羽柴秀吉様書状に曰く、其方の義は我等弟の小一郎め、同然に心安く存じ候・・・と軍師官兵衛(岡田准一)
秀吉から官兵衛に宛てたこの手紙は天正五年(1577年)七月二十三日の日付となっている。
官兵衛から秀吉へ播磨国内の情勢について認めた手紙の返書という体裁だ。
「丁寧なお手紙ありがとうございます。私は官兵衛殿を私の弟・小一郎(羽柴秀長)と同然の身内と思っています。あなたの判断に全幅の信頼を置いておりますので、万事お任せいたします。播磨国の情勢の是非はすべて小寺家の采配にかかっていると考えますのでさらに熟慮をお願いします。もちろん、これまでのあなたの手腕には大変満足しております・・・私には文才がないので拙文で申し訳ありません」
秀吉は官兵衛に相当にへりくだっているわけである。
この時期は・・・秀吉という織田家の播磨方面軍司令官と・・・官兵衛という播磨国の現地勢力代表にとって微妙な時期であったことは言うまでもない。
「黒田家譜」によれば、すでに毛利の播磨国侵攻の前哨戦である「英賀合戦」が発生しており、室津や英賀に毛利水軍が出没し、本願寺門徒の一揆勢力が蠢動している。また播磨国西部の龍野城から出雲街道沿いの佐用、上月という両城は美作国からの毛利・宇喜多連合軍の勢力圏に入っている。最前線の姫路城には陸海から圧力がかかっているのである。
毛利と本願寺の両者による播磨国内の調略を盛んに行われ・・・勢力地図も流動的になっている。
なにしろ・・・強いものが何よりも正しい戦国時代なのである。
結果論として・・・織田軍の軍事力は戦国最強となるわけだが・・・それを誰もが推察しているわけではない。
その実践者である秀吉も・・・その賛同者である官兵衛も・・・最後に勝つのは「織田」という信念は揺るがないものの・・・局地的な勝敗が生死を決することもあるわけである。
播磨国最強の黒田軍を持つものの・・・基本的には多勢に無勢の官兵衛・・・。
心から・・・秀吉軍団の到着を待っているわけだ。
「秀吉様・・・早く来てくださいよお」
その心を慰める・・・秀吉から官兵衛へのラブレターなのである。
で、『軍師官兵衛・第11回』(NHK総合20140316PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。連続11行レビューキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!・・・なんとか踏みとどまったのは宇喜多直家の毒殺披露があったおかげですな。今回は恐ろしいと評判はあるが・・・姿は見せない越後の虎・・・上杉謙信公描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。悪夢ちゃんも御照覧あれでございますなあああああっ。今回の官兵衛は神出鬼没の半兵衛に叱咤激励され、毒殺魔の宇喜多直家に戦々恐々となり、父・黒田職隆や、正室・光に「弱いところ」を見せて、一部お茶の間を萌えさせる悪辣な展開・・・ま・・・もう・・・そういうドラマなんだと天を仰ぐ他ないわけでございます。
天正五年(1577年)二月、織田信長は後継者筆頭・織田信忠を主将として紀伊国の雑賀党攻めを開始する。鈴木孫一らは一旦降伏する。三月、能登国七尾城(畠山氏)攻略中の上杉謙信は北条氏の上野国攻めの報に接し、一時帰国を余儀なくされる。この頃、武田勝頼は北条氏政の妹を継室に迎え、北条氏との関係改善に努める。織田・徳川連合軍の圧力が増したためである。信長の娘で家康の後継者・信康の正室・徳姫は次女・熊姫を出産。男子誕生がなかったことで信康は側室を迎え火種となる。閏七月、上杉謙信は再び七尾城攻めを開始。畠山氏救援のため、織田信長は柴田勝家軍団に加賀国進出を命じる。上杉氏と連動した本願寺は加賀一向一揆勢力によるゲリラ戦を開始。八月、援軍として参加していた羽柴軍が戦線離脱。九月、七尾城が陥落。撤退した柴田軍は上杉勢の追撃を受ける。天王寺砦の松永久秀は謀反を決意し、信貴山城に籠城する。織田信忠は羽柴秀吉とともにこれを討伐した。松永久秀討伐で戦線に復帰した秀吉は九月中に信長から播磨平定の許しを受ける。信長は九月六日付けの書状で官兵衛にその旨を伝えている。曰く「羽柴筑前守を差し越し候、(中略)油断あるべからず候なり」・・・。信長にとって・・・秀吉が進駐軍司令官、官兵衛が現地軍代表という認識であったことが窺える。十月、信忠は織田家総帥として従三位左近衛中将に任じられる。この頃、丹波国攻略中の明智光秀は丹波国亀山城を支配下に置く。信長軍団のスケジュール表はタイトだな。
姫路の山城に夏の気配が立ち込めている。
鬱蒼とした林の中で官兵衛は修行をしていた。
神明尼による・・・神明通力の伝授である。
官兵衛は・・・そうした超自然の力には懐疑的であったが・・・神明通力の素質ありと神明尼に告げられてつい・・・その気になったのである。
「そもそも・・・神明の力は血の中に潜んでおりまする」
「血に・・・」
「官兵衛殿は・・・その血を濃く生まれついておるのです」
「そうは思えんのう・・・」
「ふふふ・・・秀吉殿の軍師・・・半兵衛殿を御存じか・・・」
「無論・・・」
「官兵衛殿には・・・半兵衛殿と同じ・・・とても役に立つ神明通力を授けまする」
「それは・・・」
「神足通力でございます」
「神足通・・・」
「唐の国では道術として神行法なるものがございますが・・・要するに迅速な移動を可能にする神明通力なのです。達人となれば・・・播磨国と京の都を一日で往復できまする」
「それはまた・・・嘘のような話だな」
「かって・・・設楽が原の合戦(長篠の合戦)の折、秀吉様は・・・武田軍の誘いに乗りかかりました・・・半兵衛殿はそれを諌めた後で、その夜には播磨国に忍んでいたのですよ」
「なんと・・・」
「官兵衛様も半兵衛様と同じ神出鬼没の術を身につけなければなりませぬ」
「・・・」
「明日は備前の宇喜多直家殿を訪ね・・・明後日は長浜の秀吉様を訪ねるのです」
「そのようなことが・・・」
「官兵衛様は宇喜多様に毒を一服もられるでしょう」
「なんと・・・」
「そもそも・・・官兵衛様は矢傷にお強いこと・・・不思議に思われなんだか・・・」
「はて・・・」
「官兵衛様は・・・生まれながらにして毒にお強い身体をお持ちなのです・・・それもまた神明通力の血のなせる業・・・」
「そうなのか・・・」
「さあ・・・目を閉じなされませ・・・」
「・・・」
「目を開けば・・・そこは・・・備前岡山城でございます」
官兵衛は目の前に岡山城を目にして・・・驚愕した。
そして・・・城主・宇喜多直家に面談して・・・毒を盛られ・・・眩暈を感じることになるのだった。
宇喜多直家はその結果として・・・官兵衛に一目置くことになる。
とにかく、大河ドラマの主人公が時々、時空を超越したように見えるのは神明通力の威力なのである。
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