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2014年2月25日 (火)

死者(大野いと)と生者(橋本愛)の心と心が今はもう通わない~ツナグ(松坂桃李)

口寄せの話である。

死者の言葉を聞きたいというのは不思議な感情である。

つきつめていえば「ないものねだり」に属するのだろうか。

この世から去って行ったものを呼びだして語り合う。

そんなことをしても虚しいだけではないのか・・・と悪魔は思うがそれを言ったらおしまいなのである。

「不慮の死」を遂げたものに問いただしたいことがある。

生きている人間の邪な思い・・・。

「永遠の眠り」を妨げられて不快な気分になる死者はいないのか。

寝起きの悪い悪魔はついそう思う。

なんで・・・起こすんだよ・・・せっかく眠っていたのにと。

で、『金曜ロードSHOW!・ツナグ(2012年劇場公開作品)』(日本テレビ20140221PM9~)原作・辻村深月、脚本・監督・平川雄一朗を見た。今、気がついたのだが平川雄一「朗」なんだな・・・ずっと、雄一「郎」で記述していた気がする。訂正するのが面倒なのでここでお詫びしておきます。それが謝罪する人間の態度かよっ。・・・悪魔でございます。

ツナグ一族の高校生・渋谷歩美(松坂桃李)は生者と死者を一夜だけ再会させる機能を持つ先祖伝来の銅鏡の継承者として、祖母の渋谷アイ子(樹木希林)から秘義伝授の修行の日々を送るのだった・・・まあ、ちょっとニュアンス違うけどな。

もっともらしく伝授されているが・・・ちょっとした作業手順のミスで歩美の両親(別所哲也・本上まなみ)を死亡させてしまう魔鏡である。取り扱いは慎重にマニュアル通りにしないといけないわけだが・・・そんなもの・・・よく今まで伝承されてきたなと思わずにはいられないのだった。

で・・・後はオムニバスである。死んだ母(八千草薫)に会いたいマザコン息子(遠藤憲一)とか、ティファニーで朝食を食べそこなった怪しい恋人(桐谷美玲)ともう一度やりたい男(佐藤隆太)が登場し、死者と一夜を共にすることで・・・それなりに充足する。

ちなみに・・・死者は何故かホテルの一室に実体化し、夜明けまで一人の人間と面会ができるシステムである。

おそらく、お試しシステムなので・・・死者も生者も一回しか使用できないルールになっている。

もちろん・・・この世の理に反したシステムなので「綺麗事ではすまない」場合もあり・・・それが・・・未必の故意による殺人者である女子高校生・嵐美砂(橋本愛)と被害者で嵐の親友の御園奈津(大野いと)の再会となって表現される。

ものすごく、狭い世界の話なので・・・二人はツナグこと歩美の同級生である。

さらに・・・歩美は二人のそこはかとない初恋のターゲットでもあります。

高校の演劇部に所属する・・・嵐と御園。勝気な嵐と引っ込み思案の御園は親友同士であった。しかし、消極的な娘の将来を案じた御園の母親(浅田美代子)が娘を唆し、卒業公演の舞台「櫻の園/アントン・チェーホフ」(原作では「鹿鳴館/三島由紀夫」)の主役に名乗りをあげさせたことで・・・亀裂が生じるのだった。御園と争い主役の座を奪われたと感じた嵐は通学路の坂路に散水して御園に怪我をさせようと目論むのだが・・・計画は上手くいきすぎて御園は事故死してしまうのだった。失われた友情への喪失感と罪悪感に悩む嵐はついにツナグとコンタクトをとるのである。

まあ・・・ここから普通にスーパー・ナチュラル・ホラーの世界になります。

そして・・・穏やかで清楚な感じとともに・・・ちょっとおっとりしすぎの憐れな死者・御園と・・・嫉妬深く高慢ちきだけれども・・・本当は普通の女の子だった嵐とのガールズ・トークの幕開けです。

何故か・・・ずっと、ナイフでリンゴの皮をむき続ける御園。

うっかり殺してしまったことを謝罪したいけれど・・・それが逆に御園を傷つけてしまうのではないか・・・友情にヒビが入るのではないかと案じる嵐。

殺されたことを知っているのか、それを怨んでいるのか・・・まったく態度を明らかにせずに友情の復活を喜ぶ風の御園。

ただならぬ緊張感のただよう美少女の共演にうっとりです。

いや・・・もう・・・それだけの映画といっても過言ではない。

挿入される・・・演劇部のオーディションや、路面に加害者の嵐が散水している現場を被害者の御園が見ていたかのような幻影、葬儀における母親の恨み節・・・そして晴の舞台公演・・・。

嵐の心理描写として多用される回想シーンが・・・混然一体となって死者による復讐劇の開幕を予感させるのですが・・・ついに開幕のベルはならないという苦い後味を残すことになります。

泣いてらっしゃるの、嵐? 

いとしい、親切な、やさしい、嵐。

わたしの大事な嵐、わたしあなたを愛していますわ。

わたし、お祝いを言いたいの。

「櫻の園」は売られました、もうなくなってしまいました。

それは本当よ、本当よ。でも泣かないでね、嵐、あなたには、まだ先の生活があるわ。

そのやさしい、清らかな心もあるわ。

さ、一緒に行きましょう、出て行きましょうよ、ねえ、嵐、ここから! 

わたしたち、新しい庭を作りましょう・・・。

ああ、わたしのいとしい、なつかしい、美しい御園! 

わたしの生活、わたしの青春、わたしの幸福、さようなら! 

さようなら! 

「路面は凍っていなかったよ」と御園に告げられた時、嵐は発狂したのだと考えます。

一言で言えば少女趣味の極みですな。

寸止めなんだもんね。

B級ホラーなら嵐はホテルの一室で自殺という結末だもんね。

ナイフが胸に刺さっているんだもんね。

そして、原作殺しと叩かれるんだもんね。

関連するキッドのブログ→陰日向に咲く

本日は大安なり

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ツナグ 監督: 平川雄一朗    出演: 松坂桃李、樹木希林、佐藤隆太、桐谷美玲、橋本愛、大野いと、遠藤憲一、別所哲也、本上まなみ、浅田美代子、八千草薫、仲代達矢 公開: 2012年10月6日       2012年10月11日。劇場観賞。 予告映像では、いかにも「泣…... [続きを読む]

受信: 2014年2月25日 (火) 21時22分

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