ハードボイルドが枯木で泣いている(有村架純)MOZU(池松壮亮)Season1〜百舌の叫ぶ夜〜(西島秀俊)
原作の「公安警察シリーズ」でコードネーム「MOZU」が登場する作品のドラマ化である。
「Season2〜幻の翼〜」が「WOWOWプライム」で放送されるという展開だが・・・基本的に「百舌の叫ぶ夜」と「幻の翼」は原作では独立した作品であり、そう言う意味では「Season2」は見なくても「Season1」だけで充分楽しめるはずだと考える。まあ、しばらく待つとお下がりが放送されるとは思いますがね。
「公安の刑事が愛妻を失って暴走する」という設定だけでキッドにはまったく興味がわかないことになるのだが、お茶の間にはそのぐらいがちょうどいいのかもしれない。
「百舌の叫ぶ夜」の発表は1986年・・・今から三十年近く前である。時代そのものが物凄く変転しているので気の抜けたサイダーのような要素がところどころに噴出するが・・・まあ・・・それなりに現代化している脚色の努力を評価するべきなのかもしれない。
基本的には殺し屋=テロリストを追う、公安エリート(秘密警察諜報員)の男女、そして普通の警察官の物語である。
だから・・・実質上の主人公はMOZUである新谷和彦だと思って視聴すると楽しみやすいかもしれない。
で、『MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜・第1回~2回』(TBSテレビ)原作・逢坂剛、脚本・仁志光佑、演出・羽住英一郎を見た。ミステリの世界でハードボイルドと言えば・・・それぞれの胸の内で様々な解釈が去来するわけである。そもそも、純文学的な手法の問題でもあり・・・アクション・アドベンチャーのようなドンパチ・・・殺戮劇を示すのだとも考えられる。キッドの辞書によれば・・・。
ハードボイルド【名詞】①固くなるまでゆでること。通例ゆでるのは卵だが人体であっても構わない。②ハードボイルドエッグ(固茹卵)のこと。転じて白身と黄身が分離して消化のよくない黒白はっきりついたミステリ全般。③神と悪魔など敵味方の存在する世界での中立者が繰り広げる葛藤と善悪を超越した破壊衝動。最終的にハチャメチャになることが多い。
まあ・・・とにかく今季は・・・「ロング・グッドバイ」のドラマ化という神をも恐れぬチャレンジも進行中であり・・・それに比べれば・・・この作品の冒涜性はかわいいものだと言える。
高級住宅地と繁華街が混在する不思議な日比谷の百貨店前で爆発事件が発生。
多数の死傷者のうち・・・爆心地には元警視庁公安部捜査員の倉木千尋(石田ゆり子)がいて即死している。
犯行声明もなくテロと断定できないまま・・・警視庁公安部と警視庁刑事部の合同捜査が始るがお互いの縄張り意識のために捜査は難航する。
千尋の夫で警視庁公安部特務第一課捜査官の倉木尚武(西島秀俊)は諜報部のエキスパートとは思えない激情家で捜査への参加を室井公安部部長(生瀬勝久)に具申するが当然却下される。
激怒した倉木は「妻の死の真相」を探るために手段を選ばぬ暴走捜査を開始するのだった。・・・一同爆笑である。
そもそも・・・倉木夫妻は幼い娘・雫(小泉彩)を不審死させており、公安で極秘任務についていた千尋は精神的に不安定な状態だった。
しかし・・・そんな崩壊寸前の家庭を倉木はものすごく大切に思っていたらしい。
そのために・・・捜査一課の大杉刑事(香川照之)や極秘任務遂行中の明星捜査官(真木よう子)は対応に窮するのだった。
異常に爆発力の大きい爆弾を所持していたのはサイバーテロを主体とする反政府組織・「パラサイトネット」の幹部・筧(田中要次)だった。そのために無差別大量殺戮を主眼とするテロ行為も疑われたが・・・倉木は・・・筧の殺害に周囲が巻き込まれた可能性を見出す。
その筧の爆殺の加害者として浮上したのが「殺し屋」の新谷和彦(池松壮亮)だった。
一方、明星捜査官は警視庁警務局の特別監察官・津城(小日向文世)の特命を受けて、新谷の身辺調査を行っていたのだった。
新谷の雇用者として暴力団員の赤井(田口浩正)が浮上し、赤井の背後には日本有数の警備会社「アテナセキュリティ」の役員・東(長谷川博己)の存在があった。「アテナセキュリティ」は裏で非合法活動を行っていたらしい。
公安の情報収集のプロである倉木がそのことを知らないのは噴飯ものだが・・・とにかく・・・妻を失ったショックで精神の均衡を失った倉木は相手構わず、手段を選ばす「本当のことを教えてくれ」と質問し続けるのである。・・・一同大爆笑なんだな。
一方・・・筧と接触した新谷は・・・その課程で「アテナセキュリティ」にとっての重大な機密情報の「ICチップ」を入手したらしい。そのアイテムの回収を無能な赤井に命じる東。
「なぜ・・・赤井なんかに・・・」と側近の中神(吉田鋼太郎)は疑問に感じる。
「無能だから・・・新谷も警戒しないかなと思って」
しかし、無能な赤井はアイテムを回収するどころか・・・新谷を崖から突き落としてしまうのだった。・・・一同失笑まじりの爆笑である。
