愛と青春の平行世界(中村蒼)愛と宿命の多次元宇宙(桜井美南)愛と幻想のパラレルワールド(本郷奏多)
「時間旅行」と「平行世界」はカップルのようなものである。
「七瀬ふたたび/筒井康隆」に登場する時間遡上能力者は・・・同時に平行世界移動能力者でもある。
これは「親殺しのパラドックス」を「多次元宇宙」が解決するという展開である。
つまり、過去に戻って自分が生まれる前の親を殺せるか・・・という問題の一つの答えである。
殺せる場合は・・・親が死んで自分が生まれない世界と親が生きて自分が生まれる二つの世界が同時に存在するということになる。
問題を解決するために過去に遡上したとしても最初の世界と二度目の世界が存続していくということだ。
そっくりだが少し違う世界というものは妄想の原点でもある。
もしも自分が浅田真央だったらショートでも失敗しないと思うようなことである。
アリスが左右が違うだけで基本的に同じの鏡の国に旅立つようなものである。
「鉄腕アトム/手塚治虫」の原点である「アトム大使」には広大無辺な宇宙には地球そっくりの惑星がありえるという発想で「もう一つの別の世界」が登場する。二つの地球の微妙な違いが物語を展開していくのだった。
太陽の裏側に地球そっくりのもう一つの惑星があってお互いが常に太陽の影に隠れているために気がつかないという話もある。
量子力学で多世界解釈が生まれると・・・平行宇宙は無限の時空に拡大する。
まず・・・無の宇宙があり、無のままに無限の数だけ宇宙が存在する。その中から最小の時間の中で有が生まれ、それがまた無限の数だけ存在する。その有の宇宙から無に転ずる宇宙があってそれがまた・・・。
このように宇宙の中に宇宙がぎっしりとつまるのである。
その中でD8世界とD12世界はほんの僅かで全く違う世界として隣接している。
D12世界にはD系の誼があり、12系の誼もある。そういう意味でT12世界はT8世界の侵略を受けやすい。またT12世界がD8世界の侵略を受ける可能性も高い。
R18は禁断の世界と呼ばれるのだ。
何を言っている。
まあ・・・とにかく、あなたが朝、トーストにイチジクのジャムを塗った世界と、ごはんに納豆をのせた世界はどちらも無限個存在し、あなたが一瞬前に日本が沈没し、一瞬後に日本が沈没する世界の間に生きていることは間違いないのである。
そういうことが根本的に分らない人には・・・このドラマの面白さは半減すると断言できます。
で、『なぞの転校生・第7回』(テレビ東京201402220012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。D12世界で移住者たちが朝焼けを見ている頃、T12世界ではD8世界からの侵略者が夜明け前のミーティングを開いていた。王妃(りりィ)の手術は無事に終了し、アスカ姫(杉咲花)は粗末なシャワーを浴びて対放射能防護シールドを洗浄する。短期限定仕様のアステロイドとなった冴木(碓井将大)たちは侵略者たちに粗末な食事を用意する。王家の継承者であるアスカ姫とその侍従官であるアゼガミ(中野裕太)とスズシロ(佐藤乃莉)は山沢典夫ことモノリオ(本郷奏多)と食卓を囲むのであった。
アスカは枯れた一輪の花に目を止める。
「これは・・・」
「花でございます・・・もう枯れてしまいましたが・・・」
「枯れた・・・花」
「モノリオ・・・それにしてもここは狭すぎるな」とアゼガミ。
「ここを拠点として選んだのは・・・王家の発祥の地であるここが・・・次元回廊の出口として非常に安定していたからです」
「しかし・・・もう少し、拡張してもよかったのではないか」
「王家護衛官の立場としてはこれ以上のフィールド警備の余裕がないと申し上げるしかありません」
「とにかく・・・前進基地としてはこれが限界ということか」
「限られた時間と物資ではこの状態が最適と判断しました」
「・・・」
その時、江原老人(ミッキー・カーチス)の部屋の呼び鈴がなる。
香川みどり(桜井美南)が来訪していた。
「香川みどりです・・・追い払いましょうか」とモノリスのマギに制御された江原老人がモノリオに問う。
「いや・・・僕が応対しよう」
みどりは花束を持っていた。
「おはよう・・・これ、おみやげ・・・ほら、うちは花屋だから」
「ありがとう」
