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2014年4月30日 (水)

今宵もながれくるTennessee waltz!街角救助隊出動せよ!!(桜庭ななみ)

17年間の軌跡をふりかえる深夜のNHK・・・。

遡上して行くので引退曲で合流してくる古のメンバーたち。

そしてデビュー曲で消えていく。

時間旅行感が半端ないな・・・。

いや・・・モー娘。の話ですけど。

そして・・・火曜日10時は感傷を許さない仁義なき戦い勃発中である。

「サイレントプア」・・・・・・・・・*6.3%↘*5.3%↘*4.4%

「プラック・プレジデント」・・・・*8.3%↗*8.4%↘*8.0%

「なるようになるさ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・*9.4%

あえて*印を拾いにきてるのか。

頑張れ・・・CSW(コミュニティソーシャルワーカー)、裏番組に負けるな里見涼(深田恭子)・・・。

モ娘。よりも一年早くデビューして未だに君臨する・・・トップ怪物アイドルは君だから。

で、『ドラマ10・サイレント・プア・第4回』(NHK総合20140429PM10~)脚本・相良敦子、演出・伊勢田雅也を見た。コミュニティーの話なので・・・一話完結のスタイルを取りながら住民たちは消去されずに再登場する。貧困救済ネットワークという綺麗事の話なので登場人物たちが継続されて行くのはリアルさを醸しだす要素になっている。今回は里見病(困窮する人々を放置しておけない病)に感染した三輪まなか(桜庭ななみ)がさらに感染を広げ、新保佳苗(横田美紀)も善人化してしまう。こうなると、江墨区社会福祉協議会地域福祉課では沢木郁子(押元奈緒子)が、江墨区役所地域福祉課では水澤純子(山口紗弥加)が「必要以上の仕事はしない、問題には真剣にとりくまない、沈没しそうな時は真っ先に脱出的な邪心に満ちた抵抗勢力」としてもっと毒を吐いてもらいたいよね。

心に穴があいた里見涼・・・1995年の阪神淡路大震災で瓦礫に埋もれた弟・光(馬渕誉)を残し・・・一人で脱出した少女時代(山田萌々香)の記憶が涼を燃えさかる炎と暗闇に閉じ込めていのだった。

だから・・・涼はもう誰も見捨てることができないのである。

今日も「助けを求めている人の声が聴こえようが聴こえまいが助けて助けて助けまくる」里見涼の活躍は24時間体制で実行されるのだった・・・死ぬぞ。

かってのゴミ屋敷の女主人・江田房枝(香川京子)に新たなる魔手が忍びよっていた。

あらたにツインテール香苗とユニットを結成したまなかは・・・区内に浸透してきたゴキブリのようなリフォーム詐偽グループの情報を入手したのだった。

まあ・・・内装業者も・・・不景気で必死なわけだが・・・。

しかし、それはそれで、これはこれである。

まなかと香苗は警戒を強めるが・・・時すでにおそく・・・房枝は息子の知人を名乗る甘いマスクのリフォーム業者の触手にからめ捕られていたのだった。

一人暮らしの淋しさに付け込まれたのだった。

「こうなったら・・・本体をつぶすしかない・・・」と涼は詐偽グループの摘発をまなか&香苗に命じる・・・いや、それは警察の仕事ですから。

「そんなこと言ってたら助けられるものを助けられない」

ある意味・・・CSWはブラック企業体質です。

しかし・・・その最中に・・・里見涼の同志である民生委員の石田敬子(坂井真紀)の家庭で問題が発生する。

幼い頃に生き別れになっていた敬子の母・敏子(左時枝)が認知症を発症したために・・・一緒に暮らし始めた石田家だったが・・・敏子の症状が悪化し、妄想や徘徊を開始したのだった。

失くしてもいないサイフを失くしたと主張し・・・娘の顔を時々、忘れてしまい・・・記憶が混乱する敏子。

敬子は幼い頃に家族を捨てて男と出奔した母に対してわだかまりを抱えながら・・・母の狂態に不安を抱くのだった。

複雑な過去を持つ母と娘の同居に賛同した涼に愚痴をこぼす敬子。

「本当にこれでよかったのか・・・今は心が揺れているの」

「揺れちゃだめ・・・家族は一緒にいるのが一番なんだもの」

姥捨て山とか・・安楽死とかは辞書にない涼だった。

しかし・・・ついに敏子の認知症は新たなステージに突入し・・・孫である敬子の娘を連れたまま消息不明になってしまうのだった。

「あの子にもしものことがあったら・・・」・・・蒼白になる敬子。

涼は救済ネットワークに敏子と敬子の娘の情報をリークし・・・街をあげて捜索態勢に突入するのだった。

「個人情報保護なんてくそくらえです」

しかし・・・行方をつかませない・・・敏子。首から発信器ぶらさげておけばいいのに・・・。

眠れない夜を過ごす・・・涼と仲間たち。

「昔の記憶に沿って行動しているかも・・・」と涼は敬子の幼稚園を探索する。

しかし・・・そこにはすでに敬子が先着していた。

私はワルツを踊っていた

そこへ悪い男が現れて

愛しい人を攫っていった

今も胸を疼かせる

美しいテネシーワルツの調べ・・・

敬子は幼い頃、母が歌っていた歌を怨みを込めて口ずさむのだった。

一人カラオケでストレスを発散する涼の信者の一人、原留美(小橋めぐみ)もカラオケ店で目を光らせる。

そして・・・早朝。

涼によって引きこもりを脱した新聞配達員の郷田光良(渡辺大知)は幻影の江墨区を走る都電の停留所で・・・敬子の娘・愛用のぬいぐるみを発見するのだった。

「都電・・・」

キーワードによって蘇る敬子の追憶。

「母が家出する時に・・・私を連れて都電に乗ったわ・・・」

涼と敬子は自転車で路線周辺の捜索を開始する・・・そして敏子と敬子の娘を線路沿いのスペースで発見する。

敏子は若い頃の記憶に縛られ・・・敬子を捨てて男の元へ走る過去を再現していたのだった。

「ごめんね・・・私は・・・行くしかないの・・・さよなら・・・さよなら」

茫然と立ちすくむ敬子。

たちまち幼女モードになった涼は敬子に代わって叫ぶのだった。

「いかないで・・・私を捨てないで・・・」

思わず振り返り・・・大人になった敬子を発見すめ敏子。

混乱する敏子の記憶。

あの人が待っているのに。

敬子が大人になっている。

敬子がお母さんになっている。

あの人なんてもういない。

私に孫娘がいる。

私は何をしているのか。

ああ・・・私は恥ずかしいことをしている。

いやだ・・・鬱になる。

母親の戸惑いをすべて察した敬子は手を差し伸べる。

「お母さん・・・」

「ごめんね」

「私の手をにぎって・・・」

「ごめんね」

「もう・・・離さないで・・・」

女たちは泣いた。

あの手この手を駆使してついに警察にリフォーム詐偽グループを摘発させたまなか&香苗は房枝にお説教をするのだった。

「危なく騙されるところだったんですよ」

「注意しなきゃダメじゃないですか」

「騙されてもいいと思ったのよ・・・だって・・・あの人ったら死んでる息子が生きてるみたいなことを言って・・・騙すつもりならもっと下調べしなさいよって話なの。でも・・・なんだか息子が生きているような気分になって・・・夢のためにお金を払ってもいいかなって」

「何・・・ホストクラブにいれこんだ女みたいなこと言ってんです」

「騙されていいことなんて一つもありませんよ」

「はい・・・もう・・・息子のことは卒業しないとね・・・あなたたちみたいに本気で心配してくれる人がいるんだから・・・」

女たちは笑うのだった。

赤飯の得意な房枝は近所の主婦の片平祐美(中島ひろ子)と無料宅配弁当のボランティアをする。配達を担当するのは郷田光良である。貧困ネットホワークの相互扶助による再生は進んでいるのだった。

地域福祉課の山倉課長(北村有起哉)もすっかり涼に洗脳され・・・徘徊捜査網の確立を約束するのだった。

課長補佐の水澤純子(山口紗弥加)は思わず舌打ちをするのだった。

だが・・・ヒーローの涼も家に戻れば悩める子羊である。

祖父の一郎(米倉斉加年)は娘の幸子(市毛良枝)の身を案じて・・・孫娘の涼に意見する。

「お前が・・・あの日のことを秘密にしたままだと・・・お前の母親はずっと苦しむんだ・・・いい加減・・・あの日・・・何が起ったのか・・・話してやってくれ」

しかし・・・涼にはそれが最も困難なのだった。

弟を見捨てて自分だけが助かったことを・・・その場に不在だった母親に打ち明ける・・・。

その恐ろしさに立ちすくむ涼なのである。

弟の身体を焼きつくした地獄の業火は・・・涼の胸の内でまだ燃えているのだから・・・。

美しいスキャンダルは・・・秘すが花なのである。

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2014年4月29日 (火)

夫(要潤)と妻(猫背椿)とすけこましをいてこまし(仲里依紗)

スケコマシは女性をいろいろとアレする人でいてこましは痛い目をいろいろアレすることである。

仲里依紗のしてるのは男の人の欲望につけこんでアレコレするツツモタセのお手伝いだろう。

ものすごく・・・面白い話なのに・・・眠たくなるんだようなあ。

この演出家のマジックはすごいよな。

すべてを平淡にしてしまうというか・・・不思議だよな。

じっくりと分析してみたいのだが・・・睡魔に襲われるのでできないという。

「101回目のプロポーズ」とか「悪魔のKISS」とか「この世の果て」とか凄い作品あるのになあ。

「あなたの隣に誰かいる」(2003年)で燃え尽きたんじゃないのか。

「蟲男の呪い」か・・・。未だに祟られてんのか。

「結婚できない男」の後はソレを再放送してもらいたかったな。

で、『極悪がんぼ・第3回』(フジテレビ20140428PM9~)原作・田島隆・東風孝広、脚本・池上純哉、演出・林徹を見た。今回、新人事件屋(やくざ)の神崎薫(尾野真千子)が挑むのは強請のための不純異性交遊工作の証拠写真撮影である。この一連の行為をセリフにするのはかなり困難な作業だが・・・脚本家は「にゃんにゃん」という言葉を選択し・・・物凄い違和感を生じさせている。もちろん・・・にゃんにゃんもスラングである以上・・・「お」で始る様々な性行為および生殖器を暗示する言葉として使用することに問題はない。しかし・・・もう少し言葉を選ぶ配慮というか・・・熟考は欲しいところである。一番ストレートなのはセックス写真であるが・・・ハメ撮りという手もある。ハメるためにハメてるところを盗撮するわけである。いや、お茶の間的に「ハメ」の方が不味いんじゃないか。マンとメとかコもまんずよろしいとは言えないですな。第一、「にゃんにゃん」が死語とは言い切れぬだろう。言うのかなあ。コギャルがいまどきニャンニャンしちゃったとか・・・っていうかJKがコギャルって言わないだろう。じゃ・・・今、ニャンニャンはなんて言うんだ。エッチするじゃないか。明治時代まで遡上しているじゃねえか。エッチするとニャンニャンは同時代語という考え方もあるよな。「エッチしてるとこの写真」ぐらいの方が今風と感じる人とそれぐらいだったら「にゃんにゃん写真」でいいだろうと思う人がいる。「にゃんにゃん」の方がいろいろな意味で恥ずかしい。にゃんにゃん事件があるからのう。あれは1983年のことだから去年三十周年だったんだな。そういえば「ブラックプレジデント」に高部あいが出演していたな。おいっ・・・にゃんにゃんの人は高部知子だよっ。二十歳以上違うじゃねえかっ。どんだけ曖昧なんだ。今では立派な精神保健福祉士だぞ。しかし事件がなければどれだけアイドル・スターだったかと思うとな・・・。流出させちゃった元カレ自殺してるからな。リベンジポルノの時代は永遠なりだな。まあ、自分撮りでないとニャンニャンとは言えないという厳密感もあるよな。・・・もう・・・にゃんにゃんでいいや。わかる人にわかればいいの一種だろう。

世間にだまされ、男にだまされ、生きてるだけでめっけもんな女・神崎薫が小清水経営コンサルタントという「組」の事務所に待機していると、「耳寄りな儲け話」が飛び込んでくる。

話(発注)を持ちこんだのは不動産会社の地揚四郎(ラサール石井)である。

開発工事のため土地買収(地上げ)中のエリアに「立ち退き料を釣り上げるために居座っている悪質な夫婦もの」がいるので・・・なんとかしてほしいという話である。

要するに・・・「どんな手をちつかってもいいから追い出してくれんかのう」という話である。

請け負ったのは薫を飼い殺しにしている組員の一人、金子(三浦友和)だった。

居座っているのは飛騨夫妻で・・・夫の林五郎(要潤)は大手の建設会社「底抜建設」勤務のエリート社員、妻の満利子(猫背椿)は有力な県会議員の娘だという夫婦はなかなかに手強い存在だと言う。

さっそく、金子が提案したのは美人局で・・・ハニー・トラップで林五郎のスキャンダルを捏造し・・・家庭を破壊し、会社では左遷に追い込むというものだった。

そして・・・甘い誘惑者として薫を指定する。

「そんなのできん」と断る薫。

別の手段で・・・夫婦を追いこもうと・・・身辺調査を開始する。

しかし・・・見る目のない薫には仲睦まじい純朴な夫婦の姿が映るばかり。

だが・・・金子の舎弟の夏目大作(竹内力)がゴミをリサーチすると・・・たちまち、林五郎の裏の顔が浮かび上がる。

林五郎はセレブの女の資産目当ての女たらしでしかも家庭内暴力夫である。

好きなゴールデンカレー以外のルーを妻が使用するだけで殴る蹴るのドメスティック・バイオレンス夫に変身するのだった。

結局、金子に言いくるめられて・・・ハニー・トラップの甘い餌となることを承諾する薫。

擬装のプロである真矢樫キリコ(仲里依紗)に特別料金で「社長令嬢」に変身させてもらう薫。

ティッシュ・ペーパーで乳を盛る自助努力もけなげな薫なのだった。

「こんなんで・・・あの男をだませるかしら」

「田舎もんなんか・・・これで充分だませるけん」

ちなみに・・・ここは地の果て・・・金暮県金暮市です。金暮病院とか金暮警察があります。

結構簡単に・・・ホテルの一室に林五郎を連れ込むことに成功した薫。

腐れ外道のアシスタント・茸本和磨(三浦翔平)は盗撮用カメラを持って待機である。

薫も情報を得るために・・・シャワーを浴びる林五郎の所持品をチェックする。

しかし・・・林五郎は薫の偽物ぶりをすでに見抜いていたのだった。

「このあま・・・何が目的じゃ」

暴力をふるわれ追及された薫だったが・・・ホテル従業員のフリをした茸本によってなんとか救出される。

「つかえん女じゃのう・・・」と金子に罵倒される薫。

しかし・・・茸本の美味しい手料理を食べるうちに・・・重要な手掛かりをつかんでいたことを例によって思い出すのだった。

薫は発注先の役人と・・・談合している林太郎の不正の証拠が郵送されてくることをつかんでいたのである。

ニンベン師(偽造の専門家)でもあるキリコに依頼して、林太郎の運転免許を偽造した薫は・・・表札のトリックで郵便物の不在通知を入手し・・・「不正入札のための情報」を横取りすることに成功する。

情報を入手しそこなった林五郎の社内の立場は失墜し・・・左遷されて転勤となり・・・薫は任務を成功させたのである。

成功報酬は四百万円。

そのうちの半分を金子から渡された薫は・・・歓喜するのだった。

「余計な真似はするな」と釘を刺される薫。

薫は林太郎の暴力から妻の満利子を救おうと計画していたのだった。

一方で・・・腐れ外道の茸本から三千円で談合情報を入手した金子はそれを別の建設業者に売り、数千万円を入手していたのだった。

「人を救う事件屋になりたい」と林太郎の暴力を妻に訴えさせようとした薫は・・・逆に妻から夫のストーカーとして被害届を出されてしまう。

「この人には私がついていなくちゃダメなのよ」と嘯く満利子・・・。

まあ・・・腐れ外道の茸本と縁を切ることができない薫が・・・他人の夫婦仲に口をはさむことがすでにおこがましい話なのである。

底抜けにあほんだらの薫はストーカーの容疑で留置されてしまうのだった・・・。

せっかく・・・警察なのに伊集院刑事(オダギリジョー)の出番なしである。1シーズンに三本掛け持ちは・・・それなりに大変なのか・・・。テレビ東京に番組宣伝で出すぎたからな。「ゴッドタン」にまで出ていたぞ・・・。

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2014年4月28日 (月)

呉子・治兵篇に曰く、凡兵戰之場、止屍之地・・・と軍師官兵衛(岡田准一)

「呉子」は武経七書の一つである。

「呉子四十八篇」のうち、現存するのは「六篇」と言われる。

今回、官兵衛が引用するのは第三篇とされる「治兵篇」である。

この篇は将兵の統率について語られる。

引用された「およそ兵戦の場は、止屍の地なり。死を必すればすなわち生き、生を幸すればすなわち死す」は戦場での心構えであり、戦場では死体となるのが普通であり、それを普通とする覚悟がないと充分な働きができないという一種の逆説を展開します。つまり・・・危機的状況を目前にして平常心を失うことによって実力が発揮できず・・・それが敗北・・・すなわち死を招くという話です。

この後、呉子はこう続きます。

「つまり、優れた将軍とは沈没しそうな船に乗っているが如く、常に死を覚悟しているものだ。死を覚悟しているからこそ、修羅場においても平常心で智勇を発揮できるのである」

まあ・・・この「展開」は・・・「今」ですと・・・物凄い説得力を持つわけです。

もちろん・・・「非常事態なので自分の命を最優先」も・・・冷静に判断したとするならそれなりに尊重されるべきなのかもしれません。

船長としては駄目なのかもしれないが・・・多くの犠牲を出して生き残ったことはそれなりに寿ぐべきことなのですから。

とにかく・・・自分の死を計算に入れないと戦争は成立しないのですな。

勝負は時の運と申しますので、絶対に死にたくない将軍の選択肢は「退却あるのみ」なのですから。

退却する場所がどこにもなくなった時・・・それでも退却選べば勝利するのが困難であることは言うまでもありません。

で、『軍師官兵衛・第17回』(NHK総合20140427PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今週は十六行で一行アップ。まあ、鬱を発して行く荒木村重の描写はなかなかに丁寧ですからな。まあ、そこだけ・・・という見方もできますが。そもそも尼子軍は出雲国の敗残者ですが・・・尼子氏は一時は播磨国を浸食していた過去もあるわけで・・・播磨国人がそんなに感情移入するはずはないのですな。それをこともあろうに・・・友軍物語に仕上げるとは・・・。まあ・・・出雲国民にとっては一応・・・英雄の一族で・・・最後が悲劇的なのでそれなりに仕上げるのは構わないのですが・・・軍師官兵衛・・・戦国武将というよりは熱血中学生になってますなあ。そんなこんなで今回は続・・・山中内匠長俊(戸浦六宏)の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。妄想マップではついに本人のまま登場。柴田配下の忍者としては上月城加勢の忍び衆に撤退指令を伝達しにくるのは当然でございますからね。

Kan017 天正六年(1578年)五月、播磨・美作国境の上月城(城主・尼子勝久)を吉川・小早川・宇喜多の連合軍六万が囲む。これに対し羽柴秀吉は毛利方を挟撃するべく高倉山に一万の軍を布陣させる。東の織田軍の播磨国の主城・書写山には織田家総帥の織田信忠軍が到着しており、敵方となった三木城(城主・別所長治)攻略戦のために・・・織田家各方面軍からの抽出兵力(遊軍)が続々と播磨国に到着している。自ら戦場に現れた荒木村重を始め、明智軍、丹羽軍、滝川軍など織田の近畿以西勢力が集結し、その数はたちまち七万に達する。さらに織田軍は信長の率いる五万が播磨に侵入する手筈だった。しかし、梅雨に突入したために交通事情が悪化し、石山本願寺包囲戦の予備兵力に不足が生じたために信長の出兵は延期される。この期をとらえて羽柴秀吉は六月、上洛中の信長に謁し、上月城からの撤退と三木城攻略の一本化を提案する。現場司令官としては独自の判断も可能だったが、尼子勝久が柴田勝家系列の客将だったために・・・信長の承認を仰いだのである。信長も東西に敵を持つ播磨方面軍の不利は承知しており、上月城を捨て、三木城を取る秀吉の作戦を即断で支持する。秀吉は尼子勝久に撤退を進言したが・・・尼子軍は上月城に固執し、脱出を拒む。秀吉は予定通り六月中に撤退を開始。七月、小規模な野戦を行った尼子軍は毛利軍に降伏し、城主は切腹して果てる。捕虜となった尼子の家臣たちは毛利軍によって粛清されたと言われる。毛利・宇喜多連合軍は戦意に乏しく、小さな勝利に満足して国境線から撤退する。もちろん・・・野戦を挑んで敗北するのを毛利家が何より惧れたことは言うまでもない。結果として、三木城七千人の将兵は・・・織田軍の対毛利軍団七万人を相手にすることになる。秀吉は周辺の小城を陥落させ、三木城を裸にするとおよそ三万人に膨れ上がった自軍兵力で包囲戦を開始するのだった。役割を終えた遊軍は粛々と自分たちの持ち場に引き上げるのだった。そもそも・・・尼子軍は秀吉軍にとっても播磨国軍にとっても余所者で厄介者であったことは間違いないだろう。

「兄上・・・信孝ただ今・・・到着しました」

「うむ・・・今宵は休むがよかろうず・・・明日、神吉なる小城を攻めるで本陣に加わるがよい」

「いえ・・・信孝は父上より城攻めの大筒を預かってまいりました。早速、ご披露したく存じまする」

「ほほう・・・それは面白い」

「滝川と九鬼が作りし、新しき軍船のために開発されたものを山車に乗せ、自走砲として用いまする」

「それは見ものじゃのう」

強力な試作野戦砲は・・・神吉城を一撃で炎上させた。

見物の播磨衆は織田軍の妖怪じみた武力を畏怖した。

神吉城の炎上を見た志方城は開城降伏を申し入れる。

その炎を見ながら、夜の播磨路を甲賀の忍びたちが走って行く。

落城した上月城から脱出した山中大和守俊房と俊房の又従兄弟の山中内匠長俊の主従である。下忍の一人、猫田与助は尼子勝久の忘れ形見・勝若丸を背負っていた。

武士の意地を貫いた尼子主従の最後はそれなりに天晴れなものだったが・・・闇に生きる忍びたちに特に感慨はない。

今はただ・・・主君・柴田勝家の元に勝若丸を送り届け・・・事の顛末を報告するのみである。

黒田官兵衛は義兄・櫛橋左京進の切腹を見届けると・・・竹中半兵衛の指図で・・・尼子家家臣だった亀井茲矩と共に備前岡山城に向かっていた。

亀井茲矩もまた義兄弟である山中幸盛(鹿助)を失っており、それなりの共感を持った二人である。

しかし・・・そのことを語ることはない二人だった。身内の死は戦国の習いである。

亀井は一回り年上の官兵衛に頼み、鹿助の遺児たちの身を託している。

「鹿助殿に何か意向はあるかのう」

「できれば武士にはしたくないと申しておりました」

「では・・・僧か・・・」

「いや・・・商人がいいのではないかと」

「なるほど・・・」

官兵衛は元々、商人上がりの一族の長である・・・心当たりはあった。

二人がそんな会話をしている頃・・・街道沿いでは・・・安国寺恵瓊配下の忍び坊主が狙撃の機会を狙っていた。

官兵衛を発見した忍び坊主は風下に位置して・・・鉄砲を構える。

しかし・・・引き金を引こうとしてその指が止まる。

「おい・・・」

誰かが声をかけたのだ。

その声は何故か忍び坊主の足元から聴こえるのだった。

驚いた坊主は身構えようとして身体が動かないことに気がついた。

「お前の身体は動かない・・・なぜなら・・・お前の影が動かないからだ」

「・・・」

「お前の影には心の臓がないぞ・・・」

「・・・」

「だから・・・お前にも心の臓はない・・・」

ひっと忍び坊主が声を漏らす。苦悶の表情が浮かぶが身体はまったく動かない。

そして・・・鉄砲を取り落とした忍び坊主は呪縛から解き放たれたように転倒する。

すでに息絶えていた。

「飛騨忍法・・・影縛り」

忍び坊主の影からむくりと起きあがったものがある。

「悪く思うな・・・官兵衛様の護衛が半兵衛様に申しつけられたおいらの仕事でな」

少年忍者・青影は・・・木々の影に溶けて消える。

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2014年4月27日 (日)

私は見守っている(薬師丸ひろ子)私は密着している(麻生久美子)誰かと一緒に虹を見たことがありますか?(二宮和也)

「泣くな、はらちゃん」(2013年)では麻生久美子も見守られていたわけである。

「Q10」(2010年)では美少女ロボットを見守っていた。

三本目なのでこの枠の常連と言ってもいいだろう。

この枠はさまざまなチャレンジをする枠だが・・・「Q10」→「泣くな、はらちゃん」→「弱くても勝てます」は同じカテゴリーに属していると言っても良いだろう。

それは・・・静かで穏やかで気がつくと虹が出ている世界を背景にしている。

それは・・・普通の騒がしく、荒々しく、空模様などあまり気にしない世界を否定するのである。

つまり・・・そういう普通さを「異常」と感じさせたいわけである。

それはあえていえば「競争社会」の否定の側面を持っている。

「勝ったって・・・負けたってたいしたことないんじゃないか」という諦念の世界だ。

薬師丸ひろ子はいないが・・・この枠の同じジャンルには「すいか」とか「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」とか「妖怪人間ベム」とか「セクシーボイスアンドロボ」とか「銭ゲバ」とか「野ブタ。をプロデュース」とか「1ポンドの福音」とかがあるわけである。

凄いのは「銭ゲバ」という原作でさえ・・・静かで穏やかで気がつくと虹が出ている世界にしてしまうことだ。

もちろん・・・そんなドラマばかりではどうかと思うが・・・ああ・・・これは例のアレだな・・・と思うとつい見てしまう。

それほどのオリジナリティーがあると考える。

この不思議な世界に存在したことで・・・「あまちゃん」の鈴鹿ひろ美は生まれたという気さえする。

で、『弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜・第3回』(日本テレビ20140426PM9~)原作・高橋秀実、脚本・倉持裕、演出・池田健司を見た。だから・・・タイトルとは裏腹に小田原城徳高校は最後まで勝ったりはしないだろう。こんな野球部が勝ったりしたら・・・競争社会の強い野球部は涙目である。しかし・・・勝ったって負けたってたいして違いはないのである。それでも・・・青志(二宮和也)は「俺は勝つためにやるんだ」と主張するのである。なぜなら・・・野球もゲームである以上、最初から負ける気ではあまり面白いとは言えないからだ。もちろん・・・物凄い強いチームがどうしたら負けることができるかという楽しみ方もあるが・・・それではあまりにも変態だからである。

「弱いけど勝とうとすること」はとても大切なことなのだ。

勝とうとして負ければ口惜しいからである。

ある意味、口惜しさこそが・・・人間の生きる原動力なのだ。

「負けるのが分っているから勝とうとしない」のはあまりにも死んでいるのだ。

ほんの一握りの勝者から・・・「勝負にならない」烙印を押された敗者が・・・口惜しさを胸に立ちあがる・・・それが人生なんだなあ。

その日は特別な日で・・・朝食を求めてやってきた青志は「サザンウインド」の扉が閉ざされていることに戸惑いを感じる。

しかし・・・経営者の樽見楓(薬師丸ひろ子)と娘の柚子(有村架純)はすぐに顔を見せる。

その日は・・・柚子の父親の命日だった。

「最後に見た野球の試合が・・・あの親善試合だったなんて・・・かわいそうだったなあ・・・せめてどんなにつまらないカードでもプロ野球を見せてあげたかった」

あの親善試合とは・・・青志が・・・堂東学院の谷内田健太郎(市川海老蔵)に侮蔑された試合である。一点も一死もとれない・・・一方的なコールドゲーム。

柚子はその日、父親に・・・「私の方が上手い」と主張し・・・父親は「柚子の試合が見たい」とお愛想を言ったのである。

そして・・・まもなく父親は逝去した。

だから・・・この季節になると・・・袖子は「私が選手になりたい」という無理を言い出すのだった。

もちろん・・・男女雇用機会均等法からもっとも遠い高校野球という・・・男尊女卑のスポーツでは・・・女子に選手の機会を与えないのが基本である。

高校野球は悲しいほどの男の世界なのだ。

柚子が何を言っても・・・それは「狂気の沙汰」なのであった。

だが・・・小田原城徳高校の野球部では・・・それが一笑にふされない。

なにしろ・・・男子野球部員の実力が・・・女子マネージャーと大差ないのだった。

部室にゴキブリが出た時など・・・ガッツではむしろ・・・柚子の方が勝るのである。

すっかり・・・野球部に密着して面白い特集記事をものにしようとしているスポーツ専門誌「トロフィー」の記者・利根璃子(麻生久美子)も・・・試合に出なくても柚子が選手として参加した方が・・・題材になると考えるほどだ。

一方で・・・監督の座を青志に奪われた増本(荒川良々)は治療用の冷却スプレーでゴキブリの行動力を奪う柚子の行動に「備品の運用方法の不備」を指摘する。

それはさておき・・・青志の頭を悩ますのは・・・ピッチャー赤岩(福士蒼汰)の家出問題だった。

浮世離れした三条校長(笹野高史)も「それだけは解決してくれ」と青志に命じるのだった。

赤岩は・・・住み始めた学校から青志に追い出され・・・一人暮らしのファースト亀沢(本郷奏多)の家に転がり込む。

そして・・・いつも居眠りばかりしているファースト亀沢の「事情」を知るのだった。

東大進学を目指し・・・親元を離れて進学校にやってきたファースト亀沢は貧乏だったのである。

ここから・・・早朝新聞配達、家庭教師などのアルバイトで学費を稼ぎ、猛勉強している野球部員の睡眠不足問題がクローズアップされる。

赤岩は・・・亀沢の窮乏に手を差し出したいと考えるが・・・亀沢からは・・・「人の心配してないで家に帰れ」と忠告されるのだった。

野球部随一の実力者・サード白尾(中島裕翔)は「選手になりたい病」で傘やふとんたたきをふりまわす柚子を案じて・・・恋仇の赤岩になんとかしろとせっつくのだった。

「大抵のこころの病はセックスすれば治る」と高校時代のキッドのクラスメートは言っていたがこの「この枠の世界」には「いじめ」があっても「セックス」がないのが基本である。

