ボクとモノリオと公園で(中村蒼)私はマグネシウム・ロボット(本郷奏多)こまどりフレンド(杉咲花)シャボン玉かぶった(桜井美南)
冬ドラマのさいはてドラマも次々とフィナーレを迎えている。
この世のすべてのことから・・・いくつかの事柄をピックアップしていく虚構の世界。
最終回を迎えた「明日、ママがいない」は子供たちを主役とする物語であるが・・・この特別な子供たちは「駄菓子屋」とは無縁である。「買い食い」が特別な子供たちの特別さにそぐわないのかもしれない。一方で、やはり物語を終えた「闇金ウシジマくん」は登場人物には不似合いな駄菓子屋が何度も登場する。主人公と幼馴染がシャボン玉をする場面もある。
「僕がいた時間」では最終回直前、「駄菓子屋」という共通体験が重要なカテゴリーとして登場し、自発呼吸が困難となりつつある主人公がヒロインと特別な意味を持つシャボン玉を楽しむ。
そして・・・今回、「なぞの転校生」は「風が吹いている公園」で・・・登場人物たちがシャボン玉を飛ばすのである。
しかし・・・呼吸をしていないロボットにはシャボン玉を飛ばすことはできないのだった。
みんな・・・どんだけ・・・シャボン玉が好きなんだよ。
ま・・・しかし・・・子供がはじめてシャボン玉を楽しむ時・・・魔法は存在するからな。
で、『なぞの転校生・第10回』(テレビ東京201403150012~)原作・眉村卓、脚本・岩井俊二、演出・長澤雅彦を見た。公式ではサイファ・バージョン3.2の解説があり、典夫(本郷奏多)がマグネシウム電池を電源とするロボットであることが示される。「衛星タイタン」や「探査船コロンブス」そして「太陽フレア」も追加されるが「プラズマサーベル」と同様に解説はない。用語解説にも差別が存在するのである。マグネシウム電池はマグネシウムを燃料として発電した後で発生する水酸化マグネシウムを太陽熱などの自然エネルギーで金属マグネシウムに還元することを目指すエネルギー・サイクルを目指し、お茶の間世界では研究中のカテゴリーである。アゼガミ(中野裕太)は海水さえあれば無尽蔵のエネルギー云々と発言しているが・・・お茶の間世界では食塩水は電解液に過ぎないのでD8世界の超テクノロジーなのだろう。この辺りの説明の度合いがハードSFとファンタジーの境界線であることは言うまでもない。
モノリスの切れ目が縁の切れ目なのである。
お茶の間世界では土星の衛星タイタンに未だ木星探査船コロンブスが到達した記録はない。コロンブス由来の宇宙船といえば・・・悲劇のスペースシャトル「コロンビア」(2003年喪失)があるので・・・忌み名と言えるかもしれない。
とにかく・・・モノリス文明は原子力の暗喩と捉えることはできる。
スズシロのモノリスに対する言動は・・・原子力文明の恩恵に浴しながらそれを嫌悪する非科学的な一般人を暗示しているらしい。
「モノリスの残量はゾーン(異次元ゲートか?)を開くために必要な100ギガクラーク(科学者クラーク由来の単位か?)二回分・・・」
無能な王家の人々は絶望感に浸る。
おそらく超絶的な能力を持っているモノリオを保持しているだけで・・・どのような困難も克服できると思われるが・・・王家の王族である王妃(りりィ)は要求を口にするだけ、王家の侍従であるアゼガミとスズシロはそれを実現する能力を臣下組織なくしては持たないのである。
「この地でモノリスを開発すればよいではないか」という王妃。
しかし、D12世界の土星ノタイタンにモノリスの原材料があったとしても・・・余命一カ月のアゼガミとスズシロには・・・その採掘は不可能なのであった。
「この地にモノリスを導入することなど無意味」と思わず感情的になるスズシロ。
D8世界はモノリス文明によって栄え・・・モノリス文明によって滅びたとスズシロ(佐藤乃莉)は主張する。
臣下の反駁に激昂する王妃・・・「この無礼者を・・・銃殺にせよ」
ついに臣下としての立場を放棄するアゼガミだった。
「こんな・・・婆のために・・・貴重なモノリスを浪費してしまうとは・・・なんという失敗だったのだろうか・・・王妃のための何の役にも立たない調度品を移送するエネルギーがあれば・・・二十倍のモノリスを運びこめたというのに・・・」
「無礼者・・・王家二千年の歴史をないがしろにする気か・・・神を畏れぬのか」
「何が神だ・・・王妃と言えども・・・元は高級娼婦・・・私の父である大臣の画策で・・・王家に送り込まれ・・・王子を出産しただけの女が・・・」
「無礼者・・・モノリオ・・・この者を取り押さえろ」
命令者として最上級の王妃に命じられ、モノリオはアゼガミをやんわりと拘束する。
「俺の家で・・・ケンカしないでくれ」
モノリス(霊石)のマギ(霊力)によるレイバー(使用人)である江原老人(ミッキー・カーチス)は節電のためにただの認知症患者に戻り、異議を唱える。
