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2014年2月28日 (金)

君(多部未華子)が僕の隣でふる雪を見ていた時間(三浦春馬)

なるべくしてそうなっていく。

まあ・・・ドラマだからな。

愛されるべき人が愛されて、報われるものが報われるのは虚構の特権である。

もちろん・・・例外はあるけれど・・・多くの犯罪者は逮捕されてもらいたいし、恋人たちはめぐりあってもらいたい。

そういう夢をかなえてくれるのはドラマの基本的な効能である。

その夢の叶え方は・・・それぞれの個性でいい。

このドラマの場合、ちりばめられたエピソードや・・・そこに発生する感情が非常に丁寧に構築されていて・・・物凄く感情移入がしやすいわけである。

こんな俺でいいのか。

あなたがいいの。

誰だって言ってもらいたいよね。

なかなか言われないからね。

で、『僕のいた時間・第8回』(フジテレビ20140226PM10~)脚本・橋部敦子、演出・八十島美也子を見た。裏番組の「明日、ママがいない」が全9話、こちらが全11話である。どちらも素晴らしいさいはてドラマだが、今回は「明日ママ」が視聴率↗11.8%、こちらが↗11.0%である。先行でスタートして、一週遅く終わるこちらが・・・最終回でどれだけ伸ばしてくるか・・・楽しみである。だけど・・・最終回だけ見ても・・・絶対、この脚本の見事さはわからないと思うよ。

再現性低め設定のレビューであれなのだが・・・セリフが本当に上手いよな・・・。

僕は君を抱きしめたかった。

でも・・・実際、僕の両手は・・・もう、ぬいぐるみだって抱きしめられないんだ。

そしたら・・・君が抱きしめてくれた。

僕は君を抱きしめたい。

けれど・・・抱きしめられるのは嫌じゃない。

だが・・・しかし・・・やはり・・・君を抱きしめたいんだ。

それは・・・もう・・・叶わない願いかもしれないけど。

君が僕を愛してくれる。

君が僕を愛してくれる。

そんなはかない願いで僕の胸ははりさける。

僕の心は君でいっぱいになる。

守(風間俊介)のことなんか・・・忘れてしまうくらいに。

ごめん・・・最高の友達なのにな。

心の病気を抱えた弟・陸人(野村周平)が上京してくる。

もちろん・・・陸人は精神に不自由しているわけではなくて・・・そういう個性なんだという考え方もある。

そういう意味なら・・・僕だって愛する相手を抱きしめられないという個性があるだけだと言えるかもね。

でも・・・恋人を抱きしめられなかったらそれを恋人と呼べるのかどうか・・・僕には自信がないよ。

陽菜(山本美月)ちゃんと守のカップルが恋人かどうか以上の難問だろう。

僕を最後に抱きしめて・・・君は繁之(斎藤工)先輩と暮らし始めたとばかり思っていた。

ところが・・・繁之先輩が来たり・・・君のお母さん(浅田美代子)までが突然やってきて・・・何やら君が予想もつかないことを始めた気配がある。

だからといって・・・僕にできることはあまりない。

なにしろ・・・一人でトイレに行くのさえ・・・危ぶまれる今日この頃だ。

昔、見た「1リットルの涙」では・・・ヒロインがトイレに間に合わなくなってしまうという屈指の名場面があったけど・・・実際、トイレで倒れてスボンを汚してしまい・・・同僚に助けてもらうって自分が自分でなくなる気がするほどのショックだよ。

もう・・・仕事を続けるのも無理かもしれない。

そんな日に・・・よりにもよって君が僕を訪ねてきた。

ウルトラ・スーパー・デラックスに気が効かない弟に着替えを手伝ってもらい、弟が陽菜ちゃんに教わった秘義・ジュースを買いに行くで僕たちを二人きりにする。

そうそう・・・僕は弟の解剖学の本を読んでるわけだけど・・・これは恥骨がらみの何かなのかもしれないね。

「どうしたの・・・」

「・・・」

「君とは・・・この間が最後だと思ってた」

「・・・」

「でも・・・繁之先輩が来たり・・・君のお母さんが来たりして・・・」

「繁之さんと暮らすのはやめにしたの」

「・・・」

「なんで・・・言ってくれなかったの・・・」

「・・・」

「病気のこと・・・」

「だって・・・言ったって言わなくたって同じじゃないか」

「私は別れなかったよ」

「何を言ってんだ・・・僕がダメなんだよ・・・僕には何も守れやしないんだから」

「守るって何を・・・」

「・・・」

「私はあなたがいいの・・・あなたは」

「僕の気持ちなんてどうだっていいじゃないか」

「よくないわ・・・自分だけ我慢して・・・言いたいことも胸にしまって・・・バカみたい」

「・・・」

「それで・・・胸をはって今を生きてるって言えるの」

「もう・・・二度と来ないでくれ・・・君の顔は見たくない」

君は去った。

僕は馬鹿だ。

だけど・・・他にどうしろって言うんだ。

僕の願いは君が幸せでいること。

そして・・・僕には君を幸せにすることなんてできやしないんだぜ。

君を抱きしめたくても・・・抱きしめられない男なんだぜ。

絶望的じゃないか。

もうだめだ・・・と思っていても生きていると意外なことがある。

トイレが不自由になったので退職を覚悟した僕に・・・宮前家具の非正規雇用者・宮下(近藤公園)が「広告の仕事は・・・自宅でもできるのでは・・・」と提案してくれた。

なんていい同僚。

なんていい会社。

なんていい僕の仕事。

それから・・・弟を追いかけるように母(原田美枝子)が上京してきた。

なんとか弟を医学部に戻したい母。

絶対に医学部に戻りたくない弟。

気が効かない母と子の・・・堂々巡りの物語。

弟しか見ていない母に僕は物凄く淋しさを感じた。

そんな母親に弟は「僕の人生から出て行ってくれ」って言っちゃうんだ。

僕はそんな弟がうらやましくてうらやましくてついに叫んだよ。

「お母さん・・・僕のことも見てよ」

「・・・」

「医大にはいけなかったけど大学を卒業した僕。名もない会社だけどなんとか正社員になった僕。こんな病気になっちゃったけど・・・広告の仕事をしている僕。そんな僕を少しは認めてよ」

「・・・」

「僕が病気になってどんなに苦しんだか・・・どうしてどうして気がついてくれなかったの」

「・・・ごめんなさい」

「それに・・・お母さんは・・・弟のことだって何にもしらない」

「・・・」

「弟が好きなもの知ってる?」

「唐揚げでしょ・・・」

「それは・・・僕が好きなものだよ」

「えええええええええええええええ」

「お母さん・・・もっとちゃんと見てよ」

「私だって・・・私だって一生懸命・・・いい妻になって・・・いい母親になって・・・子供を医学部に進学させて・・・どうして・・・どうしてこんなことになっちゃったの・・・」

「母さん・・・」

泣き崩れる母親・・・。

ごめんよ・・・母さん・・・母さんは何一つ悪くない。

ちょっと配慮が足りないだけなんだもんね。

僕は母の袖に触れた。

その手を母が握りかえしてくれた時・・・僕は心と心が通い合った気がした。

いつも・・・弟に頼んでいるトイレの世話を母に頼むこともできた。

僕は恥ずかしかったけれど・・・母はなんてったって僕のオムツを変えてくれていたベテランさんなんだもんね。

僕は君を想う。

母に正直になれたように・・・。

君に正直になりたい。

僕の気持ちを君に伝えたい。

それができたら・・・どんなに生きている気がするだろう。

母は弟に聞いた。「何が好きなの」

弟は答えた。「青椒肉絲」

そうか・・・チンジャオロースも美味いよね。

そんなことで心が通い合う弟と母さん・・・まあ・・・いいか。

夜。

夜はいろいろなことを隠してくれる。

僕のはかない願いを。

やがて・・・僕は夜の散歩だって夢に見るようになるのかな。

夜の街で君を待っている気分にひたるのも無理になるのかな。

うっかり、電線に飛び乗った猫。

カラスたちが舞い降りる。

そこは俺たちのテリトリー。

猫はカラスなんかを惧れはしないが多勢に無勢だ。

電線の上を走る猫。

カラスたちが追いたてる。

ようやく屋根に続いた電線に猫は飛び移る。

見上げた人々の顔に浮かぶ安堵の表情。

僕だってほっとする。

だけど・・・君はやってきた。

何もかも捨ててやってきた。

「そんなところで何をしているの」

「君が来るのを待ってたんだ」

「・・・」

「僕のとなりにいてください」

「はい」

遠回りをした僕たちに祝福の雪が降ってくる。

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2014年2月27日 (木)

闇の子(鈴木梨央)光の子(芦田愛菜)バンビとボンビは大違い(渡邉このみ)今、あの子に会いに行きます(安達祐実)

一重人格の人から見れば二重人格者は精神的に不安定に見えるかもしれない。

しかし、のっぺらとして、平淡で、裏表がないなんてなんだか薄っぺらいだけのような気もする。

切れ長だったりするとこわいしな。

誰がまぶたの話をしている。

心の闇などというものは誰もが有している。

忘れ去られた記憶、封じ込めた感情、その澱みからゆっくりとはい上がる隠花植物・・・。

しかし・・・そこにもまた豊饒な「生」の世界はある。

自分を肯定することも否定することも諸刃の剣である。

自尊心と自惚れは紙一重だし、自己否定と謙虚さは双子の兄弟である。

闇の世界にあって闇の子は自然だし、光の世界にあって光の子は自然である。

親に裏切られた子の心の闇、最初から親を知らない子の心の光。

愛に恵まれた大人がうかつに触れば棘が刺さるかもしれない。

で、『明日、ママがいない・第7回』(日本テレビ20140226PM10~)脚本監修・野島伸司、脚本・松田沙也、演出・猪股隆一を見た。二時間サスペンスでは児童養護施設は被害者や加害者、そして容疑者の温床である。めぐまれない子供たちが平等を目指すエネルギーが時には暴発することをお茶の間が安易に想像できるからだろう。しかし、失言を続ける大物政治家がいるように、母親に捨てられ母親が傷害事件を起こした際の狂気に擬えてドンキと仇名された少女がまっとうな大人に成長する場合もあるのである。しかし、逆境によってたくましく育った人間が他者に優しいとも限らないのである。人間の心の本質をドラマはリンゴの皮をむくように世界に表出していく。甘い果汁を滴らせながら。

妻子を捨て世捨て人となったシャカ族の王子シッダルタは放浪の旅の途中、乳飲み子を失い心を病んだ母親に出会う。

「汝は何を気に病むのか」

「我が子が帰らないからです」

「汝が他の家を訪ね、子を一人も失っていない母親を見出せば子は帰るだろう」

子を失った母親は家々を訪ねると、どの家の母親も子を失ったことがあった。

「汝の悲しみは汝のものだけではなかったろう」

「他の母親の子供のことなどどうでもいい・・・私の子供を返して下さい」

シッダルタは肩を落として旅を続けた。

次の家では最初の子供を生んだ母親が喜びに輝いているのを知っていたからである。

人の心ほど思いのままにならないものはないとシッダルタはため息をついた。

ポスト(芦田愛菜)、ドンキ(鈴木梨央)、ピア美(桜田ひより)、ボンビ(渡邉このみ)の通う横浜市立川浜小学校の担任教師が産休に入り、新しい担任として朝倉先生(吉沢悠)が現れた。

「素敵・・・」とピア美は胸をときめかせるが・・・ドンキは朝倉先生の指に結婚指輪があることを目ざとく見つけ指摘する。

一瞬でもピア美が幸せな気持ちになることが許せなかったからである。

もちろん・・・この場合の悪意は・・・禍福は糾える縄の如しという観点に立ては善意の裏返しに過ぎない。

正義の立場から子供たちに「完全なる里子」を求める魔王(三上博史)にとっては・・・それは自尊心の欠如という補正すべき欠陥に見える。

凡夫が人の子を導くことは多難である。

親の顔さえ知らぬポストは・・・理想の里親に奪われた擬似息子のパチ(五十嵐陽向)の面影を求めつつ、パチほどには可愛くないニッパチ(寺田心)の幼稚園への登園拒否に付き合い、小学校を遅刻する。

見知らぬ朝倉先生に戸惑うポストにポストをこよなく愛する笹塚蓮は「新しい先生が来た」とフォローを忘れない。

「遅刻か・・・せっかくだから・・・自己紹介してもらおうかな・・・」

口にするのも恥ずかしいらしい・・・キラキラネームである本名をポストが口にするがお茶の間には明かされない。

めげずに朝倉先生にアタックするピア美はポストとともに朝倉先生の新居を訪ね・・・今回のメイン・ゲストである・・・愛娘を踏切事故で失って精神的に不安定になってしまった・・・朝倉先生の妻・瞳(安達祐実)が登場する。

何故か・・・瞳は失った娘の面影をポストに見出すのだった。

「アイ・・・お帰りなさい・・・突然、友達を連れてきたりして・・・お母さん、びっくりしちゃった」

「この子たちは・・・僕が教えている小学校の児童だよ」

「何を馬鹿なことを言ってるの・・・」

戸惑うポストとピア美だった。

瞳の精神的な異常さが・・・自宅療養のレベルなのかどうか・・・微妙なところだった。

ともかく・・・ポストが予測する・・・仲良し子育て夫婦でも・・・高収入のキャリア妻の尻に敷かれる夫でもなく・・・朝倉先生は我が子を不慮の事故で失った上に狂った妻を持て余す可哀想な先生だったのだ。

一方、バンビことボンビに導かれて、グループホーム「コガモの家」にジョリピ夫妻(城田優・Mailys Robin)がやってくる。

女子ではなく男子を養子にしたいジョリピは・・・ハン(阪本光希)とリュウ(阪本颯希)の双子の兄弟や、ニッパチを面接するが心にフィットするものを感じない。

ジョリピの養子になることに見果てぬ夢を見るボンビは髪を切って男装し・・・ジョリピのお眼鏡に適うのだった。

ファンタジーである。

前回・・・ドンキという名とは裏腹に素直な子供であるという表面を覆し・・・心の闇をのぞかせた高窓に・・・今度はポストが登場し・・・ボンビを心配そうに見守る。

闇の子・ドンキと光の子・ポストの交錯する構図である。

もちろん・・・光と闇が交錯するこの世界では・・・闇の子・ドンキの闇の深さも・・・光の子・ポストの輝きも・・・そのまま受け取ることはまだできない。

ドンキもポストも傷心を仮面で包んでいるのは明らかだからである。

親がいてもいじめられる世界で親がいない子供の心細さを忘れてはいけないのだ。

二人は単にしたたかに生きようとしているだけなのかもしれないのだ。

「娘は友達の脱げた靴を踏切に取りに行って即死だった」と恐ろしい話を小学生にする朝倉先生もある意味・・・精神の均衡を危ぶまれるわけだが・・・ポストは哀しみに沈む瞳に心ひかれるものを感じるのだった。

踏み切りの線路に落ちた甘い果実・・・。

独自路線を行くボンビは一人二役のドタバタで男の子と女の子を行ったり来たりした後で・・・ドンキに示唆されたハンとリュウの意地悪によって・・・男の子ではないことがジョリピにばれそうになり失踪するのだった。

ロッカーの事件や・・・ボンビの失踪に・・・冷笑するドンキの心の闇を危ぶむ魔王。

そこへ・・・アイスドール(木村文乃)が寿退社の報告に現れ・・・魔王は男のロマンである「108人の里子里親縁組達成」が破綻することを恐れて激昂する。

魔王も人の子なのである。

「お前にやめられたら・・・子供たちに選ぶ権利を与える・・・ルール違反が成立しなくなるじゃないか」

「しかし・・・私も自分の居場所が欲しいのです」

「そんなの・・・俺は認めない。俺の理想に従ってくれないのであれば・・・お前をクソ偽善者と呼ばざるをえない」

「・・・」

アイスドールも人の子なのである。思わず涙がこぼれるのだった。

やがて・・・魔王の怒りは・・・自尊感情が欠如しているかもしれない・・・ドンキに向かうのだった。

これ以上ない理想の里親・川島夫妻(松重豊・大塚寧々)を魔王によって配されて感謝しつつも・・・その幸福を受け入れることができないドンキ・・・。

「お前は・・・自分が幸せになるのも怖い・・・しかし・・・他の子供が幸せになるのも許せないんだ・・・お前は自分が不幸にならないために・・・他人の不幸を願う・・・クソみたいな大人になろうとしている・・・」

愛が迸り・・・傷ついた子供を追い詰める魔王。

その気迫に後ずさったドンキは階段落ちである。

顔面から流血しながら・・・むくりと起きあがるドンキ。

もう、ボンビがバンビであるようにドンキはゾンビと化したようだ。

「私は嘘をついていない・・・ボンビの嘘はいつかばれるし・・・誰も幸せにならないじゃないの」

そして・・・ドンキは・・・魔王の急所である魔王の妻の元へ奔るのだった。

とにかく・・・魔王の大人げなさは半端ないのだった。

誰か・・・ドンキを手当てしてやってくれ。

一方、ポストは焼き芋を買って・・・ボンビの隠れ家を訪問する。

そして・・・夢破れたボンビを回収するのだった。

ところが・・・今度はドンキが家出しているのである。

「どうなってんだ」

「一言ではちょっと」

訳知り顔のピア美も説明に困るのだった。

そこへ・・・ドンキを連れて魔王の妻(鈴木砂羽)が現れた。

「なんで・・・警察を辞職して・・・児童養護施設なんてやってるのよ・・・」

「どうして・・・この場所を・・・」

「あ・・・それは私が・・・」と出番を確保するオツボネ(大後寿々花)だった。

綺羅星の如く現役子役に囲まれ、メインゲストが元子役だけに・・・中間管理職のような立場の元名子役だった。

「この人は・・・私の願いを踏みにじって母体優先して・・・自分の子供を殺した男のくせに・・・なにしてんの・・・贖罪のつもり?」

「親のいない子供たちを108人・・・子供のいない親に引き合わせたら・・・君に会いに行くつもりだった」

「そんなの・・・自己満足じゃない」

思わず・・・魔王を弁護するアイスドール。

「ただの自己満足じゃ・・・ないと思います・・・彼はたくさんの養子縁組を成し遂げたんですから」

「そんなの・・・私の子供と何の関係もないわ」

「・・・」

「私は・・・私が死んでも子供にだけは・・・生きていてほしかったの」

大人げなさの王者として君臨する魔王の妻である。

「あんたになんか子供の世話なんか無理よ」

捨てゼリフを残して・・・ドンキを置き去りにする魔王の妻である。

(ボンビだって他人のせいにしたりしないのに)

(人間ってここまでわがままになれるものなのか)

(すげえ・・・すげえぜ・・・魔王の奥さん・・・)

親のいない子供たちは大人なので無言を貫くのだった。

「お前・・・」

最高に大人げない妻をこよなく愛する魔王だった・・・。

似たもの夫婦なんだな。

子供たちの視線を軽く交わして自分の事で精一杯の魔王の妻は去って行った。

とにかく・・・誰か、ドンキの手当てをしてやってくれ。

階段から落ちて流血しているんだから・・・。

「私は嘘なんかついていない」

どんな痛みもスルーする態度で頑なに自分を否定する世界を否定するドンキだった。

やり場のない気持ちに満たされたコガモの家の時は無情に過ぎ去って行く。

我が子を失っておかしくなってる母親もいれば・・・子供を捨てる母親もいる。

その落ちつかない母親のイメージを抱えながらポストの足は・・・朝倉家に向かう。

朝倉家では・・・夫が妻の正気を取り戻そうと必死になっているのだった。

「何度言ったら分かるんだ・・・あの子はもう・・・いないんだ」

「何言ってるの・・・あの子は塾に行ってるだけじゃないの」

「だったら・・・あの遺影は・・・誰だって言うんだ」

「・・・」

「な・・・いい加減・・・前を向いてくれ」

「あの子のところへ行かなくちゃ・・・急がないとはぐれちゃう・・・」

思いつめた瞳は包丁を取り出す。

「ええっ・・・」

狂気と正気の間に刃物である。

魔王や朝倉先生は・・・腹を痛めたことのない経験不足からくるとりとめない女心への対処に屈するのだった。

そこへ・・・ポストが登場する。

「アイ・・・帰って来たのね・・・」

逆光の中・・・ありのままの姿を隠した天使は囁く。

「ママ・・・」

さいはての極みである。

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2014年2月26日 (水)

凶悪犯罪者も生きたまま逮捕・・・なんてキック・アス!(クロエ・グレース・モレッツ)

そこかよっ。

それにしても・・・ヒット・ガールを演じるクロエ・グレース・モレッツは当時11歳である。

それに対して芦田愛菜は現在9歳なのである。

天は物凄い才能を日本に与えている・・・。

それを生かすクリエーターもまあ・・・そこそこいたわけだが・・・。

私財を投げ打ったマシュー・ヴォーン(脚本・監督・製作)ほどのガッツはないんだな。

もちろん・・・こういう映画を作ればいいというわけではないが・・・。

自由って素晴らしいと思うよね。

で、『映画天国・キック・アス(2010年劇場公開作品)』(日本テレビ201402250159~)原作・マーク・ミラー(他)、脚本・ジェーン・ゴールドマン(他)、演出・マシュー・ヴォーンを見た。スーパー・ヒーローもののパロディーであると同時に、犯罪者に対する復讐劇でもある。復讐は物語の原点の一つでもある。たとえば、日本でも最も愛される物語と言えば「赤穂浪士」の他にはない。主君の仇を討つという復讐劇である。第二次世界大戦の最後の敗戦国として地球上のすべての国家から敵としてみなされた大日本帝国の後継者である日本国では戦後の教育によって「復讐を禁じられてきた」過去を持つ。東京大空襲、広島、長崎に対する原爆投下という・・・無差別殺戮を行った鬼畜米英に対してけして仇討ちを考えたりしてはいけない・・・というのが基本である。

まあ・・・もう少しで・・・そういう復讐について・・・実感するものも死にたえるわけである。

もちろん・・・多くの人々は・・・そういう戦争をした時代が悪かったとか・・・帝国そのものが間違っていたとか・・・様々な理屈をつけて復讐心を葬ったわけである。

その結果、人命尊重は基本理念として横たわり、犯罪被害者の遺族が復讐心を持つことも好ましくないことになっているということだ。

だが・・・そういう理念とは別に・・・愛する者を殺された人間が抱く情念は自然に青白い炎を燃やすものである。

そうでなければ・・・なぜ・・・赤穂浪士万歳になるのか説明がつかないのだ。

基本的に・・・管理者は復讐を好まない。

たとえば・・・キリスト教では復讐の権利は神のみにある。人間が復讐したりするのはおこがましいわけである。なにしろ・・・魔女を火炙りにしてきた宗教なので・・・魔女の遺族に復讐されたら困る・・・ということなのだな。

しかし・・・独裁者たちの憐れな末路が示す通りに・・・人間は基本的に復讐が大好きなのだと考える。

とにかく・・・「キック・アス」が表現する世界は・・・復讐心排除の洗脳に次ぐ洗脳で構築されたお茶の間にはものすごくなじまない。某仕置き人ドラマの第一条が「けして殺さないこと」で始る現代なのである。

米国の興業主たちでさえ金を出し渋った映画をオンエアしちゃう日本テレビ・・・万歳です。

ちょっとおタクな・・・デイヴ・リゼウスキ(アーロン・ジョンソン)はアメリカン・コミックのヒーローに憧れ・・・オリジナルのコスプレを発注する。やがて・・・ただのプレーではあきたらず・・・ヒーローとしての実践を開始する。

勇気の出ない若者の尻を蹴りだすのは大人の役目だが・・・管理社会で・・・見て見ぬふりこそが美徳となった現代では・・・自分で自分のケツを蹴るしかないのである。

だから・・・彼のヒーロー・ネームは「キック・アス(尻穴蹴り)」なのだった。

まあ、コスチューム・プレイをして高層ビルから飛び降りて墜落死するのもキックアス(いかれポンチ野郎)なのだが。

で・・・ちまちまと街の不良に注意して更生を促すヒーロー活動を開始したキック・アスはチンピラに刺され瀕死の重傷を負う。

それでも・・・彼はヒーローになろうと願う。

そういう素人の正義の味方のすぐそばには麻薬シンジケートの巨悪が横たわっている。

同級生のクリス(クリストファー・ミンツ=プラッセ)の父親・ダミーコ(マーク・ストロング)はそのボスだった。

ダミーコは殺人を犯すことに痛痒感を感じないが、子煩悩な父親でもある。

かって・・・ダミーコの仕掛けた罠にかかり・・・無実の罪で投獄された警官・デイモン・マクレイディ(ニコラス・ケイジ)は愛する妻を失い・・・残された一人娘・ミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)と復讐を誓っている。

そのために・・・ミンディは殺人マシーンとして教育されているのだった。

11歳の少女でもたやすく殺人ができるのが銃の威力というものなのである。

冒頭・・・防弾チョッキ着用の娘を近距離射撃で射ち倒す父親の猛特訓から・・・のどかな・・・おタク少年の妄想物語は・・・狂気の色彩を帯びていくのである。

キック・アスは意中の美少女・ケイティ(リンジー・フォンセカ)の頼みで・・・麻薬常習者の友人の借金の取り立てに向かう。

しかし・・・そこにいたのは本物のギャングたちであった。

護身用のアイテムでは太刀打ちできないギャングたちに取り囲まれ、絶体絶命のキック・アス。

そこに・・・必殺の武器を携えてヒット・ガールが出現する。

あっという間に・・・ギャングたちをみな殺しにするヒット・ガール。

そして・・・ギャングたちの所持金を奪って退散するのだった。

もちろん・・・その正体は・・・復讐の鬼と化したビッグ・ダディに仕上げられた11歳の少女・ミンディなのである。

もちろん・・・日本でも時代劇なら「あずみ」があるが・・・現代劇で少女が悪い大人をぶっ殺しまくる爽快感は・・・実にキック・アス(ぶっとび)なのだった。

やがて・・・悪の帝王ダミーコは・・・キック・アスを敵と認知するが・・・人気者となったキック・アスのコスプレが流行し・・・本物を見抜けないという事態が発生する。

そこで父親思いのクリスが一計を案じる。

自らがレッド・ミストというコスプレ・ヒーローとなってキック・アスのサイドキック(相棒)として名乗りを上げるということである。

まんまと釣りあげられるキック・アス・・・しかし・・・孤独だったクリスとデイヴの間には友情めいた感情が芽生える。

しかし、ダミーコの麻薬帝国の壊滅を目指すビッグ・ダデイとヒット・ガールは先手を打って手下たちを殺戮するのだった。

追い詰められた父親を救うためにレッド・ミストは・・・キック・アスを餌に・・・父と娘を釣りあげることに成功する。

レッド・ミストはキック・アスの助命を願うが・・・ダミーコは息子の願いを一蹴する。

素晴らしいインターネットの世界で公開処刑されるビッグ・ダデイとキック・アス。

しかし・・・身を潜めていたレッド・ガールは暗視装置を使ってギャングたちを殺戮する。

だが・・・一瞬遅く、放火されたビッグ・ダディは娘の前で焼け死ぬ。

「あんたがドジだから・・・パパが死んじゃった」

「・・・」

「責任取ってよね」

こうして・・・キック・アスは真のヒーローになる覚悟を求められる。

それは・・・ガトリング砲やロケット弾で・・・悪人たちを殺して殺して殺しまくることだった。

ついに・・・キック・アスはヒット・ガールとともに・・・悪人たちを殺して殺して殺しまくるのだった。

万歳である。

そして・・・悪の帝国でただ一人生き残った・・・レッド・ミストこと・・・クリス。

続編公開中である。

誰が何と言おうともその痛快さ・・・キック・アス(半端ねえ)のだった。

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2014年2月25日 (火)

死者(大野いと)と生者(橋本愛)の心と心が今はもう通わない~ツナグ(松坂桃李)

口寄せの話である。

死者の言葉を聞きたいというのは不思議な感情である。

つきつめていえば「ないものねだり」に属するのだろうか。

この世から去って行ったものを呼びだして語り合う。

そんなことをしても虚しいだけではないのか・・・と悪魔は思うがそれを言ったらおしまいなのである。

「不慮の死」を遂げたものに問いただしたいことがある。

生きている人間の邪な思い・・・。

「永遠の眠り」を妨げられて不快な気分になる死者はいないのか。

寝起きの悪い悪魔はついそう思う。

なんで・・・起こすんだよ・・・せっかく眠っていたのにと。

で、『金曜ロードSHOW!・ツナグ(2012年劇場公開作品)』(日本テレビ20140221PM9~)原作・辻村深月、脚本・監督・平川雄一朗を見た。今、気がついたのだが平川雄一「朗」なんだな・・・ずっと、雄一「郎」で記述していた気がする。訂正するのが面倒なのでここでお詫びしておきます。それが謝罪する人間の態度かよっ。・・・悪魔でございます。

ツナグ一族の高校生・渋谷歩美(松坂桃李)は生者と死者を一夜だけ再会させる機能を持つ先祖伝来の銅鏡の継承者として、祖母の渋谷アイ子(樹木希林)から秘義伝授の修行の日々を送るのだった・・・まあ、ちょっとニュアンス違うけどな。

もっともらしく伝授されているが・・・ちょっとした作業手順のミスで歩美の両親(別所哲也・本上まなみ)を死亡させてしまう魔鏡である。取り扱いは慎重にマニュアル通りにしないといけないわけだが・・・そんなもの・・・よく今まで伝承されてきたなと思わずにはいられないのだった。

で・・・後はオムニバスである。死んだ母(八千草薫)に会いたいマザコン息子(遠藤憲一)とか、ティファニーで朝食を食べそこなった怪しい恋人(桐谷美玲)ともう一度やりたい男(佐藤隆太)が登場し、死者と一夜を共にすることで・・・それなりに充足する。

ちなみに・・・死者は何故かホテルの一室に実体化し、夜明けまで一人の人間と面会ができるシステムである。

おそらく、お試しシステムなので・・・死者も生者も一回しか使用できないルールになっている。

もちろん・・・この世の理に反したシステムなので「綺麗事ではすまない」場合もあり・・・それが・・・未必の故意による殺人者である女子高校生・嵐美砂(橋本愛)と被害者で嵐の親友の御園奈津(大野いと)の再会となって表現される。

ものすごく、狭い世界の話なので・・・二人はツナグこと歩美の同級生である。

さらに・・・歩美は二人のそこはかとない初恋のターゲットでもあります。

高校の演劇部に所属する・・・嵐と御園。勝気な嵐と引っ込み思案の御園は親友同士であった。しかし、消極的な娘の将来を案じた御園の母親(浅田美代子)が娘を唆し、卒業公演の舞台「櫻の園/アントン・チェーホフ」(原作では「鹿鳴館/三島由紀夫」)の主役に名乗りをあげさせたことで・・・亀裂が生じるのだった。御園と争い主役の座を奪われたと感じた嵐は通学路の坂路に散水して御園に怪我をさせようと目論むのだが・・・計画は上手くいきすぎて御園は事故死してしまうのだった。失われた友情への喪失感と罪悪感に悩む嵐はついにツナグとコンタクトをとるのである。

まあ・・・ここから普通にスーパー・ナチュラル・ホラーの世界になります。

そして・・・穏やかで清楚な感じとともに・・・ちょっとおっとりしすぎの憐れな死者・御園と・・・嫉妬深く高慢ちきだけれども・・・本当は普通の女の子だった嵐とのガールズ・トークの幕開けです。

何故か・・・ずっと、ナイフでリンゴの皮をむき続ける御園。

うっかり殺してしまったことを謝罪したいけれど・・・それが逆に御園を傷つけてしまうのではないか・・・友情にヒビが入るのではないかと案じる嵐。

殺されたことを知っているのか、それを怨んでいるのか・・・まったく態度を明らかにせずに友情の復活を喜ぶ風の御園。

ただならぬ緊張感のただよう美少女の共演にうっとりです。

いや・・・もう・・・それだけの映画といっても過言ではない。

挿入される・・・演劇部のオーディションや、路面に加害者の嵐が散水している現場を被害者の御園が見ていたかのような幻影、葬儀における母親の恨み節・・・そして晴の舞台公演・・・。

嵐の心理描写として多用される回想シーンが・・・混然一体となって死者による復讐劇の開幕を予感させるのですが・・・ついに開幕のベルはならないという苦い後味を残すことになります。

泣いてらっしゃるの、嵐? 

いとしい、親切な、やさしい、嵐。

わたしの大事な嵐、わたしあなたを愛していますわ。

わたし、お祝いを言いたいの。

「櫻の園」は売られました、もうなくなってしまいました。

それは本当よ、本当よ。でも泣かないでね、嵐、あなたには、まだ先の生活があるわ。

そのやさしい、清らかな心もあるわ。

さ、一緒に行きましょう、出て行きましょうよ、ねえ、嵐、ここから! 

わたしたち、新しい庭を作りましょう・・・。

ああ、わたしのいとしい、なつかしい、美しい御園! 

わたしの生活、わたしの青春、わたしの幸福、さようなら! 

さようなら! 

