君(多部未華子)の香りがした時間(三浦春馬)
愛する人を選ぶ自由は自由の基本である。
愛する人に愛されるかどうかはまた別の問題だ。
愛し合う二人が結婚する自由も大切だ。
家族や周囲の人間が祝福するかどうかは別の問題だ。
男と女が子供を作る自由は切実である。
子供の幸福については人それぞれと言うしかない。
余命宣告を受けた男を愛する女。
次は・・・余命宣告を受けた男と結婚する女である。
そして・・・余命宣告を受けた男の子供を妊娠出産する女に至るのだ。
母の手一つで子供を育てた親の娘。
息子のために可能な限りの経済援助ができる親。
最終的に・・・彼女が彼の子を生む確率は高いと思われ・・・。
で、『僕のいた時間・第9回』(フジテレビ20140305PM10~)脚本・橋部敦子、演出・葉山裕記を見た。基本的に・・・このドラマはラブ・ロマンスだと考える。そういう意味で・・・今回はそれ以外の部分にかなり大きな決着があったと言える。残り二回は澤田拓人(三浦春馬)と本郷恵(多部未華子)の愛と死を見つめる旅路が描かれるだろう。
それ以外の部分の一つは社会人としての拓人。ついにマウスも思いのままに操れなくなり退職の運びである。
もう一つはお互いの家族の問題である。
拓人の家族は言明はされないが、発達障害的な心の悩みを持つ弟・陸人(野村周平)の問題があり、両親(小市慢太郎・原田美枝子)の子供たちへの理解が図られる。
一方で、恵の母親(浅田美代子)は障害者と交際する娘の将来を案じる葛藤がある。
これに付随して、婚約破棄をされた向井繁之(斎藤工)の円満な退場と・・・ALS患者である今井保(河原健二)の突然の死が・・・二人の前途を予感させる展開となっている。
よどみなく・・・フィナーレを迎える準備が整っています。
僕はついに・・・マウスを上手く操れなくなった。
マウスを操れない男に・・・婚約者を奪われた格好の繁之先輩の・・・屈辱感を想像すると・・・少し恐ろしい。
もしも・・・僕が健康だったら・・・他人の婚約者を奪う勇気が持てたかどうかわからない。
そして・・・もしもそうなったら・・・とてもじゃないが・・・恋人を奪われた相手と会う気になったかどうかもわからない。
しかし・・・わかるだろう。
今の僕にはこわいものなんかないんだ。
僕は先輩に謝った。
先輩は僕を殴ってくれた。
「お前たちには二度と会わない」と宣言してくれた。
ありがとう・・・繁之先輩。
あなたみたいに男らしい男にできるなら・・・なりたかったです。
こんな僕を選んでくれた恵。
そのことを僕の母親は・・・上手く消化できないかもしれない。
まして・・・恵のお母さんはもっと複雑な気持ちになるだろう。
だけど・・・僕にはどうすることもできない。
僕は恵が好きだし・・・恵も僕が好き。
そうなってしまったら・・・そうなってしまうのが・・・自然なんだから。
そして・・・そこには親が踏み込めない世界があるんだよ、母さん。
母さんにお風呂に入れてもらってもいいけれど・・・僕は君とお風呂に入った方が楽しい。
だって・・・二人は愛し合っているんだから。
君は僕をとても綺麗にしてくれる。
僕は君を見る。
僕の筋肉は衰えていくが・・・感覚はそのままだ。
石鹸の匂いが好きだ。
君の声が好きだ。
君はそっと君の大切な部分を僕にだけ見せてくれる。
僕は興奮する。
君は優しく僕を愛撫してくれる。
僕が高まれば君も高まる。
僕には分かるし、君にも分かる。
君は僕にキスをする。
僕は君に囁く。
「愛してる」って・・・。
やがて・・・僕は絶頂に達するし・・・君もそれなりに満足する。
だって二人は愛し合ってるんだ。
僕はついに会社を退職することになった。
弟が会社に付き添ってくれた。
あの頃は意地悪だと感じた弟。
あの頃は意地悪だと感じた会社の先輩。
