投資目的のためのお金を持ち逃げして高飛びしようとする人から横取りするのは犯罪です(山田孝之)
いよいよ佳境である。
基本的に盗人猛々しい話なのである。
なにしろ、犯罪者はどこまでいっても犯罪者なので・・・どんなに美化しても綺麗事なのである。
早い話、人を殺した人間がどんなに反省したって殺された人間は戻って来ない。
反省を口にすることがすでに綺麗事なのである。
しかし、一部の人間は・・・人間というものにとにかく安心したいので・・・鬼の目にも涙という幻想を抱くのだ。
もちろん・・・誰もが犯罪を犯す可能性はある。
犯罪とは知らずに犯罪を犯す場合もある。
そして、正気で狂気の沙汰を行うことは難しい。
しかし、だからといって狂気を野放しにすることは危険である。
おかしな人がおかしなことをしても笑ってすませるべきではないだろう。
まあ、それでも犯罪者は時に見逃してもらいたい気持ちでいっぱいになるのだった。
だが、犯罪を見逃せばそれは犯罪なのである。
で、『闇金ウシジマくん Season2・第8回』(TBSテレビ201403070058~)原作・真鍋昌平、脚本・福間正浩、演出・遠藤光貴を見た。原作のいくつかのエピソードを同時進行で進めるこのスタイル。見やすさという点では客を選ぶわけだが、複雑で重層的なリアルさを物語る上では非常に成功していると考える。犯罪者たちの光と影、犯罪者たちの人間性が一口では語れない複雑さをもって浮かび上がる仕掛けである。しかし、別離の時は近付き・・・それぞれの末路の時は迫っている。しかし・・・もちろん・・・この世の地獄の主催者であるカウカウファイナンスは不滅なのである。
連絡するべき時に連絡しないのは間違いの始りである。
それを怠惰から生じる場合もあり、恐怖から生じる場合もある。
来るべき人が来ない時に人は案ずる。
何かよくないことが発生したのではないか・・・あるいは裏切られたのではないかと。
出資を募った人間に連絡がとれない場合はほとんど裏切られているのである。
大金を預けた隼人(武田航平)が行方をくらまして恐慌をきたした柄崎(やべきょうすけ)は・・・ボスのウシジマくんの指図を聞かないほどの暴走を開始するのであった。金主の大原正一(徳井優)から飼い犬に手を噛まれないようにと忠告されているウシジマくん(山田孝之)だったが・・・無表情である。
とにかく早速、追い込みにかかる一同だった。
一攫千金を目指すタイプの犯罪者は常に機会を窺っている。嘘はいつか破綻する可能性が高いからである。借金の踏み倒しも犯罪である。金を借りたものは常に返さずに逃げ出す準備をしているものなのだ・・・おいっ。
早速、痕跡を求めて隼人のヤサ(家)を探索するウシジマくん。
手掛かりを求めてゴミも回収するのだった。
回収したものをもって情報屋の戌亥(綾野剛)と善後策を協議するのだった。
「さすがはウシジマくん・・・ゴミには重要な手掛かりがあるからね」
「で・・・隼人のケツモチ(背後関係)はわかったのか」
「まだ・・・」
「急いでくれよ」
「とにかく・・・情報提供料は一件、五万円でお願いします」
「高えよ」
「個人情報保護の時代だからさ・・・」
「・・・」
「とりあえず・・・隼人の車にはGPSによるトレーサー(追尾器具)が装着してある・・・現在位置は分かるし、これまでのデータから立ち回り先もピックアップしてある」
「それは・・・俺にまかせてくれ」と割り込む柄崎。
「お前は回収業務をしてろって言っただろう」
「自分の不始末です・・・ケツは自分でふかせてもらいます」
造反する気配濃厚の柄崎だったが・・・ウシジマくんは無言である。
結局、柄崎の追跡したトレーサーは無関係のトラックに装着されており、無駄な発信をしていたのだった。
「発信器に勘付かれていたとすると・・・隼人は消されたかもしれないね」と淡々と推測する戌亥・・・。
「・・・」
「こりゃあ・・・僕たちはめられたかな」
ウシジマくんは隼人の拠点をしらみつぶしにするが・・・空振りに終わる。
「隼人のケツモチがわかったよ・・・ホストクラブのバックにいたハングレらしい」
「ヤクザじゃなかったのか」
「ああ・・・暴走族あがりのギャングだけど・・・素人は無茶をするからこわいよね」
「・・・」
万策尽きかけたカウカウファイナンスだが・・・高田(崎本大海)に隼人からの電話が入る。
「助けてくれ・・・もう、お前しかいない・・・今すぐ・・・車で迎えにきてくれ・・・」
「隼人・・・」
「搾れるだけ搾ったとあいつら(隼人のケツモチ)が踏んで・・・俺を消して始末するつもりだと思ったんで油断させて睡眠薬であいつらを眠らせた・・・でも、街には俺を捜してる債権者がウジャウジャしていてとても逃げ出せない」