「路面は凍っていなかったよ」と御園に告げられた時、嵐は発狂したのだと考えます。

一言で言えば少女趣味の極みですな。

寸止めなんだもんね。

B級ホラーなら嵐はホテルの一室で自殺という結末だもんね。

ナイフが胸に刺さっているんだもんね。

そして、原作殺しと叩かれるんだもんね。

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本日は大安なり

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2014年2月24日 (月)

孫子・計篇に曰く、兵者詭道也・・・と軍師官兵衛篇は織田信長篇に合流(岡田准一)

つまり、支流が本流に合流してここから大河ドラマ・・・なのですな。

で、「孫子」の「計篇」からの引用である。

「計篇」は「孫子十三篇」の冒頭の一篇である。

「戦争は国の大事であるので・・・慎重に事を進めなければいけない。そのために五事七計が重要となる」

孫子では戦争の内容を分析するためのいくつかの指標をあげて・・・その大略を述べている。

その後で・・・戦争の本質を一言で示したものが・・・「戦争(兵)は策略(詭道)である」という言葉なのである。

まあ・・・身も蓋もないと言えばそれまでである。

後段はこう続く。

「準備万端が整っているのに準備不足のふりをしたり、すでに敵ののど元に刃を突きつけているのに平和的にふるまい、頭をなぐるとみせかけて急所を刺すのだ」

つまり・・・卑怯とか汚いとかは敗者の戯言ということである。

「おい、お前、試験勉強した?」

「してねーよ」

・・・というのが孫子の兵法の基本です。

で、『軍師官兵衛・第8回』(NHK総合20140223PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回の画伯は三十八行・・・おっ・・・少しだけ持ちなおした~。秀吉とおねのなんだかんだがややうけでございますかーーーーっ。しかし、今回は・・・すでに永禄四年(1561年)頃、死亡したと推定される武田の軍師・山本勘助(風林火山ヴァージョン)描き下ろしイラスト大公開で・・・お得なんだかどうだか不明でございますーーーーっ。一同大爆笑ですな。だから・・・プライベートな一同爆笑はコメント欄でやれと何度言えばっ。しかし・・・あくまでマイペースでお願い申し上げます。

Kan008 天正三年(1575年)五月、長篠の戦いで織田・徳川連合軍が武田勝頼を撃破。七月、小寺官兵衛、岐阜へ。・・・お、時の流れが止まった。夏の美濃国岐阜城下から夏の近江国長浜城下へ・・・西播磨国代表として小寺政職が織田家に誼を通じ、全権委任大使として小寺官兵衛は織田信長に拝謁。播磨国方面軍司令官として羽柴秀吉任命であるか。長篠の戦いで敗北した武田勝頼のために武田軍は敗色の兆し。設楽原から引き上げた織田信長軍は岐阜城で先勝祝いの際中である。なお、武田信玄の死はまだ秘されているが・・・主だった戦国大名には筒抜けだった。徳川家康軍は遠江国二俣城方面に攻勢をかける。長尾顕景は上杉景勝に改名、謙信より弾正少弼を譲位。北条氏政も小山秀綱の下野国祇園城を攻め落とした。美濃国岩村城の武田軍所属・秋山虎繁・織田つや夫妻の命は風前の灯となる。信長・嫡男・信忠は包囲戦に突入。岩村城落城後、夫妻を長良川の河原で逆さ磔の極刑に処す。一説によれば信忠は大伯母おつやの助命を嘆願したが聞き入れられなかったという。岩村城攻城中の八月、信長は兵三万による越前一向一揆平定戦を開始する。参戦武将は・・・佐久間信盛、柴田勝家、滝川一益、羽柴秀吉、明智光秀、丹羽長秀、簗田広正、細川幽斎、原田直政、蜂屋頼隆、荒木村重、稲葉良通、稲葉貞通、氏家直昌、安藤守就、磯野員昌、阿閉貞征、阿閉貞大、不破光治、不破直光、武藤舜秀、一色義定、粟屋越中守、逸見駿河守、織田信孝、津田信澄、織田信包、織田信雄などである。

つまり、官兵衛の岐阜訪問は・・・長篠の戦いと岩村城包囲戦、そして越前一向一揆平定戦の間隙を縫って行われています。

なお、近江国小谷城から長浜城は城下そのものが引っ越し中で物凄い修羅場になっています。

「播磨国・小寺官兵衛殿」

「であるか」

播磨国の地図と「中国攻略の策」を献上し、お土産に名物「圧切長谷部」(国宝)をもらった官兵衛は栗山善助、母里太兵衛、井上九郎右衛門ら少数の家来とともに、取次(上司)となった羽柴秀吉の領地・近江国長浜城を訪れる。

案内役はすでに死相の浮かぶ石田佐吉だった。

琵琶湖湖畔の長浜城下は大賑わいである。

「いかがですやろ」

「なんとも祭りのようでござるな・・・」

「わが殿(秀吉)が滅ぼした浅井家の小谷の城をつぶして、城下町ごとこの地に移築しておりますのや」

「城も町もでござるか」

「そうです。石も木も解体して運搬し組み立て直します」

「はあ・・・」

「織田家の武将は皆、建築が得意なのです」

「工事は来年までに終わらせますが、秋には越前攻めの戦がありますので・・・戦支度を急ぐ必要があります」

「越前を・・・」

「本願寺門徒がうるそうてかないませんからな」

「一向一揆でござるか」

「そうです。上様(信長)の戦は年中無休でかないませんわ」

「年中無休・・・」

「そうです・・・天下布武の日程に滞りがあってはならぬのですわ」

「日程・・・」

「はい・・・春は遠江、秋は越前ですわ。おそらく播磨は来年か、再来年になるのとちゃうやろか」

「え・・・」

「ま、我が殿におまかせあれば大船にのった気持ちで祝着のことと存じます」

「・・・」

官兵衛一行は秀吉に歓待された。

その宿に女旅芸人が忍んでくる。くのいちのお国だった。

「国元はどうか・・・」

「毛利と織田の忍びが暗躍して・・・にぎやかでございまする」

「そうか・・・」

「播磨の忍びなど・・・なかなか・・・手を出せませぬ・・・」

「手出しは無用だ・・・黒田の忍びも伊吹の忍びもしばらくは大人しくしているがよかろう」

「勘兵衛様も痛い目に遭いましたな」

「うむ・・・黒田忍びを岐阜城下に放ったが全員・・・戻って来ぬ」

「ここでもお控えあそばされ」

「秀吉殿も忍びか・・・」

「猿飛佐助の名を知りませぬか・・・」

「なんと・・・そんな・・・」

「長浜は・・・名うての真田忍軍で満ちておりまするぞ・・・」

「そうか・・・それでは武田に勝ち目など最初から・・・」

「・・・あ」

すでに官兵衛の身体はお国の中にある。

長浜の夏の夜は更けていく。

天正三年、真田昌幸の側室・菊の父・尾藤(宇多)頼忠はすでに羽柴秀吉の配下となっている。

尾藤(尾張の藤原氏)一族は小笠原、今川、武田と渡り歩いた信濃忍びの一族である。

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天地人の天正三年

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2014年2月23日 (日)

愛と青春の平行世界(中村蒼)愛と宿命の多次元宇宙(桜井美南)愛と幻想のパラレルワールド(本郷奏多)

「時間旅行」と「平行世界」はカップルのようなものである。

「七瀬ふたたび/筒井康隆」に登場する時間遡上能力者は・・・同時に平行世界移動能力者でもある。

これは「親殺しのパラドックス」を「多次元宇宙」が解決するという展開である。

つまり、過去に戻って自分が生まれる前の親を殺せるか・・・という問題の一つの答えである。

殺せる場合は・・・親が死んで自分が生まれない世界と親が生きて自分が生まれる二つの世界が同時に存在するということになる。

問題を解決するために過去に遡上したとしても最初の世界と二度目の世界が存続していくということだ。

そっくりだが少し違う世界というものは妄想の原点でもある。

もしも自分が浅田真央だったらショートでも失敗しないと思うようなことである。

アリスが左右が違うだけで基本的に同じの鏡の国に旅立つようなものである。

「鉄腕アトム/手塚治虫」の原点である「アトム大使」には広大無辺な宇宙には地球そっくりの惑星がありえるという発想で「もう一つの別の世界」が登場する。二つの地球の微妙な違いが物語を展開していくのだった。

太陽の裏側に地球そっくりのもう一つの惑星があってお互いが常に太陽の影に隠れているために気がつかないという話もある。

量子力学で多世界解釈が生まれると・・・平行宇宙は無限の時空に拡大する。

まず・・・無の宇宙があり、無のままに無限の数だけ宇宙が存在する。その中から最小の時間の中で有が生まれ、それがまた無限の数だけ存在する。その有の宇宙から無に転ずる宇宙があってそれがまた・・・。

このように宇宙の中に宇宙がぎっしりとつまるのである。

その中でD8世界とD12世界はほんの僅かで全く違う世界として隣接している。

D12世界にはD系の誼があり、12系の誼もある。そういう意味でT12世界はT8世界の侵略を受けやすい。またT12世界がD8世界の侵略を受ける可能性も高い。

R18は禁断の世界と呼ばれるのだ。

何を言っている。

まあ・・・とにかく、あなたが朝、トーストにイチジクのジャムを塗った世界と、ごはんに納豆をのせた世界はどちらも無限個存在し、あなたが一瞬前に日本が沈没し、一瞬後に日本が沈没する世界の間に生きていることは間違いないのである。

そういうことが根本的に分らない人には・・・このドラマの面白さは半減すると断言できます。

で、『・第7回』(テレビ東京201402220012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。D12世界で移住者たちが朝焼けを見ている頃、T12世界ではD8世界からの侵略者が夜明け前のミーティングを開いていた。王妃(りりィ)の手術は無事に終了し、アスカ姫(杉咲花)は粗末なシャワーを浴びて対放射能防護シールドを洗浄する。短期限定仕様のアステロイドとなった冴木(碓井将大)たちは侵略者たちに粗末な食事を用意する。王家の継承者であるアスカ姫とその侍従官であるアゼガミ(中野裕太)とスズシロ(佐藤乃莉)は山沢典夫ことモノリオ(本郷奏多)と食卓を囲むのであった。

アスカは枯れた一輪の花に目を止める。

「これは・・・」

「花でございます・・・もう枯れてしまいましたが・・・」

「枯れた・・・花」

「モノリオ・・・それにしてもここは狭すぎるな」とアゼガミ。

「ここを拠点として選んだのは・・・王家の発祥の地であるここが・・・次元回廊の出口として非常に安定していたからです」

「しかし・・・もう少し、拡張してもよかったのではないか」

「王家護衛官の立場としてはこれ以上のフィールド警備の余裕がないと申し上げるしかありません」

「とにかく・・・前進基地としてはこれが限界ということか」

「限られた時間と物資ではこの状態が最適と判断しました」

「・・・」

その時、江原老人(ミッキー・カーチス)の部屋の呼び鈴がなる。

香川みどり(桜井美南)が来訪していた。

「香川みどりです・・・追い払いましょうか」とモノリスのマギに制御された江原老人がモノリオに問う。

「いや・・・僕が応対しよう」

みどりは花束を持っていた。

「おはよう・・・これ、おみやげ・・・ほら、うちは花屋だから」

「ありがとう」

「具合はどう・・・」

「具合?」

「身体の調子・・・」

「特に問題はない・・・」

そっけないモノリオの態度にじれるみどり。

幼馴染には告げられた率直な気持ちがなぞの転校生には告げられない。

そのもどかしさが胸を打つ。

「今、少したてこんでいる・・・用件があるなら・・・また今度・・・」

「ううん・・・別に用はないの・・・ちょっと心配だったから」

「君に心配をかけるようなことはない」

「そう・・・明日は学校に来る?」

「まだ・・・わからない」

「・・・それじゃ、また」

「お花をありがとう」

扉は閉じられた。

みどりは物憂い表情で部屋を後にする。

高校生・岩田広一(中村蒼)は倦怠感に包まれてベッドにいる。

幼馴染に告白して瞬殺されたことが広一の胸をふさいでいる。

「何も・・・やる気がしない」

好きな女の子がなぞの転校生に花束を贈ったことにも気がつかないうかつな広一だった。

モノリオに贈られた花束はそのまま、アスカに捧げられる。

「これは・・・」

「この世界の花でございます」

「美しいな・・・」

「この世界には花が満ち溢れています」

「香りが・・・」

その時、突然、江原老人はモノリスのマギの恩恵を失い・・・正気に・・・ただの認知症の老人に戻る。

「うわ・・・なんだ・・・おまえたちは・・・なんだ・・・」

「無礼者」とスズシロは立ち上がり、江原老人を暴力で鎮圧する。

「すみません・・・モノリスのリミットが来たようです」

「なぜ・・・そんなしくじりを・・・」ととがめるアゼガミ。

「モノリスのストックがつきかけております」

「このものたちは大丈夫なのか」

「彼らはアステロイドです」

「なんと・・・そんなものを姫殿下の御前に・・・なんという不始末の極みじゃ」

「彼らは必要な員数でございます」

「・・・」

「お二人には打ちあわせしたいこともあり、この地の偵察を具申いたします」

「偵察か」

「紫外線が有害ですので日傘をご用意ください」

三人は屋外に出た。

「姫様の御前では申せぬことがあるようだな」

「物資が不足しております」

「そうか・・・」

三人はカフェに入店する。

「なんと・・・贅沢なことだ・・・」アゼガミはコーヒーを味わった。

「遺伝子治療のデータの手配はいかがなりましたか」

「後続部隊次第だ」

「それでは王妃様が・・・」

「わかっている・・・」

「安楽死の処置の準備は出来ています」

「そのようなこと口にするでない」とスズシロ。

「申し訳ありません。ヒューマノイドの口の汚れとお見過ごしくだされますように」

「・・・」

モノリオは人間ではなく、人造人間だったらしい。

「もう一つ、あの集合住宅の隣室にはナギサ様のアイデンティカがおわせられます」

「なんだと・・・」

「それは・・・まことか」

「はい・・・DNA鑑定は終わっています」

「すると・・・この世界の王家は・・・」

「王家は別にございます」

「ナギサ様のアイディンティカは・・・何者だ」

「岩田広一という一般市民でございます」

「ナギサ様のご家系は・・・」

「岩田広一の両親は・・・ナギサ様とご両親とは対応しません。突然変異体と推定されます」

「DNAのシンクロによるミュータントか・・・しかし・・・それならば周辺に類似体がありそうなもの」

「この世界ではアスカ様のアイディンティカは岩田広一の妹で・・・すでに死亡しています」

「なんと・・・アスカ様とナギサ様が・・・妹と兄で発生したのか・・・」とアゼガミ。

「それでは・・・アスカ様と・・・この世界のナギサ様の結婚は不可能なのか」とスズシロ。

「いや・・・そもそも・・・異世界のアイデンティカには法的拘束の根拠そのものがない。ご交配に何の問題もない」

「おぞましい・・・神がお許しくださいましょうか」

「もはや・・・神は死んだと言えよう・・・我々にできるのは・・・王家の存続と国家の復興・・・それのみだ」

「補給部隊はいつ到着するのです」とモノリオが問う。

「わからん・・・来るとも来ないともわからん」

「しかし・・・モノリオのストックが底をつけば、皆さまをお守りすることに支障が生じます」

「我々のことはいい・・・王妃様と・・・アスカ姫を・・・いや・・・アスカ姫をお守りすることがお前の絶対的な使命とこころえよ・・・」

「こころえました」

その頃、江原老人は再び、正気を取り戻し、部屋を脱走し、隣室に飛び込む。

「どうしたの・・・江原さん」と広一の母(濱田マリ)が応じる。

「いるんだ・・・たくさん・・・いる・・・あいつがいる」

「幻覚だろう・・・僕が一緒に行って・・・誰もいないと確認すれば落ちつくと思うよ」

広一は江原老人とともに江原家に戻る。

しかし、そこには無数の人々が実在した。

「え・・・」

「いるだろう」

「そんな・・・」

「こいつら・・・こいつら」

アステロイドたちは江原老人を抑えつけ麻酔をかける。

広一の心にようやく恐怖が芽生える。

しかし、逃げようとした足がもつれ・・・彼らに確保されてしまう。

「こいつは誰だ」

「岩田広一だ」

「冴木先輩・・・助けてください」

「どうする」

「逃がすわけにはいかないようです」

「眠らせよう」

「やめて・・・助けて・・・」

そこへ騒動を聞きつけたアスカが現れる。

「何事です・・・あ」

「ええっ」

アスカは見た・・・おそらく異次元世界でアスカの婚約者であったと思われる王族の一人、ナギサにそっくりな広一を。

広一は見た・・・死んだ妹にそっくりなアスカを・・・。

「ナギサ様から手を離しなさい」

アスカに命じられた奴隷たちは手を引く。

広一は恐惶に駆られる。

「ゆ・・・ゆ・・・」

広一は無我夢中で江原家を飛び出し・・・岩田家に逃げ込む。

「どうしたの・・・」と母。

「ゆ・・・ゆうれいが・・・かあさん・・・ゆ・・・かあさん、ゆうれいがいたかあさんかあさん」

「落ちつきなさいよ」

しかし・・・震えが止まらない広一だった。

その時、江原家に三人が戻ってくる。

「何事だ・・・」

「江原がまたコントロールを失いました」

「馬鹿な・・・リミットにはまだ余裕がある」

「しかし・・・」

「そうか・・・」

モノリオは原因に気がつく。

「どういうことだ・・・」

「このモノリオは・・・他者に影響されています」

「なんだと・・・」

「この世界の人間のコントロールに失敗したことがあり、バグだと思っていたのですが・・・どうやら・・・想定外の事態が起きたようです」

「どういうことだ」

「このモノリスは何者かによってデータを書き換えられています。今、それを解析中・・・解読に失敗・・・再試行・・・解読に失敗・・・データを分離、削除・・・成功しました」

「モノリスに関与だと」

「この世界に我々以外の何者かが先着している可能性があります」

「敵か・・・」

「わかりません・・・」

「とにかく・・・状況を修正せよ・・・」

「わかりました」

モノリオは岩田家を訪れた。

「江原さんのお孫さんよ」

「・・・」

「やあ・・・びっくりさせたみたいだね」

「・・・」

「実は、親戚にテレビ局の人間がいて・・・今日はドラマを撮影していたんだ」

「ドラマ・・・」

「おじいちゃんはそのことをすっかり忘れていたみたいで・・・」

「・・・」

「とにかく・・・おどかせてすまなかった・・・」

広一の母は笑う。

「まったく・・・気が小さいんだから・・・」

「でも・・・幽霊が・・・妹の幽霊が・・・」

「君の妹さん・・・?・・・そんな小さな子はいなかったと思うけれど・・・」

広一は我に帰る。

そうだ・・・確かに夢に出て来た妹の姿に似ていたが・・・妹はもっと幼くして死んでいるのだった。

「・・・」

広一は不可解な気持ちを残したまま、微笑みを浮かべたモノリオを見送る。

「おかしいぞ・・・やはり・・・変だぞ・・・あいつは変だ」

モノリオは隣室に戻る。

「調整できたのか」

「ドラマの撮影ということにしておきました」

「ドラマ?」とアスカが質問する。

「姫様はドラマをご存じありませんか」とスズシロ。

「おいたわしや・・・」とアゼガミ。

「お目にかけましょう」

モノリオはアスカにドラマを見せた。

「なるほど・・・芝居の記録のようなものか」

「で・・・ございます」

「戦前にはD8世界でもこのようなものが作られていたのです」

アスカはドラマの中の光景に興味を示す。

「これは・・・どこか」

「学校の教室です」

「学校・・・」

二人の侍従はそっと涙をぬぐう。

王家に生まれながら花もドラマも学校も知らぬアスカが憐れであったのだ。

「すべて・・・戦争が悪いのです」とスズシロは呟いた。

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2014年2月22日 (土)

母ちゃんの誕生日会をパスするのはともかくとして闇カジノでバカラ賭博をするのは犯罪です(山田孝之)

バカラに賭けるのはバンカー(胴元)でもプレイヤー(客)でもなくギャラリー(観衆)である。

そういう意味ではスポーツ賭博の原点とも言えるだろう。

オリンピックの花形たちが人生を賭け勝負する舞台に「見果てぬ夢」を賭けて関心を寄せるお茶の間の皆さんは「感情移入」というリスクを背負う。

郷土愛や・・・国家愛・・・境遇など・・・様々な要素を重ね合わせ・・・ありえないようなテクニックを披露するスターにうっとりするのである。

その結果、ものすごい失望やものすごい歓喜を味わうことになる。

人間は概ね、幸せな生き物だと感じる。

で、『ウシジマくん Season2・第6回』(TBSテレビ201402210058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・遠藤光貴を見た。ソチ冬季五輪のフィギュア・スケート・女子フリーの浅田真央(ショート16位)滑走の真裏のオンエアである。まさに・・・光と影の交差点だな。ここから6位入賞を果たす浅田真央は駅伝なら10人抜きの快挙だが・・・ある意味、自作自演である。おバカな森元首相が失言するのも御愛嬌である。ロシアが謎のビームを放ったという陰謀説もあるがまあ・・・要するに自滅なのであった。しかし、全力を出して銅メダルも微妙な結末でございます。筋書きのないドラマの凄みを感じる。

「モラル・ハザード」という言葉をドラマでこれほど的確に使う例も珍しい。

「自己破産をしたい」というダメ人間・宇津井(永野宗典)に弁護士(横山利彦)が応じる。

「借金の理由はなんですか・・・なんでもかんでも自己破産というわけにはいかないんですよ・・・ある程度、信用がないとモラルハザードが生じますから」

モラル・ハザードは直訳すれば「あるべくしてある教訓」というようなものである。

「外回りの営業マンが仕事中に一服することを止める術はない」ということだ。

これを経営戦略的に突き詰めると、「リスクを追わないマネージャー(支配人)はオーナー(金主)に対してハイ・リスクでハイ・リターンを目指す傾向がある」ということになる。

原子力ビジネスに換言すると恐ろしいことになるわけである。

そんなこんなで拡大解釈の得意な列島の人々は・・・モラル・ハザードを・・・「倫理観の欠如」というレベルにまで引き上げてしまうのである。

弁護士は「安易に自己破産を使うと・・・いざとなったら自己破産をすればいいという風潮が生まれ、しなくてもいい人までが破産することになる」という警告として「モラル・ハザード」を使用しています。まあ、自動車事故保険の加入率が増加すると自動車事故が増えるという展開ですな。

ウシジマくん(山田孝之)が一瞬でも正しい人間に見えるのは・・・たとえば金主(プリンシパル)である大原(徳井優)に対して経営者(エージェント)としてモラル・ハザードについて危惧させないように努力している姿勢があるから・・・と申せます。

もちろん・・・ウシジマくんはボス(プリンシパル)として・・・柄崎(やべきょうすけ)や高田(崎本大海)という手下(エージェント)を「モラル・ハザード」的に厳しく監視し、締め付けることも忘れないのだ。

そんな・・・冷たい視線を受けながら、おしゃれをアピールする柄崎から・・・思わず視線をそらす「カウカウファイナンス」受付事務の摩耶(久保寺瑞紀)である。

とにかく・・・ウシジマくん、柄崎、高田、摩耶は・・・闇金融という犯罪に手を染めるチームです。

高田の元ホスト仲間・隼人(武田航平)が持ちかけて来た「絶対に怪しい投資話」から順当に配当が送られてくる。

そこでウシジマくんは「次は一千万円」とプッシュを重ね、柄崎は「俺も五百万円」と乗る。

ウシジマくんの無謀な投資に高田は不安を感じるのだった。

しかし・・・ウシジマくんは情報屋の戌亥(綾野剛)に隼人のケツモチ(背後関係)を調査させているのだった。

騙し騙される瀬戸際の応酬なのである。

柄崎は臨時収入に気をよくして闇カジノのバカラ賭博に入れ込み始める。

バカラでは一番の大賭けしたものにカードをしぼる(めくる)権利が与えられる。

絞り続ける柄崎はギャンブル依存の危険領域に足を踏み入れつつあるらしい。

駄菓子屋の戌亥の話から・・・ドラマの世界では戌亥や柄崎はウシジマくんの幼馴染であることがわかる。ウシジマくんの中に優しさがあるのか・・・単に非情なのかは謎に包まれる。きっと最後まで謎のままだろうと考える。

ウシジマくんのアドバイスによって危機を脱したジュリア(佐々木麻衣)が利息を払いに来て礼を言う。

「ありがとう」

「困ったことがあったらいいなよ」

ジュリアが去った後で高田がつぶやく。

「社長・・・優しいですね」

「バカ」と柄崎が言う。「上客を守るのは当然のことだろうが」

「ジュリアを絞りつくすためにはうるさいハエは追い払う・・・それだけだ」とウシジマくん。

高田は自分の甘さを思い知るのだった。

高田は元ホストとして・・・女心をつかんだ取り立てが信条である。

いつものパチスロ屋で拾った主婦・吉永美代子(亀谷さやか)を新規の客とする。パチンコ依存症で出会い系サイトの売春で資金を稼ぐダメ人間である。

パチンコ台につぎ込むために・・・ホテル代込一万円で身体を売り、たまに儲かると一人カラオケで散財してしまうという底抜けにダメな感じである。

「顧客を管理できているのか」

「はい・・・大丈夫です」

しかし、行方不明となる吉永美代子。

「大丈夫じゃねえじゃなねえか」

「・・・」

高田を鉄拳制裁するウシジマくんだった。

高田はまたもや自分の甘さを思い知るのだった。

生きててよかった

そんな夜を捜してる

しかし、そんな夜はこない宇津井はアルバイト先で腰を痛め、ただちに派遣先から解雇される。優しい言葉をかけてくれたゲストハウスの管理人の幸(絵美里=2009年ミス・ユニバース・ジャパン宮坂絵美里)は宿泊費の滞納をデポジットから規則通りに引き、それが尽きると容赦なく宇津井をゲストハウスから退去させるのだった。

「もう・・・家に帰るしかない」

しかし・・・宇津井の実家はすでにないのだった。

ダメ人間には死んだ方がよかった・・・そんな夜が訪れるのだった。

柄崎はついに母親の誕生日を祝うことも忘れるほどにバカラにのめり込む。

闇カジノの柄崎に母からの着信がある。

「母ちゃん、ごめんな。今日、残業で帰れない」

「いつから・・・お前の本業はカードしぼりになったんだ」

柄崎の母親の誕生日会に出席のウシジマくんだった。

その宴のあとで・・・海を見に行くウシジマくんと柄崎。

「いくら・・・すったんだ」

「五十万円です・・・まあ・・・投資で取りかえしますよ・・・五十万円なんて鼻紙っす」

「じゃあ・・・五十万円貸せよ・・・鼻をかむから」

「・・・社長」

「お前・・・たるんでるんじゃねえか・・・五十万円が鼻紙であるわけないだろう」

二人で飲んだ缶コーヒー代も割り勘で徴収し、教育的指導をするウシジマくんだった。

柄崎・・・やばいよ・・・鉄拳制裁の価値がないポジションまで落ちてるよと手に汗握るお茶の間だった。

警察の職務質問のピンチを乗り切った中田広道(入江甚儀)・・・。

憧れの人気読者モデル・パピコ(紗倉まな)と一夜を共にしてオサレエンペラーへの道を突き進む。

幼馴染のキミノリ(三澤亮介)との友情も復活し・・・読者モデルとしても脚光を浴びる。

しかし・・・その資金源はものすごくヤバイ薬物の密売なのであった。

そんな広道の耳に入る「パピコは誰とでも寝る女」という噂・・・。

そして・・・広道の目の前で・・・パピコはオサレ仲間の悠馬(植田恭平)とラブホテルに消えるのだった。

広道に迫る破滅の足音が聴こえてくる・・・。

だが・・・もう・・・前へ進むしかない広道。

もちろん・・・ウシジマくんにすべてを搾りとられるために・・・。

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2014年2月21日 (金)

君(多部未華子)が僕を抱きしめた時間(三浦春馬)

ふたつに切り裂かれた心。

やめようと思った時にやめなかった人。

あきらめようとしてあきらめなかった人。

忘れ物をとりにきたのにまた忘れ物をしてしまう人。

人は置き去りにした自分自身に再会してとまどうことがある。

何のために・・・誰のために・・・自分がそこにたっているのか・・・わからなくなる瞬間。

ここはどこ・・・わたしはだれ・・・と尋ねても・・・誰も答えてはくれない。

そういう心の揺らぎを丹念に描く脚本家。

そして・・・蹲るように演じる女優。

こらえにこらえてあふれだす涙。

で、『僕のいた時間・第7回』(フジテレビ20140219PM10~)脚本・橋部敦子、演出・城宝秀則を見た。恵(多部未華子)は拓人(三浦春馬)から理不尽なふられ方をしたが・・・それが理不尽ではなかったことを知ってしまう。繁之(斎藤工)との現実的な生活と・・・事情を知っていた繁之への幽かな嫌悪。そして、押さえようとしても押さえられない拓人への未練。その揺らぎを中心に・・・拓人の病気を知った途端にすべてを察する恵の母(浅田美代子)と異常に察しの悪い拓人の母(原田美枝子)との対比・・・表現力のない拓人の父親(小市慢太郎)・・・そして、病的な自己中心性を示す・・・まあ発達障害という考え方もあります・・・弟・陸人(野村周平)・・・さらにコミカルな普通のカップル・陽菜(山本美月)と守(風間俊介)・・・すべての登場人物たちが・・・拓人のやがて来る時を見守るスムーズな展開である。この手の話となると本当に上手いなあ。

僕には後、どのくらい時間が残されているのだろうか。

もちろん・・・昔の僕から見れば僕の時間は終わったも同じ。

でも、今の僕は・・・まだできることがある。

弟の心の病気は・・・病気と名付けるのが難しい。

しかし、病気でないとすれば・・・弟はひどく悪い奴になってしまう。

病気というのは健康な人から見れば悪いことかもしれないが・・・病気でなければ悪いことになるっていうのもおかしな話だ。

だけど・・・単にわがままなやつと・・・病気でわがままなやつとでは・・・きっと違うってことなんだな。

そういう優しい社会が優しすぎて病気を増やしているのは確かなことだけれど・・・どっちがいいとか悪いとかじゃなくて少しずつ・・・そうなっていった・・・ただそれだけのことだよね。

去年、日本は中国に一兆円も儲けさせてあげたみたいだけど・・・お客様扱いされないのは理不尽だとも思うけど。でも・・・中国産のピーナッツしか買えない経済力の日本人は中国のおかげでピーナッツが食べられる。些少、健康に悪いかもしれないけど、そのことには感謝するべきなのかもしれない。まあ・・・そうやって良くも悪くも世界はつながっているんだよね。

弟には他人の気持ちが分らない。

でも・・・一生懸命分ろうとしている。

それが・・・わかったら・・・僕は弟がかわいくてかわいくてしかたなくなってしまったんだ。

せっかく・・・医大生になったのに・・・恐竜の恥骨にしか興味がない弟は・・・不憫にさえ思えてくる。

だから・・・僕はまだ生きることができる。

僕が生きている間に・・・弟にアドバイスすることができる。

「僕は兄さんが僕のことをひがんでいるっていったけど・・・本当にひがんでいたのは僕かもしれない」

「そうかい」

「だって兄さんは・・・ピアノをやめてサッカーを始めたり・・・医者になるのをさっさと諦めたり・・・いつも友達がいて・・・楽しそうだった」

「うん」

「そういう兄さんがうらやましかった」

「・・・」

「・・・今の兄さん・・・も・・・すごいと思う」

「誰かに変わってもらえないからな」

「うん・・・僕も誰にも変わってもらえないんだね」

「・・・」

ほら・・・まるで二人は兄と弟みたいじゃないか。まあ。実の兄弟なんだけどさ。

親友の守が僕の世話を焼き過ぎるものだから・・・陽菜ちゃんが守を尾行して・・・僕の事を知ることになった。

陽菜ちゃんは・・・親友思いのいい子だから・・・誰かに怒っていたような気がする。

陽菜ちゃんはきっと神様のことがゆるせなかったんだな。

だから・・・無理矢理、守と弟を連れ出して・・・僕と君を二人きりにしたんだ。

守は・・・それで誰かが傷つかないかと気を遣うし、弟はジュースを買いにいくのになぜ、三人で行かなければいけないのか・・・わからない。

人は本当に人それぞれだよ。

僕と君は二人きりになっても・・・どうということはない。

君はもうすぐ繁之先輩と一緒に暮らし始めて・・・結婚するんだし・・・僕には君を抱きしめることもできないんだ。

でも・・・そこに君がいるだけで・・・僕はとても幸せな気分になることに気がついてしまった。

もちろん、そんなことを君に伝えるわけにはいかない。

だって・・・君を困らせるだけだろう。

君はあたりさわりのない顔をして・・・僕と目を合わせないようにしていたような気がする。

僕は君が何かを隠しているような気もしたけれど・・・それを問いただすこともできない。

だって・・・僕には本当にできることが少ないんだから。

「宮前家具」は僕に新しい仕事をくれた。

広告のデザインの仕事だ。

これが最初で最後のデザインの仕事になるかもしれない。

できれば・・・完成したいと思う。

僕の広告を見て・・・お客さんが買う気になってくれたら・・・仕事をした気分になるものね。

僕が生きている意味があるような気がするものね。

両親が上京してきた。

母は相変わらず・・・僕より弟の方が心配らしい。

そんな風に思うのは僕が少しひがんでいるのかもね。

でも、父はストレートにこう言う。

「あきらめるな・・・研究は進んでいる・・・父さんは絶対にお前を治してやる」

ふふふ・・・お父さん・・・うれしいよ。

でもね、きっと・・・それは無理なんじゃないかな。

両親は僕を連れて帰り、弟を医大に戻したかったが・・・僕ら兄弟は親の望みに沿えない宿命らしい。

「仕事があるから残りたい」という僕。

「興味がわかないから大学をやめたい」という弟。

母は納得がいかない様子だったが・・・父は二人の我儘を受け入れた。

僕は思った。僕は父さんに似ていて、弟は母さんに似ているんじゃないかって。

うん、お母さんのものわかりの悪さは弟に遺伝していると思う。

よりハードになって。

父は・・・ヘルパーの時間を増やしてもくれた。

経済力は・・・結局、人を助ける。

でも・・・豊かな社会は人材不足を生んだりもするんだよね。

ほら・・・いつの間にか、ビルや道路を作る人材が育たなくなって・・・保育園を作るのも人手不足で大変だってニュースで言ってたし。

ちょっと雪が降ったくらいで体育館やアーケードの天井が崩れたりして・・・大丈夫なのかな・・・この国は。

といっても・・・もうすぐ死ぬ僕にとって・・・そういうことはどうでもいいんだけどね。

でも・・・増員された介護ヘルパーさんが優秀じゃないのは困りもの。

何とか食べられるのがカレーだけって・・・一体。

掃除も手を抜かれて・・・なんだか部屋が埃っぽいんだよ。

贅沢ですか・・・。

しかし・・・親友の守が・・・至れり尽くせりで・・・ついにメグと繁之先輩を呼びだしていたなんて僕は知らなかった。

知っていたら・・・止めたかどうか・・・僕にはわからない。

だって・・・もう充分に不自由なんだから・・・少しくらいは甘えたいと思ってもおかしくないもんね。

だから・・・「借りっぱなしのマフラーを返したい」と君が言ってきたときも・・・まさか・・・介護に来てくれるとは思っていなかった。

ただ・・・うれしかっただけだ。

「別れたのにずっと持っていてごめんね」

「そんなことはないよ」

「いつでも返せると思ってたから・・・忘れちゃった」

「うん」

「覚えてる・・・壜のこと」

「うん」

「探したけどなかった・・・」

「僕が先にほっちゃった」

「そうだと思った」

壜は発掘されてしまった。僕は昔のことにこだわっていないことを示すにはその方がいいと思っていた。

「恵へ・・・あなたの隣に誰かいますか」

「繁之先輩がいるね」

「・・・」

「拓人へ・・・今を生きていますか」

「今を生きている?」

「うん」

それから、僕と君は買い物に出かけた。

僕は君が優秀な介護士になっていることを思い知ったよ。

「何が食べたい?」

「何でもいいの」

「何でもいいよ・・・」

「じゃ・・・」

「やっぱりアレね」

君は唐揚げを作ってくれた。

「美味しい」

「拓人のお母さんには負けるけどね」

それから・・・僕たちはピアノを引いた。

昔は僕が君に教えたけど・・・今度は君が黒鍵盤だけで弾ける単純なメロディーを教えてくれた。

君に分かるかな・・・僕がどれほど幸せだったかを・・・。

そして同じくらいつらい気持ちだったことを。

君が去った後で・・・僕がどれほど虚しくて惨めな気持ちになったかを。

そして・・・僕はなんでもないところで転んで起き上がれなくなった。

非常ボタンに手が届かないなんて設計ミスだ。

床に装着してくれないとね。

でも・・・トイレットペーパーを買って戻って来た君が僕を助けてくれた。

僕は君に守られた。

つまり・・・僕には君が守れないってことだ。

君はさりげなく聞いた。

「あれ・・・嘘だよね」

「・・・」

「私と別れてから病気になったって・・・」

「・・・・・・」

僕は何も答えられなかった。

今さら・・・嘘をついたって何の意味もない。

ただ・・・僕は君に幸せになってもらいたかった・・・それだけなんだから。

そして・・・君は少なくとも・・・幸せなんじゃないか。

それから・・・しばらくは・・・穏やかな日々が過ぎていった。

僕は広告の仕事を仕上げた。

家具と家具の値段をレイアウトした・・・つつましいチラシを一枚。

そんな仕事を君は誉めてくれた。

君と繁之先輩が新居に引っ越しする日は迫っていたけれど・・・。

主治医の谷本医師(吹越満)は言う。

「恋をしてますね」

「そんな・・・恋なんて」

「そうですか・・・」

この先生はちょっと鋭すぎるんじゃないかな。

おかげで僕はこわい夢を見た。

暗闇の夜に疾風がよぎる

父と子は馬上にあり

父の胸に幼子は抱かれる

だが子は恐怖を抱く

父は怯える我が子に語りかける

なぜ・・・そんなに怯えているのか?

