男女関係における金銭の授受は犯罪です(山田孝之)
育児放棄も犯罪である。
ゴムパッチンの強制も犯罪である。
集団暴行も犯罪である。
摘発されない犯罪につぐ犯罪・・・。
そういう世界を描くことに何か問題があるだろうか。
この世に生まれ、生きていくことを肯定することは人間の基本である。
しかし、それが全くの善と言えるかどうかは別だ。
たとえば・・・個人の意志の問題がある。
意志が薄弱な人格を保護することを善と考える人は多いだろう。
しかし、意志が薄弱な人が生を全うすることが善とは限らないという考え方を否定することはできない。
常に一定の自殺者がいる以上・・・それは現実なのである。
もちろん・・・宗教というフィクションにおいてはあらゆるルール設定が可能である。
人工中絶を認めない宗教が・・・その理念に基づいて慈善的行為を行う。
それは時には育児放棄という犯罪の助長にもつながりかねない超法規的行為である。
だが・・・殉教的精神で個人的主張をつらぬくことは自由である。
そして、それをバックアップする自治体があってもいいだろう。
しかし、そんな独善的なものが表現の自由に物申す状態は非常に危険である。
それを認めるのはある意味で狂信者の許容である。なぜならそれはやくざのいいがかりや、自爆テロとなんら変わるところはないからである。
で、『闇金ウシジマくん Season2・第2回』(TBSテレビ201401240058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・山口雅俊を見た。ブラック企業なるものがあるが・・・「カウカウファインナンス」は企業ではない。闇金融というシンジケート(組織)なのである。なにしろ・・・税金なんて払っていないはずである。ウシジマくんは「社長」と呼ばれるが・・・あくまで組織内のコードネームであり、とにかく会社としての経営実態はないのだ。なにしろ・・・貸してはいけない金を貸し、とってはいけない利子をとるからである。社長でなければ親分とかボスとか・・・そういう呼称が・・・そこはね。
借りてはいけない金を借りたものが「法的に返す必要はない」と返済を拒否することはできる。
しかし・・・同時にそれは・・・人生の終りを意味するという世界である。
「裁判に負けたって・・・返済はしてもらう」
ウシジマくんが無表情に告げたら・・・「法」などというものにはなんの力もないのだ。
だから・・・カウカウファイナンスではまったく非人道的な行為が今日も繰り広げられる。
一方で・・・ホストクラブ「ニューロマンサー」の雇われ店長である隼人(武田航平・仮面ライダーキバ)は裏社会のルール・・・爆弾(禁止行為)である裏引き(店を介さず客から直接金を要求する事)・・・を実行し、オーナーの慶次(徳山秀典・仮面ライダーザビー)から罰金七百万円の支払いを命じられる。
「逃げたら・・・全身(顔面を含む)に刺青して・・・二度と表を歩けないようにしてやるぜ」
暴力的なケツモチ(支援暴力団体)を連れて凄むオーナーの慶次に隼人は心から恐怖を感じるのだった。
そもそも・・・ホストになるような人間である。・・・偏見に基づいて記述しています。
彼を救援してくれるものなどいない。
だが・・・隼人は・・・昔のホスト仲間で・・・現在は「カウカウファイナンス」の構成員である高田(崎本大海)に巡り合い、すがりつくのだった。
「ホストをやめて・・・お前の仕事を手伝いたい・・・」
友達思いの高田は・・・隼人の頼みを断りきれないのだった。
闇金業者のくせに義理人情に弱いというものすごく心に沁みる設定です。
隼人を連れて事務所にやってくる高田。
店内では・・・第1シーズンで個室サービスの店「エロリアーノ」の瑞樹(かすみりさ)のエース(上客)からNG客(出入り禁止)にまで転落した性風俗依存症のキオオタ客で・・・通称・雨男の丸山満男(平田実)が借金返済者としての調教を受けていた。
洗濯バサミでBブロック(地区)はさみあげの刑である。
半裸の丸山くんは・・・返済が滞っているらしい。
あくまで業務として丸山くんを折檻しながら指導する柄崎(やべきょうすけ)だった。
時々、洗濯バサミを引っ張る柄崎に呼応して「ひー」と泣く丸山くんだった。
事務所の隅では受付事務員・摩耶(久保寺瑞紀)が淡々とデスクワークをしている。
「そいつはだれだ・・・」
「昔のホスト仲間で・・・闇金の仕事を手伝いたいって言うもんで」
「ひー」
「人手は足りてるって言っただろう」
「ひー」
「・・・面接だけでもしてもらえますか」
「ひー」
「じゃ・・・一応、高田が面倒みろ」
「ひー」
「いいんですか・・・この間みたいに裏切り行為をされたら・・・」
「そん時は・・・高田に責任とってもらう」