「隼人・・・」
「三億円あるんだ・・・カウカウファイナンスから借りた金は返すから・・・お前が一人で来てくれよ・・・それから、靴も頼む・・・俺、ハダシなんだよ」
「お前・・・どこにいるんだ・・・」
「必ず一人で来てくれよ・・・」
しかし、暴走する柄崎は隼人のケツモチがアジトにしているホテルに乗り込むのだった。
だが、発見できたのは眠っているケツモチたちだけだった。
隼人は隣室で・・・様子を窺っていたのだった。
地下駐車場で連絡を待つ高田を急襲した隼人は鉄パイプで後頭部を一撃・・・高田を昏倒させて・・・高田の靴と柄崎の車を奪い・・・逃走するのだった。
「一人で来てくれって・・・言ったのに・・・友達だと思ってたのに」
だからといって友達を鉄パイプで殴ってはいけない。
オサレ・エンペラーを目指して・・・平凡以下の暮らしからの脱出を夢見た中田広道(入江甚儀)も地獄の入り口に達していた。
そんな広道の誕生日を祝うのは幼馴染の森田キミノリ(三澤亮介)だった。
キミノリはデザイナーとして、広道はモデルとして・・・オサレな道を歩む若者だった。
しかし・・・その道は茨の道だった。
「俺は・・・この町を出ようと思うんだ」と決意を示すキミノリ。
「え・・・」
「海外でデザインの勉強を一からやり直すつもりだ・・・」
「すげえな・・・」
「凄いのは広道の方だろう・・・読者モデルとしても人気者になったし・・・かわいい彼女もできたし・・・」
しかし、広道の顔は曇る。
心に去来するパピコ(紗倉まな)の面影。広道にとってのかっての憧れの象徴。しかし、広道ははした金で・・・パピコを闇社会に売ってしまったのだった。
自分は一体・・・どこへ向かおうとしているのか・・・。
そんな広道の逡巡を吹き飛ばすオサレ・エンペラーのG10くん(藤本涼)だった。
「あの・・・パピコがどうなったか知りませんか」
「ユーが小野社長に売った女のことか。そんなの気にかけるな。あの女はユーが小野社長に流したクスリでハッピーなヤク中になって小野社長が仲間内で輪姦してそのうち裏風俗に売られることになるだろう。しかし、何かを得るためには何かを捨てなければならない。ユーはオサレエンペラーになっちゃっいな。そしてユーのオサレなショップで天下をとっちゃいな。ところで店舗は決まったのか」
「いま・・・交渉中です・・・いい物件があるんですが・・・金額がまだ折り合わなくて」
「保証金はいくら」
「800万円です」
「不動産屋を通さないでオーナーと直にとりひきしチャイナ。そのオーナーはオレとツーツートレイン(懇意の仲の意味=ツーカーとチューチュートレインを合成したらしい)だから500万円用意しチャイナ。内装業者や仕入れ先もオレが口をきいてやるから・・・ユーはどんどん話を進めチャイナ」
「G10くん・・・」
G10くんの甘い言葉に感謝する広道。お茶の間は「甘い、甘いぞヒロミチ・・・」と絶叫するのだった。
そして・・・ハブから融資された二千万円を・・・G10くんがらみの業者に次から次へと支払う広道だった。
店舗の契約を終え・・・鍵を受け取った広道は・・・キミノリに店を見てもらおうと考える。
「資金はどうしたの・・・」
「ハブって人から借りた」
「ハブって・・・マジかよ・・・」
「知ってるの」
「俺のバイト先の店長・・・知ってるだろ」
「ロン毛の似合わない人・・・」
「あれは・・・ハブに耳を切断されて仕方なく髪を伸ばしてるんだ」
「・・・」
「ハブに関わったら骨までしゃぶられちゃうぜ・・・今すぐ、金を返した方がいい」
「そんなの無理だよ・・・もうほとんど使ったもの・・・ほら、この店だって・・・」
「うん・・・確かにいい感じだけど・・・」
「だろう・・・キミノリに最初に見てもらいたかったんだ」
しかし・・・店舗の鍵は解錠できないのだった。
「おかしいな・・・」
「・・・」
「あの・・・店の鍵があわないんですけど・・・」
「契約がまだ済んでないでしょう」
「いや・・・オーナーと直接契約して・・・」
「そんな報告は受けてませんよ」
あわてて・・・関係各所に連絡を取る広道。しかし・・・内装の手配も・・・仕入先もすべてはG10くんの仕掛けた擬装であることが判明する。
「終わった・・・オレ・・・おわった」
「すぐにG10くんの所在を捜すんだ」と広道を励ますキミノリ。
しかし・・・オサレな仲間たちはみんなショップの共同経営と言うエサでG10くんから金を巻き上げられていたのだった。
「もう・・・ダメだ」
「すぐにハブに連絡して・・・事情を話すんだ」