子は声を震わせる

お父さんには見えないの

恐ろしい魔王の姿が

こわいよ

魔王が来るよ

こわいよ

魔王が来るよ

こわいよ

魔王が来るよ

死の影が僕の心に宿る。

その日は・・・君と繁之先輩が暮らし始める日だった。

君は僕を連れ出して・・・江の島へいった。

海風を感じて・・・寄り添う君の温もりを感じて・・・僕は幸せだった。

僕の心の中は一杯だった。

君を抱きしめたい。

君を抱きしめたい。

君を抱きしめられたら、どんなにいいだろう。

そんな思いで一杯だった。

「今日は・・・繁之先輩と引っ越しをするの・・・」

「うん・・・僕たちはもう会わない方がいい」

「ねえ・・・今、一番何がしたい?」

「・・・」

「じゃ・・・私がしたいことをしてもいい?」

「・・・」

君は僕を抱きしめて泣きだした。

僕にできることは何もなかった。

ただ・・・潮騒が・・・二人を包んでいる。

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2014年2月20日 (木)

貴方を殺して私も死ぬ確率(鈴木梨央)小さな小さな世間(桜田ひより)誤解を招く表現に心から握手を(芦田愛菜)そして、ご褒美の雨はふりそそぐ(三浦翔平)

後半、一同爆笑につぐ一同爆笑である。

こんなドラマに誰がしたという・・・笑ってはいけない笑いの連続を堪能するのだった。

「表現の自由」を必至に死守するお笑い芸人の下ネタに・・・「知る権利」だとか、「報道の自由」だとかを尊大に主張する知識人たちはいつだって土下座するべきなんだな。

まあ・・・そんなことをしたら米が買えなくなるからしないわけだが。

言いたいことを言う人に言いたいことを言う。

そういう風通しのよい社会こそが・・・じめじめした日本の風土に求められています。

金メダルを目前に転倒する人・・・それでも金メダルの人もいれば銀メダルの人もいる。

世界の頂点での戦いでもそういうことはある。

二度、関東に大雪が降って、一度目は完璧に雪かきが出来たのに二度目で転倒して脇腹が痛いわけだが・・・。

痛みをこらえて涙を流して笑うわけである。

成功体験による油断にお気を付け下され~。

で、『明日、ママがいない・第6回』(日本テレビ20140219PM10~)脚本監修・野島伸司、脚本・松田沙也、演出・長沼誠を見た。かっては脳細胞は成人以後は発生しないのが常識だったが、今はそうではないことが判明している。そういうことは様々な研究の成果である。それでも十歳までに多くの脳の機能はほぼ発達を終える。特に五歳まではかなり決定的なものと考えられている。三つ子の魂百までは・・・観相による真理なのであった。科学はそれを解明するために様々な実験を行ってきた。脳細胞は局所によって機能が変わることが知られているわけであるが・・・これを確かめるためにたくさんの犬たちが生きたまま脳細胞を切除され、何ができなくなるかを観察されてきたのである。脳細胞の発達具合を調べるために猫の目を閉塞させ、閉塞しない場合の発達具合なども比較検証されている。医学の発達はそういうある意味で残虐な行為によって支えられているのである。そういう事実に耳をふさいでいては実験動物たちへの感謝の気持ちは生まれないだろう。もちろん、悪魔はそこまでして生きたくないと叫ぶのも自由だと考える。

母親(酒井美紀)が愛人を相手に傷害事件を起こし、拘留中に施設に預けられ、さらにその母親から育児放棄をされたドンキ(鈴木梨央)の心は深い傷を負い、壊れかけている。

里親候補の川島夫妻(松重豊・大塚寧々)から優しくされ、幸福であることに恐怖を感じたり、恐怖を克服してもう一度、川島夫妻に対すれば今度は「普通に接してもらいたい」と願う。

しかし・・・「捨てられたくない」という思いから・・・孤児の先輩であるロッカー(三浦翔平)に「里親に気に入られる方法」を問いただすドンキなのであった。

絵心のあるロッカーはドンキの似顔絵を描く。

「私・・・こんなにかわいくないよ」

「・・・」とロッカーはドラマ冒頭からそうであるように無言なのであった。

「私のいいところってどこかな・・・ピア美みたいにスタイルがいいわけじゃないし、ボンビみたいに眼鏡をとったら美少女みたいなギャップ萌えの隠し玉もないし、ポストみたいなカリスマ性もないし・・・」

「・・・」

「私・・・こわいんだ・・・お試し先の里親さんはすごくいい人だけど・・・嫌われたらどうしようっていつも考えちゃう・・・また・・・捨てられたらどうしようって」

ロッカーは笑顔のドンキを描く。

「笑えばいいってこと・・・?」

「・・・」

笑顔の可愛いドンキだった。

その頃、それぞれの事情を背負った架空の児童養護施設「コガモの家」にニューフェイスがやってくる。

パチンコ狂いの母親に捨てられたパチ(五十嵐陽向)が養子縁組を前提とした里親家庭にひきとられ・・・変わりにやってきたのは同じようにパチンコ狂いの母親に捨てられたニッパチだった。

一部お茶の間愛好家と同様に裏切られた気分を味わうポスト(芦田愛菜)だった。

ニッパチは幼児の皮をかぶった中年のおじさんだったのだ・・・おいっ。

しかし、面倒見のいいポストは二代目パチの幼稚園初登園に付き添うのだった。

魔王こと佐々木施設長(三上博史)のポストに寄せる信頼感は絶大なのだった。

ポストもまた女子小学生の皮をかぶった姐さんだからである・・・おいっ。

ピアノの才能で世界への扉が開き始めるピア美(桜田ひより)は、御曹司・笹塚蓮ことれんきゅん(藤本哉汰)から親戚の音大教授(高橋ひとみ)を付与され、有頂天になる。

「あなたの才能は・・・多くの人から求められるものになる」

「求められる・・・」

ピア美はたちまち守りの姿勢に入るのだった。

独自の路線を歩むボンビ(渡邉このみ)は子供が欲しいジョリピーの人(城田優)にさかんに自分を売り込む・・・そして・・・コガモの家に招くことに成功するのだった。

ジョリピーの人の子供になれるかもしれない・・・ボンビもまた守りを固めるのだ。

ドンキの里親候補である川島家で設備の不具合があり、ドンキは器用なロッカーを招聘し、トラブルを解決する。

「いやあ・・・助かったよ」

「優しいお兄さんなんです・・・私のこともいい子だって言ってくれるんです」

「そうなんだ」

壊れかけているドンキの心は利用できるものは何でも利用して鉄壁の防御を固めるのだった。

その帰り道・・・。

「ありがとう・・・ロッカー」

「・・・」

「二人とも喜んでたよね・・・こういうのを積み重ねていったら・・・私・・・いらないなんて言われないよね」

痛々しいほどに必死なドンキだった。

しかし・・・そこで通りすがりのDV夫とその妻が二人の絆を破壊するために待っていたのだった。

「おまえ・・・浮気してるだろ」

「誤解よ」

「じゃ・・・あの男はなんなんだよ」

「やめて・・・」

妻を突き飛ばす夫。悲鳴を上げる妻。

突然、ロッカーは男に踊りかかり・・・猛烈に男を殴打するのだった。

その光景に目を奪われ・・・微笑みを凍りつかせるドンキ。

妻の制止の声も効かず・・・ロッカーはDV夫を叩きのめすのだった。

やがて・・・警察が到着して・・・逮捕されてしまうロッカー。

豹変したロッカーが恐ろしくなり・・・状況を見失うドンキ。

妻もDV夫を庇い・・・ロッカーは通りがかりの暴行魔に仕立て上げられてしまう。

児童相談所のアイスドール(木村文乃)と魔王は警察に出向く。

「どういうことだ・・・」

「彼は黙秘していますっていうか・・・いつも通り無言です」

「しかし・・・」

「とにかく、彼は暴力をふるったんです・・・それは事実です」

「何か・・・理由が・・・」

「私、知ってるんですよ・・・彼が父親を殺したってこと・・・母親が彼を庇って自首したってこと・・・」

「それは・・・誤解だ」

しかし・・・アイスドールの言葉を立ち聞きしてしまうドンキだった。

「誤解なんですか・・・」

「誤解だよ・・・」

事実を告げられ・・・ショックを受けるアイスドール。

ロッカーの父親は子供をコインロッカーに閉じ込めるような凶悪な男だった。

母親(とよた真帆)が暴力を振るわれているのを止めようとしたロッカーは・・・父親を突き飛ばし・・・昏倒させてしまう。

母親はロッカーに「何もしゃべらないで・・・やったのは私だよ」と告げる。

ロッカーが逃げ出した後で息を吹き返した父親を母親は包丁で刺殺したのだった。

「そんな・・・」

「事実だ・・・なにしろ・・・母親を逮捕したのは俺だ」

「刑事だったの・・・?」

「そうだ・・・」

魔王刑事誕生である。

「ロッカーの母親はどうしているのです」

「服役中だが・・・今は医療刑務所にいる・・・末期ガンで・・・意識不明なんだ」

「そんな・・・」

アイスドールはロッカーの過酷な運命に胸がふさがれるのだった。

同じ境遇のロッカーを捨てて幸せな結婚をする予定のアイスドールなのである。

調理担当のロッカー不在のコガモの家では子供たちがお腹をすかしていた。

魔王の別居中の妻とは知らずに弁当屋さん(鈴木砂羽)から料理を習っているオツボネ(大後寿々花)は腕前を披露しようとするが・・・オツボネの過去の失敗を知っている子供たちは拒絶するのだった。

そこへ・・・ドンキが帰ってくる。

「ロッカーが警察に捕まった・・・」

「どうして・・・」

「殴ったの・・・人を・・・何度も何度も・・・その人、死んじゃうんじゃないかって・・・こわかった」

「そんな」

「ロッカーが理由もなく人を殴るはずがない」とポスト。

「でも・・・」

「相手が何もしてないのに殴ったら・・・暴力だよ」とピア美。

「先に手を出したらダメだよね」とボンビ。

「私たちは・・・世間から色眼鏡で見られやすい。親のない子供一人が暴力を振るったら・・・親のいない子供はみんな乱暴だって・・・イメージになるでしょう」

完全に守りに入るピア美だった。

「ピア美・・・」

「迷惑なんだよ・・・私はこれから多くの人に求められる人間になるかもしれないのに・・・ぶちこわしなんだもん」

「いい加減にしろよ・・・ロッカーはそんな奴じゃない」

「優しい人が残酷なことをすることもあるんじゃないのかな」とドンキ。

ドンキの頭の中は優しいママが愛人に暴力をふるう姿が刻印されているのだった。

「ドンキ・・・」

そこへ・・・魔王がロッカーとともに帰ってくる。

「ロッカー・・・よかった・・・早くご飯作ってよ」

しかし・・・ポスト以外の子供たちは冷たい世間と化していた。

「私たち・・・ロッカーの作るごはんはいらない」

子供たちは食堂を出ていく。

「あいつら・・・ちょっと動揺しているんだ」とポスト。

「うん」と頷くポスト。

「ちっ」と舌打ちを決める魔王だった。

子供たちは「コガモの家」の評価を落すロッカーを排除するためにハンガーストライキに突入するのだった。

「コロコロコロッケにカラカラ唐揚げを・・・いつまでも我慢できるわけがない」と断言するポスト。

「おいしいよねえ」とオツボネ。

なんとか関係を修復しようと食事を部屋に届けるポスト。

「意地をはるなよ・・・お腹すいただろう」

「ポスト・・・あんたはロッカーの本性を知らないのよ」とピア美。

「何言ってんだ」

「ロッカーは父親殺しなんだよ」

「え・・・」

「私・・・聞いたんだもの」とドンキ。

「そんなの間違いだよ・・・とにかく・・・メシ食えよ」

「こんなもの」

料理をぶちまけるピア美だった。

「そんなことをしたらスタッフが美味しくいただきましたってテロップ出さなきゃならないだろう」

「あんたが食べなさいよ」

「食べ物を粗末にするのは・・・とにかく・・・一番まずいのよ」とボンビ。

少し、反省するピア美だった・・・おいっ。

そこへ・・・魔王がやってくる。

「みんな・・・自分の枕を持ってこい・・・そして、俺の話を聞け」

食堂で・・・魔王の説教が始るのだった。

「いいか・・・ロッカーは人を殺してなんかいない・・・ロッカーのクズの父親を殺したのは・・・ロッカーの母親だ・・・それも・・・クズの父親からロッカーを守るために仕方なくしたことだ」

「・・・」

「でも・・・ロッカーが人を殴ったのは事実だし」

「お前たちは何を怯えている・・・お前たちは世間から白い目で見られたくない。そんな風に怯えているのか。だからそうなる原因になるかもしれないあいつを排除するのか。だが・・・それはお前たちの心の漣だ。もう一度、胸に手を当てて考えてみなさい。お前たちの知っているロッカーは・・・本当に乱暴でひどい人間か。そんな風にお前たちはあいつから一度でも怖い目にあわされたか。逆に・・・一度も優しくしてもらわなかったか。そんなことはないはずだ。ならば・・・なぜ・・・ロッカーを庇おうとしないのだ。世の中が白い目で見るならロッカーがそんな人間じゃないとなぜ戦わない。臭いものにふたをして・・・自分とは関係ないと・・・それで終わらせるつもりか・・・腐れきった大人ならそれでもいいかもしれない。大人の中には価値観が固定され、自分が受け入れられないものをすべて否定して自分が正しいと独りよがりで声を荒げて攻撃してくるものもいる。そういう大人は胸にクッションが持てない・・・脳細胞の発達が止まった馬鹿ものなのだ。そんな大人になったらおしまいだぞ。話し合いすらできないモンスターになる。自分を省みず、狂犬のように人にかみつく化け物になっちまう。だが・・・お前たちは子供だ。まだ間に合うんだ。一度、心に受け止めるクッションを持ちなさい。それが情緒というものだ。クッションのない大人は情緒不安定だぞ。始末におえないぞ。この世界には残念なことはいくらでもある。残酷なこと。ひどい事件。つらい出来事。戦争。テロ。大災害。詐偽。通り魔。裏切りにつぐ裏切り。だが・・・それを自分とは関わりのないこと。かかわりたくないこと。そんな風にシャッターを閉めて・・・逃げようとしても無駄だ。歯を食いしばり、一度心に受け止めて、何がひどいのか・・・何が悲しいのか・・・なぜ、こんな悲惨なことになってしまうのか・・・そう考えることが必要なんだ。・・・お前たちはかわいそうなのか。両親がいないからそうなのか。両親がいても毎日吹雪吹雪氷の世界に生きている子供はいくらでもいるぞ。そんな子供たちを両親がそろっているくせにと冷たく突き放すのか。もっと辛い子がいる。誰かに話したくても話せない子もいる。それでも・・・お前たちは世界で自分が一番かわいそうだと思うのか。違うだろう・・・上から目線でかわいそうだなんて思われることにうんざりしてるだろう。何が分るってんだ冗談じゃないだろう。かわいそうだと思うやつこそがかわいそうなんだ。つまらん偽善者になるな。つまらん大人になるな。つまらん人間になってくれるな。お前らほど人の痛みの分かる人間はいないはずだ・・・淋しい時にそばに寄り添ってほしい・・・いつもそう思っているんじゃないのか・・・自分がそうしてほしいことを何故しようとしない」

魔王はロッカーの書いた子供たちへの食事メモを見せる。

好きな食べ物・・・嫌いな食べ物・・・アレルギーがあるから食べてはいけないもの・・・。

子供たちは・・・ロッカーの愛情に頭をたれるのだった。

ロッカーは・・・今際の際の母に特別に面会する。

「殺したのは・・・あなたじゃない・・・私だよ」

その言葉に・・・ロッカーは虚しさを感じる。

「自分をかばって罪をかぶった優しい母親」との約束で貫いた「無言の行」・・・。

思わず病室を飛び出すロッカー。

公園でブランコに乗るロッカーに寄り添うポスト。

「ロッカー・・・風邪ひくよ・・・」

その時・・・星の金貨的驟雨が降りだすのだった。

思わず裸になって慈愛の雨を身に受けるロッカー。

「ああああああああああ」

「ロッカー・・・笑えよ」

「ああああああああああ」

「ロッカー・・・あんたはまた勘違いしてる・・・」

「・・・」

「あんたのママは・・・神様、私の息子をお守りください・・・ひとりぼっちになってしまう私の息子をお守りくださいって・・・言いたかったんだよ・・・だって・・・ロッカーのママは自分の人生を捨てて・・・ロッカーを守ったんじゃないか・・・」

「・・・ママ」

「ママはロッカーをかばったんだよ・・・ダメなパパからロッカーを自由にしたんだよ」

「・・・ママ」

「さあ・・・ママにお別れを言わないと・・・」

しかし・・・母親はすでに旅立っていた。

「・・・ママ・・・ごめんね・・・」

「・・・」

「ママ、ありがとう」

ロッカーの母親は火葬にふされた。

火葬場でロッカーの手を握るポスト。

握手恐怖症のアイスドールは震える手で・・・ロッカーの空いている手を握るのだった。

「ポスト・・・あなたは一度もロッカーを疑わなかったのね・・・何故」

「だって・・・ロッカーはロッカーだろう」

「・・・」

魔王は子供たちに告げる。

「最後にもう一度言おう。世界に存在するあらゆる汚れや醜さから目をそむけずに・・・胸のクッションで心に受け止めなさい。それができる人間は・・・世界の美しさ・・・世界の愛おしさを知ることができる。・・・その時、お前たちの心は傷ついたりしない。お前たちの心は綺麗に磨かれたんだから」

子供たちは自分の愚かさを悟る。

ただ一人・・・心を闇にとらわれたドンキを除いて・・・。

ポストの光とドンキの闇の決戦の日は近い・・・。

そして・・・かわいそうなかわいそうなスケーターに全国のお茶の間が意気消沈する夜だった。

気に病むことはない・・・所詮、他人事ですからな。

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2014年2月19日 (水)

スパイ(岡田将生)、エヌ氏(小日向文世)、遭難者(佐々木希)、犠牲者(勝村政信)、かわいい悪魔(遠藤憲一)などがいる星新一ミステリーSP(壇蜜)

スターになるほど露出が少なくなる・・・という論理でいけば・・・最下層からの出身である壇蜜のためのスペシャルドラマである。

こういう系列がいつから始ったかは定かではないが・・・キッドはスタートに日活映画の終焉を置きたい。

つまり・・・美保純だな。

そういう意味では秋吉久美子も境界線上のスターだ。

桃井かおりとか、大谷直子とか、樋口加南子とか、大竹しのぶとか、風吹ジュンとかもその範疇だ。

しかし・・・宮沢りえは微妙なのだな。

最近ではみひろである。

ありのままの姿で勝負しつつ、同性の支持も得るのは至難の業である。

だが・・・性的魅力がスターの重要な要素である以上・・・この系列は永続するべきだと考える。

で、『土曜プレミアム・星新一ミステリーSP』(フジテレビ20140215PM9~)原作・星新一、脚本・①福田雄一、②飯田譲治、③小川真、④高山直也、⑤小川真、演出・①土方政人、②飯田譲治、③星護、④河野圭太、⑤後藤庸介を見た。1960~70年代のSFブームを形成した作家たちの一翼を担ったショートショートの名手・星新一の名作を使ったオムニバス・ドラマである。まあ・・・星新一を知らないということは・・・バカだということである。

基本的にショートショートは短編より短いので・・・基本的にムダが省かれているフィクションである。で・・・20分程度の短編ドラマにするとなると場合によっては余計な成分が入ってくる。その料理の仕方が脚本・演出の実力を滲みださせるのである。

小説「幻魔大戦」で知られる平井和正の短編に「星新一の内的宇宙(インナースペース)」というのがある。

この宇宙が星新一の想像力の産物にすぎないという恐ろしい話である。

本当にそうではないかとゾクゾクした記憶があります。

倒産の危機にある企業の経営者で二枚目で知的な青年であった星新一のストレスのはけ口として形成されたこの世界。

そこであなたは呼吸しているのです。

①「程度の問題」・・・おそらく北朝鮮の工作員である・・・と思われる・・・スパイのエヌ氏(岡田将生)が平和な国にやってくる。用心深い彼は・・・子供が受け損なったサッカーボールさえ蹴らない。爆弾かもしれないからだ・・・。バーで知り合った女(菜々緒)も敵のハニートラップでないかと疑うのだった。しかし・・・いつしか・・・仲間の女スパイ(マイコ)が案じるほどに知りあった女に心を奪われて行くスパイなのだった。

まあ・・・意外なオチについては説明不要だろう。脚本は「ミステリに犯人の語りは不要」というギャグをかましている人である。まあ・・・基本的に「不要なこと」を延々と繰り広げる名手なので・・・無駄を極度に省くショートショートとの相性は最悪だが・・・なんとか・・・乗り切った。

スパイは・・・ショートショートの基本要素である。まあ・・・「007」シリーズがなくても「ミッション・インポッシブル」シリーズがあるしな。

つまり・・・説明しなくてもスパイだ・・・ということでいいからである。

ショートショートの基本である「ノックの音」・・・つまり、来訪者で始る物語でもあり、「バーのカウンター」という見知らぬものとの出会いの物語でもある。

まあ・・・基本中の基本の話でございます。

②「きまぐれロボット」・・・ネタに困る作家というのはストレートな題材である。基本的に創作とは模倣であるので、作家は基本的に他の虚構をデータとして使用する。そういう場合に整理上手なアシスタントが求められるわけである。基本的に作家は自分以外の人間は奴隷であると思っているために・・・暮らしの面倒を見てくれるメイドや執事を常に求めている。その願望の結晶が・・・メイド・ロボットなのである。有能な助手であり、有能な女中・・・欲しいよね。基本的に作家はそういう人を求めて結婚するが・・・大抵、失敗するのだ。

脚本・演出は「悪意の旗手」なので・・・そういうテイストに仕上がっている。

ホラー部分になると、キング一色で・・・「シャイニング」から「ミザリー」へ・・・奇妙な味というよりは単なるパロディーになっているのが残念な感じですな。

まあ・・・脚本家のエヌ氏(小日向文世)は本当はいじめられる人ではなくていじめる人が似合う人だと考えます。

③「霧の星で」・・・星新一とブラッドベリがクロスするこの作品。一種の「無人島もの」でもある。船が沈没して・・・男女一組が漂流して・・・孤島に漂着すれば・・・ラブロマンスなのであるが・・・キャビンアテンダント(佐々木希)とエコノミークラスの低賃金労働者(マキタスポーツ)だとブラックな展開が漂うわけである。

演出は「世にも奇妙な物語」でもスペクタクルを得意とする人。

今回はそれほどでもなかったが・・・一番の異世界観を醸しだしていました。

④「七人の犯罪者」・・・奇妙なルールというのもショートショートの基本である。星新一は国家というものに幻想を抱かずに妄想するタイプでもある。対極としては「マイ国家」(一人の個人が国家に対して独立を宣言する話)があるわけだが・・・国家が残酷なルールを作ることはある意味で現実に即している。同時にコン・ゲーム(詐欺師の仕事)の要素を含み、これも星新一の一つの顔である。

「犯罪者を警察ボランティアとして酷使する法」によって・・・無実の会社員(勝村政信)と謎の男(温水洋一)は知恵の限りを尽くして戦うのだった。

まあ・・・人をだまそうとすれば・・・だまされるのである。

⑤「華やかな三つの願い」・・・自殺志願者の女(壇蜜)と恋人(徳山秀典)と悪魔(遠藤憲一)を巡る物語である。「魂をもらう約束で三つの願いを叶える悪魔」は様々なバリエーションを持っている。基本的には・・・富と名声そして永遠の命である。「いくつでも願いを叶えよ」は反則ということになっている。

その中でも名作のひとつといえるだろう。

女は愚かで賢く、悪魔は残酷でかわいい・・・子供から大人まで・・・それぞれに違う味わいを持って楽しめる物語だからである。

今回は・・・キャスティングの妙で素晴らしい仕上がりになっていたようだ。

まあ・・・そこそこですかな。

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2014年2月18日 (火)

酒乱の父親に殴られて(山本舞香)愛人の娘で(新川優愛)定時制高校の悪い副担任で(大政絢)地下アイドルで(清水くるみ)夜のせんせいで(観月ありさ)

さて・・・ようやく、金メダルの羽生結弦に似ていると評判の高橋一生のドラマである。

「軍師官兵衛」で井上九郎右衛門もやってるけどな。

・・・そこかよっ。

ともかく・・・凄いメンバーを集めて・・・ここまで10.6%↘*7.3%→*7.3%↘*5.1%↗*5.2%である。

まあ・・・五輪だからねえ。

そうだよねえ。

それにしても第5話は・・・父親が性同一障害で性別変更し、一人息子が悩むという・・・「天誅〜闇の仕置人〜」の第2話とネタ丸かぶりである。

どちらもオリジナルストーリーという・・・空前のシンクロ率だな。

どちらの脚本家も共通のそういう友人がいたとしか思えない・・・。

「定時制高校に通学しているだけでいろいろ背負っているわけでしょ」と副担任の上奈瑠奈先生(大政絢)が断言してしまうわけだが・・・どこからもクレーム来ないのかよっ。

そういうわけで・・・毎回、誰かがいろいろとカミングアウトするという展開で・・・なんとも言えない静けさを醸しだしています。

コミック「パッパカパー」でおなじみの水野トビオに「まなびや」という秀作があるし、「めだか」(フジテレビ)というミムラが教師役で・・・生徒に瑛太とか黒木メイサがいたドラマもあって定時制高校が舞台というのは・・・なんとなく・・・ありそうな題材なのだが・・・まあ・・・この作品の場合、生徒の一人一人が個性強すぎて・・・ちょっと「ありえない」感じが強すぎるのかもしれない。

まあ・・・でも・・・これも・・・のんびり見ている分にはそこそこ楽しいからな。

で、『夜のせんせい・第1~5回』(TBSテレビ20140117PM10~)脚本・林宏司、演出・山室大輔(他)を見た。高等学校定時制課程とは主に昼間仕事に就き、夜間に学校に来て学習する生徒のための過程である。教育の不平等の象徴という考え方もある。まあ、義務教育までは平等だという考え方もあり、そういう意味では中学卒業後に成人にするべきだという考え方もある。もちろん、学校だけが人生のすべてではないという考え方もあるわけである。そこで・・・定時制でドラマを作るということは・・・それだけで・・・両親を失くした子供たちのドラマを作ったり、若くして余命宣告されたドラマを作ったりするのと同様にさいはてのドラマを作ると言うことに通じている。

五輪の季節には・・・そういうドラマを作る傾向があるらしい。

向学心に燃える勤労少年のために定時制過程のある日の出学院高校を創始した人の孫にあたる副校長の砂川(光石研)は・・・定時制過程の廃止を目指す柳島校長(中原丈雄)に対抗するために・・・スナックのママ・夜野桜(観月ありさ)を臨時教員としてスカウトする。

問題児の揃った定時制4年1組をまとめるために下世話なパワーを活用したいと考えたのである。

しかし、校長は・・・夜野先生の採用条件としてクラスから一人でも退学者が出たら砂川と夜野先生は解雇処分とすることを約束させるのだった。

こうして・・・夜野先生と4年1組のあれやこれやが開幕するのだった。

だが・・・夜野先生の就任直後から校内には「4年1組をぶっつぶす」という落書きが何者かによってなされる。

一体・・・誰がそんなことを・・・。

生徒の一人・・・黒井華(蓮佛美沙子)のカミングアウト。

「私は幼馴染がいじめにあった時に・・・手を差し伸べなかったのです・・・その結果、彼は自殺を図ったのです。私は深い罪悪感を覚え・・・八年間、自宅に引きこもりました・・・落書きは自殺した彼の私に対する復讐ではないかと思うのです」

「オカルトかっ」

しかし、夜野先生は・・・黒井華の自殺を図った幼馴染が死なずに元気で就職していることを調べ上げ、黒井華を呪いから解放するのだった。

生徒の一人・・・白崎桃(清水くるみ)のカミングアウト。

「私は姫野姫子という地下アイドルなのです。しかし・・・私は大観衆が苦手なのです。だから・・・ひっそりと地下アイドルを続けたいのに・・・事務所はメジャーを目指そうとするので・・・困り果てています」

「なんのこっちゃ」

しかし、夜野先生は生徒の一人で元俳優のホスト・星野流星/山田一郎(高橋一生)を裏社会とつながっているヤバイ筋の芸能事務所経営者に仕立て上げ、白崎桃の移籍を成功させるのだった。

他にも、このクラスには・・・元暴走族総長という噂のある鳶職人・宇垣(太賀)や、年収1000憶円のIT企業の社長・上武(田中圭)、漫画家アシスタントの梶原(大倉孝二)、まるで女探偵のような宗村真理(堀内敬子)、総合格闘家の木村政代(江原由夏)、どこにでもヘリコプターを呼びよせることができる謎の男・外内耕介(笹野高史)、実際に暴力団組織「極栄会」幹部構成員の大澤(山本耕史)などヒトクセもフタクセもある生徒が揃っていて・・・「単位」を餌に夜野先生の手足となって働くことになるのだった。

まあ・・・ファンタジーです。

そして・・・長期欠席を続ける仙波剛三(大杉漣)がクラスに戻って来た時・・・物語は大きく動き始める。

「実は・・・私は生まれた時から身体は男でも心は女だったんです」

性同一性障害者だった仙波は結婚をし、子供も儲けたが・・・ついに告白。女になるために離婚した経歴を持っていた。

生徒の一人・・・高倉富雄(織本順吉)と言えば、3年B組金八先生シリーズの本田校長のそっくりさんだが・・・その第6シリーズで上戸彩が身体は女でも心は男の性同一性障害者を演じ、巨乳をさらしで巻いていたことは記憶に生々しい。

性別についての転換は「ラスト・フレンズ」(フジテレビ)のように性別違和症候群といったものや、単なる女装癖、ゲイ・バー経営のためのノン気(営業的擬装)まであって・・・一概には言えないのだが・・・性同一性障害は病気なので差別は許されないのである。

「我儘は性同一性障害の罪、それを許さないのは世間の罪」なのである。

しかし・・・夜野先生は・・・そういうことには興味がなく、来る球技大会のフットサルで・・・元サッカー選手だった高倉のキャリアを生かすことしか・・・頭にないのであった。

「鳥並みの知能しかない」と黒井華が断言する所以である。

しかし・・・家族を捨てた時に・・・子供との思い出の深いサッカーは封印したという高倉。

そこで・・・夜野先生は手下・・・生徒たちに・・・消息不明の高倉の息子の捜索を命じるのだった。

だが・・・高倉の息子は・・・定時制に敵意を抱く・・・昼間部の生徒会長・高原翔太(安達大輝→葉山奨之)だったのである。

翔太が定時制に敵意を燃やしたのは・・・自分を捨てた父親が女になっていることに複雑な気持ちを抱いていたからであった。

落書きも・・・翔太の犯行だったらしい。

防犯カメラによって・・・父親への憎しみから・・・犯行に及んだのではないかと校長に問いつめられる翔太。

しかし・・・高倉は息子を庇い・・・「そんな子が私の子供であるはずないじゃない・・・だって私は女なんだから」と涙ながらに訴えるのだった。

そして・・・翔太も・・・高倉が父であることを否定する。

だが・・・クラスメートたちが・・・「高倉」のことを馬鹿にした時・・・翔太はカミングアウトする。

「俺の親父の悪口言うな・・・」

「ええええええええええええ」

・・・なのであった。

結局・・・球技大会では敗退した定時制4年1組。

しかし・・・夜のグラウンドには一人、また一人の夜の生徒たちが集まってくる。

そして・・・フットサルに興じるのだった。

ベンチに座り、それを眺める・・・口元に痣の残る大神玲(山本舞香)のカミングアウト・・・。

「この傷・・・酒に酔った父親に殴られたんだ・・・隠してたのは・・・あんたが・・・父親に誕生日プレゼントをもらったっていうのが・・・ちょっとうらやましくて・・・」

それに応えるグラビアモデルの橘かえで(新川優愛)のカミングアウト・・・。

「これあげる・・・電子手帳だよ・・・私・・・愛人の子供なんだ・・・父親とは話したこともない・・・毎年、毎年、電子手帳を送ってくるんだ・・・何を贈ったのか覚えてないのさ・・・」

「・・・」

「・・・」

さいはての生徒たちの物語は・・・まだまだ続くのだった。

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斉藤さん

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2014年2月17日 (月)

荀子・王霸篇に曰く、故用國者,義立而王・・・と軍師官兵衛(岡田准一)

