タイムトラベラーめ以子のごちそうさん(杏)
太平洋戦争に突入し、ついに終戦を迎え・・・さいはて度の高まった「あまちゃん」の後の「ごちそうさん」である。
ある意味・・・「梅ちゃん先生」の大阪版的朝ドラマと言える。
かなり・・・ありえへん展開の連続で・・・一部お茶の間を辟易させるものの・・・これはこれでいいんじゃないか的支持を受け、結構、人気の連続テレビ小説となっている。
特にテレビドラマで大阪大空襲が取り上げられることはあまりないので・・・貴重な感じもいたします。
あくまで・・・朝のお茶の間的に許容範囲の戦中であり、終戦であるが・・・そもそも一億人近い人々の・・・それぞれの太平洋戦争があるわけであり・・・個々の場合が違っても・・・ある程度までは許容範囲なのである。
田舎に住んでいれば空襲など知らずに身内の戦死だけが「戦争」との接点だった人もいれば、ガタルカナルで餓死した「将兵」もいるのが国民的体験の不一致というものなのである。
そういう意味で「大阪だって焼け野原」というドラマがたとえファンタジーであっても作られることは素晴らしいことだと考える。
で、『連続テレビ小説・ごちそうさん・第1回~』(NHK総合20130930AM8~)脚本・森下佳子、演出・木村隆文(他)を見た。物語はヒロインのめ以子(豊嶋花→杏)が六歳だった明治44年(1911年)から始る。六歳が数えなのか満なのか不明なので定かではないが・・・め以子は明治38年(1905年)頃の生れである。しかし・・・おそらく・・・平成生まれでタイムスリップした幼女なのであろう。あるいは意識変容系の時間跳躍で・・・少女時代か・・・女学生時代に平成から精霊(魂)が転移してきた可能性もある。おそらく・・・「ぼくの夏休み」に影響されたものだと思われる・・・おい。
そういうわけで・・・時々、ヒロインは平成時代の生れではないかという言動を展開するが・・・明治、大正、昭和の意識と平成の意識が混濁していると考えれば問題ないわけである。
ちなみに・・・現在の第23週「いもに見ていろ!」は太平洋戦争終戦の昭和20年(1945年)であり、ヒロインの実年齢は40歳前後ということになる。どう見ても二十代後半にしか見えないという意見もあるだろうが・・・世の中にはいつまでも若々しい人はいるのだから問題ないのである。
とにかくヒロインは西門悠太郎(東出昌大)と結婚して大阪に来て、ピーターパンの八代目でおなじみの高畑充希が演じる希子という義妹ができる。大正12年(1923年)に16歳の女学生だったので現在、38歳なのだが・・・どう見ても二十歳そこそこにしか見えないのである。これは童顔だからなのだろう。
さらにヒロインの親友に桜子(前田亜季)がいてヒロインと同級生なので・・・もういいじゃないか。
ついでにヒロインは大正12年(1923年)に長女のふ久(森山咲瑠→原見朋花→松浦雅)を出産しているのでふ久は現在22歳である。ふ久は第一回大阪空襲で長男を出産し、ヒロインは祖母になる。杏(27)で松浦雅(18)なのでヒロインは9歳くらいで長女を出産している気がするが・・・それは気のせいである。大河ドラマと並んでテレビ小説でもよくあることなのである。
しかし・・・なんで・・・老けたメイクをしないのかは謎である。
まあ、とにかく・・・ヒロインもヒロインの親友もヒロインの義妹もヒロインの長女も可愛いからいいのだ。
昭和19年・・・ふ久は初恋の人的な弘士(中山義紘)に嫁ぎ、夫の出征前にめでたく妊娠する。
時を同じくして、ヒロインの次男・活男(二宮輝生→西畑大吾)は海軍の主計課に入隊する。
