官僚の官僚による官僚のための隠蔽捜査(杉本哲太)VS恋多き女と恋に一途な女は同じ意味なの失恋ショコラティエ(松本潤)
おっさんのためのミステリ小説原作ドラマと乙女のための恋愛コミック原作ドラマがすれ違う月曜日である。
落差があるようで・・・それほどでもないのは・・・どちらも普通の人々の妄想に寄り添っているフィクションだからだろう。
おっさんたちには「職場」があり、乙女たちには「恋愛」がある。
ただそれだけのこと。
普通の人々の「職場」や「恋愛」にはそれほどドラマチックなことはない。
だが・・・「宇宙戦争」が始ったり、「アンドロイド」に恋をしたりするほどの「刺激」はなくても・・・ちょっと「事件」があったり、「夢」があったりの「変化」は欲しい・・・そういうお茶の間の期待に応えようとする姿勢が涙ぐましい。
「職場」と「家庭」どっちもピンチとか・・・「男の子」にも「乙女」を求めたりとか・・・人々はほんの少し・・・ないものねだりなものだから。
で、『隠蔽捜査・第1回』(TBSドラマ20140113PM8~)原作・今野敏、脚本・中澤圭規、演出・岡本伸吾を見た。脚本家は「終電バイバイ」からココ。演出家は「クロコーチ」からココである。原作はテレビ朝日が2時間サスペンス(2007年~)でシリーズ・ドラマ化していて主人公・竜崎を陣内孝則、伊丹を柳葉敏郎が演じていた。原作小説はその後も続編が描かれているので・・・おそらく続きが見られるのだと思われる。
警察庁長官官房総務課課長の竜崎伸也・警視長(杉本哲太)は東京大学卒業のキャリアである。謹厳実直な性格で・・・融通がきかない・・・清廉潔白な男で・・・私利私欲に走らなすぎるために・・・官僚仲間からは煙たがられている。仕事は主に「警察組織全体のマス・メディア対応」である。特に「不祥事」に対応するために・・・「正確な情報」を常に求めている。「正直が結局一番、信用が得られる」という信念は「警察組織の隠蔽体質」と軋轢を生じる。しかし・・・受験生である長男が自宅で麻薬を吸引しているのを目撃してしまい・・・深刻なジレンマに陥ることになる。
竜崎の幼馴染で有名私立大学卒業のキャリアである伊丹俊太郎・警視長(古田新太)は警視庁刑事部長である。竜崎が真面目すぎる性格からいじめられていたのに対し、物事にあまりこだわらないタイプのガキ大将だったらしい。幼馴染の竜崎には好意を持っているが、東大閥に属さないことから複雑な感情も合わせ持っている。
竜崎が「会議室(上)」の象徴なら・・・伊丹は「現場(下)」の象徴ということになるだろう。
その背景には警察庁官僚同士や警視庁官僚との確執があり・・・竜崎は上司の警察庁官房長官参事官の牛島・警視長(神保悟志)の要請で刑事局幹部を飛び越えて現場の伊丹から情報を聴取することを求められる。
これに竜崎と伊丹の同期だが一人だけ警視監に出世している警察庁長官官房総括審議官である上條貴仁(生瀬勝久)が加わって、ザ・警察官僚の世界に彩りを添えるのである。
もちろん・・・上條が出世欲の権化であることはいうまでもない。
ちなみに竜崎には警察庁長官官房総務課長補佐の谷岡香織・警視(青山倫子)というくのいちの香りのする部下が配置されている。
そして、伊丹の上には警察庁刑事局捜査第一課長の坂上栄太郎・警視長(矢島健一)がいる。
つまり・・・警察庁長官→上條→牛島・坂上→竜崎・伊丹→谷岡という階級と職務による上下関係が構成されているのだった。
事件の舞台となる警視庁・大森北署刑事課強行犯係の刑事・戸高善信・巡査部長(安田顕)から見れば全員、雲の上の存在なのである。
息子の犯罪行為に思い悩んだ竜崎は伊丹に相談を持ちかける。
「隠蔽するしかない・・・息子を破滅から救うのは父親の役目だ」と友人として超法規的アドバイスをする伊丹。
おりしも・・・都内では「凶悪事件」の加害者たちが刑期を終えて出所後、連続して殺害される事件が発生する。
容疑者として「正義感の強すぎる警察官」が浮上し・・・不祥事発生に蒼ざめる警察官僚たち。
しかし・・・自殺しようとした「犯人」を戸高刑事が逮捕してしまったために・・・警察官僚たちにとって最悪の事態となってしまうのだった。
彼らは「これはもう・・・隠蔽するしかない」と結束するのだが・・・一人・・・竜崎だけは・・・。
まあ・・・「身内を守らなくて誰を守るのか」という人情と・・・「社会正義」の葛藤が描かれていくのですな。
まあ・・・義理と人情を秤にかけると・・・いろいろと面白いということです。
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で、『失恋ショコラティエ・第1回』(フジテレビ20140113PM9~)原作・水城せとな、脚本・安達奈緒子、演出・松山博昭を見た。脚本家は「大切なことはすべて君が教えてくれた」(平均視聴率 11.4%)、「リッチマン、プアウーマン」(平均視聴率 12.4%)、「Oh,My Dad!!」(平均視聴率 9.2%)と内容も数字も微妙だが何故か起用され続ける経歴の持ち主である。ガチの原作を得て大きく開花するか・・・運命の分かれ道ですな。演出家は「鍵のかかった部屋スペシャル」からココ。ブラックアウトしすぎですな。テレビが壊れたかとドキドキさせてどうする・・・なのでございます。
実家がケーキ屋の小動爽太(松本潤)は高校時代に一つ年上の高橋紗絵子先輩(石原さとみ)に一目惚れ・・・それ以来・・・彼女の恋人になることを夢見続けるのである。
一方で・・・高橋紗絵子は恋多き女・・・次から次へと男を変える・・・「雌犬(ビッチ)の妖精(フェアリー)」なのである。
チョコレートが大好きな紗絵子のために・・・ついにはパリの一流店へショコラティエ(チョコレート職人)として修行の旅に出る爽太なのである。
父・誠(竹中直人)も妹・まつり(有村架純)も従業員の井上薫子(水川あさみ)も呆れるほどに・・・「紗絵子先輩LOVE」な爽太・・・。
もちろん・・・今の処・・・乙女・・・ではなかった・・・童貞らしい。
有名老舗「パティスリー・トレルイエ」のオーナーの息子でフランス人と日本人のハーフであるアニメおタクのオリヴィエ・トレルイエ(溝端淳平)を伴って帰国した爽太は・・・「ショコラヴィ」を開店して・・・紗絵子先輩の気を惹こうとするのだが・・・再会した紗絵子先輩は爽太に結婚式のケーキ製作を依頼するのであった。
紗絵子先輩の結婚相手は・・・なにやら怪しい雑誌編集者の吉岡(眞島秀和)だった。
それでも・・・「紗絵子先輩の結婚生活が破綻すること」を確信して片思いを止めない爽太に「さらに片思いのブス」な役柄に徹する井上薫子は心を痛めるのであった・・・。
そして・・・そんな爽太の動向を密かに見つめる怪しい男(佐藤隆太)と怪しい女(水原希子)・・・。
乙女な男子が主人公の乙女なドラマである。
キッドは思わず「アーモンド・チョコレート」を一箱食べてしまいました。
お茶の間の皆さんもご注意くだされますように。
とにかく、今季の月曜日は駅長と太巻、若春子と「あまちゃん」ファン(松本潤)の二本立てなのだった。
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