« 私は犯ってないと誰もが言いたい時があります(二宮和也) | トップページ | ダークシステムなんかいらない・・・心に闇がある限り!(八乙女光) »

2014年3月26日 (水)

鬼畜米英東京火炎地獄喉元過ぎれば熱さ忘れる(中西美帆)

東京も桜の開花宣言である。例年より一日早いらしい。

で、オンエアから10日たったが・・・「東京大空襲」ものである。

そもそも・・・東京大空襲のドラマを三月十五日にやるという御時勢である。

それというのも・・・東日本大震災が三月十一日で新しい記念日になっているからなのだな。

昭和二十年(1945年)三月十日の記念日に時間を割けないのだ。

そもそも・・・敗戦記念日があり、広島があり、長崎があり・・・夏こそが戦争の思い出を語るにふさわしいという戦後の全国的な心情があるわけである。

しかし・・・首都・東京の歴史を語る時に・・・三月十日が特別な日であることは忘れてはいけないと考える。

もちろん・・・その前後、毎日どこかで空襲が行われたわけで・・・東京だってこれが最初でも最後でもない。

だから、本当は連続ドラマ「毎日が大空襲」があったっていいと思うのだが・・・まあ・・・なかなかね。

山田風太郎さんは「戦中派不戦日記」の中で「・・・こうまでしたか、奴ら!」と呟く。「もちろん、戦争である・・・敵としては日本人を何万人殺戮しようと極めて当然である。さらばわれわれもまたアメリカ人を幾十万人殺戮しようともとより当然以上である。いや、殺さねばならない・・・一人でも多く」二十三歳の医学生であった彼の当日の感想は・・・思いのままなのであろう。

それから・・・69年の月日が過ぎ去った。

もちろん・・・そもそも・・・戦争である。しかも米国相手としては真珠湾空襲という日本の奇襲で始っている。

大陸では日中戦争で昭和十三年から昭和18年にかけて日本軍が合計218回の重慶に対する戦略爆撃をやっている。

つまり・・・自業自得とも言えるのである。

たが・・・それはそれ・・・これはこれだ。

半島の人が「絶対に許さない」と言うように「絶対許せない」という人がいてもいいと思う。

その後に生まれた人々はその言葉をかみしめるべきなのだろう。

歴史とはそういう思いの積み重ねに過ぎないのだから。

で、『NHKスペシャル・特集ドラマ・東京が戦場になった日』(NHK総合201403151930~)原案・中澤昭、脚本・中園健司、演出・伊勢田雅也を見た。原案者は昭和12年生れの東京消防庁出身者である。そして脚本家は戦後の生まれで「サラリーマン金太郎」シリーズの人だが昨年、逝去されたので・・・ある意味、遺作と言える。八歳とか生まれてもいなかった人が語る虚構である・・・それは現実とは違うに決まっているわけだが・・・残された資料や・・・証言を蓄積して・・・過去に迫って行く・・・そういう情熱には敬意を表したい。

で、例によって・・・舞台は現代から始る。脚本家は通俗的なドラマの書き手なのである。

そして、主人公の高木徳男(加藤武→泉澤祐希・・・「白夜行」の桐原亮司(幼少時代)
で「モテキ」の藤本幸世(中学生時代)である)は86歳の老人で・・・火事場に遭遇するのだった。

団地の高層階のベランダでは幼子をかかえた母親(小橋めぐみ)がパニックに陥り、助けを求めて絶叫している。

高木は思わず・・・階段を昇って行く。

その姿を消防官の神部佳織(中西美帆)が目撃する。

夕方のニュースで・・・高木の訃報が流れる。佳織の祖父、神部正明(米倉斉加年→市川知宏)は愕然とする。

高木の葬儀に弔問に訪れた神部は・・・高木の娘・由紀子(麻生祐未)に二人の因縁を話すのだった。

昭和二十年のあの日・・・神部は徴兵を猶予された理科系・医科系の学生たちによる学徒消防隊員・・・二歳年下の高木は年少消防官だった。高木は・・・空襲に対し消防活動に従事した虚しい青春の日々を振り返る。

植木職人の父(大橋吾郎)と母(工藤夕貴)と暮らす高木は帝都空襲の危機が高まる中、急募された年少消防官に志願する。二人の兄は戦地に赴き、長兄はすでに戦死の報せが届いている。消防官に志願することは一種の徴兵逃れであった。