この頃、すでにマーシャル諸島攻略を果たした連合軍はサイパン、グアム、テニアンなどを含むマリアナ諸島への占領作戦を発動していた。
マリアナ諸島の占領は日本本土を超空の要塞「スーパーフォートレス」B-29長距離戦略爆撃機の攻撃範囲と為すことである。
帝国海軍はその阻止に向けて米海軍機動部隊にマリアナ沖海戦を挑む。
日本の空母9隻と米国の空母15隻が激突した結果・・・日本海軍は壊滅的打撃を受ける。
特に航空機は質量ともに勝る米軍が日本軍を圧倒し、米軍に「マリアナの七面鳥撃ち」と呼ばれる惨敗を日本軍は喫するのである。
日本軍は制空権、制海権を共に失い、昭和19年、7月9日にサイパンは連合軍に占領され、日本軍は玉砕。8月1日にテニアンが占領され、日本軍は玉砕。8月13日にグアムが占領され、日本軍は玉砕。ただし・・・捕虜は五千人以上発生している。
生き残る人間はどこにいても生き残るのである。
捕虜にならず、その後、昭和47年(1972年)までゲリラ戦を続けた横井庄一軍曹の例さえある。
とにかく・・・マリアナ諸島は連合軍の手に落ち・・・日本本土は・・・B29の射程圏に入ってしまった。
高度1万メートルを飛行するB29に敵対できる戦闘機を日本軍は有しておらず・・・陸軍の「疾風」「隼三型甲」「飛燕2型」や海軍の「紫電改」などがなんとか高々度まで上昇し、体当たりを敢行するしかなかった。
しかも・・・早期警戒レーダーの開発に遅れた帝国は・・・敵機をとらえるのが遅く、迎撃機が高々度に到着する頃には爆撃が終了しているのが実情だった。
しかし、初期の空襲は軍事拠点に対象が絞られており、損害は軽微だった。
こうして・・・日本は・・・昭和二十年を迎えるのである。
一月早々・・・戦果が少ないと判定された爆撃軍司令官のヘイウッド・S・ハンセル准将が更迭され、ヨーロッパ戦線で絨毯爆撃に実績があるカーチス・ルメイ少将が第21爆撃軍司令官に着任したのだった。
すでに帝国の防空能力の低さを察したルメイは・・・低高度から焼夷弾を集中投下する無差別爆撃を立案する。
こうして耐火性の低い日本の家屋を焼き払い・・・無差別で日本国民を焼却する容赦ない攻撃が始る。
三月十日・・・東京大空襲、死者およそ十万人。三月十二日・・・名古屋大空襲、死傷者およそ二千人、そして三月十三日・・・大阪大空襲、死者およそ三千人。
大阪では八月十四日(終戦の前日)までに八回の大空襲が行われ、全域が焦土と化したのだった。
そんなこんなでたまに撃墜されたB29の搭乗員の死体が生き残った人々に小便ぶっかけられるのも仕方ないと考える。
それでも・・・め以子はしぶとく生き残り、夫の作った地下鉄に命を救われ・・・次男の戦死の知らせにも・・・小姑の和枝(キムラ緑子)のツンデレな「いけず」にも耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び・・・終戦の日を迎えたのだった。
そして・・・闇市で馬の餌を安価で手に入れ・・・新作料理「うまいもん」も開発しため以子。
「ごちそうさん」
夏なのにどこか寒々しい季節の失われた焼け跡に蠢く空腹の人々に大好評で商売繁盛なのだが・・・そこに「誰に断って商売してんねん」の愚連隊(波岡一喜)が登場である。
なんだか・・・すごく落ち着く。
関連するキッドのブログ→最後から二番目の東京大空襲
| 固定リンク
« 終わらない悲しみ~鼠、江戸を疾る(滝沢秀明) | トップページ | 黄金色の橋の上で(桜田ひより)それでは皆さん御一緒に(渡邉このみ)正気になったらさようなら(安達祐実)優しくされたら泣いちゃうかもね(芦田愛菜) »
コメント