「具合はどう・・・」
「具合?」
「身体の調子・・・」
「特に問題はない・・・」
そっけないモノリオの態度にじれるみどり。
幼馴染には告げられた率直な気持ちがなぞの転校生には告げられない。
そのもどかしさが胸を打つ。
「今、少したてこんでいる・・・用件があるなら・・・また今度・・・」
「ううん・・・別に用はないの・・・ちょっと心配だったから」
「君に心配をかけるようなことはない」
「そう・・・明日は学校に来る?」
「まだ・・・わからない」
「・・・それじゃ、また」
「お花をありがとう」
扉は閉じられた。
みどりは物憂い表情で部屋を後にする。
高校生・岩田広一(中村蒼)は倦怠感に包まれてベッドにいる。
幼馴染に告白して瞬殺されたことが広一の胸をふさいでいる。
「何も・・・やる気がしない」
好きな女の子がなぞの転校生に花束を贈ったことにも気がつかないうかつな広一だった。
モノリオに贈られた花束はそのまま、アスカに捧げられる。
「これは・・・」
「この世界の花でございます」
「美しいな・・・」
「この世界には花が満ち溢れています」
「香りが・・・」
その時、突然、江原老人はモノリスのマギの恩恵を失い・・・正気に・・・ただの認知症の老人に戻る。
「うわ・・・なんだ・・・おまえたちは・・・なんだ・・・」
「無礼者」とスズシロは立ち上がり、江原老人を暴力で鎮圧する。
「すみません・・・モノリスのリミットが来たようです」
「なぜ・・・そんなしくじりを・・・」ととがめるアゼガミ。
「モノリスのストックがつきかけております」
「このものたちは大丈夫なのか」
「彼らはアステロイドです」
「なんと・・・そんなものを姫殿下の御前に・・・なんという不始末の極みじゃ」
「彼らは必要な員数でございます」
「・・・」
「お二人には打ちあわせしたいこともあり、この地の偵察を具申いたします」
「偵察か」
「紫外線が有害ですので日傘をご用意ください」
三人は屋外に出た。
「姫様の御前では申せぬことがあるようだな」
「物資が不足しております」
「そうか・・・」
三人はカフェに入店する。
「なんと・・・贅沢なことだ・・・」アゼガミはコーヒーを味わった。
「遺伝子治療のデータの手配はいかがなりましたか」
「後続部隊次第だ」
「それでは王妃様が・・・」
「わかっている・・・」
「安楽死の処置の準備は出来ています」
「そのようなこと口にするでない」とスズシロ。
「申し訳ありません。ヒューマノイドの口の汚れとお見過ごしくだされますように」
「・・・」
モノリオは人間ではなく、人造人間だったらしい。
「もう一つ、あの集合住宅の隣室にはナギサ様のアイデンティカがおわせられます」
「なんだと・・・」
「それは・・・まことか」
「はい・・・DNA鑑定は終わっています」
「すると・・・この世界の王家は・・・」
「王家は別にございます」
「ナギサ様のアイディンティカは・・・何者だ」
「岩田広一という一般市民でございます」
「ナギサ様のご家系は・・・」
「岩田広一の両親は・・・ナギサ様とご両親とは対応しません。突然変異体と推定されます」
「DNAのシンクロによるミュータントか・・・しかし・・・それならば周辺に類似体がありそうなもの」
「この世界ではアスカ様のアイディンティカは岩田広一の妹で・・・すでに死亡しています」
「なんと・・・アスカ様とナギサ様が・・・妹と兄で発生したのか・・・」とアゼガミ。
「それでは・・・アスカ様と・・・この世界のナギサ様の結婚は不可能なのか」とスズシロ。
「いや・・・そもそも・・・異世界のアイデンティカには法的拘束の根拠そのものがない。ご交配に何の問題もない」
「おぞましい・・・神がお許しくださいましょうか」
「もはや・・・神は死んだと言えよう・・・我々にできるのは・・・王家の存続と国家の復興・・・それのみだ」
「補給部隊はいつ到着するのです」とモノリオが問う。
「わからん・・・来るとも来ないともわからん」
「しかし・・・モノリオのストックが底をつけば、皆さまをお守りすることに支障が生じます」
「我々のことはいい・・・王妃様と・・・アスカ姫を・・・いや・・・アスカ姫をお守りすることがお前の絶対的な使命とこころえよ・・・」
「こころえました」
その頃、江原老人は再び、正気を取り戻し、部屋を脱走し、隣室に飛び込む。
