人は何を求めるのか?・・・宮本武蔵(木村拓哉)
宮本武蔵は・・・求道者である。
特に「吉川英治版」はその傾向が強い。
宮本武蔵は・・・最強の剣豪である。
しかし・・・それを誰もが御存じではないだろう・・・。
そう言う意味で・・・地上デジタルとなったテレビに宮本武蔵が登場するのは素晴らしいことだ。
今から、およそ四百年前・・・宮本武蔵は「五輪書」を著述した。
キッドは十代の頃、剣の師が「五輪書」(岩波文庫)をひっそりと読んでいたのを覚えている。
四百年の時を経て・・・読まれる書物を記しただけでも「天才」と言えると思う。
もちろん・・・「吉川英治版」を含めて・・・あらゆる「宮本武蔵」は虚構の存在だ。
しかし・・・「五輪書・地の巻」に曰く、「武士は只死ぬるという道を嗜む事と覚ゆるほどの儀なり」の精神はどんな武蔵からも匂い立つのである。
人は皆・・・死ぬるために生きているのだ。
で、『ドラマスペシャル・宮本武蔵・第一夜』(テレビ朝日20140315PM9~)原作・吉川英治、脚本・佐藤嗣麻子、演出・兼崎涼介を見た。ナレーションは市原悦子である。さて・・・最初にどのくらい虚構なのか・・・という話はしておきたい。ただし、あくまで・・・実在の宮本武蔵も虚構に過ぎないという前提の話である。ドラマが歴史的事実でなかったとしても・・・何の問題もないのである。まず・・・宮本武蔵は天正十年(1582年)の本能寺の変の年か・・・あるいは二年後の天正十二年頃に生まれたことになっている。生年すら定かではないが・・・とにかく激動の時代に生を受けたのだ。生まれた場所も諸説あるのだが・・・吉川英治版では美作国(岡山県)生れになっている。だからドラマでは作州浪人・宮本武蔵なのである。しかし、実際は黒田藩士の新免無二斉が播磨国在住に為した子なので播磨国(兵庫県)生まれで本人も播州浪人を名乗っている。ただし、新免家は美作・播磨国境の佐用城近郊を所領としていた守護大名・赤松家の流れをくむ土豪の一族であり・・・美作・播磨どちらにも縁が深かったのである。一説によれば・・・黒田藩に属していた新免無二と宮本武蔵の父子は関ヶ原の合戦で東軍に属していたという。もう・・・根底からフィクションである。ついでに・・・ドラマでは武蔵は早くから孤児だが・・・新免無二はかなり長生きをしていて・・・武蔵が数え年十三歳(小学校六年生)で初めて決闘して相手を殺した時、父親は武蔵のただならぬ才能に歓喜して・・・武蔵を鍛えに鍛えたのである。さて、織田信長死亡の時点で・・・播磨国の黒田家と、肥前・美作の宇喜多家は秀吉傘下の同盟軍である。それからおよそ18年後に・・・天下分け目の関ヶ原で敵と味方に別れ・・・宇喜多家傘下の新免家は敗軍となり、そちら側に属していたという設定で・・・武蔵ことたけぞう(木村拓哉)は落ち武者となるのだ。ちなみに武蔵の幼名は本当は弁之助である。当然のことだが・・・本位田又八(ユースケ・サンタマリア)、その養母のお杉(倍賞美津子)、その許嫁のお通(真木よう子)、野武士の未亡人・お甲(高岡早紀)、その娘・朱実(夏帆)はすべて架空の登場人物なのである。だから原作と違っていても何の問題もないのだ。とにかく・・・お甲と朱実を巨乳母娘にしたのは見事なキャスティングだと考える。さて・・・沢庵和尚こと・・・沢庵宗彭(香川照之)は実在の臨済宗の僧侶だが歴史的には宮本武蔵との接点は全くない。「すべてフィクションです」と原作者自らが保証しているので間違いないのである。というわけで・・・「全部ウソさ」と言う前提で・・・この物語を楽しむのである。
さて・・・シナリオ的に一番難があるのは・・・たけぞうが・・・お通を知らないというところである。
たけぞうと又八が幼馴染である以上、お通も当然、幼馴染なのである。
本位田家の花嫁候補として育てられているお通が・・・最初から又八より「たけぞうが好き」であることは言うまでもない。お通は「人殺しは嫌い」などと言う女々しい性格ではなく自由奔放な性分なのである。武蔵が最初の果たし合いで勝った時は万歳三唱したものと推察するのだ。
とりすました沢庵が武蔵を吊るした後・・・人目を盗んでお通はたけぞうを積極的に逃がしたのである。
もちろん・・・最初から駆け落ちするためなのだ。
一方、武蔵は剣の道一筋の求道者である。当然、童貞だ。お通の積極的アプローチにたじろぐのが基本なのである。
さて、沢庵は但馬国の武士の生れだが、主家である山名氏が信長に滅ぼされて後、僧侶となり、紆余曲折あって関ヶ原の合戦の時にはあろうことか石田三成の亡き母のための菩提寺の僧侶だったのである。つまり、本当はこの頃、謀反人側の人間である。