野球部員に・・・亀沢の貧困問題を持ち込む白尾だが・・・部員たちの経済援助はストレートすぎて・・・亀沢のプライドを傷つけるのだった。

そんな白尾に・・・「お前は人の話を聞かない」と説教する青志。

「でも・・・あいつが貧乏なままだと・・・居候として気が引けます」

「バカ・・・あいつはお前になんて言った・・・家に帰れって言っただろう・・・お前が心配しているんじゃない・・・あいつに心配されているんだよ」

「・・・」

青志にアドバイスされた赤岩は柚子と話し合う。

「選手はあきらめて・・・マネージャーに戻ってくれ」

「じゃあ・・・家出をやめるって約束して・・・」

「・・・わかった」

「・・・約束守ってよ」

恋人たちの話がかみ合って湘南の海には虹がかかるのだった。

そういうあれやこれやのなか・・・バッティングセンターで闘志を見せる柚子に出会った谷内田は・・・小田原城徳高校の野球部がふと気になる。

・・・柚子はまだ・・・自分が選手をすることにこだわっていた。

そんな柚子に母親は・・・「あなたは覚えてないかもしれないけど・・・お父さんの言葉には続きがあったのよ・・・お父さんは青志くんは・・・弱くて下手で・・・勝てないかもしれないが・・・やるべきことはやっていたって・・・」と諭すのだった。

「でも・・・野球部やめちゃったじゃない・・・」

「だけど・・・高校を卒業するまでずっと・・・あなたとキャッチボールしてくれたでしょう・・・お父さんの代わりに・・・」

「・・・」

柚子は思い出と会話するのだった。

一方・・・お茶の間を驚嘆させる・・・豪邸に戻った赤岩・・・。

赤岩の父親(光石研)は「一生困ることがないほど金があるのに働くつもりはない」と息子に断言するのだった。

赤岩は・・・無職のくせにガールフレンドの柚子の母親に懸想している父親がなんとなく嫌だったわけだが・・・そう断言されると返す言葉がないのだった。

お茶の間の多くの人々も口惜しさを感じつつ納得するしかないのである。

そんなこんなで・・・青志がへっぽこ野球部のために用意した練習メニューは・・・三塁コーチの走塁誘導のコーチングだった。

「ストップ」「ベースでストップ」「回れ」の合図を打球の行方を見ながら走者に伝えること。

そんな基本的なことができない・・・「彼ら」なのである。

青志にとって異常な「世界」から・・・青志の普通の「世界」を探査しに来た谷内田は・・・青志の選手たちへのメッセージに感ずるところがある。

「お前たち・・・自分のことばかり考えるな・・・相手のことを考えろ・・・どういうタイミングでどう言ったら・・・相手にとっていい結果を生むか・・・せっかく頭がいいんだから・・・考えてみろ・・・」

谷内田は無言で・・・ライバル高校の生徒たちに打撃のお手本を見せてくれるのだった。

青志はそのことに幽かに頭を下げるのである。

かって青志もまた相手のことを考えない高校生だったし・・・谷内田もそうだった。

そして・・・今は二人とも少し大人になっているのだった。

「選手になりたい病」期間を抜けた柚子は・・・青志にキャッチボールをせがむ。

昔は・・・柚子の投げるボールも補給できなかった青志もなんとか・・・今は相手になる。

ボールを交換しながら柚子は「ありがとう・・・青志くん」とつぶやく。

その光景を見下ろす柚子の母親は「ちゃんと聴こえるように言わないとねえ」と愛娘を愛おしむのである。

早朝・・・新聞配達中の亀沢を急襲した野球部員たちは配達を手伝うことを申し出る。

「余計なお世話だよ」

「手分けしてやれば早いだろう」

「ランニングのついでだよ」

「お前のためじゃない・・・野球部のためさ・・・」

「・・・ありがとう」

勝利への道は遠く険しい。

その一歩が前進しているのかどうかも疑わしい。

しかし・・・それでもやるべきことをやることはできるのだ。

それが・・・青春なのだった。

植物は何も考えなくても光合成をしているのかもしれない。

しかし・・・本当はじっくり考え抜いて光合成をしているのかもしれない。

植物の心を人は想像するしかないのである。

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2014年4月26日 (土)

不幸な人のために幸福な人がお金を払い続けるシステム(林遣都)

もうすぐ死ぬ人のためにまだ死なない人からお金をいただくビジネスでもあるよな。

病気にかかった時のために健康な時にお金を賭けるギャンブルだろう。

そうなると博打を嫌う人が抵抗を感じる惧れがあるな。

「今、困っている人のためにあなたのお金を使ってみませんか」っていう呼びかけのコマーシャルはどうなんだろう。

人々の善意に訴えるより、来るべき未来の危機感に訴えた方がいいと誰もが考えがちなんだよな。

でも、自分だけは絶対に死なないと考えるバカは意外と多いんだよ。

そうなのか・・・。

だけど・・・そういうバカは他人の心配もしないよね。

それもそうだな・・・。

結局、「あなたの未来を一緒に考える」的なことが正解なんだよ。

まあ・・・明日、沈没するかもしれない船に保険をかけるからこそ船は沈没するんだけどな。

それは違うと思うし。そのたとえは今はアレだしね。

じゃ・・・転ばぬ先の杖っていうことで。

で、『金曜ナイトドラマ・・第2回』(テレビ朝日201404252315~)原作・えんどコイチ、脚本・橋本裕志、演出・常廣丈太を見た。現象界に生きる人々が幻象界について語る時は死生観が示されることが多い。生者にとって「あの世的な死後の世界」は幻想の象徴だからである。しかし、この作品の主眼は「死後の世界」にはなく・・・どちらかと言えば「死に際」の事象に絞られている。特に原作はそもそも「自殺についての是非」を問うところからスタートしている。もちろん「自殺」を否定するモラリストの立場からである。もちろん、キッドのブログも「自殺」を肯定しないが・・・当然、否定もしない。自由第一主義である以上、「死ぬ自由」も尊重するからである。「自殺」というのは基本的に生者にとって迷惑なものであるが、「自殺者」にとっては「死後の世界」がどうなろうと無関係なのだから仕方ない。もちろん、この場合の「死後の世界」とはこの世界のことである。死者がこの世から行くかもしれないあの世のことではない。そんな記述をしていると大霊界からあの人が「キッド、死後の世界は必ずある」と囁きかけるのだが・・・幻聴だ。

この物語の死神法では「生者にこの世的死後の世界を見せること」が禁止事項になっている。まあ・・・因果律が乱れるということなのだろう。

この物語では「神」が「運命」とほぼ同じである。

擬人化されたこの世とあの世の中間的存在は「人間の意志」が「運命」に介入しないように管理運営しているわけである。

つまり・・・「人間」が「神の領域」を犯す可能性が前提である。

キリスト教的世界観では・・・造物主が絶対であり、人間が善悪を判断することは基本的に愚かなことなのである。復讐していいのは神だけ・・・人間は基本的に犠牲としての子羊であるべき・・・という支配者の発想が根本にあることは言うまでもない。

もちろん・・・人間はそんなことを大人しく聞きいれるものだけではないので・・・この世は混沌として悲惨で阿鼻叫喚に満ち・・・面白いのである。

今回は物語の後半で「死神くん」(大野智)の失態による波及効果で「悪魔くん」(菅田将暉)が現世に解き放たれる。

そのことを告げるために死神くんの上司である主任(松重豊)も登場し、本体がカラスであることを明らかにした監死官(桐谷美玲)とともに本編におけるレギュラーが揃った。

カラスは「死を告げる鳥」として「生を肯定する人間」には忌まわしくも不吉な存在として認知されている。

しかし・・・一方で八咫烏(やだがらす)のように神の導き手としての神性を示す場合もある。

また・・・地上に姿を出現させた悪魔や魔女により、使い魔としても使用されることが多い。

幻象界において・・・カラスは・・・霊的道具生命体だからである。

スズメの一種であるカラスが驚異的な知能を有するのはこのためである。

この物語においてはこの世とあの世の境界線に・・・死神くんも監死官も存在するわけであるが、死の天使である死神くんが基本的にあの世に属するのに対し、監視官(カラス)は実はこの世に属している。これは実はこの物語の「萌え要素」としてかなり重要なポイントなのだが桐谷美玲を起用している以上、スタッフがそのことを意識していることに期待したい。

また・・・あの世はこの作品では霊界として表現される。しかし、悪魔の棲む魔界が霊界の一部なのか・・・第三の世界なのかは曖昧なままである。もちろん・・・神は魔界もテリトリーのうちと嘯くが悪魔は金輪際、そんなことは認めないのである。なにしろ、最終目標は天国の地獄化なのでございますから。

そういう・・・上層部のあれやこれやはともかく・・・あまり優秀な神の御使いとは言えない死神くんがあろうことか霊界アイテムの死神手帳を紛失し・・・あの世の皆さんは不祥事に右往左往するわけである。

しかし・・・張本人の死神くんは至って呑気なのだった。バカは死ななきゃ治らないのだが・・・死神くんは不死身なのだった。

天主もさぞや頭の痛いことであろう。

死神手帳を拾ったのは大手生命保険会社の営業部に勤務する島孝一(林遣都)だった。

この世を監視するカラスのネットワークはただちに彼を発見する。

霊界アイテム「死神手帳」にはいくつかの機能がある。

・紛失時の現世実体化

・死亡予定者の自動記入

・所有者が霊界所属者を認知するようになる

・死亡リストに自由に追加記入可能である

・記入者のみ、記入項目を削除できる

・・・まあ、明らかに無駄な機能がありすぎで・・・設計ミスとしか思えませんな。

体育会系のコネ入社で・・・営業部員となった島は無能な落ちこぼれ社員となっていた。

島をコネで入社させた学生時代の野球部の先輩で上司でもある黒川弘樹(神保悟志)はその無能ぶりに手を焼くのだが・・・体育会系なので叱咤激励しかできないのだった。

その叱咤激励が・・・罵詈雑言にしか感じられないほど・・・ダメな社員である・・・島・・・。

死神手帳を拾って思いついたのが・・・死神手帳の病死者リストから・・・病状を手掛かりに保険加入を勧誘するという作戦である。

バカじゃないか・・・バカなんだってば。

そもそも・・・保険は・・・リスクの確率によって運営されている。

統計的に・・・保険金の支払いが・・・被保険者の保険料を越えないことが前提である。

もうすぐ死ぬ人間を狙い撃ちにしたら・・・破産しちゃうんだよ。

大口契約の後の前代未聞の大口支払いに蒼ざめる上司なのだった。

「なんてことだ」

「でも・・・保険はいざという時のタメなんでしょう」

どうやら・・・バカの上に世を拗ねて、恩ある先輩を逆恨みしているらしい島。救いようのないバカなのである。

「安心くん保険」(大黒生命)のCFのキャストは誰だ・・・最近、こういうショートカットの人を見るとみんなパピコ(紗倉まな)に見えてしまうわけだが・・・。志村玲那じゃね?・・・タラコの人か・・・。佐藤綾衣(さとうあやぎ)だと思われ・・・なるほど。

そんなバカの島にも癒しの対象があった・・・近所のクロユリ団地に住むいじめられっ子・・・山本健太(田中奏生)である。

父親(森下能幸)は死の床にあり、母親(舟木幸)が風俗店で働いているためにいじめの対象になっているらしい。

父親のいない島にとって・・・ほぼ父親不在の健太は共感しやすい存在だったらしい。

健太の父親をお迎えに来た死神くんと遭遇する島。

死神手帳効果により・・・死神くんを目視することができる島を訝しむ死神くん。

そこにカラスがやってきて、今世紀最高にキュートな「じゃね」を連発するのだった。

今、「じゃね」を言わせたら桐谷美玲の右に出るものはいないな。

「なんで・・・あの人・・・俺のこと見えるんだろう」

「おまえマジでバカじゃねっ。あいつが死神手帳持ってるからじゃねっ。とっとと取りかえして来ないとダメじゃねっ・・・このカスがっ」

かわいいよ、カラスかわいいよ・・・である。

新規顧客の連続死亡で大損害が発生。

病気の有無の検査の不備が問われる事態に・・・思わず島を責める黒川。

腹いせに・・・死神手帳に・・・黒川の名を書き込む島。

「デスノート」の先行系の誕生である。

一方、ダメ人間とダメ死神同士・・・意気投合して島と友達になった死神くんは死神手帳回収に成功するが・・・。

「なんじゃこりゃあああああああ」と可愛いカラスを絶叫させるのだった。

書いた本人しか消せないルールのために・・・予定外死亡を避けるために再び島と接触する死神くん。

しかし・・・心の病んだ島は同意しない。

「あんな奴、死んだって構うもんか・・・」

「だが・・・君のしていることは人殺しだぜ・・・」

やがて・・・島は・・・黒川が父親代わりのように接していたことに思い当る。

そして・・・最後の我儘を黒川に言うのだった。

「もう一件だけ・・・もうすぐ死ぬ人を加入させてください」

「それはできない・・・」

「ごめんなさい」

生死の境を彷徨う黒川の認印を使って契約を成立させる島。

それは・・・貧困にあえぎ持病があるために保険に入れない健太の父親のための契約だった。

死後に保険金が入ると知り・・・安らかに旅立つ健太の父親。

しかし・・・残酷な運命は・・・健太に襲いかかる。

健太が事故死することを知った島は・・・またもや・・・死神手帳に書き込んでしまう。

【健太を庇って島が死亡】

「そんな・・・」

「今度は何があっても書き変えない・・・」

こうして・・・島はこの世を去って行った。

「次から次へと・・・お前はどんだけルール違反すれば気がすむんだよ」

「だって・・・健太が死ぬなんてあんまりじゃないか」

「死神が死を憐れんでどうすんだよっ・・・人間死ななくなったら地球は地獄だぞ」

「あいつが死んで帳尻あったんだから・・・いいだろう」

「そういう問題じゃねえんだよ・・・神の定めた運命を・・・天使が変更してどうすんだ」

あの世とこの世の間に主任がやってくる。

かしこまる・・・カラス。

「困ったことをしてくれましたね」

「あの・・・数合わせはしたので・・・」

それについては承認する主任だった。

「しかし・・・君が死神手帳を紛失した不祥事のために・・・二次被害が発生したのです」

「・・・」

「魔界から・・・悪魔が一匹・・・現世に紛れ込みました」

「うわあ・・・そんなぁ・・・」

事態を把握して驚愕するカラス。まったくどこ吹く風の死神くん。

「あなたたちの責任ですので・・・ちゃんと退治してくださいね」

その頃、地上では・・・悩める若者・桐嶋譲二(柄本時生)の前に悪魔くんが姿を出現させていたのだった。

「すんげえ・・・まずいんじゃね・・・」

こうして・・・死の天使対下級悪魔の局地限定戦争が始るのだった。

もちろん・・・三つの願いを叶えたら魂をもらえるアレの話である。

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2014年4月25日 (金)

スキップしたくなるくらい魂を揺さぶってくる女(中西美帆)と援助交際中のおっさんみたいな女(小泉今日子)

金太郎飴のようなドラマだよな。

ポキンと折っても金太郎・・・か。

どっから見ても見ることができるという。

何があっても・・・そろそろ・・・二人がイチャイチャっていうか・・・口喧嘩を始めるぞと思えるという。

そうすると・・・いろいろなことがどうでもよくなってくるという。

昔、ひどい目にあった男に未練たらたらだったり、美女に最初からお友達になりたいって言われたり・・・そういう惨めな女と惨めな男がとりあえず言いたいことを言ったり言いかけたりなんだかんだと睦みあう・・・。

幸せってなんだっけ・・・こんなことだったっけ・・・という感じである。

凄いな、おい。

で、『続・最後から二番目の恋・第2回』(フジテレビ20140424PM10~)脚本・岡田惠和、演出・宮本理江子を見た。「天使」や「天国」が付くドラマは当たらないという定説があるかどうかは別として、脚本家は「JNN50周年記念スペシャルドラマ」である「天国で君に逢えたら」(2009年・・・二宮和也・井上真央共演)の脚本を担当して視聴率*9.3%を記録している。まあ・・・メモリアルな作品としては微妙な数字だよな。天国では最近では昼ドラマ「天国の恋」(2013年)があったがまあ・・・ヒットしたとは言えない。奥菜恵と藤原竜也の「天国のKiss」(1999年)が平均視聴率*7.8%、佐藤浩市・本上まなみの「天国への階段」(2002年)が平均視聴率*7.2%・・・このあたりがアレだったかなあ・・・松岡昌宏の「天国に一番近い男」(1999年)は平均視聴率13.4%でそこそこだった。1999年には観月ありさの「天使のお仕事」があって平均視聴率8.3%である。20世紀の終りに天国や天使は苦戦していたのだな。観月ありさは「天使のわけまえ」(2010年)で平均視聴率*6.8%を記録している。堂本光一と藤井フミヤの「天使が消えた街」(2000年)には内田有紀が出演している。酒井法子もな。まあ・・・遡れば萩原健一と水谷豊の「傷だらけの天使」(1974年)とか沖雅也と多岐川裕美の「俺たちは天使だ!」(1979年)とか伝説の作品もあるけどな。去年のクリスマスにはももいろクローバーZの「天使とジャンプ」があったっけ・・・。

まあ・・・そういうわけで「天使の結婚」は企画会議でダメ出しされる可能性はある。「天使の血痕」はもっとダメだと思うがな。・・・温めていたのに・・・。

天使である真平(坂口憲二)は金太郎こと大橋知美(佐津川愛美)との結婚を前に「天使」(淋しい女性のための性的サービスを提供するボランティア)を廃業すると和平(中井貴一)に打ち明ける。

しかし・・・真平が天使であることに悩んだ知美は「天使である真平」を受け止める「愛」に到達するのだが・・・それはどうかなとお茶の間の心の汚れた人々の首をかしげさせるのだった。

一方、天使から一番遠い男、広行(浅野和之)を尾行した典子(飯島直子)は夫が浮気相手との愛の巣を確保するために西口不動産に通っていると勘繰るが・・・広行が捜しているのは妻と子供と暮らす一戸建てだった。

典子は・・・「疑って悪かった・・・」と反省するのだが・・・。

どう見ても広行の目当ては・・・西口不動産の職員(中西美帆)と過ごす一時だと思われ・・・。

「50代のセックス特集記事」のある週刊誌を自宅に持ち帰ることのできない自意識過剰な小心者・・・和平はさらに自意識過剰な前市長の未亡人で現・市長の伊佐山良子(柴田理恵)から「恋愛対象ではない」と釘を刺されるのだった。

お茶の間の感情移入の激しい男性陣が全員失神したと思われる。

もちろん・・・48歳の吉野千明(小泉今日子)のひざ上ミニスカートも絶対許せない男性もいるかもしれない。

千明の前に金も家もない昔の恋人・高山涼太(加瀬亮)が現れたわけだが・・・そのエピソードはふってひくの連続である。再会した後・・・二人で焼き肉を食べた後・・・鎌倉にやってきた後・・・と順番に隠しておいて・・・「何があったのか」を千明に語らせるというくりかえしを行っている。そのあげくに・・・「ごめん、無理」と千明の元を去った涼太の「無理の理由」をこれ以上なくくどいくらいにあれこれ膨らませておいて・・・結局、明かさないという高度な技術である。お茶の間に「言わないのかよ・・・ふざけんな」と言わせない超絶技巧だな。

千明に一途な万理子(内田有紀)はスマホでチョチョチョチョチョを復活させながら・・・千明のアドバイスをメモし、執筆中の脚本「離婚の条件」を訂正するのだが・・・一方で賞金500万円の脚本コンテスト「JMT新人シナリオ大賞」に応募するという野望を宣言する。第四回を迎えるコンテストだが・・・その第一回の受賞者が・・・「絶望の国の恋人たち」を書いた高山涼太なのであった。

路頭に迷い千明の家に転がり込んだ涼太は一体どういうつもりなのか・・・まったく明かされないのだった。

まあ・・・千明が「昔の恋を思い出して着たマリンルック」を・・・「ものもちがいい」とか・・・哀愁の鎌倉生活を・・・「老けて隠居」とか・・・無神経なほどの毒を吐きまくっている以上・・・とてもいい感じにはならなさそうなわけだが・・・。

一方で・・・挨拶代わりにアイスクリームを落す・・・えりな(白本彩奈)のボーイフレンドの母親・・・原田薫子(長谷川京子)に「異性の友人が欲しい」と言われて応ずる真平。

「男の人と友達になったことがない」というのを言いかえると「男の人はみんな私に恋をしてしまう」ということだ。

もちろん・・・女の人には「たまったもんじゃないわ」と思われるタイプなのである。

まあ・・・キョンキョンも深キョンも可愛いが・・・ハセキョンも可愛いということなのだな。

そして、三井さん(久保田磨希)は柔らかい。

ついでにゆかりさん(広山詞葉)は訳知りだ。

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2014年4月24日 (木)

ハードボイルドが枯木で泣いている(有村架純)MOZU(池松壮亮)Season1〜百舌の叫ぶ夜〜(西島秀俊)

原作の「公安警察シリーズ」でコードネーム「MOZU」が登場する作品のドラマ化である。

「Season2〜幻の翼〜」が「WOWOWプライム」で放送されるという展開だが・・・基本的に「百舌の叫ぶ夜」と「幻の翼」は原作では独立した作品であり、そう言う意味では「Season2」は見なくても「Season1」だけで充分楽しめるはずだと考える。まあ、しばらく待つとお下がりが放送されるとは思いますがね。

「公安の刑事が愛妻を失って暴走する」という設定だけでキッドにはまったく興味がわかないことになるのだが、お茶の間にはそのぐらいがちょうどいいのかもしれない。

「百舌の叫ぶ夜」の発表は1986年・・・今から三十年近く前である。時代そのものが物凄く変転しているので気の抜けたサイダーのような要素がところどころに噴出するが・・・まあ・・・それなりに現代化している脚色の努力を評価するべきなのかもしれない。

基本的には殺し屋=テロリストを追う、公安エリート(秘密警察諜報員)の男女、そして普通の警察官の物語である。

だから・・・実質上の主人公はMOZUである新谷和彦だと思って視聴すると楽しみやすいかもしれない。

で、『MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜・第1回~2回』(TBSテレビ)原作・逢坂剛、脚本・仁志光佑、演出・羽住英一郎を見た。ミステリの世界でハードボイルドと言えば・・・それぞれの胸の内で様々な解釈が去来するわけである。そもそも、純文学的な手法の問題でもあり・・・アクション・アドベンチャーのようなドンパチ・・・殺戮劇を示すのだとも考えられる。キッドの辞書によれば・・・。

ハードボイルド【名詞】①固くなるまでゆでること。通例ゆでるのは卵だが人体であっても構わない。②ハードボイルドエッグ(固茹卵)のこと。転じて白身と黄身が分離して消化のよくない黒白はっきりついたミステリ全般。③神と悪魔など敵味方の存在する世界での中立者が繰り広げる葛藤と善悪を超越した破壊衝動。最終的にハチャメチャになることが多い。

まあ・・・とにかく今季は・・・「ロング・グッドバイ」のドラマ化という神をも恐れぬチャレンジも進行中であり・・・それに比べれば・・・この作品の冒涜性はかわいいものだと言える。

高級住宅地と繁華街が混在する不思議な日比谷の百貨店前で爆発事件が発生。

多数の死傷者のうち・・・爆心地には元警視庁公安部捜査員の倉木千尋(石田ゆり子)がいて即死している。

犯行声明もなくテロと断定できないまま・・・警視庁公安部と警視庁刑事部の合同捜査が始るがお互いの縄張り意識のために捜査は難航する。

千尋の夫で警視庁公安部特務第一課捜査官の倉木尚武(西島秀俊)は諜報部のエキスパートとは思えない激情家で捜査への参加を室井公安部部長(生瀬勝久)に具申するが当然却下される。

激怒した倉木は「妻の死の真相」を探るために手段を選ばぬ暴走捜査を開始するのだった。・・・一同爆笑である。

そもそも・・・倉木夫妻は幼い娘・雫(小泉彩)を不審死させており、公安で極秘任務についていた千尋は精神的に不安定な状態だった。

しかし・・・そんな崩壊寸前の家庭を倉木はものすごく大切に思っていたらしい。

そのために・・・捜査一課の大杉刑事(香川照之)や極秘任務遂行中の明星捜査官(真木よう子)は対応に窮するのだった。

異常に爆発力の大きい爆弾を所持していたのはサイバーテロを主体とする反政府組織・「パラサイトネット」の幹部・筧(田中要次)だった。そのために無差別大量殺戮を主眼とするテロ行為も疑われたが・・・倉木は・・・筧の殺害に周囲が巻き込まれた可能性を見出す。

その筧の爆殺の加害者として浮上したのが「殺し屋」の新谷和彦(池松壮亮)だった。

一方、明星捜査官は警視庁警務局の特別監察官・津城(小日向文世)の特命を受けて、新谷の身辺調査を行っていたのだった。

新谷の雇用者として暴力団員の赤井(田口浩正)が浮上し、赤井の背後には日本有数の警備会社「アテナセキュリティ」の役員・東(長谷川博己)の存在があった。「アテナセキュリティ」は裏で非合法活動を行っていたらしい。

公安の情報収集のプロである倉木がそのことを知らないのは噴飯ものだが・・・とにかく・・・妻を失ったショックで精神の均衡を失った倉木は相手構わず、手段を選ばす「本当のことを教えてくれ」と質問し続けるのである。・・・一同大爆笑なんだな。

一方・・・筧と接触した新谷は・・・その課程で「アテナセキュリティ」にとっての重大な機密情報の「ICチップ」を入手したらしい。そのアイテムの回収を無能な赤井に命じる東。

「なぜ・・・赤井なんかに・・・」と側近の中神(吉田鋼太郎)は疑問に感じる。

「無能だから・・・新谷も警戒しないかなと思って」

しかし、無能な赤井はアイテムを回収するどころか・・・新谷を崖から突き落としてしまうのだった。・・・一同失笑まじりの爆笑である。

その時・・・赤井の周辺には謎の同行者があった。

新谷は・・・「妹の呪い」を赤井に伝えており・・・つまり、新谷には一心同体の仲間がいることを暗示している。

生死不明の新谷だったが・・・怪物的テロリストとして九死に一生を得る。

しかし・・・病院で意識を取り戻した時に・・・記憶障害を発症し・・・自分の正体を忘却してしまうのだった。

そこに・・・フリーライターの中島葵美(有村架純)が現れ、善意によって市の広報ウェブサイトに「記憶を失った男」の情報を公開してしまう。

やがて・・・偽物の妹・瞳(藤原令子)を伴った赤井が現れ、新谷を拉致することに成功する。

しかし・・・無敵の新谷は・・・記憶がないまま・・・赤井たちを抹殺するのだった。

爆破事件の捜査員たちは周辺の監視カメラの映像が意図的に削除されていることに驚愕する。

事件の生存者の一人・みゆき(大川春菜)は「おばけを見た」と証言するが・・・少女の視線の先の映像はすべて抹消されていた。

倉木は・・・公安内部に・・・事件を隠蔽しようとする勢力の気配を感じるのだった。

潜伏中の新谷を発見した明星は逆襲され、拘束されてしまう。

明星を追って新谷に迫る倉木だったが・・・新谷は獣のように手強いのだった。

そして・・・新谷自身も失われた自身の記憶を捜索するのである。

巨悪の存在を匂わせる謎のキーワード「ダルマ」・・・まあ・・・そんなにすごい秘密ではないことは明らかだと思いますけれどおおおおおおおおっ。

とにかく・・・なんとなく・・・派手で思わせぶりな演出を楽しめる人は楽しむといいと思うよ。

もずが枯木で 泣いている

おいらは藁を たたいてる

みんな去年と 同じだよ

けれども足りねえ ものがある

兄さの薪わる 音がねえ

バッサリ薪わる 音がねえ

兄は鉄砲かついで寒い満州に出征したのである。

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外事警察

さらば愛しき女よ

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2014年4月23日 (水)

ながれながれの越後獅子に胸いっぱいの愛を(深田恭子)

人が人間であるためには二つの要素がある。

一つは家族である。

もう一つは社会である。

人は一人でも生きていけるが人間は一人では存在することが難しい。

コミュニティソーシャルワーカーにおけるコミュニティは地域社会である。

ここでは親兄弟・親戚の血縁と・・・地域住民という地縁が複雑に入り組んでいる。

大都市は基本的に人間が流動するものである。

ここでは血縁は薄れ、地縁が色濃くなる。

しかし・・・個人を優先する社会では・・・個人や家族が社会から孤立する傾向が生じる。

生活を維持するのが難しくなった個人を・・・支えるのは誰なのか。

あるいは支える必要はあるのか。

家族も社会も・・・立ちすくむことがある。

で、『ドラマ10・サイレント・プア・第3回』(NHK総合20140422PM10~)脚本・相良敦子、演出・伊勢田雅也を見た。1995年の阪神淡路大震災で六歳の弟の光(馬渕誉)と死に別れた里見涼(深田恭子)は「弟を助けられなかった」トラウマを抱えながら江墨区(架空)社会福祉協議会のコミュニティソーシャルワーカーとして日夜、社会から見捨てられかけた人々を救って救って救いまくるのだった。

今回、涼の援助対象は・・・ホームレスの木下和男(大地康雄)である。

かっての住居に不法侵入したために咎められた和男は駆けつけた涼の救いの手を拒むのだった。

住宅地にある公園で寝起きする和男に対して近隣住民は江墨区役所に苦情を申し立てる。

地域福祉課の山倉課長(北村有起哉)は援助を拒むホームレスを野放しにする涼に苦言を呈するのだった。

「住民の生活環境を悪化させるホームレスを・・・そのまま放置するわけにはいかない。しかし、路上で野たれ死にさせるのも問題だ・・・時間をかけずに保護するべきだ」

しかし・・・涼は和男の「社会の世話にはなりたくない」という和男の意志を尊重し、ホームレス相手に逢瀬を重ねるのだった。

新人の三輪まなか(桜庭ななみ)は図書館にもぐりこんだ和男に社会支援による仮住まいの用意を申し出る。

しかし「見下ろしてものを言うな・・・俺のことに構うな」と頑なな態度を崩さない和男。

社会の底辺にいる若者たちは自分より弱者であると見なした和男を襲って一時的な優越感に浸ろうとする。

若者たちの罵倒に激昂した和男。

涼の制止を振り切り、雪の降る美しい公園が修羅場と化そうとした瞬間、山倉課長が登場し、間に入って負傷してしまう。

そして・・・和男は吐血して昏倒。

胃癌に冒された和男には死期が迫っていた。

聞き込みによって・・・和男が新潟県出身の腕のいい左官だったことが判明する。

しかし、事故によって腕が不自由になり・・・職業を転々として、いつしかホームレスに転落したのである。

図書館で和男が閲覧していたのは・・・新潟県の写真集だった。

やがて・・・和男の暮らしていたアパートから手紙が発見される。

それは和男の妹・和歌子(結城しのぶ)からの手紙だった。

結城しのぶといえば・・・映画「蘇る金狼」(1979年)で朝倉(松田優作)が社長令嬢の絵理子(真行寺君枝)を狙っている頃、上司の小泉(成田三樹夫)の愛人が京子(風吹ジュン)で、ゴロツキの桜井(千葉真一)の愛人の雪子である・・・ああ、何もかもが懐かしい。