お・・・初心に戻ったのか。

まあ、武経七書(兵法の古典)ではなくなったがな。

「国を治むる者は義立てばすなわち王たり」は性悪説で有名な荀子の王覇篇からの引用である。

前段として、「國者,天下之制,利用也」がある。

「国家とは天下を利で治めるものなり」ということである。

つまり・・・万民が利益があると感じるところに国家が成立するということだ。

荀子ならではの論理展開である。

そのために犠牲を払うものが王だということだ。

後段は「信立而霸,權謀立而亡」と続く。

「それを信じさせる王は覇者となり、疑われるものは滅ぶ」ということになる。

つまり、ここでは・・・「逆らえば殺すということを万民に信じさせたものこそが天下の主にふさわしい」ということを官兵衛は語っているのである。

比叡山を焼き打ちにし、将軍を追放し、浅井・朝倉両家を滅ぼす。

信長が反逆者を犠牲にしても天下統一を成し遂げようとしている。

それこそが・・・万民の従うべきところである。

だから・・・信長に味方することが生存率を高めるという論理なのだ。

おそらく・・・脚本家にはそういう意図はないと思われるが・・・教養がないって恐ろしいことだな。

「義」という言葉の根本的な誤解があるのだな。

「義」とは「自分自身を生贄にする」という意味である。

つまり・・・自己犠牲である。残虐を行うことで信長自身が中傷の対象となることを意味しているのだ。

しかし、それを為さねば天下の乱れは糺されないというのが荀子を引用した官兵衛の論理なのである。

戦国時代とは現代人にはなかなか受け入れがたい・・・百人を生かすために一人を殺す世界である。

そうしなければ全滅するのである。

で、『軍師官兵衛・第7回』(NHK総合20140216PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。しかし・・・今回は十八行だ~。NHKのスタッフ、画伯が見放す寸前ですぞ~。励みなされ~。とにかく、今回は天正三年における西播磨の覇者・小寺政職(片岡鶴太郎)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。小寺官兵衛を駆使して・・・播磨半国の戦国大名になりかかっている政職の辣腕ぶりが・・・描かれていないのが残念なことでございます。画伯のモチベーションをあげるための島左近(夏八木勲=「葵 徳川三代」ヴァージョン)は素晴らしい出来栄えでしたなあ~。・・・だからプライべートな話はコメント欄でしろと何度言ったら・・・。

Kan007 天正元年(1573年)、信長は旧幕臣・細川藤孝に命じて淀城の岩成友通を討伐し、柴田勝家によって越前・朝倉家を滅亡させ、羽柴秀吉に近江・浅井家を殲滅させる。佐久間信盛によって河内・三好義継を撃破。大和・松永久秀を降伏させ・・・ついに近畿圏の制覇を完了する。天正二年(1574年)三月、信長は上洛し、従三位参議に叙任され、「蘭奢待の切り取り」を勅命で許される。信長によって備前・播磨・美作の3カ国の領主となった浦上宗景だったが、信長が毛利輝元との友好関係の修復に動いたために播磨国に動揺が生じる。播磨国の名目上の守護・赤松則房を押し立てる小寺政職は・・・浦上宗景の西播磨での覇権を牽制するために浦上宗家・浦上政宗の血を引く浦上久松丸(父・浦上誠宗、母の父・小寺職隆=小寺官兵衛の甥)を備前の宇喜多直家に送り込む。久松丸を盟主に押し立てた宇喜多直家は浦上宗景に叛旗を翻し、備前・美作・播磨国境で諜報戦を展開する。これによって小寺家は西は美作国境の上月城(赤松上月家)から東の志方城(赤松櫛橋家)まで政略結婚による血縁勢力を展開する。ここに至って東播磨守護代・別所家とならび、小寺家は西播磨守護代の実質を確保したのである。西の覇者・毛利家は・・・ついに播磨国への本格的な調略活動を開始する。使僧・安国寺恵瓊は別所・小寺両家に働きかけ、毛利への従属を働きかける。一方、織田政権を代表する摂津国主・荒木村重も播磨国への干渉を開始。天正三年(1575年)、播磨国は織田家・毛利家両家を巡り、各所で分裂する。別所家においては別所長治の叔父の吉親が親毛利派に・・・重宗が親織田派となった。小寺家でも・・・同様な事態となるが・・・小寺家家老の官兵衛の主導により・・・織田に追従する決断が下される。しかし・・・播磨国内部では・・・信長に対抗する本願寺勢力が蠢動を開始していた・・・。五月、長篠の戦いで織田・徳川連合軍が武田勝頼を撃破。七月、小寺官兵衛、岐阜へ。

光は我が子のように育てた久松丸の事を不憫に感じた。

久松丸の父は浦上誠宗・・・。

おたつとともに赤松政英によって殺された浦上清宗の弟である。夫・官兵衛の妹・おまつが誠宗の妻となり・・・久松丸を身ごもった。

しかし、誠宗は叔父・浦上宗景によって毒殺されている。

未亡人となったおまつは久松丸を生み産褥で死んだ。

生まれながら孤児となり、浦上宗家の後継者となった久松丸を小寺官兵衛が養育することになり、まだ、松寿丸を懐妊していなかった光が久松丸を預かったのだ。

翌年、官兵衛と光の間に長子・松寿丸(後の黒田長政)が生まれ、久松丸と松寿丸は兄弟のように育ったのである。

しかし、小寺・浦上両家の血を引く久松丸の政治的価値は高かった。

宇喜多直家が・・・主家である浦上宗景に叛旗を翻すための旗頭として久松丸を求めた時、浦上宗景の増長を好ましく思わない小寺政職は惜しみなく・・・久松丸を引き渡したのだった。

「久松丸はどうなるのでしょう・・・」と光は官兵衛に問う。

「すべては・・・運次第だ」と官兵衛は率直に言った。

「浦上宗家の嫡男として・・・浦上家の長となるやもしれぬ・・・」

「はたして・・・そうなりましょうか・・・」

光は高貴な血を受け・・・穏やかな性分に育った久松丸の行く末を案じる。

「案じても・・・どうにもならぬ・・・」

官兵衛は静かに告げる。

状況はめまぐるしく変転していた。

宇喜多直家は久松丸を神輿に担いだ謀反に成功した。

家来に背かれ孤立した浦上宗景は備前を追われ・・・播磨に逃れたものの・・・すでに覇者としての地位を失っていた。

官兵衛にとって義理の祖父にあたる小寺政職は勢力を拡大し、美作国境の上月城までを勢力に収めた。光の姉・力の嫁いだ城である。しかし・・・浦上宗景の凋落と同時に毛利が上月城に手を伸ばしてきたのである。

赤松氏の一族である上月氏が事実上、毛利の配下となったことは混乱に拍車をかけていた。

東の別所はすでに織田に下っている。

織田か・・・毛利か・・・生き残りを賭けて官兵衛は情報の分析に忙しかった。

武田勝頼の無残な敗北が・・・夏を前に播磨国に伝播する。

官兵衛はようやく、迷いを脱しようとしていた。

その頃・・・宇喜多直家は・・・役目を終えた久松丸のために・・・毒を用意する。

備前岡山城内・・・齢十歳に満たぬ久松丸は父親が盛られたのと同じ毒を呷った。

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2014年2月16日 (日)

次元をかける少女(杉咲花)まぼろしの両思い(桜井美南)あかつき作戦(佐藤乃莉)

少年ドラマシリーズ(NHK)のスタートは「タイムトラベラー」(1972年)で原作は言わずと知れた「時をかける少女/筒井康隆」である。

そのために・・・少年ドラマシリーズといえばSFジュヴナイルの印象があるが実は内容は様々なジャンルに渡っている。

小林信彦原作の「怪人オヨヨ」もあるし、「風の又三郎」や「長くつ下のピッピ」などの児童文学原作、星新一はSFではなくてミステリの「気まぐれ指数」だったりする。

その中で・・・光瀬龍原作の「暁はただ銀色」「夕ばえ作戦」「明日への追跡」と並び・・・中核をなすのが・・・眉村卓原作の「まぼろしのペンフレンド」「未来からの挑戦(ねらわれた学園)」そして「なぞの転校生」である。

原作にはそれぞれ・・・素晴らしいオリジナルティーがあるが・・・少年ドラマとしての「タイムトラベラー」と「なぞの転校生」にはいくつかの共通点がある。

それはヒロインの乙女心の揺らめきと・・・幼馴染と異邦人を対象とする三角関係である。

「タイムトラベラー」では未来から来た少年への恋慕が前面に押し出されるが、実はヒロインは幼馴染との思い出の記憶を操作され・・・本来の相手ではないものを恋慕してしまう仕掛けになっている。

「なぞの転校生」はその進化系で・・・幼馴染との淡い初恋が・・・より魅力的な異邦人の登場で揺らいでいくという明確な三角関係を構成しているのである。

本来なら・・・中学生だろうと高校生だろうと肉体関係が生じ、修羅場に発展するわけだが・・・ドラマはもちろん・・・そこをオブラートに包んでいく。

二人の男の子を好きになって困惑する少女のときめきや・・・初恋の人を見知らぬものに奪われそうになる少年のもやもやが・・・少年少女の心をくすぐるのである。

本格的にくすぐってきた・・・今回。

子供から大人までクスクスしながらうっとりするといいと思う。

で、『・第6回』(テレビ東京201402150012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。ショパンの存在しないD12世界への局地限定的侵略を開始するなぞの転校生・山沢典夫ことモノリオ(本郷奏多)・・・D12世界の高校生・岩田広一(中村蒼)の幼馴染・香川みどり(桜井美南)が回想風モノローグで語る「来たるべき日」がついに到来する・・・。

原作には登場しないが、少年ドラマシリーズでは異次元人の徴として登場する★(星型)の痣。ドラマ24版では・・・人格改造装置・アステロイドとして登場である。

侵略の拠点となった江原正三(ミッキー・カーチス)の部屋で・・・モノリオに・・・社会不適合者として認定された男たちは・・・モノリオの使い捨て使用人として改造されている。

知的物質モノリスを利用したモノリオの世界では・・・人類は禁断の領域にまで発達したテクノロジーが存在するのである。

アステロイド使用奴隷一号となった殺人者・冴木(碓井将大)はモノリスによって活性化した江原老人とともにモノリオの支配下に置かれるのだった。

社会的に不適合な悪の因子を持った冴木に魅了されていた女子高校生・咲和子(樋井明日香)は消息不明となった彼を求めて・・・今日も不良たちのたまり場だったひび割れた壁のある屋上に姿を見せる。

「冴木・・・どこへ行っちゃったんだ・・・」

そこへ・・・女友達が・・・冴木の目撃情報をもたらすのだった。

恋する乙女は冴木の元へ駆けつける。しかし・・・そこにいたのは・・・江原老人とともに買い物袋を提げた妙に大人しい冴木だった。

「冴木・・・何やってんだよ」

「買い物ですけど」

「ですけど・・・って・・・このじじい、誰だよ」

「山沢くんのおじいさんです」

「山沢くんって・・・」

「知ってるだろう・・・山沢くん・・・」

「・・・」

「ほら・・・一昨日、僕が屋上から突き落としたあの山沢くんだよ」

「ぼ、僕って・・・」

「山沢くんが死なずにいてくれたおかげで・・・僕は人殺しにならずにすんだんだ」

「お前・・・本当に冴木なのか・・・喋り方がいつもと全然ちがうじゃねえか」

「僕は生まれ変ったんだ・・・すべてし山沢くんのおかげさ」

「どういうことだよ・・・」

「今度、山沢くんの家に引っ越ししてくる人がいて準備が大変なんだ・・・だから、せめてもの罪滅ぼしに・・・こうやってお手伝いをしているんだよ」

「冴木・・・お前・・・どうにかなっちゃったのか・・・」

「どうにもならないさ」

「おかしいだろうっ」

思わず・・・買い物袋を叩き落とす咲和子。

「だめだよ・・・食べ物を粗末にしちゃ・・・」

落ちたものを拾う冴木の首に★を発見する咲和子。

「なんだよ・・・これ・・・」

「痛いっ」

「え・・・」

「とにかく・・・僕は君にもひどいことをしたことがあるから・・・今度、謝るよ。でも、今は買い物を山沢くんの家に届けなければならないのです」

「なんなんだよ・・・どうなっちゃってんだよ・・・わけがわかんねえよ」

仕方なく、冴木を追跡する咲和子だった。

江原老人の住居の前に巨大なトラックが停車していた。

モノリオの奴隷となった街の不良たちは次から次へと荷物を江原老人の部屋へ搬入していた。

奇妙なことに・・・巨大なベッドまでが・・・それほど大きくない老人の部屋の扉を通過していく。

そして・・・老人の部屋のスペースには到底おさまりきれない物品が・・・次から次へと運びこまれて行くのだ。

しかし・・・咲和子は・・・そのことに気がつかず・・・作業を監督するモノリオと鎌仲才蔵(葉山奨之)に目を留めるのだった。

「おい・・・これ・・・どういうことだよ」

「やあ・・・君か」

「なんで・・・あいつらが・・・お前の手下になってんだ」

「おいおい・・・山沢はあいつらを手下になんてしてないぞ・・・あいつら、喜んで仕事してるよ・・・なんていうか・・・山沢に惚れたんだな」

「なにいってんだ・・・サイゾー・・・お前もおかしくなっちゃったのか」

「なんでだよ」

「急に・・・山沢と仲良くなるなんておかしいじゃねえか」

「俺は・・・山沢とダチになったんだよ・・・みんなだってそうさ・・・ようするに・・・目覚めたんだ・・・」

「何に目覚めたんだよ・・・お友達ごっこか・・・」

「だから・・・本当にダチになったんだよ・・・見りゃ・・・わかるだろう」

「そんなバカなこと信じられるかよ」

「お前・・・本当にさびしいやつだな」

「お前にいわれたくねえよ」

二人のかみ合わない口論をよそにモノリオは告げる。

「ちょっと出かけてくる・・・後は頼んだよ」

「まかせておけ」

モノリオは冴木を連れてその場を離れる。

咲和子は男たちの首筋に★があるのに気がついていた。

「おい・・・サイゾー・・・ちょっと首を見せろ」

「なんだよ・・・お前・・・まさか・・・俺に」

「違うよ・・・ない・・・お前はないのか」

「なんの話だよ・・・」

咲和子は何か・・・想像を超えた出来事が起きていることに気がついた。

しかし・・・それが何かを理解することはできなかった。

モノリオと冴木は・・・この町の実質的な支配者であるサイゾーの父親・鎌仲龍三郎(河原さぶ)の経営する鎌仲商事へやってきた。

冴木だけがロビーの受付を訪ねる。

受付嬢(皆川舞)は来訪者としては奇妙な少年に笑顔で応ずる。

「何か御用でしょうか」

「僕は・・・鎌仲会長のご子息のサイゾーくんの友人です・・・鎌仲会長に会いたいのですが」

「少々、お待ちください・・・」

やがて・・・会長の意を受けたらしい鎌仲商事常務の笹井(野口雅弘)が現れる。

「失礼ですが・・・どのようなご用件でしょうか」

しかし・・・冴木はモノリスを取り出していた。

モノリスによる閉鎖空間が形成され・・・空間内の人格は情報操作の対象となるのだった。

「会長室はどこか?」

「44階にあります」

「会長はいるのか?」

「はい・・・しかし・・・入室には虹彩認証が必要です」

「君の虹彩は登録されているか?」

「はい」

モノリスは笹井の虹彩を瞬時にコピーした。

もちろん・・・屋外からモノリスを通じて冴木をコントロールしているのはモノリオである。

東西山高校2年3組ではのどかに・・・不在の山沢典夫が話題になっていた。

「山沢くん・・・今日も欠席だよ」と春日愛(宇野愛海)・・・。

「なんだか・・・おかしいよな・・・あいつ・・・」と大森健次郎(宮里駿)・・・。

「別におかしくはないと思うけど・・・ちょっと心配よね・・・ムーくん、帰りに一緒に寄ってみない・・・山沢くんのとこ・・・」とみどり。

「うん・・・」と広一。

みどりと広一は山沢が屋上から落下して無事だったという奇妙な話を聞いていた。

しかし・・・実際にどうだったかについては半信半疑である。

話の出所が・・・不良の咲和子だったからである。

そして・・・広一はその後に驚くべき光景を目撃するがその記憶は消去されてしまったのだった。

だが・・・二人の感じる山沢典夫に対する違和感は微妙にずれている。

転校生の奇妙な行動については・・・クラスメートたちも不信感を募らせていた。

ホームルームで担任の大谷先生(京野ことみ)に山沢の不審な行動を問う声があがる。

「あの転校生・・・このままでいいんですか」

「授業を平気で抜け出すし、欠席ばかりだし」

「理事長の親戚で・・・入学試験もフリーパスだったとか」

「ま・・・どうでもいいんですけどねえ」

大谷先生は人格制御された寺岡理事長(斉木しげる)の説明を生徒に伝える。

「山沢くんは理事長の親戚ではないそうよ。入学試験を受けて合格したけれど・・・健康的な問題で・・・これまで通学ができなかったそうです。学力的には二年に編入しても問題ないことはみんなも知っているわよね。これはプライベートなことなので・・・あれなんだけど・・・学校を休みがちなのは・・・健康的な問題がまだ解決していないということだということ・・・そのあたり・・・みんなもくんであげるといいと思う」

みどりは問題が解決したような気分になり・・・思わず拍手するのだった。

数人の生徒たちが拍手に加わる。

しかし・・・広一は拍手の輪に加わることができなかった。

山沢のことが気になるのか・・・山沢を庇うみどりのことが気になるのか・・・。

広一は自分の気持ちを持て余す。

そそくさとSF研究会の部室にこもったムーくんこと広一をみどりが追いかける。

「どうして・・・拍手してくれなかったの」

「・・・あんなの茶番だもの」

「茶番って・・・どういう意味・・・」

「入学試験に合格したなんて・・・あいつは・・・俺に会うまで・・・この学校の存在すら知らなかったんだぜ」

「なんだか・・・冷たいのね。ムーくん・・・山沢くんのこと・・・どう思っているの」

「変なやつだ」

「変って・・・」

「屋上から落ちてピンピンしている奴が・・・健康に問題があるってどういうことだよ」

「・・・そのこと・・・みんなに言ってないでしょうね」

「みどりが言うなって言うから・・・言ってないよ」

「これ以上、変な噂がたったら可哀想だもの」

「みどり・・・君は山沢の事が好きなのか」

「・・・そんな・・・そういうんじゃないわ・・・山沢くんは・・・同じ班の仲間じゃない」

「・・・そうかな」

「なによ・・・どういう意味・・・」

「さあ・・・みどりは・・・山沢に・・・優しすぎると思うから」

「私は・・・」

「あいつのことを・・・おかしいと思わないのが・・・その証拠だ」

「・・・」

「知りもしなかった学校の入学試験に受かっているなんて・・・記憶喪失でもしてるみたいじゃないか」

「記憶喪失・・・そうなのかも・・・健康的な問題ってそういうことじゃない・・・山沢くんは何か大切なものを失ってしまった人のような気がするの」

「ほら・・・君はやはり・・・山沢に都合のいいことを言い出してる」

「だって・・・山沢くんは・・・ムーくんのお隣さんでしょ・・・山沢くんのことを誰よりも最初に知ったのは・・・ムーくんでしょう・・・あなたこそ・・・もっと山沢くんのことに親身になってあげればいいのに・・・」

「・・・」

「ひょっとしたら・・・山沢くんは・・・ムーくんのことをもっと昔から知ってたりして・・・ムーくんも忘れているだけだったりして・・・」

「それで・・・俺のことを慕ってこの学校に来たとか・・・どんなラノベだよ・・・どこの深夜アニメだよ」

「そう?」

「つまり・・・みどりは・・・あいつのことが気になるんだろう」

「・・・」

「覚えてる・・・夜の体育館で・・・みどりが俺に言ったこと・・・俺がみどりのこと好きなんじゃないかとかなんとか・・・図星だったよ。俺はみどりのことが好きだ。・・・でも、みどりは山沢のことが好きなんだよな」

「流れ星を二人で見た日・・・私が何を願ったと思う?」

「・・・」

「私の好きな人が私を好きでありますようにって祈ったの・・・もちろん・・・ムーくんのこと」

「だったら・・・その願いは願う前から叶ってたさ」

「そう・・・」

「どうしたんだ・・・うれしそうじゃないね」

「ムーくんはひどい・・・なんでそんなこと今言うのよ・・・あの夜、体育館でなんで言わなかったの」

「なんで・・・今じゃダメなんだ」

「タイミングの問題よ・・・だって・・・私はあの夜、ふられたと思ったもの」

「だからって・・・」

「今は・・・自分で自分が分らなくなっちゃった・・・」

「なんだよ・・・それ・・・心変わり早すぎるだろっ」

思わず苦心惨憺した特撮セットを叩き潰す広一だった。

「あ・・・しまった・・・コマ撮りで二ヶ月かけて・・・後少しで完成だったのに・・・」

後悔先に立たずである・・・やり場のない気持ちをものにぶつける場面としては近年まれにみる痛々しさだった。

「くそ・・・」

泣きながら笑うみどり・・・。

「なにが・・・おかしいんだよ」

「おかしくなんてないよ・・・」

悲しい場面では涙ぐむ二人だけのメモリーだった。

冴木は会長室に乗り込んでいた。

「なんだ・・・君は・・・」

「冴木です・・・」

「冴木?」

モノリスが始動し・・・鎌仲会長の高次元精神改造が開始される。

屋外ではモノリオが・・・制圧の完了を確認しようとしていた。

しかし・・・モノリオのモノリスは・・・警報を発するのだった。

「なんだ・・・よりによって・・・この局面で・・・不具合が起るなんて・・・」

あわてて・・・モノリオは会長室に向かう。

そこに咲和子が現れる。

ロビーでは閉鎖空間に閉じ込められた受付嬢と笹井常務がフリーズしたままだった。

「なんだ・・・これ」

「君・・・どうしてここに・・・」

「お前を尾行してきたに決まってるだろう」

「・・・」

「おい待てよ・・・説明しろよ」

「そんな暇はない・・・ついてくると・・・君は死ぬことになるよ」

「死ぬって・・・」

思わず立ち止まる咲和子。

モノリオは会長室へ向かう。

逡巡していた咲和子の前にサイゾーが現れる。

「お前・・・なんでここに・・・」

「何言ってんだ・・・ここは俺の家だぜ」

呑気に階段を上がるサイゾーを追う咲和子だった。

会長室ではモノリオが警告メッセージを放っていた。

会長と冴木はモノリオの影響下に置かれ・・・精神的にも肉体的にも危険な状態に置かれている様子である。

「何が起きた・・・」と問うモノリオ。

「ターゲットはモノリスを初期化しようとしています」と答えるモノリス(声=八雲ふみね)・・・。

「なんだって・・・そんなバカな」

「ターゲットの生命活動を停止しますか・・・モノリスを初期化しますか」

「モノリスに干渉しようとする人間がいるなんて・・・」

「ターゲットを殺しますか・・・モノリスを初期化しますか」

「・・・」

そこへ・・・サイゾーと咲和子が到着する。

「なに・・・これ」

「どうなってんだ・・・」

「う・・・」

「親父・・・どうなっちゃってんの」

「サイゾー・・・心臓マッサージって知ってるか」

「え・・・」

「とにかく・・・心臓を圧迫するんだ」

「誰の・・・」

「君の父親のだ・・・」

「え・・・親父・・・心臓とまってんの」

「これから止まる」

「え・・・どういうこと・・・」

「とにかく・・・心臓マッサージだ」

「殺しますか・・・初期化しますか」

「殺せ」

モノリスは・・・会長との接合を解いた。

モノリスによって統合されていた会長の神経回路は機能停止し、心肺機能も一時的に喪失する。

転倒する会長と冴木。

「急げ・・・心臓マッサージだ」

「ああ・・・うん」

あわてて父親の前にかがみこむサイゾー。

モノリオは冴木を助け起こす。

「大丈夫か」

「はい」

モノリオは茫然と立ちすくむ咲和子に叫ぶ。

「君も一緒に来い・・・ここにいてはまずい」

「・・・いやだね」

「なに・・・?」

「私はここに残って・・・警察にあんたが・・・サイゾーの親父を殺したことを話すよ」

「馬鹿な・・・そんなことをしたら・・・」

その時、冴木のモノリスが活動を再開する。冴木はモノリスから咲和子にむかって心肺停止信号を射出するのだった。

咲和子はのけぞりながら心臓の鼓動をとめる。

一部お茶の間向けパンチラサービスはないのだった。

その時・・・会長が息を吹き返す。

「やった・・・」

「よし・・・今度は・・・こっちだ・・・」

「ええ・・・胸が・・・ふくらんでるぞ・・・おっぱいが」

「ふくらみごと押しつぶせ」

「おう・・・」

モノリオは冴木を抱えて退避行動を開始する。

「僕の判断はまちがっていましたか」

「いや・・・君は正しいことをした」

「では・・・なぜ・・・彼女を助けるのですか」

「君にとって正しい判断が・・・僕にはできないルールがあるのだ」

「・・・」

「彼女には・・・殺される資格がないのだよ」

「・・・」

「とにかく・・・彼女がここで死ぬことは許されないのだ」

「・・・」

「それにしても・・・どういうことだ・・・モノリスをコントロールする人間が存在するとは・・・単なるモノリスの誤作動によるバグが生じた可能性もあるが・・・他の要因・・・好ましくない誰かがこの世界に来ている可能性も否定できない」

「何をおっしゃってるのか・・・わかりません」

「うん・・・僕にもわからない」

不確定要素を残しながら・・・モノリオは次元回廊を解放する期限を迎える。

「なんとか・・・間に合ったな」

江原老人の部屋はD8世界のテクノロジーによって容積を拡大していた。

合わせ鏡のような次元通路の開口部は・・・無限の彼方に向かって開かれる。

やがて・・・崩壊しつつあるD8世界からの移住者たちが回廊に現れた。

モノリオの奴隷たちは回廊に入りこみ、移住者たちの通過をサポートする。

よろめきながらやってくるもの・・・寝台車になってやってくるもの・・・その中に・・・ケロイドに覆われたようなアスカ姫(杉咲花)の姿が出現する。

「久しぶりですね・・・モノリオ」

モノリオはアスカを恭しく出迎えるのだった。

モノリオの上官であるアゼガミ(中野裕太)がやってくる。

「王妃様が重体だ」

「準備はできております・・・ストレッチャーのままこちらへ」

寝台車の王妃(りりィ)は拡張された空間にある手術室に運び込まれる。

そこにはモノリスによって高機能洗脳された医師(並樹史朗)や麻酔医(早川知子)や看護師(山崎智恵)が待機している。

「麻酔かかりました」

「腹壁損傷のオペを始めます・・・バイタル」

「レート60・・・血圧75・・・STO2 98%」

「針糸サンゼロ」

「はい・・・」

移住者たちの長い夜が過ぎていく。

モノリオは・・・特設格調によって部屋から屋上への亜空間直通路を開いていた。

それは・・・アスカ姫へのささやかな贈り物だった。

「これが・・・D12世界の朝というものか」と汚れたままのアゼカミがつぶやく。

「今日は・・・青空が見えるでしょう」

「青空・・・この黎明の美しさは・・・なんということでしょう」と汚れたままの高官の一人・スズシロ(佐藤乃莉)が囁く。

「この美しいものを・・・D8世界は惜しげもなく捨てたのか・・・」とアゼガミ。

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる・・・」とスズシロは「枕草子/清少納言」の一節を思わず口ずさむ。

「まさに・・・それは・・・このことか・・・夢のよう・・・」と言いかけて咳込むアゼガミ。

先頭を歩むアスカは汚れを落としている・・・朝焼けに目を奪われながら・・・彼女は呟く。

「プロメテウスの火はいつまでも燃えていたわ」

燃え続けるプロメテウスの火・・・それは・・・恐るべき破壊を招いたテクノロジーの暴走を指すのか。それともD8世界を滅亡に導いた人工太陽のごときもなのか。それとも・・・神から盗み取った何かの宗教的シンボルなのか・・・。

すべてはまだ謎に包まれている。

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2014年2月15日 (土)

焼きそばに地獄へまっしぐらな感じのモノを入れるのは犯罪です(山田孝之)

闇金は犯罪である。

しかし、ドラマで描かれる行為は演出上のものである。

このドラマはフィクションです・・・という但し書きは・・・さらに進化している。

「表現の自由」は絶対不可侵のものであるというのが表現者の基本姿勢だが・・・現実というフィクションはもつれあった利害関係で構成されているために冒されてはいけないものが冒されるのが普通である。

「報道の自由」を謳う大新聞が自社の不祥事にはあまり、自由に報道しなかったりするわけである。

いかにも・・・公明正大な報道をしているかのように見えるテレビも・・・公共放送は時の行政府や、お茶の間の顔色を伺いつつ、不自由な報道を行っている。

民放はさらにスポンサーという自由の制約者を持っている。

そこでは・・・公序良俗に対する一定の不自由さが表現の自由を抑圧していることは言うまでもない。

たとえば「生殖器の露出」などは相当に慎まなければならない表現なのである。

また・・・「諸外国に対する論評」などもある程度、抑圧される。

バカでもチョンでもなどと言えば叱られるのであり、バカチョンカメラは死語になるのである。

昔は「エロ」だとか「ちびくろサンボ」とかでも表現者は時に叩かれ、時に雄々しく戦ったものだ。

最近では・・・一種の不文律ができあがり・・・基本的人権や・・・公序良俗などという曖昧な概念と・・・表現の自由の間では一定の了解ができている。

時に表現の自由はマスメディアという第四の権力を暴走させることもあるからである。

「TBSテレビ」などはオウム真理教事件で殺人事件に関与してしまい・・・一度は死んだのである。

しかし・・・「表現の自由」は絶対に放棄してはならない表現者の砦であることは間違いない。

ドラマは集団による表現である以上、集団的に自由でなければならない。

まあ・・・基本的にしがないサラリーマンである表現者たちに何を言っても無駄だと思うが・・・人間として絶対に譲ってはいけないものがあることを心の片隅に留めてもらいたいと考える今日この頃だ。

で、『ウシジマくん Season2・第5回』(TBSテレビ201402140058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・白川士を見た。最近、多重債務者の過払い金返還請求業務で得た報酬を申告せずに約1億5千万円を脱税したとして東京国税局が所得税法違反容疑でNPO法人の理事を告発するというニュースがあった。事の真偽は別として「国民救済」とか「消費者支援」とかをお題目に掲げる団体が・・・貧民を貪るという構図は確かにあるわけである。そういう事象があるからといってフィクションは別にそれとは無関係に存在するのだ。とにかく・・・このドラマは・・・あらゆるものを食いつくそうとする犯罪者たちの虚構にすぎないのだから。それを見て楽しい気持ちになるのはお茶の間の自由なのである。表現の自由と同じように・・・鑑賞する自由もまた絶対不可侵だといいのになあ。

今や・・・そこにも踏み込もうとしている正義はある。

だが・・・まあ・・・犯罪ならしょうがないよね。

もちろん・・・鑑賞の自由を守るたるに獄中生活も辞さないという人はまさに精神の自由を謳歌して、肉体的に不自由になったりするので注意が必要です。

ギャンブルに何を求めるのか・・・それは人それぞれだと思うが・・・カウカウファイナンスの柄崎(やべきょうすけ)も何かを求めて・・・金か・・・一瞬の勝利感か・・・地下カジノで金を落すのである。

フリーターの宇津井優一(永野宗典)がギャンブル依存で重ねた借金を・・・優一の母の母の終の棲家で清算させる血も涙もない闇金業者が・・・同じ崖っぷちに向かって揺れているのだ。

それを知ってか知らずか・・・ウシジマくん(山田孝之)はポーカーフェイスなのだった。

そして・・・高田(崎本大海)の元ホスト仲間・隼人(武田航平)が持ちかけてくる「絶対に怪しい投資話」に何故か、百万円、さらに五百万円とぶっこんでくるのだった。

高田はただならぬ気配を感じ、隼人の身を案じる気持ちから・・・ウシジマくんの介入を避けようとするのだが・・・もはや手遅れなのだった。

「絶対に怪しい投資話」にウシジマくんがからんだ以上、「絶対に怪しい金」を求めて弱肉強食の闘争が繰り広げられるのは必至であり、うかうかすれば高田だって食われてしまうに違いないのだ。

一方、ついに親の保護を失った・・・優一(35)は低料金の宿泊施設・ゲストハウスで漂泊中である。管理人の幸(絵美里=2009年ミス・ユニバース・ジャパン宮坂絵美里)にあらぬ思いを抱いているが・・・ゲストハウスに集う底辺の若者たちからは「国民の義務が何かも知らないおっさん」として低学歴を嘲笑される始末である。そして・・・幸にはふさわしいパートナーのゲストハウスオーナー(西興一朗=「爆竜戦隊アバレンジャー」のアバレッド)が存在しているのだった。強力なゲストハウス経営陣である。

コインランドリーを利用することで・・・洗濯に金がかかることを初めて知った優一は・・・それでも一人暮らしのアパート生活を目指し・・・底辺からの脱出を目指す。

はたして・・・優一は大人の階段を昇ることができるのか・・・。

その頃、「読者モデルの頂点」を目指し、カラオケ店「トマト」のジュリア(佐々木麻衣)と風俗店「エロリアーナ」のリリイの表と裏の顔を持つ女には・・・裏の顔・・・露出の危機が迫っていた。

「トマト」のアルバイトの先輩で大学生の浅倉(岩澤晶範)がジュリアの裏の顔を嗅ぎつけ、風俗嬢としての仕事ぶりを盗撮して・・・金と身体を求めて恐喝してきたのである。

「読者モデルとしてつぶされたくなかったら百万円出せ」という浅倉。

借金をするためにカウカウファイナンスを訪れたジュリアにウシジマくんがアドバイスを贈る。

「一度払えば・・・二度三度だ・・・お前は・・・覚悟を決めたんじゃないのか」

うかうかと恐喝に現れた浅倉は・・・恐喝の言動を・・・録音されてしまうのだった。

初歩だよな。

「おまえ・・・風俗嬢だとバラされてもいいのかよ」

「いいわ・・・だって風俗嬢だから・・・でも、そんなことしたら・・・録音を警察に提出するわよ・・・あんたの人生にも犯罪者の烙印が押されるんだよ」

「・・・」

素人の悲しさだった。

まあ・・・手荒な真似をしたら・・・こわいお兄さんの出番になるだけだけどな。

そして・・・カリスマ的オサレエンペラー・G10(藤本涼)に導かれ、麻薬の売人として高収入を確保した・・・中田広道(入江甚儀)は・・・オサレの世界で頭角を現し始める。

結局・・・どれだけオサレな私服を購入できるかが読者モデル界の出世を左右するのだった。

年商十億円の通販サイト・スキタイの小野社長(岩本淳)や・・・バイト先の先輩(押野大地)にヤバイ煙草を売りつけ・・・資金を手にした広道はオサレに磨きをかけるのだった。

