君(多部未華子)と僕のいた時間(三浦春馬)
映画「バイオハザードIV アフターライフ」(2010年)で東京の感染者第一号となった女(中島美嘉)が雨の中で立ちすくむように・・・アンデッドになったかのような主人公・・・。
刺激的な立ち上がりである。
救いようのない難病を題材にして・・・この刺激的な冒頭に魅かれる・・・。
手足や言葉の自由を徐々に奪われながら最後には体の運動機能を全て喪失してしまう難病といえば・・・「1リットルの涙」の脊髄小脳変性症(SCD)を思い出すが・・・今回は「コードブルー2」にも登場した筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。どちらも特定疾患に認定されている難病だ。
難病ものは一種のホラー・サスペンスであり・・・その恐怖は・・・「明日自分もそうなるかもしれない」という緊迫感に尽きる。
そういう意味では「バイオハザード」と本作品は同じジャンルに属するのである。
治癒のための有効な治療法は確立されていないということが「登場人物の死」を確定しているのであるから、「バイオハザード」より恐ろしいとも言える。
しかし・・・主題歌が「春風/Rihwa」なので最終回はそれなりに暖かい結末が用意されている気がする。
まあ・・・その感動が・・・こなあゆきい・・・を上回るかどうかは不明である。
で、『僕のいた時間・第1回』(フジテレビ20140108PM10~)脚本・橋部敦子、演出・葉山裕記を見た。脚本家の力量が遺憾なく発揮され・・・よどみのない幕開けである。流石だとしか言いようがない。どこにでもある日常を切り取って花となすのは一種の魔力だな。そういう意味ではこの脚本家は魔法使いと言えるだろう。
おそらく・・・それほど偏差値の高くない大学に通う・・・澤田拓人(三浦春馬)は就職活動期に突入する。さわやかな好青年に見える拓人は高望みをしなければ「内定」を獲得するのは困難でないように思えるが・・・落選の連続である。
どう考えても・・・犯罪者になりそうな友人の水島守(風間俊介)や先輩で大学院生の向井繁之(斎藤工)があっさり就職を決めていくのに・・・拓人は内定に恵まれないのである。
やがて・・・拓人の心に巣食う「焦燥感」が・・・にじみ出ているのがその原因であることが描かれていく。
山梨で総合病院を営んでいる父親・昭夫(小市慢太郎)の期待に添えず医学部に進学できなかった拓人。四歳年下の優秀な弟・陸人(野村周平)が医学部受験のために上京しプレッシャーを感じる拓人。次男の陸人に期待を寄せ、出来の悪い長男にあからさまに無関心な母親・佐和子(原田美枝子)への満たされぬ思いに身悶える拓人。
そうした「心の暗闇」を覆い隠し・・・明るく振る舞う拓人の「本質」が就職面接官の心を醒めさせるのだった。
一方で・・・同じ大学に通うメグこと本郷恵(多部未華子)は奨学金を受け、ファミリーレストランでアルバイトをする苦学生。就職の面接で携帯電話の電源を切り忘れるという規格外の失敗を犯したり、用意した模範解答が他の学生とかぶって動揺するという適応力の無さを露呈するダメな子である。
美人の女友達の村山陽菜(山本美月)は「就職活動はあきらめて結婚活動に切り替える」などと言い出すのだが・・・メグは「恋愛力」も低いようだ。
女手一つでメグを育てた母親・翔子も「健康な男なら誰でも良い」と娘の恋人のレベルを下げまくっているのである。
大学生活で同じ学部に属しながら一度も話したことのない・・・メグと拓人は面接会場で出会い・・・自分より・・・ダメな子であるメグに拓人はようやく救いの手を差し伸べることができるのだった。
そして・・・二人はなんとなく・・・付き合い始めるのである。
ある意味では「就職活動」から「恋愛活動」への逃避であり・・・就職内定獲得競争に連戦連敗する二人だった。
もちろん・・・「恋なんてしている場合じゃない」という自覚のある二人は一線を越えることもできないのである。
気晴らしに海に出かけて・・・砂浜に「三年後の自分への手紙」を埋めてみたりするお子様デートをするのが精一杯なのだった。
しかし・・・次第にお互いに魅かれあう二人。
そんな時に・・・二人よりさらにダメな学生(夕輝壽太)が現れる。夕輝壽太は今季「S -最後の警官-」(TBSテレビ)にも出るのでこちらはゲストなのだろう。
「君は何社受けたの・・・」
「四十社くらい・・・」
「僕は八十社さ・・・」
拓人は上には上がいることを実感するのだった。
そして・・・「彼」は自殺してしまうのである。
葬儀の席に・・・メグもやってくる。
メグも・・・「彼」と面接会場で遭遇したらしい。
「彼は百社受けたんだって・・・」
拓人は「彼」とメグと自分との共通点を連想し・・・恐怖を感じるのだった。
そして・・・それは「生」への渇望となり・・・大胆な告白に至る。
「君にキスしてもいいかな」
うろたえたメグは思わず拒絶して・・・二人は気まずくなるのだった。
そして・・・最後の面接で再び同席する拓人とメグ・・・。
模範解答を答えかけた拓人は思わず・・・「彼」のことを思い出して笑ってしまう。
「どうしたのかね・・・」
「一生懸命・・・求職して・・・毎回、不合格者となり・・・自分のすべてを否定された気分になる・・・そんなことが百回も続くと・・・死にたい気分になることもあるのかな・・・とふと考えてしまったのです」
拓人の魂の叫びは・・・面接官や・・・メグの心を揺さぶるのだった。
そして・・・ついに・・・拓人は「内定」を手にしたのだった。
メグは・・・アルバイトをしながら・・・就職浪人に突入するが・・・拓人への愛を自覚するに至る。
しかし・・・拓人は「健康な男」ではなかったのだ。
二人に残された甘い日々は・・・あらかじめ失われていたのである。
実にスムーズに・・・せつない青春に・・・お茶の間の心は導かれて行ったと考える。
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