しかし、訓練の後に現場に配属された高木はいつしか消防官として成長して行く。

瀬川(長村航希)や白石(葉山奨之)という同期の年少消防官仲間もできた・・・最初は空襲警報に怯えて半鐘を鳴らすこともできなかった臆病者の高木に消防官としての自覚が芽生えたのは勤労動員で東日製作所に女子挺身隊として勤務する聾唖者・沢田若葉(朝倉あき)への淡い恋心がきっかけだった。この人を守るために消防活動をする・・・と火消し魂に着火したのである。

一方で・・・妻子を疎開させた父・正孝(鶴見辰吾)と二人暮らしの西北大学理工学部の1年生の神部正明は学徒消防隊の募集に応じ・・・瀬川の属する消防分隊に同級生の秋野(千代将太)とともに配属されるのだった。

戦局は悪化し、昭和十九年暮れ・・・ついに東京はB29による戦略爆撃の射程内となる。

米軍は日本国民に神経戦を挑み、連日の空襲警報発令で人々の心は荒んでいく。

昼間から帝都の空を悠然と飛行するB29。

迎撃にあがる日本軍機は高高度に到達することができない。

空を見上げ歯噛みする東京の市民たち。

しかし・・・この時、B29は来るべき東京大空襲のために航空写真を撮影し、爆撃計画に利用していたのである。

やがて、本土周辺の制海権も得た米軍は空母を進出させ、艦載機が東京に飛来する。グラマンF6Fヘルキャットはその代名詞である。硫黄島陥落後はこれに戦闘機ノースアメリカンP-51マスタングが加わる。

米軍はこれら艦上戦闘機や戦闘機による対人機銃掃射を積極的に行い、本土でも多くの犠牲者が出た。

九死に一生を得た人々は口々にパイロットが笑っていたと証言する。

本土空襲名物、機銃掃射で被弾のエピソード挿入の誕生である。

今回の犠牲者は高木の初恋の人、沢田若葉である。

耳が聴こえないので敵機の来襲に気付かずに花を摘む若葉だった。

「撃つなら俺を撃て」と叫ぶ高木だったが・・・憐れ若葉は血煙りの中でもの言わぬ骸となるのだった。

高木は唇をかみしめる。

米軍は続いて都市周辺の軍事工場の爆撃を開始し・・・消防活動は活発となる。

「あんな・・・学生さんが来ても足手まといになるだけ」と言われた神部たちも一生懸命に消火活動に参加する。

しかし・・・神部の友人、秋野は「本格的に空襲が始れば消火活動など・・・焼け石に水だ」と語る。

食糧事情は悪化し、消防ポンプ車の燃料確保に駆けまわった白石は過労のために路上で眠りこみ凍死する。

高木は次兄の戦死を知らされる。

そして・・・その日は来た。

高木家では年度末となり、疎開先から末娘・朝子(松浦愛弓)が帰宅していた。

未明・・・米軍作戦名「ミーティングハウス2号作戦」と呼ばれる通称三月十日の東京大空襲へ向けて325機のB29戦略爆撃機が出撃し、世界史上最高の10万人の死者を焼夷弾で焼き上げた。

周囲を炎で囲んでから中心部を爆撃する用意周到な大虐殺であった。

この空襲の中・・・高木の家族は両親と妹の全員が行方不明となり・・・植木ばさみだけが残される。

高木の属する消防隊も高木と神部を残して・・・戦火に消えたのである。

高木と神部は乳飲み子を抱えた母親が焼死するのを為す術もなく見守った。

竹内分隊長(米村亮太朗)や機関員・島田(JIN)とともにポンプ車も炎の中に消え消火活動のための・・・水がなかったのである。

高木は・・・戦後、稼業の植木屋を継ぎ・・・おそらく神部は消防庁に勤務したのだろう。そして孫娘も消防官となったのだった。

高木は火災現場で・・・逃げ遅れた母子に・・・「落ちついて救助を待て・・・はしご車が到着する」とアドバイスして・・・天寿を全うしたのだった。

母子は・・・神部の孫娘が所属する消防隊によって救助されたのである。

高木の雄々しい最後を想い神部は・・・呪うべき時代を懐かしく回想するのだった。

そんな時代もあったのである。

関連するキッドのブログ→ごちそうさん

梅ちゃん先生

|

« 私は犯ってないと誰もが言いたい時があります(二宮和也) | トップページ | ダークシステムなんかいらない・・・心に闇がある限り!(八乙女光) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 鬼畜米英東京火炎地獄喉元過ぎれば熱さ忘れる(中西美帆):

« 私は犯ってないと誰もが言いたい時があります(二宮和也) | トップページ | ダークシステムなんかいらない・・・心に闇がある限り!(八乙女光) »