「どうしたの・・・江原さん」と広一の母(濱田マリ)が応じる。
「いるんだ・・・たくさん・・・いる・・・あいつがいる」
「幻覚だろう・・・僕が一緒に行って・・・誰もいないと確認すれば落ちつくと思うよ」
広一は江原老人とともに江原家に戻る。
しかし、そこには無数の人々が実在した。
「え・・・」
「いるだろう」
「そんな・・・」
「こいつら・・・こいつら」
アステロイドたちは江原老人を抑えつけ麻酔をかける。
広一の心にようやく恐怖が芽生える。
しかし、逃げようとした足がもつれ・・・彼らに確保されてしまう。
「こいつは誰だ」
「岩田広一だ」
「冴木先輩・・・助けてください」
「どうする」
「逃がすわけにはいかないようです」
「眠らせよう」
「やめて・・・助けて・・・」
そこへ騒動を聞きつけたアスカが現れる。
「何事です・・・あ」
「ええっ」
アスカは見た・・・おそらく異次元世界でアスカの婚約者であったと思われる王族の一人、ナギサにそっくりな広一を。
広一は見た・・・死んだ妹にそっくりなアスカを・・・。
「ナギサ様から手を離しなさい」
アスカに命じられた奴隷たちは手を引く。
広一は恐惶に駆られる。
「ゆ・・・ゆ・・・」
広一は無我夢中で江原家を飛び出し・・・岩田家に逃げ込む。
「どうしたの・・・」と母。
「ゆ・・・ゆうれいが・・・かあさん・・・ゆ・・・かあさん、ゆうれいがいたかあさんかあさん」
「落ちつきなさいよ」
しかし・・・震えが止まらない広一だった。
その時、江原家に三人が戻ってくる。
「何事だ・・・」
「江原がまたコントロールを失いました」
「馬鹿な・・・リミットにはまだ余裕がある」
「しかし・・・」
「そうか・・・」
モノリオは原因に気がつく。
「どういうことだ・・・」
「このモノリオは・・・他者に影響されています」
「なんだと・・・」
「この世界の人間のコントロールに失敗したことがあり、バグだと思っていたのですが・・・どうやら・・・想定外の事態が起きたようです」
「どういうことだ」
「このモノリスは何者かによってデータを書き換えられています。今、それを解析中・・・解読に失敗・・・再試行・・・解読に失敗・・・データを分離、削除・・・成功しました」
「モノリスに関与だと」
「この世界に我々以外の何者かが先着している可能性があります」
「敵か・・・」
「わかりません・・・」
「とにかく・・・状況を修正せよ・・・」
「わかりました」
モノリオは岩田家を訪れた。
「江原さんのお孫さんよ」
「・・・」
「やあ・・・びっくりさせたみたいだね」
「・・・」
「実は、親戚にテレビ局の人間がいて・・・今日はドラマを撮影していたんだ」
「ドラマ・・・」
「おじいちゃんはそのことをすっかり忘れていたみたいで・・・」
「・・・」
「とにかく・・・おどかせてすまなかった・・・」
広一の母は笑う。
「まったく・・・気が小さいんだから・・・」
「でも・・・幽霊が・・・妹の幽霊が・・・」
「君の妹さん・・・?・・・そんな小さな子はいなかったと思うけれど・・・」
広一は我に帰る。
そうだ・・・確かに夢に出て来た妹の姿に似ていたが・・・妹はもっと幼くして死んでいるのだった。
「・・・」
広一は不可解な気持ちを残したまま、微笑みを浮かべたモノリオを見送る。
「おかしいぞ・・・やはり・・・変だぞ・・・あいつは変だ」
モノリオは隣室に戻る。
「調整できたのか」
「ドラマの撮影ということにしておきました」
「ドラマ?」とアスカが質問する。
「姫様はドラマをご存じありませんか」とスズシロ。
「おいたわしや・・・」とアゼガミ。
「お目にかけましょう」
モノリオはアスカにドラマを見せた。
「なるほど・・・芝居の記録のようなものか」
「で・・・ございます」
「戦前にはD8世界でもこのようなものが作られていたのです」
アスカはドラマの中の光景に興味を示す。
「これは・・・どこか」
「学校の教室です」
「学校・・・」
二人の侍従はそっと涙をぬぐう。
王家に生まれながら花もドラマも学校も知らぬアスカが憐れであったのだ。
「すべて・・・戦争が悪いのです」とスズシロは呟いた。
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