どういう回想なんだよ。

おっぱい万歳的な回想でございます。

・・・もう、いいか。

「お願いだから・・・妹には連絡しないでくれ」と病床の和男。

「会いましょうよ・・・私は弟にはもう会えません・・・でも、貴方は妹さんに会うことができるのです」

「妹には・・・安心しろ・・・俺はもうすぐ死ねるとだけ伝言してくれ・・・」

もちろん・・・ただちに和男の故郷にむかい、和歌子を発見する涼だった。

和歌子は結婚し、うどん屋「みやべ」を営んでいた。

涼が伝言を伝えると和歌子はすべてを察したのだった。

「いつも・・・二人きりの兄と妹でした。兄さんは・・・私に不様な姿を見せたくないのでしょう。幼い頃、二人で郷土芸能の獅子舞を踊ったことがあります。兄さんは緊張している私をすごく励ましてくれました。おかげで私はみんなに誉められて・・・そんな私を兄さんは嬉しそうに見ていたのです。兄さんが怪我をした時に私は必死に兄さんを捜しましたが・・・消息不明になってしまったのです。兄さんに伝えてください・・・私は兄さんのおかげで幸せに暮らしていますと・・・」

伝言を持ちかえった涼に・・・和男は初めて感謝の言葉を述べる。

「ありがとう・・・あんたは俺のことをわかってくれた・・・俺たち兄妹のことをわかってくれた」

和男は涼を信じ・・・残された人生を前向きに生きる決意をする。

密かに上京した妹はそんな兄の姿を遠くから見つめるのだった。

「和歌子さんは・・・月一万円の支援を申し出てくれました」

福祉事業は・・・些少なりとも家族の援助があることによって補助費用の支援が円滑になるのである。つまり・・・形式的に保証人が成立するからである。すべては書類上の問題なのだ。

「俺は昔・・・俺の考える幸福の形を押しつけて援助していたホームレスを路上死させてしまった・・・君は殺さなかったな」

・・・と山倉課長は涼と対峙する。

「一人一人幸せの形は違います」

「・・・」

「だからこそ・・・私たちは一人一人の幸せと向き合っていかなければならないのです」

「君は・・・天使なのか・・・」

町にはコミュニティソーシャルワーカー里見涼を讃え、なごり雪を溶かす日差しが降り注ぐのだった。

またしても涼は社会を蝕む貧困という怪物に打ち勝ったのである。

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2014年4月22日 (火)

腐れ外道(三浦翔平)と能無し(尾野真千子)のバラード(オダギリジョー)

おおおおお・・・これが生き残ったのかよ。

この演出家で眠くならなかったことに敬意を表しました。

オダギリジョーって書きたかっただけだろう・・・。

「モテキ」で大根仁監督をレビューして、「熱海の捜査官」でオダギリジョー主演をレビューしていた時・・・パソコンぶっ壊れたトラウマが・・・オダギリジョー主演・大根仁監督の「大川端」を敬遠させたのです。

そんな理由かよっ。

まあ・・・もう、春ドラマは水準高すぎなんで・・・少し、ヨタヨタしているのも一本くらいいいかなあと。

月曜レビュー候補に残ったのは「ファーストクラス」・・・沢尻エリカの毎回の順位が気になる。そして・・・この主演女優になれなかった女優たちの吹き溜まり的なナチュラルテイストの殺伐感が凄い。「GARO」・・・第三話ゲストが佐伯日菜子。「セーラーゾンビ」・・・主題歌でまゆゆがゾンビメイク・・・そこかよっ。「ロング・グットバイ」・・・福島リラの別人メイクが凄い・・・そこなのかっ。どれもみなそこそこ面白いんだな。

つまり・・・もう一つ面白くないのでこれかっ。

いや・・・これもそこそこ面白い。

今季の特徴として・・・「警察ミステリ」の多さがあるが・・・一方で大人の主演女優ものが揃ってるとも言える。

「あまちゃん」効果で・・・朝ドラマ的なものに活路があるとみんな思ったんだな。

で・・・「ごちそうさん」の杏による「花咲舞」がとりあえず成功している。もちろん、本家の「花子とアン」の吉高由里子を筆頭に・・・「アリスの棘」の上野樹理、「ファースト・クラス」の沢尻エリカ、「続」の小泉今日子、「BORDER」の波瑠、「ロング・グッドバイ」の小雪などヒロインまで含めるとかなりのものがそこにシフトしているんだな。

だから「カーネーション」のオノマチを主人公としたコレを残してみたのか。

週末は帝国スター三連打だが・・・(金)(土)は桐谷美玲と有村架純というエース的な二大萌えヒロインを起用してるしな。

まあ・・・悩んだんだよな。

相当、悩みましたともっ。

で、『極悪がんぼ・第2回』(フジテレビ20140421PM9~)原作・田島隆・東風孝広、脚本・いずみ吉紘、演出・林徹を見た。ベテランの演出が続くわけだが・・・「極悪がんぼはドラマです。法律に触れることがたくさん出てきましたが、本当にやったら捕まります。もちろん、被害にも合わないようにお気を付けください」と告知しなければならないドラマだけに相当におっかなびっくりで・・・どこが犯罪なのかの線引きが「ウシジマくん」ほど明確でないのが気になるけどな・・・っていうか「ウシジマくん」は全部だからな。

今回はヒロインは「取り込み詐欺中の商品を横取りして転売している」のだが・・・その犯罪性を・・・被害者に少し還元したことで「人助け」もした・・・みたいなことになっているわけだが。

そんなことにこだわりすぎると・・・盗人猛々しいドラマになってしまうと言っておきたい。

さて、犯罪者が主役である以上、綺麗事ではすまされないのだが・・・月9という枠なのでラブの要素は残る。原作的には男と女の関係ではない二人が・・・「ろくでもない男」と「だめな女」として脚色されたわけである。こうなるとそれは「腐れ縁」でしかないわけであるが・・・ヒロインが「悪女」になれない以上、「小悪党の男」がそれなりに悪知恵を働かせないと話が進まないんだな。二人の肉体関係は曖昧に描かれるが・・・それはお茶の間の想像にまかせるしかないのである。キッドはズブズブだと考える。

女だてらに「小清水経営コンサルタント」の傘下に入った神崎薫(尾野真千子)である。

盃の代わりに契約書を交わすのがこの「組」のシステムである。

組長・・・ではなくて所長の小清水(小林薫)は何故か薫に見どころがあるとして・・・盃・・・ではなくて契約書を交わす気になったらしい。

契約とは小清水組・・・ではなくて小清水経営コンサルタントの看板使用料である。

年間2000万円なのである。

この上納金・・・ではなくて看板使用料によって・・・組員・・・ではなくて薫は闇社会である程度の無理がきくことになるのだ。

「金」というものは結局「信用」である。「円」も「日本国」が滅亡し、その「信用」がなくなればただの単位に過ぎなくなる。

また・・・「金」のやりとりが合法か非合法かも結局、国家が「信用」を保証しているという背景による。国際関係も信用で成り立つが・・・中国には中国の法があり、誰かが「泥棒」をはじめても中国がそれを認めなければ被害者は泣き寝入りするしかないのである。恐ろしいことだ。

闇社会での経済では「盗品」も立派な商品として流通する。しかし、盗品である以上、横領されても警察に泣きつくことはできない。

そこで看板がものを言うのである。

組の「取引」に不正があれば・・・非合法な形の制裁がありますよ・・・ということで「信用」が成立するのだった。

もちろん・・・国家の法とは無関係な話なので・・・組員・・・いや構成員・・・いや看板契約者同志の軋轢は自己責任なのである。

組員・・・もう組員でいいか。

組員の金子(三浦友和)に200万円の借金がある薫は・・・その手下として日当五万円の悪事に手を染める。

金子の今回の事件屋稼業・・・っていうかシノギは沌面予備校の経営者トンヅラ(田窪一世)の夜逃げ指南である。

予備校の経営に失敗したトンヅラは支払い不可能な物品発注により、納品された品物を転売し取り込み詐欺の果ての計画倒産を実行中だった。

金子は倉庫に品物を一時保管させ・・・その搬送を薫に手伝わせたのである。

「代金未払いの品物を転売するって・・・悪いことなんじゃ・・・」と言いかけた薫に金子がクンロク(恫喝的な説教)をかますのだった。

「カード詐欺師が何寝ぼけたことぬかしおるんじゃ」

「・・・」

「ここはもうええから・・・予備校で債権者の様子を偵察してこんかい」

「・・・はい」

「金の作り方」を勉強しに来ている以上・・・金子先生の指導にはある程度、従うしかない薫だった。

そこでは・・・家電をとりこまれた債権者たちが閉ざされた学習塾のドアをぶち破って侵入。ビルの持ち主に通報されて警察の取り調べを受けていた。

実行犯の印刷会社の社長・橋呉(笹野高史)は情状酌量を訴える。

「借金の取り立てに来てるんですわ・・・勘忍して下さい」

「このビルのオーナーとあんたが金貸してる人は無関係なんだから・・・ドアを壊していい理由にはならんのじゃ」ととても警察官には見えない伊集院刑事(オダギリジョー)が社長のハシクレを諭す。

社長のハシクレは予備校の宣伝用チラシを印刷したのだが・・・当然、代金未払いなのである。

チラシはとりこめないが・・・そういうチラシを発注することでトンヅラが経営安定を装うのに利用されたのだろう。

「あの金がないと・・・連鎖倒産するかもしれないんです」

「とにかく・・・今回は現行犯逮捕は勘弁したるけど・・・ドアの修理費用は払わないとあかんで」

「はい・・・」

一仕事終えた伊集院は薫に気がつく。

「小清水組の新人さんか・・・いいカモおるけん、食ったれ」

警官とは思えないアドバイスをするワイルドなセクシー刑事だった。

薫はとりあえず・・・ハシクレ社長とお近づきになるのだった。

「ワシは詐偽にあったんじゃ・・・必要なのは経営コンサルじゃのうて・・・弁護士かのう・・・」とぼやくハシクレの言葉が薫の胸に刻まれる。

薫は・・・借金のカタに親がお好み焼き屋を取られた女である。

ハシクレの身の上は他人事には思えないのだ。

組事務所に幹部の冬月(椎名桔平)に呼び出された薫。

冬月は組長から薫のケツモチ(搾取責任者)を命じられていた。

冬月はできればその責任から逃れたかったが・・・他の組員の夏目(竹内力)や抜道(板尾創路)は責任分担を回避することに成功したのだった。

(相手は女や・・・いざとなったらそれなりに金になる・・・お前に経営まかしたホテルかてそれなりにまわしてるお前や・・・あの女も安生まわしたれ)

組長の命令は絶対なのである。

ちなみに・・・冬月が関与している怪しいホテルの従業員・藍染を演ずるのは和希沙也である。ドラマ「ライオン先生」(2003年)の生徒の一人で、同級生に平岡祐太、ウエンツ瑛士、平愛梨、相武紗季などがいる。みんな大人になったな。

それはともかく、冬月は看板料という上納金を立て替えたことを薫に告げる。

「右も左もわからないあんたに2000万円貸したんだ・・・ええな」

「はい・・・」

またも借用書に無防備にサインする薫。

「ええか・・・利子は月一(月利10%・・・月に利息が200万円になる)や。利子だけは月々きっちりおさめないとあかんで」

「そんな・・・無理です」

「無理が通ったらワシらの商売あがったりや」

流されるままに借金が2200万円になっている上に無法な利息を請求されていることにも気がつかない・・・それが「能無し」・・・薫なのであった。

「どうしたらええんですか・・・教えてつかあさい」

「ボケが授業料も払わんと誰が教えるか」

「・・・」

「だが一度だけサービスしたるわ・・・ええか・・・金は目の前にあるやないか」

それが・・・金子が金にしようとしているブツであることは女の勘でわかる薫だった。

そして・・・そもそも・・・薫の境遇を招いた男・・・「腐れ外道」の茸本(タケモト=三浦翔平)と再会する薫。

ここで大人げないとは知りながら・・・本質的に茸・・・キノコを一発殴っておでんの屋台でやさぐれる薫の描写に一言。

借金2200万円背負って定職もない女が一杯飲む金はどこにあるんだよ。

金子がバイト料くれたんじゃねえの。

それにしたってだよ・・・。

まあ・・・ここは・・・そういううらぶれた感じしかスタッフが思いつかなかったってことでいいんじゃね。

甘いのお・・・。

しかし・・・翌朝・・・キノコが不法侵入して朝ごはんを作るとなんとなく・・・ヨリを戻す薫だった。

甘いぞ・・・月9的な甘さだ・・・月9だよ。

まあ・・・いいか。

カーテンだけで出入り自由なところで免許証偽造する真矢樫キリコ(仲里依紗)とかもな。

まあまあ・・・いいじゃないか。

薫の相談にのり・・・たちまち、悪知恵を働かせるキノコ(陰茎の象徴)だった。

つまり・・・薫は陰部が匂うのだな。・・・その説明必要か。

まあ・・・原作世界的にはネーミングのそういうところが重要だからな。

「極悪がんぼ」を月9で・・・この異物挿入感が笑いのポイントだと考える。

「横取りしても・・・警察には訴えられない品物か・・・」

「でも・・・盗んだら・・・私が疑われるし・・・」

「だったら・・・債権者の誰かを犯人にすればいいんじゃね」

「そんな・・・」

「だって・・・・債権者なら・・・自分のものを取りかえしただけだし・・・」

「そうか・・・」

キノコのヒントでハシクレ社長の「弁護士」という言葉を思い出す薫。

冬月に悪徳弁護士・豊臣嫌太郎(宮藤官九郎)を紹介してもらうのだった。

「後腐れのない方法ありますか」

「そうだね・・・債権者が差し押さえをするなら・・・裁判所の執行命令だね」

「できますか」

「100万円だね」

借金が2300万円になる薫だった。

しかし・・・キノコと薫は盗品の奪取に成功する。

ただ全部ではなく・・・ハシクレ社長の取り分を残しておくのだった。

闇の市場では売り手は誰でも良いのである。

たとえば・・・金子の取引相手であるサソリ金融のサソリ701号(梶芽衣子)でも・・・金子より安い売値を持ちかければ取引に応じるわけである。

まさに仁義なき商売なのであった。

最後にハシクレが執行官とともに現れ・・・債権者として差し押さえるのである。

「そんな・・・」と涙目になるトンズラ・・・。

「裁判所が出たらゲームオーバーじゃけん」と試合終了を告げる金子だった。

豊臣弁護士に100万円・・・冬月に今月分の利息200万円を払って手元に四百万円が残った薫。

しかし・・・腐れ外道のキノコは金目の時計をくすねて・・・金子に見咎められるのだった。

軽く拷問されて白状するキノコ。

薫は金子に呼び出される。

「とりあえず・・・金出せや」

大人しく全額を渡す薫に・・・金子は借用書と200万円を戻す。

「これで・・・あんたと貸し借りはなしじゃけん・・・」

一見・・・薫に優しい金子に見えるが・・・薫が女である以上・・・いざとなったら身体を金にできるという前提の話なのである。

これで・・・薫は借金二千万円、手持ち資金二百万円の「組員」になったのである。

ハシクレ社長を助けてちょっといい気分になった薫だったが・・・他の債権者は債権を3%で買われ泣き寝入り。薫の得た二百万円はその涙の結晶なのである。

まあ・・・バカな「能無し女」にそんな理屈は通らないという考え方もございます。

薫の危ない橋を渡る人生はこうしてスタートしたのだった・・・。

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2014年4月21日 (月)

兵法三十六計の十一・・・李代桃僵と軍師官兵衛(岡田准一)

「李代桃僵」とは「戦いに犠牲はつきものだ」という話である。

前提として・・・李(すもも)より桃の方が価値があると言う話である。

人間の命が平等などという戯言のまかり通る時代には難しいがたとえば漢の武将は敵に追われて逃走中に馬車を軽くするために我が子を投棄した。

「子供はまた作ればいいが俺が死んでは作れない」のだ。

十一計は「敵戦の計」という敵味方の戦力が拮抗している状態の教えに属する。

この場合、犠牲を覚悟する必要があると説くのだ。

たとえば敵が十の戦力を持っていたとする。

一方、こちらには九の戦力しかない。

総合力ではほぼ互角だが・・・こちらの一に対して敵が五の戦力を投入してくれば残りは五。

それに対してこちらには八の戦力が残る。

八対五で勝利し、勝利すれば全戦力が残るという条件なら・・・一勝一敗ながら・・・こちらは損失一、敵は五である。戦力比は敵残り五、味方残り八で逆転していることになる。

つまり・・・桃(価値あるもの)のために李(価値のないもの)が倒れることが勝利の方程式の一つなのである。

ただし犠牲に意味があるのはあくまで勝利あってこそである。

一機で敵艦一隻を沈める予定だった帝国の特攻作戦が単なる無謀であったことは言うまでもない。

もちろん・・・散る覚悟の桜を散らして国体を護持できたのだから・・・作戦勝ちだという考え方もあるわけだが。

で、『軍師官兵衛・第16回』(NHK総合20140420PM8~)脚本・前川洋一、演出・田中健二を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は十五行・・・だらだらと続く本編を超特急ダイジェストで駆け抜けるのですな。今回のイラスト描き下ろし大公開はNHK大型時代劇「真田太平記」の甲賀忍者・山中内匠長俊(戸浦六宏)は真田の草の者と相討ちとなって果てますが・・・妄想世界では・・・宇喜多直家の律儀な弟・宇喜多忠家に魔界転生しておりますぞ。双子の兄弟六郎兵衛春家がいた説もあるいかにも忍びの七郎兵衛忠家・・・。兄が兄だけに・・・挙動不審で今回は少し面白かったのでございます。まあ・・・荒木とか宇喜多とか・・・サブ・キャラクターだけが存在感があるのは困りものでございますよねえ。とにかく・・・天寿を全うした忠家の後に嫡男は幾多の危機を乗り越えて津和野藩主にとゴールするわけですが・・・結局・・・宇喜多の狂気・・・あるいは忍びの血がやらかすわけですな。宇喜多家はみんな愉快な方々でございまする。

Kan016 天正六年(1578年)三月、三木城主・別所長治は毛利・本願寺・波多野・上杉同盟への参加を決め、織田信長に叛旗を翻す。しかし、同盟の中核となる上杉謙信は直後に「極楽も地獄も先は有明の月の心に懸かる雲なし」の辞世を残し急死する。信長軍は北の脅威から逃れたのだった。別所長治の籠城に呼応して東播磨の土豪の多くは毛利同盟に参加し、周辺の小城は別所氏に従属する。毛利本家の輝元は備中に本陣を置き、山陽道から小早川隆景が山陰道からは吉川元春・元長父子が播磨・美作国境に集結する。しかし、備前・美作の国主・宇喜多直家は病気を理由に参陣せず、名代として弟・忠家を出陣させる。宇喜多忠家は突出し、尼子勝久の籠る上月城の東に二万の軍勢を展開する。上月城の北には吉川父子の二万、西には小早川隆景の二万が陣を張り、千名に満たない上月城は六万人の軍勢に包囲される。これに対し、羽柴秀吉は上月城の南の高倉山城に黒田勢など一万を配置する。織田信長はただちに各方面軍に兵力の抽出派遣を命じ、総帥・織田信忠を主将とする。本願寺包囲中の荒木村重、波多野氏と交戦中の明智光秀を始め、遊軍となっている丹羽勢、滝川勢などが続々と播磨に侵攻し・・・書写山城・姫路城・国府台山城の防衛ラインにおよそ七万人の軍勢が集結する。信長勢力範囲と西播磨の間には東播磨があるわけだが・・・別所家はひたすら防戦に徹し、まんまと信長軍の集結を許したわけである。しかし・・・尼子勝久にとって不幸なことに援軍には・・・直属の後援者である柴田勝家の軍勢だけが欠けていたのだった。

播磨・美作の国境線の山々に十万を越える軍勢が密集している。谷間にある上月城は敵味方に囲まれて波間に浮かぶ木の葉のように漂っていた。

上月城と西播磨を遮断している宇喜多軍の主将・忠家の陣に影武者である春家が現れる。

「兄者か・・・」

「七兵衛・・・結界を破って織田の伝者が上月に向かっているぞ・・・いかが致す」

「捨ておきましょう・・・どうせ・・・尼子の脱出を促す使いでしょう」

「尼子が城を捨てるかな・・・」

「それはどうじゃろう・・・尼子も放浪の暮らしには厭いておるにちがいない」

「いずれにせよ・・・上月城は落ちるだろうにの」

「手にしたものを捨てるのはなかなかに・・・辛いものじゃよって」

「憐れじゃな」

宇喜多兄弟の憐れみも知らず・・・尼子勝久は・・・使者の説得に首を横に振っていた。

使者は尼子家臣であり秀吉の陣中にある亀井茲矩、官兵衛の命を受けた黒田忍びの栗山善助、そして目付けの石田三成だった。

「しかし・・・殿・・・毛利の大軍を引き出したので・・・お役目は充分に果たしたのでござる」

「ふ・・・我らは囮か・・・」

「・・・」

「この城を逃れてどうする」

栗山善助が答える。

「羽柴軍も東に退き陣いたす・・・」

「なんと・・・敵に背を向けると申すか」

「それを追って毛利軍が野に出れば・・・長篠の二の舞を披露することになりまする」

「鉄砲か・・・」

「すでに・・・準備は整っておりまする」

「しかし・・・それでは尼子にはなんの手柄もござらぬ・・・」

「いえ・・・毛利を誘いだしたは・・・大手柄でございます」

しかし・・・古い戦しか知らぬ勝久にはそれが武士の誉れとは思えなかった。

そして・・・勝久は夢にまで見た一城の主となったことに固執していたのだった。

「この城にて一戦交えてこそ・・・織田殿の恩義に報いることになろう」

「ご随意に・・・」と石田三成は言った。

秀吉命の三成にすれば・・・柴田勝家傘下の尼子家などどうなろうとも知ったことではないのである。

「たとえ・・・籠城なさっても・・・織田軍は・・・救援しませぬぞ・・・この山の中では・・・鉄砲衆に地の利がございませぬ・・・」

「覚悟の上でござる」

「勝久様・・・」と柴田勝家から派遣された山中忍びの棟梁・山中大和守が口を挟む。「尼子家の再興のためにも・・・ここは自重なされよ・・・」

「いや・・・この城からは動かぬ・・・武士の意地じゃ」

控えていた山中鹿助が主君を擁護した。

「とにもかくにも一戦交えてからのこと・・・方々・・・そのこと・・・羽柴様にお伝えくだされ」

説得に失敗した亀井は肩を落す。亀井に慰めの言葉をかける栗山を・・・石田は冷たい目で見つめていた。

「さて・・・行きはよいよいだったが・・・帰りはどうやろうか」

栗山は思わず石田を咎めるような目付になる。

石田はそれを平然と見返した。

六月、秀吉は安土に戻っていた。

「そうか・・・尼子は城に籠るか・・・」

「は・・・このままでは・・・尼子一党は殲滅されるかもしれませぬ」

「猿・・・情けをかけるか」

「それは・・・」

「尼子も毛利も・・・古きものどもじゃ・・・古きものどもは滅びるが定めであろうかのん」

「はっ・・・」

「毛利もようやく軍勢を押しだしてきたが・・・所詮は・・・農民を兵として狩りだした古き軍勢だがや」

「左様に存じまする」

「田植えまでに決着がつかねば往生するに違いなかろうず・・・まして秋にはのう・・・」

「御意」

「相手が根をあげるまで何年でも囲んでやるがよし」

「仰せの通り」

「じれて出て参ればよき獲物じゃ」

「ごもっとも」

「猿・・・尼子勝久には好きにさせてやるがよかろうず」

「は・・・」

「城を枕に討ち死にも・・・面白きことである」

「ははーっ」

尼子を見捨てても良いと信長に承認された秀吉は足取りも軽く播磨へと帰陣した。

兵農分離の進んだ織田軍は全員が職業軍人だった。

半農半兵の毛利軍とは・・・同じ数でも戦力において雲泥の差が生じていたのだった。

農兵たちは年中田を開けるわけには行かなかった。

播磨国には雷鳴がとどろいている。

高倉山城で無事に戻った善助から報告を聞いた官兵衛は瞑目した。

「身の程を知らぬとは・・・辛いものぞなあ・・・」

「まもなく・・・梅雨でございますな・・・」

「尼子は・・・稲刈りまでの命か」

国境に夜の雨が降り出していた。

関連するキッドのブログ→第15話のレビュー

天地人の頃

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2014年4月20日 (日)

彼女を甲子園に連れていく気か・・・異常だ(二宮和也)連れてってよ(有村架純)

週末・・・結局、帝国スター連続君臨しているじゃないか・・・。

時代だ・・・。

(日)「軍師官兵衛」(NHK)

(月)・・・・。

(火)「サイレント・プア」(NHK)

(水)・・・谷間・・・。

(木)「続・最後から二番目の恋」(フジテレビ)

(金)「死神くん」(テレビ朝日)

(土)「弱くても勝てます」(日本テレビ)

こうなると・・・(月)を賭けて・・・テレビ東京とTBSテレビが激突か?

いや・・・「沢尻エリカ」が来る可能性も・・・。

「極悪がんぼ」・・・風前の灯だな・・・。

で、『弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜・第2回』(日本テレビ20140419PM9~)原作・高橋秀実、脚本・倉持裕、演出・菅原伸太郎を見た。秀才の集う小田原城徳高校の野球部監督・田茂青志(二宮和也)の朝は生物学的に開始される。人間は社会的な生物なので朝、人混みの中を散歩することで覚醒する理論である・・・どんな理論なんだよ。満員電車のない大都会なんて味気ないだろう・・・。

しかし・・・ここは湘南である。爽やかな朝に・・・早朝自主トレーニングに励む白尾(中島裕翔)と遭遇する青志だった。

しかし・・・白尾はなぜか赤面するのだった。

白尾の練習場所には恥ずかしい秘密があったのだ。

一方、増本元監督(荒川良々)は部長先生に昇格したらしい。

「弱くても勝てます」理論で野球部指導にあたる青志だったが・・・早くも壁にぶつかっていた。

想像以上に・・・へっぽこな野球部である。ポジション争いどころか・・・それぞれのポジションさえ定かではないのだった。

「どうしてだ・・・」

「白尾が・・・その時のコンディションを考えて臨機応変にポジションを決めてくれるからです」

「それじゃ・・・だめだ」

「といいますと」

「俺はライトだ・・・っていうのと・・・俺がライトだって言うのでは覚悟が違うだろう」

「単なる言い回しじゃないですか」と赤岩公康(福士蒼汰)・・・。

「違うよ・・・積極性っていうか・・・自主性っていうか・・・なんか違うじゃないか」

秀才揃いの野球部では理論は通じるがニュアンスは伝わりにくいのだった。

「でも・・・うちがそんな普通なやり方をしても勝てないでしょう・・・」と白尾。

「その時々で・・・お前がベストの選択したって・・・焼け石に水なんだよ」

「でも・・・甲子園に行くには・・・今年が最後のチャンスなんです」と白尾は言い放つ。

「甲子園って・・・」・・・気が遠くなる青志だった。

野球部を取材にやってくるスポーツ専門誌「トロフィー」の高校野球担当記者・利根璃子(麻生久美子)は青志に「妄想ネタ」を開陳する。

「白尾くんは・・・本来、野球の名門堂東学院のスカウトを蹴って城徳に来てるんですよ・・・最後のチャンスなので転校して甲子園を目指すのはどうですか・・・裏切った白尾くんに闘志を燃やした城徳ナインはメラメラと闘志の炎を燃やすのです」

「どんな漫画なんですかっ・・・」

しかし・・・白尾が本当にスカウトされたのかどうか・・・堂東学院で確認する青志。

「本当だよ・・・彼は城徳で甲子園に行くって言ってた」と堂東野球部の監督・峰(川原和久)は笑うのだった。

「ははは・・・笑うなんて失礼じゃないですか」

「君も笑ってただろう」

そこへ・・・青志に野球を捨てさせた男・・・谷内田健太郎(市川海老蔵)が登場する。

メジャーリーガーとなった谷内田は肩を故障して引退・・・母校の臨時コーチに就任したのだった。

「まだ・・・君はグラウンドを去っていなかったのですか」

「僕は・・・野球をしていたつもりでした」

「じゃあ・・・勝負しましょう・・・僕の球をキャッチできたら・・・君の勝ちだ」

谷内田の剛速球を思わずよける青志。

肩を壊している谷内田は激痛をこらえる。

「こんなのおかしいよ・・・あんた異常だよ」と言いながらへっぽこ度100パーセントで退散する青志だった。

野球部のたまり場である喫茶店「サザンウインド」の店主・樽見楓(薬師丸ひろ子)とマネージャーの樽見柚子(有村架純)、そして唯一のピッチャー候補・赤岩とその父親の色情狂・晴敏(光石研)とともに謎解きである。

「なんで・・・白尾は城徳に来たんでしょう・・・っていうか・・・どうして・・・白尾の早朝トレーニングがこの店の窓から見えるんですか」

「さあ・・・どうしてかしらねえ」ととぼける楓。

「そういえば・・・白尾くんは・・・中学時代から・・・この辺りまで片道20キロのランニングをしていたわ」と柚子。

「毎日、フルマラソンかよっ」とツッコミながら・・・青志は事の真相に気がつくのだった。

「やっぱり・・・白尾は凄いな」と赤岩。

「凄いよね」と袖子。

青志は同時に・・・赤岩と袖子の関係にも気がつく。

「二人は・・・付き合ってんの」

「そんなストレートに言わないでください」と赤面する赤岩・・・。

「付き合ってます」とストレートな袖子だった。

レギュラーをどうするかで・・・対立する青志監督とスラッガー白尾だったが・・・部内では新たな問題が表面化する・・・キャプテンの江波戸(山﨑賢人)と超短距離走に自信がある岡留(間宮祥太朗)は中学校時代・・・いじめられっ子といじめっ子の関係だったのだ。