そして・・・ついに・・・憧れの人気読モ・パピコ(紗倉まな)に声をかけられるのである。

なぜか・・・「ドラゴンボール」マニアとして意気投合し・・・端末をフルフルする二人だった。

パピコもまた読モで頂点を極めるために質素な生活をしていることを知り・・・広道は・・・カップ・ラーメンをベンチで食べながら恋に落ちるのだった。

ヤバイ商品の顧客からの呼び出しでデートを切り上げる広道にパピコは汽車はないけどチューチュートレインをするのだった。

広道は・・・オサレな世界が目の前に広がっているのを感じる。

しかし・・・商品を卸してくれるのは・・・鉄の扉の向こうで「助けて」と女(井野戸芙美)に叫ばせる明らかにヤバイ組織の構成員・ハブ(南優)だった。

「お前・・・結構、さばけるじゃねえか・・・次はもっとすげえブツを回すぜ・・・けどな・・・足がついたらシャレにならねえから・・・顧客はちゃんと選べよ」

ハブは親切にアドバイスをしてくれる。

さらなる高みを目指すために・・・ウシジマくんに借金を申し込む広道。

「もっとオサレがしたいんだ」

ウシジマくんは・・・金を貸すのだった。

「大丈夫なんすか」と柄崎。

「奴は前に進むしかないんだよ」とウシジマくん。「死ぬ気で前進して・・・たどり着くのは地獄だけどな」

・・・だよね。

最高にヤバイ物が封入されたカップ焼きそばを受け取った広道。

そこへ・・・パピコからデートの誘いがかかる。

最高にヤバイものを手に提げてルンルンと待ち合わせ場所へ向かう広道。

「おーい、ちょっと」と警察官に職務質問をかけられるのだった。

「荷物を見せてもらえるかな・・・」

広道の鼓動は高まるのだった。

世界が平和共存だけでは成り立っていないことを高らかに謳いあげるフィクションがここにあります。

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2014年2月14日 (金)

君(多部未華子)が僕の嘘に気がついた時間(三浦春馬)

人は人に優しい社会を目指し、その実現に務めて来た。

これに異を唱える人はいないだろう。

それは突き詰めて言えば自分が他人に優しいということである。

そのためには「想像力」が重要な要素となる。

他人の苦しみを理解する想像力。

他人の苦しみを自分に置き換える想像力。

他人の苦しみを和らげるための行為についての想像力。

他人の苦しみを和らげることが社会全体を利すると考える想像力。

他人の苦しみを和らげるために援助が自分を豊かにするという想像力。

想像力につぐ想像力が求められる。

しかし・・・他人の苦しみを理解できない人は多い。

他人の苦しみよりも自分の苦しみの方が大きく感じられることも多々ある。

あるいは・・・他人の苦しみを喜ぶ人も少なくない。

人と人はそういう世界に生きている。

で、『僕のいた時間・第6回』(フジテレビ20140212PM10~)脚本・橋部敦子、演出・葉山裕記を見た。人生は一瞬先が闇である。それは時間というものの性質によって規定されている。どんなに健康でどんなに賢くどんなに優れた人も・・・明日、不健康で、愚かで、劣った人になる可能性はある。人はその可能性を見出すだけで、不幸な境遇にある人、不自由な生活を送る人、悲惨な運命にある人に手を差し伸べずにはいられない生き物である。同情も共感も激励も感謝も尊敬も人が持つ心の機能に過ぎない。身体の不自由な人を見過ごさずにいられないのは・・・精神の不自由さを示しているという考え方もあるが・・・不自由であることが悪とは限らないのである。

僕は恵まれていると思う。

僕の両親は裕福だ・・・。僕が筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症すれば・・・国家の支援のおよばないところも補ってくれる。住居のバリアフリー化・・・。消費税はつかないが30万円から300万円を超えるものもある電動車椅子も高性能モデルを購入してくれる。もちろん、僕は多くは望まない。僕は自立した社会人なのだから。

でも・・・僕は嘘つきなんだ。

僕は友人にも恵まれている。車椅子生活になった僕と昔と同じようにつきあってくれる。

変わらぬ友情というものが変わって行く僕を支える。僕がまもなく消えていくことを前提に・・・やがて消えていく友情を大切にしてくれる人がこの世に何人いるだろう。しかも・・・水島守(風間俊介)は童貞で・・・村山陽菜(山本美月)の下僕だという不幸な境遇にあるにも関わらずだ。

まあ・・・不幸だからこそ、僕の不幸に共感してくれるのかもしれないが。

だから・・・僕は守の友情に感謝しつつ、明るい笑顔を向け、軽口を交わし合い・・・友情を温め続ける。

でも、僕は嘘つきなんだけどね。

僕は社会にも会社にも恵まれていると言えるだろう。

障害者の雇用を企業に課す社会。

そして・・・それに応える我が社。

「宮前家具」のアルバイト店員の宮下さん(近藤公園)はすっかり僕のお世話係である。

もう僕は宮下さんの嫉妬の対象ではなくなってしまったしね。

僕は身体の自由を失う度に職種チェンジしてきた。肉体作業ができなくなれぱデスクワークに。デスクワークも筆記用具が使えなくなればマウスを使う仕事に。コンピューター万歳だ。そして僕の不自由さに会社は対応してくれた。

「会社にとってお荷物じゃないか」と父親(小市慢太郎)は言うかもしれないが・・・父さん、そういうことも含めてあるべき企業の時代になったんだよ・・・今はね。

でも、もちろん、僕はずっと嘘をついているんだ。

僕は隣人にも恵まれている。

家庭教師をしていた頃、小学五年生だった桑島すみれちゃん(浜辺美波)も中学生だ。すっかり女の子らしくなってきた。もしも僕が変態だったら犯罪を犯しかねないほど美少女だが・・・もちろん僕にはそんな自由はなくなってしまった。そんな僕にすみれちゃんは「車椅子の人を助けてあげる」という気持ちで優しくしてくれる。僕が毎朝、出勤できるのもすみれちゃんの介助のおかげである。僕はすみれちゃんに助けてもらい、すみれちゃんは優しい心を育てる。世の中、ギブ・アンド・テイクなのである。

しかし・・・僕はなんといっても嘘をついているのである。

僕は弟に恵まれている。

弟の陸人(野村周平)は少し、残念なところもあるが・・・まずは・・・両親に先立つこと間違いなしの僕にとって心の拠り所だ。

こんな僕でもいなくなれば・・・父や母(原田美枝子)はきっと哀しむだろう。それについて僕の心は痛む。しかし・・・弟がいることは慰めになるだろう。だから・・・弟は僕にとってかけがえのない存在なんだ。

以前は・・・弟は僕にとってうらやましい存在だった。僕が応えることのできなかった医大進学という両親の夢を叶えた優秀な弟。だけど・・・どうやら・・・僕より以前に弟は障害を背負って苦しんできたみたいなのだ。

他人の心が分らない弟。それを単に鈍感とか・・・我儘だとか言う時代は過ぎ去った。

弟は優れた資質を持ちながら・・・他人の心を読みとる能力にかけたアスペルガー症候群を感じさせる心の障害を抱えていたのである。

優れた資質と・・・両親、特に母親の過保護のもと・・・タイトロープで生活してきた陸人だったが・・・大学という閉鎖された社会で・・・ついに他者を理解することができない人格が壁にぶつかってしまったのである。

共同作業もできず、講義にもなじめなくなった陸人はついに引きこもるしかなくなってしまう。

まあ・・・「お先真っ暗に兄貴」に「お先真っ暗」って言っちゃうんだから・・・困ったものだ。

ついに・・・弟に助けを求められた僕は・・・弟に感謝するべきだろう。

家族の役に立てるなんて・・・今の僕にとっては望外の幸せだ。

ちなみに弟を恐竜展に連れていくと・・・弟は「恥骨の素晴らしさについて」・・・呆れるほど語り続けるのだった。恐竜の恥骨だからまだいいが・・・人間の恥骨マニアになったらそれはそれで恐ろしいものがあるわけだが・・・まあ、そういう人間にも優しい社会であるればいいと思う。

やがて・・・僕と弟は久しぶりに兄弟になった。

身体の不自由な兄と・・・精神の不自由な弟・・・神様は素晴らしい配慮をなさってくださるね。

野球少年ならとりあえずキャッチボールをするところだが、僕はサッカー少年なのでパス交換だ。

そうだ・・・どうして僕は弟にサッカーを教えてやらなかったのだろう。

どうして僕は弟の心の病に気がついてやれなかったのだろう。

もちろん・・・嫉妬で目が曇っていたからだ。

僕は・・・こうなる前にはそれほど他人の痛みに敏感じゃなかったんだ。

だから・・・僕は嘘つきになった。

僕は素晴らしい先輩にも恵まれている。

向井先輩(斎藤工)は最初に僕の病気を知った他人だ。それ以来、僕が恵(多部未華子)についている嘘をずっと秘密にしていてくれる。

それどころか・・・僕が捨てた恵を拾いあげて・・・心の傷を癒し・・・ついには結婚するという・・・僕のできなかったことをやり遂げた・・・素晴らしい先輩だ。

僕は感謝しても感謝しきれないほど先輩に感謝しているのである。

だって・・・恵を幸せにしてくれているんだもの。

たとえ・・・そんな僕の気持ちが・・・嘘だとしてもさ。

僕が彼女に嘘をついて一年以上の歳月が流れている。

もう・・・嘘は限りなく本当のことになりかけてる。

主治医の谷本医師(吹越満)は僕が「病気と上手く付き合っている」と誉めてくれる。

多くの患者と接してきた医者の言うことには一理あるよね。

でもね・・・本当は僕は疑っている・・・たくさんの患者を知っていることと患者になることは違うんじゃないかと。

だから・・・僕が本当に気が許せるのは・・・同じ病気の患者だけなのかもしれないと思う。

同病相哀れむってやつさ。

先輩患者の今井保さん(河原健二)と知りあってメールを交換するようになったのもそういう自然な流れだった。

でも・・・そこには運命というべき何かがあったのかもしれない。

嘘をつき通すのはなんて難しいことだろう。

僕は電動車椅子サッカーに夢中になっていた。

国際電動車椅子サッカー連盟もあるし、ワールドカップも行われる。国内に何十もの協会・所属チームがある・・・それなりの障害者スポーツなのに・・・僕はそんなことがあることも知らなかった。

導いてくれたのは親友の守なんだ。

僕は嘘つきだけど・・・残された時間をそれなりに前向きに生きることに決めていた。

だって・・・僕は一番幸せにしたかった人を・・・幸せにできなかった男なんだ。

それどころか・・・彼女を傷つけてしまった。

でも・・・僕に・・・他にどうすればよかったって言うんだ。

だけど・・・運命は残酷だ。

世界中に星の数ほど体育館はあるだろうに・・・なぜ、この体育館に来た。

しかし・・・恵の仕事は介護だし、ALSの患者は介護の対象だし、恵の介護している今井さんは僕のメル友だし・・・結局、世の中はなるようにしかならないんだ。

僕を見つけた恵は言葉を失っていた。

「どうしたの・・・恵ちゃん」と今井さんは言った。

だから・・・僕が説明するしかなかった。

「彼女は大学の同級生なんですよ・・・僕は最近、発症したので彼女はそのことを知らなかったんです」

病気が理由で別れたんじゃない・・・僕は嘘をつき通そうとした。

でも・・・そんな嘘に騙される君じゃなかったね。

そりゃ・・・そうだ・・・だって君は僕の愛したメグなんだから。

彼女はただ一言・・・「会っちゃったね」と言った。

僕はしばらく・・・その意味が思いつかなかった。

そして・・・いつか自分が言った気障な一言を思い出した。

「会うべき人には必ず会えるのが運命だ」とかなんとか・・・。

その言葉を君は何度も思い出していたんだね。

そんな言葉をどうして忘れることができるだろう。

忘れられない人をどうして思いきることができるだろう。

君は気がついてしまう。僕の思いを。僕が嘘をついた理由を。

そして・・・きっと・・・君は一人で泣いてしまうんだね。

僕が嘘をついていたことを責め・・・僕の嘘を見抜けなかった自分を責め・・・。

僕を怨みながらなんとか幸せになろうとしてた自分さえもきっと責めてしまうかもしれない。

君と別れた後の僕の絶望も見抜いてしまうだろう。

ああ・・・僕は君を哀しませるだけの役立たずにもどってしまったよ。

僕はただ・・・メグに幸せでいてほしかっただけなのに・・・。

それが・・・僕のただ一つの希望だったのに。

僕は君を泣かせた。

僕は君を泣かせた。

きっと、僕は君を泣かせた。

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2014年2月13日 (木)

ポスト、ポスト、ポスト(五十嵐陽向)涙の飴細工(芦田愛菜)チッチが長すぎて心配(三上博史)

17歳の少女に襲いかかる重圧。

売り上げ確保のためには豺狼の如く書きたてるスポーツ・ジャーナリズム。

その容赦のなさを棚にあげて・・・「明日、ママがいない」が何をしたか・・・ということである。

もちろん・・・今や、アスリートたるものはそういうマス・メディアの重圧に耐えることも競技の一部だと思うしかない。

それにしても・・・スポーツはなんてメンタルな事象なのだろうか。

圧倒的な実力者に平常心を失わせ、忘我の境地が奇跡を呼び込む。

楽になろうとすれば苦しみに追い込まれ、苦しみを求めれば至福が訪れる。

その象徴たるカーリングのストーン・コントロール。

安全策が裏目にでるかと思えば一つの失敗が大いなる成功となる。

しかし・・・最後に笑うのは・・・貪欲で無慈悲なキャラクターなのかもしれないと恐怖を抱く時もある。

スポーツはドラマだ。

その一挙手一投足にケチをつけるバカはあくまでバカである。

クレームつけたもん勝ちなどと言うことがないように・・・痛みが分かち合えますように。

そして・・・お茶の間は・・・五輪一色に・・・ほら・・・やっぱり・・・。

で、『明日、ママがいない・第5回』(日本テレビ20140212PM10~)脚本監修・野島伸司、脚本・松田沙也、演出・鈴木勇馬を見た。ここまでよどみなく展開する事情があって親を喪失した幼い子供たちの物語。異常なクレーマーたちのお騒がせも一段落して・・・ようやく、のんびりとドラマを楽しむことができた人も多かったことだろう。マス・メディアも一部の異端者に対してはもう少し大人の対応をするべきだと学んだことだろう。まあ、一部熱狂者に扇動されてしまうのは古今東西、いい加減な記事は書き捨てのメディアにはよくあることですけれどもおおおおおおおおおおおおおおっ。

群像劇と展開し始めた今回は・・・それぞれの事情を背負った登場人物たちのドラマが淡々と展開して行くのだった。

パチンコ狂いの母親に捨てられたパチ(五十嵐陽向)は新たなお試し家庭に委託される。

飴屋の山口夫妻(松林慎司・高橋かおり)である。

半世紀も前の屋台の飴細工は子供の度肝を抜くキラキラ感があったと考える。

しかし・・・息を吹き込んで飴を膨らませたり、筆を口で吹いて食紅を散らしたりと・・・衛生的には・・・今考えると・・・冷や汗の出る技術でもある。

まあ・・・学校の予防注射で針を使い回しにしていた時代だからな。

しかし・・・21世紀になっても・・・飴細工は・・・パチの心を激しくとらえるのだった。

パチは・・・実の母親のシンボルであるシャンプーのボトルを捨て可愛い飴細工を手にしたのである。

新しいお母さん候補は・・・浴室に例のシャンプーを完備し、優しく語りかける。

「本当のお母さんのこと・・・無理に忘れなくてもいいのよ・・・でも・・・私・・・あなたのお母さんになれるようにがんばるからね・・・」

「・・・」とうつむくパチ。

「・・・かわいそうに・・・」と思わず涙ぐむお母さん候補。

「・・・かわいそう・・・」とその頬の涙を小さな手でぬぐうパチ。

幸せの予感を覚えたパチの唯一の気がかりは・・・グループホーム「コガモの家」に残される小さなママ・ポスト(芦田愛菜)の存在だった。

一方で・・・ポストは相変わらず・・・みんなの世話を焼くのである。

幸せが怖くて・・・ドンキ(鈴木梨央)が一度断った川島夫妻(松重豊・大塚寧々)のお試しが自分に回ってくればドンキに譲り・・・ピア美がピアノのコンペティション」に出るための練習が必要だと言えば夜の小学校に忍びこむのに付き添い、児童相談所のアイスドール(木村文乃)が誕生日だと知れば相思相愛に見えるロッカー(三浦翔平)にバースデー・ケーキを作らせ、イチゴを大量にデコレーションするのだった。

雨ニモマケズ

風ニモマケズ

雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ

サウイフモノニワタシハナリタイ

ドンキはアイスドールから・・・ポストがお試しを譲ってくれたことを知り・・・感謝する。

そして・・・勇気を出して幸せになることにチャレンジするのだった。

「私・・・幸せになるのが・・・こわかったんです」

「私は・・・あなたのことが・・・とても気に入ったのよ・・・」

「一つだけお願いします」

「なにかしら・・・」

「なるべく・・・普通にしてください・・・私のために無理しないで」

「無理なんかしないわよ・・・あなたもあなたのままでいいのよ」

「はい」

ポスト不在の時にはパチの面倒を見るドンキは「Woman」であり、里親家庭に行くと「八重の桜」になってしまう・・・ドンキも子役界のスターである。

ポストとドンキは・・・ママとチイママのようなナイス・コンビネーションなのである。

もう・・・それだけで十分、楽しいわけだが。

一方、アイスドールとロッカーの恋のキューピッドを演じるポスト。

しかし・・・あいにく・・・アイスドールはエリートの男性(川村陽介 )にプロポーズされているのだった。

「お人形」として・・・「ドールハウス」に収まるアイスドールの覚悟を敏感に察したポストは・・・ロッカーとともに撤退するのだった。

「なんだか・・・ごめんね」とロッカーにわびるポスト。

「あたしが大人になるまで待っててくれるかな」と自信満々の慰安を約束するのだった。

独自路線を歩む・・・ボンビ(渡邉このみ)。

ピア美とドンキから・・・「ジョリピーの人(城田優)の家にいたレイカ(舞優)は実子ではなくて姪」と聞かされるが・・・「だからといってジョリピーが子供が欲しいとは限らない」と正論を述べる。

オツボネ(大後寿々花)は「大人の階段をのぼったんだね」とボンビを評価する。

しかし、レイカにお誘いを受けると・・・ボンビはジョリピーの人にまっしぐらなのだった。

だが・・・ジョリピーの人の妻(Mailys Robin)は・・・不妊治療で悩んでいたらしく・・・家出騒ぎを起こすのだった。

成り行きでジョリピーの人と妻を捜すボンビ。

妻はほどなく発見されるのだった。

「ごめん・・・君が悩んでいたとは知らなかった。子供のことはもういい・・・君さえいればそれで・・・」

ジョリピーの人の言葉を受けボンビは叫ぶ。

「子供がいなくてさびしい人がいる・・・でも親がいなくてさびしい女の子がいることも・・・どうか・・・知ってください」

さりげないボンビのアピールに・・・ジョリピーの人は・・・胸を打たれた気配がある。

一方・・・オツボネは偶然知り合った魔王(三上博史)の別居中の妻(鈴木砂羽)の家に足繁く通う。

そして・・・魔王夫婦の悲しい物語を聞くのだった。

「私には夫がいるの・・・優しい人だった。やがて私は妊娠した。けれど・・・妊娠中に問題がおきて・・・私の命か子供の命か・・・どちらかを選ばなければならなかった・・・私は必死に子供を助けてくれるように夫に頼んだ。でも気がつくと・・・私だけが助かっていた。夫は子供でなくて私を選んだの。私はそれがどうしても許せなかった。だって夫は私の子供を殺したんだもの」

「・・・」

秘技・お箸をくわえたら唾液が分泌されて玉ねぎきっても涙が出ないを伝授されたオツボネは・・・魔王の妻の手をそっと握るのだった。

母のない子と子のない母はまた一歩近づいたらしい。

たまたま・・・演奏を耳にした音大教授(高橋ひとみ)の導きにより・・・全国大会へ続くピアノ・コンクール地区予選に出場するピア美。

ライバルはポストに片思いの御曹司・笹塚蓮ことれんきゅん(藤本哉汰)である。

れんきゅんに片思いのピア美にとって絶対に負けられない戦いなのであった。

しかし・・・ピア美の胸の内には・・・「消息不明のパパが・・・聴きに来てくれるかもしれない」という思いも秘められていた。

そして・・・パパ(別所哲也)の写真をポストに託すのだった。

響き渡る「愛の夢/リスト」に次ぐ「愛の夢/リスト」・・・課題曲なのか。

魔王と観客席にすわるポストはピア美のパパの姿を捜す。

「どこへいく」

「ちっちだよ」

「ちっ」

やがて・・・演奏の途中でこっそり現れるパパ・・・。

演奏の終了前に会場を去ろうとするパパをロビーで呼びとめるポスト。

「ちょっと待っててよ・・・演奏が済んだら・・・ピア美をつれてくるから」

「娘には会えない・・・」

「なんでだよ・・・」

「私にはあの子を幸せにすることができないんだ」

「ピア美にとって・・・あんたといることが幸せなんだよ」

「もうよせ・・・」と魔王が割って入る。

「その男は・・・親から受け継いだ財産をすべて使い果たし・・・莫大な借金まで背負っている・・・女房は蒸発し・・・人目を避けて生きているんだ・・・そんな男には・・・子供を幸せにできる力がないんだよ」

「でも・・・」

「娘に才能があるのは分かっていた。しかし・・・私と一緒にいればその才能はつぶれる。あの子は私にとって最後に残された宝石なんだ・・・その輝きを遠くから眺めることだけが・・・私の幸せなんだ」

「ちくしょう・・・そんなのって・・・ありかよ」

「ポスト・・・そういうこともあるんだよ」

すれ違うピア美とハムの人だった。

結局、金賞はれんきゅん。ピア美は銀賞だったが・・・全国大会の切符は手に入れた。

天才ピアニストが二人もいるクラスという夢物語なのである。

「パパを見かけなかった・・・?」とピア美。

「パパはいなかったよ・・・」とポスト。

「・・・」

その夜・・・アイスドールはロッカーに電話をかける。

ロッカーは喋らないのでただ聞くのみである。

「私・・・あの人からプロポーズされているの。私に居場所ができるのよ。あの人はきっと私を守ってくれる。だけど・・・私は守ってもらえるような価値があるのかしら。私は何を守っているのかしら。私は・・・」

ポスト以外はみんなが知っているパチの旅立ちの日。

「なんで・・・あたしに黙ってた」

「みんな・・・気をつかってたんだよ」

「パチを祝福してやれよ」

「・・・」

思わずパチを抱きしめるポスト。

「いい・・・パパなのか」

「うん」

「いい・・・・・・・・・・・ママなのか」

「・・・うん」

「そうか・・・よかったな・・・パチ・・・おめでとう」

「ありがとう」

パチはポストに手作りの飴細工をプレゼントするのだった。

パチにとってポストはママではなく・・・彼女にしたい女になったのである。

ロッカー、れんきゅん、パチとポスト争奪戦は激しさを増すのだった。

アイスドールの車で新しい家に向かうパチ。

いつもの土手にポスト(女の子)が立っている。

パチ(男の子)は叫ぶのだった。愛をこめて・・・。

「ポスト、ポスト、ポスト」と。

こんな心優しいドラマに苦情を言う人たちって・・・一体・・・。

そしてうかうかと反応するスポンサーって・・・一体・・・。

結局、あたふたと対応する制作者たちって・・・一体・・・。

まあ・・・それが世界というものなのである。

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シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の明日、ママがいない

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2014年2月12日 (水)

一匹(泉谷しげる)、二匹(志賀廣太郎)、三匹のおっさん(北大路欣也)

元ネタは「三匹のこぶた」じゃなくて「三匹の侍」(1963年)なんだろうな。

柴左近(丹波哲郎)、桔梗鋭之介(平幹二朗)、桜京十郎(長門勇)である。

あれから半世紀である。

などと感慨にふけっていると・・・スノーボード・ハーフパイプで銀・銅メダルキター!のだった。

中学生平野歩夢は・・・憮然としていたように見えた。

ゴールド・メダリストは平野の得点が出るまで泣きそうだったからな。

悪い大人なら「U、金メダルとっちゃいな」と言うところだが・・・ドラマとしては二十歳になる前に次の五輪が巡ってくる平野のリベンジの流れも面白いからな。

すごい中学生をリスペクトするか・・・ジュラシーするかは全国の中学生の自由である。

まあ、嫉妬するより尊敬した方が健康にいいと思います。

で、『三匹のおっさん〜正義の味方、見参!!〜・第4回』(テレビ東京201402071958~)原作・有川浩、脚本・佐藤久美子、演出・白川士を見た。原作者は女流作家である。脚本は「赤鼻のセンセイ」「モンスター・ペアレント」などの人。演出家は「闇金ウシジマくん」も兼ねており・・・今回・・・中学生の黒い部分がかなりにじみ出ています。

還暦を迎えた三人のおっさん、剣道の達人・キヨ(北大路欣也)、柔道の達人・シゲ(泉谷しげる)、司令塔のノリ(志賀廣太郎)が夜回り自警団を結成し、ご町内の悪を成敗しまくるという展開である。ちなみに北大路欣也(70)、泉谷しげる(65)、志賀廣太郎(65)なので全員、なんちゃって還暦である。

まあ、中学生にとっては60歳も70歳もじじいに他ならないだろうがっ。

ここまで、恐喝犯(波岡一喜)、結婚詐欺師(大和田獏)などを順調に成敗してきて、今回は・・・皐ヶ丘中学校が飼育しているカモの虐待犯人をターゲットに定めるのだった。

ちなみにノリの娘・有村早苗(三根梓)がなんちゃって女子高校生をやってます。

キヨの剣道場に・・・中学校でカモの飼育係をやっている新垣美和(吉田里琴)がやってくる。

「カモが何者かによって虐待されているのです・・・学校は問題が大きくならないうちにカモを動物園に寄付すると決めました・・・でも、私はカモの世話を続けたいのです。なんとかならないでしょうか」

「そりゃ・・・理不尽だな」

早速、学校に乗り込む三匹のおっさん。

校長先生(有福正志)は「カモが殺されたりしたら生徒が動揺するざます」と主張するPTA会長の徳永牧子(阿南敦子)に押し切られているところだった。

「こういう問題はちゃんと解決しないとエスカレートします。嗜虐的な犯人の標的が生徒に移るかもしれません」とカモ飼育の継続と犯人捜しを推奨するキヨだった。

一方、学校の会議室に盗聴器が仕掛けられていることを見抜いたノリは・・・逆手をとって犯人を誘導する作戦を立案するのだった。

犯人が合鍵を使っている可能性の高いことから・・・学校内部に犯人がいると断定するノリ。

容疑者として・・・ふたつの鍵の持ち主が浮上する。

理科教師で飼育係顧問の菊池先生(袴田吉彦)、学校用務員の野島のおじさん(蛭子能収)である。

菊池は生徒たちに冷たく接するし、野島は見るからに怪しいのだった。

「人を見たら泥棒と思え」なのである。

ものすごく・・・殺伐とした教えであるが・・・泥棒が根絶できない以上、忘れてはならない教えなのだった。

「私も・・・用務員さんが怪しいと思う」と新垣美和も言うのだった。

しかし、野島のおじさんは・・・ゴミ箱からキクチとネームの入った血染めの白衣を発見する。

けれど、ノリがルミノール反応検査をしたところ・・・血痕と見えたのはただの絵の具だった。

ノリは状況から犯人の目星をつけるのだった。

「嘘つきは泥棒の始り」なのである。

「こんな見え透いた手口で人に罪をかぶせようとするのは・・・中学生に違いない」と断定するノリだった。

盗聴器を逆利用して、偽の情報を流し・・・犯人をおびき寄せ、罠を仕掛ける三匹のおっさん。

犯人は・・・PTA会長の息子を主犯とする男子中学生たちだった。

鉄拳制裁をくらわせる三匹のおっさん。

「泥棒をとらえてみれば我が子なり・・・ですな」

「ひどいわ・・・暴力を振るうなんて・・・体罰絶対反対」とモンスター・ペアレントとして火を吐くPTA会長。

「ふざけんな・・・親がそんなことだから・・・他人の痛みが分らない子供が育つんだよ」とシゲ。

しかし・・・バカは死なないと治らないのである。

校長も責任問題を恐れて警察には通報せずに穏便にことをすませるのだった。

「ありゃあ・・・いつか・・・通り魔とかストーカーになるな」と矯正されない子供たちを見送る三人のおっさんだった。

キヨは・・・クールな菊池先生が気になっていた。

「どうして・・・生徒の相談にのってやらなかったんだい」

「誰かの相談にのったら・・・贔屓していると問題になるんですよ・・・なつかれたら困るんです」

「それで・・・さびしくないのか」

「仕事を失うわけにはいかないでしょう」

「・・・」

三人のおっさんの前には・・・不様な現代の世界が横たわっている。

キヨの道場に・・・カモの飼育係の美和が御礼にやってくる。

「私・・・小学生の時にいじめっ子だったんです・・・でもそれが悪いことだったと思っていじめた子にあやまろうとしました・・・でもいじめられた子は絶対に永遠に金輪際許さないと言うんです・・・私がカモの世話をするのは・・・せめてもの罪ほろぼしなんです」

涙する美和にキヨは困惑するのだった。

「まあ・・・お汁粉でも食べなさい」

世界は悪に満ちている・・・しかし、善人や正義の味方になろうと思えば・・・誰でもなれるチャンスがある。

まあ・・・年寄りの冷や水にはご注意ください。

Rc20140207001 CLUB Riko開催中・・・シャブリいじめっ子ではない里琴ちゃん・・・動物虐待をしているのは袴田先生・・・と思ったら虐待しているのは生徒たちだった・・・そして里琴ちゃんは元いじめっ子・・・なかなかにひねっているのでありましたああああああ

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2014年2月11日 (火)

最高の離婚シャボン玉スペシャル(臼田あさ美)

背中がかゆい時に夫婦であることは最高に具合がいい。

もちろん、孫の手で掻いてもいいわけだが・・・孫も普通は夫婦の子供が夫婦になって発生するものだ。

所詮、夫婦というものはその程度のものだ。

夫婦に幻想なんて必要ないわけである。

そして・・・夫婦は夫婦でない男や女が手にしているものを失う。

だが・・・何かを得れば何かを失うのはこの世の基本原理であり、要するに選択の問題である。

・・・人は一人でも生きていける。

けれど・・・背中を掻いてくれる誰かがいることを贅沢に感じるタイプの人は結婚してもいいと思う。

まあ・・・したくてもできない人はたくさんいるわけだが・・・たくさんいるんだから・・・高望しなければ背中を掻いてくれるような相手は見つからないこともないと考える。

で、『最高の離婚Special 2014』(フジテレビ20140208PM9~)脚本・坂元裕二、演出・並木道子を見た。あれから・・・一年である。日本一神経質な男・濱崎光生(瑛太)と日本一がさつな女・星野結夏(尾野真千子)は離婚後もだらだらと同棲生活を続けている。一方で上原諒(綾野剛)灯里(真木よう子)夫妻には長女・薫が誕生し・・・順風満帆の結婚生活を送っている。しかし・・・夫婦には夫婦喧嘩がつきものであり、離婚したのに一緒に暮らしている男女はどことなく変態なのだった。

愛する人はあなただけ

誰も邪魔させない

・・・という「思い」を誰よりも強く持っているのは灯里(真木よう子)だが・・・「もてるので浮気の可能性が高い価値ある男」諒の前には・・・高校時代の初恋の人・・・潮見薫(臼田あさ美)が現れるのだった。

一方で・・・神経質な人間の方ががさつな人間より価値があると思いこんでいる・・・「もてないので浮気の可能性の低い価値ない男」光生は・・・そんな光生を認めてくれる数少ない異性である結夏ともう一度結婚したいと考えるようになっている。しかし、「子供が欲しい」という結夏の素朴な願望をどうしても肯定できず・・・再び、二人の仲は決裂するのである。

愛する人はあなただけ

そう信じてたけど

価値観の相違と言えばそれまでだが・・・あんなガサツな女に育てられる子供がかわいそうだ・・・という気持ちが光生の根底にはあるのだった。

そんな結夏の前に・・・女房に逃げられた二児の父親・黒部三徳(岡田義徳)が現れる。

幼女に太ももをぎゅっとされた結夏の心は揺れる。

神経質な元夫よりも・・・紅葉のような手を持つ他の女が生んだ子供の方に結夏のがさつな気持ちは傾くのだった。

やがて・・・弁当屋をたたんで故郷の北海道の牧場に戻ることにした黒部親子は結夏を誘うのだった。

北と南の区別もつかず、早起きが誰よりも苦手な結夏には絶対に牧場生活は無理だと思うが・・・フラフラと誘いに乗る結夏なのだった。

本気で好きだって言ったじゃん!

どんな事だってするよ!

悪いとこがあったら教えて?

我を忘れて結夏を追いかける光生。

一方・・・愛のレーダーで夫のよろめきを察知した灯里は・・・感傷旅行を目論む離婚歴二回の悪女・薫を上野駅で確保するのだった。

やがて・・・二組の三角関係を乗せて寝台特別急行列車「カシオペア」は上野駅を出発進行するのだった。

結婚前に諒の浮気に散々苦しめられた灯里は夫の浮気を盲信・・・。

しかも・・・愛の結晶である・・・娘の名前が・・・夫の初恋の女と一緒だったことに深く傷つくのだった。

「でも・・・名前つけたの・・・結夏さんだし・・・」と諒。

「だから・・・反対しろって言ってんのよ」と灯里。

「いや・・・逆にこだわっている気がして」

「それがこだわってんのよ」

「私・・・彼が結婚してるって知らなかったから」と大人の薫。

「隠したんですか」と光生。

「いや・・・言ったと思うけど・・・」

「本当にルーズなんだから」と光生。

「第一、僕・・・浮気してないよ」と諒。

「嘘でしょ・・・」と一同。

しかし・・・大人の薫は・・・諒からの留守電に残された伝言を示すのだった。

「あの・・・おひるごはんは食べましたか・・・僕は天津甘栗をたべました。ええと・・・今日、僕は一緒に行けません。昔・・・ぼくはあなたに言われました。あなたじゃたりないって。僕はずっと考えていたんです。僕にたりなかったのはなんだったのだろうと。それは僕が決断して何かを選ぶってことだったんじゃないかと思います。そして選んだからにはそれ以外はすべて捨て去る覚悟だったんじゃないかって。だがら・・・僕は家に帰ることを選びます。家族を選びます。家族と一緒に幸せになることを選びます・・・すみません」

夫婦喧嘩は犬も食わないのだった。

大人の薫は大宮駅で途中下車である。

一方・・・離婚した元夫婦の喧嘩は・・・ただの痴話喧嘩である。

だが・・・夫婦二人だけの静かな生活を願う光生と・・・子供がいるにぎやかな家族が欲しい結夏は根本的に・・・どこまで行っても平行線なのだ。

苦労なんて 覚悟してた

最後笑えるなら

追い込まれた光生は玉砕戦法に出るのだった。

「朝日の見れる部屋なんて無意味ですよ・・・昼前まで寝てるんですから。ちょっと仮眠するっていって八時間眠るんです。いつまでも起きてこないと思ったら三度寝してるんです。子供のお母さんになりたいなんていうけれど、気をつけてください・・・お弁当に平気でお刺身いれますからね・・・この人は・・・それからプロレスの技を仕掛けてきたらセックスしようの合図ですから」

やぶれかぶれで下衆を極める光生だった。

そういう人として欠陥のある光生を心の底では愛している結夏。

壊れかかった光生の痛々しさに・・・憐れを催すのだった。

「ごめんなさい・・・今日は家に帰ります」

黒部親子を残し、いつもの四人は宇都宮駅で途中下車するのだった。

待っていたって 戻らない

全ての恋は シャボン玉

こうして・・・すべては元に戻ったのである。

上原夫妻は仲睦まじく結婚生活を送り・・・父親になりたくない光生を残し、母親になりたい結夏は家を出る。

光生はお年玉付き年賀はがきの二等にあたった喜びを誰かに伝えたい。

しかし・・・そのためには幸福になることが約束されていない人間をこの世に送り出す覚悟が必要なのだ。

できれば・・・それ抜きで・・・結夏に戻ってきてもらいたいとせつに願う光生。

あくまで譲れない一線の上で・・・結夏へのラブレターを認める光生だった。

私の気持ち知ってて口說いたんでしょ?