アステロイドによるレイバーたちは期限切れで単なる知的障害者となり解放されたらしい。
アゼガミは自分の道化ぶりに呆れ・・・スズシロを連れて・・・江原家という仮王宮を出奔するのだった。
「どこへ行くというのです」
「酒を買って安宿に泊まるくらいの金はある・・・ここにいても不敬を重ねるだけだ・・・」
スズシロは王妃とアゼガミを見比べ・・・アゼガミを選択した。
王家の守護者としての自分と余命一カ月の人間としての自分がスズシロの中で葛藤している。
滅び去った世界の王家に尽くしてきた人生を完全に否定することは容易ではない。
しかし・・・今は・・・アゼガミとともに夜風に吹かれるのも悪くないと判断したのだろう。
取り残された王妃は忠実なヒューマノイド・モノリオにすがるのだった。
「お前だけは裏切らぬな・・・」
「私にはそのようなプログラムはございません」
「で・・・あるな」
騒動の間、不在だったアスカ(杉咲花)は朝の入浴でモノリオに身体を洗わせながら尋ねる。
「アゼガミとスズシロの姿が見えぬな・・・」
「・・・」
「ヒエラルキーからの逸脱か・・・あの者たちにもストレスがたまっておるだろうからな・・・しかし・・・どのように絶望しても・・・日常からは逃れられぬものだ」
「姫様は・・・お疲れではございませんか・・・」
「私は・・・今がとても楽しいのだ。美しい世界・・・お前がいてくれて・・・ナギサのアイデンティカの広一がいる・・・今日はひとつ・・・トモダチというものを作ってみようと考えているのだ」
「トモダチ・・・」
「そうじゃ・・・あの女、お前に懸想しているようなので・・・友人として忠告してやらねばなるまいて・・・ふふふ」
成り上がり者の王妃と違い生まれついての王女であるアスカは高貴な精神を保持している。
モノリオは王女の言動に危惧を感じながら・・・守護者としての警戒感をアップするのだった
・・・王家の人々の意向に従うのがモノリオの絶対的な原理なのだろう。
ただ・・・ヒューマノイドとして擬似的な自由意志の気配は窺える。
はたしてマグネシウム・ロボットには魂があるのだろうか。
東西山高校で・・・モノリオは咲和子(樋井明日香)の生存を確認する。咲和子はアステロイドの効力を失い、明らかに知能障害者となった冴木(碓井将大)の保護者の立場を得て充足したらしい。
アスカはSF研究会部に入部し・・・自主制作映画のシナリオを執筆中の椎名琴音が演じる太田くみと対話する。挿入歌「風が吹いている」は椎名琴音と桑原まこと岩井俊二の三人のユニット「ヘクとパスカル」によるナンバー。やりたい放題だな。
「ちょっとアイディアにつまってまして・・・」
「こんなのはどうじゃ・・・なぞの転校生があらわれるのじゃ・・・その転校生は実は・・・」
「ゾンビなんですね」
「しばらくすると・・・今度は女子の転校生がやってくる・・・その転校生は」
「ゾンビなんですか」
「ゾンビから・・・離れぬか」
コマ撮り特殊撮影による自主制作映画「宇宙戦争」に熱中する部員たちを残し、アスカはモノリオを従えて吹奏楽部の練習を見に行く。
香川みどり(桜井美南)はモノリオの姿を認めて胸をときめかせる。
しかし・・・アスカはモノリオに席を外させるのだった。
「あなたと彼は従兄妹同志だと言うけれど・・・凄く仲がいいのね」
「あの者は私を子供扱いするのじゃ・・・道具としては遊びが不足しておる」
「道具・・・?」
「そうじゃ・・・あの者は私のための道具じゃ」
「なんだか・・・凄いのね」
「そうか・・・お前と広一の関係はどうじゃ・・・二人は交際しているのか」
「そんな・・・二人は幼馴染だから・・・恋愛関係には発展しないのよ」
「ならば・・・広一を私の許嫁としてもよいのだな」
「許嫁・・・」
「そうだ・・・広一を私の夫にしようかと考えている」
「でも・・・あなたたち会ったばかりでしょう・・・」
「特に問題ではあるまい・・・」
「とにかく・・・私と広一くんはなんでもないの・・・家が近所で子供の頃は一緒にお風呂に入ったりしたけどね」
「風呂か・・・風呂なら私も典夫と入るぞ・・・今朝も典夫に身体を洗ってもらった」
「えええ・・・・」
「どうした・・・何をうろたえておる」
「そんな・・・あなたたちの関係って・・・大人すぎるのじゃなくて・・・」
「ふふふ・・・気になるか」
「からかっているの・・・」
「私も気になっていることがある・・・そなたは学校は友達を作るところと申したな」
「はい・・・」
「私はそなたと友達になってほしいのだ」
「それなら・・・お願いがあるの」
「なんじゃ・・・」
「そなたと言われるのは・・・ちょっと」
「では・・・みどりと呼べばいいのか」
「私の名前を覚えていてくれたの」
「当然じゃ」
二人は下駄箱の前でモノリオと合流する。
「ここで・・・広一を待つか」