江波戸は岡留へのトラウマから・・・委縮しているのだった。

とりあえず・・・岡留が江波戸に接近するのは禁止された。

「僕はもう・・・いじめてないのに・・・」

「いじめられた方の心のケアが問題なんだよ」

・・・ということで江波戸のカウンセリングをする青志。

「僕もいけなかったんです」

「いじめられた方が反省する必要はないよ」

「でも・・・僕がいじめられるような性格だったから・・・」

「お前・・・面倒くさいな」

「え」

「わかった・・・お前は今日から反省するな」

「ええ・・・」

「そして・・・キャッチャーをやれ・・・キャッチャーならいつもボールが飛んでくるから反省している暇がなくなるはずだ・・・」

「・・・」

青志は・・・現在の校長でかっての野球部監督の三条(笹野高史)の言葉を思い出す。

「どうですか・・・野球部は・・・」

「なんだか・・・昔の自分を見ているようです」

「あなたのできなかったことを・・・彼らにさせることが・・・今のあなたにはできるはずです」

「・・・」

青志が挑んでいるのは意識改革なのである。

しかし・・・昔の青志よりも才能を持つ白尾にはその意味が理解しにくいのだった。

青志のやり方に反発し・・・野球部から離脱しかかる白尾。

青志は・・・説得に向かう。

「僕も行きます」と赤岩。

「いや・・・お前は・・・まあ、いいか」

「私も・・・」と柚子。

「お前は絶対ダメだ」

「えー、なんでー」

白尾と対峙する・・・青志と赤岩。

「どうして・・・野球部の練習に参加しない」

「先生のやり方では甲子園に行けません」

「お前・・・柚子が好きなんだな」

「好きです」と白尾。

「えー」と赤岩。

白尾は・・・胸に秘めた熱き思いを語るのだった。

「中学生の時に・・・堂東と城徳の親善試合を見学しに行って応援に来ていた柚子を初めて見た時から好きだった。笑顔が好きだった。柚子を甲子園に連れていったらどんな風に笑ってくれるだろうか。それだけを叶えたくてここに来た」

「でも・・・」

「柚子が赤岩を好きなのは分かってる・・・しかし、それとこれとは別だ・・・俺は柚子の最高の笑顔を見たいんだ」

動機が不純なのかどうかもわからない白尾の情熱の噴出だった。

そして・・・野球部の指導方針を巡り・・・対決する青志と白尾。

「三球勝負だ・・・お前がホームランを打てたら・・・俺は監督をやめる」

「そんな・・・」と蒼ざめるその他の部員たち。

守備についた選手は重大な局面に逃げ腰である。

「できれば・・・ボールよ飛んでくるな」と言う姿勢に立会人の利根璃子は呆れる。

しかし・・・青志は・・・。

「それでいい・・・ボールが来るなと強く思うのは積極的な意志の表れだ・・・声に出していけ」

たちまち沸き起こる「ボール来るな」の大合唱。

しかし・・・その気迫に何か感じる白尾。

赤岩の投じた一球目はホームラン性のファール。

二球目はセンターを守るいじめっ子岡留の前に・・・しかしエラーである。

その時、いじめられっ子の江波戸は思わず叫ぶ。

「Don't mind」

選手たちもドンマイと声をかける。

岡留も笑顔でドンマイと答える。

いじめ問題は解消されたのだった。

しかし・・・三球目は特大ホームランだった。

勝負は終り・・・グラウンドを去ろうとする青志を柚子が呼びとめる。

「行かないで・・・」

「行かないで・・・」と唱和する選手たち。

「どうやら・・・辞めるのは俺みたいだな」と白尾。

しかし・・・元・いじめられっ子の江波戸は言う。

「白尾・・・辞めるな」

「なんで・・・だよ」

すると元・いじめっ子の岡留が言う。

「だって・・・江波戸はキャプテンだもの」

「うん・・・これはキャプテン命令だ」

「わかった・・・キャプテン」

小田原城徳高校のグラウンドに潮風が吹き抜ける。

城徳高校野球部・レギュラー・ポジション

   レフト牛丸    センター岡留   ライト伊勢田

サード白尾  ショート光安  セカンド樫山  ファースト亀沢

             ピッチャー赤岩

            キャッチャー江波戸

       ストーカー志方 マネージャー柚子

サラバ、昨日をぬぎすてて・・・。

勇気の声をふりしぼれ・・・。

「じぶん」という名の愛を知るために・・・。

それが青春というものだから。

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2014年4月19日 (土)

運命に理由はありません(大野智)死神くん、ちょっと(桐谷美玲)

激しいバトルを勝ち抜いて・・・金曜日のレビューは「死神くん」である。

東日本大震災の後で日本人は老若男女を問わず「不慮の死」を身近に感じているだろう。

その「恐ろしさ」から逃れるために「死を感じさせない明るいドラマ」をお茶の間は望んでいるはずだが・・・スタッフたちはつい「死」について考えてしまうのだなあ。

だから・・・今季のドラマには「死」が充満している。

そして、視聴率がいいのは・・・「花咲舞」のような「死」とは無縁のドラマなのである。

そういう意味で・・・もっともストレートな題材をチョイスしてしまったこのドラマ。

しかし・・・基本的には「死ぬことは・・・トモダチに会うようなもの」的なニュアンスである。

「死」を押しつけるだけではないところが微笑ましいのである。

原作は1983年から発表されているので死神手帳はコミック「DEATH NOTE」(2003年)の先駆的アイテムと言うことができる。

死の予告とそれによって生じる人間の選択肢の変化の矛盾についてはドラマ「ロス:タイム:ライフ」(2003年)がその改善版と言える。

また・・・死者と生者の中間の場所についてはコミック「スカイハイ」(2001年)がより深化させていると考えられる。

また「生前の罪と昇天」についてはアニメ「地獄少女」(2005年)が展開しているわけである。

つまり・・・21世紀の「死神もの」の原点の一つが「死神くん」なのである。

なんで今頃という考え方もあるがここは「ナイス・チョイス」と言うべきだろう。

で、『金曜ナイトドラマ・・第1回』(テレビ朝日201404182315~)原作・えんどコイチ、脚本・橋本裕志、演出・中田秀夫を見た。脚本家はドラマ、アニメを両方こなす人だが実写版の時はあまりにも力が入りすぎるのか・・・微妙な時がある。今回は現実/非現実のバランス感覚が問われるので・・・いい感じで入った気がする。そもそも・・・一般的には「死神」は幻象的な存在である。現象しか信じない一般の人々にそれほどこだわらない方が面白くなるはずである。

基本的に・・・「死を予告するもの」は存在するわけだが・・・それが生死の境界線に属するために実証するのは難しい。なにしろ・・・証人はみんな死んでいるのである。しかし「あの世」や「天国と地獄」の想像の原点となっているのは「死を予告するもの」の存在である。「死神を見た」と言った人が「死ぬ」と・・・もしかしたら・・・「死後の世界があるのかもしれない」と人は想像を始めるわけである。

この世に定着している悪魔と違い、死神は当然・・・神の使者・・・つまり天使の色彩が強いわけだが・・・なぜか・・・死神には悪魔のイメージに近いものが流布している。もちろん・・・悪魔がそれに一役買っていることは間違いないのである。

「死の天使」なんて・・・かっこいいにもほどがあると悪魔が考えるからだ。

しかし・・・擬人化された死神には主任(松重豊)のようにイメージにぴったりの存在もあるので悪魔のキャンペーン効果の結果と断言することは憚られる。

さて・・・第一話のゲスト・・・死を予告されるものは・・・映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」のヒロインを演じた大原櫻子の演じる大西福子である。

大西福子はブスという設定なので・・・頑張ってブスに化粧しているわけである。

どうやっても美人という存在もあるので化粧である程度ブスになれるということはブスとしての才能もあるということなのだろう。

この人がブスだったら私もブスってこと・・・と気がついてはいけないことに気がついたら可哀想だという考え方もあるが・・・女性は意外に自分がブスだとは気がつかないものなので余計な心配なのだった。

大西福子は親友の小林真実(高田里穂・・・「悪霊病棟」からここ)が事故にあったと聞き、病院に見舞いに行く。

小林真美は顔面にひどい火傷を負い・・・失明の危機にあった。

担当の看護師(阿南敦子)はルーズな性格なので友人の福子に真美の病状を詳しく話すのである。・・・場合によっては訴えられるので注意が必要です。

「火傷もひどいけど・・・今は視力が無い状態なの・・・友達として・・・励ましてあげて」

「そんな・・・痣が残ったり・・・失明してしまうのですか」

「今は整形技術が発達しているし、角膜移植もできるから・・・改善されると思うのよ・・・でも女の子は今が一番だから・・・ショックだと思うの」

「そうですね」

しかし・・・失明中なのに割と自由な行動をする真美は「もう生きているのが嫌になりました」と置き手紙を残し、病床を抜けだして屋上から身を投げるのである。

だが・・・通りすがりの死神くん(大野智)がそれを許さないのだった。

「困るんですよ・・・」

空中に停止した真実に死神くんが告げる。

「なんなの・・・これ・・・」

「あなたの死亡時間は今ではないのです・・・神の摂理に反します」

「はあ?」

「とにかく・・・人間は死ぬべき時に死ぬものなのです」

気がつくと・・・真実は病院の花壇に寝ていたのだった。

真実を発見した福子は安堵する。

「よかった・・・死ぬなんて言うから驚いちゃった」

「私・・・死神の夢を見てた」

「何言ってるの・・・」

「でもね・・・私は死にたいの・・・だってこんな顔になったら・・・生きていても意味ないでしょう」

「看護師さん・・・治るって言ってたよ」

「本当?」

そして・・・病院からの帰路・・・福子は死神くんに出会うのだった。

「こんにちは・・・私、死神です。登録番号は413番なのです。この度はおめでとうございます」

「はあ・・・」

「お迎えにあがりました・・・私がお世話させていただきます」

「なんなの・・・」

「あなたは人生のゴール・・・つまり、死にまもなく到着なさるのです」

「変態・・・変態なのね・・・誰か助けて・・・」

通りすがりの医師が答える。

「お譲さん・・・どうしたんですか」

「変態が・・・変態がそこに・・・」

「どこに・・・?」と首をかしげる医師。

「あ・・・申し遅れましたが・・・死神は・・・担当させていただくご本人様以外には見えません」

「・・・」

「そうです・・・私は人間ではございません」

空中に浮揚する死神くんに絶句する福子だった。

「死神なんて・・・そんなの聞いたことないわ」

「いや・・・意外と有名だと思いますけど・・・」

「でも・・・それは作り話でしょう・・・」

「火のないところに煙は立たないんですよ」

「でも本当にあった怖い話にはでてこないし」

「なかなか・・・難しいんですよね・・・御本人が死んでしまうので・・・」

「死ぬって・・・」

「あなたは後三日でお亡くなりになります」

「そんな・・・私・・・こんなに若いのに・・・」

「死ぬ人は生まれてすぐに死ぬ場合もあります。若くても事故とか病気とか・・・戦争や大災害なら老若男女もれなく大量に亡くなられますし・・・」

「三日前から・・・死ぬなんて・・・たとえば飛行機事故とかなら・・・全員が予告されているとしたら・・・乗らない人も出てくるでしょう」

「そう言う場合にはそこはかとなく・・・言葉を濁すのが・・・我々、死神の腕の見せ所なんです・・・まあ、私の場合、新人なんで失敗も多いですけどね」

「なんで・・・わざわざ予告するのよ・・・」

「そうですねえ・・・そういう決まりなんです・・・ただ・・・残された時間を有意義に使って・・・想い残すことがないように過ごすのは悪くないと思いますよ」

「私・・・まだ死にたくない」

「皆さん、そうおっしゃいます」

「どうして私が死ななければならないの」

「人間の運命に・・・理由なんてないんですよ」

「つまり・・・生きているのも無意味ってこと」

「いいえ・・・そんなことはありません・・・すべてのもの意味がありますよ・・・その気になりさえすれば・・・」

「三日で何ができるのよ」

「やりたいことをしてください」

「やりたいことって・・・」

その時・・・真実のボーイフレンドで福子が密かに憧れている三城尚之(渡部秀)からの連絡が入る。

福子の中で複雑な思いが交錯する。

「私・・・友達は・・・真実しかいないの・・・でも・・・真実にとって私はただの引き立て役・・・本当は尚之くんが好きだけど・・・とても勝負にならないし・・・」

「どうしてです」

「だって・・・私、ブスだもの」

「まあ・・・外見は大事ですよね・・・でもそれだけではないのでは・・・」

「だって・・・尚之くんだってかっこいいから好きなのよ」

「尚之くんはかっこいいだけの人ですか」

「いいえ・・・優しい人だと思うけど」

「優しい人は嫌いですか」

「そんなことないでしょう」

「あなたは優しい人じゃないんですか」

「・・・」

「さあ・・・勇気を出して・・・電話に出てください」

福子は電話に出る。

「やあ・・・福子ちゃん・・・あの・・・真実と連絡が取れないんだけど・・・何か知らないかい」

福子が事情を話すと・・・何故か、お見舞いの品物を一緒に選んでくれるように言われる。

福子にとって生まれて初めてのデートだった。

それを見守る死神くん・・・そんな死神くんを咎めるように見つめる黒いカラス・・・。

尚之を病院に送りだした福子に死神くんは言う。

「一緒に行けばいいのに・・・」

「私がいたら邪魔でしょ・・・」

「いいんですか・・・残り時間はあと二日ですよ」

「いいのよ・・・私みたいなブスが彼と一緒に歩けただけで奇跡みたいなものだもの」

「せっかくだから・・・告白とかキスとかテレビではお伝えできないこととかにチャレンジしてみたらどうですか」

「そんなの・・・無理よ」

しかし・・・とりあえず・・・尚之に明日の予定だけは尋ねてみる福子だった。

「明日は・・・友達と約束があるんだ・・・明後日じゃダメかな」

「明後日はちょっと私に予定があって・・・」

「じゃあ・・・今度、連絡するよ」

「はい・・・」

ため息をつく福子に寄り添う死神くん。

「もうひと押しすればいいのに・・・」

「もう充分・・・親友の彼氏に手を出すなんて・・・すごく悪い女になったみたいで・・・気分がいいわ」

「ふふふ・・・あなたはとても素敵な女の子ですね」

「私も・・・担当があなたでよかった・・・おじさんの死神もいるんでしょう」

「ええ」

通りすがりの主任(松重豊)は何食わぬ顔で通り過ぎるのだった。

翌日、病院の真実を見舞った福子は・・・親友に別れを告げるのだった。

「昨日・・・尚之くん来たでしょ・・・」

「なんだか・・・福子の話ばかりしてたわ・・・私がこんな風になったから・・・あなたに乗り換える気なのかしら」

福子は真実の頬を打つ。

「ふざけないでよ・・・私はあなたの引き立て役だった時・・・あなたに一言でも文句を言ったかしら」

「福子・・・」

「さようなら・・・真実・・・」

その夜、福子は何も知らない父親(おかやまはじめ)と母親(池谷のぶえ)にさりげなく感謝の言葉を伝える。

そして、最後の日・・・死神くんと池のボートに揺られる福子。

「いいんですか・・・最後の日に僕なんかといて・・・」

「うん・・・」

「彼とデートしたり・・・彼女と仲直りしなくても・・・」

「できれば・・・彼女の役に立てるといいけど・・・死んじゃうしね」

「・・・」

やがて・・・福子は事故死した。

遺体は運ばれ・・・角膜移植のドナー(提供者)となる。

「こんなに早く提供者があるなんて・・・あなたは運がいいわね・・・」

「私・・・目が見えるようになったら・・・会って謝りたい友達がいるんです」

「そう・・・」

目の見えない真実の横でドナーとなった福子は永遠の眠りについていた。

霊界に帰還した死神くんは監死官(桐谷美玲)に罵倒されるのだった。

桐谷美玲、かわいいよ桐谷美玲が炸裂である。

「何やってんのよ・・・現実に介在して・・・死者の願いを叶えるなんて・・・ものすごい規則違反よ・・・」

「だって・・・穏やかに逝けたんだから・・・いいじゃないか・・・すごいいい子だったし」

「何、人間みたいなこと言ってんのよ」

「死神にだって人情はあるさ」

「ないわよ・・・漢字で書いてみなさいよ・・・あんたは人じゃないのよ・・・死神でしょう」

「じゃあ・・・死神情があるって言えばいいのか」

「そういう問題じゃねえよ」

「ま・・・いいじやん」

「とにかく・・・死神手帳だしな・・・確認印を押しとくから・・・」

「あれ・・・」

「何よ・・・」

「死神手帳落しちゃった・・・」

「バカじゃね・・・」

死神の手を離れた死神手帳は実体化するらしい・・・。

それを拾ったのは・・・「銀二貫」の主役の人(林遣都)だった・・・。

「デス・ノート」誕生である。

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安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~

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2014年4月18日 (金)

たくさんの洗濯をして大人になる続・最後から二番目の恋(小泉今日子)

タイトル・・・これでいいのか。

典子(飯島直子)が洗濯ものをたたんでいたような気がする。

そうか・・・「BORDER」はいいのか。

凄く・・・迷う・・・二回目も良質なサスペンスに満ちていたし・・・脚本もよどみない・・・なんといっても美しすぎる監察医(波瑠)が素晴らしい・・・場合によっては「極楽がんぼ」を切る。

いや・・・恐怖の金曜日があるからね・・・もう・・・「極楽がんぼ」は生き残れないんじゃないかな。

恐ろしい春ドラマなんだな。

恐ろしい春ドラマなんだよ。

人生は選択の連続なのさ。

「最後から・・・」はあえてレビューしない方針なんじゃ・・・。

なんとなく・・・これがなかったら・・・「あまちゃん」(小泉今日子)もなかったような気がしてきた。

「泣くな、はらちゃん」(脚本・岡田惠和)もな・・・。

「最高の離婚」(演出・宮本理江子)もな・・・。

そうか・・・。

つまり・・・原点に敬意を払うんだね。

はいっ。

で、『続・最後から二番目の恋・第1回』(フジテレビ20140417PM10~)脚本・岡田惠和、演出・宮本理江子を見た。ちなみにニースと鎌倉は1966年から姉妹都市だが・・・ニースにとっては九番目の姉妹都市である。鎌倉にとって海外の姉妹都市はニースだけだが・・・ニースには鎌倉を含めて・・・マイアミ、ニュルンベルグ、ヤルタ、ソレント、ケープタウン、リオデジャネイロ、マニラなど24の姉妹都市がある。鎌倉・・・好色なフランス男の数ある愛人の一人みたいなポジションだな。

そんな鎌倉の結婚式場で・・・ウエディングプランナーが引出物の相談をしているのは・・・鎌倉市役所観光推進課の長倉和平課長(中井貴一)と・・・テレビ局の制作部副部長の吉野千明(小泉今日子)である。

二人はついにゴールインと思わせておいて・・・結婚するのは和平の弟の天使こと真平(坂口憲二)と・・・和平の部下の金太郎こと大橋知美(佐津川愛美)だった。

和平は真平の代理で・・・千明は知美の代理なのである。

裏に新郎新婦の名前を刻印した鎌倉彫の盆を巡り・・・軽く衝突する二人なのである。

「私は・・・結婚式の引出物もらうことにかけてはヴェテランだけど・・・こういうの・・・もらっても困るのよねえ・・・実用的でないっていうか・・・結局、押入れにしまうしかないって感じで」

「それでいいんじゃないかな・・・実用性ばかり追い求めて結局カタログ選択なんかすれば・・・二人を祝う気持ちなんかありませんみたいな感じで・・・押入れにしまってあったのがさ・・・なんかの拍子で出てきてさ・・・裏を見たら懐かしい名前があってさ・・・あの二人、最近会ってないけどどうしてるかな・・・なんてふと遠くを見つめてみたりして・・・そういうのが日本人の情緒ってもんでしょう」

「はあ・・・なにその向田邦子・・・」

「あ、うん」と墓の下から声がする。

「名前があっても・・・誰だか思い出せないなんてよくあることじゃないの」

「もうすぐ50代の君はそうかもしれないな」

「なにいってんの・・・そっちと一緒にしないで下さる・・・私はまだ48ですから」

「48歳と52歳・・・あわせて100歳なんだから・・・今、二人が結婚したら100歳割引とかがあるかもよ」

「はあ・・・」

「ありません・・・100歳割引は・・・」

思わず叫ぶウエディング・プランナーだった。

ああ・・・名コンビである。

なんていうか・・・くつろぐようねえ。

一方・・・長倉家の皆さんも健在である。バツイチかどうかも定かではない長女の典子は相変わらず実家に息抜きしにきて、天使目当ての女性たちでにぎわう次男・真平(坂口憲二)のレストランを手伝わされ・・・脚本家として才能を開花させた次女の万理子(内田有紀)はスマホでチョチョチョチョチョ・・・と原稿を書きながら・・・おっとキーボードに進化してるぜ・・・チョチョチョチョチョ一心不乱に萌え~なのに・・・・引きこもっているのだった。

和平の亡妻の忘れ形見のえりな(白本彩奈)は中学生になっているのだった。

演じている白本彩奈は実年齢もうすぐ12歳の小学六年生である。

悪夢ちゃん」「牙狼~GARO~闇を照らすもの」「コドモ警視」などを経てココである。

成長著しいのだった。

富士山の世界遺産登録の陰で・・・世界遺産登録見送りになった鎌倉市。

その煽りでなぜか・・・肩身が狭い上に秘書課長を兼任になった和平。新・市長(柴田理恵)のお気に入りらしい。

その理由は「邪魔にならない」らしい。

「もてる男」と「邪魔にならない男」は違うと悲哀をかみしめる和平だった。

一方で・・・千明は副部長に出世したことでドラマ制作の現場から一歩遠ざかり・・・それを淋しく感じている。

おなじみのスタッフたちは健在だが・・・どこか距離を感じるのである。

出版業界の荒木(森口博子)と音楽業界の水野(渡辺真起子)も揃って副部長に出世し、副部長三人娘は新橋のガード下で年下の中年男子相手にくだをまく今日この頃である。

一方、和平は極楽寺駅の改札口でえりなのボーイフレンドを紹介され激しく動揺し、さらにボーイフレンドの母親のバナナケース携帯のドジっ娘ママ・原田薫子(長谷川京子)により激しく動揺するのだった。

二日酔いの朝を我が家同然の長倉家で迎える千明。

そこへ・・・夫・広行(浅野和之)の浮気発覚で激怒した典子が乱入。

シャツのどの部分に女のファンデーションがついていたという下世話な話題に・・・。

「えりなの前で変なこと言うな」という和平。しかし・・・えりなは・・・。

「私、平気だし。それに男の子が大きくなると・・・すごく好意的なのに女の子が大きくなるとああ・・・なんだかなあってそういう残念な感じのリアクションされるのってどうかと思うわけ」

誰かに似て来た・・・と誰もが思う成長ぶりなのだった。

荒んだ空気を救う・・・着信。

和平と千明はそれぞれの仕事に向かうのだった。

和平は姉妹都市ニースへ出張する市長に同行し・・・千明はパリ在住の原作者と交渉するために・・・フランスに旅立つのだった。

しかし・・・千明のパリ行きは「すでに原作者の許諾がとれているのをクソ部長が忘れていた」ために空振りに終わる。

とりあえず・・・「Go To The River/Yael Naim」にのってショッピングで浪費した千明は虚しい心をもてあましニースに飛ぶのだった。

ニース・・・そこはフランスとイタリアが領土権を主張する日本と韓国における竹島のような観光地である・・・おいっ。

「近所には世界遺産になったアヴニョンもあるよ」と世界遺産に登録されなかったネタで和平をからかう千明。

朝まで飲み明かした二人は路上で覚醒した後で地中海で水遊びという観光を楽しむのだった。

その過程で・・・お互いの理想の相手を語りあう二人。

「なんていうか・・・ホンワカした人がいいなあ・・・かけっこしてもいつも転んじゃうみたいな・・・ドジなところが微笑ましい・・・みたいな」と和平。

「私は・・・無口な少年系・・・」

「あ・・・ポストイットの彼氏(千明が結婚を意識していたのにあっさり逃げられた年下の恋人)みたいな・・・」

もちろん・・・帰国した二人の未来を暗示している会話なのであった。

鎌倉一五十代からのセックスに自信のある一条さん(織本順吉)はコンビニで・・・グラビアのセクシー美女を推奨する。

それは何故か・・・原田薫子にそっくりだった。

「似てるんですよねえ・・・でも、私、ここにホクロないんです」と本人が登場し、和平のハートを直撃である。

一方・・・千明の前には・・・高山涼太(加瀬亮)が現れ・・・突然の土下座である。

これが・・・ポストイットなんだなあ・・・きっと。

アヴィニョン橋で 踊るね 踊るね

ジェントルマンも

レディーもみんな

くるりと輪をかいて

大仏さんも通る

弁天さんも通る

橋の上でぐるんぐるん踊る

「後悔してない?」

「全然・・・」

「結婚するってことはみんなの天使じゃいられなくなるってことだよ」

「努力します」

「え」

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泣くな、はらちゃん

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2014年4月17日 (木)

お言葉を返すようですが・・・花咲舞が黙ってない(杏)

さて・・・水曜日は谷間である。

ということは・・・このドラマも谷間に咲くレビューしかしない。

ある意味で・・・このドラマはベタである。

ありえない世界でありえないキャラクターが紡ぐ物語なのである。

ところが・・・お茶の間はそういうベタの世界をありのままに受け止めるという性質を持っている。

結構、受ける・・・わけである。

「金融機関」という限定された舞台を主としながら、このドラマの原作者は見事にお茶の間の心をつかむらしい。

一方でヒロインを演じる杏は二世タレントでありながら・・・ものすごくたたきあげの感じを醸しだす才女である。

意地悪な敵役も、妖怪人間も、朝ドラマも根性でこなしていく雰囲気がある。

頭に本を乗せてウォーキングできるだけで尊敬に値するわけだが・・・ある意味でベタを演じさせると抜群という言い方もできる。

何をやっても杏ではあるが・・・それはものすごい存在感ありということなんだな。

もちろん、ホメてますから、全力で。

で、『花咲舞が黙ってない・第1回』(日本テレビ20140416PM10~)原作・池井戸潤、脚本・松田裕子・江頭美智留、演出・南雲聖一を見た。原作は2004年刊行なのでほぼ10年前の作品である。つまり、一昔前の話なのである。しかし、たとえば・・・銀行のように身近にありながらほとんどの人にとって内実が知られていない異世界ではベタというものが・・・存在する。それは「ベタな警察」とか「ベタな病院」とか・・・そういうものだ。なんとなく・・・そうなんじゃないか・・・という想像の範囲内がベタである。そこで・・・「言いたいことをつい言ってしまう主人公がなんだかんだで問題をすっきりさせる」というベタな話が展開するわけである。

だが・・・そういう作品でも美しい一瞬というものがある。

今回で言えば・・・突然、東京第一銀行(架空)の支店統括部・・・つまり本部員に抜擢された窓口係(テラー)の花咲舞(杏)が初めて本店を訪れた時の感想がいい。

「男の人ばっかりだ」

男女雇用機会均等法という・・・少子化対策であり、男女平等の国際化戦略でもある・・・官僚たちの出した答えが・・・人類の、アジアの、日本の男尊女卑の伝統と軋轢を生じさせている一瞬が静かに美しく描写されているのだ。

女の首相も、女の国会議員も、女社長も、女管理職も・・・まだまだ男女比率と添ってはいないという実態がある。

とにかく・・・完全なる男女平等が実現すれば・・・男というだけで立場を維持している人や・・・それに従属している人が困惑することは間違いないのである。

だからこそ・・・部下の女が上司の男に「これやっておいて」とお願いしてしまうという構図は面白おかしいわけなんだな。

テラーとして職場でそれなりに生き甲斐を見出していた花咲だが・・・突然、本部に栄転となり・・・基本、凄い出世なのである・・・支店統括部で臨店(業務指導を兼ねた査察のような業務)を担当する相馬(上川隆也)の部下となり・・・銀行内に燻る様々な問題点に遭遇するわけである。

しかし・・・本店と支店は敵対関係にあるわけではないので・・・相馬は問題があっても基本的には穏便にすませる方針である。

つまり「寝た子は起こさない」のが保身の道なのだった。

しかし・・・こわいものしらずの主人公設定は「寝た子をたたきつけても泣かす」的な暴走を繰り返すのだった。

そして、平氏が源氏には勝てないのである。・・・おいっ。

初回は・・・「業務成績の向上」が抜群の茅場町支店・支店長の矢島(羽場裕一)と対決である。矢島は次期頭取候補の真藤常務(生瀬勝久)の派閥に属しており、相馬としては絶対に対立したくない相手なのだが・・・。

だが・・・「成績向上」の裏には「徹底的なコストカット」が含まれていて・・・有能だが賃金の高いベテラン女性窓口係に対する陰湿ないやがらせによる退職勧告がパワハラの域に達しており・・・花咲は義憤に燃えるのだった。

すでに・・・三人のヴェテランが理不尽な退職に追い込まれ・・・中島聡子(木村佳乃)が孤軍奮闘しているのだった。

そして・・・臨店中の花咲の目の前で・・・聡子は現金百万円の過払いというありえないミスを犯すのだった。

百万円を多く受け取ったはずの客はそれを否定する。

払いすぎた・・・もらいすぎてはいない・・・は水掛け論である。

それは・・・矢島支店長の責任問題が発生する不祥事であるが・・・矢島はなんとか百万円の回収に成功する。

ところが・・・花咲は百万円が払われていないという事実を突きとめてしまうのだった。

百万円は聡子が横領していたのである。

「どうして・・・そんなことをしたんですか」と聡子を問いつめる花咲。

「フクシュウダ・・・」

「・・・」

「サキニヒドイコトヲシタノハシテンチョウノホウダ」

「店頭制服星人ですか・・・」

「フクシュウスル・・・」

しかし、支店長は自腹を切って百万円を補填し、聡子の自爆テロは失敗に終わりかけたのだった・・・。

だが・・・花咲舞が黙っていないのだった。

金額が合わなかった時に銀行員が絶対にしてはならない・・・禁じ手中の禁じ手「補填」をした矢島支店長の行為を暴いてしまう花咲なのである。

そして・・・矢島は左遷されたのだった。

もちろん・・・一矢報いた聡子も退職するのである。

「あなたなら銀行を素敵な世界に変えることができる・・・」聡子は花咲に希望を託すのだった。

そして、花咲舞は謎の黒い球体に・・・。

ああ・・・なんて爽やかなベタの夕暮れ・・・。

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2014年4月16日 (水)

デカオヤコ?(広瀬すず)ビター・ブラッドよ!(忽那汐里)ツタの絡まるチャリンコに祈りを捧げる日(深田恭子)君からの旅たち(黒木メイサ)