「ひー」
「おい、お前・・・お前がなにかしでかしたら・・・高田からけじめ(命を含む罰金)をとるからな」
「・・・」
「それじゃ・・・取り立てに行こうか」
丸山くんは寝た切りの父親の年金を借金返済に充てているが・・・なにしろパンク(経済的逼迫)の身の上である・・・今回はやりくりがつかなかったらしい。
丸山くんの自宅で電化製品などめぼしいものを回収するヤク・・・カウカウファイナンスの一行だった。
「この時計はどうします」
「安物すぎて・・・手数料ひいたら赤字だよ」
キッドの自宅には震災後の緊急対応策として眼下のディスカウントショップで1000円で買った年代物のテレビデオがあるが・・・それに似た物品を抱える柄崎だった。
思わず・・・テレビデオを見て・・・お前も苦労したなあと語りかけたい気持ちになる。
「最初は五万円の借金だったんだけどな・・・返済を続けるうちに利息が膨らんで今では百万円になってる。利息だけで一月百五十万円になるから・・・絶対に返済できないんだ」
「・・・」
高田の解説をぼんやりと聞く隼人だった。
次は・・・例の児童公園で・・・安全に稼げる店で売春するホスト狂いの一児の母・太田ハル子(朝日奈あかり=ドラマ24「嬢王 Virgin」の神崎エリナ)から利息を回収するウシジマくん。
「ねえ・・・もう五十万貸してよ」
「返済できるのか」
「私・・・早朝予約まで入っちゃう売れっ子だからね。なんか・・・女として自信でてきたっていうか」
「身体で払うってか・・・」と柄崎。
「あんたは嫌よ・・・あたしってもう客を選べるポジションなんだから」
「あの女・・・うちの店の客だ」とつぶやく隼人。
「客の個人的なことには触れるな」と注意をする高田。
高田は・・・隼人がうすらぼんやりであることに幽かに危惧を感じる。
茫洋とした高田も実は・・・闇に生きる人間としての緻密さを身につけているのだ。
「明日、事務所に来い」とウシジマくんは・・・憐れな可愛い七つの子(須田瑛斗)に魚肉ソーセージを与えるのだった。
七百万円支払いの期日に怯える隼人。
(この人が俺を守ってくれるかもしれない)
などとウシジマくんの後ろ姿を眺める・・・まさに恐ろしい勘違いである。
そこへ・・・通りすがりのケツモチたちが現れ、思わず身を隠す隼人だった。
そんな隼人を・・・じっと観察するウシジマくん。
怖いのである。
さて・・・どうやら・・・第2シリーズの主要人物の一人らしい・・・30代ダメ人間「鬱ブログ」を素晴らしいインターネットの世界に立ち上げる宇津井優一(永野宗典)は今日もパチスロ店にいる。
しかし・・・今回は「当たり」を引いたのだった。
100万円つっこんで・・・10万円当てても90万円の損失だとは思わないのがギャンブラーというものである。
思わぬ幸運にスキップしながら・・・カウカウファイナンスの返済に出向くギャンブラー優一。
コンビニで好きなお菓子を買いこみ、両親の目を盗んで自宅に戻ると・・・虚しさを解消するために出会い系にアクセスするのだった。
宇都井の両親。テレビを見続ける父の優作(宮川浩明)はまだしもも母の美津子(島ひろ子)は素晴らしいインターネットの世界で株式投資の信用取引をしている気配である。
「あ・・・またさがった」とか言ってるので母子ともども地獄行きの予感が・・・。
そんなこととは露知らず・・・小学校の初恋の女・水野結花(篠川優莉香)が結婚して橋本結花(伊藤麻実子)になっていて幻滅したはずなのに・・・思わずユカ(仮名)という女との待ち合わせを選択する優一なのである。
おばさんだかおじさんだかわからない人の接近にたじろぎつつ・・・幸運の風に吹かれて・・・そこそこいい女にめぐりあった優一だった。
天にも昇る気持ちでユカ(稲川なつめ)とラブホテルにしけこむ優一。
「君の夢は何・・・」
「いきなり、夢の話?」
もう・・・痒いところに手が届くダメ男ぶりをさらけ出す優一。
会話に自信喪失した・・・優一は自分と女の間のテーブルに現金二万円を置くのだった。
ユカは無言で服を脱ぎ、下着からのぞく割れたパーツを一部愛好家にサービスしながらバスルームに消えるのだった。
シャワーを浴びた女に・・・愚問を続ける優一。
「昼間はなにして働いてるの」
「専門学校生・・・あなたは」
「俺は・・・建築関係だけど・・・お金に困ってるの」
「・・・淋しいから」
「そういう時は・・・友達とカラオケしたりしないの」
「私・・・会話が苦手なの」
「嘘・・・普通に会話してるじゃん」
「こういう・・・二度と会わない相手となら・・・本当の自分を見せなくてもいいでしょ・・・でも学校の友達とかと・・・話していてしくじったら・・・とりかえしがつかないと思うから・・・うまく話せなくなる・・・」