今、僕は知っている・・・みんな本当は意地悪なんかしたくないってこと。
そうじゃない人は・・・ただ人でなしってだけなんだ。
弟は言った。
「兄さんが拓人で僕が陸人・・・二人とも人だね」
僕は微笑んだ。
なんて可愛い弟なんだろう・・・こんなに可愛い弟を疎ましく思っていたなんて・・・僕はなんて人でなしだったことか。
弟はただ・・・人と少し違う感じ方をする人なだけ。
人に簡単にできることが苦手なだけ。
僕とまったく同じじゃないか。
ますます・・・悪魔のような感じになってきた主治医の谷本医師(吹越満)・・・。
僕は君と新たなる覚悟を求められる。
「呼吸に関する筋力が弱ってきました・・・今はまだ普通の生活が遅れますが・・・やがて人工呼吸器をつけるかどうかの決断をしなければなりません・・・それによって生活には違いが出てきますので・・・どうするかはよく考えてください」
ああ・・・またかと僕は思う。
「大丈夫」と君が聞く。
「うん・・・君は」と僕は聞く。
「うん、大丈夫」と答える君。
本当に大丈夫かどうかはわからない。でも君がいれば僕は平気だ。
君もそうであることを祈るだけ。
保さんは・・・人工呼吸器をつけないという選択。
「僕は人工呼吸器をつけないから・・・死ぬんじゃない・・・人工呼吸器をつけない生き方を選んだだけ・・・」
保さんは言った。
そうだね。保さんは食いしん坊だから。食事が喉を通らないなんてきっと耐えられない。
僕だってそうだ。
「僕も人工呼吸器はつけない」と僕は保さんにメールした。
病気の進行状況は人によって違う。
おそかれはやかれだとしても・・・やはりそれぞれの時間が流れている。
君はお母さんに「お父さんを看取って不幸だったか」と問う。
でも・・・と僕は思う。
お母さんには君がいた。
君には誰がいるんだい。
僕の母親は僕のことが心配。
僕の最後の広告の仕事を誉めてくれた。
君の母親は君のことが心配。
こんな僕との交際を認めたくない。
だけど・・・僕と君にはどうすることもできない。
だって二人は愛し合っているから。
でも・・・時は来て・・・保さんは旅立った。
僕の母親も・・・君のお母さんも僕たちをとめられない。
僕の部屋で君は添い寝をする。
僕は何もできないけど、君はいろいろできる。
僕は君に手を握ってもらえた。
君は僕の耳元で囁いた。
「離れたくないの・・・」
「・・・」
「一分でも一秒でも一緒にいたいの」
「うん・・・そうしよう・・・一分でも一秒でも・・・」
君が望むなら僕は喉に管を付けたっていいよ。
それから・・・僕たちは愛し合おうとして・・・弟に邪魔された。
「兄さん・・・僕、決めたんだ」
「そうか・・・」
もう・・・弟の奇妙な心を知っている君は微笑んだ。
君の優しさ。
君の聡明さ。
君の愛を僕は誇りに思う。
でも・・・時は流れていく。
僕の両親が上京してきた。
二人の子供の進路相談だ・・・。
弟は「恐竜博士になるための進学」を希望した。
僕は「医学部の受験」を希望した。
憐れな兄弟に父親は応えるしかない。
なんて・・・恵まれているのだろう。
なんて・・・素晴らしい父親なのだろう。
でも・・・僕は父親が僕をほめてくれているような気がした。
感じるんだ。父親が・・・僕がこんなになってもおかしくなってしまわない・・・。
タフな奴だと励ましてくれていることを・・・。
お父さん・・・ありがとう。
お母さん・・・ありがとう。
僕は二人にささやかな結婚記念日のプレゼントをした。
弟と協力して・・・最後にマウスをクリックして・・・四人の家族の思い出のアルバムを作ったんだ。
そして・・・僕たちは記念撮影をしたよ。
でも・・・時は刻まれて行くんだ。
時は刻まれて・・・。
キッドのブログ→第8話のレビュー
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