おい・・・なにしてんだよ。

いや・・・とりあえず・・・今週はね。

まあ・・・なんていうか・・・毎日、そそるよね。

とにかく・・・「ビター・ブラッド」は初回レビューのみだな。

「MOZU Season1 ~百舌の叫ぶ夜」「TEAM-警視庁特別犯罪捜査本部-」「ホワイト・ラボ~警視庁特別科学捜査班~」「BORDER」「トクボウ 警察庁特殊防犯課」「刑事110キロ」と・・・警察ミステリ多すぎだよな。

バカだよな。

これに「SMOKING GUN~決定的証拠~」、「リバースエッジ 大川端探偵社」、「ロング・グッドバイ」、「極悪がんぼ」という探偵ものが加わるんだぜ。最後の奴は「犯罪者もの」だけどな。

当然・・・この中から・・・生き残るのは1本だな。

1本なのかよっ。

まあ・・・2~3本でもいいけど・・・。

なんだよ・・・。

とにかく・・・今回は・・・暫定的にこんな感じだ。

(月)「極楽がんぼ」(犯罪者)

(火)「サイレントプア」(貧困)

(水)谷間

(木)「続・最後から二番目の恋」(恋愛)

(金)「死神くん」(オカルト)

(土)「弱くても勝てます」(青春)

(日)「軍師官兵衛」(時代劇)

ほら・・・警察ミステリ入る隙間ないだろう・・・。

「アリスの棘」とか「BORDER」すら残らないのか・・・。

「極楽がんぼ」か「死神くん」・・・切らないとだぞ。

う・・・。

「オダギリジョー」を残すなら・・・「リバースエッジ 大川端探偵社」じゃないのかよ。

それは・・・見てから考える。

厳しいのう。

厳しいんじゃよおおおおお。

で、『ビター・ブラッド・第1回』(フジテレビ20140415PM9~)原作・雫井脩介、脚本・小山正太、演出・金井紘を見た。ちなみに原作者はあの沢尻エリカの失墜をもたらした「クローズド・ノート」の人である。原作者にまったく責任ないだろう。でもさ・・・こういのってなんとなく印象悪いんだよな。そっとしておいてやれよ。

いきなり・・・若き日の島尾明村(渡部篤郎)が部下の前田刑事(鈴木一真=二夜連続死亡)を謎の男(及川光博)に射殺されるシーンからスタート。

「犯人に背中は見せられませんよ」とか訳がわからないことを言いつつ・・・前田は死亡するのだった。

なんていうか・・・「デカワンコ」の世界で「凶悪な事件」が発生しているような強烈な違和感が最後までつきまとう・・・親子刑事ドラマが始るのである。

島尾が離婚して・・・捨てた息子の佐原夏輝(佐藤健)が何故か刑事になり初出勤の日。

遅刻しそうになりつつ妹の忍(広瀬すず)の下着姿をサービスするところは好感がもてるのだが・・・そこかよっ。

殉職した前田刑事の娘・瞳(忽那汐里)も刑事になって島尾刑事の勤務する銀座警察署刑事課捜査第一係鍵山班に配属である。

大人げないとは思いますが・・・。

なんだかなあ・・・。

なのである。

出勤途中で・・・遅刻しそうになって踏み切りで待つ人々の列に自転車で割り込んでおきながら・・・子供が転ぶと助ける夏輝刑事。

困っている人を捨てておけない性格だが・・・他人に迷惑をかけることは何とも思わないというダメ人間・・・ということでいいのかな。

で・・・この後は島尾刑事に捨てられて怨んでいる子供っぽい夏輝刑事と・・・妙にジェントルマンな島尾刑事の似たもの親子話が展開して行く。

その間にも内偵中の風俗店に夏輝刑事が勇み足でちょっかいを出し、捜査をぶち壊す・・・。

人質を平気で射殺する凶悪な銀行強盗相手に素手で立ち向かう夏輝刑事など・・・想像を絶する展開が続くのである。

しかし・・・基本的に稲木刑事(吹越満)とかが出ている時点で・・・「デカワンコ」な感じのムードなのである。

古雅刑事(田中哲司)が出ているので「ATARU」な感じもするし、富樫刑事(皆川猿時)のせいで「あまちゃん」の気配さえ漂う・・・。

タカさん出ていると「木更津キャッツアイ」を・・・おい、このタカさんは違うぞ・・・なんとなく似ているけどな・・・この人は踊る人たちの一人だ。

斬新さを狙いすぎてチンプンカンプな仕上がりに・・・。

本当に大人げないとは思いますが・・・。

これは・・・ダメかもわからんね。

しかし・・・魔王様への敬意には謝するしかない。

関連するキッドのブログ→とんび

で、『ブラック・プレジデント・第2回』(フジテレビ20140415PM10~)脚本・尾崎将也、演出・三宅喜重を見た。関東地方では今、「最後から二番目の恋」が再放送されていて・・・ものすごく面白いのだが・・・それが終ると・・・「結婚できない男」の再放送である。

「続・最後から二番目の恋」が第1シリーズより面白いかどうかは不明だが・・・「結婚できない男」の換骨奪胎にどうしても見えてしまう「黒社長」はそこそこ面白いのだが・・・「結婚できない男」のように神がかった感じにはこれまでのところ・・・なっていない。

やはり・・・大会社の社長が・・・大学生になるという設定がどこか・・・無理があるからだろう。

「働くことが人生だ」という社長が・・・趣味・大学に通うこと・・・というのは・・・ものすごく矛盾してます。

今回は・・・「サービス残業は・・・結局、社員のためである」という経営者の理想を結論とするわけである。もちろん・・・企業の経営者は万歳三唱の理論であるが・・・お茶の間の皆さんの反応はどう考えても微妙なのである。

なにしろ・・・お茶の間の皆さんはドラマなんか見ている人たちなので・・・基本的にはのんびりとだらだらしていたい人たちなのである。

そこに主人公が本格的にケンカ売ってどうする。

「結婚できない男」も基本的には・・・唯我独尊だった。

しかし・・・心の中に淋しい気持ちを飼っていてそれが・・・可愛さとなって発露するのである。

もちろん・・・黒社長も当然・・・そうであって・・・最後は黒木メイサ、国仲涼子、あるいは壇蜜、場合によってはミニスカートのヴァンパイア(門脇麦)に心開くのだろうが・・・開かないとしたら・・・どうするつもりだ・・・今の処・・・単なるエロ男爵でしかないのだな。

無能力者は能力者に少しは気を遣えよ・・・という本音が少し過ぎているような気がします。

まあ・・・そこが面白いわけだが。

今回も弁護士の美穂(田中美奈子)や・・・ブスなので女性の武器を認めない女子大生(鈴木アメリ)などを軽く翻弄する・・・ある意味、その場しのぎのエロ男爵である。

あんまりやりすぎると・・・「根はいい人」というどんでん返しが成立しなくなるのでは・・・と危惧するのだった。ま・・・キッドが危惧してもどうなるわけじゃないけどね。

というわけで・・・もどかしい気持ちが残るばかりなのでレビューはここまでの予定である。

関連するキッドのブログ→第1話のレビュー

で、『ドラマ10・サイレント・プア・第2回』(NHK総合20140415PM10~)脚本・相良敦子、演出・伊勢田雅也を見た。人助けというのは・・・一種の病気である。善というものが存在しないという立場で考えればすべてが偽善である。どちらかといえば・・・病気という感じでコミュニティソーシャルワーカー里見涼(深田恭子)の活動を描くこのドラマ・・・そうなのか。

「なぜ・・・助けずにはいられないのか」という里見の活力源は・・・どうやら19年前の1995年の出来事と深く関わっているらしい。

里見涼と弟の生死に関わる出来事であり・・・弟は死に・・・涼は生き残った。

場所は・・・神戸・・・。瓦礫の中で燻る火炎。

まだ明言はされていないが阪神淡路大震災にまつわる話であることは間違いないだろう。

2011年の東日本大震災の発生によって災害としては「昔の話」になった「こと」に対して・・・・里見涼の心の傷跡は叛旗を翻すわけである。

「私のことも・・・忘れないで・・・」なのだな。

「忘れること・・・納得すること・・・区切りをつけること」を病的に嫌悪し、恐怖し、わだかまる・・・それが里見涼の異常な福祉活動への情熱となって発露するのである。

これは・・・萌える。

一日24時間・・・福祉のことしか考えない里見涼の行動に何となく抵抗がある・・・社会福祉協議会の職員・原留美(小橋めぐみ)がピックアップされ・・・里見涼に反発を感じつつ・・・自分の担当地区の困窮家庭への援助について・・・応援を頼むという展開である。

その家庭は複雑な問題を抱えていた。

入院治療の必要な糖尿病患者である女は幼い子供を抱えて離婚して実家に戻って来た。

離婚した夫は娘の養育費を滞納である

実家ではリストラされた父親がアルコール依存症になり無収入。

母親は重い心臓病で寝たきりである。

成人した弟は就職活動に失敗して四年前から引きこもりになっている。

問題が多過ぎて・・・途方にくれた女は転居手続きもままならず・・・娘は就学もおぼつかない・・・。

何から手をつけていいかわからない困窮に原留美は茫然となる。

江墨区役所地域福祉課の山倉課長(北村有起哉)は生活保護の手続きを進めるとともに、母親を入院させ、娘を施設で一時保護するという改善案を提案する。

しかし・・・里見涼は病的な直感でそれでは問題の解決にはならないと感じるのだった。

里見涼の「弟への偏愛」は・・・女の弟・光良(渡辺大知)の立ち直りこそが肝心と決めつけるのである。

そのために・・・引きこもった部屋の扉の前で・・・連日連夜の説得を開始する里見涼だった。

今回の白眉は・・・酒が入ると粗暴になるアルコール依存症や・・・家庭内暴力を開始する引きこもりの典型的な行動を排除しているところにある。

女の父親はひたすら虚脱しているアルコール依存症患者であり・・・引きこもりの光良は死んだようにただ引きこもっている。

ものすごく大人しいわけである。

やがて・・・病的な心理から・・・女の弟と・・・自分の弟を比較し始める里見涼。

「光良くん・・・私はあなたのお姉さんがうらやましい・・・だってあなたが出てくることを待つことができるんだもの・・・」

ついに心ほどかれた光良は部屋を出る。

そして・・・裏庭に埋もれていた自転車で出来る仕事を求めるのだった。

そこで・・・里見涼は神戸から東京に脱出してきた頃に自分もやっていた日本における最も底辺の仕事「新聞配達」を推奨するのだった。

その決めつけはやめなさい。明日、新聞じゃないものが配達されたらどうするつもりだ。

なにしろ・・・早起きが苦手の人にはできない仕事なのである。

ついに仕事を始める光良・・・しかし・・・精神的に不安定な光良は・・・父親の病状が悪化し、姪が施設に預けられる事態に対応できずに再び引きこもってしまう。

すると・・・光良の代わりに新聞配達を始める里見涼だった。

「一体・・・何考えてんの・・・」と絶句する原。

しかし・・・すでに里見涼の心の病に感化されている三輪まなか(桜庭ななみ)は告げるのだった。

「あの人は・・・ただ・・・そうせずにはいられないんです」

そこまで言われては社会福祉協議会の職員の立場がないのである。

体当たりで引きこもりの壁を突破する原だった。

「私だって婚活上手くいってないの・・・だから・・・君も就活がんばろう」

「・・・」

「それに里見さんが君を待っている・・・」

窓をあけると雨に打たれた里見涼が自転車とともに立っているのだった。

もちろん・・・里見涼の正体は人魚なので・・・少しくらいずぶ濡れでも平気である・・・おいっ。

冗談はともかくとして・・・里見涼の魂に打たれた光良は働く勇気を取り戻すのである。

雨の中の里見涼よりも・・・新聞配達の方がこわくなかったのだ。

町にはコミュニティソーシャルワーカー里見涼を讃えるカエルの声が響き渡る・・・。

お茶の間はどうかはわからないが・・・ものすごく心がもっていかれるドラマなのである。

次回・・・どんな困窮が待っているのか・・・ワクワクしますな。

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2014年4月15日 (火)

カーネーション(尾野真千子)と純と愛(夏菜)をダブルでえげつなく極悪がんぼ(仲里依紗)

「ナニワ金融道」「カバチタレ!」そして「極悪がんぼ」は独特の主題で共通世界を形成している。

それは「この世は金である」ということである。

しかし・・・「金」とは何か・・・という哲学から・・・「金を得るためにはどうすればいいか」という手引きまで・・・様々なアプローチが単なる真理を面白おかしく彩るのである。

「金」とは基本的に「信用に基づくもの」であるから・・・社会秩序をもたらす「法」に密接にからんでくる。

もちろん・・・面白い事象というものは法の内外の境界線に立つ場合が多く・・・あきらかに「犯罪」の匂いがする。

最近では・・・最初から犯罪者を主役に据えた「闇金ウシジマくん」が強烈な暗黒を深夜に漂わせているわけだが・・・フジテレビでは・・・ゴールデン・タイムにこのチャレンジを繰り返してきた。

中居正広が灰原を演じる「ナニワ金融道」(1996年~2005年)、主人公のヒロイン化の先駆となった常盤貴子と深津絵里の「カバチタレ!」(2001年)である。

しかし・・・これらはまだ主人公が完全な悪ではなかったのである。

今回の「極悪がんぼ」は早い話が犯罪者集団である。

あくまでドラマですから・・・でどこまで真髄を貫けるか・・・楽しみである。

いきなり・・・主人公のヒロイン化と・・・ドラマ「カバチタレ!」の性風俗業者への身売りの阻止という「どこかで見た展開」で幕を上げたわけだが・・・「ナニワ金融道」で主人公を導く桑田役を演じ、「カーネーション」で糸子(尾野真千子)の父親役を演じた小林薫がどうにもこうにも怪しい存在として登場し・・・ダークな感じを醸しだすのである。

もう・・・登場する男たちが全員、息苦しいよね。

ある程度・・・ソフトにするのは甘んじて受け入れたいと考える。

だって、お茶の間が相手だもんね。

で、『極悪がんぼ・第1回』(フジテレビ20140414PM9~)原作・田島隆・東風孝広、脚本・いずみ吉紘、演出・河毛俊作を見た。ドラマの最後に抜道琢己(板尾創路)が「ドラマの中で登場人物が犯罪行為をしていますがけして真似しないでください」と語るわけである。かなり際どくなっている「表現の自由」問題が再燃しないことを祈るばかりだ。世界はまだ始まったばかりだ。そしてどこまでもつづく空のもとで自由になりたいものである。

で・・・何かあった時のために・・・舞台は架空の都市・・・金暮(かねくれ)市なのであった。

つまり・・・登場人物が何をしようが架空の話なんですってば・・・ということなんだな。

さて・・・ヒロインはもちろん・・・底辺の人間である。

幼い頃に・・・借金の形に実家の「お好み焼き屋」は奪われ、たった一人の身内である母親は病死・・・中学を卒業すると自活して生きて来た女。あげくの果てに料理の腕はいいが・・・金に困るとクレジットカードを偽造するような恋人・茸本和磨(三浦翔平)にひっかかった女・神崎薫(尾野真千子)・・・職業・フリーターである。

カード偽造が発覚し・・・まともな社会人ではない雰囲気の男(中野英雄)から迷惑料二百万円を要求される薫・・・そして・・・和磨は逃亡である。

恵まれているとは言えない人生をそれなりに真面目に生きて来た薫は目の前が真っ暗になるのだった。

そこへ・・・さらにまともな社会人ではない雰囲気の男たち・・・金子千秋(三浦友和)と夏目大作(竹内力)が登場する。

彼らは・・・金の流れをスムーズにすることで何らかの利潤を得る・・・いわゆる「事件屋」を自称する。

つまり・・・迷惑料をもらいたい男と迷惑料を払えない女の間に入って・・・問題を処理し・・・手数料や相談料を得るのである。

この場合は・・・迷惑料を薫に代わって支払い(ただし・・・ある程度値切る)、薫にはすぐに金になる仕事(基本的に売春・・・ある程度抜く)を紹介するということである。

彼らにとってすべては日常的な業務であり・・・その席には同じように二百万円の借金がある女、矢敷聡美(夏菜)が同席しているのだった。

朝ドラのヒロインも金に困れば結界の張られた離島の温泉地で薄い制服のコンパニオンをしなければならないのだった。

「売春しろって言うんですか」と健気に抵抗する薫。

「それは・・・あんたの自由だ・・・出発は明日だから・・・一晩じっくりと考えてみな・・・けして悪い話じゃないと思うぜ・・・三ヶ月もすれば・・・綺麗な身体になれるんだ」

納得できない薫の隣で気の弱そうな聡美はうつむくばかりである。

金子たちはさらにさらにまともな社会人ではない雰囲気の男たちが集まる「小清水経営コンサルタント」の一員だった。

その一室ではさらにさらにさらにまともな社会人ではない雰囲気の冬月啓(椎名桔平)がさらにさらにさらに完全無欠にまともな社会人ではない雰囲気の所長・小清水元(小林薫)が一通の公正証書を手渡していた。

がめついらしい亀津井(勝村政信)からの800万円の不良債権の回収を命じたのである。

しかも道路の開発がらみで・・・亀津井に不動産を手放すように仕向ける裏の仕掛けも必要らしい。

冬月は金子の連れて来た二人の女に目を止めるのだった。

この事務所には弁護士の豊臣嫌太郎(宮藤官九郎)や小者風の抜道琢己(板尾創路)もいてそこそこ怪しいのだがもうお腹いっぱいである。

しかも・・・怪しい男たちは仲間というよりは敵対しているのだった。

金子が二人の女から搾取しようとしている金の流れを・・・冬月は自分の方に流れ込むように画策を始める。

「売春婦にならずに一日で借金を返せる手がある」と持ちかける冬月。

薫は興味をひかれるが・・・その方法とは・・・擬装結婚だった。

「それって・・・犯罪では・・・」

「無理にとは言いませんよ」

自宅に聡美を招き・・・相談する薫。

聡美は身の上話を始める。

「幼い娘がいて・・・夫が作った借金があり・・・できれば一日も早く借金を返したいから・・・偽装結婚をしようと思う」

「ええっ」

冬月の借金返済作戦。

信用情報機関のブラックリストに乗り、新たな借金ができない亀津井と聡美。

聡美はさらに自己破産をしており、さらなる自己破産ができないという身の上である。

そこでまず・・・亀津井と聡美が結婚し、矢敷の姓を得た亀津井が運転免許を再交付。ブラックリストのチェックを逃れる矢敷としてキャッシングし、消費者金融から限度額を借りまくる。

これで亀津井と聡美は離婚。400万円を入手。

次に亀津井と薫が結婚し、薫は亀津井姓で1200万円の借金をして自己破産をするというものである。

薫は経歴に傷がつくが200万円を。

聡美は偽装結婚の罪に問われるが200万円を。

亀津井は返済のための800万円を手に入れることができるのである。

作戦は順調に進行するが200万円を借り入れたところで亀津井が逃亡してしまう。

冬月の計略を知った金子が「偽装結婚」は犯罪だと亀津井を脅したのである。

たまたま・・・200万円を手にしていた薫は解放されるが・・・聡美は温泉島に行くしかないことになるのだった。

「運がよかったな・・・」と金子に告げられた薫の・・・良心が疼くのだった。

「あんたたち・・・事件屋でしょう・・・お金を払うから・・・聡美を助けてよ」

「一人100万円だぞ・・・借用書を書きな・・・それに俺たちは面が割れてるから島から連れ出すのはお前が自分でやれ」

「やったるわ」

こうして・・・島に潜入した薫は身売り前の聡美を連れ出すことに成功する・・・たちまち組関係の追手がかかるが・・・薫と聡美は海に飛び込み・・・漁船に拾われて本土に舞い戻るのである。

そこからは「小清水経営コンサルタント」の男たちが顔なじみの警察官・伊集院保(オダギリジョー)を巻き込んで追手の追跡を阻むのだった。

この辺り・・・案の定・・・脚本家の筋書きはかなり杜撰だが・・・想定内と言える。

ついでに・・・主人公の女性化によって発生した茸本和磨の恋人化と・・・オリジナル・キャラクターのバー「まやかし」のママ・真矢樫キリコ(仲里依紗)の設定にも・・・ややとってつけた感じは漂う。

キリコが情報屋だったり、冬月に片思いしていたり、豊臣にサディスティックに接したりするのもかなり安易な感じがする・・・まあ・・・しかし・・・月9なので・・・どうにもこうにもである。

まあ・・・基本的に全員が本当は組関係という話だからな。甘さは必要不可欠かもねえ。

結局・・・聡美は・・・ギャンブル依存症の多重債務者で・・・身の上話は全部ウソ・・・その上で姿を消してしまう。

薫には二人分の救出料金200万円の借金が残る・・・。

「こうなったら・・・この仲間にして・・・お金の作り方を教えて・・・」

どことなく甘さが残る薫に・・・金子は釘を刺す。

「お譲ちゃんの必死さなんて・・・本気とは言えない」

しかし・・・小清水所長は契約書を示すのだった。

「ウチは独立採算制だ・・・ウチの看板を使うなら年間2000万円のフランチャイズ料金を上納してもらいます」

「な・・・200万円でアップアップしてる人間に背負える金額じゃないだろ」と金子。

しかし・・・薫はサインをするのだった・・・ドラマだからである。

はたして薫は極悪のがんぼ(悪)の花を咲かせることができるのでしょうか。

ドラマの出来そのものがかなり境界線上だが・・・重厚なメンバーにはかなり魅かれる開幕戦だった・・・。

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最高の離婚

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2014年4月14日 (月)

兵法三十六計の三十・・・反客為主と軍師官兵衛(岡田准一)

三十六計は「孫子」とは基本的に無関係である。

しかし・・・一種の民間伝承として「孫子」のエッセンスのダイジェストは各時代で行われていただろう。

「三十六計」の最終形態は関ヶ原以後の17世紀に成立したと言われるが・・・「孫子の計略のすべて」とか「誰にでもわかる孫子兵法」とか「孫子三十六の秘密」とか・・・そういう俗書は「孫子」成立以後、日本の戦国時代に至る二千年の間に夥しく記されたと思われる。

軍事同盟については第二十五計から第三十計までの「併戦の計」にまとめられる。

現在、ロシアとウクライナの緊張が世界を騒がせているわけだが・・・これも一種の「反客為主」の状況である。

「反客為主」とは単純に言えば「客と招かれていたものが主人となる」ということである。

ロシアとEUに挟まれたウクライナは毛利家と織田家に挟まれた播磨国と似ている。

EU化するか・・・ロシア化するかでウクライナは揺れるのである。

どちらにせよ・・・外部から来たもの(客)がいつのまにか国政の主導権を握るということである。

播磨国の土豪たちは「織田家」につくか、「毛利家」につくかという自主的な判断をしているように見えて、実際は播磨国の国土をすでに・・・他国に奪われていることになる。

また・・・播磨国の土豪たちが「毛利家」に従うことを示したことは・・・「織田家」あるいは方面軍司令官の秀吉を苦境に追い込んだように見えるが・・・実際は他国ものに実質的な侵略の大義名分を与えたということにもなる。

結果として・・・下剋上が成立し・・・播磨国の古い支配者たちは滅び去ることになるのである。

大局に立てば・・・別所長治の反織田宣言は・・・織田家の思うつぼだったと言えるのだ。

「緩やかな同盟よりも・・・敵として戦争した方が支配権が明確になる・・・」と黒田三代の当主・官兵衛は秀吉に進言したであろう。それでこそ軍師なのである。だからこそ・・・播磨国の土豪の家老家に過ぎなかった黒田家は四代目で一国の主となるのだった。

天下太平はその余波にすぎない。

戦争が局所的な状況である以上、平和も局所的な状況なのだ。

庇(ひさし)を貸せば母屋を取られるのである。

で、『軍師官兵衛・第15回』(NHK総合20140413PM8~)脚本・前川洋一、演出・大原拓を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。十七行にダウンでございますな。見慣れぬものたちの暗躍をどのように映像化するかがドラマの醍醐味でございますからな・・・櫛橋家の陰謀・・・みたいなことを言われても赤面するしかないですなあ。安国寺恵瓊は黒幕中の黒幕・・・別所の三木城にいるならば話は分かりますがねえ。まあ・・・ドラマですから櫛橋伊則に見せ場を作ることはやぶさかではないのですが・・・もう少し苦渋があってしかるべきですよねえ。三木城と御着城の中間点に位置する志方城だけに・・・恐怖が先立つわけでしょうし。今回は「真田太平記」より信州忍びの棟梁・壺谷又五郎(夏八木勲)の大迫力二大イラスト描き下ろしでお得でございます。こちらでは柴田勝家配下の甲賀忍び山中山城守とその配下に転生しておりますぞ~。・・・私信はコメント欄でやれと何度言ったら・・・。

Kan015 天正六年(1578年)一月、右大臣織田信長は正二位に昇進する。生前の信長の官位はこれが最高位である。後継者・織田信忠は従三位・左近衛中将である。石山本願寺攻めの主将は佐久間信盛、対上杉謙信の主将は柴田勝家であり、それぞれ、戦場にある。明智光秀は亀山城を本拠地として細川藤孝とともに丹波国攻略のために八上城包囲戦を開始している。滝川一益は九鬼嘉隆とともに伊勢国で来るべき毛利水軍との決戦における軍船開発を継続中である。徳川家康は対武田勝頼戦を継続中で子作りにも励み、後の徳川秀忠を西郷局に仕込んでいる。羽柴秀吉は播磨国の占領報告を行った後に信長から指示を仰ぎ第二次播磨遠征のために近江国長浜城において軍事編成を行う。亡き武田信玄の相婿である本願寺顕如は徹底抗戦の構えを崩さず、播磨国の門徒衆にも盛んに一揆を推奨する。丹波国の赤井家に属する波多野秀治は外戚として婿の別所長治に調略をかける。毛利家の軍使僧侶たちは播磨国の地侍たちに本領安堵を約し、毛利家への寝返りを工作する。三月、突如として別所長治は志方城主・櫛橋伊定(ドラマでは死亡)、高砂城主・梶原景行、神吉城主・神吉頼定ら東播磨国の豪族を巻き込んで織田家に叛旗を翻す。これに対し、秀吉軍は西播磨北部に新拠点を急造し、本格的な播磨国侵略戦を開始することになる。

「妙な連中が入りこんでいるようだな・・・」と秀吉は半兵衛と官兵衛に言った。書写山城の粗末な茶室である。築城の専門家とも言える秀吉はすでに姫路城を中心に北の書写山城、南の国府山城からなる本拠を形成している。その外周に赤松家の龍野城、置塩城、小寺家の御着城がある。さらに別所家から独立した別所重棟の阿閉城が東の、尼子勝久が籠る上月城が西の最前線となる。

官兵衛は本願寺、毛利、宇喜多、波多野の間者たちを連想したが・・・半兵衛の答えは違っていた。

「勝家殿の・・・甲賀者でしょう・・・」

「ふふふ・・・尼子勝久殿が心配と見える」

出雲国を追われた尼子勢が織田家を頼った時に最も近距離にあったのが越前国の柴田勝家であったことから・・・尼子勢の立場は柴田家に属するものとなっている。信長の采配によって出雲方面の攻略の大義名分を立てるために尼子勝久が秀吉の播磨国攻略軍に配されたために・・・関係は複雑になっていた。

対毛利・宇喜多連合軍への最前線と言える上月城に尼子勢を入れたのは信長の命令に従いながら柴田勝家に対する秀吉の意地悪となっている。

秀吉はいざとなったら・・・上月城は尼子勢ごと見捨てる所存なのである。

尼子勢は余所者の秀吉軍にあってさらに余所者なのであった。

しかも・・・相手が旧敵である毛利なので尼子が裏切る気遣いもないのだった。

それを察して・・・柴田勝家が・・・山岳戦を得意とする甲賀忍者を少数送り込んできたのだった。

秀吉の言う妙な連中とは忍者である山中山城守の配下である甲賀の忍びたちだった。

「勝家殿にとっては尼子勢は貴重な駒ですからな・・・むやみに滅んでもらっては困る・・・ということでしょうかな」

「山中山城守とは山中鹿助殿の縁者でしょうか」

中央の事情に疎い官兵衛が尋ねる。

「それは・・・古にはそうかもしれませんな。出雲山中家も近江山中家も・・・官兵衛のお家と同じく佐々木源氏の出自でございましょう・・・」

「なるほど・・・」

「しかし・・・山中鹿助殿は今や、尼子の一門衆・・・奇妙な縁と言えば縁ですな」

「だが・・・尼子勢にとっては上月城は貴重な居城じゃ・・・おいそれと退散するとは思えんな」

秀吉は笑みを浮かべて言う。

官兵衛は織田軍団における内部抗争の凄まじさの一端を見るようだった。

それに比べれば・・・播磨国の地侍に内部分裂を起こさせ・・・敵味方を明らかにした上で支配層を入れ替える官兵衛の戦略は小手先の技のように見えてくる。

「官兵衛殿の縁者の方々も・・・大分、整理がつきましたな」

「英賀城の三木氏、志方城の櫛橋氏、神吉城の神吉氏など・・・皆、血縁の方々だ・・・」

半兵衛と秀吉が面白がって官兵衛に問う。

「さよう・・・これで播磨国もかなりすっきりしまするな」

官兵衛もクールに答えた。

「しかし・・・成り行きによってはご宗家も危ないのでは・・・」

半兵衛は追いうちをかける。

「御着の殿は・・・とりあえずの神輿でござる」

「もはや・・・小寺家は官兵衛殿の手の中ということですな」

「いかにも・・・」

「では・・・三木の城を攻める算段と参ろうか・・・」

「兵糧攻めがよろしかろう」

「御意」

三人の日本有数の軍事専門家は無表情になった。

彼らにとってすでに・・・反織田勢力となった播磨国の土豪たちは袋の鼠同然なのである。

そんなこととは露知らず・・・三木城では籠城戦の準備が始っていた。

「兵糧は一年は充分に持ちまする」と家老の別所吉親が告げる。

城主であり西播磨の盟主である別所長治はそのようなものかと頷いた。

三年に渡る籠城で彼らは飢餓というものの恐ろしさを心底味わうことになる。

そして・・・その因果は官兵衛にも襲いかかるのだった。

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2014年4月13日 (日)

あまちゃん?(有村架純)はらちゃん?(麻生久美子)どっちでもいいのよ(薬師丸ひろ子)弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜(二宮和也)

「あまちゃん」の若春子(有村架純)と鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の豪華共演である。

