発見するのだった。

「山王財団理事長・山王美紀子が知人のジャーナリストの桂木涼(佐藤藍子)により 殺害された」・・・右京は事件の核心に迫ったのである。

やがて・・・事件の概要を知った右京は・・・たちまち「冤罪」の匂いを嗅ぎつける。

「なんらかの調査」をしていた桂木涼がそのために・・・罪に陥れられた。しかも・・・桂木は収監中にアナフィラキシー・ショックにより、意識不明の重体となっていたのである。

右京は「警察内部に巣食う巨悪」の存在を確信するのだった。

やがて・・・桂木涼とコンタクトをとっていたデータ調査会社の社員が自死していること・・・その調査が・・・厚労省がらみだったこと・・・そして・・・自死の朝・・・社員が見ていた新聞記事が・・・「貧困母子家庭の母子衰弱死」であったことから・・・事件の全容をつかむのだった。

もう・・・ほとんど妄想の世界だが・・・右京が推理した以上・・・それは真相なのである。

厚労省がらみの利権を持つ政治家一族による・・・一人親養育費の削減。一人親支援センターの開設。そのための意識調査データの改竄。その情報源の自殺。そして不正を追及するジャーナリストへの冤罪。そこには明らかに警察権力が介入している・・・。

そして・・・右京の疑いの眼差しは・・・捜査の指揮をとる・・・新公安部長の正木に向けられていく。なぜなら・・・彼は厚労省がらみの利権を持つ政治家一族の一員だからである。

まさに政官癒着の伏魔殿が凄惨な微笑みを浮かべている表情が・・・右京の心眼には見えているのである。

桂木涼の家で・・・アルバムから・・・涼の父親らしき人物を発見した右京は・・・それがJBの正体であり・・・悠馬の配達表から・・・山王美紀子殺人事件の真犯人の目撃者が悠馬であることを確信した右京はついにすべての陰謀のパズルのピースを埋めたのだった。

ただちに・・・召集されるチーム・ザ・相棒。仮面ライダー電王の良太郎の姉・野上愛理でおなじみ松本若菜演じる婦人警官・大石真弓(柔道三段)まで狩りだされ・・・相棒スパイ大作戦・新公安部長をハメちゃいました・・・が展開するのだった。

「あなたは利権のために・・・ものすごく面倒くさい方法で暴露記事を隠蔽しようとしたのです」

「すべては・・・国益のためだ」

「国益とは・・・国民の利益のことです・・・国家を私物化し、私腹を肥やす魑魅魍魎の懐具合のことではありません」

「おおおおおおおお、この刑事風情がああああ、おおおおおおおおお」

激昂する右京・・・かぶく・・・悪鬼警察官僚。

娘を男手ひとつで育てた老ジャーナリストは歌い出す。

犬の遠吠え・・・

ひとしきり激しく・・・

サイレンかすかに・・・

遠くから響いて・・・

言葉はむなしいけど

ぬくもりなら信じよう

身も心も

身も心も

ひとつに溶けて・・・

21世紀の日本は統計的に父子家庭も母子家庭と同様に貧困にあえぐ傾向があるらしい。

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2014年1月 1日 (水)

あまちゃん、最後の最後の火曜日(能年玲奈)

あけましておめでとうございます。

まあ・・・視聴率20%ということは・・・単純に5人に1人しか見ていないということである。

たとえば「じぇっ」というのは袖が浜(フィクション)の方言であることは「あまちゃん」視聴者には常識なのだが・・・「Rの法則」で・・・岩手県民が「じぇ」とは言わないことに「え」と思う人はいるわけである。

だから・・・「紅白歌合戦」の会場でも・・・お茶の間でも5人に4人が・・・本当の意味で「あまちゃん」劇場で「夢の続き」を楽しんだわけではない。

しかし・・・「分かる人には分かる」・・・2013年の紅白歌合戦が今世紀最高だったことを・・・。

ふるさとに向かう最終に乗れる人は急ぎなさい・・・と語りかける紅白歌合戦。

憧れの東京に空飛ぶタクシーでやってくるユイちゃん。

北へ向かう人の群れは誰も無口で・・・襟裳の春は何もない春で。

小泉今日子は松田聖子に会いたくて・・・。

薬師丸ひろ子は再び会うために戻ってくる・・・。

そして・・・海女のアキは念願の紅白出場を果たす。

祭りだ・・・祭りだ・・・祭りだ・・・祭りでがんす。

そして・・・ジョニーへの遺言が涙こらえて花開くのだった。

で、『第64回紅白歌合戦』(NHK総合201312311915~)を見た。「あまちゃん」のテーマで始る紅白歌合戦。抜群の臨場感で・・・「いきます・・・第64回NHK紅白歌合戦・・・オープニングを飾るのは浜崎あゆみさんです。曲は・・・INSPIRE」と曲紹介をする紅組司会の綾瀬はるか・・・。そして・・・夢は現実となり・・・現実は夢となるのだった。