その時・・・赤井の周辺には謎の同行者があった。
新谷は・・・「妹の呪い」を赤井に伝えており・・・つまり、新谷には一心同体の仲間がいることを暗示している。
生死不明の新谷だったが・・・怪物的テロリストとして九死に一生を得る。
しかし・・・病院で意識を取り戻した時に・・・記憶障害を発症し・・・自分の正体を忘却してしまうのだった。
そこに・・・フリーライターの中島葵美(有村架純)が現れ、善意によって市の広報ウェブサイトに「記憶を失った男」の情報を公開してしまう。
やがて・・・偽物の妹・瞳(藤原令子)を伴った赤井が現れ、新谷を拉致することに成功する。
しかし・・・無敵の新谷は・・・記憶がないまま・・・赤井たちを抹殺するのだった。
爆破事件の捜査員たちは周辺の監視カメラの映像が意図的に削除されていることに驚愕する。
事件の生存者の一人・みゆき(大川春菜)は「おばけを見た」と証言するが・・・少女の視線の先の映像はすべて抹消されていた。
倉木は・・・公安内部に・・・事件を隠蔽しようとする勢力の気配を感じるのだった。
潜伏中の新谷を発見した明星は逆襲され、拘束されてしまう。
明星を追って新谷に迫る倉木だったが・・・新谷は獣のように手強いのだった。
そして・・・新谷自身も失われた自身の記憶を捜索するのである。
巨悪の存在を匂わせる謎のキーワード「ダルマ」・・・まあ・・・そんなにすごい秘密ではないことは明らかだと思いますけれどおおおおおおおおっ。
とにかく・・・なんとなく・・・派手で思わせぶりな演出を楽しめる人は楽しむといいと思うよ。
もずが枯木で 泣いている
おいらは藁を たたいてる
みんな去年と 同じだよ
けれども足りねえ ものがある
兄さの薪わる 音がねえ
バッサリ薪わる 音がねえ
兄は鉄砲かついで寒い満州に出征したのである。
関連するキッドのブログ→探偵はBARにいる
→外事警察
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コメント
今クールのドラマは MOZU ロンググッドバイ リバースエッジ
ハードボイルドタッチのものが多いですね
映像の力が大きかった気がしますがどれも初回は面白かったです
でもMOZUは回を重ねるにつれて厳しくなってきてしまいました
ダブルフェイスの潜入捜査編は大好きだったんですが
ハードボイルドは連ドラには向かないんでしょうか?
キッドさんの理想とするハードボイルドは
私の感じるそれよりずっとハードルが高そうなんですが
それが 何なのかよくわからなくて(^^;;
でも今日の関連ブログを読んで
さらば愛しき人の大鹿マロイのラスト
遠い記憶ですが
カッコいいとは違う主人公が愛おしくてたまらなくなる何かが あった気がします
今日 キッドさんのレビューを読んで私が他に思い浮かんだのは
第三の男なんですが
これぞハードボイルドというオススメ映画☆
教えて頂けると嬉しいです♪
投稿: chiru | 2014年4月24日 (木) 22時49分
シンザンモノ↘シッソウニン↗・・・chiru様、いらっしゃいませ・・・大ファン
そうですねえ・・・ハードボイルドと銘打たれると
本能的に身構えるんですねえ。
基本的に「当たり」と思えない事が多いので。
ハードボイルドのハードルが高すぎるのですな。
たとえばドラマ「池袋ウエストゲートパーク」は
ハードボイルドと銘打たれていませんが
基本的にかなりハードボイルドでございます。
今回は「MOZU」は後半のドンパチがどれほど
迫力あるかによって決まります。
「ロンググッドバイ」はストーリー的には
かなり間のびするので・・・ラストの
男と男のはかない友情が胸におちるかどうか・・・ですな。
「大川端」はまあ・・・探偵ものとしては順当ですが・・・主人公が傍観者ですからな。
「ハードボイルド」は連ドラというよりは
お茶の間に向かないとキッドは考えます。
キッドが邦画で一番ハードボイルドだと思うのは
「仁義なき戦い」シリーズですからね。
何がハードボイルドなのかは難しい問題です。
黒澤明の「用心棒」とか
SF映画の「ブレードランナー」
欧風な「レオン」
これらは本場アメリカを越えるハードボイルドとも言えますし。
ハードボイルド・・・特にチャンドラーは
映像化されると・・・イメージを損なうという問題がございますしね。
だれもが理想のフィリップ・マーローを胸に抱いておりますので・・・。
キッドはエリオット・グールドの「ロング・グッドバイ」も嫌いではありませんがベストとは言えない。
そういう意味では「羊たちの沈黙」のクラリスの方が好みですし。
この夏に公開になる「渇き。」(中島哲也監督)には少し期待しております。
そういう意味では「告白」もハードボイルド映画です。
それから・・・遡れば邦画では「DEAD OR ALIVE 犯罪者」とか・・・松田優作の「最も危険な遊戯」とかも・・・好きでございました。
投稿: キッド | 2014年4月25日 (金) 06時06分