種市先輩(福士蒼汰)と吉田くん(荒川良々)もいるしな。

もう・・・それだけで楽しいな。

この枠の名作「泣くな、はらちゃん」からは麻生久美子と光石研が、前期の名作「なぞの転校生」からは本郷奏多が。

「相棒」からは伊丹刑事(川原和久)が・・・。

もう・・・すごくニヤニヤするよね。

って言うか・・・追い詰められたよね。

始るドラマ、始るドラマ、レビュー対象として合格しまくってるからな。

つらい・・・シーズンになりそうだなあ。

今のところ・・・(月)未定、(火)富豪VS貧乏、(水)谷間、(木)境界線、(金)アリス、(土)弱勝、(日)甘大・・・ベタなところを切っても切っても・・・レビュー候補がね。

「トクボウ 警察庁特殊防犯課」なんか第二回の足立梨花の本物のパンツ(本人談)だけでもレビューの価値があるしな・・・そこかよっ。

まあ・・・やれることをやるしかないよねえ。

で、『弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜・第1回』(日本テレビ20140412PM9~)原作・高橋秀実、脚本・倉持裕、演出・菅原伸太郎を見た。モデルとなった秀才高校は私立開成高校だが・・・伝統の青春ドラマの舞台として・・・湘南の風が吹くのだった。ちらりちらりと映り込む「海」が隠し味的に利くのだった。土曜日の夜にのんびりと見るドラマとして最高の出だしである。

秀才の集う小田原城徳高校と野球の名門堂東学院・・・。その伝統的な親善試合・・・。

第86回大会で・・・田茂青志(二宮和也)は城徳高校のキャッチャーを務めていた。

一回表の堂東学院の攻撃で18点を取られたところまでは覚えている。

青志は・・・アウトどころかピッチャーの投げる球さえ取れないへっぽこ選手だった。

相手のチームの坊主頭のスラッガー(市川海老蔵)がつぶやく。

「俺は・・・ここに野球をしにきたんだ・・・お前は何しにきた・・・時間の無駄だからやめてしまえ」

それから・・・13年。

東大に進学して東大の生物研究員となった青志だったが・・・教授の研究データ捏造疑惑で研究室が一時閉鎖の事態となり・・・仕方なく、母校で臨時教員をすることになる。

城徳高校の三条校長(笹野高史)はかっての野球部監督だった。

「どうだ・・・野球部の監督もやってみないか」

「いや・・・それはちょっと・・・」

青志先生にとって・・・高校野球は悪夢なのだった。

しかし・・・それだけ・・・悔いが残る対象でもあった。

今年の野球部にはメジャーリーガーを目指す逸材でありながら・・・学業成績もいい・・・白尾(中島裕翔)がいた。

しかし・・・キャプテンの江波戸(山﨑賢人)と二年生の樫山(鈴木勝大)、牛丸(栁俊太郎)を合わせて部員は四人・・・。

ただし・・・マネージャーには樽見柚子(平澤宏々路→有村架純)という抜群の可愛さを持つ女子生徒が配されていた。

柚子は野球部のたまり場である喫茶店「サザンウインド」の店主・樽見楓(薬師丸ひろ子)の娘であり・・・高校生時代の青志を知っている設定である。

明らかに・・・野球部の中には柚子争奪戦の気配があり・・・このドラマの中核が柚子であることは間違いないようだ。ついに・・・かわいいよ、有村架純かわいいよ前提のドラマが誕生したのだった。「失恋ショコラ」とか「百舌」とかのチョイ役扱いはもうたくさんなのである。

21世紀を代表する美少女に対して失礼すぎるのである。

しかし・・・樽見家のアパートに下宿した青志先生にじわじわとこみあげる「野球」への思い。

「弱いから勝てなかった・・・けれど・・・勝つ方法はあったのではないか」

優秀な頭脳を持つ青志は考えずにはいられなかった。

そんな青志が気になる生徒が担任を受け持つことになった3年B組の赤岩公康(福士蒼汰)だった。

赤岩はいい年して楓に横恋慕しているような父親の晴敏(光石研)に嫌気がさしたのか・・・家出中の元・野球部員である。

「なんで・・・赤岩は野球部をやめたんだ・・・」

「去年の親善試合で・・・下手の中で一番下手だった・・・ライトの赤岩くんが狙い撃ちされて・・・火だるまになったんです・・・」

第98回の親善試合は・・・。

TN  1

堂東 62

城徳

(日没コールド)

城徳は堂東から一死もとれずに・・・一回表を終わらせることができなかったのである。

「赤岩くんの気持ち・・・青志くんが一番わかるんじゃない・・・?」

と樽見母娘は攻めるのだった。

そんな野球部を取材にやってくるスポーツ専門誌「トロフィー」の高校野球担当記者・利根璃子(麻生久美子)・・・。

「ほとんどの生徒が東京大学を目指す城徳ならではの練習方法ってありますか」

「そんなのありません・・・」

「でも・・・方程式を使ってなんたらとか・・・」

「経済学と野球は関係ありません」

「ですよね」

野球については素人の増本監督(荒川良々)を制して答える青志。

ついでに・・・利根璃子と堂東学院の練習を見に行く。

いかにも・・・城徳を見下している堂東野球部の監督・峰(川原和久)・・・。

「伝統の親善試合が中止になってよかった・・・もう・・・城徳と堂東では試合になりませんからね」

「・・・」

「やるだけ無駄です」

「こっちだって野球の試合なんかで勉強の時間を削られるのは無駄ですよ」

「なんですって・・・」

「野球そのものが・・・無駄なんです・・・野球なんてなくたって人類は生きていける」

「人類・・・って・・・神聖なグラウンドから出ていけ」

「敵のグラウンドに長居するつもりはないですよ」

ついに・・・青志のなんだかわからない闘志に火がついたらしい。

「とにかく・・・部員を集めろ」と野球部に命じるのだった。

こうして・・・集まったのは超短距離走に自信がある岡留(間宮祥太朗)、目立ちがの屋の吹奏楽部員・亀沢(本郷奏多)、柚子のストーカー・志方(桜田通)だった。

「一塁と二塁の間なら君は無敵だ」

「バッターボックスは注目を一人占めだ」

「私のそばにいさせてあげる」

それぞれを口説く青志と柚子だった。

これに一年生の光安(平岡拓真)、伊勢田(阿久津愼太郎)を加えて九人が揃ったのである。

しかし・・・青志は・・・赤岩が気になるのだった。

「なあ・・・ピッチャーならどうだ」

「ピッチャー・・・」

「キャッチャーに投げればいいんだから」

「でも・・・ピッチャー返しをされたら」

「そんなの・・・滅多にないさ」

いや・・・基本中の基本じゃないのか。

それでも・・・トラウマから脱することのできない赤岩・・・。

とにかく・・・野球部を指導しはじめる青志先生。

「声を出せ・・・ドンマイとか」

「ドンマイ」

「エラーしてないのにドンマイって言うな」

「ドンマイ」

「エラーした奴がドンマイって言うな」

前途多難である。

そして・・・第99回親善大会・・・来年で百周年である。

先発投手は・・・目立ちたがり屋の亀沢・・・。

コントロールが定まらず四球の連発である。

たちまち・・・長い一回表の堂東の攻撃が始るのだった。

たまりかねた・・・青志は「ピッチャー交代・・・赤岩」を告げる。

しかし・・・赤岩はいない・・・それでも選手たちは「赤岩」の名前を連呼するのだった。

そして・・・去年のままの汚れたユニフォームを着た赤岩が現れる。

いや・・・黴が生えますから。

しかし・・・淡々と攻撃を続ける堂東。33点目・・・42点目・・・。

たまりかねた青志は敵陣へ。

「そろそろ・・・うちに攻撃させてください」

「八百長しろっていうのか」と峰監督。

「先生・・・それはいくらなんでも」と生徒たち。

「じゃ・・・どうすりゃいい・・・八百長がダメならどうやってチェンジする」

「アウトを三つとればいいんだよ」と峰。

「そんなの無理にきまってるじゃないか」

暴言を吐いた青志は審判に退場を命じられたのだった。

野球は下手でも・・・不得意ではないと思っている生徒たちだった。

監督が退場させられたら・・・燃えるという野球のセオリーは知っていた。

燃えざるをえないのである。

そして・・・奇跡が起きた。

一死・・・二死・・・三死・・・アウトを積み重ねる城徳野球部。

ついに・・・チェンジ。

TN  1

堂東 53

城徳 0X

(日没コールド)

しかし・・・日没コールドの時間だった。試合は終了した。

それでも・・・城徳高校野球部に新たなる風が吹いて来たのだった。

夜の岸壁でのミーティング。涙を流す赤岩に青志は告げる。

「野球なんて無駄だ・・・でも無駄だからこそ・・・勝ちたいじゃないか」

「勝てますか」

「勝てるさ」

「強くなれますか」

「それは・・・ちょっと無理だな」

「・・・」

「だけど・・・幸いここにいるものはみんな賢い・・・弱くても勝てる方法を考えよう」

「弱くても勝てる・・・」

はたして・・・そんなことがあるのか・・・。

それは見てのお楽しみである。

もう・・・楽しむしかないよね。

早く、一回裏が見たいよね・・・城徳高校の先攻なら見れるけどね。

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プラチナデータ

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2014年4月12日 (土)

復讐の国で死者の名を刻むアリスの棘(上野樹里)

毎度おなじみの復讐の物語である。

「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」は復讐譚とは言い難いが・・・孤児となった主人公への優しい父の形見として登場する。

ちなみにハンプティ・ダンプティは「鏡の国のアリス」の登場キャラクターである。

そもそも・・・「魔王」の脚本家がスタッフに参加していて、タロットカードの「フール(愚者)」が登場して「フール・オン・ザ・ヒル/ビートルズ」のもじりであると思われる「フール・オン・ザ・デス(死者の上の愚者)」などと展開している。

「不思議の国のアリス」にはそれほど思い入れがないものと思われる。

まあ・・・ディズニー映画の「ふしぎの国のアリス」的なごちゃまぜを前提とすれば・・・フールとは「斬首好きなハートの女王」が「バカの壁」の向こう側にいるということなのかもしれない。そもそも「アリス」のハートの女王は不吉なスペードの女王が憑依しているようなもの。つまり・・・その正体は「死神」なのである。

とにかく・・・復讐のために女医となった娘が無数にいる父の仇を討ちまくるという設定にかなり無理があるので・・・その復讐模様にうっとりするしかないのである。

「のだめ」ではない女優・上野樹里を堪能できるだけで充分なのだな。

で、『アリスの棘・第1回』(TBSテレビ20140411PM10~)監修・西田征史、脚本・髙橋麻紀、演出・塚原あゆ子を見た。演出家は「夜行観覧車」で独特の情念を描きだしてキッドの中では高評価の人である。今回も・・・少なくとも・・・復讐者であるヒロイン・水野明日美(菊池和澄→上野樹里)を美しく存在させている。最近は仮面ライダーたちに家の警備をお願いしている上野樹里しか見ていないのでものすごく新鮮だった。

15年前・・・小山内孝夫(眞島秀和)は不慮の死を遂げる。

さらに・・・葬儀の席で汚職に関わったことが報じられ・・・死者は鞭打たれる。

残された娘の元に・・・病院から提示されたカルテとは別のカルテが届く。

それは・・・父の死が・・・医療ミスによるもので・・・事実が隠蔽されていることを娘に示す。

誕生日に「不思議の国のアリス/ルイス・キャロル」を贈ってくれた優しい父の面影に復讐を誓う娘・・・。

そして15年の月日が経ち、父の友人だった水野和史(中村梅雀)の養女となって水野明日美を名乗った女医が・・・聖林医大病院に赴任してくるのだった。

仇の一人である磐台修一教授(岩城滉一)は有馬教授(國村隼)と次期院長の座を争っている。

磐台修一教授は「大学病院の使命は臨床でも教育でもなく研究だ」と言い切る先端医療技術の推進者で保守的な有馬教授とは意見を異にしている。

明日美の所属する消化器外科では・・・最先端医療ロボットNOAの導入に伴い・・・手術での運用に意欲的な伊達理沙医師(藤原紀香)が適当な患者を捜していた。伊達医師にとって患者は自分の実績をあげるための道具でしかなかった。

「患者なんて・・・実験用のマウスと一緒よ・・・医者は患者を何人か殺して一人前になっていくの」と研修医を指導するのだった。

明日美は看護師の星野美羽(栗山千明)や磐台教授の息子で研修医の悠真(中村蒼)と接しながら普通の新人女医としてふるまっていたが・・・すでに最初のターゲットに狙いを定めていた。

父の手術に参加していた蛭子雅人看護師長(六平直政)である。

彼は患者よりも医師の意向を尊重するタイプの看護師だった。

「バカと患者は使いようですよ・・・甘やかすとつけあがります」と明日美におもねる蛭子。

明日美はたちまち・・・復讐心を燃えあがらせる。

ハンプテイ・ダンプティ 塀の上に腰かける

ハンプティ・ダンプティ ふんぞり返って落ちれば粉々

一族総出であわてたものの

ハンプティ・ダンプティ 中身がドロリ

明日美は正しいカルテのコピーで蛭子を夜の屋上におびき出すと・・・非常用縄梯子に追い詰める。

風の中で絶体絶命の蛭子だった。

「なんでしたっけ・・・バカとハサミでしたっけ・・・」

「おい・・・バカな真似はよせ」

「ハサミはロープを切るためにも使えます」

梯子の片側を切られて宙に揺れる蛭子。

「なんでそんなことをするんだ・・・」

「それは・・・あんたに殺された・・・男の娘だからだよ」

「俺は誰も殺してない」

「それでは・・・なぜ・・・カルテが二つあるんですか」

「そ・・・それは・・・」

「それでは説明は父に直接してください・・・あの世で」

「わかった・・・医療ミスだ・・・伊達医師が・・・無謀な術式にトライして・・・あんたの父親を死なせたんだ・・・」

「罪をつぐなってどしんと落ちますか」

「許してくれ・・・」

「あなたが患者にしたすべての悪事を記録してあります」

「なんだって・・・」

「それを患者の家族が知ったら・・・どうなるでしょうね」

「そんなことをしたら・・・あんただってこの病院にいられなくなるぞ」

「私は復讐に命を賭けてますよ・・・わかりませんか」

「わ・・・わかった・・・どうすれば許してくれるんだ」

「それでは・・・私の奴隷になりなさい・・・私の復讐は始ったばかりですから」

「はい・・・」

こうして・・・明日美は・・・蛭子を支配下に置いたのだった。

明日美の父の死にはまだ様々な謎が隠されている。

それには・・・磐台教授や・・・病院の顧問弁護士・日向(尾美としのり)などまでからんでいる気配である。

場合によっては・・・少女時代の明日美を知る医療担当の新聞記者・西門優介(オダギリジョー)もターゲットなのかもしれない予感さえある。

しかし・・・明日美のとりあえずの復讐相手は手術ミスによって父親を死に至らしめた伊達に定められる。

明日美の父を「術死」(ステルベン)の一言で葬り去った伊達は・・・その後も患者をステまくったのである。

その中には青年実業家で伊達のフィアンセである男の祖父までが含まれていた。

そして現在でも伊達は手術患者を確保するために・・・手術が危険なものであることを隠して患者に手術を受けさせようとしていた。

そのために・・・患部の画像をすりかえることも強行するのである。

明日美はその事実を伊達のフィアンセを巻き込んで公開してしまうのだった。

「なんてことするのよ・・・このままではすまさないわ」と明日美に食ってかかる伊達医師。

しかし・・・電撃を浴びて失神し・・・気がつけば麻酔を打たれて手術台に寝かされているのだった。

「意識は戻っても・・・身体は動きませんよ」

「こんなことをして・・・ただですむと思ってるの」

「あなたのしてきたことにくらべれば・・・なんてことはないですよ」

「なんだっていうのよ」

「私は15年前にあなたの無謀なトレーニングで殺された小山内孝夫の娘ですよ」

「・・・あの患者の・・・」

「患者じゃないんでしょう・・・マウスなんでしょう・・・」

「私をどうするつもり」

「私は新人なんで・・・先生の身体でトレーニングさせてもらいたいと思います。内臓順番に切り取って・・・先生にお見せしますよ・・・まずは食道から・・・それとも直腸にしましょうか・・・先生は上下どちらが好きですか」

「やめて・・・許して・・・あの患者のことは・・・悪かったと思っている・・・私も若かったのよ」

「患者・・・患者って・・・私の父親には名前があるんですよ」

「あの時・・・あなたの父親は助けられた・・・でも指導医の千原先生が術式の変更は許されないって言うから・・・」

「指導医の千原・・・」

「ね・・・だから・・・許して」

「とりあえず・・・あなたには医師をやめてもらいます」

「え・・・」

「あなたの殺した患者の遺族の皆さんに・・・すべての記録を送りつけてもいいんですよ」

「・・・ひっ」

「いろいろ・・・いますよね・・・ヤクザの親分とか・・・」

「・・・やめて・・・」

「医者をやめますか」

「やめる・・・」

「それじゃあ・・・記念に・・・私の父の名前を忘れないように・・・身体に刻みこんでおきますね」

「・・・」

明日美は伊達の腹部に「T.OSANAI」のサインを刻んだ。

「いやあああああ」地獄の手術室な伊達の悲鳴がこだまする。

「あれれ・・・麻酔切れてきましたか・・・」

そして・・・明日美は次なるターゲットの千原淳一准教授(田中直樹)に標準を合わせるのだった。先は長そうだ・・・。

まあ・・・本当は・・・処理済みの人は監禁しておいた方がいいよね。

後でまとめて殺すために・・・。

まあ・・・14歳から29歳まで・・・仇討ちだけを考えて来た娘の決心を「彼」が揺さぶるんでしょうけどね。

「ああ・・・あなたは親の仇の名を持つ人・・・磐台あなたはどうして磐台なの」的に。

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キラー・ヴァージンロード

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2014年4月11日 (金)

私の頭の中の銃弾~BORDER~(小栗旬)

ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜」の高野文美(波瑠)は波瑠史上最高に魅力的だったわけだが・・・このドラマの波瑠も相当に美しい。

それだけでも十分に視聴に耐えうるのだが・・・無駄のない展開・・・スタイリッシュな映像・・・そして・・・死んだ人間が犯人を指さすというオカルト展開・・・すべてが好みである。

まだ・・・裏のやたらと豪華なナニを見ていないのだが・・・キッドは「ダブルフェイス」を全く面白いと思わないのでとりあえず・・・今回はこちらをレビューしておく。

ナニの方は面白ければ・・・どこかで生き残るかもしれないが・・・春ドラマは本当にタイトなのである。

少なくとも・・・これだけ・・・「死者の言葉」を直接聞いてしまうと・・・「SMOKING GUN・・・」は谷間の彼方に消えることは確実となった。

で、『BORDER・第1話』(テレビ朝日20140410PM9~)原案・脚本・金城一紀、演出・橋本一を見た。犯罪捜査が好きで・・・家でのんびりするより・・・殺人事件の現場に呼び出されることで思わず微笑む主人公・・・警視庁捜査一課の石川安吾刑事(小栗旬)・・・彼は現場につくと・・・鑑識の仕事が終るのを待つ間・・・現場周辺を捜索する習慣を持っている。交番勤務時代に犯行現場に戻った犯人を逮捕した経験がそうさせるのだった。しかし・・・今回の凶器は拳銃。間抜けだったのは・・・犯人ではなく・・・石川刑事だった。

謎の二人組に頭部に銃弾を撃ち込まれた石川刑事は・・・生死の境を彷徨う。

心肺停止・・・そして電気ショックによる蘇生。

頭蓋骨を突破した弾丸は頭の中に螺旋を描いて侵入し止まった。

頭の中に弾丸を残したまま・・・回復する石川刑事。

それ以来・・・彼には死者の幻覚が生じるようになったのだ。

現場に復帰した石川刑事を・・警視庁捜査一課第二強行犯捜査・殺人犯捜査第4係第一班の班長・市倉(遠藤憲一)は優しく、ライバルの立花刑事(青木崇高)は熱く出迎えるが・・・休養中に・・・警視庁刑事部・特別検視官に新たに比嘉ミカ(波瑠)が着任していた。

事件現場の裏手で・・・石川刑事と比嘉検死官が遭遇する。

「何を見ていたのですか・・・」

「犯人が見ていたかもしれない・・・あの窓を・・・あなたは何を見ているの」

「・・・」

「タメ口でいいのよ」

「脳に損傷を負った人間は幻覚を見るようになったりしますか」

「頭の中に銃弾があれば・・・今、死んでもおかしくない。幻覚なんて見たっておかしくないわ」

「ありがとうございます」

被害者は・・・若々しい夫婦と幼い息子の三人。残忍な犯罪だった。

しかし・・・被害者の爪はなんらかの理由で切られていた。

その証拠隠滅の手口は沈着冷静だった。

「靴跡からも犯人は二人組と見られます」

やがて・・・捜査線上に夫婦が入信していた新興宗教の教団員が浮かび上がる。

その団体と夫婦には脱退を巡るトラブルが発生していたのだった。

玄関先で夫婦と口論する二人組の教団員が目撃されており・・・捜査員たちは色めきたつ。

しかし・・・被害者は石川刑事に語る。

「あの二人じゃありません」

「じゃ・・・誰に殺されたんです」

「近所の若い男です・・・保険の外交員をしている母親と二人暮らしの・・・」

「証拠は・・・」

「抵抗した時に彼の頬を引っ掻きました」

「だから・・・爪を切ったのか・・・」

「灯をつけて彼は言いました・・・もったいないからよく見ておかなくちゃと」

「・・・」

石川刑事は単独捜査をして・・・若い男(小柳友)と母親(清水美砂)の共謀を疑う。

犯行時間のアリバイを証言しているのは・・・母親だったのだ。

若い男は被害者の妻のストーカーだった。

しかし・・・捜査線上に若い男は浮かびあがらない。

そこで石川刑事は・・・情報屋の赤井(古田新太)を使い、「若い男を見た」というホームレスの目撃証言をでっちあげるのだった。

捏造された情報により本格的な捜査が開始され・・・コンビニで軍手を買っている母親の監視カメラの映像が発見されて母子のアリバイは崩れる。

「私は死にかけたことがあります・・・心臓が止まる前に・・・私の思いは懐かしい思い出に彷徨ったり・・・苦しみからの解放に安らいだりはしませんでした・・・ただ何か恐ろしいものに捕まる恐怖だけが・・・私を苦しめていたのです。この親子は大切なものを奪われました」

石川刑事は犯行現場の写真を見せる。

苦悶に歪む母親。任意の事情聴取をする喫茶店の外を幼い子供と母親が通りすぎる。

最後に石川刑事は・・・親子三人の楽しそうなスナップ写真を見せる。

「この人たちはもう笑顔になれないのです」

「私が・・・あの子に頼まれて・・・爪を切りました」

アリバイが崩れたにもかかわらず・・・逮捕された若い男は禍々しい態度を崩さない。

「証拠があるのかよ」

別室で取調を見守る比嘉検死官は・・・石川刑事が何もない空間を見つめているのに気がついた。

「何を見ているのかしらね」

取調室の石川刑事は被害者の少年が犯人を指さすのを見た。

「僕を殺したのはその人です」

石川刑事は犯人を見た。

「何を見てるんだ・・・」

「もったいないからよく見ておかなくちゃ・・・と思ってね」

怯む犯人。

「被害者の少年はおたふくかぜをひいてたんだ」

「・・・」

「ほら・・・君の頬が腫れてる」

「・・・」

「いいかい・・・おたふくかぜのウイスルにも固有の遺伝子型があるんだよ・・・返り血をあびて感染したのさ・・・君は・・・それが・・・君が犯人である証拠だよ」

「くそっ・・・」

犯人は犯行を自供した。

「あいつ・・・なんだか変わったな・・・」と立花刑事。

「生まれかわったのさ・・・」と市倉班長。

無念の思いが晴れた被害者たちは消えた。

どこかに消えたのか・・・ただ見えなくなってしまっただけなのか・・・それは石川刑事には分からなかった。ただ・・・殺人現場に行けば・・・新たな死者が佇んでいるのだった。

石川刑事は現状に不満はなかった。

被害者と話せるなら・・・殺人事件は解決したも同然のように思える。

しかし・・・本当にそうだろうか?

その答えは・・・石川刑事がこれから物語ってくれるのだろう・・・。

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2014年4月10日 (木)

紫のアネモネの花言葉は・・・っていきなり死んでるよっ(倉科カナ)最初の依頼者で居座る手(西内まりや)SMOKING GUN〜決定的証拠〜(香取慎吾)

ミステリの基本の一つは・・・過ぎ去った過去に秘められた謎を解くということにある。

警察ミステリには様々なヴァリエーションがあるが・・・謎に包まれた事件を解明し解決に導くのはオーソドックスな手法と言えるだろう。

しかし・・・謎に包まれた事件というアイディアはそう簡単に生まれない。

そこで・・・同じ謎を警察ではない誰かが解明して見せるという展開が行われる。

その中で生まれた「きらきらひかる」は珠玉の名作と言える。

「検死官チーム」が主役で・・・「遺体」が事件の全貌を物語ってしまうという趣向である。

柳の下の泥鰌を求めて、様々なチャレンジが試みられる。たとえば「ヴォイス~命なき者の声~」などというストレートな例もあるし、「絶対零度~未解決事件特命捜査~」のように警察の手に戻ったもの、「最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜」のように葬儀社を出してきたり・・・あの手この手である。

しかし、なかなか・・・「きらきらひかる」を超えないのだな。

変化球として成功しているのは一人の女子生徒の死を巡り、全篇で謎解きに挑む「わたしたちの教科書」ぐらいである。

今回は原作もので・・・謎解きそのものはまずまずだが・・・初回を見る限り・・・キャラクターを配置しすぎて・・・なんとなく雑然とした感じを受けてしまう。

まあ・・・キャラクターたちに命を吹き込むことには・・・この脚本家はいつもセリフがベタすぎて失敗しているので・・・生温かく見守るしかないのである。

で、『SMOKING GUN〜決定的証拠〜・第1回』(フジテレビ20140409PM10~)原作・横幕智裕、竹谷州史、脚本・酒井雅秋、演出・村上正典を見た。アネモネは美少年アドニスの血から生まれた花である。愛と美の女神アプロディーテーも冥府の女神ペルセポネーもアドニスを熱烈に恋してしまうのである。まあ・・・こういうことは時代を越えて存在するわけですな。結局、アドニスは女神たちの争奪戦の果てに嫉妬したものによって殺されます。つまり・・・その殺人現場で生まれた花がアネモネ。だからアネモネの花言葉は「殺したいほど愛してる」でございます。さて・・・赤のアネモネが「愛」を示すのに対し、紫や青のアネモネは「希望」を示し、花言葉は「あなたがふりむいてくれることを信じる」なのですね。まあ・・・愛しているんだから愛してもらえるはずだ・・・という儚くも自分勝手な願望の提示なのでございますけれど。

さて・・・ついに・・・民間科捜研という設定が登場。設備投資だけでもかなり大変で・・・企業として成立しているのかどうか・・・疑問視されるわけですが・・・まあ、ドラマだからな。

このドラマだからな・・・とお茶の間に思わせた時点で多くのドラマは失敗作なのですが。

とにかく、凶器として硝煙を燻らせる「SMOKING GUN」は事件の決定的証拠ということで・・・警察が見逃した「それ」を民間の人々が発掘調査して握るという展開です。

民間科捜研の主催者が料理好きの千代田真紀(鈴木保奈美)で、主人公は営業担当兼調査員の流田縁(香取慎吾)、チームには分析家の小宮山(安藤玉恵)、鑑定家の田坂(イッセー尾形)、なんとなくいる若者の松井(中山優馬)、真紀の養女・くるみ(濱田ここね)が所属しています。それぞれが・・・なんらかの過去を秘めている感じ・・・。

主人公の場合は・・・過去に恋人の死体の側で覚醒し、その前後の記憶が脱落しているわけです。事件は未解決ですが・・・当然、主人公は容疑者の一人。

彼を犯人にするための「SMOKING GUN」を得るべく・・・柏木刑事(谷原章介)は彼の監視を継続中という展開・・・。

ものすごく設定が詰め込まれていますねえ。

はっきり言ってうざいです。しかし・・・まあ、それは好みの問題だからな。

さて・・・主人公はエレベーターの中で痴漢事件に遭遇・・・被害者がミニスカートの似合う石巻桜子(西内まりや)・・・。

容疑者は現行犯で捕まりますが・・・ドーナツ好きの主人公はスカートについた指紋から・・・真犯人を特定します。それは・・・精神の歪んだ目撃者の女性だったのです。

冤罪を防いだ主人公に・・・桜子は・・・真相の調査を依頼します。

「火事で死んだ父親の死因が・・・自殺かどうかを検証してほしい・・・自殺だと保険金がおりないので・・・」

登場人物一同が保険会社のCMに出られなくなる案件でスタートなんだな。

さて・・・お決まりの倒産寸前の町工場の社長令嬢だった桜子。

今はバニーガールとして酔客にサービスするアルバイト中である。

もちろん、お茶の間へのサービスを兼ねている。

借金返済の必要があり、母親も入院中で保険金は是非とも欲しいのだが・・・そのためには死因が「事故死」である必要がある。

もちろん・・・事故か自殺かは・・・警察が特定するはずであるが・・・そんなことを言っているとドラマにならないので・・・警察は事件性がないとして結論は出さず、保険会社の鑑定で自殺と認定されているわけである・・・しかも鑑定内容は捏造らしい・・・いまどき・・・そんなことが明るみになったら・・・。

まあ・・・とにかく・・・西谷まりや、かわいいよ西谷まりやでなんとか最後まで視聴することは可能です。

自殺に認定したのは・・・①カギを本人が内側からかけている。②出火原因のベンジンを本人が購入。③出火してから逃げた気配がない・・・などである。

これに母親が隠していた遺書めいたメールがありそこには「罪滅ぼしにはならないかもしれない」という文言が・・・。

しかし・・・主人公が調査すると・・・出火場所は全く違い・・・そこには園芸用の石灰が置かれていたことが分かる。雨漏りによって生石灰が水に反応し発熱、消石灰になり、そこにベンジンが反応したのが出火の原因だった。

そして・・・ベンジンは娘の二十歳の誕生日の贈り物としてアクセサリーを磨くために使用したものだった。出火に驚いた桜子の父親はアクセサリーを取り落とし・・・それを拾おうとして煙に巻かれたことが位置関係から推測されるのだった。

もちろん・・・この世界には出火原因を特定する消防署は存在しないという前提である。

事業に失敗した父親は家族を捨てて自殺したのではなく・・・娘に桜のネックレスを「罪滅ぼしにならないかもしれない」が贈ろうとしてドジをふんで死んだのである。

「お父さん・・・」真相を知り涙する桜子だった。

渋々、保険金が支払われ・・・借金返済の目途がついた桜子は・・・なぜか・・・科捜研の一員になるのだった。

ま・・・一言で言うと・・・グダグダです。とにかく水曜日は谷間の気配濃厚だな。

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山田くんと7人の魔女

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2014年4月 9日 (水)