「そんなの・・・無理だよ」
「じゃなきゃ殺されるぞ・・・店がなくたって・・・人気者になったし・・・彼女だっているじゃないか」
「人気者になったのだって・・・金の力だし・・・彼女にはひどいことしちゃったし」
「だったら・・・彼女を助けてやれよ・・・ヒロミチのことは俺が助けるから」
「・・・」
「俺もね・・・人間関係を金に変えて危ない橋を渡って来た・・・いつか・・・ヒロミチに介抱された日があっただろう・・・あの日も友達を売って・・・落ち込んでたんだ・・・そんな俺をヒロミチが慰めてくれて・・・俺は本当に救われたんだ・・・今度は俺が助けてやるよ」
「でも・・・金がない・・・」
「二千万円はなんとかする・・・夜に待ち合わせしよう」
G10が逃亡を開始した頃・・・隼人は逃亡の最終段階に到達していた。
どこぞの建物の屋上で・・・。
店の上客だったリエ(田川可奈美)に連絡する隼人。
「大金が手に入ったんだ・・・一緒に逃げてくれないか・・・どこかの街で普通の暮らしをしよう」
「普通って・・・何よ。ホストが普通の暮らしなんで求めてとぜうすんの・・・あんたの仕事は夢を売ることでしょう」
「・・・」
女に貢がせて客を食い物にするのがホストだと思っていた隼人は唖然とするのだった。
しかし・・・客は隼人に男を売らせて買っていただけだったのだ。
愛を売っているつもりで・・・愛を買われていたのは隼人だったのである。
隼人は道を誤ったことに気がついたが・・・引き返すには遅すぎるようだった。
高田が現れた。
「どうして・・・」
「社長が・・・柄崎さんの車に発信器つけてたんだ」
「・・・」
「くそ・・・金なんか・・・結局・・・なんにもならねえな」
自暴自棄になった隼人は金を建物の下に放り捨てる。
「あ・・・何すんだ・・・拾ってこい」
「いやだね・・・金は金貸しが拾え・・・俺はホストだ・・・夢を売るのが仕事だぜ・・・煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
虚勢を張る隼人にウシジマくんは無表情だった。
「あのさ・・・隼人・・・闇金から・・・客が逃げないのは何故か知ってるか」と高田。
「知るか」
「社会から見捨てられた人間が最後に頼った他人だからさ・・・人間関係があるんだよ」
「そんなの綺麗事だろう・・・要するに脅してんだろう」
「まあな・・・柄崎」とウシジマくん。
「はい」
社長に信用されず監視されていたことを思い知った柄崎は従順な飼い犬としての自分を取り戻していた。
たちまち・・・暴力装置として隼人を恐怖させる柄崎だった。
首にロープを巻かれ、突き落とされた隼人は悲鳴をあげる。
「こいつの死体は廃棄物処理場に捨てるぞ」
「社長・・・隼人の命は助けてください」と土下座する高田。
「冗談だよ・・・殺したって一銭の得にもならないだろう」
突き落としたのは張り出した軒先だった・・・。
澱んだ河口に落ちた金も・・・隼人に拾わせるウシジマくん。
はい上がった隼人に手を差し伸べ引き上げるのだった。
「御苦労さん・・・」
そして・・・高田に元金の五十万円を渡すウシジマくんだった。
その金を隼人に渡す高田。
「この金はお前にやった金だ・・・この金で逃げられるところまで逃げろ・・・つかまったら殺されるぞ」
「ありがとう・・・」
「さよなら・・・」
二人の友情は・・・残った。
しかし・・・かってのホスト仲間ではなく・・・犯罪者の隼人と犯罪者の高田の友情である。
隼人は呟いた。
「さよなら・・・ルイト・・・いや・・・高田」
柄崎はウシジマくんにワビ(謝罪)を入れる。
「暴走してすいませんでした」
「いいよ・・・チャラにしてやるよ・・・お前が車を盗まれたおかげで・・・隼人の居場所がわかったんだから・・・」
盗人猛々しいのだった。
底辺の絆は厳しいのだった。
キミノリに言われるままに・・・ハブにとりあえず連絡をする・・・広道。
「すみません・・・G10くんに・・・お金をだましとられてしまいました」
「そうか・・・とにかく・・・すぐに来い」
「夜まで待ってもらえませんか・・・いろいろあって・・・」
「そのいろいろってやつから・・・話してもらおうか」
振り返れば・・・ハブがいる。
広道の前に地獄の扉が開いていた。
いきつくところは・・・そこまできているのである。
局面を打開しようとするキミノリが連絡した相手はウシジマくんだった。
電話を受けた受付事務の摩耶(久保寺瑞紀)は出番を確保するのだった。
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