六韜・文の巻・守土篇に曰く、無借人國柄、借人國柄、則失其權・・・と軍師官兵衛(岡田准一)
武経七書に属する「六韜」からの引用である。
「六韜」は太公望呂尚による指南書という体裁がとられているが・・・本当に呂尚がかく語ったかは定かではない。
「文の巻」はその冒頭であり、主に国政の根本を語っている。
「人に国柄を貸すなかれ、人に国柄を貸せば、すなわちその権を失う」の「国柄」とは「国権」の意味である。
国家権力を他人に渡せば、国家を失うという・・・物凄く当たり前のことを述べているわけであるが・・・そこに続く説明の大意は次のようなものである。
「斧があれば木を伐採する。刀があれば肉を切断する。斧があるのに伐採をしなければ木材を得られず、刀があるのに肉を切断しなければ食材を得られない。道具は使わなければ宝の持ち腐れである。国家権力を持っているなら国家権力を使わなければならない。国民は富に従うものである。国家権力で冨を為せば国民はそれによって従う。国民が従ってこそ主君たるものは仁を施せる。つまり・・・国家権力を他人に委ねるということは仁を施す機会を失うということに他ならない」
つまり、国家権力者たるものは権力を丸投げしてはいけないという教えなのである。
そういうことをしていると、ロシアが軍事介入してくるので注意が必要なのである。
官兵衛がそういう甘言で・・・東播磨という半国の統治者である別所長治に国主親政を示唆したわけである。
パピコを売らせるG10の如しだ。・・・ウシジマくんをまぜるなよ。
別所長治(入江甚儀)=中田広道(入江甚儀)ですからーーーっ。・・・もういいか。
つまり・・・年配者の長治の二人の叔父よりも・・・若年の長治の方が扱いやすいという官兵衛の深謀遠慮なのである。
とりあえず・・・長治はまんまと乗せられたわけである。
それに対して竹中半兵衛は「孫子・九地篇」から引用して官兵衛を示唆しようとするのだった。
「兵の情は速を主とす」は戦場における地の利について語るにあたり、その基本姿勢を示す言葉である。
前後の大意はこうなる。
「地の利についてくわしく述べるまえに・・・肝心なことを言っておく。ここに圧倒的に優勢な敵と対峙することになった将がいる。その不利を覆すためにもっとも有効なのは・・・敵が一番大切にしているものを奪うことである。それが敵の愛人であればそれを奪うべし。そのために必要なことは急げるだけ急ぐということである。一番重要なことをする場合は早ければ早いほどいいのである。相手が愛人を守ろうとするより早く愛人を奪うことができれば相手は必ず動揺する。つまり・・・相手の意表を突くということである」
つまり・・・凡庸な主君を仰いでいることが敵を利するならば、とっとと下剋上してしまえ・・・と半兵衛は諭すわけだ。
もちろん、「そんなことはできません」というのが清く正しい大河ドラマの主人公の姿勢なのである。
ま・・・歴史的事実なので・・・仕方ないんだけどな。
で、『軍師官兵衛・第9回』(NHK総合20140302PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。12行レビューキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!・・・しかし、今回は元摂津国主・池田氏の娘婿にして国主権の簒奪者・気がつけば摂津国主の荒木村重と対朝倉戦、対浅井戦、対武田戦で大活躍しているはずなのにここまで未登場の徳川家康の二大イラスト描き下ろし大公開でお得でございます。なんていうか・・・突然出てくる・・・宇喜多直家とか、赤松広秀とか・・・説明スルーで大丈夫なのか・・・でございますよね。とにかく・・・複雑怪奇な戦国播磨の政治模様よりも・・・官兵衛夫妻の愛くるしいさまが大切だという方針には・・・おへそが茶をわかすとしか申しようがありませんけれど~。次回は「毛利襲来(だじゃれ)」なので・・・この大河ドラマのベースが小説「播磨灘物語/司馬遼太郎」(1975年)なのが透けて見えてきました。三人揃って上洛とか・・・侍女が本願寺贔屓とか・・・そのまんまだし・・・。ま・・・フィクションでございますけどねえ・・・。史実ではなくて・・・小説を脚色する脚本家・・・ある意味、天晴れでございます。
天正三年(1575年)七月、小寺官兵衛は岐阜城(美濃国)で織田信長にお目通りする。その後、播磨国方面軍となった羽柴秀吉の居城・長浜城(近江国)で接待を受け、おそらく京の都、摂津国を経て播磨国へ帰国したと思われる。八月、信長軍団は越前一向一揆平定戦を実施。ここまでは越後国・上杉謙信と同盟中である。そもそも、第一次信長包囲網の核心である武田・本願寺同盟は・・・信玄と顕如の正室が三条姉妹であったことによる義兄弟同盟なのである。当然のことながら武田の敵である上杉家は本願寺にとっても敵であった。しかし、信玄の死去により、この軍事同盟は崩壊する。後継者・武田勝頼は三条系ではないからである。本願寺は長島、越前と一向一揆の拠点を撃破され、ついに大阪本願寺の譲渡を信長に迫られる。後継者秀吉がそうであったように信長にも大阪都計画があったのである。こと、ここに至って本願寺は越後一向一揆と上杉家の和解を提案し、第二次信長包囲網を本願寺を軸とする毛利・本願寺・上杉の軍事同盟へとシフトする。一方、信長は東海方面軍・徳川家康と北国方面軍・柴田勝家の安定を見届けると摂津国から丹波国、播磨国への攻略を開始する。すでに戦国最強となった織田軍団だが・・・周辺国は軍事同盟で対抗することになる。摂津国には石山本願寺という巨大な敵拠点が残り、丹波平定、播磨平定は明智光秀と羽柴秀吉の手に委ねられるのである。東播磨の覇者となった別所長治は丹波・波多野氏から妻を迎えると同時に隣国・摂津の荒木村重を通じ、織田陣営に加わるために十月、上洛して織田信長に謁見する。混乱する西播磨では小寺官兵衛が主君・小寺政職の説得に手間取っていた。