ゆとりの満喫を許さないブラック・プレジデント(沢村一樹)VSサイレント・プアの沈黙を許さない女(深田恭子)

結局・・・VSシリーズかよ。

対極にありながら・・・できる男とできる女の対決だからな。

「お金がすべての前提にたってその先を見つめる男」と「とにかく限られた予算を乗り越えるのは気持ちの問題だと言う女」・・・どちらも並みの人間ではないんだよな。

つまり・・・超人の物語である。

一人の超人がいれば・・・普通の人々なんか倒壊したビルの下敷きになって文句も言えないのが普通だからな。

で、「黒社長」はそれをコメディー化するつもりだし、「沈黙貧乏」はヒューマン・ドラマとして描く。

文句のつけようのない展開である。

社長の周囲には黒木メイサ、国仲涼子、壇蜜、門脇麦、高月彩良をちりばめて来た。

コミュニティソーシャルワーカーは弟子に桜庭ななみを配置である。

どちらかを選べと言われても無理なのである。・・・そういう根拠なのかっ。

で、『ドラマ10・サイレント・プア・第1回』(NHK総合20140408PM10~)脚本・相良敦子、演出・伊勢田雅也を見た。コミュニティソーシャルワーカー(CSW)はかなり、馴染みの薄い職種で・・・ほとんどフィクションの存在と言えるかもしれない。そもそもコミュニティー(共同体)という言葉からして曖昧だ。コミュニケーション(意志疎通)を考えればそもそもコミュニティーは意志疎通を前提とした社会組織の単位と考えられる。となりの部屋の住人の顔も知らない都市では・・・コミュニティーそのものが成立しないのである。

しかし、社会というものが存在するという信念に従えば・・・それを維持することは必要不可欠な事象になる。国家社会が存在する以上、地域社会も存在しなければ困るわけである。

たとえば・・・警察に爆弾を仕掛ける犯人などは・・・そういう社会から逸脱した人間である可能性がある。

コミュニティーが成立し、意志疎通すなわち相互監視の行き届いた社会なら「となりの息子さん、部屋で爆弾作ってるんですって」という噂がしかるべき公的機関に伝達されるのだ。

つまり、コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)とはテロ抑止の手段なのである・・・おいっ。

個人的見解はさておき・・・人々を幸福にするための努力には際限がない。

そこで公的機関は・・・民間の善意による奉仕に頼る側面がある。

江東区でも墨田区でもない東京の下町の江隅区(架空)では区役所の福祉課が法人である社会福祉協議会と連携して地域社会の福祉の充実を模索している。

しかし、住民の不満や苦情は絶え間なく、予算にも人員にも限りがあるのである。

そこで・・・その切り札として登場するのがコミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)という怪しげな職種なのである。

公的機関の可能な援助と・・・地域住民の相互扶助(奉仕活動的な助けあい)をコーディネイトするのがその主任務である。

もう・・・漠然としすぎていて・・・何する人なのか・・・不明ですが・・・現代社会というものがそういう曖昧なものを求めている時代だということなのである。

まあ・・・そもそも・・・火事が起きるとどこからかやってくる消防車とか、事故が起きるとどこからかやってくる救急車とか、人が殺されているとどこからかやってくるパトカーとか・・・この社会には不思議な事象が多いわけである。・・・おいっ。

とにかく・・・ゴミ屋敷があり、周辺住民が「異臭が凄い」「衛生的な問題がある」「なんとかしてくれ」と言う住民が区役所に苦情を言うと・・・山倉祐一(北村有起哉)福祉課長によって社会福祉協議会にたらいまわしにされ・・・受け付けた上司の近藤(モロ師岡)の依頼によって実働七年のコミュニティ・ソーシャルワーカー・里見涼(深田恭子)とその後輩・三輪まなか(桜庭ななみ)が出動することになるのだった。

「ゴミ屋敷ですか・・・どうしますか」

「とにかく現場を見てみましょう」

悪臭漂うゴミ屋敷。

「息が詰まります」

「呼吸を止めるの」

「死にますよ」

「匂いなんてないと信じるのよ」

「できません」

「しょうがないわね・・・監視しましょう」

「ゴミを処理するわけにはいかないのですか」

「ゴミ所有者がそれをゴミと認めないとね」

周辺の調査により浮上するゴミ屋敷の老女(香川京子)の悲しい人生。

夫に先立たれ・・・息子に先立たれ・・・三年前から鬱状態になり・・・ゴミを処理できなくなってしまったのだった。

「これ・・・精神科の医者の領域ですよね」

「本人が精神病と認めなければ精神病は存在しないのよ」

「じゃ・・・どうするんです」

「あの屋敷には立派な栗の木があるわ・・・栗の木の精霊に頼るしかない」

「てーっ」

里見は・・・老女が幸福だった時代に栗ご飯を作った思い出を探り当て・・・ゴミ屋敷に乗り込むのだった。

「一緒に栗ご飯を作りましょう」

「栗・・・ご飯・・・」

悲哀に呪縛されていた老女はその一言で正気を取り戻すのだった。

ゴミ屋敷の存在に途方に暮れていた地域住民も根は善人である。

無料奉仕で・・・ゴミの片づけに参加するのだった。

やがて・・・美味しい栗ご飯が・・・出来上がる。

「わかりますか・・・」

「わかるわ・・・息子は・・・栗の木に宿っていたのね」

「そうです・・・今も見守っていますよ」

こうして・・・街に平和が戻ったのだった。

「どうして・・・栗の木に息子さんの霊が宿っていたのがわかったんですか」

「悲しみには原因があるの・・・」

「先輩の原動力は・・・まさか・・・」

「私は・・・昔失くしてしまったものを・・・捜しているの」

「見つかるまで捜し続けるタイプなんですね・・・」

町にはコミュニティソーシャルワーカー里見涼を讃えるカラスの声が響き渡る・・・。

今や・・・地域社会は・・・スーパーヒーローを必要としているらしい。

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バッテリー

ワイルド7

で、『ブラック・プレジデント・第1回』(フジテレビ20140408PM10~)脚本・尾崎将也、演出・三宅喜重を見た。一部上場のアパレル会社のいい年したワンマン社長・三田村幸雄(沢村一樹)が・・・何故か一流とは言えない大学の経済学部の入試に合格し、せっかくなので経営学について冷やかし始めるという流れである。キッドも時々、いい年しているのにまだ大学に通っている夢を見るが基本的に現実逃避である。ただし・・・三田村社長は専門学校出身の服飾デザイナーあがりであり、大学生になったのは初めてらしい。人間は一種の情報処理装置であるから・・・問題解決能力にも一定の枠組みがある。経営者ととしてのエキスパートである三田村は・・・圧倒的に未熟な学生や、経験値の低い研究者から刺激を受けながら・・・進化した携帯ツールを使いどこでも経営者を展開するという趣向である。基本的に周囲を見下したポジションに位置するために主人公に感情移入すれば擬似優位性を堪能できるのだ。

さて・・・「結婚できない男」の大成功から一転・・・なかなか成功しない脚本家は自己模倣に突入である。

「結婚できない男」を視聴した人なら誰でも気がつく・・・このドラマとの相似性。

主人公・・・プロフェッショナル。自分の仕事に自信を持っていて譲れない哲学がある。

「結婚できない男」は個人経営の設計事務所だったが・・・こちらは新興の巨大アパレル企業「トレイン(トレスフィールズインターナショナル)」の経営者になっている。

「結婚できない男」はライバルのブログの更新を絶えずチェックしていたが、こちらでは巨大掲示板「ブラックチャンネル」をチェックしている。

「結婚できない男」は犬のケンちゃんを心の友にしていたが・・・こちらはお掃除ロボットに「よしおくん」と名付けて癒される。

「結婚できない男」は口うるさい母(草笛光子)とお節介な姉妹(三浦理恵子)がいてこちらにも口うるさい母(白川由美)とお節介な姉妹(青木さやか)がいる。

「結婚できない男」には優秀な部下の男(塚本高史)と女(高島礼子)がいたが、こちらにも優秀な部下の男(永井大)と女(国仲涼子) がいる。

「結婚できない女」にはグラマーな主治医(夏川結衣)がいてこちらには女医(壇蜜)がいる。

ただし、恋(があるとすれば)の本線は城東大学講師の秋山杏子先生(黒木メイサ)だろう。

秋山先生は経営者の必要な資質として「ビジョン(見通し)がありそれを表現できること」「世界に対する情報収集能力」「部下に対するデリカシー」「組織を把握する能力」などを講義し・・・三田村社長は自分には欠けていることばかりと謙遜するが・・・本心は「机上の空論」を振りかざす小娘と侮っている。

「大儲けできる理論を研究してください」

「経営はお金を儲けることがすべてではありません」

・・・失笑である。

しかし・・・三田村社長は秋山先生の無垢さに憧れる気配はなきにしもあらずで・・・秋山先生も三田村社長の実践者としての存在感に明らかに魅かれているわけである。

城東大学の映画研究会「アルゴノーツ」があり、そこにはゆとり世代代表の女子大生の岡島百合(門脇麦)がいる。これは「結婚できない男」の隣の部屋の女の子(国仲涼子)にあたる。

「結婚できない男」の恋のライバルがレンタルビデオ店の顔なじみだったように・・・秋山先生は「アルゴノーツ」のOBなのである。

三田村社長は・・・自分以外のすべての人間には「ボールペン」程度の価値しか認めていないわけだが・・・。

そう言われてもキョトンとするゆとり世代の若者たち(秋山先生を含む)・・・この皮肉の通じない時代に・・・果たして「結婚できない男」の面白さが再現できるかどうか・・・お手並み拝見である。

この時代・・・これからネット通販の会社を買収していて大丈夫なのか・・・トレイン・・・みたいな話もあります。

そして・・・三田村社長はゆとり世代をなめていたので根性のない労働者に「プラック企業」として訴訟を起こされたりして・・・。

まあ・・・社長と同じギャラは払わないが社長なみに努力しろと多くの社長は考えるわけである。

そしてついに「いまどきの若い奴はなんなんだ」って言っちゃうという・・・。

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梅ちゃん先生

白い春

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2014年4月 8日 (火)

てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ、東京特許許可局(架空)から来ました(菅野莉央)・・・それで?(吉田里琴)

「花子とアン」では花子が無事上京して父娘で「てーっ」を連発しているわけだが・・・それはそれとして・・・。

先週、高校野球延長のため休止となったドラマ「東京特許許可局」が一週遅れでスタートである。

「世にも奇妙な物語」をはさんでなければずーっとNHKなのだが・・・今夜も「サイレント・プア」である。

「ブラック・プレジデント」も裏表で同時スタートである。

で、(水)「SMOKING GUN~決定的証拠~」、(木)「銀二貫」、「MOZU Season1 ~百舌の叫ぶ夜」、「BORDER」(金)「アリスの棘」(土)「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望」と春ドラマ第一陣が続々とスタートを切る。

息継ぐひまもない無呼吸攻撃である・・・息しろよ。

初回レビューの処理もなかなかに困難が予想されるのだった。

特にまずは(木)である。

いや・・・その前に今夜・・・。健康のために一日一レビューを死守するためには最初の難関である。

で、『東京特許許可局(天てれドラマ)・第1回』(NHK教育201404071845~)脚本・佐東みどりを見た。レギュラーに菅野莉央、ゲストに吉田里琴という・・・見ずにいられようかっ展開である。・・・お前はなっ。念のために言うが「東京特許許可局」という公的機関は存在しない。・・・ないのかよっ。あるのは早口言葉だけである。しかし、ここに架空の東京特許許可局がついに誕生したのだった。・・・ああ、そう。

しかも・・・積極的に大発明を審査しに行くというシステムらしい。

山田川局長(八嶋智人)の指示により、今日も田中審査官(菅野莉央)と鈴木審査官(石丸佐知)は「世紀の大発明」を求めて出張鑑定するのだった。

今回二人が訪れたのは街の発明家のガレージ、発明者は町工場経営の佐々山氏(佐藤誓)、発明品は「話上手機」だった。

話かけるだけで「シャベレール侯爵」(架空)のようにおしゃべり上手になるという。

しかし・・・それはマネキンの頭部にモニターを設置したロボットだった。

「工場で口上をのべる・・・なんちゃって」などと話しかけると「話上手機」が「それで・・・」と反応する・・・しかし、一万回に一回だけ「いいね」と言ってくれるというものだった。

モニターに映る少女のキャラクターが吉田里琴である。

「・・・」とガッカリする鈴木審査官だが・・・何故か田中審査官は興味津々なのであった。

「それはかなり東京特許許可局許可局長今日急遽許可却下とはいかない発明品ですね」

「一体・・・何のために・・・」

「最近・・・娘が中学生になって・・・態度が冷たいんです・・・私は娘と楽しく話したいんだ」

しかし・・・「話上手機」は「それでえ・・・」を連発するのだった。

不穏な空気に包まれる発明家と審査官たち。

そこへ佐々山氏の娘(吉田里琴)が登場する。

再流行の兆しがあるらしいルーズソックスを履いた里琴はどうやら「いい娘」らしかった。

「お父さん、ちっとも帰ってないから・・・お母さんが怒ってるよ」

「・・・」

「だから・・・迎えにきたよ」

「お父さん、お風呂に入ってないから臭いぞ・・・歯も磨いてないから息もくさいぞ」

「お風呂に入って歯も磨けばいいでしょう・・・さあ、帰ろう」

にこやかに父を連れ去る娘だった。

任務は果たされなかったが・・・なんとなくほのぼのする審査官の二人なのだった。

由緒正しいこれぞツン(ロボット)デレ(本人)をそつなくこなす吉田里琴である。

やや・・・エキセントリックな菅野莉央もいい味出ています。

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Cr002 CLUB Rico開催中。シャブリ「一粒で二度美味しい展開なのでありましたーっ。一週間待った甲斐があったのでありましたーっ。これから始るみんなの物語・・・ごきげんよう、さようならなのでありました~」

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2014年4月 7日 (月)

ごらん・・・あれが上月城、播磨のはずれ山鳥だけが啼いている・・・と妙寿尼(酒井若菜)

播磨国と美作国の国境が佐用郡である。

ここには四城があり、西から上月城、その北に福原城、その南に高倉山城、そして東に利神城がある。

秀吉の播磨攻略戦は・・・まず、東播磨の別所氏、西播磨の小寺氏の調略から始り、次に毛利氏に属する佐用郡への城攻めに移行する。

その経過には諸説ある。

まず利神城は城主が別所一族の別所定道であり、三木城の別所長治に従い織田方に恭順する。

福原(佐用)城には赤松士族の福原則尚、高倉山城には同じく福原助就がいて・・・上月城主の赤松政範に従属している。

赤松政範が毛利方の宇喜多秀家の傘下に入ることで秀吉はこれらをつぶす必要に迫られる。

黒田官兵衛の正室・櫛橋光の姉は赤松政範の正室だったとも、その一族の上月景貞の妻だったとも言われるわけである。

まず高倉山城が落城し、福原助就が討ち死に、次に福原城が落ちて福原則尚が自刃する。

最後に上月城が落城すると赤松政範は妻子とともに自害したと伝えられている。

それでは官兵衛が妻の姉である妙寿尼を救出できないのである。

そのために上月景貞が登場する。

景貞は宇喜多直家の援軍を得て、上月城を奪還することに成功する。

その後、安土城への戦果報告を経て播磨国に再入国した秀吉は再び、上月城を攻略するのである。

この時、出陣した景貞は宇喜多家臣の江原親次が秀吉に内応したために帰る城を失い討ち死にする。

残されたのが光の姉・妙寿尼である。

妙寿尼には一男一女があり、姉は後の美濃徳野藩主の平岡頼勝の室となり、二代藩主・頼資を生んでいる。弟は黒田家旗本の黒田正好で文禄の役に従軍し平壌で戦死している。

ドラマで娘が二人いるように見えるのはスタッフが明らかにテキストにしている「播磨灘物語/司馬遼太郎」がそのようにフィクションをしているためか・・・あるいは男子だと処刑される惧れがあったので女装していたのかもしれない。

あるいは・・・娘は二人いて・・・黒田正好は未亡人好きの黒田職隆の種なのかもしれない。

すべては時の流れの彼方である。

なにしろ・・・官兵衛を義父殺しにさせないために・・・まだ生きている光の父親を死んだことにしているドラマだからな。

で、『軍師官兵衛・第14回』(NHK総合20140406PM8~)脚本・前川洋一、演出・本木一博を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。二十行超えてきたーっ。やはり・・・岡山県が生んだ戦国最強武将のお陰ですかな・・・ということで今回は乱世の覇者・宇喜多直家の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。しかし、ハムの人の山中鹿助と同様に陣内直家も・・・「世にも奇妙な幻想少女・薫(能年玲奈)の戦国武将イケメンベスト5にランクインならず・・・ちなみに第五位・直江兼続、第四位・上杉景勝、第三位・伊達政宗、第二位・真田幸村、第一位・石田三成・・・なんだ、このいかにもな順位・・・それにしても西軍優位すぎるな。

Kan014_2 長かった天正五年(1577年)もついに越年である。十一月、秀吉軍は佐用郡の三城を攻め、播磨国の平定を暫定的に達成。上月城主・赤松政範・死亡。十二月、秀吉安土城にて信長より茶を許される。天正六年(1578年)二月、上月城を宇喜多勢の援軍を得た上月景貞が奪還。秀吉、播磨国に再出動。三月、上月城を再び落城させる。上月景貞死亡。官兵衛は妻の姉を保護。この頃、信長は徳川家康と対武田戦の打ち合わせのために三河方面に視察旅行中。柴田勝家保護下の尼子勝久が播磨国に派遣され、新・上月城主となる。明智光秀は細川藤孝とともに丹波国八上城を包囲中。敵将の赤井直正病没。荒木村重は石山本願寺包囲戦を継続中。柴田勝家は上杉勢・本願寺勢を相手に守勢に立たされていたが三月十三日、上杉謙信が病没。愁眉を開く。毛利勢は播磨国別所氏に対し別所長治の室の実家・波多野氏を通じて調略活動を活性化。織田勢は黒田官兵衛により、宇喜多直家への調略活動を本格化。まさにクロスカウンター状態である。実際は上杉謙信の存在により・・・この後、別所氏の離反、荒木氏の謀反の流れが形成されるのだが・・・謙信自身は死んでしまっているという皮肉である。ドラマでは三度の飯より戦が好きな官兵衛が何故か・・・戦嫌いとして描かれるのだが・・・とにかく・・・男たちはしないで済む戦をしたがる生き物なのである。なにしろ・・・戦争は血わき肉踊るものだからだ。そこを避けて通れば本当の歴史なんて描かれないのだな。

美作国竹山城主新免伊賀守の家老・新免無二斉は播磨国にあって黒田家の兵法指南役となっている。無二斉は赤松氏族衣笠氏の出自を持つ平田家の出身であるが家督を継いだ後も諸国を放浪するという渡りの忍びである。美作国はここに至る過程で・・・尼子、毛利、浦上、宇喜多の諸氏が赤松氏の所領に目まぐるしく侵攻し、その従属関係が乱れ切っている。独立性の強い忍者にとって・・・本来の主従関係はそもそもあいまいである。五年ほど後に生まれる宮本武蔵の出自が・・・美作国にあるのか播磨国にあるのか定かではないのはそのためである。もちろん・・・宮本武蔵が忍びであることは言うまでもない。

黒田家の郎党たちが一騎当千の武者揃いとなったのは無二斉の力が大きい。

また、戦略家である黒田官兵衛にとって実戦は得意分野とは言えず、兵の鍛錬は無二斉に任せている。官兵衛は強い黒田衆をどう使うかを考えればよいのである。

無二斉には美作国に新免伊賀守の娘の本妻がいるが・・・播磨国では利神城主・別所定道の弟・別所林治の娘を室としている。そういうことかありうる時代なのである。

黒田武者の無双ぶりに驚いた播磨国の城主たちは郎党に無二斉の教えを請わせているのである。

さらに戦の勘では母里太兵衛という天才が育っていた。

どちらかと言えば戦術家である竹中半兵衛は母里太兵衛を高く評価していた。

官兵衛と半兵衛は似たもの同志でありながら・・・得意分野は微妙に違う。半兵衛は内政を得意とし、官兵衛は外交を得意とした。これは性格的なものであろう。

軍師には軍使的要素が含まれるが・・・秀吉は敵陣に派遣する軍師には官兵衛を使い、たとえば信長や同僚武将に対する連絡には半兵衛を使うのである。

もちろん、播磨国は秀吉にとって敵地であり、その敵に対しての軍使が地元の武将である官兵衛に偏るのは当然のことであるが・・・死地に送り込まれる官兵衛の危険度は高まる。

佐用郡の各城を巡り・・・官兵衛が無事に帰還したことを秀吉は労う。

「利神城の開場のこと・・・痛みいる」

「しかし・・・三城を残しました」

「よい・・・少しは血を流さねば世はおさまらぬものだわ」

「順序はまずは高倉山城を落し、次に佐用城、そして上月城でよろしかろう」

精密機械のように計算した手順を半兵衛は述べる。

岩倉山城は佐用城の支城であり、佐用城は上月城の支城であるから攻める順序は正攻法である。しかし、播磨国入りして程ない半兵衛が地理的状況を完全に把握していることに官兵衛は驚きを感じる。

「毛利や宇喜多の援軍が来るやもしれませぬ」と官兵衛は言わずもがなのことを言う。

「よかろうず・・・その前に力攻めで一挙に抜く。黒田衆は高倉山を・・・本軍は佐用城を目指し、二城を落した後で上月城で合流するという手筈でいいかのん」

「は・・・」

「では・・・三日後に会おうぞ」

つまり・・・秀吉は二日で二城を抜くと宣言したのだった。

火力に劣る黒田軍には蜂須賀小六の美濃鉄砲衆が加勢される。

秀吉はすでに近江で新たな鉄砲部隊を育成し、弟の秀長に率いさせている。その二部隊だけで播磨国全土の火力を上回っていた。

前衛基地である利神城を出陣した黒田軍と羽柴軍は二手に別れて山間部を移動する。

官兵衛は蜂須賀の鉄砲衆の進軍速度に舌を巻く。

「速い・・・」

蜂須賀の鉄砲衆は全員が鉄砲忍びである。進退の難しい山岳部でも・・・案内する黒田衆に遅れることなく進軍してくるのである。

母里太兵衛の率いる槍隊が遅れをとるほどだった。

利神城に迫った黒田・蜂須賀隊は早速、陣容を整えるが・・・明日の決戦を前に早くも夕刻から鉄砲忍びたちは威嚇射撃を開始する。

「討って出る気配がありますな・・・」

戦場の気を読む術に長けた陣中の無二斉が官兵衛に囁く。

母里太兵衛もそれを感じたらしく、すでに臨戦態勢を整えている。

包囲を恐れた福原軍が城主とともに討って出たのは直後のことだった。

「愚かな・・・」

夕暮れの中をすでに展開を終えていた蜂須賀隊の猛射撃が福原軍の先陣を包み込む。

機先を制するつもりだった奇襲が失敗し・・・福原軍に混乱が生じる。

その時には官兵衛の弟・黒田兵庫助の騎馬隊が敵陣に突入する。続いて母里太兵衛が突進し・・・足軽たちがそれに続く。

たちまち敗勢となった福原勢は高倉山城への退路を断たれ・・・佐用城のある北へとのがれようとする。しかし・・・そこには黒田の本軍が伏せられているのだった。

周囲が暗闇に包まれる前に野戦の決着は尽き・・・すでに城にも黒田忍びが突入している。

「半日もかからなかったな・・・」

官兵衛は城を押さえたことを報告に来た栗山善助に思わずつぶやいた。

「織田の戦のすさまじきことでございますな」

返り血を浴びた善助は殺気だった口調で応じる。

播磨国では殲滅戦などというものには余り縁がなかった。

なにしろ・・・誰もが赤松氏というくらいに同族同士の小競り合いを続けてきたのである。

適当なところで手打ちになるのが常であった。

そうでないのは浦上や宇喜多の備前衆がかかわった戦であった。

しかし・・・織田勢はそれを凌駕する猛攻を見せるのだった。つられるように黒田衆もかってない殺戮を繰り広げていた。

「殿・・・北をごらんあれ・・・」

本陣を守る井上九郎右衛門が告げる。井上は官兵衛の妻・光の妹と婚姻し、一門衆となっている。

「佐用城もはや落ちたか・・・」

播磨国境の暗闇の中で赤い炎が輝いていた。

翌日、合流した羽柴軍と黒田軍は怒涛の勢いで上月城を攻め・・・城主・赤松政範は自刃して果てた。

一部の赤松勢は美作方面へ撤退している。

その中に官兵衛の妻の姉を室とした上月景貞もいた。

逃げ遅れた景貞の妻子を官兵衛は保護した。

「ぶっさん・・・」

「モー子・・・」

「こわかったよおおおおおおおおおお」

こうして秀吉の播磨攻略戦の初戦は二日で決着がついたのである。

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2014年4月 6日 (日)

ごらん・・・あれがあまちゃんからの世にも奇妙な物語2014春の特別編・・・妄想少女現る(能年玲奈)

「笑っていいとも」が消えて一週間。

さすがに「認知のドーパミン」的に・・・喪失の鬱が現れてもおかしくない状況と言える。

キッドはあまり「笑っていいとも」の熱心な視聴者ではなかったのでそれほどでもないが・・・一日に十回「笑っていいともが終るんですって」と言い続けた認知症の老母は明らかに症状が進行してまったようだ。

いつもあるものがないのは・・・結構、深刻なものである。

特に一日中、テレビを見ているような人間にはダメージが大きいようだ。

そういう意味ではテレビは凶器なのである。

だからといって・・・他に楽しみがないんだからしょうがないのだった。

まずまずのスタートをきった「花子とアン」の第一週。

来週も山田望叶の演じる子役時代は続くわけであるが・・・「はなでなく花子と呼ばれたい乙女」「貧困と女であることと地方出身者という教育の三重苦を背負ったヒロイン」「ごきげんようさようなら」という基本的なフリは完成したと言えるだろう。

父親と兄との関係や・・・母親と娘の中に通じるもの・・・キャスティング的に重要だろう二人の姉妹と・・・展開が楽しみな要素も盛り沢山である。

なぜ「赤毛のアン」が乙女たちの心をとらえたのか・・・それが明らかになるドラマであればいいと考える。

その後でリトルなでしこたちのU-17サッカーワールドカップ優勝の快挙。

すべては積み重ねである。

SFの浸透と拡散時代最後のSF作家と言える山田正紀が細々と食いつなぐミステリ「おとり捜査官」シリーズもある意味で終焉である。

「そろそろ体力的に無理だったりして」

「馬鹿言うな・・・俺はまだまだこれからだ」

「無理しちゃってえ」

「何を~」

さようなら・・・蟹江敬三さん・・・。

で、『世にも奇妙な物語2014春の特別編』(フジテレビ20140405PM9~)ストーリーテラー・タモリを見た。東京ではやや葉桜になりかけているが各所で桜まつりの行われているシーズンである。この季節、桜餅と桜饅頭をつい食べ過ぎてしまうのだった。これもおそろしい桜の呪いだと思う。桜餅(こしあん)を我慢しても関西桜(つぶあん)を食べてしまうと言う恐ろしさである。淡いピンクの桜こそ・・・日本人の感性の基本かもしれんな。とにかく桜は咲くのである。

最初の一篇「ニートな彼とキュートな彼女」(原作・わかつきひかる、脚本・小澤俊介、演出・高丸雅隆)は就職シーズンネタである。お手軽な近未来SFで・・・少子化対策として政府が出会い系をマネージメントする話。玉森裕太と木村文乃はそこそこの幸せをつかむのだが・・・二人がそこそこだとするとどんだけ底辺が広大なんだか・・・。

続いて「墓友」(脚本・吉井三奈子、演出・松木創)は由緒正しいスーパーナチュラルホラーである。孤独な老女(渡辺えり)と老女(真野響子)はごく普通に出会い、ごく普通に仲良くなって、ごく普通に淋しさを分かち合うのだが・・・ただ一つ違っていたのは・・・一人がものすごくエキセントリックなさびしがり屋さんだった・・・というナチュラルホラーに見せかけておいて最後は「キャリー」でやはりスーパーでした・・・という展開。佳作である。

そして・・・「空想少女」(原作・おかもと(仮)、脚本・向田邦彦、演出・植田泰史)である。石田三成を理想の戦国武将とする趣味の悪い読書好きの女子高校生・薫(能年玲奈)が一時間強のバス下校中に妄想につぐ妄想を展開するという・・・能年玲奈による能年玲奈のための能年玲奈のスケッチである。もうそれだけで充分満足だ。薫が一方的にお慕いする男子高校生に入江甚儀、薫が席を譲るかどうか悩む老人にミッキー・カーチスと・・・冬ドラマの「ウシジマくん」と「なぞの転校生」の重要なキャストの登場で微笑ましい。まあ、「軍師官兵衛」的に言うと別所長治と松永久秀でもある。そもそも・・・脚本家のペンネームがふざけ過ぎてるのである。基本的にはもっとも軽い「歴史おタク」のパロディーで・・・家康・秀吉・信長の性格比較、女侍大将の華麗なアクション、イケメン武将ランキング、なんとなく巌流島、永禄12年の三増峠の戦い観光案内など盛り沢山である。そのあらゆる場面で能年玲奈、かわいいよ能年玲奈が炸裂するのだった。ああ・・・とにかく・・・半年に一度でいいので能年玲奈を見ることができればなんとか生きていけるのだということだ。もう予告編の段階からかなり躁状態になれたしな。チープな合戦シーンも大河ドラマよりずっと楽しかった・・・。

残りは恋愛ファンタジーの「ラスト・シネマ」(脚本・小峯裕之、演出・山内大典)で榮倉奈々と金子ノブアキがあの世とこの世の中間施設でせつない恋愛に終止符を打ち、怨念サスペンス「復讐病棟」(原作・清水義範、脚本・高山直也、演出・石川淳一)で藤木直人が赤井英和を心理的に苛め尽くすのである。

全体的に可もなく不可もない出来で・・・いいともロスに対する慰めとしては充分な出来だったと考える。

桜の散る頃は季節の変わり目・・・風邪を引きやすい今日この頃です・・・読者の皆様もご自愛くださりますように。

関連するキッドのブログ→あまちゃん

星新一ミステリーSP

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2014年4月 5日 (土)

ごらん・・・あれが小作人の娘の現実・・・2014年春ドラマを待ちながら(キッド)

おっ・・・「花子とアン」はいいのかな。

このままだと(月)~(土)「花子とアン」、(日)「軍師官兵衛」という毎日がNHK総合のレビューになってしまいそうだからな。

すると「あまちゃん」体制か・・・いや・・・「花子とアン」は不定期谷間の方向で・・・。

とにかく、「第五回」で・・・「貧乏人が女学校に行くのは反対」と神父が言い出して・・・「貧富の差」や「男尊女卑」に対する徹底抗戦が明らかになってきたからな。

神の前では平等、現実の前では不平等という認識に対するそんなことがあっていいのでしょうかという嘆きが始るよね。

つまり・・・「やまとなでしこ」の神野桜子の本質は「赤毛のアン」なんだよな。

そして・・・「ハケンの品格」で「女の有能さ」を噴出させて、「ドクターX」でついに「完全無欠の女」を爆発させた・・・脚本家の世界が展開されることは疑うべくもないのですな。

幼少篇が魅力的なのは・・・LOVE要素控えめというのもあるよね。

それでも朝市ははなに強烈に片思いで・・・ついに野の花を摘んじゃったよ・・・。

花子の中に「この世で一番嫌いなものは貧乏。女を幸せにしてくれるのはお金だけ」という魂が眠っているのも知らずにな・・・。

「お金」じゃなくて「本に描かれる夢物語」だろう。

「夢」というのは基本的に「お金」なんだよ。

ウシジマくんかっ。

「人はパンのみで生きるものにあらず」そして「女は男のみで生きるものにあらず」だよ。

いや・・・「だけど男との愛には生きる」だろう・・・。

とにかく、青春篇になって真珠夫人と合流したら・・・ものすごくLOVEになる予感。

朝からドロドロしすぎ・・・と言われないことを祈るばかりなのだ。

ともかく・・・「花子とアン」からは目が離せないっ。

しかし、春ドラマも始るのだ。

それにしても・・・五輪明けだけに・・・各局揃えてきたよね。

高貴な魂の花子のように「卑怯者とは口きかん!」ってわけにもいかないからな。

(月)・・・これは「極悪がんぼ」だよね。いずみ吉紘の脚本でなくてクドカンで見たかった気もするけどな。原作が結構、ラジカルなので・・・オブラートに包むんじゃないのか。尾野真千子で・・・小林薫、椎名桔平、三浦友和が顔を揃える。・・・みんな犯人だな。いや・・・そういうドラマじゃないぞ。

(火)は尾崎将也で「ブラック・プレジデント」の黒木メイサも捨てがたいが・・・ここは「サイレント・プア」だな・・・深田恭子と桜庭ななみで貧困もの・・・そこかよっ。女優・志田未来としてはいいかもしれんが橋田壽賀子に染まってどうする・・・という考え方もあるよ。

(水)には西内まりや、倉科カナの「SMOKING GUN~決定的証拠~」があるのだが・・・最悪、谷間候補。

(木)・・・芦田愛菜、松岡茉優で「銀二貫」もあるが・・・なんといっても波瑠の「BORDER」と有村架純の「MOZU Season1 ~百舌の叫ぶ夜」が激突である。・・・小栗旬と西島秀俊がだろう・・・百歩譲って遠藤憲一と真木よう子だ・・・どういう対決だよ。「こーゆー顔対決」だ。だが・・・なんとなく「続・最後から二番目の恋」に落ち着きそうだ。岡田惠和に対する評価・・・高いな。とにかく・・・ツンデレの安達祐実の「トクボウ 警察庁特殊防犯課」の出番はもう少しあってもいいと思う。

問題の週末だな。

問題の週末だ。

(金)は・・・上野樹里、オダギリジョー、栗山千明というこれでもかの「アリスの棘」・・・。

中田秀夫演出で大野智、桐谷美玲の「死神くん」・・・。

大根仁演出で一夜で二度出るオダギリジョーの「リバースエッジ 大川端探偵社」・・・。

犬童一心演出で次期アイドル候補抜擢の「セーラーゾンビ」・・・。

これ・・・どうすんだ。

(月)「アリス」

(火)「死神くん」

(水)「大川」

(木)「セーラーゾンビ」・・・という配置では・・・。

(金)は・・・?