そうよね?好きなのよね?

そう ギュッとして!抱きしめてよ~!

泣いてすむなら 泣きやがれ

全ての恋は シャボン玉

春はまだ遠い。

しかし・・・続編を作るためには仕方のないことなのだ。

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日本一うざい夫(瑛太)・・・無自覚と最高の離婚(尾野真千子)

昔の同棲相手(真木よう子)に死ねばいいのにって思われちゃう男(瑛太)と最高の離婚(尾野真千子)

テトリスの如く嵌めまくる男(綾野剛)と内縁の妻(真木よう子)と会話したい男(瑛太)と最高の離婚(尾野真千子)

最高の離婚はアロエ(苦い)、最高の離婚はアロマ(芳しい)、最高の離婚はアロハ(瑛太)

妹(平田薫)に面倒くさい女と言われてごんぼほる(だだをこねる)女(真木よう子)

たいしたことのない女がいつも男の大切なものを奪って行く(綾野剛)

涙で綴りかけたお別れの手紙を破っちゃう女(尾野真千子)

とりあえず殴る人(ガッツ石松)

別れても好きな人(瑛太)

恋の奴隷が生きる場所なんてどこにもなかったんだ(尾野真千子)

好きだと言いなさい(瑛太)

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2014年2月10日 (月)

信長曰く、上村愛子はまたもや四位かや、我は従三位参議になるのだがや(桐谷美玲)

格調・・・というか、もはや時空を越えたね。

上村愛子の劇的なこと・・・恐るべしである。

そもそも・・・日本アスリート史上ナンバーワン美少女である。

そして、女子モーグルというヤンキーな感じのする種目の選手である。

日本人初のワールドカップ年間総合優勝を達成している実力者だ。

18歳で初の五輪出場となる長野オリンピックでいきなり7位入賞を果たすと・・・五輪では6位→5位→4位と・・・階段を昇るように順位をあげ・・・「なんで一段ずつなんですかね」という名言を残している。

そして・・・34歳・・・さすがにピークを過ぎた感じのある五度目のソチ五輪。最年長である。

しかし・・・四人にいた日本代表が、棄権、準々決勝敗退、棄権と・・・次々と姿を消して・・・。

上村愛子は・・・予選を7位で通過、準々決勝を9位通過、準決勝を6位通過・・・決勝の舞台に立ったのだった。

事実は小説よりも奇なりとか、スポーツは筋書きのないドラマとか・・・言うわけだが・・・上村愛子はまさにその体現者と言う他ない。

そして・・・決勝を自身最高のパフォーマンスで終えた上村は残り三人を残し、一位・・・。

誰だ・・・誰が脚本書いてんだ・・・と思わず叫びたくなる展開である。

しかも・・・残り選手が一人、また一人と上村の獲得点を抜いて行くのである。

最後の選手が三位になると・・・上村は四位だった。

ここで足踏みなのかよっ。

すげえな・・・大河ドラマの幕の内弁当的なドラマチックのかけらもない脚本・演出とは雲泥の差がある。

ともかく・・・足利将軍を事実上追放した織田信長は天正2年(1574年)、従三位参議となり・・・織田政権を開始する。

で、『軍師官兵衛・第6回』(NHK総合201402091915~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は大河ドラマ「秀吉」(1996年)時代の羽柴秀吉(竹中直人=当時39歳)と「軍師官兵衛」の羽柴秀吉(57歳)の二大イラスト描き下ろしでお得でございます。あれから18年も経ったのでございますかあああああああああっ・・・遠い目。時は流れていきますなあ。今回は・・・荒木の妻・絶世の美女・だし(桐谷美玲)登場・・・その最後を思うと・・・残念無念また四位的に涙を禁じえない・・・そして描き下ろしイラストも期待したい・・・しかし、あくまでマイペースでお願いします。

Kan006 永禄13年(1570年)7月、うち続く戦乱を理由に元亀に改元がなされる。元亀は将軍に就任した足利義昭の奏請によるものである。短い治世を行う義昭のための元号と言える。信長は朝倉討伐に出陣し、妹婿の浅井氏の裏切りにより撤退。6月、姉川の合戦で浅井・朝倉連合軍を織田・徳川連合軍で打破する。安芸国の戦国大名・毛利元就死去。8月、信長が石山本願寺と野田城、福島城で開戦。この後、十年に渡る対本願寺戦争に突入。11月、浦上宗景が赤松政秀を毒殺し西播磨を制覇。官兵衛の妻・光の実姉の夫・上月景定が浦上氏によって上月城主となる。浦上・小寺連合は東播磨の別所氏を圧迫。別所安治が死去し、長治が後継者となる。元亀2年、武田信玄が三河に侵攻。信長は浅井・朝倉軍に加担した本願寺を焼き打ち。摂津国の池田家家臣・荒木村重、足利奉行の和田惟政を殲滅。信長の直臣となる。村重は伊丹氏、さらに主家の池田氏を滅ぼし、中川家、高山家を従えて摂津国の領主に成り上がる。松永久秀が信長に叛旗を翻す。10月、相模国の戦国大名・北条氏康死去。元亀3年(1572年)、信長、浅井攻めを開始。武田信玄、遠江三方ヶ原の戦いで徳川家康を撃破。松永久秀が信長に降伏。浦上宗景が毛利輝元に降伏する。元亀4年、武田信玄死去。別所長治が西播磨に侵攻。浦上・小寺連合軍は印南野でこれを撃退する。双方犠牲多くドロー。信長、足利義昭を追放。室町幕府滅亡。7月、信長の希望で天正に改元。槇島城で織田軍、足利軍を殲滅。8月、信長が朝倉氏を殲滅。さらに浅井氏を殲滅。12月、織田信長が浦上宗景を備前・播磨・美作の3カ国の領主に任命する。この時点での主従関係・織田信長の家来・浦上宗景、浦上宗景の家来・小寺政職、小寺政職の家来・小寺官兵衛。

「キリシタン・・・とは何です」

15歳で産んだ松寿丸が5歳となり、ようやく大人びた正室の光が姫路城の奥の間で8歳年上の夫・官兵衛に問う。

「南蛮の宗門だ・・・」

「浄土宗とはどう違うのです」

実家の櫛橋家は浄土宗に帰依している。光もまた・・・信徒であり、阿弥陀仏を信仰している。

「仏の教えは・・・この世の虚しさを教えるが、キリシタンは救いを与えるそうだ」

「救いですか・・・どんな風に救ってくれるのです」

「人は罪を犯すが・・・神に赦しを請えば・・・罰を免れるという」

「まあ・・・」

「仏は・・・突き詰めれば・・・この世に罪などないと教えるのだが・・・」

「しかし、戒めがございましょう」

「確かに・・・殺生を禁じておるが・・・そもそも・・・仏の教えでは命など元からないということになっておる」

「嘘・・・そんな話は聞いたこともありませぬ」

「色即是空は知っておろう」

「般若の教えでございますか」

「そうだ・・・色即是空とはこの世はそもそも存在しないと言う意味だ」

「まさか・・・妾も旦那様もこのように・・・生きているではありませぬか」

「ふふふ・・・そうだのう・・・俺の一物はこのように屹立しておるし、そなたの秘所も濡れそぼっておる・・・」

「あれ・・・」

「そして・・・そなたを抱けば極楽浄土じゃ・・・」

「ならば・・・なぜ・・・キリシタンなどに・・・なられるのです」

「鉄砲じゃ・・・」

「鉄砲・・・」

「そうじゃ・・・鉄砲があらねば・・・これからの戦はどうにもならぬ・・・」

「あ・・・」

「キリシタンになれば・・・鉄砲が手に入りやすくなる・・・」

「あああ・・・」

黒田家が縁を結ぶ・・・備前・福岡や長船には刀剣や武具の生産地がある。

しかし・・・今や、堺で商いされる鉄砲の入手こそが軍備増強の最大課題だった。

播磨では相変わらずの小競り合いが続いているが・・・官兵衛はいくつかの軍制改革を行っている。

その一つは・・・兵農分離である。英賀城の三木氏と婚姻関係が成立したことにより、姫路小寺家は再び、経済活動を重視することが可能になった。

領地の生産量はあがり、余剰物資を商売に利用することができる。

その儲けを・・・兵の養成に用いるのである。

もちろん・・・農民を臨時の兵力に使うことはまだ必要である。

(しかし・・・)と官兵衛は考える。

(それだけでは・・・戦には勝てない)

たとえば・・・鉄砲の使用には熟練が必要となる。それは農業の片手間に達成することはできない。

摂津で・・・合戦があり・・・荒木村重が摂津衆の長になった時・・・敗北した和田惟政の一族に甲賀の忍びたちがあった。

彼らは主と同じく、キリシタンだった。

官兵衛は彼らを受け入れ・・・彼らを中核とした鉄砲忍びの一団を養成している。

そして・・・その結束力を高めるために・・・官兵衛自身が洗礼を受け、ドン・シメオンとなったのだった。

500人ほどの動員力しか持たない官兵衛だったが・・・その1割の50人の鉄砲忍びを持つことによって・・・戦術の幅が大きく広がることに官兵衛は喜びを感じていた。

「一族全員が・・・強力な軍団とならねば・・・この乱世を乗り切ることはできない」

寝息を立てている光の顔を幽かな月光をたよりに眺めながら官兵衛は来るべき戦に思いを馳せる。

天正元年、東に織田・・・西に毛利・・・巨大な勢力が播磨国を挟みこんでいた。

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2014年2月 9日 (日)

被害者よりも愛しい加害者とバイオアプリによる調整人格と異なるディメンションの倫理の適用例(本郷奏多)

先兵は捨て駒である。

しかし、優秀な人材である必要がある。

将棋における「歩兵」はただ黙々と前進する。しかし、敵地に侵入するや「金将」と化す。

先兵は敵地について理解を深める。

時には味方よりも敵について正しく理解する。

しかし・・・どれほど理解を深めようと・・・敵は敵に過ぎない。

時に・・・先兵は敵を愛する。

しかし・・・愛しても仕方ないのが敵というものなのである。

心ある先兵は・・・殺されても仕方ない敵を殺すしかないのだ。

で、『・第5回』(テレビ東京201402080012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。D12世界のDとはディメンション(dimension)のDである。SFジュブナイルの世界では外国語特に英語を未知の概念のシンボルとして使用する。これは「」と書いたら中はセリフと言ったお約束と同じである。「明日、ママがいない」問題が象徴するように理解力の不足と理解力の不足に対する自己認識不足の問題は常にある。多くの場合、物事に面白さを見出せないのは物事に欠陥があるのではなく、見出せない人に問題があるのだ。しかし、多くの人間は自分の問題を認めたがらないのだ。

そのために物語の作者は世界を分かりやすくするためにいろいろと約束事を作りだすのだが・・・その約束が難しいと言われると手詰まりになるのだった。

まあ・・・SFジュブナイルが苦手な人は縁がなかったと諦めるしかないのだな。

ディメンションは次元と訳される。

12次元と言えば、我々が三次元を認識するこの四次元世界よりはるかに高次元な概念である。

しかし、D12世界は・・・我々と同じ四次元世界の一つである。

この四次元世界は無数の多次元宇宙に分離しており、我々の世界では虚構の産物だった「モノリス」(先行知的生物の遺物構造体)が・・・知的物質として存在したのがD1世界である。

モノリスを使用した文明は高度に発展し、そのために加速した文明崩壊を迎える。

D1種族はDの転移技術を開発し、崩壊しなかった世界を浸食する。

D8世界を滅亡に追い込んだ彼らは「ショパンの存在しないD12世界」を新たな植民地として選択したのである。

東西山高校2年3組の生徒・岩田広一(中村蒼)の隣人である認知症を発症した江原正三(ミッキー・カーチス)の部屋を占拠し、異次元世界の先兵であるモノリオこと山沢典夫(本郷奏多)は後続部隊の上陸地点確保のために・・・様々な工作を展開するのだった。

そんなこととは露知らない広一はSF研究部からSF研究会に格下げになったクラブハウスで自主制作映画「宇宙戦争」のジオラマ特撮に熱中するのだった。

そこへ・・・年下の幼馴染である咲和子(樋井明日香)がやってくる。

「ちょっと顔かせよ」

応じる広一を不安げに見つめる同行の士である鈴木拓郎(戸塚純貴)と太田くみ(椎名琴音)・・・。

階段の踊り場で広一と咲和子は話しあう。

「ここだけの話にしてくれよ」

「なんだよ・・・」

「山沢典夫って知ってるだろう」

「山沢・・・」

「あいつ・・・屋上から落ちた・・・」

「屋上から・・・それで山沢は・・・」

「ピンピンしてた」

「なんだ・・・そりゃ」

「おかしいだろう・・・」

「・・・」

「もしかして・・・家に帰ってから内臓破裂で死ぬんじゃないかって・・・」

「内臓破裂してたらその場で死ぬだろう」

「こわいんだよ・・・」

「おい・・・まさか・・・落ちたんじゃなくて・・・落されたんじゃないだろうな」

「・・・」

「お前・・・まだ不良たちと付き合ってるのか」

「ほっとけよ・・・それより山沢のことが心配なんだよ・・・あんた・・・山沢のお隣さんなんだろ・・・」

咲和子は泣きだすのだった。

「わかった・・・帰って様子を見る」

急いで帰宅した広一は隣家を訪ねるが江原老人は山沢の不在を告げる。

窮した広一は最近、山沢に興味を示している香川みどり(桜井美南)に連絡をとる。

「山沢が屋上から落ちたらしい」

「なんですって・・・」

みどりはとんでくるのだった。

その迅速な対応に胸騒ぎを感じる広一。

その時、江原老人が外出してくる。

「尾行しなさい」

「え」

「何か事情があるかもしれないでしょう」

「君は・・・」

「あんたバカ、二人で行ったら、部屋に山沢くんが戻って来た時にフォローできないじゃない」

「・・・」

「急いで、見失うわよ」

広一が去ると広一の母(濱田マリ)が部屋から出てくる。

「あら・・・みどりちゃん・・・ムーくん(広一)いないわよ」

「知ってます」

「じゃ・・・部屋に入って待つ?」

「お構いなく・・・私、今、見張ってるんで」

「戦力外捜査官ごっこ?」

「鼠、江戸を疾るごっこです」

「今季、忙しいのよね」

「三本はかけもちしすぎですよお」

「まあ。稼げるときに稼いどかないとね」

「勉強になります」

広一が尾行する江原老人は人気のないガード下にやってきた。

老人とは思えない移動速度に不審を感じた広一は物陰に潜む。

そこへ・・・山沢を屋上から蹴り落とした冴木(碓井将大)がやってきた。

「なんだ・・・じじい・・・こんなところに呼び出して・・・なんのつもりだ」

「お前を手下にしてやろうと思ってな」

「なんだと・・・こら」

しかし、冴木は言葉を飲む。

不可思議な燐光が目の前の老人から発し始めたのである。

「なんだ・・・こりゃ」

「お前を・・・まだ見ぬ世界に連れてってやるよ」

「おい・・・よせ」

光はやがて・・・冴木を包み込む。

緑色の発光が消失すると・・・冴木は暗闇に包まれいた。

「なんだ・・・まるでブラックホールみたいな」

一瞬で・・・黒い影は消えて・・・冴木も消失していた。

「・・・人間消失現象・・・」

広一はあわててみどりに電話した。

「もしもし・・・広一くん・・・山沢くん・・・いた」

「ボク・・・とんでもないものをみちゃったよ・・・」

「なんですって・・・」

広一は絶句する。

目の前に江原老人が立っていたのだ。

「岩田広一に見られてしまいました・・・どうしますか」

「・・・」

「わかりました・・・記憶を消去します」

「え・・・」

次の瞬間・・・顔面がよじれたように歪むのを感じながら広一は失神した。

「広一君・・・どうしたの」

広一からの連絡が途絶えた後も・・・みどりは監視を続行する。

まもなく・・・江原老人が帰ってくる。

街に黄昏が迫る頃・・・ようやく広一から連絡が入る。

「一体・・・何があったの・・・」

「わからない・・・ボクはなぜ・・・こんなところに・・・」

「おじいさん・・・帰って来たわよ」

あわてて・・・自宅マンションに戻る広一。エントランスには思いつめた顔の咲和子も待っていた。

三人は再び、江原老人の呼び鈴を鳴らす。

室内では・・・。

「トランスフォーム(物質転送)は上手くいきましたか・・・」

「ああ」

「あの連中はどうします」

「僕が対応しよう・・・」

山沢は・・・ドアを開いた。

「やあ・・・」

「山沢くん・・・大丈夫なの」

「何がだい」

「だって・・・屋上から落ちたって・・・」

「ああ・・・そのことか・・・問題ないよ」

「でも・・・内臓が破裂してたら」

「内臓が破裂したら歩いて帰宅したりできないよ」

「・・・」

「屋上から・・・落ちて・・・なんともないのか」

「ああ・・・」

「そんな・・・」

「だから・・・彼は人殺しにはならないよ・・・それでいいかな」

「・・・」

「じゃあ・・・これで」

「おい・・・もしも・・・具合が悪くなったらすぐに言ってくれよ」

「ありがとう・・・岩田くん・・・」

仕方なく・・・解散する三人だった。

室内には・・・首に怪しい★(星型)の装置を付着させた冴木が横たわっている。

「こいつはどうなるんですか」

「精神改造をするためには厳密な倫理規定がある・・・次元を異にするこの世界にそれを持ち込むのは無意味だが・・・とにかく・・・何かに準拠しなければ・・・装置が発動しないのだ。このものは・・・非常にモラルに欠けた精神を持ち、悪の因子が適用基準値に達していたので・・・バイオアプリ(生体適性化プログラム)のアステロイド(人体隷属化装置)使用許可が出た」

「私のような役立たずと一緒ですな」

「お前は・・・違うよ。お前はどちらかと言えば無垢な状態だったので・・・モノリスのマギ(魔法機能)を分与している。非常に高価な精神制御状態だ。バイオアプリは使い捨ての消耗品だからな」

「悪の因子を除去するのですか」

「いや・・・脳内にバイパスを作り、個体の意識を遮断して、精神機能をコントロールするのだ。バイオアプリは言わば高度なリモコン受信機だよ・・・こちらの指示通りに個体を行動させるためのね」

「彼は永遠に奴隷ですか」

「いや・・・およそ七日間で・・・機能を停止する。バイオアプリは安価な消耗品なのだ。その後の精神状態については個体差があって断定できない」

「・・・」

「このような個体をもう少し確保する必要がある」

「兵力の増強ですな」

「うむ」

翌日・・・山沢は鎌仲才蔵(葉山奨之)にコンタクトした。

「こんなクズ野郎たちをリストアップしてどうするつもりだ」

「クズにはクズの使い方がある」

「じゃ・・・俺をなんとかしてくれよ」

「君は・・・クズではない」

「じゃ・・・俺の親父は・・・クズの親玉だぜ・・・」

「君の・・・父親か・・・」

判断を保留した山沢は・・・雀荘に乗り込むと・・・★を健康器具と偽ってクズたちに装着することに成功する。

そこへ・・・行方不明となった冴木を捜しに・・・咲和子がやってくる。

クローバー」「みんな!エスパーだよ!」とこの枠ならでは一部お茶の間向けパンチラサービスを終えた咲和子は・・・山沢に迫る。

「冴木を知らないか」

「ボクでなければ死んでいたかもしれない・・・つまり・・・彼は殺人者だ・・・しかも・・・かれはその後で笑っていた」

「・・・」

「そんなかれを君は気にかけるのかい」

「笑ってたけど・・・震えてたんだ」

「人を殺してもその後で震えれば罪が許されるのかい」

「でも・・・」

「人にはそれぞれ守りたいものがある・・・君には愛の因子が感じられる」

「なんだって・・・」

「すまない・・・かれがどこにいるのか・・・ぼくにはわからない」

「そうか・・・」

被害者よりも加害者を案じる憐れな女子高校生は去っていった。

「君の愛の因子も・・・僕の愛の因子も・・・愚かさや罪深さに変わりはないのかもしれない」

山沢は・・・奴隷化された冴木を従えて・・・次の行動に移る。

D12世界の医療はかなり貧弱なものだったが・・・それでも被曝者である王女(杉咲花)のために治療体制を整えなければならない。

残り少ないモノリスのマギを使い、開業医を洗脳する山沢。

「出来る限り・・・最高の放射線症の専門医を召集してもらいたい」

「・・・かしこまりました・・・」

後続部隊の転送期限は迫っていた。

D12世界の人々は侵略の開始に誰ひとり気がついていない。

関連するキッドのブログ→第4話のレビュー

シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の謎の転校生

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2014年2月 8日 (土)

死亡を診断された人の死亡届けを提出せずに死体を遺棄するのは犯罪です(綾野剛)

ソチ五輪が開幕した。

アスリートたちはロシアの素晴らしいおもてなしを受けていると思われる。

参加することに意義があるという理念に従えば・・・直前練習で負傷し出場を棄権した選手も栄光に包まれている。

平和の祭典はテロリストの標的になっていると思われるが最初の難関である開会式が無事終了すればひとつの山を越える。

インパクトとしては開会式での自爆テロが一番大きいと考えるからである。

「世界を敵に回してもロシアの威信を傷つける」という選択がなされなかった可能性は高まる。

そうなるとターゲットがロシアの選手に絞られることになるだろう。

もちろん、ロシア当局による警備も開会式でのテロの発生を最大限抑圧したことも考えられ、油断は禁物である。

最も警備が困難なマラソンのような広範囲を競技スペースとする競技が冬期オリンピックにはない。

しかし・・・死をいとわないテロリストの攻撃阻止には完全ということはない。

栄光とは真逆の人生模様のドラマを堪能しながら・・・平和の祭典の無事を祈る。

喜びも哀しみも一瞬の煌めきにすぎないのだから。

日本選手団の入場と同時に福島で地震が発生。マグニチュードは5.0と推定された。

どんなシンクロなんだ。日本は太平洋側が近年にない大雪になる模様。

で、『ウシジマくん Season2・第4回』(TBSテレビ201402070058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・白川士を見た。いきなり高齢者所在不明問題ネタである。これは年金の不正受給とセットになっている問題だが・・・実際に闇金業者がからんでいるとすれば処理はもう少しスムーズに行われるだろう。雨男こと丸山くん(平田実)の父親の死体を発見したのは介護ヘルパーと思われるが・・・この介護ヘルパーも闇金系列の派遣で賄うだろう。闇金系の死体処理班が出動し、腐敗による異臭の発生を防ぐために防腐処置を施した後で丸山くんの手に父親の剥製が返還されるわけである。自然にミイラになるのを待つのは大変だからな。・・・おいっ。

工事現場でアルバイトをする丸山くんが帰宅すると・・・父親が死んでいた。

たまたま居合わせた介護ヘルパーが医師を呼び・・・たちまち死亡が宣告される。

闇金の利息返済を又貸しの名義人としての家賃納入で賄っている丸山くん。

父親の年金15万円とアルバイト収入の5万円、あわせて20万円で家賃を支払わなければならない丸山くんには死活問題である。

「死ぬなんて・・・ダメです・・・とりけしてください・・・年金もらえなくなっちゃうから」

「それは・・・ちょっと」

死亡を知ってから一週間以内に死亡届けを提出しなければならないルールである。

例の食堂でカウカウファイナンスのウシジマくん(山田孝之)は柄崎(やべきょうすけ)とオムライスを食べている。

丸山くんが20万円で借りている部屋を40万円で貸しているのが儲けなのである。

「丸山は大丈夫だろうな」

「問題ないと思います」

オムライスにケチャップとソースと七味をかける柄崎を見つめるウシジマくん。

そこに・・・江崎の債務者の管理能力に対する不信感が浮かぶ。

丸山くんは死亡届けを出さずに・・・父親を生きている死体として扱っている。

その現場を目撃した大家(高橋修)は絶叫するのだった。

一方、丸山くんと相保証になっているいじめられっこ仲間のジャニオタこと森下(金谷マサヨシ)はアルバイト先のコンビニで釣銭を渡す時に若い男性客の手を握ることに喜びを感じていたが利息返済日が過ぎたために・・・ウシジマくんが現れる。

そして・・・例によって・・・かわいいものゲームでいきなりレッサーパンダをかわいくないと判定されハバネロ100%ジュース一気飲みの罰ゲームを犯罪的に強要されるのだった。

とにかく、ウシジマくんたちは発覚すれば犯罪者集団なのであり・・・倫理的な問題を問うても仕方ないのだ。

結局・・・丸山くんは・・・相保証のジャニオタを残し、逃亡するのだった。

だが・・・似たもの同志は運命のシンクロ現象を起こす。

ジャニオタの優しい母親も・・・死亡したのであった。

葬式には香典が集まるのだ。

早速、回収にかかるウシジマくん。

葬儀に現れたジャニオタを詰るまっとうな兄(オオシロリキ)・・・。

「連絡もよこさないで何していた・・・」

「・・・」

そこへ現れるカウカウファイナンス。

「お前の借金は144万円だ・・・香典で相殺しろ」

「お母ちゃんは・・・こんな私のために仕送りしてくれたのよ・・・そんなお母ちゃんの香典で借金返済なんてできない・・・」

「十日ごとの利息返済が72万円だ・・・お前に返済できるのか・・・」

トゴ(十日に五割の利子)である。

10万円借りたとして利息は五万円。

十日目に三万円しか返済できないと・・・借金は12万円となり・・・十日後には六万円を返済しなければならない。

また三万円しか返済できないと借金は15万円となり・・・十日後には七万五千円を返済しなければならない。

10万円借りて一月で九万円の利息を払っているのに借金は18万円になっているという恐ろしいシステムなのである。

「嫌なら・・・ヤバイ産業廃棄物の業者に紹介料200万円で・・・お前を引き渡す」

「ヤバイって・・・命もヤバイの・・・」

「そんなことは知らない」

「待て・・・」と声をかけたのはジャニオタの兄だった。

「香典もってけ・・・その代わり、弟には手を出さないでくれ」

麗しい兄弟愛だった。

「きっちり144万円・・・数えてくれ」

無表情に告げるウシジマくん。

「これで・・・あいつとの縁も終わりですかね」と帰りの車内で柄崎がつぶやく。

「いや・・・救いようのない奴は・・・救いようがない。あいつはまた戻ってくるよ」

ウシジマくんの読み通りに再びスロットにはまったジャニオタは借金を申し込みにやってくるのだった。

カウカウファイナンスの資金提供者・・・金主の大原正一(徳井優)に呼び出されるウシジマくん。

一部お茶の間サービスに務めるニュー大原ガールズ(センター池田夏希、レフト鈴木咲、ライト神谷まゆ)である。

「中国のバブルはもう終わりだ・・・これからはインドに投資する時代だ・・・君もどうだね・・・ウシジマくん・・・これは明代の作品で投機としては確実なものだ・・・私が落札した三百万円そのままで君に譲ろうと思う・・・君はなんてラッキーな男なんだ・・・」

無表情に・・・大原の怪しい経済指南を受けとめるウシジマくんだった。

大原との面会後には異常に不機嫌になるウシジマくんを回避するために借金取り立てに出る高田(崎本大海)・・・。

残された柄崎と受付事務の摩耶(久保寺瑞紀)は仕方なく雑談をする。

「なんでチクワブ嫌いなんだ」

「食感がちょっと・・・」

「ハンペンは平気なのかよ」

「はい」

両方とも美味しいと思う。

何故・・・そこにリアクションを・・・感想もたまに入れないと再現率が高まりまくるからな。

路上で昔のホスト仲間の隼人(武田航平)に再会する高田。

追い込まれていたはずの隼人は投資で成功したという。

「お前もやらないか・・・確実にもうかるぜ」

「うさんくさいな・・・」

「俺は・・・底辺からはいあがった・・・お前も闇金なんて・・・いつまてもやってるなよ」

闇金さえ一日でクビになった男の発言である。

「じゃあ・・・俺、仕事があるんで」

「お前が貸してくれた五十万円・・・うれしかった・・・色をつけて返すよ」

しかし・・・その場では返金しない隼人。

「あの金は・・・お前にやったんだ・・・投資にでもつかってくれ」

「わかった・・・倍にしてやるよ・・・」

間もなく・・・隼人からは・・・「二十万円」の配当がついたと連絡がある。

その件をウシジマくんに報告する高田。

なぜかウシジマくんは「面白い・・・俺にも一口投資させろ」と積極的な姿勢を示すのだった。

まあ・・・そんなおいしい話にうかうかと乗るウシジマくんではないはずである。

昼はカラオケ「トマト」、夜はファッション・ヘルス「エロリアーナ」で働く読者モデルのジュリア/リリー(佐々木麻衣)・・・ウシジマくんの取り立ては夜のお店で・・・。

ジュリアの夜の顔を知らないカラオケ店の同僚の麻紀(黒瀬シオリ)は浅倉先輩(岩澤晶範)との交際を報告するが・・・浅倉は露骨にジュリア狙いである。たちまち不機嫌になる麻紀。

「めんどくせえ」とため息をつくジュリアだった。

ジュリアにとっては・・・浅倉も麻紀も眼中にはないのである。

読者モデルの頂点はまだ遠いのだった。

ジュリアと似たような感覚でおしゃれ帝王の座を目指す中田広道(入江甚儀)は盗んだカードや自転車を換金する日々・・・しかし、成果は上がらない。

そんなある日・・・・カリスマ的オサレエンペラー・G10(藤本涼)からお誘いがかかる。

グラビア・アイドルや女優やモデルが・・・実業家と怪しく交際するクラブに連れていかれた広道・・・。

女優の上原憂(優希まこと)が年商十億円の通販サイト・スキタイの小野社長(岩本淳)に胸を揉みしだかれているのを見て興奮するのだった。

そして・・・G10が・・・導くのは麻薬の売人ルートである。

「そんな・・・ヤバイこと・・・」

「Uはトンネル抜けちゃいな・・・一度きりの人生・・・最短ルートでサクセスにアクセスしちゃいな・・・」

麻薬の売人ハブ(南優)から覚せい剤入り煙草を受け取り・・・ついに末端の売人となった広道。

憧れのファッションを手に入れ・・・喜びを感じるのだ。

そんな広道を訝しげに見つめる親友のキミノリ(三澤亮介)だった。

やがて・・・広道はおしゃれの道で名前が高まりだす。

人気の読モ・パピコ(紗倉まな)にもその名が知られるようになったらしい。

もちろん・・・その栄光は・・・犯罪行為によって成立しているのである。

ギャンブル依存症の宇津井優一(永野宗典)の母親が株の損失で二千万円の借金を作る。

「なんだかんだで・・・持ち家を相続できる」と思っていた優一の目論見は外れた。

「もう・・・家も人手に渡る」と父親の声が耳にはいる。

狂乱した優一。

「ななななななななんてことを・・・・しししししししてくれたんだ・・・・・おおおおおおおおおれのいいいいいいいいいえ・・・・・・・おおおおおおおおおおおおおおれのかかかかかかかかねねねねねねねね」

手当たりしだいに投げつけたものが母親の額を直撃し・・・母親は血まみれになって倒れる。

「えええええええ」

「ゆーいーちー」と呻く母親。

「でていけ」と叫ぶ父親。

・・・この世の地獄である。

いつもの駄菓子屋・・・情報屋で幼馴染の戌亥(綾野剛)と駄弁るウシジマくん。

「宇津井優一の母親が株に手を出して土地財産を失ったよ・・・回収大丈夫」と戌亥。

「母親の母親が千葉に土地を持っているから・・・それでなんとかするよ」とウシジマくん。

「さすがだね」

「でも・・・他にも厄介な顧客はたくさんいるよ」

「大変だね」

「うん」

仲良きことは美しきかな。

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2014年2月 7日 (金)

君(多部未華子)の後ろ姿をそっと見ていた時間(三浦春馬)

人に言えない秘密を持つことは甘美なことである。

事実が明らかになった時、人々が示す反応を想像するのは楽しいことだ。

なるべく・・・秘密を持っている自分を長く楽しみたい。

しかし・・・秘密はいつか露見するのがお約束なのである。

秘密はいつの間にか・・・秘密の匂いを周囲に放ちはじめる。

誰もが疑いの眼差しを向け始める。

恐ろしいのは秘密が秘密でなくなることだ。

だから・・・そうなる前に・・・人は自白してしまうのだ。

秘密は誰かに秘密である間に打ち明けないと・・・秘密ではなくなってしまうから。

で、『僕のいた時間・第5回』(フジテレビ20140205PM10~)脚本・橋部敦子、演出・城宝秀則を見た。丁寧に描かれる筋萎縮性側索硬化症 (ALS)を発症した澤田拓人(三浦春馬)が秘密を介在させる人間関係。拓人が病気であると知るのは本人と医師の谷本医師(吹越満)とその周辺である。偶然という体裁で・・・最初に秘密を嗅ぎつけたのは向井先輩(斎藤工)だった。今のところは・・・向井先輩が・・・拓人が秘密を守るために別れた恋人・本郷恵(多部未華子)のことを好きになったのも偶然という展開になっている。もちろん・・・すべてを知って向井先輩が恵に近付いていくことには好き嫌いが生じる要素である。あまりにも拓人にドライすぎる。あまりにも自分の欲望にホットすぎる。そう感じるお茶の間も少なくないだろう。しかし、そこにはなんらかの仕掛けがあるのかもしれない。次に拓人は親友の守と書いてまもる(風間俊介)に秘密を開示する。友人とは直接、利害関係のない存在で・・・ある程度、秘密の持続性が期待できる場合もある。しかし・・・意外と秘密が噂になってしまう場合もあるので注意が必要だ。やがて・・・アルバイト店員の宮下さん(近藤公園)に象徴される職場の「宮前家具」に秘密を報告する。正社員である以上・・・残された勤務時間が多くはないことを伝達しないことは一種の倫理上の問題となるだろう。恐るべき事実に接した勤め先の態度はケース・バイ・ケースであるが・・・ブラック企業とそうでない企業の分かれ道でもある。友人関係、勤務先ときて・・・ようやく家族である。拓人は家族関係に問題を抱えている人間だが・・・何よりも母を思う青年である。その母親にショックを与えるのは後回しにしたかったわけだ。これで・・・周囲の人々は・・・拓人にとってそれほど重くない弟の陸人(野村周平)や父親(小市慢太郎)も含めて・・・秘密を共有してしまう。それでも・・・まだ秘密にしている恵こそが・・・拓人にとって本当に大切な人間であることは明らかである。しかし・・・向井先輩や・・・恵の友人の陽菜ちゃん(山本美月)と親しい守に秘密を打ち明けたということは・・・それとなく・・・恵にしってもらいたい気持ちもほの見えるのだ。しかし・・・拓人の期待とは裏腹に・・・男たちの口は固い。これは神様が意地悪だからである。