「・・・俺だって・・・今までダメだっからこれからもダメに決まってるってつい思っちゃうダメ人間さ・・・」
ユカは自らベッドに入り・・・優一を誘うのだった。
良心的な援助交際相手に恵まれ・・・至福の時を過ごす優一。
しかし・・・行為を終え、ラブホをでると不平屋としての埒もない気分に支配されるのだった。
(なんか・・・女って重いよな)
しかし・・・本当は・・・女の電話番号を聞き出し・・・交際してみたい優一である。
ユカはそういう気配をなんとなく醸しだすのだが・・・もちろん前向きに踏み出すことなどできない優一だった。
ユカと優一は虚しく右と左に別れるのだった。
同じ時間を過ごし、女は二万円を得て、男は二万円プラスホテル代を失った・・・ただそれだけのことである。
優一の幸運は一日でゼロになったのだった。
ウシジマくんは金主の大原正一(徳井優)に呼び出される。
何故か・・・「僕のいた時間」的なことになっている大原。
大原ガールズもおニューになっている。
ニュー大原ガールズはセンター(池田夏希)、レフト(鈴木咲)、ライト(神谷まゆ)という布陣である。
「ウシジマくん・・・僕は最近、健康を損ねて・・・健康ドリンクにこっている。僕が君に1ヶ月15%という超お得な金利で大金を貸しているのは何故だと思う。君が好きだからさ。だから君には健康でいてもらいたい。さあ・・・飲みたまえ・・・ミドリムシでおなじみのミドリ汁を」
「結構です・・・」
「君は僕を信用できないのかな」
「信用しています」
ミドリ汁を一気飲みするウシジマくんだった。
「金主に呼び出された時の社長は機嫌悪いから注意しろよ」と警告する柄崎。
憮然として戻ってくるウシジマくん。
もう・・・鴨せいろを食べるしかないらしい。
鴨せいろ日和。曇ってるじゃないか。天気晴郎なれど波高し。
「カウカウファイナンス」ではゲイの森下くん(金谷マサヨシ)が返済を滞らせ、犯罪的な「かわいいものシリトリゲーム」により、犯罪的な罰ゲーム「ハバネロ一気飲み」で調教されている。
ウシジマくんは無表情だが・・・少し鬱憤が晴れたようだ。
そこへ・・・父親の年金が支給された丸山くんがやってくる。
二人は小学校の同級生だった。
それを知ったウシジマくんは丸山くんと森下くんを相保証させるのだった。
お互いが保証人となり・・・どちらかが返済を滞らせれば犯罪的な責任を追うわけである。
犯罪的なゴムパッチンで説明するウシジマくんだった。
さまんさ(内田滋)がバーテンダーをつとめるゲイバーで森下くんは愚痴る。
「ひどいでしょ・・・ハバネロの後のゴムパッチンなんて・・・」
「保証人なんてなって大丈夫なの」
「私が小学生の時、クラスで最低人間コンテストがあって・・・私が一位になって・・・あの子は二位だった。二人は全裸でボクシング対決を強要されたの・・・いじめられたものの気持ちはいじめられたものじゃなきゃ・・・わからない・・・あの子は私を裏切ったりはしない」
もちろん・・・ウシジマくんの世界にそんな理屈は通用しないのだった。
丸山くんは・・・父親の枕元で・・・回収さえされなかった安物の腕時計を見つめる。
時を刻む秒針。
一日の業務が終ったカウカウファイナンス。
「これは今日の売上と通帳だ・・・明日アサイチで入金しろ」と隼人に命ずるウシジマくん。
「持ち逃げするなよ」と柄崎。
「そんなことしません」と隼人。
「じゃ・・・今日は飲みに行くか」
おでん屋である。
「柄崎、お前・・・おでんは何が好き」
「チクワブです」
「摩耶は」
「ハンペンです」
「高田は・・・」
「俺は・・・えっと」・・・高田は危険な空気を察知していた。
「隼人は・・・」
「タマゴです」
「社長は」と柄崎。
「俺は・・・牛スジ・・・じゃ、乾杯」
生ビールのジョッキを掲げ、隼人は一口飲む。
「はい・・・失格・・・クビだ・・・大金を預かって酒を飲む奴は金融屋にはむかねえ」
暗澹として店を出た隼人を高田が追う。
「ごめんな・・・隼人」
「お前は悪くないさ」
「これ・・・五十万円ある・・・やるよ」
「いいのか」
「金に困ってるんだろう・・・なんかあったら連絡してくれ」
「・・・」
高田が去るとありがたさに涙がにじむ隼人。
しかし・・・そこに襲いかかるケツモチたち。
店では・・・摩耶が隼人に少し同情的である。
「ちょっとアンフェアじゃないですか」
しかし・・・柄崎は聞く耳をもたない。
「ハル子の奴・・・ホストと海外旅行にいってるんだ・・・かわいそうに残されたガキはよ・・・飢え死にしかかっていた」
摩耶も柄崎もすごくいい人なのだが・・・基本的に犯罪者です。
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