「広一は帰宅しました」
「なぜじゃ・・・」
「何か約束したの」
「約束はしてません」
「なぜ約束しなかったのじゃ」
「アスカちゃん・・・約束くらい自分でしなさい」
「そうか・・・それでは一つ頼みがある・・・」
「何かしら」
「明日、祖母と町を散歩したいのだ・・・付き合ってくれるかな」
「まあ・・・お祖母様のお加減よくなられなの」
「うむ・・・どうじゃ・・・」
「よろこんで・・・」
帰り道・・・花屋でみどりから花を贈られたアスカは御満悦だった。
「友情の証じゃな」
「アスカ様、ご機嫌麗しゅうございますね」
「うむ・・・妾は幸福を感じている・・・」
モノリオは奉仕者としての擬似的な喜びを感じた。
スズシロが不在のために髪をモノリオにまかせたアスカは障害による脱毛を感じる。
「スズシロの方が上手じゃな・・・モノリオの応用力にも限度があるか」
「精進いたします」
「それより・・・明日のことを広一に交渉してまいれ」
「承知しました」
モノリオは広一に祝日の散歩への同行を求めた。
「アスカちゃんも・・・一緒に」と一応確認する広一だった。
広一にとってそれはダブルデートだったからである。
D12世界の穏やかな祝日。
王妃を車椅子に乗せて・・・一行は公園に向かう。
「皆さん・・・紫外線に弱いのね・・・典夫くんは大丈夫なの」
「典夫は太陽フレアの直撃を受けても平気だぞ」
「太陽・・・フレア・・・」
「太陽の爆発の炎だよ・・・人間が直撃されたら蒸発するよ」
「アスカちゃんのジョークって・・・」
「ジョークではないぞ・・・事実だ」
「うふふ」
昼のピクニックのためにみどりはお弁当を用意した。
もちろん・・・典夫に食べさせるためだが・・・典夫は食べない。
「サンドイッチは嫌いだった?」
「典夫はものを食べないのだ」
「食べないって・・・」
モノリオはアスカの言動に危険を感じつつ善処した。
「お気持ちだけ受け取っておきます」
「・・・」
アスカはシャボン玉に興じる母子連れを目に留める。
「あれは・・・なんじゃ・・・」
「シャボン玉だよ」
「玉がたくさん出てくるな」
「シャボン玉を知らないの」
「私もやってみたい・・・」
「わかった・・・買ってくる・・・」
アスカははじめてのシャボン玉を楽しんだ。
「みどり・・・もっと作れ・・・広一は大きいのを作れ・・・」
「典夫くんはやらないの・・・」
「典夫にはシャボン玉は無理だな」
「なぜ・・・」
「呼吸をしておらぬからだ」
「・・・」
広一はモノリオとキャッチボールに興じる。
「そういえば・・・最初に会った日に野球をしたな」
「覚えているよ」
「なんだか・・・ずっと昔の出来事だったような気がする」
「・・・」
正確な時間を告げる場合でないとモノリオは判断した。
アスカはみどりにだけ聴こえる声で耳打ちした。
「これだけは・・・言わねばなるまい」
「何・・・」
「ノリオを好きになってはならぬ・・・」
「・・・」
王女が友人として心からみどりに忠告している頃・・・さすらいの侍従たちは・・・D12世界のアイデンティカと遭遇していた。
D12世界のアゼガミとスズシロは仲の良い夫婦だった。
「私たちが夫婦・・・」
「考えたこともありませんでした・・・」
「なんとも・・・幸せそうではないか・・・」
余命一カ月の男と女は・・・どちらからともなく寄り添った。
のどかな昼下がり・・・暗殺者は間隙をぬって王妃に接近した。
「この世界で調達した出刃庖丁を使用する御無礼をお許しください」
「・・・」
暗殺者は王妃を刺した。
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コメント
ふとしたキャッチボール、野球! 2014年5月モノリオは別の世界で野球していたから……
そしてもう一つ、丸いしゃぼん玉……平行世界を連想しますね……。
などとつまらないことでしか表現できないけれど、ここに何か書きに来たくなる良さがございました。
スズナとスズシロもね(ってそんな名前じゃねーよ)。
投稿: 幻灯機 | 2014年6月 1日 (日) 16時26分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
季節はずれの七草粥でもお召し上がりくださいませ。
D8世界はやや雅な感じでございますな。
シャボン玉は世界を映し出すミラーボールでございますよね。
球体が受け取る全世界からの光。
その反映こそが・・・ひとつひとつのシャボン玉が
ひとつの平行宇宙そのものであるという象徴となっているのでございましょう。
たちまちはじけて消えてしまう宇宙の儚さでございます。
いいよね。
いいよねえ・・・。
人間としての喜びなんて・・・
そんな他愛もないことでございましょうねえ。
投稿: キッド | 2014年6月 1日 (日) 23時12分