僕は思い切って守に本当のことを言ってみた。

しかし・・・守の好きなカレー鍋を食べ終わってからにした。

ひょっとしたら・・・守の食欲がなくなってしまうかもしれない。

食べ物の怨みは恐ろしいからな。

守は案の定、蒼白になった。

しかし、嘔吐にはいたらなかった。どうやら事実として受け止めてくれたらしい。

まあ・・・他人事だからな・・・。

「お前・・・恵ちゃんに・・・このこと・・・」

「恵には知られたくない・・・」

「そうか・・・だから・・・」

守は僕と恵が別れた理由に思い当ったようだった。

「ともに白髪が生えるまで生きられないからか」

まあ・・・当たらずとも遠からずだ。

そんなある日・・・歩行に支障を感じることに気がつく。

職場での・・・宮下さんの視線が痛い。

もう・・・限界なのか・・・。

病気のことを打ち明けたら・・・僕はどうなるのだろう。

すぐに解雇にはならないだろうが・・・少しずつお荷物になる正社員を・・・企業はもてあますことは間違いない。

労働できない労働者に価値はないもんね。

「次はどこが不自由になるのか・・・いろいろと考えてしまいます」

「そういうことはあまり考えない方が・・・この病気とはうまく付き合えますよ」

「何故ですか」

「それは秘密です」

谷本医師は穏やかな人だ。

穏やか過ぎて・・・ひょっとしたら実は無能なんじゃないかと思うこともある。

まあ・・・治らない病気の主治医は基本的に無能だ。

若い研究者が画期的な成果を上げたというニュースが世間を騒がせる。

嫌だなあ・・・期待しちゃうじゃないか。

時々、カレー鍋を食べにくる守は・・・時々、残酷なことを言う。

陽菜ちゃん情報で・・・恵が朝のウォーキングをはじめたこと。

恵が身体の不自由な患者の介護の仕事をしていること。

向井先輩と恵が急接近していること。

「お前・・・本当にいいのか」

「向井先輩なら・・・恵を幸せにしてくれると思う」

僕は心にもないことを平気で口にする。

僕は嘘つきの極悪人だ。

でも・・・もうすぐ死ぬ人間に善人であることを期待するのは間違っている。

通勤路で時々、犬が僕に声をかける。

「おい・・・お前」

うるさいな・・・ほっておいてくれ。

ついに自転車が便利な道具から・・・単なる負荷になる日がきた。

自転車に乗って漕いで前へと進むことができずに・・・ただ押して歩くだけなら・・・。

自転車に何の意味がある。

僕は思わず自転車に八つ当たりをした。

「この役立たず」

でも本当に役立たずなのは僕なのだ。

右手はほとんど役に立たない。

右足も役立たず寸前だ。

残った手足・・・舌先・・・口・・・心筋・・・背筋・・・何もかもが役立たずになっていく。

帰り道・・・犬が言った。

「おい、お前・・・大丈夫か」

僕は泣いた。

次の日・・・僕は会社に病気のことを伝えた。

会社は僕の病気を穏やかに受け入れてくれた。

今のところは・・・僕に役に立つ部分があることを・・・優しい社会の他人の目を気にしながら・・・企業としての懐の深さを示すために・・・認めてくれたらしい。

宮下さんや同僚たちは・・・僕に優しくなった。

つまり・・・僕は憐れに思われているのだ。

それは・・・僕の心を温かくして・・・それから暗くした。

血相を変えて・・・母が上京してきた。

弟が大学を無断欠席しているらしい。

親が医者だと・・・医大生の子供はうかつにサボることもできないものなんだなあ。

まあ・・・僕には関係ないけれど・・・。

「ちゃんと・・・弟の行動に気配りしてくれないと」

母は僕を弟の使用人、もしくは付属物のように扱う。

僕は哀しみを怒りに変えてみた。

「あいつは・・・医師には向かないと思うな」

「何言ってるの・・・」

「だって・・・もし僕が患者だったら・・・あいつには診療してもらいたくないもの」

「あなたと違って医大生なのに」

「・・・」

「あなたこそ・・・そろそろ将来のことを考えたら・・・病院の事務の勉強を始めるとか」

お母さん・・・僕には将来はないんだよ。

休日・・・正社員である僕には休日がある。

僕が何をしていたと思う。

僕は恵に僕を諦めさせた。

でも・・・僕が・・・恵のことをそんなに簡単に諦めることができると思うのかい。

僕は朝早く起きると・・・遠くから恵の家を見る。

恵がウオーキングのためにピンクのスポーツウエアで現れる。

やがて・・・向井先輩がやってきて二人は親しげに話をする。

僕は夢見る。

恵と一緒にウオーキングする自分を・・・。

二人で公園で一休みしたりして・・・。

でも・・・僕はめっきり歩くのが苦手になって・・・一人で取り残されてしまうんだけどね。

犬が言う。

「おい、お前・・・可哀想にな」

僕は・・・ついに決心する。

「お母さん・・・肩を揉んであげるよ」

「え・・・」

「揉んでもらえばいいじゃん」

「そう・・・」

「痛くない・・・」

「気持ちいいわ・・・でも・・・急にどうしたの・・・」

「今ならまだ揉めるから」

「どういう意味・・・」

「僕は病気になっちゃった」

「病気って」

「どんどん、身体が動かなくなって・・・最後は死んじゃうんだ」

「何、言ってるの」

「ごめんね・・・母さん」

母親は・・・取り乱した。

僕はうれしかった。

母がうろたえてくれたことに感謝した。

僕はまだ・・・母さんの子供だったらしい。

犬が言った。

「おい、お前・・・よかったな」

その日、恵はなかなか現れない。

どうしたんだろう・・・風邪でも引いたのか。

やがて・・・恵は普段着で家を出た。

向井先輩とデートなのだろうか。

僕は出来るだけの速度を出して・・・恵の後をつける。

新宿駅に着いた頃・・・僕は恵の行く先に思い当る。

二人のおそろいのマグカップは捨てたけれど・・・。

二人の大切な思い出の品はまだあったのだ。

砂浜に埋めたタイムカプセル。十年後の自分に宛てた手紙を封じた壜。

恵が・・・つつましく急行列車に乗り込んだことで僕には算段がついた。

恵・・・今なら・・・僕は君をロマンスカーに乗せることができるんだぜ。

僕はシューマイ弁当を一つ買って、特急ロマンスカーに乗り込んだ。

ロマンスカーは急行列車を追いこして・・・西村京太郎的に・・・僕に犯行時間を与えてくれる。

江の島についた僕は必死に懐かしい・・・砂浜にたどり着く。

必死に砂を掘る。

必死にガラス壜を取り出す。

そして・・・必死に砂を埋める。

必死にボートハウスに隠れる。

もしも・・・僕の一人合点なら・・・とんだ徒労だ。

犬が言った。

「おい、お前・・・がんばったな」

やがて・・・恵がやってきて・・・タイムカプセルを捜す。

しかし・・・それはもう・・・遠い未来に消え去ったんだよ・・・恵。

やがて・・・恵は立ち上がる。

そして・・・君は僕に電話をかける。

潮騒の中で君には聴こえない着信音が響く。

僕は電話に出る。

「もしもし・・・」

「出てくれてありがとう・・・電話してごめんね」

「いいさ・・・どうしたの・・・」

「私・・・私ね・・・」

「うん」

「前に向かって歩き出そうって思ったの」

「そう・・・よかったね」

「元気でね」

「ありがとう・・・君も元気で・・・」

「さようなら」

「さようなら」

それから・・・僕は遠ざかって行く・・・君の後ろ姿をずっと見送っていたんだ。

誰よりも愛しい君がすっかり見えなくなるまで。

寄せては返す波の音を聞きながら・・・。

犬は何も言わずに僕を見ていた。

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2014年2月 6日 (木)

心の傷跡と体の傷跡が混浴(木村文乃)いつもポケットに愛のメモリーを(芦田愛菜)食卓に炊飯器スペシャル(渡邉このみ)

昔はスポンサーは神様だったので・・・ドラマから自動車事故が消えたりした。

本当はCコーラを飲ませたかったがPコーラになったりした。

時代劇から四歳児が消えたりもした。

その時だって誰ひとり、理念としての「表現の自由」が現実に埋没していることに異議を唱えなかった。

そうだ・・・ヘレン・ケラーにとってはテレビドラマなんてあってもなくても同じことだから。

表現方法を変えればいいだけの話だと微笑んだ。

いよいよ、「ドラマを見て傷つく子供がいるという大人の心ない発言」で「ふつうのドラマ」を作ることも許されなくなった。

ドラマ作りのために取材をしてもいいが取材なんかしなくてもドラマは作れる。

荒唐無稽はいつから罪になったのだろう。

火の粉がふりかかってこないように見て見ぬふりをする表現者たちよ。

やがて・・・「デブの父親にレイプされた娘がデブの裸を見ると気分が悪くなる」というクレームで「大相撲中継」だって放映中止になるかもしれないぞ。

で、『明日、ママがいない・第4回』(日本テレビ20140205PM10~)脚本監修・野島伸司、脚本・松田沙也、演出・猪股隆一を見た。北は東日本大震災から南は赤ちゃんポスト米軍基地まで・・・悲しい現実はある。赤ちゃんポストという善行が人命尊重を唱えようが子供が親に捨てられたという悲しい現実は変わらない。それを美名に変えようとも現実は現実だ。しかし、赤ちゃんポストではなくてこうのとりのゆりかごだと表現するのは自由なのである。その自由を根本から否定してどうしようというのだろう。今回のエピソードで言えば・・・明らかにボンビの親はあの日の津波に飲まれたという設定の方が分かりやすい。たった一人の身内もまた・・・被災者だから・・・ボンビの面倒を見る余裕がないということで多くの人が納得するだろう。しかし・・・もしも・・・誰かがクレームをつけてきたらと思うとそれは想像を拒絶する「災害」という言葉になってしまう。たった一人の身内がボンビを引き取れない理由もあいまいなボンビの混乱に帰するわけである。つらいな。かわいそうだな・・・ドラマの作り手が。一方で・・・震災の復興予算をブランドのスーツや遊興費に費やすという凶悪な大人たちの犯罪。その発覚によるその大人たちの周辺の子供たちの悲しい現実の発生。そういう悲しい世界があることをドラマが描くのはいけないことなのですか。もちろん・・・人権の尊重派と表現の自由聖域派は絶対に平行線をたどるしかないのかもしれない。しかし・・・そんなに不自由な人権にどんな価値があるのだろうか。

どこかの惑星のどこかの国家のどこかの都市にある架空のグループホーム「コガモの家」には事情があって肉親がいない子供たちが保護されている。

この架空の児童養護施設では母親が架空の傷害事件を起こした上で父親ではない架空の男と暮らすために邪魔者となって育児放棄されたドンキ(鈴木梨央)、架空のコイン・ロッカーに遺棄されていたロッカー(三浦翔平)、架空の酒乱の母親に左目を奪われたオツボネ(大後寿々花)、架空のギャンブル依存症の母親に虐待されて熱中症になったパチ(五十嵐陽向)、架空の育児放棄装置である赤ちゃんポストに捨てられたポスト(芦田愛菜)などが・・・架空の養子縁組制度の前段階としての架空の里親お試しの機会を待ちながら身を寄せ合って暮らしているのである。

架空の児童相談所の職員である水沢(木村文乃)もかっては肉親のいない子供だった過去を持つ。

架空の施設長である佐々木(三上博史)も謎の女性(鈴木砂羽)の子供をなんらかの理由で殺してしまったらしい・・・という闇を抱えている。だが・・・彼は口汚いが・・・子供たちの幸福を誰よりも強く願っている架空の身体障害者なのである。

施設で擁護されている女子の一人・・・ボンビ(渡邉このみ)はある事情によって・・・里親お試しへの参加を延期されてきた。しかし・・・ようやく・・・はじめてのお試しをすることになる。

一方で・・・裕福な家庭への嫁入りという形で上流社会への復帰を計画する・・・元お嬢様の保護児童・ピア美は・・・狙っていたおぼっちゃまの笹塚蓮(藤本哉汰)の意中の人がポストだと知り・・・複雑な感情を抱くのだった。

ボンビのお試しは・・・順調に進行するが・・・里親候補の食卓に置かれた炊飯器が・・・ボンビにフラッシュバックを引き起こす。

ポンビの生まれた家庭でも・・・食卓に炊飯器が置かれていたのだった。

ボンビの幸せを誰よりも願うポストは・・・ボンビが感じたストレスの謎を解くためにボンビの里親候補を訪ねる。

しかし・・・親を最初から知らないポストには・・・何がボンビを傷つけたのか・・・それだけでは確証がつかめない。

一方で・・・恋仇であるポストに反発を感じるピア美はボンビが憧れる「理想の親」ジョリピー夫妻(城田優・Mailys Robin)を訪ねるが・・・結局、解決策を見いだせない。

ポストは・・・ボンビのふるさとにヒントが隠されているに違いないと判断し、水沢とともに・・・東日本大震災の被災地である海辺の町へ向かうのだった。

たった一人の肉親はボンビの母親の双子の姉妹(遠山景織子)だった。

「あの日・・・あの子の父親と母親はボンビを案じて学校に行く途中で・・・波にのまれたのだと思います。それきり・・・遺体もあがってませんが・・・もしも生きていたら・・・あの子を一人にしておくはずはありません・・・あの子はショックで少しおかしくなってしまい・・・私も避難所暮らしの中で子育てをしなければならず・・・養護施設に預けることになったのです」

「彼女の家で炊飯器はどこに置かれていましたか・・・」

「食卓の上に・・・」

「そうですか・・・」

大食漢の父親が手早くおかわりするために・・・食卓に乗せた炊飯器。

それが・・・フラッシュバックを引き起こしたのだとポストは直感したのだった。

水沢とロッカーの入浴サービスの他は無駄骨だったかもしれないと・・・ポストはため息をつく。

節分なのでイワシを食べるわけだが・・・柊の枝でイワシの頭を刺し、門口に立てておくと朝のうちに野良猫がイワシの頭を美味しくいただいてしまうので・・・単に柊だけになってしまうのだった。

・・・お前の日記を混ぜるなよ。

しかし・・・双子の姉妹の存在を知った魔王と呼ばれる施設長は・・・一計を案じる。

プロジェクターを使ってゴーストママを出現させ・・・ボンビに・・・母親との別れのひとときを与えたのである。

親が貧乏だから・・・施設に預けられているというボンビの妄想はほどかれ・・・震災孤児という現実が顔を出す。

「お父さんは・・・お父さんはどうしたの・・・」

「天国でお仕事をしてるわよ・・・」

「お母さんは・・・どうして来てくれたの・・・」

「ごめんなさい・・・お前を一人ぼっちにしてしまって・・・」

「仕方ないよ・・・お母さんは悪くない・・・それが運命というものでしょう・・・」

時は流れて・・・ボンビの心には現実を受け入れる準備が出来ていたのだった。

ボンビとポスト、恋のもつれを克服したピア美・・・そしてドンキの仲良し四人組は海辺にやってきた。

ボンビの両親は海のどこかで永遠の眠りについている。

「おばさんにあえてうれしかったな」

「なんだ・・・わかってたの」

「お母さんとおばさんは黒子の位置が違うのよ」

「私とちがって・・・あんたには親のことを忘れなきゃいけない理由なんかないんだよな」

「でも・・・いつまでもいない人のこと待っていてもね」

「いいさ・・・素敵な思い出はポケットの中にしまっておけば」

「うわあ・・・それ・・・ちょっと恥ずかしい感じ・・・」

「なんだよお・・・いいだろう」

架空の太平洋の波は寄せては返すのだった。

例によってドンキとパチを連れて弁当屋に出かけた魔王。

謎の女に近づく男に・・・「俺はあいつの亭主なんだ・・・あいつに近付くな」と叫ぶのだった。

謎の女は・・・子供を流産した過去があり・・・万引きに失敗したオツボネの窮地を救う。

母のない子と子のない母の運命の出会いらしい。

架空の地球はさまざまな人々のさまざまな思いを乗せて・・・今日も回って行く。

恵まれない子供たちが恵まれるかどうか・・・架空の宇宙は知ったこっちゃないのだ。

しかし・・・そうであるように架空の人類が祈るのは無料である。

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シナリオに沿ったレビューをお望みの方はコチラへ→くう様の明日、ママがいない

さて・・・日本テレビの謝罪と改善の姿勢を受けて、「全国児童養護施設協議会(藤野興一会長)」と全国里親会(星野崇会長)そして「こうのとりのゆりかご(いわゆる赤ちゃんポスト)」を設置する慈恵病院(熊本市)の蓮田健産婦人科部長の会見の模様を素晴らしいインターネット上でチェックしてみた。その中で・・・蓮田健産婦人科部長は否定していたはずの赤ちゃんポストという呼称を自ら使用した。全国児童養護施設協議会は施設内で虐待があることを認め、全国里親会は里親による虐待があることを認めた。認めた上で「育児放棄」という犯罪を犯している保護者については超法規的に擁護し、「表現の自由」があるから法廷闘争は断念した旨、児童養護の立場からあくまで具体例は示せないがドラマの存在によっていじめ事例や自傷事例があったことを報告している。しかし、ドラマと事例の具体的な関連を立証するのは極めて困難であることを歯切れの悪い口調で暗示したのである。慈恵病院は番組の放送中止を求めることを撤回した。彼らは言う。「親に捨てられた」という現実を言葉にすることが・・・どれほど捨てられた子供を傷つけるか考えてほしいと。しかし・・・それは現実なのである。ドラマがあろうがなかろうがその現実は変わらない。そして・・・親を失った子供たちが里親候補に預けられることをペットにたとえることや・・・施設長が児童を威嚇することはありえないと断言する。しかし・・・その真偽を誰が保証できるだろう。それを保証するようなドラマを作ることに何の意味があるだろう。彼らの言いがかりが自分本位で表現者を抑圧する暴力的なものであることは明らかだと思う。しかし・・・彼らは言うだろう。私たちにそんな意図はありませんと。その言葉をドラマの作り手たちが心の底に秘めていることをできれば思いやってもらいたいと考える。

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2014年2月 5日 (水)

その命、ワシが預かる!天誅~闇の仕置人(小野ゆり子)

二夜連続、中二病かっ。

「スケバン刑事」系の作品だからな。

昭和か・・・なにもかもがなつかしい・・・。

ヤマトもガンダムも禁止だっ。

分かる奴だけに分かる方針じゃないのかよ。

わかりすぎてはずかしいわっ。

脱法制裁ドラマがなんとなくトレンドなのかな。

でも・・・「法の裁けぬ悪を討つ」って・・・ぬるい人たちには無理じゃね。

基本・・・テロリズム万歳って話だからな。

「安心せい・・・みねうちじゃ」だよ。

この手の傑作は「怨み屋本舗」に尽きるが・・・ある意味では「ウシジマくん」シリーズもそうだよな。

うんうん・・・法の裁けぬ悪・・・までを作っているわけだよね。

ここでは・・・ある意味「ストーカー殺人なんて防止できるかよ」的な警察が「役立たず」ってところまでは描かれる。

そして・・・「鉄拳制裁」なんて・・・誰も「正義」と言えない時代だから・・・タイムリーパー制度を導入したんだよな。

400年前の殺人だと時効はなくてもほぼ立件不可能だからな。

暗殺者としての「くのいち」の設定が・・・ものすごく・・・甘い気がするけどな。

主役は大抜擢・・・でいいとして、ピン子たち「渡る世間が終っちゃいました」組とか・・・京本政樹、柳沢慎吾、三ツ矢雄二のある意味、玄人組とか・・・キャスティングがもう・・・なんじゃこりゃな感じはどうすんだ。

白石美帆がいるからいいじゃないか。

「怨み屋」からシュウ(竹財輝之助)も来ている。「眠りの森」でも刑事やってたけど・・・本当は工作員じゃないのか。

「帝都物語」から嶋田久作も来てるしな・・・そこからかよっ。

とにかく・・・サイエンスフィクションじゃないよな・・・サイエンスファンタジーでもないぞ・・・なんか・・・安易な設定のよくある現代の必殺仕置き人的な・・・感じさ。見どころは無駄にクルクル回るくのいち。しかし、そこがかわいいと思えばかわいい。

やんぬるかなっ。

まあ・・・ソチでなんか発生して・・・ドラマどころじゃないだろってことになるかもしれんと・・・主演級のキャストを持つ芸能プロが懸命な判断をしている・・・2014年の冬ドラマなんだよな。

で、『天誅~闇の仕置人~・第1~2回』(フジテレビ201401241957~)脚本・高橋幹子、演出・西浦正記を見た。脚本はフジテレビヤングシナリオ大賞2007出身者。ここまでは「月の恋人」とか「ちびまるこちゃん」とか・・・そこそこ書けてはいるが・・・お試し感はありありだし・・・二話のエピソードは「ありふれた奇跡」をふっと思い出すほど・・・お茶の間には感情移入しにくい題材すぎる。今後、フジテレビヤングシナリオ大賞2006の根津理香も投入されるみたいだが・・・「絶対彼氏」や「でたらめヒーロー」系なので・・・少しはまとめてくるかもしれない。まあ・・・どちらにしろ・・・まだまだあまちゃんな主演と脚本家を・・・その他の皆さんがどうやって鍛えていくのかって・・・ドラマだな・・・それはドラマなのか。

百年以上におよぶ戦国時代のいつか・・・あずみ的なくのいち刺客らしい・・・伊州(伊賀国)のサナ(小野ゆり子)とユウ(南乃彩希)の姉妹は敵に追い詰められ、微塵がくれか発破攻めかに巻き込まれる。

そのショックで・・・次元を突破する衝撃力はないので・・・スペック発動と推定・・・サナはなんとなく現代に跳躍してしまうのである。

見たこともない巨大な城壁。奇妙なものを身にまとった異人たち。恐ろしい速度で行きかうからくり車・・・。

「ここは・・・地獄か」

そう思うしかないサナだと思う。

そんな・・・サナを拾うのが・・・孤独な老女・村田正子(泉ピン子)である。

二十年以上前に・・・起きた連続少女消失事件のさなか・・・幼い娘のゆかり(南乃彩希・二役)が失踪し・・・それ以来、わだかまって生きて来た憐れな女である。

その「怨み」に依存するあまり・・・息子の丈朗(乃木涼介)とも息子の嫁・恭子(白石美帆)とも折り合いが悪い。

先立った資産家の夫のお屋敷の母屋に一人暮らしで・・・息子夫婦は離れに追いやっている。

「もう忘れよう」と前向きな人々が許せないタイプなのである。

その血をひいているらしく・・・孫の加奈子(葵わかな)は一見、明るくみえるがリストカットをしていたりするのである。

ここまで・・・設定は悪くないと思うが・・・ピン子があくまでピン子なので・・・すごくあっけらかんとした感じになっています。

ピン子は意外と不器用なんだよな。こういう異常人格は演じられないタイプの女優さん。

ある程度・・・演技力で正常な感じに修正してしまうので・・・結果としてドラマの底が浅くなるのである。

脚本家もまだまだそういう現実認識力を持つにはいたっていないので・・・もう少し・・・キャラの「感じ」からセリフを起こす努力をするといいだろう。

たとえば・・・正子は・・・「娘をあきらめない自分を認めない世間のすべて」に腹を立てている。

嫁の恭子はそういう面倒くさい家庭にわざわざ嫁に来ているのだから・・・それなりの度量をもっているが・・・「娘を失った母親の悲しみ」に依存している姑に抵抗がある。

この葛藤を示すエピソードを作り・・・初回でセリフにしていかないとねえ。

設定を読みこまないとそれを感じないのではお茶の間はつかめない。

娘を失った老女と・・・妹と生き別れになったくのいちが出会い・・・老女は生き倒れになりかかったくのいちに衣食住を与える。

サナは優秀なくのいちなので・・・実はここに無理がある。

くのいちは敵地に潜入して自給自足するのが当たり前である。

腹が減ったらネズミでもネコでもカラスでも殺して食うし、残飯天国のこの国で空腹で目を回すなんてことはない。

ま・・・そういうことを言い出したらキリがないのでもう言いません。

とにかく・・・くのいちサナにスニーカーを与え、おにぎりを与え、洋式便所の使い方を教える老女正子・・・。

「あんたの命は私が預るよ・・・」なのだ。

家族には恵まれない正子にもそれなりの近所付き合いはある。

古武術道場「竜冥館」で古武術式介護教室を主宰する古武術家の松田竜次(京本政樹)・・・。

スナック「天守閣」を経営するおネエの東条ミツ子(三ツ矢雄二)・・・。

宅配弁当「まごころエプロン」の配達員で警察が苦手な八巻辰(柳沢慎吾)・・・。

「大奥」からタイムスリップしてきた弥生(鷲尾真知子)・・・おいっ。

DVシェルターを運営する現代のかけこみ寺「善灯寺」の菅井知世子(茅島成美)などである。

そこに・・・性的変質者で妻を「緊縛ヘッドホンクラシック責め」にする夫の直樹(丸山智己)から逃れるために真由美(真飛聖)がやってくる。

妻が服従しなかったことで人格の崩壊した直樹は・・・トラックを暴走させ、「善灯寺」に乗り込んでくる。

警察より早くかけつけた正子は・・・ついにサナに命じるのだった。

「サナ・・・契約・・・」

サナは報酬によって契約すればなんでもする女なのである。

おにぎりの恩を返してくれるのだ。

「承知」

しかし・・・変態夫は・・・一般人とは思えない戦闘力を持っていたのだった。

おそらく・・・キャリア官僚とは仮の姿で・・・情報局の工作員だったのだろう。

くのいちと対等に戦うものの・・・戦国時代の修羅の精神には怯むものがある。

「なんだ・・・お前は・・・」

「にぎりめしひとつぶんの仕事をする・・・それだけのこと」

「バカか・・・」

見慣れぬスタンガン攻撃で一瞬、痺れるもののついに変態夫を屈服させ・・・死に至らしめようとするサナ。

「そこまでだ・・・」

殺人に不慣れな現代人の正子は・・・サナを制止するのだった。

「殺さねば・・・後腐れが残る・・・」

「でも・・・人殺しはダメなの・・・世間の声がうるさいの」

仕方なくサナはターゲットの額に「×」をくないで刻印するにとどめるのだった。

かけつけた警察に・・・もろもろの軽犯罪で逮捕される変態男。

「この程度じゃ・・・すぐに釈放されます」と一応アドバイスをする警視庁城西警察署刑事課刑事の首藤(嶋田久作)と一之瀬(竹財輝之助)だった。

そのアドバイスに絶望して自殺する・・・真由美・・・。

この世の闇の深さに胸がふさぐ正子とサナだった。

続いて・・・父親が脱サラしてオカマになったことで家庭が崩壊し・・・オレオレ詐偽の一味となってしまった我が子とミツ子の話が展開する。

オレオレ詐偽の本拠地に乗り込んで一味を壊滅させる・・・サナ。

そして・・・助っ人にやってくる・・・古武術の達人・竜次・・・。

ミツ子の息子は改心して自首するのだった。

まあ・・・親父が突然、オカマになったら・・・おかしくなってもしかたないよね。

それか・・・笑うしかないよね。

次回は・・・行方不明の娘を捜す母親役で西原亜希が登場らしい。

まあ・・・録画しておいて・・・雑用している時に流しておくドラマとしてはいいかな。

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刑事のまなざし

怨み屋本舗

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2014年2月 4日 (火)

見せてもらおうか・・・最強の中二病とやらを・・・ダークシステム 恋の王座決定戦(玉城ティナ)

犬童一心は評価の難しい監督である。

いや・・・映画「ジョゼと虎と魚たち」(2003年)は今世紀を代表する苦さを持っているし、映画「のぼうの城」も共同監督ながら・・・凄みを感じさせる。

ところが・・・映画「タッチ」はすごく無難な仕上がりだ。

で・・・その人がどうやら・・・惚れこんだらしい・・・超B級映画「ダークシステム 完全版」(2013年)・・・。

まあ・・・なるほどねえ・・・と言えるのかもしれない。

なんていうか・・・人間ってこわい・・・そういうホラー・テイストが根底にあるのだな。

一方で・・・そのこわさの裏側にある馬鹿馬鹿しさがにじみ出る時・・・なんとも言えない味わいを醸しだす。

つまり・・・「タッチ」でさえ・・・B級ホラー・ムービーとしてみなくちゃいけないのか・・・。

そ・・・それはちょっと・・・。

で、『ダークシステム 恋の王座決定戦 第1~3回』(TBSテレビ201401210028~)原作・脚本・幸修司、構成・演出・犬童一心を見た。映画を原作とする超希少な展開である。原作映画へのオマージュは強く・・・名シーンなどはそのまま再現されたりしている・・・それがドラマとしていいのかどうかは別として。さて・・・ヒロインは映画版の鎌田優子(映画「zero」の監督・脚本家)から・・・玉城ティナにグレード・アップしている・・・いや・・・いろいろな意味でです・・・物語の中で・・・回想シーンで高校生を演じていて・・・現在はその10年後なので・・・役としては二十代中盤を演じているのだが・・・実年齢16歳である。つまり・・・回想シーンが現役女子高校生で・・・現在のシーンがなんちゃって成人なのである。その美人だか美少女なんだか・・・不明な点がものすごく・・・怪しい感じを醸しだしている。すごいデビュー作になっちゃいましたねえ。

さて・・・主人公・加賀見次郎(八乙女光)は何をしているのかよくわからない若者であるが・・・とにかく・・・大財閥・白石グループのお嬢様・白石ユリ(玉城ティナ)にモーレツに恋をしているのである。

その身の程知らず感覚が・・・この作品のすべてといっていい。

そして・・・加賀見は単に身の程知らずなだけでなく・・・物凄い下衆な性格を併せ持っている。

もちろん・・・ほぼイケメンであるアイドルが演じるのはどうかと思うが・・・彼の場合、時々、斉藤洋介(62)を連想させる・・・くずれた表情も垣間見せるので・・・ギリギリ原作に忠実なキャスティングだと言える・・・それは原作のキャストを見れば何人かは共感してくれるだろう。

さて・・・下衆は下衆を呼ぶので・・・加賀見の親友である西園寺(弓削智久)も何をやっているのかわからない男なのだが・・・加賀見と比べると・・・頭脳明晰で運動神経抜群で決断力・行動力に優れているのだが・・・基本的に・・・加賀見を見下し・・・加賀見が苦しむところを見ると快感を覚えるという・・・嫌な親友なのである。

そして・・・加賀見が苦悩するのを見たい一心で・・・ユリに近付き・・・交際を開始してしまうのだった。

加賀見を襲う絶望。

「なんでおれじゃなくてさいおんじ・・・なんでおれじゃなくて・・・さいおんじ・・・なんでなんでなんで」

ただ・・・憧れて見つめるだけだったユリが親友の交際相手になったことで・・・あらぬ方向に奮起する加賀見は・・・超絶的なDIY(Do It Yourself=日曜大工)精神で・・・次元を越えたダーク・システム・搭載の「サイオンジクラッシャー」(攻撃機能付ラジコン・ヘリコプター型盗聴器)を開発するのだった。

・・・何作ってんだ・・・。

そして・・・恋のライバル・西園寺の部屋に配置するのだ。

・・・何してんだ・・・。

そして・・・西園寺の弱点を探るべく盗聴を開始するのだが・・・当然、やってきたユリと西園寺は恋人同志の・・・愛の行為をはじめて・・・。

「うわああああああああああああああ」

・・・なのである。

これで・・・一同爆笑できるかどうかは・・・お茶の間それぞれの感性によりますが・・・キッドはお腹がよじれちゃいました。

だが・・・奇跡は起きる・・・異常なまでに暴力的な西園寺の隠れた一面をユリに伝えることができたのである。

しかし・・・西園寺は逆襲して・・・ユリと加賀見を監禁してしまうのだった。

絶体絶命の危機に・・・サイオンジクラッシャーの誘導弾が炸裂し・・・西園寺を失神させることに成功する加賀見。

そして・・・頭部に激しい一撃を受けた西園寺は記憶を喪失し・・・ただの親友に戻るのだった。

こうして・・・なんとなく・・・ユリと交際し始める加賀見。

だが・・・加賀見の前に新たな強敵が現れる。

ユリの高校時代のストーカーで・・・天才物理少年だったファントム(板尾創路)である・・・彼はトム・クルーズのファンでもある・・・だからファン・トムと呼ばれている・・・そうですか・・・彼はタイムマシンを発明し十年前に謎の大爆発をおこして消息不明になったのだが・・・十年ぶりにストーカー行為を再開したのである。

まあ・・・ものすごく老けているので・・・タイムスリップしてきたとは思えないわけですが・・・。

再び、DIY精神を発揮した加賀見は占いシステムを統合して八秒前になんとなく未来を予測できるとんでもマシーン「ハイパースキャニングシステム」を完成するのだった。

しかし・・・狡知にたけたファントムは・・・「女を賭けたポーカーゲームを加賀見に持ちかけ・・・加賀見が人間を賭けたりしないと言う前に・・・人間を賭けるなんてできない」と宣言してユリのハートを射止めることに成功するのだった。

そんなことで・・・ハートを射とめられてしまう・・・ユリって・・・。

とにかく・・・まあ・・・年齢不詳・・・職業不詳の人々のユリを巡る不毛な戦いは・・・最終回まで・・・延々と続いていくらしい・・・。

もう・・・ここは・・・某巨大掲示板の実況する人もたちも実況を躊躇する「人外魔境」と言う他はない。

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2014年2月 3日 (月)

武兵衛曰く、青山の合戦が終ったら祝言をあげらあ(永井大)ギザ死亡フラグっすね~(中川翔子)