「殿・・・別所長治が上洛したそうでござりますらあ」
「なんと・・・」
秀吉の京屋敷に逗留していた官兵衛は井上九郎右衛門の報告に絶句した。
官兵衛は信長の越前一向一揆平定戦の結果を見定めて帰京するために紅葉の京に長居をしていたのである。
「そりゃ・・・まずいの」
「こがいなことなら・・・播磨に急いで帰るべきでしたらあ」
「うむ・・・」
官兵衛が京にいる理由はもう一つあった。
しのびの調達である。黒田しのびを使う官兵衛だったが・・・信長や秀吉の使う伊賀忍者や信濃忍者には到底歯が立たない。
そこで・・・官兵衛は京で・・・新たな忍びに渡りをつける必要に迫られていた。
京には・・・忍びたちの出先機関が集中していたのである。
そもそも・・・戦国の忍びたちはフリーランスであった。
しかし・・・武田の忍びや・・・上杉の忍び、北条の忍びなど・・・戦国大名の成長によって・・・大名直属の忍び軍団が形成され始めていた。そもそも・・・信長は・・・直属の部下として美濃忍びの森氏、甲賀忍びの滝川氏、尾張忍びの秀吉など優秀な忍者を揃えていたのである。秀吉などはその配下に真田忍軍や飛騨忍軍など占領地の忍びを加えている。
官兵衛としては・・・諜報網の充実を図るためにも・・・中央につてが欲しかったのである。
ここ数日は木の国に跋扈する根来衆と渡りをつけていた。しかし、根来忍者は信長に買われてしまったのである。
最後の頼みが・・・お国が渡りをつけてきた・・・鞍馬の神明党という忍び集団だった。
その夜、旅支度を整えた官兵衛一行は京都洛西の荒れ寺を訪れる。
「忍びではなく・・・もののけが出そうですらあ」と栗山善助が軽口をたたく。
その時、荒れ寺のお堂に青白い灯がともった。
「・・・」と母里太兵衛は無言で緊張を示す。
一同は息を飲んだ。お堂から現れたのは美しい尼僧だった。
「小寺官兵衛殿・・・お初におめにかかりまする・・・神明尼と申しまする」
「・・・」と母里太兵衛は無言で見惚れる。
「そなたが・・・神明党の・・・首領でござろうか」
「さようでございます・・・」
「神明党とは・・・いかなる所以の忍びであるのか・・・伺いたい」
「ふふふ・・・お気が早いこと・・・」
「急いでおりまする」
「播磨のこと・・・気になりましょうね・・・神明とは何か、ご存じでしょう?」
「伊勢の大神と察するが・・・」
「いかにも・・・我が一族はアマテラスに帰依するものでございまする」
「アマテラス・・・」
「アマテラスはこの国を統べる神でございます・・・そして・・・我が一族はアマテラスによって神明通力を与えられております・・・下世話な言葉では神通力と申せます」
「神通力」
「妾には・・・天目通、天耳通がございまする」
「千里眼でございますか・・・?」
「ふふふ・・・お疑いのことはもっとも・・・されば・・・今宵は策をお授け申し上げます」
「策・・・」
「官兵衛殿には・・・お急ぎの理由がおありのはず・・・」
「いかにも・・・」
「別所様がご上洛とあらば・・・小寺家の上洛も急ぎたいところでございましょう」
「・・・」
「しかし・・・西播磨の情勢はなかなか・・・それを許しませぬ・・・出雲街道に続く美作国境の城・・・作用城、上月城はすでに毛利方に調略され・・・備前からは毛利の後ろ盾で新国主となった宇喜多勢が侵攻している。龍野城の赤松政秀の死後、空白地帯となった一帯には本願寺の一揆勢力が跳梁しておりましょう。まさに・・・予断を許さぬ状況と申せましょう」
「これは・・・驚いた」
「しかし・・・まもなく・・・宇喜多勢いに追われた備前の守護代・浦上氏が・・・御着城に現れまする」
「浦上宗景様が・・・」
「官兵衛様は・・・主君・政職様にかように進言するのです」
「・・・」
「赤松政秀の跡目を継いだ広貞を追って・・・浦上氏の庇護する御曹司・赤松政広を立てるがよろしかろう。政広様の母は赤松宗家の血筋・・・龍野城主としてふさわしいと・・・」
「なるほど・・・龍野城主の後ろ盾に・・・小寺家が・・・」
「これにて・・・西播磨は一瞬・・・鎮まりましょう・・・その期に上洛なされませ・・・その折は・・・赤松宗家の名を使い・・・別所様もご同道なされるがよろしかろう」
「なるほど・・・赤松・小寺・別所が揃い踏めば・・・別所の先行を打ち消すことができますな」
「いかが・・・」
「ご献策・・・ありがたく頂戴いたす・・・それにしても・・・なぜ・・・拙者に・・・」
「ふふふ・・・すべては宿命でございます」
「・・・」
「官兵衛様は出世なさるお方・・・神明党はそのお力添えをする定めなのでございまする」
「神通力・・・宿命通・・・」
「では・・・またいずれ・・・」
その声を追った官兵衛は息を飲む。
神明尼の姿はすでになく・・・ただ闇が広がっていた。
天正四年正月、上洛した播磨の三武将は・・・織田信長に謁見を許された。
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