連続テレビ小説・あまちゃん・第157回「おら、紅白出るど!」・・・が幕をあげるのである。

火曜日 潮騒のメモリーよ、永遠なれ

ついに・・・紅白出場を果たした海女のアキ(能年玲奈)・・・。天野アキを演じたら日本一の天野アキが・・・ついに東京NHKホールで大河ドラマの主人公やアイドル・グループ嵐と同じ舞台に立った・・・2013年の大晦日なのである。

そんなアキの晴れ姿を・・・北三陸の人々はスナック梨明日で見守るのだった。審査員の脚本家・宮藤官九郎は変な人々を充分に楽しむのだった。

幻の北三陸駅ではフェイクとしてのCGもしくはVTRの吉田くん(荒川良々)が生中継(フィクション)として登場し・・・「副駅長さんにとって今年はどんな年でしたか?」というスタジオからの呼びかけにいっぱいいっぱいで応じられない態で・・・スナック梨明日へ「郷土料理といえば・・・」としどろもどろを装いつつ移動。

そこには・・・まめぶ大使安部ちゃんをはじめ・・・眼鏡会計婆(木野花)、んだんだ弥生(渡辺えり)、ゴーストバスターズ大吉(杉本哲太)、琥珀の勉さん(塩見三省)、保(吹越満)、ヒロシ(小池徹平)、ユイ(橋本愛)、そして春子(小泉今日子)が揃っているのだった。

春子は「紅白なんだからがんばりなさいよ」とアキを叱りつける。

そこへ・・・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)も登場し・・・「天野さ~ん、テレビのリモコンどこなの?」と決めゼリフ。

お茶の間のテレビとスタジオのカメラが即時双方向でつながる状況で物語は進んでいくのだった。

楽しすぎて眩暈を感じるのである。

この他に「サカナクションのファン」として曲フリに登場したアキは「どこが好きなんですか?」という司会の質問に「サカナが好きだから」・・・。

特別ネタゲストの鉄拳が「こんな紅白歌合戦はイヤだ」ネタをやろうとすると総合司会の有働由美子が「すみません・・・ニュースです」と封じ・・・ニュース担当が武田アナで仄かにリアクションしているというニヤリなどがあって・・・。

いよいよ・・・アキは「GMTスペシャルユニットreat.アメ横女学園」【入間しおり(松岡茉優)、宮下アユミ(山下リオ)、きゃんちゃん(蔵下穂波)、遠藤真奈(大野いと)、有馬めぐ(足立梨花)、成田りな(水瀬いのり)、ベイビーレイズ】と「暦の上ではディセンバー」を熱唱。

そして・・・NHKホールからアキは北三陸のユイに呼びかける・・・。

「ユイちゃん・・・きてけろ」

しかし、梨明日では大吉がセリフをど忘れた微妙な間で「今から行っても間に合わない」と応じ、保が「到着したころには深夜でさだまさしがだらだら喋ってるころだ」ともう何が現実だか不明のメタネタをかます・・・。

だが・・・すでに北鉄のユイに着替えたユイちゃんは「すぐに行くから待っててね」と店を飛び出すのだった・・・。

タイトルである。

潮騒のメモリーズがジャンプして・・・いつものように北鉄が走り出すと・・・やがて画面は鉄拳パラパラアニメと変わり・・・。

Amend 宮古駅で北鉄を降りたユイちゃんは駅前で待つ黒川正宗(尾美としのり)の魔法のタクシーに乗り込むのだった。そして、星空を飛翔して・・・ついに夢にまで見た東京へ着地するのだった。

長い・・・長い・・・ユイちゃんの夢がついに叶ったのである。

もう・・・涙で前が見えません。

スタジオでユイちゃんは審査員席にすわる夏ぱっぱそっくりの宮本信子に驚く。

しかし「他人の空似だべ・・・それより歌おう・・・」とアキ。

そして・・・「紅白歌合戦」に響く・・・。「潮騒のメモリー/潮騒のメモリーズ」・・・。

「二番はおらの大好きなママが歌います・・・」

どよめく会場・・・「潮騒のメモリー/天野春子」である。

小泉今日子こだわりの「好きよ・・・嫌いよ・・・」がまさにしっとり・・・である。

そして・・・さらにどよめきの中で「潮騒のメモリー/鈴鹿ひろ美」・・・「三代前からマーメイド・・・親譲りのマーメイド・ヴァージョン」・・・圧巻である。

さらにたたみかけるように・・・GMTスペシャルユニットreat.アメ横女学園とワープして北三陸メンバーが合唱する・・・「地元に帰ろう」・・・「埼玉」「徳島」「佐賀」「沖縄」「岩手」とサンバのリズムで盛り上がるのだった。

そして客席にはお約束でヒビキ(村杉蝉之介)・・・。

ああ・・・これは夢か・・・まぼろしか・・・。

いつも「あまちゃん」を見ていた嵐の松本潤も感激なのだった。

アキ「また・・・どこかで・・・逢いてえと思います・・・じぇじぇ・・・」

ああ・・・その日を待ちながら・・・今日も明日もテレビを見ます。

明日はとりあえず・・・「鍵のかかった部屋」の再放送で・・・初々しい・・・秘書役の能年玲奈を・・・。

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