・・・おいっ・・・格調は・・・。

まあ・・・今回で・・・今年の大河ドラマが・・・超とんでも系であることが明らかになりましたので・・・。

これは・・・「天地人」や「江」を越えるかもわからんね。

そうかもしれんねえ。

とにかく・・・新資料が出て来たとしても・・・母里小兵衛の未亡人が・・・黒田職隆(柴田恭兵)の側室となって・・・永禄7年(1564年)に四男の黒田直之を出産してるからね。青山合戦(1569年)にはあの小兵衛は参戦できないよね。死んでるからね。

ま、通称・小兵衛だから母里一族の誰かが新・小兵衛を名乗ったんだよ。よく似てる弟とかか・・・。

それに・・・形式的にせよ・・・京の都に新将軍が誕生しているわけで・・・基本的にはここは・・・織田勢じゃなくて・・・足利勢なんだよね。

少なくとも義昭が追放されるまではねえ。

そして・・・足利将軍が人質募集・・・というか・・・美姫を全国に募集して・・・西播磨守護代の赤松政秀が応募。

それに嫉妬した守護・赤松義祐が赤松政秀の娘の京道中を妨害したのが発端だからねえ。

激怒した足利義昭が足利軍を播磨になだれこませ・・・赤松義祐の家来の小寺政職が困り、小寺政職の家来の小寺官兵衛が窮地に追い込まれるという流れ・・・。

櫛橋光一党が志方城に逃げるなんて・・・とんでもないよねえ・・・摂津から押し寄せた足利軍によって・・・最前線になってるわけですから~。

だから・・・官兵衛が・・・「さすが・・・織田信長」とか言ってる場合じゃないんだよな。

「官兵衛様・・・今、我が軍は・・・織田軍と戦闘中ですぞ・・・」「え・・・そうなの」ですからあああああああっ。

あ・・・もしかしたら・・・これはD12世界の歴史なのか・・・。

で、『軍師官兵衛・第5回』(NHK総合20140202PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は黒田家譜代の一族母里家の頭領・二代目・母里小兵衛(塩見三省・二役)と我らが主人公・格闘王者・小寺官兵衛(岡田准一)合戦ヴァージョンの二大描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。小兵衛、圧巻、官兵衛、清冽でございますねえ。しかし・・・シナリオ部分が・・・もうすぐ五行体制になってしまうのではないかと・・・案じておりますぞ~。とにかく・・・三千対三百という「絶対に勝てそうもない戦い」で奇跡的勝利をおさめる官兵衛の軍略の描き所なのに・・・気が付いたら勝っていたみたいな演出・・・これは・・・絶句するしかありませんけれどもねえええええええっ。

Kan005 永禄11年(1568年)9月、織田信長は将軍家嫡流・足利義昭を奉じ、上洛戦を開始する。美濃国から山城国に至る通路には六角義賢の南近江半国があり、前将軍弑逆勢力として反抗したためにこれを撃破。京では三吉義継、松永久秀が降伏し、上洛軍は京を占領。10月、朝廷より将軍宣下を受け、第15代将軍に足利義昭が就任する。足利軍はさらに摂津国に侵攻し、池田勝正が降伏。反将軍勢力となった三好三人衆の残党は阿波国へと敗走する。中国地方の王者・毛利家は九州の覇者・大友義鎮と戦闘中だったが・・・政変に驚き、停戦し、足利将軍家に祝い金を贈っている。12月、小寺官兵衛に長男誕生。後の黒田長政である。新時代の到来を予感した武田信玄は実質的領土を拡張しておくことを決断し、駿河今川領国へ侵攻を開始する。これに危機感を持った相模国の北条家は越後国の上杉家との同盟交渉を水面下で開始する(翌年成立)・・・。近畿の一応の安定を見届けた信長は岐阜城に帰国。ここから・・・しばらくの間・・・足利将軍家の政治が行われる。足利義昭は将軍として大奥の充実を求め、全国の大名に上洛と同時に美しい人質を捧げることを命ずるのだった。永禄12年(1569年)1月、播磨国の西の守護職・赤松政秀が義弟である守護・赤松義祐を差し置いて姫を提出。赤松義祐は政秀の増長を怒り、家来の小寺政職に政秀の龍野城攻略を命じる。2月、政秀の娘が京に到着し、将軍家に窮状を訴えると・・・将軍はただちに・・・赤松義祐討伐を命じるのであった。摂津守護の池田勝正は播磨に侵攻を開始。播磨国の東の守護代・別所安治は将軍家に服し・・・赤松義祐の守護代・小寺政職の領地に対する攻撃を開始する。東から侵攻する将軍勢の兵力はおよそ二万。この中には出雲国回復を目指す尼子勝久も加わっている。これに別所の兵五千人と、赤松政秀軍三千人を加えるとおよそ三万人の軍勢となる。小寺政職はおよそ三千人の兵力で御着城に籠城した。東からの将軍勢力は西へと進み、赤松義祐方の支城を踏み砕く。そして・・・5月、ついに赤松政秀が出陣し・・・小寺官兵衛が三百の兵を率いて守る姫路城攻略戦を開始するのだった。

「父上・・・なんでこうなったのです」

官兵衛は隠居して入道となった黒田兵庫助にくってかかった。

「しかたあるまい・・・小寺の大殿(政職)は守護・義祐の命に従ったまで・・・」

「同じ守護代として・・・将軍家に側室を献上すればよかったではないですか」

「ふさわしい姫様がいなかったのだ・・・」

「そんな・・・姫など・・・いくらでもいるではないですか」

官兵衛は隠居後、入道を称しながら多数の側室を侍らせている父親を睨んだ。

Kan005b 官兵衛の父も祖父も戦国の武将として相応の子作りを行い、地縁・血縁の和を広げている。特に父親の兵庫助は未亡人好きで・・・討伐した敵将の後家はもとより、譜代の家来の後家まで奥に侍らす好色漢である。官兵衛には同母弟の黒田利高がいるが、その下の弟たちは利則も、直之も戦争未亡人に兵庫助が生ませた子供である。他にも官兵衛には多数の姉妹がおり、それぞれが近隣の武家に嫁いでいる。その中には養女として浦上宗家に嫁ぎ落命したおたつもいたのだ。

「肝心な時に手持ちの姫がいないとはな・・・」

「迂闊なことですな」

「しかし・・・まさか・・・新将軍が誕生するとは・・・おえりゃせんのう・・・」

兵庫助は生地の備前訛りを思わず口にして嘆くのだった。

官兵衛は父親の隠居所となっている小規模な二の丸を出ると姫路城の忍び小屋へ向かう。

どこかで鶯が鳴いている。

のどかな昼下がりである。しかし・・・事態は逼迫していた。

「摂津衆と合同した別所勢は・・・明石から高砂、高砂から志方へと進軍を開始して・・・小寺支配の空き城を奪取しております」

ものみ(斥候)から帰った栗山善助が報告する。

善助の手腕を買った官兵衛は・・・書写山の忍びと言われる小人忍軍の支配をまかせている。頭領の多氏は全国から小人を集め・・・独自の訓練を施し・・・目付(監視役)としての能力に秀でた忍びを飼っていた。

膂力にすぐれた広峰の神人忍びと融合することで官兵衛は独自の諜報網を形成しているのである。

播磨各地の小豪族と血縁で結ばれている小寺家だったが・・・その広い領地に傑出した人材があれば・・・それが武家であれ百姓であれ・・・即座に官兵衛の耳に入るというのもその結果である。

小人たちは絶えず領内を移動し・・・隠れ・・・潜んでいる。

そして・・・これはと思う人材があれば・・・官兵衛に知らせ、官兵衛は時には自ら、人買いに出向くのだった。

祖父の奥方の実家がある妻鹿郷の曾我家の郎党の息子、太兵衛もその一人だった。

当年十二歳の小童だったが・・・背丈はすでに官兵衛より頭一つ高い。

美作国から武者修行に出て黒田家に逗留していた武芸者の新免無二(宮本武蔵の父親)がその素質を見抜いて三月ほど稽古したところ・・・驚くべき武芸を身につけてしまった。

「おそらく・・・この者には・・・古き武者の血が流れているのだろう・・・」

とつぶやいた新免無二は曾我の太兵衛に免許皆伝を授けている。

そうした優れた人材を育んでいるものの・・・さすがの官兵衛も進退きわまる事態である。

龍野城の赤松政秀の元へと続々と西播磨の侍たちが集結しているという通報が入っているのである。

その数はおよそ・・・三千。対する官兵衛の手勢は三百だった。

どうにもならぬ・・・と官兵衛は控えているくのいちのおうまを見た。

おうまは無言である。

「備前に出した使いは・・・まだもどらぬか・・・」

「へえ・・・」

埒もないことを聞くという表情でおうまは官兵衛を見た。

備前の浦上宗景は毛利氏が尼子氏を滅亡させた後、毛利氏と良好な関係を築きつつ、火事場泥棒のように美作に侵攻し、備前・美作の二国を持つ戦国大名に進化している。

官兵衛は・・・浦上宗家との縁を頼りに・・・浦上宗景へ支援要請を行っていたのだった。

しかし、軍師として派遣した広峰の神主からの報告はない。

このままでは・・・主君・小寺政職が御着城に籠城しているように・・・姫路城に籠ることもできないのである。

どこからも援軍のない籠城は無意味だった。

(討って出るしかないか・・・)

官兵衛は・・・忍び小屋で沈黙に落ちた。

官兵衛の頭には龍野から姫路に至るあらゆる地形が収まっている。

敵の陣容と侵攻ルートから・・・最適な伏兵ポイントを・・・頭をまさぐるように選びだす官兵衛。

その沈黙は一昼夜に及ぶ。

やがて・・・いつしか、眠りに落ちた官兵衛を兵庫助が揺り起こす時が来た。

「官兵衛・・・龍野衆が・・・出陣しおったわ」

「父上・・・迎え討ちましょう・・・我が策は成り申した」

「そうか・・・」

官兵衛はおうまと善助に指示を与え・・・忍びたちは四方に伝令となって散る。

官兵衛が本丸に戻るとすでに主だった武者たちが顔を揃えていた。

「出陣と決した・・・先鋒はワシが務める・・・父上には殿(しんがり)を頼むしかなし」

「心得た」

隠居とは言え・・・まだ衰えを見せぬ黒田入道は喜びの色を見せる。

百騎に満たぬ姫路勢は西を目指し移動を開始した。

参陣する味方は・・・陣触れに応じて・・・決戦の地へと向かう。

青山に進出した赤松政秀はものみの報告を聞く。

「姫路の官兵衛め・・・血迷って出陣したものの・・・多勢に無勢と惧れをなして・・・とどまりおったか・・・」

官兵衛の軍は土器山(かわらけやま)に軍を停めていた。

政秀は対応する小丸山に本陣を構えると・・・敵勢を探る。

官兵衛の軍勢が自軍の十分の一にも満たないと知った政秀は勝利を確信する。

「ひともみにせよ」

龍野の侍大将たちは・・・軍勢を二手に分け・・・土器山に殺到した。

しかし・・・遭遇戦のように見えた戦場は官兵衛があらかじめ忍びたちによって仕掛けた細工に満ちていたのである。

落し穴や獣罠により・・・意外な苦戦を強いられる龍野勢。

しかし・・・十倍の兵力を擁する龍野勢は次第に姫路勢を山上に追い詰めはじめる。

昼前から始った戦闘はすでに夕暮れを迎えようとしていた。

「井出友氏(飯田基祐)様、討ち死に・・・」

「母里新兵衛様、討ち死に・・・」

「母里中兵衛様、討ち死に・・・」

「母里左兵衛様、討ち死に・・・」

「母里伍兵衛様、討ち死に・・・」

「母里武兵衛様、討ち死に・・・」

姫路の名のある侍大将が次々と命を落とす。

山中を駆け巡る官兵衛も何度も死を目前にする。

しかし・・・不死身の体を持つ男は少々の矢傷などではたちまち回復するのだった。

怪力無双の曾我の太兵衛は三間半(およそ六メートル)の長槍を繰り出し、現れる敵を次々と串刺しにする。太兵衛が槍を振ると死体は宙を舞い、後続の兵をなぎ倒すのだった。

だが・・・すでに官兵衛の軍勢は半数が討たれていた。

包囲の輪はじわじわと狭まっている。

その時、山裾で銃声が轟いた。

「来たか・・・」

やって来たのは南方の英賀城の三木通秋の鉄砲衆であった。

三木通秋には・・・官兵衛の異母妹の一人が正室として嫁いでいる。

村上水軍と共同してかっては姫路を攻めた敵が今・・・奇襲部隊として駆けつけたのである。

後方に控えていた政秀の本陣勢に動揺が奔る。

「うろたえるな」と政秀が叫んだ時、英賀の鉄砲衆の間から騎馬武者が出現した。

黒田美濃入道(兵庫助)と黒田安夢入道の兄弟入道が「南無阿弥陀仏」と唱えながら政秀の本陣に突入する。

「ひけっ」

政秀は生命の危機を感じて思わず、退却を支持するのだった。

引き太鼓が響き、寄せ手が山を下りはじめる。

すでに夕暮れが周囲を包み始めている。

気配を読んで、応援部隊は姫路勢を待つ。

やがて血まみれの姿をさらして官兵衛が現れる。

親子は思わず涙を流す。

「官兵衛・・・無事であったか」

「このまま・・・夜討ちをしかけまする」

「なるほど」

夜の闇の中を死にもの狂いの鬼と化した姫路の衆が・・・敵を追い求めていく。

引き際を急襲されて龍野の衆は潰走を始める。

「たわけが・・・夜が明ければ返り討ちじゃ・・・」とわめく政秀の元に使者が到着する。

「備前美作の浦上勢が播磨に攻めよせてございます」

「なんじゃと・・・」

戦況を見ていた浦上軍はすでに国境に集結していたのだった。

政秀は・・・大きく舌打ちすると全軍に龍野城への退却を命じる。

こうして・・・青山の合戦は・・・官兵衛の奇跡の勝利で幕を閉じた。

この勝利は官兵衛の名を大いにあげたのである。

「父上・・・」

「なんじゃ・・・官兵衛」

「姫路の里が後家だらけになりましたぞ」

兵庫助はニヤリと笑った。

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2014年2月 2日 (日)

緑の森を飛翔する幻の蝶と夢の中のヴィーナスと屋上から落下する高校生(樋井明日香)

私事で恐縮ですが・・・一週間くらい・・・アクセス・カウンターが2629000と2630000の間を行ったり来たりしている・・・悪夢かと思ってココログにコメントを寄せている人たちの意見を見てみると・・・。

「昨日はカウンターが1083222だったのに何で今は1083179なの?」

「やれやれカウンターが行ったり来たりしてますな」

「カウンターが日にちがかわると、その前のカウンター数になってます!」

「最近、ココログで障害が発生するトラブルが多い。 どうにかならないものか」

「アクセスカウンターが正常になりません」

よかった・・・夢じゃなかったと思うのだった。

凄く評判の悪いアクセス解析仕様変更に伴うトラブルだと思われるが・・・ココログ・スタッフの皆さん・・・がんばって早く対処してくださいねえ。

心よりお願い申し上げます。

で、『・第4回』(テレビ東京201402010012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。トゲアリ(棘蟻)はこの世界にもいる昆虫である。もちろん、アリの一種である。日本列島にも棲息している。実際にクロオオアリなどに社会的寄生をすることで知られている。もちろん・・・岩田広一(中村蒼)の住むD12世界がクロオオアリの巣(コロニー)に・・・なぞの転校生である山沢典夫(本郷奏多)がトゲアリとして暗示されているのである。「盗まれた街/ジャック・フィニイ」(1955年)的モチーフでございます。

ヒロイン・香川みどり(桜井美南)のモノローグで回想されるここまで・・・。

「でも・・・私たちはまだ・・・何もわかっていなかったのです」

うんうん・・・お茶の間もだよ~。

そして・・・さらに謎を深める・・・岩田広一の・・・見た夢。

幼い時に亡くなった・・・妹が・・・夢の中で語りかける。

「お兄ちゃん・・・ほら・・・蝶々がたくさん採れたよ」

「何だ・・・虫籠からっぽじゃないか」

「お兄ちゃん・・・見えないの・・・」

いつの間にか・・・幼女だった妹が・・・生きていればなっているはずの女子中学生に変貌する。

「そう・・・見えないの・・・うん・・・見えなくていいよ・・・お兄ちゃんは見ちゃだめ・・・」

「あすか・・・」

目覚めた広一は・・・微妙な夢の内容に・・・思わず夢精の心配をするのだった。

明らかに淫夢の気配があったからだ。

しかし・・・大丈夫だった。

(それにしても・・・妹のあすかの成長した姿を見るなんて・・・)

やがて・・・母から「花」について頼まれ・・・広一は「潜在意識」的な納得をする。

今日は妹の八度目の命日にあたるのだった。

(だから・・・妹が中学生になった姿を・・・それとも霊界でも成長というのがあるのだろうか)

広一はムーくんの血が騒ぐのだった。

朝の登校時間・・・広一は・・・典夫を発見し・・・再び軽いショックを感じる。

何故か・・・香川みどりが典夫と肩を並べて登校しているのだ。

だからといってなんだとは広一は思わない。

ただ・・・なんとなく面白くない気はするのだ。

だって・・・そこは自分のいる場所だったと思うから・・・。

そんな広一の心の漣などお構いなく・・・すっかりうちとけた感じのみどりと典夫・・・。

そこへ・・・なんとなくバカップル化しつつある健次郎(宮里駿)と愛(宇野愛海)が・・・。

「おはようおはようおはよう」と乱入してきて・・・問題点をうやむやにするのだった。

休み時間・・・唐突に典夫の質問タイムが始る。

「この学校のヒエラルキーはどのようなものなのかな?」

「ヒエラルキー?」と愛。

「スクールカーストってこと?」と広一。

「スクールカースト?」と健次郎。

「つまり・・・身分の違いがあるってこと・・・」

「そうだ・・・この学校は・・・誰が支配しているのだろう」

「いやいやいや・・・まあ・・・一応、生徒会があって生徒会長はいるけどな」

「その生徒会長はやはり・・・特殊な制服を着て暴君として君臨しているのか」

「どんな・・・アニメなんだよ」

「違うのか・・・」

「うん・・・この学校の生徒会はごく普通・・・言うなれば雑用係だな」

「すると黒執事のような・・・」

「アニメじゃないっ・・・」

「でも・・・暴君ならいるんじゃないの」と愛。

「ああ・・・才蔵先輩のこと・・・」とみどり。

「才蔵・・・」

「話せば長いことながら・・・この町にはかって仁義なき戦いがあったんだ」

「仁義なき戦い?」

「もう・・・昔のことだけどね」

「昔堅気のヤクザの組と・・・新興の暴力団があったのさ」

「ふうん・・・」

「縄張り争いが始って・・・何度か派手な出入りがあり・・・結局、武闘派の揃っていた新興の暴力団が勝利した・・・ヤクザの組は完全に壊滅して・・・死傷者行方不明者多数というありさまになった。その後、新興の暴力団は堅気のフロント企業を設立し、なんだかんだ・・・この町の支配者になったんだ。その名も・・・鎌仲グループ・・・。才蔵先輩は・・・鎌仲才蔵と言って・・・実力者の御曹司なんだ・・・」

「つまり・・・この町の王子ということか・・・」

「いや・・・王子はちょっと・・・」

「でも・・・才蔵先輩には誰も文句は言えないから・・・な」

「やはり・・・闇のプリンス・・・」

「だから・・・アニオタ系から離脱しろよ~」

「でも・・・なんでそんなことを知りたいの」

「もうすぐ・・・大切な人をお迎えするので・・・この世界を調整しておきたいのだ・・・」

「調整って・・・」と広一。

「いや・・・なんでもない・・・」

広一たちはまだ・・・典夫の苦悩を知らない。

認知症の江原のじいさん(ミッキー・カーチス)の部屋に仮住まいする典夫は・・・D12世界への移住計画の先兵なのである。

異次元間通信によって・・・本格的移住の開始が三日後に迫り・・・典夫はプレッシャーを感じている。

そして・・・典夫の世界の王女は重体であり・・・それを治療するための医療技術DRSが・・・D12世界では未発達であることも典夫の悩みの種となっていた。

どちらにしろ・・・期限までに・・・典夫は・・・王女を含む移住者たちを迎える準備を整えなければならないのだ。

そのためには・・・D12世界の支配者を支配下に置く必要がある。

典夫は・・・聖なる万能器モノリスによって・・・鎌仲才蔵(葉山奨之)の捜索を開始する。

一方・・・広一はみどりの帰りを待ち伏せていた。

広一の中には・・・自分でも気がつかないわだかまりがあったが・・・それを解消するとっておきの口実があった。

「どうしたの」

「今日はつきあって欲しいところがあるんだ」

「どこ・・・」

「君んち・・・花を買いたいんだ」

「花を・・・」

察しのいいみどりはすぐに気がつく。

「そうか・・・今日はあすかちゃんの命日なのね」

「うん」

みどりは・・・実家の花屋で・・・花束を作ると・・・墓参りへの同行を申し出るのだった。

「おれ・・・今日・・・あすかの夢を見た」

「エッチな夢?」

「なんでだよ」

「違うの?」

「妹が何故か中学生になっていてさ」

「やっぱりエッチな夢じゃない」

「違うよ」

「じゃ・・・きっと・・・広一くんが・・・心の中で・・・あすかちゃんが生きてたらいいのになあ・・・って思ってるってことね」

「そうかなあ・・・まあ・・・生きてたら・・・そりゃ・・・いいよなあ」

しんみりする二人だった。

D12世界にも寺のようなものや・・・墓のようなものがあり・・・兄は妹の死を悼むのだった。

その頃・・・典夫は才蔵とコンタクトをとっていた。

「君が・・・才蔵か」

「お前は・・・誰だ」

「僕は転校生の山沢典夫です」

「俺がこわくないのか」

「とくに恐ろしい感じはしませんね」

「ふ~ん」

才蔵はギャンブルで得た景品のチョコレートを典夫に贈る。

「学校には行かないのですか」

「行くさ・・・たまには・・・でも・・・あんな偏差値の高い学校・・・俺には無理なんだよな・・・授業なんて何言ってるかまるでわからないし・・・でも・・・親が見栄はって俺を無理矢理・・・東西山高校に入れたのさ・・・俺の親、この町じゃなんでもできるから・・・」

「その威光であなたは学校を支配しているのですね」

「支配・・・」

「私はあなたをこらしめるつもりでした」

「こらしめるって・・・俺・・・なんか悪いことしたかい」

「さあ・・・」

「俺なんか・・・運動神経も鈍いし・・・ケンカも弱いし・・・そうか・・・冴木のことか・・・」

「冴木・・・」

「勝手に俺の手下のふりして・・・いろいろやってるんだ・・・あいつ・・・俺の舎弟をいじめ殺したくせに・・・」

「舎弟・・・」

「松本っていって・・・いい奴だったんだ・・・でも冴木のやり方に反対したら・・・よってたかっていじめられて殺されちゃった・・・自殺ってことになってるけどな・・・」

「・・・」

「なあ・・・こらしめるんだったら・・・冴木にしろよ・・・なんなら・・・俺も手伝うし・・・」

「その必要はありません・・・あなたは喧嘩弱いんでしょう・・・」

「そうだよ・・・しかし・・・なんだって俺は初対面のお前に正直にすべて話しているんだろう」

「あなたがいい人だからですよ」

「・・・」

「で・・・冴木は何年何組ですか・・・」

「・・・いつも屋上にいるよ」

「なるほど・・・」

去って行く典夫の後ろ姿に思わず手を振る才蔵だった。

次の日・・・教室に典夫の姿はない。

「どうしたんだろう・・・」と案ずるみどりに・・・広一はまた妙な胸騒ぎを感じるのだった。

典夫は屋上にいた。

冴木小次郎(碓井将大)とそれをとりまくいかにもヤンキーのような生徒たち。

「ナポリタンはお好きですか・・・」

「なんだって」

「わかるやつにだけわかればいいそうです」

「何言ってんだ・・・こいつ」

「松本くんに何をしたんです」

「へえ・・・そんなことが知りたいのか・・・教えてやるよ」

問答無用で冴木は典夫に飛び蹴りをくらわす。

典夫はそのまま・・・屋上から地上へ落下した。

どよめく・・・とりまきたち・・・。

「いくらなんでもやりすぎだろう」とヤンキー風の女生徒である咲和子(樋井明日香)・・・。

しかし・・・冴木は狂ったように笑いだすのだった。

「あはは・・・落ちちゃったよ・・・あははは・・・死んじゃったよ・・・あはははは・・・殺しちゃったよ」

咲和子はあわてて・・・地上に向かう。

死んだように・・・横たわる典夫。

「おい・・・大丈夫か」

何事もなかったように立ち上がる典夫。

「え・・・」

「地球の引力下であの程度の距離を落下したくらいではなんのダメージもありません」

「はあ?」

「冴木という人間がどういうものなのかは分かったので教室に戻ります・・・」

咲和子は化け物を見る目でなぞの男子生徒を見送る。

カメラは一部愛好家サービスのためにローアングルだった。

ちなみに樋井明日香(23)・・・まずまずのなんちゃって女子高校生である。

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2014年2月 1日 (土)

他人のサイフからクレジットカードを抜き取って持ち去るのは犯罪です(山田孝之)

なるほど・・・勉強になるな・・・とでも言うつもりか。

基本的に言語による表現の補強というのは優しい姿勢だよな。

「私はポスト」と言う度に「ポストが自分のことをポストと呼ぶのは・・・自分を捨てた親と訣別して自立して生きていこうと決めた決意表明であり、架空の赤ちゃんポストに捨てられていたという過去のフィクションによるものです」と必ず字幕を流すという手法もありなんだな。

「ポスト」と誰かが呼びかけたらすかさず・・・「ポストの決意を知った仲のいい友達が親愛の情を示すためにその名を呼んでいるのであってけして侮蔑する意図はないのです」と字幕を流す。

ま・・・ある意味、すごく鬱陶しい感じは否めないな。

しかし、もはや・・・全国のおバカ様に対応するにはそうする必要があるのでは・・・。

テレビドラマが死ぬわっ。

とにかく・・・親に捨てられた子供たちの苦悩を描くドラマに物申すやつらには善意ではなく悪意を感じるのが当然の反応だと思うぞ。

しかし・・・彼らに善悪の判断を求めるのは無理なのでは・・・なにしろ・・・おバカ様なのですからなーーーっ。

まあ・・・とにかく・・・すべてのドラマを「明日ママ」に結び付けるのはもうやめようぜ。

明日は心洗われるサイエンス・ファンタジーの時間なんだし・・・。

何が起こるかわからない五輪の祭典も始るしねえ。

がんばれ・・・ニッポン。

で、『ウシジマくん Season2・第3回』(TBSテレビ201401310058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・山口雅俊を見た。ついにウシジマくんがオムレツに対してケチャッププラスソースという冒険を敢行する今回。かわいいぞ、ウシジマくんかわいいぞ・・・そのお気に入りのフレーズをウシジマくんに使うなあああああああああっ。・・・だって可愛いだろう。・・・まあね。

どこぞの浮かれた若者たちの集うクラブ。

何の努力もしないまま成人してしまった田舎出身の若者・中田広道(入江甚儀)はオサレな読モ(読者モデル)の世界で立身出世をしようと心に決めているのだった。そのために夜な夜なオサレなパーティーに参加し・・・自分のオサレ度アップを目指す。

しかし・・・オサレ世界のエンペラーたち・・・悠馬(植田恭平)やヨージ(織部ハル)は遥か天上世界の住人で・・・憧れのパピコ(紗倉まな)には近づくことも許されない身の上である。

そんな広道とルームシェアをしている幼馴染・森田キミノリ(三澤亮介)は広道の前途を危ぶむのだった。

そこへ・・・カリスマ的オサレエンペラー・G10(藤本涼)が降臨する。

俺がエンペラー

お前らペラペラ

俺は自分の道をいく

どこまでも自分の道をいく

さあ・・・皆見ろよ・・・俺の畔道

落ち武者的な過激なヘアスタイルを披露するG10(ゴト)様に目が眩むヒロミチだった。

キミノリは「うさんくさい・・・」と率直な感想を述べるのだった。

シェアハウスに帰宅した二人。

「俺はオサレになるしかないんだよ。みんなが大学を卒業する22歳までに・・・オサレでチャンスをつかみ・・・シンガーかダンサーかお笑い芸人か・・・とにかく芸能人になってみんなに認めてもらうんだ」

「だって・・・お前、歌も踊りも・・・レッスンひとつしてないじゃないか」

「学歴も金もない・・・俺にはそれしかないんだよ」

「パーティー代とかだってないくせに・・・無理しないで払うものは払えよ」

ヒロミチに友情を感じるキミノリだったが・・・ルームシェアの分担金は要求する。

「ちぇ・・・母ちゃんみたいなやつだな」

着ていく服がまだ決まらないヒロミチ。

そこへ・・・ウシジマくん(山田孝之)が・・・お伴の柄崎(やべきょうすけ)と高田(崎本大海)を連れて出現する。

「ひえっ・・・」

「ヒロミチ・・・なんで返済日ばっくれんだ・・・」

「いえ・・・」

「うっかり忘れたじゃすまないんだぜ」

「はい・・・」

とりあえず利息を回収するウシジマくん。10日で5割なので10万円借りたら10日ごとに5万円の利息を返済しなければならないのだ。

「じゃ・・・十日後な・・・」

「今度は自分で持ってこいよ」

立ち去るウシジマくん。

「あれ・・・もしかして・・・ヤミキン・・・」

「仕方ないだろう・・・オサレには金がかかるんだよ」

素晴らしいインターネットの世界から送られてくるオサレな読モランキング。

ジュリア(佐々木麻衣)は昼間のアルバイト中に自分の順位を確認する。

「37位かよ・・・」

ライバルのパピコは5位・・・モモカ(街子)の43位よりは上だが・・・ジュリアはパピコの引き立て役に過ぎない自分に焦燥感を覚えるのだった。

読者モデルの衣装は自前である。

オサレを極めるためには金がかかるのだった。

パピコからの遊びの誘いを断り・・・夜のお務めに出勤するジュリア。

源氏名リリーとなって客の性的欲望をヘルシー(挿入なし)に解放するのだった。

そこへ・・・取り立てに現れるウシジマくん。

ジュリア/リリーもまた・・・闇金の餌食なのである。

「ねえ・・・もう二十万貸して」

「だめだ・・・」とウシジマくん。ジュリアもパンク寸前なのである。

「もっといい仕事紹介してやろうか」と柄崎。

「私に・・・本番しろっていうの・・・嫌よ・・・私、読モなんだから」

ジュリアにとって性風俗店ヘルスと性風俗店ソープの間には超えられない壁があるのだった。

「どうするかは・・・お前の自由だ・・・しかし・・・今のお前に貸す金はない」

唇をかみしめるジュリアだった。

ウシジマくんの副業は不動産のまた貸しだった。

受付事務の摩耶(久保寺瑞紀)に所轄の生活安全課にストーカー被害の相談電話をかけさせる。

「また・・・お電話します・・・お名前を伺えますか」

「カマタと申します」

ウシジマくんは店子の闇金仲間に電話を入れる。

「そっちの店に生活安全課のカマタさんが手入れに入るって情報入ってる」

「ええ・・・まいったな」

「家賃20万の格安物件あるけどどうする」

「そりゃ助かります・・・情報提供料は・・・10万円でしたよね・・・すぐ振り込みます」

「入居の手続きしとくから」

「ちょろいですね・・・」と柄崎。

「デコ(警察)はこわいからな。だれかにすがりたくなる。だが・・・すがりついたらくいものにされるのがこの世界だ」

闇金業者も捕食するウシジマくんだった。

雨男ことマルヤマ(平田実)は名義貸しを要求されるのだった。

家賃十万円の物件を二件借りるのだ。

それで・・・利息の支払いをチャラにするおいしい話しである。

「親の年金15万円、後はお前がバイトで5万稼ぐ。20万で家賃を払え。そしたら・・・バイトでそれ以上稼げばお前の自由になる金ができる・・・いい話だろ」

ただし、犯罪だ。

マルヤマと相保証の身の上のジャニオタこと森下(金谷マサヨシ)はバイト先のコンビニで客に「キモイ」と言われ・・・パチスロでストレスを解消する。

すれちがう・・・ギャンブル依存症の宇津井優一(永野宗典)・・・今日も負けてジャンプ(利息支払いの延期)をウシジマくんに申し込むのだった。

目の前で誰か(香川沙耶)が芸能スカウトされるのを目撃し・・・うらやましさに包まれるヒロミチ。

近所の児童公園で・・・G10と遭遇する。

「ユーの道をいけばいい」と煽るG10。

「でも・・・俺・・・金が・・・」

「クレジットカード1枚7万円」

「え・・・」

「高級自転車は70%がユーのもの」

「俺に・・・盗みをしろと・・・」

「どこまでも続くユーの道・・・エンペラーになればいい」

「そんな・・・」

「金を手に入れておしゃれに磨きかけてビッグになっチャイナ」

G10は窃盗転売の元締めだった。もちろん犯罪である。

駄菓子屋でウシジマくんは・・・昔馴染みの情報屋・戌亥(綾野剛)と待ち合わせ。

「二人で駄菓子食うなんて久しぶりだね・・・ウシジマくん」

「頼んでおいた・・・中田広道の実家の査定どうなった」

「立地も悪いし・・・たいして金にならないな」

「そうか・・・ありがとう・・・寿司でも食うか」

「ウシジマくんには世話になってるから・・・この駄菓子で充分だよ・・・あと、母ちゃんがよろしくって・・・」

「そうか・・・」

一部愛好家うっとりの揃い踏みである。

バイト先の居酒屋で・・・客のパピコを発見し・・・うっとりとなるヒロミチ。

しかし・・・客の中にはカウカウファイナンス一同もいるのだった。

「ひえっ」

「明日・・・返済日だからいやがらせにきたよ」

「・・・」

「手間かけさせるなよ・・・」

とても・・・利息を用意できないヒロミチだった。目の前に・・・客が置き忘れたサイフが見える。

そのクレジットカードを抜きとるヒロミチ。

ヒロミチは単なるオサレバカから・・・犯罪者となったのだった。

G10から報酬を受け取りウシジマくんに返済をすませるヒロミチ。

「お前・・・この金どうやって作った?」

「バイトです・・・」

「そうか・・・じゃ、十日後な」

「はい・・・」

その頃・・・新しい読モランキングをチェックするジュリア。

「パピコ・・・5位・・・モモカ・・・41位・・・私が43位・・・私がモモカより下って・・・」

ジュリアの周囲にゆっくりと目に見えぬ闇が落ちてくる。

今回も誰もみな・・・快調に落ちていきます・・・。

良い子のみんなはけして見習わないでください。

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