しかし、そこは世俗を離れた身・・・石田三成の冥福を祈りながら諸国放浪中なのである。
実在の沢庵は沢庵漬けの創始者であるほどなのでかなりの好きもの(好事家)である。
だからこそ・・・追手を寄せ付けぬたけぞうのけだものぶりに魅了されたのだ。
隣国への脱出に失敗したたけぞうを・・・手厚くもてなす(軟禁修行させる)のはたけぞうの才能に惚れこんだためである。もちろん、男色家として若いたけぞうの身体にも興味があったのであろう。
こうして・・・「天下無双」を志すことを決めた宮本武蔵が誕生し・・・十歳ほど年上の沢庵としては「武蔵はワシが育てた」ポジションを得たのだった。
ちなみに実在の沢庵は徳川将軍家指南役の柳生但馬守宗矩(柳生石舟斎宗厳の息子)とのコネで三代将軍家光にとりいるほどのやり手坊主なのである。
武蔵の目指すのは滅び去った足利幕府の将軍家指南役として未だに高名を誇る京都の剣術一家・吉岡道場の打倒なのである。
ちなみに武蔵の父親も・・・先代の吉岡当主と試合をして勝ったという実績がある。
さて・・・武蔵の生涯は六十余年に及ぶのだが・・・剣豪としてのピークは三十歳前後にあり、巌流島の決闘を一つの頂点と考える。
相手が佐々木小次郎(沢村一樹)である。
ドラマでは宿命のライバルとしてすでに関ヶ原で対決。才能開花前の武蔵が一方的敗北を喫するという展開である。
実在の武蔵は神のように強いのだが・・・吉川英治版では苦心を重ねて徐々に強くなっていくいくわけであり、この辺りが庶民の心をくすぐるのである。
又八の情夫、お甲の娘で・・・武蔵に仄かな恋心を抱く朱実に欲情する吉岡清十郎(松田翔太)は祇園きっての遊び人ではあるが・・・剣の天才でもある。
ちなみに・・・あろうことか・・・吉岡清十郎も架空の登場人物である。
ただし・・・武蔵が吉岡道場の誰かと戦って勝ったのは本当らしい。
誰かって誰だよ。
ついでに・・・清十郎の弟・伝七郎(青木崇高)も架空の人物なのだった。
だから・・・佐々木小次郎と船上で出会う名場面もフィクションなのである。
とにかく・・・一応、弟子たちには圧倒的に勝った武蔵だが・・・当主との対決に不安を覚え・・・達人たちに教えを乞うことにするのだった。
基本的に・・・達人爺がやたらと登場するが・・・本当は身体が衰えるのでどんな達人も老化には勝てないのである。
しかし、沢庵が女中として送り込んだお通の世話する柳生石舟斎宗厳(武田鉄矢)からは「音無き音を聞く陰の心眼」の極意を・・・宝蔵院住持日観(西田敏行)からは「気合」の本質についてヒントを受ける。
これによって武蔵はイメージ・トレーニング法に開眼するのである。
あらかじめ・・・何度も心中で敵と対決し・・・斬られて死なない道を探るという方法で、斬られて死ななくなれば勝ったも同然と言う話である。
イメージで斬られて死ぬ間は絶対に戦わないために・・・武蔵は生涯無敗を貫いたのだった。
まあ・・・なんだかんだ・・・用意周到な武蔵・・・。
そして・・・風呂が嫌いで物凄く匂うと評判なのだが・・・えも言われぬ野生のフェロモンを発散するために・・・黙っていても女たちが放っておかない・・・武蔵なのだった。
準備万端整って前夜祭は終了・・・第二夜は斬って斬って斬りまくるのである。
武蔵っていうか・・・予告で見る限り、仮面ライダーみたいな感じがする斬新な殺陣が楽しみなのである。
東映だからな。
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ある日の平成財閥三姉妹。アンナ「原作は読まなくても大丈夫ぴょ~ん。ダーリンのアクションにつぐアクションで血わき肉踊りうっとりなのだぴょ~ん・・・なんといっても・・・第一夜はたけぞう萌え~・・・ふう・・・そしてまもなく武蔵ロスへ・・・」まこ「マンガ喫茶で全巻読破するといいのでしゅ~」エリ「まこちゃま・・・広島の別宅で地震にあったんだって?」まこ「しゅご~くこわかったのしゅ~、お茶碗割れちゃったし~」エリ「じゃあ・・・今度、シャネルの特製お茶碗プレゼントしまス~」まこ「むふふ・・・みんなに言ってるから・・・春はお茶碗天国だじょ~・・・一つ残して後はヤフオ・・・」アンナ「何の話・・・?」まこ「アンナちゃん・・・まこのお茶碗かあああああ・・・くしゅん」アンナ「じゃ、今度の陶芸教室で焼いてあげるよ」まこ「アンナちゃんの手作りオリジナルお茶碗ですと!・・・それはごっつプレミアムつきそうでんな・・・ぐふふ・・・ぐふふ・・・ぐふふふふふふふふふ」アンナ「?」じいや「・・・・・・」
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