(土)の週末も有村架純の「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望」と沢尻エリカの「ファースト・クラス」ではみ出しますから・・・。

名作「ロング・グッドバイ」はいいのか・・・浅野忠信ではエリオット・グールドを超えられないと判断・・・いつの時代と比べてんだよっ。まあ・・・紫煙たちこめる1950年代がどこまで再現できるかは楽しみです。素晴らしければ(日)「軍師官兵衛」とチェンジしたっていい。・・・マジかよっ。

現実逃避をしたな・・・しました。

うわああああああああっ・・・「GARO」シリーズ最新作・第三話で佐伯日菜子登場かよ。しかも・・・コスチューム・プレイも・・・ついにこの日が来たのか。

待っていたんだなあ・・・。

もう・・・後は作品を見て・・・決めるしかないのでごいす。

そうずら。

そうじゃんけ。

ま・・・そうだよね。でも「悪夢ちゃんスペシャル」のために谷間は絶対必要だからね。

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2014年4月 4日 (金)

ごらん・・・あれが妖怪大牧師と妖怪大寺男・・・悪夢ちゃんじゃんけ(山田望叶)

そろそろ・・・春ドラマを待ちながら・・・書かなくていいのか。

今夜なんか始ってるよな・・・。

「トクボウ 警察庁特殊防犯課」(日本テレビ)だな。

お父(伊原剛志)は東京で警察庁生活安全局特殊防犯課指導係の警視正・叶美由紀(安達祐実)の下僕として警視・朝倉草平(伊原剛志)をやってるんだな。

だから・・・いつも家を留守にしているのか。

辻巡査(松下洸平)「警視・・・それで何をする気ですか」

朝倉「盗聴器で何をするのかを聞くのは・・・目薬が何の薬か聞くのと同じですよ」

キャラクターはある意味、一緒だな。

まあ・・・この枠としては面白い方だが・・・五輪明けの春ドラマのラインナップは強烈だからな・・・。

大根仁の「リバースエッジ 大川端探偵社」からの犬童一心の「セーラーゾンビ」(テレビ東京)とかな・・・。

・・・そこかよっ。

叶警視正のどSな感じはトレビアンだがな。

叶「ショコラとどら焼きとタンポン買ってきなさい」

朝倉「・・・タンポンもですか」

叶「始りそうだから急ぎなさい」

朝倉「・・・ああ、死にたい」

・・・おいっ。

・・・とにかく今は、「ちゃんペシャ」のことで頭がいっぱいなんだ。

なるほど・・・。きもクロZか・・・。

で、『連続テレビ小説・花子とアン・第4回』(NHK総合20140403AM8~)原案・村岡恵理、脚本・中園ミホ、演出・柳川強を見た。対岸の地震だが・・・被害が少ないことを祈りたい。せっかくの映像美は台無しだったけどな。ともかく・・・ここまでよどみない展開である。人並み外れて賢い子だが・・・子供は子供というヒロインの幼年期をファンタスティックに描いて毎日が楽しいぞ。いかにも東京下町のおバカなお嬢様だっため以子と比べると賢いことが幸せとは限らない感じが漂ってくる。しかし、それでも幸せを目指すのが「やまとなでしこ」だからな。努力して「ハケンの品格」を醸しだすんだよな。そして・・・とにかく「実録・真珠夫人」(仲間由紀恵)とのからみも楽しみである。なんとなく、朝ドラマの中に明らかに昼ドラマが混入してくる気配があるよね。

夜更けに教会の本の部屋に忍びこんだ本当ははなだけど花子と木場朝市。

しかし、教会の下男・虎次に発見されて・・・牧師たちに追跡される破目に・・・。

夜の森で花子と朝市は沼にはまり、なんとか花子ははい上がるが・・・追手は迫る。

「お前だけでも逃げろ」

「・・・」

「早く行けってばよ」

朝市・・・男前である。

一人、家に戻った花子だった・・・置き去りにした朝市が気になるが・・・その日は・・・奉公に旅立つ日だったのである。

貧乏なので着替えることもなく濡れ鼠で朝を迎える花子。

ちなみに・・・百姓たちの顔が黒いのは囲炉裏の煤ですすけているからである。

つまりおスス汚れなのである。洗っても洗っても汚れます。

蝋燭の火で一晩本でも読もうものなら眼球濁りますから。

やったのかよ。・・・ノストラダムス気分でな。

旅立ちの朝・・・ところが迎えにきた口利屋は・・・手違いで「相手が欲しいのは男の子」だったと告げる。

母親のふじは花子が奉公に行かずに済むことで胸をなでおろすと同時に前払いの米一俵がなくなることに心細くなるのだった。

「おらが替わりに行く」

ここで男をあげるのが長男の吉太郎だった。

「おら・・・父ちゃんに好かれてないし・・・いつか家を出ようと思ってた・・・それに・・・これで冬がこせるべ・・・」

「吉太郎・・・」

とにかく・・・ふじは子供も可愛いが・・・米一俵も欲しいのだった。

「そんな・・・」

自分が言い出したことで・・・家から兄が出ていくことになってしまった。

「おらのせいだ・・・」

自分を責める花子を祖父の周造(石橋蓮司)が慰める。

「おめえのせいではねえ・・・みんな貧乏神のせいだ・・・」

「貧乏神・・・」

「おらだって毎日、一生懸命働いてる・・・それでも貧乏なのは・・・誰がわるいわけでもねえ・・・貧乏神がついてるからだ」

1900年と言えばロンドンでは一度死んだホームズが復活し、新たな冒険を繰り広げているころである。

「悲しいものだな・・・無知蒙昧の人々というものは・・・ワトソン君」

「貧困が犯罪を呼ぶんだよ」

「ま・・・そうとは限らないのが・・・この世界の面白いところなんだがね・・・賢くても豊かでも悪をせずにはいられない人々というものが・・・我々の活躍の場を広げるのだ」

「・・・競馬場にでも行くか」

「いいね」

・・・おい。

まあ・・・男子は「赤毛のアン」より「シャーロック・ホームズの冒険」だよな。

しかし・・・濡れ鼠だった花子は高熱を発して寝こむのだった。

「熱があるじゃんけ・・・」

「濡れて朝帰りなんてするもんさけ」

熱にうなされた花子は・・・自責の念に苛まれ・・・悪夢を見るのだった。

巨大化した牧師と寺男が・・・安東家の茅葺の屋根を取り払い・・・花子を責め立てる。

「このぼこは・・・悪い童じゃ」

「アーメン」

「このぼこは・・・友達を見捨てた」

「アーメン」

「このぼこは・・・兄を家から追い出した」

「アーメン」

「許してくりょ・・・お父・・・助けてくりょ・・・」

「うなされる」

「お父はおらんけ・・・おじいで我慢してくれ」

祖父は可愛い孫の手を握る。

その頃、父は東京で労働運動の集会の華やかさにうっとりとしているのだった。

この年は皇太子が九条節子とご成婚し、パリでは万国博覧会や第二回オリンピックが開催され、北京では義和団の乱がおき、足尾銅山鉱毒事件の陳情団が警官隊と衝突している。その十年ほど後の話が「足尾から来た女」の世界である。日清戦争と日露戦争の中間点で「八重の桜」は最終回を駆け抜けている。

そういう世情とは無関係に・・・花子は生死の境を彷徨うのだった。

どうやら・・・牧師にはとがめられなかった朝市は花子の病状を心配そうに窺う。

そこに父帰るのだった。

「はな・・・どうした」

「父やん・・・おら・・・死ぬのか」

「何言ってる」

「そうじゃ・・・はなが死ぬわけなかろうもん・・・」

「まだまだこれから生きるに決まってるじゃんけ」

「お父・・・筆と紙をたもれ」

「え・・・」

思わず商用の帳面と筆を取り出す父。

花子は一生懸命に筆を走らせる。

「はな・・・もう字が書けるのか」

花子がしたためたものを見て父は鼻水をしたたらせるのだった。

「なんじゃ・・・」

「これは・・・はなの辞世じゃ・・・」

「じせい・・・」

まだまだと
おもひすごし
おるうちに
はや しのみちへ
むかふものなり

はなこ

(実話)

「はな~」

力尽きた花子を囲む安東一家・・・しかし、最終回ではないのでこときれぬヒロイン。

「医者だ・・・医者に見せたのか・・・」と父。

「え・・・」と茫然とする母。

ごきげんよう・・・さようなら。

花子、かわいいよ、花子。

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2014年4月 3日 (木)

ごらん・・・あれが絶対溺れない水の沼・・・名物でごいす(山田望叶)

この回、脇役は父(伊原剛志)、母(室井滋)、地主(カンニング竹山)、教師(マキタスポーツ)、近所の夫人(松本明子)、牧師(山崎一)など重厚な布陣である。

しかし、脚光を浴びるのはヒロインの安東はな(山田望叶)であり、そのキャラクターが鮮明になった回だと言える。

・・・っていうか・・・このままずっと「花子とアン」のレビューを続けるのか。

いや・・・とりあえず、谷間気分です。

なんてったって・・・キャスティング表から明らかだったのだが・・・。

本名は「はな」だけど花子とよんでくりょ・・・という衝撃の事実が明らかになったのである。

「はな」だったのかよ・・・だから最初から、「はな」だってばさ。

そして・・・自分から申し出て、奉公に出るという・・・「おしん」ぶり・・・。

その七歳女児の自立ぶりに万歳・・・。

二十歳すぎても・・・自立できない若者があふれるこの国で・・・お茶の間、茫然である。

まあ・・・基本的に「やまとなでしこ」で「ハケンの品格」な脚本家なので・・・「我が道は行く」のである。

行けばいいと思うよ。

で、『連続テレビ小説・花子とアン・第3回』(NHK総合20140402AM8~)原案・村岡恵理、脚本・中園ミホ、演出・柳川強を見た。海の向こうでは大地震発生であるが・・・津波到達までは一昼夜なのだった。はなを東京の女学校に入れるという吉平の野望は本人の拒絶で頓挫する。そんな父に長男の吉太郎(山崎竜太郎)は「おらがいってもいい」と申し出るのだが・・・そもそも・・・勉強が苦手で尋常小学校もリタイヤした吉太郎に吉平はなんの期待もしていないのだった。

しかし・・・どこか・・・父子を感じさせる二人だった。

基本的に鳶が鷹を生む物語である。

安東家に流れ込んだ吉平の血は・・・とんでもない「人」を生みだしているわけだが・・・そこに期待する父親には・・・その「人」の凄さがまだ分からないのである。

その「人」・・・はなの中では・・・常人の数倍の速度で情報処理が行われ・・・常人の予想のおよばない事態を引き起こしていく。

祖父・周造(石橋蓮司)は腰の落ち着かない婿に不満を感じるが・・・だからと言って情の分からない男ではない・・・だから・・・安東家の家風に従ったかのようにみえる孫娘の言動に胸騒ぎを覚えるのである。

生家の経済力に想いをはせ・・・向学心に燃えるはなの中では驚くべき計画が進行していたのである。

夜なべで縄仕事をする安東家。

縄細工は貴重な収入源である。

それを町に売りに出たはなは・・・地主の徳丸甚之介(カンニング竹山)に教えを乞う。

「おらのようなぼこ(子供)にも奉公先はあるのか」

「ないことはない」

「口きいてほしいずら」

「いいずら」

尋常小学校では朝市(里村洋)とはなの仲はこじれたままである。

悪戯したのは地主の倅である徳丸武(高澤父母道)だが・・・小作人の子供である朝市はその事実を口に出せないのである。

搾取されるばかりの小作人だが・・・地主にヘソを曲げられて土地を貸さないと言われれば一家離散するしかないのである。

はなと同様に子守通学をするサト(福島花香)も同様に真相を知りながら沈黙を守っていたのだが・・・はなに邪険にされる朝市を憐れに思ってついに重い口を開くのだった。

「ももちゃんの髪を引っ張って泣かせたのは朝市くんじゃないずら」

「え・・・」

「こぴっといえんじゃったけ・・・勘弁してくりょ」

はなはつれなくした朝市に申し訳ない気持ちになるのだった。

はなは朝市にあやまり二人は仲直りする。

しかし・・・はなの奉公が長野の材木問屋に決まり、前払いの米一俵が安東家に届けられる。

寝耳に水のふじはあわてて幼馴染の地主に取り消しを求めるが・・・地主は決まったことだととりあわない。

米一俵が届けられたということはすでに口利き料として地主の懐には米四俵が取りこまれているからである。

小作人の言うことに地主が耳を傾けていたらきりがないのである。

そして・・・はなという働き手と米一俵を天秤にかければふじも事態を受け入れるしかないのである。

行商人の父親は・・・肝心な時には不在なのである。

「すまんの・・・ウチが貧乏じゃから」

「すまんことはない・・・お父が言っていた・・・奉公に出たら読み書きそろばんが覚えられるって・・・奉公に出たら願いが叶うじゃんけ」

父の言葉ははなの中で結晶化していたのである。

噂を聞いて・・・早速、お古の腹巻を届けに来るリン夫人。

「達者でな」

そして・・・朝市はそっと葉っぱ文々ふみちょびれである。

・・・おいっ。

「コンヤ、ムカエニイク、テッポウハモタナイデクダサイ」

深夜・・・待ち合わせをした二人は教会の本の部屋に向かうのだった。

「奉公に出たら・・・忙しくて本も読めん・・・今のうちに読むといい」

朝市の配慮だった。

二人は教会に忍びこむが下僕の寅次(長江英和)に発見されてしまう。

寅次が階段落ちを見せている間に脱出した二人だが・・・はなは森の中で沼に落ち、助けようとした朝市も水中へ・・・。

ごきげんよう・・・さようなら。

阿母里尋常小学校、阿母里基督教会・・・これらは「赤毛のアン」の物語の舞台である「アボンリーへの道」に通じていると思われる。

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2014年4月 2日 (水)

ごらん・・・あれが白いご飯・・・美味いずら(山田望叶)

昨日はエイプリールフールである。

「嘘をついてはいけません」と人の道は説かれるわけだが・・・同時に「嘘も方便」という言葉も教えないと教養としては成立しない。

「嘘にはついていい嘘と悪い嘘があります」と教えることが肝心だが・・・何が善で何が悪かを定めることは非常に難しい。

五分前のことを忘れてしまう人に嘘を連発してみる。

「弟が入院したよ」

「ええっ」

「エイプリールフールだぴょ~ん」

「まあ・・・ほほほ」

「さっき、大地震があったよ」

「ええっ」

「エイプリールフールだびょ~ん」

「まあ・・・ほほほ」

「となりの家の人が警察に捕まったよ」

「ええっ」

「エイプリールフールだびょ~ん」

「まあ・・・ほほほ」

笑いのたえない家庭である。

で、『連続テレビ小説・花子とアン・第2回』(NHK総合20140401AM8~)原案・村岡恵理、脚本・中園ミホ、演出・柳川強を見た。ドラマの中にはいじめの描写はつきものである。現代を描くドラマでは基本的にいじめは悪であるし、中には犯罪と言えるニュアンスのものも描かれる。もちろん・・・その加減は過去にもある。しかし、人権や平等が確立されていなかった社会では時にはいじめが「生活」の一部でもあったのである。たとえば・・・ついこの間まで女性が学問することは「犯罪的行為」だった。「男尊女卑」という社会的秩序を乱すからである。昭和初期に生まれたものはまだ親に「女に学問はいらない」と言われて育つのが普通だったのである。もちろん・・・女性の社会進出が叫ばれる・・・ということは現代もその名残の中にある。現代の目から見れば女性蔑視で・・・奇異に感ずるがそれが「普通」だったのである。だから・・・秩序を乱す女子がいれば男子たちが制裁するのは「自然」だったのだ。そういう「描写」に目くじらをたてるバカがいないことを祈るばかりである。

現在、TOKYO MXでは1973年の「ウルトラマンタロウ」がオンエアされているが第15話の「青い狐火の少女」では狐に憑依されたと噂された孤児の少女を・・・男子はもちろん、村の男たちが総出で「ぶっ殺さなければなんねえ」と山狩りをしたりするわけである。・・・まあ、当時から「ウルトラマンタロウ」はある意味異常だったけどな。ちなみに途中で契約更新のための配役変更によって白鳥さおり役があさかまゆみから小野恵子に変わるという凄い展開があるのだが・・・今度の日曜日でハイティーンでフレッシュなあさかまゆみ(朝加真由美)は見納めである・・・ファンはお見逃しなく。

「パンチラはあるのかや?」

「あるかもしれんだに」

脱線しすぎだろう・・・いや・・・もう、マキタスポーツがいけないのです。

甲州の貧しい農家に生まれた安東はな(山田望叶)・・・健気で賢い娘だが・・・とにかく劣悪な教育環境である。

もちろん・・・安東家が特別に貧しいわけではなく・・・これが標準なのである。

明治33年(1900年)、十九世紀最後の年は・・・明治維新によって解放された農地が地主(資本家)と小作人(労働者)という関係によって定着している時代である。この関係は日本が占領軍によって改革されるまで続くのである。

すべては中央集権化を目指す明治政府の都合によって生まれた格差だった。

農家に婿入りした行商人の安東吉平(伊原剛志)は唯一読み書きができるが・・・それは奉公先の商家で苦労して習い覚えたものだった。

文盲が当たり前の安東家の中で・・・利発なはなの才能が埋もれていくのが・・・どうにも不憫なのである。

同時にそれは・・・吉平自身の「学問」に対する憧憬を潜ませている。

行商で・・・東京を見聞する吉平は時代が激しく動いているのを感じ取っているのだった。

「はなを・・・女学校にいれたら・・・何か素晴らしいことが待っているのではないか」

吉平もまた見果てぬ夢を見ているのだった。

しかし・・・小作人として生きて来た舅の周造(石橋蓮司)や妻のふじ(室井滋)から見ればそれは戯けたことだったのである。

地主の徳丸甚之介(カンニング竹山)から借地料の値上げを宣言され・・・思案に暮れている小作人根性が染みついた父娘なのだった。

「一反四俵・・・」

暴利である。土地柄や生産性にもよるが・・・一反からとれる米はおよそ五俵である。

つまり、年利八割という搾取なのである。ウシジマくん・・・。

「残りは二俵」ということは・・・おそらく安東家は地主から二反ほど借りて米を作っているわけだ。

つまり、二反で十俵の米を作り、八俵を地主に巻き上げられて残り二俵なのである。

十合が一升、十升が一斗、十斗が一石である。千合を365日で割るとおよそ2.7合になる。

ダイエットしていたり大食漢にもよるが・・・およそ一日で食べる米の量と考えることが出来、つまり一石は一年分の一人前なのである。

一俵は四斗であり・・・つまり、およそ一年分の半人前である。

つまり・・・二俵あれば一人が米を食えることになる。

しかし・・・基本的にこの米は売って・・・税金を払う必要がある。すると・・・手元には何も残らないくらいの重税がかかっているのだ。

つまり・・・小作人は・・・商品にはならないヒエや粟を食うしかなかったのである。

労働力が一人増え、一反増やせばもう一俵残るのに・・・。

農業を手伝わない婿に舅や嫁の目が厳しいのも仕方のない話なのだった。

しかし・・・夢見る父親は・・・花子をミッション系の女学校に入れるために・・・一家でクリスチャンとしての洗礼を受けると言い出す始末なのである。

そのために地元のプロテスタント教会に連れていかれた花子は例によって感動する。

「教会じゃ、教会じゃ、教会じゃんけ」

花子にとって現実は空想の糧である。

見知らぬものを知ることは空想の素材を得ることなのだ。

さらに牧師の家には・・・花が憧れる「本」が「本棚」に収められるほどあるのだった。

「うわあ・・・」

花子は目がくらみそうな気がするのだった。

しかし・・・「現実の世界」で・・・母や祖父が口にする「当たり前の生活」は花子の心を呪縛する。

父親を怠け者にしないためにも・・・花子が父に従うことは「悪」なのである。

だから・・・花子は母と父を喧嘩させないために・・・自らにさらなる学問を禁じるのだった。

ついでに・・・昼の弁当も抜くのだった。

だが・・・それでも学校には行く。それが花子の折衷案的選択だった。

地主の息子が白い米の弁当を食べる時、花子は空に浮かんだ雲を握り飯にして咀嚼するのだった。

「赤毛のアン」の作中人物と・・・花子の周囲はシンクロするわけだが・・・今回はおしゃべりな近所の農婦・木場リン(松本明子)が登場する。

「赤毛のアン」の養母・マリラ・カスバートの仲良しさんであるレイチェル・リンド夫人とシンクロしているわけである。

抜群の存在感でいい味出してます。

アンの同級生で石板で叩かれるギルバート・ブライスは木場朝市になっており、この世界ではレイチェルとギルバートは母子になっているらしい。

この辺りの遊びも「赤毛のアン」シリーズのファンには楽しいところだろう。

ごきげんよう、さようなら。

このナレーションもその遊びの一環であることがやがて明らかになるだろう。

配役メモ・・・安東もも(須田理央)

安東かよ(木村心結)?・・・CQ、CQ、CQ・・・特にシャブリ様~。

村岡美里(三木理紗子)

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2014年4月 1日 (火)

ごらん・・・あの綺麗な花火を・・・怖がらないで逃げようね(吉高由里子)

夢見る少女は無敵である。

美しい空襲。

美しい山村。

美しい貧乏。

美しい林檎の花、川の流れ、水鳥・・・。

美しい田園。

美しいナレーション。

うっとりするような朝ドラマが始りました。

これは完全に見る人を選ぶよねえ。

もはや・・・「みんな!エスパーだよ!」レベルだよね。

それは・・・ただマキタスポーツが出ていたからだろう。

「あまちゃん」にだって司会者役で出ていたズラ。

で、『連続テレビ小説・花子とアン・第1回』(NHK総合20140331AM8~)原案・村岡恵理、脚本・中園ミホ、演出・柳川強を見た。鮮烈な第一回である。どちらかとえばベタでドンくさい「ごちそうさん」に比べると画面の隅々まで繊細さが行きわたっている感じである。どちらがいいかは好みの問題だが・・・「原書」を持って逃げていく空襲の時にはやくたどり着きたい気もするし・・・いつまでも少女時代の田園風景の中でうっとりしていたい気もする。そういう感覚は「ごちそうさん」には全くなかったのだな。これはもう・・・平凡な人生と非凡な人生の落差と言うしかない。非凡な方に傾く場合は・・・いかに嫉妬を押さえ・・・憧憬に変えていけるかの話である。つまり・・・浅田真央にはなれない人々が浅田真央を賛美する人々足り得るのだから。

小説を読んだことがなくてもアニメで少なくとも名前くらいは知っている「赤毛のアン」の最初の翻訳者の物語である。空襲の夜に・・・主人公の村岡花子(吉高由里子)が鼻をたらした子供たちとともに防空壕目指して抱えて逃げるのが・・・「グリーンゲイブルズのアン/L・M・モンゴメリ」(1908年)の原書である。この時点で日本にはまだ「赤毛のアン」は存在していないのだ。

空想癖が強くおしゃべりな「赤毛のアン」と・・・どこか重なって行く・・・村岡花子のキャラクターが「恐ろしい焼夷弾の雨」を「美しい花火の光景」と言い換えていく。

子供たちは・・・「言葉の魔力」で「恐怖」を忘れる。

空を覆うB29の編隊もどこか魔法の産物めいてくる。

現実と夢想の間で・・・人々は呼吸するのである。

実写といつかどこかで見たようなアニメの少女が織りなすオープニングを経て・・・お茶の間は明治の甲州へと導かれて行く。

悪童たちに「花」と呼ばれたら「花子と呼んでくりょう!」と名前という自分。名前という言葉。名前という意味にこだわる幼き日の花子(山田望叶)の存在感・・・抜群である。

そして・・・そこには箍にはめられた桶のような現代人はいない。

百姓の娘が就学年齢になっても学校に通わないのは日常なのである。

安東家には家長の周造(石橋蓮司)、娘のふじ(室井滋)、長男の吉太郎、長女の花子、次女のかよ、三女で乳飲み子のももまで一人として文字が読めない文盲一家なのである。

ただ・・・どうやらふじの婿で行商人の吉平(伊原剛志)だけが・・・辛うじて僅かな教養があるらしい。

旅の商いから戻り、吉平は土産に絵本「おやゆび姫」を買い求めてくるのだが・・・後に黒木華になる上の妹かよは「食いものの方がよかった」とごねるのだった。

しかし・・・本の上下もわからない花子は生まれてはじめてみる本物の本に感激するのだった。

「本じゃ、本じゃ、本じゃんけ・・・」(本だね、本だね、本なんだねえ)

吉平は・・・娘に才能の片鱗を感じていた。

浅田真央の亡き母がそうだったように・・・何かを成し遂げる子の親はどこか誇大妄想の気配を漂わせるものだ。

才能ある我が子が・・・山奥の村でやがて土屋太鳳になるももを背負って労働しているのが不憫だし・・・あってはならないことに思えてくるのだった。

だから・・・吉平は・・・花子を学校に連れていくのである。

「学校じゃ、学校じゃ、学校じゃんけ・・・」(学校だな、学校だな、これが学校なんだな)

花子は初めて見た学校に興奮する。

花子には幼馴染がいて・・・やがて窪田正孝になる木場朝市少年である。

悪童たちとは一歩距離を置く大人しい・・・というかとろい少年である。

そして・・・担任教師が・・・本多先生(マキタスポーツ)なのだった。

いかにも田舎の教師なのだが「パンチラがみたいだに」とは言わないのである。ここは愛知県ではなくて山梨県だからだ。・・・おいっ。

「座れ」と言われたら机の上に正座してしまう花子だったが・・・一週間で文盲を脱すると言う才能を爆発させる。

少し、やりすぎな感じはするが・・・花子という名前にこだわるのは「赤毛のアン」が自分の名前の綴りにこだわるのと同じで・・・悪童の悪戯の濡れ衣を着せられた朝市少年がノート替わりの石板でぶん殴られるのも「赤毛のアン」そのものという・・・花子とアンのシンクロが繰り広げられる。

そして・・・ナレーションはうるわしの美輪明宏様の甘いささやきなのだった。

ゴージャスだよね。なんだかとってもゴージャスだよね。

前作と全く同じ展開・・・戦後の炊き出しからはじまり幼年期へ・・・なのにこの激しい落差はスタッフの力量の差と言う他ないんだよね。

いや・・・単に大阪大空襲から始ってれば文句なかったんだろう・・・お前はっ。

まあ・・・全篇、分かる奴だけに分かればいいでは・・・いろいろ問題あるかもしれません。

でも・・・このままやってもらいたい。

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